(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】炭素質材料を含む液体精製膜及びそれらの形成方法
(51)【国際特許分類】
B01D 69/02 20060101AFI20240403BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20240403BHJP
B01D 71/64 20060101ALI20240403BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20240403BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20240403BHJP
B01D 71/40 20060101ALI20240403BHJP
B01D 71/48 20060101ALI20240403BHJP
B01D 71/10 20060101ALI20240403BHJP
B01D 71/12 20060101ALI20240403BHJP
B01D 71/50 20060101ALI20240403BHJP
B01D 71/52 20060101ALI20240403BHJP
B01D 71/28 20060101ALI20240403BHJP
B01D 71/32 20060101ALI20240403BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20240403BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B01D69/02
B01D71/56
B01D71/64
B01D71/26
B01D71/68
B01D71/40
B01D71/48
B01D71/10
B01D71/12
B01D71/50
B01D71/52
B01D71/28
B01D71/32
B01D71/02
B01D69/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560415
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 US2022022397
(87)【国際公開番号】W WO2022212412
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ミル, アービド アリ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイバー, ジャド アリ
(72)【発明者】
【氏名】パテル, ライニカント ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ブードロー, アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】カリヤニ, ビナイ
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA02
4D006HA71
4D006MA01
4D006MA03
4D006MA06
4D006MA21
4D006MA31
4D006MB06
4D006MB20
4D006MC05X
4D006MC11
4D006MC16
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4D006MC24
4D006MC25
4D006MC28
4D006MC30
4D006MC37
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4D006MC49
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4D006MC58
4D006MC62X
4D006MC63
4D006NA05
4D006NA22
4D006NA54
4D006PA01
4D006PB12
4D006PB13
4D006PB27
4D006PB70
4D006PC01
4D006PC41
(57)【要約】
少なくとも1つの炭素質材料が中に混合しているポリマーを含む多孔質ポリマーフィルタ膜が提供される。膜は、金属イオン、酸、塩基、及び有機夾雑物を含む液体組成物から微量の様々な不純物を除去することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0より大きく約80%(重量基準)未満の炭素質材料を中に混合しているポリマーを含む多孔質ポリマー膜であって、
(a)約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定した場合に約2psi~約200psiのバブルポイント、
(b)14.2psiで測定した場合に約20秒/500ml~約10,000秒/500mlのイソプロパノールフロー時間、及び
(c)約25%~約100%のG25粒子保持率、を示す多孔質ポリマー膜。
【請求項2】
炭素質材料が、活性炭、カーボンブラック、カーボンナノチューブ及びグラフェンからなる群から選択される、請求項1に記載の多孔質ポリマー膜。
【請求項3】
炭素質材料が、粉末、微粒子材料、繊維、又はシートの形態である、請求項1から2のいずれか一項に記載の多孔質ポリマー膜。
【請求項4】
G25粒子保持率が、5%単層で約65%~約80%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の多孔質ポリマー膜。
【請求項5】
膜が、約10psi~約40psiのバブルポイントを示す、請求項1から4のいずれか一項に記載の多孔質ポリマー膜。
【請求項6】
膜が、14.2psiで測定した場合に約845秒/500ml~約1665秒/500mlのイソプロパノールフロー時間を示す、請求項1から5のいずれか一項に記載の多孔質ポリマー膜。
【請求項7】
ポリマーが、約65μg/g未満の抽出可能な有機化合物及び/又は金属イオンを含有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の多孔質ポリマー膜。
【請求項8】
ポリマーが、ポリスルホン又はポリ(テトラフルオロエタン)以外である、請求項1から7のいずれか一項に記載の多孔質ポリマー膜。
【請求項9】
ポリマーが、約10~約80%(重量基準)の炭素質材料を中に混合している、請求項1から8のいずれか一項に記載の多孔質ポリマー膜。
【請求項10】
膜が、約35~約400μmの厚さを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の多孔質ポリマー膜。
【請求項11】
ポリマーが、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリエステル、セルロース、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリ(スチレン)、ハロゲン化ポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の多孔質ポリマー膜。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の多孔質ポリマー膜を含むフィルタ。
【請求項13】
第1の多孔質ポリマー膜と第2の多孔質ポリマー膜とを含む複合膜であって、
第1の多孔質ポリマー膜の外表面が、第2の多孔質ポリマー膜の外表面と接しており、
第1の多孔質ポリマー膜が、0より大きく約80%(重量基準)未満の第1の炭素質材料が中に混合している第1のポリマーを含み、
第2の多孔質ポリマー膜が、第1の多孔質ポリマー膜とは異なる、複合膜。
【請求項14】
第1の多孔質ポリマー膜の外表面が出力対向面であり、第2の多孔質ポリマー膜の外表面が入力対向面である、請求項13に記載の複合膜。
【請求項15】
複合膜が、第1の多孔質ポリマー膜と第2の多孔質ポリマー膜との共キャスト膜である、請求項13又は14に記載の複合膜。
【請求項16】
請求項13から15のいずれか一項に記載の複合膜を含むフィルタ。
【請求項17】
