(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】バナジウム含有膜の堆積
(51)【国際特許分類】
C23C 16/30 20060101AFI20240326BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C23C16/30
C23C16/455
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564505
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 US2022071714
(87)【国際公開番号】W WO2022226472
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ ブイ.イバノフ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ティー.サボ
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA13
4K030AA16
4K030AA18
4K030BA19
4K030BA38
4K030BA42
4K030BB12
4K030CA05
4K030FA01
4K030HA01
4K030JA09
4K030JA10
(57)【要約】
開示され、特許請求された主題は、窒化バナジウムおよび酸窒化バナジウムを含むバナジウム含有膜の堆積方法に関する。本方法は、包括的に(i)堆積反応器中で基材をオキシ三塩化バナジウム蒸気と接触させること、(ii)いずれかの未反応のオキシ三塩化バナジウムを不活性ガスでパージすること、(iii)堆積反応器中で基材を窒素含有反応物と接触させること、および(iv)いずれかの未反応の窒素含有反応物を不活性ガスでパージすることを含んでいる。付加的な工程、例えば(v)残存する酸素を酸窒化物膜から除去するための基材のプラズマでの処理、を含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程、
(i)基材を、堆積反応器中で、オキシ三塩化バナジウム蒸気と接触させること、
(ii)未反応のオキシ三塩化バナジウムを第1の不活性ガスでパージすること、
(iii)前記基材を、前記堆積反応器中で、窒素含有反応物と接触させること、および、
(iv)随意選択的に、未反応の窒素含有反応物を第2の不活性ガスでパージすること、
を含んでなるバナジウム含有膜の堆積方法。
【請求項2】
以下の工程、
(i)基材を、堆積反応器中で、オキシ三塩化バナジウム蒸気と接触させること、
(ii)未反応のオキシ三塩化バナジウムを第1の不活性ガスでパージすること、
(iii)前記基材を、前記堆積反応器中で、窒素含有反応物と接触させること、および、
(iv)随意選択的に、未反応の窒素含有反応物を第2の不活性ガスでパージすること、
から本質的になる、バナジウム含有膜の堆積方法。
【請求項3】
以下の工程、
(i)基材を、堆積反応器中で、オキシ三塩化バナジウム蒸気と接触させること、
(ii)未反応のオキシ三塩化バナジウムを第1の不活性ガスでパージすること、
(iii)前記基材を、前記堆積反応器中で、窒素含有反応物と接触させること、および、
(iv)随意選択的に、未反応の窒素含有反応物を第2の不活性ガスでパージすること、
からなる、バナジウム含有膜の堆積方法。
【請求項4】
以下の工程、
(i)基材を、堆積反応器中で、オキシ三塩化バナジウム蒸気と接触させること、
(ii)未反応のオキシ三塩化バナジウムを第1の不活性ガスでパージすること、
(iii)前記基材を、前記堆積反応器中で、窒素含有反応物と接触させること、
(iv)随意選択的に、未反応の窒素含有反応物を第2の不活性ガスでパージすること、および、
(v)前記基材をプラズマで処理すること、
を含んでなる、バナジウム含有膜の堆積方法。
【請求項5】
以下の工程、
(i)基材を、堆積反応器中で、オキシ三塩化バナジウム蒸気と接触させること、
(ii)未反応のオキシ三塩化バナジウムを第1の不活性ガスでパージすること、
(iii)前記基材を、前記堆積反応器中で、窒素含有反応物と接触させること、
(iv)随意選択的に、未反応の窒素含有反応物を第2の不活性ガスでパージすること、および、
(v)前記基材をプラズマで処理すること、
から本質的になる、バナジウム含有膜の堆積方法。
【請求項6】
以下の工程、
(i)基材を、堆積反応器中で、オキシ三塩化バナジウム蒸気と接触させること、
(ii)未反応のオキシ三塩化バナジウムを第1の不活性ガスでパージすること、
(iii)前記基材を、前記堆積反応器中で、窒素含有反応物と接触させること、
(iv)随意選択的に、未反応の窒素含有反応物を第2の不活性ガスでパージすること、および、
(v)前記基材をプラズマで処理して、残留する酸素を酸窒化物膜から除去すること、
からなる、バナジウム含有膜の堆積方法。
【請求項7】
(i)前記基材をオキシ三塩化バナジウム蒸気と接触させる前記工程が、オキシ三塩化バナジウム蒸気を約0.1秒間~約3秒間パルスすることを含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
(i)前記基材をオキシ三塩化バナジウム蒸気と接触させる前記工程が、オキシ三塩化バナジウム蒸気を約1秒間パルスすることを含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
(ii)未反応のオキシ三塩化バナジウムを前記第1の不活性ガスでパージする前記工程が、約1秒間~約90秒間のパージ時間を含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
(ii)未反応のオキシ三塩化バナジウムを前記第1の不活性ガスでパージする前記工程が、約15秒間~約60秒間のパージ時間を含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
(ii)未反応のオキシ三塩化バナジウムを前記第1の不活性ガスでパージする前記工程が、約30秒間のパージ時間を含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
(ii)未反応のオキシ三塩化バナジウムを前記第1の不活性ガスでパージする前記工程が、約60秒間のパージ時間を含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
(ii)未反応のオキシ三塩化バナジウムを前記第1の不活性ガスでパージする前記工程が、約90秒間のパージ時間を含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
(ii)未反応のオキシ三塩化バナジウムを前記第1の不活性ガスでパージする前記工程が、アルゴンを含む不活性ガスでパージすることを含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
