(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】新生血管加齢性黄斑変性症(NAMD)のための治療要件の機械学習ベースの予測
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20240327BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20240327BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
G16H50/20
A61B3/10 100
A61B5/00 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561272
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 US2022023937
(87)【国際公開番号】W WO2022217005
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マウンツ, アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ノイベルト, アレス
(72)【発明者】
【氏名】タールハンマー, アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】タイ, チエン
【テーマコード(参考)】
4C117
4C316
5L099
【Fターム(参考)】
4C117XB01
4C117XB08
4C117XD06
4C117XE04
4C117XE13
4C117XE15
4C117XE43
4C117XQ13
4C316AA09
4C316AA13
4C316AB03
4C316AB11
4C316AB16
4C316FB21
4C316FB26
4C316FC12
5L099AA01
(57)【要約】
新生血管加齢性黄斑変性症(nAMD)と診断された対象についての治療を管理するための方法およびシステムである。対象の網膜のスペクトル領域光干渉断層撮影法(SD-OCT)イメージングデータが受信される。網膜特徴データは、SD-OCTイメージングデータを使用して複数の網膜特徴について抽出され、複数の網膜特徴は、網膜液のセットまたは網膜層のセットのうちの少なくとも1つに関連付けられる。複数の網膜特徴の網膜特徴データを使用して形成された入力データは、第1の機械学習モデルに送信される。入力データに基づいて、第1の機械学習モデルを介して、対象に投与される抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)治療についての治療レベルが予測される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
新生血管加齢性黄斑変性症(nAMD)と診断された対象についての治療を管理するための方法であって、
前記対象の網膜のスペクトル領域光干渉断層撮影法(SD-OCT)イメージングデータを受信することと、
前記SD-OCTイメージングデータを使用して複数の網膜特徴についての網膜特徴データを抽出することであって、前記複数の網膜特徴が、網膜液のセットまたは網膜層のセットのうちの少なくとも1つに関連付けられる、網膜特徴データを抽出することと、
前記複数の網膜特徴についての前記網膜特徴データを使用して形成された入力データを第1の機械学習モデルに送信することと、
前記第1の機械学習モデルを介して、前記入力データに基づいて、前記対象に投与される抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)治療についての治療レベルを予測することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記網膜特徴データが、前記網膜液のセットの対応する網膜液に関連付けられた値を含み、前記値が、前記対応する網膜液の体積、高さ、および幅からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記網膜特徴データが、前記網膜層のセットの対応する網膜層についての値を含み、前記値が、前記対応する網膜層の最小厚さ、最大厚さ、および平均厚さからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記網膜液のセットの網膜液が、網膜内液(IRF)、網膜下液(SRF)、色素上皮剥離(PED)に関連付けられた液、または網膜下反射亢進物質(SHRM)からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記網膜層のセットの網膜層が、内境界膜(ILM)層、外網状層-ヘンレ線維層(OPL-HFL)、内境界網膜色素上皮剥離(IB-RPE)、外境界網膜色素上皮剥離(OB-RPE)、またはブルッフ膜(BM)からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の網膜特徴についての前記網膜特徴データと、臨床特徴のセットについての臨床データとを使用して前記入力データを形成することであって、前記臨床特徴のセットが、最良矯正視力、脈拍、拡張期血圧、または収縮期血圧のうちの少なくとも1つを含む、前記入力データを形成すること、をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記治療レベルを予測することが、前記治療レベルについての分類を高治療レベルまたは低治療レベルのいずれかとして予測することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記高治療レベルが、治療の初期段階後の選択された期間中の前記抗VEGF治療の16回以上の注入を示す、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記低治療レベルが、治療の初期段階後の選択された期間中の前記抗VEGF治療の5回以下の注入を示す、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記抽出することが、
前記SD-OCTイメージングデータを自動的にセグメント化する第2の機械学習モデルを使用して生成されたセグメント化画像から前記複数の網膜特徴についての前記網膜特徴データを抽出することであって、前記複数の網膜特徴が、前記セグメント化画像において識別された網膜液セグメントのセットまたは網膜層セグメントのセットのうちの少なくとも1つに関連付けられる、前記網膜特徴データを抽出することを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の機械学習モデルが深層学習モデルを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の機械学習モデルが、エクストリーム勾配ブースティング(XGBoost)アルゴリズムを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の網膜特徴が、網膜下液(SRF)に関連付けられた少なくとも1つの特徴および色素上皮剥離(PED)に関連付けられた少なくとも1つの特徴を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記SD-OCTイメージングデータが、1回の臨床来院中にキャプチャされたSD-OCT画像を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
新生血管加齢性黄斑変性症(nAMD)と診断された対象についての抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)治療を管理するための方法であって、
前記抗VEGF治療についての治療レベルを予測するために、訓練用入力データを使用して機械学習モデルを訓練することであって、前記訓練用入力データが訓練用光干渉断層撮影法(OCT)イメージングデータを使用して形成される、機械学習モデルを訓練することと、
訓練された前記機械学習モデルの入力データを受信することであって、前記入力データが複数の網膜特徴についての網膜特徴データを含む、訓練された前記機械学習モデルの入力データを受信することと、
訓練された前記機械学習モデルを介して、前記入力データを使用して前記対象に投与される前記抗VEGF治療についての前記治療レベルを予測することと
を含む、方法。
【請求項16】
前記訓練用OCTイメージングデータおよび深層学習モデルを使用して前記入力データを生成することであって、前記深層学習モデルが、自動的に前記訓練用OCTイメージングデータをセグメント化するために使用されて、セグメント化画像を形成し、前記網膜特徴データが、前記セグメント化画像から抽出される、前記入力データを生成することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記機械学習モデルが、前記治療レベルについての分類を高治療レベルまたは低治療レベルのいずれかとして予測するように訓練され、前記高治療レベルが、治療の初期段階後の選択された期間中の前記抗VEGF治療の16回以上の注入を示す、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記機械学習モデルが、前記治療レベルについての分類を高治療レベルまたは非高治療レベルのいずれかとして予測するように訓練され、前記高治療レベルが、治療の初期段階後の選択された期間中の前記抗VEGF治療の6回以上の注入を示す、請求項15または16に記載の方法。
【請求項19】
新生血管加齢性黄斑変性症(nAMD)と診断された対象についての抗血管内皮成長因子(抗VEGF)治療を管理するためのシステムであって、
機械実行可能コードを含む機械可読媒体を含むメモリと、
前記メモリに接続されたプロセッサであって、前記機械実行可能コードを実行して前記プロセッサに、
前記対象の網膜のスペクトル領域光干渉断層撮影法(SD-OCT)イメージングデータを受信することと、
前記SD-OCTイメージングデータを使用して複数の網膜特徴についての網膜特徴データを抽出することであって、前記複数の網膜特徴が、網膜液のセットまたは網膜層のセットのうちの少なくとも1つに関連付けられる、網膜特徴データを抽出することと、
前記複数の網膜特徴についての前記網膜特徴データを使用して形成された入力データを第1の機械学習モデルに送信することと、
前記第1の機械学習モデルを介して、前記入力データに基づいて、前記対象に投与される抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)治療についての治療レベルを予測することと、を行わせるように構成されたプロセッサと、を備える、システム。
【請求項20】
前記機械実行可能コードが、前記プロセッサに、前記SD-OCTイメージングデータを自動的にセグメント化する第2の機械学習モデルを使用して生成されたセグメント化画像から前記複数の網膜特徴についての前記網膜特徴データを抽出することをさらに実行させ、前記複数の網膜特徴が、前記セグメント化画像において識別された網膜液セグメントのセットまたは網膜層セグメントのセットのうちの少なくとも1つに関連付けられる、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月7日に出願された「Machine Learning-Based Prediction of Treatment Requirements for Neovascular Age-Related Macular Degeneration(nAMD)」と題する米国仮特許出願第63/172,082号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本出願は、新生血管加齢性黄斑変性症(nAMD)についての治療要件に関し、より詳細には、スペクトル領域光干渉断層撮影法(SD-OCT)を使用したnAMDにおける治療要件の機械学習ベースの予測に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
加齢性黄斑変性症(AMD)は、50歳以上の対象における視力喪失の主要な原因である。AMDは、最初は乾燥型のAMDとして現れ、新生血管型AMD(nAMD)とも呼ばれる湿性型のAMDに進行する。乾燥型では、網膜上の黄斑の下に小さな沈着物(ドルーゼン)が形成され、網膜の経時的な劣化の原因となる。湿性型の場合、眼の脈絡膜層に由来する異常な血管が網膜内に増殖し、血液から網膜内に液を漏出させる。網膜に入ると、液は、直ちに対象の視覚を歪めることがあり、経時的に、例えば網膜の光受容体の喪失を引き起こすことによって網膜自体を損傷する可能性がある。液は、黄斑をその基部から分離させ、重度且つ急速な視力喪失をもたらす可能性がある。