炭素質材料が中に混合しているポリマーを含む多孔質ポリマー膜を調製する方法であって、
a.炭素質材料とポリマーの流動可能な形態とを組み合わせることであって、ポリマーが、(i)流動可能な形態を提供するために有効量の少なくとも1つの溶媒及び/又は分散剤と混合されている;及び/又は(ii)流動可能な形態を提供するのに十分な温度に加熱されている、炭素質材料とポリマーの流動可能な形態とを組み合わせること;
b.炭素質材料をポリマー中に分散させることにより、炭素質材料が中に混合しているポリマー組成物を提供すること;及び
c.存在する場合に溶媒又は分散剤を除去すること、及び/又はポリマー組成物を冷却して多孔質ポリマー膜を形成すること、を含む方法。
【請求項18】
ポリマーが、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリエステル、セルロース、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリ(スチレン)、ハロゲン化ポリマー、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ポリマーが、0より大きく約80%(重量基準)未満の炭素質材料が中に混合している、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
液体組成物から不純物を除去する方法であって、
薬液及び1又は複数の不純物を含む液体組成物を請求項1から11のいずれか一項に記載の多孔質ポリマー膜又は請求項13から15のいずれか一項に記載の複合膜と接触させることと、
薬液及び低減された量の1又は複数の不純物を含む精製された液体組成物を形成することとを含む、方法。
【請求項21】
薬液がケトン又はアルコールである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
薬液が、メチルアミルケトン、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)とPGMEAとの混合溶液(例えば7:3)、メタノール、酢酸エチル、乳酸エチル、酢酸n-ブチル(nBA)、イソプロピルアルコール(IPA)、酢酸2-エトキシエチル(2EEA)、キシレン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸イソアミル、ウンデカン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される有機材料である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
薬液が、アンモニア水、ヒドロキシルアミン、モノエタノールアミン(MEA)、トリエタノールアミン(TEA)、モルホリン、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)、N-モノメチルエタノールアミン(MMEA)、N-エチルアミノエトキシエタノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール)、テトラエチルアンモニウム水酸化物(TEAH)、テトラブチルアンモニウム水酸化物(TBAH)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアミン溶媒である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
薬液が、脱イオン水、過酸化水素、塩酸、硫酸、又はそれらの組み合わせである、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
1又は複数の不純物が、金属イオン、酸、塩基、過酸化物、又は有機夾雑物である、請求項20から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
精製された液体組成物が、99.99重量パーセント以上の薬液及び合計で約2000ppb以下の1又は複数の不純物を含む、請求項20から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
1又は複数の不純物が、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルアミン、ヘプチルアミン、及び3,3,5,5-テトラメチルベンジリデンから選択される有機アミン不純物を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
1又は複数の不純物が金属イオンを含み、精製された液体組成物が合計で約12ppb以下の金属イオンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
金属イオンが、マグネシウム、アルミニウム、チタン、バナジウム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、銀、カドミウム、スズ、鉛及びそれらの組み合わせからなる群のカチオンから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項20から29のいずれか一項に記載の方法に従って精製された、精製された液体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、膜技術を使用する液体精製の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタ製品は、有用な流体の流れから不要な材料を除去するために使用される、現代産業の不可欠なツールである。フィルタを使用して処理される有用な流体には、水、液体の工業用溶媒及び処理流体、(例えば、半導体製作における)製造又は処理に使用される工業用ガス、並びに医療又は医薬用途を有する液体が含まれる。流体から除去される望ましくない物質には、粒子、微生物、及び溶解化学種などの不純物及び夾雑物が含まれる。フィルタ用途の具体例としては、半導体及びマイクロ電子デバイス製造のための液体材料との使用が挙げられる。
【0003】
マイクロ電子デバイス処理の分野は、マイクロ電子デバイスの性能(例えば、速度及び信頼性)の並行した着実な改善を持続させるために、処理材料及び方法の着実な改善を必要とする。液体材料を濾過するための方法及びシステムを含む、製造プロセスのすべての態様において、マイクロ電子デバイス製作を改善する機会が存在する。
【0004】
マイクロ電子デバイス処理におけるプロセス溶媒、洗浄剤、及び他の処理溶液として、広範囲の異なる種類の液体材料が使用される。これらの材料の多くは、ほとんどではないにしても、非常に高いレベルの純度を必要とする。一例として、マイクロ電子デバイスのフォトリソグラフィー処理に使用される液体材料(例えば、溶媒)は、非常に高純度でなければならない。マイクロ電子デバイス処理に使用される液体の具体例としては、スピンオングラス(SOG)技術、裏面反射防止コーティング(BARC)法、及びフォトリソグラフィーのためのプロセス溶液が挙げられる。
【発明の概要】
【0005】
要約すると、本開示は、アルコール及び水酸化アンモニウム(すなわち、アンモニア水)などの液体組成物から不純物を除去することができる膜に関する。膜は、活性炭などの炭素質材料をポリマー内に分散させ、そこからフィルタ膜を調製することによって調製される。本開示のフィルタ膜は、そのような溶液から微量の特定のアミン及び金属カチオンを除去することができる。1つの具体的な実施形態では、本開示は、ポリマーを含む膜を提供し、ポリマーは、0より大きく約80%(重量基準)未満の炭素質材料が中に混合している。膜は、C1-C4アルカノール及び極めて高純度の水酸化アンモニウムなどのアルコールの液体溶液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】粒子保持率(%)対粒子負荷量(単層%)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「又は」という用語は、一般に、内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、「及び/又は」を含む意味で使用される。
