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特表2024-513446GUCY2C結合ポリペプチドおよびその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】GUCY2C結合ポリペプチドおよびその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20240315BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240315BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240315BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240315BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240315BHJP
   G01N 33/573 20060101ALI20240315BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20240315BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20240315BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20240315BHJP
   C12N 15/85 20060101ALN20240315BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/13
C12N5/0783
C12N5/10
A61K51/10
A61P35/00
A61K39/395 N
A61K39/395 P
A61K39/395 D
G01N33/573 A
G01N33/574 A
G01N33/531 A
C12N15/63 Z
C12N15/85 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561378
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 KR2022005030
(87)【国際公開番号】W WO2022216079
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0045510
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ユンキュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ユン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ヨンリム・コ
(72)【発明者】
【氏名】ソヨン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ボム・ジュ・ホン
(72)【発明者】
【氏名】ウンヘ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ナキュン・イ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB22
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085KA03
4C085KA04
4C085LL18
(57)【要約】
本出願は、GUCY2C結合ポリペプチドおよびその用途に関し、具体的には、GUCY2C結合ポリペプチド、これを含む融合タンパク質、キメラ抗原受容体、前記キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞、およびこれらの癌の治療および/または診断用途に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、GUCY2C結合ポリペプチド:
配列番号38~44からなる群より選択されたアミノ酸配列で表される重鎖CDR1(以下、CDR-H1)、配列番号45~53からなる群より選択されたアミノ酸配列で表されるCDR-H2、および配列番号54~65からなる群より選択されたアミノ酸配列で表されるCDR-H3を含む重鎖可変領域;
配列番号66~78からなる群より選択されたアミノ酸配列で表される軽鎖CDR1(以下、CDR-L1)、配列番号79~88からなる群より選択されたアミノ酸配列で表されるCDR-L2、および配列番号89~106からなる群より選択されたアミノ酸配列で表されるCDR-L3を含む軽鎖可変領域;
または前記重鎖可変領域および軽鎖可変領域の組み合わせ。
【請求項2】
前記GUCY2C結合ポリペプチドは、scFv(single chain variable fragment)である、請求項1に記載のGUCY2C結合ポリペプチド。
【請求項3】
配列番号1~18からなる群より選択されたアミノ酸配列で表される、請求項2に記載のGUCY2C結合ポリペプチド。
【請求項4】
請求項1に記載のGUCY2C結合ポリペプチドを含むGUCY2C結合抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
請求項1に記載のGUCY2C結合ポリペプチドおよび免疫グロブリンのFcドメインを含む、融合タンパク質。
【請求項6】
前記GUCY2C結合ポリペプチドは、配列番号1~18からなる群より選択されたアミノ酸配列で表されるものである、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体であって、
前記細胞外ドメインは、請求項2に記載のGUCY2C結合scFvを含むものである、キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor)。
【請求項8】
前記GUCY2C結合scFvは、配列番号1~18からなる群より選択されたアミノ酸配列で表されるものである、請求項7に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項9】
請求項7または8に記載のキメラ抗原受容体を発現する免疫細胞。
【請求項10】
前記免疫細胞は、T細胞、腫瘍浸潤リンパ球、NK(Natural killer)細胞、TCR-発現細胞、樹状細胞、またはNK-T細胞である、請求項9に記載の免疫細胞。
【請求項11】
請求項1~3のいずれか1項に記載のポリペプチド、前記ポリペプチドを含む融合タンパク質、または前記ポリペプチドを含むキメラ抗原受容体を暗号化する、ポリヌクレオチド。
【請求項12】
配列番号20~37からなる群より選択された核酸配列で表されるものである、請求項11に記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項1~3のいずれか1項に記載のポリペプチド、前記ポリペプチドを含む融合タンパク質、または前記ポリペプチドを含むキメラ抗原受容体を含む、GUCY2C検出用組成物。
【請求項14】
請求項1~3のいずれか1項に記載のポリペプチド、前記ポリペプチドを含む融合タンパク質、または前記ポリペプチドを含むキメラ抗原受容体を含む、癌診断用組成物。
【請求項15】
前記癌は、GUCY2Cを発現するものである、請求項14に記載の癌診断用組成物。
【請求項16】
請求項1~3のいずれか1項に記載のGUCY2C結合ポリペプチド;
前記GUCY2C結合ポリペプチドを暗号化するポリヌクレオチド;
前記GUCY2C結合ポリペプチドを暗号化するポリヌクレオチドを含む組換えベクター;
前記GUCY2C結合ポリペプチドを含むキメラ抗原受容体;
前記キメラ抗原受容体を暗号化するポリヌクレオチド;
前記キメラ抗原受容体を暗号化するポリヌクレオチドを含む組換えベクター;および
前記キメラ抗原受容体を暗号化するポリヌクレオチドを含むか、前記キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞
を含む、癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項17】
前記癌は、GUCY2Cを発現するものである、請求項16に記載の癌の予防または治療用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2021年4月7日付の大韓民国特許出願第10-2021-0045510号に基づく優先権の利益を主張し、当該大韓民国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書に一部として含まれる。
【0002】
本出願は、GUCY2C結合ポリペプチドおよびその用途に関し、具体的には、GUCY2C結合ポリペプチド、これを含む融合タンパク質、前記キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞、およびこれらの癌の治療および/または診断用途に関する。
【背景技術】
【0003】
GUCY2C(グアニレートシクラーゼ2C(Guanylate cyclase 2C);グアニリルシクラーゼC(guanylyl cyclase C);GC-CまたはGCC)は、腸液、電解質恒常性、細胞増殖の維持などに作用する膜通過細胞表面受容体である。正常な成人哺乳動物において、GUCY2Cは、小腸、大腸、および直腸の内壁を囲む粘膜細胞で発現する。これらの細胞は、増殖、移動、分化、および細胞自滅死の周期を経るが、増殖と細胞自滅死の不均衡は胃腸管内で腫瘍の形成を誘導することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本明細書では、新規なGUCY2C結合ポリペプチド、これを含む融合タンパク質、およびこれらの癌の治療および/または診断用途が提供される。
【0005】
一例は、GUCY2Cに結合するGUCY2C結合ポリペプチドを提供する。
【0006】
前記GUCY2C結合ポリペプチドは、
配列番号38~44からなる群より選択されたアミノ酸配列で表される重鎖CDR1(以下、CDR-H1)、配列番号45~53からなる群より選択されたアミノ酸配列で表されるCDR-H2、および配列番号54~65からなる群より選択されたアミノ酸配列で表されるCDR-H3を含む重鎖可変領域;
配列番号66~78からなる群より選択されたアミノ酸配列で表される軽鎖CDR1(以下、CDR-L1)、配列番号79~88からなる群より選択されたアミノ酸配列で表されるCDR-L2、および配列番号89~106からなる群より選択されたアミノ酸配列で表されるCDR-L3を含む軽鎖可変領域;
またはこれらの組み合わせ
を含むものであってもよい。
【0007】
一例において、前記GUCY2C結合ポリペプチドは、前記重鎖可変領域および軽鎖可変領域を順序に関係なく含む単鎖可変断片(single chain variable fragment;scFv)であってもよい。前記scFvは、前記重鎖可変領域および軽鎖可変領域を、N末端からC末端の方向に、重鎖可変領域および軽鎖可変領域の順序または軽鎖可変領域および重鎖可変領域の順序で含むことができ、例えば、N末端からC末端の方向に、重鎖可変領域および軽鎖可変領域の順序で含むことができる。この時、前記重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、ペプチドリンカーを介して連結されるか、リンカーなしに直接連結されたものであってもよい。一具体例において、前記ポリペプチドは、配列番号1~18からなる群より選択されたアミノ酸配列で表されるscFvであってもよい。
【0008】
他の例は、前記重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0009】
他の例は、前記GUCY2C結合ポリペプチドと免疫グロブリンのFcドメインとを含む融合タンパク質を提供する。
【0010】
他の例は、前記GUCY2C結合ポリペプチド、抗体またはその抗原結合断片または融合タンパク質と、薬物とを含む接合体を提供する。前記薬物は、抗癌剤、造影剤などから選択された1種以上であってもよい。
【0011】
他の例は、GUCY2C結合ポリペプチドを含むキメラ抗原受容体(Chimeric antigen receptor)を提供する。前記キメラ抗原受容体は、GUCY2C特異的なものであってもよい。
【0012】
他の例は、前記キメラ抗原受容体を含む免疫細胞を提供する。前記免疫細胞は、前記キメラ抗原受容体を細胞表面に発現する免疫細胞であってもよい。前記免疫細胞は、GUCY2C特異的免疫細胞であってもよい。
【0013】
他の例は、前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、またはキメラ抗原受容体を暗号化するポリヌクレオチドを提供する。他の例は、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを提供する。他の例は、前記ポリヌクレオチドまたは組換えベクターを含む組換え細胞を提供する。
