(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】モリブデン膜の堆積のためのモリブデン(0)前駆体
(51)【国際特許分類】
C23C 16/18 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
C23C16/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564011
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 US2022025459
(87)【国際公開番号】W WO2022226010
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バリク, チャンダン クル
(72)【発明者】
【氏名】スディジョノ, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ダス, チャンダン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン, ドリーン ウェイ イン
(72)【発明者】
【氏名】サリー, マーク
(72)【発明者】
【氏名】ブイヤン, バスカー ジョティ
(72)【発明者】
【氏名】リウ, フェン キュー.
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA01
4K030AA11
4K030AA18
4K030BA12
4K030CA04
(57)【要約】
モリブデン(0)及び配位錯体が記載される。基板上にモリブデン含有膜を堆積する方法が記載される。該基板は、モリブデン前駆体及び反応物に曝露されてモリブデン含有膜(例えば、元素モリブデン、酸化モリブデン、炭化モリブデン、ケイ化モリブデン、二硫化モリブデン、窒化モリブデン)を形成する。曝露は連続的に行うことも同時に行うこともできる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデン(0)を含み、かつ式(I)、式(II)、又は式(III):
[式中、Lは2n電子供与体中性単座配位子、2n電子供与体中性二座配位子、及び2n電子供与体中性三座配位子のうちの1つ以上である]
の構造を有する金属配位錯体であって、実質的にハロゲンを含まず、かつ実質的にMo-O結合を含まない、金属配位錯体。
【請求項2】
Lが、独立して、アルケン、アミン、カルボニル、ホスフィン、及びクラウン硫黄からなる群より選択される、請求項1に記載の金属配位錯体。
【請求項3】
前記式(I)、式(II)、及び式(III)の構造が、Mo(CO)
n(PMe
3)
(6-n)[式中、nは1から3である]、Mo(CO)
n(CNMe)
(6-n)[式中、nは1から3である]、Mo(CO)
n(Py)
(6-n)[式中、nは1から3である]、Mo(CO)
n(SMe
2)
(6-n)[式中、nは1から3である]、
[式中、nは1から3である]、及び
[式中、nは1から3である」
からなる群より選択される、請求項1に記載の金属配位錯体。
【請求項4】
膜を堆積する方法であって、
基板をモリブデン(0)前駆体に曝露すること、及び
前記基板を反応物に曝露して、実質的にハロゲンを含まないモリブデン含有膜を基板表面に形成すること
を含む、方法。
【請求項5】
前記モリブデン(0)前駆体が、式(I)、式(II)、又は式(III):
[式中、Lは2n電子供与体中性単座配位子、2n電子供与体中性二座配位子、及び2n電子供与体中性三座配位子のうちの1つ以上である]
の構造を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
Lが、独立して、アルケン、アミン、カルボニル、ホスフィン、及びクラウン硫黄からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記式(I)、式(II)、及び式(III)の構造が、Mo(CO)
n(PMe
3)
(6-n)[式中、nは1から3である]、Mo(CO)
n(CNMe)
(6-n)[式中、nは1から3である]、Mo(CO)
n(Py)
(6-n)[式中、nは1から3である]、Mo(CO)
n(SMe
2)
(6-n)[式中、nは1から3である]、
[式中、nは1から3である]、及び
[式中、nは1から3である]、
からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記反応物が、酸化剤及び還元剤のうちの1つ以上を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記モリブデン含有膜が、モリブデン金属(元素Mo)膜、酸化モリブデン膜、炭化モリブデン膜、ケイ化モリブデン膜、二硫化モリブデン膜、及び窒化モリブデン膜のうちの1つ以上を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記基板が、前記モリブデン(0)前駆体及び前記反応物に連続的に曝露される、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記基板が、前記モリブデン(0)前駆体及び前記反応物に同時に曝露される、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記基板を前記反応物に曝露する前に前記モリブデン(0)前駆体の前記基板表面をパージすることをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
パージすることが、真空を適用すること又は前記基板表面の上にパージガスを流すことのうちの1つ以上を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記パージガスが、窒素(N
