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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-09
(54)【発明の名称】抗菌組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 33/12 20060101AFI20240402BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20240402BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
A01N33/12 101
A01P1/00
A01P3/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566700
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 KR2022014549
(87)【国際公開番号】W WO2023068585
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0141414
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0118143
(32)【優先日】2022-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スンモ・イ
(72)【発明者】
【氏名】イヒョン・ペク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ユン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ファンヒ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥファン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ヒョン・ホ
(72)【発明者】
【氏名】ジヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンサム・チェ
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011AA03
4H011BB04
(57)【要約】
本発明は、化学式1で表される化合物を含み、方法1によって測定した抗菌力が80%以上である抗菌組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物を1種以上含み、
グラム陽性菌、グラム陰性菌およびカビ菌のうち少なくとも一つの菌株に対して、下記方法1により測定した抗菌力が80%以上である抗菌組成物:
【化1】
前記化学式1において、
L1およびL2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換または非置換の炭素数1~4のアルキレン基;または置換または非置換の炭素数6~30のアリーレン基であり、
Aは、置換または非置換の炭素数1~3のアルキル基であり、
nは、0~4の整数であり、
R1およびR2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基であり、R1およびR2の少なくとも一つは置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
R3は、炭素数4~20のアルキル基であり、
nが2以上の場合、2以上のAは、互いに同一または異なり、
[方法1]
3,000 CFU/mLの菌を接種したブロス(broth)型培地(Nutrient broth、BD DIFCO., 8g/L)25mLを50mL円錐型のチューブ(Conical tube)に入れた後、前記抗菌組成物0.015gを添加して、懸濁させ(Vortexing)、十分混合された溶液を、35℃が維持される振盪水槽(shaking water bath)内で16時間培養させ、
培養が完了した溶液を1×PBSバッファー溶液を用いて1/5に希釈した後、UV/Vis分光光度計(spectrophotometer)を用いて吸光度(λ=600nm)を測定し、測定した吸光度を前記抗菌組成物の添加なしで培養した溶液と比較して、静菌減少率である抗菌力を以下の数式で計算する。
【数1】
【請求項2】
前記抗菌力は90%以上である、請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項3】
前記グラム陽性菌は、 エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae )、化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogene)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)およびラクトコッカス・ラクティス(Lactobacillus lactis)の中から選択されるいずれかである、請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項4】
前記グラム陰性菌は、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、大腸菌(Escherichia coli)、チフス菌(Salmonella typhi)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、コレラ菌(Vibrio cholerae)およびエンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)の中から選択されるいずれかである、請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項5】