【0014】
他の例は、前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、接合体、キメラ抗原受容体、これらを暗号化するポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、前記組換えベクターを含む組換え細胞、および前記キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞からなる群より選択された1種以上を有効成分として含む、癌の予防および/または治療用薬学的組成物を提供する。
【0015】
他の例は、前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、接合体、キメラ抗原受容体、これらを暗号化するポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、前記組換えベクターを含む組換え細胞、および前記キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞からなる群より選択された1種以上の薬学的有効量を、癌の予防および/または治療を必要とする対象に投与する段階を含む、癌の予防および/または治療方法を提供する。
【0016】
他の例は、前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、接合体、キメラ抗原受容体、これらを暗号化するポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、前記組換えベクターを含む組換え細胞、および前記キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞からなる群より選択された1種以上の癌の予防および/または治療に使用するための用途または癌の予防および/または治療用薬学的組成物の製造に使用するための用途を提供する。
【0017】
他の例は、前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、キメラ抗原受容体、これらを暗号化するポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、前記組換えベクターを含む組換え細胞、および前記キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞からなる群より選択された1種以上を有効成分として含む癌の診断用組成物を提供する。
【0018】
他の例は、対象から得られた生物学的試料に前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、キメラ抗原受容体、これらを暗号化するポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、前記組換えベクターを含む組換え細胞、および前記キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞からなる群より選択された1種以上を接触させる段階を含む、癌の診断方法または癌の診断に情報を提供する方法を提供する。前記対象は、癌の診断を必要とする患者であってもよいし、前記生物学的試料は、細胞、組織、体液、およびこれらの培養物からなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0019】
他の例は、前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、キメラ抗原受容体、これらを暗号化するポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、前記組換えベクターを含む組換え細胞、および前記キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞からなる群より選択された1種以上の癌の診断に使用するための用途または癌の診断用組成物の製造に使用するための用途を提供する。
【0020】
他の例は、前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、キメラ抗原受容体、これらを暗号化するポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、前記組換えベクターを含む組換え細胞、および前記キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞からなる群より選択された1種以上を有効成分として含むGUCY2C検出用組成物を提供する。
【0021】
他の例は、生物学的試料に前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、キメラ抗原受容体、これらを暗号化するポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、前記組換えベクターを含む組換え細胞、および前記キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞からなる群より選択された1種以上を接触させる段階を含む、GUCY2C検出方法を提供する。前記生物学的試料は、分離された細胞、組織、体液、およびこれらの培養物からなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0022】
他の例は、前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、キメラ抗原受容体、これらを暗号化するポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、前記組換えベクターを含む組換え細胞、および前記キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞からなる群より選択された1種以上のGUCY2Cの検出に使用するための用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
用語の定義
本明細書において、GUCY2C(グアニレートシクラーゼ2C(Guanylate cyclase 2C);グアニリルシクラーゼC(guanylyl cyclase C;GC-CまたはGCC)、intestinal guanylate cyclase、guanylate cyclase-C receptor、またはthe heat-stable enterotoxin receptor(hSTAR))は、腸液、電解質恒常性、細胞増殖の維持などに作用する膜通過細胞表面受容体である。一例において、GUCY2Cは、哺乳類由来のGUCY2Cであってもよいし、例えば、ヒトGUCY2C(タンパク質:GenBank Accession No.NP_004954.2等;遺伝子:GenBank Accession No.NM_004963.4等)、マウスGUCY2C(タンパク質:GenBank Accession No.NP_001120790.1、NP_659504.2等;遺伝子:GenBank Accession No.NM_001127318.1、NM_145067.3等)であってもよいが、これに制限されるわけではない。一例において、GUCY2Cは、哺乳類(例えば、ヒト、サルなどの霊長類、マウス、ラットなどの齧歯類など)の大腸癌で特異的に発現するものであってもよいが、大腸および食道、胃、膵臓などのような腸間膜などでも発現することができ、特別な制限が加えられるわけではない。
【0024】
本明細書において、ポリヌクレオチド(「遺伝子」と混用されることがある)またはポリペプチド(「タンパク質」と混用されることがある)が「特定の核酸配列またはアミノ酸配列を含む」または「特定の核酸配列またはアミノ酸配列からなる、またはで表される」とは、前記ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが前記特定の核酸配列またはアミノ酸配列を必須に含むことを意味することができ、前記ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの本来の機能および/または目的とする機能を維持する範囲で前記特定の核酸配列またはアミノ酸配列に変異(欠失、置換、変形、および/または付加)が加えられた「実質的に同等の配列」を含むもの(または前記変異を排除しないもの)と解釈できる。
【0025】
一例において、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが「特定の核酸配列またはアミノ酸配列を含む」または「特定の核酸配列またはアミノ酸配列からなる、またはで表される」とは、前記ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが(i)前記特定の核酸配列またはアミノ酸配列を必須に含むか、または(ii)前記特定の核酸配列またはアミノ酸配列と70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、または99.9%以上の相同性(identity)を有する核酸配列またはアミノ酸配列からなるか、これを必須に含み、本来の機能および/または目的とする機能を維持することを意味することができる。本明細書において、ポリペプチド、抗体またはその抗原結合断片(例えば、CDR、可変領域、または重鎖/軽鎖)、融合タンパク質、およびキメラ抗原受容体が「特定のアミノ酸配列を含む、または特定のアミノ酸配列で表されるか、からなる」とは、前記アミノ酸配列を必須に含む場合、および前記アミノ酸配列に本来の活性および/または目的とする活性(例えば、GUCY2C結合活性など)に影響のない無意味な変異(例えば、アミノ酸残基の置換、欠失、および/または追加)が導入された場合をすべて意味するものであってもよい。
【0026】
本明細書において、用語「相同性(identity)」は、与えられた核酸配列またはアミノ酸配列と一致する程度を意味し、百分率(%)で表示される。核酸配列に対する相同性の場合、例えば、文献によるアルゴリズムBLAST(参照:KarlinおよびAltschul,Pro.Natl.Acad.Sci.USA,90,5873,1993)やPearsonによるFASTA(参照:Methods Enzymol.,183,63,1990)を用いて決定することができる。このようなアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(参照:http://www.ncbi.nlm.nih.gov)。
【0027】
本願において、用語「抗体」は、特定の抗原に特異的に結合するタンパク質を総称するものであって最も広い意味で使用され、免疫系内で抗原の刺激によって作られるタンパク質またはこれを化学的合成または組換えで製造したタンパク質であってもよいし、その種類は特に制限されない。具体的には、所望の生物学的活性を示す限り、単クローン抗体(全長単クローン抗体を含む)、多クローン抗体、多重特異性抗体(例、二重特異性抗体)、合成抗体(または抗体模倣体ともいう)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、または抗体融合体タンパク質(または抗体接合体ともいう)を包括する。
【0028】
完全な抗体(例えば、IgG型)は、2個の全長(full length)軽鎖および2個の全長重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖と二硫化結合で連結されている。抗体の不変領域は、重鎖不変領域と軽鎖不変領域とに分けられ、重鎖不変領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)またはエプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスとして、ガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)またはアルファ2(α2)を有する。軽鎖の不変領域は、カッパ(κ)およびラムダ(λ)タイプを有する。
【0029】