(ii)未反応のオキシ三塩化バナジウムを前記第1の不活性ガスでパージする前記工程が、窒素を含む不活性ガスでパージすることを含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記工程(iii)で、窒素含有反応物が、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジンおよびジアルキルヒドラジンの1種もしくは2種以上を含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記工程(iii)で、窒素含有反応物がアンモニアを含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
(iii)前記基材をアンモニアガスと接触させる前記工程が、前記窒素含有反応物を約0.5秒間~約5秒間パルスすることを含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
(iii)前記基材をアンモニアガスと接触させる前記工程が、前記窒素含有反応物を約2.5秒間パルスすることを含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
(iii)前記基材をアンモニアガスと接触させる前記工程が、前記窒素含有反応物を約5秒間パルスすることを含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
(iv)随意選択的にいずれかの未反応の窒素含有反応物を第2の不活性ガスでパージする前記工程が、約15秒間~約90秒間のパージ時間を含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
(iv)随意選択的にいずれかの未反応の窒素含有反応物を第2の不活性ガスでパージする前記工程が、約15秒間~約60秒間のパージ時間を含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
(iv)随意選択的にいずれかの未反応の窒素含有反応物を第2の不活性ガスでパージする前記工程が、約30秒間のパージ時間を含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
(iv)随意選択的にいずれかの未反応の窒素含有反応物を第2の不活性ガスでパージする前記工程が、約60秒間のパージ時間を含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
(iv)随意選択的にいずれかの未反応の窒素含有反応物を第2の不活性ガスでパージする前記工程が、約90秒間のパージ時間を含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
(iv)随意選択的にいずれかの未反応の窒素含有反応物を第2の不活性ガスでパージする前記工程が、アルゴンを含む不活性ガスでパージすることを含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
(iv)随意選択的にいずれかの未反応の窒素含有反応物を第2の不活性ガスでパージする前記工程が、窒素を含む不活性ガスでパージすることを含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
(v)前記基材をプラズマで処理して残留する酸素を酸窒化物膜から除去する前記工程が、窒素(N
2)プラズマまたは水素(H
2)プラズマでの処理を含む、請求項4~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
(v)前記基材をプラズマで処理して残留する酸素を酸窒化物膜から除去する前記工程が、前記反応器中で直接に発生させたプラズマを含む、請求項4~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
(v)前記基材をプラズマで処理して残留する酸素を酸窒化物膜から除去する前記工程が、前記反応器の外で発生させたプラズマを含む、請求項4~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
(v)前記基材をプラズマで処理して残留する酸素を酸窒化物膜から除去する前記工程が、窒素プラズマでの処理を含む、請求項4~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
(v)前記基材をプラズマで処理して残留する酸素を酸窒化物膜から除去する前記工程が、窒素(N
2)、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジンおよびジアルキルヒドラジンの1種もしくは2種以上を含む窒素源から発生された窒素プラズマを含む、請求項4~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
(v)前記基材をプラズマで処理して残留する酸素を酸窒化物膜から除去する前記工程が、窒素(N
2)を含む窒素源から発生された窒素プラズマを含む、請求項4~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項34】
(v)前記基材をプラズマで処理して残留する酸素を酸窒化物膜から除去する前記工程が、アンモニアを含む窒素源から発生された窒素プラズマを含む、請求項4~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
(v)前記基材をプラズマで処理して残留する酸素を酸窒化物膜から除去する前記工程が、ヒドラジンを含む窒素源から発生された窒素プラズマを含む、請求項4~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項36】
(v)前記基材をプラズマで処理して残留する酸素を酸窒化物膜から除去する前記工程が、モノアルキルヒドラジンを含む窒素源から発生された窒素プラズマを含む、請求項4~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項37】
(v)前記基材をプラズマで処理して残留する酸素を酸窒化物膜から除去する前記工程が、ジアルキルヒドラジンを含む窒素源から発生された窒素プラズマを含む、請求項4~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項38】
前記基材が、酸化ケイ素を含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項39】
前記基材が、酸化アルミニウムを含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
前記基材が、窒化チタンを含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項41】
前記基材が、酸化チタンを含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項42】
前記基材が、酸化ジルコニウムを含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項43】
前記基材が、約300℃~約600℃の温度に加熱される、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項44】
前記基材が、約350℃~約550℃の温度に加熱される、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項45】
