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特表2024-515177スフィンゴシン-1-リン酸受容体アゴニストの薬学的に許容される塩及びその結晶形
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-05
(54)【発明の名称】スフィンゴシン-1-リン酸受容体アゴニストの薬学的に許容される塩及びその結晶形
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/12 20060101AFI20240329BHJP
   C07C 309/04 20060101ALI20240329BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
C07D401/12
C07C309/04 CSP
A61K31/454
A61P25/00
A61P37/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563073
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 KR2022005378
(87)【国際公開番号】W WO2022220601
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0048829
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スル・ア・チュン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ウク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ユン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スン・ウォン・キム
(72)【発明者】
【氏名】キ・スク・パク
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB08
4C063CC22
4C063DD10
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA03
4C086BC37
4C086GA07
4C086GA13
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA45
4C086ZA66
4C086ZA75
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB08
4C086ZB15
4C086ZC41
4H006AA01
4H006AB20
(57)【要約】
本発明は、スフィンゴシン-1-リン酸受容体アゴニストの薬学的に許容される塩及びその結晶形に関し、より具体的には、式(1)の1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸のカリウム塩又はメタンスルホン酸塩、及びその結晶形に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸のカリウム塩。
【請求項2】
結晶形であることを特徴とする請求項1に記載のカリウム塩。
【請求項3】
以下のX線回折パターンスペクトルから選択される3個以上の特性ピーク(2θ)を有することを特徴とする請求項2に記載のカリウム塩:
6.14±0.2°、9.59±0.2°、10.23±0.2°、11.25±0.2°、12.32±0.2°、12.98±0.2°、15.39±0.2°、16.18±0.2°、18.47±0.2°、18.89±0.2°、19.22±0.2°、20.57±0.2°、21.14±0.2°、21.91±0.2°、22.50±0.2°、23.34±0.2°、24.16±0.2°、24.70±0.2°、26.12±0.2°及び27.03±0.2°。
【請求項4】
以下のX線回折パターンスペクトルから選択される3個以上の特性ピーク(2θ)を有することを特徴とする請求項3に記載のカリウム塩:
6.14±0.1°、9.59±0.1°、10.23±0.1°、11.25±0.1°、12.32±0.1°、12.98±0.1°、15.39±0.1°、16.18±0.1°、18.47±0.1°、18.89±0.1°、19.22±0.1°、20.57±0.1°、21.14±0.1°、21.91±0.1°、22.50±0.1°、23.34±0.1°、24.16±0.1°、24.70±0.1°、26.12±0.1°及び27.03±0.1°。
【請求項5】
1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸のメタンスルホン酸塩。
