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特表2024-515475無機バインダー組成物用の水性混和剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】無機バインダー組成物用の水性混和剤
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/00 20060101AFI20240403BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20240403BHJP
   B28C 7/04 20060101ALI20240403BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20240403BHJP
   C04B 24/08 20060101ALI20240403BHJP
   C04B 24/42 20060101ALI20240403BHJP
   C04B 24/02 20060101ALI20240403BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20240403BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20240403BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C04B28/00
B28B1/30
B28C7/04
C04B24/26 E
C04B24/08
C04B24/42 A
C04B24/02
C04B24/06 A
C04B24/12 A
C08L101/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559090
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2022059923
(87)【国際公開番号】W WO2022223410
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】21170159.4
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【弁理士】
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】ディディエ ロータン
(72)【発明者】
【氏名】ロリータ オーゲル
(72)【発明者】
【氏名】マクシム リアール
【テーマコード(参考)】
4G052
4G056
4G112
4J002
【Fターム(参考)】
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
4G056AA06
4G056CB28
4G112PB15
4G112PB17
4G112PB18
4G112PB20
4G112PB31
4G112PB41
4J002AA03W
4J002AE00Y
4J002BG05W
4J002CP03X
4J002EC056
4J002EG056
4J002FD206
4J002FD20X
4J002FD20Y
4J002GT00
4J002HA06
(57)【要約】
コンクリート又はモルタルなどの無機バインダー組成物用の水性混和剤であって、水性組成物の100重量%を基準として、(a)無機バインダー用の可塑剤、減水剤、高流動化剤、及び加工性保持剤からなる群から選択される、12~55重量%、好ましくは15~50重量%、とりわけ20~45重量%の少なくとも1種のアニオン性ポリマーと、(b)15~35重量%、好ましくは20~30重量%の少なくとも1種の水不溶性液体消泡剤と、(c)任意に、1~10重量%、好ましくは2~5重量%の少なくとも1種の凝結遅延剤とを含む水性混和剤に関する。とりわけ、本発明の混和剤は、積層造形の分野において有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性組成物、好ましくは水性エマルジョンであって、前記水性組成物の100重量%を基準として、以下を含む水性組成物、好ましくは水性エマルジョン:
(a)無機バインダー用の可塑剤、減水剤、高流動化剤、及び加工性保持剤からなる群から選択される、12~55重量%、好ましくは15~50重量%、とりわけ20~45重量%の少なくとも1種のアニオン性ポリマー、
(b)15~35重量%、好ましくは20~30重量%の少なくとも1種の水不溶性液体消泡剤、及び
(c)任意に、1~10重量%、好ましくは2~5重量%の少なくとも1種の凝結遅延剤。
【請求項2】
前記少なくとも1種のアニオン性ポリマーは、ポリマー主鎖及びそれに結合した側鎖を有するコポリマーであって、前記コポリマーが、少なくとも1種のイオン化可能なモノマー単位M1及び少なくとも1種の側鎖所有モノマー単位M2を含むコポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
前記水不溶性液体消泡剤は、鉱油、植物油、若しくはワックスを含み得るホワイトオイル及び/又は疎水性シリカ、アルコキシル化若しくはフッ素化によって変性することができるシリコーン、リン酸若しくはホスホン酸のアルキルエステル、とりわけリン酸トリイソブチル若しくはリン酸トリブチル、アルコキシル化ポリオール、とりわけエトキシル化ジオール、脂肪酸ベースの消泡剤、とりわけ脂肪酸のモノ及びジグリセリド、並びにアルコキシル化脂肪アルコールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水性組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の凝結遅延剤は、糖酸、糖、糖アルコール、及びヒドロキシカルボン酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のアニオン性ポリマーは、前記ポリマー主鎖に沿った方向に前記モノマー単位M1及び/又は前記モノマー単位M2のランダムではない分布を有することを特徴とする、請求項2~4のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項6】
前記水性組成物は、第1の及び第2のアニオン性ポリマーを含み、各アニオン性ポリマーが、ポリマー主鎖及びそれに結合した側鎖を有するコポリマーであり、各コポリマーが、少なくとも1種のイオン化可能なモノマー単位M1及び少なくとも1種の側鎖所有モノマー単位M2を含み、ここで、
前記第1のアニオン性ポリマーが、前記ポリマー主鎖に沿った方向に前記モノマー単位M1及び/又は前記モノマー単位M2のランダムな分布を有し、かつ
前記第2のアニオン性ポリマーが、前記ポリマー主鎖に沿った方向に前記モノマー単位M1及び/又は前記モノマー単位M2のランダムではない分布を有すること
を特徴とする、請求項1、3、4及び5のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項7】
前記コポリマー中のモノマーM1及びM2の前記ランダムではない分布は、ブロックの形態にあり、前記イオン化可能なモノマー単位M1が、少なくとも1つの第1のブロックAに本質的に存在し、かつ前記側鎖所有モノマー単位M2が、少なくとも1つの第2のブロックBに本質的に存在することを特徴とする、請求項5又は6に記載の水性組成物。
【請求項8】
前記コポリマー中のモノマーM1及びM2の前記ランダムではない分布は、前記イオン化可能なモノマー単位M1の前記側鎖所有モノマー単位M2に対するモル比に関して、前記ポリマー主鎖に沿った方向に少なくとも1つのセクションAAにおいて勾配を有する形態にあることを特徴とする、請求項5又は6に記載の水性組成物。
【請求項9】
