(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-08
(54)【発明の名称】エアロゾルおよび気化画分両者を捕捉する気体または呼気サンプリング装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/02 20060101AFI20240401BHJP
G01N 1/22 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
G01N1/02 D
G01N1/02 W
G01N1/22 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566468
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 EP2022061246
(87)【国際公開番号】W WO2022229280
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ノイナー,リーザ
(72)【発明者】
【氏名】ザイプ,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ジェイミー
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA04
2G052AA05
2G052AA34
2G052AB11
2G052AC02
2G052AD02
2G052AD15
2G052AD22
2G052AD42
2G052AD55
2G052BA22
2G052EA03
2G052EB11
2G052ED01
2G052ED06
2G052ED09
2G052GA27
2G052JA03
(57)【要約】
本発明は気体または呼気サンプルのサンプリング装置に関する。このような装置は、1個の装置を使用して気体または呼気サンプルからエアロゾルおよび粒子ならびに揮発性有機化合物(VOC)両者を収集できる。得られたサンプルは、過度の後処理を要することなく(バイオ)マーカーの存在または非存在を決定するための分析法に適合でき、それにより、使用および空気または呼気サンプルの分析が単純化される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体サンプル収集用装置であって、
a. 外気からエアロゾルおよび粒子を収集する手段および
b. 外気から揮発性有機化合物(VOC)を収集する手段
を含み、ここで、外気からエアロゾルおよび粒子を収集する手段およびVOCを収集する手段は、装置が同じ体積の外気からエアロゾル、粒子およびVOCを収集するよう互いに接続されている、装置。
【請求項2】
ヒト呼気から呼気サンプルを捕捉する装置であって、
a. ヒト呼気からエアロゾルおよび粒子を収集する手段および
b. ヒト呼気から揮発性有機化合物(VOC)を収集する手段
を含み、ここで、ヒト呼気からエアロゾルおよび粒子を収集する手段およびVOCを収集する手段は、装置が同じ体積の吐出されたヒト呼気からエアロゾル、粒子およびVOCを収集するよう互いに接続されている、装置。
【請求項3】
エアロゾルおよび粒子を収集する手段がそのようなエアロゾルおよび粒子を捕捉するためのフィルターを含む、請求項1または2の装置。
【請求項4】
フィルターが静電フィルターである、請求項3の装置。
【請求項5】
エアロゾルおよび粒子を収集する手段およびVOCを収集する手段が気密接続を介して接続される、請求項1~4の何れかの装置。
【請求項6】
VOCを収集する手段が熱脱着チューブを含む、請求項1~5の何れかの装置。
【請求項7】
熱脱着チューブがハニカム構造を含む、請求項6の装置。
【請求項8】
ハニカム構造が450℃以上の温度に耐えることができる物質で製造されている、請求項7の装置。
【請求項9】
ハニカム構造が吸着物質を含む、請求項7の装置。
【請求項10】
ハニカム構造が1以上の吸着物質でコーティングされている、請求項9の装置。
【請求項11】
請求項1~10の何れかの装置で外気をサンプリングする方法。
【請求項12】
請求項2~10の何れかの装置でヒト呼気をサンプリングする方法。
【請求項13】
吐き出されたヒト呼気または外気のサンプルにおける目的のバイオマーカーの存在を決定する方法であって、
a. ヒト呼気または外気からエアロゾルおよび粒子を収集し、
