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  • 特表-電極表面の前処理及び後処理 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電極表面の前処理及び後処理
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20240326BHJP
【FI】
H01M4/139
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561306
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 US2022023774
(87)【国際公開番号】W WO2022216897
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/173,181
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/191,114
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハール, ズブラマニヤ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ゴパラクリシュナン ナイア, ギリッシュ クマール
(72)【発明者】
【氏名】ストック, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】クンドゥ, サンブ
(72)【発明者】
【氏名】ランガサミー, エジイルムルガン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA20
5H050CA25
5H050CA26
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050GA16
5H050GA24
5H050GA27
5H050HA15
(57)【要約】
エネルギー貯蔵デバイスに用いられる電極を製造するための方法及び装置が提供される。幾つかの実装形態では、電極の表面は、(a)緩く保持された粒子を電極表面から除去する前処理プロセス;(b)その後に堆積される材料の結合又は濡れを改善するために電極材料の表面を活性化する前処理プロセス;(c)例えばパッシベーション層などの追加的に堆積される層との後続の結合を改善するためのプレリチウム化層の後処理;及び/又は、(d)下地電極材料へのリチウムの吸収を改善/加速するためのプレリチウム化層の後処理のために活性化される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極構造を形成する方法であって、
前記電極構造を表面処理プロセスに曝露して前記電極構造の表面を活性化すること、及び
前記電極構造上にリチウム金属膜を形成することであって、前記表面処理プロセスが、コロナ処理プロセス、大気プラズマ処理プロセス、低エネルギープラズマ処理プロセス、真空環境下で行われるプラズマ処理プロセス、又はそれらの組合せから選択される、リチウム金属膜を形成すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記表面処理プロセスが、イオン化コロナ放電プラズマを生成することを含む前記コロナ処理プロセスである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生成されたイオン化コロナ放電プラズマが、正又は負に帯電したプラズマを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記表面処理プロセスが、大気圧又は大気圧付近の圧力で行われる前記大気プラズマ処理プロセスである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記大気プラズマ処理プロセスが、化学的に反応性の種と化学的に非反応性の種とを含むプラズマ源ガスを含み、ここで、
前記化学的に反応性の種が、酸素、水素、又はそれらの組合せから選択され、かつ
前記化学的に非反応性の種が、アルゴン、ヘリウム、又はそれらの組合せから選択される、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記プラズマ源ガスが、少なくとも95%の濃度の前記化学的に非反応性の種と、5%未満の濃度の前記化学的に反応性の種とを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記化学的に反応性の種が、酸素、窒素、又は水素であり、前記化学的に非反応性の種がアルゴンである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記大気プラズマ処理プロセスが、RF周波電源を使用して大気圧プラズマを生成することを含み、前記RF周波電源が約13.56MHzから約27MHzである、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記表面処理プロセスが、真空環境下で行われる前記プラズマ処理プロセスである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記プラズマ処理プロセスが、前記電極構造を還元プラズマに曝露することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記還元プラズマが、アンモニア(NH)、ヒドラジン(N)、水素(H)、原子状水素、ハロゲン化水素、カルコゲン化水素、それらのラジカル、それらの誘導体、又はそれらの組合せを含む還元性ガス混合物から形成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記還元性ガス混合物が1つ以上の不活性ガスをさらに含み、前記還元プラズマが、遠隔形成プラズマ、容量結合プラズマ、又は誘導結合プラズマである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プラズマ処理プロセスが、前記電極構造を酸化プラズマに曝露することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記酸化プラズマが、酸素(O)、オゾン(O)、亜酸化窒素(NO)、フッ素(F)、塩素(Cl)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、水(HO)、それらのラジカル、それらの誘導体、又はそれらの組合せを含む酸化性ガス混合物から形成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記酸化プラズマが、遠隔形成プラズマ、容量結合プラズマ、又は誘導結合プラズマである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
電極構造を形成する方法であって、
大気環境下でアノード構造を形成すること、
前記アノード構造を表面処理プロセスに曝露して前記電極構造の表面を活性化することであって、前記表面処理プロセスが、コロナ処理プロセス、大気プラズマ処理プロセス、低エネルギープラズマ処理プロセス、真空環境下で行われるプラズマ処理プロセス、又はそれらの組合せから選択される、前記電極構造の表面を活性化すること、及び
真空環境下で前記電極構造上にリチウム金属膜を形成すること
を含む、方法。
【請求項17】
前記表面処理プロセスが、イオン化コロナ放電プラズマを生成することを含む前記コロナ処理プロセスである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記表面処理プロセスが、大気圧又は大気圧付近の圧力で行われる前記大気プラズマ処理プロセスである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記表面処理プロセスが、真空環境下で行われる前記プラズマ処理プロセスである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
非一時的コンピュータ可読媒体であって、プロセッサによって実行されると、コンピュータシステムに、
大気環境下でアノード構造を形成すること、
前記アノード構造を表面処理プロセスに曝露して電極構造の表面を活性化することであって、前記表面処理プロセスが、コロナ処理プロセス、大気プラズマ処理プロセス、低エネルギープラズマ処理プロセス、真空環境下で行われるプラズマ処理プロセス、又はそれらの組合せから選択される、電極構造の表面を活性化すること、及び
真空環境下で前記電極構造上にリチウム金属膜を形成すること
の各ステップを実行させる命令を格納する、非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、エネルギー貯蔵デバイス、及びエネルギー貯蔵デバイスに用いられる電極を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー貯蔵デバイス産業では、エネルギー貯蔵デバイスは通常、多数の製造プロセスによって製造される。一部の製造プロセスでは粒子が生成される場合があり、これにより、処理されている電極の表面が頻繁に汚染される。例えば、一部のプロセスは、非クリーンルーム環境下で行われる大気プロセスと、それに続く真空環境下で行われるプロセスを含む。非クリーンルームプロセスでは、多くの場合、塵などの汚染物質が生成され、その後の真空プロセスに悪影響を及ぼす。加えて、基板又はウェブ上に存在する静電荷により、さらなる塵及び微粒子が引き寄せられる可能性がある。これらの汚染物質は電極の表面活性化を低下させる可能性があり、その後の材料の結合が困難になる可能性がある。しかしながら、汚染粒子、例えば塵粒子、残留炭素、有機汚染粒子、又は他の汚染物質の除去はかなり困難である。
【0003】
