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特表2024-514812接合後ウェーハ歪みを低減するためのウェーハ接合装置及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】接合後ウェーハ歪みを低減するためのウェーハ接合装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20240327BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561351
(86)(22)【出願日】2022-04-06
(85)【翻訳文提出日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 US2022023625
(87)【国際公開番号】W WO2022225705
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】17/236,785
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514028776
【氏名又は名称】トーキョー エレクトロン ユーエス ホールディングス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】イップ,ネーサン
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA60
5F131CA07
5F131EA10
5F131EB01
5F131EB11
5F131EB72
(57)【要約】
本明細書では、接合後ウェーハ対の歪みを低減するためのウェーハ接合装置及び方法のさまざまな実施形態について説明する。より具体的には、本開示は、主に接合後ウェーハ対の中心及び/又は縁部内で生じる接合後ウェーハ歪みを低減するためのウェーハ接合装置及び方法の実施形態を提供する。本開示では、接合前ウェーハ形状の変動を補正することによって、接合後ウェーハ歪みが低減される。接合前ウェーハ形状の変動は、ウェーハチャックにハードウェア修正を加えることによって補正又は補償される。このような修正には、ウェーハチャックの表面高さ及び/又は温度の修正が含まれ得るが、これらに限定されるものではない。本明細書では、接合後ウェーハ対の中心及び/又は縁部付近の接合後ウェーハ歪みを低減するためのハードウェア修正が開示されているが、接合後ウェーハ対の他のエリア又はゾーン内の接合後ウェーハ歪みを低減するために同様の修正を加えることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハ接合装置であって、
第1のウェーハを保持するように構成された第1の取り付け表面を有する第1のチャックと、
第2のウェーハを保持するように構成された第2の取り付け表面を有する第2のチャックであって、さらに、中心領域、該中心領域の縁部から前記第2のチャックの外縁まで半径方向外側に延在する周辺領域、および前記第2のチャックの上面から垂直に延在し前記第2の取り付け表面を提供する複数の半径方向リブを有する、第2のチャックと、
を有し、
前記第2の取り付け表面は、前記中心領域内では平坦であり、前記周辺領域内では直線的に昇り傾斜し、または直線的に下り傾斜しており、その結果、前記周辺領域内の前記第2のチャックの高さは、前記中心領域内の前記第2のチャックの前記高さとは異なる、ウェーハ接合装置。
【請求項2】
前記第2の取り付け表面は、前記周辺領域内で直線的に下り傾斜しており、前記周辺領域内の前記第2のチャックの前記高さは、前記中心領域内の前記第2のチャックの前記高さよりも低い、請求項1に記載のウェーハ接合装置。
【請求項3】
前記中心領域の前記縁部と前記第2のチャックの前記外縁との間の高さの差は、-1μmから-5μmを含む範囲から選択される、請求項2に記載のウェーハ接合装置。
【請求項4】
前記複数の半径方向リブのうちの1つ以上の半径方向リブは、前記周辺領域内に配置され、前記高さの差は、前記1つ以上の半径方向リブの高さを低減することにより提供される、請求項3に記載のウェーハ接合装置。
【請求項5】
前記第2の取り付け表面は、前記周辺領域内で直線的に昇り傾斜しており、前記周辺領域内の前記第2のチャックの前記高さは、前記中心領域内の前記第2のチャックの前記高さよりも高い、請求項1に記載のウェーハ接合装置。
【請求項6】
前記中心領域の前記縁部と前記第2のチャックの前記外縁との間の高さの差は、+1μmから+5μmを含む範囲から選択される、請求項5に記載のウェーハ接合装置。
【請求項7】
前記複数の半径方向リブのうちの1つ以上の半径方向リブは、前記周辺領域内に配置され、前記高さの差は、前記1つ以上の半径方向リブの高さを増加させることにより提供される、請求項6に記載のウェーハ接合装置。
【請求項8】
ウェーハ接合装置であって、
第1のウェーハを保持するように構成された第1の取り付け表面を有する第1のチャックと、
第2のウェーハを保持するように構成された第2の取り付け表面を有する第2のチャックであって、さらに
前記第2のチャックの中心から前記第2のチャックの外縁まで半径方向外側に延在する複数の半径方向ゾーンであって、前記複数の半径方向ゾーンの第1のサブセットは、前記第2のチャックの中心領域内に配置され、前記複数の半径方向ゾーンの第2のサブセットは、前記中心領域の縁部から前記第2のチャックの外縁まで半径方向外側に延在する、前記第2のチャックの周辺領域内に配置される、複数の半径方向ゾーン、および
複数の半径方向リブであって、各々は、前記半径方向ゾーンのうちの2つの間の境界に配置され、前記第2のチャックの上面から垂直に延在し、前記第2の取り付け表面が提供される、複数の半径方向リブ
を有する、第2のチャックと、
を有し、
前記複数の半径方向リブの第1のサブセットは、前記複数の半径方向ゾーンの前記第1のサブセット内に配置され、
前記複数の半径方向リブの第2のサブセットは、前記複数の半径方向ゾーンの前記第2のサブセット内に配置され、
前記複数の半径方向リブの前記第2のサブセットの高さは、前記複数の半径方向リブの前記第1のサブセットの高さとは異なる、ウェーハ接合装置。
【請求項9】
前記第2の取り付け表面は、前記複数の半径方向リブの前記第1のサブセットにわたって平坦であり、または平面であり、
前記第2の取り付け表面は、前記複数の半径方向リブの前記第2のサブセットにわたって直線的に下り傾斜し、または直線的に昇り傾斜している、請求項8に記載のウェーハ接合装置。
【請求項10】
前記第2の取り付け表面は、前記複数の半径方向リブの前記第2のサブセットにわたって直線的に下り傾斜し、または下向きに角度付けされ、その結果、前記第2のチャックの前記外縁での前記第2のチャックの前記高さは、前記中心領域内の前記第2のチャックの前記高さよりも低い、請求項9に記載のウェーハ接合装置。
【請求項11】
前記第2のチャックの前記周辺領域内の高さの減少により、接合前の前記第2のウェーハの周辺部分は、下向きに曲がり、
前記第1のウェーハと前記第2のウェーハとの間の接合が完了する際には、前記第2のウェーハの前記周辺部分が上向きに曲がり、内側への歪みが提供され、これにより、前記第1のウェーハと前記第2のウェーハとの間の横方向の位置ずれが低減される、請求項10に記載のウェーハ接合装置。
【請求項12】
前記第2の取り付け表面は、前記複数の半径方向リブの前記第2のサブセットにわたって直線的に昇り傾斜し、または上向きに角度付けされ、その結果、前記第2のチャックの前記外縁での前記第2のチャックの前記高さは、前記中心領域内の前記第2のチャックの前記高さよりも高い、請求項9に記載のウェーハ接合装置。
【請求項13】
前記第2のチャックの前記周辺領域内の高さの増加により、接合前の前記第2のウェーハの周辺部分は、上向きに曲がり、
前記第1のウェーハと前記第2のウェーハとの間の接合が完了する際には、前記第2のウェーハの前記周辺部分が下向きに曲がり、外側への歪みが提供され、これにより、前記第1のウェーハと前記第2のウェーハとの間の横方向の位置ずれが低減される、請求項12に記載のウェーハ接合装置。
【請求項14】
前記第1のチャックおよび前記第2のチャックの少なくとも1つは、1つ以上の温度調整素子を有し、該温度調整素子は、前記複数の半径方向ゾーンの1つ以上の半径方向ゾーン内に埋設される、請求項8に記載のウェーハ接合装置。
【請求項15】
前記1つ以上の温度調整素子は、前記1つ以上の半径方向ゾーンと重なり合う前記第1のウェーハおよび/または前記第2のウェーハの領域に熱を伝達するように構成され、
該熱の伝達により、前記第1のウェーハおよび/または前記第2のウェーハの前記領域は、横方向に膨張し、外側への歪みが形成され、前記第1のウェーハと前記第2のウェーハとの間の横方向の位置ずれが低減される、請求項14に記載のウェーハ接合装置。
【請求項16】
前記1つ以上の温度調整素子は、前記1つ以上の半径方向ゾーンと重なり合う前記第1のウェーハおよび/または前記第2のウェーハの領域から熱を伝達するように構成され、
該熱の伝達により、前記第1のウェーハおよび/または前記第2のウェーハの前記領域は、横方向に収縮し、内側への歪みが形成され、前記第1のウェーハと前記第2のウェーハとの間の横方向の位置ずれが低減される、請求項14に記載のウェーハ接合装置。
【請求項17】
ウェーハ接合装置の上側チャックの取り付け表面に上側ウェーハを受容するステップと、
前記上側チャックに真空圧を供給して、前記上側チャックの前記取り付け表面に前記上側ウェーハを保持するステップと、
前記ウェーハ接合装置の下側チャックの取り付け表面に下側ウェーハを受容するステップであって、前記下側チャックは、中心領域、および該中心領域の縁部から前記下側チャックの外縁まで半径方向外側に延在する周辺領域を有し、前記下側チャックの前記取り付け表面は、前記中心領域内では平坦であり、前記周辺領域内では直線的に昇り傾斜し、または直線的に下り傾斜しており、その結果、前記周辺領域内の前記下側チャックの高さは、前記中心領域内の前記下側チャックの前記高さとは異なる、ステップと、
前記下側チャックに真空圧を供給して、前記下側チャックの前記取り付け表面に前記下側ウェーハを保持するステップであって、前記下側チャックに供給される前記真空圧により、前記下側ウェーハは、前記下側チャックの前記取り付け表面に付着し、その結果、前記下側ウェーハは、前記下側チャックの前記取り付け表面の形状により、前記上側ウェーハが前記下側ウェーハに接合される前に、予備歪みを受ける、ステップと、
前記上側ウェーハを前記下側ウェーハに接合して、接合後ウェーハ対を形成するステップであって、接合前の前記下側ウェーハの予備歪みにより、前記接合後ウェーハ対における歪みが低減され、前記上側ウェーハと前記下側ウェーハとの間の横方向の位置ずれが最小限に抑制される、ステップと、
を有する、方法。
【請求項18】
前記接合するステップは、
前記上側ウェーハの中心に機械的な力を印加して、前記上側ウェーハと前記下側ウェーハとの間の接合を開始するステップと、
前記上側ウェーハと前記下側ウェーハとの間の接合が完了する前に、前記上側チャックに供給された前記真空圧を除去するステップと、
前記上側ウェーハと前記下側ウェーハとの間の接合が完了し、前記接合後ウェーハ対が形成された後、前記下側チャックに供給された前記真空圧を除去するステップであって、前記接合後ウェーハ対は、前記下側チャックに供給された前記真空圧が除去されるまで、前記下側チャックに留まる、ステップと、
