IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェンの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】嫌気硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/08 20060101AFI20240328BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240328BHJP
   C09D 175/08 20060101ALI20240328BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
C08L75/08
C08F2/44 C
C09D175/08
C09D4/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564675
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2022060629
(87)【国際公開番号】W WO2022223737
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】2105715.3
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ハベルリン、 ガビン
(72)【発明者】
【氏名】ドハーティ、 マイケル
(72)【発明者】
【氏名】スウィーニー、 ナイジェル
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ、 ロリー
(72)【発明者】
【氏名】コンドロン、 デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ、 バリー
【テーマコード(参考)】
4J002
4J011
4J038
【Fターム(参考)】
4J002CK041
4J002EH076
4J002EK017
4J002EK027
4J002EK037
4J002EK047
4J002EZ008
4J002GJ01
4J002GJ02
4J011AA05
4J011CA05
4J011PA34
4J011PA95
4J011PC02
4J011PC08
4J038DG131
4J038FA111
4J038JA66
4J038JB17
4J038KA03
4J038MA13
4J038MA14
4J038PB05
4J038PC10
(57)【要約】
【解決手段】
液体嫌気硬化性成分、固体嫌気硬化性成分、固体ポリエーテル熱可塑性ポリウレタン樹脂、及び前記嫌気硬化性成分を硬化させるための硬化成分を含む嫌気硬化性組成物。有利には、本発明の組成物は実質的に固体であり、ねじロック剤として使用されてよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体嫌気硬化性成分;
固体嫌気硬化性成分;
固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂;及び
前記嫌気硬化性成分を硬化させるための硬化成分;
を含む嫌気硬化性組成物であって、
前記固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂が、約180,000g/mol~約260,000g/molの範囲の分子量Mwを有し、前記分子量Mwが、ASTM D5296-05に従って決定される、嫌気硬化性組成物。
【請求項2】
前記固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂が、約200,000g/mol~約240,000g/molの範囲、例えば約215,000g/mol~230,000g/mol、例えば220,000g/mol~225,000g/mol、例えば約223,000g/molの分子量Mwを有し、前記分子量Mwが、ASTM D5296-05に従って決定される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂が、160℃~200℃、例えば165℃~190℃、例えば170℃~180℃の融点を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記液体嫌気硬化性成分が、組成物の総重量に基づいて約20重量%~約50重量%の量で、適切には約30重量%~約40重量%の量で、例えば硬化性組成物の総重量に基づいて約36重量%存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記固体嫌気硬化性成分が、組成物の総重量に基づいて約8重量%~約30重量%の量で、適切には約10重量%~約25重量%の量で、例えば硬化性組成物の総重量に基づいて15重量%~約22重量%存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂が、組成物の総重量に基づいて約10重量%~約30重量%の量で、適切には約18重量%~約25重量%の量で、例えば硬化性組成物の総重量に基づいて約20重量%存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記嫌気硬化性成分を硬化させるための硬化成分が、硬化性組成物の総重量に基づいて、約0.1~約10重量%、例えば約1~約5重量%の量で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記液体嫌気硬化性成分が、液体(メタ)アクリレートモノマー成分を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記液体(メタ)アクリレートモノマー成分が、式:HC=CGCOを有するものから選択される1つ又は複数である、請求項8に記載の組成物。
(式中、Gは、水素、ハロゲン、又は1~約4個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは、1~約16個の炭素原子を有する、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルカリル、アラルキル、又はアリール基から選択され、これらはいずれも、任意で、シラン、ケイ素、酸素、ハロゲン、カルボニル、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、ウレア、ウレタン、カーボネート、アミン、アミド、硫黄、スルホネート、及びスルホン等で、置換又は割り込まれていてもよい)
【請求項10】
前記固体嫌気硬化性成分が、1つ又は複数の固体(メタ)アクリレートモノマー成分を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記硬化成分が、1-アセチル-2-フェニルヒドラジン、N,N-ジメチルパラトルイジン、N,N-ジエチルパラトルイジン、N,N-ジエタノールパラトルイジン、N,N-ジメチルオルトトルイジン、N,N-ジメチルメタトルイジン、インドリン、2-メチルインドリン、イソインドリン、インドール、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン、3-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン、2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-4-カルボン酸、及び1,2,3,4-テトラヒドロ-ベンゾ(H)キノリン-3-オールから成る群から選択される1つ又は複数を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