したがって、電極表面から汚染物質を除去するためのシステム及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、概して、エネルギー貯蔵デバイス、及びエネルギー貯蔵デバイスに用いられる電極を製造するための方法に関する。
【0005】
一態様では、電極構造を形成する方法が提供される。該方法は、電極構造を表面処理プロセスに曝露して電極構造の表面を活性化することを含む。該方法は、電極構造上にリチウム金属膜を形成することをさらに含む。表面処理プロセスは、コロナ処理プロセス、大気プラズマ処理プロセス、低エネルギープラズマ処理プロセス、真空環境下で行われるプラズマ処理プロセス、又はそれらの組合せから選択される。
【0006】
実施形態は、次のうちの1つ以上を含みうる。表面処理プロセスはコロナ処理プロセスである。コロナ処理プロセスは、イオン化コロナ放電プラズマを生成することを含む。生成されたコロナ放電プラズマは、正又は負に帯電したプラズマを含む。表面処理プロセスは大気プラズマ処理プロセスである。大気プラズマ処理プロセスは、大気圧又は大気圧付近の圧力で行われる。大気プラズマ処理プロセスは、化学的に反応性の種と化学的に非反応性の種とを含むプラズマ源ガスを含む。化学的に反応性の種は、酸素、窒素、水素、又はそれらの組合せから選択される。化学的に非反応性の種は、アルゴン、ヘリウム、又はそれらの組合せから選択される。プラズマ源ガスは、少なくとも95%の濃度の化学的に非反応性の種と5%未満の濃度の化学的に反応性の種とを含む。化学的に反応性の種は酸素であり、化学的に非反応性の種はアルゴンである。化学的に反応性の種は水素であり、化学的に非反応性の種はアルゴンである。大気プラズマ処理プロセスは、RF周波電源を使用して大気圧プラズマを生成することを含む。RF周波電源は、約13.56MHzから約27MHzである。表面処理プロセスは、真空環境下で行われるプラズマ処理プロセスである。プラズマ処理プロセスは、電極構造を還元プラズマに曝露することを含む。還元プラズマは、アンモニア(NH)、ヒドラジン(N)、水素(H)、ハロゲン化水素、カルコゲン化水素、原子状水素、それらのラジカル、それらの誘導体、又はそれらの組合せを含む還元性ガス混合物から形成される。還元性ガス混合物は、1つ以上の不活性ガスをさらに含む。還元プラズマは、遠隔形成プラズマ、容量結合プラズマ、又は誘導結合プラズマである。プラズマ処理プロセスは、電極構造を酸化プラズマに曝露することを含む。酸化プラズマは、酸素(O)、オゾン(O)、亜酸化窒素(NO)、フッ素(F)、塩素(Cl)、一酸化炭素(CO)、水(HO)、二酸化炭素(CO)、それらのラジカル、それらの誘導体、又はそれらの組合せを含む、酸化性ガス混合物から形成される。酸化性ガス混合物は、1つ以上の不活性ガスをさらに含む。酸化プラズマは、遠隔形成プラズマ、容量結合プラズマ、又は誘導結合プラズマである。電極構造は、炭素、黒鉛、ケイ素、酸化ケイ素、ケイ素含有黒鉛、リチウム、リチウム金属箔又はリチウム合金箔(例えば、リチウムアルミニウム合金)、ニッケル、銅、銀、スズ、インジウム、ケイ素、それらの酸化物、それらの複合物、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つと、結合剤材料とを含む、複合アノードである。電極構造は、連続したフレキシブル基板をさらに含む。表面処理プロセスは、ロールツーロールツールで行われる。リチウム金属膜はCOガスに曝露されて、パッシベーション層を形成する。
【0007】
別の態様では、電極構造を形成する方法が提供される。該方法は、大気環境下でアノード構造を形成することを含む。該方法は、アノード構造を表面処理プロセスに曝露して電極構造の表面を活性化することをさらに含む。該方法は、真空環境下で電極構造上にリチウム金属膜を形成することをさらに含む。表面処理プロセスは、コロナ処理プロセス、大気プラズマ処理プロセス、低エネルギープラズマ処理プロセス、真空環境下で行われるプラズマ処理プロセス、又はそれらの組合せから選択される。電極構造は、連続したフレキシブル基板をさらに含む。
【0008】
実施形態は、次のうちの1つ以上を含みうる。表面処理プロセスはコロナ処理プロセスである。コロナ処理プロセスは、イオン化コロナ放電プラズマを生成することを含む。生成されたコロナ放電プラズマは、正又は負に帯電したプラズマを含む。表面処理プロセスは大気プラズマ処理プロセスである。大気プラズマ処理プロセスは、大気圧又は大気圧付近の圧力で行われる。大気プラズマ処理プロセスは、化学的に反応性の種と化学的に非反応性の種とを含むプラズマ源ガスを含む。化学的に反応性の種は、酸素、窒素、水素、又はそれらの組合せから選択される。化学的に非反応性の種は、アルゴン、ヘリウム、又はそれらの組合せから選択される。プラズマ源ガスは、少なくとも95%の濃度の化学的に非反応性の種と5%未満の濃度の化学的に反応性の種とを含む。化学的に反応性の種は酸素であり、化学的に非反応性の種はアルゴンである。化学的に反応性の種は水素であり、化学的に非反応性の種はアルゴンである。大気プラズマ処理プロセスは、RF周波電源を使用して大気圧プラズマを生成することを含む。RF周波電源は、約13.56MHzから約27MHzである。表面処理プロセスは、真空環境下で行われるプラズマ処理プロセスである。プラズマ処理プロセスは、電極構造を還元プラズマに曝露することを含む。還元プラズマは、アンモニア(NH)、ヒドラジン(N)、水素(H)、ハロゲン化水素、カルコゲン化水素、原子状水素、それらのラジカル、それらの誘導体、又はそれらの組合せを含む還元性ガス混合物から形成される。還元性ガス混合物は、1つ以上の不活性ガスをさらに含む。還元プラズマは、遠隔形成プラズマ、容量結合プラズマ、又は誘導結合プラズマである。プラズマ処理プロセスは、電極構造を酸化プラズマに曝露することを含む。酸化プラズマは、酸素(O)、オゾン(O)、亜酸化窒素(NO)、フッ素(F)、塩素(Cl)、一酸化炭素(CO)、水(HO)、二酸化炭素(CO)、それらのラジカル、それらの誘導体、又はそれらの組合せを含む、酸化性ガス混合物から形成される。酸化性ガス混合物は、1つ以上の不活性ガスをさらに含む。酸化プラズマは、遠隔形成プラズマ、容量結合プラズマ、又は誘導結合プラズマである。電極構造は、炭素、黒鉛、ケイ素、酸化ケイ素、ケイ素含有黒鉛、リチウム、リチウム金属箔又はリチウム合金箔(例えば、リチウムアルミニウム合金)、ニッケル、銅、銀、スズ、インジウム、ケイ素、それらの酸化物、それらの複合物、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つと、結合剤材料とを含む、複合アノードである。電極構造は、連続したフレキシブル基板をさらに含む。表面処理プロセスは、ロールツーロールツールで行われる。リチウム金属膜はCOガスに曝露されて、パッシベーション層を形成する。
【0009】
別の態様では、非一時的コンピュータ可読媒体は、プロセッサによって実行されると、プロセスに、上記装置及び/又は方法の動作を実施させる命令を格納している。
【0010】
本特許又は特許出願の書類は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を伴ったこの特許公報又は特許出願公開公報の複写は、請求及び必要な料金の支払いに応じて特許庁によって提供される。
【0011】
本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、その幾つかが添付の図面に示されている実施形態を参照することによって、上に簡単に要約した実施形態のより詳細な説明を得ることができる。しかしながら、本開示は他の等しく有効な実施形態も許容しうることから、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを示しており、したがって、本発明の範囲を限定すると見なすべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って形成された電極構造を組み込んだ電池構造の一例の断面図
図1B】本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って形成された両面電極構造の一例の断面図
図2】本明細書に記載される1つ以上の実施形態による電極構造を形成する方法のプロセスフローチャート
図3】本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って形成された電池の負極材料の形態及びEDX酸素信号を示すSEM画像
【発明を実施するための形態】
【0013】
理解を容易にするため、可能な場合には、図面に共通する同一の要素を示すために同一の参照番号が用いられる。一実施形態の要素及び特徴は、さらなる記述がなくとも、他の実施形態に有益に組み込まれうることが想定されている。
【0014】
以下の開示には、電極構造、前述の電極構造を含む高性能電気化学セル及び電池、並びにそれらの製造方法が記載される。本開示のさまざまな実施形態の完全な理解を提供するために、ある特定の詳細が以下の説明及び図1A~5Bに記載されている。多くの場合、電気化学セル及びバッテリに関連する、よく知られている構造及びシステムを説明する他の詳細は、さまざまな実施形態の説明を不必要に曖昧にすることを避けるために、以下の開示では説明しない。
【0015】
図に示されている詳細、寸法、角度、及び他の特徴の多くは、特定の実施形態の単なる例示である。したがって、他の実施形態は、本開示の主旨又は範囲から逸脱することなく、他の詳細、構成要素、寸法、角度、及び特徴を有することができる。加えて、本開示のさらなる実施形態は、以下に説明する幾つかの詳細がなくとも、実施することができる。
【0016】
本明細書に記載される実施形態は、TopMet(商標)、Smartウェブ(商標)、TopBeam(商標)などのロールツーロールコーティングシステムを参照して以下に説明され、これらはすべて、米国カリフォルニア州サンタクララ所在のApplied Materials,Inc.から入手可能である。高速エバポレーションプロセスを実施可能な他のツールもまた、本明細書に記載される実施形態から利益を得るように適合させることができる。加えて、本明細書に記載される高速エバポレーションプロセスを可能にする任意のシステムを有利に使用することができる。本明細書に記載される装置の説明は例示的なものであり、本明細書に記載される実施形態の範囲を制限するものとして理解又は解釈されるべきではない。また、ロールツーロールプロセスとして説明されているが、本明細書に記載される実施形態は、個別の基板上で実施されてもよいものと理解されたい。
