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特表2024-514112ベルバラフェニブおよびコビメチニブを用いた併用療法、またはベルバラフェニブ、コビメチニブおよびアテゾリズマブを用いた併用療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】ベルバラフェニブおよびコビメチニブを用いた併用療法、またはベルバラフェニブ、コビメチニブおよびアテゾリズマブを用いた併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20240321BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 31/4523 20060101ALI20240321BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240321BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240321BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240321BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K39/395 L
A61K31/4523
A61P17/00
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561181
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 US2022023496
(87)【国際公開番号】W WO2022216719
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/171,461
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】515182071
【氏名又は名称】ハンミ ファーム.カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANMI PHARM.CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン, マリア スハディ
(72)【発明者】
【氏名】ドルトン, マイケル ジョン
(72)【発明者】
【氏名】マレク, シヴァ
(72)【発明者】
【氏名】セガール, エフド
(72)【発明者】
【氏名】マルヒ, ヴィクラム
(72)【発明者】
【氏名】オン-ウォン, ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, イビン
(72)【発明者】
【氏名】イェン, イヴァナ イェン イェン
(72)【発明者】
【氏名】ペク, スンジェ
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086CB26
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
ベルバラフェニブおよびコビメチニブを含む併用療法、ならびにベルバラフェニブ、コビメチニブおよびアテゾリズマブを含む併用療法が、NRAS変異を有するメラノーマの処置のために提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NRAS変異メラノーマを有する対象を処置する方法であって、(i)前記対象に、(ii)治療有効量のベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩、および(iii)治療有効量のコビメチニブまたはその薬学的に許容され得る塩から本質的になる療法を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記メラノーマが、NRASQ61K変異、NRASQ61R変異、NRASG12C変異、NRASQ61L変異、NRASG13D変異、またはそれらの任意の組合せを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メラノーマが、NRASG12D変異、NRASG12C変異、またはそれらの組合せを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記メラノーマが転移性であるか、または切除不能である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が、1日当たり約200mg~約1300mg、約400mg~約1200mg、約600mg~約1200mg、または約800mg~約1000mgのベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩を投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が、1日当たり約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1150mg、約1200mg、約1250mg、または約1300mgのベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩を投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象が、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、または約500mgのベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩を1日に2回投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記対象が、約300mgまたは約400mgのベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩を1日に2回投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩が、28日間の処置サイクルの28日間連続して毎日投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩が食物と共に投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象が、1日当たり約20mg~約100mgのコビメチニブまたはその薬学的に許容され得る塩を投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象が、1日当たり約20mg、約40mgまたは約60mgのコビメチニブまたはその薬学的に許容され得る塩を投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コビメチニブまたはその薬学的に許容され得る塩が、28日間の処置サイクルの21日間連続して毎日投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
コビメチニブまたはその薬学的に許容され得る塩が、28日間の処置サイクルの1~21日目に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
コビメチニブまたはその薬学的に許容され得る塩が、28日間の処置サイクルの3~23日目に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が、抗PD-1薬または抗PD-L1薬による一連の処置を以前に投与されていた、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、免疫療法、BRAF V600E療法、または免疫療法とBRAF V600E療法との併用による処置後に疾患の進行を経験した、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
がんを処置するための前記方法が、ヒト対象における扁平上皮癌腫の発生の非存在を特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
NRAS変異メラノーマを有する対象を処置する方法であって、(i)前記対象に、(ii)治療有効量のベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩、(iii)治療有効量のコビメチニブまたはその薬学的に許容され得る塩、および(iv)治療有効量のアテゾリズマブから本質的になる療法を投与することを含む、方法。
【請求項20】
前記メラノーマが、NRASQ61K変異、NRASQ61R変異、NRASG12C変異、NRASQ61L変異、NRASG13D変異、またはそれらの任意の組合せを有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記メラノーマが、NRASG12D変異、NRASG12C変異、またはそれらの組合せを有する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記メラノーマが、転移性であるか、または切除不能である、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が、1日当たり約200mg~約1300mg、約400mg~約1200mg、約600mg~約1200mg、または約800mg~約1000mgのベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩を投与される、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象が、1日当たり約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1150mg、約1200mg、約1250mg、または約1300mgのベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩を投与される、請求項19~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記対象が、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、または約500mgのベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩を1日に2回投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記対象が、約300mgまたは約400mgのベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩を1日に2回投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩が、28日間の処置サイクルの28日間連続して毎日投与される、請求項19~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩が食物と共に投与される、請求項19~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記対象が、1日当たり約20mg~約100mgのコビメチニブまたはその薬学的に許容され得る塩を投与される、請求項19~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記対象が、1日当たり約20mg、約40mgまたは約60mgのコビメチニブまたはその薬学的に許容され得る塩を投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記対象が、1日当たり約60mgのコビメチニブまたはその薬学的に許容され得る塩を投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
コビメチニブまたはその薬学的に許容され得る塩が、28日間の処置サイクルの21日間連続して毎日投与される、請求項19~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
コビメチニブまたはその薬学的に許容され得る塩が、28日間の処置サイクルの1~21日目に投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
コビメチニブまたはその薬学的に許容され得る塩が、28日間の処置サイクルの3~23日目に投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が、約500mg~約2000mg、約500mg~約1000mg、約750mg~約1000mg、約750mg~約2000mg、約1000mg~約2000mg、約1500mg~約1750mgのアテゾリズマブを投与される、請求項19~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記対象が、約840mgのアテゾリズマブを投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記対象が、約1680mgのアテゾリズマブを投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記対象が、28日間の処置サイクルの14日間ごとにアテゾリズマブを投与される、請求項19~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記対象が、28日間の処置サイクルの1日目および15日目にアテゾリズマブを投与される、請求項19~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記対象が、28日間の処置サイクルの4週間ごとにアテゾリズマブを投与される、請求項19~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記対象が、28日間の処置サイクルの1日目にアテゾリズマブを投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記対象が、28日間の処置サイクルの1日目に約1680mgのアテゾリズマブを投与される、請求項19~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記対象が、抗PD-1薬または抗PD-L1薬による一連の処置を以前に投与されていた、請求項19~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記対象が、免疫療法、BRAF V600E療法、または免疫療法とBRAF V600E療法との併用による処置後に疾患の進行を経験した、請求項19~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