前記R1およびR2のうち少なくとも1つは、非置換の炭素数1~4のアルキル基である、請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項6】
前記R3は、非置換の炭素数4~16のアルキル基である、請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項7】
前記R1およびR2が、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、メチル基またはエチル基である場合、R3は炭素数4~16のアルキル基である、請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項8】
前記L1は直接結合である、請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項9】
前記L2はメチレン基である、請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項10】
前記化学式1で表される化合物は、下記構造からなる群から選択されるいずれかである、請求項1に記載の抗菌組成物:
【化2】
【化3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌組成物に関する。
【0002】
<関連出願の相互参照>
本明細書は、2021年10月21日付にて韓国特許庁へ提出された韓国特許出願10-2021-0141414号および2022年9月19日付にて韓国特許庁へ提出された韓国特許出願10-2022-0118143号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、生活用品や衛生用品など様々な製品に高抗菌性が求められている。
【0004】
抗菌性が要求される製品の材料や最終的に使用される状態によって要求される抗菌性の程度や、抗菌性を付与するための材料の要件が異なる。例えば、製品に適用される抗菌性材料の使用量や一緒に使われる材料によって、抗菌性を付与するための材料の性質や抗菌性の程度が異なる。
【0005】
そのため、様々な製品のそれぞれに適用するのに適した抗菌性材料の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一実施形態は、親水性および疎水性を有し、抗菌性付与に有利な抗菌組成物を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施態様は、下記化学式1で表される化合物を含み、グラム陽性菌、グラム陰性菌およびカビ菌のうち少なくとも一つの菌株に対して、下記方法1により測定した抗菌力が80%以上である抗菌組成物を提供する。
【0008】
【化1】
【0009】
前記化学式1において、
L1およびL2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換または非置換の炭素数1~4のアルキレン基;または置換または非置換の炭素数6~30のアリーレン基であり、
Aは、置換または非置換の炭素数1~3のアルキル基であり、
nは、0~4の整数であり、
R1およびR2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基であり、R1およびR2の少なくとも一つは置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
R3は、炭素数4~20のアルキル基であり、
nが2以上の場合、2以上のAは、互いに同一または異なり、
【0010】
[方法1]
3,000 CFU/mLの菌を接種したブロス(broth)型培地(Nutrient broth、BD DIFCO.,8g/L)25mLを50mLの円錐型のチューブ(Conical tube)に入れた後、前記抗菌組成物0.015gを添加して、懸濁させ(Vortexing)、十分混合された溶液を、35℃が維持される振盪水槽(shaking water bath)内で16時間培養し、
培養が完了した溶液を1×PBSバッファー溶液を用いて1/5に希釈した後、UV/Vis分光光度計(spectrophotometer)を用いて吸光度(λ=600nm)を測定し、測定した吸光度を前記抗菌組成物の添加なしで培養した溶液と比較して、静菌減少率である抗菌力を以下の数式で計算する。
【0011】
【数1】
【発明の効果】
【0012】
本発明のいくつかの実施形態による抗菌組成物は、親水性官能基および疎水性官能基を同時に含むため、抗菌性付与に有利であり、抗菌性が特定の範囲内に制御されたものであり、安全で優れた抗菌性を付与することができる。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態による抗菌組成物は、使用量による抗菌力の変化が少ないため、製品として適用する際に意図としない濃度のムラが発生した場合でも予測範囲内の抗菌性を示すことができる。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態による抗菌組成物は、特定の菌に対して80%以上の抗菌性を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
<抗菌組成物>
本発明の一実施形態によれば、下記化学式1で表される化合物を含み、グラム陽性菌、グラム陰性菌およびカビ菌のうち少なくとも1つの菌株に対して、下記方法1により測定した抗菌力が80%以上である抗菌組成物を提供する。
【0017】
【化2】
【0018】
前記化学式1において、
