(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-09
(54)【発明の名称】光素子用封止材組成物およびこれを用いた光素子用封止材フィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20240402BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20240402BHJP
C08K 5/57 20060101ALI20240402BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20240402BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L23/04
C08K5/57
C08K5/14
C08K5/54
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566696
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 KR2022017651
(87)【国際公開番号】W WO2023085805
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0154112
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジン・クク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】サン・ウン・パク
(72)【発明者】
【氏名】サン・ヒョン・ホン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ウ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ホ・ジュン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB051
4J002EK016
4J002EK026
4J002EK036
4J002EK046
4J002EK056
4J002EK066
4J002EQ016
4J002EX017
4J002EX037
4J002EX067
4J002EX077
4J002EZ018
4J002FD030
4J002FD050
4J002FD060
4J002FD146
4J002FD150
4J002FD158
4J002FD207
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、体積抵抗および光透過率が高いエチレン/アルファ-オレフィン共重合体を含む光素子用封止材組成物およびこれを用いた光素子用封止材フィルムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)オレフィン系共重合体と、
(2)架橋剤と、
(3)シランカップリング剤と、
(4)下記化学式1の化合物とを含む、光素子用封止材組成物。
【化1】
前記化学式1中、l、m、n、およびoは、それぞれ独立して、0~4の整数である。
【請求項2】
前記(1)オレフィン系共重合体は、下記要件を満たす、請求項1に記載の光素子用封止材組成物。
(a)密度0.85~0.90g/cc、および
(b)溶融指数0.1~100g/10min。
【請求項3】
前記(1)オレフィン系共重合体は、エチレンアルファ-オレフィン共重合体である、請求項1に記載の光素子用封止材組成物。
【請求項4】
前記(1)オレフィン系共重合体は、体積抵抗が1.0×10
15Ω・cm以上であるエチレンアルファ-オレフィン共重合体である、請求項1に記載の光素子用封止材組成物。
【請求項5】
前記架橋剤は、有機過酸化物、ヒドロ過酸化物およびアゾ化合物からなる群から選択される1種または2種以上である、請求項1に記載の光素子用封止材組成物。
【請求項6】
前記架橋剤は、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-クミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン、クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(TBEC)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシオクトエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)-3-ヘキシン、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドアゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の光素子用封止材組成物。
【請求項7】
前記シランカップリング剤は、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、およびp-スチリルトリメトキシシランからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の光素子用封止材組成物。
【請求項8】
前記化学式1中、l、m、n、およびoは、それぞれ独立して、0~2の整数である、請求項1に記載の光素子用封止材組成物。
【請求項9】
前記化学式1の化合物は、テトラビニルスズ(tetravinyltin)である、請求項1に記載の光素子用封止材組成物。
【請求項10】
前記光素子用封止材組成物は、
(1)オレフィン系共重合体を80~99重量部、
(2)架橋剤を0.1~9重量部、
(3)シランカップリング剤を0.01~2重量部、および
(4)化学式1の化合物を0.1~9重量部含む、請求項1に記載の光素子用封止材組成物。
【請求項11】
前記光素子用封止材組成物は、さらに、前記化学式1の化合物以外の(5)架橋助剤を含み、
前記(5)架橋助剤は、アリル基または(メタ)アクリルオキシ基を一つ以上含有する化合物を含む、請求項1に記載の光素子用封止材組成物。
【請求項12】
前記(5)架橋助剤は、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルマレアート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、およびトリメチロールプロパントリメタクリレートからなる群から選択される1種以上を含む、請求項11に記載の光素子用封止材組成物。
