(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】表面上のラフネス及び/又は欠陥測定のための測定装置並びに方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/95 20060101AFI20240403BHJP
G01N 21/47 20060101ALI20240403BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20240403BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240403BHJP
G01B 11/30 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G01N21/95 Z
G01N21/47 B
G01N21/17 Z
H01L21/68 R
G01B11/30 102
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550551
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2022055393
(87)【国際公開番号】W WO2022189250
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】102021105946.1
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】フォン フィンク,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ハルム,サイモン
(72)【発明者】
【氏名】マーケル,インゴ ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ノイマン-ロビッシュ,マチェイ
【テーマコード(参考)】
2F065
2G051
2G059
5F131
【Fターム(参考)】
2F065AA49
2F065AA50
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2G059MM01
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA13
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5F131EB11
5F131EB54
(57)【要約】
調査されるサンプル表面の複数の表面区画上のラフネスや欠陥を測定するための装置は、表面の測定領域を測定光で照明する少なくとも2つの光源を有する照明デバイス、表面で散乱した散乱光を捕捉する複数の検出器ピクセルを備える検出器アレイを有する検出器デバイス、及び、表面の少なくとも1つのラフネス特徴を捕捉された散乱光から判定する評価デバイスを備える。少なくとも2つの光源は、測定領域を少なくとも2つの照明ビーム経路に沿って表面の表面法線に対して異なる入射角で照明し、検出器デバイスに対して固定され得る。検出器デバイスは、表面の測定領域を検出器アレイ上に結像する結像光学素子を有し、表面の表面法線に対して所定視野角で照明された測定領域内の表面区画の少なくとも2つの散乱光画像を検出する。散乱光のうち検出器ピクセルによって受光され照明ビーム経路の1つにおいて照明によって場合毎に形成される部分は、場合毎に共通の空間周波数を有する。評価デバイスは、表面区画の少なくとも1つのラフネス特徴を少なくとも2つの散乱光画像から判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調査されるサンプル(1)の表面の複数の表面区画(2)上のラフネス及び/又は欠陥測定のために構成された測定装置(100)であって、
前記表面の測定領域(3)を測定光で照明するように配置された少なくとも2つの光源(11A,11B,11C,11D)を有する照明デバイス(10)と、
前記表面で散乱した散乱光を捕捉するように配置された複数の検出器ピクセルを備える検出器アレイ(21)を有する検出器デバイス(20)と、
前記表面の少なくとも1つのラフネス特徴を、前記捕捉された散乱光から判定するように構成された評価デバイス(30)と、を備えており、
前記少なくとも2つの光源(11A,11B,11C,11D)は、前記測定領域(3)を、少なくとも2つの照明ビーム経路(LA,LB,LC,LD)に沿って、前記表面の表面法線に対して異なる入射角で照明するように構成されており、
前記少なくとも2つの光源(11A,11B,11C,11D)は、前記検出器デバイス(20)に対して固定されることが可能であり、
前記検出器デバイス(20)には、前記表面の前記測定領域(3)を前記検出器アレイ(21)上に結像するように配置された結像光学素子(22)が設けられ、
前記検出器デバイス(20)は、前記表面の前記表面法線に対して所定の視野角で前記照明された測定領域(3)内の表面区画(2)の少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)を捕捉するように構成されており、
前記散乱光のうち前記検出器ピクセルによって受光される部分であって前記照明ビーム経路(LA,LB,LC,LD)のうちの1つにおいて前記照明によって場合毎に形成される部分は、場合毎に共通の空間周波数を有し、
前記評価デバイス(30)は、前記少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)から、前記表面区画(2)について前記少なくとも1つのラフネス特徴を判定するように構成されている、
ことを特徴とする、測定装置(100)。
【請求項2】
前記照明デバイス(10)は、前記少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)が連続的に且つ互いに時間的に分離されて記録され得るように、前記少なくとも2つの光源(11A,11B,11C,11D)を時間制御するように構成され、
前記評価デバイス(30)は、前記照明された測定領域(3)内の前記表面区画(2)のパワースペクトル密度関数(PSD関数)を、前記少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)から判定するように構成され、
前記評価デバイス(30)は、前記PSD関数から又は前記表面区画(2)の前記積分散乱から、各表面区画(2)について前記少なくとも1つのラフネス特徴を計算するように構成される、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記照明デバイス(10)は、前記少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)が、前記表面区画(2)の各々において、前記少なくとも2つの光源(11A,11B,11C,11D)による前記有向照明の重み付け放射照度を有して記録されることが可能であるように、強度制御するように構成され、
前記有向照明の前記重み付け放射照度は、前記放射照度が、前記光源による前記照明が均一な半球照明に対応するように設定されるという点で提供され、
前記評価デバイス(30)は、前記照明された測定領域(3)内の前記構造化表面の積分散乱を、前記少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)から判定するように構成され、
前記評価デバイス(30)は、前記表面区画(2)の前記積分散乱から、各表面区画(2)について前記少なくとも1つのラフネス特徴を計算するように構成される、請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記照明デバイス(10)の光源(11A,11B,11C,11D)の前記数は、3~100個の範囲内にあるように選択される、
前記照明デバイス(10)は、全ての前記照明ビーム経路(LA,LB,LC,LD)の前記測定光を、同じ波長になるように生成するように構成される、及び
前記照明デバイス(10)は、前記照明ビーム経路(LA,LB,LC,LD)の前記測定光を、異なる波長及び/又は異なる偏光になるように生成するように構成される、
という特徴のうち少なくとも1つを有する、請求項1から3の何れか一項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記照明デバイス(10)は、前記照明ビーム経路(LA,LB,LC,LD)の前記測定光を、異なる波長及び/又は異なる偏光になるように生成するように構成され、
前記照明デバイス(10)は、前記照明ビーム経路(LA,LB,LC,LD)の前記測定光を、少なくとも2つの異なる波長及び/又は少なくとも2つの異なる偏光になるように生成するように構成される、請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記照明デバイス(10)は、前記照明ビーム経路(LA,LB,LC,LD)の前記測定光を、異なる波長になるように生成するように構成され、
前記評価デバイス(30)は、前記照明された測定領域(3)内の前記表面区画(2)の少なくとも2つのPSD関数及び/又は少なくとも2回の積分散乱を判定するように構成され、
前記評価デバイス(30)は、前記表面区画(2)上の構造を、前記少なくとも2つのPSD関数及び/又は少なくとも2回の積分散乱から判定するように構成される、請求項4又は5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記評価デバイス(30)は、デジタル画像マスクを使用することによって前記測定領域(3)内の前記表面区画(2)を識別するように構成される、請求項1から6の何れか一項に記載の測定装置。
【請求項8】
前記評価デバイス(30)は、ニューラルネットワーク及び/又は機械学習方法を使用することによって前記表面区画(2)を識別するように構成される、請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
前記評価デバイス(30)は、デジタル画像マスクを使用することによって前記少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)から前記表面区画(2)上の構造を識別するように構成される、請求項7又は8に記載の測定装置。
【請求項10】
前記検出器デバイス(20)の前記結像光学素子(22)は、テレセントリック光学素子である、及び/又は、
前記検出器デバイス(20)の前記視野角は、前記表面法線と平行に延在する、請求項1から9の何れか一項に記載の測定装置。
【請求項11】
前記照明デバイス(10)は、300nmより小さい波長λを有する測定光を使用して88°~75°の範囲の浅い入射角で前記表面区画(2)を有向照明するように構成され、
前記評価デバイス(30)は、前記表面区画(2)の歪度パラメータを判定するように構成される、請求項1から10の何れか一項に記載の測定装置。
【請求項12】
結像光学素子(22A)と、複数の検出器ピクセルを有する検出器アレイ(21A)と、を備える少なくとも1つの更なる検出器デバイス(20A)が提供され、
前記少なくとも1つの更なる検出器デバイス(20A)は、前記表面の前記表面法線に対して少なくとも1つの更なる視野角で前記照明された測定領域(3)の少なくとも1つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)を捕捉するように構成される、請求項1から11の何れか一項に記載の測定装置。
【請求項13】
