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特表2024-514263再生ポリカーボネートの製造方法および再生ポリカーボネート
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  • 特表-再生ポリカーボネートの製造方法および再生ポリカーボネート 図1
  • 特表-再生ポリカーボネートの製造方法および再生ポリカーボネート 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-29
(54)【発明の名称】再生ポリカーボネートの製造方法および再生ポリカーボネート
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/08 20060101AFI20240322BHJP
   C08G 64/40 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
C08J11/08 ZAB
C08G64/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562754
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 KR2022014709
(87)【国際公開番号】W WO2023068591
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0138175
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソク・ジェ・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ギョンシク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ギョンホ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ファン・チュ
(72)【発明者】
【氏名】ダンビ・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・フン・チェ
【テーマコード(参考)】
4F401
4J029
【Fターム(参考)】
4F401AA23
4F401BA13
4F401CA21
4F401CA50
4F401CA54
4F401CA56
4F401CA57
4F401EA54
4F401EA55
4F401EA58
4F401EA59
4F401EA62
4F401EA65
4F401EA66
4F401EA68
4F401EA69
4F401EA77
4F401EA80
4F401FA07Z
4F401FA20Z
4J029AA09
4J029AB07
4J029AD10
4J029HA01
4J029JB192
4J029KH01
(57)【要約】
本発明は、再生ポリカーボネートの製造方法、および再生ポリカーボネートを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃ポリカーボネートを溶媒に溶解させて、第1溶液を製造する段階;
前記第1溶液にフェノール末端封鎖剤を添加して、第2溶液を製造する段階;
前記第2溶液に吸着剤を添加して、第2溶液から不純物を除去する段階;
前記不純物が除去された第2溶液に非溶媒を添加して、ポリカーボネート樹脂を析出させる段階;および
析出されたポリカーボネート樹脂を回収する段階;
を含む、再生ポリカーボネートの製造方法。
【請求項2】
前記フェノール末端封鎖剤は、無水物またはアシルハライドである、請求項1に記載の再生ポリカーボネートの製造方法。
【請求項3】
前記吸着剤は、シリカ、アルミナ、活性炭、酸性白土、ケイ酸マグネシウム、およびアルミノケイ酸塩からなる群より選択された1種以上の組合である、請求項1に記載の再生ポリカーボネートの製造方法。
【請求項4】
前記吸着剤は、第2溶液の総重量100重量部を基準として、0.1~5重量部で含まれる、請求項1に記載の再生ポリカーボネートの製造方法。
【請求項5】
前記無水物は、無水酢酸または無水安息香酸である、請求項2に記載の再生ポリカーボネートの製造方法。
【請求項6】
前記アシルハライドは、ベンゾイルクロライドまたは2,2-ジメチルプロパノイルクロライドである、請求項2に記載の再生ポリカーボネートの製造方法。
【請求項7】
前記溶媒は、環状エーテル系溶媒、線状または環状カーボネート系溶媒、1つ以上のハロゲンを含む炭素数1~8の炭化水素溶媒、メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドである、請求項1に記載の再生ポリカーボネートの製造方法。
【請求項8】