【請求項13】
前記(4)化学式1の化合物および(5)架橋助剤の重量比は、20:80~80:20である、請求項10に記載の光素子用封止材組成物。
【請求項14】
オレフィン系共重合体と、下記化学式1の化合物とを含む光素子用封止材フィルム。
【化2】
前記化学式1中、l、m、n、およびoは、それぞれ独立して、0~4の整数である。
【請求項15】
光素子と、請求項14に記載の光素子用封止材フィルムとを含む、光素子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年11月10日付けの韓国特許出願第10-2021-0154112号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、体積抵抗および光透過率が高い光素子用封止材組成物およびこれを用いた光素子用封止材フィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
地球環境問題、エネルギー問題などが次第に深刻になっているところ、クリーンで枯渇の恐れがないエネルギー生成手段として、太陽電池が注目されている。太陽電池は、建物の屋根など、屋外で使用する場合、モジュール形態で使用することが一般的であるが、太陽電池モジュールの製造時には、結晶型太陽電池モジュールを得るために、太陽電池モジュール用保護シート(表面側透明保護部材)/太陽電池封止材/結晶型太陽電池素子/太陽電池封止材/太陽電池モジュール用保護シート(裏面側保護部材)の順に積層して製造する。一方、薄膜系太陽電池モジュールを得るためには、薄膜型太陽電池素子/太陽電池封止材/太陽電池モジュール用保護シート(裏面側保護部材)の順に積層して製造する。
【0004】
上述の太陽電池封止材として、一般的に、エチレン/酢酸ビニル共重合体やエチレン/アルファ-オレフィン共重合体などが使用されている。また、太陽電池封止材には、長期間の耐候性が求められる点で、添加剤として、光安定剤が通常含まれている。また、ガラスに代表される表面側透明保護部材もしくは裏面側保護部材の密着性を考慮して、太陽電池封止材には、シランカップリング剤も通常含まれている。
【0005】
具体的には、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)シートが、透明性、柔軟性および接着性などに優れる点で広く使用されてきた。エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)膜は、透明性、柔軟性および接着性などに優れる点で広く使用されている。しかし、EVA組成物を太陽電池封止材の構成材料として使用する場合、EVAが分解して発生する酢酸ガスなどの成分が太陽電池素子に影響を及ぼす可能性が心配された。
【0006】
エチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、樹脂の加水分解の問題がないことから、寿命低下や信頼性低下の問題を解決することができた。しかし、エチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、樹脂に極性基を含まないため、既存の太陽電池封止材の構成材料として含まれる極性の架橋助剤とは混合性が低下し、含浸に非常に長時間がかかるため、生産性に問題があった。
【0007】
このように、体積抵抗に優れて太陽電池封止材など、高い絶縁性が求められる物質として有用に活用することができるエチレン/アルファ-オレフィン共重合体を含む太陽電池封止材の生産性を向上させることができる架橋助剤の開発が必要な状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第2018-0063669号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、オレフィン系共重合体との混合性に優れた架橋助剤を含み、高い体積抵抗およびこれによる優れた絶縁性を示す光素子用封止材組成物を提供することである。
【0010】
本発明の他の解決しようとする課題は、前記光素子用封止材組成物を用いて製造された光素子用封止材フィルムを提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の解決しようとする課題は、前記光素子用封止材フィルムを含む光素子モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、光素子用封止材組成物、光素子用封止材フィルムおよび光素子モジュールを提供する。
【0013】
[1]本発明は、(1)オレフィン系共重合体と、(2)架橋剤と、(3)シランカップリング剤と、(4)下記化学式1の化合物とを含む光素子用封止材組成物を提供する。
【化1】
前記化学式1中、l、m、n、およびoは、それぞれ独立して、0~4の整数である。
【0014】
[2]本発明は、前記[1]において、前記(1)オレフィン系共重合体は、下記要件を満たす光素子用封止材組成物を提供する。
(a)密度0.85~0.90g/cc、および(b)溶融指数0.1~100g/10min。
【0015】
[3]本発明は、前記[1]または[2]において、前記(1)オレフィン系共重合体は、エチレンアルファ-オレフィン共重合体である光素子用封止材組成物を提供する。
【0016】
[4]本発明は、前記[1]~[3]のいずれか一つにおいて、前記(1)オレフィン系共重合体は、体積抵抗が1.0×1015Ω・cm以上であるエチレンアルファ-オレフィン共重合体である光素子用封止材組成物を提供する。
【0017】
[5]本発明は、前記[1]~[4]のいずれか一つにおいて、前記架橋剤は、有機過酸化物、ヒドロ過酸化物およびアゾ化合物からなる群から選択される1種または2種以上である光素子用封止材組成物を提供する。
【0018】