フリーラジカル重合の開始剤、例えば、ペルオキシドをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記フリーラジカル重合の開始剤が、クメンヒドロペルオキシド(「CHP」)、パラ-メンタンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド(「TBH」)、t-ブチルペルベンゾエート、ベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジアセチルペルオキシド、ブチル4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレラート、p-クロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、t-ブチルペルベンゾエート、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチル-ペルオキシヘキ-3-イン、4-メチル-2,2-ジ-t-ブチルペルオキシペンタン、t-アミルヒドロペルオキシド、1,2,3,4-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド及びそれらの組み合わせから成る群から選択される1つ又は複数である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記フリーラジカル重合の開始剤が、カプセル化されたペルオキシドを含む、請求項12又は13に記載の組成物。
【請求項15】
硬化促進剤をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記硬化促進剤が、1つ又は複数のメタロセン、例えばフェロセン、適切にはn-ブチルフェロセン;及び/又は
【化1】
(式中、XはCH,O、S,NR、CR、又はC=Oであり;Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキン、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、又はヒドロキシアルキンのうちの1つ又は複数であり;R~Rはそれぞれ水素、ハロゲン、アミノ、カルボキシル、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、又はアルカリルから選択され;Rは、水素又はCHRであり、R及びRはそれぞれ水素、ハロゲン、アミノ、カルボキシル、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、又はアルカリルから選択され;nは0又は1である)
に包含される硬化促進剤、
を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
テープ形態、フィラメント形態、又はコーティングされた基材の形態で提供される、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
糸又は繊維上のコーティングとして提供される、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の嫌気硬化性組成物、及び1つ又は複数の剥離ライナーを含むテープ。
【請求項20】
少なくとも1つのねじ面を含むねじ部材であって、前記少なくとも1つのねじ面が、請求項1~18のいずれか一項に記載の嫌気硬化性組成物を含み、任意で、嫌気硬化性組成物は、テープ形態、フィラメント形態、又はコーティングされた基材の形態であり、任意で、テープ形態、フィラメント形態、又はコーティングされた基材の形態である前記嫌気硬化性組成物は、例えば、前記テープを前記ねじ面の周囲に少なくとも部分的に巻き付けることによって、ねじ面に適用される、ねじ部材。
【請求項21】
a.少なくとも1つのねじ面を含む少なくとも1つのねじ部材を提供する工程、
b.前記少なくとも1つのねじ面に、請求項1~17のいずれか一項に記載の嫌気硬化性組成物を塗布する工程、
を含む、ねじロック組成物を含むねじ部材を製造する方法。
【請求項22】
前記嫌気硬化性組成物が、テープ形態、フィラメント形態、又はコーティングされた基材の形態であり、任意で、テープ形態、フィラメント形態、又はコーティングされた基材の形態である前記嫌気硬化性組成物が、前記ねじ部材の前記少なくとも1つのねじ面の周囲に少なくとも部分的に巻き付けられる、請求項21に記載のねじ部材の製造方法。
【請求項23】
(a)少なくとも1つのねじ面を含む第1のねじ部材を提供する工程;
(b)請求項1~17のいずれか一項に記載の嫌気硬化性組成物を前記少なくとも1つのねじ面に塗布する工程;
(c)前記第1のねじ部材と嵌合係合可能な第2のねじ部材を提供する工程;
前記第1のねじ部材及び第2のねじ部材を嵌合係合させ、前記嫌気硬化性組成物が前記第1のねじ部材及び第2のねじ部材の間で硬化するのに十分な時間、前記嫌気性硬化性組成物を嫌気環境に曝露する工程;
を含む、ねじ部材を組み立てる方法。
【請求項24】
前記嫌気硬化性組成物が、テープ形態、フィラメント形態、又はコーティングされた基材の形態であり、任意で、テープ形態、フィラメント形態、又はコーティングされた基材の形態である前記嫌気硬化性組成物が、前記少なくとも1つのねじ面の周囲に少なくとも部分的に巻き付けられる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
(i)少なくとも1つの固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂と溶媒を混合する工程;
前記固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂は、任意で約180,000g/mol~約260,000g/molの範囲、適切には約200,000g/mol~約240,000g/molの範囲、例えば約215,000g/mol~230,000g/mol、例えば220,000g/mol~225,000g/mol、例えば約223,000g/molの分子量Mwを有し、分子量Mwは、ASTM D5296-05に従って測定されるものであり、
前記固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂は、任意で160℃~200℃、例えば165℃~190℃、例えば170℃~180℃の融点を有し、
適切には、溶媒は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、又はそれらの組み合わせから選択される、
(ii)液体嫌気硬化性成分、固体嫌気硬化性成分、及び前記嫌気硬化性成分を硬化させるための硬化成分を混合し、任意で、前記混合物に添加剤を添加する工程;
(iii)例えば、前記混合物をねじ付き物品又は剥離ライン等の担体に鋳造及び/又は塗布することによって、前記混合物を所望の形状に形成する工程;
前記溶媒を除去及び/又は前記溶媒を蒸発して、本明細書に記載の嫌気性硬化性組成物及び任意で担体を含むテープ、糸、又は繊維を形成する工程:
を含む、ねじロック用のテープ、糸、又は繊維を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじロック剤を包含する多くの用途に使用できる嫌気性硬化性組成物に関する。本組成物は実質的に固体であり、テープ形態、フィラメント形態を包含する任意の適切な固体形態で提供されてよく、又は、例えばナイロン若しくはポリエステル糸等の別の材料から作られたフィラメント若しくは糸を包含する基材に塗布されるコーティングとして提供されてよい。本発明は、ねじ部品の製造方法及びねじ部品の組立方法にも関する。本組成物は、容易に取り扱いでき、ねじ部材に塗布することができる。本組成物は少なくとも150℃の温度で耐熱性がある。
【背景技術】
【0002】