前記非溶媒は、アルコール、ケトン、エーテル、シクロアルカン、エステル、カルボン酸、およびニトロ基からなる群より選択される1つ以上を含む炭化水素化合物である、請求項1に記載の再生ポリカーボネートの製造方法。
【請求項9】
前記第1溶液に触媒をさらに添加する、請求項1に記載の再生ポリカーボネートの製造方法。
【請求項10】
前記第1溶液の総重量100重量部を基準として、前記フェノール末端封鎖剤は、0.1重量部~5重量部で含まれる、請求項1に記載の再生ポリカーボネートの製造方法。
【請求項11】
前記析出されたポリカーボネート樹脂を回収する段階は、
前記析出されたポリカーボネート樹脂をフィルタで分離する段階;
前記析出されたポリカーボネート樹脂を洗浄する段階;および
前記析出されたポリカーボネート樹脂を乾燥する段階;
を含む、請求項1に記載の再生ポリカーボネートの製造方法。
【請求項12】
前記廃ポリカーボネートは、前記第1溶液の総重量100重量部を基準として、2重量部~20重量部で含まれる、請求項1に記載の再生ポリカーボネートの製造方法。
【請求項13】
前記非溶媒は、前記第2溶液の総重量100重量部を基準として、30重量部~500重量部で含まれる、請求項1に記載の再生ポリカーボネートの製造方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項による再生ポリカーボネートの製造方法によって製造される、再生ポリカーボネート。
【請求項15】
前記再生ポリカーボネートのフェノール含量が0.5mol%以下である、請求項14に記載の再生ポリカーボネート。
【請求項16】
前記再生ポリカーボネートの黄色度(YI)が2.5以下である、請求項14に記載の再生ポリカーボネート。
【請求項17】
前記再生ポリカーボネートの耐候性(△E)は、20以下である、請求項14に記載の再生ポリカーボネート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生ポリカーボネートの製造方法、および再生ポリカーボネートに関し、より具体的には、フェノール末端封鎖剤を利用した再生ポリカーボネートの製造方法に関する。
【0002】
<関連出願の相互参照>
本明細書は、2021年10月18日付にて韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2021-0138175号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0003】
プラスチックは、加工しやすく、物理的および化学的性質の変化が容易で、現代社会で広く用いられている。そのうち、ポリカーボネートは、絶縁性、耐衝撃性、加工性などの機械的性質に優れ、各種機械や電気製品にたくさん用いられるプラスチックの1つである。使用後に廃棄される廃プラスチックを処理するためには、埋め立てまたは焼却する方法が多く利用されているが、プラスチックは、自然分解が難しいため、埋め立てる場合には水質および土壌汚染の環境問題を引き起こす虞があり、焼却する場合には大気汚染の環境問題を引き起こす虞がある。
【0004】
このような環境問題を解決するために、廃プラスチックを加工および精製したり、変形して再生するための多くの研究が行われており、一部再生方法は実際に活用されている。しかしながら、これによって再生されたプラスチックは、コストが高く、プラスチックの純度も大きく向上されないという短所があって、活用度が低い。また、再生されたプラスチックの場合、多様な色を有する廃プラスチックが混合されて加工および精製されるため、目的する物理的および化学的性質を特定しにくく、色相の具現が難しいという短所がある。
【0005】
したがって、再生されたプラスチックの純度を大きく向上させながらも、機械的物性の低下を防止することができる再生プラスチックの製造方法に対する研究が持続的に必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許公報第10-2192506号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、機械的物性の低下を防止し、再生されたポリカーボネートの純度を大きく向上させることができる再生ポリカーボネートの製造方法、および再生ポリカーボネートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施態様は、廃ポリカーボネートを溶媒に溶解させて、第1溶液を製造する段階;前記第1溶液にフェノール末端封鎖剤を添加して、第2溶液を製造する段階;前記第2溶液に吸着剤を添加して、第2溶液から不純物を除去する段階;前記不純物が除去された第2溶液に非溶媒を添加して、ポリカーボネート樹脂を析出させる段階;および析出されたポリカーボネート樹脂を回収する段階;を含む再生ポリカーボネートの製造方法を提供する。