用語「抗原結合断片」は、全長鎖に存在するアミノ酸の少なくとも一部が欠如したが、依然として抗原に特異的に結合できる抗体の部分をいう。このような断片は、標的抗原に結合し、与えられたエピトープへの結合に対して無損傷抗体を含む他の抗原結合分子と競争できるという点で生物学的に活性である。抗原結合断片は、無損傷抗体のFc領域の不変重鎖ドメイン(つまり、抗体イソ型により、つまり、CH2、CH3およびCH4)を含まなくてもよい。抗原結合断片の例としては、scFv(single chain variable fragment)(例えば、scFv、(scFv)など)、Fab(fragment antigen binding)(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)など)、ドメイン抗体、ペプチボディ、ミニボディ、イントラボディ、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディまたはおよび単一鎖抗体などを含むが、これに限定されない。また、抗原結合断片は、scFv、またはscFvが免疫グロブリン(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgMなど)のFc部位と融合された融合ポリペプチド(scFv-Fc)または軽鎖の不変領域(例えば、カッパまたはラムダ)と融合された融合ポリペプチド(scFv-Cκ(カッパ不変領域)またはscFv-Cλ(ラムダ不変領域))であってもよいが、これに限定されない。
【0030】
用語、「重鎖(heavy chain)」は、抗原に特異性を付与するために、十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVおよび3個の不変領域ドメインCH、CHおよびCHとヒンジ(hinge)を含む全長重鎖およびその断片をすべて含む意味で解釈される。また、用語「軽鎖(light chain)」は、抗原に特異性を付与するための十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVおよび不変領域ドメインCを含む全長軽鎖およびその断片をすべて含む意味で解釈される。
【0031】
用語「相補性決定領域(Complementarity-determining regions、CDR)」は、抗体の可変領域のうち抗原との結合特異性または結合親和度を付与する部位をいう。一般に、重鎖可変領域に3個のCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)が存在し、軽鎖可変領域に3個のCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)が存在する。前記CDRは、抗体またはその断片が抗原またはエピトープに結合する上で主な接触残基を提供することができる。「フレームワーク領域(Framework region、FR)」は、重鎖および軽鎖の可変領域の非-CDR部分をいい、一般に、重鎖可変領域に4個のFR(FR-H1、FR-H2、FR-H3およびFR-H4)が存在し、軽鎖可変領域には4個のFR(FR-L1、FR-L2、FR-L3およびFR-L4)が存在する。与えられたCDRまたはFRの正確なアミノ酸配列の境界は、カバット(Kabat)ナンバリング体系、コチア(Chothia)ナンバリング体系、コンタクト(Contact)ナンバリング体系、IMGTナンバリング体系、Ahoナンバリング体系、AbMナンバリング体系など多数のよく知られた体系のいずれか1つを用いて容易に決定できる。
【0032】
用語「可変領域(variable region)」は、抗体を抗原に結合させるのに関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインを称する。重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域は、一般に類似の構造を有し、それぞれのドメインは、4個の保存されたフレームワーク領域(FR)および3個のCDRを含む。
【0033】
GUCY2C結合ポリペプチド、抗体、またはその抗原結合断片、融合タンパク質
本明細書で提供されるGUCY2C結合ポリペプチド、抗体またはその抗原結合断片は、下記を含むものであってもよい:
配列番号38~44からなる群より選択されたアミノ酸配列で表される重鎖CDR1(以下、CDR-H1)、配列番号45~53からなる群より選択されたアミノ酸配列で表されるCDR-H2、および配列番号54~65からなる群より選択されたアミノ酸配列で表されるCDR-H3を含む重鎖可変領域;
配列番号66~78からなる群より選択されたアミノ酸配列で表される軽鎖CDR1(以下、CDR-L1)、配列番号79~88からなる群より選択されたアミノ酸配列で表されるCDR-L2、および配列番号89~106からなる群より選択されたアミノ酸配列で表されるCDR-L3を含む軽鎖可変領域;
または前記重鎖可変領域および軽鎖可変領域の組み合わせ。
【0034】
本明細書で提供されるGUCY2C結合ポリペプチドは、抗体またはその抗原結合断片に含まれている各CDRのアミノ酸配列および組み合わせを下記の表1および表2に例示した:表1は重鎖可変領域を、表2は軽鎖可変領域の各CDRのアミノ酸配列を示したものである。
【表1】
【表2】
【0035】
一例において、前記GUCY2C結合ポリペプチドは、先に説明した重鎖CDRを含む重鎖可変領域、および軽鎖CDRを含む軽鎖可変領域を含むものであってもよい。前記重鎖可変領域は、前記のような重鎖CDRおよび免疫グロブリン(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgMなど)のフレームワークを含むものであってもよい(例、FR1-(CDR-H1)-FR2-(CDR-H2)-FR3-(CDR-H3)-FR4の構造)。前記軽鎖可変領域は、前記のような軽鎖CDRラムダ(Lambda)またはカッパ(Kappa)サブタイプのフレームワークを含むものであってもよい(例、FR1-(CDR-L1)-FR2-(CDR-L2)-FR3-(CDR-L3)-FR4の構造)。
【0036】
一具体例において、前記GUCY2C結合ポリペプチドは、先に説明した重鎖可変領域および軽鎖可変領域がペプチドリンカーを介するか、介さずに連結された単鎖ポリペプチドであるscFv(single chain variable fragment)であってもよい。
【0037】
前記ペプチドリンカーは、1~100個または2~50個の任意のアミノ酸からなるポリペプチドであってもよいし、その含まれているアミノ酸の種類は制限がない。例えば、前記ペプチドリンカーは、Gly、Asnおよび/またはSer残基を含むことができ、Thrおよび/またはAlaのような中性アミノ酸も含まれる。ペプチドリンカーに適したアミノ酸配列は、当業界にて公知である。一方、前記リンカーは、前記scFvのGUCY2Cの結合機能に影響を及ぼさない限度内で、その長さを多様に決定可能である。例えば、前記ペプチドリンカーは、Gly、Asn、Ser、ThrおよびAlaからなる群より選択された1種以上を計1~100個、2~50個、または5~25個を含んでなるものであってもよい。一例において、前記ペプチドリンカーは、(G4S)n(nは(G4S)の繰り返し数)であって、1~10の整数、例えば、2~5の整数)で表されるものであってもよい。
【0038】
一具体例において、前記scFv形態のGUCY2C結合ポリペプチドは、配列番号1~18から選択されたアミノ酸配列で表されるものであってもよいし、これらのアミノ酸配列を下記の表3に例示した:
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
(表3中、太い文字および下線で表示された領域は、順に、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を示す)
【0039】
他の具体例において、前記抗体またはその抗原結合断片は、先に説明した6個のCDRを含み、免疫グロブリン(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgMなど)およびラムダまたはカッパタイプに基づくものであってもよい。前記抗体は、単クローン抗体であってもよいし、動物(例えば、マウス、ラビットなど)由来抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体であってもよい。
【0040】
他の例は、GUCY2C結合ポリペプチドと免疫グロブリンのFcドメインとを含む融合タンパク質を提供する。
【0041】
前記GUCY2C結合ポリペプチドは、先に説明した通りである。前記免疫グロブリンのFcドメインは、哺乳類(例えば、ヒト、サルなどの霊長類、マウス、ラットなどの齧歯類など)の免疫グロブリン(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgMなど)のFcドメインであってもよい。前記Fcドメインは、ヒンジ領域を含むか、含まなくてもよいし、CH2、CH3、またはこれらのすべてを含むものであってもよい。本明細書で提供される融合タンパク質において、前記GUCY2C結合ポリペプチドと免疫グロブリンのFcドメインは、順序に関係なく連結可能であり、例えば、前記GUCY2C結合ポリペプチドは、免疫グロブリンのFcドメインのC末端またはN末端に連結されるか、2個以上のGUCY2C結合ポリペプチドが免疫グロブリンのFcドメインのC末端またはN末端のうちの1つ以上に連結されてもよい。前記GUCY2C結合ポリペプチドと免疫グロブリンのFcドメインポリペプチドは、リンカーを介して連結されるか、リンカーなしに直接連結されてもよい。
【0042】
本明細書で提供されるGUCY2C結合ポリペプチド、抗-GUCY2C抗体、またはその抗原結合断片は、GUCY2C(例えば、ヒトGUCY2C)に対する結合親和度(K)が、例えば、表面プラズモン共鳴(Surface plasmon resonance、SPR)で測定された場合を基準として、10mM以下、5mM以下、1mM以下、0.5mM以下、0.2mM、または0.15mM以下であってもよいし、例えば、0.001nM~10mM、0.005nM~10mM、0.01nM~10mM、0.05nM~10mM、0.1nM~10mM、0.5nM~10mM、1nM~10mM、0.001nM~5mM、0.005nM~5mM、0.01nM~5mM、0.05nM~5mM、0.1nM~5mM、0.5nM~5mM、1nM~5mM、0.001nM~1mM、0.005nM~1mM、0.01nM~1mM、0.05nM~1mM、0.1nM~1mM、0.5nM~1mM、1nM~1mM、0.001nM~0.5mM、0.005nM~0.5mM、0.01nM~0.5mM、0.05nM~0.5mM、0.1nM~0.5mM、0.5nM~0.5mM、1nM~0.5mM、0.001nM~0.2mM、0.005nM~0.2mM、0.01nM~0.2mM、0.05nM~0.2mM、0.1nM~0.2mM、0.5nM~0.2mM、1nM~0.2mM、0.001nM~0.15mM、0.005nM~0.15mM、0.01nM~0.15mM、0.05nM~0.15mM、0.1nM~0.15mM、0.5nM~0.15mM、または1nM~0.15mMであってもよい。
【0043】
他の例は、先に説明した抗体またはその抗原結合断片または融合タンパク質と、薬物とが接合された接合体を提供する。前記薬物は、抗癌剤、造影剤などからなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0044】
前記抗癌剤は、メイタンシン(maytansine)、アウリスタチン(auristatin)系薬物、カリケアマイシン(calicheamycin)系薬物、ピロロベンゾジアゼピン(pyrrolobenzodiazepine)系薬物、ズオカルマイシン(duocarmycin)、ドセタキセル(Docetaxel)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、カルボプラチン(パラプラチン)[Carboplatin(paraplatin)]、シスプラチン(Cisplatin)、シクロホスファミド(Cyclophosphamide)、イホスファミド(Ifosfamide)、ニドラン(Nidran)、窒素マスタード(Nitrogen mustard)、メクロレタミン塩酸塩(Mechlorethamine HCL)、ブレオマイシン(Bleomycin)、マイトマイシンC(Mitomycin C)、シタラビン(Cytarabine)、フルオロウラシル(Flurouracil)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、トリメトレキサート(Trimetrexate)、メトトレキサート(Methotrexate)、エトポシド(Etoposide)、ビンブラスチン(Vinblastine)、ビノレルビン(vinorelbine)、アリムタ(Alimta)、アルトレタミン(Altretamine)、プロカルバジン(Procarbazine)、パクリタキセル(タキソール)(Paclitaxel(Taxol))、タキソテール(Taxotere)、トポテカン(Topotecan)、イリノテカン(Irinotecan)などからなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに制限されるわけではない。前記造影剤は、酸化鉄(iron oxide)、ガドリニウム(gadolinium)、放射性同位元素(例、ヨード、金、タリウム、パラジウム、セシウム、イットリウム、ガリウム、銅、ジスプロシウム、ルビジウム、ルテニウム、レニウム、フルオリン、ビスマスなど)などのようなMRI(磁気共鳴映像)造影剤およびPET(Positron Emission Tomography、陽電子断層撮影)造影剤などから選択された1種以上であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0045】