を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記接合するステップは、
前記上側ウェーハの中心に機械的な力を印加して、前記上側ウェーハと前記下側ウェーハとの間の接合を開始するステップと、
前記上側ウェーハと前記下側ウェーハとの間の接合が完了する前に、前記下側チャックに供給された前記真空圧を除去するステップと、
前記上側ウェーハと前記下側ウェーハとの間の前記接合が完了し、前記接合後ウェーハ対が形成された後、前記上側チャックに供給された前記真空圧を除去するステップであって、前記接合後ウェーハ対は、前記上側チャックに供給された前記真空圧が除去されるまで、前記上側チャックに留まる、ステップと、
を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記上側ウェーハと前記下側ウェーハとの間の接合力により、接合するステップが完了する前、および/または前記上側チャックに供給された前記真空圧が除去される前に、前記下側ウェーハと前記下側チャックとの間の真空封止が破れる、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月21日に出願された米国非仮特許出願第17/236,785号明細書の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、基板の処理に関する。特に、それは、接合後ウェーハ歪みを低減する改善されたチャック設計及びウェーハ接合プロセスを提供する。
【0003】
ウェーハ接合装置(又は「ウェーハボンダ」)は、界面接着を通して2枚のウェーハ(上側ウェーハ及び下側ウェーハ)を一緒に物理的に結合する。接合界面に沿った横方向の位置ずれは、接合後歪み誤差と呼ばれる。接合後歪み誤差は、接合前ウェーハ形状及びウェーハ接合プロセス(例えば、ツールレシピ)の関数であり、ウェーハ接合装置の性能を判定するために使用されることが多い。
【0004】
ウェーハ接合プロセスで使用されるウェーハには、2つの主なタイプ、すなわちデバイス/デバイス対及びデバイス/キャリア対がある。デバイスウェーハは、ウェーハの表面上にナノスケール電気回路が生成されたパターニングされたウェーハである。キャリアウェーハは通常、ウェーハの表面上に何もパターンがないブランクウェーハである。デバイス/デバイスウェーハ対の場合、接合界面に沿った任意の場所での2枚のウェーハ間の絶対的な横方向の位置ずれが重要であり、最先端技術では通常、約100nmであり得る。対照的に、デバイス/キャリアウェーハ対では、相対的な横方向の位置ずれがより重要である。キャリアウェーハにはパターンがないので、2枚の接合ウェーハ間の絶対的な横方向の位置ずれは、後続の処理工程でキャリアウェーハをパターニングするリソグラフィツールの能力によって影響を受ける。この位置ずれは、リソグラフィツールによって少なくとも部分的に補正することができる。それゆえ、デバイス/キャリアウェーハ対の相対的な横方向の位置ずれは、絶対的な位置ずれから、後続の処理工程で適用することができる補正を差し引いたものになる。後続の工程の補正能力に応じて、デバイス/キャリアウェーハ対間の相対的な横方向の位置ずれは、最先端技術では10nm未満であり得る。絶対的及び相対的な横方向の位置ずれを、以下の段落では「歪み」と呼ぶ。
【0005】
図1A図1C(従来技術)は、2枚のウェーハを一緒に接合するために使用され得る従来のウェーハ接合装置10及びプロセスを例示する。ウェーハ接合装置10は、上側ウェーハ16及び下側ウェーハ18をそれぞれ所定の位置に保持する上側チャック12及び下側チャック14を含む。場合によっては、ウェーハをチャック上に保持するために真空圧を使用することがある。図1Aに示すように、2枚のウェーハは、最初は小さな隙間(g)によって分離されている。次に、上側ウェーハ16の中心に加えられる機械的力によって場合によっては補助されて、上下のウェーハの中心が接触するように押し込まれる。例えば、図1Bに示すように、ストライカピン(又は接合ピン)19を使用して、上側ウェーハ16の中心に機械的力を加えることができ、それにより、上側ウェーハ16の中心が下側ウェーハ18の中心と接触するまで、上側ウェーハが湾曲又は屈曲する。この接触により、上下のウェーハの中心から半径方向外側に自発的に伝播する接合フロントが開始される。接触表面積が増加するにつれて、ウェーハ間の初期の隙間(g)を閉じるために、上下のウェーハは弾性変形する。上側チャック12への真空圧がオフになる。接触表面積が十分大きくなったとき、ウェーハの変形又は所定のレシピ設定のいずれかに起因して、上側チャック12と上側ウェーハ16との間の真空封止が破れる。接合フロントは、2枚のウェーハが完全に接合されるまで外側に伝播し続ける。接合が完了すると、図1Cに示すように、ストライカピン19が後退し、下側チャック14への真空圧がオフになる。次いで、接合後のウェーハ対16/18をウェーハ接合装置10から解放し、歪み特性評価のために計測ツールに送り、及び/又は次の処理工程に続けることができる。
【0006】
場合によっては、図1A図1Cに示す従来のウェーハ接合装置10及びプロセスでは、接合後ウェーハ対16/18の中心及び/又は縁部(例えば、最も外側の15mm以内)付近で、接合後ウェーハ歪みが不良となる可能性がある。具体的には、図1Cは、接合後ウェーハ対の縁部又は外周付近における接合後ウェーハ対16/18の上方への屈曲を例示している。図1Cに示す上方への屈曲は、従来のウェーハ接合プロセスを使用して2枚のウェーハを一緒に接合した後に生じる可能性のある接合後ウェーハ歪み(例えば、外側への歪み)の一例である。従来のウェーハ接合プロセスを使用するとき、接合後ウェーハ対の他の領域内(例えば、中心付近)でも歪みが生じる可能性がある。場所に関係なく、接合後ウェーハ歪みは、歪みのエリアで2枚のウェーハ間に横方向のシフト(又は横方向の位置ずれ)を引き起こす。
【0007】
図1Cに示す接合後ウェーハ歪みは、多くの理由に起因する可能性がある。第1に、接合前ウェーハは、通常、縁部付近で仕様が異なる。例えば、ウェーハによっては、テーパ状の縁部を有するか、又はウェーハの縁部若しくは外周付近(例えば、最も外側の3mm)の厚さがより薄くなっている場合がある。このことは、(ウェーハの残りの部分と比較して)縁部/縁部付近のウェーハの機械的性能に差をもたらし、それが接合後ウェーハ対の不良な歪みをもたらす可能性がある。加えて、接合前ウェーハは、デバイス歩留まりを向上させるために、他の処理工程(例えば、異なるパターニング配置)で異なる方法で処理される場合がある。プロセスの差により、縁部又は外周付近で接合前ウェーハ形状が異なることが多い。接合前ウェーハ形状の変動は、接合後ウェーハ歪みの別の原因である。さらにまた、ウェーハ接合プロセスは、チャック真空封止が破られる前と後の2段階プロセスとして考えることができる。チャックとウェーハとの間の真空封止が破られると、ウェーハ接合装置からの歪み制御がより少なくなり、結果的に縁部で歪みが不良となる可能性がある。
【0008】
図2は、例えば図1A図1Cを参照して上に論じたように、従来のウェーハ接合装置及びプロセスを使用して2枚のウェーハを一緒に接合するときの、接合後ウェーハ対の歪み(すなわち、接合後ウェーハ歪み)を半径(r)の関数として例示するグラフである。図2に示すグラフでは、歪み20は、接合後ウェーハ対の縁部付近で著しく増加する。いくつかのウェーハ接合プロセスでは、接合後ウェーハ対の縁部付近の歪み20は、ウェーハ対の残りの部分にわたる歪み20よりも、最大で例えば20nm悪化することがある。ウェーハ縁部の歪みが改善されるとき、接合後歪み誤差は、例えば15%以上改善することができると推定される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書では、接合後ウェーハ対の歪みを低減するためのウェーハ接合装置及び方法のさまざまな実施形態について説明する。多くの場合、図2に示し上に論じたように、接合後ウェーハ歪みは、接合後ウェーハ対の中心付近及び/又は縁部付近でより悪化する可能性がある。このような理由で、本開示は、主に接合後ウェーハ対の中心及び/又は縁部内で生じる接合後ウェーハ歪みを低減するためのウェーハ接合装置及び方法の実施形態を提供する。本開示では、接合前ウェーハ形状の変動を補正することによって、接合後ウェーハ歪みが低減される。接合前ウェーハ形状の変動は、ウェーハチャックにハードウェア修正を加えることによって補正又は補償される。このような修正には、ウェーハチャックの表面高さ及び/又は温度の修正が含まれ得るが、これらに限定されるものではない。本明細書では、接合後ウェーハ対の中心及び/又は縁部付近の接合後ウェーハ歪みを低減するためのハードウェア修正が開示されているが、接合後ウェーハ対の他のエリア又はゾーン内の接合後ウェーハ歪みを低減するために同様の修正を加えることができる。
【0010】
一実施形態によれば、ウェーハ接合装置は、一般に、第1のウェーハを保持するように構成された第1の取り付け面を備える第1のチャックと、第2のウェーハを保持するように構成された第2の取り付け面を備える第2のチャックとを含み得る。この実施形態では、第2のチャックは、中心領域と、中心領域の縁部から第2のチャックの外縁まで半径方向外側に延びる周辺領域と、第2のチャックの上面から垂直に延びて第2の取り付け面を提供する複数の半径方向リブとを含み得る。第2の取り付け面は、中心領域内で平坦であり、周辺領域内で直線的に傾斜又は直線的に下り傾斜しており、したがって、周辺領域内の第2のチャックの高さは、中心領域内の第2のチャックの高さと異なる。
【0011】
いくつかの実施形態では、第2の取り付け面は、周辺領域内で直線的に下り傾斜していてもよく、したがって、周辺領域内の第2のチャックの高さは、中心領域内の第2のチャックの高さよりも低い。いくつかの実施形態では、中心領域の縁部と第2のチャックの外縁との間の高さ差は、例えば、-1μm~-5μmを含む範囲から選択され得る。いくつかの実施形態では、複数の半径方向リブのうちの1つ又は複数の半径方向リブは、周辺領域内に位置し得る。いくつかの実施形態では、高さ差は、周辺領域内に位置する1つ又は複数の半径方向リブの高さを低減することによって提供される。
【0012】
いくつかの実施形態では、第2の取り付け面は、周辺領域内で直線的に傾斜していてもよく、したがって、周辺領域内の第2のチャックの高さは、中心領域内の第2のチャックの高さよりも高い。いくつかの実施形態では、中心領域の縁部と第2のチャックの外縁との間の高さ差は、例えば、+1μm~+5μmを含む範囲から選択され得る。いくつかの実施形態では、複数の半径方向リブのうちの1つ又は複数の半径方向リブは、周辺領域内に位置し得る。いくつかの実施形態では、高さ差は、周辺領域内に位置する1つ又は複数の半径方向リブの高さを増加させることによって提供される。
【0013】