がんを処置するための前記方法が、ヒト対象における扁平上皮癌腫の発生の非存在を特徴とする、請求項19~44のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年4月6日に出願された米国仮出願第63/171,461号の優先権を主張する。その仮出願の全文は、参照により本出願に組み入れられる。
【技術分野】
【0002】
本発明の分野は、概してNRAS変異型メラノーマを処置するための、ベルバラフェニブおよびコビメチニブの組み合わせ、ならびにベルバラフェニブ、コビメチニブおよびアテゾリズマブの組み合わせを用いたがん治療に関する。
【背景技術】
【0003】
メラノーマは、メラノサイトに由来する命に関わる危険性がある形態の皮膚がんである。早期に診断された表在性腫瘍の転帰は良好であるが、転移性メラノーマは、高い死亡率および疾患関連罹患率を伴う。
【0004】
RAS/RAF/MEK/ERKマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル伝達カスケードは、細胞外環境から細胞核への複数のシグナルを伝達して、細胞の増殖および分化を活性化する重要な細胞内シグナル伝達ネットワークである(Johnson GL,Lapadat R.Mitogen-activated protein kinase pathways mediated by ERK,JNK,and p38 protein kinases.Science 2002;298:1911-2;Roberts PJ,Der CJ.Targeting the Raf-MEK-ERK mitogen-activated protein kinase cascade for the treatment of cancer.Oncogene 2007;26:3291-310)。この経路は、メラノーマの発症機序に大きく関与している。メラノーマの約40%~50%が、BRAFにおける活性化変異を有し(Davies H,Bignell GR,Cox C,ら.Mutations of the BRAF gene in human cancer.Nature 2002,417:949-54;Curtin JA,Fridyland J,Kageshita T,ら.Distinct sets of genetic alterations in melanoma.N Engl J Med 2005,353:2135-47;Jakob JA,Bassett Jr RL,Ng CS,ら.NRAS mutation status is an independent prognostic factor in metastatic melanoma.Cancer 2012,118:4014-23)、メラノーマの29%が、NRASにおける変異を有している(Moore AR,Rosenberg SC,McCormick F,ら.RAS-targeted therapies:is the undruggable drugged?Nat Rev Drug Discov 2020;19:533-52)。
【0005】
メラノーマ細胞は免疫原性が高く、したがって免疫療法の適切な標的である(Zhu F.,Liang Yu,Chen D,ら.Melanoma antigen gene family in the cancer immunotherapy.Cancer Transl Med 2016;2:85-9.)。免疫療法の出現により、メラノーマ患者の転帰は劇的に変化した。過去10年間で、進行期メラノーマ患者の全生存期間(OS)は、免疫療法剤の効果により9ヶ月から5年以上に改善されている。いくつかの第III相試験では、単剤抗PD-1阻害剤を抗CTLA4阻害剤または化学療法と比較しており、客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)およびOSの改善が示されており、OSは約3年であり、PFS率は4~7ヶ月の範囲であった(Robert C,Schachter J,Long G,ら.Pembrolizumab versus Ipilimumab in Advanced Melanoma.N Engl J Med 2015,372:2521-32;Schachter J,Ribas A,Long GV.Pembrolizumab versus ipilimumab for advanced melanoma:final overall survival results of a multicentre,randomised,open-label phase 3 study.Lancet 2017,390,1853-62)。併用免疫療法は、さらに強固な利益をもたらす。1296人の患者を対象とした第III相試験では、ニボルマブおよびイピリムマブに無作為化された患者は、ニボルマブ単独の患者と比較してPFSおよびOSの両方が増加した。PFSは、ニボルマブ+イピリムマブ群では11.5カ月であり、ニボルマブ単剤療法群では6.9カ月であり、ハザード比(HR)は0.42(95%CI:0.35~0.51)であった。5年間の最短追跡調査時に、OS中央値は達成されておらず、ニボルマブ+イピリムマブで60.0カ月超(95% CI:38.2~「未到達」)であり、ニボルマブ単独では36.9カ月(95% CI:28.2~ら58.7)であり、HRは0.052(95% CI:0.42~0.64)である(Larkin J,Chiarion-Sileni V,Gonzalez R,らFive-year survival with combined nivolumab and ipilimumab in advanced melanoma.N Engl J Med 2019;381:1535-46)。注目すべきことに、患者の50%超がニボルマブ+イピリムマブでグレード3以上の有害事象を経験し、治療の完了は困難であり、患者の36.4%は有害事象のために治療を中止した。
【0006】
抗PD-1剤による処置後に疾患が進行した患者のみを対象とする第III相試験は実施されていない。メラノーマにおけるPD-1抗体での進行直後にペンブロリズマブと共に低用量イピリムマブを投与された患者は、第II相試験において有意な抗腫瘍活性を示した。以前に抗PD-1治療を受けたことのある患者では、免疫療法の反復使用による奏効率は、イピリムマブにおける約15%(Robert C,Ribas A,Schachter J,ら.Pembrolizumab versus ipilimumab in advanced melanoma(KEYNOTE-006):post-hoc 5-year results from an open-label,multicentre,randomised,controlled,phase 3 study.Lancet Oncol 2019;20:1239-51)~ペンブロリズマブおよびイピリムマブの併用における27%(免疫関連奏効基準)の範囲であり、PFSは5ヶ月である(Olson D,Luke J,Poklepovic AS,ら.Significant antitumor activity for low-dose ipilimumab(IPI)with pembrolizumab(PEMBRO)immediately following progression on PD1 Ab in melanoma(MEL)in a phase II trial.J Clin Oncol 2020;38:10004)。
【0007】
メラノーマを有する患者が、BRAFV600における変異によってさらに適切な治療について特定される。BRAF変異を有しない患者は、まとめてBRAF野生型(WT)と呼ばれる。これらのがんには、NRAS変異を有するメラノーマ、NF1変異を有するメラノーマ、および同定された変異または「三重WT」のないメラノーマが含まれ得る。BRAF WTメラノーマを有する患者に対して承認された処置としては、免疫療法剤、化学療法剤およびT-VECが挙げられる。BRAF WTメラノーマを有する患者に対する標的療法は特定されていない。BRAF変異型メラノーマを有する患者の承認された治療法としては、標的療法(BRAF阻害剤単独またはMEK阻害剤との併用)、免疫療法、および化学療法が挙げられる。BRAF変異型腫瘍を有する患者に対する最適な処置シーケンシング(すなわち、標的療法とそれに続く免疫療法またはその逆)は知られていない。
【0008】
BRAF WTサブセット内では、メラノーマの全患者の約29%に発生するNRAS変異を含むいくつかの一般的な変異が記載されている(Mooreら、2020)。NRASの変異は、グリシン12(G12)、グリシン13(G13)、またはグルタミン61(Q61)のいずれかの残基で起こる。NRAS変異型メラノーマの約85%が、NRAS Q61(Q61R、Q61K、Q61L、Q61Hに富む)に変異を有しており(Mooreら、2020)、はるかに少ない割合のメラノーマが、NRAS G12またはG13に変異を有している。最も一般的なNRASの非Q61変異は、NRASのG12D、G13RおよびG13Dである(Li S,Balmain A,Counter CM.A model for RAS mutation patterns in cancers:finding the sweet spot.Nat Rev Cancer 2018;18:767-7)。メラノーマの組織特異的なコンディショナルノックインマウスモデルでは、NRAS Q61Rの発現がメラノーマの形成を推進することが示されており、機構的研究により、NRAS Q61R変異が明確なヌクレオチド結合能、安定性およびGTPアーゼ耐性を示し、これがメラノーマ形成特性を推進する可能性が高いことが実証されている(Burd CE,Liu W,Huynh MV,ら.Mutation-specific RAS oncogenicity explains NRAS codon 61 selection in melanoma.Cancer Discov 2014;4:1418-29)。NRAS変異型メラノーマにおけるMAPKシグナル伝達、具体的には、RASの下流のBRAFキナーゼおよびCRAFキナーゼの重要性はまた、NRAS Q61K誘導性メラノーママウスモデルにおいても確認されており、このモデルでは、BRAF遺伝子およびCRAF遺伝子の条件的消失が腫瘍成長の完全な遮断をもたらした(Dorard C,Estrada C,Barbotin C,ら.RAF proteins exert both specific and compensatory functions during tumour progression of NRAS-driven melanoma.Nat Commun 2017;8:1-13)。
【0009】
NRAS変異の有病率および結果として生じる疾患の重症度にもかかわらず、利用可能な処置選択肢はほとんどない。
【0010】
抗PD-1剤による処置中または処置後に疾患進行した患者におけるNRAS変異型メラノーマの処置は、重大な満たされていない医学的必要性を表す。特定された活性化MAPK経路変異を有するこれらの患者には、新しい標的処置アプローチが必要である。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、NRAS変異型メラノーマを有する対象を処置する方法を提供する。
【0012】
いくつかの態様では、当該方法は、(i)当該対象に、(ii)治療有効量のベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩、および(iii)治療有効量のコビメチニブまたはその薬学的に許容され得る塩から本質的になる療法を投与することを含む。
【0013】
いくつかの態様では、対象は、(i)1日当たり約200mg~約1300mg、約400mg~約1200mg、約600mg~約1200mg、もしくは約800mg~約1000mgのベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩、および(ii)1日当たり約20mg~約100mgのコビメチニブまたはその薬学的に許容され得る塩を投与される。
【0014】
いくつかの態様では、本方法は、(i)対象に、(ii)治療有効量のベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩、(iii)治療有効量のコビメチニブまたはその薬学的に許容され得る塩、および(iv)治療有効量のアテゾリズマブから本質的になる療法を投与することを含む。
【0015】
いくつかの態様では、対象は、(i)1日当たり約200mg~約1300mg、約400mg~約1200mg、約600mg~約1200mg、もしくは約800mg~約1000mgのベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩;(ii)1日当たり約20mg~約100mgのコビメチニブまたはその薬学的に許容され得る塩;および(iii)約500mg~約2000mg、約500mg~約1000mg、約750mg~約1000mg、約750mg~約2000mg、約1000mg~約2000mg、約1500mg~約1750mgのアテゾリズマブを投与される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、(i)ベルバラフェニブおよびコビメチニブの組み合わせ、ならびに(ii)ベルバラフェニブ、コビメチニブ、およびアテゾリズマブの組み合わせによるNRAS変異型メラノーマの処置に関する本開示の態様のための設計検討研究の略図である。図1において:Aはアテゾリズマブ;Bはベルバラフェニブ;BIDは1日2回投与;Cは、コビメチニブ28日間のうち21日投与;DLTは、用量制限毒性;QDは毎日;Q4Wは4週間ごと;xは決定される用量(およびスケジュール)を指す。点線はデエスカレーショングループを示す。さらに、は、第1サイクルの第1日目の約6週間後、および疾患の進行時(安全と考えられる場合)に、強制的な連続生検に同意する5名の患者を含めることを示す。さらに、は、ベルバラフェニブおよびコビメチニブを同用量で投与する群2に最大25名の患者が登録されることを示す。
【0017】
図2A図2Aは、SK-MEL-30(NRASQ61K)変異型メラノーマ細胞株における、ベルバラフェニブ(Belv)、コビメチニブ(Cobi)またはそれらの組み合わせによるインビトロにおけるMEK/ERK/RSKシグナル伝達経路阻害についてのウエスタンブロットの図である。
【0018】
図2B図2Bは、IPC-298(NRASQ61L)変異型メラノーマ細胞株における、ベルバラフェニブ(Belv)、コビメチニブ(Cobi)またはそれらの組み合わせによるインビトロにおけるMEK/ERK/RSKシグナル伝達経路阻害についてのウエスタンブロットの図である。
【0019】
図3図3 は、ベルバラフェニブ、コビメチニブ、またはそれらの組み合わせで処理したIPC-298(NRASQ61L)メラノーマ細胞株におけるコロニー形成アッセイの結果の図である。
【0020】
図4図4は、ベルバラフェニブ、コビメチニブ、またはそれらの組み合わせで処理したMel-Juso(NRASQ61L)メラノーマ細胞株におけるコロニー形成アッセイの結果を示す図である。
【0021】
図5図5は、ベルバラフェニブ、コビメチニブ、またはそれらの組み合わせで処理したSK-MEL-30(NRASQ61K)メラノーマ細胞株におけるコロニー形成アッセイの結果を示す図である。