前記少なくとも2つの光源(11A,11B,11C,11D)は、発光ダイオードと、レーザと、少なくとも1つの発光ダイオード及び/又は少なくとも1つのレーザに連結された光ファイバと、のうち少なくとも1つを備える、及び/又は、
各光源には、照明光学素子(12)が設けられる、請求項1から12の何れか一項に記載の測定装置。
【請求項14】
前記サンプル(1)を受容するためのサンプルホルダ(40)、及び/又は、前記照明デバイス(10)と前記検出器デバイス(20)とからなる前記アセンブリは、互いに対して移動可能であり、それによって、前記照明デバイス(10)は前記構造化表面の異なる測定領域を照明するように配置され得、
前記異なる測定領域の前記散乱光画像(4A,4B,4C,4D)は、前記検出器デバイス(20)によって捕捉され得、
前記測定装置(100)は、前記構造化表面の前記異なる測定領域内の前記表面区画(2)において繰り返しラフネス測定を行うように構成される、請求項1から13の何れか一項に記載の測定装置。
【請求項15】
調査されるサンプルの表面の表面区画(2)上のラフネス及び/又は欠陥測定の方法であって、
前記表面の測定領域(3)を測定光で照明するステップであって、前記測定領域(3)は前記複数の表面区画(2)を包含するステップと、
複数の検出器ピクセルを備える検出器アレイ(21)を有する検出器デバイス(20)を使用して、前記表面で散乱した散乱光を捕捉するステップと、
前記表面の少なくとも1つのラフネス特徴を、前記捕捉された散乱光から判定するステップと、を備えており、
前記照明は、少なくとも2つの固定配置された光源(11A,11B,11C,11D)を使用する、少なくとも2つの照明ビーム経路(LA,LB,LC,LD)に沿った、前記表面の表面法線に対して異なる入射角での、前記測定領域(3)内の前記表面区画(2)の有向照明を備え、
前記検出器デバイス(20)には、結像光学素子(22)が設けられ、それによって前記表面の前記測定領域(3)が前記検出器アレイ(21)上に結像され、
前記検出器デバイス(20)は、前記表面の前記表面法線に対して所定の視野角で前記照明された測定領域(3)の少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)を捕捉し、
前記散乱光のうち前記検出器ピクセルによって受光される部分は、前記照明ビーム経路(LA,LB,LC,LD)の各々において、場合毎に共通の空間周波数を有し、
前記少なくとも1つのラフネス特徴は、各表面区画(2)について、前記少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)から判定される、
ことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調査されるサンプルの表面の複数の表面区画上のラフネス及び/又は欠陥測定のため、特に、ウェーハ用の保持装置のバールなどの構造化表面のラフネス及び/又は欠陥測定のための測定装置並びに方法に関する。本発明は、例えば表面の使用状態又は処理状態を検出するために、表面、特にウェーハ保持装置の表面の調査に適用され得る。
【背景技術】
【0002】
本明細書においては、本発明の技術的背景を示す以下の従来技術が参照される。
[1]独国10 2012 005 417 B4号、
[2]M. Zerradらの、「Proc. of SPIE」「Optical Fabrication, Testing, and Metrology III」Vol. 7102, 710207ページ (2008), doi: 10.1117/12.797621における「Development of a goniometric light scatter instrument with sample imaging ability」、
[3]R. Bousquetらの、「Journal of the Optical Society of America」71(9), 1115 (1981)における「Scattering from multilayer thin films: theory and experiment」、
[4]A. Duparreらの、「Applied Optics」41(1), 154-171 (2002)における「Surface characterization techniques for determining the root-mean-square roughness and power spectral densities of optical components」、
[5]E. L. Churchらの、「Applied Optics」14(8), 1788 - 1795 (1975)における「Residual surface roughness of diamond-turned optics」、
[6]J. C. Stoverの、「Optical Scattering: Measurement and analysis」第3版(SPIE, Bellingham, Wash., 2012)、
[7]P. Bobbertらの、「Physica A: Statistical Mechanics and its Applications」137, 209-242 (1986)における「Light scattering by a sphere on a substrate」、及び
[8]Sven Schroder、Alexander von Finck及びAngela Duparreの、「Adv. Opt. Techn」2015; 4(5-6): 361-375における「Standardization of light scattering measurements」。
【0003】
コンポーネントを保持するため、例えばリソグラフィ半導体処理、特にチップ製造においてシリコンウェーハを保持するための保持装置が、一般的に知られている。保持が静電力を使用して達成される場合には、保持装置は、静電保持装置、静電クランプデバイス、静電クランプ(ESC)、又は静電チャックとも称される。保持装置は、典型的には、少なくとも1つの平面状のキャリア表面を有するプレートの形状を備え、保持されるコンポーネントはそれによって担持される。キャリア表面は、複数の突出するバールによって、特にバールの平坦な端面によって形成される。例えば、各々がサブmm領域の端面直径を有する数千のバールが提供される。
【0004】
バールの端面のラフネス、並びに、コンタミ及び/又は材料損傷などの欠陥の出現可能性(possible appearance of defects)は、ウェーハとESCとの間の摩擦、付着、及び滑り性などの相互作用特性に決定的に影響を及ぼすことが一般に知られている。バールとウェーハとの間の相互作用特性は、ひいてはウェーハをクランプするときの横方向の不安定性に決定的な影響を及ぼし、したがって達成可能な品質及びリソグラフィ構造化の場合における異なる製造工程に由来する構造の重ね合わせ精度(オーバーレイ)に影響を及ぼす。ウェーハの高精度且つ確実な操作のために、ラフネスは可能な限り再現可能であるように設定されるべきであり、欠陥の可能性が確実に識別されるべきである。この場合、例えば0.3μm-1を超える高い空間周波数を有するラフネス構造が特に着目される。また、欠陥、特に粗いラフネス構造又は不純物、例えば端面における粒子もしくは材料損傷による、保持されたウェーハの均一性及びリソグラフィプロセスの品質の劣化が防止されることが意図される。したがって、製造中、動作中、及び/又はESCのリワークの場合に、バール端面のラフネスを検出することが着目される。
【0005】
実際に典型的に使用される従来の調査方法は、原子間力顕微鏡(AFM)を使用してラフネスを測定することを備える。個々のバールが接近されAFMを用いて調査される。高い空間周波数を有するラフネス構造をAFMによって直接測定することは可能であるが、AFMが非常に小さい、典型的には50×50μm2よりも小さい測定視野を有すること、AFM測定には極めて時間がかかることは不利であり、したがって、AFMの使用はいくつかの代表的なバールの観察に制限される。例えば直径300mmの表面上の全てのESCバールを測定することは、およそ200日を必要とし、実用的ではない。したがって、実際には、キャリア表面上の局所的なラフネス変化又は不純物は、AFM測定では、検出することができないか、又は不確実にしか検出することができない。また、AFMは欠陥の網羅的な検出をすることができない。
【0006】
代替的には、バールは、白色光干渉法(WLI)によって測定することもできる。これは、AFMを使用するときよりは高い測定速度を可能にするが、実際の適用にとっては過度に長い測定時間を必要とする。また、結像対物系のローパス特性を理由として、およそ0.3μm-1より小さいまでの空間周波数しか、より大きなWLI測定視野によって確実に検出することはできない。
【0007】
[1]、[3]、[4]、[5]及び[6]から、散乱光測定によって、ラフネスが特徴的である、レンズなどの光学コンポーネントのパワースペクトル密度関数(PSD関数)を検出することが知られている。典型的には、この目的のために、サンプルの局所測定点における散乱光分布が、角度走査検出器によって取得される。[1]に記載された方法では、調査されるサンプルの表面上の測定スポットが様々な角度で又は様々な波長を使用して照明され、その測定スポットで散乱した光が複数の視野角で複数の検出器によって取得される。PSD関数は検出器信号から判定される。しかしながら、この方法の欠点は、時間通りに且つ局所的にのみ測定すること、したがって横方向走査方法として非常に時間がかかることである。ESCの個々のバール全ての検出はおよそ2日続き、これはWLI測定時間と略同じである。また、従来の方法は、散乱の増加の原因について、限られた情報しか提供しない。さらに、[1]による方法は、空間分解能が照明スポットの直径によって制限されるので、適用分野が制限される。
【0008】
別の走査散乱光測定は、[2]から既知である測角方法であり、この方法では、照明光源がサンプルに対して走査し、様々な照明角度で散乱した光の散乱光画像がカメラ検出器によって取得される。この方法は、例えば、ウェーハ表面上の粒子を検出するのに適している。散乱光画像から、結像された領域内で散乱粒子が存在するかどうか及びどこに存在するかを判定することが可能である。粒子が検出される場合には、局所的に限定された手法で、表面区画の精密な観察が提供され得る。[2]による方法はまた、時間要件の高さ及び適用分野の制限によっても特徴付けられる。
【0009】
従来の走査散乱光法には更に、典型的には1mm~3mmの測定視野直径が達成されるので、ESC上での測定の場合、複数のバールが同時に照明されるという欠点がある。複雑な照明光学素子が、0.2mm未満の測定視野直径を達成することを可能にはし得るが、これには高精度の絶対位置決めシステム(サンプル座標)が必要であり、バールの個々の位置が、正確に検出され、位置決めシステムに伝送されなければならない。また、バール端面を検出するにあたり、エッジ構造の散乱光、すなわち回折効果が、端面のトポグラフィの散乱光に重畳されるリスクがあろう。このリスクを防止するための措置が、走査プロセスを減速させるであろう。さらに、およそ2°~5°より小さい、小さい散乱角は検出することができない。なぜなら、0.2mmより小さい測定視野直径に関しては、照明ビームは、他の場合には従来そうであるように検出器平面内にではなく、サンプル上に集束されなければならないからである。よって、正反射照明ビームは、発散するように反射され、小さい散乱角で散乱光に重畳される。
【0010】