キメラ抗原受容体(Chimeric antigen receptor;CAR)、キメラ抗原受容体発現細胞
他の例は、GUCY2C結合ポリペプチドを含むキメラ抗原受容体(Chimeric antigen receptor;CAR)を提供する。前記GUCY2C結合ポリペプチドは、他のCAR成分と共に単鎖の一部として発現するように操作できるため、キメラ抗原受容体への使用に適することができる。前記キメラ抗原受容体は、GUCY2C特異的なものであってもよい。
【0046】
キメラ抗原受容体は、典型的にGUCY2C結合ポリペプチドを含む細胞外ドメイン(extracellular domain;ectodomain);膜貫通ドメイン(transmembrane domain);細胞内シグナル伝達ドメイン(intracellular signaling domainまたはT cell activation domain;endodomain)を含むことができる。また、前記細胞外ドメインは、前記ポリペプチドと膜貫通ドメインとの間にスペーサ領域(またはヒンジ領域)を追加的に含むことができる。さらに、キメラ抗原受容体は、1個以上の共刺激ドメイン(co-stimulatory domain)をさらに含むことができ、好ましくは、共刺激ドメインが膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間に位置することができる。
【0047】
したがって、好ましい一例として、キメラ抗原受容体は、GUCY2C結合ポリペプチドを含む細胞外ドメイン;膜貫通ドメイン;1個以上の共刺激ドメイン;および細胞内シグナル伝達ドメインを含むことができる。それぞれのドメインは、異種であってもよい。つまり、異なるタンパク質鎖に由来する配列から構成される。それぞれのドメインは、短いオリゴ-またはポリペプチドリンカー、例えば、2~10個のアミノ酸長のリンカーで連結される。また、キメラ抗原受容体は、各ドメインが連結された1つのポリペプチド鎖からなる。
【0048】
細胞外ドメインは、前述のようなGUCY2C結合ポリペプチドを含み、これは癌細胞表面に発現するGUCY2Cを認知する。
【0049】
細胞外ドメインは、スペーサー領域(またはヒンジ領域)をさらに含むことができる。スペーサー領域は、GUCY2C結合ポリペプチドと膜貫通ドメインとの間に位置することができる。スペーサー領域は、GUCY2C結合ポリペプチドがキメラ抗原受容体を発現する免疫細胞(以下、「CAR発現免疫細胞」とも称される;例えば、CAR-NK、CAR-T細胞などを含む)の細胞膜と一定の距離をおいてより柔軟に標的抗原を認識できるようにする。スペーサー領域は、典型的にポリペプチドであってもよく、10個以上のアミノ酸長、例えば、10~300個のアミノ酸長、10~250のアミノ酸長、10~200のアミノ酸長、10~150のアミノ酸長、10~100のアミノ酸長、10~50のアミノ酸長を有することができるが、これに限定されない。
【0050】
スペーサー領域は、CD8αまたはCD28のヒンジ部位、または免疫グロブリン(IgG)の不変領域などを例示することができ、これらによるオフ-ターゲット効果を除去するために突然変異を導入することができる。例えば、免疫グロブリン不変領域は、IgGヒンジ単独、CH2および/またはCH3ドメインの全部または一部に由来でき、例えば、Fc領域であってもよい。IgG(IgG1、IgG2、IgG3、IGG4など)は、好ましくは、IgG2またはIgG4であってもよい。一部の実施形態において、スペーサーは、IgG2、IgG4、および/またはIgG2およびIgG4に由来するヒンジ、CH2およびCH3配列のうちの1つ以上を含有するキメラポリペプチドであってもよい。
【0051】
膜貫通ドメインは、細胞膜ドメインと細胞膜内部のシグナル伝達ドメインとを連結する役割を果たし、天然または合成供給源に由来できる。供給源が天然の場合に、ドメインは、任意の膜-結合または膜-横断タンパク質に由来できる。例えば、膜貫通ドメインは、T細胞受容体のアルファ、ベータまたはゼータ鎖、CD3エプシロン、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137またはCD154の膜貫通ドメインであってもよいが、これに限定されない。好ましい一例として、膜貫通ドメインは、CD28またはCD8の膜貫通ドメインであってもよいが、これに限定されない。供給源が合成の場合、合成膜貫通ドメインは、ロイシンおよびバリンのような疎水性残基を含むことができ、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンなどを各末端に含むことができるが、これに限定されない。
【0052】
共刺激ドメインは、共刺激シグナルが伝達される部位で、CAR発現免疫細胞が免疫反応を起こし、自己増殖をするようにシグナルを伝達する部位である。これは、CAR発現免疫細胞の増殖、細胞毒性、持続的な反応、寿命延長などを向上させるために選択的に導入可能である。共刺激ドメインは、CD28、OX-40(CD134)、4-1BB(CD137)、CD2、CD7、CD27、CD30、CD40、PD-1、ICOS、LFA-1(CD11a/CD18)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3エプシロン、CD247、CD276(B7-H3)、LIGHT、(TNFSF14)、NKG2C、Igアルファ(CD79a)、DAP-10、Fcガンマ受容体、MHCクラス1分子、TNF受容体タンパク質、イムノグロブリンタンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、SLAM(signaling lymphocytic activation molecule)、活性化NK細胞受容体、BTLA、トールリガンド受容体、ICAM-1、B7-H3、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、LIGHT、HVEM(LIGHTR)、KIRDS2、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAMF1(CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、またはCD19aのシグナル伝達部位から選択された1種以上、例えば、1種、2種または3種であってもよいが、これに限定されない。好ましい実施形態としては、CD28、OX-40(CD134)、4-1BB(CD137)、CD27またはICOSのシグナル伝達部位から選択された1種以上、例えば、1種、2種または3種であってもよいが、これに限定されない。
【0053】
細胞内シグナル伝達ドメインは、GUCY2C結合ポリペプチドに結合した抗原に対して免疫細胞の免疫反応を活性化させる部位である。前記シグナル伝達ドメインは、免疫細胞受容体(例、T細胞受容体(TCR)など)の成分であるか、チロシン-ベースの活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif、ITAM)として知られたシグナル伝達モチーフを含有することができる。その例として、シグナル伝達ドメインは、TCRまたはCD3ゼータ、FcRガンマ、CD3ガンマ、CD3デルタおよびCD3エプシロンに由来するシグナル伝達ドメインであってもよいが、これに限定されない。好ましい例としては、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインであってもよいが、これに限定されない。細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞外ドメインのGUCY2C結合ポリペプチド部位が標的に結合時、CAR発現免疫細胞を活性化することができる。例えば、CARは、免疫細胞(例えば、NK細胞、T細胞など)の機能、例えば、細胞溶解活性またはT-ヘルパー活性を刺激し、サイトカインまたは他の因子の分泌を誘導することができる。
【0054】
一部の実施形態において、CARは、シグナル配列を含む形態で発現できる。また、CARは、発現をモニタリングするのに有用な追加配列、例えば、2Aペプチドのようなリボソームスキップ(skip)配列または切断型細胞表面ポリペプチド(tHER2またはtEGFRまたは切断されたPSMAなど)と共に発現できる。
【0055】
前記キメラ抗原受容体において、外部ドメイン(抗原結合ドメインおよびスペーサードメイン)、膜貫通ドメイン、および内部ドメイン(任意の1個の補助刺激因子または2個のうちの少なくとも1個以上の補助刺激因子、およびシグナル伝達ドメイン)は、N末端からC末端の方向またはC末端からN末端の方向に順に連結された単鎖ポリペプチドであってもよい。
【0056】
他の例は、前記キメラ抗原受容体を含む免疫細胞を提供する。前記免疫細胞は、前記GUCY2C特異的キメラ抗原受容体を細胞表面に発現するGUCY2C特異的免疫細胞であってもよい。一例において、前記免疫細胞は、前記キメラ抗原受容体を発現するように遺伝的に操作された細胞、例えば、前記キメラ抗原受容体の暗号化ポリヌクレオチドまたはこれを含む組換えベクター(発現ベクター)が導入された免疫細胞であってもよい。
【0057】
免疫細胞は、T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(Tumor Infiltrating Lymphocyte、TIL)、NK(Natural killer)細胞、TCR(T cell antigen receptor)-発現細胞、樹状細胞、またはNK-T細胞を含むが、これに限定されない。また、免疫細胞は、ヒト誘導万能幹細胞(iPSC)に由来するものであってもよい。免疫細胞は、公知の任意の供給源に由来できる。例えば、免疫細胞は、造血幹細胞集団から試験管内分化したり、患者から得られたりする。免疫細胞は、例えば、末梢血液単核細胞(PBMC)、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸膜滲出、脾臓組織、および腫瘍から得られる。また、免疫細胞は、関連技術分野にて入手可能な1種以上の免疫細胞株に由来できる。前記免疫細胞は、哺乳類(例えば、ヒト、サルなどの霊長類、マウス、ラットなどの齧歯類など)由来の細胞であってもよい。
【0058】
免疫細胞は、自家または同種であってもよい。自家は、治療対象患者に由来するものをいう。同種は、治療対象患者と同じ種の他の個体に由来するものをいう。
【0059】
また、免疫細胞は、ヒト誘導万能幹細胞(iPSC)に由来するものであってもよい。iPSCに由来する免疫細胞は、自家または同種免疫細胞に比べて自体増殖が可能で大量増殖が容易であり、すべての人に適用可能な汎用的な細胞治療剤の作製が可能であり、均質な生産とコスト節減が可能という利点がある。
【0060】
免疫細胞は、微細注入、電気穿孔、超音波穿孔、バイオリスティック(例えば、遺伝子銃)、脂質形質感染、重合体形質感染、カルシウムホスフェート沈殿、原形質体融合、リポソーム-媒介形質感染、ナノ粒子またはポリフレックスなどの方法を用いてベクターによって形質感染または形質導入されるが、これに限定されない。
【0061】
本明細書において、用語「ナチュラルキラー細胞(Natural Killer cells)」または「NK細胞」は、先天性免疫系の主要成分を構成する細胞毒性リンパ球であって、大型顆粒リンパ球(large granular lymphocyte、LGL)で定義され、リンパ系前駆細胞(common lymphoid progenitor、CLP)生成BおよびTリンパ球から分化した第3の細胞を構成する。前記「ナチュラルキラー細胞」または「NK細胞」は、任意の組織供給源(source)に由来する追加的な変形がないナチュラルキラー細胞を含み、成熟したナチュラルキラー細胞だけでなく、ナチュラルキラー前駆細胞を含むことができる。前記ナチュラルキラー細胞は、インターフェロンまたは大食細胞-由来サイトカインに対する反応で活性化し、ナチュラルキラー細胞は、「活性化受容体」および「抑制性受容体」で標識される、細胞の細胞毒性活性を制御する2タイプの表面受容体を含む。ナチュラルキラー細胞は、任意の供給源、例えば、胎盤組織、胎盤灌流液、臍帯血、胎盤血、末梢血、脾臓、肝などからの造血細胞、例えば、造血幹または前駆体から生成される。
【0062】