前記基材が、約400℃~約500℃の温度に加熱される、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項46】
前記堆積反応器が、約50トール以下の圧力である、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項47】
前記堆積反応器が、約40トール以下の圧力である、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項48】
前記堆積反応器が、約30トール以下の圧力である、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項49】
前記堆積反応器が、約20トール以下の圧力である、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項50】
前記堆積反応器が、約10トール以下の圧力である、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項51】
前記堆積反応器が、約5トール以下の圧力である、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項52】
請求項1~51のいずれか1項記載の方法によって堆積されたバナジウム含有膜。
【請求項53】
前記膜が、約1~約60のアスペクト比を有する、請求項1~51のいずれか1項記載の方法によって堆積されたバナジウム含有膜。
【請求項54】
前記膜が、約1~約50のアスペクト比を有する、請求項1~51のいずれか1項記載の方法によって堆積されたバナジウム含有膜。
【請求項55】
前記膜が、約1~約40のアスペクト比を有する、請求項1~51のいずれか1項記載の方法によって堆積されたバナジウム含有膜。
【請求項56】
前記膜が、約1~約30のアスペクト比を有する、請求項1~51のいずれか1項記載の方法によって堆積されたバナジウム含有膜。
【請求項57】
前記膜が、約1~約20のアスペクト比を有する、請求項1~51のいずれか1項記載の方法によって堆積されたバナジウム含有膜。
【請求項58】
前記膜が、約2超のアスペクト比を有する、請求項1~51のいずれか1項記載の方法によって堆積されたバナジウム含有膜。
【請求項59】
前記膜が、約5超のアスペクト比を有する、請求項1~51のいずれか1項記載の方法によって堆積されたバナジウム含有膜。
【請求項60】
前記膜が、約150~約500μΩ・cmの抵抗率を有する、請求項1~51のいずれか1項記載の方法によって堆積されたバナジウム含有膜。
【請求項61】
前記膜が、約175~約450μΩ・cmの抵抗率を有する、請求項1~51のいずれか1項記載の方法によって堆積されたバナジウム含有膜。
【請求項62】
前記膜が、約175~約400μΩ・cmの抵抗率を有する、請求項1~51のいずれか1項記載の方法によって堆積されたバナジウム含有膜。
【請求項63】
前記膜が、約175~約350μΩ・cmの抵抗率を有する、請求項1~51のいずれか1項記載の方法によって堆積されたバナジウム含有膜。
【請求項64】
前記膜が、約175~約300μΩ・cmの抵抗率を有する、請求項1~51のいずれか1項記載の方法によって堆積されたバナジウム含有膜。
【請求項65】
前記膜が、約175~約250μΩ・cmの抵抗率を有する、請求項1~51のいずれか1項記載の方法によって堆積されたバナジウム含有膜。
【請求項66】
前記膜が、約175μΩ・cmの抵抗率を有する、請求項1~51のいずれか1項記載の方法によって堆積されたバナジウム含有膜。
【請求項67】
前記膜が、約200μΩ・cmの抵抗率を有する、請求項1~51のいずれか1項記載の方法によって堆積されたバナジウム含有膜。
【請求項68】
前記膜が、約250μΩ・cmの抵抗率を有する、請求項1~51のいずれか1項記載の方法によって堆積されたバナジウム含有膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示され、そして特許請求される主題は、窒化バナジウムおよび酸窒化バナジウムを含む、バナジウム含有膜の堆積方法に関する。本方法は、包括的に、(i)堆積反応器中で、基材を、オキシ三塩化バナジウム蒸気と接触させること、(ii)いずれかの未反応のオキシ三塩化バナジウムを不活性ガスでパージすること、(iii)堆積反応器中で、基材を、窒素含有反応物と接触させること、および、(iv)いずれかの未反応の窒素含有反応物を不活性ガスでパージすること、を含んでいる。付加的な工程、例えば、基材を窒素プラズマで処理して、酸窒化物膜から残った酸素を除去する工程が含まれることができる。
【背景技術】
【0002】
薄膜、そして特には薄い金属含有膜は、例えばナノテクノロジーや半導体装置の製造における、種々の重要な用途を有している。そのような用途の例としては、高屈折率光学コーティング、腐食防止コーティング、光触媒自己洗浄性ガラスコーティング、生体適合性コーティング、電界効果トランジスタ(FET)における誘電体キャパシタ層およびゲート誘電体絶縁膜、キャパシタ電極、ゲート電極、粘着性拡散バリア、ならびに集積回路が挙げられる。金属薄膜および誘電体薄膜もまた、マイクロエレクトロニクス用途、例えばダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)用の高κ誘電体酸化物ならびに赤外検出器および不揮発性強誘電体ランダムアクセスメモリ(NV-FeRAM)で用いられる強誘電体ペロブスカイト、で用いられる。
【0003】
種々の前駆体が、金属含有薄膜を形成するのに用いられることができ、そして種々の堆積技術が用いられることができる。そのような技術としては、反応性スパッタリング、イオンアシスト堆積、ゾル-ゲル堆積、化学気相堆積(CVD)(有機金属CVDもしくはMOCVDとしても知られている)、ならびに原子層堆積(ALD)(原子層エピタキシとしても知られている)が挙げられる。CVDおよびALDプロセスは、それらが高められた組成の制御、高い膜均一性、およびドーピングの効果的な制御の利点を有しているので、益々用いられている。
【0004】
CVDプロセスは、それによって前駆体が、薄膜を基材表面上に形成するように用いられる化学的プロセスである。典型的なCVDプロセスでは、前駆体が、低圧または大気圧の反応器中で基材(例えば、ウエハ)の表面上に通過させられる。この前駆体は、基材表面上で反応および/または分解して、堆積された材料の薄膜を生成する。揮発性の副生成物は、反応器をとおして流れるガスによって除去される。堆積された膜の厚さは、制御するのが難しい、何故ならば、それは、多くのパラメータ、例えば温度、圧力、ガス流の体積および均一性、化学的枯渇効果、ならびに時間の協調に依存するからである。
【0005】
ALDもまた、薄膜の堆積のための方法である。ALDは、自己制限的、逐次的、独特の膜成長技術であり、表面反応に基づいており、それが正確な厚さ制御を与え、そして様々な組成の基材表面上に、前駆体によって与えられる材料の共形的薄膜を堆積させることを可能にさせる。ALDでは、前駆体は、反応の間は分離されている。第1の前駆体は、基材表面上を通過させられて、基材表面上に単分子層を生成させる。いずれかの過剰の未反応の前駆体は、反応器の外にポンプ排出される。第2の前駆体が、次いで基材表面上を通過させられて、そして第1の前駆体と反応して、基材表面上で、最初に形成された単分子層の上に、第2の単分子層を形成させる。このサイクルが、所望の厚さの膜を生成させるまで繰り返される。