【0004】
抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)剤は、湿潤型AMD(またはnAMD)を治療するために頻繁に使用される。具体的には、抗VEGF剤は、対象の網膜を乾燥させる可能性があり、その結果、対象の湿潤型AMDがより良好に抑制されて、永久視力喪失を低減または予防することができる。抗VEGF剤は、典型的には硝子体内注入を介して投与され、これは両方とも対象に好ましくなく、副作用(例えば、充血、眼の痛み、感染症など)を伴い得る。注入の回数または頻度はまた、患者にとって負担となり、疾患の抑制の低下につながる可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
概要
1つまたは複数の実施形態では、新生血管加齢性黄斑変性症(nAMD)と診断された対象についての治療を管理するための方法が提供される。対象の網膜のスペクトル領域光干渉断層撮影法(SD-OCT)イメージングデータが受信される。網膜特徴データは、SD-OCTイメージングデータを使用して複数の網膜特徴について抽出され、複数の網膜特徴は、網膜液のセットまたは網膜層のセットのうちの少なくとも1つに関連付けられる。複数の網膜特徴の網膜特徴データを使用して形成された入力データは、第1の機械学習モデルに送信される。入力データに基づいて、第1の機械学習モデルを介して、対象に投与される抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)治療についての治療レベルが予測される。
【0006】
1つまたは複数の実施形態では、新生血管加齢性黄斑変性症(nAMD)と診断された対象についての抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)治療を管理するための方法が提供される。機械学習モデルは、抗VEGF治療についての治療レベルを予測するために訓練用入力データを使用して訓練され、訓練用入力データは、訓練用光干渉断層撮影法(OCT)イメージングデータを使用して形成される。訓練された機械学習モデルの入力データが受信され、入力データは、複数の網膜特徴についての網膜特徴データを含む。対象に投与される抗VEGF治療についての治療レベルは、訓練された機械学習モデルを介して、入力データを使用して予測される。
【0007】
1つまたは複数の実施形態では、新生血管加齢性黄斑変性症(nAMD)と診断された対象についての抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)治療を管理するシステムは、機械実行可能コードを含む機械可読媒体を含むメモリと、メモリに接続されたプロセッサとを備える。プロセッサは、機械実行可能コードを実行して、プロセッサに、対象の網膜のスペクトル領域光干渉断層撮影法(SD-OCT)イメージングデータを受信することと、SD-OCTイメージングデータを使用して複数の網膜特徴についての網膜特徴データを抽出することであって、複数の網膜特徴が、網膜液のセットまたは網膜層のセットのうちの少なくとも1つに関連付けられる、抽出することと、複数の網膜特徴についての網膜特徴データを使用して形成された入力データを第1の機械学習モデルに送信することと、第1の機械学習モデルを介して、入力データに基づいて、対象に投与される抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)治療についての治療レベルを予測することと、を行わせるように構成される。
【0008】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のデータプロセッサと、1つまたは複数のデータプロセッサ上で実行されると、1つまたは複数のデータプロセッサに、本明細書に開示された1つまたは複数の方法の一部または全部を実行させる命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体とを含むシステムが提供される。
【0009】
いくつかの実施形態では、非一時的機械可読記憶媒体に有形に具現化され、1つまたは複数のデータプロセッサに、本明細書に開示された1つまたは複数の方法の一部または全部を実行させるように構成された命令を含む、コンピュータプログラム製品が提供される。
【0010】
本開示のいくつかの実施形態は、1つまたは複数のデータプロセッサを含むシステムを含む。いくつかの実施形態では、システムは、1つまたは複数のデータプロセッサ上で実行されると、1つまたは複数のデータプロセッサに、本明細書に開示された1つまたは複数の方法の一部または全部および/または1つまたは複数のプロセスの一部または全部を実行させる命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。本開示のいくつかの実施形態は、1つまたは複数のデータプロセッサに、本明細書に開示された1つまたは複数の方法の一部または全部および/または1つまたは複数のプロセスの一部または全部を実行させるように構成された命令を含む非一時的機械可読記憶媒体において、有形に具現化されたコンピュータプログラム製品を含む。
【0011】
使用された用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、そのような用語および表現の使用において、示されて説明された特徴の均等物またはその一部を除外する意図はないが、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で様々な変更が可能であることが認識される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明は、実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示された概念の変更および変形は、当業者によってあてにされてもよく、そのような変更および変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあると見なされることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本明細書で開示された原理およびこの利点をさらに詳しく理解してもらうために、ここで、添付の図面と併せて以下の説明を参照されたい。
【0013】
【
図1】1つまたは複数の実施形態にかかる治療管理システムのブロック図である。
【0014】
【
図2】1つまたは複数の実施形態にかかる訓練モードにおいて使用されている
図1からの治療レベル予測システムのブロック図である。
【0015】
【
図3】1つまたは複数の実施形態にかかる、nAMDと診断された対象についての治療を管理するプロセスのフローチャートである。
【0016】
【
図4】1つまたは複数の実施形態にかかる、nAMDと診断された対象についての治療を管理するプロセスのフローチャートである。
【0017】
【
図5】1つまたは複数の実施形態にかかる、nAMDと診断された対象についての治療を管理するプロセスのフローチャートである。
【0018】
【
図6】1つまたは複数の実施形態にかかるセグメント化されたOCT画像の図である。
【0019】
【
図7】1つまたは複数の実施形態にかかるセグメント化されたOCT画像の図である。
【0020】
【
図8】1つまたは複数の実施形態にかかる「低」の治療レベル分類に対する5倍交差検証の結果を示すプロットである。
【0021】
【
図9】1つまたは複数の実施形態にかかる「高」治療レベル分類に対する5倍交差検証の結果を示すプロットである。
【0022】
【
図10】1つまたは複数の実施形態にかかる、「高」治療レベル分類に対する反復5倍交差検証の結果を示すAUCデータのプロットである。
【0023】
【
図11】1つまたは複数の実施形態にかかるコンピュータシステムの例を示すブロック図である。
【0024】
図は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、図内の物体は必ずしも互いに一定の縮尺で描かれているわけではないことを理解されたい。図は、本明細書に開示された装置、システム、および方法の様々な実施形態に明確さおよび理解をもたらすことを意図した描写である。可能な限り、同じまたは同様の部分を指すために図面全体を通して同じ参照符号が使用される。さらに、図面は、本教示の範囲を決して限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
I.概要
新生血管加齢性黄斑変性症(nAMD)は、永続的な視力喪失を回避または低減するために対象の網膜を乾燥させることによってnAMDを治療するように設計された抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)剤によって治療され得る。抗VEGF剤の例は、ラニビズマブおよびアフリベルセプトを含む。典型的には、抗VEGF剤は、約4週間ごとから約8週間までの範囲の頻度で硝子体内注入によって投与される。しかしながら、一部の患者は、そのような頻繁な注入を必要としない場合がある。
【0026】
治療の頻度は、一般に患者にとって負担となり、現実世界における疾患抑制の低下につながり得る。例えば、治療の初期段階の後、患者は、臨機に(pro re nata)(PRN)または必要な期間にわたって毎月定期的に来院するようにスケジュールされ得る。このPRN期間は、例えば、21ヶ月から24ヶ月、または他の何らかの月単位での期間であり得る。PRN期間中の毎月の来院のために診療所を訪れることは、頻繁な治療を必要としない患者にとって負担となり得る。例えば、患者がPRN期間全体の間に5回以下の注入しか必要としない場合、毎月の来院のために移動することは過度に面倒であり得る。したがって、来院の患者コンプライアンスが経時的に低下し、疾患抑制の低下をもたらし得る。
【0027】
したがって、抗VEGF剤の注入によるnAMD患者の効果的な治療を導き、確実にするのを助けるための抗VEGF治療要件を予測することを可能にする方法およびシステムが必要とされている。本明細書に記載の実施形態は、患者に必要とされる治療レベルを予測するための方法およびシステムを提供する。
【0028】
一部の患者は、「低」治療ニーズまたは要件を有し得るが、他の患者は、「高」治療ニーズまたは要件を有し得る。これらの治療レベル(すなわち、「低」または「高」治療レベル)を定義するための閾値は、抗VEGF注入の回数および注入が投与される期間に基づき得る。例えば、24ヶ月の期間にわたって8回以下の抗VEGF注入を受けた患者は、「低」治療レベルを有すると見なされ得る。例えば、患者は、3ヶ月間にわたって毎月抗VEGF注入を受け、21ヶ月のPRN期間にわたって5回以下の抗VEGF注入を受けることがある。一方、24ヶ月の期間にわたって19回以上の抗VEGF注入を受けた患者は、「高」治療レベルを有する患者の群に属すると見なされ得る。例えば、患者は、3ヶ月間にわたって毎月抗VEGF注入を受け、21ヶ月のPRN期間にわたって16回以上の注入を受けることがある。
【0029】
さらに、例えば、「低」治療ニーズまたは要件と「高」治療ニーズまたは要件との間の治療要件を示す「中」治療レベル(例えば、24ヶ月間にわたる9~18回の注入)などの他の治療レベルが評価されてもよい。患者に投与される注入の頻度は、これに限定されるものではないが、網膜への血管液の漏出などのnAMDの眼合併症を効果的に軽減または予防するために必要なものに基づいてもよい。
【0030】
本明細書に記載の実施形態は、機械学習モデルを使用して治療レベルを予測する。1つまたは複数の実施形態では、nAMDを有する対象の眼のスペクトル領域光干渉断層撮影法(SD-OCT)画像が取得され得る。OCTは、光が生物学的試料(例えば、眼などの生物学的組織)に向けられ、その生物学的試料の特徴から反射された光が収集されて、生物学的試料の2次元または3次元の高解像度断面画像をキャプチャするイメージング技術である。フーリエ領域OCTとしても知られるSD-OCTでは、信号は、(例えば、時間の関数と対照的に)光周波数の関数として検出される。
【0031】
SD-OCT画像は、SD-OCT画像を自動的にセグメント化し、セグメント化画像を生成するように構成された機械学習(ML)モデル(例えば、深層学習モデル)を使用して処理され得る。これらのセグメント化画像は、画素レベルで1つまたは複数の網膜液、1つまたは複数の網膜層、またはその両方を識別する。次いで、これらのセグメント化画像から定量的網膜特徴データが抽出され得る。1つまたは複数の実施形態では、機械学習モデルは、セグメント化と特徴抽出との両方のために訓練される。