【0009】
本発明のまた他の一実施態様は、前記再生ポリカーボネートの製造方法によって製造された再生ポリカーボネートを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の再生ポリカーボネートの製造方法で製造された再生ポリカーボネートは、機械的物性が低下されず、純度が高く、黄変現象が効果的に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】比較例1の再生ポリカーボネートの1H-NMR分析結果を示した。
図2】本発明の再生ポリカーボネートの製造方法によって製造された再生ポリカーボネートの1H-NMR分析結果を示した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、具体的な実施態様についてより詳しく説明する。
【0013】
本発明の一実施態様は、廃ポリカーボネートを溶媒に溶解させて、第1溶液を製造する段階;前記第1溶液にフェノール末端封鎖剤を添加して、第2溶液を製造する段階;前記第2溶液に吸着剤を添加して、第2溶液から不純物を除去する段階;前記不純物が除去された第2溶液に非溶媒を添加して、ポリカーボネート樹脂を析出させる段階;および析出されたポリカーボネート樹脂を回収する段階;を含む再生ポリカーボネートの製造方法を提供する。
【0014】
ポリカーボネートは、絶縁性、耐衝撃性、加工性などの機械的性質に優れて、各種機械や電気製品に多く用いられるプラスチックの1つである。ポリカーボネートの骨格(backbone)は、紫外線、酸素(O)または熱に曝されて劣化されると、フェノール、アルデヒドまたはベンジルアルコールの末端を有するフラグメント(fragment)が生成される可能性がある。このうち、フェノールは廃ポリカーボネートから再生ポリカーボネートを製造する時、圧出または射出過程で黄変を引き起こす可能性があり、機械的物性を低下させる原因となり得る。
【0015】
本発明に係る再生ポリカーボネートの製造方法は、廃ポリカーボネート骨格(backbone)に存在するフェノール末端基をフェノール末端封鎖剤(end-capper)で保護して、再生ポリカーボネートを製造する時に発生し得る機械的物性の低下および黄変現象を効果的に防止することができる。
【0016】
本発明の一実施態様において、前記フェノール末端封鎖剤は、無水物またはアシルハライドである。
【0017】
本発明の一実施態様において、前記フェノール末端封鎖剤は、無水物である。
【0018】
本発明の一実施態様において、前記無水物は、無水酢酸または無水安息香酸である。
【0019】
本発明の一実施態様において、前記フェノール末端封鎖剤は、アシルハライドである。
【0020】
本発明の一実施態様において、前記アシルハライドは、ベンゾイルクロライドまたは2,2-ジメチルプロパノイルクロライドである。
【0021】
本発明の一実施態様において、前記吸着剤は、シリカ、アルミナ、活性炭、酸性白土、ケイ酸マグネシウム、およびアルミノケイ酸塩からなる群より選択された1種以上の組合せである。
【0022】
前記吸着剤は、具体的には、酸性白土である。
【0023】
本発明の一実施態様において、前記吸着剤は、第2溶液の総重量100重量部を基準として、0.1重量部~5重量部で含まれる。
【0024】
前記吸着剤が上記の範囲で前記第2溶液に含まれる場合、前記第2溶液に含まれた不純物を効果的に除去することができる。
【0025】
本発明の一実施態様において、前記溶媒は、環状エーテル系溶媒、線状または環状カーボネート系溶媒、1つ以上のハロゲンを含む炭素数1~8の炭化水素溶媒、メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドである。
【0026】
本明細書の一実施態様において、前記環状エーテル系溶媒は、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンまたは1,3-ジオキソランであってもよい。
【0027】
本発明の一実施態様において、前記線状カーボネート系溶媒は、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)またはメチルプロピルカーボネート(MPC)であってもよいが、これらに限定されるのではない。
【0028】
本発明の一実施態様において、前記環状カーボネート系溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2-ブチレンカーボネート(BC)、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネートまたはフルオロエチレンカーボネートであってもよいが、これらに限定されるのではない。好ましくは、前記環状カーボネート系溶媒は、プロピレンカーボネートであってもよい。