b. ヒト呼気または外気から揮発性有機化合物(VOC)を収集し、そして
c.収集したエアロゾル、粒子またはVOCの一つにおける目的のバイオマーカーの存在を決定することを含み、
ここで、エアロゾル、粒子およびVOCが同じ吐出されたヒト呼気または同じ体積の装置外気体から収集され、請求項1~10の何れかの一つの装置で収集される、方法。
【請求項14】
目的のバイオマーカーの存在の決定を含む、患者が障害を有するかまたはそのリスクを有するかについて診断する方法であって、
a. ヒト呼気からエアロゾルおよび粒子を収集し、
b. ヒト呼気から揮発性有機化合物(VOC)を収集し、
c.収集したエアロゾル、粒子またはVOCの一つにおける目的のバイオマーカーの存在を決定し、そして
d. 目的のバイオマーカーの存在または非存在と疾患状態を相関させることを含み、
ここで、エアロゾル、粒子およびVOCが請求項2~10の何れかの装置で同一の吐出されたヒト呼気から収集される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒト呼気からの呼気サンプルなどの気体または呼気サンプルの収集および一つの装置でのエアロゾル、粒子および揮発性有機化合物両者の収集を可能にする装置に関する。収集空気または呼気サンプルにおけるバイオマーカーの存在または非存在を、本装置で収集したサンプルから決定できる。
【背景技術】
【0002】
背景
典型的に、呼気捕捉装置は、揮発性有機化合物(VOC)、呼気エアロゾルまたは呼気凝縮物何れかの1個の呼気画分にしか焦点を当てていない。これらの画分の各々は、バイオマーカー、代謝物、血中に存在する有機化合物または粒子を含む独特な情報を含む。当分野での現在の厳しい制約の一つは、VOC分析用装置に直接吹込むことが、機械的緩和法(ポンプ、大死容積など)に依らずに円滑に進めるには典型的に背圧が大きすぎるため、不可能であることである。さらに、得られたバイオマーカーの量の分析は、一般に時間、材料および費用をかけずに実施しなければならない。さらに、複雑な分子構造および/または慣用法で収集したサンプルに存在するマーカーの量により、多くのこのようなマーカーを同定することさえ困難である。
【0003】
より具体的に、最近呼気サンプリングの分野は急速に拡大している。呼気サンプルの捕捉のための一般的アプローチは、空気サンプリングバッグに呼気サンプルを吹入れさせ、続いて1以上の吸着剤を詰め込んだ熱脱着チューブへのサンプリングバッグ内容物の濃縮である。ある種の空気サンプリングポンプが、バッグから加熱チューブに呼気サンプルを吸引するのに必要である。これらの複数工程が、通常の熱脱着チューブの背圧により、TDチューブにヒトが直接気体を吹込むことを不可能にするため、必要である。この背圧は、チューブ内に充填された吸着剤粒子およびグラスウールによって形成される。
【0004】
さらに、ヒト呼気はエアロゾルおよびVOC両者を含む。長年、大部分の研究者らが、ヒト呼気のVOCの画分を研究してきた。しかし、現在では、研究者らがエアロゾル画分も検討する傾向が増えつつある。両画分のバイオマーカーにより、研究者らは特定の疾患に確実に関係するさらなるバイオマーカーを得ることが可能となり、あるいは将来の治療薬発見に至り得る。これらのすべてが将来的に疾病の早期診断とこれらの疾病の処置法をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、エアロゾル、粒子および揮発性有機化合物(VOC)を収集できる単一の装置で、気体またはヒト呼気サンプルから種々の(呼気)画分を取得できる装置に対する要望がある。このような装置は、気体または呼気サンプルからのこれら画分の取得を可能とするために、ポンピング機構を要すると共に、背圧を下げなければならず、背圧を低下またはなくする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要。
本発明は、同時に2つの異なる気体または呼気画分 - エアロゾルおよび揮発性有機化合物両者 - の捕捉を可能とする装置を提供し、気体または呼気サンプルから種々の画分を収集する課題を解決する。このような装置は、フィルター部分および吸着剤部分を含むハニカム構造を有する。このハニカム構造は、気体抵抗がないパッキングであるため、使用者または患者が装置に直接呼気を吹込むことを可能とする。これは、小型化を可能とし、さもなければ必要とされるポンプまたは他の電子部品の存在を不要とすることができる。これにより、VOC分析のための装置の複雑さが完全に低減され、その上フィルター付き部分はエアロゾルおよび粒子状物質の収集を可能とする。