【0017】
本明細書に記載される幾つかの実施形態は、ロールツーロールコーティングシステムを参照して以下に説明される。本明細書に記載される装置の説明は例示的なものであり、本明細書に記載される実施形態の範囲を制限するものとして理解又は解釈されるべきではない。また、ロールツーロールプロセスとして説明されているが、本明細書に記載される実施形態は、例えば個別の基板など、他のタイプの基板上で実施されてもよいものと理解されたい。
【0018】
本明細書に記載される幾つかの実施形態は、リチウムイオン電池デバイス用のウェブなどのフレキシブル基板のプレリチウム化に適合したコーティングシステムについて言及する。特に、コーティングシステムは、繰り出しモジュールから繰り出されたウェブなどのフレキシブル基板の連続処理に適している。コーティングシステムはモジュール設計で構成することができ、例えば、適切な数のプロセスモジュールを処理ライン内に互いに隣接して配置することができ、フレキシブル基板は、最初のプロセスモジュールに挿入され、ラインの最後のプロセスモジュールから取り出される。さらには、個々の処理動作の変更が望ましい場合は、コーティングシステム全体を再構成することもできる。
【0019】
本明細書に記載される幾つかの実施形態が実施される特定の基板は限定されないが、例えば、ウェブベースの基板、パネル、及び個別のシートを含めたフレキシブル基板上で実施形態を実施することは、特に有益であることに留意されたい。基板は、箔、膜、又は薄板の形態でありうる。
【0020】
ここで、本明細書に記載される実施形態内で用いられるフレキシブル基板又はウェブは、典型的には、該フレキシブル基板が屈曲可能であることを特徴とすることができることにも留意されたい。用語「ウェブ」は、用語「ストリップ」又は用語「フレキシブル基板」と同義に用いられる場合がある。例えば、本明細書の実施形態に記載されるウェブは、箔であってもよい。
【0021】
エネルギー貯蔵デバイス、例えば電池は、典型的には、正極、多孔質セパレータによって分離された負極、及びイオン伝導性マトリクスとして用いられる電解質を含む。黒鉛アノードとシリコン混合アノードは、現在の最先端技術であるが、これらのアノード材料は多くの場合、最初のサイクル中に発生する、不可逆的な容量損失を被る。したがって、この最初のサイクルの容量損失を補充する方法が必要とされている。
【0022】
リチウム金属の堆積又はプレリチウム化は、アノード材料のこの最初のサイクルの容量損失を補充するための方法の1つである。真空雰囲気下でのアノードの直接プレリチウム化は、大量生産向けにスケール調整することができる。しかしながら、例えば、ファンデルワールス力などにより電極表面に物理的に付着した微粒子若しくは汚染物質、又は電極表面に化学的に結合した微粒子若しくは汚染物質は、その後のプレリチウム化層の堆積を妨げる可能性がある。例えば、これらの微粒子は、人間や、電極が処理される環境(例えば、処理チャンバ内で移動する物体間の摩擦によって生成される粒子など)から発生する可能性があり、また電極構造上に堆積した膜又は電極構造上で成長した膜から発生する可能性もある。幾つかの実施形態は、(a)緩く保持された粒子を電極表面から除去する前処理プロセス;(b)その後に堆積される材料の結合又は濡れを改善するために電極材料の表面を活性化する前処理プロセス;(c)例えばパッシベーション層などの追加的に堆積される層との後続の結合を改善するためのプレリチウム化層の後処理;及び/又は、(d)下地電極材料へのリチウムの吸収を改善/加速するためのプレリチウム化層の後処理のために電極の表面を活性化することを包含する。
【0023】
幾つかの実施形態では、真空雰囲気下でのリチウムイオン電池アノードの直接プレリチウム化は、大量生産(HVM)用にスケール調整することができ、本明細書に記載される実装形態は、ファンデルワールス力、電極材料、例えば、炭素、黒鉛、Si/SiOxの表面活性化、及びHVM条件下での集積化のための表面処理のために、その後に堆積されるリチウムとの結合を強化するための結合剤材料によって、電極の表面に保持されている緩く保持された粒子を除去することにより、リチウムの真空堆積のためのロールツーロールプロセスにおけるロールを提供する。
【0024】
幾つかの実施形態では、現在のスラリーコーティングプロセスと次世代のプレリチウム化応用との集積化が提供される。電極材料は、プレリチウム化、並びに適切な前処理及び後処理プロセスによって強化することができる。加えて、リチウムの在庫は、長いサイクル寿命とスループットの向上のために最適化することができる。
【0025】
幾つかの実施形態では、電極表面の前処理は、大気条件下又は真空条件下で実施することができる。前処理プロセスには、コロナ処理プロセス、大気プラズマ処理プロセス、低エネルギープラズマ処理プロセス、真空環境下で行われるプラズマ処理プロセス、又はそれらの組合せが含まれうる。前処理プロセスは、酸化雰囲気下又は還元雰囲気下で実施することができる。
【0026】
幾つかの実施形態では、後処理は真空を含む制御された雰囲気内で実施され、この後処理により、大量生産環境におけるプレリチウム化された電極の容易な取り扱いとデバイスの性能の向上がもたらされる。
【0027】
図1Aは、本開示の実施形態に従って電極表面上に形成されたリチウム金属膜を有する例示的なリチウムイオンエネルギー貯蔵デバイス100を示している。リチウムイオンエネルギー貯蔵デバイス100は、正の集電装置110、正極120又はカソード、セパレータ130、負極140又はアノード、リチウム金属膜145又はプレリチウム化膜(その上に任意選択的な表面保護膜170が形成される)、及び負の集電装置150を有する。リチウムイオンエネルギー貯蔵デバイスは、セパレータ130によって分離された負極構造112と正極構造114とを含みうる。負極構造112は、負極140、任意選択的な表面保護膜170がその上に形成されたリチウム金属膜145、及び負の集電装置150を含みうる。正極構造114は、正の集電装置110、正極120、及び任意選択的に、正極120上に形成されたリチウム金属膜又はプレリチウム化膜を含みうる。図1では、集電装置がスタックを超えて延びるように示されているが、集電装置がスタックを超えて延びることは必ずしも必要ではなく、スタックを超えて延びる部分はタブとして使用することができることに留意されたい。
【0028】
正極120及び負極140上の集電装置110、150は、それぞれ、同一の電子導体であっても、異なる電子導体であってもよい。集電装置110、150を構成することができる金属の例には、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、スズ(Sn)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、それらの合金、及びそれらの組合せが含まれる。一例では、集電装置110、150のうちの少なくとも1つは穿孔される。さらには、集電装置は、任意の形状因子(例えば、金属箔、シート、又はプレート)、形状、及びミクロ/マクロ構造のものでありうる。概して、角柱状セルでは、タブは集電装置と同じ材料で形成され、スタックの製造中に形成されるか、又は後で付加されてもよい。集電装置110及び150を除くすべての構成要素は、リチウムイオン電解質を含みうる。
【0029】
負極140又はアノードは、正極120と適合する任意の材料でありうる。負極140は、372mAh/g以上、好ましくは700mAh/g以上、最も好ましくは1000mAh/g以上のエネルギー容量を有しうる。負極140は、炭素、黒鉛、ケイ素、酸化ケイ素、ケイ素含有黒鉛、リチウム、リチウム金属箔、リチウム合金箔(例えば、リチウムアルミニウム合金、リチウム 銀 合金sなど)、ニッケル、銅、銀、スズ、インジウム、ガリウム、スズ、ビスマス、ニオブ、モリブデン、タングステン、クロム、チタン、チタン酸リチウム、ケイ素、それらの酸化物、それらの複合物、又はそれらの組合せから構成することができる。負極140は、前述の材料のいずれか及び結合剤材料を含む複合アノードでありうる。複合アノードは、導電性材料、例えばカーボンブラック又はアセチレンブラック、及び任意選択的な溶媒をさらに含むことができる。幾つかの実装形態では、複合アノードは、スラリーの形態をした前述の材料の粒子を、例えばカーボンブラック、結合剤、及び溶媒と混合することによって作られ、例えばスロットダイコーティングなどの従来のスラリーベースの方法を使用して鋳造される。導電性添加物は、黒鉛、グラフェンハードカーボン、カーボンブラック、炭素被覆シリコン、又はそれらの組合せから選択することができる。結合剤材料は、炭素ベースの結合剤材料でありうる。結合剤材料は、無機結合剤材料でありうる。結合材料は、スチレンブタジエンゴム、アクリル化スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、ポリブタジエン、ポリエチレンオキシド、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエピクロルヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ラテックス、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、酪酸酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリカルボキシレート、ポリカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリメタクリル酸、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、アルギン酸の塩、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(フッ化ビニリデン)-ヘキサフルオロプロペン、又はそれらの組合せから選択することができる。溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、炭酸ブチレン、炭酸プロピレン、臭化エチル、テトラヒドロフラン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、炭酸メチルプロピル、炭酸エチレン、水、純水、脱イオン水、蒸留水、エタノール、イソプロパノール、メタノール、アセトン、n-プロパノール、t-ブタノール、又はそれらの組合せから選択することができる。