ねじロック組成物は、ナット及びボルト等のねじ部品を噛み合わせた状態でロック及び/又はシールするために使用される。このようなねじロック組成物は、係合したねじ部品を破壊又は回転させるのに必要なトルクを大幅に増加させる。従来のねじロック組成物は、共反応性接着剤系を包含することが多く、得られた組成物を留め具のねじ係合面に塗布する前に、2つ以上の成分が混合され、そこでねじロック組成物中の成分が反応して硬化する。このような共反応系の例としては、エポキシ樹脂接着剤組成物が挙げられる。
【0003】
液体接着剤組成物は、シール及びねじロック用途に長い間使用されており、機械や工具等の維持管理だけでなく、組み立て生産の標準的な部分となっている。これらの用途で一般的に使用される液体接着剤組成物の中には、嫌気性組成物がある。これらの組成物は、硬化すると優れたねじロック特性及びシール特性を提供する。ねじロック組成物としてねじ部品に塗布される嫌気性硬化性組成物は、噛み合ったねじ部品の間に配置されて酸素の不在下で硬化するまで、安定した状態(未硬化状態)を維持し、液体の状態を保つ。
【0004】
嫌気硬化性組成物は、一般に公知である。例えば、接着技術ハンドブック、29、467-79、A.ピッツィ及びK.L.ミッタル編、マーセル・デッカー社、ニューヨーク(1994)中のR.D.リッチ「嫌気性接着剤」、及びそこに引用されている参考文献を参照。その用途は多岐にわたり、新しい用途が開発され続けている。
【0005】
嫌気性接着剤系は、酸素の存在下では安定であるが、酸素の不在下では重合する。重合は、多くの場合ペルオキシ化合物から生成されるフリーラジカルの存在によって開始される。嫌気性接着剤組成物は、酸素の存在下では液体の非重合状態のままであり、酸素が排除されると固体状態に硬化する能力がよく知られている。
【0006】
多くの場合、嫌気性接着剤系は、既知のウレタン化学に従って誘導された、メタクリレート、エチルアクリレート及びクロロアクレートエステル[例えば、ポリエチレングリコールジメタクリレート及びウレタンアクリレート(例えば、米国特許第3,425,988号(ゴーマン))]等の重合性アクリル酸エステルを末端基とする樹脂モノマーを含む。嫌気硬化性接着剤組成物中に典型的に存在する他の成分としては、有機ヒドロペルオキシド、例えばクメンヒドロペルオキシド、第三ブチルヒドロペルオキシド等の開始剤、組成物の硬化速度を高めるための促進剤、及びペルオキシ化合物の分解による接着剤の早期重合を防止するために包含されているキノン又はヒドロキノン等の安定剤が挙げられる。
【0007】
嫌気性硬化を誘導及び加速する望ましい硬化誘導組成物には、サッカリン、N,N-ジエチル-p-トルイジン(「DE-p-T」)及びN,N-ジメチル-O-トルイジン(「DE-o-T」)等のトルイジン、並びにマレイン酸を含むアセチルフェニルヒドラジン(「APH」)のうちの1つ又は複数が包含されてよい。例えば、米国特許第3,218,305号(クリーブル)、第4,180,640号(メロディー)、第4,287,330号(リッチ)、及び第4,321,349号(リッチ)を参照。
【0008】
サッカリンとAPHは、嫌気性接着剤硬化系の標準的な硬化促進剤成分として使用される。実際、ヘンケル社から現在入手可能なロックタイト(登録商標)ブランドの嫌気性接着剤製品の多くは、サッカリンを単独で使用するか、サッカリンとAPHの両方を使用している。
【0009】
嫌気性硬化性接着剤組成物には、金属イオンを封鎖するために使用されるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤も一般に包含される。
【0010】
事前に塗布されるねじロック用途での使用に適した組成物は、典型的に、乾燥した触感の形態で塗布されるが、後の段階での嫌気性硬化機能を備えている。
【0011】
場合によっては、硬化機構を使用して乾いた感触の形状が得られることもある。例えば、第1の硬化機構が、組成物を物品上の適所に保持するために乾いた感触の形状を形成した後、第2の硬化機構が作動してねじロックを達成することができる。
【0012】
例えば、欧州特許第0077659号(トンプソン)には、工学的部品をシール及び固定するための予め塗布された重合性流体が記載されている。この組成物は2つの硬化機構を有し、2つの硬化反応が起こる。第1の機構はUV光による硬化である。不透明剤が流体中に分散され、流体は放射線に対して実質的に不透明になる。液体を部品に塗布した後、紫外線にさらされるとコーティングが形成され、乾燥した粘着性のない表面層が形成される。表皮下の液は放射線の影響を受けず、一般に液体状態のままである。部品を別の部品にねじ込むと、表面層が破壊され、第2の重合(例えば、フリーラジカル重合)が開始され、ねじ部品がかみ合うときに嫌気環境が確立されると2番目の硬化反応が起こる。第2の重合機構は、ねじを互いにロックするように機能する。トンプソンでは、第1の重合で表皮のみが形成され、組成物の残りは表皮下で液体のままである。したがって、コーティングされた工学的部品の取り扱い中に表皮が破壊し、流体組成物が漏れ出す危険性がある。
【0013】
同様に、欧州特許第0548369号(ウサミ)には、ねじ等のねじ部材のねじ接触面に適用するための事前塗布接着剤組成物が記載されている。この組成物は、光硬化性バインダーを含み、二次硬化性組成物が分散されている。二次硬化性組成物は、マイクロカプセル化された反応性モノマー/活性化剤/開始剤を包含する。
【0014】
国際特許公開2004/024841A2(ハラー)には、ねじ付き物品に塗布するための硬化性組成物が記載されている。この組成物は、(a)(メタ)アクリレート官能性モノマー成分、(b)(メタ)アクリレート官能性オリゴマー成分、及び(c)光開始剤成分を含む第1の硬化機構の成分の分散液;並びに(ii)(e)アミン成分、及び(f)封入されたエポキシ樹脂成分を含む第2の硬化機構の成分;(iii)増粘剤成分を含む。光開始剤成分は、組成物の照射時に、ねじ付き物品に塗布された組成物の深さ全体にわたる第1の硬化を達成するのに適しており、その結果、マトリックス中に分散された第2の硬化機構の成分によってバインダーマトリックスが形成される。
【0015】
米国特許第9,181,457号(アタルワラ)には、ポリマーマトリックスとポリマーマトリックス内に存在する嫌気性硬化性成分とを含有する乾いた感触の組成物が記載されている。特に望ましい形態では、組成物は湿気硬化性である。この組成物は高温では流動性がなく、硬化すると耐溶剤性が向上する。この組成物は、ねじロック組成物として有用であり、テープ、ストリング又はシート等の担体基材上のコーティングとして配合することができる。
【0016】
英国特許第2,543,756号(レッドウィズ)には、嫌気性硬化性成分と、前記嫌気性硬化性成分を硬化させるための硬化成分とを含むねじロック組成物が記載されている。ここで、組成物は流動性のある粒子状であり、30~100℃の範囲の融点を有する。嫌気性硬化性成分は、嫌気性硬化性モノマー及び樹脂成分を含んでよい。組成物は、少なくとも2部形態で提供されてよい。嫌気硬化性成分は、好ましくは粉末の形態で提供される。好ましくは、樹脂成分は、メタクリル化ポリウレタン樹脂、ノボラック樹脂、又は高級メタクリル化ポリエステル樹脂から選択される。嫌気硬化性モノマーは、少なくとも1つのアクリル酸エステル基又はメタクリル酸エステル基を含むことが好ましい。組成物は溶媒を含まないことが好ましい。また、2つのねじ付き物品をねじロックする方法であって、前記組成物を少なくとも1つの物品のねじ山に塗布して、それをねじ山に溶着させる工程と、続いて、任意で冷却後、2つの物品を一緒にねじ込んでねじロック組成物の嫌気性硬化を開始し、2つの物品を化学的に接着させる工程を含む方法も開示される。前記組成物が塗布された物品も開示される。
【0017】
米国特許出願公開第4,039,705号(ドゥエク)は、1つの基材に完全に移動して別の基材に接着することができ、ペルオキシ開始剤による活性化及び酸素の排除によって硬化する、少なくとも1つの嫌気性樹脂系を包含する感圧接着剤層を含むシート及びテープ等の嫌気性硬化性感圧接着剤ストックに関する。嫌気性感圧接着剤は2つの異なる剥離面の間に含有されており、嫌気性硬化性感圧接着剤の硬化時に粘着剤を基材に移動させて基材をしっかりと固定することができる。