【請求項6】
結晶形であることを特徴とする請求項5に記載のメタンスルホン酸塩。
【請求項7】
以下のX線回折パターンスペクトルから選択される3個以上の特性ピーク(2θ)を有することを特徴とする請求項6に記載のメタンスルホン酸塩:
13.16±0.2°、13.65±0.2°、14.62±0.2°、15.71±0.2°、17.95±0.2°、18.21±0.2°、19.73±0.2°、20.70±0.2°、22.31±0.2°、22.49±0.2°、22.92±0.2°、24.23±0.2°、24.95±0.2°、25.35±0.2°、29.52±0.2°及び31.78±0.2°。
【請求項8】
以下のX線回折パターンスペクトルから選択される3個以上の特性ピーク(2θ)を有することを特徴とする請求項7に記載のメタンスルホン酸塩:
13.16±0.1°、13.65±0.1°、14.62±0.1°、15.71±0.1°、17.95±0.1°、18.21±0.1°、19.73±0.1°、20.70±0.1°、22.31±0.1°、22.49±0.1°、22.92±0.1°、24.23±0.1°、24.95±0.1°、25.35±0.1°、29.52±0.1°及び31.78±0.1°。
【請求項9】
請求項1又は5に記載の1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸のカリウム塩又はメタンスルホン酸塩(メシル酸塩)を、薬学的に許容される担体とともに含む、多発性硬化症を含む自己免疫疾患の治療用医薬組成物。
【請求項10】
請求項1又は5に記載の1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸のカリウム塩又はメタンスルホン酸塩(メシル酸塩)を、薬学的に許容される担体とともに含む、スフィンゴシン-1-リン酸に関連する望ましくないンパ球浸潤によって引き起こされる疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項11】
請求項1又は5に記載の1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸のカリウム塩又はメタンスルホン酸塩(メシル酸塩)を、薬学的に許容される担体とともに含む、免疫調節障害の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項12】
前記免疫調節障害が、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、強皮症及び自己免疫性肝炎からなる群から選択される自己免疫又は慢性炎症疾患であることを特徴とする請求項11に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スフィンゴシン-1-リン酸受容体アゴニストの薬学的に許容される塩及びその結晶形に関する。より具体的には、下記式(1)
【化1】
で示される1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸のカリウム塩又はメタンスルホン酸塩、及びその結晶形に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は、セラミドを出発物質とする細胞内セラミド経路を介して産生される。セラミドは、2つの経路で産生され、その1つ目はデノボ生合成経路である。セラミドはまた、細胞膜構成物質であるスフィンゴミエリンが細胞内で分解されることによって産生される。各組織のS1Pレベルは、2つの生合成スフィンゴシンキナーゼ(SphKs)と2つの生分解性S1Pホスファターゼ(S1Pリアーゼ及びリゾリン脂質ホスファターゼ)によって制御されている。スフィンゴシンキナーゼによるスフィンゴシンのリン酸化を介して産生されるS1Pは、細胞増殖、細胞骨格の形成と遊走、接着及びタイトジャンクションの構築、形態形成など様々な細胞反応を媒介すると知られている。S1Pは、血漿中ではアルブミンを含む血漿タンパク質と結合した形で高濃度(100~1000nM)で存在し、組織中では低濃度で存在している。
【0003】
S1Pは、G-タンパク質共役受容体であるS1P受容体に結合して、様々な生物学的機能を示す。S1P受容体のサブ-タイプとしては、現在までにS1P1~S1P5が知られており、それぞれ内皮分化遺伝子受容体(EDG)1、5、3、6及び8と名付けられている。S1P受容体は、白血球再循環、神経細胞増殖、形態変化、遊走、内皮機能、血圧調節及び心血管系の発達など、様々な生物学的機能に関与していることが知られている。
【0004】