別の実施形態によれば、ウェーハ接合装置は、一般に、第1のウェーハを保持するように構成された第1の取り付け面を備える第1のチャックと、第2のウェーハを保持するように構成された第2の取り付け面を備える第2のチャックとを含み得る。前の実施形態と同様に、第2のチャックは、中心領域と、中心領域の縁部から第2のチャックの外縁まで半径方向外側に延びる周辺領域とを含むこともできる。しかしながら、この実施形態では、第2のチャックは、第2のチャックの中心から第2のチャックの外縁まで半径方向外側に延びる複数の半径方向ゾーンをさらに含み得る。複数の半径方向ゾーンの第1のサブセットは、第2のチャックの中心領域内に位置し得る。複数の半径方向ゾーンの第2のサブセットは、第2のチャックの周辺領域内に位置し得る。半径方向ゾーンのうちの1つ又は複数のゾーン内の第2のチャックの高さは、他の半径方向ゾーン内の第2のチャックの高さと異なり得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、第2のチャックは、それぞれが半径方向ゾーンのうちの2つのゾーン間の境界に位置し、第2のチャックの上面から垂直に延びて第2の取り付け面を提供する、複数の半径方向リブをさらに含み得る。複数の半径方向リブの第1のサブセットは、複数の半径方向ゾーンの第1のサブセット内に位置し得る。複数の半径方向リブの第2のサブセットは、複数の半径方向ゾーンの第2のサブセット内に位置し得る。複数の半径方向リブの第2のサブセットの高さは、複数の半径方向リブの第1のサブセットの高さと異なり得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、第2の取り付け面は、複数の半径方向リブの第1のサブセットにわたって平坦又は平面であり、複数の半径方向リブの第2のサブセットにわたって直線的に下り傾斜又は直線的に傾斜していてもよい。
【0016】
一実施形態では、例えば、第2の取り付け面は、複数の半径方向リブの第2のサブセットにわたって直線的に下り傾斜するか、又は下向きに角度を付けられていてもよく、したがって、第2のチャックの外縁における第2のチャックの高さは、中心領域内の第2のチャックの高さよりも低い。このような実施形態では、第2のチャックの周辺領域内の高さ減少により、接合前に第2のウェーハの周辺部分が下方向に屈曲する可能性がある。第1のウェーハと第2のウェーハとの間の接合が完了するとき、第2のウェーハの周辺部分は、上方向に屈曲して内側への歪みを提供することができ、それにより、第1のウェーハと第2のウェーハとの間の横方向の位置ずれが低減される。
【0017】
別の実施形態では、第2の取り付け面は、複数の半径方向リブの第2のサブセットにわたって直線的に傾斜するか、又は上向きに角度を付けられていてもよく、したがって、第2のチャックの外縁における第2のチャックの高さは、中心領域内の第2のチャックの高さよりも高い。このような実施形態では、第2のチャックの周辺領域内の高さ増加により、接合前に第2のウェーハの周辺部分が上方向に屈曲する可能性がある。第1のウェーハと第2のウェーハとの間の接合が完了するとき、第2のウェーハの周辺部分は、下方向に屈曲して外側への歪みを提供することができ、それにより、第1のウェーハと第2のウェーハとの間の横方向の位置ずれが低減される。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1のチャック及び第2のチャックのうちの少なくとも1つが、複数の半径方向ゾーンのうちの1つ又は複数の半径方向ゾーン内に埋め込まれた1つ又は複数の温度調整素子を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の温度調整素子は、1つ又は複数の半径方向ゾーンに重なる第1のウェーハ及び/又は第2のウェーハの領域に熱を伝達するように構成されてもよく、これにより、第1のウェーハ及び/又は第2のウェーハの領域は、横方向に膨張し、第1のウェーハと第2のウェーハとの間の横方向の位置ずれを低減する外側への歪みを生成する。他の実施形態では、1つ又は複数の温度調整素子は、1つ又は複数の半径方向ゾーンに重なる第1のウェーハ及び/又は第2のウェーハの領域から熱を伝達するように構成されてもよく、これにより、第1のウェーハ及び/又は第2のウェーハの領域は、横方向に収縮し、第1のウェーハと第2のウェーハとの間の横方向の位置ずれを低減する内側への歪みを生成する。
【0019】
別の実施形態によれば、接合後ウェーハ対の歪みを低減するための方法が提供される。方法は、一般に、ウェーハ接合装置の上側チャックの取り付け面上に上側ウェーハを受け入れることと、上側チャックに真空圧を供給して、上側チャックの取り付け面上に上側ウェーハを保持することとを含み得る。方法は、ウェーハ接合装置の下側チャックの取り付け面上に下側ウェーハを受け入れることと、下側チャックに真空圧を供給して、下側チャックの取り付け面上に下側ウェーハを保持することとをさらに含み得る。方法は、上側ウェーハを下側ウェーハに接合して、接合後ウェーハ対を形成することをさらに含み得る。
【0020】
開示された方法のいくつかの実施形態では、下側チャックは、中心領域と、中心領域の縁部から下側チャックの外縁まで半径方向外側に延びる周辺領域とを備え得る。下側チャックの取り付け面は、中心領域内で平坦であり、周辺領域内で直線的に傾斜又は直線的に下り傾斜していてもよく、したがって、周辺領域内の下側チャックの高さは、中心領域内の下側チャックの高さと異なる。下側チャックに真空圧が供給されるとき、下側チャックに供給される真空圧により、下側ウェーハが下側チャックの取り付け面に付着し、したがって、上側ウェーハが下側ウェーハに接合される前に、下側チャックの取り付け面の形状によって下側ウェーハが予備歪みを受ける。接合前の下側ウェーハの予備歪みにより、有利には、接合後ウェーハ対の歪みが低減され、上側ウェーハと下側ウェーハとの間の横方向の位置ずれが最小限に抑えられる。
【0021】
開示された方法のいくつかの実施形態では、上側チャックは、中心領域と、中心領域の縁部から上側チャックの外縁まで半径方向外側に延びる周辺領域とを備え得る。上側チャックの取り付け面は、中心領域内で平坦であり、周辺領域内で直線的に傾斜又は直線的に下り傾斜していてもよく、したがって、周辺領域内の上側チャックの高さは、中心領域内の上側チャックの高さと異なる。上側チャックに真空圧が供給されるとき、上側チャックに供給される真空圧により、上側ウェーハが上側チャックの取り付け面に付着し、したがって、下側ウェーハが上側ウェーハに接合される前に、上側チャックの取り付け面の形状によって下側ウェーハが予備歪みを受ける。接合前の上側ウェーハの予備歪みにより、有利には、接合後ウェーハ対の歪みが低減され、上側ウェーハと下側ウェーハとの間の横方向の位置ずれが最小限に抑えられる。
【0022】
いくつかの実施形態では、接合工程は、上側ウェーハの中心に機械的力を加えて、上側ウェーハと下側ウェーハとの間の接合を開始することと、上側ウェーハと下側ウェーハとの間の接合が完了する前に、上側チャックに供給された真空圧を除去することと、上側ウェーハと下側ウェーハとの間の接合が完了して接合後ウェーハ対が形成された後に、下側チャックに供給された真空圧を除去することとを含み得る。このような実施形態では、接合後ウェーハ対は、下側チャックに供給された真空圧が除去されるまで、下側チャック上に留まることができる。
【0023】
他の実施形態では、接合工程は、上側ウェーハの中心に機械的力を加えて、上側ウェーハと下側ウェーハとの間の接合を開始することと、上側ウェーハと下側ウェーハとの間の接合が完了する前に、下側チャックに供給された真空圧を除去することと、上側ウェーハと下側ウェーハとの間の接合が完了して接合後ウェーハ対が形成された後に、上側チャックに供給された真空圧を除去することとを含み得る。このような実施形態では、上側ウェーハと下側ウェーハとの間の接合力により、接合が完了する前、及び/又は上側チャックに供給された真空圧が除去される前に、下側ウェーハと下側チャックとの間の真空封止が破れる。このような実施形態では、接合後ウェーハ対は、上側チャックに供給された真空圧が除去されるまで、上側チャック上に留まることができる。
【0024】
異なる又は追加の特徴、変形形態、及び実施形態も実装することができ、関連システム及び方法も同様に利用することができる。
【0025】
本発明及びその利点のより完全な理解は、添付図面と併用される以下の説明を参照することによって得ることができ、図面では、同様の参照番号が同様の特徴を示す。しかしながら、添付図面は、開示される概念の例示的な実施形態のみを例示するものであり、したがって、開示される概念が他の均等に有効な実施形態も許容し得るため、範囲を限定するものとみなすべきでないことに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A】(従来技術)2枚のウェーハを一緒に接合するための従来のウェーハ接合プロセスを例示する。
図1B】(従来技術)2枚のウェーハを一緒に接合するための従来のウェーハ接合プロセスを例示する。
図1C】(従来技術)2枚のウェーハを一緒に接合するための従来のウェーハ接合プロセスを例示する。
図2】(従来技術)従来のウェーハ接合装置及びプロセスを使用して2枚のウェーハを一緒に接合するときの、接合後ウェーハ対の歪みを半径(r)の関数として例示するグラフである。
図3】本明細書で説明した技術を利用することができる例示的なウェーハ接合装置の側面図である。
図4A-4C】図3に示す上側チャック及び下側チャックサブアセンブリを通る断面図であり、例示的なウェーハ接合装置によって行われ得るさまざまなウェーハ接合プロセス工程を例示している。
図5】本明細書で説明した技術を利用することができるウェーハチャックの平面図である。
図6A】本開示の第1の実施形態による可変高さウェーハチャックの側面図である。
図6B】本開示の第2の実施形態による可変高さウェーハチャックの側面図である。
図7A】本開示の第3の実施形態による可変高さウェーハチャックの側面図である。
図7B】本開示の第4の実施形態による可変高さウェーハチャックの側面図である。
図8A図6A又は図6Bに示す可変高さウェーハチャックを使用して2枚のウェーハを一緒に接合するための改善されたウェーハ接合プロセスを例示する。
図8B図6A又は図6Bに示す可変高さウェーハチャックを使用して2枚のウェーハを一緒に接合するための改善されたウェーハ接合プロセスを例示する。
図8C図6A又は図6Bに示す可変高さウェーハチャックを使用して2枚のウェーハを一緒に接合するための改善されたウェーハ接合プロセスを例示する。
図8D図6A又は図6Bに示す可変高さウェーハチャックを使用して2枚のウェーハを一緒に接合するための改善されたウェーハ接合プロセスを例示する。
図8E図6A又は図6Bに示す可変高さウェーハチャックを使用して2枚のウェーハを一緒に接合するための改善されたウェーハ接合プロセスを例示する。
図9図8A図8Eに示す改善されたウェーハ接合プロセスを使用して2枚のウェーハを一緒に接合するときの、接合後ウェーハ対の歪みを半径(r)の関数として例示するグラフである。
図10】本開示の第5の実施形態による、ウェーハチャックの1つ又は複数のゾーン内に温度調整手段を有するウェーハチャックの側面図である。
図11図10に示すウェーハチャックを図8A図8Eに示すウェーハ接合プロセスで使用して2枚のウェーハを一緒に接合するときの、ウェーハ温度を半径(r)の関数として例示するグラフである。
図12】接合後ウェーハ対の歪みを低減するための方法の一実施形態を例示するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