前記コポリマー中の前記イオン化可能なモノマー単位M1が、下記式Iの構造を有し、かつ前記側鎖所有モノマー単位M2が、下記式IIの構造を有することを特徴とする、請求項2、及び5~8のいずれか一項に記載の水性組成物:
【化1】
【化2】
式中、
は、それぞれ独立して、-COOM、-SO-OM、-O-PO(OM)及び/又は-PO(OM)であり、
、R、R及びRは、それぞれ独立して、H又は1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
及びRは、それぞれ独立して、H、-COOM又は1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
或いは、Rは、Rと一緒に環を形成して-CO-O-CO-を与え、
Mは、互いに独立して、H、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価若しくは三価の金属イオン、アンモニウムイオン又は有機アンモニウム基を表し;
m=0、1又は2であり、
p=0又は1であり、
Xは、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
は、式-[AO]-Rの基であり(ここで、A=C~C-アルキレンであり、Rは、H、C~C20-アルキル基、-シクロアルキル基又は-アルキルアリール基である)、かつ
n=2~250、とりわけ10~200である。
【請求項10】
前記水性組成物の100重量%を基準として、5~15重量%、好ましくは8~12重量%のカチオン性線状ポリアミンをさらに含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項11】
無機バインダー組成物、特にセメントを含むバインダー組成物の調製における、請求項1~10のいずれか一項に記載の水性組成物の使用。
【請求項12】
以下を含む無機バインダー組成物:
(a)無機バインダー、好ましくは少なくとも1種のセメント、
(b)少なくとも1種の骨材、好ましくは砂、
(c)任意に、少なくとも1種の更なる添加剤、
(d)任意に、水、及び
(e)無機バインダー組成物の総乾燥重量を基準として、0.5~10重量%、好ましくは1~5重量%の量の、請求項1~10のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項13】
以下の工程を含む、請求項12に記載の無機バインダー組成物の調製方法:
(1)無機バインダー、好ましくは少なくとも1種のセメントと、少なくとも1種の骨材、好ましくは砂と、任意に少なくとも1種の更なる添加剤とを含む乾燥ミックスを提供すること、
(2)任意に、前記乾燥ミックスを水と混合すること、
(3)前記乾燥ミックス又は前記乾燥ミックスと水との混合物を、請求項1~10のいずれか一項に記載の水性組成物と混合すること。
【請求項14】
工程(3)における前記混合を連続ミキサーで行うことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
積層造形のプロセス、好ましくは3D物体の印刷のプロセスの一部であることを特徴とする、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
請求項12に記載の無機バインダー組成物を硬化させることによって得られる造形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート又はモルタルなどの無機バインダー組成物用の水性混和剤の技術分野に関する。とりわけ、本発明の混和剤は、積層造形の技術分野において有用である。
【背景技術】
【0002】
コンクリート又はモルタルのような無機バインダー組成物用の混和剤は、新鮮な及び硬化した材料の品質を改善するために、例えば、強度、流動性、防水性、耐化学薬品性等などの一定の標的特性を改善するために広く使用されている。混和剤は、典型的には、そのそれぞれが標的特性の少なくとも1つを改善する働きをする、1つ超の、例えば2つ、3つ、又は4つの、異なる化学品を含む。現在入手可能な混和剤のほとんどは、水溶液又は分散液として使用される。
【0003】
無機バインダー組成物を混合する技術分野において、無機バインダー組成物の特性を調整するために様々な異なる添加剤を使用することが典型的には必要である。これは、例えば、無機バインダー組成物がセメント系組成物、例えばコンクリート又はモルタルである場合である。無機バインダー組成物の、3D印刷を含む、積層造形の技術分野においてとりわけ、様々な添加剤が使用されなければならない。積層造形のプロセスにおける典型的な必須要件は、無機バインダー組成物が長い距離にわたってポンプ送液され、層中を高速で分配されなければならない、且つそれら自体の重量及びトップ上に適用されるその後の層の重量を支えるために迅速に硬化しなければならないことである。後者は、積層造形のプロセスにおいて型枠が使用されない場合にとりわけ真実である。様々な添加剤が、これらの必須要件を可能にする及び容易にするために必要とされる。分散剤、レオロジー調整剤、及び強度エンハンサーなどの様々な添加剤の投与は、設備に追加の必須要件を課す。例えば、ポンプ付きの幾つかの投与ユニット、バルブ、計量供給デバイス、混合ユニット等を含むことを必要であろう。それ故に、幾つかの添加剤を1つの混和剤中へ組み合わせることが一般に望ましい。
【0004】
セメント分散剤及び消泡剤を含む混和剤は、例えば、国際公開第2020/016072号パンフレットに開示されている。
【0005】
セメント系材料と共に積層造形で使用するのに好適な混和剤は、例えば、国際公開第2020/187740号パンフレットに開示されている。
【0006】
別の方法では、無機バインダー組成物の乾燥プレミックスに全ての添加剤を添加することが必要であろう。しかしながら、これは、添加剤が乾燥状態にあらねばならないし、且つそれらが貯蔵中に無機バインダー組成物の他の構成成分と相溶性であらねばならないので、使用することができる添加剤のタイプを限定する。さらに、添加剤が乾燥プレミックスの一部を形成する場合、それらの用量は、具体的な用途のニーズに従って容易に調整することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
改善された混和剤が、とりわけ無機バインダー組成物を使用する積層造形に好適な改善された混和剤が絶え間なく必要とされている。
【0008】
特に積層造形用途向けの、無機バインダー組成物用に有用な混和剤を提供することが本発明の目的である。とりわけ、本発明の混和剤は、以下の利点:
(i)無機バインダー組成物用に必要とされる混合水の量を低減する、
(ii)無機バインダー組成物のオープンタイムを増加させる、
(iii)無機バインダー組成物の収縮を低減する、
(iv)無機バインダー組成物と硬化促進剤との、とりわけ硫酸アルミニウムをベースとする液体硬化促進剤との混合を容易にする、
(v)無機バインダー組成物の粘度を下げる及び/又は安定させる、
(vi)無機バインダー組成物の空気含有量を下げる、
(vii)無機バインダー組成物の機械的強度を高める、
(viii)無機バインダー組成物を使った積層造形のプロセスを容易にする、
(ix)増加した安定性を有する
の1つ以上を提供すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
意外にも、上に定義された目的は、少なくとも部分的に、好ましい実施形態においては完全に、請求項1に特許請求されるような水性組成物によって達成される。
【0010】
本発明の更なる態様は、更なる独立請求項の主題である。特別に好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の態様において、本発明は、水性組成物、好ましくは水性エマルジョンであって、水性組成物の100重量%を基準として、以下を含む水性組成物、好ましくは水性エマルジョンに関する:
(a)無機バインダー用の可塑剤、減水剤、高流動化剤、及び加工性保持剤からなる群から選択される、12~55重量%、好ましくは15~50重量%、とりわけ20~45重量%の少なくとも1種のアニオン性ポリマー、
(b)15~35重量%、好ましくは20~30重量%の少なくとも1種の水不溶性液体消泡剤、及び
(c)任意に、1~10重量%、好ましくは2~5重量%の少なくとも1種の凝結遅延剤。
【0012】
水は、合計100重量%までの量で存在し得る。
【0013】
本発明の水性組成物は、好ましくは、水性エマルジョンである。水性エマルジョンは、水中油(o/w)エマルジョン若しくは油中水(w/o)エマルジョン又は水中油中水(w/o/w)エマルジョンなどの媒体中に分散した分散相からなるエマルジョンであることができる。好ましくは、本発明の水性エマルジョンの連続相は水である。
【0014】
本発明の、水性組成物、好ましくはエマルジョンは、好ましくは液体である。水性組成物、好ましくはエマルジョンはしたがって、好ましくは、ペーストの形態にない。本発明の、水性組成物、好ましくはエマルジョンの粘度は、0.1s-1のせん断速度で20℃において測定される場合に好ましくは1~10000mPa・sである。
【0015】
本発明の水性組成物は、無機バインダー用の可塑剤、減水剤、高流動化剤、及び加工性保持剤からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン性ポリマーを含む。無機バインダー用の可塑剤、減水剤、高流動化剤、及び加工性保持剤は、当業者に公知である。模範的なアニオン性ポリマーは、リグノスルホネート、スルホン酸化ナフタレンホルムアルデヒド縮合体、スルホン酸化メラミンホルムアルデヒド縮合体、スルホン酸化ビニルコポリマー、ホスホネート基を含むポリアルキレングリコール、ホスフェート基を含むポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール側鎖を含むポリカルボキシレート又はアニオン性櫛形ポリマーである。
【0016】
実施形態によれば、本発明の水性組成物は、たった一種のアニオン性ポリマーを含む。更なる実施形態によれば、本発明の水性組成物は、2種のアニオン性ポリマーを含む。もっと更なる実施形態によれば、本発明の水性組成物は、3種以上のアニオン性ポリマーを含む。
【0017】
アニオン性ポリマーは、いずれの場合にも、H、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価若しくは三価の金属イオン、アンモニウムイオン、又は有機アンモニウム基、好ましくはH及び/又はアルカリ金属イオンから選択され得る対イオンMを有して、好ましくは、-COO、-SO-O、-O-PO(O及び-PO(O-基からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン性基を含む。
【0018】
とりわけ好ましい実施形態によれば、少なくとも1種のアニオン性ポリマーは、ポリマー主鎖及びそれに結合した側鎖を有するコポリマーであり、コポリマーは、少なくとも1種のイオン化可能なモノマー単位M1及び少なくとも1種の側鎖所有モノマー単位M2を含む。
【0019】
コポリマー中のイオン化可能なモノマー単位M1は、好ましくは、式Iの構造
【化1】
を有し、
側鎖所有モノマー単位M2は、好ましくは、式IIの構造
【化2】
を有し、
式中、
は、それぞれ独立して、-COOM、-SO-OM、-O-PO(OM)及び/又は-PO(OM)であり、
、R、R及びRは、それぞれ独立して、H又は1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
及びRは、それぞれ独立して、H、-COOM又は1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
或いは、Rは、Rと一緒に環を形成して-CO-O-CO-を与え、
Mは、互いに独立して、H、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価若しくは三価の金属イオン、アンモニウムイオン又は有機アンモニウム基を表し;
m=0、1又は2であり、
p=0又は1であり、
Xは、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
は、式-[AO]-Rの基であり(ここで、A=C~C-アルキレンであり、Rは、H、C~C20-アルキル基、-シクロアルキル基又は-アルキルアリール基である)、かつ
n=2~250、とりわけ10~200である。
【0020】
本発明のコポリマーのとりわけ好ましい例は、ポリカルボキシレートエーテル又はポリカルボキシレートエステル(PCE)である。
【0021】
モノマー単位M1対モノマー単位M2のモル比は、有利には0.5~6、とりわけ0.7~4、好ましくは0.9~3.8、更に好ましくは1.0~3.7又は2~3.5の範囲にある。
【0022】
より特に、R=COOM、R=H又はCH、R=R=Hである。このように、経済的な観点から興味のある、アクリル酸又はメタクリル酸モノマーに基づいてコポリマーを調製することが可能である。更に、本状況でのこの種のコポリマーは、特に良好な分散効果をもたらす。
【0023】
同様に有利には、R=COOM、R=H、R=H、及びR=COOMである。対応するコポリマーは、マレイン酸モノマーに基づいて調製することができる。
【0024】
側鎖所有モノマー単位M2中のX基は、有利には、全てのモノマー単位M2の少なくとも75モル%において、特に少なくとも90モル%において、とりわけ少なくとも95モル%又は少なくとも99モル%において、-O-(=酸素原子)である。
【0025】
有利には、R=H又はCH、R=R=H、及びX=-O-である。したがって、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエーテル、(メタ)アリルエーテル又はイソプレノールエーテルからコポリマーを調製することが可能である。
【0026】
特に有利な実施形態において、R及びRは、それぞれ、40~60モル%のHと40~60モル%の-CHとの混合物である。
【0027】
更なる有利な実施形態において、R=COOM、R=H、R=-CH、及びR=R=R=R=Hである。
【0028】
別の有利な実施形態において、R=COOM、R=R=H又は-CH、及びR=R=R=R=Hである。
【0029】
とりわけ好適なコポリマーは、R=COOMであり;R及びRがそれぞれ独立してH、-CH又はそれらの混合物であり;R及びRがそれぞれ独立してH又は-CH、好ましくはHであり;R及びRがそれぞれ独立してH又は-COOM、好ましくはHであるものである。
【0030】
側鎖所有モノマー単位M2におけるRラジカルは、モノマー単位中のRラジカルの全てを基準として、少なくとも50モル%、とりわけ少なくとも75モル%、好ましくは少なくとも95モル%又は少なくとも99モル%の程度までとりわけポリエチレンオキシドからなる。
【0031】
コポリマー中のアルキレンオキシド単位の全てを基準とするエチレンオキシド単位の割合は、とりわけ75モル%超、とりわけ90モル%超、好ましくは95モル%超及び特に100モル%である。
【0032】
より特に、Rは、本質的に疎水性基を持たない、とりわけ3個以上の炭素原子を有するアルキレンオキシドを持たない。これは、とりわけ、アルキレンオキシドの全てを基準とする3個以上の炭素原子を有するアルキレンオキシドの割合が、5モル%未満、とりわけ2モル%未満、好ましくは1モル%未満又は0.1モル%未満であることを意味する。特に、3個以上の炭素原子を有するアルキレンオキシドは存在しない、つまりそれの割合は0モル%である。
【0033】
は、有利にはH及び/又はメチル基である。特に有利には、A=Cアルキレンであり、Rは、H又はメチル基である。
【0034】