L1およびL2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換または非置換の炭素数1~4のアルキレン基;または置換または非置換の炭素数6~30のアリーレン基であり、
Aは、置換または非置換の炭素数1~3のアルキル基であり、
nは、0~4の整数であり、
R1およびR2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基であり、R1およびR2の少なくとも一つは置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
R3は、炭素数4~20のアルキル基であり、
nが2以上の場合、2以上のAは、互いに同一または異なり、
【0019】
[方法1]
3,000 CFU/mLの菌を接種したブロス(broth)型培地(Nutrient broth、BD DIFCO., 8g/L)25mLを50mL円錐型のチューブ(Conical tube)に入れた後、前記抗菌組成物0.015gを添加して、懸濁させ(Vortexing)、十分混合された溶液を、35℃が維持される振盪水槽(shaking water bath)内で16時間培養させ、
培養が完了した溶液を1×PBSバッファー溶液を用いて1/5に希釈した後、UV/Vis分光光度計(spectrophotometer)を用いて吸光度(λ=600nm)を測定し、測定した吸光度を前記抗菌組成物の添加なしで培養した溶液と比較して、静菌減少率である抗菌力を以下の数式で計算する。
【0020】
【数2】
【0021】
本発明の一実施形態によれば、水素は、軽水素(H、Protium)だけでなく、同位元素として重水素(H、Deuterium)または三重水素(H、Tritium)を含む概念であってもよい。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、前記Aは、メチル基である。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、前記nは、0である。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、前記R1およびR2の少なくとも1つは、置換または非置換の炭素数1~4のアルキル基である。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、前記R1およびR2の少なくとも一つは、非置換の炭素数1~4のアルキル基であり、言い換えれば、それぞれ独立して、メチル基;エチル基;プロピル基;またはブチル基である。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、前記R3は、非置換の炭素数4~20のアルキル基である。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、前記R3は、置換または非置換の炭素数4~16のアルキル基である。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、前記R3は、非置換の炭素数4~16のアルキル基である。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、前記R1~R3は、同時にメチル基またはエチル基であってはならない。すなわち、前記R1およびR2が、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、メチル基またはエチル基である場合、R3は炭素数4~16のアルキル基であり得る。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、前記R1~R3は、同時に炭素数4~16の置換または非置換のアルキル基であってはならない。すなわち、前記R1~R3のうち少なくとも2つの基が、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、炭素数4~16のアルキル基である場合、残りの1つの基(具体的には、R1またはR2)は、メチル基またはエチル基であり得る。
【0031】
すなわち、R1~R3が前記の条件を満たす場合、化学式1で表される化合物(4級アンモニウムカチオン)が、グラム陽性菌、グラム陰性菌およびカビ菌のうち少なくとも1つの菌株に対して細胞の表面のアニオン部位に静電気的に吸着することができつつ、疎水性の相互作用により細胞の表層構造を物理化学的に破壊させて死滅が効率的に行われることができる。これにより、上述の方法1によって測定された抗菌力を一定水準以上に改善および到達させることができる。
【0032】
一方、R1~R3が前記の条件を満たさない場合、特にR1~R3が、同時にメチル基またはエチル基であるか、または同時に炭素数4~16の置換または非置換のアルキル基である場合、これによって形成される4級アンモニウムカチオンは、疎水性の相互作用が細胞死滅まで果たすほどに十分は起こらず、前述の方法1によって測定された抗菌力が減少することがある。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、前記L1およびL2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換または非置換の炭素数1~4のアルキレン基;または置換または非置換の炭素数6~30のアリーレン基である。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、前記L1およびL2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;または置換または非置換の炭素数1~4のアルキレン基である。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、前記L1は、直接結合である。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、前記L2は、非置換の炭素数1~4のアルキレン基である。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、前記L2は、メチレン基;またはエチレン基である。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、前記L2は、メチレン基である。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式1で表される化合物は、下記構造からなる群から選択されるいずれかである。