2)、ヘリウム(He)、及びアルゴン(Ar)のうちの1つ以上を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
膜を堆積する方法であって、
モリブデン(0)前駆体、パージガス、反応物、及びパージガスへの基板の連続曝露を含むプロセスサイクルでモリブデン含有膜を形成すること
を含む、方法。
【請求項16】
前記モリブデン(0)前駆体が、式(I)、式(II)、又は式(III):
[式中、Lは2n電子供与体中性単座配位子、2n電子供与体中性二座配位子、及び2n電子供与体中性三座配位子のうちの1つ以上である]
の構造を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
Lが、独立して、アルケン、アミン、カルボニル、ホスフィン、及びクラウン硫黄からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記式(I)、式(II)、及び式(III)の構造が、Mo(CO)
n(PMe
3)
(6-n)[式中、nは1から3である]、Mo(CO)
n(CNMe)
(6-n)[式中、nは1から3である]、Mo(CO)
n(Py)
(6-n)[式中、nは1から3である]、Mo(CO)
n(SMe
2)
(6-n)[式中、nは1から3である]、
[式中、nは1から3である]、及び
[式中、nは1から3である]
からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
パージすることが、真空を適用すること又は前記基板の上にパージガスを流すことのうちの1つ以上を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記パージガスが、窒素(N
2)、ヘリウム(He)、及びアルゴン(Ar)のうちの1つ以上を含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、モリブデン前駆体、及びモリブデン含有膜を堆積する方法に関する。より詳細には、本開示の実施形態は、2n電子供与体中性単座、二座、及び三座配位子を含有するモリブデン(0)錯体、並びにその使用方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
半導体処理産業は、より大きい表面積を有する基板上に堆積される層の均一性を高めつつ、より大きい生産歩留まりを目指して努力し続けている。これらの同じ要素と新しい材料との組合せは、基板の単位面積あたりの回路の集積度の向上ももたらす。回路の集積度が高まるにつれて、層の厚さに関する均一性とプロセス制御の必要性が高まっている。その結果、層の特性に対する制御を維持しつつ、コスト効率の高い方法で基板上に層を堆積するためのさまざまな技術が開発されている。
【0003】
化学気相堆積(CVD)は、基板上に層を堆積するために用いられる最も一般的な堆積プロセスの1つである。CVDは、フラックス依存性の堆積技法であり、これは、均一な厚さの所望の層を生成するために、基板温度と処理チャンバに導入される前駆体との正確な制御を必要とする。これらの要件は基板サイズが大きくなるにつれてより重要になり、適切な均一性を維持するためにチャンバ設計とガス流技法をより複雑にする必要性が生じる。
【0004】
優れたステップカバレッジを示すCVDの一変形は、周期的堆積又は原子層堆積(ALD)である。周期的堆積は、原子層エピタキシー(ALE)に基づいており、化学吸着技法を使用して連続サイクルで基板表面に前駆体分子を供給する。該サイクルは、基板表面を第1の前駆体、パージガス、第2の前駆体、及びパージガスに曝露する。第1の前駆体及び第2の前駆体は反応して、基板表面に生成化合物を膜として形成する。このサイクルを繰り返し、層を所望の厚さに形成する。
【0005】
先進的なマイクロ電子デバイスの複雑化が進むことにより、現在用いられている堆積技法には厳しい要求が課されている。残念なことに、堅牢な熱安定性、高い反応性、及び膜成長の発生に適した蒸気圧という必須特性を備えた、利用可能な実行可能な化学前駆体の数は限られている。さらに、これらの要件を満たすことの多い前駆体は依然として長期安定性が乏しく、酸素、窒素、及び/又はハロゲン化物など、目的の膜用途にとって有害となることの多い汚染物質を高濃度で含む薄膜の生成につながる。
【0006】
モリブデン膜及びモリブデンベースの膜は、魅力的な材料及び導電特性を備えている。これらの膜は、半導体及びマイクロ電子デバイスのフロントエンド部分からバックエンド部分まで、用途向けに提案され、試験されている。モリブデン前駆体の処理は、多くの場合、ハロゲンベース及びカルボニルベースの置換基の使用を包含する。これらの配位子は、反応性の低下とプロセス温度の上昇を犠牲にして、十分な安定性を提供する。したがって、当技術分野では、反応してモリブデン金属及びモリブデンベースの膜を形成する、ハロゲン基を含まないモリブデン前駆体が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本開示の1つ以上の実施形態は、金属配位錯体を対象とする。1つ以上の実施形態では、金属配位錯体は、モリブデン(0)を含み、式(I)、式(II)、又は式(III):
[式中、Lは2n電子供与体中性単座配位子、2n電子供与体中性二座配位子、及び2n電子供与体中性三座配位子のうちの1つ以上である]の構造を有し、該金属配位錯体は、実質的にハロゲンを含まず、かつ実質的にMo-O結合を含まない。
【0008】
本開示の1つ以上の実施形態は、膜を堆積する方法を対象とする。1つ以上の実施形態では、膜を堆積する方法は、基板をモリブデン(0)前駆体に曝露すること;及び、基板を反応物に曝露して、実質的にハロゲンを含まないモリブデン含有膜を基板表面に形成することを含む。
【0009】
本開示のさらなる実施形態は、膜を堆積する方法を対象とする。1つ以上の実施形態では、膜を堆積する方法は、モリブデン(0)前駆体、パージガス、反応物、及びパージガスへの基板の連続曝露を含むプロセスサイクルでモリブデン含有膜を形成することを含む。
