(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】粒度が制御されたスフィンゴシン-1-リン酸受容体アゴニストを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/454 20060101AFI20240321BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240321BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240321BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240321BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240321BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240321BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240321BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240321BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240321BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240321BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240321BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20240321BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240321BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240321BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
A61K31/454
A61K9/14
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/14
A61P25/00
A61P37/02
A61P43/00 111
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P1/04
A61P21/02
A61P9/10
A61P17/00
A61P1/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563069
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 KR2022005371
(87)【国際公開番号】W WO2022220594
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0048802
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ドク・イル・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ジュ・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・ホン・ミン
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヨン・キム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC07
4C076CC11
4C076CC16
4C076CC18
4C076CC21
4C076DD47C
4C076DD67
4C076EE32
4C076EE32B
4C076FF31
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC37
4C086GA13
4C086GA14
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA41
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA23
4C086ZA45
4C086ZA68
4C086ZA75
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB15
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、粒度が制御されたスフィンゴシン-1-リン酸受容体アゴニストを含む医薬組成物に関し、より具体的には、有効成分として式(1)の1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含み、前記有効成分の粒度d(0.9)が、60μm以下である医薬組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含み、前記有効成分の粒度d(0.9)が、60μm以下である医薬組成物。
【請求項2】
前記有効成分の粒度d(0.9)が、5~60μmであることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記薬学的に許容される塩が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、酒石酸、ギ酸、クエン酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、グルコン酸、安息香酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びナフタレンスルホン酸からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記薬学的に許容される塩が、塩酸であることを特徴とする請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記薬学的に許容される担体が、希釈剤、結合剤、潤滑剤及び/又は崩壊剤であることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記希釈剤が、ラクトース又はその水和物であり、
前記結合剤が、ヒドロキシプロピルセルロースであり、
前記潤滑剤が、フマル酸ステアリルナトリウムであり、
前記崩壊剤が、クロスカルメロースナトリウムであることを特徴とする請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記ラクトースの水和物が、ラクトース一水和物であることを特徴とする請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
多発性硬化症を含む自己免疫障害の治療に用いるためのものである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
スフィンゴシン-1-リン酸に関連する好ましくないリンパ球浸潤によって引き起こされる疾患の予防又は治療に用いるためのものである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
免疫調整障害の予防又は治療に用いるためのものである請求項1に記載の薬剤学敵組成物。
【請求項11】
前記免疫調整障害が、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、強皮症及び自己免疫性肝炎からなる群から選択される自己免疫疾患又は慢性炎症疾患であることを特徴とする請求項10に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒度が制御されたスフィンゴシン-1-リン酸受容体アゴニストを含む医薬組成物に関し、より具体的には、下記式(1)
【化1】