【0007】
すなわち、本発明は、1個の(呼気)サンプリング中に両画分(エアロゾルおよびVOCの)捕捉ができる気体または呼気サンプリング装置を提供する。装置は使用が単純であり、電気またはポンプを必要としない。本装置による収集画分は、現在のサンプル調製ワークフローに適合する収集画分であり、既存の設備を使用して分析できる形態であることを考慮すれば、容易に(バイオ)マーカーの分析が可能となる。さらに、本装置または本発明により、ヒトがハニカム構造の熱脱着(TD)チューブに直接吹込むことができるので、気体サンプリングバッグおよび気体サンプリングポンプの使用を迂回することを可能とする。すなわち、本発明の装置の使用は、呼気サンプルの捕捉手順を単純化し、その上、サンプルをバッグからチューブに移す煩雑さをなくす。さらに、本発明の装置は、エアロゾルまたは粒子捕捉手段(例えばフィルター付き部分)およびVOC捕捉手段(例えばハニカム構造部分)を組み合わせるが、必要とする背圧が低く、使用者または患者が気体または呼気サンプル収集のために装置に容易に吹込むことを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】エアロゾルおよび粒子を収集する手段およびVOCを収集する手段を含む装置を示す。
【0009】
【
図2】2リットル静置希釈ビン中のペパーミントソフトジェルのヘッドスペースのサンプル、すなわち揮発性ペパーミントオイル成分の同定結果を示す。
【0010】
【
図3】エアロゾルフィルターおよびハニカムTDチューブ両者を使用する実際の呼気サンプルを示す。
【0011】
【
図4】フィルター付き装置を通過する揮発性化合物を示す。
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な記載。
現在利用可能な気体または呼気サンプリング装置は、フィルター付き装置または揮発性有機化合物吸着用装置を使用して、エアロゾルまたは粒子画分を収集するため、同一の装置を用いる同一のサンプリング法で両画分を収集する単独装置は存在しない。通常、装置における揮発性有機化合物吸着用手段は背圧を形成し、これにより、気流を確実に装置を通過させるためにポンピング機構が必要となる。このようなVOC収集手段とフィルター付き装置の組み合わせは、ポンピング機構を用いずに適切な気流を維持することが困難であるため、至難である。このことが、例えばヒト呼気サンプル収集を望ましいものとしていない。
【0014】
本発明は、一つの気体または呼気サンプリング装置において、エアロゾルおよび粒子収集のためのフィルター付き収集手段と揮発性有機化合物収集のためのハニカム構造吸着剤収集手段を組み合わせることにより、上記の課題を解決した。組み合わせた装置は、低い背圧で作動し、ヒトがサンプリング装置に直接吹込むことを可能とし、呼気サンプルをサンプリングバッグに移送する必要性または真空サンプリングポンプを用いて収集装置からサンプルを吸引する必要性を排除する。すなわち、本発明の装置はVOC収集手段の背圧による制限を受けない。その結果、本装置の使用は、使用者による気体または呼気サンプルの収集を単純にする。比較的容易に、呼気サンプル収集のために装置に吹込み、(バイオ)マーカーの存在または非存在について収集されたサンプルが分析される。さらに、組み合わせたサンプリング装置には、十分なサンプル呼気が収集されたかの指標として膨張するバッグが組み込まれ得る。
【0015】
ここで使用する用語揮発性有機化合物またはVOCは、ヒト呼気サンプリングに関連するとき、呼気および/または呼気の成分で検出可能である人体から排出され得るあらゆる有機化学物質を意味する。気体サンプリングに関するとき、用語VOCは半揮発性化合物も含み得る。
【0016】
さらに、ここで使用する呼気バイオマーカーまたは「呼気検体」は、診断法、病気の検出、疾患進行のモニタリング、臓器拒絶のモニタリング、環境のモニタリング、毒物への暴露、放射線被爆、薬物モニタリング(代謝および非代謝分子両者)、薬物動態および薬力学的情報およびメタボロミクスを含むが、これらに限定されない、被験者の状態に関する情報を推測する呼気または呼気の成分の化学成分をいうことを意味する。気体サンプリングに関して、用語マーカーは、例えば、気体品質に関連する気体のある特徴またはある目的に対応する気体品質またはマーカーがある気体安全性閾値未満(例えば不燃性または非爆発性)であることを指摘するために使用できる、あらゆる化合物(または化合物の組み合わせ)をいう。