【0032】
網膜特徴は、1つまたは複数の網膜病変(例えば、網膜液)、1つまたは複数の網膜層、またはその両方に関連付けられ得る。網膜液の例は、網膜内液(IRF)、網膜下液(SRF)、色素上皮剥離(PED)に関連付けられた液、および網膜下反射亢進物質(SHRM)を含むが、これらに限定されるものではない。網膜層の例は、内境界膜(ILM)層、外網状層-ヘンレ線維層(OPL-HFL)、内境界網膜色素上皮剥離(IB-RPE)、外境界網膜色素上皮剥離(OB-RPE)、およびブルッフ膜(BM)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本明細書に記載の実施形態は、別の機械学習モデル(例えば、記号モデル)を使用して網膜特徴データ(例えば、セグメント化画像から抽出された網膜特徴データの一部または全部)を処理し、治療レベル(例えば、治療レベルについての分類)を予測し得る。異なる網膜の特徴は、予測される治療レベルに対して様々なレベルの重要性を有し得る。例えば、抗VEGF治療の初期段階中(例えば、上記の24ヶ月の治療スケジュールの間の抗VEGF治療の2ヶ月目)のPEDに関連付けられた1つまたは複数の特徴は、PRN段階中の低治療レベルと強く関連付けられ得る。別の例として、抗VEGF治療の初期段階中(例えば、24ヶ月の治療スケジュールの間の抗VEGF治療の1ヶ月目)のSHRMに関連付けられた1つまたは複数の特徴は、高治療レベルと強く関連付けられ得る。
【0034】
予測された治療レベルを用いて、全体的な治療管理を導くのに役立つ出力(例えば、レポート)が生成され得る。例えば、予測される治療レベルが高い場合、出力は、診療所来院の患者コンプライアンスを保証するために所定の位置に配置され得る厳格なプロトコルのセットを識別し得る。予測される治療レベルが低い場合、出力は、患者の負担を軽減するために所定の位置に配置され得るより緩和されたプロトコルのセットを識別し得る。例えば、患者が毎月の診療所来院のために移動しなければならないのではなく、出力は、患者が2ヶ月または3ヶ月ごとに診療所で評価され得ることを識別し得る。
【0035】
機械学習モデル(例えば、深層学習モデル)によって生成された自動的にセグメント化画像を使用して、別の機械学習モデル(例えば、記号モデル)を介して治療レベルを予測するのに使用するための網膜特徴データを自動的に抽出することは、治療レベルを予測するのに必要な全体的なコンピューティングリソースおよび/または時間を削減し得て、予測された治療レベルの精度の向上を保証し得る。これらの方法を使用すると、治療レベルを予測する効率を改善し得る。さらに、治療レベルを正確且つ効率的に予測することができることは、nAMD患者が感じる全体的な負担を軽減する際の全体的なnAMD治療管理に役立ち得る。
【0036】
上述した改善を提供することができる方法論およびシステムの重要性および有用性を認識し、考慮すると、本明細書に記載の実施形態は、抗VEGF剤注入によるnAMDについての治療要件を予測することを可能にする。より具体的には、本明細書に記載の実施形態は、SD-OCTおよびMLベースの予測モデリングを使用して、nAMDを有する患者についての抗VEGF治療要件を予測する。
【0037】
II.例示的な定義および文脈
本開示は、これら例示の実施形態および応用例に、または例示の実施形態および応用例が動作するまたは本明細書に記載されるやり方に限定されるものではない。さらに、図は、簡略化されたまたは部分的な図を示すことがあり、図の要素の寸法は、誇張されているか、または比例していないことがある。
【0038】
さらに、本明細書では、「の上にある(on)」、「に取り付けられている(attached to)」、「に接続されている(connected to)」、「に結合されている(coupled to)」という用語または同様の用語が使用される場合、一方の要素が他方の要素の上に直接あるか、他方の要素に直接取り付けられているか、他方の要素に接続されているか、または他方の要素に結合されているか、または一方の要素と他方の要素との間に1つまたは複数の介在要素が存在するかにかかわらず、一方の要素(例えば、構成要素、材料、層、基板など)は、他方の要素「の上にある」、「に取り付けられている」、「に接続されている」、または「に結合されている」ことができる。さらに、要素のリスト(例えば、要素a、b、c)が参照される場合、そのような参照は、それ自体で列挙された要素のいずれか1つ、列挙された要素の全てよりも少ない要素の任意の組み合わせ、および/または列挙された要素の全ての組み合わせを含むことが意図される。本明細書におけるセクションの区分は、単に検討を容易にするためのものであり、説明された要素の任意の組み合わせを限定するものではない。
【0039】
「対象(subject)」という用語は、臨床治験の対象、治療を受ける人、抗がん治療を受ける人、寛解または回復についてモニタされている人、(例えば、その人の病歴に起因して)予防的健康分析を受ける人、あるいは任意の他の関心のある人もしくは対象を指し得る。様々な場合では、「対象」および「対象」は、本明細書において互換的に使用され得る。様々な場合では、「対象」は、「患者」と呼ばれることもある。
【0040】
特に定義されない限り、本明細書に記載される本教示に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈が特に必要としない限り、単数形の用語は、複数形を含み、複数形の用語は、単数形を含むものとする。一般に、化学、生化学、分子生物学、薬理学および毒物学に関連して利用される命名法およびその技術は、本明細書に記載されており、当該技術分野において周知であり、一般的に使用されるものである。
【0041】
本明細書で使用される場合、「実質的に」は、意図された目的のために機能するのに十分であることを意味する。したがって、「実質的に」という用語は、当業者によって予想されるが、全体的な性能にそれほど影響しないような、絶対的または完全な状態、寸法、測定値、結果などからの微細な、僅かな変動を可能にする。数値、または数値として表されることのできるパラメータもしくは特性に関して使用される場合、「実質的に」とは、10パーセント以内を意味する。
【0042】
本明細書で使用される場合、数値または数値として表され得るパラメータもしくは特性に関して使用される「約」という用語は、数値の10%以内を意味する。例えば、「約50」は、45以上55以下の範囲の値を意味する。
【0043】
「複数」という用語は、2つ以上を意味する。
【0044】
本明細書で使用される場合、「複数」という用語は、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上とすることができる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「のセット」という用語は、1つまたは複数を意味する。例えば、項目のセットは、1つまたは複数の項目を含む。
【0046】
本明細書で使用される場合、「のうちの少なくとも1つ」という語句は、項目のリストとともに使用される場合、列挙された項目のうちの1つまたは複数の異なる組み合わせが使用されてもよく、リスト内の項目のうちの1つのみが必要とされてもよいことを意味する。項目は、特定の物体、物、ステップ、動作、プロセス、またはカテゴリであり得る。換言すれば、「のうちの少なくとも1つ」は、リストから項目の任意の組み合わせまたは任意の数の項目が使用され得るが、リスト内の項目の全てが必要とされるわけではないことを意味する。例えば、限定されるものではないが、「項目A、項目B、または項目Cのうちの少なくとも1つ」は、項目A、項目Aおよび項目B、項目B、項目A、項目B、および項目C、項目Bおよび項目C、または項目AおよびCを意味する。場合によっては、「項目A、項目B、または項目Cの少なくとも1つ」は、これらに限定されるものではないが、項目Aのうちの2つ、項目Bのうちの1つ、および項目Cのうちの10個、項目Bのうちの4個と項目Cのうちの7個、またはいくつかの他の適切な組み合わせを意味する。
【0047】
本明細書において使用される場合、「モデル」は、1つまたは複数のアルゴリズム、1つまたは複数の数学的技術、1つまたは複数の機械学習アルゴリズム、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0048】
本明細書において使用される場合、「機械学習」は、アルゴリズムを使用してデータを解析し、そこから学習し、次いで世界の何かについての決定または予測を行う実践であり得る。機械学習は、ルールベースのプログラミングに頼ることなくデータから学習することができるアルゴリズムを使用し得る。
【0049】
本明細書において使用される場合、「人工ニューラルネットワーク」または「ニューラルネットワーク」(NN)は、計算に対するコネクショニストアプローチに基づいて情報を処理する、人工ニューロンの相互接続されたグループを模倣する数学的アルゴリズムまたは計算モデルを指し得る。ニューラルネットと呼ばれることもあるニューラルネットワークは、受信された入力について出力を予測するために、線形単位、非線形単位、またはその両方の1つまたは複数の層を採用し得る。いくつかのニューラルネットワークは、出力層に加えて1つまたは複数の隠れ層を含む。各隠れ層の出力は、ネットワークにおける次の層、換言すれば、次の隠れ層または出力層への入力として使用され得る。ネットワークのそれぞれの層は、対応するパラメータセットの現在の値にしたがって、受信した入力から出力を生成し得る。様々な実施形態では、「ニューラルネットワーク」への言及は、1つまたは複数のニューラルネットワークへの言及であり得る。
【0050】
ニューラルネットワークは、2つの方法で情報を処理し得る。例えば、ニューラルネットワークは、訓練モードで訓練されているとき、および学習したことを推論(または予測)モードで実施するときに情報を処理し得る。ニューラルネットワークは、ネットワークが、出力がトレーニングデータの出力に一致するように、中間隠れ層における個々のノードの(ネットワークの挙動を修正する)重み係数を調整することを可能にするフィードバックプロセス(たとえば、バックプロパゲーション)を通して学習し得る。換言すれば、ニューラルネットワークは、訓練データ(学習例)が供給されることによって学習し、且つ、新たな範囲または入力のセットが提示されるときでも、最終的には正しい出力に到達する方法を学習し得る。ニューラルネットワークは、例えば、限定されるものではないが、フィードフォワードニューラルネットワーク(FNN)、リカレントニューラルネットワーク(RNN)、モジュラーニューラルネットワーク(MNN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、残留ニューラルネットワーク(ResNet)、常微分方程式ニューラルネットワーク(ニューラルODE)、圧搾および励起組込み型ニューラルネットワーク、MobileNet、または別のタイプのニューラルネットワークのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0051】
本明細書で使用される「深層学習」は、オブジェクト検出/識別、音声認識、言語翻訳などのタスクにおいて非常に正確な予測を供給するために、人間が提供した知識なしに、画像、ビデオ、テキストなどの入力データから表現を自動的に学習するためのマルチレイヤ人工ニューラルネットワークの使用を指し得る。
【0052】
III.新生血管加齢性黄斑変性症(NAMD)治療管理
III.A.例示的な治療管理システム
ここで図面を参照すると、
図1は、1つまたは複数の実施形態にかかる治療管理システム100のブロック図である。治療管理システム100は、新生血管加齢性黄斑変性症(nAMD)と診断された対象についての治療を管理するために使用され得る。1つまたは複数の実施形態では、治療管理システム100は、コンピューティングプラットフォーム102と、データストレージ104と、ディスプレイシステム106とを含む。コンピューティングプラットフォーム102は、様々な形態をとり得る。1つまたは複数の実施形態では、コンピューティングプラットフォーム102は、単一のコンピュータ(もしくはコンピュータシステム)または互いに通信する複数のコンピュータを含む。他の例では、コンピューティングプラットフォーム102は、クラウドコンピューティングプラットフォーム、モバイルコンピューティングプラットフォーム(例えば、スマートフォン、タブレットなど)、またはそれらの組み合わせの形態をとる。