【0018】
従来の嫌気性ねじロック剤は、市場で好評を博しており、今後も好評を博するが、従来の液体嫌気性ねじロック剤や既知の非流動性チキソトロピック嫌気性ねじロック剤の使用で観察されている特定の商業用途には欠点がある。例えば、多くの場合、こうした組成物は大きな隙間を通って完全に硬化しない。また、嫌気性硬化の性質により、部品に塗布した後に空気にさらされたままの接着剤の部分は硬化しにくくなる(二次硬化機構が誘発されない場合)。したがって、ナット/ボルトアセンブリ上で空気にさらされたままの外部ボンドラインは、硬化を確実にするために追加の添加剤や硬化手段が講じられない限り、液体のままであることがよくある。その結果、外部ボンドラインの液体組成物が移動する傾向がある。従来の非流動性組成物の場合、その非流動性は組成物のチキソトロピー特性及び/又はレオロジー特性に依存するが、これらの組成物は、それらがさらされる温度が十分に高ければ流動する。さらに、硬化製品(上記のように未硬化のままの部分を有するもの)の耐溶剤性が劣る場合があり、環境相互作用が発生した時、完全性が疑わしいことを示している。これは、周囲に汚染問題及び危険な状態を引き起こす可能性がある。
【0019】
最新技術にもかかわらず、乾いた感触のねじロック組成物を含むねじ部材を包含する代替のねじロックシステム、こうしたねじ部材を形成する方法、及びこうしたねじ部材を組み立てる方法を提供することが望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第3,425,988号
【特許文献2】米国特許第3,218,305号
【特許文献3】米国特許第4,180,640号
【特許文献4】米国特許第4,287,330号
【特許文献5】米国特許第4,321,349号
【特許文献5】欧州特許第0077659号
【特許文献5】欧州特許第0548369号
【特許文献5】国際特許公開2004/024841A2
【特許文献5】米国特許第9,181,457号
【特許文献5】英国特許第2,543,756号
【特許文献5】米国特許出願公開第4,039,705号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】接着技術ハンドブック、29、467-79、A.ピッツィ及びK.L.ミッタル編、マーセル・デッカー社、ニューヨーク(1994)中のR.D.リッチ「嫌気性接着剤」
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
一態様では、本発明は、
液体嫌気硬化性成分;
固体嫌気硬化性成分;
固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂;及び
前記嫌気硬化性成分を硬化させるための硬化成分;
を含む嫌気硬化性組成物を提供する。
【0023】
有利には、本発明の組成物は実質的に固体であり、任意の適切な固体形態を提供するために使用することができる。本発明の組成物は、任意の適切な用途に使用されてよい。例えば、それらは、固体の形態でねじ付き物品上に提供されてもよく、糸形態で提供されてもよく、又はテープ形態で提供されてもよい。本発明の組成物は担体上に提供されてもよいし、自立型であってもよい。
【0024】
固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂は、約180,000g/モル~約260,000g/モルの範囲、適切には約200,000g/モル~約240,000g/モルの範囲、例えば、約215,000g/mol~230,000g/mol、例えば、220,000g/mol~225,000g/mol、例えば、約223,000g/molであり、分子量MwはASTM D5296-05(高速サイズ排除クロマトグラフィーによるポリスチレンの分子量平均及び分子量分布の標準試験方法)に従って測定される。
【0025】
固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂は、160℃~200℃、例えば165℃~190℃、例えば170℃~180℃の範囲の融点を有してよい。
【0026】
液体嫌気硬化性成分は、硬化性組成物の総重量に基づいて約20重量%~約50重量%の量で存在してもよく、適切には硬化性組成物の総重量に基づいて約30重量%~約40重量%の量で、例えば硬化性組成物の総重量に基づいて約36重量%存在してもよい。液体嫌気硬化性成分が組成物の総重量に基づいて約20重量%未満の量で存在する場合、組成物は、基材に塗布/コーティングされたときに硬すぎ/非流動性となるため、十分に移動しない可能性があり、例えば、一緒にねじ込まれている相互ねじの間の空間に移動しない可能性があり、ねじロック性能が劣ったり、接着性能が劣ったりする可能性がある。液体嫌気硬化性成分が組成物の総重量に基づいて約50重量%を超える量で存在する場合、部品上の完全性が悪影響を受ける可能性があり、組成物が流動的過ぎる/柔らか過ぎる可能性があり、例えば、組成物によって形成されたコーティングは、取扱い装置の表面、又はコーティングが塗布されている可能性のある他の基材を包含する他の基材等の他の表面と接触すると、容易に破断する。液体嫌気性硬化性成分が硬化性組成物の総重量に基づいて約20重量%~約50重量%の量で存在する場合、ねじロック及び/又は接着性能の間の許容可能なバランスを有する組成物、並びに十分な完全性を備えたコーティングを形成し、硬化して、良好な接着強度、接着される部品に組成物を塗布するのに必要な完全性、及び接着の最終用途に必要な接着強度を与える組成物が提供される。
【0027】
固体嫌気硬化性成分は、組成物の総重量に基づいて約8重量%~約30重量%の量、適切には組成物の総重量に基づいて約10重量%~約25重量%の量、例えば、硬化性組成物の総重量に基づいて15重量%~約22重量%で存在してよい。約8重量%未満の固体嫌気硬化性成分を含む組成物は、凝集力に欠ける傾向があり、部分塗布には適さない可能性がある。例えば、そのような組成物によって形成されたコーティングは、取り扱い装置の表面、又はコーティングが塗布された他の基材を包含する他の基材等の他の表面と接触すると、容易に破裂する可能性がある。約30重量%超過の固体嫌気性硬化性成分を含む組成物は、接着される部品に塗布するには脆すぎるコーティングを形成する傾向がある。固体嫌気硬化性成分が組成物の総重量に基づいて約8重量%~約30重量%の量で存在する場合、ねじロック及び/又は接着性能(硬化した場合)の間の許容可能なバランスを有する組成物(コーティングとして塗布した場合)、並びに十分な完全性及び強度を備えてコーティングとして塗布できる組成物が提供される。
【0028】
固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂は、硬化性組成物の総重量に基づいて約10重量%~約30重量%の量、適切には、硬化性組成物の総重量に基づいて約18重量%~約25重量%の量、例えば、硬化性組成物の総重量に基づいて約20重量%存在してもよい。約10重量%未満の固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン成分を含む組成物は、接着すべき部品に組成物を適切に塗布するには不十分なエラストマー特性を有する傾向がある。約30重量%超過の固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン成分を含む組成物は、不十分なねじロック/接着特性を示す傾向がある。固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂が硬化性組成物の総重量に基づいて約10重量%~約30重量%の量で存在する場合、ねじロック及び/又は接着性能の間の許容可能なバランスを有する組成物、並びに接着される部品への組成物の塗布を可能にするのに十分なエラストマー特性を備えたコーティングを形成できる組成物が提供される。