より特に、パラメータn=10~150、とりわけn=15~100、好ましくはn=17~70、特にn=19~45又はn=20~25である。特に、これは、明記された好ましい範囲内で優れた分散効果を達成する。
【0035】
=COOMであり;R及びRが、互いに独立して、H、-CH又はそれらの混合物であり;R及びRが、それぞれ独立して、H又は-CH、好ましくはHであり;R及びRが、互いに独立して、H又は-COOM、好ましくはHであり;ここで、全モノマー単位M2の、少なくとも75モル%における、特に少なくとも90モル%における、とりわけ少なくとも99モル%におけるXが-O-であるコポリマーが.特に好ましい。
【0036】
コポリマーが、モノマー単位M1及びM2とは化学的に異なる少なくとも1種の更なるモノマー単位MSを含む場合が更に有利であり得る。特に、多数の異なる更なるモノマー単位MSが存在し得る。このようにして、例えば、具体的な用途に関して、コポリマーの特性を更に変性すること及びそれらを調整することが可能である。
【0037】
特に有利には、少なくとも1種の更なるモノマー単位MSは、式III:
【化3】
(式中、
5’、R6’、R7’、m’及びp’は、コポリマーとの関連で上記のようなR、R、R、m及びpに関して定義されたのと同じものであり;
Yは、それぞれ独立して、化学結合又は-O-であり;
Zは、それぞれ独立して、化学結合、-O-又は-NH-であり;
は、それぞれ独立して、それぞれ1~20個の炭素原子を有する、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリール基、アリール基、ヒドロキシアルキル基又はアセトキシアルキル基である)
のモノマー単位である。
【0038】
溶離液としてpH12での0.1N NaNOを使ってポリエチレングリコール標準に対してSECで測定される、本発明のコポリマーの質量平均分子量(M)は、好ましくは5,000~200,000g/mol、より好ましくは8,000~150,000g/mol、とりわけ好ましくは10,000~130,000g/mol、特に12,000~80,000g/molである。
【0039】
本発明コポリマーは、モノマーM1及びM2並びに任意選択的にMSのフリーラジカル共重合によって製造することができる。模範的なポリマーは、例えば、欧州特許第2522680号明細書に記載されている。
【0040】
ヒドロキシル基又はアミノ基を一末端に含む少なくとも1種のポリアルキレングリコールでのカルボン酸基を含むポリマーのポリマー類似エステル化及び/又はアミド化によって本発明のコポリマーを製造することも可能である。模範的なポリマーは、例えば欧州特許第1138697号明細書に記載されている。
【0041】
実施形態によれば、本発明の水性組成物は、ポリマー主鎖に沿った方向にモノマー単位M1及び/又はモノマー単位M2のランダムではない分布を有する少なくとも1種のアニオン性ポリマーを含む。「ランダムではない分布」は、本ケースでは、モノマー単位M1及び/又はモノマー単位M2の非統計的分布を意味すると理解される。これは、イオン化可能なモノマー単位M1及び/又は側鎖所有モノマー単位M2が、例えば、交互若しくはブロックタイプ風に及び/又は勾配構造(グラジエント構造)でコポリマー中に配置されていることを意味する。
【0042】
コポリマーの構造は、例えば、核スピン共鳴分光法(NMR分光法)によって分析し、決定することができる。特に13C及びH NMR分光法によって、コポリマーにおける隣接基効果に基づいて及び統計的評価を用いてコポリマー中のモノマー単位の配列を決定することが、それ自体公知の方法で可能である。
【0043】
実施形態によれば、本発明のコポリマーは、イオン化可能なモノマー単位M1が少なくとも1つの第1のブロックA中に本質的に存在し、側鎖所有モノマー単位M2が少なくとも1つの第2のブロックB中に本質的に存在する、ブロックの形態でのコポリマー中のモノマーM1及びM2のランダムではない分布で特徴付けられる。
【0044】
より具体的には、第1のブロックA中に存在するモノマー単位M2のいかなる割合も、第1のブロックA中のモノマー単位M1の全てを基準として、25モル%未満、とりわけ10モル%以下であり、第2のブロックB中に存在するモノマー単位M1のいかなる割合も、第2のブロックB中のモノマー単位M2の全てを基準として、25モル%未満、とりわけ10モル%以下である。
【0045】
少なくとも1つの第1のブロックAは、5~70、とりわけ7~40、好ましくは10~25のモノマー単位M1を有利には含み、及び/又は少なくとも1つの第2のブロックBは、5~70、とりわけ7~50、好ましくは20~40のモノマー単位M2を含む。
【0046】
更なる実施形態によれば、本発明のコポリマーは、イオン化可能なモノマー単位M1対側鎖所有モノマー単位M2のモル比に関してポリマー主鎖に沿った方向に少なくとも1つのセクションAAにおいて勾配構造(グラジエント構造)の形態でのコポリマー中のモノマーM1及びM2のランダムはない分布で特徴付けられる。
【0047】
本ケースにおける用語「勾配構造(グラジエント構造)」又は「濃度勾配」は、コポリマー主鎖に沿った方向に少なくとも1つのセクションにおいてモノマー単位の局所濃度の連続的変化をとりわけ記載する。
【0048】
濃度勾配は、例えば、本質的に一定であり得る。これは、コポリマー主鎖の方向に少なくとも1つのセクションAAにおいてそれぞれのモノマー単位の局所濃度の線形減少又は増加に対応する。しかしながら、濃度勾配がコポリマー主鎖の方向に変化することも可能である。この場合に、それぞれのモノマー単位の局所濃度の非線形減少又は増加がある。濃度勾配は、コポリマーの少なくとも10、とりわけ少なくとも14、好ましくは少なくとも20又は少なくとも40のモノマー単位にわたってとりわけ広げる。対照的に、例えば、ブロックコポリマーの場合に起こるようなモノマーの濃度の切り立った又は鋭い変化は、濃度勾配と言われない。
【0049】
本文脈における表現「局所濃度」は、ポリマー主鎖中の所与のポイントでの特定モノマーの濃度を言う。実際には、局所濃度又は局所濃度の平均は、例えば、コポリマーの調製中のモノマー転化率を測定することによって確認することができる。この場合に、特定の期間内に転化したモノマーを確認することができる。平均局所濃度は、とりわけ、問題になっている期間内に転化した特定のモノマー対問題になっている期間内に転化したモノマーの総モル量のモル分率の比に対応する。
【0050】
モノマーの転化率は、それ自体公知の方法で、例えば、液体クロマトグラフィー、とりわけ高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の助けを借りて、及び使用されたモノマーの量を考慮して決定することができる。コポリマーの構造はまた、13C及びH NMR分光法によって上に示されたように決定することができる。
【0051】
模範的なブロック又はグラジエント(勾配)コポリマーは、例えば国際公開第2017/050902号パンフレット及び国際公開第2017/050907号パンフレットに記載されている。
【0052】
好ましい実施形態によれば、本発明の水性組成物は、2種のアニオン性ポリマー、とりわけ、ポリマー主鎖及びそれに結合した側鎖を有する2種のコポリマーであって、少なくとも1種のイオン化可能なモノマー単位M1及び少なくとも1種の側鎖所有モノマー単位M2を含むコポリマーを含む。2種のアニオン性ポリマー、とりわけ2種のコポリマーは、それらの化学組成及び/又はポリマー構造の点で異なる。
【0053】
とりわけ好ましい実施形態によれば、本発明の水性組成物は、第1の及び第2のアニオン性ポリマーを含み、各アニオン性ポリマーは、ポリマー主鎖及びそれに結合した側鎖を有するコポリマーであり、各コポリマーは、少なくとも1種のイオン化可能なモノマー単位M1及び少なくとも1種の側鎖所有モノマー単位M2を含み、ここで、第1のアニオン性ポリマーは、ポリマー主鎖に沿った方向にモノマー単位M1及び/又はモノマー単位M2のランダム分布を有し、且つここで、第2のアニオン性ポリマーは、ポリマー主鎖に沿った方向にモノマー単位M1及び/又はモノマー単位M2のランダムではない分布を有する。