【0017】
本発明のある実施態様において、a.)外気からエアロゾルおよび粒子を収集する手段およびb.)外気から揮発性有機化合物(VOC)を収集する手段を含む、気体サンプル収集用装置であって、ここで、外気からエアロゾルおよび粒子を収集する手段およびVOCを収集する手段は、装置が同じ体積の外気からエアロゾル、粒子およびVOCを収集するよう互いに接続されている、装置が提供される。
【0018】
本発明の他の実施態様において、a.)ヒト呼気からエアロゾルおよび粒子を収集する手段およびb.)ヒト呼気から揮発性有機化合物(VOC)を収集する手段を含む、ヒト呼気から呼気サンプルを捕捉する装置であって、ここで、ヒト呼気からエアロゾルおよび粒子を収集する手段およびVOCを収集する手段は、装置が同一体積の吐出したヒト呼気からエアロゾル、粒子およびVOCを収集するよう互いに接続されている、装置が提供される。
【0019】
このような装置において、エアロゾルおよび粒子を収集する手段は、そのようなエアロゾルおよび粒子を捕捉するためのフィルターを含む。このようなフィルターは静電フィルターであり得る。
【0020】
気体または呼気サンプルのサンプリングが、収集過程中のサンプルの喪失なしに収集されることが重要である。従って、このような気体または呼気サンプル収集装置において、エアロゾルおよび粒子を収集する手段およびVOCを収集する手段は気密性の接続を介して接続される。
【0021】
揮発性有機化合物は、熱脱着チューブを含む、そのようなVOC収集のための手段を介して装置に収集される。好ましくはそのような熱脱着チューブはハニカム構造を含む。このハニカム構造は、VOC捕捉のための吸着物質でコーティングされる。吸着物質は、1タイプの吸着物質または広範な有機分子を捕捉するための1以上の異なる吸着物質であり得る。このような吸着物質の例は、活性炭素、活性炭、シリカゲルおよび多孔性ポリマーを含む。このようなVOCのための収集手段は、ポンピング機構を必要とせず気体または呼気サンプルの取得を確実にする低い背圧を提供する。さらに、収集サンプルは、慣用の分析法を使用して、熱脱着チューブの使用が種々のクロマトグラフィー技術などの分析技術と適合性であるため、容易に分析され得る。
【0022】
本発明の装置で使用するハニカム熱脱着チューブは、吸着物質のための十分な支持を提供し、450℃の温度に耐えることができる、任意のタイプの物質から構築され得る。ある実施態様において、物質は500℃までまたは600℃までまたは700℃までまたは800℃までまたは900℃までまたは1000℃までの温度に耐えることができる。
【0023】
本発明の他の実施態様において、本発明の装置で外気またはヒト呼気をサンプリングする方法が提供される。
【0024】
本発明の他の実施態様において、a.)ヒト呼気または外気からエアロゾルおよび粒子を収集し、b.)ヒト呼気または外気から揮発性有機化合物(VOC)を収集し、そしてc.)収集したエアロゾル、粒子またはVOCの何れかにおける目的のバイオマーカーの存在を決定することを含む、吐出されたヒト呼気または外気のサンプルにおける目的のバイオマーカーの存在を決定する方法であって、ここで、エアロゾル、粒子およびVOCは同一の吐出されたヒト呼気または同一体積の外気から収集され、本発明の単一装置に収集される、方法が提供される。
【0025】
本発明の他の実施態様において、a.)ヒト呼気からエアロゾルおよび粒子を収集し、b.)ヒト呼気から揮発性有機化合物(VOC)を収集し、c.)収集したエアロゾル、粒子またはVOCの一つにおける目的のバイオマーカーの存在を決定し、そしてd.)目的のバイオマーカーの存在または非存在と疾患状態を相関させることを含む、目的のバイオマーカーの存在の決定を含む、患者が障害を有するか有するリスクについて診断する方法であって、ここで、エアロゾル、粒子およびVOCは、本発明の単一装置に同一の吐出されたヒト呼気から収集される、方法が提供される。
【0026】
各実施態様において、装置は、呼気終末、混合呼気または後期呼気などの特定の呼吸相サブセットの収集のための手段を伴いまたは伴わずに使用され得る。次の何れかまたはそれらの任意の組み合わせの任意のこのような手段または目的が含まれ得る:流量計(機械的または電気的手段を介して流量または体積を測定)、呼気中の既知/一般的成分(例えばCO2、N2、一酸化窒素濃度またはその他)の濃度を検出するセンサー、タイマを利用する方法、湿度モニタリングまたは再呼吸プロトコール。