[6]本発明は、前記[1]~[5]のいずれか一つにおいて、前記架橋剤は、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-クミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン、クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(TBEC)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシオクトエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)-3-ヘキシン、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドアゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)からなる群から選択される1種以上である光素子用封止材組成物を提供する。
【0019】
[7]本発明は、前記[1]~[6]のいずれか一つにおいて、前記シランカップリング剤は、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、およびp-スチリルトリメトキシシランからなる群から選択される1種以上である光素子用封止材組成物を提供する。
【0020】
[8]本発明は、前記[1]~[7]のいずれか一つにおいて、前記化学式1中、l、m、n、およびoは、それぞれ独立して、0~2の整数である光素子用封止材組成物を提供する。
【0021】
[9]本発明は、前記[1]~[8]のいずれか一つにおいて、前記化学式1の化合物は、テトラビニルスズ(tetravinyltin)である光素子用封止材組成物を提供する。
【0022】
[10]本発明は、前記[1]~[9]のいずれか一つにおいて、前記光素子用封止材組成物は、(1)オレフィン系共重合体を80~99重量部、(2)有機過酸化物を0.1~9重量部、(3)シランカップリング剤を0.01~2重量部、および(4)化学式1の化合物を0.1~9重量部含む光素子用封止材組成物を提供する。
【0023】
[11]本発明は、前記[1]~[10]のいずれか一つにおいて、前記光素子用封止材組成物は、さらに、前記化学式1の化合物以外の(5)架橋助剤を含み、前記(5)架橋助剤は、アリル基または(メタ)アクリルオキシ基を一つ以上含有する化合物を含む光素子用封止材組成物を提供する。
【0024】
[12]本発明は、前記[11]において、前記(5)架橋助剤は、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルマレアート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、およびトリメチロールプロパントリメタクリレートからなる群から選択される1種以上を含む光素子用封止材組成物を提供する。
【0025】
[13]本発明は、前記[11]または[12]において、前記(4)化学式1の化合物および(5)架橋助剤の重量比は、20:80~80:20である光素子用封止材組成物を提供する。
【0026】
[14]本発明は、オレフィン系共重合体と、下記化学式1の化合物とを含む光素子用封止材フィルムを提供する。
【化2】
前記化学式1中、l、m、n、およびoは、それぞれ独立して、0~4の整数である。
【0027】
[15]本発明は、光素子と、前記[14]による光素子用封止材フィルムとを含む光素子モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の光素子用封止材組成物は、オレフィン系共重合体との混合性に優れたスズを含む化合物を架橋助剤として含むことで、優れた体積抵抗および光透過率を示すことから、電機電子産業分野において様々な用途で広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施例1~5でそれぞれ測定したエチレン/1-ブテン共重合体に架橋剤、架橋助剤、シランカップリング剤を含浸させる時の攪拌時間による含浸トルク(torque)値を、含浸トルクカーブ(torque curve)として作成して示したグラフである。
【
図2】比較例1で測定したエチレン/1-ブテン共重合体に架橋剤、架橋助剤、シランカップリング剤を含浸させる時の攪拌時間による含浸トルク(torque)値を、含浸トルクカーブ(torque curve)として作成して示したグラフである。
【
図3】比較例3で測定したエチレン/1-ブテン共重合体に架橋剤、架橋助剤、シランカップリング剤を含浸させる時の攪拌時間による含浸トルク(torque)値を、含浸トルクカーブ(torque curve)として作成して示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明をさらに詳細に説明する。
【0031】
本発明の説明および特許請求の範囲に使用されている用語や単語は、通常もしくは辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義し得るという原則に則って本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0032】
[光素子用封止材組成物]
本発明の光素子用封止材組成物は、(1)オレフィン系共重合体と、(2)架橋剤と、(3)シランカップリング剤と、(4)下記化学式1の化合物とを含むことを特徴とする。
【0033】
【0034】
前記化学式1中、l、m、n、およびoは、それぞれ独立して、0~4の整数である。
【0035】
本発明は、体積抵抗が高くて優れた電気絶縁性を示す光素子用封止材組成物に関する。具体的には、本発明の光素子用封止材組成物は、従来、光素子用封止材組成物に適用されたエチレンビニルアルコール(EVA)の代わりに、オレフィン系共重合体を含むことで、多湿な環境でエチレンビニルアルコールのアセテート基が加水分解されて酢酸を形成する問題を解決し、光素子モジュールの耐久性および信頼性を向上させることができる。また、オレフィン系共重合体に、前記化学式1で表される化合物を架橋助剤として適用することで、既存のエチレンビニルアルコール(EVA)に適用されていた極性架橋助剤が極性基を含まないオレフィン系共重合体との混合性が足りず、架橋剤の含浸が遅延する問題を解決することができ、高い架橋度、体積抵抗および光透過度を図ることができる。
【0036】
(1)オレフィン系共重合体
本発明の一例による光素子用封止材組成物が含む前記(1)オレフィン系共重合体は、(a)密度0.85~0.90g/cc、および(b)溶融指数0.1~100g/10minを満たすことができる。
【0037】