特にラフネス測定又は欠陥識別の速度、空間分解能及び空間周波数に関する上述の限定は、バール端面における測定の場合だけでなく、他のコンポーネント、例えば光学コンポーネント、特にレンズ、くさび又はミラーの表面における測定の場合にも生じる。
【0011】
本発明の目的は、調査されるサンプルの表面の複数の表面区画上のラフネス及び/又は欠陥測定のための改良された測定装置及び改良された方法であって、それによって従来技術の欠点及び制限が回避される方法を提供することである。本発明は、特に、速度及び/又は精度が増加したラフネス及び/又は欠陥測定を実施すること、増加した空間周波数を有する構造を検出すること、データ処理の処理複雑性を低減すること、及び/又は、増加した情報コンテンツを有するラフネス及び/又は欠陥測定の結果を送出すること、を可能にすることを意図している。ラフネス及び/又は欠陥測定は、特に、全てのバールを検出するときのおよそ1時間以下の測定時間で可能な限り、ウェーハ保持のための保持装置のバールのラフネスの確実且つ迅速な検出に適しているべきである。
【0012】
この目的は、いずれの場合も、独立請求項の特徴を備える測定装置及び方法によって達成される。本発明の好適な実施形態及び適用は従属請求項から得られる。
【発明の概要】
【0013】
本発明の第1の一般的な態様によれば、上記の目的は、調査されるサンプルの表面の複数の表面区画上、特に、ウェーハ保持用の保持装置のバール端面などの構造化表面上のラフネス及び/又は欠陥測定のために構成された測定装置によって達成される。
【0014】
測定装置は、表面の測定領域を測定光で照明するように配置された少なくとも2つの光源を有する照明デバイスを備え、測定領域は複数の表面区画を含む。本発明によれば、少なくとも2つの光源は、測定領域内の表面区画を、少なくとも2つの照明ビーム経路に沿って、表面の表面法線に対して異なる入射角で照明するように構成される。また、少なくとも2つの光源は、検出器デバイスに対して固定され得る。
【0015】
測定装置は更に、表面で散乱した散乱光を検出するように配置された複数の検出器ピクセルからなる検出器アレイを有する検出器デバイスを備える。本発明によれば、検出器デバイスには結像光学素子が設けられ、それによって表面の測定領域は検出器アレイ上に結像され、検出器デバイスは、表面の表面法線に対して所定の視野角で照明された測定領域の少なくとも2つの散乱光画像を捕捉するように構成され、散乱光のうち検出器ピクセルによって受光される部分は、照明ビーム経路の各々において、場合毎に(in each case)共通の空間周波数を有する。
【0016】
また、測定装置は、表面の少なくとも1つのラフネス特徴を、捕捉された散乱光から判定するように構成された評価デバイスを備える。本発明によれば、評価デバイスは、少なくとも2つの散乱光画像から、各表面区画について少なくとも1つのラフネス特徴を判定するように構成される。
【0017】
本発明の第2の一般的な態様によれば、前述の目的は、調査されるサンプルの表面の表面区画、特に、ウェーハ保持用の保持装置のバール端面などの構造化表面のラフネス及び/又は欠陥測定のための方法によって達成される。
【0018】
ラフネス及び/又は欠陥測定のための方法は、構造化表面の測定領域を、測定光によって、少なくとも2つの照明ビーム経路に沿って、表面の表面法線に対して異なる入射角で照明するステップであって、測定領域は複数の表面区画を包含するステップと、表面で散乱した散乱光を、複数の検出器ピクセルからなる検出器アレイを備える検出器デバイスを使用して捕捉するステップと、表面の少なくとも1つのラフネス特徴を捕捉された散乱光から判定するステップと、を含む。
【0019】
本発明によれば、照明は、少なくとも2つの固定配置された光源を使用する、少なくとも2つの照明ビーム経路に沿った、表面の表面法線に対して異なる入射角での、測定領域内の表面区画の有向照明を備える。結像光学素子を設けられ、それによって表面の照明された測定領域が検出器アレイ上に結像される、検出器デバイスは、表面の表面法線に対して所定の視野角で照明された測定領域の少なくとも2つの散乱光画像を捕捉し、散乱光のうち検出器ピクセルによって受光される部分は、照明ビーム経路の各々において、場合毎に共通の空間周波数を有する。少なくとも1つのラフネス特徴は、各表面区画について、少なくとも2つの散乱光画像から判定される。
【0020】
ラフネス及び/又は欠陥測定のための本発明による方法又はその一実施形態は、好適には、本発明の第1の一般的態様による測定装置又はその一実施形態を使用して実行される。
【0021】
ラフネスの測定及び/又は欠陥の検出は、本発明によれば、表面の表面区画で実施される。各表面区画は表面の一部であり、散乱光は表面から個々の検出器ピクセル又は検出器ピクセルのグループ上に結像される。考慮される全ての表面区画は、好適には、同じ形状及び表面積である。表面区画の全体は、調査される表面を完全に又は部分的にカバーすることができる。
【0022】
ラフネスの測定及び/又は欠陥の検出は、好適には、構造化表面で実施される。「構造化表面」という用語は、閉じた又は断続的な、すなわち、好適には、互いに区切られ異なる表面構造又はテクスチャを有する部分を備える部分表面から構成されている、任意の表面を指す。構造化表面の場合、考慮される表面区画は、特に好適には、構造化表面のうち場合毎に同じ表面構造又はテクスチャを有する部分である。すなわち、表面区画は、表面のうち、互いに区切られ、残りの表面の表面構造又はテクスチャとは異なる、同じ表面構造又はテクスチャを局所的に有している部分である。
【0023】
例えば、調査されるサンプルは、コンポーネントの静電的保持のための保持装置を備え、保持装置の表面上には複数の突出バールが配置される。保持装置の表面は構造化表面を形成し、表面区画はバールの端面を備える。
【0024】
[1]から既知である方法とは違い、本発明によれば、少なくとも2つの光源が、表面の表面法線に対して異なる入射角を有する少なくとも2つの異なる照明ビーム経路が形成されるように配置される。測定光は、その少なくとも2つの異なる入射角でサンプルに向けられ、各光源は、その入射角のうちの1つで照明するように配置される。特に、少なくとも2つの散乱光画像の記録中には、光源は検出器デバイスに対して固定される。検出器デバイスによって検出された散乱光の振幅は、各入射角において、定義された空間周波数を有する散乱構造における測定光の散乱によって判定される。換言すれば、各入射角において、空間周波数の異なる散乱光画像が検出される。これは、より大きな空間周波数範囲、特に0.005μm-1~100μm-1の空間周波数範囲内の空間周波数においてラフネス特徴を判定することを有利に可能にする。
【0025】
少なくとも1つのラフネス特徴を判定する際に高い空間周波数を含むことは、保持装置、例えばESCのバール端面におけるラフネス及び/又は欠陥測定にとって特に有利である。なぜなら、高い空間周波数を有する構造は、バールの付着特性、ひいては保持装置の機能及びその特徴に特に影響を及ぼし、とりわけウェーハをクランプするときの横方向の不安定性を防止するからである。
【0026】
ラフネス及び/又は欠陥測定は、入射角が堅固に設定されている場合には、[2]に記載された方法と比較して異なる手法で行われる。異なる入射角を設定するための光源の移動が回避され、その結果、測定装置の構造が単純化され、ラフネス測定が加速される。堅固に設定された入射角を使用する照明の更なる利点は、固定された入射角は、任意選択的に提供されるビームトラップの固定位置決めを可能にするということである。ビームトラップは、表面からの直接反射を吸収し、よって測定システム内での反射の光散乱による迷光を抑制する。[2]に記載された方法の場合、ビームトラップは反射と共に搬送されなければならず、その結果、従来の測定は複雑さが増す。
【0027】
また、[1]とは違い、結像光学素子が設けられていることによって、検出器デバイスは画像取得のために構成される。有利なことには、複数の表面区画の散乱光の振幅の同時検出が可能になり、その結果として、全表面のラフネス及び/又は欠陥測定が有意に加速され、より高い横方向分解能がより容易に達成され得る。高い分解能は、表面区画識別、欠陥識別、及び欠陥分類に関しても有利である。[1]に記載された方法の場合、この目的のためには照明スポットサイズが有意に縮小されなければならず、既に記載した欠点(長い測定時間、焦点合わせの必要に起因する小さな散乱角の重畳)が生じる。
【0028】
「ラフネス特徴」という用語は、ラフネス(調査される表面の表面高さの不均一性)を定量的に表す関数過程(function course)などの任意の量又はデータ量を指す。ラフネス特徴は、トポグラフィ的な不均一性及び/又は欠陥に起因する不均一性の測度である。有利なことには、表面区画の異なるラフネス特徴を識別することが可能である。識別されるべき少なくとも1つのラフネス特徴は、例えば、特定の用途における要件に応じて選択され得る。ラフネス特徴は、好適には、ARS値(ARS:角度分解散乱)及び/又はそれから得られる変数、例えば積分散乱の値及び/又は少なくとも1つのPSD関数(パワースペクトル密度関数)から導出され、そこからrmsラフネス(rms:二乗平均平方根)が判定され得る。特に好適には、PSD関数及び/又はrmsラフネスがラフネス特徴として取得される。
【0029】
欠陥は、表面、特に考慮される表面区画上のコンタミ及び/又は材料損傷を含む。欠陥は、好適には、少なくとも1つのラフネス特徴及び/又は角度分解散乱から識別される。
【0030】
本発明の有利な一実施形態によれば、照明デバイスは、少なくとも2つの散乱光画像が互いに時間的に分離して記録され得るように、少なくとも2つの光源を時間制御するように構成されてもよく、評価デバイスは、少なくとも2つの散乱光画像から、照明された測定領域内の表面区画のPSD関数を判定するように構成され、照明デバイスは、表面区画の散乱関数、特にARS関数から、各表面区画について少なくとも1つのラフネス特徴を計算するように構成される。
【0031】
少なくとも2つの散乱光画像が順次に且つ互いに時間的に分離して記録されるような少なくとも2つの光源の時間制御は、作動された光源がオンになり、その一方で他の全ての光源が非作動になる(オフにされる又は遮蔽される)ように、場合毎に光源のうち1つを連続的に交互に作動させることを備える。各表面区画のPSD関数は、以下でより詳細に説明するように、散乱光画像の振幅から、それ自体公知の方法で判定される。各表面区画について少なくとも1つのラフネス特徴の計算は、例えば、表面区画の平均PSD関数及び/又は表面区画内のPSD分散(PSD variance)からのラフネス値の計算を含み得る。
【0032】
PSD関数は、検出器デバイスの検出器アレイの各検出器ピクセルについて判定され得る。単一の表面区画から、例えばバールからの散乱光が、複数の検出器ピクセル、例えば2~20個の検出器ピクセルによって受光される場合、各表面区画について平均散乱光振幅が計算され得、PSD関数は異なる入射角での平均散乱光振幅から判定され得る。代替的には、ピクセル毎に計算されたPSD関数を平均化することもできる。平均化は、有利なことには、処理されるべきデータの量を低減することを可能にする。また、表面区画毎に複数の検出器ピクセルを使用することは、欠陥を識別するための利点を提供する。
【0033】
代替的又は追加的には、本発明の更なる有利な一実施形態によれば、照明デバイスは強度制御するように構成されることが可能であり、それにより、表面区画の各々において、少なくとも2つの光源による有向照明の重み付け放射照度(表面積当たりのエネルギ)を有する少なくとも2つの散乱光画像を記録することが可能である。好適には、表面区画の各々において又は表面区画のグループにおいて同時に記録されるべき少なくとも2つの散乱光画像に、重み付け放射照度が提供される。