【0010】
本開示の上記特徴を詳細に理解することができるように、その一部が添付の図面に示されている実施形態を参照することにより、上に簡単に要約されている本開示のより詳細な説明を得ることができる。しかしながら、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを示しているのであり、したがって、本開示は他の同等に有効な実施形態も許容しうることから、その範囲を限定すると見なされるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の1つ以上の実施形態による方法のプロセスフロー図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の幾つかの例示的な実施形態について説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されている構造物又はプロセス工程の詳細に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、さまざまな方法で実施又は実行可能である。
【0013】
本開示の実施形態は、前駆体、及びモリブデン含有膜を堆積するプロセスを提供する。1つ以上の実施形態のこれらの金属配位錯体は、ハロゲン及びモリブデン酸素結合を実質的に含まない。配位子は、2n電子供与体中性単座、二座、及び三座配位子でありうる。配位子間の結合は、ALD及びCVD条件下でのさらなる安定性をもたらす。さまざまな実施形態のプロセスは、原子層堆積(ALD)又は化学気相堆積(CVD)などの気相堆積技法を使用してモリブデン膜を提供する。1つ以上の実施形態のモリブデン前駆体は揮発性であり、熱的に安定しており、したがって気相堆積に適している。
【0014】
1つ以上の実施形態では、モリブデン前駆体はハロゲンを含まない。他の実施形態では、モリブデン前駆体は、モリブデン酸素(Mo-O)結合を含まない。1つ以上の実施形態では、モリブデン前駆体は、ハロゲンを含まず、かつモリブデン酸素(Mo-O)結合を含まない。
【0015】
本明細書で用いられる場合、「実質的に含まない」という用語は、モリブデン含有膜中に原子基準で、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、及び約0.5%未満を含む、約5%未満のハロゲンが存在することを意味する。幾つかの実施形態では、モリブデン含有膜は、モリブデン酸素(Mo-O)結合を実質的に含まず、モリブデン含有膜中に原子基準で、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、及び約0.5%未満を含む、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満のモリブデン酸素結合が存在する。
【0016】
本明細書で用いられる「基板」とは、その上で製造プロセス中に膜処理が行われる、任意の基板又は基板上に形成された材料表面を指す。例えば、処理を行うことができる基板表面としては、用途に応じて、ケイ素、酸化ケイ素、歪みシリコン、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)、炭素がドープされた酸化ケイ素、アモルファスシリコン、ドープされたシリコン、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ガラス、サファイアなどの材料、並びに、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属合金、及び他の導電材料などの他の任意の材料が挙げられる。基板には、半導体ウエハが含まれるが、これに限定されない。基板表面を研磨、エッチング、還元、酸化、ヒドロキシル化、アニール、及び/又はベイクするために、基板を前処理プロセスに曝してもよい。基板自体の表面上での直接的な膜処理に加えて、本発明では、開示された膜処理工程のいずれかを、以下により詳細に開示されるように基板上に形成された下層に対して行うこともでき、「基板表面」という用語は、文脈が示すように、このような下層を含むことが意図されている。したがって、例えば、膜/層又は部分的な膜/層が基板表面に堆積されている場合には、新たに堆積された膜/層の露出面が基板表面となる。
【0017】
1つ以上の実施形態によれば、該方法は原子層堆積(ALD)プロセスを用いる。このような実施形態では、基板表面は、前駆体(又は反応性ガス)に連続して又は実質的に連続して曝露される。本明細書全体にわたって用いられる場合、「実質的に連続」とは、多少の重複はありうるが、前駆体曝露期間の大部分が共試薬への曝露と重複しないことを意味する。
【0018】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「前駆体」、「反応物」、「反応性ガス」などの用語は、基板表面と反応することができる任意のガス状種を指すために交換可能に用いられる。
【0019】
本明細書で用いられる「原子層堆積」又は「周期的堆積」とは、2つ以上の反応性化合物に連続的に曝露して、基板表面に材料の層を堆積することを指す。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「反応性化合物」、「反応性ガス」、「反応性核種」、「前駆体」、「プロセスガス」などの用語は、表面反応(例えば、化学吸着、酸化、還元)において基板表面又は基板表面上の材料と反応することができる核種を有する物質を意味するために交換可能に用いられる。基板又は基板の一部が、処理チャンバの反応ゾーンに導入される2つ以上の反応性化合物に連続的に曝露される。時間領域ALDプロセスでは、各反応性化合物への曝露は時間遅延によって分離され、各化合物が基板表面に付着及び/又は基板表面と反応できるようにする。空間ALDプロセスでは、基板上の任意の所与の点が同時に一より多い反応性化合物に実質的に曝露されないように、基板表面の異なる部分又は基板表面上の材料が2つ以上の反応性化合物に同時に曝露される。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、この点に関して用いられる「実質的に」という用語は、当業者に理解されるように、基板の小さい部分が拡散によって同時に複数の反応性ガスに曝される可能性があるが、同時の曝露は意図されていないことを意味する。