シリコンウェーハは、一般的に、例えば最大25枚のウェーハが入っているロットで処理される。通常、ウェーハは、処理条件、固有のウェーハ変形、及び他のそれほど明白でない要因に起因して、ロットごとに異なる。この変動は、局所的である可能性があり、ロジックデバイスでは形状変動の1つの標準偏差が1μm~最大5μmに及び、1つのロットの平均表面マップが別のロットと異なることを意味する。変動はまた、全体的なものになる可能性があり、これは、山から谷までの変動が、ロットごとに10μmのオーダになる可能性があることを意味する。ロット間ウェーハ変動は、接合後ウェーハ歪みの大きな要因である。本開示では、接合前ウェーハ形状の変動を補正することによって、ロット間ウェーハ変動が最小限に抑えられる。
【0028】
接合前ウェーハ形状の変動は、接合後ウェーハ対の2枚のウェーハ間に作り出される面内歪み又は横方向の位置ずれと直接相関関係がある。一例では、1μmの接合前ウェーハ形状変動は、約5nmの歪みをもたらす可能性がある。接合後ウェーハ対の歪みの量(すなわち、接合後歪み誤差)は、ウェーハ接合装置及びプロセスの性能を判定するために使用されることが多い重要な測定基準である。それゆえ、一般に、接合後ウェーハ対の歪みの量を低減することが望ましい。
【0029】
本開示は、接合後ウェーハ対の歪みを低減するためのウェーハ接合装置及び方法のさまざまな実施形態を提供する。開示された実施形態では、接合前ウェーハ形状の変動を補正することによって、接合後ウェーハ歪みが低減される。本明細書では、接合前ウェーハ形状の変動を補正するためにさまざまなハードウェア改良が使用される。ハードウェアの設計は、特定のウェーハ接合プロセスの物理モデリングによって推進される。物理モデルは、接合後ウェーハ対内の不良な歪みエリアを打ち消すために、特定の場所(例えば、ウェーハの縁部及び/又は中心付近)での独自のハードウェア設計にガイドラインを提供する。
【0030】
多くの場合、図2に示し上に論じたように、接合後ウェーハ歪みは、ウェーハの中心付近(例えば、ストライカ接合ピン設計に起因して)及び/又はウェーハの縁部付近でより悪化する可能性がある。このような理由で、本開示は、主にウェーハの中心及び/又は縁部内で生じる接合後ウェーハ歪みを低減するためのウェーハ接合装置及び方法のさまざまな実施形態を提供する。このような実施形態には、ウェーハチャックの表面高さ及び/又は温度の修正が含まれ得るが、これらに限定されるものではない。本明細書では、接合後ウェーハ対の中心及び/又は縁部付近の接合後ウェーハ歪みを低減するためのハードウェア修正が開示されているが、当業者であれば、接合後ウェーハ対の他のエリア又はゾーン内の接合後ウェーハ歪みを低減するために、どのように同様の修正を加えることができるかを認識するであろう。
【0031】
図3は、本明細書で説明した技術を利用することができるウェーハ接合装置100の一例を例示している。いくつかの実施形態では、図3に示すウェーハ接合装置100は、ウェーハ接合システム又は別の基板処理システム内に含まれるウェーハ接合モジュールであり得る。他の実施形態では、図3に示すウェーハ接合装置100は、2枚のウェーハを一緒に接合するように構成されたスタンドアロンモジュールであり得る。例示的なウェーハ接合装置100が例示を目的として示されているが、本明細書で説明する技術は、図3に示す特定の構成に限定されないことが認識される。
【0032】
ウェーハ接合装置100は、第1のウェーハ(W1)及び第2のウェーハ(W2)などの2枚の半導体基板を一緒に接合するために使用される。いくつかの実施形態では、第1のウェーハW1及び第2のウェーハW2は、実質的に同じ直径(例えば、一実施形態では300mm)を有し得る。いくつかの実施形態では、第1のウェーハW1は、複数の電子回路が形成されているシリコンウェーハ又は化合物半導体ウェーハなどの半導体基板(すなわち、デバイスウェーハ)であってもよく、第2の基板W2は、電子回路が形成されていないベアウェーハ(すなわち、キャリアウェーハ)であってもよい。他の実施形態では、第1のウェーハW1及び第2のウェーハW2は、それぞれデバイスウェーハであってもよい。以下の説明では、第1のウェーハW1を代替的に「上側ウェーハ」と呼ぶ場合があり、第2のウェーハW2を代替的に「下側ウェーハ」と呼ぶ場合がある。第1のウェーハW1が第2のウェーハW2に接合されるとき、結合された基板を「接合後ウェーハ対」と呼ぶ場合がある。
【0033】
図3に示すように、ウェーハ接合装置100は、第1のウェーハW1を第2のウェーハW2に接合するための処理チャンバ105を含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2のウェーハは、処理アーム110によって処理チャンバ105に届けることができ、この処理アーム110は、処理チャンバの側壁内に設けられた開口部115を介して処理チャンバ105に/処理チャンバ105からウェーハを移送するように構成され得る。処理チャンバ105に/処理チャンバ105からウェーハを移送するために、処理アーム110は、垂直方向(Z方向)及び水平方向(X方向及びY方向)に移動するように構成され得る。場合によっては、処理アーム110はまた、第1のウェーハW1及び第2のウェーハW2を処理チャンバ105に移送し、接合後ウェーハ対を処理チャンバ105から移送するために、垂直軸の周りを枢動自在であってもよい。
【0034】
処理チャンバ105は、一般に、第1のウェーハ(又は上側ウェーハ)W1を受け入れて保持するための上側チャック120と、第2のウェーハ(又は下側ウェーハ)W2を受け入れて保持するための下側チャック125とを含む。上側チャック120は、図3に示すように、複数の支柱132によって処理チャンバ105の天井に結合され得る支持部材130によって支持される。図4A図4Cを参照して以下により詳細に説明するように、孔134が支持部材130及び上側チャック120内に形成され、支持部材130及び上側チャック120を貫通して垂直に延びる。孔134は、上側チャック120によって保持される上側ウェーハW1の中心領域又はゾーンに対応するように位置決めされる。ストライカ140の接合ピンが、孔134を通して挿入され、ウェーハ接合プロセス中に上側ウェーハW1に機械的力を与えるために使用される。
【0035】
図3に示すウェーハ接合装置100では、下側チャック125は、下側チャック125を水平方向に並進運動又は移動させるために下側チャック125の下方に設けられた第1の下側チャックムーバ135及び第2の下側チャックムーバ150によって支持されている。例えば、第1の下側チャックムーバ135の底面は、第1の水平方向(例えば、X軸方向)に延びるように、第2の下側チャックムーバ150の上面に取り付けられた第1の一対のレール137に結合されている。同様に、第2の下側チャックムーバ150の底面は、第2の水平方向(例えば、Y軸方向)に延びるように、載置台155に取り付けられた第2の一対のレール152に結合されている。載置台155は、図3に示す実施形態では、処理チャンバ105の底部に結合されている。
【0036】
図3に示すように配置されるとき、第1の下側チャックムーバ135は、第1の一対のレール137に沿って移動して、下側チャック125(及び下側ウェーハW2)をX方向に並進運動させるように構成される。同様に、第2の下側チャックムーバ150は、第2の一対のレール152に沿って移動して、下側チャック125(及び下側ウェーハW2)をY方向に並進運動させるように構成される。上側ウェーハW1及び下側ウェーハW2が上側チャック及び下側チャックに提供された後、第1の下側チャックムーバ135及び第2の下側チャックムーバ150は、下側ウェーハW2が上側ウェーハW1と位置合わせされるまで、下側チャック125(及び下側ウェーハW2)をX方向及び/又はY方向に並進運動させるために使用され得る。いくつかの実施形態では、第1の下側チャックムーバ135及び第2の下側チャックムーバ150はまた、下側チャック125をZ方向に並進運動させるために使用されてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、上側チャック120及び下側チャック125は、真空チャックであってもよい。上側ウェーハW1及び下側ウェーハW2が処理チャンバ105に移送されると、真空ポンプ160をオンにして、上側ウェーハW1を上側チャック120上に保持し、下側ウェーハW2を下側チャック125上に保持するのに十分な真空圧(すなわち負圧)を提供することができる。図4A図4Cを参照して以下により詳細に説明するように、上側チャック120及び下側チャック125は、それぞれ、複数の孔を備えた取り付け面を有することができ、それらの孔を通してチャックの取り付け面とウェーハの裏面との間に真空圧が生成される。ウェーハが真空チャック上に載置され、真空ポンプ160がオンにされるとき、真空ポンプ160によって提供される真空圧により、ウェーハの裏面とチャックの取り付け面との間に真空封止が生成され、ウェーハがチャック上に保持される。真空チャックの文脈で説明したが、当業者であれば、本明細書に説明する技術を利用しながら、図3に示す上側チャック120及び下側チャック125を実装するために、他のタイプのチャック(例えば、静電チャック、磁気チャックなど)を使用することもできることを認識するであろう。
【0038】
図4A図4Cは、図3に示す上側チャック及び下側チャックのサブアセンブリを通る断面図である。図4Aに示すように、上側チャックサブアセンブリ(例えば、上側チャック120及び支持部材130を備える)内に設けられたストライカ140には、接合ピン144、アクチュエータユニット142及び直線移動機構143が装備されている。接合ピン144は、アクチュエータユニット142によって支持され、上側チャックサブアセンブリ内に形成された孔134を貫通して垂直方向に沿って延びる、柱状部材である。
【0039】
アクチュエータユニット142は、直線移動機構143によって支持されている。直線移動機構143は、例えばモータを含み得る駆動ユニット(図示せず)によって、アクチュエータユニット142及び接合ピン144を垂直方向に上下に移動させる。アクチュエータユニット142は、垂直下方向に一定の圧力を発生させるように構成される。一例では、アクチュエータユニット142は、例えば、電空レギュレータ(図示せず)から供給される空気を使用して、一定の圧力を発生させることができる。このようにして、アクチュエータユニット142は、接合ピン144が上側ウェーハW1の中心部分と接触するときに、上側ウェーハW1の中心部分に加わる機械的力を制御することができる。上述のように構成されるとき、ストライカ140は、直線移動機構143によるアクチュエータユニット142の移動と、アクチュエータユニット142によって接合ピン144から上側ウェーハW1に及ぼされる機械的力とを制御する。
【0040】
図4A図4Cは、ウェーハ接合装置100によって行われ得るさまざまなウェーハ接合プロセス工程を例示している。図4Aに示すように、上側ウェーハW1及び下側ウェーハW2は、それぞれ、上側チャック120及び下側チャック125によって保持される。図3及び図4Aに示す実施形態では、上側ウェーハW1の裏面が、真空ポンプ160によって提供される真空圧165を介して上側チャック120の取り付け面122に保持される。同様に、下側ウェーハW2の裏面が、真空ポンプ160によって提供される真空圧165を介して下側チャック125の取り付け面127に保持される。2枚のウェーハは、最初は小さな隙間(g)によって分離されている。