前記オレフィン系共重合体の(a)密度は、具体的には、0.850g/cc以上、0.855g/cc以上、0.860g/cc以上、0.865g/cc以上0.870g/cc~0.900g/cc以下、0.895g/cc以下、0.890g/cc以下、0.885g/cc以下、0.880g/cc以下、0.875g/cc以下、または0.870g/cc以下であることができる。前記オレフィン系共重合体の密度が高すぎると、前記オレフィン系共重合体に含まれる結晶相によって、光素子用封止材組成物およびこれを用いて製造した光素子用封止材の光透過度が減少し得るが、前記オレフィン系共重合体が前記密度範囲を満たす場合、高い光透過度を示すことができる。
【0038】
前記オレフィン系共重合体の(b)溶融指数は、0.1g/10min以上、0.5g/10min以上、1.0g/10min以上、1.5g/10min以上、2.0g/10min以上、2.5g/10min以上、5.0g/10min以上、または10.0g/10min以上~100g/10min以下、95g/10min以下、90g/10min以下、85g/10min以下、80g/10min以下、75g/10min以下、70g/10min以下、60g/10min以下、または50g/10min以下であることができる。前記オレフィン系共重合体の溶融指数が前記範囲から逸脱して低すぎるか高すぎると、前記光素子用封止材組成物の成形性が悪くなり、安定的な押出が困難になる問題があり得るが、前記オレフィン系共重合体が前記溶融指数の範囲を満たす場合、前記光素子用封止材組成物の成形性に優れ、安定的に光素子用封止材、光素子用封止材シート(sheet)を押出することができる。
【0039】
本発明の一例による光素子用封止材組成物が含む前記(1)オレフィン系共重合体は、エチレン/アルファ-オレフィン共重合体であることができる。
【0040】
通常、エチレン/アルファ-オレフィン共重合体の密度は、重合時に使用される単量体の種類と含量、重合度などの影響を受け、共重合体の場合、共単量体の含量による影響を大きく受ける。ここで、共単量体の含量が多いほど、低密度のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体が製造されることができ、共単量体が共重合体内に導入されることができる含量は、触媒固有の共重合成に依存的であり得る。
【0041】
本発明の光素子用封止材組成物に含まれたエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、前記のような低密度を示し、優れた加工性を示すことができる。
【0042】
前記エチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、エチレンとアルファ-オレフィン系単量体を共重合して製造されており、ここで、共重合体内のアルファ-オレフィン系単量体から由来した部分を意味する前記アルファ-オレフィンは、C4~C20のアルファ-オレフィン、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘブテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、または1-エイコセンなどが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物であることができる。
【0043】
中でも、前記アルファ-オレフィンは、1-ブテン、1-ヘキセンまたは1-オクテンであることができ、好ましくは、1-ブテン、1-ヘキセン、またはこれらの組み合わせであることができる。
【0044】
また、前記エチレン/アルファ-オレフィン共重合体において、アルファ-オレフィンの含量は、前記の物性的要件を満たす範囲内で適切に選択されることができ、具体的には、0超99モル%以下、または10~50モル%であることができるが、これに制限されない。
【0045】
また、本発明の光素子用封止材組成物の一例において、前記(1)オレフィン系共重合体は、体積抵抗が1.0×1015Ω・cm以上であるエチレンアルファ-オレフィン共重合体であることができ、具体的には、3.0×1015Ω・cm以上、5.0×1015Ω・cm以上、7.0×1015Ω・cm以上、1.0×1016Ω・cm以上、3.0×1016Ω・cm以上、または5.0×1016Ω・cm以上の共重合体であることができる。前記(1)オレフィン系共重合体の体積抵抗が低すぎる場合、光素子用封止材組成物の架橋後の体積抵抗が適切な水準に至ることができないが、前記(1)オレフィン系共重合体の体積抵抗が前記値を満たす場合、光素子用封止材組成物が架橋後に優れた体積抵抗を示すことができる。前記(1)オレフィン系共重合体の体積抵抗の上限は、特に制限されないが、オレフィン系共重合体が通常示す体積抵抗と体積抵抗が高いオレフィン系共重合体の製造には不都合がある点を考慮すると、9.9×1016Ω・cm以下、9.0×1016Ω・cm以下、7.0×1016Ω・cm以下、5.0×1016Ω・cm以下、3.0×1016Ω・cm以下、2.5×1016Ω・cm以下、または2.0×1016Ω・cm以下であるものが使用されることができる。
【0046】
(2)架橋剤
前記架橋剤は、ラジカル重合を開始することができるか架橋結合を形成することができる架橋性化合物であれば、技術分野において公知の様々な架橋剤を様々に使用することができ、有機過酸化物、ヒドロ過酸化物およびアゾ化合物からなる群から選択される1種または2種以上を使用することができる。
【0047】
また、本発明の一例において、前記架橋剤は、具体的には、有機過酸化物であることができる。
【0048】
前記有機過酸化物は、120~135℃、例えば、120~130℃、120~125℃、好ましくは121℃の1時間半減期温度を有する有機過酸化物であることができる。前記「1時間半減期温度」とは、前記架橋剤の半減期が1時間になる温度を意味する。前記1時間半減期温度に応じて、ラジカル開始反応が効率的に行われる温度が異なり、そのため、上述の範囲の1時間半減期温度を有する有機過酸化物を架橋剤として使用する場合、光電子装置を製造するためのラミネーション工程温度で、ラジカル開始反応、すなわち、架橋反応が効果的に行われることができる。
【0049】
