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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-09
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240402BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20240402BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240402BHJP
   C08F 279/02 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L51/00
C08L63/00 A
C08F279/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566701
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 KR2022012076
(87)【国際公開番号】W WO2023018274
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0107589
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0100467
(32)【優先日】2022-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、サン-フン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、キ-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ミン-ア
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン-キュン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4J002BN142
4J002CC031
4J002CC181
4J002CD021
4J002CD031
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD131
4J002CF211
4J002CK011
4J002FD140
4J002FD150
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
4J026AA68
4J026BA05
4J026BA27
4J026BB04
4J026DA04
4J026DB04
(57)【要約】
本発明は、グラフト共重合体に関し、エポキシ樹脂などの硬化性樹脂に対する粉体分散性に優れるため、粉体状衝撃補強剤として適用可能なグラフト共重合体組成物、それを含む硬化性樹脂組成物、およびそれらの製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続相および分散相を含み、
前記連続相は、硬化性樹脂を含み、
前記分散相は、グラフト共重合体を含み、
コーンプレート型粘度計で直径25mmのPlate PP25を用いて測定した25℃の粘度が500Pa.s以上2,000Pa.s以下である、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記硬化性樹脂組成物は、25℃の粘度が1,100Pa.s以上2,000Pa.s以下である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化性樹脂組成物は、下記数式1により計算されたチクソ性(Thixotropic Index)が1.5~2.5である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
[数式1]
チクソ性=[2.4 1/sでの25℃の粘度(Pa.s)]/[24 1/sでの25℃の粘度(Pa.s)]
【請求項4】
前記硬化性樹脂組成物は、下記ステップ(1)~(3)に従って剪断速度に変化を与えた際に、下記数式2により計算された復原力が60%以上である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
(1)25℃で2.4 1/sの剪断速度、
(2)25℃で24 1/sの剪断速度、
(3)25℃で2.4 1/sの剪断速度
[数式2]
復原力=[((3)で測定された25℃の粘度(Pa.s))/((1)で測定された25℃の粘度(Pa.s))]×100
【請求項5】
前記硬化性樹脂組成物は、連続相を50重量%~99重量%および分散相を1重量%~50重量%含む、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記グラフト共重合体は、ゴム質重合体を含むコアと、前記ゴム質重合体にグラフト単量体がグラフト重合してなるシェルと、を含むコア-シェル形態のグラフト共重合体であって、
前記グラフト共重合体は、コアを72重量%~83重量%含み、
前記コアは、平均粒径が250nm以上である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記ゴム質重合体は、共役ジエン系単量体単位およびアルキルアクリレート系単量体単位からなる群から選択された1種以上の単量体単位を含む、請求項7に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記グラフト単量体は、メチル(メタ)アクリレート単量体、炭素数2~12のアルキル(メタ)アクリレート系単量体、および架橋性単量体を含む、請求項7に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
前記グラフト単量体は、芳香族ビニル系単量体をさらに含む、請求項7に記載のグラフト共重合体組成物。
【請求項11】
前記グラフト共重合体は、コアを75重量%以上~80重量%以下、シェルを20重量%以上25重量%以下含む、請求項7に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
前記コアは、平均粒径が250nm~350nmである、請求項7に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
前記グラフト共重合体は、シェルの重量平均分子量が40,000g/mol以下である、請求項7に記載の硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2021年8月13日付けの韓国特許出願第10-2021-0107589号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、接着剤、特に構造用接着剤に強化剤として適用可能な硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
エポキシ樹脂に代表される硬化性樹脂は、電気電子製品、自動車部品、建築資材などの各種分野で用いられている。前記硬化性樹脂は、単独で用いるよりは、物性、加工性などを補うための目的で無機充填剤、離型剤、ゴム性質を有するゴム微粒子などの添加剤を併用して用いている。中でも、エポキシ樹脂は、脆性的(brittle)性質を示す場合が多いため、耐衝撃性や接着強度に対する改善が必要である。
【0004】
エポキシ樹脂の耐衝撃性を改善するための方法として、ゴム質重合体を含むグラフト共重合体を衝撃補強剤として併用する方法が提案されている。グラフト共重合体は、ゴム質重合体を含むコアと、前記コアにグラフト重合してなるシェルと、を含むコア-シェル構造の粒子状を有する。
【0005】