【0053】
データストレージ104およびディスプレイシステム106は、それぞれ、コンピューティングプラットフォーム102と通信する。いくつかの例では、データストレージ104、ディスプレイシステム106、またはその両方は、コンピューティングプラットフォーム102の一部と見なされるか、そうでなければ統合されてもよい。したがって、いくつかの例では、コンピューティングプラットフォーム102、データストレージ104、およびディスプレイシステム106は、互いに通信する別個の構成要素であってもよいが、他の例では、これらの構成要素のいくつかの組み合わせが統合されてもよい。
【0054】
III.A.i.予測モード
治療管理システム100は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの組み合わせを使用して実装され得る治療レベル予測システム108を含む。1つまたは複数の実施形態では、治療レベル予測システム108は、コンピューティングプラットフォーム102に実装される。治療レベル予測システム108は、特徴抽出モジュール110および予測モジュール111を含む。特徴抽出モジュール110および予測モジュール111のそれぞれは、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの組み合わせを使用して実装され得る。
【0055】
1つまたは複数の実施形態では、特徴抽出モジュール110および予測モジュール111のそれぞれは、1つまたは複数の機械学習モデルを使用して実装される。例えば、特徴抽出モジュール110は、網膜セグメンテーションモデル112を使用して実装されてもよく、予測モジュール111は、治療レベル分類モデル114を使用して実装されてもよい。
【0056】
網膜セグメンテーションモデル112は、少なくともOCTイメージングデータ118を処理し、1つもしくは複数の網膜病変(例えば、網膜液)、1つもしくは複数の網膜層、またはその両方を識別するセグメント化画像を生成するために使用される。1つまたは複数の実施形態では、網膜セグメンテーションモデル112は、機械学習モデルの形態をとる。例えば、網膜セグメンテーションモデル112は、深層学習モデルを使用して実装され得る。深層学習モデルは、例えば、1つまたは複数のニューラルネットワークから構成されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0057】
1つまたは複数の実施形態では、治療レベル分類モデル114が使用されて、治療についての治療レベルを分類し得る。この分類は、例えば、バイナリ(例えば、高および低;または高および非高)分類であり得る。他の実施形態では、いくつかの他のタイプの分類が使用されてもよい(例えば、高い、中程度、低い)。1つまたは複数の実施形態では、治療レベル分類モデル114は、特徴ベースモデルとも呼ばれることがある記号モデルを使用して実装される。記号モデルは、例えば、エクストリーム勾配ブースティング(XGBoost)アルゴリズムを含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0058】
特徴抽出モジュール110は、nAMDと診断された対象についての対象データ116を入力として受信する。対象は、例えば、nAMD症状についての治療を受けている、受けた、または受ける予定の患者であり得る。治療は、例えば、多数の注入(例えば、硝子体内注入)を介して投与され得る抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)剤を含み得る。
【0059】
対象データ116は、遠隔装置(例えば、遠隔装置117)から受信されてもよく、データベースから取得されてもよく、または他の何らかの方法で受信されてもよい。1つまたは複数の実施形態では、対象データ116は、データストレージ104から取得される。
【0060】
対象データ116は、nAMDと診断された対象の網膜の光干渉断層撮影法(OCT)イメージングデータ118を含む。OCTイメージングデータ118は、例えば、スペクトル領域光干渉断層撮影法(SD-OCT)イメージングデータを含み得る。1つまたは複数の実施形態では、OCTイメージングデータ118は、治療前の時点、治療直前の時点、最初の治療直後の時点、別の時点、またはそれらの組み合わせにおいてキャプチャされた1つまたは複数のSD-OCT画像を含む。いくつかの例では、OCTイメージングデータ118は、治療の初期段階(例えば、月M0~M2についての3ヶ月の初期段階)中に生成された1つまたは複数の画像を含む。初期段階の間、治療は、3ヶ月にわたって注入によって毎月投与される。
【0061】
1つまたは複数の実施形態では、対象データ116は、臨床データ119をさらに含む。臨床データ119は、例えば、臨床的特徴のセットのデータを含み得る。臨床的特徴のセットは、例えば、最高矯正視力(BCVA)(例えば、治療前のベースライン時点について)、中心サブフィールド厚(CST)(例えば、1つまたは複数のOCT画像から抽出される)、脈拍、収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、またはそれらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されるものではない。この臨床データ119は、治療前のベースライン時点および/または治療段階中の別の時点で生成されていてもよい。
【0062】
特徴抽出モジュール110は、OCTイメージングデータ118を使用して、複数の網膜特徴についての網膜特徴データ120を抽出する。網膜特徴データ120は、対象の網膜に関連付けられた様々な特徴の値を含む。例えば、網膜特徴データ120は、1つもしくは複数の網膜病変(例えば、網膜液)、1つもしくは複数の網膜層、またはその両方に関連付けられた様々な特徴の値を含み得る。網膜液の例は、網膜内液(IRF)、網膜下液(SRF)、色素上皮剥離(PED)に関連付けられた液、および網膜下反射亢進物質(SHRM)を含むが、これらに限定されるものではない。網膜層の例は、内境界膜(ILM)層、外網状層-ヘンレ線維層(OPL-HFL)、内境界網膜色素上皮剥離(IB-RPE)、外境界網膜色素上皮剥離(OB-RPE)、およびブルッフ膜(BM)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0063】
1つまたは複数の実施形態では、特徴抽出モジュール110は、対象データ116の少なくとも一部(例えば、OCTイメージングデータ118)を網膜セグメンテーションモデル112(例えば、深層学習モデル)に入力して、1つまたは複数の網膜セグメントを識別する。例えば、網膜セグメンテーションモデル112は、画素によって1つまたは複数の網膜セグメントを識別するセグメント化画像(例えば、セグメント化OCT画像)を生成し得る。網膜セグメントは、例えば、網膜病変(例えば、液)、網膜層の境界、または網膜層としての画像の一部の識別であり得る。例えば、網膜セグメンテーションモデル112は、網膜液セグメントのセット122、網膜層セグメントのセット124、またはその両方を識別するセグメント化画像を生成し得る。網膜液セグメントのセット122の各セグメントは、網膜液に対応する。網膜層のセット124の各セグメントは、網膜層に対応する。
【0064】
1つまたは複数の実施形態では、網膜セグメンテーションモデル112は、網膜液セグメントのセット122を識別する画像および網膜層セグメントのセット124を識別する画像を出力するように訓練されている。次いで、特徴抽出モジュール110は、網膜液セグメントのセット122および網膜層セグメントのセット124を識別するこれらの画像を使用して網膜特徴データ120を識別し得る。例えば、特徴抽出モジュール110は、網膜特徴データ120を識別するために画像を使用して測定、計算、またはその両方を実行し得る。他の実施形態では、網膜セグメンテーションモデル112は、網膜液セグメントのセット122、網膜層セグメントのセット124、またはその両方に基づいて網膜特徴データ120を出力するように訓練される。
【0065】
網膜特徴データ120は、例えば、網膜液セグメントのセット122、網膜層セグメントのセット124、またはその両方に基づいて識別された(例えば、計算された、測定されたなど)1つまたは複数の値を含み得る。例えば、網膜特徴データ120は、網膜液セグメントのセット122の対応する網膜液セグメントの値を含み得る。この値は、網膜液セグメントの体積、高さ、幅、または他の何らかの測定値に対するものであり得る。1つまたは複数の実施形態では、網膜特徴データ120は、網膜層セグメントのセット124の対応する網膜層セグメントの値を含む。例えば、値は、網膜層セグメントに関連付けられた最小厚さ、最大厚さ、平均厚さ、または別の測定値もしくは計算値を含み得る。場合によっては、網膜特徴データ120は、網膜液セグメントのセット122の複数の液セグメント、網膜層セグメントのセット124の複数の網膜層セグメント、またはその両方を使用して計算された値を含む。
【0066】
特徴抽出モジュール110は、網膜特徴データ120を使用して出力を生成し、この出力は、予測モジュール111についての入力データ126を形成する。入力データ126は、様々な方法で形成され得る。1つまたは複数の実施形態では、入力データ126は、網膜特徴データ120を含む。他の実施形態では、網膜特徴データ120の一部または全部は、修正、結合、または統合されて入力データ126を形成し得る。いくつかの例では、網膜特徴データ120内の2つ以上の値が使用されて、入力データ126に含まれる値を計算し得る。1つまたは複数の実施形態では、入力データ126は、臨床的特徴のセットの臨床データ119を含む。
【0067】
予測モジュール111は、特徴抽出モジュール110から受信した入力データ126を使用して治療レベル130を予測する。治療レベル130は、対象に必要であると予測される注入回数についての分類であり得る。対象に必要な注入回数は、例えば、1つまたは複数に基づいてもよいが、これに限定されるものではない。対象に必要な注入の回数は、全体的な注入回数または選択された期間内の注入回数であってもよい。例えば、対象の治療は、初期段階および臨機に(pro re nata)(PRN)または必要な段階を含み得る。予測モジュール111は、PRN段階についての治療レベル130を予測するために使用され得る。いくつかの例では、PRN段階についての期間は、初期段階の21ヶ月後を含む。これらの例では、治療レベル130は、「高」または「低」の分類であり、「高」は、PRN段階中の16回以上の注入として定義され、「低」は、PRN段階中の5回以下の注入として定義される。
【0068】
上述したように、治療レベル130は、PRN段階中の対象の治療について予測される注入回数、PRN段階もしくは別の期間中の注入回数、注入頻度、対象についての治療要件の別の指標、またはそれらの組み合わせに対する分類を含み得る。
【0069】
1つまたは複数の実施形態では、予測モジュール111は、入力データ126を治療レベル分類モデル114に送信して、治療レベル130を予測する。例えば、治療レベル分類モデル114(例えば、XGBoostアルゴリズム)は、入力データ126に基づいて治療レベル130を予測するように訓練されていてもよい。
【0070】
1つまたは複数の実施形態では、予測モジュール111は、治療レベル130を使用して出力132を生成する。いくつかの例では、出力132は、治療レベル130を含む。他の例では、出力132は、治療レベル130に基づいて生成された情報を含む。例えば、治療レベル130がPRN段階中の対象の治療について予測された注入回数を識別する場合、出力132は、この治療レベルについての分類を含み得る。別の例では、治療レベル分類モデル114によって予測される治療レベル130は、注入回数および注入回数についての分類(例えば、高、低など)を含み、出力132は、分類のみを含む。別の例では、出力132は、治療の名称、治療の投与量、またはその両方を含む。
【0071】
1つまたは複数の実施形態では、出力132は、1つまたは複数の通信リンク(例えば、有線、無線、および/または光通信リンク)を介して遠隔装置117に送信されてもよい。例えば、遠隔装置117は、サーバ、クラウドストレージ、クラウドコンピューティングプラットフォーム、モバイル装置(例えば、携帯電話、タブレット、スマートウォッチなど)、何らかの他のタイプの遠隔装置もしくはシステム、またはそれらの組み合わせなどの装置もしくはシステムであってもよい。いくつかの実施形態では、出力132は、遠隔装置138で見られ得るレポートとして送信される。レポートは、例えば、表、スプレッドシート、データベース、ファイル、プレゼンテーション、アラート、グラフ、チャート、1つまたは複数のグラフィック、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0072】