で示される1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含み、前記有効成分の粒度d(0.9)が、60μm以下である医薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は、セラミドを出発物質とする細胞内セラミド経路を介して産生される。セラミドは、2つの経路で産生され、その1つ目はデノボ生合成経路である。セラミドはまた、細胞膜構成物質であるスフィンゴミエリンが細胞内で分解されることによって産生される。各組織のS1Pレベルは、2つの生合成スフィンゴシンキナーゼ(SphKs)と2つの生分解性S1Pホスファターゼ(S1Pリアーゼ及びリゾリン脂質ホスファターゼ)によって制御されている。スフィンゴシンキナーゼによるスフィンゴシンのリン酸化を介して産生されるS1Pは、細胞増殖、細胞骨格の形成と遊走、接着及びタイトジャンクションの構築、形態形成など様々な細胞反応を媒介すると知られている。S1Pは、血漿中ではアルブミンを含む血漿タンパク質と結合した形で高濃度(100~1000nM)で存在し、組織中では低濃度で存在している。
【0003】
S1Pは、G-タンパク質共役受容体であるS1P受容体に結合して、様々な生物学的機能を示す。S1P受容体のサブ-タイプとしては、現在までにS1P1~S1P5が知られており、それぞれ内皮分化遺伝子受容体(EDG)1、5、3、6及び8と名付けられている。S1P受容体は、白血球再循環、神経細胞増殖、形態変化、遊走、内皮機能、血圧調節及び心血管系の発達など、様々な生物学的機能に関与していることが知られている。
【0004】
一方、医薬品の調製においては、有効成分の均一性や有効性のために粒度規格を設定する必要がある。具体的には、有効成分の含量が少ない場合には、各製剤中の有効成分の均一性や薬物動態学的特性を確保するために粒度規格を設定する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、下記式(1)
【化2】
で示される1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸又はその薬学的に許容される塩を均一に含有する、十分な効能を示す薬物動態学的特性を確保することができる医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記技術的課題を解決するために、本発明は、有効成分として1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含み、前記有効成分の粒度d(0.9)が、60μm以下である医薬組成物を提供する。
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明によれば、有効成分として1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含み、前記有効成分の粒度d(0.9)が60μm以下である医薬組成物が提供される。
【0009】
本明細書において、「粒度d(0.9)」とは、粒子体積の90%が特定の粒径dの範囲内の直径を有することを意味する。具体的には、粒径の小さい粒子から累積して体積分布の累積頻度が90%に達する点の粒径(d(0.9))が特定の直径dの範囲内にあることを意味する。
【0010】
本発明による一実施形態において、特定の粒度を有するために、例えば、前記有効成分を微粉化することができる。本発明による一実施形態において、前記有効成分の微粉化は、この技術分野で公知の方法、例えば、粉砕(milling)によって行うことができる。
【0011】
本発明による一実施形態において、前記粒度d(0.9)の下限には、特に限定されず、例えば、0μm以上、2μm以上又は5μm以上であってもよいが、これに限定されない。本発明による一実施形態において、前記前記有効成分の粒度d(0.9)は、5~60μmである。
【0012】
本発明による一実施形態において、前記薬学的に許容される塩が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、酒石酸、ギ酸、クエン酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、グルコン酸、安息香酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びナフタレンスルホン酸からなる群から選択することができる。本発明の一実施形態において、前記薬学的に許容される塩は、塩酸であってもよい。
【0013】
本発明による一実施形態において、前記薬学的に許容される担体が、希釈剤、結合剤、潤滑剤及び/又は崩壊剤である。本発明による一実施形態において、前記希釈剤が、ラクトース又はその水和物であり、前記結合剤が、ヒドロキシプロピルセルロースであり、前記潤滑剤が、フマル酸ステアリルナトリウムであり、前記崩壊剤が、クロスカルメロースナトリウムである。本発明による一実施形態において、前記医薬組成物は、必要に応じて、他の添加剤、例えば、着色剤、香料、矯味剤、甘味剤、コーティング剤などをさらに含むことができる。
【0014】
本発明による医薬組成物は、スフィンゴシン-1-リン酸受容体に関連する疾患の予防又は治療に適している。本発明による一実施形態において、前記医薬組成物は、多発性硬化症を含む自己免疫障害の治療に使用することができる。本発明による一実施形態において、前記医薬組成物は、スフィンゴシン-1-リン酸に関連する好ましくないリンパ球浸潤によって引き起こされる疾患の予防又は治療に使用することができる。本発明による一実施形態において、前記医薬組成物は、免疫調整障害の予防又は治療に使用することができる。本発明による一実施形態において、前記免疫調整障害は、例えば、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、強皮症及び自己免疫性肝炎からなる群から選択される自己免疫疾患又は慢性炎症疾患であってもよいが、これらに限定されない。
【発明の効果】
【0015】
本発明による医薬組成物は、スフィンゴシン-1-リン酸受容体アゴニストを適切な均一性で含有し、十分な有効性を示す医薬を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】時間による配合均一性の変化を示すグラフである。
【
図2】各種緩衝液におけるin vitro溶出パターンの比較を示すグラフである。
【
図3】粒径による薬物動態特性(血漿中濃度)を比較を示すグラフである。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、本発明の保護範囲は実施例に限定されないことを理解されたい。
【0018】
製造例:1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸塩酸塩の合成
WO2014/129796 A1号の製造例153-1に記載された方法に準じて、1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸エチルエステルを合成し、エステルをNaOHで加水分解し、HClで酸性化した後、結晶化して塩酸塩(以下、「化合物1」という)を得た。
【0019】
実施例1:錠剤の製造
下記表1の組成に従って成分を混合した後、直接打錠により錠剤を調製した。
【表1】
【0020】
実施例2:均一性変化の測定
有効成分の粒径分布による混合時の均一性の変化を確認するために、有効成分を粉砕し、下記表2に示す様々な粒子分布を有する試料を調製した。
【表2】
前記表2の粒度分布の異なる有効成分を前記表1の組成で混合した後、混合均一度を測定し、その結果を
図1に示した。
【0021】
図1に分かるように、粒径が小さいほど均一混合に有利であることが分かる。
【0022】
実施例3:In Vitro溶解速度の測定
下記表3に示す粒度分布の異なる有効成分をゼラチンカプセルに充填し、各種pH、空腹時刺激胃液(FaSSGF)と空腹時刺激腸液(FaSSIF、V2)中における経時的な溶解速度を測定した。
【表3】
その結果を
図2に示した。
図2より、溶液の条件により程度の差があるものの、in vitro条件では粒径により溶解速度に差があることが確認された。
【0023】
実施例4:薬物動態学的特性の測定
本実験では、3種類の錠剤(試料5~7の粒度を有する有効成分)を全て服用する交差設計を適用し、14日間の休薬期をおいて3種類の錠剤をそれぞれ1回ずつ雄のビーグル犬に投与した。各投与量は、少なくとも14時間空腹状態を維持しながら、50mLの水とともに摂取させた。その結果を
図3に示した。
【0024】
図3から分かるように、APIの粒径により薬物動態学的(PK)特性に違いがあることが確認され、Cmaxに基づく粒度d(0.9)が60μm以下であることが、薬物動態学的に生物学的同等性を示し、安定した有効性を示すと判断された。
【国際調査報告】