【0022】
図6図6は、SK-MEL-30メラノーマがん細胞株を異種移植したマウスにおいて薬物を14日間経口投与するレジメンについて、1、4、8、11および15日目に測定した、ベルバラフェニブ(HM95573と命名)またはコビメチニブ単独およびそれらの組合せのインビボにおける腫瘍体積抗腫瘍活性の図である。
【0023】
図7図7は、SK-MEL-30メラノーマがん細胞株を異種移植したマウスにおいて薬物を14日間経口投与するレジメンについて、1、4、8、11および15日目に測定した、ベルバラフェニブ(HM95573と命名)またはコビメチニブ単独およびそれらの組合せのインビボにおける腫瘍体積抗腫瘍活性の評価におけるマウスの体重変化の図である。
【0024】
図8図8は、SK-MEL-30メラノーマがん細胞株を異種移植したマウスにおいて薬物を21日間経口投与するレジメンについて、1、4、7、11、14、18および21日目に測定した、ベルバラフェニブ(HM95573と命名)またはビニメチニブ(MEK162と命名)単独およびそれらの組合せの抗腫瘍活性の図である。
【0025】
図9図9は、SK-MEL-30メラノーマがん細胞株を異種移植したマウスにおいて薬物を21日間経口投与するレジメンについて、1、4、7、11、14、18および21日目に測定した、ベルバラフェニブ(HM95573と命名)またはビニメチニブ(MEK162と命名)単独およびそれらの組み合わせに関連する体重変化の図である。
【0026】
図10】calu-6非小細胞肺がん細胞株を異種移植したマウスにおいて17日間経口投与されたベルバラフェニブ(HM95573と命名)またはセルメチニブ(AZD6244と命名)単独またはそれらの組み合わせのいずれかによって誘導されたインビボにおける抗腫瘍活性の図である。
【0027】
図11図11は、calu-6非小細胞肺がん細胞株を異種移植したマウスにおいて17日間経口投与されたベルバラフェニブ(HM95573と命名)またはセルメチニブ(AZD6244と命名)の単独またはそれらの組み合わせのいずれかによって誘導された体重変化の図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
一態様では、本開示は、ベルバラフェニブおよびコビメチニブの組み合わせ投与によるNRAS変異型メラノーマがんの処置に関する。
【0029】
一態様では、本開示は、ベルバラフェニブ、コビメチニブ、およびアテゾリズマブの組み合わせ投与によるNRAS変異型メラノーマがんの処置に関する。
定義
【0030】
本明細書で使用される場合、「NRAS変異」は、DNA配列の変化(変異)を有するNRAS(NRAS癌原遺伝子GTPアーゼ)癌遺伝子を指す。NRAS遺伝子は、細胞分裂の調節に関与するN-Rasタンパク質の合成をコードする。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、NRAS変異は、上流RTK活性化とは無関係に、GTPアーゼ活性の障害およびその活性化(GTP結合)状態へのNRASのロックをもたらすと考えられる(Normanno,N.,OncologyPRO,2015を参照されたい)。メラノーマにおけるNRAS変異は、侵攻性疾患および予後不良に関連している。主にコドン61で変異したNRASは、全メラノーマの最大30%に関与していると考えられている。NRAS癌遺伝子変異はまた、コドン12および13に存在すると考えられている。
【0031】
本明細書で使用される場合、「患者」および「対象」という用語は、限定するものではないが、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどを含む哺乳動物などの動物を指す。特定の態様では、患者または対象はヒトである。
【0032】
本明細書で使用される場合、「処置」という用語は、臨床病理学の経過中に処置される個体または細胞の自然経過を変えるように設計された臨床的介入を指す。処置の望ましい効果としては、疾患進行速度の低減、疾患状態の回復または緩和および寛解または予後の改善が挙げられる。例えば、個体は、がん性細胞の増殖の低減(もしくは破壊)、疾患に起因する症状の軽減、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の処置に必要な他の薬剤の用量の低減、および/または個体の生存期間の延長を含むが、これらに限定されない、がんに関連する1つ以上の症状が軽減または排除された場合、「処置」に成功する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という語句は、(i)特定の疾患、状態、もしくは障害を処置もしくは予防し、(ii)特定の疾患、状態、もしくは障害の1つ以上の症状を減弱、改善、もしくは排除し、または(iii)本明細書に記載の特定の疾患、状態、もしくは障害の1つ以上の症状の発症を予防もしくは遅延させる1つ以上の薬物化合物の量を指す。がんの場合、治療有効量の薬物は、がん細胞の数を低下、腫瘍サイズを低下、末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害(すなわち、ある程度の減速および好ましくは停止)、腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度の減速および好ましくは停止)、腫瘍増殖をある程度阻害、および/またはがんに関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減し得る。既存のがん細胞の成長を防止する、および/またはそれらを死滅させ得る程度まで、薬物は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性であり得る。がん治療の場合、有効性は、例えば、全奏効率(ORR)を評定することによって測定し得る。本明細書における治療有効量は、疾患状態、患者の年齢、性別および体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する薬剤の能力などの要因に従って変化し得る。治療有効量はまた、処置の毒性または有害な影響が治療上有益な効果を上回る量である。予防的使用の場合、有益なまたは所望の結果としては、疾患の生化学的、組織学的、および/または挙動的症候、その合併症、ならびに疾患の発症中に現れる中間病理学的表現型を含む、疾患のリスクの排除または低減、疾患の重症度の軽減、または疾患の発生の遅延等の結果が挙げられる。治療的使用の場合、有益なまたは所望の結果には、疾患に起因する1つまたは複数の症状の減少、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬剤の用量の減少、別の薬剤の効果の増強(例えば、標的による)、疾患の進行の遅延、および/または生存期間の延長などの臨床結果が含まれる。がんまたは腫瘍の場合、治療有効量の薬物は、がん細胞の数を低減させ、腫瘍サイズを低減させ、がん細胞の末梢器官への浸潤を阻害し(すなわち、ある程度遅らせるか、または望ましくは停止させ)、腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度遅らせるか、または望ましくは停止させ)、腫瘍成長をある程度阻害し、かつ/または障害に関連する症状のうちの1つまたは複数をある程度軽減する効果を有し得る。治療有効量は、1回以上の投与で投与し得る。本発明の目的のために、治療有効量の薬物、化合物、医薬組成物、または医薬製剤は、予防的または治療的処置を直接的または間接的に達成するのに十分な量である。臨床的文脈で理解されるように、治療有効量の薬物、化合物、または医薬組成物は、別の薬物、化合物、または医薬組成物との併用で達成される場合も、達成されない場合もある。したがって、治療有効量は、1種以上の治療剤を投与する状況で考慮され得、単一の薬剤は、1種以上の他の薬剤と組み合わせて、望ましい結果が達成され得るかまたは達成される場合、治療有効量で与えられると考えられ得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「と組み合わせて」は、別の処置様式に加えて1つの処置様式を投与することを指す。それ故、「と組み合わせて」は、個体への他の処置様式の投与前、投与中、または投与後の1つの処置様式の投与を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「医薬製剤」という用語は、有効成分の生物学的活性が有効であることを可能にするような形態であり、その製剤が投与される対象に対して許容できないほど毒性である追加の成分を含まない調製物を指す。そのような製剤は無菌である。「薬学的に許容され得る」賦形剤(ビヒクル、添加剤)は、使用される有効成分の有効量を提供するために対象に合理的に投与し得るものである。
【0036】
本明細書で使用される場合、最大、最小、または他の判定基準に関する「C」は、血漿中の薬物濃度を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「濃度曲線下面積」(AUC)は、適合した血漿中濃度対時間曲線下面積を指す。AUC0-∞は、曲線下面積ベースライン-無限大を指す。AUC0-Tは総曝露量である。
【0038】
本明細書で使用される場合、「阻害する」は、阻害剤の非存在下でのその酵素(またはタンパク質)の活性と比較して、標的酵素または他のタンパク質の活性が低下することを指す。いくつかの態様では、「阻害する」という用語は、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%の活性の低下を意味する。他の態様では、阻害するとは、約5%~約25%、約25%~約50%、約50%~約75%または約75%~約100%の活性の低下を意味する。いくつかの態様では、阻害するとは、約95%~約100%の活性の低下、例えば、95%、96%、97%、98%、99%または100%の活性の低下を意味する。このような減少は、当業者により認識可能であろう様々な技術を使用して測定され得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、「無増悪生存期間」(PFS)は、疾患の処置から疾患の進行または再発の最初の発生までの時間を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「部分奏効」(PR)は、ベースラインの病変の径の和を基準として、標的病変の径の和が少なくとも30%減少することを指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「完全奏効」(CR)とは、すべての標的病変が消失することを指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「進行性疾患」(PD)は、ベースラインを含む試験中の最小病変径(最下点)を基準として、標的病変の径の和が少なくとも20%増加し、絶対値は少なくとも5mm増加することを指す。1つ以上の新しい病変の出現も進行とみなされる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「全奏効率」(ORR)とは、RECISTv1.1を使用して治験責任医師によって決定された、ランダム化後に生じ、28日以上後に確認されたPRまたはCRの率のことを指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、「奏効期間」(DOR)は、RECISTv1.1または試験中の任意の原因による死亡を使用して治験責任医師が決定した、実証された客観的奏効の最初の発生から再発までの時間のうち、いずれか早く発生する時間を指す。
【0045】
本明細書で使用される場合、「RAF阻害剤」という用語は、RASの下流のMAPKシグナル伝達経路において3つの受容体サブタイプ(A-RAF、B-RAF、C-RAF)のうちの少なくとも1つを阻害する分子のことを指す。
【0046】
本明細書で使用される場合、「MAPK」という用語は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ経路またはシグナル伝達経路を指す。Ras-Raf-MEK-ERK経路とも呼ばれるMAPK経路は、細胞の表面上の受容体からのシグナルを細胞の核内のDNAに伝達する細胞内のタンパク質の鎖または経路である。MAPK経路において、活性化RASはRAFキナーゼのプロテインキナーゼ活性を活性化し、RAFキナーゼはMEK(MEK1およびMEK2)をリン酸化して活性化し、MEKはマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)ERK1およびERK2(MAPK3およびMAPK1)をリン酸化して活性化する。MAPKはリボソームタンパク質S6キナーゼ(RPS6KA1;RSK)をリン酸化する。
【0047】
本明細書で使用される場合、「PD-1軸阻害剤」という用語は、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達に起因するT細胞機能障害を除去するように、PD-1軸結合パートナーとその結合パートナーの1つ以上との相互作用を阻害する分子を指し、その結果、T細胞機能を回復または増強する(例えば、増殖、サイトカイン産生、標的細胞殺傷)。本明細書で使用される場合、PD-1軸阻害剤としては、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、およびPD-L2阻害剤が挙げられる。
【0048】
本明細書で使用される場合、「PD-1阻害剤」という用語は、PD-1と、その結合パートナー(PD-L1およびPD-L2など)の1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、抑止または干渉する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、その結合パートナーの1つ以上へのPD-1の結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-1阻害剤は、PD-1のPD-L1および/またはPD-L2への結合を阻害する。例えば、PD-1阻害剤としては、抗PD-1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、ならびにPD-1とPD-L1および/またはPD-L2との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、抑止または干渉する他の分子が挙げられる。一実施形態では、PD-1阻害剤は、PD-1を介したシグナル伝達によって媒介されるTリンパ球上に発現される細胞表面タンパク質によって媒介されるまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを減少させて、機能不全T細胞を機能不全を軽減する(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答の増強)。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は抗PD-1抗体である。