近年、これら受容体を介したS1Pシグナル伝達過程が、炎症反応と修復過程など、多発性硬化症に関連する一連の反応に重要な役割を果たしていることが多くの研究で明らかになり、実際に非選択的なS1P1アゴニストが多発性硬化症の治療薬として承認された。S1P受容体は、多発性硬化症の誘発に関係する多くの細胞で広く発現している。特に、S1P1受容体は免疫系において重要な役割を果たしている。S1P1受容体は、主にT細胞及びB細胞などのリンパ球表面に発現し、S1Pに応答してリンパ球の再循環に関与している。正常な状態では、S1P濃度はリンパ組織よりも体液中の方が高いため、遠心性リンパが循環した後、リンパ球はS1P濃度の差によりリンパ組織から離れて循環している。しかし、S1P1アゴニストによってリンパ球のS1P1受容体が下方制御されると、リンパ組織からリンパ球の離脱が起こらず、その結果、中枢神経系(CNS)で炎症と組織損傷を起こす自己攻撃性リンパ球の浸潤が減少する。その結果、多発性硬化症に治療効果が得られる。非選択的なS1P1アゴニストであるフィンゴリモドは、多発性硬化症の治療のための経口薬として承認されている。S1P1受容体に結合して活性化すると、皮肉にも受容体はリンパ球表面から内在化又は分解されるため、機能的なS1P1拮抗薬として作用する。
【0005】
S1P受容体に関連して、特許文献1には、S1P受容体アゴニストとして有効な化合物が開示されている。前記化合物のS1P受容体アゴニストとしての活性は優れているが、生物学的利用能を向上させるために溶解性を改善し、熱安定性及び湿気安定性などの薬学的特性を改善した形態の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO 2014/129796号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、薬学的優秀性を有する下記式(1)
【化2】
で示される1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸の薬学的に許容される塩及びその結晶形を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題解決のために、本発明は、1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸のカリウム塩及びその結晶形を提供する。
【0009】
また、本発明は、1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸のメタンスルホン酸塩及びその結晶形を提供する。
【0010】
また、本発明は、有効成分として前記1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸のカリウム塩又はメタンスルホン酸塩、又はその結晶形を、薬学的に許容される担体とともに含む医薬組成物を提供する。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の一側面によれば、1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸のカリウム塩が提供される。
【0013】
本発明による一実施形態において、前記1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸のカリウム塩は結晶形であってもよい。
【0014】
本発明による一実施形態において、前記1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸のカリウム塩の結晶形は、以下のX線回折パターンスペクトルから選択される3個以上、5個以上、7個以上、9個以上又は10個以上の特性ピーク(2θ)を有する:
6.14±0.2°、9.59±0.2°、10.23±0.2°、11.25±0.2°、12.32±0.2°、12.98±0.2°、15.39±0.2°、16.18±0.2°、18.47±0.2°、18.89±0.2°、19.22±0.2°、20.57±0.2°、21.14±0.2°、21.91±0.2°、22.50±0.2°、23.34±0.2°、24.16±0.2°、24.70±0.2°、26.12±0.2°及び27.03±0.2°。
【0015】
本発明による一実施形態で、前記1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸のカリウム塩の結晶形は、以下のX線回折パターンスペクトルから選択される3個以上、5個以上、7個以上、9個以上又は10個以上の特性ピーク(2θ)を有する:
6.14±0.1°、9.59±0.1°、10.23±0.1°、11.25±0.1°、12.32±0.1°、12.98±0.1°、15.39±0.1°、16.18±0.1°、18.47±0.1°、18.89±0.1°、19.22±0.1°、20.57±0.1°、21.14±0.1°、21.91±0.1°、22.50±0.1°、23.34±0.1°、24.16±0.1°、24.70±0.1°、26.12±0.1°及び27.03±0.1°。