【0029】
本発明の一実施態様において、前記1つ以上のハロゲンを含む炭素数1~8の炭化水素溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロエタンまたは二塩化エチレンであってもよいが、これらに限定されるのではない。
【0030】
本発明において、前記溶媒は、好ましくは、ジクロロメタンであってもよい。
【0031】
本発明において、前記非溶媒は、アルコール、ケトン、エーテル、シクロアルカン、エステル、カルボン酸、およびニトロ基からなる群より選択される1つ以上を含む炭化水素化合物である。
【0032】
前記非溶媒とは、前記ポリカーボネートに対するハンセン溶解度パラメータ(HSP:Hansen Solubility Parameter)が5~14である化合物を意味する。
【0033】
前記ポリカーボネートに対するハンセン溶解度パラメータは、前記ポリカーボネートの物質内結合度を考慮して、具体的には、無極性分散結合(Dispersion force)、永久双極子による極性結合(Dipole-dipole force)、水素結合(Hydrogen bonding force)から計算することができる。
【0034】
具体的には、前記ポリカーボネートに対するハンセン溶解度パラメータ(HSP:Hansen Solubility Parameter)が5~14である化合物は、アルコール、ケトン、エーテル、シクロアルカン、エステル、カルボン酸、およびニトロ基からなる群より選択される1つ以上を含む炭素数1~10の炭化水素化合物である。
【0035】
より具体的には、前記ポリカーボネートに対するハンセン溶解度パラメータ(HSP:Hansen Solubility Parameter)が5~14である化合物は、アルコール、ケトン、エステル、およびニトロ基からなる群より選択される1つ以上を含む炭素数1~5の炭化水素化合物である。
【0036】
本発明の一実施態様において、前記非溶媒はアセトンである。
【0037】
本発明の一実施態様において、前記第1溶液に触媒をさらに添加してもよい。
【0038】
前記触媒は、常温のような穏やかな条件で前記廃ポリカーボネートに含まれるフェノール末端基のエステル化反応を促進させることができる。
【0039】
前記触媒は、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、4-ジメチルアミノピリジン塩酸塩(DMAP・HCl)、テトラフルオロホウ酸銅(II)(Copper(II) tetrafluoroborate)またはCu(OTf)であってもよく、これらに限定されるのではない。
【0040】
好ましくは、前記触媒は、Cu(OTf)であってもよい。
【0041】
本発明の一実施態様において、前記第1溶液の総重量100重量部を基準として、前記フェノール末端封鎖剤は、0.1重量部~5重量部で含まれる。
【0042】
好ましくは、前記第1溶液の総重量100重量部を基準として、前記フェノール末端封鎖剤は、0.1重量部~1重量部で含まれる。
【0043】
前記フェノール末端封鎖剤が上記重量部範囲で前記第1溶液に含まれる場合、前記廃ポリカーボネートに含まれるフェノール末端基と充分に反応することができる。
【0044】
本発明の一実施態様において、前記析出されたポリカーボネート樹脂を回収する段階は、前記析出されたポリカーボネート樹脂をフィルタで分離する段階;前記析出されたポリカーボネート樹脂を洗浄する段階;および前記析出されたポリカーボネート樹脂を乾燥する段階;を含む。
【0045】
前記析出されたポリカーボネート樹脂をフィルタで分離する段階において、前記フィルタのメッシュ(mesh)は、1μm~10μmであってもよい。
【0046】
好ましくは、前記フィルタのメッシュ(mesh)は、3μm~7μmであってもよい。
【0047】
前記析出されたポリカーボネート樹脂を洗浄する段階は、アセトンを利用して洗浄してもよい。具体的には、1Lのアセトンを利用して、前記分離したポリカーボネート樹脂を2回洗浄してもよい。
【0048】
前記析出されたポリカーボネート樹脂を乾燥する段階は、40℃の真空オーブンで、16時間乾燥してもよい。
【0049】
本発明の一実施態様は、前記再生ポリカーボネートの製造方法によって製造された再生ポリカーボネートを提供する。
【0050】
本発明の一実施態様において、前記再生ポリカーボネートのフェノール含量が0.5mol%以下である。
【0051】
前記再生ポリカーボネートのフェノール含量は低いほど良質の再生ポリカーボネートを収得することができ、好ましくは、0.2mol%以下、より好ましくは、NMR検出限界以下である。
【0052】