【0049】
本明細書で使用される場合、「PD-L1阻害剤」という用語は、PD-L1とその結合パートナー、例えばPD-1、B7-1のいずれか1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、抑止または干渉する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、PD-L1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L1阻害剤は、PD-L1のPD-1および/またはB7-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤としては、抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、およびPD-L1とその結合パートナー(PD-1、B7-1など)の1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、抑止または干渉する他の分子が挙げられる。一実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1を介するシグナル伝達を媒介したTリンパ球上で発現された細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能不全のT細胞の機能不全状態を軽減する(例えば、抗原認識へのエフェクター応答を増強する)。いくつかの態様では、PD-L1阻害剤は抗PD-L1抗体である。
【0050】
本明細書で使用される場合、「PD-L2阻害剤」という用語は、PD-L2とその結合パートナー(PD-1など)のいずれか1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、抑止または干渉する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-L2阻害剤は、その結合パートナーの1つ以上へのPD-L2の結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L2阻害剤は、PD-L2のPD-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L2阻害剤としては、抗PD-L2抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、およびPD-L2とその結合パートナー(PD-1など)のいずれか1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、抑止または干渉する他の分子が挙げられる。一実施形態では、PD-L2阻害剤は、PD-L2を介したシグナル伝達によって媒介されるTリンパ球上に発現される細胞表面タンパク質によって媒介される、またはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを減少させて、機能不全T細胞の機能不全をより低減する(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答の増強)。いくつかの実施形態では、PD-L2阻害剤はイムノアドヘシンである。
【0051】
「薬学的に許容され得る塩」という用語は、生物学的にまたは他の点で望ましくないものではない塩を意味する。薬学的に許容され得る塩には、酸付加塩および塩基付加塩の両方が含まれる。「薬学的に許容され得る」という語句は、物質または組成物が、製剤を含む他の成分および/またはそれで処置される対象と化学的および/または毒性学的に適合性であることを示す。酸付加塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸などの無機酸、ならびに有機酸の脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族、複素環式、カルボン酸およびスルホン酸クラス、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、アントラニル酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、エンボン酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸「メシラート」、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、およびサリチル酸から選択される有機酸を用いて形成される。塩基付加塩は、有機塩基または無機塩基を用いて形成される。許容され得る無機塩基の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、およびアルミニウム塩が挙げられる。薬学的に許容され得る有機非毒性塩基に由来する塩としては、天然の置換アミン、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン類、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、およびポリアミン樹脂を含む、第一級、第二級、および第三級アミン、置換アミンの塩が挙げられる。
【0052】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、具体的には、それらが所望の生物学的活性を示す限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体等)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体断片を包含する。
【0053】
「検出」という用語は、直接的および間接的検出を含む、任意の検出手段を含む。
治療薬
【0054】
一態様では、本開示は、NRAS変異型メラノーマを処置するためのベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩とコビメチニブまたはその薬学的に許容され得る塩との組み合わせに関する。
【0055】
一態様では、本開示は、NRAS変異型メラノーマを処置するための、ベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩、コビメチニブまたはその薬学的に許容され得る塩、およびアテゾリズマブの組み合わせに関する。
【0056】
本明細書に開示されている化合物は、当技術分野において公知の任意の適切な様式で投与され得る。いくつかの態様では、化合物は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、局所投与、経口投与、経皮投与、腹腔内投与、眼窩内投与、埋め込みによる投与、吸入による投与、髄腔内投与、脳室内投与、腫瘍内投与または鼻腔内投与によって投与される場合がある。
【0057】
活性化合物の適切な用量は、当業者の知識内のいくつかの要因に依存することが理解される。活性化合物の用量は、例えば、被験体の年齢、体重、全般的な健康、性別および食事、投与の時点、投与の経路、排泄の速度および任意の薬物の組み合わせに応じて変動するであろうことが理解される。
【0058】
処置に使用される本開示の化合物またはその薬学的に許容され得る塩、プロドラッグ、代謝産物もしくは誘導体の有効投与量は、特定の処置の経過にわたって増加または減少し得ることも理解されよう。投薬量の変化は、診断アッセイの結果から生じ、明らかとなり得る。
【0059】
ベルバラフェニブ
【0060】
ベルバラフェニブは、PCT出願国際公開第2013/100632号に開示されており、化学名4-アミノ-N-(1-((3-クロロ-2-フルオロフェニル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド(本明細書では式(I)と呼ばれる)を有し、以下の化学構造を有する。
式(I)
【0061】
ベルバラフェニブは、BRAFおよびCRAFアイソフォームの選択的阻害を提供する高度に強力かつ選択的なII型RAF二量体阻害剤(汎RAF阻害剤)である。BRAFV600選択的モノマー阻害剤とは対照的に、ベルバラフェニブは、非BRAFV600変異細胞ではMAPK経路を活性化せず、代わりに、BRAFおよびCRAF二量体を阻害することによってMAPKシグナル伝達の抑制を維持し、BRAFV600およびRAS変異型腫瘍の両方で細胞増殖が減少し、抗腫瘍活性が増大した。
【0062】
ベルバラフェニブは、BRAFまたはRAS変異型メラノーマ、NSCLCおよびCRC細胞株中のMAPK経路におけるMEKおよびERKのリン酸化を阻害する。ベルバラフェニブは、BRAFまたはRAS変異型メラノーマ、NSCLC、CRCおよび甲状腺がん細胞株の増殖をインビトロで阻害することが実証されている。
【0063】
ベルバラフェニブは、インビトロで、BRAF V600E変異型(IC50=7nM)、BRAF野生型(IC50=41nM)、およびWT RAF-1(CRAF)(IC50=2nM)を含むRAFキナーゼの強力かつ選択的な阻害剤である。ベルバラフェニブはまた、活性化RAS変異の下流にシグナル伝達を伝播するBRAF/CRAFヘテロ二量体を阻害し得る。189のキナーゼアッセイのパネルで試験された場合、ベルバラフェニブは、7つの他の受容体チロシンキナーゼ(RTK)(コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)、以前のマクドナフネコ肉腫(FMS)ホモログ、ジスコイジンドメイン受容体チロシンキナーゼ1(DDR1)、ジスコイジンドメイン受容体チロシンキナーゼ2(DDR2)、EPHA2、EPHA7、EPHA8およびEPHB2)に対して、1μMで90%を超える阻害を有する阻害活性を示した。
【0064】
ベルバラフェニブは、BRAFまたはKRAS変異型非小細胞肺がん(NSCLC)、結腸直腸がん(CRC)、および甲状腺がん細胞株、ならびにNRASまたはBRAF変異型メラノーマ細胞株のパネルにわたって腫瘍細胞増殖の有意な阻害を示した。ベルバラフェニブは、BRAF変異型メラノーマおよびNRAS変異型メラノーマにおける細胞生存率に対する阻害効果を示しており、半数阻害濃度(IC50)の中央値は、それぞれ340nMおよび82nMであった。ベルバラフェニブは、NRAS変異型メラノーマ異種移植モデルSK-MEL-30(NRASQ61K変異)において、単剤として最大80%、コビメチニブとの組み合わせで最大89.8%の腫瘍増殖抑制(TGI)を示した。
【0065】
本開示の実験的証拠に基づいて、ベルバラフェニブは、以下のようにNRAS変異型メラノーマ患者由来異種移植片モデルのパネルにおいて130%の最大TGIを示すことがわかった。患者1のNRASQ61K変異型メラノーマ細胞のマウス由来異種移植片では、最大TGIは85%であった。患者2のNRASQ61R変異型メラノーマ細胞のマウス由来異種移植片では、最大TGIは107%であった。患者3のNRASG12C変異型メラノーマ細胞のマウス由来異種移植片では、最大TGIは90%であった。患者4のNRASQ61R変異型メラノーマ細胞のマウス由来異種移植片では、最大TGIは127%であった。患者5のNRASQ61R変異型メラノーマ細胞のマウス由来異種移植片では、最大TGIは130%であった。患者6のNRASQ61K変異型メラノーマ細胞のマウス由来異種移植片では、最大TGIは110%であった。患者7のNRASQ61R変異型メラノーマ細胞のマウス由来異種移植片では、最大TGIは124%であった。患者8のNRASQ61R変異型メラノーマ細胞のマウス由来異種移植片では、最大TGIは115%であった。患者9のNRASQ61K変異型メラノーマ細胞のマウス由来異種移植片では、最大TGIは125%であった。
【0066】
ベルバラフェニブのインビトロ抗腫瘍効果は、様々なマウス異種移植モデルにおける有効性に移行した。ベルバラフェニブは、BRAFおよびNRAS変異型メラノーマに対する、KRAS変異非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、ならびにBRAF変異型結腸直腸がん(CRC)マウス異種移植モデルに対する単剤療法として、マウス異種移植モデルにおいて腫瘍増殖の用量依存的阻害を示す。
【0067】
ベルバラフェニブは、いくつかのがんに対して安全かつ有効な治療を提供することが臨床試験で示されている。例えば、完了した非盲検の第Ia相用量漸増試験では、BRAF、KRAS、またはNRAS遺伝子に変異を有する固形腫瘍を有する患者におけるベルバラフェニブのいくつかの用量およびスケジュールが調査された(臨床試験NCT02405065)。少なくとも1回のベースライン後の腫瘍評価を受けた72名の対象のうち67名について、有効性を分析した。最良全奏効率(BORR)は8.96%(6/67の対象)であり、客観的奏効率(ORR)は4.48%(3/67の対象)であり、確認された最良全奏効としての部分奏効(PR)であった(メラノーマを有する2名の対象および消化管間質腫瘍を有する1名の対象)。ベルバラフェニブ100mg1日1回用量レベルまたはそれを上回るレベルで治療された対象の50.57%(34/67)において疾患制御が観察された。59名(88.06%)の対象が事象(疾患の進行または死亡)を発症し、その全てが進行性疾患(PD)として報告された。さらに、無増悪生存期間の中央値は11.53週であり、中央値の95%信頼区間は[7.12週、13.38週)であった。更新された結果では、BORRは10.45%(7/67対象)であり、95%正確信頼区間は[4.30%、20.35%]であった。ORRは4.48%のままである(3/67対象)。さらに、BRAF変異型メラノーマ対象に対するサブグループ再分析は、7.69%(1/13の対象)のBORRを示し、DCR、PFSの中央値および進行までの時間は全対象において変化しなかった。DOR中央値は、800mg1日2回群では30.18週に上昇し、100.29週である対象のDORを含む合計群では23.99週に上昇した。
【0068】
別の非盲検第Ib相用量拡大試験では、BRAF、KRASまたはNRAS遺伝子中に変異を保有する固形腫瘍を有する患者において、ベルバラフェニブを450mg1日2回の用量で評価した。登録後に少なくとも1用量のベルバラフェニブを服用し、ベースライン後に少なくとも1回の腫瘍評価を受けた63名の対象のうち59名について有効性を分析した。BORRは11.86%(7/59対象)であり、ORRは6.78%(4/59対象)であり、確認された最良全奏効としてのPRであった(メラノーマを有する3名の対象およびCRCを有する1名の対象)。対象の35.59%(21/59)において、疾患制御が観察された。59名の対象のうち50名(84.75%)が事象(疾患の進行または死亡)を発症し、1名の死亡例を除いてそのすべてがPDとして報告された。さらに、無増悪生存期間(PFS)の中央値は7.83週間であり、中央値の95%信頼区間は[7.26週間、8.26週間]であった。この研究における全奏効の奏効中央期間(DOR)は、奏効者7名からの15.66週間であった。彼らのうち、2名のBRAF変異型メラノーマ応答者は、22.49週間のDOR中央値を示した。