【0020】
時間領域ALDプロセスの一態様では、第1の反応性ガス(すなわち、第1の前駆体又は化合物A)が反応ゾーンにパルスされ、その後に第1の時間遅延が続く。次に、第2の前駆体又は化合物Bが反応ゾーンにパルスされ、その後に第2の遅延が続く。各時間遅延の間に、アルゴンなどのパージガスが、処理チャンバ内に導入されて、反応ゾーンをパージするか、あるいは他の方法で任意の残留反応性化合物又は副生成物を反応ゾーンから除去する。あるいは、反応性化合物のパルス間の時間遅延中にパージガスのみが流れるように、パージガスを堆積プロセス全体にわたって連続的に流してもよい。あるいは、反応性化合物は、所望の膜又は膜厚が基板表面に形成されるまでパルス的に送られる。いずれのシナリオでも、化合物A、パージガス、化合物B、及びパージガスをパルス的に送るALDプロセスが1サイクルである。サイクルは、化合物A又は化合物Bのいずれかで開始することができ、所望の厚さの膜が達成されるまで、サイクルのそれぞれの順序を継続することができる。幾つかの実施形態では、交互にパルス及びパージされる2つの反応物A及びBが存在しうる。他の実施形態では、交互にパルス及びパージされる3つ以上の反応物A、B、及びCが存在してもよい。
【0021】
空間ALDプロセスの態様では、第1の反応性ガス及び第2の反応性ガス(例えば、水素ラジカル)は反応ゾーンに同時に供給されるが、不活性ガスカーテン及び/又は真空カーテンによって分離される。基板上の任意の所与の点が第1の反応性ガス及び第2の反応性ガスに曝露されるように、基板はガス供給装置に対して移動する。
【0022】
理論に束縛されるわけではないが、ハロゲン汚染はデバイスの性能に影響を及ぼし、したがって追加の除去手順が必要になる可能性があるため、モリブデン(Mo)前駆体の構造中にハロゲンが存在することによって問題が起こる可能性があると考えられる。
【0023】
モリブデン(Mo)は、多くの用途のために、原子層堆積又は化学気相堆積によって成長させることができる。本開示の1つ以上の実施形態は、モリブデン含有膜を形成するための原子層堆積又は化学気相堆積のプロセスを有利に提供する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「モリブデン含有膜」という用語は、モリブデン原子を含み、約1原子%以上のモリブデン、約2原子%以上のモリブデン、約3原子%以上のモリブデン、約4原子%以上のモリブデン、約5原子%以上のモリブデン、約10原子%以上のモリブデン、約15原子%以上のモリブデン、約20原子%以上のモリブデン、約25原子%以上のモリブデン、約30原子%以上のモリブデン、約35原子%以上のモリブデン、約40原子%以上のモリブデン、約45原子%以上のモリブデン、約50原子%以上のモリブデン、約60原子%以上のモリブデン、約70原子%以上のモリブデン、約80原子%以上のモリブデン、約90原子%以上のモリブデン、又は約95原子%以上のモリブデンを有する膜を指す。幾つかの実施形態では、モリブデン含有膜は、モリブデン金属(元素モリブデン)、酸化モリブデン(MoOx)、炭化モリブデン(MoCx)、ケイ化モリブデン(MoSix)、硫化モリブデン(MoSx)、又は窒化モリブデン(MoNx)のうちの1つ以上を含む。
【0024】
当業者であれば、MoSixのような分子式の使用は、元素間の特定の化学量論的関係を意味するものではなく、単に膜の主要成分の同一性を意味するものであることを認識するであろう。例えば、MoSixとは、モリブデン原子とケイ素原子を主要組成とする膜を指す。幾つかの実施形態では、所定の膜の主要組成(すなわち、所定の原子の原子パーセントの合計)は、原子基準で、膜の約95%、98%、99%、又は99.5%以上である。
【0025】
図1を参照すると、本開示の1つ以上の実施形態は、膜を堆積する方法100を対象とする。
図1に示される方法は、反応性ガスの気相反応を防止するか又は最小限に抑える方法で基板又は基板表面を反応性ガスに連続的に曝露する原子層堆積(ALD)プロセスを表している。幾つかの実施形態では、該方法は、反応性ガスの気相反応と薄膜の堆積を可能にするために反応性ガスが処理チャンバ内で混合される、化学気相堆積(CVD)プロセスを含む。
【0026】
幾つかの実施形態では、方法100は、任意選択的に前処理動作105を含む。前処理は、当業者に知られている任意の適切な前処理でありうる。適切な前処理には、予熱、洗浄、浸漬、自然酸化物の除去、又は接着層(例えば、窒化チタン(TiN))の堆積が含まれるが、これらに限定されない。1つ以上の実施形態では、窒化チタンなどの接着層が動作105において堆積される。他の実施形態では、接着層は堆積されない。
【0027】
堆積110において、基板(又は基板表面)上にモリブデン含有膜を堆積させるためのプロセスが実施される。堆積プロセスは、基板上に膜を形成するための1つ以上の動作を含みうる。動作112では、基板(又は、基板表面)は、モリブデン前駆体に曝露されて、基板(又は、基板表面)上に膜を堆積させる。モリブデン前駆体は、基板表面と反応(すなわち、吸着又は化学吸着)して基板表面にモリブデン含有種を残すことができる任意の適切なモリブデン含有化合物でありうる。
【0028】
金属膜のALD用の現在のモリブデン前駆体は、ハロゲン及びカルボニルをベースとした置換基を使用しており、反応性の低下とプロセス温度の上昇を犠牲にして十分な安定性を提供する。他のモリブデン前駆体には、窒化物不純物の形成につながる可能性のあるアニオン性窒素配位子が含まれる。したがって、1つ以上の実施形態は、2n電子供与体中性単座配位子、2n電子供与体中性二座配位子、及び2n電子供与体中性三座配位子を使用して、熱的に安定な錯体を形成する。配位子間の水素結合は、さらなる安定性をもたらす。この組合せにより、高い揮発性を維持しつつ、熱安定性が改善されたモリブデン前駆体が得られる。