本発明の一実施態様において、前記再生ポリカーボネートのフェノール含量は、低いほど好ましいので、下限値は特に限定されないが、例えば0.001mol%以上であってもよい。
【0053】
前記再生ポリカーボネートのフェノール含量が上記の範囲を満たす場合、再生ポリカーボネートに含まれるフェノール含量が非常に少なくて、フェノールによって発生する黄変現象を防止することができる。フェノール含量によって黄変程度が異なり、好ましくは、フェノールがNMR検出限界以下に減少した時に最も黄変現象が減少する。
【0054】
前記再生ポリカーボネートのフェノール含量は、1H-NMR分析を利用して計算することができる。具体的には、内部標準としてトリメチルシラン(TMS)を添加し、CDCl溶媒に再生ポリカーボネートを20mg/mlで溶解させた後、アジレント(Agilent)500MHz装置を利用して測定することができる。測定された1H-NMRで7.18ppmのピーク面積をポリカーボネートのフェニル基の4Hを基準として、6.71ppm、4.74ppmで見えるピーク面積をそれぞれフェノールのフェニル基(2H)とヒドロキシ基(1H)に特定して、再生ポリカーボネート骨格(backbone)内に存在するフェノールの含量をmol%に換算する。
【0055】
本発明の一実施態様において、前記再生ポリカーボネートの黄色度(YI)が2.5以下である。
【0056】
具体的には、前記再生ポリカーボネートの黄色度(YI)は、1以上2.4以下、1.5以上2.35以下または1.95以上2.34以下である。
【0057】
前記再生ポリカーボネートの黄色度が上記の範囲を満す場合、再生ポリカーボネートの黄変現象が防止されることを確認することができる。
【0058】
前記再生ポリカーボネートの黄色度は、ASTM D1925に従って試験片(横/縦/厚さ=60mm/40mm/3mm)を270℃で射出成形して測定することができる。
【0059】
本発明の一実施態様において、前記再生ポリカーボネートの耐候性(△E)は20以下である。
【0060】
前記再生ポリカーボネートの黄変現象は、耐候性測定を意味する。
【0061】
前記耐候性(△E)は、ASTM D7869方法でL、aおよびb値を測定した後、当該試験片をWeather-Ometer(登録商標)機械を利用して、2,250hr耐候性条件に放置した後、再び測定したL’、a’およびb’値から下記式2によって計算することができる。
【0062】
【数1】
【0063】
本発明の一実施態様において、前記再生ポリカーボネートの耐候性(△E)は、20以下で、好ましくは、16以下、15.5以下、15.2以下または10以下であってもよい。
【0064】
前記耐候性(△E)は、低いほど好ましいので、下限値は特に限定されないが、例えば、5以上、6以上、または8以上であってもよい。
【0065】
本発明の一実施態様において、前記再生ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)は、42,000g/mol以上44,000g/mol以下であるが、これに限定されるのではない。
【0066】
より具体的には、前記再生ポリカーボネートの重量平均分子量は、42,500g/mol以上43,400g/mol以下である。
【0067】
前記重量平均分子量は、アジレント(Agilent)1200シリーズを利用、PC standardで検量して測定することができる。
【0068】
本発明の一実施態様において、前記再生ポリカーボネートの溶融指数(Melt index;MI)は、15~25であってもよい。具体的には、前記再生ポリカーボネートの溶融指数は、20~21であってもよい。
【0069】
前記溶融指数は、ASTM D1238で、300℃、1.2kgの重りを用いて測定することができる。
【0070】
本発明の一実施態様において、前記廃ポリカーボネートは、前記第1溶液の総重量100重量部を基準として、2重量部~20重量部で含まれる。
【0071】
本発明の一実施態様において、前記溶媒は、前記第1溶液総重量100重量部を基準として、80重量部~90重量部で含まれる。
【0072】
前記廃ポリカーボネートおよび前記溶媒が上記の範囲で前記第1溶液に含まれる場合、前記廃ポリカーボネートの析出が発生されず、前記第1溶液が適切に製造されることができる。
【0073】
本発明の一実施態様において、前記廃ポリカーボネートを溶媒に溶解させて第1溶液を製造する段階は、前記廃ポリカーボネートを1時間~3時間溶媒に溶解させる。
【0074】
具体的には、前記廃ポリカーボネートを1時間30分~2時間30分間、好ましくは、前記溶媒に2時間溶解させる。
【0075】
このように、前記廃ポリカーボネートを1時間~3時間有機溶媒に溶解させる場合、前記廃ポリカーボネートが前記溶媒表面で脹れ上がって溶けて出ずに溶媒によく溶解されて、前記第1溶液が適切に製造されることができる。
【0076】