【0069】
健康な対象における別の第I相、単回投与、無作為化、クロスオーバー相対バイオアベイラビリティおよび食効試験では、ベルバラフェニブ曝露に対する第I相から第II相錠剤への製剤変更の影響を評価した(臨床試験GP41348)。合計18名の健康な対象が試験に登録され、以下の無作為化された治療を受けた:摂食状態で150mgおよび50mgの第I相錠剤を一錠ずつ、摂食状態で100mgの第II相錠剤を2錠、または絶食状態で100mgの第II相錠剤を2錠投与し、処置間の18日間の休薬期間を伴う。絶食状態と比較して摂食状態では、ベルバラフェニブ曝露に対する食物のプラスの効果が存在した。ベルバラフェニブ曝露、CmaxおよびAUC0-infは、200mgの単回用量で健康な対象にベルバラフェニブを摂食状態で投与した場合、絶食状態と比較して、それぞれ約2.2倍および2.8倍増加された。この試験では、重篤な有害事象、特別な関心のある有害事象または死亡は報告されなかった。
【0070】
ベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩は、有効成分ベースで1日当たり約200mg~約1300mg、約400mg~約1200mg、約600mg~約1200mg、または約800mg~約1000mgで適切に投与される。いくつかのそのような態様では、対象は、1日当たり約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1150mg、約1200mg、約1250mgもしくは約1300mgのベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩を投与される。いくつかの他のこのような態様では、対象は、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mgもしくは約500mgのベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩を1日に2回投与される(「BID」)。いくつかの他のこのような態様では、対象は、約300mgもしくは約400mgのベルバラフェニブまたはその薬学的に許容され得る塩を1日に2回投与される。他の投与レジメンを使用して、1日3回または1日4回などの1日の総用量を達成し得る。1日2回、3回または4回などの任意のそのような投薬レジメンでは、各用量はほぼ等しくするのが適切である。例えば、1日用量が900mgである場合、それぞれ450mgの1日2回用量またはそれぞれ300mgの1日3回用量を使用し得る。
【0071】
いくつかの態様では、ベルバラフェニブは、28日間のサイクルの第1~21日目に投与されてもよい。いくつかの態様では、ベルバラフェニブは、28日間のサイクルの第1~28日目に投与されてもよい。
コビメチニブ
【0072】
コビメチニブは、化学名(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]メタノンを有し、以下の構造(II)を有する。
【0073】
Cotellic(登録商標)は、コビメチニブのフマル酸塩である。コビメチニブは、米国特許第7,803,839号および同第8,362,002号に記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が組み入れられる。コビメチニブは、MEK1およびMEK2(RAS/RAF/MEK/ERK(MAPK)の中心成分)経路の可逆的で強力かつ高度に選択的な阻害剤であり、複数のヒトがんモデルにおいて単剤抗腫瘍活性を有する。
【0074】
コビメチニブは、正常な細胞増殖を促進するためにERKを介して下流にシグナル伝達するMAPK経路の中心成分であるMEK1およびMEK2の強力かつ高度に選択的な阻害剤である。経路のアップレギュレーションは、構成的シグナル伝達および悪性形質転換をもたらし、しばしばRASおよびBRAFにおける発癌性活性化変異に起因して、腫瘍の大部分で起こる(Bamford S,Dawson E,Forbes S,ら.The COSMIC(Catalogue of Somatic Mutations in Cancer)database and website.Br J Cancer 2004;91:355-8)。BRAFV600によって形質転換されたがん細胞は、インビトロでMEK阻害に対して例外的に感受性である。アロステリックMEK阻害剤は、メラノーマ細胞においてG1期増殖停止をもたらし得る(Solit DB,Garraway L,Pratilas C,ら.BRAF mutation predicts sensitivity to MEK inhibition.Nature 2006,439:358-62;Haass NK,Sproesser K,Nguyen TK,ら.The mitogen-activated protein/extracellular signal-regulated kinase inhibitor AZD6244(ARRY-142886)induces growth arrest in melanoma cells and tumor regression when combined with docetaxel.Clin Cancer Res 2008,14:230-9)。
【0075】
インビトロでは、MEK阻害剤は、BRAFV600変異型陽性メラノーマ細胞の細胞増殖、軟寒天コロニー形成およびマトリゲル浸潤を減少させ、BRAFV600変異型陽性メラノーマ異種移植片に対しても有効である(Solitら、2006)。NRAS変異型メラノーマはMAPK経路シグナル伝達に高度に依存しており、MAPKシグナル伝達はNRAS変異型メラノーママウスモデルにおける腫瘍の進行に必要である(Dorard C,Estrada C,Barbotin C,ら.RAF proteins exert both specific and compensatory functions during tumour progression of NRAS-driven melanoma.Nat Commun 2017;8:1-13)。非臨床試験において、CI-1040(MEK阻害剤)は、SK-MEL-130(NRASQ61R変異型)メラノーマ細胞の細胞生存率および経路シグナル伝達を低下させ(Solitら、2006)、ビニメチニブ(MEK阻害剤)は、BRAF変異型メラノーマ細胞株およびNRAS変異型メラノーマ細胞株の細胞増殖を阻害した(Winski L,Anderson D,Bouhana K,らMEK162(ARRY-162),a novel MEK1/2 inhibitor,inhibits tumor growth regardless of KRas/Raf pathway mutations.EORTC-NCI-AACR,Berlin [poster].2010)。
【0076】
単剤として投与されたコビメチニブの薬物動態(PK)は、BRAF、NRAS、またはKRAS変異を有する患者における1日当たり60mgのコビメチニブ用量の評価を含む第Ia相用量漸増試験MEK4592gにおける単回および複数回投与後の経口投与後のがん患者において特徴付けられている。全体で6名の患者(その全員がメラノーマを有していた;6.2%)が確認された部分奏効(PR)を有し、28名の患者(28.9%)が安定疾患(SD)を有し、40名の患者(41.2%)が進行性疾患を有していた。14名の結腸直腸がん(CRC)患者のうち、すべての患者が進行性疾患(PD)を経験した。Study MEK4592gのステージIIIでは、18名の患者が登録され、18名の患者のうち14名に対して最良全奏効が評定された。4名の患者(22.2%)が最良全奏効としてSDを有し、2名の患者(11.1%)が未確認の腫瘍応答を有した。
【0077】
コビメチニブは、中程度の吸収速度(最大濃度までの時間[tmax]の中央値が1~3時間)および48.8時間の平均終末相半減期(t1/2)(23.1~80時間の範囲)を有する。コビメチニブは、濃度非依存的に血漿タンパク質に結合する(95%)。コビメチニブは、0.05mg/kg(70kgの成人に対して約3.5mg/kg)~80mgの用量範囲で線形薬物動態を示し、健康な対象での試験MEK4952gにおいて、絶対バイオアベイラビリティは、45.9%(90% CI:39.74%、53.06%)であると決定された。コビメチニブの薬物動態は、健康な対象における絶食状態での投与と比較して、摂食状態で投与された場合に変化しない。食物はコビメチニブの薬物動態を変化させないので、コビメチニブは食物とともに、または食物なしで投与され得る。プロトンポンプ阻害剤であるラベプラゾールは、絶食状態でのコビメチニブ単独投与と比較して、高脂肪食の存在下または非存在下で投与されたかどうかにかかわらず、コビメチニブの薬物動態に対して最小限の効果を有するようである。したがって、胃内pHの増加はコビメチニブの薬物動態に影響を与えず、胃内pHの変化に対して感受性がないことを示している。
【0078】
コビメチニブ塩、結晶形態およびプロドラッグは、本開示の範囲内である。コビメチニブ、分取方法および治療的使用は、国際公開番号WO2007/044515、WO2014/027056およびWO2014/059422に開示されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。例えば、本開示のいくつかの態様では、MEK阻害剤は、結晶性ヘミフマル酸コビメチニブ多形A形である。
【0079】
コビメチニブまたはその薬学的に許容され得る塩の本開示の範囲内の用量は、有効成分ベースで1日当たり約20mg~約100mg、約40mg~約80mgまたは約60mgである。いくつかの態様では、コビメチニブの用量は、約60mg、約40mg、または約20mgである。
【0080】
コビメチニブは、好適には1日1回投与される。いくつかの態様では、コビメチニブは、28日間の処置サイクルの21日間連続して1日1回投与される。いくつかの態様では、コビメチニブは、28日間の処置サイクルの1~21日目に1日1回投与される。いくつかの態様では、コビメチニブは、28日間の処置サイクルの3~23日目に1日1回投与される。
アテゾリズマブ
【0081】
アテゾリズマブは、MPDL3280A(CAS登録番号:1380723-44-3)としても知られている。アテゾリズマブは、PD-L1を標的とし、PD-L1と、その受容体であるPD-1およびB7-1(CD80としても知られる。両方ともT細胞上に発現される阻害性受容体として機能する)との間の相互作用を阻害するヒト化IgG1モノクローナル抗体である。アテゾリズマブによるPD-L1結合の治療的遮断(Therapeutic blockade)は、腫瘍特異的T細胞応答の大きさおよび質を増強し、抗腫瘍活性の改善をもたらすことが示されている(Fehrenbacher L,Spira A,Ballinger M,ら.Atezolizumab versus docetaxel for patients with previously treated non-small-cell lung cancer(POPLAR):a multicentre,open label,phase 2 randomised controlled trial.Lancet 2016,387:1837-46;Rosenberg JE,Hoffman-Censits J,Powles T,らAtezolizumab in patients with locally advanced and metastatic urothelial carcinoma who have progressed following treatment with platinum-based chemotherapy:a single-arm,multicentre,phase 2 trial.Lancet 2016,387:1909-20)。アテゾリズマブは、Fc受容体への結合が最小限であり、したがって、検出可能なFcエフェクター機能および活性化エフェクターT細胞の関連する抗体-媒介性クリアランスを排除する。
【0082】
単剤として投与されたアテゾリズマブの薬物動態は、試験PCD4989gの臨床データに基づいて特徴付けられており、TNBCの一次処置における現在進行中の第III相試験WO29522と一致している。アテゾリズマブ抗腫瘍活性は、1~20mg/kgの用量にわたって観察されている。全体として、アテゾリズマブは、3週間ごとに(q3w)1mg/kg以上の用量について、線形であり、典型的なIgG1抗体と一致する薬物動態を示す。薬物動態データ(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Bai S,Jorga K,Xin Y,ら,A guide to rational dosing of monoclonal antibodies,Clin Pharmacokinet 2012;51:119-35)は、固定用量または体重に対して調整された用量での曝露における臨床的に有意な差がないことを示唆している。アテゾリズマブは、q3wおよびq2wの投与スケジュールで試験した。2週間ごと(q2w)の800mgのアテゾリズマブの固定用量(10mg/kgq2wの体重ベースの用量に相当)は、3週間毎(q3w)に投与される1200mgの第III相用量と同等の曝露となる。q3wスケジュールは、複数の腫瘍型にわたるアテゾリズマブ単独療法の複数の第III相試験で使用されており、q2wは主に化学療法レジメンと組み合わせて使用される。試験PCD4989gでは、Kaplan-Meier推定による全24週間無増悪生存率(PFS)は33%(95%CI:12%、53%)であった。
【0083】
本開示のアテゾリズマブ用量は、適切には約500mg~約2000mg、約500mg~約1000mg、約750mg~約1000mg、約750mg~約2000mg、約1000mg~約2000mg、約1500mg~約1750mgである。いくつかのそのような態様では、対象は約840mgのアテゾリズマブを投与される。いくつかのそのような態様では、対象は約1680mgのアテゾリズマブを投与される。いくつかのそのような態様では、対象は、28日間の処置サイクルの14日間ごとにアテゾリズマブを投与される。いくつかの他の態様では、対象は、28日間の処置サイクルの1日目および15日目にアテゾリズマブを投与される。他の態様では、対象は、28日間の処置サイクルの4週間ごとにアテゾリズマブを投与される。他の態様では、対象は、28日間の処置サイクルの1日目にアテゾリズマブを投与される。一態様では、対象は、28日間の処置サイクルの1日目に約1680mgのアテゾリズマブを投与される。
メラノーマ
【0084】
本開示の範囲内にあるメラノーマは、NRAS変異を有する。いくつかの態様では、メラノーマは、NRAS活性化変異を有する、American Joint Committee on Cancer、第8改訂版(Amin MB,Edge S,Greene F,ら(編).AJCC Cancer Staging Manual(第8版).Springer International Publishing:American Joint Commission on Cancer;2017)によって定義されるように進行する。NRAS変異陽性状態の決定は、例えば、限定されないが、米国食品医薬品局、米国病理学者協会、またはEU諸国でのインビトロ診断でCEマークされた(欧州適合性)などの、国家保健局によって承認された臨床変異試験を使用することによって実施し得る。いくつかの態様では、NRAS変異陽性状態は、エクソン2のNRAS遺伝子コドン12、13およびエクソン3のコドン61において生じる変異として定義される。