【0054】
本発明の水性組成物は、少なくとも1種の水不溶性液体消泡剤を含む。この公文書における用語「水不溶性」は、20℃において100gの蒸留水に0.6g超添加されたときに完全には溶解しない物質の特性を言う。水不溶性液体消泡剤が、水性組成物に添加される前に非イオン性乳化剤と混合される場合が有利であり得る。100部のプレミックスを与える80~99.5部の不溶性消泡剤と0.5~20部の非イオン性乳化剤との重量比が好ましい。これは、水性組成物の安定性を更に改善し得る。
【0055】
実施形態によれば、水不溶性消泡剤は、鉱油、植物油、若しくはワックスを含み得るホワイトオイル及び/又は疎水性シリカ、アルコキシル化若しくはフッ素化によって変性することができる、シリコーン、リン酸若しくはホスホン酸のアルキルエステル、とりわけリン酸トリイソブチル若しくはリン酸トリブチル、アルコキシル化ポリオール、とりわけエトキシル化ジオール、脂肪酸ベースの消泡剤、とりわけ脂肪酸のモノ及びジグリセリド、並びにアルコキシル化脂肪アルコールからなる群から選択される。
【0056】
本発明の水性組成物は、任意選択的に、少なくとも1種の凝結遅延剤を含む。本発明との関連で凝結遅延剤は、いかなるそのような凝結遅延剤の添加もなしの対照と比べて、混合水の添加後に前記無機バインダー組成物の水和反応を遅らせる無機バインダー組成物用の添加剤である。セット凝結遅延剤は、標準EN 934-2:2012-08、表8により詳細に記載されている。
【0057】
実施形態によれば、少なくとも1種の凝結遅延剤は、糖酸、糖、糖アルコール、及びヒドロキシカルボン酸からなる群から選択される。
【0058】
本発明との関連で「糖酸」は、カルボキシル基を持った単糖である。それは、アルドン酸、ウロソン酸、ウロン酸又はアルダル酸のクラスのいずれかに属し得る。好ましくは、それはアルドン酸である。本発明との関連で有用な糖酸の例としては、グリセリン酸、キシロン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ノイラミン酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、イズロン酸、酒石酸、粘液酸、及びサッカリン酸が挙げられるが、それらに限定されない。糖酸は、遊離酸の形態で又は塩として存在し得る。実施形態によれば、糖酸の塩は、元素の周期表の族Ia、IIa、Ib、IIb、IVb、VIIIbの金属との塩であることができる。糖酸の好ましい塩は、アルカリ及びアルカリ土類金属、鉄、コバルト、銅、又は亜鉛の塩である。リチウム、ナトリウム、及びカリウムなどの一価金属との塩が、とりわけ好ましい。
【0059】
本発明との関連で「糖」は、アルデヒド基を有する炭水化物である。特に好ましい実施形態において、糖は、単糖類又は二糖類に属する。糖の例としては、グリセルアルデヒド、トレオ-ス、エリトロース、キシロース、リキソース、リボース、アラビノース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドーズ、ガラクトース、タロース、フルクトース、ソルボース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラクツロース、トレハロース、セロビオース、キトビオース、イソマルトース、パラチノース、マンノビオース、ラフィノース、及びキシロビオースが挙げられるが、それらに限定されない。
【0060】
本発明との関連で「糖アルコール」は、酸化還元反応によって糖から誘導可能な多価アルコールである。糖アルコールはしたがって、アルジトールのクラスに属する。糖アルコールの例としては、エチレングリコール、グリセロール、ジグリセロール、トレイトール、エリトリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ソルビトール、ソルビタン、イソソルビド、マンニトール、ズルシトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、ラクチトール、マルチトール、イソマルト、マルトトリイトール、マルトテトライトール、及びポリグリシトールが挙げられるが、それらに限定されない。
【0061】
本発明との関連で「ヒドロキシカルボン酸」は、同じ分子内にOH部分をさらに含むカルボン酸である。ヒドロキシカルボン酸の例としては、リンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸、タルトロン酸、マンデル酸、サリチル酸、酒石酸、及び乳酸が挙げられるが、それらに限定されない。ヒドロキシカルボン酸は、遊離酸の形態で又は塩として存在し得る。実施形態によれば、ヒドロキシカルボン酸の塩は、アンモニウムとの又は元素の周期表の族Ia、IIa、Ib、IIb、IVb、VIIIbの金属との塩であることができる。ヒドロキシカルボン酸の好ましい塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩である。
【0062】
好ましい凝結遅延剤は、クエン酸、酒石酸、乳酸、及びグルコン酸並びにそれらの塩である。とりわけ好ましい凝結遅延剤は、グルコン酸ナトリウムである。
【0063】
本発明の水性組成物は、更なる構成成分をさらに含み得る。更なる構成成分は、界面活性剤、硬化促進剤、収縮低減剤、着色剤、レオロジー調整剤、ポンピング助剤、殺生物剤、及び腐食防止剤から選択され得る。有利には、水性組成物は、細菌及び/又は真菌増殖を避けるのに十分な量で殺生物剤をさらに含む。
【0064】
いくつかの実施形態によれば、本発明の水性組成物は、水性組成物の100重量%を基準として、5~15重量%、好ましくは8~12重量%のカチオン性線状ポリアミンをさらに含む。そのようなカチオン性線状ポリアミンは、商品名FloquatTMで会社SNFから入手可能である。
【0065】
実施形態によれば、水性組成物は、水性組成物の100重量%を基準として、
(a)12~55、好ましくは15~50重量%、とりわけ20~45重量%のポリマー主鎖及びそれに結合した側鎖を有するコポリマーである少なくとも1種のアニオン性ポリマーであって、コポリマーが、少なくとも1種のイオン化可能なモノマー単位M1及び少なくとも1種の側鎖所有モノマー単位M2を含むアニオン性ポリマーと、
(b)15~35重量%、好ましくは20~30重量%の鉱油、植物油、若しくはワックスを含み得るホワイトオイル、及び/又は疎水性シリカ、アルコキシル化若しくはフッ素化によって変性することができる、シリコーン、リン酸若しくはホスホン酸のアルキルエステル、とりわけリン酸トリイソブチル若しくはリン酸トリブチル、アルコキシル化ポリオール、とりわけエトキシル化ジオール、脂肪酸ベースの消泡剤、とりわけ脂肪酸のモノ及びジグリセリド、並びにアルコキシル化脂肪アルコールからなる群から選択される少なくとも1種の水不溶性消泡剤と、
(c)任意選択的に1~10重量%、好ましくは2~5重量%の糖酸、糖、糖アルコール、及びヒドロキシカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種の凝結遅延剤と
を含む。
【0066】
上記の実施形態において、水は、合計100重量%までの量で存在し得る。
【0067】
実施形態によれば、水性組成物は、水性組成物の100重量%を基準として、
(a)12~55、好ましくは15~50重量%、とりわけ20~45重量%のポリマー主鎖及びそれに結合した側鎖を有するコポリマーである少なくとも1種のアニオン性ポリマーであって、コポリマーが、少なくとも1種のイオン化可能なモノマー単位M1及び少なくとも1種の側鎖所有モノマー単位M2を含むアニオン性ポリマーと、