【0027】
本発明の気体または呼気サンプリング装置の実施態様の概観図を
図1に提供し、これは、例えば吸着剤を含むハニカム構造の形態のVOC収集手段、例えばフィルター付き部分のエアロゾルおよび/または粒子収集手段およびサンプルを採取する気体または呼気を吹き込みまたは受容するためのマウスピースを含む。
【0028】
次は、本発明の例示的実施態様の記載を提供する。
【実施例】
【0029】
実施例1. ペパーミント呼気サンプリングプロトコールにおけるエアロゾルおよびVOC両者の捕捉のための本装置の使用。
本発明による呼気サンプリング装置を評価するため、ペパーミントソフトジェルカプセル(OTCハーブサプリメント)摂取前後に呼気サンプルを採取した。摂取過程で、ペパーミントオイルの成分は血流に入り、一部成分は血流から肺に移動し、通常の呼気中に吐出される(Malaskova, 2019)。実験を実施し、この新しい呼気サンプリング装置が代謝されたペパーミントオイルカプセルの揮発成分の捕捉にどのように使用できるかを示した。
【0030】
装置は、炭素吸着剤をコーティングしたセラミックハニカムを使用する。ハニカム構造は、最小の背圧を示し、故に、ヒトがチューブに呼気サンプルを容易に吹込むことができる。
【0031】
ハニカム熱脱着チューブ(HCTDチューブ)は、2個の別々のセラミックハニカムを、吸着強度が増加する2個の異なる吸着剤でコーティングすることにより構築した。第一ハニカムはCarbopackTM Cでコーティングし、第二ハニカムはCarbopack Bでコーティングした。コーティング過程は、炭素吸着剤をセラミックハニカムに接着させるための「のり」として作用する塩化メチレンおよびポリシラザンを含む溶液にナノサイズ炭素吸着剤粒子を懸濁することにより、実施した。セラミックハニカムを、セラミックハニカムの露出表面を全てコーティングする溶液に浸漬した。積層が観察されるまで、複数コートを適用した。次いで、コーティングしたハニカムをステンレススチール熱脱着チューブ6.35mm OD×5mm ID×89mm長に入れた。コーティングしたアセンブリ(チューブ)をガラス浄化ボンベに入れ、硬化過程の進行中、不活性雰囲気を維持するために窒素ガスを通しながら450℃で10分間加熱した。
【0032】
本発明の呼気サンプリング装置は、SensAbues装置などのフィルターを含むエアロゾルおよび粒子収集装置と、上記のとおり製造したハニカム熱脱着チューブ(HCTDチューブ)の結合により製造した(
図2)。これら2個の装置を組み合わせるために、フィルタリング装置の出口側ストレージ・キャップに穴をあけ、HCTDチューブの入口がキャップに入るようにした。次いで、HCTDチューブをフィルター付き装置に接続した。
【0033】
この実験の目的は、ハニカムチューブと接続した静電フィルタリング装置を伴いおよび伴わずに呼気サンプルが収集されるか否かにあった。
【0034】
両装置の接続の主要な目的は、1個の呼気サンプルでヒト呼気のエアロゾルおよび蒸発画分両者を捕捉することである。結合装置にヒトが息を吐出したとき、あらゆる粒子と共にエアロゾルが装置における静電フィルターにより捕捉され、一方、ガス相の揮発性化合物はフィルターを通り、その後吸着剤コーティングHCTDチューブにより捕捉される。人が装置に呼気を吐出し続ける限り、エアロゾル内に捕捉され、次いでフィルターとの接触により放出される揮発物は、その後HCTDチューブで捕捉される。呼気サンプルの採取後、各サンプリング装置を個々に密封して、分析までサンプル完全性を保護する。
【0035】
フィルタリング装置とハニカム熱脱着チューブを結合するさらなる利益がある。フィルターは、呼気サンプリング中熱脱着チューブが非揮発性化合物を保持することから保護する。非揮発物はGC分析に適さない。これは、非揮発物が熱脱着中TD/GCサンプル経路を汚染することを防止する。
【0036】
実施例2;本装置での呼気サンプルの採取。
呼気サンプリング実験に使用したプロトコール
1. 一夜絶食(朝食なし)
2. 重曹で歯磨き(ミントフレーバーの歯磨き粉による汚染を防止するため)
3. ビンの水で2回口を漱ぐ - 呼気サンプル取得前
4. ペパーミントカプセル摂取前にベースライン呼気サンプル捕捉