【0085】
いくつかの態様では、メラノーマは、NRASQ61K変異、NRASQ61R変異、NRASG12C変異、NRASQ61L変異、NRASG13D変異、またはそれらの任意の組み合わせを有する。いくつかの他の態様では、メラノーマは、NRASG12D変異、NRASG12C変異、またはそれらの組合せを有する。
【0086】
いくつかの態様では、メラノーマは転移性であるか、または切除不能である。
【0087】
いくつかの態様では、メラノーマは、免疫療法、BRAF V600E療法、または免疫療法とBRAF V600E療法との組み合わせによる処置後に対象において進行し続けた。
【0088】
いくつかの態様では、メラノーマは、抗PD-1薬物または抗PD-L1薬物による一連の処置が以前に投与されたことがある対象において進行し続ける。
併用療法
【0089】
(i)ベルバラフェニブおよびコビメチニブ、ならびに(ii)ベルバラフェニブ、コビメチニブおよびアテゾリズマブの併用療法は、図1に示され、本明細書に記載されるプロトコルに従って評価される。
【0090】
このプロトコルは、抗PD-1/PD-L1療法を含む最大2種類の全身抗がん療法を受けたNRAS変異型の転移性または切除不能な局所進行性皮膚メラノーマの患者における、コビメチニブまたはコビメチニブ+アテゾリズマブのいずれかと組み合わせた、単剤としてのベルバラフェニブの安全性、薬物動態および予備的抗腫瘍活性を評価するための第Ib相非盲検多施設試験に関する。患者は、アジュバント療法において抗PD-1または抗PD-L1で処置されていてもよい。
【0091】
この試験は、以下の3つの処置レジメンをそれぞれの群において評価する;最大15名の患者のベルバラフェニブ単剤療法群(Belva群);最大約43名の患者のベルバラフェニブ+コビメチニブ群で、初期用量設定段階(9~24名の患者)を登録し、それに続いて選択された用量を最大25名の患者にまで拡大:合計患者約25名のベルバラフェニブ+コビメチニブ+アテゾリズマブ群:およびおよそ25名の合計患者のベルバラフェニブ+コビメチニブ+アテゾリズマブ群、安全導入段階(10名の患者)とそれに続く拡大期。
【0092】
いくつかの態様では、ベルバラフェニブは、食物とともに投与される。
【0093】
いくつかの態様では、本開示の併用療法は、ヒト対象における扁平上皮細胞癌腫の発生がないことを特徴とする。
【0094】
ベルバラフェニブ単剤療法群
【0095】
最大15名の患者がBelva群に登録され、各28日間サイクルの1~28日目に錠剤形態で400mgのベルバラフェニブをBIDで投与される。
【0096】
ベルバラフェニブのPK特性評価のための血漿サンプルを、表1に概説されるように収集する。3群全てのサンプリングスケジュールは、非コンパートメント分析および/または集団PK(popPK)手法を用いたベルバラフェニブ薬物動態の特性評価が可能になるように設計されている。(ベルバラフェニブがコビメチニブまたはコビメチニブ+アテゾリズマブのいずれかと同時投与される)併用群からのベルバラフェニブPKデータを、ベルバラフェニブ単独療法群または以前の第I相試験における単剤ベバラフェニブと比較して、ベルバラフェニブ曝露が変化しているかどうかを評価する。表1において:「C」はサイクルを指し、「D」は日を指し;「PBMC」は、末梢血単核細胞を指し、「PK」は薬物動態を指す。
【0097】
【表1】
【0098】
ベルバラフェニブおよびコビメチニブ群
【0099】
患者は、以下の2つの段階でBelva+Cobi群に登録される:最初の用量設定段階と、それに続く拡大段階。
【0100】
ベルバラフェニブおよびとコビメチニブの組み合わせは、MEK阻害剤の単剤またはRAF阻害剤と比較して、MAPK経路依存性を示す腫瘍(例えば、KRAS、NRAS、またはBRAF変異)においてERK産生をより深く抑制し、TGIをより大きくすると考えられる。RAF阻害剤およびMEK阻害剤の間の相乗効果は、MEK阻害剤の存在下でのRAFキナーゼシグナル伝達に対するRAS変異腫瘍の依存性の増加に起因し得るとさらに考えられる。
【0101】
用量設定段階の目的は、組み合わせて使用される場合のベルバラフェニブおよびコビメチニブの推奨用量を特定することである。およそ9~24名の患者がこの段階に登録される。3~6名の患者からなる投与群をそれぞれ処置レジメンに従って処置し、各28日間サイクルの1~28日目に300または400mgのベルバラフェニブをBIDで、各処置サイクルの1~21日目に20、40または60mgのコビメチニブとQDで組み合わせて投与する。用量設定段階は、28日間の用量制限毒性(DLT)評定ウィンドウ(1サイクル)を有する従来の3×3スキーマからなる。ベルバラフェニブは強力なRAF阻害剤であり、コビメチニブは強力なMEK阻害剤であるので、ベルバラフェニブ+コビメチニブ群におけるDLT基準を用いた用量設定は、MAPK経路阻害の潜在的な複合効果を特徴付けるために実施される。
【0102】
DLTは、そのような事象が治験責任医師によって別の明確に特定可能な原因(例えば、文書化された疾患進行、併用薬または既存の投薬、または併発疾患)に起因すると考えられない限り、転帰に関係なく、おそらくベルバラフェニブおよび/またはコビメチニブに関連すると治験責任医師によって決定された以下の有害事象のいずれか1つとして定義される。事象は以下の通りである。3日以上持続する最大の支持療法薬にもかかわらず。グレード3以上の悪心、嘔吐または下痢がある。グレード3以上の出血。14日以内にベースラインまで回復しないグレード2以上の視覚障害(機器の日常生活動作の制限)。安静時LVEFが39%~20%、またはLVEFが40%~49%で、ベースラインから10ポイント以上低下と定義される、グレード3以上の左室駆出率(LVEF)の低下。グレード4以上の貧血7日を超えて続く、グレード4の好中球減少症または血小板減少症。臨床的に有意な出血を伴うグレード3の血小板減少症。以下のように定義される重度の肝毒性:以下の例外を除き、7日を超えて続く、グレード3以上の総ビリルビンまたはALT/AST、またはALPの上昇:転移の結果としてベースライン時にグレード2の肝トランスアミナーゼまたはALPを有する患者については、肝トランスアミナーゼまたは10×ULNのALPをDLTとみなし;肝トランスアミナーゼ(ALTまたはAST)がベースラインの3倍を超え、かつ直接ビリルビンが正常値上限の2倍を超えるか、臨床的黄疸を伴う場合、胆汁うっ滞やその他の要因がない場合(例えば、転移性疾患の悪化、既知の肝毒性物質への同時曝露、または実証された感染性病因)(Hyの法則による)。Fridericiaの方法を使用して補正されたQTc間隔(QTcF)は、ベースライン(投与前)と比較して60msを超えて増加し、および/または絶対QTcF値が500msを超える(反復測定によって確認)。以下を除き、その他の3以上のグレードの非血液学的/非肝臓主要臓器有害事象:適切な支持療法で7日以内にグレード2以下に回復するグレード3の発疹;7日以内にグレード2以下に回復するグレード3以上の疲労;24時間以下のグレード3の発熱(40℃を超えると定義);無症候性であり、治験責任医師によって臨床的に重要でないとみなされるグレード3の検査所見の異常;任意のグレードの脱毛症。基礎疾患または外因によるものでないことが明確な死亡。
【0103】
ベルバラフェニブおよびコビメチニブの組み合わせの用量設定段階では、ベルバラフェニブの開始用量は、最初のコホートでは300mg PO BIDとなる。その後のコホートでは、ベルバラフェニブの用量を400mg BIDに増加させる。ベルバラフェニブと組み合わせたコビメチニブの開始用量は、用量設定段階の最初の2つのコホートにおける各28日サイクルの最初の21日間、1日20mgとする。コビメチニブの用量は、各28日間サイクルの最初の21日間または安全閾値が観察されるまで、毎日最大用量60mgまで20mgずつ増加させる。ベルバラフェニブおよびコビメチニブの用量が用量設定段階で選択された後、これらの用量は、拡大段階中にベルバラフェニブ+コビメチニブ群に登録された最大25名の患者においてさらに評価される。
【0104】
用量の決定は、DLTウィンドウの持続時間に関係なく、以下の規則に従って行われる。各用量設定コホートでは、最低3名の患者が最初に登録される。最初の3名のDLT評価可能患者のいずれもがDLTを経験しない場合、次の最高用量レベルでの次のコホートの登録が進められる。最初の3名のDLT評価可能な患者のうち1名がDLTを経験する場合、コホートは最低6名の患者に拡大される。最初の6名のDLT評価可能患者においてさらなるDLTがない場合、次の最高用量レベルでの次のコホートの登録が進められる。コホート内の最初の6名のDLT評価可能な患者のうち2名以上がDLTを経験する場合、MTDを超えており、用量漸増を停止する。先のコホートはまた、6名の患者がその用量レベルで既に評価されていない限り、最低6名の患者に拡大される。任意の用量レベルでMTDを超える場合、最初の6名のDLT評価可能な患者(すなわち、33%未満)のうち2名未満がDLTを経験する最高用量がMTDとする。いずれの用量レベルにおいてもMTDを超えない場合、この試験において投与されるベルバラフェニブおよびコビメチニブの用量の最も高い組合せを、最大投与用量(MAD)とする。任意の用量レベルは、治験依頼者および治験責任医師による非DLT有害事象の評価に基づいて正当化される場合、DLTの非存在下で拡大され得る。
【0105】
最初の用量設定コホートの最初の6名の患者に2つのDLTが存在する場合(300mgのベルバラフェニブ BID+20mgのコビメチニブ QDを28日間の各サイクルの最初の21日間毎投与)、コビメチニブについてQD投与から投与TIWまでの段階的縮小が起こる。各28日間のサイクルのうちの最初の21日間について、400mgのベルバラフェニブ BIDに増量し、20mgTIWへのコビメチニブの用量減少を伴うデエスカレーションコホートが登録のために開始される(図4を参照されたい)。
【0106】
デエスカレーションコホート(400mgのベルバラフェニブBID+20mgのコビメチニブTIW)の最初の6名の患者に2つのDLTが存在する場合、各28日間のサイクルのうちの最初の21日間、300mgのベルバラフェニブ BID+20mgのコビメチニブ TIWでの新しいコホートにおいて、ベルバラフェニブの用量減少が許容される。その点を超える検討のために、さらなる用量減少コホートを開始することはない。
【0107】
DLT以外の理由で28日間のDLT評価ウィンドウを完了しない用量設定段階の患者は、DLT評価のために評価不可能であるとみなされ、同じ用量レベルで追加の患者と置き換えられ得る。さらに、DLTを経験していないが、20mgのQDスケジュールで14回超のベルバラフェニブ、5回超のコビメチニブ、および/または20mgのTIWスケジュールで超のコビメチニブを投与しなかった患者は、逃した用量の連続性にかかわらず、DLT評価において評価不可能であるとみなされ、同じ用量レベルで追加の患者によって置き換えられ得る。ベルバラフェニブおよび/またはコビメチニブの用量および/または頻度は、医療モニターと相談してDLTを管理するためのDLT評価ウィンドウの間に減少させ得る。DLTを経験しておらず、DLTの評価を混乱させるDLT評価ウィンドウの間に支持療法を受けている患者は、DLT評価のために評価不可能であるとみなされ、医療モニターの裁量で置き換えられ得る。
【0108】
コビメチニブのPK特性評価のための血漿サンプルを、表2および表3に概説されるように収集する。ベルバラフェニブ+コビメチニブ群における用量設定のためのサンプリングスケジュールは、非コンパートメント分析および/またはpopPK手法を用いたコビメチニブ薬物動態の特性評価を可能にするように設計されている。サンプリングスケジュールは、ベルバラフェニブ+コビメチニブ拡大群およびベルバラフェニブ+コビメチニブ+アテゾリズマブ群では、まばらなサンプリングスケジュールに移行し、popPK法を用いて重要なコビメチニブPKパラメータの推定を可能にするように設計される。ベルバラフェニブ+コビメチニブ群およびベルバラフェニブ+コビメチニブ+アテゾリズマブ群からのコビメチニブPKデータを単剤コビメチニブと比較して、コビメチニブ曝露が変化しているかどうかを評価する。表2および表3において:「C」はサイクルを指し、「D」は日を指し;「PBMC」は、末梢血単核細胞を指し、「PK」は薬物動態を指す。
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
ベルバラフェニブ、コビメチニブ、およびアテゾリズマブ群
【0112】
患者は、ベルバラフェニブ+コビメチニブ+アテゾリズマブ群では、2つの段階:最初の安全導入段階とそれに続く拡大段階に登録される。
【0113】
ベルバラフェニブ、コビメチニブ、およびアテゾリズマブの組み合わせは、単剤療法と比較して抗腫瘍活性が増大していると考えられる。より具体的には、ベルバラフェニブおよびアテゾリズマブの組み合わせは、RAFアイソフォームおよびPD-1経路の同時阻害をもたらし、RASおよびRAFにおける変異を有する腫瘍における有効性が改善されると考えられる。
【0114】
ベルバラフェニブおよびコビメチニブの推奨用量が決定された後、約10名の患者が安全導入段階に登録される。群は、用量決定が行われ、ベルバラフェニブ+コビメチニブ用量設定群からの対応する安全性データの評定が完了し、全ての関連データが検討された後にのみ作動する。
【0115】
安全導入段階の全ての患者を28日間追跡した後、治験依頼者安全委員会は安全性データを検討して、拡大段階を開始すべきかどうかを判断する。安全性導入段階の患者の80%未満が28日間の安全性導入期間中にグレード3以上の有害事象を経験した場合、拡大段階への登録が開始される。
【0116】
拡大段階が登録されている間、最初の10名の患者が少なくとも90日間の試験処置を受けた後、治験依頼者安全委員会は安全性データを再評定し、これにより、時間経過、遅発性事象、および可逆性を含む毒性の徹底的な評価が可能になる。拡張段階には最大25名の患者が登録される。
【0117】
各28日間のサイクルにおいて、患者は、4週間ごとに(Q4W)、IV注入によって、1~28日目に推奨用量BIDのベルバラフェニブ、1~21日目に推奨用量のコビメチニブ、および1680mgのアテゾリズマブを投与される。
【0118】
アテゾリズマブのPK特性評価のための血清サンプルは、表4に概説されるように収集される。ベルバラフェニブ+コビメチニブ+アテゾリズマブ群におけるサンプリングスケジュールは、popPK手法を使用して重要なアテゾリズマブPKパラメータの推定を可能にするように設計されている。ベバラフェニブ+コビメチニブ+アテゾリズマブ群からのアテゾリズマブPKデータをアテゾリズマブ単剤と比較して、アテゾリズマブ曝露が変化しているかどうかを評価する。表4において:「C」はサイクルを指し、「D」は日を指し;「PBMC」は、末梢血単核細胞を指し、「PK」は薬物動態を指す。アテゾリズマブ抗薬物抗体(ADA)の評定のためのサンプリングスケジュールは、ベルバラフェニブおよびコビメチニブと組み合わせて投与された場合のQ4Wスケジュールで与えられるアテゾリズマブの免疫原性の評価を可能にすべきであると考えられる。