【0006】
しかしながら、マイクロエレクトロニクス部品、例えば半導体装置、のサイズの継続した縮小は、いくつかの技術的な課題を生じさせており、そして向上した薄膜技術への要求が増大している。特には、マイクロエレクトロニクス部品は、基材上もしくは基材中にフィーチャを含む可能性があり、それが、例えば導電性経路を形成するか、または相互接続を形成するために、充填を必要とする。そのようなフィーチャの充填は、特にはより小さいマイクロエレクトロニクス部品では、それらのフィーチャはますます薄く、あるいは狭くなる可能性があるので、挑戦的なものになる可能性がある。従って、フィーチャの、例えばALDによる、完全な充填は。フィーチャの厚さがゼロに近づくにつれて、無限に長いサイクル時間を必要とするようになる。更には、フィーチャの厚さが前駆体の分子のサイズよりも狭くなった場合には、そのフィーチャは完全には充填することはできない。結果として、ALDが行われた場合に、中空の溝がフィーチャの中央部に残る可能性がある。フィーチャ内のそのような中空の溝の存在は、それらが装置の故障を招く可能性があるために、望ましくない。従って、1つもしくは2つ以上の基材上に選択的に膜を成長させ、そして基材上もしくは基材中のフィーチャの向上した充填を得ることができ、いずれかの空隙なしにフィーチャを実質的に充填する方法で金属含有膜を堆積することを含む、薄膜堆積法、特にはALD法の開発に重大な関心が存在している。
【0007】
CVDおよびALDは、基材上、例えばシリコン、酸化ケイ素、金属窒化物、金属酸化物および他の金属含有層上に、それらの金属含有前駆体を用いて、共形性の金属含有膜を生成させるために特に魅力的である。上記のように、それらの技術では、揮発性の金属錯体の蒸気が、プロセス反応器中に導入されて、そこでそれが、シリコンウエハの表面と接触し、その上で、化学反応が起こり、それで、純粋な金属または金属化合物の薄膜が堆積される。CVDは、前駆体が、ウエハ表面において、熱的に、またはプロセス反応器中に同時に加えられた薬品と、のいずれかで反応し、そして膜の成長が定常状態の堆積で起こる場合に、生じる。CVDは、所望の膜厚を得るように連続モードまたはパルスモードで適用されることができる。ALDでは、前駆体は、ウエハ上に自己飽和性の単分子層として化学吸収され、過剰の未反応の前駆体は、不活性ガス、例えばアルゴンでパージされ、次いで過剰の薬品が加えられて、それが化学吸収された前駆体の単分子層と反応して、金属または金属化合物を形成する。過剰の薬品は、次いで不活性ガスでパージされる。このサイクルは、次いで、前駆体および薬品の化学吸収は自己制限的であるので、金属または金属化合物を、原子的な正確性で所望の厚さに作るように、複数回繰り返されることができる。ALDは、深くエッチングされ、そして高度に回旋状の構造、例えば相互接続ビアおよびトレンチを均等にコーティングするように、膜厚の正確な制御、膜厚の優れた均一性、および顕著な共形性の膜成長を備えた、極薄の、その上で連続した金属含有膜の堆積を提供する。従って、ALDは、典型的には、高いアスペクト比を備えたフィーチャへの薄膜の堆積のために好ましい。
【0008】
遷移金属窒化物は、良好なバリア性、高い温度安定性、耐腐食性および低抵抗性のために、半導体工業で用いられる。窒化バナジウムは、100μΩcm未満の、ほとんど金属性の低抵抗率のために、特に魅力的である。窒化バナジウム膜は、主に、反応性スパッタリング、金属バナジウム層の高温の窒化物形成、化学気相堆積および原子層堆積によって堆積される。
【0009】
ALDのための好適な金属前駆体としては、化学吸収段階の間に起こるいずれかの熱分解を妨げるように熱的に安定であり、その上で、加えられてた薬品に対して化学的に反応性であるものが挙げられる。更には、金属前駆体は、最大の揮発性であり、そして微量の不揮発性残渣のみを残す完全な蒸発のために、単量体であることが重要である。前駆体は、室温で液体であることも望ましい。
【0010】
この点について、the Journal of Vacuum Science and Technology, A37, 061505, (2019)には、テトラキス(ジメチルアミド)バナジウムおよび窒素プラズマを用いた窒化バナジウム(VN)のための、150℃~300℃の堆積温度範囲に亘る、プラズマ促進原子層堆積プロセスが記載されている。この著者らは、X線光電子分光法、X線回折、分光エリプソメトリーを用いて、それらの膜の特性を決定している。この著者らは、250℃~350℃の範囲の安定なVN成長ウインドウを、それ以下の堆積温度では、前駆体間に不完全な反応をもたらすことを、実証している。
【0011】
テトラキス(エチルメチルアミノ)バナジウムおよびNH3プラズマを用いた、70℃~150℃の範囲の堆積温度での、シリコン基材およびポリマー膜へのALD堆積が記載されている。Appl. Phys. Lett., 102, 111910 (2013)を参照。X線光電子分光で、化学量的VNに近い組成が明らかとなり、一方でX線回折で、δ-VN結晶構造が示された。抵抗率は、堆積された膜について、200μΩまでの低さであって、そしてN2およびH2/He/N2中でのアニールによって、それぞれ143μΩcmおよび93μΩcmに更に低減された。テトラキス(ジメチルアミド)バナジウムおよびテトラキス(エチルメチルアミノ)バナジウムは、しかしながら低い熱安定性を備えた有機金属前駆体である。熱分解は、高アスペクト比のフィーチャでは、寄生CVDおよび貧弱な膜共形性をもたらす。従って、共形性の窒化バナジウム膜の堆積のためには、より熱安定性の前駆体が望ましい。
【0012】
他のALD堆積が記載されている。例えば、Chemical Vapor Deposition, 6(2), 59-63 (2000)には、バナジウムオキシクロリドとアンモニアとの反応を用いたバナジウム酸窒化物の大気プラズマ化学気相堆積が記載されている。VCl4およびNH3の、350~650℃での反応によるバナジウム窒化物および酸窒化物コーティングの大気圧化学気相堆積が、J. Material Chemistry, 11, 3120 (2001)に。更に、Chemistry Europe, 21, 4286-4290 (2000)には、バナジウム(IV)クロリドおよびバナジウムオキシトリクロリドのヘキサメチルジシラザン(HMDS)との、300~500℃での大気圧CVDによるバナジウム窒化物およびバナジウム酸窒化物の合成が記載されている。これらの膜がVOCl3のHMDSとの反応によって堆積された場合には、それらの膜はバナジウムオキシ窒化物とV2O3の混合された相からなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のことにかかわらず、大気圧化学気相堆積は、薄膜の共形性窒化バナジウム膜の堆積には用いられることができない。従って、ここに記載された低い抵抗率を有する薄膜の共形性の窒化バナジウム膜を堆積させるためのALDプロセスへの要求が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1つの態様では、開示され、そして特許請求された主題は、バナジウム窒化物およびバナジウム酸窒化物を含むバナジウム含有膜を堆積させるための方法に関する。本方法は、一般に、(i)堆積反応器中で基材をバナジウムオキシトリクロリド蒸気と接触させること、(ii)いずれかの未反応のバナジウムオキシトリクロリドを不活性ガスでパージすること、(iii)堆積反応器中で基材を窒素含有反応物(例えば、アンモニウムガス)と接触させること、および(iv)随意選択的に、いずれかの未反応の窒素含有反応物を不活性ガスでパージすること、を含んでいる。この態様の更なる態様では、本方法は、(v)基材をプラズマ(例えば、窒素プラズマ)で処理して、バナジウム含有膜から残留酸素を除去すること、を含んでいる。更なる態様では、本方法は、工程(i)、(ii)、(iii)および(iv)から本質的になっている。更なる態様では、本方法は、工程(i)、(ii)、(iii)、(iv)および(v)から本質的になっている。更なる態様では、本方法は、工程(i)、(ii)、(iii)および(iv)からなっている。更なる態様では、本方法は、工程(i)、(ii)、(iii)、(iv)および(v)からなっている。