前記架橋剤としては、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-クミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキサンなどのジアルキルパーオキサイド類;クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルヒドロパーオキサイドなどのヒドロパーオキサイド類;ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(TBEC)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシオクトエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)-3-ヘキシンなどのパーオキシエステル類;およびメチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、ラウリルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物からなる群から選択される1種以上が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0050】
(3)シランカップリング剤
前記シランカップリング剤は、例えば、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、およびp-スチリルトリメトキシシランからなる群から選択される1種以上であることができる。
【0051】
(4)化学式1の化合物
本発明の光素子用封止材組成物は、下記化学式1の化合物を含む。
【0052】
【0053】
前記化学式1中、l、m、n、およびoは、それぞれ独立して、0~4の整数である。
【0054】
また、前記化学式1中、l、m、n、およびoは、それぞれ独立して、0~2の整数であることができる。
【0055】
また、本発明の一例による光素子用封止材組成物は、具体的には、下記の化学式1の化合物として、テトラビニルスズ(tetravinyltin)を含むことができる。
【0056】
前記化学式1の化合物は、光素子用封止材組成物に架橋助剤として含まれることができ、前記化学式1の化合物は、既存の架橋助剤として使用されていたトリアリルイソシアヌレート(TAIC)などのアリル基を含有する化合物に比べて相対的に低い極性を有することから、本発明の光素子用封止材組成物が含む前記(1)オレフィン系共重合体と優れた混合性を示すことができ、これにより、架橋助剤の含浸時間を短縮することができる。また。前記化学式1の化合物を架橋助剤として含む光素子用封止材組成物は、これを用いて光素子用封止材を製造した時に、製造された光素子用封止材が高い体積抵抗を示すことができる。
【0057】
本発明の一例による光素子用封止材組成物は、前記(1)オレフィン系共重合体を80~99重量部、(2)架橋剤を0.1~9重量部、(3)シランカップリング剤を0.01~2重量部、および(4)化学式1の化合物を0.1~9重量部含むことができる。前記それぞれの成分の含量は、前記光素子用封止材組成物が含むそれぞれの成分の重量間の相対的な比率を意味することができる。
【0058】
前記(1)オレフィン系共重合体は、80~99重量部で含まれることができ、具体的には、80重量部以上、82重量部以上、85重量部以上、86重量部以上、87重量部以上、88重量部以上~99重量部以下、98重量部以下、97重量部以下、96重量部以下、または95重量部以下で含まれることができる。前記(1)オレフィン系共重合体の含量が少なすぎると、光素子用封止材の引裂抵抗、引裂強度などの機械的物性が適切に発揮され難いため、前記(1)オレフィン系共重合体が、全体の光素子用封止材組成物に前記範囲で含まれる場合、光素子用封止材として適切な機械的物性を発揮することができる。
【0059】
前記(2)架橋剤は、0.1~9重量部で含まれることができ、具体的には、0.1重量部以上、0.2重量部以上、0.3重量部以上、0.4重量部以上、0.5重量部以上、0.6重量部以上、0.7重量部以上、0.8重量部以上、または1重量部以上~9重量部以下、8重量部以下、7重量部以下、6重量部以下、5重量部以下、4重量部以下、または3重量部以下で含まれることができる。前記(2)架橋剤の含量が少なすぎると、架橋反応が行われ難く、前記(2)架橋剤の含量が多すぎると、光素子用封止材の体積抵抗が減少するため、前記(2)架橋剤が、全体の光素子用封止材組成物に前記範囲で含まれる場合、光素子用封止材組成物が適切に架橋反応を起こして光素子用封止材として製造されることができ、且つ製造された光素子用封止材が高い体積抵抗を示すことができる。
【0060】
前記(3)シランカップリング剤は、0.01~2重量部で含まれることができ、具体的には、0.01重量部以上、0.02重量部以上、0.05重量部以上、0.07重量部以上、0.09重量部以上、0.1重量部以上、または0.15重量部以上~2重量部以下、1.8重量部以下、1.7重量部以下、1.5重量部以下、1.2重量部以下、1.0重量部以下、0.8重量部以下、0.7重量部以下、0.5重量部以下、または0.4重量部以下の量で含まれることができる。前記(3)シランカップリング剤の含量が少なすぎると、光素子用封止材組成物の基板に対する接着力、例えば、ガラス基板に対する前記光素子用封止材組成物の接着力が低くて、光素子用封止材として適切な性能を発揮し難く、前記(3)シランカップリング剤の含量が多すぎると、光素子用封止材の体積抵抗が減少するため、適切ではない。前記(3)シランカップリング剤が、全体の光素子用封止材組成物に前記範囲で含まれる場合、光素子用封止材組成物が、光素子の基板または光素子が位置するガラス基板に対して優れた接着性を示し、水分の浸透などを効果的に防ぎ、光素子が長期的に優れた性能を維持するようにすることができ、光素子用封止材が高い体積抵抗を示すことができる。
【0061】
前記(4)化学式1の化合物は、0.1~9重量部で含まれることができ、具体的には、0.1重量部以上、0.2重量部以上、0.3重量部以上、0.4重量部以上、0.5重量部以上、0.6重量部以上、0.7重量部以上、0.8重量部以上、または1重量部以上~9重量部以下、8重量部以下、7重量部以下、6重量部以下、5重量部以下、4重量部以下、または3重量部以下で含まれることができる。前記(4)化学式1の化合物の含量が少なすぎると、架橋反応が行われ難く、前記(4)化学式1の化合物の含量が多すぎると、光素子用封止材の体積抵抗が減少するため、前記(4)化学式1の化合物が、全体の光素子用封止材組成物に前記範囲で含まれる場合、光素子用封止材組成物が適切に架橋反応を起こして、光素子用封止材に製造されることができ、且つ製造された光素子用封止材が高い体積抵抗を示すことができる。