【0034】
有向照明の重み付け放射照度は、放射照度、例えば光源の照明強度が、光源が均一な半球状の照明に対応するように設定されるという点で、少なくとも2つの光源により、表面区画の各々において提供される。重み付け放射照度(E)は、特に、sin(θi)cos(θi)に比例するように設定され、θiは、個々の表面区画の照明の入射角である。この場合、評価デバイスは、少なくとも2つの散乱光画像から、照明された測定領域における構造化表面の積分散乱(S関数もしくはS値)又は特に全散乱(TS関数もしくはTS値、2~85°の散乱角範囲における積分散乱に等しい)を判定するように、及び表面区画上の積分散乱から、各表面区画について少なくとも1つのラフネス特徴を計算するように、構成される。
【0035】
強度制御と、少なくとも2つの散乱光画像の同時記録と、を備える本発明の実施形態には、散乱光画像がたった1回の照明(one single instance of illumination)を使用して記録され得、したがって測定期間が有意に短縮されるという特別な利点がある。
【0036】
照明デバイスの強度制御は、特に、光源が異なるエネルギ、とりわけ異なるパワー、パルス長、及び/又はパルス幅変調で作動される、及び/又は所定のレデューサが照明ビーム経路内、とりわけ光源に設けられるという点で、表面区画の各々が重み付け放射照度によって照明されるように達成される。レデューサは、好適には、ビーム形成光学素子及び/又はグレーフィルタなどの位置可変レデューサを備える。
【0037】
時間制御を備える及び強度制御を備える本発明の実施形態は組み合わせることができ、それによって測定の情報コンテンツが有利に増加する。
【0038】
光源の数は、本発明の具体的な使用条件に応じて、特に所望される測定の速度に応じて、有利に選択され得る。例えばPSD関数を構築するために、少なくとも2つの照明ビーム経路を提供するには、2つの光源で十分である。より多数の光源は、測定の精度を高めるためには有利であり得るが、データ処理を含む測定の期間の増加にもつながる。照明デバイスの光源の数は、好適には、3~70個以上、例えば100個までの範囲内にあるように選択される。保持装置におけるラフネス測定の実際の適用では、例えば10~60個の光源が提供される。光源、例えば端部が放射する光ファイバの適当な構成においては、より多くの光源、例えば100個まで又はそれ以上が提供されることも可能である。
【0039】
光源は、好適には、少なくとも1つの方位角平面内に、調査されるサンプルの表面に対して垂直に配置され、有利なことにはコンパクトな構成をもたらす。代替的には、光源は、異なる配置であってもよく、特に、検出器デバイスのそばの複数の側(side)に配置されてもよい。特に、照明ビーム経路に沿った照明は、異なる方位角で、とりわけ複数の方位角平面内で達成され得、近くの測定点に重畳され得る干渉局所反射又は高分散係数の識別又は抑制において利点が達成される。加えて、この配置は、異方性表面構造及び欠陥の識別を単純化する。
【0040】
本発明の更なる有利な一実施形態によれば、照明デバイスは、全ての照射ビーム経路において、同じ波長になるように測定光を生成するように構成される。この場合、測定装置の構築及び少なくとも1つのラフネス特徴の判定が単純化される。
【0041】
本発明の代替的な一実施形態によれば、照明デバイスは、全ての放射ビーム経路において、異なる波長及び/又は異なる偏光になるように測定光を生成するように構成される。異なる波長は、例えば、適当なスペクトル放出を有する光源を使用することによって提供される。異なる偏光を提供するためには、例えば、調整可能な偏光ビームスプリッタ及び/又は偏光フィルタが使用される。有利なことには、照明ビーム経路内で検出される空間周波数の選択において、追加の自由度が提供される。また、散乱構造が表面欠陥であるのか表面構造であるのか、又は非トポグラフィ的に散乱するかどうかを検出することが容易になり、したがって欠陥がより良く識別され得る。欠陥が識別されれば、好適には、後続の表面の洗浄に関する決定がなされ得る。あるいは、表面構造が識別されれば、好適には、表面の、例えばバール端面の後処理が行われ得る。こうした区別の可能性は、有利なことには、後処理プロセス時間の有意な削減、及び経費の削減を可能にする。
【0042】
照明ビーム経路における異なる波長の使用の好適な変形形態によれば、照明デバイスは、照明ビーム経路のうち少なくとも1つにおいて、少なくとも2つの異なる波長を有するように及び/又は少なくとも2つの異なる偏光を有するように測定光を生成するように構成される。
【0043】
評価デバイスは、特に好適には、照明された測定領域内の表面区画の、とりわけ等しい空間周波数(すなわち、共通の空間周波数又は空間周波数範囲)を有する少なくとも2つのPSD関数、及び/又は、とりわけ同じ空間周波数範囲を有する少なくとも2回の積分散乱(two instances of integral scattering)を判定するように、並びに、少なくとも2つのPSD関数及び/又は少なくとも2回の積分散乱から表面区画上の構造を識別するように、構成される。表面区画上の構造は、少なくとも2つのPSD関数及び/又は少なくとも2回の積分散乱の偏差、例えば差又は商から取得することができる。それによって、欠陥と表面構造との区別が、有利なことには更に単純化される。
【0044】
本発明の更なる一実施形態によれば、評価デバイスは、測定領域内、特に散乱光画像内の表面区画を識別するように構成される。少なくとも1つのラフネス特徴の判定は、特に、各表面区画について、少なくとも2つの散乱光画像から達成され得る。代替的には、評価されるべき表面区画の部分グループだけが提供されてもよい。特に散乱光画像における表面区画の識別は、少なくとも1つのラフネス特徴の判定の精度を向上させ、表面区画のエッジ構造からの起こり得る散乱光による又は回折効果に起因する望ましくない干渉が、検出及び防止され得る。
【0045】
有利なことには、散乱光画像内の画像領域が表面区画(決定論的構造)と関連付けられること及び欠陥又は不純物などの確率論的構造から区別されることが可能である。少なくとも1つのラフネス特徴の計算は、表面区画に限定されてもよい。また、情報は個々の表面区画にわたって平均化されてもよい。
【0046】
表面区画の識別は、散乱光画像が受ける画像認識方法によって達成され得る。本発明の特に好適な一実施形態によれば、評価デバイスは、ニューラルネットワーク及び/又は機械学習方法を使用することによって表面区画を識別するように構成される。本発明のこの実施形態は、極めて高い空間周波数に調整された結像散乱光測定方法と学習数値方法との組み合わせを特徴とする。有利なことには、それによって、欠陥が存在するときであっても、表面区画の識別の信頼性を高めることができる。
【0047】
評価デバイスは、好適には、デジタル画像マスクを使用することによって、少なくとも2つの散乱光画像から表面区画上の構造を識別するように構成される。デジタル画像マスクは、例えば、表面上で予想される欠陥の特徴である所定の形状及び/又は寸法の所定の基準画像を含む。欠陥は、例えば、粒子もしくはファイバなどの異物によるコンタミ、又は、エッジ破損もしくは亀裂などの材料損傷を含む。画像マスクを散乱光画像と比較することにより、欠陥が識別されること、並びに、任意選択的には分類(例えばダスト、ファイバ、エッジ破損など)及び/又はサイズ判定を行うこと、が可能になる。デジタル画像マスクの使用は、散乱光画像の評価を加速することを有利に可能にする。
【0048】
画像マスクは、特に、散乱光画像を部分的にのみ評価すること、例えば、表面区画、とりわけバール上のみの散乱光データからラフネスを計算することを、より容易にし得る。粒子の識別の場合には、同様に、サイズ判定用の他の評価アルゴリズムを使用するために画像マスクを使用して、粒子の散乱光データが抽出され得ることが可能である。マスクの作成及び欠陥の分類は、機械学習方法(特にニューラルネットワーク)によって達成され得る。抽出された散乱光データの評価は、従来、それ自体公知のモデルを使用して実施され得、モデルの選択は、識別された欠陥のタイプに応じて行われることが可能である。例えば、個々の粒子はARSデータからサイズ判定用のBobbert Vliegerモデルを使用して査定され得、欠陥はピクセル計数/表面判定によるサイズ判定によって査定され得、及び/又はバールはRayleigh Riceモデルを使用したARSデータからの表面ラフネス計算によって査定され得る。
【0049】
更なる好適な一実施形態によれば、検出器デバイスの結像光学素子はテレセントリック光学素子であり、これは、複雑な別個の光学素子が必要とされないので、測定装置の構築に関して利点を提供する。
【0050】
本発明によれば、散乱光画像は、調査されるサンプルの表面に対して固定された視野角で検出器デバイスによって記録されれば十分である。検出器デバイスの視野角は、好適には、調査されるサンプルの表面の表面法線と平行に延在する。テレセントリック光学素子は、視野角又は散乱角が各ピクセルについて同一であり、よって、空間周波数も全てのピクセルについて同じであるという点で、有利である。これは、視野全体において、サンプルを好適には垂直に見ることによって、横方向寸法がより高精度で測定され得るという点でも有利である。また、立体角は全てのピクセルについて同じであり、これは較正に関して有利である。
【0051】
特に保持装置のバール端面を観察することに関してのさらなる利点は、照明デバイスが、300nmより小さい波長λを有する測定光を使用して88°~75°の範囲の浅い入射角で表面区画を有向照明するように構成され、評価デバイスが、表面区画の歪度パラメータを判定するように構成される場合に、もたらされる。歪度パラメータとは、個々の端面のトポグラフィ的非対称性のタイプ及び程度に関する、それらの平均値からの統計上の定量的測度である。歪度パラメータを判定することにより、ウェーハとバールとの特定の相互作用特性を判定することが可能になり、この特性は、ウェーハの横方向の歪みにとって決定的なものである。
【0052】
本発明の更なる有利な一実施形態によれば、結像光学素子と、複数の検出器ピクセルを有する検出器アレイと、を備える少なくとも1つの更なる検出器デバイスが提供され、少なくとも1つの更なる検出器デバイスは、表面の表面法線に対して少なくとも1つの更なる視野角で照明された測定領域の少なくとも2つの散乱光画像を捕捉するように構成される。例えば、少なくとも1つの第2の検出器デバイスが提供され、これは、調査されるサンプルのサンプル法線に対して、第1の検出器デバイスよりも大きな視野角を形成する。よって、更に高い空間周波数を有する構造を検出することが有利に可能である。
【0053】
更なる一実施形態は少なくとも1つの照明を含み、その入射角は、直接正反射が少なくとも1つの追加の検出器に当たるように選択される。有利なことには、追加の検出器の測定値によってサンプルの局所反射係数を判定することが可能であり、これは評価の精度を高める。表面法線に平行な入射角での反射係数を判定するために、検出ビーム経路の光路内でビームスプリッタを使用することが可能であり、これは、表面法線に平行にサンプルを見ること及び表面法線に平行にサンプルを照明することの両方を可能にする。
【0054】
本発明の更なる利点は、照明デバイスが特定のタイプの光源に限定されないことである。「光源」という用語は、調査されるサンプルを所定の入射角で照明するように配置された任意の形態の発光素子を指す。
【0055】