【0015】
関連技術のプロセスとは異なり、開示され、そして特許請求されたプロセスは、ALD条件の下で行われて、窒化バナジウムの高度に共形性の膜を提供する。本プロセスはまた、低圧力、好ましくは約50トール未満、より好ましくは約20トール未満、そしてより好ましくは約10トール未満の下で行われる。
【0016】
この要旨の項には、開示され、そして特許請求された主題の全ての態様および/または付加的な新規な態様が特定されてはいない。その代わりに、この要旨には、慣用の技術および既知の技術に対して新規な、異なる態様および対応する点の予備的な議論のみを提供している。開示され、そして特許請求された主題および態様の更なる詳細および/または考えられる観点については、読者は、以下に更に議論される、詳細な説明の項および対応する図面に向けられる。
【0017】
ここに記載された種々の工程の議論の順番は、明確化のために提示されているものである。一般に、ここに開示された工程は、いずれかの好適な順序で行われることができる。更には、ここに開示された種々の特徴、技術、構成などのそれぞれは、本明細書の異なる場所で議論される可能性があるが、それぞれの概念は、互に独立して実行されるか、または必要に応じて互いに組み合わせて実行されることができることが意図されている。従って、開示され、そして特許請求された主題は、多くの異なる方法で、具体化および考察されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
添付の図面は、開示された主題の更なる理解を提供するために包含されており、そして本明細書書に組み入れられ、そして本明細書の一部を構成するが、開示された主題の実施態様を示し、そして説明とともに、開示された主題の原理を説明する。
【0019】
【
図1】
図1は、VOCl
3およびアンモニアALDプロセスによって堆積された膜厚のVOCl
3パルス時間への依存関係を示している。
【0020】
【
図2】
図2は、VOCl
3およびアンモニアALDプロセスによって堆積された膜厚のアンモニアパルス時間への依存関係を示している。
【0021】
【
図3】
図3は、開示され、そして特許請求された主題の態様によるトレンチパターン化基材のTEM断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
特に断りのない限り、本明細書および特許請求の範囲で用いられる以下の用語は、本願においては、以下の意味を有する。
【0023】
本発明および特許請求の範囲の目的のために、周期律表の族の番号付与体系は、IUPACの元素周期律表に従っている。
【0024】
フレーズの中で用いられる用語「および/または」、例えば「Aおよび/またはB」は、ここでは「AおよびB」、「AまたはB」、「A」および「B」を包含していることが意図されている。
【0025】
用語「置換基」、「ラジカル」、「基」および「部分」は、相互転換可能に用いられる場合がある。
【0026】
ここで用いられる、用語「金属含有錯体」(またはより単純に「錯体」)および「前駆体」は相互転換可能に用いられ、そして気相堆積プロセス、例えばALDまたはCVDによって、金属含有膜を調製するのに用いられることができる金属含有分子もしくは化合物を表している。この金属含有錯体は、金属含有膜を形成するように、基材またはその表面、上に堆積され、に吸着され、で分解され、に供給され、および/または、上を通過されることができる。1つもしくは2つ以上の態様では、ここに開示される金属含有錯体は、金属ハライド錯体、特にはモリブデンクロリド錯体である。
【0027】
ここで用いられる用語「金属含有膜」は、以下により完全に規定されるように元素金属膜のみならず、1つもしくは2つ以上の元素とともに金属を含む膜、例えば金属酸化物膜、金属窒化物膜、金属ケイ化物膜、金属炭化物膜などもまた含んでいる。
ここで用いられる、用語「元素金属膜」および「純粋金属膜」は、相互転換可能に用いられ、そして純粋な金属からなる、または、から本質的になる膜を表している。
例えば、元素金属膜は、100%純粋金属を含むことができ、あるいは元素金属膜は、1種もしくは2種以上の不純物とともに、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%の純粋金属を含むことができる。特に断りのない限り、用語「金属膜」は、元素金属膜を意味すると理解される。
【0028】
ここで用いられる、用語「気相堆積プロセス」は、CVDおよびALDが挙げられるが、それらには限定されないいずれかの種類の気相堆積技術を表すのに用いられる。種々の態様では、CVDは慣用の(すなわち、連続流)CVD、液体注入CVD、または光アシストCVDの形態をとることができる。また、CVDはパルス技術、すなわちパルスCVD、の形態をとることができる。ALDは、ここに開示された少なくとも1種の金属錯体を、基材表面上で蒸発させ、および/または基材表面上を通過させることによって金属含有膜を形成させるのに用いられる。慣用のALDプロセスについては、例えばGeorge S. M., et al. J. Phys. Chem., 1996, 100, 13121-13131を参照。他の態様では、ALDは、慣用の(すなわちパルス注入)ALD、液体注入ALD、光アシストALD,プラズマアシストALD、またはプラズマ促進ALDの形態をとることができる。用語「気相堆積プロセス」は、Chemical Vapour Deposition: Precursors, Processes, and Applications; Jones, A. C.; Hitchman, M. L., Eds. The Royal Society of Chemistry: Cambridge, 2009; Chapter 1, pp. 1-36.に記載された種々の気相堆積技術を更に含んでいる。
【0029】
ここで用いられる、用語「フィーチャ」は、1つもしくは2つ以上の側壁、底面、および上部角によって規定されることができる、基材中の開口部を表している。種々の態様では、このフィーチャは、ビア、トレンチ、接点、デュアルダマシンなどであることができる。
【0030】