【0040】
【化3】
【化4】
【0041】
本発明の一実施形態によれば、前記方法1による前記抗菌組成物の抗菌力は、80%以上、85%以上、90%以上、93%以上、95%以上、97%以上、98%以上、または99%以上であってもよい。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、前記抗菌組成物の添加量を変更することを除いて、前記方法1と同様の方法で静菌減少率(抗菌力ともいう)を評価することができる。
【0043】
例えば、抗菌組成物を0.015gを添加する方法の代わりに、抗菌組成物を0.005gを添加する(以下の方法2)、抗菌組成物を0.01gを添加する(以下の方法3)、または抗菌組成物を0.02gを添加すること(下記の方法4)を除いて、前述の方法1と同様の方法で静菌減少率を評価してもよい。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式1で表される化合物を含み、グラム陽性菌、グラム陰性菌およびカビ菌のうち少なくとも1つの菌株に対して、下記方法2によって測定した抗菌力が50%以上である抗菌組成物を含んでもよい。
【0045】
[方法2]
3,000 CFU/mLの菌を接種したブロス(broth)型培地(Nutrient broth、BD DIFCO.,8g/L)25mLを50mL円錐型のチューブ(Conical tube)に入れた後、前記抗菌組成物0.005gを添加して懸濁させ(Vortexing)、十分混合された溶液を35℃が維持される振盪水槽(shaking water bath)内で16時間培養させ、
培養が完了した溶液を1×PBSバッファー溶液を用いて1/5に希釈した後、UV/Vis分光光度計(spectrophotometer)を用いて吸光度(λ=600nm)を測定し、測定した吸光度を前記抗菌組成物の添加なしで培養した溶液と比較して、静菌減少率である抗菌力を以下の数式で計算する。
【0046】
【数3】
【0047】
本発明の一実施形態によれば、前記方法2による前記抗菌組成物の抗菌力は、50%以上、55%以上、または60%以上であり得る。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式1で表される化合物を含み、グラム陽性菌、グラム陰性菌およびカビ菌のうち少なくとも1つの菌株に対して、下記方法3により測定した抗菌力が70%以上である抗菌組成物を含んでもよい。
【0049】
[方法3]
3,000 CFU/mLの菌を接種したブロス(broth)型培地(Nutrient broth、BD DIFCO.,8g/L)25mLを50mL円錐型のチューブ(Conical tube)に入れた後、前記抗菌組成物0.01gを添加して懸濁させ(Vortexing)、十分混合された溶液を35℃が維持される振盪水槽(shaking water bath)内で16時間培養させ、
培養が完了した溶液を1×PBSバッファー溶液を用いて1/5に希釈した後、UV/Vis分光光度計(spectrophotometer)を用いて吸光度(λ=600nm)を測定し、測定した吸光度を前記抗菌組成物の添加なしで培養した溶液と比較して、静菌減少率である抗菌力を以下の数式で計算する。
【0050】
【数4】
【0051】
本発明の一実施形態によれば、前記方法3による前記抗菌組成物の抗菌力は、70%以上、75%以上、または80%以上であり得る。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式1で表される化合物を含み、グラム陽性菌、グラム陰性菌およびカビ菌のうち少なくとも1つの菌株に対して、下記方法4により測定した抗菌力は90%以上である抗菌組成物を含んでもよい。
【0053】
[方法4]
3,000 CFU/mLの菌を接種したブロス(broth)型培地(Nutrient broth、BD DIFCO.,8g/L)25mLを50mL円錐型のチューブ(Conical tube)に入れた後、前記抗菌組成物0.02gを添加して懸濁させ(Vortexing)、十分混合された溶液を35℃が維持される振盪水槽(shaking water bath)内で16時間培養させ、
培養が完了した溶液を1×PBSバッファー溶液を用いて1/5に希釈した後、UV/Vis分光光度計(spectrophotometer)を用いて吸光度(λ=600nm)を測定し、測定した吸光度を前記抗菌組成物の添加なしで培養した溶液と比較して、静菌減少率である抗菌力を以下の数式で計算する。
【0054】
【数5】
【0055】
本発明の一実施形態によれば、方法4による抗菌組成物の抗菌力は、90%以上、95%以上、または99%以上であり得る。
【0056】
本発明において、「抗菌性を有する」とは、前記抗菌力(%)が少なくとも50%、少なくとも70%以上であり、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上または最も好ましくは99%以上であることを意味する。
【0057】
本発明において、「抗菌性を有する」とは、前記方法1による抗菌力(%)が80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上であることを意味する。