前記用語「受容体」は、特定の物質と結合するNK細胞の活性を変化させるすべての分子をいう。前記特定の物質は、化学的組成物、体内由来または人工的な特定のタンパク質、ペプチド、コレステロール、糖タンパク質を含み、他の免疫細胞またはNK細胞自らによるサイトカインまたはケモカイン、または標的細胞またはNK細胞自らの特定の受容体または膜タンパク質を含むことができる。例えば、前記受容体は、NK細胞の細胞表面に位置し、特定の物質と結合して細胞内にシグナル伝達してNK細胞の活性を起こす場合だけでなく、細胞膜を通過して細胞膜内面または細胞質に存在する受容体であって、外部の特定の刺激物質と結合してシグナル伝達作用を起こしうるすべての受容体を含む。前記受容体の例としては、CD16、CD25、CD69、CD117、NKG2D、CD94/NKG2A、2B4(CD244)、DNAM-1(CD226)、CD2、CXCR3、NKp30、NKp44、NKp46およびNKp80がありうるが、これに限定されない。前記受容体のうちCD117の発現が低く、CD94/NKG2Dの発現が高い場合、NK細胞が成熟表現型(maturation phenotype)を示すと判断することができる。前記「受容体」には、サイトカイン関連受容体の「サイトカイン受容体」も含まれ、サイトカイン受容体には、IL-15Ra、IL-18Ra、CD122、PD-1(CD279)およびICAM-1(CD54)が含まれるが、これに限定されない。
【0063】
前記NK細胞は、パーフォリン(Perforin;Prf1)、グランザイムB(Granzyme B;GzmB)、インターフェロン-ガンマ(Interferon-γ;IFN-γ)、腫瘍壊死因子-アルファ(Tumor Necrosis Factor-α;TNF-α)などのサイトカイン分泌により直接的に標的癌細胞死滅(Apoptosis)を媒介することによって癌細胞を殺傷することができる。したがって、NK細胞において前記細胞死滅過程での主な因子であるIFN-γ、グランザイムB(granzyme B)およびパーフォリン(perforin)を含むエフェクター分子(Effector molecule)の分泌程度を確認してNK細胞の殺傷能力を確認することができる。
【0064】
ポリヌクレオチド、組換えベクター、組換え細胞
本明細書において、先に説明したGUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、およびキメラ抗原受容体、およびこれを暗号化するポリヌクレオチドは、組換え的または合成的に生産されたものであってもよい。
【0065】
他の例は、前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、またはキメラ抗原受容体を暗号化するポリヌクレオチドを提供する。一具体例において、前記ポリヌクレオチドは、ヒトでの発現のためにコドン最適化されたものであってもよい。
【0066】
一例において、配列番号1~18のアミノ酸配列で表されるGUCY2C結合ポリペプチドを暗号化するポリヌクレオチドは、配列番号20~37の核酸配列で表されるものであってもよい。
【0067】
他の例は、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを提供する。前記組換えベクターは、前記ポリヌクレオチドを宿主細胞で発現させるための発現ベクターであってもよい。他の例は、前記ポリヌクレオチドまたは組換えベクターを含む組換え細胞を提供する。前記組換え細胞は、宿主細胞に前記ポリヌクレオチドまたは組換えベクターが導入されたものであってもよい。
【0068】
他の例は、前記ポリヌクレオチドを適切な宿主細胞で発現させる段階を含むGUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、またはキメラ抗原受容体の製造方法を提供する。前記発現させる段階は、前記ポリヌクレオチドを含む組換え細胞を培養する段階を含むことができる。
【0069】
用語「ベクター(vector)」は、宿主細胞で目的遺伝子(DNAまたはRNA)を発現させるための手段を意味する。例えば、プラスミドベクター、コスミドベクターおよびバクテリオファージベクター、ウイルスベクターなどを例示することができる。一具体例において、前記ベクターは、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ-関連ウイルスベクター(AAV)、ムリン白血病ウイルスベクター、SFGベクター、バキュロウイルスベクター、エプスタインバールウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ワクチニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクターなどからなる群より選択されたウイルスベクターであってもよいが、これに制限されるわけではない。一具体例において、前記組換えベクターは、当業界にて時々使用されるプラスミド(例えば、pSC101、pGV1106、pACYC177、ColE1、pKT230、pME290、pBR322、pUC8/9、pUC6、pBD9、pHC79、pIJ61、pLAFR1、pHV14、pGEXシリーズ、pETシリーズおよびpUC19など)、ファージ(例えば、λgt4λB、λ-Charon、λΔz1およびM13など)またはウイルス(例えば、SV40など)を操作して作製できる。
【0070】
前記組換えベクターにおいて、前記核酸分子は、プロモーターに作動的に連結可能である。用語「作動可能に連結された(operatively linked)」は、ヌクレオチド発現調節配列(例えば、プロモーター配列)と他のヌクレオチド配列との間の機能的な結合を意味する。前記調節配列は、「作動可能に連結(operatively linked)」されることによって、他のヌクレオチド配列の転写および/または解読を調節することができる。
【0071】
前記組換えベクターは、典型的にクローニングのためのベクターまたは発現のためのベクターとして構築される。前記発現用ベクターは、当業界にて植物、動物または微生物で外来のタンパク質を発現するのに用いられる通常のものを使用することができる。前記組換えベクターは、当業界にて公知の多様な方法により構築可能である。
【0072】
前記組換えベクターは、原核細胞または真核細胞を宿主として構築される。例えば、使用されるベクターが発現ベクターであり、原核細胞を宿主とする場合には、転写を進行させることができる強力なプロモーター(例えば、pLλプロモーター、CMVプロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、tacプロモーター、T7プロモーターなど)、解読の開始のためのリボソーム結合サイトおよび転写/解読終結配列を含むことが一般的である。真核細胞を宿主とする場合には、ベクターに含まれる真核細胞で作動する複製原点は、f1複製原点、SV40複製原点、pMB1複製原点、アデノ複製原点、AAV複製原点およびBBV複製原点などを含むが、これに限定されるものではない。また、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオニンプロモーター)または哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクチニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、HSVのtkプロモーターなど)が使用可能であり、転写終結配列としてポリアデニル化配列を一般に有する。
【0073】
前記組換え細胞は、前記組換えベクターを適切な宿主細胞に導入させることによって得られたものであってもよい。前記宿主細胞は、前記組換えベクターを安定かつ連続的にクローニングまたは発現させることができる細胞であって、当業界にて公知のいかなる宿主細胞も使用可能であり、原核細胞としては、例えば、E.coli JM109、E.coli BL21、E.coli RR1、E.coli LE392、E.coli B、E.coli X1776、E.coli W3110などの大腸菌、バチルスサブティリス、バチルスチューリンゲンシスのようなバチルス属菌株、そしてサルモネラティピムリウム、セラチアマルセッセンスおよび多様なシュードモナス種のような腸内菌と菌株などがあり、真核細胞に形質切換させる場合には、宿主細胞として、酵母(Saccharomyces cerevisiae)、昆虫細胞、植物細胞および動物細胞、例えば、Sp2/0、CHO(Chinese hamster ovary)K1、CHO DG44、CHO S、CHO DXB11、CHO GS-KO、PER.C6、W138、BHK、COS-7、293、HepG2、Huh7、3T3、RIN、MDCK細胞株などが使用可能であるが、これに制限されるわけではない。
【0074】
前記核酸分子またはこれを含む組換えベクターの宿主細胞内への運搬(導入)は、当業界にて広く知られた運搬方法を使用することができる。前記運搬方法は、例えば、宿主細胞が原核細胞の場合、CaCl方法または電気穿孔方法などを使用することができ、宿主細胞が真核細胞の場合には、微細注入法、カルシウムホスフェート沈殿法、電気穿孔法、リポソーム-媒介形質感染法および遺伝子ボンバードメントなどを使用することができるが、これに限定しない。
【0075】
前記形質転換された宿主細胞を選別する方法は、選択標識によって発現する表現型を用いて、当業界にて広く知られた方法により容易に実施することができる。例えば、前記選択標識が特定の抗生剤耐性遺伝子の場合には、前記抗生剤が含まれている培地で形質転換体を培養することによって、形質転換体を容易に選別することができる。
【0076】
他の例は、前記核酸分子またはこれを含む組換えベクターを宿主細胞で発現させる段階を含む抗-GUCY2C抗体またはその抗原結合断片の製造方法を提供する。前記発現させる段階は、前記核酸分子(例えば、組換えベクターに含まれる)を含む組換え細胞を前記核酸分子の発現を許容する条件下で培養することによって行われる。前記製造方法は、前記発現させる段階または培養する段階の後に、培養培地から抗体または抗原結合断片を分離および/または精製する段階を含むものであってもよい。
【0077】
医薬用途
他の例は、前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、キメラ抗原受容体、これらを暗号化するポリヌクレオチド、および免疫細胞からなる群より選択された1種以上を有効成分として含むGUCY2C検出用組成物を提供する。
【0078】
他の例は、生物学的試料に前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、キメラ抗原受容体、これらを暗号化するポリヌクレオチド、および免疫細胞からなる群より選択された1種以上を接触させる段階を含む、GUCY2C検出方法を提供する。前記生物学的試料は、分離された細胞、組織、体液、およびこれらの培養物からなる群より選択された1種以上であってもよい。前記方法において、試料中のGUCY2Cの検出は、前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、キメラ抗原受容体、これらを暗号化するポリヌクレオチド、および免疫細胞とGUCY2Cとの反応確認(例えば、複合体形成確認)によって行われる。
【0079】
他の例は、前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、キメラ抗原受容体、これらを暗号化するポリヌクレオチド、および免疫細胞からなる群より選択された1種以上のGUCY2Cの検出に使用するための用途を提供する。
【0080】
他の例は、前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、キメラ抗原受容体、これらを暗号化するポリヌクレオチド、および免疫細胞からなる群より選択された1種以上を有効成分として含む癌の診断用組成物を提供する。
【0081】
他の例は、対象から得られた生物学的試料に前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、キメラ抗原受容体、これらを暗号化するポリヌクレオチド、および免疫細胞からなる群より選択された1種以上を接触させる段階を含む、癌の診断方法または癌の診断に情報を提供する方法を提供する。前記対象は、癌の診断を必要とする患者であってもよいし、前記生物学的試料は、細胞、組織、体液、およびこれらの培養物からなる群より選択された1種以上であってもよい。前記方法において、GUCY2Cが検出される場合、より具体的には、前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、キメラ抗原受容体、および免疫細胞とGUCY2Cとの複合体が検出される場合、前記生物学的試料が癌細胞を含んだり、前記生物学的試料が得られた患者が癌患者であると確認(決定、判断)したりすることができる。
【0082】
他の例は、前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、キメラ抗原受容体、これらを暗号化するポリヌクレオチド、および免疫細胞からなる群より選択された1種以上の癌の診断に使用するための用途または癌の診断用組成物の製造に使用するための用途を提供する。