1つまたは複数の実施形態では、出力132は、ディスプレイシステム106に表示されてもよく、データストレージ104に記憶されてもよく、またはその両方であってもよい。ディスプレイシステム106は、コンピューティングプラットフォーム102と通信する1つまたは複数の表示装置を含む。ディスプレイシステム106は、コンピューティングプラットフォーム102とは別個であってもよく、またはコンピューティングプラットフォームの一部として少なくとも部分的に統合されてもよい。
【0073】
治療レベル130、出力132、またはその両方が使用されて、nAMDと診断された対象の治療を管理し得る。治療レベル130の予測は、例えば、臨床医を可能にし得る。
【0074】
III.A.ii.訓練モード
図2は、1つまたは複数の実施形態にかかる訓練モードにおいて使用される
図1からの治療レベル予測システム108のブロック図である。訓練モードでは、特徴抽出モジュール110の網膜セグメンテーションモデル112および予測モジュール111の治療レベル分類モデル114は、訓練用対象データ200を使用して訓練される。訓練用対象データ200は、例えば、訓練用OCTイメージングデータ202を含み得る。いくつかの実施形態では、対象データ200を訓練することは、臨床データ203を訓練することを含む。
【0075】
訓練用OCTイメージングデータ202は、例えば、治療の初期段階(例えば、最初の3ヶ月、最初の5ヶ月、最初の9ヶ月、最初の10ヶ月など)、治療のPRN段階(例えば、初期段階の5から25ヶ月後)、またはその両方にわたって抗VEGF注入を受けている対象の網膜をキャプチャするSD-OCT画像を含み得る。1つまたは複数の実施形態では、訓練用OCTイメージングデータ202は、21ヶ月のPRN段階にわたって0.5mgのラニビズマブの注入を受けた対象に対するSD-OCT画像の第1の部分と、21ヶ月のPRN段階にわたって2.0mgのラニビズマブの注入を受けた対象に対するSD-OCT画像の第2の部分とを含む。他の実施形態では、他の投与量(例えば、0.25mgから3mg)の注入を受けた対象についてのOCT画像が含まれてもよく、より長いまたはより短いPRN段階にわたって監視された対象についてのOCT画像が含まれてもよく、異なる抗VEGF剤を投与された対象についてのOCT画像が含まれてもよく、またはそれらの組み合わせが含まれてもよい。
【0076】
訓練用臨床データ203は、例えば、訓練対象についての臨床的特徴のセットのデータを含み得る。臨床的特徴のセットは、例えば、最高矯正視力(BCVA)(例えば、治療前のベースライン時点について)、中心サブフィールド厚(CST)(例えば、1つまたは複数のOCT画像から抽出される)、脈拍、収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、またはそれらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されるものではない。訓練用臨床データ203は、治療前のベースライン時点に(例えば、初期段階の前に)および/または治療段階中の別の時点に(例えば、初期段階とPRN段階との間に)生成されていてもよい。
【0077】
1つまたは複数の実施形態では、網膜セグメンテーションモデル112は、訓練用対象データ200を使用して訓練され、網膜液セグメントのセット122、網膜層セグメントのセット124、またはその両方を識別するセグメント化画像を生成し得る。網膜液セグメントのセット122および網膜層セグメントのセット124は、訓練用OCTイメージングデータ202内の各画像に対してセグメント化され得る。特徴抽出モジュール110は、網膜液セグメントのセット122、網膜層セグメントのセット124、またはその両方を使用して訓練用網膜特徴データ204を生成する。1つまたは複数の実施形態では、特徴抽出モジュール110は、網膜セグメンテーションモデル112の出力に基づいて訓練用網膜特徴データ204を生成する。他の実施形態では、特徴抽出モジュール110の網膜セグメンテーションモデル112は、網膜液セグメントのセット122、網膜層セグメントのセット124、またはその両方に基づいて訓練用網膜特徴データ204を生成するように訓練される。
【0078】
特徴抽出モジュール110は、予測モジュール111に入力するための訓練用入力データ206を形成する訓練用網膜特徴データ204を使用して出力を生成する。訓練用入力データ206は、訓練用網膜特徴データ204を含んでもよく、または訓練用網膜特徴データ204に基づいて生成されてもよい。例えば、訓練用網膜特徴データ204は、訓練用入力データ204を形成するためにフィルタリングされてもよい。1つまたは複数の実施形態では、訓練用網膜特徴データ204は、関心特徴の10%超が欠落データである任意の対象についての特徴データを除去するようにフィルタリングされる。いくつかの例では、訓練用網膜特徴データ204は、初期段階の全体、PRN段階の全体、または初期段階およびPRN段階の両方の全体について完全なデータが存在しない任意の対象についての網膜特徴データを除去するためにフィルタリングされる。いくつかの実施形態では、訓練用入力データ206は、訓練用臨床データ203または訓練用臨床データ203の少なくとも一部をさらに含む。
【0079】
予測モジュール111は、訓練用入力データ206を受信し、治療レベル分類モデル114は、訓練用入力データ206を使用して治療レベル130を予測するように訓練され得る。1つまたは複数の実施形態では、治療レベル分類モデル114は、治療レベル130を予測し、治療レベル130に基づいて出力132を予測するように訓練されてもよい。
【0080】
他の実施形態では、治療レベル予測システム108の訓練は、予測モジュール111の訓練のみを含み、それによって治療レベル分類モデル114の訓練のみを含んでもよい。例えば、特徴抽出モジュール1110の網膜セグメンテーションモデル112は、セグメンテーションを実行し、および/または特徴データを生成するように事前訓練されてもよい。したがって、訓練用入力データ206は、別のソース(例えば、
図1のデータストレージ、
図1の遠隔装置117、他の何らかの装置など)から受信されてもよい。
【0081】
III.B.NAMD治療を管理する例示的な方法
図3は、1つまたは複数の実施形態にかかる、nAMDと診断された対象についての治療を管理するプロセス300のフローチャートである。1つまたは複数の実施形態では、プロセス300は、
図1に記載の治療管理システム100を使用して実装される。より具体的には、プロセス300は、
図1の治療レベル予測システム108を使用して実装され得る。例えば、プロセス300が使用されて、
図1の対象データ116(例えば、OCTイメージングデータ118)に基づいて治療レベル130を予測し得る。
【0082】
ステップ302は、対象の網膜のスペクトル領域光干渉断層撮影法(SD-OCT)イメージングデータを受信することを含む。ステップ302において、SD-OCTイメージングデータは、
図1のOCTイメージングデータ118についての実装の一例であり得る。1つまたは複数の実施形態では、SD-OCTイメージングデータは、遠隔装置から受信されてもよく、データベースから取得されてもよく、または他の何らかの方法で受信されてもよい。ステップ302において受信されたSD-OCTイメージングデータは、例えば、ベースライン時点、治療直前の時点、治療直後の時点、別の時点、またはそれらの組み合わせでキャプチャされた1つまたは複数のSD-OCT画像を含み得る。1つまたは複数の例では、SD-OCTイメージングデータは、任意の治療前のベースライン時点(例えば、0日目)、第1の月の注入前後の時点(例えば、M1)、第2の月の注入前後の時点(例えば、M2)、第1の第3の月の注入前後の時点(例えば、M3)、またはそれらの組み合わせで生成された1つまたは複数の画像を含む。
【0083】
ステップ304は、SD-OCTイメージングデータを使用して複数の網膜特徴についての網膜特徴データを抽出することを含み、複数の網膜特徴は、網膜液のセットまたは網膜層のセットのうちの少なくとも一方に関連付けられている。1つまたは複数の実施形態では、ステップ304は、
図1の特徴抽出モジュール110を使用して実装され得る。例えば、特徴抽出モデル110が使用されて、ステップ302において受信したSD-OCTイメージングデータを使用して、網膜液セグメントのセット122または網膜層セグメントのセット124のうちの少なくとも一方に関連付けられた複数の網膜特徴についての網膜特徴データ120を抽出し得る。ステップ304において、網膜特徴データは、例えば、
図1の網膜特徴データ120の形態をとり得る。
【0084】
いくつかの例では、網膜特徴データは、1つもしくは複数の網膜液、1つもしくは複数の網膜層、またはその両方に対応する値(例えば、計算値、測定値など)を含む。網膜液の例は、網膜内液(IRF)、網膜下液(SRF)、色素上皮剥離(PED)に関連付けられた液、および網膜下反射亢進物質(SHRM)を含むが、これらに限定されるものではない。対応する網膜液に関連付けられた特徴の値は、例えば、対応する網膜液の体積、高さ、または幅の値を含み得る。網膜層の例は、内境界膜(ILM)層、外網状層-ヘンレ線維層(OPL-HFL)、内境界網膜色素上皮剥離(IB-RPE)、外境界網膜色素上皮剥離(OB-RPE)、およびブルッフ膜(BM)を含むが、これらに限定されるものではない。対応する網膜層に関連付けられた特徴の値は、例えば、対応する網膜層の最小厚さ、最大厚さ、または平均厚さの値を含み得る。場合によっては、網膜層関連特徴は、2つ以上の網膜層(例えば、2つの網膜層の境界間の距離)に対応し得る。
【0085】
1つまたは複数の実施形態では、ステップ304における複数の網膜特徴は、網膜の網膜下液(SRF)に関連付けられた少なくとも1つの特徴と、色素上皮剥離(PED)に関連付けられた少なくとも1つの特徴とを含む。
【0086】
1つまたは複数の実施形態では、SD-OCTイメージングデータは、1回の臨床来院中にキャプチャされたSD-OCT画像を含む。いくつかの実施形態では、SD-OCTイメージングデータは、複数の臨床来院において(例えば、治療の初期段階の毎月に)キャプチャされたSD-OCT画像を含む。1つまたは複数の実施形態では、ステップ304は、機械学習モデル(例えば、
図1の網膜セグメンテーションモデル112)を介してSD-OCTイメージングデータを使用して網膜特徴データを抽出することを含む。機械学習モデルは、例えば、深層学習モデルを含んでもよい。1つまたは複数の実施形態では、深層学習モデルは、1つまたは複数のニューラルネットワークを含み、そのそれぞれは、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)であってもよい。
【0087】
ステップ306は、複数の網膜特徴の網膜特徴データを使用して形成された入力データを機械学習モデルに送信することを含む。ステップ306において、入力データは、例えば、
図1の入力データ126の形態をとり得る。いくつかの実施形態では、入力データは、ステップ304において抽出された網膜特徴データを含む。換言すれば、網膜特徴データまたは網膜特徴データの少なくとも一部は、機械学習モデルの入力データとして送信され得る。他の実施形態では、網膜特徴データの一部または全部は、修正、結合、または統合されて入力データを形成し得る。ステップ306における機械学習モデルは、例えば、
図1の治療レベル分類モデル114であってもよい。1つまたは複数の実施形態では、機械学習モデルは、記号モデル(特徴ベースのモデル)(例えば、XGBoostアルゴリズムを使用するモデル)であってもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、入力データは、対象についての臨床的特徴のセットの臨床データをさらに含み得る。臨床データは、例えば、
図1の臨床データ117であってもよい。臨床的特徴のセットは、例えば、最高矯正視力(BCVA)(例えば、治療前のベースライン時点について)、中心サブフィールド厚(CST)(例えば、1つまたは複数のOCT画像から抽出される)、脈拍、収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、またはそれらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されるものではない。入力データは、上述した網膜特徴データの全部または一部を含み得る。