【0058】
本発明において、「抗菌性を有する」とは、前記方法2による抗菌力(%)が50%以上、好ましくは55%以上、または最も好ましくは60%以上であることを意味する。
【0059】
本発明において、「抗菌性を有する」とは、前記方法3による抗菌力(%)が70%以上、好ましくは75%以上、または最も好ましくは80%以上であることを意味する。
【0060】
本発明において、「抗菌性を有する」とは、前記方法4による抗菌力(%)が90%以上、好ましくは95%以上、または最も好ましくは99%以上であることを意味する。
【0061】
本発明の一実施形態に係る抗菌組成物は、グラム陽性菌、グラム陰性菌およびカビ菌からなる群から選択される少なくとも1つの株に対して、それぞれ下記方法1により測定した抗菌力が80%以上である。
【0062】
抗菌力を有する前記抗菌組成物において、前記グラム陽性菌、グラム陰性菌およびカビ菌の菌株は、接触の時に様々な疾患を引き起こすことができるだけでなく、二次感染も引き起こす可能性があるため、一つの抗菌剤を用いて前記グラム陽性菌、グラム陰性菌およびカビ菌のすべてに対して抗菌性を示すことが好ましい。
【0063】
[方法1]
3,000 CFU/mLの菌を接種したブロス(broth)型培地(Nutrient broth、BD DIFCO.,8g/L)25mLを50mL円錐型のチューブ(Conical tube)に入れた後、前記抗菌組成物0.015gを添加して懸濁し(Vortexing)、十分混合された溶液を、35℃が維持される振盪水槽(shaking water bath)内で16時間培養する。
【0064】
培養が完了した溶液を1×PBSバッファー溶液を用いて1/5に希釈した後、UV/Vis分光光度計(spectrophotometer)を用いて吸光度(λ=600nm)を測定し、測定した吸光度を前記抗菌組成物の添加なしに培養した溶液と比較して静菌減少率である抗菌力を以下の数式で計算する。
【0065】
【数6】
【0066】
本発明の抗菌組成物について前記方法1で抗菌力を評価したとき、抗菌力が90%以上の場合のみ観察された。その結果、本発明に係る抗菌組成物は、優れた抗菌力を有することが確認できた。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、前記グラム陽性菌は、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogene)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)およびラクトコッカス・ラクティス(Lactobacillus lactis)から選択されるいずれかであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0068】
前記グラム陰性菌は、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、大腸菌(Escherichia coli)、チフス菌(Salmonella typhi)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、コレラ菌(Vibrio cholerae)およびエンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)から選択されるいずれかでもよいが、これに限定されるものではない。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、前記カビ菌は、カンジダアルビカンス(Candida albicans)などであり得るが、これらに限定されない。
【0070】
<製造方法>
本発明の一実施形態は、下記化学式1で表される化合物の製造方法を提供する。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、下記化学式1で表される化合物の製造方法として、アセトニトリル、下記化学式11で表される化合物、およびトリアルキルアミン化合物を反応させる段階を含む。
【0072】
【化5】
【0073】
前記化学式1および11において、
L1およびL2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換または非置換の炭素数1~4のアルキレン基;または置換または非置換の炭素数6~30のアリーレン基であり、
Aは、炭素数1~3のアルキル基であり、
nは、0~4の整数であり、
R1およびR2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基であり、R1およびR2の少なくとも一つは置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
R3は、炭素数4~20のアルキル基であり、
Halは、ハロゲン基であり、
nが2以上の場合、2以上のAは、互いに同一または異なる。
【0074】
このとき、前記L1、L2、R1~R3、A、およびnは、前記抗菌組成物において上述した内容が適用され得る。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、前記トリアルキルアミン化合物はNR1R2R3で表される。このとき、R1~R3は前記化学式1で定義したとおりである。
【0076】
<抗菌樹脂>
本発明の一実施形態によれば、前記抗菌樹脂は、前述の抗菌組成物に含まれた前記化学式1で表される1種以上の化合物に由来する繰り返し単位の重合体であってもよい。
【0077】
本発明の一実施形態によれば、前記抗菌樹脂は、前記化学式1で表される1種以上の化合物に由来する繰り返し単位の単独重合体または共重合体であってもよい。
【0078】