ここで用いられる、用語「選択的成長」、「選択的に成長した」および「選択的に成長する」は、同義語的に用いられる可能性があり、そして第1の基材の少なくとも一部での膜の成長、そして第1の基材の残りの部分では膜の成長がないこと、ならびに第1の基材の少なくとも一部での、第1の基材の残りでの膜の成長に比較しての、より大きな膜の成長を表している。例えば、選択的成長は、フィーチャのより低い部分での膜の成長を含む可能性があり、一方で、フィーチャの上部、またはフィーチャの外側では、より少ない膜の成長が起こるか、または膜の成長が起こらない可能性がある。2つ以上の基材については、用語「選択的成長」、「選択的に成長した」および「選択的に成長する」はまた、第1の基材での膜の成長と第2の基材(または第3の基材、または第4の基材、または第5の基材など)では膜の成長がないこと、ならびに第2の基材(または第3の基材、または第4の基材、または第5の基材など)上よりも、第1の基材上でのより大きな膜の成長を包含している。
【0031】
用語「約(about)」および「約(approximately)」は、測定可能な数値に関して用いられた場合には、その数値の示された値を、そして示された値の実験誤差内である、または示された値のパーセント内(例えば、±10%、±5%)である、全ての値(例えば、平均値の95%信頼限界以内)、のいずれか大きい方、を表している。
【0032】
「ハロ」または「ハライド」は、ハロゲン(例えば、F、Cl、BrおよびI)を表している。
【0033】
ここで用いられる節の見出しは、整理を目的としたものであり、説明されている主題を限定するものとして解釈されるべきでない。本願で引用された全ての文献または文献の一部、例えば限定するものではないが特許、特許出願、記事、書籍、および論文は、いずれかの目的で、その全てを参照することによって明白に本明細書の内容とする。組み込まれた文献および同様の資料のいずれかが、本願におけるその用語の定義と矛盾する方法で用語を定義している場合には、本願が優先する。
【0034】
詳細な説明
上記の一般的説明と以下の詳細な説明の両方とも、例示のためおよび説明のためのものであり、そして特許請求された主題を限定するものではないことが理解されなければならない。開示された主題の目的、特徴、利点および概念は、本明細書中に提供された説明から当業者には明らかとなり、そして開示された主題は、ここに明らかとなる説明を基にして、当業者によって、容易に実施可能である。いずれかの「好ましい態様」および/または、開示された主題を実施するための好ましい態様を示す例の説明は、説明の目的で含まれており、そして特許請求の範囲を限定することは意図されていない。
【0035】
また、ここに開示された主題の精神および範囲から逸脱することなしに、開示された主題を明細書中に記載された態様を基にして、どのように実施するために種々の変更をなすことができるかは、当業者には明らかである。
【0036】
以下に記載される態様においては、本方法の工程は、種々の順序で実施されることができる、逐次にまたは同時に(例えば、他の工程の少なくとも一部の間に)、そしてそれらのいずれかの組み合わせで実施されることができることが理解されなければならない。前駆体および窒素含有源ガスを供給するそれぞれの工程は、結果として得られる誘電体膜の化学量論的組成を変化させるように、それらを供給するための継続時間を変化させることによって実施されることができる。
【0037】
1つの態様では、開示され、そして特許請求された主題は、窒化バナジウムおよび酸窒化バナジウムを含むバナジウム含有膜を堆積させるための方法に関する。本方法は、包括的に、(i)堆積反応器中で、基材を、オキシ三塩化バナジウム蒸気と接触させること、(ii)いずれかの未反応のオキシ三塩化バナジウムを不活性ガスでパージすること、(iii)堆積反応器中で、基材を、窒素含有反応物(例えば、アンモニアガス)と接触させること、および、(iv)随意選択的に、いずれかの未反応の窒素含有反応物を不活性ガスでパージすること、を含んでいる。この態様の更なる態様では、本方法は、工程(i)、(ii)、(iii)および(iv)から本質的になっている。この態様の更なる態様では、本方法は、工程(i)、(ii)、(iii)および(iv)からなっている。
【0038】
1つの態様では、開示され、そして特許請求された主題は、窒化バナジウムおよび酸窒化バナジウムを含むバナジウム含有膜を堆積するための方法に関する。本方法は、包括的に、(i)堆積反応器中で、基材を、オキシ三塩化バナジウム蒸気と接触させること、(ii)いずれかの未反応のオキシ三塩化バナジウムを不活性ガスでパージすること、(iii)堆積反応器中で、基材を、窒素含有反応物(例えば、アンモニアガス)と接触させること、(iv)随意選択的に、いずれかの未反応の窒素含有反応物を不活性ガスでパージすること、および(v)基材をプラズマ(例えば、窒素プラズマ、水素プラズマ)で処理して、バナジウム含有膜から残留酸素を除去すること、を含んでいる。この態様の更なる態様では、本方法は、工程(i)、(ii)、(iii)、(iv)および(v)から本質的になっている。この態様の更なる態様では、本方法は、工程(i)、(ii)、(iii)、(iv)および(v)からなっている。
【0039】
オキシ三塩化バナジウムの供給
【0040】
上記のように、開示され、そして特許請求された方法の工程(i)は、基材をオキシ三塩化バナジウム蒸気と接触させることを含んでいる。オキシ三塩化バナジウムは、ALDおよびプラズマ促進原子層堆積(PEALD)のための揮発性前駆体としての使用に非常に好適である。ここで用いられる用語「原子層堆積プロセス」は、種々の組成の基材上に材料の膜を堆積させる、自己制限的な(例えば、それぞれの反応サイクルで堆積される膜材料の量は一定である)、逐次的な表面化学を表している。
【0041】
他の態様では、オキシ三塩化バナジウム蒸気のパルス時間は約0.1秒間~約3秒間である。他の態様では、オキシ三塩化バナジウム上記のパルス時間は約0.3秒間~約3秒間である。他の態様では、オキシ三塩化バナジウム蒸気のパルス時間は約0.1秒間である。他の態様では、オキシ三塩化バナジウム蒸気のパルス時間は約0.25秒間である。他の態様では、オキシ三塩化バナジウム蒸気のパルス時間は約0.5秒間である。他の態様では、オキシ三塩化バナジウム蒸気のパルス時間は約1秒間である。他の態様では、オキシ三塩化バナジウム蒸気のパルス時間は約1.5秒間である。他の態様では、オキシ三塩化バナジウム蒸気のパルス時間は約2秒間である。
【0042】
1つの態様では、オキシ三塩化バナジウム蒸気は、反応器への導入の前に、および/または導入の間に、他の前駆体から分離されている。このプロセスは、金属前駆体のいずれかの他の材料との前反応を回避させる。
【0043】
他の態様では、オキシ三塩化バナジウム蒸気は、代わりに、他の反応物(例えば、アンモニア蒸気、および/または他の前駆体もしくは薬品)とともに基材に暴露される。このプロセスは、表面反応、それぞれの前駆体もしくは薬品のパルス長さ、および堆積温度を自己制限的に制御することによって、膜の成長を進めることを可能にさせる。しかしながら、膜の成長は、一旦、基材の表面が、オキシ三塩化バナジウム蒸気で飽和されると終了することに留意しなければならない。
【0044】
他の態様では、アルゴンおよび/または他のガスの流れが、前駆体のパルスの間に、オキシ三塩化バナジウムの蒸気を反応器に供給することを援けるキャリアガスとして用いられる。
【0045】
オキシ三塩化バナジウムのパージ工程
【0046】