【0029】
1つ以上の実施形態では、モリブデン前駆体、具体的にはモリブデン(0)前駆体は、式(I)、式(II)、又は式(III)の構造を有する:
【0030】
[式中、Lは2n電子供与体中性単座配位子、2n電子供与体中性二座配位子、及び2n電子供与体中性三座配位子のうちの1つ以上である]。幾つかの実施形態では、Lは、独立して、アルケン、アミン、カルボニル、ホスフィン、及びクラウン硫黄からなる群より選択される。金属配位錯体は、実質的にハロゲンを含まなくてよく、実質的にMo-O結合を含まなくてよい。
【0031】
特に明記しない限り、本明細書で単独で又は別の基の一部として用いられる「低級アルキル」、「アルキル」、又は「alk」という用語は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4-ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4-トリメチル-ペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、それらのさまざまな分岐鎖異性体など、直鎖(normal chain)に1から20個の炭素、又は1から10個の炭素原子を含有する、直鎖(straight)炭化水素及び分岐鎖炭化水素の両方を含む。このような基は、任意選択的に、最大で1から4の置換基を含みうる。アルキルは、置換されていても置換されていなくてもよい。
【0032】
1つ以上の実施形態では、金属配位錯体は、式(I)、式(II)、又は式(III)の構造を含む。式(I)、式(II)、及び式(III)の構造は、次からなる群より選択することができる:Mo(CO)
n(PMe
3)
(6-n)[式中、nは1から3である]、Mo(CO)
n(CNMe)
(6-n)[式中、nは1から3である]、Mo(CO)
n(Py)
(6-n)[式中、nは1から3である]、Mo(CO)
n(SMe
2)
(6-n)[式中、nは1から3である]、
[式中、nは1から3である]、及び
[式中、nは1から3である]。
【0033】
本明細書で用いられる場合、「基板表面」とは、その上に層を形成することができる任意の基板表面を指す。基板表面は、その中に形成された1つ以上の特徴部、その上に形成された1つ以上の層、及びそれらの組合せを有しうる。基板(又は基板表面)は、モリブデン含有層の堆積前に、例えば、研磨、エッチング、還元、酸化、ハロゲン化、ヒドロキシル化、アニーリング、ベーキングなどによって前処理することができる。
【0034】
基板は、シリコン基板、III-V族化合物基板、シリコンゲルマニウム(SiGe)基板、エピ基板、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板、ディスプレイ基板、例えば液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンス(EL)ランプディスプレイ、ソーラーアレイ、ソーラーパネル、発光ダイオード(LED)基板、半導体ウエハなど、その上に材料を堆積させることができる任意の基板でありうる。幾つかの実施形態では、モリブデン含有層をその上に少なくとも部分的に形成することができるように、1つ以上の追加の層を基板上に配置することができる。例えば、幾つかの実施形態では、金属、窒化物、酸化物など、又はそれらの組合せを含む層を基板上に配置することができ、一又は複数のこのような層上にモリブデン含有層を形成することができる。
【0035】
動作114では、処理チャンバは、任意選択的にパージされて、未反応のモリブデン前駆体、反応生成物、及び副生成物が除去される。このように用いられる場合、「処理チャンバ」という用語は、処理チャンバの完全な内部容積を包含せずに、基板表面に隣接する処理チャンバの部分も含む。例えば、空間的に分離された処理チャンバのセクターでは、基板をガスカーテンに通して、モリブデン前駆体を全く含まない又は実質的に全く含まない処理チャンバの部分又はセクターに移動させることを含むが、これに限定されない任意の適切な技法によって、基板表面に隣接する処理チャンバの部分からモリブデン前駆体がパージされる。1つ以上の実施形態では、処理チャンバをパージすることは、真空を適用することを含む。幾つかの実施形態では、処理チャンバをパージすることは、基板の上にパージガスを流すことを含む。幾つかの実施形態では、処理チャンバの一部分とは、処理チャンバ内のマイクロ容積又は小容積の処理ステーションを指す。基板表面に言及する「隣接する」という用語は、表面反応(例えば、前駆体吸着)が起こるのに十分な空間を提供することができる、基板の表面の隣の物理的空間を意味する。1つ以上の実施形態では、パージガスは、窒素(N2)、ヘリウム(He)、及びアルゴン(Ar)のうちの1つ以上から選択される。
【0036】
動作116では、基板(又は、基板表面)は、反応物に曝露されて、基板上に1つ以上のモリブデン膜を形成する。反応物は、基板表面上のモリブデン含有種と反応して、モリブデン含有膜を形成することができる。幾つかの実施形態では、反応物は還元剤を含む。1つ以上の実施形態では、還元剤は、当業者に知られている任意の還元剤を含みうる。他の実施形態では、反応物は酸化剤を含む。1つ以上の実施形態では、酸化剤は、当業者に知られている任意の酸化剤を含みうる。さらなる実施形態では、反応物は、酸化剤及び還元剤のうちの1つ以上を含む。
【0037】