【0008】
用語「約」は、一般に、列挙された値と等価であると考えられる(例えば、同じ機能又は結果を有する)数字の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められた数字を含んでもよい。
【0009】
端点を使用して表される数値範囲は、その範囲内に包含されるすべての数字を含む(例えば、1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を含む)。
【0010】
濾過機能を実行するために、フィルタは、フィルタ膜を通過する流体から不要な材料を除去する役割を果たすフィルタ膜を含むことができる。フィルタ膜は、必要に応じて、平らなシートの形態であってもよく、巻かれていてもよく(例えば、螺旋状)、平らであってもよく、プリーツ付きであってもよく、又は円盤状であってもよい。あるいは、フィルタ膜は中空繊維の形態であってもよい。フィルタ膜は、濾過されている流体がフィルタ入口を通って入り、フィルタ出口を通過する前にフィルタ膜を通過する必要があるように、ハウジング内に収容されるか、その他の方法で支持され得る。
【0011】
フィルタ膜は、フィルタの使用、すなわちフィルタによって行われる濾過の種類に基づいて選択することができる平均孔径を有する多孔質構造から構成され得る。典型的な孔径は、ミクロン又はサブミクロンの範囲、例えば約0.001ミクロン~約10μmである。約0.001~約0.05ミクロンの平均孔径を有する膜は、限外濾過膜として分類されることがある。約0.05~10μmの孔径を有する膜は、微孔質膜と呼ばれることもある。
【0012】
ミクロン又はサブミクロン範囲の孔径を有するフィルタ膜、又は本明細書で単に「膜」と呼ばれるものは、ふるい分け機構若しくは非ふるい分け機構のいずれか、又は両方によって流体流から望ましくない材料(すなわち、不純物)を除去するのに有効であり得る。ふるい分け機構は、フィルタ膜の表面で粒子を機械的に保持することによって液体の流れから粒子を除去する濾過のモードであり、これは粒子の移動を機械的に干渉し、粒子をフィルタ内に保持し、フィルタを通る粒子の流れを機械的に防止するように作用する。典型的には、粒子は、フィルタの細孔よりも大きくすることができる。「非ふるい分け」濾過機構は、フィルタ膜が、フィルタ膜を通る流体の流れに含まれる懸濁粒子又は溶解した材料を、専ら機械的でない方法で保持する濾過のモードであり、例えば、微粒子又は溶解した不純物がフィルタ表面に静電的に引き付けられ保持され、流体の流れから除去される静電機構を含み;粒子は溶解していてもよく、又はフィルタ材の細孔よりも小さい粒径を有する固体であってもよい。
【0013】
したがって、第1の態様では、本開示は、0より大きく約80%(重量基準)未満の炭素質材料を中に混合しているポリマーを含む膜であって、(a)約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定した場合に約2psi~約200psiのバブルポイント、(b)14.2psiで測定した場合に約20秒/500ml~約10,000秒/500mlのイソプロパノールフロー時間、及び(c)約25%~約100%のG25粒子保持率、を示す膜を提供する。
【0014】
膜を含むフィルタは、濾過用途に適した任意の所望の形態であることができる。フィルタを形成する材料は、フィルタ自体の構造的構成要素であることができ、フィルタに所望の構造を提供する。フィルタ膜は多孔質であることができ、任意の所望の形状又は構成であることができる。フィルタ膜自体は、単一の物品であることができ、又は粒子(例えば、樹脂ビーズ)などの複数の個々の物品によって表されることができる。膜は、ポリマー材料、異なるポリマー材料の混合物、又はポリマー材料及び非ポリマー材料から形成される。本開示の膜を形成するために使用することができるポリマー材料には、疎水性ポリマー又は親水性ポリマーが含まれる。適切なポリマーには、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリエステル、セルロース、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリ(スチレン)、又はそれらの組み合わせが含まれる。例えば、膜のポリマー材料は、超高分子量ポリエチレン;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリメチルペンテン;ポリブテン;ポリイソブチレン;エチレン、プロピレン、及びブチレンの2以上の共重合体;ハロゲン化ポリマー;又はそれらの組み合わせから選択される疎水性ポリマーであってもよい。
【0015】
特定の実施形態では、フィルタ膜材料は、超高分子量ポリエチレン(UPE)を含む。UPE膜などのUPEフィルタ材料は、典型的には、約1×106~9×106Da、又は1.5×106~9×106Daの範囲など、約1×106ダルトン(Da)を超える分子量(重量平均分子量)を有する樹脂から形成される。ポリエチレンなどのポリオレフィンポリマー間の架橋は、熱又は架橋化学物質、例えば過酸化物(例えば、ジクミルペルオキシド又はジ-tert-ブチルペルオキシド)、シラン(例えば、トリメトキシビニルシラン)、又はアゾエステル化合物(例えば、2,2’-アゾ-ビス(2-アセトキシ-プロパン)の使用によって促進することができる。
【0016】
例示的なハロゲン化ポリマーには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ素化エチレンポリマー(FEP)、ポリヘキサフルオロプロピレン、及びポリビニリデンフルオリド(PVDF)が含まれる。
【0017】
一実施形態では、多孔質フィルタ膜は非対称である。非対称膜の一例では、膜の一方の面及び領域の孔径は、反対側の面及び領域の孔径よりも大きい。別の例では、膜の対向する面(及び領域)の孔径がより大きく、膜の中央領域がいずれかの面よりも小さい孔径を有する非対称構造が存在し得る(例えば、砂時計の孔径プロファイル)。他の実施形態では、微孔質膜は、その厚さにわたって本質的に対称的な孔構造(膜の厚さにわたって実質的に同じ孔径)を有することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、フィルタ膜は、異なる材料の同じものから作製され得る、及び/又は同じ若しくは異なる構造を有し得る2以上の多孔質ポリマー膜を含む複合膜であり得る。複合膜の多孔質ポリマー膜の少なくとも1つは、本明細書に記載の炭素質材料を含む。例えば、フィルタ膜は、炭素質材料を有する本開示の膜(複数可)を含む第1の多孔質ポリマー膜と、本開示の膜(複数可)を含まないか、又は異なるポリマー、異なる種類又は量の炭素質材料、異なる細孔構造を有するなど、本開示の膜(複数可)とは何らかの方法で異なる第2のフィルタ材料とを含むことができる。追加のフィルタ材料層も可能であり得、炭素質材料が中に混合しているポリマー又は混合していないポリマーの様々な組み合わせであり、少なくとも1つの層が本開示の膜である。したがって、複合膜は、第2のフィルタ層と接触する第1のフィルタ層を有する多層膜と考えることができる。具体例として、複合膜は、第1のポリマーと第2のポリマーとの共キャスト又は共プリーツ付きの膜であってもよく、これらのポリマー層の一方又は両方は炭素質材料を含む。
【0019】
したがって、特定の実施形態では、本開示は、
第1のフィルタ材料の外表面が第2のフィルタ材料の外表面と接触している、第1のフィルタ材料及び第2のフィルタ材料を含む複合フィルタを提供し、
第1のフィルタ材料は、0より大きく約80%(重量基準)未満の炭素質材料が中に混合しているポリマーを含む多孔質ポリマー膜を含み、
第2のフィルタ材料は、第1のフィルタ材料とは異なる。