【0030】
複合アノードは大気プロセスを使用して構築することができる。例えば、スロットダイコーティングプロセスである。複合アノードは真空環境下で構築することができる。
【0031】
例えば負極140などの負極の(一又は複数の)表面は、その後に、例えばリチウム金属膜145などの任意の追加の膜を堆積する前に、本明細書に記載される前処理プロセスのいずれかを使用して処理することができる。
【0032】
幾つかの実施形態では、リチウム金属膜145又はプレリチウム化膜は、負極140上に形成される。リチウム金属膜145は、本明細書に記載される実装形態に従って形成することができる。幾つかの実施形態では、負極140は、リチウム金属膜145がその上に形成された、シリコングラファイト又は黒鉛のアノードである。リチウム金属膜145は、負極140の最初のサイクル容量損失によって失われたリチウムを補充する。リチウム金属膜145は、薄いリチウム金属膜でありうる(例えば、20ミクロン以下、約1ミクロンから約20ミクロン、約2ミクロンから約10ミクロン)。リチウム金属膜145は、蒸着法を使用して堆積させることができる。例えば、リチウム金属膜145は、熱蒸発技法又は電子ビーム蒸発技法によって堆積させることができる。リチウム金属膜145は、真空環境下で堆積させることができる。リチウム金属膜145が 図1A及び図1Bに示されているが、幾つかの実施形態では、リチウム金属膜は、電極構造に部分的に又は完全にインターカレート(割り込み)されるものと理解されたい。
【0033】
リチウム金属膜145及び/又は例えば、負極140などの負極140の(一又は複数の)表面は、その後に、例えば表面保護膜170などの任意の追加の膜を堆積する前に、本明細書に記載される後処理プロセスのいずれかを使用して処理することができる。
【0034】
幾つかの実施形態では、表面保護膜170はリチウム金属膜145上に形成される。表面保護膜170はイオン伝導性ポリマーでありうる。表面保護膜170は多孔性でありうる。幾つかの実装形態では、表面保護膜170はナノ細孔を有する。一実施形態では、表面保護膜170は、約10ナノメートル未満(例えば、約1ナノメートルから約10ナノメートル;約3ナノメートルから約5ナノメートル)の平均細孔径又は直径を有するようにサイズ調整された複数のナノ細孔を有する。別の実施形態では、表面保護膜170は、約5ナノメートル未満の平均細孔径又は直径を有するようにサイズ調整された複数のナノ細孔を有する。一実施形態では、表面保護膜170は、約1ナノメートルから約20ナノメートル(例えば、約2ナノメートルから約15ナノメートル;又は約5ナノメートルから約10ナノメートル)の範囲の直径を有する複数のナノ細孔を有する。
【0035】
表面保護膜170は、1ナノメートルから2,000ナノメートルの範囲(例えば、10ナノメートルから600ナノメートルの範囲;50ナノメートルから200ナノメートルの範囲;100ナノメートルから150ナノメートルの範囲)の厚さを有する、コーティング又は個別の層でありうる。表面保護膜170は、5ミクロンから50ミクロンの範囲(例えば、6ミクロンから25ミクロンの範囲)の厚さを有する、個別の膜であってもよい。表面保護膜170がインターリーフ膜である幾つかの実施形態では、表面保護膜170はセパレータとして機能し、セパレータ130の代わりとなる。
【0036】
本明細書に記載される実施形態を使用して形成することができる表面保護膜の例には、炭酸リチウム膜;フッ化リチウム(LiF)膜;誘電体又はセラミック膜(例えば、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)の酸化物、又はそれらの組合せ);1つ以上の金属膜(例えば、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、銅膜、銀膜、金膜、又はそれらの組合せ);カルコゲン化銅膜(例えば、CuS、CuSe、CuS);カルコゲン化ビスマス膜(例えば、BiTe、BiSe);カルコゲン化スズ膜(例えば、SnTe、SnSe、SnSe、SnS)、カルコゲン化ガリウム膜(例えば、GaS、Ga、GaS、GaSe、GaTe)、カルコゲン化ゲルマニウム膜(GeTe、GeSe、GeS)、カルコゲン化インジウム膜(例えば、InS、In、In、InSe、InSSe、InSe、InSe、InTe、InTe、InTe、InTe10、InTe、InTe)、カルコゲン化銀膜(AgSe、AgS、AgTe)、窒化ホウ素、硝酸リチウム、水素化ホウ素リチウム、及びそれらの組合せ;並びに、炭素含有膜のうちの少なくとも1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。幾つかの例では、1つ以上の表面保護膜はイオン伝導性膜である。イオン伝導性膜は、リチウムイオン伝導性セラミック又はリチウムイオン伝導性ガラスでありうる。Liイオン伝導性材料は、例えば、LiPON、LiLaZr12の結晶相又は非晶質相のドープ変種、ドープされたアンチペロブスカイト組成物、LiS-P、Li10GeP12、及びLiPS、リン酸リチウムガラス、(1-x)LiI-(x)LiSnS、xLiI-(1-x)LiSnS、硫化物と酸化物の混合電解質(結晶性LLZO、非晶質(1-x)LiI-(x)LiSnS混合物、及び非晶質xLiI-(1-x)LiSnS)などのうちの1つ以上から構成することができる。一実施形態では、xは、0から1の間(例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、及び0.9)である。幾つかの例では、1つ以上の表面保護膜は、リチウムイオン及びリチウム原子のうちの少なくとも1つに対して透過性である。1つ以上の表面保護膜170は、金属又は金属合金膜の表面保護を提供し、これにより、乾燥室内での金属又は金属合金膜の取り扱いが可能になる。表面保護膜170は、気相堆積技法、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、噴霧、ドクターブレード、グラビアコーティング、印刷、又は多くのコーティング方法のいずれかを含むがこれらに限定されない、任意の適切な技法によって形成することができる。幾つかの実施形態では、リチウムイオン伝導性材料は、物理蒸着(PVD)又は化学蒸着(CVD)技法のいずれかを使用して、リチウム金属膜上に直接堆積することができる。
【0037】
正極120又はカソードは、アノードと適合する任意の材料であってよく、インターカレーション化合物、挿入化合物、又は電気化学的に活性なポリマーを含みうる。適切なインターカレーション材料には、例えば、硫黄、リチウム含有金属酸化物、MoS、FeS、MnO、TiS、NbSe、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、V13及びVが含まれる。適切なポリマーには、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、及びポリチオフェンが含まれる。正極120又はカソードは、コバルト酸リチウムなどの層状酸化物、リン酸鉄リチウムなどのカンラン石、又はリチウムマンガン酸化物などの尖硝石から製造することができる。例示的なリチウム含有酸化物は、コバルト酸リチウム(LiCoO)などの層状のもの、又はLiNiCo1-2xMnO、LiNiMnCoO(「NMC」)、LiNi0.5Mn1.5、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O、LiMn、及びドープされたリチウムが豊富な層状材料などの混合金属酸化物であってよく、ここで、xはゼロであるか、又はゼロ以外の数である。例示的なリン酸塩は、鉄橄欖石(LiFePO)及びその変種(LiFe(1-x)MgPOなど)、LiMoPO、LiCoPO、LiNiPO、Li(PO、LiVOPO、LiMP、又はLiFe1.5であってよく、ここで、xはゼロであるか、又はゼロ以外の数である。例示的なフルオロリン酸塩は、LiVPOF、LiAlPOF、LiV(PO、LiCr(PO、LiCoPOF、又はLiNiPOFでありうる。例示的なケイ酸塩は、LiFeSiO、LiMnSiO、又はLiVOSiOでありうる。例示的な非リチウム化合物はNa(POである。
【0038】
本開示によるリチウムイオンセルの幾つかの実施形態では、リチウムは、例えば、負極では炭素黒鉛(LiC)、正極ではリチウムマンガン酸化物(LiMnO)又はリチウムコバルト酸化物(LiCoO)の結晶構造の原子層に含まれるが、幾つかの実施形態では、負極は、ケイ素、スズなどのリチウム吸収材料も含みうる。セルは、平面構造として示されているが、層のスタックを巻き取ることによって円筒形に形成することもできる;さらには、他のセル構成(例えば、角柱セル、ボタンセル)を形成することもできる。
【0039】
例えば正極120などの正極の(一又は複数の)表面は、その後、正極の表面上に例えばリチウム金属膜などの任意の追加の膜を堆積する前に、本明細書に記載される前処理プロセスのいずれかを使用して処理することができる。
【0040】