【0062】
また、前記光素子用封止材組成物は、さらに、前記化学式1の化合物以外の(5)架橋助剤を含むことができる。
【0063】
前記(5)架橋助剤としては、当技術分野において公知の様々な架橋助剤が使用されることができ、例えば、アリル基または(メタ)アクリルオキシ基などの不飽和基を少なくとも一つ以上含む化合物が含まれることができる。
【0064】
前記(5)架橋助剤としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレートまたはジアリルマレアートなどのポリアリル化合物が例示されることができ、前記(メタ)アクリルオキシ基を含む化合物は、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどのポリ(メタ)アクリルオキシ化合物などが例示されることができるが、特にこれらに制限されるものではない。
【0065】
本発明の一例による光素子用封止材組成物が、さらに、前記化学式1の化合物以外の(5)架橋助剤を含む場合、前記(4)化学式1の化合物および(5)架橋助剤の重量比は、20:80~80:20であることができ、具体的には、21:79~79:21、22:78~78:22、23:77~77:23、24:76~76:24、または25:75~75:25であることができる。本発明の一例による光素子用封止材組成物が、さらに、前記化学式1の化合物以外の(5)架橋助剤を含む場合、前記(4)化学式1の化合物および(5)架橋助剤は、その合計量が、0.1~9重量部の量で含まれることができ、具体的には、0.1重量部以上、0.2重量部以上、0.3重量部以上、0.4重量部以上、0.5重量部以上、0.6重量部以上、0.7重量部以上、0.8重量部以上、または1重量部以上~9重量部以下、8重量部以下、7重量部以下、6重量部以下、5重量部以下、4重量部以下、または3重量部以下で含まれることができる。
【0066】
本発明の一例による光素子用封止材組成物が、前記(4)化学式1の化合物および(5)架橋助剤をともに含む場合、高い体積抵抗、迅速な浸漬速度、優れた光透過度および付着性を満たすことができ、前記(4)化学式1の化合物のみを使用する場合に比べてより高い架橋度を図ることができる。前記(4)化学式1の化合物および(5)架橋助剤をともに含み、且つ前記(4)化学式1の化合物に対する(5)架橋助剤の比率が増加するほど、同量の架橋助剤の使用量に対する光透過度が増加することができ、(5)架橋助剤の比率が減少するほど、浸漬速度、体積抵抗および架橋度が向上することから、発揮しようとする物性に応じて前記範囲で適切に比率を決定することができる。
【0067】
また、前記光素子用封止材組成物は、必要に応じて、光安定剤、UV吸収剤および熱安定剤などから選択される1種以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0068】
前記光安定剤は、前記組成物が適用される用途に応じて、樹脂の光劣化開始の活性種を捕捉し、光酸化を防止する役割を果たすことができる。使用可能な光安定剤の種類は、特に制限なく、例えば、ヒンダードアミン系化合物またはヒンダードピペリジン系化合物などの公知の化合物を使用することができる。
【0069】
前記UV吸収剤は、組成物の用途に応じて太陽光などからの紫外線を吸収して、分子内で無害な熱エネルギーに変換し、樹脂組成物中の光劣化開始の活性種が励起されることを防止する役割を果たすことができる。使用可能なUV吸収剤の具体的な種類は、特に制限されず、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アクリロニトリル系、金属錯塩系、ヒンダードアミン系、超微粒子酸化チタンまたは超微粒子酸化亜鉛などの無機系UV吸収剤などの1種または2種以上の混合物を使用することができる。
【0070】
また、前記熱安定剤の例としては、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジイルビスホスホネートおよびビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイトなどのリン系熱安定剤;8-ヒドロキシ-5,7-ジ-tert-ブチル-フラン-2-オンとo-キシレンとの反応生成物などのラクトン系熱安定剤が挙げられ、前記のうち1種または2種以上を使用することができる。
【0071】
前記光安定剤、UV吸収剤および/または熱安定剤の含量は、特に限定されない。すなわち、前記添加剤の含量は、樹脂組成物の用途、添加剤の形状や密度などを考慮して適切に選択することができ、通常、光素子用封止材組成物の全固形分100重量部に対して0.01~5重量部の範囲内で適切に調節されることができる。
【0072】
また、本発明の光素子用封止材組成物は、前記成分以外にも、樹脂成分が適用される用途に応じて、当該分野において公知の様々な添加剤を適切にさらに含むことができる。
【0073】
また、前記光素子用封止材組成物は、射出、押出などの方法で成形して、様々な成形品として活用可能であり、具体的には、様々な光電子装置(optoelectronic device)、例えば、太陽電池などにおいて素子をカプセル化する封止材(Encapsulant)として使用されることができ、例えば、昇温ラミネーション工程などに適用される産業用素材としても使用可能であるが、用途がこれに制限されるものではない。
【0074】
[光素子用封止材フィルムおよび光素子モジュール]
また、本発明はオレフィン系共重合体と、下記化学式1の化合物とを含む光素子用封止材フィルムを提供する。
【0075】
【0076】
前記化学式1中、l、m、n、およびoは、それぞれ独立して、0~4の整数である。
【0077】
また、前記化学式1中、l、m、n、およびoは、それぞれ独立して、0~2の整数であることができる。
【0078】
また、本発明の一例による光素子用封止材組成物は、具体的には、下記の化学式1の化合物として、テトラビニルスズ(tetravinyltin)を含むことができる。
【0079】
前記オレフィン系共重合体および前記化学式1の化合物に関する説明は、上述のとおりである。
【0080】
また、本発明は、前記光素子用封止材組成物を含む光素子用封止材フィルムを提供する。