【0029】
嫌気硬化性成分を硬化させるための硬化成分は、硬化性組成物の総重量に基づいて約0.1~約10重量%、例えば、硬化性組成物の総重量に基づいて約1~約5重量%の量で存在してよい。
【0030】
適切には、液体嫌気硬化性成分は、液体(メタ)アクリレートモノマー成分を含む。
【0031】
液体(メタ)アクリレートモノマー成分は、式:HC=CGCOを有するものから選択される1つ又は複数であってよい。式中、Gは、水素、ハロゲン、又は1~約4個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは、1~約16個の炭素原子を有する、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルカリル、アラルキル、又はアリール基から選択され、これらはいずれも、任意で、シラン、ケイ素、酸素、ハロゲン、カルボニル、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、ウレア、ウレタン、カーボネート、アミン、アミド、硫黄、スルホネート、及びスルホン等で、置換又は割り込まれていてもよい。
【0032】
好適には、固体嫌気硬化性成分は、1つ又は複数の固体(メタ)アクリレートモノマー成分を含む。例えば、嫌気性硬化可能な固体は、フェニルイソシアネートとヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の反応生成物であり得る:
【0033】
【化1】
【0034】
これは、融点が約70~75℃の2-メタクリロキシエチルウレタンである。
【0035】
固体嫌気硬化性成分は、2モル当量のHEMAと、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(hMDI)、1,5-シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)等の1モル当量のジイソシアネートとの反応生成物であり得る。例えば:
【0036】
【化2】
【0037】
これは、融点が約72~74℃のHEMA-IPDI-HEMAである。
【0038】
【化3】
【0039】
これは、融点が約75~85℃のHEMA-hMDI-HEMAである。
【0040】
【化4】
【0041】
これは、融点が約75~85℃のHEMA-CHDI-HEMAである。
【0042】
固体嫌気性硬化性成分は、分子量>2000g・モルを有し、半結晶性ポリエステルポリオール主鎖を有するポリウレタンメタクリレート樹脂であり得る。このような樹脂の例は、国際特許公開WO2017/68196A1に記載されており、ダイナコール7380として知られるポリオールとトルエンジイソシアネートとの反応生成物であり、その後HEMAでエンドキャッピングが行われる。これらの樹脂の融点は50~80℃の範囲にある。
【0043】
ノボラックエポキシ樹脂とメタクリル酸との反応生成物であるノボラックビニルエステル樹脂も固体嫌気硬化性成分として有用である。これらの樹脂及びそれらの調製の例は、米国特許第9957344号に示されている。例えば、以下のものである。
【0044】
【化5】
【0045】
式中、nは2~10の整数であり、化合物の融点は約70~75℃である。
【0046】
適切には、硬化成分は、1-アセチル-2-フェニルヒドラジン、N,N-ジメチルパラトルイジン、N,N-ジエチルパラトルイジン、N,N-ジエタノールパラトルイジン、N,N-ジメチルオルトトルイジン、N,N-ジメチルメタトルイジン、インドリン、2-メチルインドリン、イソインドリン、インドール、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン、3-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン、2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-4-カルボン酸、及び1,2,3,4-テトラヒドロ-ベンゾ(H)キノリン-3-オールから成る群から選択される1つ又は複数を含む。
【0047】
本発明の嫌気硬化性組成物は、以下に包含される硬化促進剤を含んでよい。
【0048】
【化6】
【0049】
式中、Xは、CH,O、S,NR、CR、又はC=Oであり;Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキン、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、又はヒドロキシアルキンのうちの1つ又は複数であり;R~Rは、それぞれ水素、ハロゲン、アミノ、カルボキシル、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、又はアルカリルから選択され;Rは水素又はCHRであり、R及びRは、それぞれ水素、ハロゲン、アミノ、カルボキシル、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、又はアルカリルから選択され;nは0又は1である。
【0050】
任意で、上記の硬化促進剤は、アミン、アミンオキシド、スルホンアミド、金属源、酸、及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの共促進剤と組み合わせて使用される。
【0051】
例えば、共促進剤は、トリアジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルアニリン、ベンゼンスルファンイミド、シクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、サッカリン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-O-トルイジン、アセチルフェニルヒドラジン、マレイン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択されてよい。
【0052】
硬化促進剤は、以下であってよい。
【0053】
【化7】
【0054】
式中、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、又はヒドロキシアルキニルのうちの1つ又は複数であり、R及びRは、ハロゲン、アミノ、カルボキシル、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、又はアルカリルからそれぞれ個別に選択される。
【0055】
例えば、硬化促進剤は、以下の1つ又は複数から選択されてよい。
【0056】
【化8】
【0057】
硬化促進剤は、以下であってもよい。
【0058】
【化9】
【0059】
本発明の組成物は、ペルオキシドのようなフリーラジカル重合の開始剤をさらに含んでもよい。
【0060】
フリーラジカル重合の開始剤は、クメンヒドロペルオキシド(「CHP」)、パラ-メンタンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド(「TBH」)、t-ブチルペルベンゾエート、ベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジアセチルペルオキシド、ブチル4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレラート、p-クロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、t-ブチルペルベンゾエート、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチル-ペルオキシヘキ-3-イン、4-メチル-2,2-ジ-t-ブチルペルオキシペンタン、t-アミルヒドロペルオキシド、1,2,3,4-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド及びそれらの組み合わせから成る群から選択される1つ又は複数である。フリーラジカル重合の開始剤は、カプセル化されたペルオキシドを含んでもよい。