第1のフィルタ材料の外表面は、(複合膜を通る流れの方向の)出力対向面とすることができ、第2のフィルタ材料の外表面は、入力対向面とすることができ、又はその逆とすることができる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「多孔質ポリマー膜」は、膜の一方の表面から膜の反対側の表面まで延びる相互接続通路である細孔を含むポリマー固体(例えば、微孔質)である。通路は、一般に、濾過される液体が通過しなければならない曲がりくねったトンネル又は経路を提供する。この液体に含まれる粒子のうち、細孔よりも大きい粒子は、その粒子を含む流体が微多孔膜を通過する際に、微孔質膜への進入が妨げられるか、微孔質膜の細孔内に捕捉される(すなわち、ふるい分け型濾過機構によって除去される)。細孔より小さい粒子はまた、細孔構造との相互作用時に捕捉又は吸収され、例えば、非ふるい分け濾過機構によって除去され得る。
【0021】
本開示の膜は、膜構造全体に分布する炭素質材料を含む。炭素質材料は、例えば、活性炭、カーボンブラック、グラフェン、及びカーボンナノチューブを含むことができる。例えば、活性炭は、活性炭に変換され得る任意の炭素質前駆体に由来し得る吸着剤である。そのような炭素質前駆体の例には、木材、トウモロコシの穂軸、ケルプ、コーヒー豆、イネの外皮、フルーツピット、泥炭、褐炭、ヤシ殻、石油及び/又は石炭ピッチ、コークス、カーボンブラック、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニルなどが含まれる。多孔質ポリマー膜のポリマーと混合された炭素質材料の形態は特に重要ではなく、粉末、微粒子、繊維、シートなどから選択することができる。一実施形態では、炭素質材料は、粉末、微粒子、又は押出成形形態である。
【0022】
例えば、炭素質材料は、主に元素状炭素から構成される高表面積を有する固体微孔質材料の形態であり、リグニン由来の炭素質材料の場合、活性炭が形成された炭素質前駆体材料に最初に見られる少量の他の微量元素をさらに含む活性炭であり得る。さらに、活性炭は、完全合成(すなわち、石油化学製品)源、例えばポリスチレン、ポリ(ビニルジクロリド)又はポリ(ビニルジクロリド)-メチルアクリレート共重合体から得ることができ、ただし、いずれの場合でも、最終活性炭表面は、本明細書に教示される本開示の方法において有効であるように必要な多孔度を有する。これに関連して、活性炭は、その多孔度を増加させるために処理される微結晶の非黒鉛状形態の炭素である。活性炭の表面積は、その細孔体積に依存する。単位体積当たりの表面積は、個々の孔径が増加するにつれて減少するため、表面積は、非常に小さい寸法の細孔の数を増加させること、及び/又は大きい寸法の細孔の数を制限することによって最大化される。孔径は、国際純正応用化学連合によってミクロ細孔(細孔幅<2nm)、メソ細孔(細孔幅2~50nm)及びマクロ細孔(細孔幅>50nmと定義されている。さらに、このような活性炭では、ミクロ細孔及びメソ細孔は活性炭の吸着能力に寄与するが、マクロ細孔は実際に密度を低下させ、炭素体積基準で活性炭の吸着剤有効性に有害となり得る。
【0023】
本開示では、一実施形態では、炭素質材料は粉末又は粒子の形態である。このような炭素質材料は、この所望の形態で購入することができ、又は膜を作製するために使用されるポリマー材料に添加する前に、所望の粒径を達成するために粉砕又はジェットミル粉砕することができる。特定の実施形態では、本明細書に開示されるポリマーを含む多孔質ポリマー膜は、0超~約80%、例えば約1~約60%(重量基準)、2重量%~約40重量%、又は5重量%~約20重量%の炭素質材料が中に混合している。膜の構造的完全性又は物理的形態を維持するために、低いレベルの活性炭などの炭素質材料が好ましい場合がある。
【0024】
さらに、多孔質ポリマー膜の炭素質材料及び/又はポリマーは、好ましくは約65μg未満の抽出可能な有機化合物及び/又は金属イオンを有する。成分のこのレベルの純度は、当業者に知られている技術を使用して膜を形成する前に適切な溶媒で洗浄することによって達成され得る。50μg未満などのより低いレベルの不純物がさらに好ましい。
【0025】
特定の実施形態では、多孔質ポリマー膜は、シート又は中空繊維の形態である。いくつかの実施形態では、シート又は中空繊維は、任意の有用な厚さ、例えば、約35μm~約400μm、約80μm~約350μm、又は約120μm~約310μm、又は約160μm~270μmの範囲、又はそれらの間の任意の範囲及び部分範囲の厚さを有することができる。多孔質ポリマー膜シートは、平らなシートの膜として用いることもできるし、コルゲート加工してプリーツ付きの膜とすることもできる。
【0026】
具体的な実施形態では、炭素質材料は活性炭材料である。炭素質材料の活性化は、公知の方法により行うことができる。例えば、炭素質材料は、塩化亜鉛、リン酸、硫酸、塩化カルシウム、水酸化ナトリウム、重クロム酸カリウム、過マンガン酸カリウムなどの酸化可能な化学物質(化学活性化);又は、蒸気、プロパンガス、CO2とH2Oの混合物である燃焼ガスから生成された排ガス、二酸化炭素ガスなど(ガス活性化)で活性化されてもよい。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,589,904号を参照されたい。あるいは、市販の活性炭、例えば、粉末又は顆粒として入手可能なCalgon Carbonからの活性炭製品を利用してもよい。一実施形態では、粉砕後、活性炭の中央値平均粒径は、約30μm~約60μm、又は約45μmである。別の実施形態では、活性炭は、約800m2/g以上の表面積を有する。
【0027】
本開示の多孔質ポリマー膜は、ポリマー材料と炭素質材料とを組み合わせて、所望の充填量の炭素質材料をポリマー構成要素に分散させることによって作製され得る。溶解溶媒又は分散溶媒もまた、所与のポリマーによって必要とされるように、加熱の有無にかかわらず、ポリマーに使用され得る。例えば、ポリスルホンなどのポリマーをN-メチルピロリドン(NMP)などの適切な溶媒に溶解することができ、これにイソプロパノールなどの非溶媒を添加してドープ又はラッカーを形成する。この混合物に活性炭を添加し、得られた混合物を激しく撹拌することによって均質化することができる。次いで、混合物をガラス板に塗布し、続いて非溶媒に浸漬することができる。言い換えれば、浸漬キャスティング法を使用して、混合炭素質材料を含む多孔質ポリマー膜を形成することができる。また、高分子量ポリエチレンのように溶解度特性の異なるポリマーの場合には、例えばジオクチルフタレート(DOP)及び鉱油に炭素質材料と共に分散させて、その結果スラリーとすることができる。次いで、スラリーをシートの形態に押し出し、様々な液体で処理して鉱油及びジオクチルフタレートを除去し、乾燥させ、それによってシート形態の多孔質ポリマー膜を形成することができる。言い換えれば、炭素質材料がポリマーマトリックス内に分散されると、本開示の膜は、熱可塑性ポリマーを含むポリマーシートの形成に使用される既知の温度誘起(TIPS)又は溶媒誘起相分離(SIPS)プロセスを使用して調製することができる。
【0028】
したがって、さらなる態様では、本開示は、有機及び金属イオン不純物を含む液体を濾過するためのシートの形態の多孔質ポリマー膜を調製する方法であって、多孔質ポリマー膜は、活性炭などの炭素質材料が中に分散しているポリマーを含み、
炭素質材料と、ポリマーの流動可能な形態とを組み合わせることであって、ポリマーが、ポリマーが、(i)流動可能な形態を提供するために有効量の少なくとも1つの溶媒及び/又は分散剤と混合されている;及び/又は(ii)流動可能な形態を提供するのに十分な温度に加熱されている、炭素質材料とポリマーの流動可能な形態とを組み合わせること;
炭素質材料をポリマー中に物理的に分散させることにより、炭素質材料が中に分散しているポリマー組成物を提供すること;及び
存在する場合にはポリマー組成物から溶媒又は分散剤を除去すること、及び/又はシートにキャスティング又は押出成形する間にポリマー組成物を冷却すること;を含み、
多孔質ポリマー膜が、最大約60%~約100%パーセントのアミン夾雑物及び約75%~約95%パーセントの金属イオン夾雑物を液体から除去することができる、方法を提供する。
【0029】