セル構成要素120、130、140、145及び170に注入される電解質は、液体/ゲル又は固体ポリマーで構成されてよく、それぞれが異なっていてもよい。幾つかの実施形態では、電解質は主に塩及び媒体を含む(例えば、液体電解質では、媒体は溶媒と呼ぶことができ、ゲル電解質では、媒体はポリマーマトリクスでありうる)。塩はリチウム塩でありうる。リチウム塩には、例えば、LiPF、LiAsF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiBF、及びLiClO、BETTE電解質(米国ミネソタ州ミネアポリス所在の3M Corp.から市販される)、並びにそれらの組合せが含まれうる。溶媒には、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、EC/PC、2-MeTHF(2-メチルテトラヒドロフラン)/EC/PC、EC/DMC(ジメチルカーボネート)、EC/DME(ジメチルエタン)、EC/DEC(ジエチルカーボネート)、EC/EMC(エチルメチルカーボネート)、EC/EMC/DMC/DEC、EC/EMC/DMC/DEC/PE、PC/DME、及びDME/PCが含まれうる。ポリマーマトリクスには、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVDF:THF(PVDF:テトラヒドロフラン)、PVDF:CTFE(PVDF:クロロトリフルオロエチレン)、PAN(ポリアクリロニトリル)、及びPEO(ポリエチレンオキシド)が含まれうる。
【0041】
図1Bは、正極セルと組み合わせてリチウムイオンエネルギー貯蔵デバイスを形成することができる負極セル160の一例を示している。負極セル160は、本開示の実装形態に従ってその上に表面保護膜170a、170bが形成されたリチウム金属膜145a、145bを有する。リチウム金属膜145a、145bは、薄いリチウム金属膜でありうる(例えば、20ミクロン以下、約1ミクロンから約20ミクロン、約2ミクロンから約10ミクロン)。表面保護膜170a、170bは、本明細書に記載されるインターリーフ膜又はイオン伝導性ポリマー膜でありうる。表面保護膜170a、170bがインターリーフ膜である幾つかの実装形態では、インターリーフ膜は、典型的には、負極セル160を正極セルと組み合わせてリチウムイオン貯蔵デバイスを形成する前に除去される。表面保護膜170a、170bがイオン伝導性ポリマー膜である幾つかの実施形態では、イオン伝導性ポリマー膜は最終的な電池構造に組み込まれる。
【0042】
負極セル160は、負の集電装置150、該負の集電装置150の両側に形成された負極140a、140b、該負極140a、140b上に形成されたリチウム金属膜145a、145b、及び該リチウム金属膜145a、145b上に形成された表面保護膜170a、170bを有する。負極セル160は両面セルとして示されているが、本明細書に記載される実施形態は片面セルにも適用されるものと理解されたい。
【0043】
図2は、本明細書に記載される1つ以上の実施形態による電極構造を形成する方法200のプロセスフローチャートを示している。電極構造は、電極構造上への追加の層の堆積の前に前処理プロセスに曝露することができる。電極構造は、電極構造上への追加の層の堆積の後に後処理プロセスに曝露することができる。方法200は、アノード構造及びカソード構造を形成するために使用することができる。方法200は、図1A及び1Bにそれぞれ示されるリチウムイオンエネルギー貯蔵デバイス100の一部及び/又は負極セル160の一部を形成するために使用することができる。方法200は、ロールツーロールツールでのロールツーロールプロセスの一部として実施することができる。
【0044】
工程210において、電極構造が提供される。電極構造は、負極構造112又は正極構造114の少なくとも一部を含みうる。電極構造は、負極(例えば、アノード膜)又は正極(例えば、カソード膜)、例えば、正極120又は負極140を含みうる。電極構造は、その上に形成された汚染物質を有しうる。汚染物質は、例えば、微粒子及び有機物を含みうる。汚染物質は帯電する可能性がある。電極構造が負極である幾つかの実装形態では、負極は、炭素、黒鉛、ケイ素、酸化ケイ素、ケイ素含有黒鉛、リチウム、ニッケル、銅、銀、スズ、インジウム、ケイ素、それらの酸化物、それらの複合物、又はそれらの組合せから構成される複合アノードである。負極は、結合剤材料をさらに含む。負極は、導電性材料、例えば、カーボンブラック又はアセチレンブラック、及び任意選択的な溶媒をさらに含むことができる。幾つかの実施形態では、複合アノードは大気条件下で形成される。一例では、複合アノードは、スラリーの形態をした前述の材料の粒子を、例えば、カーボンブラック又はアセチレンブラック、結合剤、及び溶媒と混合することによって形成され、例えばスロットダイコーティングなどの従来のスラリーベースの方法を使用して鋳造される。
【0045】
任意選択的に、工程220において、電極構造は表面処理プロセスに曝露される。表面処理プロセスは、電極構造の表面から汚染物質(存在する場合)を除去して電極構造の表面を活性化し、その後に堆積される材料による結合又は濡れをより良くするために実施することができる。表面処理プロセスは、コロナ処理プロセス、大気プラズマ処理プロセス、低エネルギープラズマ処理プロセス、真空環境下で行われるプラズマ処理プロセス、又はそれらの組合せから選択することができる。
【0046】
工程220の表面処理プロセスは、大気条件、大気近傍条件、又は真空条件下で実施することができる。一例では、表面処理プロセスは、1×10-2mbarから約1×10-6mbar(例えば、1×10-3以下;1×10-4以下)の環境を伴う真空環境下で実施することができる。
【0047】
工程220の表面処理は、酸化ガス環境、還元ガス環境、又は酸化ガスと還元ガスとの組合せ下で行われるプラズマ処理でありうる。プラズマ処理プロセスは、大気条件、大気近傍条件、又は真空条件下で実施することができる。酸化環境は、1つ以上の酸化ガスを含みうる。1つ以上の酸化ガスは、酸素(O)、オゾン(O)、亜酸化窒素(NO)、フッ素(F)、塩素(Cl)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、それらのラジカル、それらの誘導体、又はそれらの組合せから選択することができる。一実施形態では、1つ以上の酸化ガスは酸素(O)を含む。1つ以上の酸化ガスは、窒素、ヘリウム、又はアルゴンなどの1つ以上の不活性ガスとともに導入することができる。還元環境は、1つ以上の還元ガスを含みうる。還元ガスは、アンモニア(NH)、ヒドラジン(N)、水素(H)、NF、原子状水素、それらのラジカル、それらの誘導体、又はそれらの組合せから選択することができる。一例では、1つ以上の還元ガスは水素を含む。1つ以上の還元ガスは、窒素、ヘリウム、又はアルゴンなどの1つ以上の不活性ガスとともに導入することができる。
【0048】
幾つかの実施形態では、表面処理プロセスは、真空環境下で行われるプラズマ処理プロセスである。プラズマ処理プロセスは、電極構造を還元プラズマに曝露することを含みうる。還元プラズマは、アンモニア(NH)、ヒドラジン(N)、水素(H)、ハロゲン化水素、カルコゲン化水素、原子状水素、それらのラジカル、それらの誘導体、又はそれらの組合せを含む還元性ガス混合物から形成することができる。還元性ガス混合物は、1つ以上の不活性ガスをさらに含むことができる。還元プラズマは、遠隔形成プラズマ、容量結合プラズマ、又は誘導結合プラズマでありうる。プラズマ処理プロセスは、電極構造を酸化プラズマに曝露することを含みうる。酸化プラズマは、酸素(O)、オゾン(O)、亜酸化窒素(NO)、フッ素(F)、塩素(Cl)、一酸化炭素(CO)、水(HO)、二酸化炭素(CO)、それらのラジカル、それらの誘導体、又はそれらの組合せを含む、酸化性ガス混合物から形成することができる。酸化性ガス混合物は、1つ以上の不活性ガスをさらに含むことができる。酸化プラズマは、遠隔形成プラズマ、容量結合プラズマ、又は誘導結合プラズマでありうる。
【0049】
工程220の表面処理は、電極構造の表面を改質するために用いられるコロナ処理(例えば、空気プラズマ処理)でありうる。コロナ処理は、電極構造の表面エネルギーに変化を与えるために低温コロナ放電プラズマを使用して実施することができる。コロナ処理放電プロセスは、イオン化コロナ放電プラズマを生成することを含む。生成されたコロナ放電プラズマは、正又は負に帯電したプラズマを含みうる。
【0050】
コロナ放電には通常、処理領域に位置づけられた2つの非対称電極(1つは高度に湾曲したもの(例えば、針先又は小径ワイヤなど)、もう1つは曲率が低いもの(例えば、プレート又は接地など))が含まれる。高い曲率により、電極周囲に高い電位が確保され、プラズマの生成がもたらされる。イオン化領域が、ある特定の半径で停止するのではなく、成長し続けるような形状寸法及び勾配の場合には、完全な導電パスが形成され、瞬間的なスパーク又は連続アークが発生する可能性がある。
【0051】
幾つかの実施形態では、コロナは正である。他の実施形態では、コロナは負である。これは、高度に湾曲した電極にかかる電圧の極性によって決まる。湾曲した電極が平面電極に対して正の場合、正のコロナが存在する;それ以外の場合は、コロナは負である。幾つかの実施形態では、コロナ処理は、部分的に大気圧下若しくは分圧下、真空下、又はそれらの組合せ下で行われる。
【0052】
一例では、工程220の表面処理は、電極構造を大気プラズマに曝露することによって行われる。
【0053】
幾つかの実施形態では、工程220で行われる表面処理プロセスは、混合処理ガスを処理領域に供給することを含む。次に、混合処理ガスからプラズマを形成し、電極構造の表面をプラズマ処理して、電極構造の少なくとも一部を励起状態へと活性化し、処理された上面を有する処理済みの電極構造を形成し、これにより、その後に堆積される、例えばプレリチウム化層などの材料の核生成条件/成長条件を向上させることができる。
【0054】