【0061】
本発明の組成物は、上記のものに加えて、又はその代わりに、硬化促進剤をさらに含んでもよい。例えば、硬化促進剤は、フェロセン、適切にはn-ブチルフェロセン等の1つ又は複数のメタロセンを含んでもよい。有利には、硬化促進剤の存在により、プラスチック基材等の「非活性」又は「受動」基材上での本発明の組成物の硬化が促進される。
【0062】
本発明の組成物は、少なくとも1つの溶媒をさらに含んでもよい。溶媒の使用は、例えば、配合又は分配の目的に有益な場合がある。適切には、少なくとも1つの溶媒は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、又はそれらの組み合わせを含む群から選択されてよい。
【0063】
しかしながら、重量%が使用される場合、溶媒を含まない組成物の総重量に基づいている。
【0064】
適切には、本発明の組成物は、テープ形態、フィラメント形態を包含する任意の適切な固体形態で、又は例えばナイロン若しくはポリエステル糸等の別の材料から作られたフィラメント又は糸を包含する基材に塗布されるコーティングとして提供されてよい。固体組成物のテープ又はフィラメントは、厚さが100ミクロン(μm)未満であってもよい。テープ又はフィラメントは、巻くことによって、すなわち、配管の接合部をシールするために使用されている現在のPTFEテープ又はスレッドシールコードと同様の方法で、適用できる。固体形態は、スティック、テープ、フィラメント、ガスケット、又はパッチを包含する、所望のパターン又は配置にすることができることが理解されるであろう。テープ形態又はフィラメント形態等の固体形態の組成物は、壊れることなく取り扱うのに十分な完全性を有してよい。テープ形態又はフィラメント形態等の固体状の組成物は、室温で基材、例えば金属ボルトに塗布することができる。テープ形態又はフィラメント形態等の固体形態の組成物は、少なくとも150℃、例えば180℃の温度で耐熱性を有してよい。これは、この組成物が一般的な産業環境の温度で性能を維持できるほど堅牢であることを意味する。高温であっても、テープ形態又はフィラメント形態等の固体形態の組成物は、非粘着性であり、乾いた感触であるため、剥離ライナー等の担体は必要ない。テープ形態又はフィラメント形態の組成物は、それ自体の上に巻き付けることができ、非粘着性で乾いた感触であるため、それ自体に付着しない。あるいは、テープ形態又はフィラメント形態は、本明細書に記載の嫌気性硬化性組成物及び1つ以上の剥離ライナーを含んでもよい。例えば、組成物が保管される温度が40℃を超える場合、40℃を超える温度では非粘着性組成物が粘着性になり、それ自体が粘着する可能性があるため、剥離ライナーが有用であり得る。上述したように、本発明の組成物は、テープ形態、フィラメント形態を包含する任意の適切な固体形態であってもよく、又は例えばナイロン若しくはポリエステルの糸等の他の材料で作られたフィラメント又は糸を包含する基材に塗布される(固体、乾いた感触)のコーティングとしてもよい。
【0065】
本発明の別の態様は、本明細書で請求される本発明の硬化性組成物を硬化することによって形成される硬化組成物を提供する。適切には、硬化性組成物は、嫌気性環境に曝露することによって硬化されてよい。硬化性組成物は、約1分~30分の範囲の時間、例えば、約1分~約20分等、嫌気性環境に曝露することによって硬化されてよい。任意で、硬化性組成物は、約40℃~約100℃の温度範囲内で硬化されてよい。例えば、硬化性組成物は、約40℃~約100℃の温度範囲内で、約1分~約30分の範囲の間、嫌気性環境に曝露することによって硬化されてよい。
【0066】
一旦硬化すると、本発明の組成物は、ISO 10964に従ってM10ナット及びボルトで評価した場合、黒色酸化軟鋼又はリン酸亜鉛基材に対して10Nm超過の破壊トルク値を示すことが望ましい。さらに、本発明の硬化組成物は、ISO 10964に従ってリン酸亜鉛M10ナット及びボルトで評価した場合、望ましくは、180℃までの温度、例えば50℃、80℃、120℃、150℃、又は180℃で10Nm超過の緩みトルク値を示す。
【0067】
別の態様では、本発明は、少なくとも1つのねじ面を含むねじ部材を提供し、前記少なくとも1つのねじ面は、本明細書に記載の嫌気硬化性組成物を含む。例えば、前記嫌気硬化性組成物は、テープ状形態又はフィラメント形態であってもよい。あるいは、異なる材料から作られたねじに塗布/コーティングされた組成物の形態であってもよい。テープ、糸、又は繊維は、例えば、前記テープ、糸、又は繊維をねじ面の周りに少なくとも部分的に巻き付けることによって、ねじ面に適用されてよい。例えば、前記嫌気硬化性組成物を、異なる材料から作られた糸又は繊維上にコーティングして、コーティングされた糸又は繊維を形成してもよい。コーティングされた糸又は繊維は、例えば、前記コーティングされた糸又は繊維をねじ面の周囲に少なくとも部分的に巻き付けることによって、ねじ面に適用してもよい。
【0068】
さらに別の態様では、本発明は、少なくとも1つのねじ面を含む少なくとも1つのねじ部材を準備する工程と、前記少なくとも1つのねじ面に、本明細書に記載の嫌気性硬化性組成物を塗布する工程を含む、ねじロック組成物を含むねじ部材を製造する方法である。適切には、嫌気硬化性組成物は、テープ形態、フィラメント形態で少なくとも1つのねじ面に塗布されるか、又は異なる材料から形成された糸形態若しくは繊維等の基材に塗布されるコーティングとして、例えば、テープ、フィラメント、若しくはコーティングされた基材は、ねじ部材の少なくとも1つのねじ面の周りに少なくとも部分的に巻き付けられる。適切には、テープ形態、フィラメント又はコーティングされた基材の嫌気性硬化性組成物は、非粘着性であり、乾いた感触であるため、剥離ライナー等の担体は必要ない。
【0069】
さらに別の態様では、本発明は、少なくとも1つのねじ面を含む第1のねじ部材を提供する工程;本明細書に記載の嫌気硬化性組成物を前記少なくとも1つのねじ面に塗布する工程;前記第1のねじ部材と嵌合係合可能な第2のねじ部材を提供する工程;前記第1のねじ部材及び第2のねじ部材を嵌合係合させ、それによって、前記嫌気硬化性組成物が前記第1のねじ部材及び第2のねじ部材の間で硬化するのに十分な時間、前記嫌気性硬化性組成物を嫌気環境に曝露する工程;を含む、ねじ部材を組み立てる方法を提供する。
【0070】
また、ねじロック用のテープ、糸、又は繊維を製造する方法であって、以下の工程を含む方法も提供される:
(i)少なくとも1つの固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂及び溶媒を混合する工程;前記固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂は、任意で約180,000g/mol~約260,000g/molの範囲、適切には約200,000g/mol~約240,000g/molの範囲、例えば約215,000g/mol~230,000g/mol、例えば220,000g/mol~225,000g/mol、例えば約223,000g/molの分子量Mwを有し、分子量MwはASTM D5296-05に従って測定されるものであり、任意で160℃~200℃、例えば165℃~190℃、例えば170℃~180℃の融点を有し、適切には、溶媒は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、又はそれらの組み合わせから選択されてよい;