(b)15~35重量%、好ましくは20~30重量%の鉱油、植物油、若しくはワックスを含み得るホワイトオイル、及び/又は疎水性シリカ、アルコキシル化若しくはフッ素化によって変性することができる、シリコーン、リン酸若しくはホスホン酸のアルキルエステル、とりわけリン酸トリイソブチル若しくはリン酸トリブチル、アルコキシル化ポリオール、とりわけエトキシル化ジオール、脂肪酸ベースの消泡剤、とりわけ脂肪酸のモノ及びジグリセリド、並びにアルコキシル化脂肪アルコールからなる群から選択される1種の水不溶性液体消泡剤と、
(c)1~10重量%、好ましくは2~5重量%の糖酸、糖、糖アルコール、及びヒドロキシカルボン酸からなる群から選択される1種の凝結遅延剤と、
(d)任意に、5~15重量%、好ましくは8~12重量%のカチオン性線状ポリマーと
からなる。
【0068】
上記の実施形態において、水は、合計100重量%までの量で存在し得る。
【0069】
実施形態によれば、水性組成物は、水性組成物の100重量%を基準として、
(a)12~55、好ましくは15~50重量%、とりわけ20~45重量%の2種のアニオン性ポリマー(2種のアニオン性ポリマーは、化学的に及び/又は構造上異なる)であって、2種のアニオン性ポリマーの少なくとも1種、好ましくは両方が、ポリマー主鎖及びそれに結合した側鎖を有するコポリマーであり、コポリマーが、少なくとも1種のイオン化可能なモノマー単位M1及び少なくとも1種の側鎖所有モノマー単位M2を含むアニオン性ポリマーと、
(b)15~35重量%、好ましくは20~30重量%の鉱油、植物油、若しくはワックスであり得るホワイトオイル、及び/又は疎水性シリカ、アルコキシル化若しくはフッ素化によって変性することができる、シリコーン、リン酸若しくはホスホン酸のアルキルエステル、とりわけリン酸トリイソブチル若しくはリン酸トリブチル、アルコキシル化ポリオール、とりわけエトキシル化ジオール、脂肪酸ベースの消泡剤、とりわけ脂肪酸のモノ及びジグリセリド、並びにアルコキシル化脂肪アルコールからなる群から選択される少なくとも1種の水不溶性液体消泡剤と、
(c)任意に、1~10重量%、好ましくは2~5重量%の糖酸、糖、糖アルコール、及びヒドロキシカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種の凝結遅延剤と
を含む水中油エマルジョンである。
【0070】
上記の実施形態において、水は、合計100重量%までの量で存在し得る。
【0071】
実施形態によれば、水性組成物は、水性組成物の100重量%を基準として、
(a)12~55、好ましくは15~50重量%、とりわけ20~45重量%の第1の及び第2のアニオン性ポリマー(各アニオン性ポリマーは、ポリマー主鎖及びそれに結合した側鎖を有するコポリマーであり、各コポリマーは、少なくとも1種のイオン化可能なモノマー単位M1及び少なくとも1種の側鎖所有モノマー単位M2を含む)であって、第1のアニオン性ポリマーが、ポリマー主鎖に沿った方向にモノマー単位M1及び/又はモノマー単位M2のランダム分布を有し、
並びに第2のアニオン性ポリマーが、ポリマー主鎖に沿った方向にモノマー単位M1及び/又はモノマー単位M2のランダムではない分布を有する第1の及び第2のアニオン性ポリマーと、
(b)15~35重量%、好ましくは20~30重量%の鉱油、植物油、若しくはワックスを含み得るホワイトオイル、及び/又は疎水性シリカ、アルコキシル化若しくはフッ素化によって変性することができる、シリコーン、リン酸若しくはホスホン酸のアルキルエステル、とりわけリン酸トリイソブチル若しくはリン酸トリブチル、アルコキシル化ポリオール、とりわけエトキシル化ジオール、脂肪酸ベースの消泡剤、とりわけ脂肪酸のモノ及びジグリセリド、並びにアルコキシル化脂肪アルコールからなる群から選択される1種の水不溶性液体消泡剤と、
(c)1~10重量%、好ましくは2~5重量%のグルコン酸ナトリウムである1種の凝結遅延剤と、
(d)任意に、5~15重量%、好ましくは8~12重量%のカチオン性線状ポリアミンと
からなる。
【0072】
上記の実施形態において、水は、合計100重量%までの量で存在し得る。
【0073】
本発明の水性組成物は、均質な組成物、好ましくは均質なエマルジョンが得られるまで全ての成分を単に混合することによって調製することができる。しかしながら、本発明の水性組成物は以下の工程
(a)少なくとも1種の凝結遅延剤、とりわけグルコン酸ナトリウムを水と混合すること、
(b)少なくとも1種のアニオン性ポリマーを、工程(a)において得られた混合物に混ぜること、
(c)少なくとも1種の水不溶性消泡剤を、工程(b)において得られた混合物に混ぜること
によって調製されることが好ましい。
【0074】
好ましくは、工程(b)及び(c)は、高速ミキサー又はギャップホモジナイザーを使って行われる。
【0075】
任意に、少なくとも1種のアニオン性ポリマーは、水中の溶液の形態で工程(b)において混ぜることができる。
【0076】
上記のような工程(a)~(c)に従うことによって、特に安定した水性組成物、とりわけエマルジョンが得られる。
【0077】
上で好ましいとして記載された全ての実施形態は、水性組成物、好ましくはエマルジョンの調製にも関連することが理解されるべきである。
【0078】
本発明の水性組成物、好ましくは、エマルジョンは、+5℃~+60℃の温度で好ましくは調製され、取り扱われ、貯蔵される。この温度の範囲外では、含有される水の凍結又は蒸発のリスクがある。
【0079】
本発明の水性組成物、とりわけエマルジョンは、長期間にわたって特に安定している。これに関連して長期間は、数週間及び数ヶ月、例えば3ヶ月まで、好ましくは6ヶ月まで、より好ましくは12ヶ月までに関する。安定したとは、本発明の水性組成物が相分離の目に見える兆候を示ないことを意味する。目に見える兆候は、例えば、小滴の形成、クリーミング又は相の沈降であることができる。本発明の少なくとも1種のアニオン性ポリマーが、少なくとも1種の水不溶性液体消泡剤の、水性組成物、とりわけ水性エマルジョンを安定させることが意外にも分かった。したがって、本発明の少なくとも1種のアニオン性ポリマーは、少なくとも1種の水不溶性液体消泡剤の、水性組成物、とりわけ水性エマルジョンを安定させるために使用することができる。沈降する場合に、オストヴァルト熟成、又は相分離が起こり、本発明の水性組成物、とりわけエマルジョンは、リサイクルし、その後単に撹拌する又は激しく振盪することによって使用することができる。
【0080】
第2の態様において、本発明は、無機バインダー組成物、特にセメントを含むバインダー組成物の調製での上記のような水性組成物の使用に関する。
【0081】
本文脈内で無機バインダー組成物は、少なくとも1種の無機バインダーを含む組成物である。好ましくは、無機バインダー組成物は、少なくとも1種の骨材をさらに含む。
【0082】
とりわけ好ましい実施形態によれば、無機バインダーは、セメント、石膏、石灰、潜在的な水硬性バインダー、ポゾラン、及びジオポリマーからなる群から選択される。セメントは、特に、標準EN 197-1に記載されているようなポルトランドセメント、標準EN 14647に記載されているようなアルミン酸カルシウムセメント、及び/又はスルホアルミン酸カルシウムセメントである。用語「石膏」は、様々な形態のCaSO、特に無水CaSO、CaSOα及びβ半水和物、並びにCaSO二水和物を包含することを意味する。用語「石灰」は、天然水硬性石灰、配合石灰(formulated lime)、水硬性石灰、及び標準EN 459-1:2015に記載されているようなエアライムを包含することを意味する。ポゾラン及び潜在的な水硬性材料は、好ましくは、スラグ、粘土、か焼粘土、とりわけメタカオリン、キルンダスト、マイクロシリカ、フライアッシュ、ゼオライト、もみ殻灰、焼いたオイルシェール、並びに軽石及びトラスなどの天然ポゾランからなる群から選択される。ジオポリマーは、アルモ-シリカポリマーである。ジオポリマーの一つの特定の例は、水ガラスで活性化される炉スラグである。