【0089】
ステップ308は、機械学習モデルを介して、入力データに基づいて対象に投与される抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)治療についての治療レベルを予測することを含む。治療レベルは、(例えば、治療のPRN段階中に)対象の抗VEGF治療について予測される注入回数、(例えば、PRN段階または別の期間中における)注入回数、注入頻度、対象についての治療要件の別の指標、またはそれらの組み合わせに対する分類を含み得る。
【0090】
プロセス300は、任意に、ステップ310を含んでもよい。ステップ310は、予測された治療レベルを使用して出力を生成することを含む。出力は、治療レベルおよび/または予測された治療レベルに基づいて生成された情報を含み得る。いくつかの実施形態では、ステップ310は、出力を遠隔装置に送信することをさらに含む。出力は、例えば、臨床医、対象、またはその両方を対象の治療に関して案内するために使用され得るレポートであってもよい。例えば、予測された治療レベルが、対象がPRN段階にわたって「高」レベルの注入を必要とし得ることを示す場合、出力は、対象の遵守(例えば、注入予約、評価予約までを示す対象)を確実にするのに役立つように設定されることが可能な特定のプロトコルを識別し得る。
【0091】
図4は、1つまたは複数の実施形態にかかる、nAMDと診断された対象についての治療を管理するプロセス400のフローチャートである。1つまたは複数の実施形態では、プロセス400は、
図1に記載の治療管理システム100を使用して実装される。より具体的には、プロセス400は、
図1および
図2の治療レベル予測システム108を使用して実装され得る。
【0092】
ステップ402は、抗VEGF治療についての治療レベルを予測するために、訓練用入力データを使用して第1の機械学習モデルを訓練することを含む。訓練用入力データは、例えば、
図2の訓練用入力データ206であってもよい。訓練用入力データは、例えば、
図2の訓練用OCTイメージングデータ202などの訓練用OCTイメージングデータを使用して形成されてもよい。第1の機械学習モデルは、例えば、XGBoostモデルなどの記号モデルを含んでもよい。
【0093】
1つまたは複数の実施形態では、訓練用OCTイメージングデータは、セグメント化画像(セグメント化OCT画像)を生成するために、第2の機械学習モデルを使用して自動的にセグメント化される。第2の機械学習モデルは、例えば、深層学習モデルを含んでもよい。網膜特徴データは、セグメント化画像から抽出され、訓練用入力データを形成するために使用される。例えば、網膜特徴データの少なくとも一部は、訓練用入力データの少なくとも一部を形成するために使用される。いくつかの例では、訓練用入力データは、訓練用臨床データ(例えば、BCVA、脈拍、収縮期血圧、拡張期血圧、CSTなどについての測定値)をさらに含み得る。
【0094】
訓練用入力データは、抗VEGF治療の第1の投与量(例えば、0.5mg)によって治療された訓練対象の第1の部分のデータおよび抗VEGF治療の第2の投与量(例えば、2.0mg)によって治療された訓練対象の第2の部分のデータを含み得る。訓練用入力データは、治療の臨機(pro re nata)段階(例えば、毎月の注入を含む治療の初期段階の21ヶ月後、治療の初期段階の9ヶ月後、または何らかの他の期間)に対応するデータであり得る。
【0095】
1つまたは複数の実施形態では、網膜特徴データが前処理されて訓練用入力データを形成し得る。例えば、複数の来院(例えば、3回の来院)に対応する網膜特徴についての値が連結され得る。いくつかの例では、高度に相関する特徴は、訓練用入力データから除外され得る。例えば、ステップ402において、高度に相関する(例えば、0.9を超える相関係数)特徴のクラスタが識別され得る。高度に相関する特徴の各ペアについて、これらの特徴のうちの1つについての値は、訓練用入力データから除外するためにランダムに選択されてもよい。3つ以上の高度に相関する特徴のクラスタの場合、クラスタ内の最も他の特徴と相関するそれらの特徴についての値は、反復的に除外される(例えば、クラスタの単一の特徴が残るまで)。これらの前処理の例は、網膜特徴データに対して実行され得る前処理のタイプの一例であり得るにすぎない。
【0096】
さらに他の実施形態では、ステップ402は、第1の複数の網膜特徴に関して第1の機械学習モデルを訓練することを含む。特徴重要性分析が使用されて、第1の複数の網膜特徴のうちのどれが治療レベルを予測するのに最も重要であるかを決定し得る。これらの実施形態では、ステップ402は、第1の複数の網膜特徴を第2の複数の網膜特徴(例えば、3、4、5、6、7、....10個、または他のいくつかの網膜特徴)に縮小することを含み得る。次いで、第1の機械学習モデルは、治療レベルを予測する際に第2の複数の網膜特徴を使用するように訓練され得る。
【0097】
ステップ404は、第2の機械学習モデルを使用して対象についての入力データを生成することを含む。対象についての入力データは、第2の機械学習モデルを使用して対象の網膜のOCTイメージングデータから抽出された網膜特徴データ、臨床データ、またはその両方を使用して生成され得る。例えば、第2の機械学習モデルは、OCT画像内の網膜液セグメントのセット、網膜層セグメントのセット、またはその両方を識別するように事前訓練されていてもよい。次いで、網膜液セグメントのセット、網膜層セグメントのセット、またはその両方が使用されて、計算、測定などを介して複数の網膜特徴についての網膜特徴データを識別し得る。いくつかの実施形態では、第2の機械学習モデルは、網膜液セグメントのセット、網膜層セグメントのセット、またはその両方に基づいて網膜特徴データを識別するように事前訓練され得る。
【0098】
ステップ406は、訓練された機械学習モデルによって、複数の網膜特徴についての網膜特徴データを含む入力データを受信することを含む。入力データは、臨床的特徴のセットについての臨床データをさらに含み得る。
【0099】
ステップ408は、訓練された機械学習モデルを介して、入力データを使用して対象に投与される抗VEGF治療についての治療レベルを予測することを含む。治療レベルは、例えば、「高」または「低」(または「高」および「非高」)の分類であり得る。「高」レベルは、例えば、PRN段階(例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、10、20、21、22、23、24ヶ月、または何らかの他の月数の期間)中の10、11、12、13、14、15、16、17、または18回以上の注入を示し得る。「低」レベルは、例えば、PRN段階中の7、6、5、4回、またはそれよりも少ない注入を示し得る。
【0100】
図5は、1つまたは複数の実施形態にかかる、nAMDと診断された対象についての治療を管理するプロセス500のフローチャートである。このプロセス500は、例えば、
図1の治療管理システム100を使用して実装され得る。
【0101】
ステップ502は、nAMDと診断された対象についての対象データを受信することを含み得て、対象データは、OCTイメージングデータを含む。OCTイメージングデータは、例えば、SD-OCTイメージングデータであってもよい。OCTイメージングデータは、対象の網膜の1つまたは複数のOCT(例えば、SD-OCT)画像を含み得る。1つまたは複数の実施形態では、対象データは、臨床データをさらに含む。臨床データは、例えば、BCVA測定(例えば、ベースライン時点で取得される)およびバイタル(例えば、脈拍、収縮期血圧、拡張期血圧など)を含み得る。いくつかの実施形態では、臨床データは、1つまたは複数のOCT画像から抽出された測定値であり得る中心サブフィールド厚(CST)を含む。
【0102】
ステップ504は、深層学習モデルを使用してOCTイメージングデータから網膜特徴データを抽出することを含む。1つまたは複数の実施形態では、深層学習モデルは、OCTイメージングデータから液セグメントのセットおよび網膜層セグメントのセットをセグメント化するために使用される。例えば、深層学習モデルが使用されて、OCTイメージングデータの各OCT画像から液セグメントのセットおよび網膜層セグメントのセットをセグメント化して、セグメント化画像を生成し得る。これらのセグメント化画像は、複数の網膜特徴の値を測定および/または計算して網膜特徴データを形成するために使用され得る。他の実施形態では、深層学習モデルは、セグメンテーションの実行と網膜特徴データの生成との両方に使用されてもよい。
【0103】
ステップ506は、網膜特徴データを使用して記号モデルについての入力データを形成することを含む。入力データは、例えば、網膜特徴データを含み得る。他の実施形態では、入力データは、網膜特徴データの少なくとも一部を修正、統合、または組み合わせて新たな値を形成することによって形成されてもよい。さらに他の実施形態では、入力データは、上述した臨床データをさらに含んでもよい。
【0104】
ステップ508は、入力データを使用して記号モデルを介して治療レベルを予測することを含む。1つまたは複数の実施形態では、治療レベルは、「高」または「低」(または「高」および「非高」)の分類であり得る。「高」レベルは、例えば、PRN段階(例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、10、20、21、22、23、24ヶ月、または何らかの他の月数の期間)中の10、11、12、13、14、15、16、17、または18回以上の注入を示し得る。「低」レベルは、例えば、PRN段階中の7、6、5、4回、またはそれよりも少ない注入を示し得る。「非高」レベルは、「高」分類に必要な回数を下回る注入回数を示し得る。
【0105】
プロセス500は、任意に、ステップ510を含んでもよい。ステップ510は、対象の治療の管理を案内する際に使用するための予測された治療レベルを使用して出力を生成することを含む。例えば、出力は、レポート、アラート、通知、または治療レベルを含む他のタイプの出力であってもよい。いくつかの例では、出力は、予測された治療レベルに基づくプロトコルのセットを含む。例えば、予測された治療レベルが「高」である場合、出力は、評価予約、注入予約などへの対象の遵守を確実にするために使用され得るプロトコルのセットを概説し得る。いくつかの実施形態では、出力は、対象または対象を治療する臨床医のための特定の指示など、予測された治療レベルが「高」である場合の特定の情報を含んでもよく、この情報は、予測された治療レベルが「低」または「高でない」場合に出力から除外される。したがって、出力は、予測された治療レベルに応じて様々な形態をとり得る。
【0106】
III.C.例示的なセグメント化画像
図6は、1つまたは複数の実施形態にかかるセグメント化されたOCT画像の図である。セグメント化OCT画像600は、例えば、
図1の網膜セグメンテーションモデル112を使用して生成されていてもよい。セグメント化OCT画像600は、
図1の網膜液セグメントのセット602の実装の一例であり得る網膜液セグメントのセット122を識別する。網膜液セグメントのセット602は、網膜内液(IRF)、網膜下液(SRF)、色素上皮剥離(PED)に関連付けられた液、および網膜下反射亢進物質(SHRM)を識別する。
【0107】
図7は、1つまたは複数の実施形態にかかるセグメント化されたOCT画像の図である。セグメント化OCT画像700は、例えば、
図1の網膜セグメンテーションモデル112を使用して生成されていてもよい。セグメント化OCT画像700は、
図1の網膜層セグメントのセット702の実装の一例であり得る網膜層セグメントのセット124を識別する。網膜層セグメントのセット702は、内境界膜(ILM)層、外網状層-ヘンレ線維層(OPL-HFL)、内境界網膜色素上皮剥離(IB-RPE)、外境界網膜色素上皮剥離(OB-RPE)、およびブルッフ膜(BM)を識別する。
【0108】
IV.例示的な実験データ
IV.A.試験#1:
第1の試験では、訓練用OCTイメージングデータから生成された訓練用入力データを使用して機械学習モデル(例えば、記号モデル)が訓練された。例えば、2つの異なるラニビズマブPRNアーム(0.5mg投与のものと2.0mg投与のもの)からのHARBOR臨床試験(NCT00891735)の363名の訓練対象についてのSD-OCTイメージングデータが収集された。SD-OCTイメージングデータは、適用可能な場合、治療の3ヶ月の初期段階および治療の21ヶ月のPRN段階についての毎月のSD-OCT画像を含んでいた。「低」治療レベルは、PRN段階中の5回以下の注入として分類された。「高」治療レベルは、PRN段階中の16回以上の注入として分類された。