上記のように、開示され、そして特許請求された方法の工程(ii)は、いずれかの未反応のオキシ三塩化バナジウムを不活性ガスでパージすることを含んでいる。不活性ガスでパージすることで、吸収されなかった過剰の錯体が、プロセス反応器から除去される。
【0047】
1つの態様では、例えば、パージ時間は約1秒間~約90秒間で変わる。1つの態様では、例えば、パージ時間は約15秒間~約90秒間で変わる。1つの態様では、例えば、パージ時間は約15秒間~約60秒間で変わる。他の態様では、パージ時間は約30秒間である。他の態様では、パージ時間は約60秒間である。他の態様では、パージ時間は約90秒間である。
【0048】
1つの態様では、パージガスはアルゴンを含んでいる。他の態様では、パージガスは窒素を含んでいる。
【0049】
窒素含有反応物処理
【0050】
上記のように、開示され、そして特許請求された方法の工程(iii)は、基材を、堆積反応器内で、一定の時間、窒素含有反応物と接触させることを含んでいる。1つの態様では、窒素含有反応物としては、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジンおよびジアルキルヒドラジンの1種もしくは2種以上が挙げられる。他の態様では、窒素含有反応物としてアンモニアガスが挙げられる。
【0051】
1つの態様では、例えば、窒素含有反応物のパルス時間は、約0.5秒間~約5秒間で変わる。1つの態様では、例えば、窒素含有反応物のパルス時間は約2.5秒間である。1つの態様では、例えば、窒素含有反応物のパルス時間は約5秒間である。
【0052】
随意選択的な窒素含有反応物パージ工程
【0053】
上記のように、開示され、そして特許請求された方法の工程(iv)は、随意選択的に、いずれかの未反応の窒素含有反応物を不活性ガスでパージすることを含んでいる。不活性ガスでパージングすることで、いずれかの残量する窒素含有反応物がプロセス反応器から除去される。1つの態様では、パージガスとしてはアルゴンが挙げられる。他の態様では、パージガスとしては、窒素が挙げられる。当業者が認識するように、多くの例において、ほとんどの例ではないにしても、開示され、そして特許請求されたプロセスは、未反応の窒素含有反応物をパージする工程を含んでいる。窒素含有反応物のパージが起こらない1つの例外は、例えば、未反応の窒素含有反応物ガスが、続いて起こるプラズマ処理(後述)のための窒素源として機能する場合である(下記で説明される)。
【0054】
1つの態様では、例えば、随意選択的な窒素含有反応物のパージ時間は、約15秒間~約90秒間で変わる。1つの態様では、例えば、随意選択的な窒素含有反応物のパージ時間は、約15秒間~約60秒間で変わる。1つの態様では、随意選択的な窒素含有反応物のパージ時間は、約30秒間である。1つの態様では、随意選択的な窒素含有反応物のパージ時間は、約60秒間である。1つの態様では、随意選択的な窒素含有反応物のパージ時間は、約90秒間である。
【0055】
プラズマ処理
【0056】
上記のように、開示され、そして特許請求された方法の工程(v)は、基材を窒素プラズマまたは水素プラズマで処理して、前の工程の間に形成されたバナジウム含有膜から残留する酸素を除去することを含んでいる。
【0057】
1つの態様では、プラズマの使用は、直接プラズマ発生プロセスを構成し、そこではプラズマが反応器中で直接に発生される。他の態様では、プラズマの使用は、遠隔プラズマ発生プロセスを構成し、そこではプラズマが反応器の外で発生され、そして反応器中に供給される。
【0058】
窒素プラズマが用いられる場合には、窒素源は、窒素(N2)、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジンを含むことができる。この点で、そして上記のように、窒素プラズマが窒素源としてアンモニアに依存する場合には、この随意選択的な窒素含有反応物のパージ工程(iv)は省くことができる。
【0059】
操作条件
【0060】
上記のように、開示され、そして特許請求されたバナジウム堆積プロセスは、窒化バナジウムの高度に共形性の膜を与えるのに非常に好ましいALD条件の下で、効率的に行われることができる。
【0061】
1つの態様では、基材(例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化チタン(TiN)、酸化ケイ素(SiO2)、および酸化ジルコニウム(ZrO2))は、反応器中のヒータ台上で加熱されるが、この反応器は、オキシ三塩化バナジウム前駆体に初期に暴露されて、この錯体が基材の表面上に化学的に吸着することを可能にさせる。1つの態様では、基材温度は約300℃~約600℃である。この態様の更なる態様では、基材温度は約350℃~約550℃である。この態様の更なる態様では、基材温度は約400℃~約500℃である。
【0062】
他の態様では、開示され、そして特許請求されたプロセスによる堆積のための反応器圧力は、約50トール以下である。他の態様では、開示され、そして特許請求されたプロセスによる堆積のための反応器圧力は、約40トール以下である。他の態様では、開示され、そして特許請求されたプロセスによる堆積のための反応器圧力は、約30トール以下である。この態様の他の態様では、反応器圧力は、約20トール以下である。この態様の他の態様では、反応器圧力は、約10トール以下である。この態様の他の態様では、反応器圧力は、約5トール以下である。
【0063】
サイクルおよび工程の順序
【0064】
上記の態様、ならびにここに記載された他の態様では、記載された工程(例えば、(i)~(iv)または(i)~(v))は、本方法の1つのサイクルを規定している。1つのサイクルは、膜の所望の厚さが得られるまで繰り返されることができることが理解されなければならない。
【0065】
ここに記載された態様では、本方法の工程は、種々の順序で行われることができ、逐次的に、または同時に(例えば、他の工程の少なくとも一部の間に)、そしてそれらのいずれかの組み合わせで、行われることができる、ことが理解されなければならない。更には、オキシ三塩化バナジウムおよび窒素源を供給するそれぞれの工程は、、膜の組成を変更するように、それらを供給するための継続時間を変更することによって行われることができる。
【実施例1】
【0066】
例示のプロセス
【0067】
開示され、そして特許請求された主題の1つの例示の態様では、窒化バナジウムおよび酸窒化バナジウムを含むバナジウム含有膜は、以下の工程を含むALD堆積法を用いて形成される。
a.基材を反応器中に準備する工程、
b.反応器中にオキシ三塩化バナジウムを含む蒸気を導入する工程、
c.オキシ三塩化バナジウムを基材上に化学吸収させる工程、
d.未反応のオキシ三塩化バナジウムを、パージガスを用いてパージする工程、
e.窒素源を反応器中に導入する工程、および、
f.随意選択的にいずれかの窒素源をパージする工程。
この例示の態様では、窒素源としては、窒素(N2)、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジンおよびジアルキルヒドラジンの1種もしくは2種以上が挙げられる。
【0068】
開示され、そして特許請求された主題の他の例示の態様では、窒化バナジウム膜が、以下の工程を含むALD堆積法を用いて形成される。
a.基材を反応器中に準備する工程、
b.反応器中にオキシ三塩化バナジウムを含む蒸気を導入する工程、
c.オキシ三塩化バナジウムを基材上に化学吸収させる工程、