【0016】
前記カリウム塩の結晶形を熱重量分析(TGA)にかけると、約30~100℃で約3.9%の重量損失が観察される。前記カリウム塩の結晶形を示差走査熱量測定(DSC)を利用して分析すると、TGAの初期重量損失に対応する約45~125℃位置に広い吸熱ピークが観察され、さらに加熱すると、約173℃、205℃、236℃(オンセット)に吸熱ピークが観察される。前記カリウム塩の結晶形をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で定量分析すると、水への溶解度は33238.5μg/mLである。
【0017】
本発明の他の側面によれば、1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸のメタンスルホン酸塩が提供される。
【0018】
本発明による一実施形態において、前記1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸のメタンスルホン酸塩は結晶形であってもよい。
【0019】
本発明による一実施形態において、前記1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸のメタンスルホン酸塩の結晶形は、以下のX線回折パターンスペクトルから選択される3個以上、5個以上、7個以上、9個以上又は10個以上の特性ピーク(2θ)を有する:
13.16±0.2°、13.65±0.2°、14.62±0.2°、15.71±0.2°、17.95±0.2°、18.21±0.2°、19.73±0.2°、20.70±0.2°、22.31±0.2°、22.49±0.2°、22.92±0.2°、24.23±0.2°、24.95±0.2°、25.35±0.2°、29.52±0.2°及び31.78±0.2°。
【0020】
本発明による一実施形態において、前記1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸のメタンスルホン酸塩の結晶形は、以下のX線回折パターンスペクトルから選択される3個以上、5個以上、7個以上、9個以上又は10個以上の特性ピーク(2θ)を有する:
13.16±0.1°、13.65±0.1°、14.62±0.1°、15.71±0.1°、17.95±0.1°、18.21±0.1°、19.73±0.1°、20.70±0.1°、22.31±0.1°、22.49±0.1°、22.92±0.1°、24.23±0.1°、24.95±0.1°、25.35±0.1°、29.52±0.1°及び31.78±0.1°。
【0021】
前記メタンスルホン酸塩の結晶形を熱重量分析(TGA)にかけると、約50℃未満で約0.5量の重量損失が観察される。前記メタンスルホン酸塩の結晶形を示差走査熱量測定(DSC)を利用した分析すると、約148℃位置で吸熱ピークが観察される。前記メタンスルホン酸塩の結晶形をHPLCで定量分析すると、水への溶解度は536.8μg/mLである。
【0022】
本発明の他の側面によれば、前記1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸のカリウム塩又はメタンスルホン酸塩を、薬学的に許容される担体とともに含む医薬組成物が提供される。
【0023】
本発明において、「医薬組成物」は、本発明による有効化合物に加えて、担体、希釈剤、賦形剤などとの他の化学成分を含んでいてもよい。従って、前記医薬組成物は、必要に応じて、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、又はそれらの組み合わせが含まれてもよい。医薬組成物は、体内への化合物の投与を容易にする。化合物を投与するための様々な方法には、経口、注射、エアロゾル、非経口、及び局所投与が挙げられるが、これらに限定されない
【0024】
本明細書において、「担体(carrier)」とは、細胞又は組織への化合物の投与を容易にする化合物を意味する。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、生物体の細胞又は組織への多くの有機化合物の投与を容易にする従来の担体である。
【0025】
本明細書において、「希釈剤(diluent)」とは、生物学的に活性な形態を安定化させるだけでなく、化合物を溶解する溶媒中で希釈される化合物を意味する。この分野では、緩衝液に溶解した塩が希釈剤として使用される。従来使用される緩衝液は、体液中の塩の形を模倣したリン酸緩衝食塩水である。緩衝液は低濃度で溶液のpHを制御できるため、緩衝希釈剤は化合物の生物学的活性を変化させない。
【0026】
本明細書において、「薬学的に許容される」とは、化合物の生物学的活性と物性を損なわない性質を意味する。