前記グラフト共重合体が適用されたエポキシ樹脂組成物は、主に構造用接着剤として用いられているが、この際、構造用接着剤は、ディスペンスラインに沿って三次元的に塗布されるため、作業性を向上させるためには、揺変指数、すなわち、チクソ性および復原力を確保することが重要である。
【0006】
一方、前記グラフト共重合体をエポキシ樹脂に対する衝撃補強剤として適用するためには、グラフト共重合体をエポキシ樹脂に分散させる必要があり、グラフト共重合体をエポキシ樹脂に分散させるための方法としては、液状分散方法および粉体状分散方法が挙げられる。
【0007】
液状分散方法は、図1に示されたように、グラフト共重合体が水に分散しているラテックス状態のグラフト共重合体に対し、水を溶媒に置換し、溶媒を再びエポキシ樹脂に置換する段階的な溶媒置換方法によりグラフト共重合体をエポキシ樹脂に分散させる。このような液状分散方法は、エポキシ樹脂の均質な分布マトリックスにグラフト共重合体が分散するという長所があるが、グラフト共重合体を衝撃補強剤としてエポキシ樹脂に適用するためには、分散させるまでグラフト共重合体をラテックス状態で保管しなければならない保管上の問題があり、溶媒置換による工程費用が高く、グラフト共重合体および溶媒置換工程で分離して排出される水および溶媒により環境的な面で問題がある。
【0008】
粉体状分散方法は、図2に示されたように、グラフト共重合体ラテックスから凝集した乾燥粉末、すなわち、粉体状のグラフト共重合体をエポキシ樹脂に直接分散させる点で、工程費用が安価であるという長所があるが、グラフト共重合体粉体をエポキシ樹脂に直接導入する際にグラフト共重合体粉体の粘度が非常に高くなるため、実質的に分散が非常に難しいか不可能であるという問題がある。
【0009】
したがって、エポキシ樹脂のような硬化性樹脂組成物に衝撃補強剤を適用するに際し、工程費用および環境的な面を全て改善するために粉体状分散方法を適用するためには、グラフト共重合体粉体の粉体分散性を改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】JP2006-104328A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の従来技術の問題を解決するためになされたものであり、チクソ性および復原力に優れる硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
特に、本発明は、グラフト共重合体を粉体状として適用しながらも、チクソ性および復原力に優れる硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、硬化性樹脂組成物を提供する。
1)本発明は、連続相および分散相を含み、前記連続相は、硬化性樹脂を含み、前記分散相は、グラフト共重合体を含み、コーンプレート型粘度計で直径25mmのPlate PP25を用いて測定した25℃の粘度が500Pa.s以上2,000Pa.s以下である、硬化性樹脂組成物を提供する。
【0013】
2)本発明において、前記硬化性樹脂組成物は、25℃の粘度が1,100Pa.s以上2,000Pa.s以下である、前記1)に記載の硬化性樹脂組成物を提供する。
【0014】
3)本発明において、前記硬化性樹脂組成物は、下記数式1により計算されたチクソ性(Thixotropic Index)が1.5~2.5である、前記1)または2)に記載の硬化性樹脂組成物を提供する。
【0015】
[数式1]
チクソ性=[2.4 1/sでの25℃の粘度(Pa.s)]/[24 1/sでの25℃の粘度(Pa.s)]
【0016】
4)本発明において、前記硬化性樹脂組成物は、下記ステップ(1)~(3)に従って剪断速度に変化を与えた際に、下記数式2により計算された復原力が60%以上である、前記1)~3)のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を提供する。
【0017】
(1)25℃で2.4 1/sの剪断速度、
(2)25℃で24 1/sの剪断速度、
(3)25℃で2.4 1/sの剪断速度
【0018】
[数式2]
復原力=[((3)で測定された25℃の粘度(Pa.s))/((1)で測定された25℃の粘度(Pa.s))]×100
【0019】
5)本発明において、前記硬化性樹脂組成物は、連続相を50重量%~99重量%および分散相を1重量%~50重量%含む、前記1)~4)のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を提供する。
【0020】
6)本発明において、前記硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、前記1)~5)のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を提供する。
【0021】
7)本発明において、前記グラフト共重合体は、ゴム質重合体を含むコアと、前記ゴム質重合体にグラフト単量体がグラフト重合してなるシェルと、を含むコア-シェル形態のグラフト共重合体であって、前記グラフト共重合体は、コアを72重量%~83重量%含み、前記コアは、平均粒径が250nm以上である、前記1)~6)のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を提供する。
【0022】
8)本発明において、前記ゴム質重合体は、共役ジエン系単量体単位およびアルキルアクリレート系単量体単位からなる群から選択された1種以上の単量体単位を含む、前記7)に記載の硬化性樹脂組成物を提供する。
【0023】
9)本発明において、前記グラフト単量体は、メチル(メタ)アクリレート単量体、炭素数2~12のアルキル(メタ)アクリレート系単量体、および架橋性単量体を含む、前記7)または8)に記載の硬化性樹脂組成物を提供する。
【0024】
10)本発明において、前記グラフト単量体は、芳香族ビニル系単量体をさらに含む、前記7)~9)のいずれか一項に記載のグラフト共重合体組成物を提供する。
【0025】
11)本発明において、前記グラフト共重合体は、コアを75重量%以上~80重量%以下、シェルを20重量%以上25重量%以下含む、前記7)~10)のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を提供する。
【0026】
12)本発明において、前記コアは、平均粒径が250nm~350nmである、前記7)~11)のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を提供する。
【0027】
13)本発明において、前記グラフト共重合体は、シェルの重量平均分子量が40,000g/mol以下である、前記7)~12)のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の硬化性樹脂組成物は、チクソ性および復原力に優れることはもちろん、グラフト共重合体が粉体状として適用され、生産性に優れ、硬化性樹脂組成物中に分散したグラフト共重合体により耐衝撃性などの機械的物性に優れるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】グラフト共重合体をエポキシ樹脂に分散させるための液状分散方法を簡略に示した工程図である。
図2】グラフト共重合体をエポキシ樹脂に分散させるための粉体状分散方法を簡略に示した工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をより詳細に説明する。
本明細書および特許請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0031】
本発明において、「単量体単位」という用語は、単量体に起因した成分、構造、またはその物質自体を示すものであってもよく、具体的な例として、重合体の重合時に、投入される単量体が重合反応に参加して重合体中でなす繰り返し単位を意味し得る。