光源は、好適には、発光ダイオード又はレーザなどの能動的発光素子であり、その発光はサンプルに向けられる。発光ダイオード又はレーザには、高い照明強度を有するコンポーネントの利用可能性、狭帯域エミッタの利用可能性、及び有向発光による利点がある。発光ダイオードは、その非干渉性により有利であり得る。なぜなら、干渉するスペックルパターンがサンプル上に生成されないからである。レーザは、例えば、レーザダイオード又は固体レーザを含み得る。
【0056】
代替的には、光源は、発光ダイオード又はレーザと組み合わせて、光ファイバ、特に光ファイバのファイバ端部、又は反射器などの受動的発光素子(被照明素子)を包含する。光ファイバのうち複数又は全部が、共通の発光ダイオード又は共通のレーザに連結されてもよい。これらの変形形態では、複数の入射角を設定するための複数の光源、例えばファイバ端部の密な配置に関して利点が得られる。
【0057】
照明デバイスは、入射角が異なる、同じ又は異なる変形形態の光源を備え得る。例えば、サンプルを直接照明するレーザ及び/又は発光ダイオードは、同じもしくは別のレーザ及び/又は発光ダイオードに連結された光ファイバと組み合わせられてもよい。
【0058】
各光源には、好適には、照明光学素子が設けられる。照明光学素子は、サンプルに向かう照明の配向及び/又はサンプルの表面における照明された測定領域の形成に関して利点を提供する。光源が発光ダイオード又は光ファイバを備えるのであれば、照明光学素子は好適にはコリメートレンズである。光源がレーザを備えるのであれば、照明光学素子は好適にはエキスパンダレンズとコリメートレンズとの組み合わせである。代替的には、複数回(instances)の照明の固有の散乱光をより少なくするため、又は照明のより広いスペクトル範囲にわたって収差及び透過損失又は反射損失を改善するために、ミラー光学素子を使用することもできる。
【0059】
散乱光画像は、調査されるサンプルの表面全体をカバーすることができる。代替的には、散乱光画像は、調査されるサンプルの表面の一部をカバーすることができ、表面全体は、異なる部分における測定の繰り返しによって捕捉され得る。後者の場合、本発明の更なる好適な一実施形態によれば、サンプルを受容するためのサンプルホルダ、及び/又は、照明デバイスと検出器デバイスとからなるアセンブリは、互いに対して移動可能であり、それによって、照明デバイスは構造化表面の異なる測定領域(部分)を照明するように配置され得、異なる測定領域の散乱光画像は検出器デバイスによって捕捉され得、測定装置は構造化表面の異なる測定領域内の表面区画において繰り返しラフネス測定を行うように構成される。各部分は、少なくとも2つ、典型的には少なくとも20の表面区画を備える。保持装置におけるラフネス測定の場合、1つの部分が例えばおよそ50のバール端面をカバーする。
【0060】
ラフネス測定は、有利なことには、更なる調査方法及び/又は処理方法と組み合わせられ得る。例えば、本発明の好適な変形形態によれば、特に増加したラフネスを有する、選択された表面区画が、干渉、トポグラフィ及び/又は分光測定方法、とりわけ干渉法、共焦点顕微鏡法、蛍光分光法、又はラマン分光法を使用して、更に意図的に調査され得る。サンプルの処理は、例えば、測定領域における準備及び/又は研磨などのサンプルの表面処理を含み得る。更なる観察及び/又は処理方法は、好適には、本発明によるラフネス測定の後に順次実行される。代替的には、ラフネス測定前の観察も可能である。
【0061】
特に好適には、少なくとも1つの後続の第2の測定方法、好適には干渉法(特に白色光干渉法)、共焦点顕微鏡法、蛍光分光法、又はラマン分光法などの干渉、トポグラフィ、及び/又は、分光測定方法が、個々の識別された欠陥又は構造を意図的に再度測定するために提供される。表面区画の少なくとも2つのPSD関数及び/又は少なくとも2つの積分散乱の間で増加したラフネス及び/又は増加した偏差を有する表面区画が、好適には調査される。なぜなら、これらの偏差は欠陥又は特にコンタミを示し得るからである。結果として利用可能となった追加の情報及びデータは、その後、構造及び欠陥に関するより高精度の情報(例えば合格/不合格)を得るために、又は散乱光測定データからニューラルネットワークの評価精度を訓練及び改善するために、使用することができる。また、例えば評価アルゴリズム又はニューラルネットワークを調整又は訓練することによって、耐摩耗性など、他の測定方法を用いた以前の又は後続の測定から既知の他の製品特性を、本発明によるラフネス測定のデータと相関させることができる。加えて、結果として検出可能な空間周波数範囲を拡大することも可能である。
【0062】
トポグラフィ測定方法の場合、少なくとも1つの更なる測定が検出器デバイスを使用して実施されてもよく、変更された焦点面が設定される。その結果、表面のトポグラフィが再構築され得る。例えば、本発明によるラフネス測定が実行される共通の測定領域におけるサンプルの横方向の大きさに対する表面構造又は区画の局所的な傾斜角を判定することができる。その結果、局所的な入射角及び散乱角が高精度で判定され、少なくとも1つのラフネス特徴が計算され、評価の精度が改善されることが有利に可能である。
【0063】
好適には、焦点変動測定(「shape from defocus」」方法とも称される)及び/又はMakyoh画像測定(Makyohトポグラフィ測定)が、トポグラフィ測定方法として提供され得る。焦点変動測定の場合、好適には暗視野で実行され、検出器デバイスの焦点面の変動(走査)及び焦点面の検出が、個々の画像テクスチャが最も鮮明であるところで行われて、そこから表面の高さプロファイル、特に局所的表面傾斜が判定される。Makyoh画像の場合、好適には明視野で実行され、少なくとも1つのカメラ画像が、好適には焦点外で取得される。局所的なサンプル曲率は焦点外画像の強度に影響を与え、これは、高さプロファイル、特に局所的な表面傾斜を計算することを可能にする。この計算に関しては、例えば、測定領域における均質な入射照明分布、及び一定の局所反射係数が推定される。代替的には、入射照明分布及び局所反射係数は、既知の反射を有するサンプルを使用して検出器デバイスを較正することによっても計算され得る。
【0064】
測定装置及びその実施形態に関連して開示された特徴は本発明による方法の好適な特徴も構成し、逆もまた同様である。したがって、特に測定装置の構築並びに測定装置に関連して説明される個々のコンポーネントの寸法及び組成に関する上述の態様及び発明的且つ好適な特徴は、方法についても当てはまる。上述した本発明の好適な実施形態、変形形態及び特徴は、互いに組み合わせられてもよい。
【0065】
以下では、本発明の更なる詳細及び利点を、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】光源の時間制御を伴うラフネス及び/又は欠陥測定のための測定装置及び方法の好適な実施形態の特徴を概略的に示す。
【
図2】複数の検出器デバイスを備える、
図1に記載の測定装置の修正された実施形態を概略的に示す。
【
図3】光源の強度制御を伴う測定装置の更なる修正された実施形態を概略的に示す。
【
図4】
図3に記載の測定装置の関数の図示を概略的に示す。
【
図5】少なくとも1つのラフネス特徴を判定するときに参照される角度及び方向の図示を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明の実施形態の特徴を、例として、平面ESC1(その一部が概略的に示されている)の形態をとるサンプル上のラフネス及び/又は欠陥測定を参照して、以下で説明する。本発明の用途は、平面ESC上での測定に限定されず、むしろ、キャリア表面に広がるバールを備える他の保持装置上、並びに光学ミラーもしくはレンズ又は接合プレートなど、他の平面又は湾曲コンポーネント上での測定も含むことが強調される。湾曲コンポーネント上での測定の場合、表面法線などの方向特定は、測定の現在の測定領域におけるそれぞれの方向を局所的に指す。少なくとも1つのラフネス特徴の判定を説明するときには、
図5に示される角度、方向、及び更なる変数を参照する。
【0068】
図面は、本発明の実施形態の特徴を示す概略図である。光源のキャリア、カメラハウジング、又はサンプルホルダなど、説明される構成の詳細は、これらが従来技術からそれ自体公知である限り、図示されない。
【0069】
例として、サンプルからの散乱光が反射において検出される、すなわち、照明及び検出器デバイスがサンプルの片側の共通の半空間内に配置される、本発明の実施形態を参照する。本発明は、サンプルからの散乱光が透過において検出される場合、すなわち、照明デバイス及び検出器デバイスがサンプルの両側の異なる半空間内に配置される場合には、対応する手法で適用され得る。
【0070】
図1の上部は、ESC1上でのラフネス及び/又は欠陥測定のための測定装置100を概略的に示しており、このデバイスは、照明デバイス10と、カメラを備える検出器デバイス20と、評価デバイス30と、サンプルホルダ40と、を備える。評価デバイス30の構成、並びに、ラフネスを判定すること及び/又は欠陥を識別することを含む少なくとも1つのラフネス特徴を判定するために評価デバイス30、によって実施される方法は、
図1の下部に図示されている。
【0071】
評価デバイス30は、検出器デバイス20によって記録された散乱光画像データを処理するためのデータ処理プログラムを実行するように構成されたコンピュータユニットを備える。評価デバイス30には、好適には、測定装置100を制御するための制御ユニットも設けられる。代替的又は追加的には、測定装置100を制御するために、評価デバイス30とは別個に、(図示しない)追加の制御ユニットが提供されてもよい。
【0072】
ESC1は平面プレートの形状をしており、その表面には、各々が端面2を有する複数のバール1Aが配置されている。ESC1は、詳細図では、いくつかのバール1Aのみを有して概略的に示されている。実際には、例えば、3000μm未満の間隔で数万個のバール1Aの密な配置が提供され、それらのバールの端面2は各々が0.5mm未満の直径を有し、ウェーハ用のESC1のキャリア表面に広がる。ESC1は基準平面(ここではX-Y平面)内に延在し、ESC1の表面法線は基準平面に対して垂直に延在する(ここではZ方向)。端面2は、好適には、基準平面と平行な共通平面内に位置する。カメラの焦点深度及び軸上色収差は、好適には、両方の平面内において異なる波長で同時に鮮明な結像を可能にする。又は、リフォーカシングによって、カメラを使用して両平面を同時に且つ鮮明に記録することが可能である。任意選択的には、ESC1の表面の高さのトポグラフィ及び/又は局所的変動は、例えば焦点変動測定及び/又はMakyoh画像測定によって検出され得る。
【0073】
ESC1はサンプルホルダ40(概略的に図示する)上に配置され、このサンプルホルダは、例えば、X-Y平面内でESCを保持して移動させるためのxyステージを備える。照明デバイス10及び検出器デバイス20に対するESC1の位置、及び特にESC1の全表面内の、照明デバイス10によって照明される測定領域3は、サンプルホルダ40によって設定することができる。
【0074】
照明デバイス10は、一群の光源11A,11B,11C,11Dを包含し、各光源は、例えばタイプM300L4(340nm波長、53mWパワー、製造業者Thorlabs GmbH)の発光ダイオードを備える。光源11A,11B,11C,11Dは、共通のキャリア及び/又はハウジング(図示しない)上に固着され、各々に照明光学素子(コリメーション光学素子)12が設けられる。任意選択的には、少なくとも1つの光源、そして好ましくは全ての光源に、グレーフィルタなどの変位可能なレデューサが設けられることが可能である(
図3を参照)。レデューサは、測定のダイナミックを増加させるために、それぞれの光源のビーム経路内で格納及び延出され得る。
【0075】