この方法の一実施形態では、ポリマーは、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリエステル、セルロース、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリ(スチレン)、又はそれらの組み合わせから選択される。別の実施形態では、ポリマーは、超高分子量ポリエチレン;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリメチルペンテン;ポリブテン;ポリイソブチレン;エチレン、プロピレン、及びブチレンの2以上の共重合体;ポリテトラフルオロエチレン;ポリクロロトリフルオロエチレン;フッ素化エチレンポリマー;ポリヘキサフルオロプロピレン;ポリビニリデンフルオリド;ポリアミド;ポリイミド;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリアリールスルホン;ポリアクリレート;ポリエステル;ナイロン;セルロース類;セルロースエステル;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリ(フェニレンオキシド);ポリ(スチレン);又はそれらの組み合わせから選択される。
【0030】
本明細書に記載の多孔質ポリマーフィルタ膜を参照すると、そのような膜は、孔径、バブルポイント、及び多孔度を含む物理的特徴によって特徴付けることができる。これに関して、多孔質ポリマーフィルタメ膜は、フィルタ膜として実施するのに有効であることを可能にする任意の孔径を有することができ、例えば、本明細書に記載のように、微孔質膜又は限外濾過膜と見なされることもあるサイズの細孔(平均孔径)を含む。有用な多孔質ポリマー膜の例は、約0.001μm~約1又は2μm、例えば0.01~0.8μmの範囲の平均孔径を有し、孔径は、除去される不純物の粒径又は種類、圧力及び圧力降下の要件、並びにフィルタによって処理される液体の粘度要件を含む1つ又は複数の要因に基づいて選択される。限外濾過膜は、0.001μm~約0.05μmの範囲の平均孔径を有することができる。孔径は、多孔質材料の平均孔径として報告されることが多く、これは、水銀ポロシメトリー(MP)、走査電子顕微鏡(SEM)、液体置換(LLDP)、又は原子間力顕微鏡法(AFM)などの既知の技術によって測定することができる。
【0031】
バブルポイントは、多孔質膜の既知の特徴でもある。バブルポイント試験法により、多孔質ポリマーフィルタ膜の試料を、表面張力が既知の液体に浸漬して湿潤させ、試料の片側にガス圧をかける。ガス圧を徐々に上昇させる。ガスが試料を通って流れる最小圧力は、バブルポイントと呼ばれる。多孔質ポリマー材料のバブルポイントを決定するための具体的な方法として、多孔質材料の試料をエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200(3Mから入手可能)に20~25℃(例えば、22℃)の温度で浸漬して湿潤させる。圧縮空気を用いて試料の片側にガス圧を加え、ガス圧を徐々に上昇させる。ガスが試料を通って流れる最小圧力は、バブルポイントと呼ばれる。本明細書で提供されるすべてのバブルポイント値は、この手順を使用して測定される。上述の手順を用いて測定される、本明細書による多孔質ポリマーフィルタ膜の有用又は好ましいバブルポイント値の例は、約2~約200psi、約2~約150psi、約2~約100psi、約10~約200psi、約10~約150psi、約10~約100psi、約10~約40psi、約20~約200psi、約20~約150psi、約20~約100psi、約40~約200psi、約40~約150psi、約40~約100psi、約60~約200psi、約60~約150psi、約60~約100psi、約80~約200psi、約80~約150psi、約100~約200psi、約100~約150psi、約150~約200psiの範囲、又はそれらの間のありとあらゆる範囲であり得る。記載される多孔質ポリマーフィルタ膜は、多孔質ポリマーフィルタ膜が本明細書に記載されるように効果的であることを可能にする任意の多孔度を有し得る。例示的な多孔質ポリマー膜は、比較的高い多孔度、例えば少なくとも60、70又は80%の多孔度を有することができる。本明細書で使用される場合、及び多孔質体の技術分野では、多孔質体の「多孔度」(空隙率と呼ばれることもある)は、本体の総体積のパーセントとしての本体内の空隙(すなわち、「空」である)空間の尺度であり、本体の総体積に対する本体の空隙の体積の割合として計算される。0%の多孔度を有する本体は完全に固体である。
【0032】
本開示の多孔質ポリマーフィルタ膜は、入力として高純度液体材料を必要とする任意の種類の産業又はライフサイエンスプロセスで有用であり得る。そのようなプロセスの非限定的な例は、マイクロ電子又は半導体デバイスを調製するプロセスを含み、その具体例は、半導体フォトリソグラフィーに使用される液体プロセス材料(例えば、溶媒又は溶媒含有液)を濾過する方法である。マイクロ電子又は半導体デバイスを調製するために使用されるプロセス液体又は溶媒中に存在する夾雑物の例には、液体中に溶解した金属イオン、液体中に懸濁した固体微粒子、及び液体中に存在するゲル化又は凝固した材料(例えば、フォトリソグラフィー中に生成される)が含まれ得る。
【0033】
上述のように、多孔質ポリマー膜は、単層であってもよく、又は多層であってもよく、別のフィルタ材料と組み合わせて複合フィルタ膜を形成する。いずれの場合も、フィルタ膜は、ふるい分け機構又は非ふるい分け機構のいずれかによって、好ましくは組み合わせた非ふるい分け及びふるい分け機構の両方によって、フィルタ膜を通って流れる液体から溶解又は懸濁した夾雑物又は不純物を除去するのに有用であり得る。
【0034】
このような多孔質ポリマー膜は、アミンなどの有機夾雑物と共に金属イオン夾雑物を除去して、非常に高純度の液体組成物を提供するのに有用であることが分かっている。例示的な液体組成物は、有機溶媒、例えばアルコール及びケトン、及び溶解アンモニア水、すなわちNH4OHなどの材料である。これに関して、アンモニア水又は単に「アンモニア」への言及は、任意の濃度のアンモニアを中に有するNH4OH水溶液を指すと理解される。したがって、さらなる態様では、本開示は、1又は複数のケトン又はアルコールを含む精製された液体組成物を提供し、精製された組成物は、約2000ppb以下の有機アミン不純物を含有する。一実施形態では、有機アミン不純物は、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルアミン、ヘプチルアミン、及び3,3,5,5-テトラメチルベンジリデンから選択される。別の実施形態では、アルコールは、イソプロパノールなどのC1-C4アルコールである。
【0035】
さらに、本明細書に記載の多孔質ポリマー膜によって様々な金属不純物が除去され得る。特定の実施形態では、得られた精製された液体組成物は、合計約12ppb以下の金属イオン、例えばマグネシウム、アルミニウム、チタン、バナジウム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、銀、カドミウム、スズ及び鉛のカチオンを含む。
【0036】
特定の一実施形態では、精製された液体組成物は、99.99重量パーセント以上のイソプロパノールを含み、組成物は、合計約2000ppb以下のアミン及び合計約12ppb以下の金属イオンを含む。別の実施形態では、精製された液体組成物はNH4OHを含み、組成物は、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ヘプチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、及びテトラメチルベンジリジンから選択される不純物を約2000ppb以下含有する。
【0037】