一実施形態では、混合処理ガスは、酸素含有ガス、不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム)、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む。処理領域に供給される酸素含有ガスは、酸素(O)、オゾン(O)、酸素ラジカル(O)、イオン化酸素原子、二酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)、水蒸気、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含みうる。他の酸素含有ガスを使用してもよい。
【0055】
酸化を包含する工程220の一例では、ガス源は、質量流量コントローラを介して酸素ガス(O)をオゾン発生器に供給し、該オゾン発生器は、酸素の大部分をオゾンガス(O)へと変換する。結果として生じる、OとO、及びおそらく一部の酸素ラジカルOとイオン化酸素原子又は分子の酸素ベースの混合物が、処理領域に供給される。酸素ベースのガスは、処理領域内で、所定の温度、好ましくは低温に加熱されうる、電極構造の表面と反応する。オゾンは準安定分子であり、反応O→O+O(ここで、Oはラジカルである)で自発的に急速に解離し、これが、酸化可能なあらゆる利用可能な物質と非常に迅速に反応する。オゾン発生器は、容量結合若しくは誘導結合プラズマ又はUVランプ源を含む多くの形式で実施することができる。
【0056】
これらの高いオゾン濃度では、比較的高い酸化速度を達成するために電極構造をあまり加熱する必要はない。高いオゾン濃度はまた、オゾン分圧を低下させることも可能である。高いオゾン分率により、20Torr未満の圧力でオゾン酸化を実施することが可能となる。前述の表面改質技法は例示的なものであり、所望の表面改質を達成する他の表面改質技法も使用することができるものと理解されたい。
【0057】
幾つかの実施形態では、表面処理プロセスは、大気圧又は大気圧付近の圧力で行われるプラズマ処理を含む。大気プラズマは、化学的に非反応性の種(例えば、アルゴン又はヘリウム)、及び/又は化学的に反応性の種(例えば、酸素、窒素、又は水素)から構成することができる。
【0058】
本明細書に開示される方法の一実施形態では、大気圧プラズマは、主に、例えば、少なくとも95%が、アルゴン、又はヘリウムなどの化学的に非反応性の種で構成される、プラズマ源ガスから形成される。1つ以上の化学反応性プラズマ源ガスが、プラズマ源ガスの約0.005%から5%の範囲の濃度で存在してもよい。使用することができる化学反応性プラズマ源ガスには、約0.005%から4.75%の範囲で存在しうる、酸素含有ガス、例えば、酸素(O)及び/又はCO;及び/又は、約0.005%から約0.015%の範囲で存在しうる、水素(H)、三フッ化窒素(NF)、テトラフルオロメタン(CF)、アンモニア(NH)、シラン(SiH)、及びそれらの組合せの群から選択される反応性プラズマ源ガスが含まれる。
【0059】
上部電極と基板の電極表面との間隔は、約2mmから約15mmの範囲、例えば約3mmに設定することができる。この選択された間隔により、プラズマのアークを発生させることなく、大気圧で非常に高いエネルギー密度のプラズマを生成することができる。本開示の一実施形態では、上部電極は、ガスをプラズマ処理領域内に均一に分配するための電極及びプラズマ源ガス分配マニホールドの両方として用いられる、導電性シャワーヘッドなどのガスディフューザである。あるいは、シャワーヘッドは長方形以外の形状であってもよく、及び/又は1つの大きいシャワーヘッドの代わりに複数のより小さいシャワーヘッドを使用してもよい。
【0060】
大気圧プラズマは、RF周波電源を使用して生成することができる。RF電源の周波数は、通常、約13.56MHz、又は約27MHz、又は約54MHzである。RF電源の周波数は、大気圧でプラズマのアークを発生させずに非常に高いエネルギー密度のプラズマ源を生成する際のもう1つの変数である。当業者は、本開示を考慮して、用いられる特定の処理装置及び用いられるプラズマ源ガスに応じて異なる周波数を選択することができる。
【0061】
一例では、大気プラズマプロセスは、11リットル/分のアルゴン及び55sccmの清浄な乾燥した空気(CDA)の流れを含むプラズマ源ガス、13.56MHzのRF周波数、333ワットの電力を含み、プラズマヘッドと電極表面との間の間隔は3.0ミリメートルである。
【0062】
幾つかの実施形態では、表面処理プロセスは、電極表面を活性化するための短いプラズマエッチングを含む。大気プラズマは、例えばアルゴン又はヘリウムなどの化学的に非反応性の種、及び/又は例えば酸素などの化学的に反応性の種から構成することができる。電極表面の外表面積を増加させるために、電極材料の堆積に続いて短いプラズマエッチングを実施することができる。
【0063】
幾つかの実施形態では、注入1平方センチメートル当たり1E16原子から3E16原子の範囲の線量で、1kVなどの低エネルギープラズマ処理を使用して、電極表面をエッチングすることができる。エッチングガスは、H、Cl、BCl、HBr、CF、CHF、及び他のハロゲンベースの化合物でありうる。幾つかの実施形態では、エッチングガスは、エッチング速度を向上させ、エッチングプロファイルを調整するために、上記のガスとアルゴン及び/又は窒素との混合物でありうる。
【0064】
一実施形態では、大きい表面積を有する親水性表面を生成するために、SiClプラズマとClプラズマとの混合物が用いられる。塩素は一般的に用いられるエッチャントであり、電極構造の上層の一部を迅速に除去するのに役立つ。エッチング化学物質にSiClを添加することにより、電極表面にSiCl種が生成される。エッチングステップの完了後に、電極構造をわずかに塩基性(pH8.0超など)の加熱水に曝露することにより、表面のSiClの加水分解を促進し、電極表面の一部が超親水性になる。四塩化ケイ素は、実際には塩素によるシリコンエッチングの副生成物であるが、その量は、十分なSiClを生成するには不十分な可能性があり、したがって、SiClの添加が必要である。
【0065】
本明細書に記載される表面処理プロセスにおいて電極構造にバイアスを印加することができ、該バイアスは1~2kVの範囲でありうる。通常のClエッチングプロセスと比較して、このバイアスは、2~4kVの間などわずかに高くすることができ、これは、SiCl及び/又はClイオンが電極構造へと浸透するのを助け、エッチングと比較してイオン注入を強化するのに役立つ。しかしながら、このバイアスは、塩素官能基が基板表面の下に深く埋もれないように十分に低くなければならない。加えて、約5mTorrなどのより低いプロセス圧力を使用して、シース内の衝突を低減し、表面に高濃度のSiCl官能基が生成される確率を高めることができる。
【0066】
短いプラズマエッチングにより、親水性表面が維持されるだけでなく、高い表面反応速度も備えた電極構造が得られる。表面積を増加させると、電気化学反応が起こる活性領域の増加がもたらされることにより、薄膜電極の性能が大幅に向上する。これにより、電池のより高速な充電及び放電が可能になる可能性がある。電極上の電解質をより完全に湿らせるには、親水性の特性が望ましい場合がある。これは、より均一なリチウムインターカレーションと、速度能力の増加につながりうる。
【0067】
工程220の後、処理された表面を有する電極は、工程220大気環境で行われる場合には、大気環境から、追加の処理のために真空環境へと移送されうる。
【0068】
工程230において、電極構造の処理された表面上にプレリチウム化層を形成することができる。プレリチウム化層は、例えば負極140などの負極の表面に形成されたリチウム金属膜145でありうる。プレリチウム化層は、例えば正極120などの正極の表面に形成されたリチウム金属膜でありうる。幾つかの実装形態では、動作220の表面処理プロセスは、電極構造の表面を活性化し、工程230中に形成される、その後に堆積されるプレリチウム化層の湿潤性を改善する。工程230のプレリチウム化プロセスは、真空環境下で実施することができる。リチウム金属膜は、電極構造の最初のサイクル容量損失によって失われたリチウムを補充する。リチウム金属膜は、薄いリチウム金属膜でありうる(例えば、20ミクロン以下、約1ミクロンから約20ミクロン、約2ミクロンから約10ミクロン)。リチウム金属膜は、蒸着法を使用して堆積させることができる。例えば、リチウム金属膜145は、PVD技法、例えば、熱蒸着法又は電子ビーム蒸着法によって堆積させることができる。
【0069】
任意選択的に、工程240において、プレリチウム化層又はプレリチウム化された電極構造は、後処理プロセスに曝露される。後処理プロセスは、プレリチウム化層を活性化するため、下地電極構造へのリチウムの吸収を促進するため、又はその両方を組み合わせた表面処理プロセスでありうる。工程240の後処理プロセスは、工程220で説明した前処理プロセスのいずれかと同様でありうる。
【0070】
工程240の後処理プロセスは、プレリチウム化層から電極構造へのリチウムの吸収を促進するように設計された熱処理プロセス又はアニーリングプロセスを含みうる。後処理プロセスの例には、真空環境下でのアニーリング、制御された雰囲気(例えば、アルゴン又は真空)下でのレーザ加熱、熱エネルギー及び/又は放射線エネルギーへの曝露、プロセス中の吸収を促進するための圧力の調整、又はそれらの組合せが含まれる。工程240中、加熱又は熱エネルギーは、電極構造、該電極構造上に形成されたプレリチウム化層、又はプレリチウム化層と電極構造の両方に印加することができる。
【0071】
工程240の後処理プロセスの条件は、電極構造及び/又はその上に形成されたプレリチウム化層が、電極構造の融点より低いが、プレリチウム化層から電極構造へのリチウムの拡散を促進するのに十分な温度まで加熱されるように選択することができる。工程240の後処理プロセスの温度は、約室温(例えば、摂氏22~24度)から摂氏約200度の範囲内でありうる。工程240の後処理プロセスの温度は、室温又は室温付近でありうる。工程240の後処理プロセスの温度は、摂氏180度以下、例えば、室温又は室温付近から摂氏約180度の範囲内でありうる。工程240の後処理プロセスの温度は、摂氏150度以下、例えば、室温又は室温付近から摂氏約150度の範囲内でありうる。工程240の後処理プロセスの温度は、摂氏130度以下、例えば、室温又は室温付近から摂氏約130度の範囲内でありうる。工程240の後処理プロセスの温度は、摂氏80度以下、例えば、室温又は室温付近から摂氏約80度の範囲内でありうる。工程240の後処理プロセスの温度は、摂氏60度以下、例えば、室温又は室温付近から摂氏約60度の範囲内でありうる。電極構造及び/又はプレリチウム化層は、約室温から摂氏約200度の範囲内、より狭い範囲では約室温から摂氏約180度の範囲内、より狭い範囲では摂氏約50度から摂氏約130度の範囲内、より狭い範囲では摂氏約50度から摂氏約60度の範囲内の温度まで加熱することができる。