【0041】
図4Bに示すように、ストライカ140は、上側ウェーハW1の中心に機械的力を加え、それにより、上側ウェーハW1の中心が下側ウェーハW2の中心と接触するまで、上側ウェーハW1が湾曲又は屈曲する。この接触により、上下のウェーハの中心から半径方向外側に自発的に伝播する接合フロントが開始される。接触表面積が増加するにつれて、2枚のウェーハ間の初期の隙間(g)を閉じるために、上下のウェーハは弾性変形する。
【0042】
いくつかの実施形態では、図4Cに示すように、下側チャック125への真空圧165が除去される前に、上側チャック120に供給される真空圧165をオフにすることができる。上側チャック120への真空圧165が最初にオフにされ、接触表面積が十分に大きいとき、上側チャック120と上側ウェーハW1との間の真空封止が破れ、上側ウェーハW1の周辺部分が下側ウェーハW2の周辺部分に向かって落下し、2枚のウェーハが完全に接合されるまで接合フロントが外側に伝播し続ける。接合が完了すると、ストライカ140が後退し、下側チャック125への真空圧165がオフになり、接合後ウェーハ対W1/W2がウェーハ接合装置100から解放される。
【0043】
他の実施形態(図4Cに図示せず)では、上側チャック120への真空圧165が除去される前に、下側チャック125に供給される真空圧165をオフにすることができる。下側チャック125への真空圧165が最初にオフにされ、接触表面積が十分に大きいとき、下側チャック125と下側ウェーハW2との間の真空封止が破れ、下側ウェーハW2の周辺部分が上側ウェーハW1の周辺部分に向かって持ち上がり、2枚のウェーハが完全に接合されるまで接合フロントが外側に伝播し続ける。この実施形態では、上側ウェーハW1と下側ウェーハW2との間の接合力は、重力に逆らって作用して、下側ウェーハW2を上側チャック120上に保持された上側ウェーハW1に接合することができる。接合が完了すると、ストライカ140が後退し、上側チャック120への真空圧165がオフになり、接合後ウェーハ対W1/W2がウェーハ接合装置100から解放される。
【0044】
上に指摘したように、従来のウェーハ接合システム及び方法を使用して2枚のウェーハを一緒に接合するとき、接合後ウェーハ対は、大きな歪み及び横方向の位置ずれを呈することが多い。多くの場合、図2に示し上に論じたように、このようなシステム及び方法で発生した接合後ウェーハ歪みは、接合後ウェーハ対の中心付近及び/又は縁部付近でより悪化する可能性がある。このような理由で、本開示は、主に接合後ウェーハ対の中心及び/又は縁部内で生じる接合後ウェーハ歪みを低減するためのウェーハ接合システム及び方法のさまざまな実施形態を提供する。より具体的には、本開示は、接合前ウェーハ形状の変動を補正することによって接合後ウェーハ歪みを低減するさまざまなハードウェア改良を提供する。本明細書では、接合後ウェーハ対の中心及び/又は縁部付近の接合後ウェーハ歪みを低減するためのハードウェア修正が開示されているが、当業者であれば、接合後ウェーハ対の他のエリア又はゾーン内の接合後ウェーハ歪みを低減するために、どのように同様の修正を加えることができるかを認識するであろう。
【0045】
いくつかの実施形態では、接合後ウェーハ歪みは、下側チャック125にハードウェア修正を加えることによって低減される。このような修正には、下側チャック125の表面高さ及び/又は温度の修正が含まれ得るが、これらに限定されるものではない。しかしながら、本明細書で説明した技術は、下側チャック125に厳密に限定されるものではない。いくつかの実施形態では、同様のハードウェア修正を追加的又は代替的に上側チャック120に加えることができる。
【0046】
図5図7は、本明細書で説明した技術を利用することができるウェーハチャックのさまざまな実施形態を例示している。特に、図5は、ウェーハチャックの中心(C)からウェーハチャックの外縁(E)まで半径方向外側に延びる複数の半径方向ゾーン(Z1~Z5)を備えるウェーハチャック200の上面図を例示している。いくつかの実施形態では、図5に示すように、各半径方向ゾーン(Z1~Z5)の境界に半径方向リブ(R1~R5)を設けることができる。ウェーハチャック200設計内に含まれるとき、半径方向リブ(R1~R5)は、ウェーハチャックの上面から垂直方向に延びて、ウェーハ(W)用の取り付け面を提供する。さまざまな実施形態(例えば、図6B図7B及び図10参照)で示し、説明したが、半径方向リブ(R1~R5)は、本明細書で説明した技術に厳密には必要ではなく、他の実施形態(例えば、図6A及び図7A参照)では省略されてもよいことに留意されたい。半径方向リブ(R1~R5)が省略されるとき、例えば図4A図4Cに示すように、ウェーハ(W)は、ウェーハチャック200の上面に直接取り付けることができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、図5に示すウェーハチャック200の表面高さは、接合後ウェーハ歪みを低減するように構成され得る。特に、ウェーハチャック200の表面高さは、半径方向ゾーン(Z1~Z5)のうちの1つ又は複数のゾーン内のウェーハチャックの高さが他の半径方向ゾーン内のウェーハチャックの高さと異なるように、ウェーハチャックにわたって変化し得る。表面高さが可変のウェーハチャックは、本明細書では別名「可変高さウェーハチャック」と呼ぶ場合がある。図6A図6Bは、接合後ウェーハ対の縁部付近の接合後ウェーハ歪みを低減するために使用され得る可変高さウェーハチャック210/220の側面図を提供する。図7A図7Bは、接合後ウェーハ対の中心付近の接合後ウェーハ歪みを低減するために使用され得る可変高さウェーハチャック230/240の側面図を提供する。
【0048】
図6Aは、本開示の第1の実施形態による可変高さウェーハチャック210を例示している。図6Aに示すように、可変高さウェーハチャック210は、ウェーハを保持するための取り付け面212を備える。加えて、可変高さウェーハチャック210は、中心領域214と、中心領域214の縁部からチャックの外縁まで半径方向外側に延びる周辺領域216とを備える。いくつかの実施形態では、周辺領域216は、チャックの外縁から距離(d)だけ延びることができる。距離(d)は、可変高さウェーハチャック210が300mmウェーハを支持するように構成されるとき、一般に50mm以下であり得る。一例では、図6Aに示す距離(d)は、約0mm~約20mmの間の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、中心領域214及び周辺領域216は、それぞれ、図5に示す半径方向ゾーン(Z1~Z5)のうちの1つ又は複数を含み得る。一例では、中心領域214は、半径方向ゾーンの第1のサブセット(例えば、Z1~Z3)を含んでもよく、周辺領域216は、半径方向ゾーンの第2のサブセット(例えば、Z4~Z5)を含んでもよい。しかしながら、中心領域214及び周辺領域216は、上述の例示的な半径方向ゾーンに限定されるものではなく、他の実施形態では異なる半径方向ゾーンを含み得ることに留意されたい。
【0049】
図6Aに示す実施形態では、可変高さウェーハチャック210の取り付け面212は、中心領域214内で平坦(又は平面)であり、周辺領域216内で直線的に下り傾斜しており(又は下向きに角度を付けられており)、したがって、周辺領域216内の可変高さウェーハチャック210の高さは、中心領域214内の可変高さウェーハチャック210の高さよりも低い。いくつかの実施形態では、図6Aに示すように、可変高さウェーハチャック210の高さ(h)は、可変高さウェーハチャック210の中心領域214の縁部と周辺領域216の縁部(すなわち外縁)との間で直線的に減少し得る。いくつかの実施形態では、可変高さウェーハチャック210の中心領域214の縁部と周辺領域216の縁部(すなわち外縁)との間の高さ差(Δh)、又は高さ低減は、-1μm(又はそれ未満)~-5μm(又はそれ超)の間の範囲であり得る。
【0050】
図6Bは、本開示の第2の実施形態による可変高さウェーハチャック220を例示している。図6Aに示す前の実施形態と同様に、図6Bに示す可変高さウェーハチャック220は、中心領域224と、中心領域224の縁部からチャックの外縁まで半径方向外側に距離(d)だけ延びる周辺領域226とを備える。図6Bに示す可変高さウェーハチャック220は、可変高さウェーハチャック220の上面から垂直に延びてウェーハ用の取り付け面222を提供する複数の半径方向リブ(R1~R5)を含むことによって、図6Aに示す可変高さウェーハチャック210とは異なる。半径方向リブの第1のサブセット(例えば、R1~R3)は、中心領域224内に含まれ、半径方向リブの第2のサブセット(例えば、R4~R5)は、可変高さウェーハチャック220の周辺領域226内に含まれる。
【0051】
図6Bに示す実施形態では、可変高さウェーハチャック220の取り付け面222は、中心領域224内で平坦(又は平面)であり、周辺領域226内で直線的に下り傾斜しており(又は下向きに角度を付けられており)、したがって、周辺領域226内の可変高さウェーハチャック220の高さは、中心領域224内の可変高さウェーハチャック220の高さよりも低い。図6Aに示す実施形態と異なり、周辺領域226内の高さ差(Δh)は、図6Bでは、周辺領域226内に位置する半径方向リブの第2のサブセット(例えば、半径方向リブR4及びR5)の高さを減少させることによって提供される。いくつかの実施形態では、図6Bに示すように、周辺領域226内のリブ高さを-1μm(又はそれ未満)~-5μm(又はそれより多く)低減して、ステップダウンする高さ低減を提供することができる。1つの例示的な実施形態では、周辺領域226内に位置する半径方向リブのうちの1つ又は複数が、約-3μm低減され得る。
【0052】
図6A及び図6Bに示す実施形態は、接合後ウェーハ対の縁部付近の接合後ウェーハ歪みを低減するために使用され得る可変高さウェーハチャック210/220を例示している。ウェーハ接合プロセス中に、接合前ウェーハ(例えば、下側ウェーハ)が可変高さウェーハチャック210/220に取り付けられるとき、接合前ウェーハは、取り付け面212/222に付着し、その形状をとる。換言すれば、接合前ウェーハは、可変高さウェーハチャック210/220の取り付け面212/222の形状によって予備歪みを受ける。
【0053】
図6A及び図6Bに示す実施形態では、可変高さウェーハチャック210/220の周辺領域216/226内の高さ低減(Δh)により、接合前ウェーハ(例えば、下側ウェーハ)の周辺部分が下方向にカーブ又は屈曲する(例えば、図8A参照)。これにより、上下のウェーハ間の接合界面が半径方向外側に広がる。上側ウェーハが下側ウェーハ上に接合されると、接合界面に沿った歪みは、界面に沿ったさらなる横方向のシフトを防止する摩擦によって「固定」される。接合が完了し、接合後ウェーハ対が下側チャックから解放されるとき(例えば、図8E参照)、下側ウェーハの周辺部分は、上方向に屈曲して、接合後ウェーハ対を平衡状態に戻すことができる。結果的に、下側ウェーハの周辺部分は、接合界面に沿って内側に押され、結果として例えば図1C及び図2に示す外側への歪みを補償する内側への歪みを提供する。このようにして、下側ウェーハの周辺部分内で作り出される内側への歪みを使用して、上下のウェーハ間の横方向の位置ずれを低減することができる。