光源11A,11B,11C,11Dの照明光学素子12は、各々が、ESC1に向かうコリメートされた照明ビーム経路LA,LB,LC及びLDを形成するためのコリメーションレンズを備える。光源11A,11B,11C,11D及び関連する照明光学素子12は、照明ビーム経路LA,LB,LC及びLDの各々がESC1の表面の表面法線に対して異なる入射角θiを形成すると共に共通の測定領域3に向けられるように固定されるように配置される。使用される照明光学素子12により、照明ビーム経路LA,LB,LC及びLD内の照明は、典型的には円形又は楕円形であり、考慮される測定領域3よりも大きい。測定領域3は、例えば、検出器デバイス20の検出器アレイ21の形状に適合された長方形又は正方形の形状であり、測定領域3は、特に、0.1cm~10cmの範囲の辺長を有する。
【0076】
例として4つの光源が示されているが、実用においては、更なる光源、例えば合計で10個以上の光源が提供されることが可能である。入射角は、例えば、2°~75°の範囲に分布するように構成され得る。入射角は、この範囲内で、好適には、検出された空間周波数の可能な限り均一な走査を可能にするように分布する。よって、式(1)(下記を参照)により、小さい入射角では光源の密度がより高くなる。サンプル上で特定の空間周波数を有する散乱構造が予想されるのであれば、入射角は、好適には、予想される空間周波数の範囲に従って設定され得る。
【0077】
光源11A,11B,11C,11Dは、関連する照明光学素子12と共に、検出器デバイス20に対して、及びひいてはX-Y平面に対しても、固定された位置及び配向を有する。この固定された位置及び配向は、少なくとも1つのラフネス特徴を判定するために、少なくとも測定装置100の動作中、全ての散乱光画像の記録の期間にわたって設定される。補正された測定条件に適合させる目的で、光源11A,11B,11C,11Dは、関連する照明光学素子12と共に、キャリア上又はハウジング内に解放可能に固定され得、且つ調整可能であり得る。
【0078】
照明デバイス10及びサンプルホルダ40は、評価デバイス30の制御ユニットに(両方向矢印を参照)又は別個の制御ユニットに連結される。制御ユニットは、以下で更に詳細に説明するように、光源11A,11B,11C,11Dの時間制御又は任意選択には強度制御と、ESC1の位置決めと、を提供する。
【0079】
検出器デバイス20は、例えばOrcaFusionタイプ(製造業者Hamamatsu)の検出器アレイ21と、好適にはテレセントリック光学素子である結像光学素子22とを有するカメラを備える。検出器デバイス20は、ESC1の表面の表面法線に対して固定された視野角θ
sを有するように配置される。視野角は好適には0°である。すなわち、検出器デバイス20の光軸は表面法線(Z方向)と平行に延在する。代替的には、視野角は、0°からずれてもよい(例えば
図2を参照)。
【0080】
CMOSマトリクスなどの検出器アレイ21は、照明ビーム経路LA,LB,LC及びLDに沿って測定領域3が照明される場合、散乱光の空間分解記録のための複数の検出器ピクセルを備える。検出器アレイ21の出力信号は、同じ測定領域3の複数の散乱光画像4A,4B,4C,4D,…であり、これらの画像の数は、照明デバイスの時間制御を伴う実施形態においては、少なくとも光源の数と同一である。照明シリーズ(illumination series)の記録時、例えば、決定論的構造又は欠陥の識別の信頼性を高めるために、散乱光画像4A,4B,4C,4Dの数は、好適には、光源の数の整数倍と同じである。照明シリーズは、ダイナミックを増加させるため、及び、ひいては例えばHDR(高ダイナミックレンジ)画像を得るために、例えば異なる積分時間を有するように構成され得る。散乱光画像4A,4B,4C,4Dは評価デバイス30に供給され、その評価デバイスによって、少なくとも1つのラフネス特徴を判定する方法が実行される。
【0081】
本発明の第1の実施形態によれば、光源11A,11B,11C,11Dの時間制御は、各入射角に関して、散乱光画像4A,4B,4C,4D,…が互いに時間的に分離されて記録されるように提供される。散乱光画像4A,4B,4C,4D,…の記録中、検出器デバイス20の位置は変化しないままである。光源11A,11B,11C,11Dは、評価デバイス30によって連続して作動される。場合毎に、光源のうちの1つが所定の照明期間、例えば40msの間、作動され、その一方で他の全ての光源は作動停止される。光源のうち1つを使用する各照明位相において、1つの散乱光画像が記録され、評価デバイス30に伝送される。例えば、25×25mm2の測定フィールドの10個の散乱光画像4A,4B,4C,4D,…がわずか0.5秒以内に記録され得、これらの画像は照明ビーム経路LA,LB,LC,LD,…が異なる。
【0082】
各散乱光画像は、検出器ピクセルにおいて個々に記録される散乱光振幅が場合毎に表面区画2、粒子5、又はファイバ6などの構造における光散乱によって判定されることを特徴とする振幅画像であり、[6]による共通の空間周波数fを有する。
f=[sin(θ
s)-sin(θ
i)]/λ (1)
(
図5を参照。θ
s:視野角又は散乱角、θ
i:入射角、λ:照明の波長。)
空間周波数fは、代替的には次式によって計算することができる。
【0083】
【0084】
f
x及びf
yには以下が当てはまる。
f
x=(sinθ
scosΦ
s-sinθ
i)/λ 及び
f
y=(sinθ
ssinΦ
s)/λ (3)
Φ
sは、表面法線に垂直に延在すると共に入射角θ
iを有する照明の方向と表面法線とによって張られる入射面内に位置する軸に対する方位角である(
図5を参照)。したがって、空間周波数f
x及びf
yは、入射ビームの方向によって定義される散乱ジオメトリの座標に関係する。入射ビームがサンプルのX軸に位置していなければ、すなわち、表面法線を中心に方位角Φ
i程度回転していれば、空間周波数は、サンプル空間周波数f
x及びf
yへの回転によって、以下のように変換される。
f
X=f
xcosΦ
i+f
ysinΦ
i,f
Y=-f
xsinΦ
i+f
ycosΦ
i
【0085】
散乱光画像内の散乱光振幅は、[6]による角度分解散乱ARSによって定義される。
ARS(θ
s,Φ
s,θ
i)=ΔP
s(θ
s,Φ
s,θ
i)/P
iΔΩ (4)
ΔΩは立体角を表し、ΔP
sは散乱パワーを表し、P
iは入射パワーを表す(
図5を参照)。
【0086】
評価デバイス30を用いて、照明された測定領域3内の表面区画2のPSD関数が散乱光画像4A,4B,4C,4D,…から判定され、これらの関数が関連する表面区画2のラフネス特徴として出力されるか、又はrms値などの関連する表面区画2の少なくとも1つの導出されたラフネス特徴が各PSD関数から計算される。
【0087】
代替的には、照明された測定領域3内の表面区画2の積分散乱Sが散乱光画像4A,4B,4C,4D,…から判定され、rms値などの関連する表面区画2の少なくとも1つの導出されたラフネス特徴が各S値から計算される。代替的又は追加的には、評価デバイス30は、散乱光画像4A,4B,4C,4D,…からESC表面上の欠陥を識別すると共に特徴付ける。
【0088】
詳細には、ステップS1(
図1の下部)において、それ自体利用可能な画像認識方法を使用して、任意選択的にはニューラルネットワークを使用して、散乱構造が決定論的構造、すなわち表面区画2であるかどうかが判定される。そうでないのであれば、ステップS2において、画像認識によって、散乱構造が欠陥を含むかどうかが判定される。この場合、関連のある欠陥を後でより正確に特徴付けるために、粒子5、ファイバ6、材料破損、又は亀裂などの予想される欠陥に従った分類が実行される。したがって、ステップS2は複数のサブステップを含み、
図1はそのうち、単に例として、欠陥が粒子によって形成されているかどうかを識別するサブステップを示している。
【0089】
画像認識のためにニューラルネットワークを使用するとき、ニューラルネットワークは、機械学習によって連続的に適合され得る。この目的のために、トポグラフィレビュープロセスRev(下記を参照)から及び/又は他の局所的及び/又は全体的な測定からの情報(サンプルの耐摩耗性など)が使用され得る。その結果、測定値に間接的にしか関係しない、後の製品特性を予測することも可能である。加えて、結果として、局所的な製品特性(構造の表面ラフネス、又は欠陥のサイズなど)の導出の精度を継続的に向上させることが可能である。
【0090】
ステップS1及びS2の後で、散乱構造が表面区画2又は欠陥として識別されていなければ、関連するデータが破棄されて画像記録が繰り返されてもよく、及び/又は散乱構造が個々にアプローチされ、異なる測定方法及び/又はより高い空間分解能を使用して調査されてもよい。
【0091】
ステップS1及びS2において、少なくとも1つのラフネス特徴の後続の計算のために更なる画像記録が必要とされないのに十分な信頼性のレベルで誤差の量的程度をチェックすることによって、決定論的構造又は欠陥が識別されれば、光源はそれに応じて、測定時間を節約するべく、更なる照明が実行されないように制御され得る。
【0092】
ステップS1における表面区画2の識別の後、これらの表面区画は、ステップS3及びS4において、その後ステップS5及びS6の各々においてARS値を判定するため、並びにそこからステップS7及びS8において視野ジオメトリ(検出器デバイスの立体視野角Ω)を勘案して表面区画2上の散乱構造のPSD関数を計算するために、散乱光画像4A,4B,4C,4D,…内のデジタルマスクを使用すること(構造をセンサマトリクス上でのそれらの局所位置に従って選択すること)によって切り出される。ARS値は、検出された散乱光振幅、すなわち検出器ピクセルの出力信号から直接得られる。
【0093】
空間周波数f及びARS値に依存する、選択された構造内の各ピクセルのPSD関数間の関係は、次式によって得られる(例えば[3]を参照)。
【0094】
【0095】
式(5)において、Qは、調査されるサンプルの散乱ジオメトリ(入射角及び散乱角、光偏光)及び材料特性(複素屈折率)についての情報を包含する光学因子である([6]、[8])。代替的には、Qは、説明した測定方法を使用して、直接反射を検出することによって、サンプルの反射測定から、局所的に分解された手法で判定され得る反射係数によっても近似されることもできる([6]、[8])。
【0096】
PSD関数は、少なくとも2つの支持点、すなわち異なる空間周波数f又は異なる入射角における測定と、その後の関心のある空間周波数範囲全体への補外とによって判定され得る。補外が有利に可能であるのは、研磨及び被覆された表面に関しては、PSD関数は一般に連続的に且つ急激なジャンプなしに延在し、したがってわずか数個のサンプリング点で十分であるからである。
【0097】
rmsラフネスσは、関連のある表面区画のラフネス特徴として、PSD関数から、次式に従って計算され得る。
【0098】
【0099】
(例えば[4]を参照。)
代替的には、ラフネスは、例えば、表面区画内の平均PSD関数から計算され得る。
【0100】
ステップS2における欠陥5の識別後、これらの欠陥は、ステップS9及びS10において、その後ステップS11において、画像データから、例えば欠陥をカバーする検出器ピクセルの数、及び検出器デバイスの結像特性から粒径を計算するために、散乱光画像4A,4B,4C,4D,…内のデジタルマスクを使用することによって切り出される。代替的には、識別された小粒子が、例えば、[7]などの粒子散乱モデルを用いて、散乱光画像から計算されてもよい。
【0101】
切り出されるべき決定論的構造(表面区画2)に適合されたデジタルマスクの上述の使用に代えて又は加えて、評価デバイス30内の分析マスクも、決定論的構造間の画像区画をカバーするように適合され得る。