【0119】
【表4】
【0120】
PKおよびバイオマーカー評価
【0121】
ベルバラフェニブの濃度は、上記のように様々な時点で収集されたサンプルから分析される。ベルバラフェニブ群およびベルバラフェニブ+コビメチニブ群については、サイクル1、1日目および定常状態に適切な場合、非コンパートメント法を使用して、投与からの時間に対するベルバラフェニブの血漿中濃度から以下のPKパラメータを計算する。Cmax、tmax、公称時間0から時間tまでの濃度-時間曲線下面積(AUC)(AUC0-t)。さらに、ベルバラフェニブの血漿中濃度は、全ての群について個々の値として報告され、適切な場合にはデータが許す限り、処置群別およびサイクル別に要約される。個々のおよび平均のベルバラフェニブ濃度を処置群および日ごとにプロットする。ベルバラフェニブ濃度データを、確立された集団PKモデルを使用して他の試験からのデータと共にプールして、データによって保証されるクリアランス、分布容積およびAUC等のPKパラメータを導出し得る。関連するPKパラメータと用量、安全性、有効性またはバイオマーカーの結果との潜在的な相関関係を調べ得る。
【0122】
上記のように、様々な時点で採取したサンプルからコビメチニブ濃度を分析することになる。ベルバラフェニブ+コビメチニブ群については、サイクル1の1日目および定常状態に適切な場合、非コンパートメント法を用いてコビメチニブの血漿中濃度から以下のPKパラメータ:Cmax、tmax、およびAUC0-tを導出する。ベルバラフェニブ+コビメチニブ群およびベルバラフェニブ+コビメチニブ+アテゾリズマブ群については、コビメチニブの血漿中濃度が個々の値として報告され、適切な場合およびデータが許す場合、処置群およびサイクルによって要約される。個々のコビメチニブ濃度および平均コビメチニブの平均濃度を処置群および日ごとにプロットする。コビメチニブ濃度のデータは、データによって保証されるように、クリアランス、分布容積およびAUCなどのPKパラメータを導出するために、確立された集団PKモデルを使用して他の研究からのデータと共にプールされ得る。関連するPKパラメータと用量、安全性、有効性またはバイオマーカーの結果との潜在的な相関関係を調べ得る。
【0123】
上記で概説したように、アテゾリズマブ濃度を測定する。アテゾリズマブの血清中濃度は、個々の値として報告され、適切な場合およびデータが許す場合、処置群別およびサイクル別に要約される(平均、標準偏差、変動係数、中央値、範囲、幾何平均、および幾何平均変動係数)。個々の血清アテゾリズマブ濃度および血清アテゾリズマブ濃度の中央値を処置群および日ごとにプロットする。アテゾリズマブ濃度データは、データによって正当化されるように、クリアランス、分布容積およびAUCなどのPKパラメータを導出するために、確立された集団PKモデルを使用して他の研究からのデータと共にプールされ得る。関連するPKパラメータと用量、安全性、有効性またはバイオマーカーの結果との潜在的な相関関係を調べ得る。
【0124】
ADA分析は、ベルバラフェニブ+コビメチニブ+アテゾリズマブ群に登録された患者の免疫原性分析集団に対して行われる。免疫原性分析には、アテゾリズマブについて少なくとも1つのADA評価を受けた全ての患者が含まれる。ベースライン時(ベースライン時有病率)および薬物投与後(ベースライン発生後)のADA陽性患者およびADA陰性患者の数および割合を処置群ごとに要約する。ベースライン時有病率の要約は、少なくとも1回の評価可能なベースラインADA評価を受けた患者に基づき、ベースライン後の発生率の要約は、少なくとも1つの評価可能なベースライン後のADA評価による処置患者に基づく。ベースライン後の発生率を決定するとき、患者は、ADA陰性であるか、またはベースラインでデータが欠落しているが、試験薬物曝露後にADA応答を発症する場合(処置誘発性ADA応答)、または患者がベースラインでADA陽性であり、1つ以上のベースライン後のサンプルの力価がベースラインサンプルの力価よりも少なくとも0.60力価単位大きい場合(処置増強ADA応答)、ADA陽性であるとみなされる。患者がADA陰性であるかもしくはベースラインでデータが欠落しており、全てのベースライン後のサンプルが陰性である場合、または患者がベースラインでADA陽性であるが、ベースライン試料の力価よりも少なくとも0.60力価単位大きい力価を有するベースライン後のサンプルを有さない(処置は影響を受けない)場合、患者はADA陰性であるとみなされる。ADAの状態と安全性、活性、PK、およびバイオマーカー評価項目の間の関係は、記述統計によって分析および報告され得る。
【0125】
バイオマーカー評価は、単一薬剤としてのベルバラフェニブおよびコビメチニブおよび/またはアテゾリズマブと組み合わせたベルバラフェニブの作用機序を理解し、疾患進行および処置に対する応答を評価するための予後および予測バイオマーカーを同定するために行われる。
【0126】
ベースライン時および試験中に血液サンプルを収集し、T細胞活性化およびリンパ球亜集団に関連するバイオマーカーなどのバイオマーカーの変化を評価する。
【0127】
将来の試験のためのベルバラフェニブ、コビメチニブ、およびアテゾリズマブの最適な用量の組み合わせを確認するために、循環腫瘍DNA(ctDNA)の調節を評価して処置の有効性をモニターする。がんを有する患者の血液標本から得られた無細胞DNAが、腫瘍内の細胞のDNAおよび変異状態を表すctDNAを含むという証拠が増えつつある(Diehlら.2008;Maheswaranら.2008)。ベースライン時および試験中に血液サンプルを収集し、処置効果またはベルバラフェニブ併用に対する耐性の出現の指標としてctDNAにおける腫瘍突然変異状態の変化を評価する。処置前、処置中の様々な時点、および試験が進行した後に患者から収集されたctDNAの分析は、ベルバラフェニブに対する応答および獲得耐性の機構を特定するのに役立ち得る。
【0128】
バイオマーカーおよび有効性評価項目の間の相関を調査して、どの患者が本開示の薬物の組合せから恩恵を受ける可能性がより高いかを予測し得る血液ベースのバイオマーカーを同定する。
【0129】
RNAシーケンシング分析およびDNA抽出のための組織および血液サンプルを収集し、全ゲノムシーケンシング(WGS)または全エクソームシーケンシング(WES)を可能にして、試験薬物に対する応答を予測する、研究薬物に対する獲得耐性に関連する、または疾患生物学の知識および理解を高め、応答に対する免疫系の寄与を理解し得るバリアントを同定する。WGSおよびWESは、それぞれゲノムおよびエクソームの包括的な特性評価を提供する。この試験で収集された臨床データと共に、WGSおよびWESは、有効性および安全性を監視するため、またはどの患者が薬物に反応するかもしくは有害事象を発症する可能性がより高いかを予測するための新しい治療アプローチまたは新しい方法を開発する機会を増加する可能性がある。
【0130】
患者間の腫瘍の不均一性および臨床応答に対するその関係を特性評価するために、ベースライン時(保管組織または処置前生検)、処置中、および疾患進行時(進行の最初の証拠または進行の確認のいずれか、試験治療投与の最終日に最も近いもので行われる新鮮生検)に腫瘍組織を収集する。腫瘍組織は、PD-L1発現などの腫瘍免疫状況、および腫瘍免疫の他の成分について評価される。さらに、DNAおよび/またはRNAをこれらの腫瘍サンプルから抽出して、DNAおよび/またはRNAの次世代シーケンシング(NGS)を可能にする。これらの分子特性解析は、処置からより利益を得る可能性が高い患者を特定するために臨床応答に関連して分析される。これらのバイオマーカーも予後値を有し得るので、疾患進行とのそれらの潜在的な関連性も調査される。
【0131】
保存された腫瘍組織または新鮮な腫瘍生検をベースライン時に収集し、試験中のその後の薬物処置の耐性、疾患進行、および臨床的利益に関連する腫瘍組織バイオマーカーの分析を可能にする患者間の腫瘍の不均一性および臨床応答に対するその関係を特性評価するために、ベースライン時(保管組織または処置前生検)、処置中、および疾患進行時(進行の最初の証拠または進行の確認のいずれか、試験治療投与の最終日に最も近いもので行われる新鮮生検)に腫瘍組織を収集する。腫瘍組織は、PD-L1発現などの腫瘍免疫状況、および腫瘍免疫の他の成分について評価される。さらに、DNAおよび/またはRNAをこれらの腫瘍サンプルから抽出して、DNAおよび/またはRNAの次世代シーケンシング(NGS)を可能にする。これらの分子特性解析は、処置からより利益を得る可能性が高い患者を特定するために臨床応答に関連して分析される。これらのバイオマーカーはまた、本開示の薬物の組合せに対する応答および耐性の予測などの予後値を有し得るので、疾患進行とのそれらの潜在的な関連性もまた調査される。処置前に取得された組織と進行時に取得された組織との間のバイオマーカーとの比較は、この組み合わせに対する獲得耐性の潜在的な機構をさらに解明するであろう。疾患進行時に採取された生検からの詳細な変異および免疫プロファイルはまた、その後の治療選択肢を考慮するためのデータを提供し得る。
【0132】
標的化NGSおよび全エクソーム、ゲノムまたは単一核RNA配列決定などのDNAおよびRNA配列決定技術は、単独で、ならびにコビメチニブおよび/またはアテゾリズマブと組み合わせて投与された場合、ベルバラフェニブに対する応答および/または耐性のバイオマーカーを同定するための独特の機会を提供する可能性がある。がん関連遺伝子の配列決定は、ベルバラフェニブに対する耐性のデノボおよび獲得機構の同定をもたらし得る。NGS技術は大量の配列決定データを生成し得る。腫瘍DNAは、腫瘍形成プロセスのために、報告された染色体変化、および報告されていない染色体変化の両方を含み得る。以前に報告されていないゲノム変化における配列決定コールの制御を助けるために、投薬前の血液試料を採取して、変化が体細胞性であるかどうかを決定する。NGSはまた、疾患生物学の理解を助けるための腫瘍特異的体細胞変異に加えて、免疫および間質シグネチャならびにT細胞受容体のクローン性を同定するために腫瘍組織サンプルに対して実施されるであろう。
実施例
【0133】
Hanmi Research Centerの動物実験委員会は、実施例の動物実験プロトコルを承認した。
【0134】
実施例1
【0135】
NCT03284502は、RASまたはRAF変異を有する局所進行性または転移性固形腫瘍を有する患者において種々の用量レベルでコビメチニブと組み合わせたベルバラフェニブを調査する第1a/b相試験である。合計67名の対象がこの試験に登録されており、以下が含まれる。28日間のサイクルの1~28日目に200mgのベルバラフェニブをBIDで投与し、28日間のサイクルの21日間にわたって40mgのコビメチニブをQDで投与する7名の対象;28日間のサイクルの1~28日目に100mgのベルバラフェニブをBIDで投与し、28日間のサイクルの21日間にわたって20mgのコビメチニブをQDで投与する4名の対象;28日間のサイクルの1~28日目に200mgのベルバラフェニブをBIDで投与し、28日間のサイクルの21日間にわたって20mgのコビメチニブをQDで投与する27名の対象;28日間のサイクルの1~28日目に300mgのベルバラフェニブをBIDで投与し、28日間のサイクルの21日間にわたって20mgのコビメチニブをQDで投与する5名の対象;および28日間のサイクルの1~28日目に300mgのベルバラフェニブをBIDで投与し、28日間のサイクルの3週間にわたって20mgのコビメチニブをQODで(週に3回)投与する24名の対象。
【0136】
用量制限毒性(DLT)(グレード3の大腸炎、グレード3の下痢およびグレード3の悪心を含む)が、200mgのベルバラフェニブBID+40mgのコビメチニブQDの用量で処置されたDLT評価可能な3名の対象のうちの2名において報告された。他の用量レベルではDLTは報告されなかった。
【0137】
67名の対象のうち61名(91%)が、治験責任医師の因果関係評価(TEAE)に関係なく有害事象を経験した。対象の10%以上に生じるTEAEは、ざ瘡様皮膚炎(26名の対象;38.8%)、下痢(24名の対象;35.8%)、発疹(22名の対象;32.8%)、血中CPK上昇(18名の対象;26.9%)、食欲不振(15名の対象;22.4%)、発熱(14名の対象;20.9%)、便秘(13名の対象;19.4%)、貧血(11名の対象;16.4%)、疲労(10名の対象;14.9%)、無力症(8名の対象;11.9%)、および網脈絡膜症(7名の対象;10.4%)であった。TEAEの大部分はグレード1(5名の対象;7.5%)またはグレード2(31名の対象;46.3%)の重症度であった。グレード3以上のTEAEが25名の対象(37.3%)から報告され、13名の対象で報告された事象は、治験責任医師によってベルバラフェニブおよびコビメチニブの両方に関連すると考えられた。ベルバラフェニブおよびコビメチニブの両方に関連する最も一般的なグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は、血中CPK上昇、疲労(各3名の対象、4.5%)および下痢(2名の対象、3.0%)であった。試験期間中、2名の対象(3.0%)が、心停止および長期の食欲不振のグレード5の事象のために死亡した。グレード5の心停止が、200mgのベルバラフェニブ BID+40mgのコビメチニブQDで処置された対象において生じた。この事象は、治療医によってベルバラフェニブおよびコビメチニブの両方に関連すると考えられた。300mgのベバラフェニブ BID+20mgのコビメチニブQDで処置された対象においてグレード5の長期食欲不振の事象が発生した;その事象は、処置している医師による試験処置とは無関係であると考えられた。
【0138】
薬物動態分析により、ベルバラフェニブが、コビメチニブと組み合わせて、200mgおよび300mgの用量のベルバラフェニブ BIDで重複する定常状態曝露(AUC0-24)が示された。ベルバラフェニブ曝露量は単一薬剤曝露の範囲内であり、ベルバラフェニブ曝露に影響を及ぼすコビメチニブとの明らかな薬物-薬物相互作用は示されなかった。コビメチニブの定常状態曝露量は、用量正規化定常状態単剤コビメチニブ曝露と一致し、コビメチニブ曝露に影響を及ぼすベルバラフェニブとの明らかな薬物-薬物相互作用はないことが示された。
【0139】
実施例2
【0140】
実施例2では、NRAS変異型メラノーマ細胞におけるベルバラフェニブ、コビメチニブおよびそれらの組み合わせのインビトロシグナル伝達を評価した。SK-MEL-30(NRASQ61K)およびIPC-298(NRASQ61L)メラノーマ細胞を、1uMのベルバラフェニブ(Belva)、250nMのコビメチニブ(Cobi)、または両方の化合物の組み合わせ(Belva+Cobi)で処置し、0、3、6、24、および48時間で評価した。細胞を、ウエスタンブロットによってMAPKシグナル伝達マーカー(リン酸化MEK、ERKおよびRSK)について分析した。SK-MEL-30(NRASQ61K)についての結果を図2Aに示し、IPC-298(NRASQ61L)についての結果を図2Bに示す。結果は、ベルバラフェニブおよびコビメチニブの組み合わせが、NRAS変異細胞株におけるMAPK経路シグナル伝達を阻害することを示す。