【0072】
真空アニーリングの場合、電極構造(したがってその上に堆積されるプレリチウム化層)は、所定の時間、アニーリング温度まで加熱することができる。任意の適切なアニーリング温度を使用することができる。アニーリング温度は、約室温(例えば、摂氏22~24度)から摂氏約200度の範囲、又は工程240に関して説明した他の範囲のいずれかでありうる。真空アニーリングは、約15分から約60分間行うことができる。真空アニーリングは、周囲圧力で5分以上行うことができる。真空アニーリングはさまざまな環境で行うことができる。真空アニーリングは真空環境下で行うことができる。真空アニーリングは、不活性ガス環境下、例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、又はそれらの組合せの環境下で行うことができる。真空アニーリングは、アルゴンの環境下で行うことができる。
【0073】
工程240の後処理プロセスは、大気条件、大気近傍条件、又は真空条件下で実施することができる。表面処理プロセスは、1×10-2mbarから約1×10-6mbar(例えば、1×10-3以下;1×10-4以下)の環境を伴う真空環境下で実施することができる。一部の後処理真空プロセスでは、工程240中の処理チャンバ内の圧力は、大気圧(例えば、1013mbar)未満、例えば、約-2mbar(例えば、-1500mTorr)から約-25mbar(例えば、-18751mTorr)でありうる。正圧で行われる一部の後処理プロセスでは、工程240中の処理チャンバ内の圧力は、約10mTorrから約50mTorrの範囲内で実施することができる。
【0074】
一実施形態では、レーザ加熱の場合、電極構造(したがってその上に堆積されるプレリチウム化層)は、レーザ源からの放射エネルギーに曝露されて、電極構造を所定の時間加熱する。電極構造の少なくとも一部は、制御された雰囲気内でレーザを用いてアニールすることができる。レーザ加熱はさまざまな環境で行うことができる。一実施形態では、レーザ加熱は真空環境下で行われる。別の実施形態では、レーザ加熱は不活性ガス環境下で行われる。別の実施形態では、レーザ加熱はアルゴンの環境下で行われる。
【0075】
一実施形態では、熱加熱の場合、電極構造(したがってその上に堆積されるプレリチウム化層)は、放射エネルギーに曝露される。任意の適切な熱加熱温度を使用することができる。熱加熱温度は、約室温(例えば、摂氏22~24度)から摂氏約200度の範囲、又は動作240に関して説明した他の範囲のいずれかでありうる。熱加熱は、電極構造を熱源、例えば、任意選択的なマイクロ波発生器が接続された内部に形成されたランプ又は加熱アセンブリに曝露することによって実施することができる。熱プロセス/アニーリングプロセス中に印加されるマイクロ波電力は、電極構造内に存在するアノード材料又は他の膜構造に悪影響を与えることなく、電極構造を穏やかに加熱/熱処理することができる。
【0076】
工程250において、プレリチウム化された電極構造は追加の処理に曝露されうる。追加の処理は、プレリチウム化された電極構造、例えば表面保護膜170などの表面保護膜上に追加の膜を形成することを含みうる。一例では、表面保護膜は、リチウム金属膜をCOガスから形成されたプラズマに曝露することによって形成される炭酸リチウム膜である。後処理技法を使用してリチウム金属膜を事前に活性化することにより、形成される場合には炭酸リチウム膜の形成速度を高めることができ、堆積された炭酸リチウム膜の品質も向上させることができる。
【0077】
本開示の実施形態は、次の潜在的な利点の1つ以上を含みうる。幾つかの実施形態は、(a)緩く保持された粒子を電極表面から除去する前処理プロセス;(b)その後に堆積される材料の結合又は濡れを改善するために電極材料の表面を活性化する前処理プロセス;(c)例えばパッシベーション層などの追加的に堆積される層との後続の結合を改善するためのプレリチウム化層の後処理;及び/又は、(d)下地電極材料へのリチウムの吸収を改善/加速するためのプレリチウム化層の後処理のために電極の表面を活性化することを包含する。本明細書に記載される前処理プロセス及び後処理プロセスは、清浄な表面を提供することができるだけでなく、その後に堆積される材料の結合又は濡れを改善するために表面を活性化することもできる。これにより、後続の膜の堆積速度が向上することができるだけでなく、堆積された炭酸リチウム膜の品質も向上する。加えて、現在のスラリーコーティングプロセスは、本明細書に記載されるプロセスを使用する次世代のプレリチウム化用途と集積化することができる。加えて、リチウムの在庫は、長いサイクル寿命とスループットの向上のために最適化することができる。
【0078】
幾つかの実施形態では、電極表面の前処理は、大気条件下又は真空条件下で実施することができる。前処理プロセスには、コロナ処理プロセス、大気プラズマ処理プロセス、低エネルギープラズマ処理プロセス、真空環境下で行われるプラズマ処理プロセス、又はそれらの組合せが含まれうる。前処理プロセスは、酸化雰囲気下又は還元雰囲気下で実施することができる。
【0079】
幾つかの実施形態では、後処理は真空を含む制御された雰囲気内で実施され、この後処理により、大量生産環境におけるプレリチウム化された電極の容易な取り扱いとデバイスの性能の向上がもたらされる。後処理プロセスには、コロナ処理プロセス、大気プラズマ処理プロセス、低エネルギープラズマ処理プロセス、真空環境下で行われるプラズマ処理プロセス、熱処理プロセス、アニーリングプロセス、又はそれらの組合せが含まれうる。
【0080】
リチウム金属の堆積には多数の方法(例えば、熱蒸着、積層、印刷など)があるが、とりわけ大量生産環境では、デバイスの積み重ねの前に、スプール上に堆積したリチウム金属の取り扱いが必要になる。一実施形態では、リチウム金属膜上にインターリーフを形成するための方法及びシステムが提供される。別の実施形態では、リチウムポリマー堆積のための方法及びシステムが提供される。さらに別の実施形態では、リチウム金属堆積及びイオン伝導性ポリマー堆積の両方のための集積化されたツールが提供される。
【実施例
【0081】
以下の非限定的な例は、本明細書に記載される実施形態をさらに説明するために提供される。しかしながら、これらの例は、すべてを網羅することは意図しておらず、本明細書に記載される実施形態の範囲を限定することを意図するものでもない。表Iは、本明細書に記載される1つ以上の実施形態による大気プラズマを使用する表面処理条件の一例を示している。
【0082】
電池の負極の活物質への過剰なリチウムの吸収後のプロセスに対する影響。
電池の負極上に数ミクロンのリチウム金属を真空堆積させた後、堆積されたリチウムのある一定の量が電極層に吸収される。この場合、リチウムは活物質である黒鉛内にインターカレートされるか、電池電極内のケイ素含有化合物とLi-Si合金を形成する。負極の吸収率が高い領域では、黒色が保たれていることが観察された。しかしながら、堆積した金属リチウムの一部は、表面に「過剰リチウム」と呼ばれる膜として残る。過剰なリチウムは、典型的に黒色の電池負極上の灰色/白色の層として視覚的に識別することができる。
【0083】
リチウムでコーティングされた電池の負極を不活性ガス雰囲気/真空下(窒素、酸素、及び水が不在)で保管すると、後吸収プロセスと呼ばれる、多孔性電池負極材料の活物質への金属リチウムのさらなる吸収が起こることが判明した。光学的には、過剰なリチウムの灰色/白色層が時間の経過とともに減少し、その領域が黒色に変色することが観察された。これは、リチウム原子が時間の経過とともに金属表面膜から電池負極の活物質中に拡散する可能性があることを示している。
【0084】
比較すると、リチウム真空堆積プロセスステップの直後に、リチウムでコーティングされた電池の負極を二酸化炭素含有雰囲気に曝露することによって、後吸収プロセスを抑制することができることが判明した。二酸化炭素を含む雰囲気中で処理した後、過剰なリチウムの領域は時間が経っても変色を示さなかった。灰色/白色層の光学的外観は、不活性ガス雰囲気/真空下での保管中に変化しなかった。これは、追加の処理により、電池負極の活物質中へのリチウム原子の拡散が抑制されることを意味する。二酸化炭素を含む雰囲気中でのガス処理は、一定量のリチウム金属の炭酸リチウムへの変換を生じさせる。ガスは浸透しており、多孔質電極マトリクスのすべての活性サイトにおいてリチウムと完全に反応することができるため、変換されたリチウムの正確な量は、電極層の多孔性、過剰なリチウム膜の粗さ及び厚さに依存する。特に、過剰なリチウム層の上部原子層は二酸化炭素分子と反応し始めるが、ガス反応により、100nmを超える厚さを有する均一な炭酸塩層が形成されることがある。とりわけ、より高い多孔性を有する電池の負極では、同量の堆積したリチウムは、より広い電極表面積に分布する。この場合、過剰なリチウム層の厚さが減少し、ガス処理中の炭酸リチウムへの変換率が増加する。
【0085】
図3は、本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って形成された電池の負極材料の形態及びEDX酸素信号を示すSEM画像310~360を示している。SEM画像は、A)電池の負極材料(画像310、320);B)真空/不活性ガス雰囲気下で保管した後に二酸化炭素ガス雰囲気中で処理されたリチウムコーティング電極(画像330、340);及び、C)真空/不活性ガス雰囲気下で保管した後に二酸化炭素ガス雰囲気中で処理されていないリチウムコーティング電極(画像350、360)の形態及びEDX酸素信号の例を示している。両方のリチウムコーティング電極の酸素信号強度は、炭酸リチウム又は他のリチウムの存在を反映している。