したがって、本開示の多孔質ポリマー膜は、様々な液体及び有機組成物の濾過又は精製のためのプロセス又は方法を可能にする。したがって、別の態様では、本開示は、(a)1又は複数のケトン若しくはアルコール、又は(b)アンモニア水を含む、精製された液体組成物を調製する方法を提供する。一実施形態では、組成物は、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルアミン、ヘプチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、及び3,3,5,5-テトラメチルベンジリジンのうちの1つ又は複数から選択される2000ppb以下の不純物を含有する。この精製された組成物は、(i)1又は複数のケトン若しくはアルコール、又は(ii)NH4OH、及びトリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルアミン、ヘプチルアミン、及びN,N-ジイソプロピルエチルアミンの1つ又は複数から選択される少なくとも1つの有機アミン不純物、並びに3,3,5,5-テトラメチルベンジリデンを含む、精製を必要とする液体組成物を、本開示の多孔質ポリマー膜の1つ又は複数に曝露することを含む方法によって得ることができる。一実施形態では、精製された組成物は、約99.99重量パーセント以上のケトン若しくはアルコール(イソプロパノールなど)又はアンモニア水を含む。多孔質ポリマー膜への曝露は、液体組成物を膜に積極的に通過させるか、又は単に膜を精製される液体組成物に浸漬することによって達成することができる。別の実施形態では、精製された組成物は、合計12ppb以下の金属イオンを含む。
【0038】
したがって、本明細書に記載の多孔質ポリマーフィルタ膜は、半導体又はマイクロ電子製作用途で使用されるか又は有用な薬液(溶媒を含む)などの様々な種類の液体組成物を精製するために使用することができる。例えば、液体組成物は、1又は複数の不純物と共に薬液又は薬液の組み合わせを含んでもよく、任意に、フォトレジストに使用されるポリマー材料などの様々な追加の成分をさらに含んでもよい。本開示の多孔質ポリマーフィルタ膜は、液体組成物から不純物(すなわち、望ましくない種)のすべて又はかなりの部分を効果的に除去することができる。適切な薬液の例には、メチル-アミルケトン、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)とPGMEAとの混合溶液(例えば7:3)、メタノール、酢酸エチル、乳酸エチル、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。追加の例には、ヒドロキシルアミン、モノエタノールアミン(MEA)、トリエタノールアミン(TEA)、モルホリン、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)、N-モノメチルエタノールアミン(MMEA)、N-エチルアミノエトキシエタノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール)、テトラエチルアンモニウム水酸化物(TEAH)、テトラブチルアンモニウム水酸化物(TBAH)、及びそれらの組み合わせなどの有機アミンが含まれる。本開示の多孔質ポリマーフィルタ膜によって不純物が除去され得る薬液のさらなる例には、酢酸n-ブチル(nBA)、イソプロピルアルコール(IPA)、酢酸2-エトキシエチル(2EEA)、キシレン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸イソアミル、及びウンデカンが含まれる。脱イオン水、過酸化水素、塩酸、硫酸、及びそれらの混合物などの他のプロセス液体も、本明細書に記載の多孔質ポリマー膜を使用して精製することができる。したがって、開示された膜を使用して、金属イオンなどの不純物及び/又はフッ素化有機化合物などの有機不純物を、酸、塩基、過酸化物、薬液(ポリマーを含有するものを含む)、及びそれらの混合物などの液体組成物から除去することができる。
【0039】
したがって、本開示の膜は、本明細書に記載の特定の液体組成物を精製して、濾過後に、検出限界に近いアミン/有機及び金属イオン夾雑物などの不純物の量を有する極めて純粋な組成物を提供することができる。したがって、さらなる態様では、本開示は、精製された液体組成物を提供し、組成物は、
a)1又は複数のケトン若しくはアルコール、又は
b)アンモニア水を含み、
組成物は、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ヘプチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、及びテトラメチルベンジリジンの1つ又は複数から選択される2000ppb以下の不純物を含有し、
組成物は、
i)1又は複数のケトン又はアルコール、又は
ii)アンモニア水、並びに、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、N,N-ジイソプロピルアミン、ヘプチルアミン、及び3,3,5,5-テトラメチルベンジリデンの1つ又は複数から選択される少なくとも1つのアミン不純物を含む、精製を必要とする液体組成物を、
本明細書に記載の本開示の1又は複数の多孔質ポリマー膜に曝露することによって得られる。
【0040】
保持試験
【0041】
「粒子保持率」又は「被覆率」は、流体流の流体経路に配置された膜によって流体流から除去することができる粒子の数のパーセンテージを指す。以下の手順に従って求めた粒子保持率を「G25粒子保持率」という。47mm膜ディスクの粒子保持率は、0.03μmの公称直径を有する8ppmのポリスチレン粒子(Duke Scientific G25Bから入手可能)を含有する、約5のpHを有する0.1% Triton X-100の十分な量の供給水溶液を通過させて、7mL/分の一定流量で膜を通して1%の単層被覆率を達成し、透過液を収集することによって測定することができる。G25粒子保持率は、特に明記しない限り、1%単層で測定されるものとする。透過液中のポリスチレン粒子の濃度は、透過液の吸収度から算出することができる。次いで、以下の式を使用して粒子保持率を計算する。
粒子保持率=[供給]-[濾液]×100%
[供給]
【0042】
1%の単層被覆率を達成するために必要な粒子の数(#)は、以下の式から計算することができる。
式中、
a=有効膜表面積
d
p=粒子の直径
n=単層%
【0043】
本明細書で使用される「公称直径」は、光子相関分光法(PCS)、レーザー回折又は光学顕微鏡法によって決定される粒子の直径である。通常、計算された直径、すなわち公称直径は、粒子の投影画像と同じ投影面積を有する球の直径として表される。PCS、レーザー回折及び光学顕微鏡技術は、当技術分野で周知である。例えば、Jillavenkatesa,A.,et al.;「Particle Size Characterization」;NIST Recommended Practice Guide;National Institute of Standards and Technology Special Publication 960-1;January 2001を参照されたい。
【0044】
いくつかの実施形態では、G25粒子保持率は、約25%~約100%、約25%~約99%、約25%~約97%、約25%~約95%、約25%~約90%、約25%~約85%、50%~約100%、約50%~約99%、約50%~約97%、約50%~約95%、約50%~約90%、約50%~約85%、約70%~約100%、約70%~約99%、約70%~約97%、約70%~約95%、約70%~約90%、約70%~約85%、75%~約100%、約75%~約99%、約75%~約97%、約75%~約95%、約75%~約90%、約75%~約85%、80%~約100%、約80%~約99%、約80%~約97%、約80%~約95%、約80%~約90%、約80%~約85%、85%~約100%、約85%~約99%、約85%~約97%、約85%~約95%、約85%~約90%の範囲、又はそれらの間のすべての範囲及び部分範囲である。
【0045】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される膜は、上に開示される範囲の1つの(すなわち、1%単層での)G25粒子保持率を有し、約60%~約80%、約60%~約75%、約60%~約70%、約65%~約80%、約65%~約75%、約70%~約80%の範囲、又はそれらの間のすべての範囲及び部分範囲の5%単層のG25粒子保持率も有する。