【0083】
無機バインダー組成物が2種以上の無機バインダーを含むことがとりわけ好ましいものであることができる。例えば、本発明の無機バインダー組成物は、ポルトランドセメントと、アルミン酸カルシウムセメント及び/又はスルホアルミン酸カルシウムセメントとの混合物を含み得る。別の例は、ポルトランドセメントと、石膏との、並びにアルミン酸カルシウムセメント及び/又はスルホアルミン酸カルシウムセメントとの混合物である。別の例は、ポルトランドセメントと、スラグと、スルホアルミン酸カルシウムセメントとの混合物である。
【0084】
本発明の無機バインダー組成物は、好ましくは、骨材をさらに含む。骨材は、無機バインダーの硬化反応において、とりわけ水和反応において反応しない任意の材料であることができる。骨材は、建設資材のために典型的に使用される任意の骨材であることができる。典型的な骨材は、例えば、岩石、砕石、砂利、砂、とりわけケイ砂、川砂及び/又は砕砂、スラグ、リサイクルコンクリート、ガラス、拡張ガラス、中空ガラスビーズ、ガラスセラミックス、火山岩、軽石、パーライト、バーミキュライト、採石場廃棄物、生の、焼成された又は溶融された土又は粘土、磁器、電気溶融された又は焼結された研磨剤、焼成補助物、シリカキセロゲルである。骨材はまた、微細骨材又は粉砕石灰岩、粉砕ドロマイト、及び/若しくは粉砕酸化アルミニウムなどのフィラーであり得る。本発明に有用な骨材は、そのような骨材について典型的に遭遇する任意の形状及びサイズを有することができる。とりわけ好ましい骨材は砂である。砂は、微粉化された岩石又は鉱物粒子からなる天然に存在する粒状材料である。それは、様々な形態及びサイズで入手可能である。好適な砂の例は、ケイ砂、石灰岩砂、川砂又は破砕骨材である。好適な砂は、例えば、標準ASTM C778又はEN 196-1に記載されている。
【0085】
任意選択的に、本発明の無機バインダー組成物は、建設業界において一般的な更なる添加剤をさらに含む。更なる添加剤は、例えば、界面活性剤、減水剤、再分散性ポリマー粉末、繊維、硬化促進剤、凝結遅延剤、収縮低減剤、着色剤、レオロジー調整剤、ポンピング助剤、殺生物剤、及び腐食防止剤である。好ましくは、更なる添加剤は、本発明の水性組成物の構成成分のいずれも含まない。
【0086】
無機バインダー組成物はまた、水を含み得る。
【0087】
無機バインダー組成物は、したがって、乾燥組成物、例えば乾燥モルタル又は乾燥コンクリートであり得る。これに関連して用語「乾燥」は、5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、とりわけ1重量%以下の含水量を言う。
【0088】
無機バインダー組成物はまた、湿潤状態にあり得る。典型的には、湿潤無機バインダー組成物は、水中のスラリーの形態にある。湿潤無機バインダー組成物は、好ましくは、0.1~0.8、好ましくは0.25~0.6、とりわけ0.3~0.5の水:無機バインダーの質量比を有する。
【0089】
第3の態様において、本発明は、無機バインダー組成物であって、
(a)少なくとも1種の無機バインダー、好ましくは少なくとも1種のセメントと、
(b)少なくとも1種の骨材、好ましくは砂と、
(c)任意に、少なくとも1種の更なる添加剤と、
(d)任意に、水と、
(e)無機バインダー組成物の総乾燥重量を基準として、0.5~10重量%、好ましくは1~5重量%の量で上記のような水性組成物と
を含む組成物に関する。
【0090】
上記のような全ての実施形態はまた、本発明の無機バインダー組成物について当てはまることが理解されるべきである。
【0091】
無機バインダー組成物が、硬化促進剤をさらに含むことは、特に好ましいことであることができる。特に好適な硬化促進剤は、硫酸アルミニウムをベースとする水性組成物である。そのような組成物は、例えば、欧州特許第1878713号明細書に記載されている。
【0092】
実施形態によれば、無機バインダー組成物は、(それぞれ、無機バインダー組成物の総重量を基準として)
(a)10~66重量%、好ましくは15~50重量%、とりわけ20~45重量%の量でポルトランドセメント、アルミン酸カルシウムセメント、スルホアルミン酸カルシウムセメント、石膏、石灰又はそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機バインダーと、
(b)30~80重量%、好ましくは40~70重量%の量で、骨材、好ましくは砂と、
(c)1~25重量%、好ましくは2~15重量%の量で、微細フィラー、好ましくは炭酸カルシウムと、
(d)任意に、1~25重量%、好ましくは2~10重量%の量でポゾラン材料及び/又は潜在的な水硬性材料と、
(e)無機バインダー組成物の総乾燥重量を基準として、0.5~10重量%、好ましくは1~5重量%の量で上記のような水性組成物と
を含む又はそれらからなる。
【0093】
第4の態様において、本発明は、上記のような無機バインダー組成物の調製方法であって、
(1)無機バインダー、好ましくは少なくとも1種のセメントと、少なくとも1種の骨材、好ましくは砂と、任意に少なくとも1種の更なる添加剤とを含む乾燥ミックスを提供すること、
(2)任意に、上記乾燥ミックスを水と混合すること、
(3)乾燥ミックス又は乾燥ミックスと水との混合物を上記の水性組成物と混合すること
を含むことを特徴とする、方法に関する。
【0094】
混合するための好適なデバイスは、特に限定されず、当業者に公知である。混合は半連続的に又は連続的に行われることが好ましい。とりわけ好ましくは、工程(3)における混合は、連続混合デバイスで、とりわけダイナミックミキサーで行われる。
【0095】
特に好ましい実施形態によれば、上記のような方法は、積層造形の、好ましくは3D物体の印刷のプロセスの一環である。無機バインダー組成物の3D印刷のためのシステム及び方法は、例えば、国際公開第2019/030328号パンフレット記載されている。本明細書に記載される実施形態はまた、本発明の脈絡の中で好適である。
【0096】
積層造形の、好ましくは3D印刷のプロセスにおいて、上記のような無機バインダー組成物は、連続ミキサーに、好ましくはポンプ及び搬送ライン、特にホースを用いて供給される。好ましくは、無機バインダー組成物は、湿潤組成物である。これは、好ましくは、上記のような方法の工程(2)が存在することを意味する。そのような湿潤組成物は、より容易に搬送することができる。良好な搬送性は、一様な適用の前提条件であるから、積層造形にとって、とりわけ3D印刷にとって重要である。搬送中に、とりわけホースにおける、高圧は、負荷をかけられた場合に破裂する、材料に大きなストレスを加えるので、不利である。搬送性が良好な組成物は、圧力の過度の増成を防ぐことができる。
【0097】
実施形態によれば、本発明の水性組成物は、乾燥ミックスに又は乾燥ミックスと水との混合物に、連続混合デバイスの直前に又はデバイスにおいて添加される。好ましくは、水性組成物は、連続混合デバイス中へ直接添加される。
【0098】
連続ミキサーは、好ましくは、移動可能な印刷ヘッドに取り付けられる。
【0099】
印刷ヘッドは、好ましくは、無機バインダー組成物の層ごとの適用のための配送ノズルを含む。連続ミキサーは、この配送ノズルに好ましくは直接結合して移動可能な印刷ヘッドに取り付けられる。
【0100】
連続ミキサーの寸法及び重量は、好ましくは、印刷ヘッドのサイズに合わせられる。したがって、比較的小さい形状の部品のための印刷設備におけるミキサーがまた、家部品又は壁などの大きい形状の部品のための印刷設備におけるミキサーよりも小さい場合が有利である。
【0101】
連続ミキサーを使って、本発明の水性組成物は、乾燥ミックス中へ又は乾燥ミックスと水との混合物中へ非常に迅速に、効率的に、及び一様に混合される。これは、無機バインダー組成物が層ごとの適用時に一様であり、且つむらなく、迅速に硬化するように重要である。