特定の実施形態では、反応物は、1,1-ジメチルヒドラジン(DMH)、アルキルアミン、ヒドラジン、アルキルヒドラジン、アリルヒドラジン、水素(H2)、アンモニア(NH3)、アルコール、水(H2O)、酸素(O2)、オゾン(O3)、亜酸化窒素(N2O)、二酸化窒素(NO2)、過酸化物、N-オキシド類(例えば、Me3NO、TEMPO)、P-オキシド(例えば、Et3PO)、S-オキシド類、及びそれらのプラズマのうちの1つ以上から選択される。幾つかの実施形態では、アルキルアミンは、tert-ブチルアミン(tBuNH2)、イソプロピルアミン(iPrNH2)、エチルアミン(CH3CH2NH2)、ジエチルアミン((CH3CH2)2NH)、又はブチルアミン(BuNH2)のうちの1つ以上から選択される。幾つかの実施形態では、反応物は、式R’NH2、R’2NH、R’3N、R’2SiNH2、(R’3Si)2NH、(R’3Si)3Nを有する化合物のうちの1つ以上を含む;式中、各R’は、独立して、H、又は1~12個の炭素原子を有するアルキル基である。幾つかの実施形態では、アルキルアミンは、tert-ブチルアミン(tBuNH2)、イソプロピルアミン(iPrNH2)、エチルアミン(CH3CH2NH2)、ジエチルアミン((CH3CH2)2NH)、ブチルアミン(BuNH2)のうちの1つ以上から本質的になる。
【0038】
動作118では、処理チャンバは、反応物への曝露後に任意選択的にパージされる。動作118の処理チャンバのパージは、動作114のパージと同じ処理であっても異なる処理であってもよい。処理チャンバ、処理チャンバの一部、基板表面に隣接する領域などをパージすることにより、基板表面に隣接する領域から未反応の反応物、反応生成物、及び副生成物が除去される。
【0039】
判定120において、堆積された膜の厚さ、又はモリブデン前駆体と反応物のサイクル数が考慮される。堆積された膜が所定の厚さに達した場合、又は所定の数の処理サイクルが実施された場合、方法100は任意選択的な後処理動作130に移る。堆積された膜の厚さ又は処理サイクルの数が所定の閾値に達していない場合、方法100は、動作110に戻り、動作112において基板表面を再びモリブデン前駆体に曝露し、その後の動作を継続する。
【0040】
任意選択的な後処理動作130は、例えば、膜特性を変更するプロセス(例えば、アニーリング)、又は追加の膜を成長させるためのさらなる膜堆積プロセス(例えば、追加のALD又はCVDプロセス)でありうる。幾つかの実施形態では、任意選択的な後処理動作130は、堆積された膜の特性を変更するプロセスでありうる。幾つかの実施形態では、任意選択的な後処理動作130は、堆積されたままの膜をアニーリングすることを含む。幾つかの実施形態では、アニーリングは、約300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、又は1000℃の範囲の温度で行われる。幾つかの実施形態のアニーリング環境は、不活性ガス(例えば、分子状窒素(N2)、アルゴン(Ar))、若しくは還元性ガス(例えば、分子状水素(H2)又はアンモニア(NH3))、若しくは酸化剤、例えば、限定はしないが、酸素(O2)、オゾン(O3)、又は過酸化物のうちの1つ以上を含む。アニーリングは、任意の適切な時間にわたって実施することができる。幾つかの実施形態では、膜は、約15秒から約90分の範囲、又は約1分から約60分の範囲の所定の時間、アニーリングされる。幾つかの実施形態では、堆積されたままの膜をアニーリングすることにより、密度が増加し、抵抗率が低下し、及び/又は膜の純度が増加する。
【0041】
方法100は、例えば、モリブデン前駆体、反応物、又はデバイスの熱収支に応じて、任意の適切な温度で実施することができる。1つ以上の実施形態では、高温処理の使用は、ロジックデバイスなどの温度に敏感な基板にとっては望ましくない場合がある。幾つかの実施形態では、モリブデン前駆体(動作112)及び反応物(動作116)への曝露は、同じ温度で行われる。幾つかの実施形態では、基板は、約20℃から約400℃、又は約50℃から約650℃の範囲の温度で維持される。
【0042】
幾つかの実施形態では、モリブデン前駆体(動作112)への曝露は、反応物質(動作116)への曝露とは異なる温度で行われる。幾つかの実施形態では、基板は、モリブデン前駆体への曝露については、約20℃から約400℃、又は約50℃から約650℃の範囲の第1の温度で維持され、反応物への曝露については、約20℃から約400℃、又は約50℃から約650℃の範囲の第2の温度で維持される。
【0043】
図1に示される実施形態では、堆積動作110において、基板(又は基板表面)は、モリブデン前駆体及び反応物に連続的に曝露される。別の図示されていない実施形態では、基板(又は基板表面)は、CVD反応において、モリブデン前駆体及び反応物に同時に曝露される。CVD反応では、基板(又は基板表面)は、モリブデン前駆体と反応物のガス状混合物に曝露されて、所定の厚さを有するモリブデン含有膜を堆積することができる。CVD反応では、モリブデン含有膜は、混合反応性ガスへの1回の曝露で堆積させてもよく、あるいは、合間にパージしつつ、混合反応性ガスに複数回曝露させてもよい。
【0044】
幾つかの実施形態では、形成されたモリブデン含有膜は元素モリブデンを含む。別の言い方をすれば、幾つかの実施形態では、モリブデン含有膜は、モリブデンを含む金属膜を含む。幾つかの実施形態では、金属膜は、本質的にモリブデンからなる。このように用いられる場合、「本質的にモリブデンからなる」という用語は、モリブデン含有膜が、原子基準で、約80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は99.5%以上のモリブデンであることを意味する。モリブデン含有膜の組成の測定とは、隣接する膜からの元素の拡散が起こる可能性のある界面領域を除いた、膜のバルク部分を指す。
【0045】
他の実施形態では、モリブデン含有膜は、酸化モリブデン(MoOx)を、原子基準で、約5%、7.5%、10%、12.5%、又は15%以上の酸素含有量で含む。幾つかの実施形態では、モリブデン含有膜は、原子基準で、約2%から約30%の範囲、又は約3%から約25%の範囲、又は約4%から約20%の範囲の酸素含有量を含む。