【0046】
本明細書に記載のフィルタ膜は、好ましくは比較的高いバブルポイントと組み合わせて、比較的低いフロー時間及び良好な濾過性能(例えば、粒子保持率、色素結合能、又はその両方によって測定される)を有することができる。有用又は好ましいイソプロパノールのフロー時間の例は、約20,000秒/500mL未満、例えば、約4,000又は2,000秒/500mL未満であり得る。
【0047】
本明細書で報告される膜イソプロパノール(IPA)フロー時間は、500mlのイソプロピルアルコール(IPA)流体が13.8cm2の有効表面積を有する47mm膜ディスクを備えた膜を14.2psi及び21℃の温度で通過するのにかかる時間を測定することによって決定することができる。いくつかの実施形態では、フロー時間は、約20秒/500ml~約10,000秒/500ml、約20秒/500ml~約5,000秒/500ml、約20秒/500ml~約1,000秒/500ml、約20秒/500ml~約800秒/500ml、約20秒/500ml~約500秒/500ml、約100秒/500ml~約10,000秒/500ml、約100秒/500ml~約5,000秒/500ml、約100秒/500ml~約1,000秒/500ml、約100秒/500ml~約800秒/500ml、約100秒/500ml~約500秒/500ml、約500秒/500ml~約10,000秒/500ml、約500秒/500ml~約5,000秒/500ml、約500秒/500ml~約1,000秒/500ml、約500秒/500ml~約800秒/500ml、約845秒/500ml~約10,000秒/500ml、約845秒/500ml~約5,000秒/500ml、約845秒/500ml~約1,665秒/500ml、約845秒/500ml~約1000秒/500ml、約1,000秒/500ml~約10,000秒/500ml、約1,000秒/500ml~約5,000秒/500ml、約20秒/500ml~約2,500秒/500mlの範囲、又はそれらの間のすべての範囲及び部分範囲である。
【0048】
特定の実施形態では、本明細書に記載の膜は、炭素質材料を含まない同じフィルタ膜のフロー時間とほぼ等しいか又はそれより長くすることができる。換言すれば、炭素質材料の混合は、フィルタ膜の流れ特性に実質的に悪影響を及ぼさないが、フィルタ膜の濾過機能、特に、例えば、孔径に応じて色素結合能、粒子保持率、又はその両方によって測定されるような膜の非ふるい分け濾過機能をさらに改善する。
【0049】
本明細書に記載の多孔質ポリマーフィルタ膜は、濾過システムで使用される多層フィルタアセンブリ又はフィルタカートリッジなどの、より大きなフィルタ構造内に収容することができる。濾過システムは、フィルタ膜が液体組成物からある量の不純物又は夾雑物を除去するように、例えば多層フィルタアセンブリの一部として、又はフィルタカートリッジの一部としてフィルタ膜をフィルタハウジング内に配置してフィルタ膜を液体組成物の流路に露出させ、液体組成物の流れの少なくとも一部を炭素質材料を含む多孔質ポリマーフィルタ膜を通過させる。多層フィルタアセンブリ又はフィルタカートリッジの構造は、フィルタアセンブリ又はフィルタカートリッジ内でフィルタ膜を支持して、流体をフィルタ入口から膜(フィルタ層を含む)を通って、フィルタ出口を通って流れさせ、それによってフィルタを通過するときにフィルタ膜を通過させる様々な追加の材料及び構造の1つ又は複数を含んでもよい。フィルタアセンブリ又はフィルタカートリッジによって支持されたフィルタ膜は、任意の有用な形状、とりわけ例えば、プリーツ付きシリンダ、円筒形パッド、1つ又は複数のプリーツのない(平坦な)円筒形シート、プリーツ付きシートなどであってもよい。
【0050】
プリーツ付き円筒の形態の多孔質ポリマーフィルタ膜を含むフィルタ構造の1つの特定の例は、以下の構成部品を含むように調製することができ、これらはいずれもフィルタ構造に含まれ得るが、必須ではない場合がある:プリーツ付き円筒形多孔質ポリマーフィルタ膜の内部を支持する剛性又は半剛性コア;フィルタ膜の外側でプリーツ付き円筒形被覆フィルタ膜の外側を支持又は取り囲む剛性又は半剛性ケージ;プリーツ付き円筒形被覆フィルタ膜の2つの対向する端部のそれぞれに位置するオプショナルのエンドピース又は「パック」;並びに入口及び出口を含むフィルタハウジング。フィルタハウジングは、任意の有用かつ所望のサイズ、形状、及び材料であることができ、好ましくは適切なポリマー材料から作製することができる。
【0051】
一例として、
図1は、プリーツ付き円筒形構成要素10及びエンドピース22と他のオプショナルの構成要素との製品であるフィルタ構成要素30を示す。円筒形構成要素10は、本明細書で説明するように、フィルタ膜12を含み、プリーツ付きである。エンドピース22は、円筒形フィルタ構成要素10の一端に取り付けられる(例えば、「ポッティングされる」)。エンドピース22は、好ましくは溶融加工可能なポリマー材料から作製することができる。コア(図示せず)をプリーツ付き円筒形構成要素10の内部開口部24に配置することができ、ケージ(図示せず)をプリーツ付き円筒形構成要素10の外側の周りに配置することができる。第2のエンドピース(図示せず)を、プリーツ付き円筒形構成要素10の第2の端部に取り付ける(「ポッティングする」)ことができる。次いで、2つの対向するポッティングされた端部及びオプショナルのコア及びケージを有する得られたフィルタ構成要素30を、入口及び出口を含み、入口に入る流体の全量が出口でフィルタを出る前に必ずフィルタ膜12を通過しなければならないように構成されたフィルタハウジング内に配置することができる。
【実施例】
【0052】
実施例1:超高分子量ポリエチレン(UPE)及び活性炭を含む多孔質ポリマー膜の調製
【0053】
DOP(ジオクチルフタレート)と鉱油との混合物中のUPE(超高分子量ポリエチレン)の15%(w/w)分散体を室温で調製し、この混合物に5%(w/w)の粉末活性炭を添加した。UPEポリマーは、約120μmの平均粒径を有する。鉱油は、40℃で68CPの粘度及び25℃で0.86の比重を有する。粘性スラリーの稠度を有する三成分混合物を、一対の42mmスロット付き逆回転スクリューL/D-(7:1)を備えたBrabender二軸スクリュー混合/押出機に供給した。溶融ブレンドをシート形態に押し出すために、天頂歯車ポンプ及び幅5インチのダイも押出機に取り付けた。様々な押出ゾーンの温度は、180℃~260℃に設定した。押出機からの溶融ブレンドの体積出力は46cc/分であった。押出されたフィルムを、一定温度の流体を循環させることによって温度を90℃に制御した回転クロムめっき冷却ロールで急冷した。急冷したフィルムを電動ワインダーによって約6フィート/分の速度で巻き上げ、高多孔質軽量ポリプロピレンスパンボンド不織布材料とインターリーブした。急冷したゲル膜から鉱油を抽出するために、インターリーブしたロールを金属フレームに入れ、クリップで固定し、フレームを、還流抽出のためのヒドロフルオロエタン(HFE)を含有するBaron-Blakslee脱脂機に入れた。抽出時間は12~24時間であった。次いで、これを室温で乾燥させて抽出剤を除去し、さらに100℃で5分間熱硬化させた。乾燥及び熱硬化の間、膜は、それ自体に巻き付けられた材料によって拘束された。これは、膜が過度の収縮を経験するのを防ぐのに役立つ。
【0054】
この一般的な手順はまた、他の活性炭担持レベル、例えば20%又は50%(w/w)を調製するために使用され得る。5、20及び50%(w/w)の活性炭を含有する単離された多孔質ポリマーUPE膜は、上記の方法を使用して、表1に示すIPA(イソプロパノール)フロー時間及びバブルポイント値を有することが分かった。
【0055】
実施例2:ポリスルホン及び活性炭を含む多孔質ポリマー膜の調製
【0056】