【0032】
本発明で用いられる「組成物」という用語は、当該組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物だけでなく、当該組成物を含む材料の混合物を含む。
【0033】
本発明は、硬化性樹脂組成物を提供する。前記硬化性樹脂組成物は、衝撃補強剤としてグラフト共重合体を含んでもよく、具体的な例として、前記グラフト共重合体が粉体状で分散したものであってもよい。
【0034】
本発明の一実施形態によると、前記硬化性樹脂組成物は、連続相および分散相を含み、前記連続相は、硬化性樹脂を含み、前記分散相は、グラフト共重合体を含み、コーンプレート型粘度計で直径25mmのPlate PP25を用いて測定した25℃の粘度が500Pa.s以上2,000Pa.s以下であってもよい。
【0035】
本発明の一実施形態によると、前記硬化性樹脂組成物は、接着剤、特に構造用接着剤に強化剤として適用可能な硬化性樹脂組成物であってもよく、この際、ディスペンスラインに沿って三次元的に塗布される接着剤組成物の作業性を向上させるためにチクソ性および復原力を確保する点で、コーンプレート型粘度計で直径25mmのPlate PP25を用いて測定した25℃の粘度が500Pa.s以上2,000Pa.s以下であることを特徴とする。
【0036】
本発明の一実施形態によると、前記硬化性樹脂組成物は、コーンプレート型粘度計で直径25mmのPlate PP25を用いて測定した25℃の粘度が500Pa.s以上、600Pa.s以上、700Pa.s以上、800Pa.s以上、900Pa.s以上、1,000Pa.s以上、1,100Pa.s以上、1,200Pa.s以上、1,300Pa.s以上、または1,400Pa.s以上であってもよく、また、2,000Pa.s以下、1,900Pa.s以下、1,800Pa.s以下、1,700Pa.s以下、1,600Pa.s以下、1,500Pa.s以下、または1,400Pa.s以下であってもよい。この範囲内で、チクソ性および復原力の両方を同時に確保することができる。特に、粘度が上記範囲よりも低い場合にはチクソ性が低下し、上記範囲よりも高い場合には復原力が低下するという問題がある。
【0037】
本発明の一実施形態によると、前記硬化性樹脂組成物は、下記数式1により計算されたチクソ性(Thixotropic Index)が1.5~2.5であってもよい。具体的な例として、下記数式1により計算されたチクソ性は1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上、または1.9以上であってもよく、また、2.5以下、2.4以下、2.3以下、2.2以下、2.1以下、または2.0以下であってもよい。この範囲内で、接着剤組成物をディスペンスラインに沿って三次元的に塗布する際に、接着剤組成物が薄い状態で塗布されて滑らかな塗布になり、かつ、被着材に塗布された状態では接着剤組成物が流れ落ちなくなり得る。
【0038】
[数式1]
チクソ性=[2.4 1/sでの25℃の粘度(Pa.s)]/[24 1/sでの25℃の粘度(Pa.s)]
【0039】
本発明の一実施形態によると、前記硬化性樹脂組成物は、下記ステップ(1)~(3)に従って剪断速度に変化を与えた際に、下記数式2により計算された復原力が60%以上であってもよい。具体的な例として、下記数式2により計算された復原力は60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、または79%以上であってもよく、また、100%以下、90%以下、80%以下、75%以下、70%以下、または65%以下であってもよい。この範囲内で、ディスペンスラインに沿って三次元的に塗布される接着剤組成物の作業性を十分に確保することができる。
【0040】
(1)25℃で2.4 1/sの剪断速度、
(2)25℃で24 1/sの剪断速度、
(3)25℃で2.4 1/sの剪断速度
【0041】
[数式2]
復原力=[((3)で測定された25℃の粘度(Pa.s))/((1)で測定された25℃の粘度(Pa.s))]×100
【0042】
本発明の一実施形態によると、前記硬化性樹脂組成物は、連続相および分散相を含み、前記連続相は、硬化性樹脂を含み、前記分散相は、前記グラフト共重合体を含んでもよい。具体的な例として、前記硬化性樹脂組成物は、連続相を50重量%~99重量%、50重量%~80重量%、または50重量%~70重量%;および分散相を1重量%~50重量%、20重量%~50重量%、または30重量%~50重量%含んでもよい。
【0043】
本発明の一実施形態によると、前記硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂であってもよく、具体的な例として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、および尿素樹脂からなる群から選択された1種以上であってもよく、より具体的な例として、エポキシ樹脂であってもよい。
【0044】
本発明の一実施形態によると、前記エポキシ樹脂は、エポキシ結合を少なくとも2個以上含んでもよく、具体的な例として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、およびグリシジルアミン型エポキシ樹脂からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0045】
本発明の一実施形態によると、前記グラフト共重合体は、硬化性樹脂組成物に対して衝撃補強剤の役割を行うものであり、ゴム質重合体を含むコアと、前記ゴム質重合体にグラフト単量体がグラフト重合してなるシェルと、を含むコア-シェル形態のグラフト共重合体であって、前記グラフト共重合体は、コアを72重量%~83重量%含み、前記コアは、平均粒径が250nm以上であってもよい。この場合、前記グラフト共重合体は、エポキシ樹脂などの硬化性樹脂に対する粉体分散性が向上し、硬化性樹脂組成物に粉体状分散方法により分散が可能である。
【0046】
本発明の一実施形態によると、コア-シェル形態のグラフト共重合体において、コアは、グラフト共重合体のコアまたはコア層を形成するゴム質重合体成分自体を意味し、シェルは、前記ゴム質重合体にグラフト重合し、コアを囲むシェルの形態としてシェルまたはシェル層をなす重合体成分または共重合体成分を意味し得る。すなわち、前記ゴム質重合体を含むコアは、ゴム質重合体自体であってもよく、前記シェルは、前記ゴム質重合体にグラフト単量体がグラフト重合してなるグラフト層を意味し得る。
【0047】
本発明の一実施形態によると、前記ゴム質重合体は、グラフト共重合体を衝撃補強剤として適用する際に、耐衝撃性を付与するための成分であり、共役ジエン系単量体単位およびアルキルアクリレート系単量体単位からなる群から選択された1種以上の単量体単位を含んでもよい。具体的な例として、前記ゴム質重合体は、共役ジエン系ゴム質重合体またはアクリル系ゴム質重合体であってもよい。より具体的な例として、前記共役ジエン系ゴム質重合体は、共役ジエン系単量体の単独重合体および芳香族ビニル系単量体-共役ジエン系単量体の共重合体からなる群から選択された1種以上であってもよく、前記アクリル系ゴム質重合体は、アルキルアクリレート系単量体の単独重合体であってもよい。
【0048】
本発明の一実施形態によると、前記ゴム質重合体の共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン,3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン、および2-フェニル-1,3-ブタジエンからなる群から選択された1種以上であってもよく、具体的な例として、1,3-ブタジエンであってもよい。
【0049】