【0141】
実施例3
【0142】
実施例3では、メラノーマ細胞におけるベルバラフェニブ、コビメチニブ、またはそれらの組み合わせのインビトロコロニー形成成長試験を評価した。以下の組み合わせを評価した:10nMのcobi+ビヒクル;50nMのcobi+ビヒクル;100nMのcobi+ビヒクル;250nMのcobi+ビヒクル;10nMのbelv+ビヒクル;100nMのbelv+ビヒクル;1000nMのbelv+ビヒクル;10,000nMのbelv+ビヒクル;10nMのcobi+10nMのbelv;10nMのcobi+100nMのbelv;10nMのcobi+1000nMのbelv;10nMのcobi+10,000nMのbelv;50nMのcobi+10nMのbelv;50nMのcobi+100nMのbelv;50nMのcobi+1000nMのbelv;50nMのcobi+10,000nMのbelv;100nMのcobi+10nMのbelv;100nMのcobi+100nMのbelv;100nMのcobi+1000nMのbelv;100nMのcobi+10,000nMのbelv;250nMのcobi+10nMのbelv;250nMのcobi+100nMのbelv;250nMのcobi+1000nMのbelv;250nMのcobi+10,000nMのbelv。以下の細胞株を評価した。
IPC-298(NRASQ61L)メラノーマ細胞株;ベルバラフェニブ、コビメチニブ、またはそれらの組み合わせで処置されたMel-Juso(NRASQ61L)メラノーマ細胞株;およびSK-MEL-30(NRASQ61K)メラノーマ細胞株。細胞を表示濃度のベルバラフェニブおよび/またはコビメチニブで8日間処理し、続いてクリスタルバイオレットで染色した。結果を図3図5に示す。結果は、ベルバラフェニブおよびコビメチニブの組み合わせがNRAS変異細胞株における細胞コロニー形成を阻害することを示している。
【0143】
実施例4
【0144】
KRAS変異CRC細胞株HCT116(KRASG13D)およびLovo(KRASG13D)ならびにNSCLC細胞株Calu-6(KRASQ61K)において、pan RAF阻害剤ベルバラフェニブのインビトロシグナル伝達を、BRAF阻害剤ベムラフェニブおよびダブラフェニブに対して評価した。nM単位でIC50を決定するために、細胞株をベルバラフェニブ、ベムラフェニブおよびダブラフェニブに濃度範囲にわたって曝露し、曝露の2時間後に評価した。
【0145】
結果を以下の表5に示す。表5に示すように、ベムラフェニブおよびダブラフェニブではなく、ベルバラフェニブは、HCT116、LovoおよびCalu-6細胞株においてMEKおよびERKのリン酸化に対する阻害効果を示した。MEKおよびERKリン酸化に対するベルバラフェニブのインビトロ細胞IC50値は、HCT116においてそれぞれ2,698nMおよび253nMであり;Lovoで10μM超(10μMで37%阻害)および267nMであり;Calu-6細胞株でそれぞれ367nMおよび590nMであった。ベムラフェニブおよびダブラフェニブの対応するIC50値は、HCT116、Lovo、およびCalu-6細胞株において10μM超であった。
【0146】
【表5】
【0147】
実施例5
【0148】
以下において、ベルバラフェニブによるBRAFまたはKRAS変異CRCおよびKRAS変異NSCLC細胞株のインビトロ細胞増殖阻害を、BRAF阻害剤ベムラフェニブおよびダブラフェニブに対して評価した:BRAF変異CRC細胞株HT-29およびColo-205(両方ともV600E);KRAS変異CRC細胞株LS174T(KRASG12D)、LS513(KRASG12D)、HCT116(KRASG13D)およびLovo(KRASG13D);およびKRAS変異NSCLC細胞株Calu-6(KRASQ61K)およびCalu-1(KRASG12C)。
【0149】
結果を以下の表6および表7に示す。ベルバラフェニブおよびベムラフェニブは、BRAF変異型CRC細胞株HT-29およびColo-205(GI50範囲=47~118nM)において細胞増殖阻害に対して同等の活性を示したが、ダブラフェニブは、0.1nM未満のGI50でそれらの細胞において最も強力な細胞増殖阻害効果を示した。ベルバラフェニブは、LS174T、LS513、HCT116およびLovoを含むインビトロで試験した全てのKRAS変異型CRC細胞株においてGI50値がそれぞれ258、62、177および51nMで細胞増殖を阻害した(表6)。KRAS変異NSCLC細胞株の細胞増殖阻害に対するベルバラフェニブの活性も、Calu-6およびCalu-1で観察された(それぞれ、179および749nMのGI50)(表7)。ダブラフェニブはまた、Lovo(KRAS変異型、CRC)細胞株(GI50=214nM)ならびにCalu-6およびCalu-1(KRAS変異型、NSCLC)細胞株(それぞれ、618および904nMのGI50)において、インビトロでの細胞増殖阻害を示した。しかしながら、ダブラフェニブの活性は、Calu-1細胞を除いて、ベルバラフェニブよりも約3~4倍弱かった。ベムラフェニブは、KRAS変異型細胞における増殖の阻害に対して活性を示さなかった。
【0150】
【表6】
【0151】
【表7】
【0152】
実施例6
【0153】
BRAFまたはKRAS変異細胞株に対するベルバラフェニブ対他のBRAF阻害剤、ベムラフェニブおよびダブラフェニブのインビトロ細胞増殖阻害活性を、BRAF変異型甲状腺細胞株:SNU790、FRO、B-CPAP、NPA、8505C、ARO(全てBRAFV600E)、およびSNU80(BRAFG468R);ならびにKRAS変異型甲状腺がん細胞株、CAL-62(KRASG12R)で更に調査した。結果を表8に要約する。
【0154】
ベルバラフェニブおよびダブラフェニブは、7つ全てのBRAF変異型甲状腺がん細胞株において細胞増殖阻害に対する活性を示した(1μM未満のGI50、)。ベムラフェニブは、SNU790、B-CPAPおよびNPA、BRAF変異型甲状腺がん細胞株において、1μM未満のGI50値で細胞増殖阻害効果を示した。さらに、ベムラフェニブまたはダブラフェニブではなく、ベルバラフェニブのみが、CAL-62(KRASG12R)甲状腺がん細胞における細胞増殖阻害に対して活性を示し、GI50値は479nMであった。
【0155】
【表8】
【0156】
実施例7
【0157】
NRASQ61K変異を有するSK-MEL-30ヒトメラノーマ細胞株を異種移植したマウスモデルにおける併用療法としてのベルバラフェニブおよびコビメチニブの組み合わせのインビボ抗腫瘍活性を調べた。ビヒクル(対照)、ベルバラフェニブ単独を、10または30mg/kgの用量で1日1回、コビメチニブ単独を、10mg/kgの用量で1日1回、およびそれらの併用療法を最大14日目まで経口胃管栄養法により、群あたり5匹の動物を処置した。腫瘍体積(mm)および体重変化を1、4、9および15日目に測定した。
【0158】
図6および図7ならびに表9に示されるように、ベルバラフェニブの経口投与は、用量依存的な抗腫瘍活性をもたらし、10および30mg/kg q.d.投与による最大阻害率は、それぞれ70.3%(15日目)および80.0%(15日目)であった。最大阻害率(max inhib(%))を、(1-(処置群の平均相対腫瘍重量/対照群の平均相対腫瘍重量))*100によって決定した。コビメチニブを単独で10mg/kg、q.d.投与することで、最大阻害率54.3%(15日目)が示された。ベルバラフェニブおよびコビメチニブによる処置の両方が、体重減少がなく、忍容性は良好であり;ベルバラフェニブ処置群では、背部の発毛の臨床徴候が観察された。ベルバラフェニブ10または30mg/kg q.d.、およびコビメチニブ10mg/kgの併用療法は、それぞれ89.8%(15日目)または89.1%(15日目)の最大阻害率で相加的な抗腫瘍活性を示した。死亡率または著しい体重減少(10%超)も観察された。ベルバラフェニブ10または30mg/kg q.d.,およびコビメチニブ10mg/kgの併用療法は、それぞれ89.8%(15日目)または89.1%(15日目)の最大阻害率で相加的な抗腫瘍活性を示した。死亡率または著しい体重減少(10%超)も観察された。
【0159】
【表9】
【0160】
実施例8
【0161】
NRAS変異患者由来異種移植片(PDX)を有するマウスにおけるベルバラフェニブのインビボ抗腫瘍活性を調べた。群あたり10匹の動物を、ビヒクル(対照)または20mg/kgQDの用量のベルバラフェニブで処置した。腫瘍体積および体重変化を3~4日ごとに測定した。表10~12Cに示されるように、ベルバラフェニブの経口投与により、強力な抗腫瘍活性がもたらされ、ベルバラフェニブ処置は、有意な(10%超)体重減少を伴うことなく良好な忍容性を示した。表11A~12Cのデータを、+/-10%(例えば、表11A~11Cについては+/-20mm3)の推定誤差でグラフ形式から変換した。
【0162】
実施例8の全体的な結果を以下の表10に示す。
【0163】
【表10】
【0164】
表11A-11C:NRAS PDXメラノーマモデルの有効性試験の腫瘍体積の結果。各PDXモデルについて、ベルバラフェニブの用量は20mg/kg QDであった。
【0165】
【表11A】
【0166】
【表11B】
【0167】
【表11C】
【0168】
表12A-12C:NRAS PDXメラノーマモデルの有効性試験の体重変化(%)の結果。各PDXモデルについて、ベルバラフェニブの用量は20mg/kg QDであった。
【0169】
【表12A】
【0170】
【表12B】
【0171】
【表12C】
【0172】
実施例9
【0173】
SK-MEL-30異種移植片モデルにおけるベルバラフェニブおよびMEK阻害剤MEK162(ビニメチニブ)のインビボ併用試験。
【0174】
単独療法としてのMEK阻害剤は、BRAF阻害剤で以前に処置された患者において最小限の利益しかもたらさないようである。NRAS変異腫瘍におけるBRAF阻害剤およびMEK阻害剤併用は、単剤療法に対する耐性を予防または克服し、単剤療法の安全性プロファイルを改善する可能性がある。この点において、NRASQ61K変異を有するSK-MEL-30メラノーマ細胞株を異種移植したマウスモデルを用いて、MEK1/2の選択的ATP非競合的阻害剤であるビニメチニブとの併用療法としてのベルバラフェニブのインビボ抗腫瘍活性を調べた。群あたり5匹の動物を、ビヒクル(対照)、ベルバラフェニブ単独を、10または30mg/kgの用量で1日1回、ビニメチニブ単独を、10または30mg/kgの用量で1日1回、またはそれらの組合せ(ベルバラフェニブ10mg/kg+ビニメチニブ10mg/kgまたはベルバラフェニブ30mg/kg+ビニメチニブ30mg/kg)を1日1回で、経口胃管栄養法によって21日間処置した。
【0175】
図8および図9ならびに表13に示されるように、ベルバラフェニブの経口投与は、用量依存的な抗腫瘍活性をもたらし、10および30mg/kgq.d.投与による最大阻害率は、それぞれ36.7%(21日目)および74.6%(21日目)であった。また、ビニメチニブを10および30mg/kgq.d.で投与し、この腫瘍モデルに対して抗腫瘍活性が示され、最大阻害率はそれぞれ13.6%(21日目)および27.1%(21日目)であった。ベルバラフェニブおよびビニメチニブによる処置は、いずれも、顕著な体重減が少なく、良好な忍容性を示した;ベルバラフェニブ処置群では、10mg/kg用量以上で背部、腹部および顔面領域の発毛の臨床徴候が観察された。
【0176】
ベルバラフェニブ10mg/kg q.d.およびビニメチニブ10mg/kgの併用療法は、21日目に74.2%の最大阻害率で増強された抗腫瘍活性および顔面の浮腫または紅斑の毒性を示したが、これらは、いずれの処置単独では観察されなかった。ベルバラフェニブ30mg/kg q.d.およびビニメチニブ30mg/kg q.d.を併用投与し、腫瘍の収縮が誘発された(21日目に77.7%)が、忍容性は低かった;10日目に2/5の動物が死亡していることが分かり、他の生存動物は、試験期間中にいずれかの処置単独では観察されなかった顔面の浮腫または紅斑などの臨床徴候を示した。
【0177】
【表13】
【0178】
実施例10
【0179】
Calu-6異種移植片モデルを用いた、ベルバラフェニブおよびAZD6244のインビボ併用試験
【0180】
KRASQ61K変異を有するCalu-6NSCLC細胞株を異種移植したマウスモデルを用いて、MEK1/2の選択的ATP非競合的阻害剤であるセルメチニブ(AZD6244)との併用療法としてのベルバラフェニブのインビボ抗腫瘍活性を調べた。群あたり5匹の動物を、ビヒクル(対照)、ベルバラフェニブ単独で、3、10もしくは30mg/kgの用量を1日に1回、セルメチニブを単独で、5mg/kgの用量で1日に2回、またはそれらの併用療法(ベルバラフェニブ3もしくは10mg/kgを1日に1回+セルメチニブ5mg/kgを1日に2回)を、強制経口投与により17日間処置した。
【0181】
図10および図11ならびに表14に示されるように、ベルバラフェニブの経口投与により、用量依存的な抗腫瘍活性がもたらされ、最大阻害率は、3、10および30mg/kgq.d.でそれぞれ、53.5%(18日目)、79.3%(15日目)および86.3%(12日目)であった。また、セルメチニブを5mg/kg b.i.d.で投与し、この腫瘍モデルに対して有意な抗腫瘍活性を示し、18日目に最大阻害率は59.0%であった。ベルバラフェニブまたはセルメチニブによる処置は、最小の体重減少の有無にかかわらず、忍容性が良好であり、ベルバラフェニブ処置群では、10mg/kg以上の用量で、背部、腹部および顔面領域の発毛の臨床徴候が観察された。ベルバラフェニブおよびセルメチニブの併用療法は、どちらの処置単独でもさらなる毒性は観察されず、抗腫瘍活性の増強がもたらされた。ベルバラフェニブ3または10mg/kg q.d.およびセルメチニブ5mg/kg b.i.d.の最大阻害率は、それぞれ71.8%(18日目)および85.5%(12日目)であった。
【0182】
【表14】
実施例11
【0183】
(i)ベルバラフェニブおよびコビメチニブの併用療法、ならびに(ii)ベルバラフェニブ、コビメチニブおよびアテゾリズマブの併用療法は、図1に示され、上記に記載されたプロトコルに従って臨床試験において評価される。
【0184】
本明細書は、本発明を開示するために実施例を使用する。本発明の特許取得の対象となる範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者に想起される他の実施例を含み得る。そのような他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言と異ならない構造的要素を有する場合、またはそれらが特許請求の範囲の文言と実質的でない差異を有する同等の構造的要素を含む場合、特許請求の範囲内であることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】