【0102】
図1は、表面区画又は欠陥に関係する更なる情報を識別するために、評価デバイス30を使用して少なくとも1つのレビュープロセスRevが実施され得ることを概略的に示す。少なくとも1つのレビュープロセスRevは、少なくとも1つのラフネス特徴の識別の結果に応じて、好適には白色光干渉法及び/又はAFMなどのトポグラフィ測定方法によって、実施される。代替的又は追加的には、本発明による方法に基づく、追加の又はより正確な情報を提供する少なくとも1つのレビュープロセスRevが提供され得、そこでは例えば更なる散乱角及び/又は更なる波長及び/又は位相情報が評価される。
【0103】
測定領域3内のラフネス及び/又は欠陥の特性は、記録され、任意選択的には結果として出力される。ESC1の表面全体を測定するために、ESC1は、サンプルホルダ40と併せて、照明デバイス20及び検出器デバイス30に対して繰り返し移動され、各位置で測定される。
【0104】
図2は、
図1に記載の実施形態の修正された変形形態を示し、検出器デバイス20に加えて、検出器アレイ21A及び結像光学素子22Aを備える更なる検出器デバイス20Aが設けられている。例として、各々が結像光学素子12を有する2つの光源11A,11Bを備える照明デバイス10が示されているが、実際にはより多くの光源が設けられることが可能である。光源11A,11Bは、2つの異なる入射角で、測定領域3を交互に連続して照明する。
図1を参照して説明したように、散乱光画像を処理するために評価デバイス(
図2には図示しない)が提供される。例として、検出器アレイ21Aの傾斜が示されており、これは均一な焦点(シャインプルーフの原理)のために提供され得る。
【0105】
第1の検出器デバイス20は、
図1を参照して説明したように、少なくとも2つの散乱光画像を記録するように、0°の視野角で検出器アレイ21及び結像光学素子22を有して配置される。更なる検出器デバイス20Aは、表面の表面法線に対して、例えば60°という異なる視野角で配置される。説明した時間制御に従って、光源11A,11Bは、異なる入射角で散乱光画像を記録するために、交互に作動される。第1の検出器デバイス20及び更なる検出器デバイス20Aは、各入射角について異なる視野角で照明された測定領域3の2つの散乱光画像を記録する。それによって、高い空間周波数を有する散乱特徴を検出することが有利に可能である。第1の検出器デバイス20及び更なる検出器デバイス20Aによる散乱光画像の記録は、好適には同時に行われる。
【0106】
代替的又は追加的には、検出器デバイスは、異なるスペクトル感度を有し得る。これは、より大きなスペクトル範囲内の照明波長の使用を有利に可能にする。また、異なる波長を有する複数回の照明が同時に実施されてもよく、すると、波長の分離は、検出器デバイスの異なるスペクトル感度によって起こる。さらに、ビーム分割光学素子が、同じ視野角で、しかし異なるスペクトル感度又は偏光感度で、複数の検出器デバイスを使用することを可能にするであろう。この種の分離は、測定速度を向上させるため又は個々の構造もしくは欠陥に対する感度を向上させるために、あるいは異なる構造もしくは欠陥を区別する能力を向上させるために有利である。
【0107】
図3及び
図4に図示される本発明の第2の実施形態によれば、散乱光画像は同時に記録され、光源11A,11B,11Cの強度制御が、照明デバイス20が照明ビーム経路によって測定領域3内に異なる照明強度を提供するように提供される。
【0108】
評価デバイス(
図3には図示しない)による、全散乱TSからの各ピクセルのrmsラフネスσの直接計算は、次式に従って実行される。
【0109】
【0110】
([5]を参照。)
TSは全半球散乱パワーPTS及び入射パワーPiから計算され(TS=PTS/Pi)、Rは調査される表面の反射係数を表す。全散乱は、少なくとも2°~85°の角度範囲内の極散乱角θsについて、ISO13696に従って取得される。しかしながら、ここで説明されるラフネスの測定は、より小さい角度範囲にも同様に当てはまり、この場合、測定変数は通常通り、積分散乱と称される。
【0111】
検出器デバイス20を使用して、全散乱又は積分散乱に比例する散乱光振幅を有する散乱光画像を得るために、照明の個々の回(individual instances of illumination)の放射照度E=ΔPi/ΔAの重み付けGが実施され、ここでΔPiは、測定領域3内の表面要素ΔAに入射するパワーを表す。表面要素ΔAは検出器ピクセルに対応し得る。その結果、照明の全ての回(all the instances of illumination)が同時にサンプル(ESC1)を照明することができる。散乱分布の角度分解情報ARS(θs,φs)は失われ、そのためもはやPSD関数を計算することはできないが、全散乱への比例性は、光源11A,11B,11Cの時間制御がもはや必要とされないことを意味し、したがって、ラフネス測定は、全ての入射角での照明時に単一の同時画像記録によって実施することができる。その結果、有利なことには、測定時間が有意に短縮され得る。
【0112】
光源の強度制御(
図3)を備える第2の実施形態における少なくとも1つのラフネス特徴の判定は、以下で説明されるように、従来技術から公知の全散乱の判定の修正に基づく。
【0113】
従来技術では、全散乱は、準垂直照明及び直接半球検出によって判定される。半球検出は、典型的には、専門用語で言えば、コブレンツ球又はウルブリヒト球を使用して達成され[8]、それによって光が一体的に収集されて検出器へと偏向される。代替的には、全散乱は、準垂直光入射及び散乱光半球の走査の場合、角度分解散乱の測定データからの数値積分によって判定される[8]。
【0114】
【0115】
同位体散乱表面の場合には、ARSは、カメラによって垂直視したとき、表面法線に関して回転対称である。すると、方位角φsでの角度分解散乱ARSを判定すれば十分であり、次式が当てはまる。
【0116】
【0117】
これに対し、本発明の第2の実施形態において全散乱を判定するときには、入射方向と検出方向とが入れ替わる。伝搬方向が交換されるとき、ARSは、ARS(θs)=ARS(θi)cos(θi)/cos(θs)に変化する。再配列(rearrangement)の後には次式のようになる。
【0118】
【0119】
サンプルの散乱分布ARSは、照明の個々の回によって角度θ及びΦで、又は1次元の場合にはθのみで、検出される。θ
s=0°で、検出器デバイス20を使用して垂直視し、0>θ
1>θ
Nで、入射角θ
1~θ
N(
図4Aを参照)及びΦ=0を有するN回の照明でARSを走査する場合、TSの積分は次式に従って計算される。
【0120】
【0121】
ここで、Δθは、関連のある照明の代表的な全角度(
図4aを参照)又は複数回の照明の間のステップ角である。
【0122】
TSに比例する測定信号を達成するためには信号ARSNが異なって重み付けされなければならないことは明らかである。測定信号ARS(θN)のこの重み付けは、測定方法において、個々の放射照度に重み付けすることによって行われる。すると、重み付け係数は次式に従って計算される。
G(θN)=cosθNsinθNΔθN (12)
【0123】
これは、測定領域3内の表面要素ΔAへの各光源の照明の個々の回の放射照度E=ΔPi/ΔAに関して、次式のようになる。
E(θN)=E0G=E0cosθNsinθNΔθN (13)
ここで、E0は、好適には、測定領域3内の表面要素に対する全体的な照明がカメラ検出の際に好ましい信号対雑音比をもたらすように選択された放射照度である。個々の又は複数の極角がθNであるとき、複数の光源が場合毎に使用され、それらの光源が異なる方位角で配置されるのであれば、それらの光源は、好適には同じ放射照度であるべきであり、その全放射照度E(θN)も式13に対応する。
【0124】
説明した照明重み付けを有するサンプルの検出器測定信号からTS値を計算するためには、従来技術から公知であるように、既知のTS値を有する較正サンプルが使用される。
【0125】
正反射の周りの散乱角の場合、ARSは典型的には非常に急勾配で延在するので、測定の不確実性を低減するために、この領域においては、立体角を可能な限り小さく保つことが有利である。正反射に対して広角度である場合、ARSはより浅く延在し、散乱パワーは有意に低い。この領域においては、走査の間隔及び立体角が大きくなるように選択することが有利である。
【0126】
測定領域(3)において個々の角度θ
N(
図4Bを参照)でサンプルの均一な照明を提供するために、ビーム形成光学素子もしくは位置可変レデューサ13、例えばグレーフィルタが、又は異なるエネルギ、すなわち異なるパワー、パルス長、もしくはパルス幅変調での光源の対応する作動が提供されてもよい。
【0127】
図3に記載の実施形態は、光源の最小入射角及び最大入射角並びに波長λ
1によって判定される空間周波数スペクトルを有するrmsラフネスを測定することを可能にする(式1を参照)。空間周波数範囲を拡大するためには、更なる照明波長λ
Nが使用されることが可能であり、これはまた同時に、既存の波長でサンプルを照明する。
【0128】
rmsラフネスの計算は波長に依存するので(上記を参照)、この場合、異なる波長を有する複数回の照明の照明強度も互いに適合される。サンプル固有の反射係数も測定波に依存するので、これもまた波長の調整によって補正するのが好適である。複数の測定波長を使用するときには、照明の個々の回について、以下の追加の重み付け係数が適用される。
【0129】
【0130】
検出器デバイス20もスペクトル感度を有するのであれば、これは適宜補正される。
【0131】
以下では、本発明の好適な特徴が要約される。
【0132】
調査されるサンプル(1)の表面の複数の表面区画(2)上のラフネス及び/又は欠陥測定のために構成された測定装置(100)は、表面の測定領域(3)を測定光で照明するように配置された少なくとも2つの光源(11A,11B,11C,11D)を有する照明デバイス(10)と、表面で散乱した散乱光を捕捉するように配置された複数の検出器ピクセルを備える検出器アレイ(21)を有する検出器デバイス(20)と、表面の少なくとも1つのラフネス特徴を、捕捉された散乱光から判定するように構成された評価デバイス(30)と、を備え、少なくとも2つの光源(11A,11B,11C,11D)は、測定領域(3)を、少なくとも2つの照明ビーム経路(LA,LB,LC,LD)に沿って、表面の表面法線に対して異なる入射角で照明するように構成されており、少なくとも2つの光源(11A,11B,11C,11D)は、検出器デバイス(20)に対して固定されることが可能であり、検出器デバイス(20)には、表面の測定領域(3)を検出器アレイ(21)上に結像するように配置された結像光学素子(22)が設けられ、検出器デバイス(20)は、表面の表面法線に対して所定の視野角で照明された測定領域(3)内の表面区画(2)の少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)を捕捉するように構成され、散乱光のうち検出器ピクセルによって受光される部分であって照明ビーム経路(LA,LB,LC,LD)のうちの1つにおいて照明によって場合毎に形成される部分は、場合毎に共通の空間周波数を有し、評価デバイス(30)は、表面区画(2)の少なくとも1つのラフネス特徴を、少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)から判定するように構成される。
【0133】