5. 5qtyペパーミントカプセルを摂取し、カプセルの代謝のために1時間待機
6. プロトタイプ呼気サンプリング装置を使用して呼気サンプル収集。
【0037】
この実験のために:20qty呼気を組み合わせた呼気サンプリング装置に吹込み、この完了に約6分30秒を要した。フィルター付き装置はインディケーターとして小さいバッグを使用し、従って、使用者はいつ十分な気体を装置に吹込んだかがわかる。フィルター付き装置自体を使用したとき、バッグは約20呼気後満たされた。両装置、すなわちフィルター付き装置とハニカム構造の組み合わせの僅かな背圧は、呼気サンプルの装置への吹込みに如何なる問題も発生させなかった。
【0038】
この実験のために、呼気サンプルの次の組み合わせを捕捉した:
1.ペパーミントカプセル摂取前後。
2. HCTDチューブに接続されたフィルター付き装置を伴うまたは伴わないサンプル
3. コーティングされていないハニカムおよび吸着剤コーティングHCTDチューブを伴うサンプル
【0039】
呼気サンプル採取前、HCTDチューブを、揮発性バックグラウンドレベルを低減するためCDS Analytical 6-チューブコンディショナーを使用して330℃で30分間コンディショニングした。フィルター付き装置は入手したものをそのまま使用した。装置は、密封バッグに入れ、段ボール箱で包装されていた。
【0040】
図3は、2リットル静置希釈ビンからのペパーミントソフトジェルのヘッドスペースのサンプルの結果を示す。これは、1mLのヘッドスペースを、Carbopack CおよびCarbopack Bが充填された常用熱脱着チューブに注入することにより得た。成分の同定は、NIST増すスペクトルライブラリーとの対合に基づいた。各成分の個々の化学的標準は得ておらず、よって、定量および同定は行わなかった。
【0041】
図4は、HCTDチューブと直接のフィルター付き装置を用いる呼気サンプルの重層クロマトグラムを示す。これらの結果は、フィルターのものではなくHCTDチューブのものである。上部クロマトグラム(黒色)はペパーミントカプセル摂取前の呼気サンプルである。真ん中のクロマトグラム(青色)は、ペパーミントカプセル摂取1時間後のHCTDチューブの分析である。下部クロマトグラム(赤色)は、2リットル静置希釈ビンから得たペパーミントオイルのヘッドスペースサンプルのものである。750μLのシリンジ体積のペパーミントオイルのヘッドスペースを、Carbopack CおよびCarbopack B粒子が充填された常用熱脱着チューブに注入した。
【0042】
青色で強調したピークはペパーミントオイル成分が溶出したときのものである。11個の同定されたペパーミントオイルの成分のうち、リモネンのみがペパーミントオイルカプセル摂取前の呼気サンプルで観察された。リモネンは、通常ヒト呼気で観察される化学物質であり、肝臓により産生され、呼気により吐出され得るものである。主要な結果は、ペパーミント成分の大部分がペパーミントオイルカプセル摂取1時間後に観察され(青色クロマトグラム)、該装置がヒト呼気からのVOCをいかに保持できるかを示す。
【0043】
図5は、フィルター付き装置を装着してまたはせずにどのようにHCTDチューブがペパーミントオイル成分を捕捉するかを示す、クロマトグラム重層を示す(中央および下部クロマトグラム)。フィルター付きが装着されたHCTDチューブは、フィルター付き装置なしのHCTDチューブに吹込んだ時より多くの揮発物を保持することが示された。フィルター付き装置のフィルターは、ある程度揮発物汚染があることが判明した(赤色で強調した領域参照)。しかしながら、このグラフは、揮発性ペパーミントオイル成分がフィルター付き装置を用いておよび用いずに類似の結果が得られたことを示す。これは、揮発性ペパーミントオイル成分がフィルター付き装置のフィルターにより捕捉されなかったことを示す証拠である。
【0044】
これらの実施例は、呼気サンプリング装置がヒト呼気から揮発性化合物を捕捉できることを示す。これらの実施例はまた揮発性化合物がフィルター付き装置部分を通過し、HCTDチューブで収集されることを示す。
【0045】
本発明のこの気体または呼気サンプリング装置は、サンプルの気体サンプリングバッグからチューブへの移動の必要を排除する。これは、(バイオ)マーカーの存在または非存在を決定するために気体または呼気サンプルを分析するとき、より標準化された呼気サンプリングプロトコールの使用を可能とするために、有意な進歩である。
【国際調査報告】