本発明の一実施形態によると、前記ゴム質重合体の芳香族ビニル系単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン、および1-ビニル-5-ヘキシルナフタレンからなる群から選択された1種以上であってもよく、具体的な例として、スチレンであってもよい。
【0050】
本発明の一実施形態によると、前記ゴム質重合体のアルキルアクリレート系単量体は、炭素数1~12のアルキルアクリレート系単量体であってもよく、具体的な例として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、およびn-ブチルアクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、より具体的な例として、n-ブチルアクリレートであってもよい。
【0051】
本発明の一実施形態によると、前記シェルは、グラフト共重合体を衝撃補強剤として適用する際に、相溶性および機械的物性を向上させるための成分であり、前述したように、前記ゴム質重合体にグラフト単量体がグラフト重合してなるグラフト層であってもよい。具体的な例として、前記シェルを形成するためにゴム質重合体にグラフト重合するグラフト単量体は、アルキル(メタ)アクリレート系単量体を含んでもよい。
【0052】
本発明の一実施形態によると、前記グラフト単量体のアルキル(メタ)アクリレート系単量体は、炭素数1~12のアルキル(メタ)アクリレート系単量体であってもよく、具体的な例として、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、およびn-ブチルアクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0053】
本発明の一実施形態によると、前記グラフト単量体のアルキル(メタ)アクリレート系単量体は、炭素数1~12のアルキル(メタ)アクリレート系単量体からなる群から選択された2種以上の単量体であってもよく、具体的な例として、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、およびn-ブチルアクリレートからなる群から選択された2種以上であってもよい。
【0054】
本発明の一実施形態によると、前記グラフト単量体のアルキル(メタ)アクリレート系単量体は、メチル(メタ)アクリレート単量体;および炭素数2~12のアルキル(メタ)アクリレート系単量体であってもよい。この場合、シェルの重量平均分子量をさらに低くすることができ、これにより、硬化性樹脂にグラフト共重合体の分散時に、シェルが膨潤することを最小化することで粘度が上昇するのを防止することができる。この際、前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体は、メチル(メタ)アクリレート単量体を50重量%~99重量%、60重量%~90重量%、または70重量%~85重量%;および炭素数2~12のアルキル(メタ)アクリレート系単量体を1重量%~50重量%、10重量%~40重量%、または15重量%~30重量%含んでもよい。
【0055】
本発明の一実施形態によると、前記グラフト単量体は、前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体に加え、架橋性単量体をさらに含んでもよい。すなわち、前記グラフト単量体は、メチル(メタ)アクリレート単量体、炭素数2~12のアルキル(メタ)アクリレート系単量体、および架橋性単量体を含んでもよい。
【0056】
本発明の一実施形態によると、前記架橋性単量体は、グラフト単量体によるシェルの形成時に、架橋によりシェル形成能力を向上させるとともに、シェルによる相溶性および機械的物性をさらに向上させるためのものであり、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、およびペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル系架橋性単量体;およびジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、およびジアリルフタレートなどのビニル系架橋性単量体から選択された1種以上であってもよく、具体的な例として、ポリエチレングリコールジアクリレートまたはアリルメタクリレートであってもよい。
【0057】
本発明の一実施形態によると、前記グラフト単量体は、芳香族ビニル系単量体をさらに含んでもよい。すなわち、前記グラフト単量体は、メチル(メタ)アクリレート単量体、炭素数2~12のアルキル(メタ)アクリレート系単量体、および芳香族ビニル系単量体を含んでもよい。
【0058】
本発明の一実施形態によると、前記グラフト単量体の芳香族ビニル系単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン、および1-ビニル-5-ヘキシルナフタレンからなる群から選択された1種以上であってもよく、具体的な例として、スチレンであってもよい。
【0059】
本発明の一実施形態によると、前記グラフト単量体が芳香族ビニル系単量体をさらに含む場合、前記芳香族ビニル系単量体は、グラフト単量体の全含量に対して0.1重量%~10.0重量%、0.5重量%~5.0重量%、または0.8重量%~2.0重量%で含まれてもよい。
【0060】
本発明に係るグラフト共重合体において、硬化性樹脂組成物に粉体状分散方法により分散可能にするためには、グラフト共重合体中のコアの含量およびコアの平均粒径を調節することが重要であり、さらに、シェルの重量平均分子量も調節することが好ましい。
【0061】
本発明の一実施形態によると、前記グラフト共重合体は、コアを72重量%~83重量%含んでもよく、具体的な例として、75重量%~83重量%、または75重量%~80重量%含んでもよく、これにより、前記グラフト共重合体は、シェルを17重量%~28重量%、17重量%~25重量%、または20重量%~25重量%含んでもよい。この範囲内で、硬化性樹脂にグラフト共重合体の分散時に、硬化性樹脂とグラフト共重合体の相溶性を十分に確保しながらも、シェルが膨潤することを最小化することで粘度が上昇するのを防止することができる。これに対し、グラフト共重合体がコアを上記範囲よりも低い含量で含む場合には、それだけグラフト共重合体中のシェルの含量が増加せざるを得ず、これにより、硬化性樹脂との親和性の高いシェルが膨潤して粘度が上昇し、分散性が低下するという問題がある。また、グラフト共重合体がコアを上記範囲よりも高い含量で含む場合には、硬化性樹脂とグラフト共重合体の相溶性が急激に低下し、シェルの膨潤による粘度の上昇は防止することができるが、実質的に分散が行われないという問題がある。一方、前記コアおよびシェルそれぞれの含量は、グラフト共重合体の製造時に投入されたゴム質重合体およびグラフト単量体の含量比に由来したものであってもよい。
【0062】
本発明の一実施形態によると、前記コアは、平均粒径が250nm以上であってもよく、具体的な例として、平均粒径が250nm~400nm、または250nm~350nmであってもよい。この範囲内で、硬化性樹脂にグラフト共重合体の分散時に粘度が上昇するのを防止することができる。前記コアの平均粒径が250nm未満である場合には、シェルによりグラフト共重合体の平均粒径を増加させない以上、グラフト共重合体の平均粒径もそれだけ小さくならざるを得ず、コアの平均粒径およびそれによるグラフト共重合体の平均粒径が十分に大きくない場合には、小さい粒子間の凝集が発生し、粘度の上昇による分散性の低下が発生するという問題がある。
【0063】