【0083】
前記GUCY2C検出および/または複合体形成確認は、通常のタンパク質-タンパク質相互作用またはタンパク質-タンパク質間の複合体形成確認手段によって行われ、例えば、免疫クロマトグラフィー(Immunochromatography)、免疫組織化学染色、酵素結合免疫吸着分析(enzyme linked immunosorbent assay:ELISA)、放射線免疫測定法(radioimmunoassay:RIA)、酵素免疫分析(enzyme immunoassay:EIA)、蛍光免疫分析(Floresence immunoassay:FIA)、発光免疫分析(luminescence immunoassay:LIA)、ウェスタンブロッティング(Western blotting)、マイクロアレイ法などからなる群より選択された方法によって測定できるが、これに制限されるわけではない。
【0084】
前記生物学的試料は、対象(例えば、ヒト、サルなどの霊長類、マウス、ラットなどの齧歯類などを含む哺乳類)、または前記対象から分離されたり人工的に培養されたりした細胞、組織、体液(例えば、血液、血清、尿、唾液など)などであってもよい。
【0085】
他の例は、前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、接合体、キメラ抗原受容体、これらを暗号化するポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、前記組換えベクターを含む組換え細胞、および前記キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞からなる群より選択された1種以上を有効成分として含む、癌の予防および/または治療用薬学的組成物を提供する。
【0086】
他の例は、前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、接合体、キメラ抗原受容体、これらを暗号化するポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、前記組換えベクターを含む組換え細胞、および前記キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞からなる群より選択された1種以上の薬学的有効量を、癌の予防および/または治療を必要とする対象に投与する段階を含む、癌の予防および/または治療方法を提供する。
【0087】
他の例は、前記GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、接合体、キメラ抗原受容体、これらを暗号化するポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、前記組換えベクターを含む組換え細胞、および前記キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞からなる群より選択された1種以上の癌の予防および/または治療に使用するための用途または癌の予防および/または治療用薬学的組成物の製造に使用するための用途を提供する。
【0088】
本明細書で提供される薬学組成物は、有効成分(GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、キメラ抗原受容体、これらを暗号化するポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、前記組換えベクターを含む組換え細胞、および/または前記キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞)に加えて、薬学的に許容可能な担体を追加的に含むことができる。前記薬学的に許容可能な担体は、薬物の製剤化に通常用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイルなどからなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。前記薬学組成物はまた、薬学組成物の製造に通常使用される希釈剤、賦形剤、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などからなる群より選択された1種以上を追加的に含むことができる。
【0089】
前記薬学組成物、または前記抗体またはその抗原結合断片の有効量は、経口または非経口投与可能である。非経口投与の場合には、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、内皮投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与、または病変部位局所投与などで投与することができる。経口投与時、タンパク質またはペプチドは消化されるため、経口用組成物は、活性薬剤をコーティングしたり胃での分解から保護されるように剤形化されたりする。また、前記組成物は、活性物質が標的細胞(例えば、癌細胞)に移動できる任意の装置によって投与可能である。
【0090】
前記抗-GUCY2C抗体またはその抗原結合断片は、薬学的有効量で前記薬学組成物中に含まれたり患者に投与されたりする。本明細書において、「薬学的有効量」は、前記有効成分(GUCY2C結合ポリペプチド、GUCY2Cに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、キメラ抗原受容体、および/または免疫細胞)が目的とする効果(例えば、抗癌効果)を発揮できる有効成分の量を意味することができる。前記薬学的有効量は、患者の年齢、体重、性別、病的状態、飲食、排泄速度、反応感応性、製剤化方法、投与時間、投与間隔、投与経路、投与方式などの要因によって多様に処方可能である。例えば、前記有効成分の1日投与量は、0.005ug/kg~1000mg/kg、0.005ug/kg~500mg/kg、0.005ug/kg~250mg/kg、0.005ug/kg~100mg/kg、0.005ug/kg~75mg/kg、0.005ug/kg~50mg/kg、0.01ug/kg~1000mg/kg、0.01ug/kg~500mg/kg、0.01ug/kg~250mg/kg、0.01ug/kg~100mg/kg、0.01ug/kg~75mg/kg、0.01ug/kg~50mg/kg、0.05ug/kg~1000mg/kg、0.05ug/kg~500mg/kg、0.05ug/kg~250mg/kg、0.05ug/kg~100mg/kg、0.05ug/kg~75mg/kg、または0.05ug/kg~50ug/kgの範囲であってもよいが、これに制限されるわけではない。前記1日投与量は、単位用量形態で1つの製剤に製剤化されたり、適切に分量して製剤化されたり、多用量容器内に入れて製造されてもよい。
【0091】
前記薬学組成物は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液、シロップ剤または乳化液の形態であるか、エキス剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤などの形態に剤形化されてもよいし、剤形化のために分散剤または安定化剤を追加的に含むことができる。
【0092】
本発明の適用対象患者は、ヒト、サルなどを含む霊長類、マウス、ラットなどを含む齧歯類などを含む哺乳類であってもよい。
【0093】
本明細書で提供される組成物および/または方法の診断および/または治療対象癌は、固形癌または血液癌であってもよいし、これに限定されないが、大腸癌、結腸癌、結腸直腸癌、直腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、卵巣癌、脳癌、肝癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、子宮癌、腎臓癌、腎芽細胞腫、皮膚癌、経口扁平上皮癌、表皮癌、鼻咽頭癌、頭頸部癌、骨癌、食道癌、膀胱癌、リンパ管癌(例えば、ホジキンリンパ腫または非-ホジキンリンパ腫)、胃癌、膵臓癌、睾丸癌、甲状腺癌、甲状腺小胞癌、黒色腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、中皮腫、骨肉腫、骨髄異形成症候群、間葉起源の腫瘍、軟組織肉腫、脂肪肉腫、胃腸基質肉腫、悪性末梢神経集腫瘍(MPNST)、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、間葉軟骨肉腫、リンパ肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、奇形癌腫、神経芽細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、皮膚の陽性腫瘍、または白血病であってもよい。肺癌は、例えば、小細胞肺癌腫(SCLC)または非-小細胞肺癌腫(NSCLC)であってもよい。白血病は、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)または慢性リンパ球性白血病(CLL)であってもよい。前記癌は、原発性癌または転移性癌であってもよい。前記癌は、GUCY2Cを発現または過発現する癌、例えば、GUCY2Cを発現または過発現する大腸癌、または大腸癌由来転移癌であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0094】
本明細書において、癌の治療は、癌細胞の増殖阻害、癌細胞死滅、転移抑制などのように癌の症状の悪化を防止したり緩和または好転させたり、癌を部分的または全部消滅させるすべての抗癌作用を意味するものであってもよい。
【0095】
一具体例において、治療対象患者は、2次的な抗-過剰増殖療法を受けている患者であってもよい。例えば、2次的な抗-過剰増殖療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、光線療法、冷凍療法、毒素療法、ホルモン療法、または外科手術であってもよい。
【0096】
一例において、本願のGUCY2C結合ポリペプチドを含むキメラ抗原受容体を含む免疫細胞を用いる抗癌治療は、健康な人または治療対象患者の血液から免疫細胞(例えば、NK細胞、T細胞など)を抽出した後、本願のGUCY2C結合ポリペプチドを含むキメラ抗原受容体を発現するように遺伝的に操作し、操作された免疫細胞を増幅培養し、培養した操作免疫細胞を患者に投与する一連の過程で行われる。
【0097】
好ましい実施形態として、健康な人または治療対象患者の血液から免疫細胞を抽出する段階は、例えば、血液から白血球成分分離採集(leukapheresisまたはaphresis)を用いて白血球を分離した後、免疫細胞を濃縮する過程を経て免疫細胞を抽出することができる。免疫細胞は、CD4/CD8構成レベルで特定の抗体ビーズ結合体やマーカーを用いて分離できる。代案的に、幹細胞からの分化により安定的に大量の免疫細胞を得ることも可能である。
【0098】
前記抽出された免疫細胞が本願で提供するキメラ抗原受容体を発現するように遺伝的に操作する段階は、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するようにデザインされた核酸分子をベクター、例えば、ウイルスベクター(レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターなど)を用いて免疫細胞に注入することができる。CARは、DNA形態で導入されてもよく、RNA形態で導入された後、逆転写酵素によってDNAに逆転写された後、免疫細胞のゲノムに統合されてもよい。
【0099】
前記操作された免疫細胞を増幅培養する段階は、当業界公知の培養技術により免疫細胞を培養、増殖(proliferation)および増幅(expansion)させることができる。この時、ウイルスの使用に対する安全性とよく作製されたCAR発現免疫細胞を選別する技術が要求される。
【0100】
最後に、操作免疫細胞を患者に再投与する段階は、例えば、注入(infusion)で行われる。一例として、CAR発現免疫細胞の注入前、患者は、白血球数値を低下させるために、シクロホスファミドまたはフルダラビンなどを用いたリンパ球除去調節化学療法を受けることができる。また、CAR発現免疫細胞の持続性を向上させるために、IL-2などのサイトカインを共に投与することができる。
【0101】
患者に投与された操作された免疫細胞は、GUCY2Cを発現する腫瘍細胞に対して免疫反応を媒介することができる。このような免疫反応には、免疫細胞の活性化、免疫細胞によるIL-2およびIFN-ガンマなどのサイトカインの分泌、腫瘍抗原を認識する免疫細胞の増殖および拡張、および標的-陽性細胞の免疫細胞-媒介された特異的な死滅(腫瘍除去)を含む。例えば、CAR発現免疫細胞においてCARがGUCY2Cに特異的に結合すれば、免疫細胞は、CD3ゼータのチロシン-ベースの活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif、ITAM)のリン酸化により活性化され、以後、免疫細胞の増殖、細胞毒性および/またはサイトカイン分泌が誘導される。