照明デバイス(10)は、少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)が連続的に且つ互いに時間的に分離して記録され得るように、少なくとも2つの光源(11A,11B,11C,11D)を時間制御するように構成され得、評価デバイス(30)は、少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)から、照明された測定領域(3)内の表面区画(2)のパワースペクトル密度関数(PSD関数)を判定するように構成され、評価デバイス(30)は、PSD関数から又は表面区画(2)の積分散乱から、各表面区画(2)について少なくとも1つのラフネス特徴を計算するように構成される。
【0134】
照明デバイス(10)は、少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)が、表面区画(2)の各々において、少なくとも2つの光源(11A,11B,11C,11D)による有向照明の重み付け放射照度を有して記録されることが可能であるように、強度制御するように構成され得、有向照明の重み付け放射照度は、放射照度が、光源による照明が均一な半球照明に対応するように設定されるという点で提供され、評価デバイス(30)は、少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)から、照明された測定領域(3)内の構造化表面の積分散乱を判定するように構成され、評価デバイス(30)は、表面区画(2)の積分散乱から、各表面区画(2)について少なくとも1つのラフネス特徴を計算するように構成される。
【0135】
好適には、照明デバイス(10)の光源(11A,11B,11C,11D)の数が3~100個の範囲内にあるように選択されること、照明デバイス(10)が、全ての照明ビーム経路(LA,LB,LC,LD)において同じ波長になるように測定光を生成するように構成されること、並びに照明デバイス(10)が、照明ビーム経路(LA,LB,LC,LD)において異なる波長及び/又は異なる偏光になるように測定光を生成するように構成されることを含む特徴のうち、少なくとも1つが提供される。照明デバイス(10)が、照明ビーム経路(LA,LB,LC,LD)において異なる波長及び/又は異なる偏光になるように測定光を生成するように構成される場合には、照明デバイス(10)は、好適には、照明ビーム経路(LA,LB,LC,LD)のうち少なくとも1つにおいて、少なくとも2つの異なる波長及び/又は少なくとも2つの異なる偏光になるように測定光を生成するように構成される。
【0136】
照明デバイス(10)は、照明ビーム経路(LA,LB,LC,LD)において異なる波長になるように測定光を生成するように構成され得、評価デバイス(30)は、照明された測定領域(3)内の表面区画(2)の少なくとも2つのPSD関数及び/又は少なくとも2回の積分散乱を判定するように構成され、評価デバイス(30)は、少なくとも2つのPSD関数及び/又は少なくとも2回の積分散乱から表面区画(2)上の構造を識別するように構成される。
【0137】
好適には、評価デバイス(30)は、デジタル画像マスクを使用することによって測定領域(3)内の表面区画(2)を識別するように構成される。好適には、評価デバイス(30)は、ニューラルネットワーク及び/又は機械学習方法を使用することによって表面区画(2)を識別するように構成され、及び/又は評価デバイス(30)は、デジタル画像マスクを使用することによって少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)から表面区画(2)上の構造を識別するように構成される。
【0138】
検出器デバイス(20)の結像光学素子(22)はテレセントリック光学素子であり得、及び/又は検出器デバイス(20)の視野角は表面法線と平行に延在し得る。
【0139】
好適には、照明デバイス(10)は、300nmより小さい波長λを有する測定光を使用して88°~75°の範囲の浅い入射角で表面区画(2)を有向照明するように構成され、評価デバイス(30)は、表面区画(2)の歪度パラメータを判定するように構成される。
【0140】
結像光学素子(22A)と、複数の検出器ピクセルを有する検出器アレイ(21A)とを備える少なくとも1つの更なる検出器デバイス(20A)が提供されてもよく、少なくとも1つの更なる検出器デバイス(20A)は、表面の表面法線に対して少なくとも1つの更なる視野角で照明された測定領域(3)の少なくとも1つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)を捕捉するように構成される。
【0141】
好適には、少なくとも2つの光源(11A,11B,11C,11D)は、発光ダイオードと、レーザと、少なくとも1つの発光ダイオード及び/又は少なくとも1つのレーザに連結された光ファイバとのうち少なくとも1つを備え、及び/又は各光源には照明光学素子(12)が設けられる。
【0142】
任意選択的には、サンプル(1)を受容するためのサンプルホルダ(40)、及び/又は照明デバイス(10)と検出器デバイス(20)とからなるアセンブリは、互いに対して移動可能であり、それによって、照明デバイス(10)は構造化表面の異なる測定領域を照明するように配置され得、異なる測定領域の散乱光画像(4A,4B,4C,4D)は検出器デバイス(20)によって捕捉され得、測定装置(100)は構造化表面の異なる測定領域内の表面区画(2)において繰り返しラフネス測定を行うように構成される。
【0143】
照明デバイス(10)及び検出器デバイス(20,20A)は、サンプル(1)からの散乱光を反射及び/又は透過において捕捉するように構成されてもよい。
【0144】
調査されるサンプルの表面の表面区画(2)上のラフネス及び/又は欠陥測定の方法は、表面の測定領域(3)を測定光で照明するステップであって、測定領域(3)は複数の表面区画(2)を包含する、ステップと、複数の検出器ピクセルを備える検出器アレイ(21)を有する検出器デバイス(20)を使用して、表面で散乱した散乱光を捕捉するステップと、表面の少なくとも1つのラフネス特徴を、捕捉された散乱光から判定するステップと、を備え、照明は、少なくとも2つの固定配置された光源(11A,11B,11C,11D)を使用する、少なくとも2つの照明ビーム経路(LA,LB,LC,LD)に沿った、表面の表面法線に対して異なる入射角での、測定領域(3)内の表面区画(2)の有向照明を備え、検出器デバイス(20)には結像光学素子(22)が設けられ、それによって表面の測定領域(3)が検出器アレイ(21)上に結像され、検出器デバイス(20)は、表面の表面法線に対して所定の視野角で照明された測定領域(3)の少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)を捕捉し、散乱光のうち検出器ピクセルによって受光される部分は、照明ビーム経路(LA,LB,LC,LD)の各々において、場合毎に共通の空間周波数を有し、少なくとも1つのラフネス特徴は、各表面区画(2)について、少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)から判定される。
【0145】
少なくとも2つの光源(11A,11B,11C,11D)の時間制御は、少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)が互いに時間的に分離されて記録されるように提供され得、照明された測定領域(3)内の表面区画(2)のパワースペクトル密度関数(PSD関数)は少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)から判定され、少なくとも1つのラフネス特徴は、PSD関数又は表面区画(2)の積分散乱から、各表面区画(2)について計算される。
【0146】
強度制御は、少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)が、表面区画(2)の各々において、少なくとも2つの光源(11A,11B,11C,11D)による有向照明の重み付け放射照度を有して記録されるように提供され得、有向照明の重み付け放射照度は、放射照度が、光源が均一な半球照明を生成するように設定されるという点で提供され、照明された測定領域(3)内の構造化表面の積分散乱は、少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)から判定され、少なくとも1つのラフネス特徴は、表面区画(2)の積分散乱から、各表面区画(2)について計算される。
【0147】
全ての照明ビーム経路(LA,LB,LC,LD)の測定光は、同じ波長になるように生成され得る。
【0148】
照明ビーム経路(LA,LB,LC,LD)の測定光は、異なる波長及び/又は異なる偏光になるように生成され得る。好適には、照明ビーム経路(LA,LB,LC,LD)のうち少なくとも1つの測定光は、少なくとも2つの異なる波長及び/又は少なくとも2つの異なる偏光になるように生成され、及び/又は照明された測定領域(3)内の表面区画(2)の少なくとも2つのPSD関数及び/又は少なくとも2回の積分散乱は判定され、表面区画(2)上の構造は、少なくとも2つのPSD関数及び/又は少なくとも2回の積分散乱から取得される。
【0149】
少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)における表面区画(2)の識別が提供され得る。好適には、表面区画(2)は、ニューラルネットワーク及び/又は機械学習方法を使用することによって識別され、及び/又は表面区画(2)上の構造は、デジタル画像マスクを使用することによって少なくとも2つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)から識別される。
【0150】
表面区画(2)は、300nmより小さい波長λを有する測定光を使用して88°~75°の範囲の浅い入射角で照明され得、表面区画(2)の歪度パラメータは散乱光画像(4A,4B,4C,4D)から判定される。
【0151】
好適には、結像光学素子(22)と、複数の検出器ピクセルを有する検出器アレイ(21)とを備える少なくとも1つの更なる検出器デバイス(20)が提供されてもよく、表面の表面法線に対して少なくとも1つの更なる視野角で照明された測定領域(3)の少なくとも1つの散乱光画像(4A,4B,4C,4D)が捕捉される。
【0152】
構造化表面の複数の異なる測定領域が照明されてもよく、異なる測定領域の散乱光画像(4A,4B,4C,4D)が検出器デバイス(20)によって取得され、表面区画(2)でのラフネス測定は構造化表面の異なる測定領域内において繰り返される。
【0153】
好適には、特に表面区画(2)の少なくとも2つのPSD関数及び/又は少なくとも2回の積分散乱の間で増加したラフネス及び/又は増加した偏差を有する、選択された表面区画が、干渉、トポグラフィ及び/又は分光測定方法、とりわけ干渉法、共焦点顕微鏡法、蛍光分光法、又はラマン分光法を使用して、意図的に調査される。
【0154】
表面又は選択された表面区画は、高さプロファイル、特に表面の局所的な表面傾斜を判定するために、焦点変動測定及び/又はMakyoh画像測定を受け得る。
【0155】
好適には、調査されるサンプル(1)はコンポーネントを保持するための保持装置を備え、保持装置の表面上には複数の突出バールが配置され、表面区画(2)はバールの端面を備える。
【0156】
サンプル(1)からの散乱光は反射及び/又は透過において捕捉され得る。
【0157】
以上の説明、図面、及び特許請求の範囲に開示される本発明の特徴は、個々にも、組み合わせても、又は部分的に組み合わせても、本発明の様々な実施形態での実現のために重要であり得る。
【国際調査報告】