【0046】
他の実施形態では、モリブデン含有膜は、炭化モリブデン(MoCx)を、原子基準で、約5%、7.5%、10%、12.5、又は15%以上の炭素含有量で含む。幾つかの実施形態では、モリブデン含有膜は、原子基準で、約2%から約30%の範囲、又は約3%から約25%の範囲、又は約4%から約20%の範囲の炭素含有量を含む。
【0047】
堆積動作110を繰り返して、所望の厚さを有する、酸化モリブデン膜、炭化モリブデン膜、ケイ化モリブデン膜、二硫化モリブデン膜、及び窒化モリブデン膜のうちの1つ以上を形成することができる。幾つかの実施形態では、堆積動作110を繰り返して、約0.3nmから約100nmの範囲、又は約30Åから約10μMの範囲の厚さを有する、酸化モリブデン膜、炭化モリブデン膜、ケイ化モリブデン膜、及び窒化モリブデン膜のうちの1つ以上を提供する。
【0048】
本開示の1つ以上の実施形態は、高アスペクト比の特徴部にモリブデン含有膜を堆積する方法を対象とする。高アスペクト比の特徴部は、約10、20、又は50以上、あるいはそれより大きい高さ:幅の比を有する、トレンチ、ビア、又はピラーである。幾つかの実施形態では、モリブデン含有膜は、高アスペクト比の特徴部上に共形的に堆積される。このように用いられる場合、共形の膜は、特徴部の上部の近くに、特徴部の底部の厚さの約80~120%の範囲の厚さを有する。
【0049】
本開示の幾つかの実施形態は、特徴部のボトムアップ間隙充填の方法を対象とする。ボトムアップ間隙充填プロセスは、特徴部を底部から充填するのに対し、共形プロセスは特徴部を底部と側面から充填する。幾つかの実施形態では、特徴部は、底部に第1の材料(例えば、窒化物)を有し、側壁に第2の材料(例えば、酸化物)を有する。モリブデン含有膜は、該モリブデン膜がボトムアップ方式で特徴部を充填するように、第2の材料に対して第1の材料上に選択的に堆積する。
【0050】
1つ以上の実施形態によれば、基板は、層の形成前及び/又は形成後に処理に供される。この処理は、同じチャンバ内、又は1つ以上の別個の処理チャンバ内で行うことができる。幾つかの実施形態では、基板は、さらなる処理のために、第1のチャンバから別個の第2のチャンバへと移される。基板は、第1のチャンバから別個の処理チャンバへと直接移されてもよく、あるいは、第1のチャンバから1つ以上の移送チャンバへと移され、その後、別個の処理チャンバへと移されてもよい。したがって、処理装置は、移送ステーションと連絡している複数のチャンバを含みうる。この種の装置は、「クラスタツール」又は「クラスタシステム」などと呼ばれる場合がある。
【0051】
概して、クラスタツールは、基板の中心検出と方向付け、ガス抜き、アニーリング、堆積、及び/又はエッチングを含むさまざまな機能を実行する複数のチャンバを備えたモジュラーシステムである。1つ以上の実施形態によれば、クラスタツールは、少なくとも第1のチャンバと中央移送チャンバを含む。中央移送チャンバは、処理チャンバとロードロックチャンバとの間で基板を往復搬送することができるロボットを格納することができる。移送チャンバは、通常、減圧条件で維持され、基板をあるチャンバから別のチャンバへ、及び/又はクラスタツールの前端に配置されたロードロックチャンバへと往復させる中間ステージを提供する。本開示に適合しうる2つのよく知られているクラスタツールは、Centura(登録商標)とEndura(登録商標)であり、両方とも、米国カリフォルニア州サンタクララ所在のApplied Materials,Inc.から入手可能である。しかしながら、チャンバの厳密な配置及び組合せは、本明細書に記載されたプロセスの特定の工程を実行する目的で変更することができる。使用することができる他の処理チャンバには、限定はしないが、周期的層堆積(CLD)、原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVD)、物理的気相堆積(PVD)、エッチング、予洗浄、化学洗浄、RTPなどの熱処理、プラズマ窒化、ガス抜き、配向、ヒドロキシル化、及び他の基板処理が含まれる。クラスタツール上のチャンバ内でプロセスを実施することにより、後続の膜を堆積する前に酸化することなく、空気中の不純物による基板の表面汚染を回避することができる。
【0052】
1つ以上の実施形態によれば、基板は連続的減圧下又は「ロードロック」状態にあり、あるチャンバから次のチャンバへと移動する際に周囲空気に曝露されない。したがって、移送チャンバは減圧下にあり、減圧下で「ポンプダウン」される。処理チャンバ又は移送チャンバ内には、不活性ガスが存在しうる。幾つかの実施形態では、反応物の一部又はすべて(例えば、1つの反応物)を除去するために、不活性ガスがパージガスとして用いられる。1つ以上の実施形態によれば、反応物(例えば、1つの反応物)が堆積チャンバから移送チャンバ及び/又は追加の処理チャンバに移動するのを防ぐために、堆積チャンバの出口でパージガスが注入される。したがって、不活性ガスの流れがチャンバの出口にカーテンを形成する。
【0053】
基板は、単一基板堆積チャンバ内で処理することができ、そこで、単一の基板がロード、処理、及びアンロードされた後、別の基板が処理される。基板は、複数の基板が個々にチャンバの第1の部分にロードされ、チャンバ内を移動し、チャンバの第2の部分からアンロードされるコンベアシステムと同様に、連続的な態様で処理することもできる。チャンバ及び関連するコンベヤシステムの形状は、直線経路又は曲線経路を形成することができる。加えて、処理チャンバはカルーセルであってもよく、そこで、複数の基板が、中心軸の周りを移動し、カルーセル経路全体を通じて堆積、エッチング、アニーリング、洗浄などのプロセスに曝露される。
【0054】