【0054】
図6A及び図6Bに示す可変高さウェーハチャック210/220は、接合後ウェーハ対の縁部又は外周付近の接合後ウェーハ歪みを低減するために、図3図4に示すウェーハ接合装置100及び図8A図8Eに示すウェーハ接合プロセスで使用され得る。いくつかの実施形態では、例えば、図6A又は図6Bに示すような可変高さウェーハチャック210/220は、ウェーハ接合装置100及び図8A~8Eに示すウェーハ接合プロセスにおける下側チャック125として使用することができる。しかしながら、可変高さウェーハチャック210/220は、下側チャック125に厳密に限定されるものではない。いくつかの実施形態では、図6A及び図6Bに示す可変高さウェーハチャック210/220は、ウェーハ接合装置100における上側チャック120を実装するために追加的に使用され得る。このような実施形態では、上側チャック120は、若干の弾性コンプライアンスを有するように実装されてもよく、これにより、上側チャックが弾性変形し、上側ウェーハ(W1)の中心を押し下げて下側ウェーハ(W2)との接合を開始するストライカのように動作することが可能になる。他の実施形態では、図6A及び図6Bに示す可変高さウェーハチャック210/220は、代替的なウェーハ接合装置における上側チャックを実装するために代替的に使用することができ、この装置では、ストライカが下側チャック内に設けられ、下側ウェーハを上方に押し上げて上側ウェーハとの接合を開始する。上側チャック120を実装するために使用されるとき、図6A及び図6Bに示す可変高さウェーハチャック210/220は、下側チャック125について上に指摘したのと同じ効果を提供することができる。
【0055】
本明細書で説明した技術は、接合後ウェーハ対の縁部又は外周付近の接合後ウェーハ歪みを低減することに厳密に限定されないことに留意されたい。他の実施形態では、可変高さウェーハチャックは、接合後ウェーハ対の他のエリア又はゾーン内の接合後ウェーハ歪みを低減するように構成され得る。場合によっては、例えば、図4Bに示す上側ウェーハ(W1)と下側ウェーハ(W2)との間の接合を開始するために使用されるストライカ140は、接合後ウェーハ対W1/W2の中心付近(例えば、r≦10mm)に不良な歪みを生成する可能性がある。この問題を回避するために、図7A図7Bは、接合後ウェーハ対の中心付近の接合後ウェーハ歪みを低減するために図3図4に示すウェーハ接合装置100及び図8A図8Eに示すウェーハ接合プロセスで使用され得る可変高さウェーハチャック230/240のさまざまな実施形態を提供する。
【0056】
図7Aは、本開示の第3の実施形態による可変高さウェーハチャック230を例示している。図6Aに示す実施形態と同様に、図7Aに示す可変高さウェーハチャック230は、ウェーハを保持するための取り付け面232と、中心領域234と、中心領域234の縁部からチャックの外縁まで半径方向外側に距離(d)だけ延びる周辺領域236とを備える。図7Aでは、距離(d)は、可変高さウェーハチャック210が300mmウェーハを支持するように構成されるとき、一般に130mm以上であり得る。図7Aに示す実施形態では、距離(d)は、約135mm~約145mmの間の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、中心領域234及び周辺領域236は、それぞれ、図5に示す半径方向ゾーン(Z1~Z5)のうちの1つ又は複数を含み得る。一例では、中心領域234は、半径方向ゾーンの第1のサブセット(例えば、Z1~Z2)を含んでもよく、周辺領域236は、ゾーンの第2のサブセット(例えば、Z3~Z5)を含んでもよい。しかしながら、中心領域234及び周辺領域236は、上述の例示的なゾーンに限定されるものではなく、他の実施形態では異なる半径方向ゾーンを含み得ることに留意されたい。
【0057】
図7Aに示す実施形態では、可変高さウェーハチャック230の取り付け面232は、中心領域214内で平坦(又は平面)であり、周辺領域236内で直線的に傾斜しており(又は上向きに角度を付けられており)、したがって、周辺領域236内の可変高さウェーハチャック230の高さは、中心領域234内の可変高さウェーハチャック230の高さよりも高い。このような実施形態では、図7Aに示すように、可変高さウェーハチャック230の高さ(h)は、可変高さウェーハチャック230の中心領域234の縁部と周辺領域236の縁部(すなわち外縁)との間で直線的に増加し得る。一例では、可変高さウェーハチャック230の中心領域234の縁部と周辺領域236の縁部(すなわち外縁)との間の高さ差(Δh)、又は高さ増加は、+1μm(又はそれ未満)~+5μm(又はそれより多く)の間の範囲であり得る。他の実施形態(図示せず)では、可変高さウェーハチャック230の取り付け面232は、中心領域214内で平坦(又は平面)であり、周辺領域236の内側部分内で直線的に傾斜しており(又は上向きに角度を付けられており)、周辺領域236の外側部分内で平坦(又は平面)であってもよい。周辺領域236の外側部分は、一般に、周辺領域236の内側部分よりも小さくてもよく、したがって、周辺領域236の内側部分は、接合後ウェーハ対の中心付近の歪みを打ち消すのに十分な直線的に傾斜した領域を提供する。
【0058】
図7Bは、本開示の第4の実施形態による可変高さウェーハチャック240を例示している。図7Aに示す前の実施形態と同様に、図7Bに示す可変高さウェーハチャック240は、中心領域244と、中心領域244の縁部からチャックの外縁まで半径方向外側に距離(d)だけ延びる周辺領域246とを備える。図7Bに示す可変高さウェーハチャック240は、可変高さウェーハチャック240の上面から垂直に延びてウェーハ用の取り付け面242を提供する複数の半径方向リブ(R1~R5)を含むことによって、図7Aに示す可変高さウェーハチャック230とは異なる。半径方向リブの第1のサブセット(例えば、R1~R2)は、中心領域244内に含まれ、半径方向リブの第2のサブセット(例えば、R3~R5)は、可変高さウェーハチャック240の周辺領域246内に含まれる。
【0059】
図7Bに示す実施形態では、可変高さウェーハチャック240の取り付け面242は、中心領域244内で平坦(又は平面)であり、周辺領域246内で直線的に傾斜しており(又は上向きに角度を付けられており)、したがって、周辺領域246内の可変高さウェーハチャック240の高さは、中心領域244内の可変高さウェーハチャック240の高さよりも高い。図7Aに示す実施形態と異なり、周辺領域246内の高さ差(Δh)は、図7Bでは、周辺領域236内に位置する半径方向リブの第2のサブセット(例えば、リブR3、R4及びR5)の高さを増加させることによって提供される。いくつかの実施形態では、図7Bに示すように、周辺領域246内のリブ高さを+1μm(又はそれ未満)~+5μm(又はそれより多く)増加させて、ステップアップする高さ増加を提供することができる。代替的に、周辺領域246内のリブ高さは変更しないままとし、中心領域244内のリブ高さを-1μm(又はそれ未満)~-5μm(又はそれより多く)減少させて、所望の高さ差(Δh)を提供することもできる。さらに別の代替実施形態では、周辺領域236の内側部分内に位置する半径方向リブのうちの1つ又は複数(例えば、リブR3及びR4)の高さを+1μm(又はそれ未満)~+5μm(又はそれより多く)増加させて、周辺領域236の内側部分内のステップアップする高さ増加を提供することができ、一方、周辺領域236の外側部分内に位置する1つ又は複数の半径方向リブ(例えば、リブR5)の高さは、変更されないか、又は中心領域244内のリブ高さに等しいままである。
【0060】
図7A及び図7Bに示す実施形態は、接合後ウェーハ対の中心付近の接合後ウェーハ歪みを低減するために使用され得る可変高さウェーハチャック230/240を例示している。ウェーハ接合プロセス中に、接合前ウェーハ(例えば、下側ウェーハ)が可変高さウェーハチャック230/240に取り付けられるとき、接合前ウェーハは、取り付け面232/242に付着し、その形状をとる。換言すれば、接合前ウェーハは、可変高さウェーハチャック230/240の取り付け面232/242の形状によって予備歪みを受ける。
【0061】
図7A及び図7Bに示す実施形態では、可変高さウェーハチャック230/240の周辺領域236/246内の高さ増加(Δh)(又は代替的に、中心領域234/244内の高さ減少)により、接合前ウェーハ(例えば、下側ウェーハ)の周辺部分が上方向にカーブ又は屈曲する。これにより、接合前ウェーハ上の接合界面が半径方向内側に歪む。上側ウェーハが下側ウェーハ上に接合されると、接合界面に沿った歪みは、界面に沿ったさらなる横方向のシフトを防止する摩擦によって「固定」される。接合が完了し、接合後ウェーハ対が下側チャックから解放されるとき、下側ウェーハの周辺部分は、下方向に屈曲して、接合後ウェーハ対を平衡状態に戻すことができる。これにより、下側ウェーハの周辺部分が接合界面に沿って外側に押されることが可能になり、結果として接合前ウェーハに生成された内側への歪みを補償する外側への歪みが提供される。このようにして、下側ウェーハの周辺部分内で作り出される外側への歪みを使用して、ストライカ140によって生成される上下のウェーハ間の横方向の位置ずれを低減することができる。
【0062】
図7A及び図7Bに示す可変高さウェーハチャック230/240は、接合後ウェーハ対の中心付近の接合後ウェーハ歪みを低減するために、図3図4に示すウェーハ接合装置100及び図8A図8Eに示すウェーハ接合プロセスで使用され得る。いくつかの実施形態では、例えば、図7A又は図7Bに示すような可変高さウェーハチャック230/240は、接合後ウェーハ対の中心付近の接合後ウェーハ歪みを低減するために、ウェーハ接合装置100における下側チャック125として使用することができる。しかしながら、可変高さウェーハチャック230/240は、下側チャック125に厳密に限定されるものではない。いくつかの実施形態では、図7A及び図7Bに示す可変高さウェーハチャック230/240は、ウェーハ接合装置100における上側チャック120を実装するために追加的に使用され得る。このような実施形態では、上側チャック120は、若干の弾性コンプライアンスを有するように実装されてもよく、これにより、上側チャックが弾性変形し、上側ウェーハ(W1)の中心を押し下げて下側ウェーハ(W2)との接合を開始するストライカのように動作することが可能になる。他の実施形態では、図7A及び図7Bに示す可変高さウェーハチャック230/240は、代替的なウェーハ接合装置における上側チャックを実装するために代替的に使用することができ、この装置では、ストライカが下側チャック内に設けられ、下側ウェーハを上方に押し上げて上側ウェーハとの接合を開始する。上側チャック120を実装するために使用されるとき、図7A及び図7Bに示す可変高さウェーハチャック230/240は、下側チャック125について上に指摘したのと同じ効果を提供することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、図6図7に示す実施形態のうちの1つ又は複数を組み合わせて、接合後ウェーハ対の縁部付近及び中心付近の接合後ウェーハ歪みを低減することができる。図6図7に示す可変高さウェーハチャックの実施形態は例示的なものであり、本明細書で説明した技術は、接合後ウェーハ対の他のエリア又はゾーン内の接合後ウェーハ歪みを低減するために使用され得ることに留意されたい。さらに、本明細書で説明した高さ差(Δh)及び距離(d)は例示的なものであることに留意されたい。Δh及びdの特定の値は、一般に、特定のウェーハ接合プロセスの物理モデリング及び上下のウェーハの接合前ウェーハ形状に基づいて選択することができる。例えば、高さ差(Δh)及び/又は距離(d)は、接合後ウェーハの実験的測定から経験的に導出し、最適化することができる。