【0102】
このようにCAR発現免疫細胞を用いた抗癌療法は、根本的に患者の免疫体系を活性化して持続的な抗癌効果を発揮するため、継続投与しなくてもよいし、患者自身の免疫細胞を用いることによって、患者個人に合わせた治療が可能というメリットがある。
【0103】
本明細書で提供される組成物の投与は、疾病状態の発病または進行を阻害したり、中止させたり、遅延させたり、予防する免疫反応を起こしたり、誘導したり促進することができる。
【発明の効果】
【0104】
本明細書で提供されるGUCY2Cに高い親和度で結合する結合断片(抗体、scFv)およびこれを含むキメラ抗原受容体(CAR)を表面に発現する免疫細胞は、癌、特にGUCY2Cを発現する癌に対する優れた抗癌効果を有する抗癌剤として有効に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1A】ELISAを用いたscFvのGUCY2Cに対する結合親和度の測定過程を概略的に示す模式図である。
図1B】ELISAで測定されたscFvの3種のGUCY2C(ヒトGUCY2C、サルGUCY2C、およびマウスGUCY2C)に対する結合親和度を示すグラフである。
図2A】ELISAを用いたscFvのGUCY2Cに対する親和性ランキングの測定過程を概略的に示す模式図である。
図2B】ELISAで測定されたscFvのGUCY2Cに対する親和性ランキングの測定結果を示す図であって、scFv5nMの結果を示す。
図2C】ELISAで測定されたscFvのGUCY2Cに対する親和性ランキングの測定結果を示す図であって、scFv50nMの結果を示す。
図3A】scFvのGUCY2C細胞に対する細胞結合アッセイの結果を示す。
図3B】scFvのGUCY2C細胞に対する細胞結合アッセイの結果得られたMFI(mean of fluorescence intensity)を示すグラフである。
図4A】iPSCから分化したナイーブNK細胞のNK細胞表面マーカーの発現をフローサイトメトリー分析により確認した結果を示すグラフである。
図4B】iPSCから分化したナイーブNK細胞のNK細胞表面マーカーの発現を確認した結果を示すグラフである。
図4C】iPSCから分化したナイーブNK細胞のNK細胞の細胞死滅過程のエフェクター分子(Effector molecule)の発現を確認した結果を示すグラフである。
図5】anti-GUCY2C CARが導入されたNK細胞での抗-GUCY2C CARの発現量を示すグラフである。
図6A】GUCY2Cを発現しない標的細胞に対する抗-GUCY2C-CAR発現NK細胞の細胞毒性を示すグラフである。
図6B】GUCY2Cを発現する標的細胞に対する抗-GUCY2C-CAR発現NK細胞の細胞毒性を示すグラフである。
図7】試験管内(in vitro)でGUCY2Cを発現しない標的細胞およびGUCY2Cを発現する標的細胞に対する抗-GUCY2C-CARを発現するNK細胞のCAR-依存的殺傷能力を示すグラフである。
図8】生体内(in vivo)で抗-GUCY2C-CARを発現するNK細胞およびCD19標的CAR-NK細胞のCAR-依存的殺傷能力を示すグラフである。GUCY2CCAR-NKは、抗-GUCY2C-CARを発現するNK細胞を意味する。
図9A】抗-GUCY2C-CARを発現するNK細胞を、GUCY2Cを発現する標的細胞と共培養した時、分泌されたIFN-γ量が顕著に高くなることを確認したグラフである。グラフ中の「No NK」は、NK細胞を処理しない実験群で0値に相当する。
図9B】GUCY2C結合scFV(5F9、D08、G07)を含むCAR-NK細胞をHT29-GUCY2C細胞およびGUCY2C陽性癌細胞のT84細胞と共培養した時、IFN-γ量が顕著に高くなることを確認したグラフである。グラフ中の「No NK」は、NK細胞を処理しない実験群で0値に相当する。
図10】抗-GUCY2C-CARを発現するNK細胞投与時の生存率を対照群(ビヒクル投与群)の生存率と比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0106】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これは例示に過ぎず、本発明の範囲を制限しようとするものではない。下記の実施例は発明の本質的な要旨を逸脱しない範囲で変形できることは当業者にとって自明である。
【0107】
実施例1:GUCY2C結合scFvの作製
ヒトGUCY2C(R&D Systems、Cat no.2157-GC;配列番号112)をCD4(配列番号115)と接合させて組換え抗原を用意し、scFvライブラリーから前記抗原に特異的なscFvを分泌するクローンをスクリーニングして、GCUCY2Cに特異的に結合する18個のscFvを確保した。
【0108】
前記のように得られたscFvおよびその暗号化核酸分子を下記の表4および表5にそれぞれ示した:
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
(表4中、太い文字および下線で表示された領域は、順に、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を示す)
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【表5-6】
【表5-7】
【表5-8】
【0109】
実施例2:選別されたscFvのGUCY2Cに対する結合親和度
前記実施例1で作製されたscFvの抗原GUCY2Cに対する結合親和度をELISAにより測定した。結合親和度測定のための抗原として、実施例1で用意されたヒトGUCY2C組換え抗原と共に、同様の方法で用意されたサルGUCY2C組換え抗原およびマウスGUCY2C組換え抗原を用いて、各抗原に対する親和度を測定した(図1A参照)。
【0110】
より具体的には、用意されたヒトGUCY2C(配列番号112)、サルGUCY2C(配列番号114)、そしてマウスGUCY2C(配列番号113)をそれぞれrCD4(配列番号115)と融合させたGUCY2C-rCD4融合タンパク質をNunc MaxisorpTM 96ウェルプレートのストレプトアビジンがコーティングされた箇所に結合させる。洗浄バッファーで、結合しない合成タンパク質をすべて除去した後に、培養液で得られた抗-GUCY2C scFVを各ウェルでインキュベートする。その後、Eu-抗-タグAbを用いてDELFIA増強された信号を読み出して親和度を測定した。
【0111】
前記使用された抗原の情報は、次の通りである:
【表A】
【0112】
また、前記実施例1で作製された18種のscFvを2つの濃度(5nM、50nM)で用意し、これをそれぞれELISAの一次抗体として用いてGUCY2C抗原を検出するようにして、各クローン間のbinding affinity結合親和性の強度を測定し、これを用いてランキングを確保した。より具体的には、MaxiSorbプレートに抗-FLAG抗体をコーティングし、先に得られたscFvを添加して結合させた後、洗浄過程により残存したscFvを除去した。これにビオチン化されたヒト-GUCY2C-rCD4タンパク質をインキュベートして結合させた後、ストレプトアビジン-Europlumにより発色過程を有し、DELFIA増強により信号を読み出して抗原に対する親和性を測定した。
【0113】
また、前記実施例1で作製された18種のscFvのGUCY2C抗原に対する親和力をSPR(Surface plasmon resonance)分析法で測定した。より具体的には、HCAチップにプロテイン-Gを150ug/mlの濃度で付着させた後、5mMのscFVとantigenを800nMから12.5nMまでの多様な濃度で40ul/secの速度で流した。MASS2(Sierra SPR-32;Bruker)を用いて、25℃の条件で結合時間2分と解離時間10分でSPR assayを行った。Software R3でデータを分析した。
【0114】
前記のように測定された18種のscFv(配列番号1~18)および陽性対照群scFv(5F9 scFv-Fc;配列番号19)の3つの抗原(ヒトGUCY2C、サルGUCY2C、およびマウスGUCY2C)に対する結合親和度および親和性ランキングの結果を表6および図1B(結合親和度、ELISA)、2B(親和性ランキング、5nM)および2C(親和性ランキング、50nM)に示した:
【表6-1】
【表6-2】
【0115】
表6および図1Bに示されているように、18種のscFvとも、ヒトGUCY2Cに対する結合親和度がサルGUCY2C、およびマウスGUCY2Cに対する結合親和度より顕著に高く、ヒトGUCY2Cに特異的に結合することを確認した。また、表6および図2Bおよび2Cに示されているように、相対的にヒトGUCY2Cに対して親和力の高いscFvでサルGUCY2Cに対しても親和力があることを確認した。SPRの結果を総合的に判断する場合、A10のscFVが比較的高い結合力を有し、ヒトとサルのGUCY2Cに対する親和力を有していることが確認された。
【0116】
実施例3:細胞結合アッセイ
GUCY2Cが自然に発現する細胞を用いて、実施例1で作製された18種のscFvが実際に細胞表面に発現するGUCY2Cを検出できるかを確認した。このために、GUCY2C陽性癌細胞のT84 colon carcinoma細胞(ATCC(商標) CCL-248TM)を使用した。対照群に、GUCY2C陰性の乳癌細胞T-47D(ATCC(商標) HTB-133TM)を使用した。
【0117】
トリプシン-EDTAを用いて前記2つの細胞株を分離した後、FACSバッファー(1x PBS+2%BSA)に入れておいた。前記18種のscFvおよび陽性対照群5F9 scFvそれぞれ10ug/mLをT84およびT-47D細胞と共に氷上で1時間培養した。細胞に結合したscFvは、5ug/mLのIgG-Fc-PEAb(BioLegend;409304)を用いて検出した。細胞をToPro(商標)3(live/dead stain)と共に培養した後、フローサイトメトリー分析器で読み取った。得られたデータは、FlowJo10.5 software(FlowJo LLC)を用いてフローティングした。
【0118】
前記得られた結果を図3Aに示した。
【0119】
また、前記フローサイトメトリー分析で得られたMFI(mean of fluorescence intensity)を図3Bに示した。
【0120】
図3Aおよび3Bに示されているように、A10 scFv(配列番号9)が陽性対照群の5F9と同等程度にGUCY2C発現T84細胞に結合することが確認され、B01 scFv(配列番号11)、B11 scFv(配列番号15)、およびB12 scFv(配列番号16)も結合の可能性を示した。
【0121】
実施例4:抗-GUCY2C-CARを発現する免疫細胞(NK細胞)の製造
4.1.レンチウイルスの作製
CAR-NK細胞は、NK細胞表面にキメラ抗原受容体(CAR)が発現した形態であり、本実施例に使用されたキメラ抗原受容体は、GUCY2Cに結合するscFvポリペプチド(実施例1および表4参照)を含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン(CD28;encoded by GenBank Accession no.NM_006139.4)、細胞内シグナル伝達ドメイン(CD3ゼータ;encoded by GenBank Accession no.NM_001378516.1)から構成されている(anti-GUCY2C-CAR)。
【0122】
LentiX-293T(#632180 Clonthech)にLipofectamine3000transfection kit(#L3000015、Invitrogen)とanti-GUCY2C CAR(GUCY2C結合scFv-CD28-CD3ゼータ)を発現するプラスミドを処理してトランスフェクションし、トランスフェクションの翌日から2日間上層液を得た。Lenti-X concentrator(#631232、Clonetech)を用いてウイルスを濃縮した。得られた沈殿物をCTS-PBSに溶かして-80℃に保管した。
【0123】
viral RNA isolation kit(#740956、Macherey-Nagel)を用いてウイルスからRNAを抽出した後、Lenti-X qRT-PCR titration kit(#631235、Takara)を用いてウイルス力価を測定した。
【0124】
実施例4.2.NK細胞の用意