処理中、基板は加熱又は冷却することができる。このような加熱又は冷却は、限定はしないが、基板支持体の温度を変化させること、及び加熱又は冷却されたガスを基板表面に流すことを含む、任意の適切な手段によって達成することができる。幾つかの実施形態では、基板支持体は、伝導的に基板温度を変化させるように制御することができるヒータ/クーラを含む。1つ以上の実施形態では、基板温度を局所的に変化させるために、用いられるガス(反応性ガス又は不活性ガス)は加熱又は冷却される。幾つかの実施形態では、基板温度を対流によって変化させるために、ヒータ/クーラが、基板表面に隣接してチャンバ内に配置される。
【0055】
基板はまた、処理中に静止していても回転していてもよい。回転する基板は、連続的に又は個別の工程で(基板軸を中心に)回転させることができる。例えば、基板は、プロセス全体を通して回転させることができ、あるいは基板は、異なる反応性ガス又はパージガスへの曝露の合間に少しずつ回転させることができる。処理中に基板を回転させると(連続的又は段階的のいずれか)、例えば、ガス流の幾何学的形状の局所的なばらつきの影響を最小限に抑えることにより、より均一な堆積又はエッチングの実現に役立てることができる。
【0056】
次に、以下の例を参照して本開示を説明する。本開示の幾つかの例示的な実施形態を説明する前に、本開示が、以下の説明に記載される構成又はプロセスステップの詳細に限定されないことが理解されるべきである。本開示は、他の実施形態も可能であり、さまざまな方法で実施又は実行することができる。
【実施例】
【0057】
実施例1:Mo(CO)3(PMe3)3の調製
Mo(CO)3(PMe3)3は、Mo(CO)6と3当量のトリメチルホスフィンをアセトニトリル中90℃で3時間反応させることによって調製した。真空下でアセトニトリルを除去すると、目的前駆体Mo(CO)3(PMe3)3が純度98%、収率88%で固体として得られた。融点35℃。
【0058】
1H NMR (C6D6, 500 MHz, ppm): δ 0.76-0.74 (d, CH3, JP-H = 10Hz)
【0059】
13C NMR (C6D6, 500 MHz, ppm): δ 206.0 (s, CO), 19.3 (s, CH3)
【0060】
31P NMR (C6D6, 500 MHz, ppm): δ -16.9
【0061】
実施例2:追加のモリブデン前駆体の調製
Mo(CO)3(PMe3)3と同様に、他の前駆体は、Mo(CO)6を対応する配位子と反応させることによって調製されるであろう。
【0062】
実施例3:モリブデン含有膜の原子層堆積
一般的な手順:シリコン基板を処理チャンバ内に配置した。モリブデン前駆体を、シリコン基板上、窒素(N2)ガス雰囲気中で処理チャンバ内に流し込み、モリブデン前駆体で終端された表面が残された。次いで、未反応の前駆体と副生成物をチャンバ外へとパージした。次に、共反応物をチャンバ内に導入し、表面に結合したモリブデン種と反応させた。再び、過剰な共反応物と副生成物をチャンバから除去した。基板上に得られた材料はモリブデン含有膜であった。
【0063】
説明を容易にするために、「真下」、「下」、「下方」、「上」、「上方」などの空間的に相対的な用語を使用して、図に示されているある要素又は特徴部と別の(一又は複数の)要素又は(一又は複数の)特徴部との関係を説明することができる。空間的に相対的な用語は、図に示されている方向に加えて、使用中又は動作中のデバイスのさまざまな方向を包含することが意図されていることが理解されよう。例えば、図のデバイスが裏返された場合、他の要素又は特徴部の「下」又は「真下」と説明されている要素は、他の要素又は特徴部の「上」に配向されるであろう。したがって、「下」という例示的な用語は、上と下の両方の配向を包含しうる。デバイスは、別の方向に配向(90度又は他の配向で回転)されてよく、本明細書で用いられる空間的に相対的な記述子は、それに応じて解釈される。
【0064】
本明細書で論じられる材料及び方法を説明する文脈(とりわけ、以下の請求項の文脈)での「a」及び「an」及び「the」という用語、並びに同様の指示対象の使用は、本明細書に別段の記載がない限り、又は文脈に明確に矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方に及ぶと解釈されるべきである。本明細書の値の範囲の列挙は、本明細書に別段の記載がない限り、範囲内に入る各個別の値を個別に参照する簡単な方法として機能することを単に意図しており、各個別の値は、本明細書に個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供される任意及びすべての例、又は例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に材料及び方法をより明らかにすることを意図しており、特に明記しない限り、特許請求の範囲に制限を課すことはない。明細書のいかなる文言も、特許請求されていない要素が開示された材料及び方法の実施に不可欠であることを示していると解釈されるべきではない。
【0065】
この明細書全体を通じての、「一実施形態」、「ある特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、又は、「実施形態」に対する言及は、実施形態に関連して説明されている特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体のさまざまな箇所での「1つ以上の実施形態」、「ある特定の実施形態」、「一実施形態」、又は「ある実施形態」などの文言の表出は、必ずしも本開示の同一の実施形態を指すものではない。1つ以上の実施形態では、特定の特徴部、構造、材料、又は特性は、任意の適切な態様で組み合わされる。
【0066】
本明細書の開示は具体的な実施形態を参照して説明されているが、これらの実施形態は、本開示の原理及び用途の単なる例示であるものと理解されたい。本開示の主旨及び範囲から逸脱することなく、本開示の方法及び装置に対してさまざまな修正及び変形を行うことができることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内である修正及び変形を含むことが意図されている。
【国際調査報告】