【0027】
本発明において、式(1)の化合物のカリウム塩又はメタンスルホン酸塩は、様々な薬学的投与される剤形として製剤化することができる。本発明の医薬組成物の調製において、有効成分、具体的には式(1)の化合物のカリウム塩又はメタンスルホン酸塩を、投与形態を考慮して選択された薬学的に許容される担体と混合される。例えば、本発明による医薬組成物は、必要に応じて注射剤、経口剤などとして製剤化することができる。
【0028】
本発明の式(1)の化合物のカリウム塩又はメタンスルホン酸塩は、公知の医薬用担体と賦形剤を用いて公知の方法で製剤化し、単位用量又は多用量容器に挿入することができる。製剤の形態は、油又は水性溶媒中の溶液、懸濁液又はエマルジョンであってもよく、従来の分散剤、懸濁剤又は安定化剤を含む。さらに、化合物は、例えば、使用前に無菌発熱物質を含まない水に溶解される乾燥粉末の形態であってもよい。本発明の式(1)の化合物のカリウム塩又はメタンスルホン酸塩は、ココアバター又はその他グリセリドなどの従来の坐剤基剤を使用することによって坐剤に製剤化することができる。経口投与用の固体形態には、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末及び顆粒が含まれる。特にカプセル剤と錠剤が好ましい。錠剤及び丸剤は腸溶コーティングされていることが好ましい。固体形態は、本発明の式(1)の化合物の結晶形を、スクロース、ラクトース、デンプンなどの不活性希釈剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、崩壊剤、結合剤などから選択される少なくとも1つの担体と混合することによって製造される。さあに、経皮投与形態、例えば、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、パッチ又は噴霧剤として製剤化することもできる。
【0029】
本発明による医薬組成物は、スフィンゴシン-1-リン酸受容体に関連する疾患の予防又は治療に適している。本発明の一実施形態において、前記医薬組成物は、多発性硬化症を含む自己免疫疾患の治療に使用することができる。本発明による一実施形態において、前記医薬組成物は、スフィンゴシン-1-リン酸に関連する望ましくないンパ球浸潤によって引き起こされる疾患の予防又は治療に使用することができる。本発明による一実施形態において、前記医薬組成物は、免疫調節障害の予防又は治療に使用することができる。本発明による一実施形態には、前記免疫調節障害は、例えば、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、強皮症(scleroderma)及び自己免疫性肝炎からなる群から選択される自己免疫又は慢性炎症疾患であってもよいが、これらに限定ない。
【0030】
本明細書において、「予防」という用語は、疾患に罹患する可能性を低減又は排除することを指す。
【0031】
本明細書において、「治療」という用語は、疾患の症状を示す対象における疾患の進行を阻止、遅延、又は緩和することを意味する。
【発明の効果】
【0032】
本発明の1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸のカリウム塩又はメタンスルホン酸塩、及びその結晶形は、スフィンゴシン-1-リン酸受容体アゴニストとしての薬理活性を有すると同時に、高い溶解度による優れた生体利用率だけではなく、安定性、例えば、熱安定性及び保存安定性などの優れた薬学的特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】カリウム塩の結晶形のX線粉末回折(XRPD)スペクトルである。
図2】カリウム塩の結晶形の熱重量分析(TGA)/示差走査熱量測定(DSC)分析結果である。
図3】メタンスルホン酸塩の結晶形のX線粉末回折(XRPD)スペクトルである。
図4】メタンスルホン酸塩の結晶形の熱重量分析(TGA)/示差走査熱量測定(DSC)分析結果である。
【実施例
【0034】
以下、実施例を挙げて本願発明をより詳細に説明する。しかしながら、本発明の保護範囲は、これらの実施例に限定されるものではないことを理解されたい。
【0035】
製造例:1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸の合成
WO2014/129796 A1号の実施例153に記載された方法に準じて、1-[1-クロロ-6-(3-クロロ-1-イソプロピル-1H-インダゾール-5-イルメトキシ)-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イルメチル]-ピペリジン-4-カルボン酸(以下、「化合物1」という)を調製した。
【0036】
実施例1:カリウム塩及び結晶形の調製