【0102】
混合領域での乾燥ミックス又は乾燥ミックスと水との混合物と水性組成物との混合は、好ましくは500~3000回転毎分の、より好ましくは650~2500回転毎分の、より好ましくは更に800~2000回転毎分の、最も好ましくは1000~1500回転毎分の撹拌シャフト速度で好ましくは行われる。
【0103】
高速での混合は、乾燥ミックス又は乾燥ミックスと水との混合物と水性組成物との迅速な及び効率的な混合を生み出す。
【0104】
ミキサーにおける無機バインダー組成物の滞留時間は、好ましくは10s未満、より好ましくは7s未満、非常に好ましくは4s未満である。混合デバイスにおける無機バインダー組成物の滞留時間は、粒子が、入口から出口まで、混合デバイス中に存在する平均時間である。
【0105】
本発明の無機バインダー組成物は、好ましくは、移動可能な印刷ヘッドによって適用される。印刷ヘッドは、少なくとも1つの配送開口部を特に有し、それは、それを通して硬化性材料を配送することができる、連続ミキサーの出口と同一であり得る。
【0106】
適用された層の高いサグレジスタンスは、印刷ヘッドの配送開口部に型枠パネルを運んでいくことを不必要にする。しかしながら、特定の用途の場合には、配送開口部に型枠パネルを直接運んでいくことが有利であり得る。
【0107】
配送開口部に、好ましくは、配送される材料を造形する配送ノズルがある。形状は、配送される材料の最大粒径に適合すべきであるが、それに制限はない。
【0108】
配送ノズルは、好ましくは、長方形、正方形又は円形を有する。配送ノズルに取り付けられた更なる造形要素があってもよい。
【0109】
印刷ヘッドは、1つ、2つ又は3つの空間方向に移動することができる。3つの空間方向に移動することができる印刷ヘッドが特に好ましい。これは、実質的にあらゆる所望の形状の造形体が特に簡単なやり方で製造されることを可能にする。
【0110】
印刷ヘッドの移動は、特に、1つ、2つ又は3つの空間方向に移動させることができる従来のロボットアームに印刷ヘッドを取り付けることによって実現され得る。
【0111】
印刷ヘッドは、好ましくは、3軸ポータルロボットシステムに置かれる。これは、柔軟な造形での大きい造形体の迅速な印刷をさえ可能にする。
【0112】
別の可能性は、ビルディング空間領域の対応する移動を使って1つ、2つ又は3つの空間方向での移動を実現することである。これに関連してビルディング空間領域は、その上に造形体が構築されつつある領域-例えば、表面-である。
【0113】
最後の態様において、本発明はまた、上に特許請求されたような無機バインダー組成物を硬化させることによって得られる造形体に関する。とりわけ、造形品は、積層造形の、とりわけ3D印刷のプロセスで製造される。
【0114】
造形体は、層ごとの適用によって意外にも速く製造することができる。個別の層によって形成される平面と実質的に垂直な方向に、より特に垂直の方向に典型的には測定される、個別の層の高さは、好ましくは1mm~200mm、より好ましくは5mm~100mm、より特に10mm~50mmである。
【0115】
造形体の全高さ、又は一緒に取られる造形体の個別の層全ての厚さは、好ましくは0.01m~100m又はそれ以上、より好ましくは0.1m~80m、より好ましくは更に0.3m~30m、より特に0.5m~10mである。
【0116】
それが依然として機能している間、造形体の表面は、好適なツールを用いて、滑らかにされ、修正され又は特別に変形され得る。これは、機械的二次加工の一環として、又は手作業で別個のステップとして行われ得る。表面はまた、例えば、ペイントをなど、機能的な又は装飾的なコーティングを提供され得る。
【0117】
それが依然として機能している間、造形体また、好適なツールを用いてカットされ得る。したがって、穴が、とりわけ窓開口部、戸口、導管通路、或いは、とりわけその後の作業ステップのための切断が造形体に作られることが可能である。
【0118】
造形体は、ほとんどあらゆる所望の形態を有し得る。造形体は、例えば、大建造物、大建造物用の組立部品、建築要素、組構造、橋梁、円柱;例えば、築山、砂州若しくは彫像などの装飾要素;池、井戸、又は樋である。この場合に造形体は、基部あり又はなしの、中実形又は中空形を表し得る。
【0119】
造形体は、現場で直接に製造され得、適用後にもはや移動させられ得ない。或いはまた、造形体は、別の敷地で、とりわけ工場において製造され得る。これは、好ましくは、造形体が接着しない基部上で行われる。それが硬化した後で、造形体は、所望の敷地に輸送することができる。
【実施例
【0120】
実施例1
水性組成物を、表1に示されるような用量で調製した。組成物の調製は、下の水性組成物A1に関して説明される通りであった。調製された組成物は、透明なプラスチックのしっかり閉じた容器中20℃で保管した。組成物の外観を7日後にチェックした。
【0121】
【表1】
【0122】
本発明による水性組成物がより良好な安定性を有することを上記の表1から理解することができる。
【0123】
実施例2
無機バインダー組成物C1
30質量部の普通ポルトランドセメント(CEM I 52.5N)、50.5質量部の砂(0.1~0.3mm)、8質量部の微細炭酸カルシウムフィラー(平均粒径D50:0.8μm)、5質量部の粗い炭酸カルシウムフィラー(平均粒径D50:400μm)、6質量部のか焼粘土、及び0.5質量部の半水硫酸カルシウムを視覚的に均質になるまで混合することによって無機バインダー組成物(C1)を調製した。
【0124】
水性組成物A1
本発明に従っている、水性組成物A1を、3質量部のグルコン酸ナトリウムを16質量部の水に溶解させることによって調製した。この溶液に、40質量部のアニオン性ポリマー(Mn=7,000g/molのポリメタクリレート主鎖、Mn=2,500g/molのメチル末端ポリエチレングリコール側鎖、カルボキシレート/側鎖比=3)の50%水溶液と、10質量部の高い電荷密度のカチオン性線状ポリアミンの50%水溶液とを添加し、高速ミキサーを使って混ぜた。次に、25質量部の水不溶性消泡剤(シリコーンオイルと鉱油との混合物)を、高速ミキサーを使って混ぜ合わせた。
【0125】
水性組成物A2
本発明に従っている、水性組成物A2を、グルコン酸ナトリウムが存在しなかったことを除いては、A1と同じように調製した。
【0126】
水性組成物A3
本発明に従っていない、水性組成物A3を、水不溶性消泡剤を混ぜ合わせなかったことを除いては、A1と同じように調製した。
【0127】
組成物の試験
以下の表2は、C1とそれぞれ組成物A1~A3との混合スキームを示す。混合は、それぞれの組成物をHobartミキサーへ下の表2に示される量で導入すること、下の表2に示される量の混合水の添加、及び視覚的に均質になるまで20℃において高速で混合することによって行った。視覚的な均質性までに要した混合時間を記録し、下の表2に報告する。混合された材料を試験のために直接に使用した。
【0128】
粘度は、下の表2に示されるせん断速度において20℃でAnton-Paar回転レオメーターで測定した。
【0129】
オープンタイムは、強度が0.1MPaを超えた時間としてConstruction and Building Materials,Vol 242,2020においてD Lootens et al,“Continuous strength measurements of cement pastes and concretes by the ultrasonic wave reflection method”に記載された方法を用いて測定した。
【0130】
線収縮は、混合後の16時間以内に40×40×160mmのプリズムに関してEN 12617-4に従って測定した。
【0131】
曲げ及び圧縮強度は、標準DIN EN 1015-11に従って測定した。
【0132】
【表2】
【国際調査報告】