【0064】
図6A又は図6Bに示す可変高さウェーハチャック210/220を使用して、2枚のウェーハ(例えば、上側ウェーハ及び下側ウェーハ)を一緒に接合するための改善されたウェーハ接合プロセスを図8A~8Eに示す。例示した実施形態では、可変高さウェーハチャックが下側チャックを実装するために使用されている。他の実施形態では、可変ウェーハチャックが、上側チャック、又は下側チャック及び上側チャックを実装するために使用されてもよい。図8A図8Eに示すウェーハ接合プロセスは、接合後ウェーハ対の縁部付近の接合後ウェーハ歪みを低減するように構成された可変高さウェーハチャックを使用するが、当業者であれば、接合後ウェーハ対の他のエリア又はゾーン内の接合後ウェーハ歪みを低減するために、例示したプロセスが他の可変高さウェーハチャックをどのように利用し得るかを理解するであろう。例えば、図7A又は図7Bに示す可変高さウェーハチャック230/240は、接合後ウェーハ対の中心付近の接合後ウェーハ歪みを低減するために、同様のウェーハ接合プロセス内で使用することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、改善されたウェーハ接合プロセスは、上側チャック304の取り付け面上に上側ウェーハ302を受け入れ、下側チャック308の取り付け面上に下側ウェーハ306を受け入れると、図8Aのステップ300で開始することができる。上側チャック304及び下側チャック308が真空チャックとして実装されるとき、上側ウェーハ302及び下側ウェーハ306は、例えば真空ポンプによって提供される真空圧によって、それぞれのチャック上に保持され得る。上下のウェーハは、図8Aに示すように、最初は小さな隙間(g)によって分離されていてもよい。
【0066】
図8Bに示すように、ステップ310で接合を開始するために、ストライカ309を使用して、上側ウェーハ302の中心に機械的力を加えることができる。ストライカ309によって与えられる機械的力により、上側ウェーハ302の中心が下側ウェーハ306の中心と接触するまで、上側ウェーハ302の中心が下方向に湾曲又は屈曲する。この接触により、上下のウェーハの中心から半径方向外側に自発的に伝播する接合フロントが開始される。接触表面積が増加するにつれて、2枚のウェーハ間の初期の隙間(g)を閉じるために、上下のウェーハは弾性変形する。
【0067】
図8Cに示すように、上下のウェーハ間の接合が完了する前に、ステップ320で、上側チャック304への真空圧をオフにすることができる。接触表面積が十分に大きいとき、上側チャック304と上側ウェーハ302との間の真空封止が破れ、図8Dに示すように、2枚のウェーハが完全に接合されるまで接合フロントが外側に伝播し続ける。上下のウェーハ間の接合が完了すると、図8Dのステップ330でストライカ309が後退し、図8Eのステップ340で下側チャック308への真空圧がオフになって、接合後ウェーハ対302/306が下側チャック308から解放される。
【0068】
代替的なウェーハ接合プロセス(図示せず)では、図8Cで上側チャック304への真空圧がオフになる前に、ストライカ309が後退してもよく、下側チャック308への真空圧がオフになってもよい。このようなプロセスでは、上側ウェーハ302と下側ウェーハ306との間の接合力により、接合が完了する前、及び/又は上側チャック304への真空圧がオフになる前に、下側ウェーハ306と下側チャック308との間の真空封止が破れる場合がある。これが生じるとき、上側ウェーハ302と下側ウェーハ306との間の接合力は、重力に逆らって作用して、下側ウェーハ306を上側チャック304上に保持された上側ウェーハ302に接合することができる。接合が完了すると、上側チャック304への真空圧がオフになって、接合後ウェーハ対302/306が上側チャック304から解放される。
【0069】
図8A図8Eに示す改善されたウェーハ接合プロセスは、可変高さウェーハチャックを利用することによって、接合後ウェーハ対302/306の縁部付近の接合後ウェーハ歪みを低減し、この可変高さウェーハチャックは、接合前ウェーハの周辺部分を下方向に屈曲させることによって、接合前ウェーハの少なくとも1つ(例えば、下側ウェーハ)が予備歪みを受ける(例えば、図8A参照)。この予備歪みにより、上下のウェーハ間の接合界面が半径方向外側に広がるか又は歪む。上側ウェーハ302が下側ウェーハ306上に接合されると、接合界面に沿った歪みは、界面に沿ったさらなる横方向のシフトを防止する摩擦によって「固定」される。接合が完了し(例えば、図8D参照)、下側チャック308への真空圧がオフになって、接合後ウェーハ対が下側チャック308から解放されるとき(例えば、図8E参照)、下側ウェーハ306の周辺部分は、上方向に屈曲して、接合後ウェーハ対302/306を平衡状態に戻すことができる。結果的に、下側ウェーハ306の周辺部分は、接合界面に沿って内側に押され、結果として例えば図1C及び図2に示す外側への歪みを補償する内側への歪みを提供する。
【0070】
図9は、図8A図8Eに示す改善されたウェーハ接合プロセスを使用して2枚のウェーハを一緒に接合するときの、接合後ウェーハ対の歪みを半径(r)の関数として例示するグラフである。図9に示すように、図8A図8Eに示す改善されたウェーハ接合プロセスは、従来のウェーハ接合プロセスによって生成される歪み20よりも、接合後ウェーハ対の縁部付近に生成される歪み90をはるかに少なくする。接合後ウェーハ対の縁部付近の歪み90を低減することにより、ウェーハ接合プロセスに起因する接合後歪み誤差が低減され、2枚のウェーハ間の横方向のシフト(又は横方向の位置ずれ)が最小限に抑えられる。
【0071】
図8A図8Eに示す改善されたウェーハ接合プロセス並びに図6A及び図6Bに示す可変高さウェーハチャック210/220は、縁部における歪み性能がすべてのウェーハについて非常に類似しているので、接合後ウェーハ対の縁部における歪み90を低減するのに特によく適している。従来のウェーハ接合プロセスでは、接合界面における歪み20は、一般に、接合後ウェーハ対の中心よりも縁部において高く(すなわち、正の外側への変位)、縁部に向かって急勾配を有する。この明確な特性は、図6A又は図6Bに示すような可変高さウェーハチャックを使用することによって補正することができる。逆に、接合後ウェーハ対が、歪みが縁部においてより低く(すなわち、負の内側への変位)、中心においてより高くなる反対の歪み挙動を見せる場合、図7A又は図7Bに示すような可変高さウェーハチャックを使用するウェーハ接合プロセスを使用して、中心における接合後ウェーハ歪みを低減することもできる。
【0072】
図6図8に示す実施形態は、ウェーハチャックの少なくとも1つの表面高さを修正することによって、接合後ウェーハ歪みを低減する。接合後ウェーハ歪みを低減するために、他のハードウェア修正も使用することができる。例えば、温度調整素子のリングをウェーハチャックの1つ又は複数のエリア又はゾーン内に載置して、それらのエリア又はゾーン内の歪みを改善することができる。1つの例示的な実装形態では、ペルチェチップのリングを下側チャック及び/又は上側チャック内に埋め込んで、チャック表面の温度を調整することができる。接合プロセスの前に、温度調整素子を作動させて、温度調整素子に重なる及び/又は温度調整素子に隣接するウェーハの領域に(又はそこから)熱を伝達することができる。この熱伝達により、ウェーハの領域における温度が局所的に変化し、それにより、その領域が横方向に膨張又は収縮する。これにより、接合工程の後に恒久的になるウェーハ対の間の横方向の変位不一致が作り出される。
【0073】
図10は、本開示の第5の実施形態によるウェーハチャック400の側面図である。図10に示すウェーハチャック400は、ウェーハチャックの1つ又は複数のエリア又はゾーン内に埋め込まれた1つ又は複数の温度調整素子410を備える。そのため、図10に示すウェーハチャック400は、本明細書では別名「温度調整ウェーハチャック」と呼ぶ場合がある。
【0074】
図10に示す温度調整ウェーハチャック400は、中心領域414と、中心領域414の縁部からチャックの外縁まで半径方向外側に延びる周辺領域416とを備える。いくつかの実施形態では、周辺領域416は、チャックの外縁から距離(d)だけ延びることができる。距離(d)は、温度調整ウェーハチャック400が300mmウェーハを支持するように構成されるとき、一般に50mm以下であり得る。一例では、図10に示す距離(d)は、約5mm~約10mmの間の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、中心領域414及び周辺領域416は、それぞれ、図5に示す半径方向ゾーン(Z1~Z5)のうちの1つ又は複数を含み得る。一例では、中心領域414は、半径方向ゾーンの第1のサブセット(例えば、Z1~Z3)を含んでもよく、周辺領域416は、半径方向ゾーンの第2のサブセット(例えば、Z4~Z5)を含んでもよい。しかしながら、中心領域414及び周辺領域416は、上述の例示的なゾーンに限定されるものではなく、他の実施形態では異なる半径方向ゾーンを含み得ることに留意されたい。
【0075】
図10に示す温度調整ウェーハチャック400は、温度調整ウェーハチャック400の上面から垂直に延びてウェーハ用の取り付け面418を提供する複数の半径方向リブ(R1~R5)をさらに備える。代替的に、図10に示すリブを省略してもよく、温度調整ウェーハチャック400の上面にウェーハを直接取り付けてもよい。図10に示す実施形態では、温度調整ウェーハチャック400の取り付け面418は、ウェーハチャックにわたって(すなわち、中心領域414及び周辺領域416にわたって)平坦である。代替的に、温度調整チャックの取り付け面は、上述のように、中心領域414内では平坦であり、周辺領域416内では下り傾斜していてもよく(図6A図6Bに示すように)、又は周辺領域416内では傾斜していてもよい(図7A図7Bに示すように)。
【0076】
図10に示す温度調整ウェーハチャック400は、ウェーハチャックの1つ又は複数のエリア又はゾーン内に埋め込まれた1つ又は複数の温度調整素子410をさらに備える。図10に示す実施形態では、温度調整素子410は、温度調整ウェーハチャック400の周辺領域416内に埋め込まれて、温度調整ウェーハチャック400の取り付け面418(又は上面)に取り付けられたウェーハの縁部に(又は縁部から)熱を伝達する。しかしながら、温度調整素子410は、図10に示す例示的な置き方に限定されるものではなく、ウェーハの他のエリアに(又はウェーハの他のエリアから)熱を伝達するために、温度調整ウェーハチャック400の他のエリア又はゾーン内に追加的又は代替的に配置されてもよいことに留意されたい。一実施形態では、温度調整素子410は、ペルチェ素子であってもよい。
【0077】