本発明の一実施形態によれば、前記抗菌樹脂は、前記化学式1で表される1種以上の化合物に由来する繰り返し単位の他に、他の化合物に由来する繰り返し単位を含んでもよい。
【0079】
他の化合物の例としては、スチレン、アクリロニトリルなどがあるが、これらに限定されない。
【0080】
前記共重合体は、交差共重合体(Alternating copolymer)、ランダム共重合体(Random copolymer)、ブロック共重合体(Block copolymer)、またはグラフト共重合体(Graft copolymer)などであり得る。
【0081】
本発明において、ある部材(層)が他の部材(層)の「上」に位置していると言うとき、これはある部材(層)が他の部材に接している場合だけでなく、2つの部材(層)の間に他の部材(層)が存在する場合も含む。
【0082】
本発明において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0083】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかしながら、本発明による実施例は様々な形態に変更することができ、本発明の範囲は以下に説明する実施例に限定されるものと解釈されない。本発明の実施例は、当技術分野において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0084】
<合成例>
本発明の反応式は以下のとおりである。
【0085】
【化6】
【0086】
前記反応式において、R1およびR2はそれぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基であり、R3は炭素数1~20のアルキル基である。
【0087】
合成例1:化合物Aの合成
【0088】
【化7】
【0089】
二口(Two-neck)丸底フラスコに50mLのアセトニトリル(acetonitrile(ACT))を入れ、窒素置換した後、20gの4-ビニルベンジルクロリド(4-vinylbenzyl chloride)(1.0eq)と18.6gのN,N-ジエチルブタン-1-アミン(N,N-diethylbutan-1-amine)(1.1eq)を加え、45℃で撹拌し、一晩反応させた。有機溶媒を真空乾燥した後、ヘキサン(Hexane)を入れて1時間撹拌した。生成された固体をヘキサンで洗浄し、濾過して化合物Aを収得した。
【0090】
[MS-H]=246
【0091】
合成例2:化合物Bの合成
【0092】
【化8】
【0093】
前記合成例1において、N,N-ジエチルブタン-1-アミンの代わりにN-ブチル-N-エチルブタン-1-アミン(N-butyl-N-ethylbutan-1-amine)を用いたことを除いては同様の方法により化合物Bを収得した。
【0094】
[MS-H]=274
【0095】
合成例3:化合物Cの合成
【0096】
【化9】
【0097】
前記合成例1において、N,N-ジエチルブタン-1-アミンの代わりにN-メチル-N-オクチルオクタン-1-アミン(N-methyl-N-octyloctan-1-amine)を用いたことを除いては同様の方法により化合物Cを収得した。
【0098】
[MS-H]=372
【0099】
合成例4:化合物Dの合成
【0100】
【化10】
【0101】
前記合成例1において、N,N-ジエチルブタン-1-アミンの代わりにN-デシル-N-メチルデカン-1-アミン(N-decyl-N-methyldecan-1-amine)を用いたことを除いては同様の方法により化合物Dを収得した。
【0102】
[MS-H]=428
【0103】
比較合成例1:比較化合物1の合成
【0104】
【化11】
【0105】
前記合成例1において、N,N-ジエチルブタン-1-アミンの代わりにトリエチルアミン(triethylamine)を用いたことを除いては、同様の方法で比較化合物1を収得した。
【0106】
[MS-H]=218
【0107】
<実施例>
実施例1
前記化合物Aを含む抗菌組成物について、下記方法1による抗菌力を測定し、下記表1に示した。このとき、Proteus mirabilis(ATCC29906)菌を使用した。
【0108】
[方法1]
3,000 CFU/mLの菌を接種したブロス(broth)型培地(Nutrient broth、BD DIFCO., 8g/L)25mLを50mL円錐型のチューブ(Conical tube)に入れた後、下記表1に記載の抗菌組成物0.015gを添加して懸濁し(Vortexing)、十分混合された溶液を35℃が維持される振盪水槽(shaking water bath)内で16時間培養させ、
培養が完了した溶液を1×PBSバッファー溶液を用いて1/5に希釈した後、UV/Vis分光光度計(spectrophotometer)を用いて吸光度(λ=600nm)を測定し、測定した吸光度を前記抗菌組成物の添加なしで培養した溶液と比較して、静菌減少率である抗菌力を以下の数式で計算する。
【0109】
【数7】
【0110】
実施例2~4および比較例1
化合物Aを含む抗菌組成物を使用する代わりに、化合物B~Dおよび比較化合物1をそれぞれ含む抗菌組成物を独立して使用したことを除いては、前述の実施例1と同様の方法で抗菌力をそれぞれ測定した。抗菌力測定結果を下記表1に示した。
【0111】
【表1】
【0112】
ただし、前記Referenceは、任意の抗菌組成物が添加されていない試料である。
【0113】
前記表1において、方法2~4は、前記表1に記載の抗菌組成物の添加量をそれぞれ異なるようにしたことを除いては方法1と同様である。
【0114】
前記表1によれば、前記方法1に従って測定された抗菌力を比較すると、実施例1~4の抗菌組成物は全て99.9%であったが、比較例1の抗菌組成物は14.3%であったところ、化合物A~Dを含む抗菌組成物の抗菌力に比べて、比較化合物1を含む抗菌組成物の抗菌力が著しく低いことがわかった。
【国際調査報告】