本発明の一実施態様において、前記廃ポリカーボネートを溶媒に溶解させて、第1溶液を製造する段階は、常温で実行されてもよい。具体的には、15℃~25℃の温度で実行されてもよい。このように、15℃~25℃の温度で廃ポリカーボネートを溶媒に溶解させる場合、前記溶媒の気化される程度が低くて、溶液の濃度を大きく変化させることなく、目的とする第1溶液を製造することができる。
【0077】
本発明の一実施態様において、前記再生ポリカーボネートの製造方法は、前記第1溶液を製造した後、前記第1溶液をフィルタで濾過する段階をさらに含んでもよい。前記フィルタのメッシュ(mesh)は、0.45μm~10μmであってもよい。
【0078】
本発明の一実施態様において、前記非溶媒は、前記第2溶液総重量100重量部を基準として、30重量部~500重量部で含まれる。
【0079】
前記非溶媒が上記の範囲で前記第2溶液に含まれる場合、前記廃ポリカーボネートから酸化防止剤または熱安定剤などの不純物を効果的に除去することができ、高い収率の再生ポリカーボネートを得ることができる。
【0080】
前記不純物とは、ポリカーボネートの製造時に添加される高分子化合物以外の有無機染料または顔料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、難燃剤、帯電防止剤、衝撃補強剤、可塑剤または滑剤などを意味するもので、これらに限定されず、当該技術分野で用いられるポリカーボネートを製造するための添加剤を全部意味することができる。
【0081】
前記酸化防止剤は、例えば、イルガホス(Irgafos)酸化防止剤であってもよく、前記熱安定剤は、例えば、チヌビン(Tinuvin)熱安定剤であってもよい。
【0082】
前記析出されたポリカーボネート樹脂を回収する段階は、前記第2溶液に非溶媒を添加した溶液をフィルタで濾過し、析出されたポリカーボネート樹脂をろ過することを意味する。
【0083】
この時、前記析出されたポリカーボネート樹脂をフィルタで分離する段階で、前記フィルタのメッシュ(mesh)は、1μm~10μmであってもよいが、これに限定されるのではない。
【0084】
図1は、フェノール末端封鎖剤処理をしない比較例1の再生ポリカーボネートの1H-NMR分析結果を示したのである。図1には、ポリカーボネートに対応する7.26ppm、7.18ppmのフェニル基ピークと1.68ppmのメチル基ピークが大きく見え、フェノール末端基に対応する6.74ppm(2H)、4.74ppm(1H)が観察される。フェノール末端基のフェニル(2H)は、ポリカーボネートのピークと重なって特定することができなかった。
【0085】
図2は、本発明の再生ポリカーボネートの製造方法によって製造された再生ポリカーボネートの1H-NMR分析結果を示した。図2には、フェノール末端基に対応する6.74ppm(2H)、4.74ppm(1H)が大きく減少したことを観察することができる。
【実施例
【0086】
以下、実施例によって、本発明をより詳しく例示する。本発明がこれら実施例によって制限されず、本発明に係る実施例は、多様な他の形態に変形されてもよく、本発明の範囲が以下で叙述する実施例に限定されることに解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるのである。
【0087】
実施例および比較例
実施例1
常温(20℃)で反応器に360gの廃ポリカーボネートを2,040gの溶媒であるジクロロメタンに添加して、廃ポリカーボネートを2時間溶解させて第1溶液を製造した。
【0088】
前記第1溶液に2.56gの触媒Cu(Otf)を投入して、30分間、300rpmで撹拌した。
【0089】
その後、7.23gのフェノール末端封鎖剤である無水酢酸(acetic anhydride)を前記第1溶液に徐々に投入し、常温(20℃)で6時間、300rpmで撹拌して第2溶液を製造した。
【0090】
前記第2溶液に18gの吸着剤である酸性白土を添加して、第1溶液から不純物を除去し、1μmのメッシュのフィルタを利用して、吸着剤を添加した第2溶液を濾過させて、吸着剤および不純物を除去した。
【0091】
前記第2溶液に2,400mlの非溶媒であるアセトンを徐々に投入して、ポリカーボネート樹脂を析出させた。析出されたポリカーボネート樹脂は、メッシュ5μmの紙フィルタでフィルタして回収し、1,000mlのアセトンで2回洗浄した。
【0092】
その後、40℃の真空オーブンで16時間乾燥させて、298gの再生ポリカーボネートを収得した。(廃ポリカーボネート投入対比収率83%)
【0093】
実施例2
前記実施例1で、フェノール末端封鎖剤として、16.03gの無水安息香酸(benzoic anhydride)を適用したことを除いては、実施例1と同一に305gの再生ポリカーボネートを収得した。(廃ポリカーボネート投入対比収率85%)