(ii)液体嫌気硬化性成分、固体嫌気硬化性成分、及び前記嫌気硬化性成分を硬化させるための硬化成分を混合し、任意で、混合物に添加剤を添加する工程;
(iii)例えば、混合物を鋳造、又は押出し、及び/又はねじ付き物品又は剥離ライナー等の担体に塗布することによって、混合物を所望の形状に形成する工程;
溶媒を除去及び/又は溶媒を蒸発させて、本明細書に記載の嫌気性硬化性組成物及び任意で担体を含むテープ、糸、又は繊維を形成する工程。
【発明を実施するための形態】
【0071】
上で概説したように、本発明は、液体嫌気硬化性成分;固体嫌気硬化性成分;固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂;及び前記嫌気硬化性成分を硬化させるための硬化成分を含む嫌気性硬化性組成物を提供する。
【0072】
(定義及び標準的な試験方法)
「液体」という用語は、約5℃~30℃の温度範囲内で液体状態を意味し、適切には室温及び大気圧で液体状態を意味する。
【0073】
「固体」という用語は、約5℃~40℃の温度範囲内で固体状態を意味し、適切には室温及び大気圧で固体状態を意味する。固体状態は、材料が流体ではなく、支持なしでその境界を保持し、原子又は分子が相互に固定された位置を占め、自由に移動できない物質の状態として定義される。
【0074】
本発明に関して、タックフリーとは、乾いた感触であるが、組成物が取り扱い又は使用中に剥がれ落ちないことを意味する。例えば、本発明の組成物が塗布された物品は、乾いた感触である。本発明の組成物が塗布された物品は、そのような物品20個を乾燥したティッシュペーパー上に4時間個別に置き、ティッシュの外観に変化がない場合、乾いた感触であるとみなされる。
【0075】
本明細書に開示される分子量は、ISO 13885-1:2008「塗料及びワニス用バインダー、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、パート1:溶離剤としてのテトラヒドロフラン(THF)」に従って測定される。
【0076】
溶融温度範囲及び再凝固温度範囲は、ISO 1137-1:2016「プラスチック、示差走査熱量測定(DSC)、パート1 一般原則」に従って測定した。
【0077】
(液体嫌気硬化性成分)
適切には、液体嫌気硬化性成分は、液体(メタ)アクリレートモノマー成分を含む。
【0078】
液体(メタ)アクリレート成分は、β-カルボキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-デシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、エトキシル化フェニルモノアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、グリセロールモノ-メタクリレート、グリセロール1,3-ジメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、メチルトリグリコールメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルメタクリレート及びメタクリル酸及びそれらの混合物から選択される1つ又は複数の(メタ)アクリレートモノマーを含んでよい。
【0079】
好ましい液体(メタ)アクリレートモノマーとしては、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート及びメタクリル酸が挙げられる。
【0080】
1つ又は複数の適した(メタ)アクリレートは、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(「TRIEGMA」)、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジ-(ペンタメチレングリコール)ジメタクリレート、テトラエチレンジグリコールジアクリレート、ジグリセロールテトラメタクリレート、テトラメチレンジメタクリレート、エチレンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのような二官能性又は三官能性(メタ)アクリレート、並びにビスフェノール-Aモノ及びジ(メタ)アクリレート、例えばエトキシル化ビスフェノール-A(メタ)アクリレート(「EBIPMA」)、及びビスフェノール-Fモノ及びジ(メタ)アクリレート、例えば、エトキシル化ビスフェノール-F(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレートの中から選択されてよいが、これらに限定されない。
【0081】
例えば、レドックス硬化性成分には、ビスフェノールAジメタクリレートが含有されてもよい:
【0082】
【化10】
【0083】
適切には、レドックス硬化性組成物は、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートを含有してもよい。
【0084】
本明細書での使用に適している可能性があるさらに他の(メタ)アクリレートは、米国特許第5,605,999号(チュウ)によって教示され特許請求されているもののようなシリコーン(メタ)アクリレート部分(「SiMA」)であり、その開示は本明細書に明示的に記載される。
【0085】
他の適切な材料は、次の式で表されるポリアクリル酸エステルから選択されてよい:
【0086】
【化11】
【0087】
式中、Rは、水素、ハロゲン、又は炭素数1~約4のアルキルから選択される基であり、qは少なくとも1に等しい整数であり、好ましくは1~約4に等しく、Xは、少なくとも2個の炭素原子を含み、qプラス1の総結合容量を有する有機基である。Xの炭素原子数の上限に関しては、使用可能なモノマーは本質的に任意の値で存在する。しかしながら、実際問題として、一般的な上限は炭素原子約50個であり、例えば、望ましくは約30個、望ましくは約20個である。
【0088】
例えば、Xは次の式の有機基であり得る:
【0089】
【化12】
【0090】
式中、Y及びYのそれぞれは、少なくとも2個の炭素原子、望ましくは2~約10個の炭素原子を含有する炭化水素基等の有機基であり、Zは、少なくとも1個の炭素原子、好ましくは2~約10個の炭素原子を含有する有機基、好ましくは炭化水素基である。他の材料は、フランス特許第1,581,361号に開示されているような、ジ-又はトリ-アルキロールアミン(例えば、エタノールアミン又はプロパノールアミン)とアクリル酸との反応生成物から選択されてよい。
【0091】
(メタ)アクリレート官能基を有する適切なオリゴマーも使用してよい。このような(メタ)アクリレート官能基化オリゴマーの例としては、以下の一般式を有するものが挙げられる:
【0092】
【化13】
【0093】
式中、Rは、水素、炭素原子数1~約4のアルキル、炭素原子数1~約4のヒドロキシアルキルから選択される基を表す、又は
【0094】
【化14】
【0095】
式中、Rは、水素、ハロゲン、又は炭素原子数1~約4のアルキルから選択される基であり、Rは、水素、ヒドロキシルから選択される基である、又は
【0096】
【化15】
【0097】
mは、少なくとも1、例えば1~約15以上、望ましくは1~約8に等しい整数であり、nは、少なくとも1に等しい整数、例えば1~約40以上、望ましくは約2~約10であり、pは0又は1である。
【0098】
上記一般式に相当するアクリル酸エステルオリゴマーの代表例としては、ジ-、トリ-及びテトラエチレングリコールジメタクリレート;ジ(ペンタメチレングリコール)ジメタクリレート;テトラエチレングリコールジアクリレート;テトラエチレングリコールジ(クロロアクリレート);ジグリセロールジアクリレート;ジグリセロールテトラメタクリレート;ブチレングリコールジメタクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート;及びトリメチロールプロパントリアクリレートが挙げられる。