【0081】
本発明の光素子用封止材フィルムは、前記オレフィン系共重合体と、下記化学式1の化合物とを含む組成物をフィルムまたはシート形状に成形することで製造することができ、具体的には、前記光素子用封止材組成物をフィルムまたはシート形状に成形することで製造することができる。このような成形方法は、特に制限されず、例えば、Tダイ工程または押出などの通常の工程でシート化またはフィルム化して製造することができる。例えば、前記光素子用封止材フィルムの製造は、前記光素子用封止材組成物を用いた樹脂組成物の製造およびフィルム化またはシート化工程が互いに連結されている装置を使用してイン-サイチュ(in situ)工程で行うことができる。
【0082】
前記光素子用封止材フィルムの厚さは、光電子装置で素子の支持効率および破損可能性、装置の軽量化や作業性などを考慮して、約10~2,000μm、または約100~1,250μmに調節することができ、具体的な用途に応じて変更されることができる。
【0083】
また、本発明は、光素子および前記光素子用封止材フィルムを含む光素子モジュールを提供する。前記光素子は、例えば、太陽電池であることができ、光素子モジュールは、太陽電池モジュールであることができる。本発明において、前記光素子モジュールは、直列または並列に配置された光素子セル、例えば、太陽電池セルを前記本発明の光素子用封止材フィルムで間隔を埋め、太陽光が当たる面にはガラス面が配置され、裏面はバックシートで保護する構成を有することができるが、これに制限されるものではなく、当該技術分野において光素子用封止材フィルムを含んで製造した光素子モジュールまたは太陽電池モジュールの様々な種類と形態がいずれも本発明に適用されることができる。
【0084】
前記ガラス面は、外部の衝撃から光素子を保護し、破損防止するために、強化ガラスを使用することができ、太陽光の反射を防止し、太陽光の透過率を高めるために、鉄成分の含量が低い低鉄分強化ガラス(low iron tempered glass)を使用することができるが、これに制限されない。
【0085】
前記バックシートは、光素子モジュールの裏面を外部から保護する耐候性フィルムであって、例えば、フッ素系樹脂シート、アルミニウムなどの金属板または金属箔、環状オレフィン系樹脂シート、ポリカーボネート系樹脂シート、ポリ(メタ)アクリル系樹脂シート、ポリアミド系樹脂シート、ポリエステル系樹脂シート、耐候性フィルムとバリアーフィルムをラミネート積層した複合シートなどがあるが、これらに制限されない。
【0086】
その他にも、本発明の光素子モジュールは、上述の光素子用封止材フィルムを含む以外は、当該技術分野において周知の方法にしたがって制限なく製造することができる。
【0087】
本発明の光素子モジュールは、体積抵抗に優れた光素子用封止材フィルムを用いて製造されたものであり、光素子用封止材フィルムを介して光素子モジュール内の電子が移動して外部に電流が流出することを防止することができ、したがって、絶縁性が悪くなってリーク電流が発生し、モジュールの出力が急激に低下するPID(Potential Induced Degradation)現象を大きく抑制することができる。
【0088】
実施例
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本発明を例示するためのものであって、これらのみで本発明の範囲が限定されるものではない。
【0089】
[封止材フィルムの製造]
実施例1
エチレン/1-ブテン共重合体であるLG化学社製のLUCENETM LF675 500gを40℃のコンベクションオーブンを用いて一晩中乾燥した。前記LUCENETM LF675のASTM D1505に準じて測定した密度は0.877g/cm3であり、ASTM D1238に準じて測定した溶融指数(190℃、2.16kg)は14.0g/10minである。粘度計(Thermo Electron(Karsruhe)GmbH社製、Haake Modular Torque Viscometer)のボウル(bowl)温度を40℃にセットした。ボウルにエチレン/1-ブテン共重合体を投入した後、電動ピペットを用いて、架橋剤としてt-ブチル1-(2-エチルヘキシル)モノ-パーオキシカーボネート(TBEC、シグマアルドリッチ社製)1phr(parts per hundred rubber)、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレート(TAIC、シグマアルドリッチ社製)0.375phrおよびテトラビニルスズ(TVT、シグマアルドリッチ社製)0.125phr、シランカップリング剤としてメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO、信越社製)0.2phrを投入した。40rpmで攪拌しながら時間によるトルク(torque)値の変化を観察し、トルク値が急激に増加する時に含浸を終了した。
【0090】
次に、含浸が完了した試料をマイクロ押出機を用いて、高温架橋されないほどの低温(押出機バレル温度90~100℃の条件)で平均厚さ0.5mmでプレス成形して、シート形態の封止材フィルムを製造した。
【0091】
実施例2~5
架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレート(TAIC)およびテトラビニルスズ(TVT)の使用量を下記表2のように異ならせた以外は、実施例1と同じ方法で光素子用封止材組成物および封止材フィルムを製造した。
【0092】
比較例1
製造例1のLUCENETM LF675の代わりにエチレンビニルアセテート(EVA、EP28025、LG化学社製)を使用し、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレート(TAIC)のみを0.5phr使用した以外は、実施例1と同じ方法で光素子用封止材組成物および封止材フィルムを製造した。
【0093】
比較例2
架橋助剤を使用していない以外は、実施例1と同じ方法で光素子用封止材組成物および封止材フィルムを製造した。
【0094】
比較例3
架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレート(TAIC)のみを0.5phr使用した以外は、実施例1と同じ方法で光素子用封止材組成物および封止材フィルムを製造した。
【0095】