【0109】
深層学習モデルが使用されて、(例えば、各SD-OCT画像内の液セグメントのセットおよび網膜層セグメントのセットを識別する)初期段階の各月についてのセグメント化画像を生成した。したがって、3つの液セグメント化画像および3つの層セグメント化画像が生成された(各来院につき1つ)。これらのセグメント化画像を使用して、訓練対象症例ごとに訓練用網膜特徴データが計算された。訓練用網膜特徴データは、液セグメント化画像を使用して計算された60個の特徴および層セグメント化画像を使用して計算された45個の特徴のデータを含んでいた。訓練用網膜特徴データが初期段階の3ヶ月のそれぞれについて計算された。訓練用網膜特徴データが、初期段階の3ヶ月のそれぞれについてBCVAおよびCSTデータと組み合わせられて、訓練用入力データを形成した。訓練用入力データがフィルタリングされて、105個の全網膜特徴の10%を超えるデータが欠落している任意の対象症例を除去し、初期段階およびPRN段階の両方の全24ヶ月間、完全なデータが利用できなかった任意の対象症例を除去した。
【0110】
次いで、フィルタリングされた訓練用入力データが、XGBoostアルゴリズムを使用して実装された記号モデルに入力され、5倍交差検証を使用して評価された。記号モデルは、訓練用入力データを使用して訓練され、所与の対象を「低」または「高」治療レベルに関連付けられるものとして分類した。
【0111】
図8は、1つまたは複数の実施形態にかかる「低」の治療レベル分類に対する5倍交差検証の結果を示すプロットである。特に、プロット800は、「低」治療レベルによって分類された対象症例についての上述した実験についての検証データを提供する。「低」治療レベルについての平均AUCは、0.81±0.06であった。
【0112】
図9は、1つまたは複数の実施形態にかかる「高」治療レベル分類に対する5倍交差検証の結果を示すプロットである。特に、プロット900は、「高」治療レベルによって分類された対象症例についての上述した実験についての検証データを提供する。「高」治療レベルについての平均AUCは、0.80±0.08であった。
【0113】
図8のプロット800および
図9のプロット900は、機械学習モデル(例えば、記号モデル)を使用して、自動的にセグメント化されたSD-OCT画像から抽出された網膜特徴データを使用してnAMDを有する対象についての低治療レベルまたは高治療レベルを予測する実行可能性を示し、セグメント化されたSD-OCT画像は、別の機械学習モデル(例えば、深層学習モデル)を使用して生成される。
【0114】
SHAP(Shapley Additive exPlanations)分析が実行されて、「低」治療レベル分類および「高」治療レベル分類に最も関連する特徴を決定した。「低」の治療レベルについての分類では、6つの最も重要な特徴は、網膜液(例えば、PEDおよびSHRM)に関連付けられた4つの特徴、網膜層に関連付けられた1つの特徴、およびCSTを含み、これら6つの特徴のうちの5つは、治療の初期段階の2ヶ月目からであった。「低」治療レベル分類は、2ヶ月目に検出された低体積のPED高さと最も強く関連付けられた。「高」の治療レベルについての分類では、6つの最も重要な特徴は、網膜液(例えば、IRFおよびSHRM)に関連付けられた4つの特徴および網膜層に関連付けられた2つの特徴を含み、これら6つの特徴のうちの4つは、治療の初期段階の2ヶ月目からであった。「高」治療レベル分類は、1ヶ月目に検出された少量のSHRMと最も強く関連付けられた。
【0115】
IV.B.試験#2:
第2の試験では、訓練用OCTイメージングデータから生成された訓練用入力データを使用して機械学習モデル(例えば、記号モデル)が訓練された。例えば、2つの異なるラニビズマブPRNアーム(0.5mg投与のものと2.0mg投与のもの)からのHARBOR臨床試験(NCT00891735)の547名の訓練対象についてのSD-OCTイメージングデータが収集された。SD-OCTイメージングデータは、適用可能な場合、治療の9ヶ月の初期段階および治療の9ヶ月のPRN段階についての毎月のSD-OCT画像を含んでいた。547名の訓練対象のうち、144名が「高」治療レベルを有すると識別され、これは、PRN段階中の6回以上の注入(9ヶ月から17ヶ月間の9回の来院)として分類された。
【0116】
深層学習モデルが使用されて、9ヶ月目および10ヶ月目の来院時に収集したSD-OCTイメージングデータから液セグメント化および層セグメント化画像を生成した。これらのセグメント化画像を使用して、訓練対象症例ごとに訓練用網膜特徴データが計算された。9ヶ月目および10ヶ月目の来院のそれぞれについて、訓練用網膜特徴データは、網膜層について69個の特徴および網膜液について36個の特徴を含んでいた。
【0117】
この訓練用網膜特徴データがフィルタリングされて、網膜特徴の10%を超えるデータが欠落している(例えば、セグメンテーションの失敗)対象症例を除去し、9ヶ月目から17ヶ月目までの全9ヶ月間、完全なデータが利用できなかった対象症例を除去し、それによって入力データを形成した。
【0118】
この入力データは、XGBoostアルゴリズムを使用して二値分類用の記号モデルに入力され、5倍交差検証が10回繰り返された。試験は、各特徴群(網膜液関連特徴および網膜層関連特徴)ならびに全ての網膜特徴の組み合わせセットに対して行われた。さらに、9ヶ月目のみ、ならびに9ヶ月目および10ヶ月目の両方の特徴を一緒に使用して試験が実施された。
【0119】
図10は、1つまたは複数の実施形態にかかる、「高」治療レベル分類に対する反復5倍交差検証の結果を示すAUCデータのプロットである。プロット1000に示すように、全ての網膜層からの特徴を使用すると、最良の性能が達成された。網膜層関連特徴のみを使用するためのAUCは、9ヶ月目のデータのみを使用する場合は0.76±0.04であり、9ヶ月目および10ヶ月目のデータを一緒に使用する場合は0.79±0.05であった。これらのAUCは、網膜層関連特徴および網膜液関連特徴の両方を使用した場合に観察される性能に近い。プロット1000に示すように、10ヶ月目のデータを追加すると、性能が僅かに改善された。SHAP分析は、SRFおよびPEDに関連付けられた特徴が治療レベルを予測するための最も重要な特徴の1つであることを確認した。
【0120】
したがって、この試験は、自動的にセグメント化されたSD-OCT画像から抽出された網膜特徴データを使用して、以前に治療されたnAMD対象について将来の高治療レベル(例えば、初期治療の9ヶ月の期間に続く9ヶ月の期間内の6回以上の注入)を識別することの実現可能性を示した。
【0121】
V.コンピュータ実装システム
図11は、1つまたは複数の実施形態にかかるコンピュータシステムの例を示すブロック図である。コンピュータシステム1100は、
図1において上述されたコンピューティングプラットフォーム102の一実装の例であり得る。1つまたは複数の例では、コンピュータシステム1100は、情報を通信するためのバス1102または他の通信機構と、情報を処理するための、バス1102と接続されたプロセッサ1104とを含むことができる。様々な実施形態では、コンピュータシステム1100はまた、プロセッサ1104によって実行される命令を決定するためにバス1102に接続された、ランダムアクセスメモリ(RAM)1106または他の動的記憶装置とすることができるメモリを含むことができる。メモリはまた、プロセッサ1104によって実行される命令の実行中に一時変数または他の中間情報を記憶するために使用され得る。様々な実施形態では、コンピュータシステム1100は、プロセッサ1104のための静的情報および命令を記憶するためにバス1102に接続された読み出し専用メモリ(ROM)1108または他の静的記憶装置をさらに含むことができる。磁気ディスクまたは光ディスクなどの記憶装置1110が設けられ、情報および命令を記憶するためにバス1102に結合され得る。
【0122】
様々な実施形態では、コンピュータシステム1100は、バス1102を介して、コンピュータユーザに情報を表示するために、陰極線管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)などのディスプレイ1112に結合され得る。英数字および他のキーを含む入力装置1114は、情報およびコマンド選択をプロセッサ1104に通信するためにバス1102に結合され得る。別のタイプのユーザ入力装置は、プロセッサ1104に方向情報およびコマンド選択を通信し、ディスプレイ1112上のカーソル移動を制御するための、マウス、ジョイスティック、トラックボール、ジェスチャ入力装置、視線ベースの入力装置、またはカーソル方向キーなどのカーソル制御装置1116である。この入力装置1114は、典型的には、装置が平面内の位置を指定することを可能にする第1の軸(例えば、x)および第2の軸(例えば、y)の二軸の二自由度を有する。しかしながら、3次元(例えば、x、yおよびz)カーソル移動を可能にする入力装置1114も本明細書で企図されることを理解されたい。
【0123】
本教示のある特定の実装形態と一致するように、プロセッサ1104が、RAM1106に含まれる1つまたは複数の命令の1つまたは複数のシーケンスを実行することに応答して、結果がコンピュータシステム1100によって提供され得る。そのような命令は、記憶装置1110など、別のコンピュータ可読媒体またはコンピュータ可読記憶媒体からRAM1106に読み込み可能である。RAM1106に含まれている命令のシーケンスの実行は、プロセッサ1104に、本明細書で説明されるプロセスを実行させることができる。あるいは、本教示を実装するために、ソフトウェア命令の代わりに、またはソフトウェア命令と組み合わせて、ハードワイヤード回路が使用され得る。したがって、本教示の実装は、ハードウェア回路とソフトウェアとのいかなる特定の組み合わせにも限定されるものではない。
【0124】
本明細書で使用される「コンピュータ可読媒体」(例えば、データストア、記憶装置、データ記憶装置など)または「コンピュータ可読記憶媒体」という用語は、実行のためにプロセッサ1104に命令を提供することに関与する任意の媒体を指す。そのような媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体を含むがこれらに限定されるものではない多くの形態をとることができる。不揮発性媒体の例は、限定されるものではないが、記憶装置1110などの光学、固体、磁気ディスクを含むことができる。揮発性媒体の例は、限定されるものではないが、RAM1106などの動的メモリを含むことができる。伝送媒体の例は、限定されるものではないが、バス1102を備えるワイヤを含む、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバを含むことができる。
【0125】
コンピュータ可読媒体の一般的な形態は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、または任意の他の磁気媒体、CD-ROM、任意の他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、孔のパターンを有する任意の他の物理媒体、RAM、PROM、およびEPROM、フラッシュEPROM、任意の他のメモリチップまたはカートリッジ、またはコンピュータが読み取ることができる任意の他の有形媒体を含む。
【0126】
コンピュータ可読媒体に加えて、命令またはデータは、実行のためにコンピュータシステム1100のプロセッサ1104に1つまたは複数の命令のシーケンスを提供するために、通信装置またはシステムに含まれる伝送媒体上の信号として提供され得る。例えば、通信装置は、命令およびデータを示す信号を有するトランシーバを含み得る。命令およびデータは、1つまたは複数のプロセッサに、本明細書における開示に概説される機能を実装させるように構成されている。データ通信伝送接続の代表的な例は、これらに限定されるものではないが、電話モデム接続、ワイドエリアネットワーク(WAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、赤外線データ接続、NFC接続、光通信接続などを含むことができる。
【0127】
本明細書に記載の方法論、フローチャート、図、および付随する開示は、コンピュータシステム1100をスタンドアロン装置として使用して、またはクラウドコンピューティングネットワークなどの共有コンピュータ処理リソースの分散ネットワーク上で実装され得ることを理解されたい。
【0128】