d.未反応のオキシ三塩化バナジウムを、パージガスを用いてパージする工程、
e.アンモニア蒸気を反応器中に導入する工程、
f.随意選択的に、いずれかのアンモニアをパージする工程。
g.反応器中に窒素、水素またはアンモニア蒸気を導入する工程、
h.直接もしくは遠隔プラズマを反応器中に適用して、膜から、残留する不純物を除去する工程、および、
i.反応器から窒素、水素もしくはアンモニアをパージする工程。
【0069】
膜
【0070】
開示され、そして特許請求された主題は、ここに記載された方法によって調製された膜を更に含んでいる。
【0071】
1つの態様では、ここに記載された方法によって形成された膜は、約1~約60のアスペクト比を有する、ビアまたは他のトポグラフィカルフィーチャを有している。この態様の更なる態様では、アスペクト比は、約1~約50である。この態様の更なる態様では、アスペクト比は、約1~約40である。この態様の更なる態様では、アスペクト比は、約1~約30である。この態様の更なる態様では、アスペクト比は、約1~約20である。この態様の更なる態様では、アスペクト比は、約1~約10である。この態様の更なる態様では、アスペクト比は、約1超である。この態様の更なる態様では、アスペクト比は、約2超である。この態様の更なる態様では、アスペクト比は、約5超である。この態様の更なる態様では、アスペクト比は、約10超である。この態様の更なる態様では、アスペクト比は、約15超である。この態様の更なる態様では、アスペクト比は、約20超である。この態様の更なる態様では、アスペクト比は、約30超である。この態様の更なる態様では、アスペクト比は、約40超である。この態様の更なる態様では、アスペクト比は、約50超である。
【0072】
他の態様では、ここに記載された方法によって膜は、約150~約500の範囲の抵抗率を有している。この態様の更なる態様では、膜は、約175~約450の抵抗率を有している。この態様の更なる態様では、膜は、約175~約400の抵抗率を有している。この態様の更なる態様では、膜は、約175~約350の抵抗率を有している。この態様の更なる態様では、膜は、約175~約300の抵抗率を有している。この態様の更なる態様では、膜は、約175~約250の抵抗率を有している。この態様の更なる態様では、膜は、約150の抵抗率を有している。この態様の更なる態様では、膜は、約175の抵抗率を有している。この態様の更なる態様では、膜は、約200の抵抗率を有している。この態様の更なる態様では、膜は、約250の抵抗率を有している。この態様の更なる態様では、膜は、約300の抵抗率を有している。この態様の更なる態様では、膜は、約350の抵抗率を有している。この態様の更なる態様では、膜は、約400の抵抗率を有している。この態様の更なる態様では、膜は、約450の抵抗率を有している。この態様の更なる態様では、膜は、約500の抵抗率を有している。
【0073】
例
【0074】
ここで、本開示のより具体的な態様、およびそのような態様を裏付ける実験結果を参照する。以下に与えられた例は、開示され、そして特許請求された主題をより完全に説明し、そして開示された主題を、いかなる意味においても、限定するものとは解釈してはならない。
【0075】
種々の修正および変更を、開示された主題の精神と範囲を逸脱することなく、開示された主題およびここに与えられた特定の例に加えることができることが、当業者には明らかであろう。従って、以下の例によって与えられる説明を含む開示された主題は、開示された主題の修正および変更を包含し、それらはいずれかの請求項およびその等価物の範囲内にあることが意図されている。
【0076】
例1
【0077】
条件:堆積温度は360℃であった。反応器圧力は2トールであった。
【0078】
実験:この例では、VOCl3パルス時間は0.3秒間から3秒間まで変化された。アルゴンパージは30秒間であった。アンモニアパルスは5秒間であった。そして、アンモニアパルスの後のアルゴンパージは30秒間であった。この実験は、種々の基材、例えば酸化アルミニウム(AlO3)、窒化チタン(TiN)、酸化ケイ素(SiO2)および酸化ジルコニウム(ZrO2)上へのVOCl3前駆体の自己制限的、飽和挙動を示している。この挙動は、ALDプロセスを示している。
【0079】
図1には、VOCl
3およびアンモニアALDプロセスによって堆積された膜厚の、この例のVOCl
3パルス時間に対する依存性が示されている。
【0080】
例2
【0081】
条件:堆積温度は360℃であった。反応器圧力は2トールであった。
【0082】
実験:この実験では、VOCl3パルス時間は1秒間であった。アルゴンパージは30秒間であった。アンモニアパルスは0.5秒間から5秒間まで変化された。そして、アンモニアパルスの後のアルゴンパルスは30秒間であった。この実験は、種々の基材、例えば酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化チタン(TiN)、酸化ケイ素(SiO2)および酸化ジルコニウム(ZrO2)上への自己制限的、飽和挙動を示している。この強度はALDプロセスを示している。
【0083】
図2には、VOCl
3およびアンモニアALDプロセスによって堆積された膜厚の、この例のアンモニアパルス時間に対する依存性が示されている。
【0084】
例3
【0085】
条件:基材温度は463℃であった。反応器圧力は2トールであった。
【0086】
実験:この実験では、VOCl3パルスは1秒間であった。アルゴンパージは60秒間であった。アンモニアパルスは5秒間であった。そして、アンモニアの後のアルゴンパージは90秒間であった。高アスペクト比ウエハ上に、ALDプロセスを示す約100%の共形性が得られた。
【0087】
図3に、この例の、約1/20のアスペクト比を有し、VOCl
3およびNH
3ALDプロセスによって堆積されたVN薄膜を有する、トレンチパターン化基材のTEM断面が示されている。
【0088】
結果
【0089】
表1には、VOCl3およびNH3プロセスによって、異なる基材温度において堆積された酸窒化バナジウム膜および窒化バナジウム膜の、ラザフォード後方散乱分析(RBS)によって測定された組成が示されている。500℃のウエハ温度における化学量論に近い窒化バナジウム膜は、膜中に検出可能な塩化物なしに堆積された。N2プラズマ工程がVOCl3/Ar/NH3/Arシーケンスの後に導入された場合には、酸素含有量の更なる低減と化学量論的VN膜が堆積された:46原子(at)%のバナジウムおよび46原子%の酸素。
【0090】
【0091】
表2には、開示された主題の、異なる堆積プロセスシーケンスの、熱酸化シリコン基材上への窒化バナジウムの膜抵抗率が示されている。ウエハ温度は463℃であった。アンモニア流量は300sccmであった。VOCl3バブラーを介したキャリアガス流量は50sccmであった。このデータは、N2プラズマの導入が、熱水素での膜処理(効果なし)および水素プラズマでの膜処理(より高い抵抗率)と比較して膜抵抗率の有意な低下をもたらすことを示している。
【0092】
【0093】
本発明をある程度詳細に説明し例示してきたが、この開示は例としてのみ行われたものであり、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、条件や工程の順序に多くの変更を加えることができることが理解されなければならない。
【国際調査報告】