iPSC(CMC-hiPSC-003、疾病管理本部)をmTeSRTM Plus(STEMCELL Technoology、100-0276)に2~3日間培養して約直径500μmのaggregateが形成されると、培養液をSTEMdiffTM Hematopoietic Kit(STEMCELL Technoology、05310)のMedium Aに入れ替えて、造血幹細胞(HSC)の分化が起こるようにした。Medium Aで3日間培養後、同一キットのMedium Bで9日間追加培養してHSCを得た。この時、2~3日ごとに培養液中の半分を取り出し、同量の新しい培養液を添加して培養液を入れ替えた。
【0125】
HSCはStemSpanTM NK Cell Generation Kit(STEMCELL Technoology、09960)に含まれているLymphoid Differentiation Coating Materialで表面処理したプレートに移して、同一キット製品に含まれているLymphoid Progenitor Expansion Mediumで14日間培養し、3~4日ごとに培養液を半分ずつ入れ替えた。次に、NK Cell Differentiation Mediumで3~4日ごとに培養液を半分ずつ入れ替えて培養し、14日後にNK細胞を得た。
【0126】
実施例4.3.iPSCから分化したナイーブNK細胞の表面型特性の確認
前記実施例4.2で得られたiPSCから分化したナイーブNK細胞の分化が正常に行われた否かと表面型の形質およびNK細胞固有の機能(perforin、granzyme B、IFN)を有していることを確認するために、フローサイトメトリー分析によりNK細胞表面マーカーの発現を確認し、NK細胞の細胞死滅過程のエフェクター分子(Effector molecule)の発現を確認した。
【0127】
具体的には、前記実施例4.2で得られたiPSCから分化したナイーブNK細胞を、図4A図4Bに表示されたそれぞれの抗体と4℃で1時間インキュベートした後に、これをフローサイトメトリー分析器(FACS)で確認した。また、細胞内部に発現しているサイトカインを確認するために、permeablization kitを用いて細胞表面に穴を開けて固定液を用いて固定を経た後に、図4Cに表示された抗体(TNF-α、IFN-γ、perforin、Granzyme B)を用いて染色し、フローサイトメトリー分析器により分析した。
【0128】
前記得られた結果を図4A~4Cに示した。図4Aおよび4Bに示されているように、anti-GUCY2C CARを発現するNK細胞は、低いCD117発現と高いCD94/NKG2D発現を示してNK細胞の成熟表現型(maturation phenotype)を示しており、NK活性化受容体の発現が高く、サイトカイン受容体が正常発現していることを確認した。また、図4Cに示されているように、抗-GUCY2C CARを発現するNK細胞は、NK細胞の細胞死滅過程での主な因子であるIFN-γ、グランザイムB(granzyme B)およびパーフォリン(perforin)の発現が高いことを確認した。
【0129】
実施例4.4.抗-GUCY2C CARを発現するNK細胞の作製
前記のようにiPScからNK細胞を得る過程において、中間産物のHSC段階で、実施例4.1で用意された抗-GUCY2C CAR(GUCY2C結合scFv-CD28-CD3ゼータ)が搭載されたレンチウイルスをlentiboost(Sirion)と共にMOI3000で処理し、その翌日、NK細胞に前述の方法で分化を進行させた。
【0130】
前記分化したNK細胞におけるGUCY2C結合scFVとして、クローンID A12(配列番号3)、D08(配列番号9)、H07(配列番号11)、G07(配列番号15)、または5F9(配列番号19;陽性対照)を含むCARの発現を確認するために、FITCを接合したヤギ抗-ヒトFab抗体(#31628、Invitrogn)を1:100で使用し、4℃で20minインキュベートした。その後、FACSバッファー(2%FBS/PBS)で洗浄して、FACS分析により発現量を確認した(LSR fortessa、BD)。
【0131】
前記得られた結果を図5に示した。図5に示されているように、前記分化したNK細胞はすべてGUCY2C結合scFV(D08、G07、A12、H07)を発現することを確認した。
【0132】
実施例4.5.抗-GUCY2C-CARを発現するNK細胞の試験管内細胞毒性試験
GUCY2C遺伝子(NM_004963.4)をpLV-EF1α-puroRプラスミドにサブクローニングし、前記実施例4.1に記載された方式を参照してレンチウイルスを作製した。用意されたレンチウイルスをHT29細胞(ATCC HTB38TM)に形質導入してGUCY2Cを細胞表面に発現させ、2日後から2.5ug/mlの濃度のピューロマイシンで処理してGUCY2Cを発現する細胞のみ選別した。このような2週間の選択を経て、最終的にGUCY2Cを発現するHT29細胞株(HT-GUCY2C)を確保した。このように用意された標的細胞(HT29(ATCC HTB38TM)またはHT29-GUCY2C)をCFSE proliferation kit(Thermo Fisher、C34554)を用いて標識化した。
【0133】
PBSを用いて洗浄した後に、各比率のエフェクター細胞(抗-GUCY2C-CAR発現NK細胞)を100μl/ウェルとなるように96ウェルプレートに分注した。各標的細胞は固定し、E(エフェクター細胞):T(標的細胞)比に合わせてNK細胞数を調節して、E:T 比が10:1、3:1、1:1、0.5:1となるように用意した。この時、陰性対照のために、標的細胞のみがあるサンプルとエフェクター細胞のみがあるウェルも用意した。このように混合された細胞は、37℃のインキュベーターで4時間培養後、FACS用洗浄バッファー(10%FBS/PBS)で洗浄した後に、最終的にDAPI-FACSバッファー(DAPI final working 5μg/ml)70μl/ウェルでサンプルを用意した後に、10分後、FACS(Intellicyt(商標) iQue Screener PLUS)で分析した。分析された値を用いて、下記の数式により溶解活性を換算した。
【数1】
【0134】
前記得られた結果を、図6A(標的細胞がHT29細胞の場合の結果)および6B(標的細胞がGUCY2C発現HT29細胞の場合の結果)に示した。図6Aおよび6Bに示されているように、4種類のGUCY2C結合scFV(D08、G07、A12、H07)を含むCARを発現するNK細胞(CAR-NK)の細胞毒性を確認した。CAR-NKが、標的細胞がGUCY2Cを発現しない大腸癌細胞株HT29の場合には、約20%以下の細胞毒性を示すのに対し、GUCY2Cを過発現するHT29-GUCY2C標的細胞株では最大60%以上の細胞毒性を示すことが確認された。scFVの種類によって細胞毒性の値が差はあるものの、使用されたすべてのクローンが、GUCY2Cに対して用量依存的に細胞毒性を示すことを確認した。
【0135】
4.6.試験管内(in vitro)で抗-GUCY2C-CARを発現するNK細胞のCAR依存的殺傷効果およびNK内在的殺傷(CAR-非依存的)効果の確認
抗-GUCY2C-CARを発現するNK細胞の試験管内でCAR依存的殺傷効果を確認するために、GUCY2C結合scFV(D08)を含むCARを発現するNK細胞を用いて、下記のような実験を行った。
【0136】
具体的には、実施例4.4に記載された方法と同様の方法で標的細胞(HT29(ATCC HTB38TM)またはHT29-GUCY2C)を確保し、FACS(Intellicyt(商標) iQue Screener PLUS)で分析した。分析された値を用いて、下記の数式により溶解活性を換算した。
【数2】
【0137】
分化は凝集物を作って一定量播種した後に、造血幹細胞分化メディアにより造血幹細胞を確保し、これをリンパ前駆体(lymphoid progenitor)に分化させた。これを再びNK細胞に分化させる過程により細胞を得た。
【0138】
前記得られた結果を図7(GUCY2C標的CAR-NK細胞のクローンNo.D08)に示した。図7に示されているように、試験管内でGUCY2C結合scFV(D08)を含むCARを発現するNK細胞(GUCY2C標的CAR-NK細胞)を標的細胞株(target cell line)と共培養(co-culture)した時、GUCY2C結合scFV(D08)を含むCARを発現するNK細胞のCAR依存的殺傷効果(CAR dependent killing effect)およびNK内在的殺傷効果(CAR-非依存的)を確認した。つまり、図7のGUCY2C-HT29細胞でE:Tの比率が増加する(Effector細胞が増加する)につれて細胞毒性も増加する結果により無作為的でないCAR濃度依存的殺傷効果を有することを確認し、mock-HT29細胞でも細胞毒性を示すことにより、NK内在的殺傷効果(CAR-非依存的)もあることを確認した。
【0139】
実施例4.7.生体内(in vivo)で抗-GUCY2C-CARを発現するNK細胞のCAR-依存的殺傷効果の確認およびNK内在的殺傷(CAR-非依存的)効果の確認
生体内(in vivo)で抗-GUCY2C-CARを発現するNKのCAR-依存的殺傷効果の確認およびNK内在的殺傷(CAR-非依存的)効果の確認のために、GUCY2C結合scFV(D08)を含むCARを発現するNK細胞を用いて、下記のような実験を行った。
【0140】
具体的には、マウスにCFSE染色された標的細胞株(HT29-GUCY2細胞)を腹腔内に注入後、1時間後にGUCY2C結合scFV(D08)を含むCARを発現するNK細胞をIL-2/15と共に腹腔内に注射して、マウス体内で標的細胞の減少程度を確認した。これを観察するために4時間を待った後、腹腔内にPBSを注入して再び回収する方式で腹腔内の残存細胞を取得し、これをフローサイトメトリー分析方法によりCFSE染色剤を測定する方式で標的細胞の死滅を観察した。
【0141】
その結果、図8に示されているように、生体内でもGUCY2C結合scFV(D08)を含むCARを発現するNK細胞のCAR依存的殺傷効果(CAR dependent killing effect)およびNK内在的殺傷効果(CAR-非依存的)を確認した。
【0142】
実施例4.8.抗-GUCY2C-CARを発現するNK細胞のIFN-γ分泌能の確認
抗-GUCY2C-CARを発現するNK細胞の死滅能に影響を及ぼすIFN-γ分泌能を確認するために、GUCY2C結合scFV(5F9、D08、G07)を含むCARを発現するNK細胞を用いて、下記のような実験を行った。
【0143】
具体的には、IFN-γ分泌能を測定するためにELISA方法を使用し、24時間標的細胞とそれぞれのNK細胞とを共培養(co-culture)した後、上層液を回収した。IFN-γを認識するための抗体がコーティングされたプレートに回収された上層液をインキュベートし、洗浄作業を経て残存溶液を除去した。これを再び発色可能なIFN-γ抗体を認識して発色程度を測定して分泌されたIFN-γを確認した。
【0144】
その結果、図9Aに示されているように、抗-GUCY2C-CARを発現するNK細胞を、GUCY2Cを過発現するHT29-GUCY2C標的細胞株(HT29 GCC細胞)と共培養した時、分泌されたIFN-γ量が顕著に高くなることを確認した。図9Bに示されているように、CARを含まないナイーブNK(Naive NK)細胞は、HT29-GUCY2C細胞との共培養によるIFN-γ量の増加がなく、GUCY2C陽性癌細胞のT84細胞との共培養によっても相対的に少量のIFN-γ増加が確認された。これに対し、GUCY2C結合scFV(5F9、D08、G07)を含むCARを発現するNK細胞は、HT29-GUCY2C細胞およびGUCY2C陽性癌細胞のT84細胞との共培養をした場合、GUCY2Cを発現しないMock HT29細胞に比べてIFN-γ量が顕著に高くなることを確認した。
【0145】
実施例4.9.動物モデルで抗-GUCY2C-CARを発現するNK細胞投与時の生存率の確認
動物モデルで抗-GUCY2C-CARを発現するNK細胞投与時の生存率を確認するために、下記のような実験を行った。
【0146】
具体的には、NOGマウスにHT29-GUCY2C-Luc cell i.p.(2.5×10細胞)の移植後(D0)、3日目に同量のHT29細胞が発現するマウスに群分離(IVIS total flux)し、CAR NK、サイトカインを共に投与した。GUCY2C-CAR NK細胞を1×10細胞の量で腹腔投与し、サイトカインの濃度は、hIL-2(Novartis Proleukin)/10μg(ip、4times/week)、hIL-15(Peprotech)/3μg(ip、qd)で投与した。その後、各実験群の生存率と生存日を確認した。
【表7】
【0147】
その結果、表7および図10に示されているように、対照群に比べてCAR-NK細胞投与群で生存率が有意に高く、平均生存日が対照群66日、CAR-NK細胞投与群82.5日で、対照群に比べてCAR-NK細胞投与群の生存日が長いことを確認した。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10
【配列表】
2024513446000001.app
【国際調査報告】