【0099】
ジアクリル酸エステル及び他のポリアクリル酸エステル、特に前の段落で説明したポリアクリル酸エステルが望ましいが、単官能性アクリル酸エステル(1つのアクリレート基を含有するエステル)も使用してよい。
【0100】
適切な化合物は、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、t-ブチルアミノエチルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、及びクロロエチルメタクリレートの中から選択することができる。
【0101】
別の有用な種類の材料は、全てのイソシアネート基をそれぞれウレタン又はウレイド基に変換するために適切な割合の、(メタ)アクリレート官能基化ヒドロキシル又はアミノ含有材料とポリイソシアネートとの反応生成物である。
【0102】
このようにして形成された(メタ)アクリレートウレタン又は尿素エステルは、その非アクリレート部分にヒドロキシ又はアミノ官能基を含有してよい。使用に適した(メタ)アクリル酸エステルは、次の式のものの中から選択されてよい:
【0103】
【化16】
式中、Xは、--O--及び以下から選択される。
【0104】
【化17】
【0105】
式中、Rは、水素又は炭素数1~7の低級アルキルから選択され;Rは、水素、ハロゲン(塩素等)、又はアルキル(メチル基及びエチル基等)から選択され;Rは、炭素数1~8のアルキレン、フェニレン及びナフチレンから選択される二価の有機基である。
【0106】
これらの基は、ポリイソシアネートと適切に反応すると、次の一般式のモノマーを生成する。
【0107】
【化18】
【0108】
式中、nは2~約6の整数であり;Bは、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アルカリル、アルカリル、並びに置換及び非置換の複素環基、並びにそれらの組み合わせから選択される多価有機基であり;R、R及びXは上記の意味を有する。
【0109】
Bの性質に応じて、尿素又はウレタン結合を有するこれらの(メタ)アクリル酸エステルは、オリゴマークラス(例えば、約1,000g/モル~約5,000g/モルまで)又はポリマークラス(約5,000g/モル超過)に分類される分子量を有する場合がある。
【0110】
他の不飽和反応性モノマー及びオリゴマー、例えば、スチレン、マレイミド、ビニルエーテル、アリル、アリルエーテル、及び米国特許第6844080号(クニーフシーら)に記載のものを使用することができる。米国特許第6433091号(シァ)に記載されているようなビニル樹脂も使用することができる。これらの不飽和反応性基を含有するメタクリレート又はアクリレートモノマーも使用することができる。
【0111】
もちろん、これらの(メタ)アクリレートと他のモノマーとの組み合わせも使用してよい。
【0112】
(固体嫌気硬化性成分)
本発明の嫌気硬化性組成物は、固体嫌気硬化性成分を含む。固体嫌気硬化性成分は、固体(メタ)アクリレート樹脂であってよい。適切には、固体(メタ)アクリレート樹脂は、上に挙げた適切な(メタ)アクリレート成分のリストから選択される。
【0113】
(固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂)
本発明の嫌気硬化性組成物は、固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂を含む。固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂は、約180,000g/モル~約260,000g/モルの範囲、適切には約200,000g/モル~約240,000g/モルの範囲、例えば約215,000g/モル、例えば約215,000g/mol~230,000g/mol、例えば220,000g/mol~225,000g/mol、例えば約223,000g/molの分子量Mwを有してよく、分子量MwはASTM D5296-05に従って測定される。固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂は、160℃~200℃、例えば165℃~190℃、例えば170℃~180℃の融点を有してよい。適切な固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂としては、スペイン、バルセロナ、17、08160モンメロ、カレル・デル・グラン・ビアルのルブリゾールから入手可能なパールボンド(登録商標)960が挙げられる。パールボンド(登録商標)960は、D5296-05(高速サイズ排除クロマトグラフィーによるポリスチレンの分子量平均及び分子量分布の標準試験方法)に従って測定したMwが222,906であり、170℃~180℃の範囲の融点を有する固体熱可塑性ポリエーテルポリウレタン樹脂である。
【実施例
【0114】
表1に示す嫌気性硬化性組成物をテープ形態に配合した。
【0115】
【表1】
【0116】
*使用した樹脂は、メタクリレート(HPMA)でエンドキャップされたジイソシアネートの反応生成物であるポリウレタンメタクリレート樹脂であった。
**赤色染料は非イオン性ポリマー着色剤である。これらの例では、ミリケンから市販されているリアクティント(登録商標)レッド(CAS番号は割り当てられていない)を使用した。
「Amt」=量
【0117】
表1の組成物は以下のように調製した。
スピードミキサーDAC150.147に移す前に、固体の熱可塑性ポリエーテルポリウレタンを約70℃の温度で酢酸エチルに溶解した。次いで、残りの成分を添加し、各成分が溶解するまで混合を続けた。マイクロカプセル化されたペルオキシド又はメタクリレートを含む組成物の場合、カプセル化された成分は溶解せず、マイクロカプセル化された成分が溶液中で分散液を形成するまで混合を続けた。次いで、コーティングプレート温度を30℃に維持したエルコメーター4340自動フィルムコーターを使用して、各溶液をシリコン処理ポリエステル剥離ライナー(HiFi SR4-122、厚さ75ミクロン)上に鋳造した。コーティング後、加熱されたコーティングプレートから酢酸エチルを蒸発させた。乾いた感触のフィルムが得られた。
【0118】
本発明に関して本明細書で使用される場合、「含む(comprises)/含む(comprising)」という語及び「有する/包含する」という語は、記載された特徴、整数、工程又は成分の存在を特定するために使用されるが、他の機能、整数、工程、成分、又はそれらの群の1つ又は複数の存在又は追加を排除するものではない。
【0119】
明確にするために別個の実施形態に関連して説明される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態に関連して説明される本発明の様々な特徴は、個別に、又は任意の適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。
【0120】
表1に特定される本発明の組成物から形成された各フィルムのねじロック性能を、ISO 10964に従ってM10ナット及びボルトについて評価した。本発明の組成物をM10ボルトに塗布し、前記M10ボルトと嵌合係合することができるM10ナットを備えたねじアセンブリを形成した。硬化した組成物の破断強度及びプリベイル強度を測定する前に、ねじアセンブリを室温(20℃~25℃)で24時間保持した。様々な基材上の各組成物の結果を表2に示す。
【0121】
【表2】
【0122】
本発明の組成物を、金属スペーサーを備えたM10リン酸亜鉛ボルトに塗布し、5Nmの適用力で前記M10ボルトに嵌合係合できるM10ナットを備えたねじアセンブリを形成した。ねじアセンブリを室温(20℃~25℃)で168時間保持した後、特定の温度で硬化した組成物の破断強度及びプリベイル強度を測定した。様々な温度での各組成物の結果を表3に示す。
【0123】
【表3】
【国際調査報告】