比較例4
架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレート(TAIC)0.5phrおよびテトラビニルシラン(TVS)0.5phrを使用した以外は、実施例1と同じ方法で光素子用封止材組成物および封止材フィルムを製造した。
【0096】
比較例5
架橋助剤としてテトラビニルシラン(TVS)のみを0.5phr使用した以外は、実施例1と同じ方法で光素子用封止材組成物および封止材フィルムを製造した。
【0097】
比較例6
架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレート(TAIC)0.25phrおよびテトラビニルシラン(TVS)0.25phrを使用した以外は、実施例1と同じ方法で光素子用封止材組成物および封止材フィルムを製造した。
【0098】
【0099】
前記表1において、POEはエチレン1-ブテン共重合体を、EVAはエチレンビニルアルコールを、TAICはトリアリルイソシアヌレートを、TVTはテトラビニルスズを、TVSはテトラビニルシランを示す。
【0100】
実験例
[封止材フィルムの分析]
2個の離型フィルム(厚さ:約100μm)の間に前記で製造された厚さ0.5mmの封止材フィルム(15cm×15cm)を入れ、真空ラミネータで工程温度150℃、工程時間20分(5分真空/1分加圧/14分圧力持続)間ラミネーションして架橋させた。
【0101】
(1)含浸速度
前記実施例1~5および比較例1~6で、前記製造された光素子用封止材組成物を40℃で40rpmの条件で攪拌させた時に、架橋剤含浸完了時間を測定し、下記表3に記載した。含浸時の攪拌時間による含浸トルク(torque)値を測定し、
図1~3に含浸トルクカーブ(torque curve)として作成した。
【0102】
(2)体積抵抗
23±1℃の温度と50±3%の湿度条件で、Agilent 4339B High-Resistance meter(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いて、1000Vの電圧を600秒間加えながら測定した。
【0103】
(3)光透過度
Shimadzu UV-3600分光光度計を用いて、200nm~1,000nmでの光透過率を測定して光透過度カーブ(curve)を得た後、280nm~380nmの値および380nm~1,100nmの値を確認した。
【0104】
-測定モード:transmittance
-波長間隔(interval):1nm
-測定速度:medium
【0105】
(4)付着性測定
ガラス基板面積の40%を封止材フィルムで覆い、残りの60%は、ポリイミドフィルムで覆った後、その上にフッ素系太陽光バックシートを積層した。150℃の温度で20分間ラミネーションして、封止材フィルムが架橋されながらガラス基板に付着されるようにした。試験片の封止材フィルムを幅1cmに切り目を入れて測定部位の幅が1cmになるようにした。
【0106】
引張圧縮試験機(LRX Plus Universal Test Machine、LLOYD社製)にUTM用サンプルホルダーおよび1kNのロードセル(load cell)を装着し、ガラス基板に付着された封止材フィルムと、ガラス基板の封止材フィルムが付着されていない部分の端をそれぞれ固定した後、60mm/minで引っ張り、付着性を試験した。
【0107】
(5)架橋度測定
前記架橋されたシートをハサミを用いて3×3mm2のサイズに切断した。7×10cm2の200メッシュ(mesh)鉄網の側面および下部をステープルで塞ぐ。前記鉄網に前記シートを入れて投入したシートの重量を測定した。 シートの量は0.49~0.51gになるようにした。シートを入れたら鉄網の上部をステープルで塞ぎ、サンプルの全重量を測定した。2Lシリンダー反応器に、キシレン(xylene)1,000gにBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)10gを溶解した溶液を注ぎ、前記サンプル3個~4個を入れた。反応器を加熱して沸き始める時点から5時間が経過した時に、還流(reflux)を終了した。金属の玉網で反応器内のサンプルを取り出してキシレンで洗浄した。100℃で一晩中真空乾燥した。乾燥したサンプルの重量を測定して架橋度を計算した。架橋度は、キシレンで還流させたサンプル3個~4個の平均値として定めることができる。
【0108】
架橋度(%)=[(還流前のシートの重量)/(還流後のシートの重量)]×100
【0109】
【0110】
前記表2を参照すると、実施例1~5の光素子用封止材組成物は、比較例1~6の光素子用封止材組成物に比べて高い架橋は体積抵抗を示すことを確認することができる。このような結果は、樹脂成分として、オレフィン系共重合体の代わりに通常使用されているEVAを使用した比較例1だけでなく、実施例と同様に、エチレン1-ブテン共重合体を使用した比較例2~6も同様であった。これにより、実施例1~5で使用されたテトラビニルスズ(TVT)により、光素子用封止材組成物が架橋後にさらに高い体積抵抗を示すようになったことを確認することができた。また、実施例1~5は、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が0.5phr使用された比較例3に比べて、向上した架橋剤含浸速度を示したが、架橋剤含浸速度は、テトラビニルスズ(TVT)の使用比率が増加するほど速くなることを確認することができた。実施例1~3はテトラビニルスズ(TVT)とトリアリルイソシアヌレート(TAIC)がともに使用された例であり、実施例4および5は、テトラビニルスズ(TVT)が単独で使用された例である。これにより、テトラビニルスズ(TVT)の単独使用またはテトラビニルスズ(TVT)とトリアリルイソシアヌレート(TAIC)の混合使用が可能であり、架橋後、体積抵抗の増加のためには、テトラビニルスズ(TVT)の使用量を、架橋度の増加のためには、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)の使用量を増加させて混合比を決定することができることを確認することができた。また、テトラビニルスズ(TVT)の単独使用時には、より向上した架橋後の体積抵抗値を得ることができ、テトラビニルスズのみの単独使用だけでも、高い水準の架橋度向上効果を得ることができることを確認することができた。
【国際調査報告】