本明細書に記載の方法論は、用途に応じて様々な手段によって実装され得る。例えば、これらの方法論は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせで実装され得る。ハードウェア実装形態の場合、処理ユニットは、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子装置、本明細書において説明される機能を実施するように設計された他の電子ユニット、またはそれらの組み合わせ内に実装され得る。
【0129】
様々な実施形態では、本教示の方法は、C、C++、Pythonなどのような従来のプログラミング言語で書かれたファームウェアおよび/またはソフトウェアプログラムおよびアプリケーションとして実装されてもよい。ファームウェアおよび/またはソフトウェアとして実装される場合、本明細書に記載される実施形態は、コンピュータに上述した方法を実行させるためのプログラムが記憶された非一時的コンピュータ可読媒体上に実装され得る。本明細書において説明される様々なエンジンは、コンピュータシステム1100など、コンピュータシステムに提供され得、それによって、プロセッサ1104は、メモリ構成要素であるRAM1106、ROM1108、または記憶装置1110のうちの任意の1つ、あるいはそれらの組み合わせによって提供された命令、および入力装置1114を介して提供されたユーザ入力を受けて、これらのエンジンによって提供される分析および決定を実行することを理解されたい。
【0130】
VI.実施形態の記載
実施形態1.新生血管加齢性黄斑変性症(nAMD)と診断された対象についての治療を管理するための方法であって、対象の網膜のスペクトル領域光干渉断層撮影法(SD-OCT)イメージングデータを受信することと、SD-OCTイメージングデータを使用して複数の網膜特徴についての網膜特徴データを抽出することであって、複数の網膜特徴が、網膜液のセットまたは網膜層のセットのうちの少なくとも1つに関連付けられる、網膜特徴データを抽出することと、複数の網膜特徴についての網膜特徴データを使用して形成された入力データを第1の機械学習モデルに送信することと、第1の機械学習モデルを介して、入力データに基づいて、対象に投与される抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)治療についての治療レベルを予測することと、を含む、方法。
【0131】
実施形態2.網膜特徴データが、網膜液のセットの対応する網膜液に関連付けられた値を含み、値が、対応する網膜液の体積、高さ、および幅からなる群から選択される、実施形態1に記載の方法。
【0132】
実施形態3.網膜特徴データが、網膜層のセットの対応する網膜層についての値を含み、値が、対応する網膜層の最小厚さ、最大厚さ、および平均厚さからなる群から選択される、実施形態1または2に記載の方法。
【0133】
実施形態4.網膜液のセットの網膜液が、網膜内液(IRF)、網膜下液(SRF)、色素上皮剥離(PED)に関連付けられた液、または網膜下反射亢進物質(SHRM)からなる群から選択される、実施形態1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0134】
実施形態5.網膜層のセットの網膜層が、内境界膜(ILM)層、外網状層-ヘンレ線維層(OPL-HFL)、内境界網膜色素上皮剥離(IB-RPE)、外境界網膜色素上皮剥離(OB-RPE)、またはブルッフ膜(BM)からなる群から選択される、実施形態1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0135】
実施形態6.複数の網膜特徴についての網膜特徴データと、臨床的特徴のセットについての臨床データとを使用して入力データを形成することであって、臨床的特徴のセットが、最良矯正視力、脈拍、拡張期血圧、または収縮期血圧のうちの少なくとも1つを含む、入力データを形成すること、をさらに含む、実施形態1~5のいずれか一項に記載の方法。
【0136】
実施形態7.治療レベルを予測することが、治療レベルについての分類を高治療レベルまたは低治療レベルのいずれかとして予測することを含む、実施形態1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0137】
実施形態8.高治療レベルが、治療の初期段階後の選択された期間中の抗VEGF治療の16回以上の注入を示す、実施形態7に記載の方法。
【0138】
実施形態9.低治療レベルが、治療の初期段階後の選択された期間中の抗VEGF治療の5回以下の注入を示す、実施形態7に記載の方法。
【0139】
実施形態10.抽出することが、SD-OCTイメージングデータを自動的にセグメント化する第2の機械学習モデルを使用して生成されたセグメント化画像から複数の網膜特徴についての網膜特徴データを抽出することであって、複数の網膜特徴が、セグメント化画像において識別された網膜液セグメントのセットまたは網膜層セグメントのセットのうちの少なくとも1つに関連付けられる、網膜特徴データを抽出することを含む、実施形態1~9のいずれか一項に記載の方法。
【0140】
実施形態11.第2の機械学習モデルが深層学習モデルを含む、実施形態10に記載の方法。
【0141】
実施形態12.第1の機械学習モデルが、エクストリーム勾配ブースティング(XGBoost)アルゴリズムを含む、実施形態1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0142】
実施形態13.複数の網膜特徴が、網膜下液(SRF)に関連付けられた少なくとも1つの特徴および色素上皮剥離(PED)に関連付けられた少なくとも1つの特徴を含む、実施形態1~12のいずれか一項に記載の方法。
【0143】
実施形態14.SD-OCTイメージングデータが、1回の臨床来院中にキャプチャされたSD-OCT画像を含む、実施形態1~13のいずれか一項に記載の方法。
【0144】
実施形態15.新生血管加齢性黄斑変性症(nAMD)と診断された対象についての抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)治療を管理するための方法であって、抗VEGF治療についての治療レベルを予測するために、訓練用入力データを使用して機械学習モデルを訓練することであって、訓練用入力データが訓練用光干渉断層撮影法(OCT)イメージングデータを使用して形成される、機械学習モデルを訓練することと、訓練された機械学習モデルの入力データを受信することであって、入力データが複数の網膜特徴についての網膜特徴データを含む、訓練された機械学習モデルの入力データを受信することと、訓練された機械学習モデルを介して、入力データを使用して対象に投与される抗VEGF治療についての治療レベルを予測することと、を含む、方法。
【0145】
実施形態16.訓練用OCTイメージングデータおよび深層学習モデルを使用して入力データを生成することであって、深層学習モデルが、自動的に訓練用OCTイメージングデータをセグメント化するために使用されて、セグメント化画像を形成し、網膜特徴データが、セグメント化画像から抽出される、入力データを生成することをさらに含む、実施形態15に記載の方法。
【0146】
実施形態17.機械学習モデルが、治療レベルについての分類を高治療レベルまたは低治療レベルのいずれかとして予測するように訓練され、高治療レベルが、治療の初期段階後の選択された期間中の抗VEGF治療の16回以上の注入を示す、実施形態15または16に記載の方法。
【0147】
実施形態18.機械学習モデルが、治療レベルについての分類を高治療レベルまたは非高治療レベルのいずれかとして予測するように訓練され、高治療レベルが、治療の初期段階後の選択された期間中の抗VEGF治療の6回以上の注入を示す、実施形態15または16に記載の方法。
【0148】
実施形態19.新生血管加齢性黄斑変性症(nAMD)と診断された対象についての抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)治療を管理するシステムであって、
機械実行可能コードを含む機械可読媒体を含むメモリと、
メモリに接続されたプロセッサであって、機械実行可能コードを実行してプロセッサに、
対象の網膜のスペクトル領域光干渉断層撮影法(SD-OCT)イメージングデータを受信することと、
SD-OCTイメージングデータを使用して複数の網膜特徴についての網膜特徴データを抽出することであって、複数の網膜特徴が、網膜液のセットまたは網膜層のセットのうちの少なくとも1つに関連付けられる、網膜特徴データを抽出することと、
複数の網膜特徴についての網膜特徴データを使用して形成された入力データを第1の機械学習モデルに送信することと、
第1の機械学習モデルを介して、入力データに基づいて、対象に投与される抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)治療についての治療レベルを予測することと、を行わせるように構成されたプロセッサと、を備える、システム。
【0149】
実施形態20.機械実行可能コードが、プロセッサに、SD-OCTイメージングデータを自動的にセグメント化する第2の機械学習モデルを使用して生成されたセグメント化画像から複数の網膜特徴についての網膜特徴データを抽出することをさらに実行させ、複数の網膜特徴が、セグメント化画像において識別された網膜液セグメントのセットまたは網膜層セグメントのセットのうちの少なくとも1つに関連付けられる、実施形態19に記載のシステム。
【0150】
VII.さらなる考察
本文書のセクションおよびサブセクション間の見出しおよび小見出しは、読みやすさを改善するために含まれるに過ぎず、セクションおよびサブセクションをまたいで特徴を組み合わすことができないことを示唆するものではない。したがって、セクションおよびサブセクションは、別個の実施形態を説明するものではない。
【0151】
本開示のいくつかの実施形態は、1つまたは複数のデータプロセッサを含むシステムを含む。いくつかの実施形態では、システムは、1つまたは複数のデータプロセッサ上で実行されると、1つまたは複数のデータプロセッサに、本明細書に開示された1つまたは複数の方法の一部または全部および/または1つまたは複数のプロセスの一部または全部を実行させる命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。本開示のいくつかの実施形態は、1つまたは複数のデータプロセッサに、本明細書に開示された1つまたは複数の方法の一部または全部および/または1つまたは複数のプロセスの一部または全部を実行させるように構成された命令を含む非一時的機械可読記憶媒体において、有形に具現化されたコンピュータプログラム製品を含む。
【0152】
使用された用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、そのような用語および表現の使用において、示されて説明された特徴の均等物またはその一部を除外する意図はないが、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で様々な変更が可能であることが認識される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明は、実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示された概念の変更および変形は、当業者によってあてにされてもよく、そのような変更および変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあると見なされることを理解されたい。
【0153】
説明は、好ましい例示的な実施形態のみを提供し、本開示の範囲、適用可能性または構成を限定することを意図しない。むしろ、例示的な実施形態の説明は、様々な実施形態を実装するための有効な説明を当業者に提供する。添付の特許請求の範囲に記載の趣旨および範囲から逸脱することなく、要素(例えば、ブロック図または概略図の要素、フロー図の要素など)の機能および配置に様々な変更が加えられ得ることが理解される。
【0154】
実施形態の完全な理解を提供するために、以下の説明において具体的な詳細が与えられる。しかしながら、これらの具体的な詳細なしで実施形態が実施され得ることが理解されよう。例えば、回路、システム、ネットワーク、プロセス、および他の構成要素は、実施形態を不必要に詳細に不明瞭にしないために、ブロック図形式の構成要素として示されてもよい。他の例では、実施形態を不明瞭にすることを避けるために、周知の回路、プロセス、アルゴリズム、構造、および技術が不必要な詳細なしに示されてもよい。
【国際調査報告】