本発明の一実施形態によると、前記シェルは、重量平均分子量が40,000g/mol以下であってもよく、具体的な例として、重量平均分子量が15,000g/mol以上、17,000g/mol以上、30,000g/mol以上、32,000g/mol以上、39,000g/mol以下、36,000g/mol以下、35,000g/mol以下、または33,000g/mol以下であってもよい。この範囲内で、硬化性樹脂にグラフト共重合体の分散時に、硬化性樹脂とグラフト共重合体の相溶性を十分に確保しながらも、シェルが膨潤することを最小化することで粘度が上昇するのを防止することができる。これに対し、シェルの重量平均分子量が上記範囲よりも高い場合には、硬化性樹脂との親和性の高いシェルが膨潤して粘度が上昇し、分散性が低下するという問題がある。前記シェルの重量平均分子量は、ゴム質重合体の存在下でグラフト単量体をグラフト重合する際に、開始剤および活性化剤の投入量の調節により調節することができる。
【0064】
このように、本発明によりグラフト共重合体中のコアの含量およびコアの平均粒径に加え、シェルの重量平均分子量を調節すると、硬化性樹脂組成物に粉体状分散方法による分散が可能となる。
【0065】
本発明の一実施形態によると、前記グラフト共重合体は、平均粒径が250nm~500nm、250nm~450nm、または250nm~400nmであってもよい。この範囲内で、硬化性樹脂にグラフト共重合体の分散時に粘度が上昇するのを防止することができる。
【0066】
本発明の一実施形態によると、前記グラフト共重合体は、後述するグラフト共重合体の製造方法により製造されてもよい。前記グラフト共重合体の製造方法は、平均粒径が250nm以上のゴム質重合体を含むゴム質重合体ラテックスを製造するステップ(S1)と、前記ゴム質重合体ラテックス72重量%~83重量%(固形分基準)の存在下で、グラフト単量体を投入してグラフト重合し、コア-シェル形態のグラフト共重合体を含むグラフト共重合体ラテックスを製造するステップ(S2)と、を含んでもよい。
【0067】
本発明の一実施形態によると、前記グラフト共重合体の製造方法において、各ステップを行うための単量体の種類および含量は、前述したグラフト共重合体の単量体の種類および含量と同様であってもよい。
【0068】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップは、コア-シェル形態のグラフト共重合体において、コアまたはコア層を形成するゴム質重合体を製造するためのステップであり、ゴム質重合体粒子の平均粒径を250nm以上に調節して製造することを特徴とし、前記(S2)ステップは、前記ゴム質重合体にグラフト重合し、コアを囲むシェルの形態としてシェルまたはシェル層を形成するためのステップであり、シェルの重量平均分子量を40,000g/mol以下に調節して製造することを特徴とする。
【0069】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップおよび(S2)ステップは、それぞれ乳化重合により行われてもよく、乳化重合時に投入される乳化剤および開始剤をはじめとし、電解質、分子量調節剤、活性化剤などの存在下で行われてもよい。この際、前記(S1)ステップを行うに際し、前記ゴム質重合体粒子の平均粒径は、乳化剤の投入量により調節することができ、前記(S2)ステップを行うに際し、前記シェルの重量平均分子量は、開始剤および/または活性化剤の投入量を調節するか、またはグラフト単量体を連続投入することで調節することができる。
【0070】
本発明の一実施形態によると、前記乳化剤は、脂肪酸系乳化剤および樹脂酸系乳化剤からなる群から選択された1種以上であってもよい。この場合、ラテックス安定性に優れるという効果がある。
【0071】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップの乳化剤の投入量は、ゴム質重合体を重合するための単量体100重量部に対して、0.1重量部~3.4重量部、1.0重量部~3.3重量部、1.5重量部~3.2重量部、2.0重量部~3.2重量部、または2.1重量部~3.1重量部であってもよい。この範囲内で、ゴム質重合体粒子の平均粒径を250nm以上に調節することができる。
【0072】
本発明の一実施形態によると、前記(S2)ステップの乳化剤の投入量は、グラフト共重合体を重合するためのゴム質重合体および単量体の総和100重量部に対して、0.1重量部~1.0重量部、0.1重量部~0.5重量部、または0.1重量部~0.3重量部であってもよい。この範囲内で、ラテックス安定性に優れるという効果がある。
【0073】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップは、乳化重合時に利用可能な水溶性開始剤を用いて行われてもよく、前記水溶性開始剤は、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどであってもよい。前記(S2)ステップは、乳化重合時に利用可能なパーオキシド系、レドックス(redox)、またはアゾ系開始剤を用いてラジカル重合により行われてもよく、前記レドックス開始剤は、一例としてt-ブチルヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド、およびクメンヒドロパーオキシドからなる群から選択された1種以上であってもよい。この場合、安定した重合環境を提供するという効果がある。前記レドックス開始剤を用いる場合には、活性化剤であるレドックス触媒として硫化第一鉄、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート、およびナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートをさらに含んで行ってもよく、前記レドックス開始剤およびレドックス触媒の投入量を調節してシェルの重量平均分子量を40,000g/mol以下に調節することができる。
【0074】
本発明の一実施形態によると、前記(S2)ステップは、グラフト単量体を連続投入して行われてもよい。前記(S2)ステップを行うに際し、グラフト単量体をグラフト重合反応の開始前に一括投入する場合には、シェルの重量平均分子量が増加する問題が発生し得る。
【0075】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップおよび前記(S2)ステップの乳化重合は、水系溶媒中で行われてもよく、前記水系溶媒は、イオン交換水であってもよい。
【0076】
本発明の一実施形態によると、前記グラフト共重合体の製造方法は、前記(S2)ステップで製造されたグラフト共重合体ラテックスを粉体状で得るために凝集および乾燥するステップ(S3)を含んでもよい。
【0077】
本発明の一実施形態によると、前記硬化性樹脂組成物は、前記硬化性樹脂およびグラフト共重合体に加え、硬化剤をさらに含んでもよい。前記硬化剤は、酸無水物硬化剤、アミン系硬化剤、およびフェノール系硬化剤からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0078】
本発明の一実施形態によると、前記酸無水物硬化剤は、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、ドデセニル無水コハク酸、ポリアゼライン酸無水物、およびポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0079】