【0086】
比較研究では、電池の負極1及び2を同量のリチウムでコーティングし、真空/不活性ガス中で同じ期間保管した。電極1は、リチウム堆積プロセス後に二酸化炭素ガス雰囲気中で処理されたが、電極2は処理されなかった。SEM及びEDX分析により、電極2(CO処理なし)が保管後に、(画像310、320に示される元の状態の電極と同様に)顕著な過剰なリチウム層を示さなかったことが証明された。電極2の表面(画像330、340)には、炭酸リチウム層に相当する大量の酸素が見出された。この観察により、リチウムでコーティングされた電池の負極のCO処理が、電極の活物質へのリチウムのさらなるインターカレーションを抑制するというさらなる証拠がもたらされる。
【0087】
二酸化炭素を含む雰囲気中で処理する前に、リチウムを堆積させた電池の負極材料を真空/不活性ガス中で保管することにより、吸収後の過剰なリチウムの程度が増加しうる。
【0088】
本明細書に記載される実施形態及び機能的動作のすべては、デジタル電子回路として、又は、本明細書に開示された構造的手段及びその構造的等価物を含むコンピュータソフトウェア、ファームウェア、若しくはハードウェアとして、又はこれらの組合せとして実装することができる。本明細書に記載される実施形態は、1つ以上の非一時的コンピュータプログラム製品として、すなわちデータ処理装置(例えば、プログラム可能プロセッサ、コンピュータ、又は複数のプロセッサ若しくはコンピュータ)によって実行するための、又はデータ処理装置の動作を制御するための、機械可読記憶デバイス内で有形に具現化された1つ以上のコンピュータプログラムとして、実装することができる。
【0089】
本明細書に記載されるプロセス及び論理の流れは、1つ以上のコンピュータプログラムを実行して、入力データに対して動作し出力を生成することによって諸機能を実施する1つ以上のプログラム可能プロセッサによって実施することができる。プロセス及び論理の流れはまた、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)によって実行可能であり、また、装置も、FPGA又はASICとして実装可能である。
【0090】
「データ処理装置」という用語は、プログラム可能なプロセッサ、コンピュータ、又は複数のプロセッサもしくはコンピュータを例として含む、データを処理するためのすべての装置、デバイス、及び機械を包含する。該装置は、ハードウェアに加えて、例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、又はこれらの1つ以上の組合せを構成するコードなど、対象のコンピュータプログラムの実行環境を作り出すコードを含みうる。コンピュータプログラムの実行に適しているプロセッサには、例として、汎用及び専用の両方のマイクロプロセッサ、並びに任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つ以上のプロセッサが含まれる。
【0091】
コンピュータプログラム命令及びデータを保存するのに適したコンピュータ可読媒体には、すべての形態の不揮発性メモリ、例えば、EPROM、EEPROM、及びフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイスを例として含む、メディア及びメモリデバイス;例えば、内蔵ハードディスク又はリムーバブルディスクなどの磁気ディスク;光磁気ディスク;並びに、CD-ROM及びDVD-ROMディスクが含まれる。プロセッサ及びメモリは、専用ロジック回路で補完するか、又は専用ロジック回路に組み込むことができる。
【0092】
本開示の実施形態は、次の項のいずれか1つ以上にさらに関係する:
【0093】
1.電極構造を形成する方法であって、電極構造を表面処理プロセスに曝露して電極構造の表面を活性化すること;及び、電極構造上にリチウム金属膜を形成することを含み、ここで、表面処理プロセスが、コロナ処理プロセス、大気プラズマ処理プロセス、低エネルギープラズマ処理プロセス、真空環境下で行われるプラズマ処理プロセス、又はそれらの組合せから選択される、方法。
【0094】
2.表面処理プロセスがコロナ処理プロセスである、第1項に記載の方法。
【0095】
3.コロナ処理プロセスが、イオン化コロナ放電プラズマを生成することを含む、第2項に記載の方法。
【0096】
4.生成されたイオン化コロナ放電プラズマが、正又は負に帯電したプラズマを含む、第3項に記載の方法。
【0097】
5.表面処理プロセスが大気プラズマ処理プロセスである、第1項に記載の方法。
【0098】
6.大気プラズマ処理プロセスが、大気圧又は大気圧付近の圧力で行われる、第5項に記載の方法。
【0099】
7.大気プラズマ処理プロセスが、化学的に反応性の種と化学的に非反応性の種とを含むプラズマ源ガスを含む、第5項に記載の方法。
【0100】
8.化学的に反応性の種が、酸素、窒素、水素、又はそれらの組合せから選択される、第7項に記載の方法。
【0101】
9.化学的に非反応性の種が、アルゴン、ヘリウム、又はそれらの組合せから選択される、第8項に記載の方法。
【0102】
10.プラズマ源ガスが、少なくとも95%の濃度の化学的に非反応性の種と5%未満の濃度の化学的に反応性の種とを含む、第9項に記載の方法。
【0103】
11.化学的に反応性の種が酸素であり、化学的に非反応性の種がアルゴンである、第7項に記載の方法。
【0104】
12.化学的に反応性の種が水素であり、化学的に非反応性の種がアルゴンである、第7項に記載の方法。
【0105】
13.大気プラズマ処理プロセスが、RF周波電源を使用して大気圧プラズマを生成することを含む、第7項に記載の方法。
【0106】
14.RF周波電源が約13.56MHzから約27MHzである、第13項に記載の方法。
【0107】
15.表面処理プロセスが、真空環境下で行われるプラズマ処理プロセスである、第1項に記載の方法。
【0108】
16.プラズマ処理プロセスが、電極構造を還元プラズマに曝露することを含む、第15項に記載の方法。
【0109】
17.還元プラズマが、アンモニア(NH3)、ヒドラジン(N2H4)、水素(H2)、ハロゲン化水素、カルコゲン化水素、原子状水素、それらのラジカル、それらの誘導体、又はそれらの組合せを含む還元性ガス混合物から形成される、第16項に記載の方法。
【0110】
18.還元性ガス混合物が1つ以上の不活性ガスをさらに含む、第17項に記載の方法。
【0111】
19.還元プラズマが、遠隔形成プラズマ、容量結合プラズマ、又は誘導結合プラズマである、第17項に記載の方法。
【0112】
20.プラズマ処理プロセスが、電極構造を酸化プラズマに曝露することを含む、第15項に記載の方法。
【0113】
21.酸化プラズマが、酸素(O2)、オゾン(O3)、亜酸化窒素(N2O)、フッ素(F2)、塩素(Cl2)、一酸化炭素(CO)、水(HO)、二酸化炭素(CO2)、それらのラジカル、それらの誘導体、又はそれらの組合せを含む、酸化性ガス混合物から形成される、第20項に記載の方法。
【0114】
22.酸化性ガス混合物が1つ以上の不活性ガスをさらに含む、第21項に記載の方法。
【0115】
23.酸化プラズマが、遠隔形成プラズマ、容量結合プラズマ、又は誘導結合プラズマである、第21項に記載の方法。
【0116】
24.電極構造が、炭素、黒鉛、ケイ素、酸化ケイ素、ケイ素含有黒鉛、リチウム、リチウム金属箔又はリチウム合金箔(例えば、リチウムアルミニウム合金)、ニッケル、銅、銀、スズ、インジウム、ケイ素、それらの酸化物、それらの複合物、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つと、結合剤材料とを含む、複合アノードを含む、第1項から第23項のいずれかに記載の方法。
【0117】
25.電極構造が、連続したフレキシブル基板をさらに含む、第1項から第24項のいずれかに記載の方法。
【0118】
26.表面処理プロセスが、ロールツーロールツールで行われる、第1項から第25項のいずれかに記載の方法。
【0119】
27.リチウム金属膜をCO2ガスに曝露してパッシベーション層を形成することをさらに含む、第1項から第26項のいずれかに記載の方法。
【0120】
28.リチウム金属膜を堆積後の表面処理プロセスに曝露することをさらに含み、ここで、堆積後の表面処理プロセスが、真空環境下でリチウム金属膜をアニーリングすること、制御された雰囲気(例えば、アルゴン又は真空)下でレーザを用いてリチウム金属膜を加熱すること、リチウム金属膜を熱エネルギー及び/又は放射線エネルギーに曝露すること、又はそれらの組合せを含む、第1項から第27項のいずれかに記載の方法。
【0121】
29.電極構造を形成する方法であって、大気環境下でアノード構造を形成すること;アノード構造を表面処理プロセスに曝露して電極構造の表面を活性化すること;及び、真空環境下で電極構造上にリチウム金属膜を形成することを含み、ここで、表面処理プロセスが、コロナ処理プロセス、大気プラズマ処理プロセス、低エネルギープラズマ処理プロセス、真空環境下で行われるプラズマ処理プロセス、又はそれらの組合せから選択される、方法。
【0122】
本開示の要素又は本開示の実装形態の例示的態様を紹介する際の冠詞「a」、「an」、「the」及び「said」は、要素が1つ以上存在することを意味することを意図している。
【0123】
「備える」、「含む」、及び「有する」という用語は、包含的であることを意図しており、列挙された要素以外にも追加的な要素が存在しうることを意味する。
【0124】
上記は本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱することなく、本開示の他の実施形態及びさらなる実施形態を考案することができ、その範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
図1A
図1B
図2
図3
【国際調査報告】