化合物1(フリー体)3g、メタノール30mL、1当量の水酸化カリウム及び水1mLを反応器に加え、撹拌した。当該溶液を加熱(60℃)したが、懸濁液状態は維持されたため、冷却(室温)し、減圧下で蒸留して溶媒を除去した。当該固体に6mLのジクロロメタンを加えて溶解した後、貧溶媒としてメチルtert-ブチルエーテル30mLを用いて結晶化を行った。
【0037】
実施例2:カリウム塩の結晶形の分析
(1)XRPD(粉末X線回折)
XRPD分析は、PANalytical社製のX’pert Pro MPD回折計を使用し、Cu放射線の入射ビームを使用して行った。試料約20~30mgをガラス製試料ホルダー上で平坦に圧縮した後、装置の発電機45kV(加速電圧)、40mA(フィラメント発光)に設定し、反射モード(ノンスピン)で測定を行った。4~40°範囲のブラッグ角(2θ)を、ステップサイズ0.026°及びステップ当たりの時間51秒の条件で測定した。XRPDパターンは、HighScore Plus2.2cソフトウェアで分類及び処理さし、結果を図1及び表2に示した。
【0038】
(2)DSC(示差走査熱量測定)
DSCは、メトラー・トレドDSC1システムを使用して行った。約2~5mgの試料を秤量し、40μLのAlるつぼ(ピンホール蓋が1つ付いた平底アルミニウムパン)に入れ、ピンホールを1つ開けた。この後、試料を10℃/分の速度で25℃から350℃まで加熱し、DSCを測定した。測定中は、装置内に窒素ガスを70mL/分の速度で供給し、酸素及び他のガスの流入を防いだ。データ収集及び評価は、ソフトウェアSTAReを使用して行った(図2)。
【0039】
(3)TGA(熱重量分析)
TGAは、メトラー・トレドTGA/DSC1モジュールを使用して行った。約4~8mgの試料を秤量し、100μLのAlるつぼ(平底のアルミニウムるつぼ)に入れた。その後、試料を10℃/分の速度で30℃から350℃まで加熱し、TGAを測定した。測定中は、装置内に80mL/分の速度で窒素ガスを供給し、酸素及び他のガスの流入を防いだ。データ収集及び評価は、ソフトウェアSTAReを使用して行った(図2)。
【0040】
(4)定量分析(HPLC)
約26.7mgの試料を正確に量り、500mLのフラスコに入れた。そこに希釈液(メタノール:精製水≒1:1)450mLを加え、完全に溶解させた後、標線まで希釈液を満たした。HPLC装置及び分析方法は、下記表1に示す。
【表1】
【0041】
(5)結果
XRPD分析の結果、化合物が結晶形であることが確認された。
【表2】
【0042】
TGA測定の結果、約30~100℃で約3.9%の重量損失が観察された。
【0043】
DSC測定の結果、TGAの初期重量損失に相当する約45~125℃にブロードな吸熱ピークが観察された。さらに加熱すると、約173℃、205℃、236℃(オンセット)に吸熱ピークが観察され、これは固体の溶融による吸熱ピークと予想された。
【0044】
HPLCによる定量分析の結果、カリウム塩の結晶形の水溶解度は33238.5μg/mLであった。
【0045】
実施例3:メタンスルホン酸塩及び結晶形の調製
メタンスルホン酸塩及びその結晶形は、以下の2つの方法により調製した。
(1)化合物1(フリー体)3g、水30mL及びメタンスルホン酸を混合した溶液を調製した。当該溶液を氷冷した後、45mLのメチルtert-ブチルエーテルを加えた。その後、9mLの水で洗浄した。
【0046】
(2)化合物1(フリー体)5g、水25mL及びメタンスルホン酸を混合した溶液を調製した。当該溶液を氷冷した後、45mLのメチルtert-ブチルエーテルを加えた。その後、15mLの水/メチルtert-ブチルエーテルの混合液で洗浄した。
【0047】
実施例4:メタンスルホン酸塩の結晶形の分析
(1)XRPD(粉末X線回折)
前記実施例2と同様の方法でXRPD分析を行った(図3)。
【表3】
【0048】
(2)DSC(示差走査熱量測定)及びTGA(熱重量分析)
前記実施例2と同様の方法でDSC及びTGAを測定した(図4)。
【0049】
(3)定量分析法(HPLC)
前記実施例2と同様の方法で定量分析を行った。
【0050】
(4)結果
XRPD分析結の果、結晶形であることが確認された。
【0051】
TGA測定の結果、約50℃未満の初期温度で約0.5%の重量損失が観察された。
【0052】
DSC測定の結果、約148℃に吸熱ピークが観察され、これは固体の溶融による吸熱ピークと予想された。
【0053】
HPLCによる定量分析の結果、メタンスルホン酸塩の結晶形の水溶解度は536.8μg/mLであった。
【0054】
実施例5:他の塩との特性比較
各種の塩を調製した。前記と同様の方法で特性分析した後、カリウム塩及びメタンスルホン酸塩(メシル酸塩)との比較を下記表4に示した。
【表4】
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】