本発明の一実施形態によると、前記アミン系硬化剤は、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジエチルトルエンジアミン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)、ジアミノジフェニルエーテル(DADPE)、ビスアニリン、ベンジルジメチルアニリン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、2,4-ジアミノフェノール、2,5-ジアミノフェノール、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,3-トリレンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,5-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、3,4-トリレンジアミン、メチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、およびジシアンジアミドからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0080】
本発明の一実施形態によると、前記フェノール系硬化剤は、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、およびビスフェノール類のジアリル化物の誘導体からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0081】
本発明の一実施形態によると、前記硬化性樹脂組成物は、前記硬化性樹脂およびグラフト共重合体に加え、添加剤をさらに含んでもよい。前記添加剤は、シリコーンオイル、天然ワックス、合成ワックスなどの離型剤;結晶質シリカ、溶融シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナなどの粉体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維;三酸化アンチモンなどの難燃剤;ハイドロタルサイト、希土類酸化物などのハロゲントラップ剤;カーボンブラック、赤酸化鉄などの着色剤;およびシランカップリング剤などであってもよい。
【0082】
また、本発明の一実施形態によると、前記硬化性樹脂組成物は、後述する硬化性樹脂組成物の製造方法により製造されてもよい。前記硬化性樹脂組成物の製造方法は、前記グラフト共重合体を含むグラフト共重合体ラテックスを製造するステップ(S10)と、前記(S10)ステップで製造されたグラフト共重合体ラテックスを凝集および乾燥してグラフト共重合体粉体を製造するステップ(S20)と、硬化性樹脂および前記(S20)ステップで製造されたグラフト共重合体粉体を混合して硬化性樹脂組成物を製造するステップ(S30)と、を含み、前記(S30)ステップは、撹拌器を用いた分散により行われてもよい。
【0083】
本発明の一実施形態によると、前記(S10)ステップは、前記グラフト共重合体を製造するためのステップにおいて、前述したグラフト共重合体の製造方法により行われてもよい。
【0084】
本発明の一実施形態によると、前記(S20)ステップは、前記(S10)ステップで製造されたグラフト共重合体を粉体状で得るためのステップであり、前記(S10)ステップで製造されたグラフト共重合体ラテックスを凝集および乾燥して行われてもよい。
【0085】
本発明の一実施形態によると、前記(S20)ステップの凝集は、グラフト共重合体ラテックスに凝集剤を添加して行われてもよい。また、前記(S20)ステップの凝集は、硫酸水溶液などの酸凝集およびナトリウムクロライドまたはナトリウムサルフェートなどの塩凝集により行われてもよく、必要に応じて、酸凝集および塩凝集を全て行ってもよい。この際、前記酸凝集および塩凝集は、同時または段階的に行われてもよく、前記凝集が段階的に行われる場合、酸凝集を先に行った後に塩凝集を行うか、または塩凝集を先に行った後に酸凝集を行ってもよい。また、前記(S20)ステップの凝集は、必要に応じて、有機分散剤の存在下で行われてもよい。
【0086】
本発明の一実施形態によると、前記(S20)ステップの乾燥は、通常の乾燥方法により行われてもよく、必要に応じて、乾燥に先立ち、凝集したグラフト共重合体ラテックスを脱水するステップをさらに含んでもよい。
【0087】
本発明の一実施形態によると、前記(S30)ステップは、硬化性樹脂にグラフト共重合体を衝撃補強剤として適用するに際し、前述したような粉体状分散方法により硬化性樹脂およびグラフト共重合体を混合するステップであり、硬化性樹脂にグラフト共重合体粉体を投入し混合して行われてもよい。前述したように、本発明に係るグラフト共重合体は、粉体分散性に優れるため、硬化性樹脂に粉体状で直接分散させることが可能である。具体的な例として、前記(S30)ステップで製造された硬化性樹脂組成物の粘度は、25℃で、2,500Pa.s以下、2,000Pa.s以下、100Pa.s~2,000Pa.s、500Pa.s~1,800Pa.s、または1,000Pa.s~1,600Pa.sであってもよい。この範囲内で、グラフト共重合体粉体の粘度が低いため、分散性に優れる。
【0088】
また、本発明は、前記硬化性樹脂組成物を含む接着剤組成物を提供する。前記接着剤組成物は、前記硬化性樹脂組成物を強化剤として含んでもよい。
本発明の一実施形態によると、前記接着剤組成物は、前記強化剤の他に、接着剤に利用可能な主剤、ウレタン樹脂、硬化剤、硬化促進剤、および充填剤などを含んでもよい。
【0089】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例について詳しく説明する。ただし、本発明は、種々の異なる形態で実現されてもよく、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0090】
製造例
[製造例1]
<ゴム質重合体ラテックスの製造>
窒素置換された重合反応器(オートクレーブ)に、1,3-ブタジエンの総和100重量部を基準として、イオン交換水75重量部、1,3-ブタジエン60重量部、樹脂酸カリウム塩1.4重量部、オレイン酸カリウム塩0.6重量部、炭酸カリウム(K2CO3)0.9重量部、t-ドデシルメルカプタン0.3重量部、過硫酸カリウム(K228)0.3重量部を一括投入し、反応温度70℃で重合を行った。次いで、重合転化率が30%~40%である時点でオレイン酸カリウム塩0.7重量部を一括投入した後、1,3-ブタジエン20重量部を一括投入し、反応温度70℃で継続して重合を行った。次いで、重合転化率が60%である時点に達した後、1,3-ブタジエン20重量部を一括投入し、反応温度を80℃まで昇温させた後、継続して重合を行い、重合転化率が95%である時点で反応を終了した。重合に要された総時間は23時間であり、得られたゴム質重合体ラテックスのゲル含量は76%であり、ゴム質重合体粒子の平均粒径は300nmであった。
この際、重合転化率は、投入された単量体の固形分重量に対して得られたゴム質重合体の固形分重量に対する割合で計算した。
【0091】
<グラフト共重合体ラテックスの製造>
窒素置換された密閉された重合反応器に、ゴム質重合体ラテックス(固形分基準)、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、およびスチレンの含量の総和100重量部を基準として、上記で製造されたゴム質重合体ラテックスを固形分基準で80重量部投入し、イオン交換水200重量部、オレイン酸カリウム塩0.2重量部、硫化第一鉄0.036重量部、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート0.2重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2重量部、およびt-ブチルヒドロパーオキシド0.4重量部を一括投入した。次いで、メチルメタクリレート16重量部、n-ブチルアクリレート3重量部、およびスチレン1重量部を3時間連続的に投入しつつ、反応温度60℃で4時間重合を行い、グラフト共重合体ラテックスを製造した。最終的な重合転化率は98.3%であり、グラフト共重合体粒子の平均粒径は318nmであった。
重合転化率は、投入されたゴム質重合体および単量体の固形分重量に対して得られたグラフト共重合体の固形分重量に対する割合で計算した。