【0094】
実施例3
前記実施例1で、触媒として、2.25gの4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン、HCl)を用いたことを除いては、実施例1と同一に292gの再生ポリカーボネートを収得した。(廃ポリカーボネート投入対比収率81%)
【0095】
実施例4
前記実施例2で、触媒として、2.25gの4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン、HCl)を用いたことを除いては、実施例2と同一に295gの再生ポリカーボネートを収得した。(廃ポリカーボネート投入対比収率82%)
【0096】
実施例5
前記実施例3で、フェノール末端封鎖剤として、9.96gの無水安息香酸(benzoic anhydride)を適用したことを除いては、実施例3と同一に305gの再生ポリカーボネートを収得した。(廃ポリカーボネート投入対比収率85%)
【0097】
実施例6
前記実施例3で、フェノール末端封鎖剤として、8.54gの2,2-ジメチルプロパノイルクロライド(2,2-Dimethylpropanoyl chloride)を適用したことを除いては、実施例3と同一に288gの再生ポリカーボネートを収得した。(廃ポリカーボネート投入対比収率80%)
【0098】
比較例1
常温(20℃)で、反応器に360gの廃ポリカーボネートを2,040gの溶媒であるジクロロメタンに添加して、廃ポリカーボネートを2時間溶解させて、第1溶液を製造した。
【0099】
前記第1溶液に18gの吸着剤酸性白土を添加して、第1溶液から不純物を除去し、1μmメッシュのフィルタを利用して吸着剤を添加した第1溶液を濾過させて、吸着剤および不純物を除去した。
【0100】
その後、第1溶液に2,400mlの非溶媒であるアセトンを徐々に投入してポリカーボネート樹脂を析出させた。析出されたポリカーボネート樹脂は、メッシュ5μmの紙フィルタでフィルタして回収し、1,000mlのアセトンで2回洗浄した。
【0101】
その後、40℃の真空オーブンで16時間乾燥させて、302gの再生ポリカーボネートを収得した。(廃ポリカーボネート投入対比収率84%)
【0102】
実験例
前記実施例および比較例で製造した再生ポリカーボネートに対して、以下のように分析して、これを下記表1に記載した。
【0103】
-重量平均分子量(Mw):アジレント(Agilent)1200シリーズを利用、PC standardで検量して測定した。
【0104】
-溶融指数(Melt index;MI):ASTM D1238で、300℃、1.2kgの重りを用いて測定した。
【0105】
-1H-NMR分析によるフェノール含量測定:内部標準として、トリメチルシラン(TMS)を添加し、CDCl溶媒に再生ポリカーボネートを20mg/mlで溶解させた後、アジレント(Agilent)500MHz装置を利用して測定した。
【0106】
具体的には、測定されたNMRで7.18ppmのピーク面積をポリカーボネートのフェニル基4Hを基準として、6.71ppm、4.74ppmで見えるピーク面積をそれぞれフェニル基(2H)とヒドロキシ基(1H)に特定して、再生ポリカーボネート骨格(backbone)内に存在するフェノールの含量をmol%に換算した。ポリカーボネートのフェニルピーク7.18ppm(4H)を基準として、フェノール末端基のフェニルピーク6.71ppm(2H)の幅比率を計算した。幅比をプロトン(Proton)個数で換算して百分率で示した。これを式1で示すと、以下の通りである。
【0107】
【数2】
【0108】
-黄色度(Yellow Index;YI):ASTM D1925に従って、試験片(横/縦/厚さ=60mm/40mm/3mm)を270℃で射出成形して、YI値を測定した。
【0109】
-耐候性(△E):前記耐候性(△E))は、ASTM D7869方法で、L、aおよびb値を測定した後、当該試験片をWeather-Ometer(登録商標)機械を利用して、2,250hr耐候性条件に放置した後、再び測定したL’、a’およびb’値から下記式2によって計算することができる。
【0110】
【数3】
【0111】
【表1】
【0112】
前記表1の結果から分かるように、本発明に係る再生ポリカーボネートの製造方法によって製造された実施例1~6の再生ポリカーボネートが比較例よりもフェノール含量が顕著に少なく、黄色度(YI)値が低く、耐候性(△E)が低く、黄変現象を効果的に防止することができることを確認した。
【0113】
一方、実施例1~6の重量平均分子量および溶融指数値は、比較例1と大きな差がなく、これは、ポリカーボネートの骨格(backbone)が分解されないことから重量平均分子量および溶融指数の物性に変化がないことを確認した。
図1
図2
【国際調査報告】