図11は、図10に示す温度調整ウェーハチャック400を図8A図8Eに示すウェーハ接合プロセスで使用して2枚のウェーハを一緒に接合するときの、ウェーハ温度を半径(r)の関数として例示するグラフである。図11に示すように、温度調整ウェーハチャック400の周辺領域416内に埋め込まれた温度調整素子410は、接合プロセスの前に作動してウェーハチャックを加熱することができ、したがって、接合プロセス中に熱がウェーハに伝達され得る。ウェーハ縁部に熱を伝達することにより、図11に示すように、ウェーハ温度500がウェーハの縁部付近で上昇し、ウェーハ縁部付近の領域が横方向に膨張する。ウェーハ縁部の横方向の膨張により、外側への歪みが生成され、この歪みにより、接合工程の後に恒久的になる上下のウェーハ間の横方向の変位不一致が作り出される。いくつかの実施形態では、温度調整素子410は、ウェーハ温度が0.1℃上昇するごとに、ウェーハ縁部において約5nmの外側への歪みを提供することができる。
【0078】
他の実施形態では、温度調整素子410は、代替的に、ウェーハの1つ又は複数の領域又はゾーンを冷却するか、又はそこから熱を抽出するために使用することができる。領域を冷却することにより、領域が横方向に収縮して内側への歪みが生成され、この歪みにより、上下のウェーハ間の横方向の変位不一致が作り出される。いくつかの実施形態では、温度調整素子410は、ウェーハ温度が0.1℃低下するごとに、ウェーハ縁部において約5nmの内側への歪みを提供することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、図10に示す温度調整ウェーハチャック400は、接合後ウェーハ対の1つ又は複数のエリア又はゾーン内の接合後ウェーハ歪みを低減するために、図3図4に示すウェーハ接合装置100及び図8A図8Eに示すウェーハ接合プロセスで使用され得る。温度調整ウェーハチャック400により、入来するウェーハの計測値に基づいて歪みを柔軟に調整することが可能になる。歪みの量及び方向は、ウェーハの残りの部分に対する温度調整素子410の温度を調節することによって、調節することができる。いくつかの実施形態では、図10に示す温度調整素子410は、図6図7に示す可変高さチャック設計のうちの1つに含まれてもよい。
【0080】
図12は、接合後ウェーハ対の歪みを低減するための方法600の一実施形態を例示するフローチャート図である。一般に、方法600は、ウェーハ接合装置の上側チャックの取り付け面上に上側ウェーハを受け入れること(ステップ610)と、上側チャックに真空圧を供給して、上側チャックの取り付け面上に上側ウェーハを保持すること(ステップ620)とを含み得る。方法600は、ウェーハ接合装置の下側チャックの取り付け面上に下側ウェーハを受け入れること(ステップ630)と、下側チャックに真空圧を供給して、下側チャックの取り付け面上に下側ウェーハを保持すること(ステップ640)とをさらに含み得る。方法600は、上側ウェーハを下側ウェーハに接合して、接合後ウェーハ対を形成すること(ステップ650)をさらに含み得る。
【0081】
本明細書で説明した方法600のいくつかの実施形態では、下側チャックは、中心領域と、中心領域の縁部から下側チャックの外縁まで半径方向外側に延びる周辺領域とを備える。下側チャックの取り付け面は、中心領域内で平坦であり、周辺領域内で直線的に傾斜又は直線的に下り傾斜しており、したがって、周辺領域内の下側チャックの高さは、中心領域内の下側チャックの高さと異なる。下側チャックに真空圧が供給されるとき(ステップ640)、下側チャックに供給される真空圧により、下側ウェーハが下側チャックの取り付け面に付着し、したがって、上側ウェーハが下側ウェーハに接合される前に、下側チャックの取り付け面の形状によって下側ウェーハが予備歪みを受ける(ステップ650)。接合前の下側ウェーハの予備歪みにより、有利には、接合後ウェーハ対の歪みが低減され、上側ウェーハと下側ウェーハとの間の横方向の位置ずれが最小限に抑えられる。
【0082】
本明細書で説明した方法600のいくつかの実施形態では、上側チャックは、中心領域と、中心領域の縁部から上側チャックの外縁まで半径方向外側に延びる周辺領域とを備える。上側チャックの取り付け面は、中心領域内で平坦であり、周辺領域内で直線的に傾斜又は直線的に下り傾斜しており、したがって、周辺領域内の上側チャックの高さは、中心領域内の上側チャックの高さと異なる。上側チャックに真空圧が供給されるとき(ステップ640)、上側チャックに供給される真空圧により、上側ウェーハが上側チャックの取り付け面に付着し、したがって、下側ウェーハが上側ウェーハに接合される前に、上側チャックの取り付け面の形状によって上側ウェーハが予備歪みを受ける(ステップ650)。接合前の上側ウェーハの予備歪みにより、有利には、接合後ウェーハ対の歪みが低減され、上側ウェーハと下側ウェーハとの間の横方向の位置ずれが最小限に抑えられる。
【0083】
いくつかの実施形態では、接合工程(すなわち、ステップ650)は、上側ウェーハの中心に機械的力を加えて、上側ウェーハと下側ウェーハとの間の接合を開始することと、上側ウェーハと下側ウェーハとの間の接合が完了する前に、上側チャックに供給された真空圧を除去することと、上側ウェーハと下側ウェーハとの間の接合が完了して接合後ウェーハ対が形成された後に、下側チャックに供給された真空圧を除去することとを含み得る。このような実施形態では、接合後ウェーハ対は、下側チャックに供給された真空圧が除去されるまで、下側チャック上に留まることができる。
【0084】
他の実施形態では、接合工程(すなわち、ステップ650)は、上側ウェーハの中心に機械的力を加えて、上側ウェーハと下側ウェーハとの間の接合を開始することと、上側ウェーハと下側ウェーハとの間の接合が完了する前に、下側チャックに供給された真空圧を除去することと、上側ウェーハと下側ウェーハとの間の接合が完了して接合後ウェーハ対が形成された後に、上側チャックに供給された真空圧を除去することとを含み得る。このような実施形態では、上側ウェーハと下側ウェーハとの間の接合力により、下側チャックに供給された真空圧が除去される前に、下側ウェーハと下側チャックとの間の真空封止が破れる場合がある。これが生じるとき、上側ウェーハが上側チャック上に保持されている間に、上側ウェーハと下側ウェーハとの間の接合力が重力に逆らって作用して、下側ウェーハを上側ウェーハに接合することができる。このような実施形態では、接合後ウェーハ対は、上側チャックに供給された真空圧が除去されるまで、上側チャック上に留まることができる。
【0085】
本明細書を通じて、「一実施形態(one embodiment)」又は「実施形態(an embodiment)」への言及は、その実施形態に関連して説明する特定の特徴、構造、材料、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味するが、それらがすべての実施形態に存在することを示すものではないことに留意されたい。それゆえ、本明細書を通じたさまざまな箇所における「一実施形態では」又は「実施形態では」という語句の出現は、必ずしも本発明の同じ実施形態を指すわけではない。さらにまた、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ又は複数の実施形態において任意の適当な方式で組み合わされてもよい。他の実施形態では、さまざまな追加の層及び/若しくは構造が含まれてもよく、並びに/又は説明した特徴が省略されてもよい。
【0086】
本明細書で使用される用語「基板」は、材料が上に形成されるベース材料又は構造を意味し且つこれらを含む。基板は、単一材料、異なる材料の複数の層、異なる材料又は異なる構造の領域を内部に有する1つの層又は複数の層などを含み得ることが理解されよう。これらの材料は半導体、絶縁体、導体、又はそれらの組み合わせを含み得る。例えば、基板は、半導体基板、支持構造上のベース半導体層、金属電極、又は1つ又は複数の層、構造、若しくは領域が上に形成された半導体基板であってもよい。基板は、半導電性材料の層を含む、従来のシリコン基板又は他のバルク基板であってもよい。本明細書で使用される場合、用語「バルク基板」は、シリコンウェーハだけでなく、シリコンオンサファイア(「SOS」)基板及びシリコンオンガラス(「SOG」)基板などのシリコンオンインシュレータ(「SOI」)基板、ベース半導体基板上のシリコンのエピタキシャル層、並びにシリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、窒化ガリウム、及びリン化インジウムなどの他の半導体又は光電子材料をも意味し且つそれらを含む。基板は、ドープされていても、又はドープされていなくてもよい。
【0087】
基板を処理するためのシステム及び方法が、さまざまな実施形態で説明されている。基板は、デバイス、特に半導体又は他の電子デバイスの任意の材料部分又は構造を含んでもよく、例えば、半導体基板などのベース基板構造であってもよく、又は薄膜など、ベース基板構造上の若しくはその上を覆う層であってもよい。それゆえ、用語「基板」は、パターニングされた又はパターニングされていない任意の特定のベース構造、下位層又は上位層に限定されることを意図されず、むしろ任意のこのような層又はベース構造並びに層及び/又はベース構造の任意の組み合わせを含むことが企図される。場合によっては、用語「基板」は、デバイスウェーハ又はキャリアウェーハなどのパターニングされた又はパターニングされていないウェーハを説明するために使用される場合がある。
【0088】
関連技術分野の当業者であれば、さまざまな実施形態が、具体的な細部のうちの1つ若しくは複数を伴わずに、又は、他の代替的及び/若しくは追加的方法、材料、若しくは構成要素を伴って実施されてもよいことを認識するであろう。他の例では、周知の構造、材料、又は動作は、本発明のさまざまな実施形態の態様を曖昧にすることを避けるために、詳細には図示又は説明されていない。同様に、本発明の完全な理解を提供するために、説明の目的で、具体的な数、材料、及び構成が記述される。しかしながら、本発明は、具体的な細部なしに実施されてもよい。さらにまた、図面に示すさまざまな実施形態は例示的表現であり、必ずしも原寸に比例して描かれていないことを理解されたい。
【0089】
本明細書を検討すれば、説明したシステム及び方法のさらなる修正形態及び代替実施形態が当業者には明らかになるはずである。したがって、説明したシステム及び方法は、これらの例示的構成に限定されないことが認識されよう。本明細書に図示し説明したシステム及び方法の形態は、例示的な実施形態と解釈すべきであることを理解されたい。実装形態にさまざまな変更を加えることができる。したがって、本明細書では本発明を具体的な実施形態を参照して説明しているが、本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな修正及び変更を加えることができる。それに応じて、本明細書及び図面は、限定的意味というよりも、むしろ例示的意味でみなされるべきであり、このような修正形態が本発明の範囲に含まれることが意図されている。さらに、特定の実施形態に関して本明細書で説明したいかなる便益、利点、又は課題に対する解決策も、特許請求の範囲のいずれかの又はすべての、重要な、必要な、又は必須の特徴又は要素として解釈されることは意図されていない。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】