【0092】
<グラフト共重合体粉体の製造>
上記で製造されたグラフト共重合体ラテックスを固形分基準で15重量%となるように蒸留水に希釈した後、凝集槽に入れ、凝集槽の内部温度を45℃に上昇させた。その後、前記グラフト共重合体の固形分基準100重量部に対して、酸化防止剤としてIR1076を投入し、硫酸水溶液を加えつつ撹拌して凝集させた後、グラフト共重合体と水を分離させた後に脱水および乾燥を行い、グラフト共重合体粉体を製造した。
【0093】
[製造例2]
前記製造例1において、ゴム質重合体ラテックスの製造時に、樹脂酸カリウム塩を1.4重量部の代わりに1.7重量部、オレイン酸カリウム塩を0.6重量部の代わりに0.7重量部投入したことを除いては、前記製造例1と同様の方法で行った。この際、製造されたゴム質重合体粒子の平均粒径は255nmであり、グラフト共重合体粒子の平均粒径は264nmであった。
【0094】
[製造例3]
前記製造例1において、ゴム質重合体ラテックスの製造時に、樹脂酸カリウム塩を1.4重量部の代わりに1.0重量部、オレイン酸カリウム塩を0.6重量部の代わりに0.4重量部投入したことを除いては、前記製造例1と同様の方法で行った。この際、製造されたゴム質重合体粒子の平均粒径は338nmであり、グラフト共重合体粒子の平均粒径は374nmであった。
【0095】
[製造例4]
前記製造例1において、グラフト共重合体ラテックスの製造時に、硫化第一鉄を0.036重量部の代わりに0.072重量部、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテートを0.2重量部の代わりに0.4重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを0.2重量部の代わりに0.4重量部、t-ブチルヒドロパーオキシドを0.4重量部の代わりに0.8重量部投入したことを除いては、前記製造例1と同様の方法で行った。この際、製造されたグラフト共重合体粒子の平均粒径は320nmであった。
【0096】
[製造例5]
前記製造例1において、グラフト共重合体ラテックスの製造時に、硫化第一鉄を0.036重量部の代わりに0.024重量部、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテートを0.2重量部の代わりに0.14重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを0.2重量部の代わりに0.14重量部、t-ブチルヒドロパーオキシドを0.4重量部の代わりに0.27重量部投入したことを除いては、前記製造例1と同様の方法で行った。この際、製造されたグラフト共重合体粒子の平均粒径は325nmであった。
【0097】
[製造例6]
前記製造例1において、グラフト共重合体ラテックスの製造時に、硫化第一鉄を0.036重量部の代わりに0.018重量部、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテートを0.2重量部の代わりに0.1重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを0.2重量部の代わりに0.1重量部、t-ブチルヒドロパーオキシドを0.4重量部の代わりに0.2重量部投入したことを除いては、前記製造例1と同様の方法で行った。この際、製造されたグラフト共重合体粒子の平均粒径は321nmであった。
【0098】
実施例および比較例
[実施例1]
前記製造例1で製造されたグラフト共重合体粉体を用いて、下記のような方法で、硬化性樹脂組成物としてグラフト共重合体が分散したエポキシ樹脂組成物を製造した。
【0099】
<グラフト共重合体が分散したエポキシ樹脂組成物の製造>
70℃に設定された自転公転ミキサー(planetary mixer、KMTECH社、KPLM-0.6)に、エポキシ樹脂およびグラフト共重合体の含量の総和100重量部を基準として、エポキシ樹脂(KUKDO CHEMICAL社、YD-128)63重量部、製造例1で製造されたグラフト共重合体粉体を37重量部投入し、50rpmで1時間、120rpmで1時間30分間、60rpmで2時間撹拌してエポキシ樹脂にグラフト共重合体粉体を分散させ、グラフト共重合体が分散したエポキシ樹脂組成物を製造した。
【0100】
[実施例2]
前記実施例1において、製造例1で製造されたグラフト共重合体粉体の代わりに製造例2で製造されたグラフト共重合体粉体を同一の含量で投入したことを除いては、実施例1と同様の方法で行い、グラフト共重合体が分散したエポキシ樹脂組成物を製造した。
【0101】
[実施例3]
前記実施例1において、製造例1で製造されたグラフト共重合体粉体の代わりに製造例3で製造されたグラフト共重合体粉体を同一の含量で投入したことを除いては、実施例1と同様の方法で行い、グラフト共重合体が分散したエポキシ樹脂組成物を製造した。
【0102】
[実施例4]
前記実施例1において、製造例1で製造されたグラフト共重合体粉体の代わりに製造例4で製造されたグラフト共重合体粉体を同一の含量で投入したことを除いては、実施例1と同様の方法で行い、グラフト共重合体が分散したエポキシ樹脂組成物を製造した。
【0103】
[実施例5]
前記実施例1において、製造例1で製造されたグラフト共重合体粉体の代わりに製造例5で製造されたグラフト共重合体粉体を同一の含量で投入したことを除いては、実施例1と同様の方法で行い、グラフト共重合体が分散したエポキシ樹脂組成物を製造した。
【0104】
[実施例6]
前記実施例1において、エポキシ樹脂(KUKDO CHEMICAL社、YD-128)を63重量部の代わりに60重量部投入し、製造例1で製造されたグラフト共重合体粉体を37重量部の代わりに40重量部投入したことを除いては、実施例1と同様の方法で行い、グラフト共重合体が分散したエポキシ樹脂組成物を製造した。
【0105】
[比較例1]
前記実施例1において、エポキシ樹脂(KUKDO CHEMICAL社、YD-128)を63重量部の代わりに77重量部投入し、製造例1で製造されたグラフト共重合体粉体を37重量部の代わりに製造例6で製造されたグラフト共重合体粉体を23重量部投入したことを除いては、実施例1と同様の方法で行い、グラフト共重合体が分散したエポキシ樹脂組成物を製造した。
【0106】
[比較例2]
前記実施例1において、エポキシ樹脂(KUKDO CHEMICAL社、YD-128)を63重量部の代わりに75重量部投入し、製造例1で製造されたグラフト共重合体粉体を37重量部の代わりに製造例6で製造されたグラフト共重合体粉体を25重量部投入したことを除いては、実施例1と同様の方法で行い、グラフト共重合体が分散したエポキシ樹脂組成物を製造した。
【0107】
[比較例3]
前記実施例1において、エポキシ樹脂(KUKDO CHEMICAL社、YD-128)を63重量部の代わりに65重量部投入し、製造例1で製造されたグラフト共重合体粉体を37重量部の代わりに製造例6で製造されたグラフト共重合体粉体を35重量部投入したことを除いては、実施例1と同様の方法で行い、グラフト共重合体が分散したエポキシ樹脂組成物を製造した。
【0108】
[比較例4]
前記実施例1において、エポキシ樹脂(KUKDO CHEMICAL社、YD-128)を63重量部の代わりに60重量部投入し、製造例1で製造されたグラフト共重合体粉体を37重量部の代わりに製造例6で製造されたグラフト共重合体粉体を40重量部投入したことを除いては、実施例1と同様の方法で行い、グラフト共重合体が分散したエポキシ樹脂組成物を製造した。
【0109】
[比較例5]
前記実施例1において、エポキシ樹脂(KUKDO CHEMICAL社、YD-128)を63重量部の代わりに55重量部投入し、製造例1で製造されたグラフト共重合体粉体を37重量部の代わりに製造例6で製造されたグラフト共重合体粉体を45重量部投入したことを除いては、実施例1と同様の方法で行い、グラフト共重合体が分散したエポキシ樹脂組成物を製造した。
【0110】
実験例
[実験例1]
前記製造例1~6で製造されたゴム質重合体およびグラフト共重合体に対し、下記のような方法でコアおよびグラフト共重合体の平均粒径およびシェルの重量平均分子量を測定し、各成分の含量およびグラフト共重合体の製造時におけるグラフト単量体の投入方式とともに、下記表1に示した。
【0111】
*コアおよびグラフト共重合体の平均粒径(nm):製造例1~6で製造されたゴム質重合体ラテックスおよびグラフト共重合体ラテックスをそれぞれ200ppmの濃度で蒸留水に希釈した後、NICOMP 380を用いてISO 22412に準じた動的光散乱(dynamic Light Scattering;DLS)方法で測定した。
【0112】
*シェルの重量平均分子量(g/mol):上記で得られたコア-シェル形態のグラフト共重合体中のシェルの重量平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography、PL GPC220、Agilent Technologies)により下記の条件で測定した。
【0113】
この際、試料は、テトラヒドロフランに分散したグラフト共重合体溶液を一部取ってcentrifugで沈殿物を分離し、上層液を取って0.45μmのPTFE syringe filterで濾過後に試料溶液として用い、グラフト共重合体を基準として30.0mg/mL、linear polymer 1.5mg/mLの濃度でサンプリングした。
【0114】
-カラム:PL MiniMixed B×2
-溶媒:テトラヒドロフラン(Stabilized with BHT)
-流速:1.0ml/min
-試料濃度:1.0mg/ml
-注入量:100μL
-カラム温度:30℃
-検出器:Waters 2414 Refractive Index Detector
-Data processing:Empower 3
【0115】
【表1】
【0116】
前記表1に示したように、製造例1~6で製造されたグラフト共重合体は、それぞれ同一含量のコアおよびシェルを含むが、コアおよびグラフト共重合体の平均粒径およびシェルの重量平均分子量が異なることを確認することができた。
【0117】
[実験例2]
前記実施例1~6および比較例1~5で製造されたエポキシ樹脂組成物に対して粘度、チクソ性、および復原力を測定し、下記表2および3に示した。
【0118】
*25℃の粘度(Pa.s):上記で製造されたエポキシ樹脂組成物に対し、コーンプレート型粘度計(Anton Paar社、MCR302)を用い、直径25mmのPlate PP25のスピンドルを用いて25℃での粘度を測定し、剪断速度2.4 1/s、100sであるときの粘度値を示した。
【0119】
*チクソ性(Thixotropic Index):上記で製造されたエポキシ樹脂組成物に対し、前記25℃での粘度の測定時に用いられた粘度計と同様の粘度計を用いて、25℃で、2.4 1/sから24 1/sの剪断速度に変化を与えて粘度を測定し、下記数式1によりチクソ性を計算して示した。
【0120】
[数式1]
チクソ性=[2.4 1/sでの25℃の粘度(Pa.s)]/[24 1/sでの25℃の粘度(Pa.s)]
【0121】
*復原力(%):上記で製造されたエポキシ樹脂組成物に対し、前記25℃での粘度の測定時に用いられた粘度計と同様の粘度計を用いて、下記ステップ(1)~(3)に従って剪断速度に変化を与えた際の粘度を測定し、下記数式2により復原力を計算して示した。
【0122】
(1)25℃で2.4 1/sの剪断速度、
(2)25℃で24 1/sの剪断速度、
(3)25℃で2.4 1/sの剪断速度
【0123】
[数式2]
復原力=[((3)で測定された25℃の粘度(Pa.s))/((1)で測定された25℃の粘度(Pa.s))]×100
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】
【0126】
前記表2および3に示したように、本発明に係る実施例の硬化性樹脂組成物は、粘度範囲を満たすことで、チクソ性が適したレベルを示しながらも、復原力に優れることを確認することができた。
【0127】
これに対し、比較例1および2の硬化性樹脂組成物は、粘度が非常に低く、チクソ性に劣ることを確認することができ、比較例3の硬化性樹脂組成物は、増加した粘度により復原力が低下したことを確認することができた。また、比較例4および5の硬化性樹脂組成物は、粘度が非常に高く、チクソ性に劣り、復原力も急激に低下したことを確認することができた。
【0128】
[実験例3]
前記実験例2で製造されたエポキシ樹脂組成物を用いて、下記のような方法で構造用接着剤組成物を製造し、製造された構造用接着剤組成物に対して前記実験例2と同様の方法で粘度、チクソ性、および復原力を測定し、下記表4および5に示した。
【0129】
<構造用接着剤組成物>
主剤、強化剤、ウレタン樹脂、および希釈剤の全含量100重量部を基準として、主剤としてエポキシ樹脂(KUKDO CHEMICAL社、YD-128)60.0重量部、強化剤として前記実施例1~6および比較例1~5それぞれのエポキシ樹脂組成物15.0重量部、ウレタン樹脂(Adeka社、QR-9466)20.0重量部、希釈剤(KUKDO FINECHEM社、KF EPIOL DE208)5.0重量部、硬化剤(Evonik社、Dicyanex 1400F)6.0重量部、硬化促進剤(Evonik社、Amicure UR7/10)0.6重量部、酸化カルシウム(YOUYEONG社、UNI-OX)3.0重量部、ヒュームドシリカ(Cabot社、CAB-O-SIL TS-720)3.0重量部を、ペーストミキサー(Paste mixer、KMTECH社、PDM-300)を用いて公転600rpm、自転500rpmで3分間混合した後、公転600rpm、自転200rpmで5分間脱泡し、接着剤組成物を製造した。
【0130】
【表4】
【0131】
【表5】
【0132】
前記表4および5に示したように、本発明に係る実施例1~6の硬化性樹脂組成物を強化剤として含む構造用接着剤組成物は、チクソ性および復原力の両方とも優れることを確認することができた。
【0133】
これに対し、硬化性樹脂組成物の粘度が本発明が限定する範囲から外れ、チクソ性または復原力が十分でない比較例1~5の硬化性樹脂組成物を強化剤として含む構造用接着剤組成物は、いずれもチクソ性に劣ることを確認することができた、特に、比較例4および比較例5の構造用接着剤組成物は、復原力が低下したことを確認することができた。
【0134】
このような結果は、グラフト共重合体を含む硬化性樹脂組成物の粘度、さらにはチクソ性および復原力を調節することで達成できるものである。この際、前記硬化性樹脂組成物は、本発明のように前記グラフト共重合体を粉体状として適用しながらも、上記結果のような粘度、チクソ性、および復原力を調節できるものでなければならない。
【0135】
ここで、グラフト共重合体を粉体状として適用しながらも、本発明のように硬化性樹脂組成物の粘度、チクソ性、および復原力を調節するためには、グラフト共重合体のコアの含量、平均粒径、およびシェルの重量平均分子量などが調節される必要があり、コアの含量および平均粒径が実施例と類似したレベルであるとしても、シェルの重量平均分子量が高い場合、硬化性樹脂組成物中のグラフト共重合体の含量を調節しても、粘度、チクソ性、および復原力を本発明が限定する範囲に調節できないことを実施例1~6および比較例1~5から確認することができる。すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物の粘度、チクソ性、および復原力は、粉体状として適用されるグラフト共重合体を調節することで達成できるものである。
図1
図2
【国際調査報告】