Mw=50,700Daの12%(w/w)ポリフェニルスルホン(PPSU)樹脂を、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に室温で溶解した。この溶液にイソプロピルアルコール(IPA)をゆっくり添加してドープ(ラッカー)溶液を形成した。得られた混合物に、5%~10%(w/w)の粉末活性炭を添加し、これを手持ち式ホモジナイザーで5~10分間混合物に分散させた。次いで、得られたドープ混合物を、7ミルナイフを用いてガラスプレート上にコーティングし、混合活性炭を含む多孔質ポリスルホン膜を、非溶媒中への浸漬キャスティングによって単離した。
【0057】
実施例3:活性炭を含む多孔質UPE膜のためのG25ビーズのフィルタ保持率の決定
【0058】
G25粒子保持率は、UPE膜について上記の方法(pH5)を使用して決定した。実施例1に記載の方法を用いて、混合活性炭を含む超高分子量ポリエチレン膜を調製した。0.5、1、1.5、2、3、4及び5%単層について、G25粒子保持率を計算した。混合活性炭を含む多孔質UPE膜は、活性炭素を含まない多孔質UPE膜と比較した場合、改善されたG25ビーズ保持を示した。5%及び20%の活性炭の負荷により、活性炭を含まない多孔質UPE膜と比較してビーズ保持率が増加した。結果を表2に示し、
図2にプロットする。
【0059】
実施例4:活性炭を含む多孔質UPE膜を使用したIPA中の有機除去の決定
【0060】
以下の実施例は、活性炭含有UPE膜によるイソプロピルアルコール(IPA)からの有機不純物の除去を実証する。活性炭を含む多孔質UPE膜を、実施例1に示す方法と同様の方法を用いて調製し、次いで、47mmの膜クーポンに切断した。濾過有機除去効率を決定するために、膜クーポンをIPA溶液に浸漬し、有機不純物(各夾雑物2ppm)をスパイクした。GC-MSを用いて除去効率を決定した。結果を表3の有機除去(%)に示す:
【0061】
示されるように、活性炭を含む多孔質UPE膜は、UPE対照と比較して効率的な有機除去を示す。50%炭素修飾膜を使用して、テトラメチルベンジリジン(TMB)及びヘプチルアミンなどのアミン系不純物を100%除去する。同じ不純物は、非活性炭含有UPE膜によって除去されない。同様に、大鎖炭化水素もまた、UPE単独と比較して効率的に(>95%)除去されている。
【0062】
実施例5:活性炭を含有する多孔質UPE膜を使用した29%アンモニア中の有機除去の決定
【0063】
以下の実施例は、29%アンモニア溶液からの有機不純物の除去を実証する。混合活性炭を含有するUPE膜を、実施例1と同様の方法を用いて調製し、47mmの膜クーポンに切断した。濾過有機除去効率を決定するために、膜クーポンを29%アンモニア溶液に浸漬し、有機不純物をスパイクし、静的浸漬試験を24時間行った。除去効率をLC-QToFを用いて決定し、表4に示した:
【0064】
示されるように、活性炭を含む多孔質UPE膜は、活性炭を含まない多孔質UPE膜と比較して、アンモニアから標的不純物のすべてを除去した。膜中の活性炭の量が増加するにつれて、除去効率が増加する。
【0065】
実施例6:活性炭を含む多孔質UPE膜を使用したIPAからの金属除去の決定
【0066】
以下の実施例は、イソプロピルアルコール(IPA)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、(2-メトキシ-l-メチルエチルアセテート)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、OK73(商標)(プロピレングリコールメチルエーテルアセテート/プロピレングリコールメチルエーテル(PGMEA/PGME)の70/30ブレンド)、及びシクロヘキサノンなどの有機溶媒からのUPE膜による金属除去を実証する一般的な例である。
【0067】
活性炭を含む多孔質UPE膜を、実施例1に示す方法と同様の方法を用いて調製し、次いで、膜を直径47mmのディスク(クーポン)に切断した。膜を最初に10% HClで数回洗浄し、続いてDI水ですすぎ、最後に10% HClに一晩浸し、脱イオン水で平衡化した。各溶媒について、47mmクーポンを、各全金属の5ppbの目標濃度を達成するために、21~28の金属を含む水性金属標準(SCP Science)をスパイクした溶液に浸漬した。次いで、供給試料及び濾液試料をAgilent Model 8800 ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)によって分析して、これらの溶媒から金属イオンを除去する膜の能力を決定した。結果を表5~9に示す。
【0068】
活性炭を含む多孔質ポリマー膜を、Inorganic VenturesからのS21及びS28金属標準を使用して金属除去効率について試験した。示されるように、水溶液と比較して、有機溶媒からの炭素含有膜によって金属のより良好な除去が見られた。20%(w/w)活性炭含有UPE膜を使用した金属除去は、ほとんどの有機溶媒において、特に銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、及び鉛(Pb)などの金属について、水溶液と比較して高い除去効率(>80%)を示した。
【0069】
実施例7:希釈過酸化物及びDIWからの金属除去の決定
【0070】
この実施例は、静的浸漬条件下で希釈過酸化水素及び脱イオン水(DIW)などの溶媒中の金属を減少させる活性炭を含む多孔質ポリマー膜の能力を実証する。
【0071】
上記のように調製した活性炭(0.2μm)を含む多孔質UPE膜を47mmディスクに切断した。次いで、これらの膜ディスクを、10% HCl及び70% IPAで数回洗浄し、続いて10% HClに一晩浸漬し、脱イオン水で平衡化し、室温で乾燥させることによってコンディショニングした。無機ベンチュリ(IV-62491)標準金属を、各金属について5ppbの目標濃度で上記溶媒にスパイクした。静的浸漬の金属除去効率を決定するために、20mLの金属スパイク溶媒溶液を、乾燥した47mm膜ディスクを備えたPFAボトルに入れ、18時間回転させた。18時間後、膜ディスクを除去し、金属スパイク含有溶媒及び各溶媒膜上清試料の金属濃度をICP-MSを用いて決定した。結果を表10に示す。
【0072】
示されるように、金属の効率的な除去が観察された。除去されなかった金属については、PE膜に混入した活性炭によっても金属が脱落したと考えられる。
【0073】
実施例8:SC1(DIW:NH4OH:H2O2(5:1:1)適用からの金属除去
【0074】
この実施例は、静的浸漬条件下でSC1などの攻撃的な適用から標的金属を除去する活性炭を含む多孔質UPE膜の能力を実証する。Inorganic Ventures(IV-62491)からの9種類の標的金属(Al、Ca、Cr、Cu、Fe、Mn、Ni、Ti、Zn)を、新たに調製したSC1溶液に各金属5ppb濃度でスパイクした。47mm膜ディスクを切断し、10% HCl/70% IPA中で一晩洗浄した後、脱イオン水で平衡化した。膜ディスクを新たに調製したSC1溶液によってさらに精製し、次いで上記のスパイク金属溶液に16時間浸漬した。16時間後、膜ディスクを除去し、金属除去効率をICP-MSによって測定した。結果を除去パーセントで表11に報告する。
【0075】
実施例9:DIWからの有機夾雑物の除去
【0076】
以下の実施例は、DIWからの有機不純物の除去を実証する。活性炭を含む多孔質UPE膜を、実施例1に示す方法と同様の方法を用いて調製し、次いで、47mmの膜ディスクに切断した。有機不純物の除去パーセントを、膜ディスクを標的不純物を含有する20mlのDIW溶液に浸漬することによって決定し、除去効率をLC-QToFによって測定した。結果を表12にまとめた。
【0077】
態様
【0078】
第1の態様では、多孔質ポリマー膜は、0より大きく約80%(重量基準)未満の炭素質材料を中に混合しているポリマーを含み、
(a)約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定した場合に約2psi~約200psiのバブルポイント、
(b)14.2psiで測定した場合に約20秒/500ml~約10,000秒/500mlのイソプロパノールフロー時間、及び
(c)約25%~約100%のG25粒子保持率を示す。
【0079】
第1の態様による第2の態様は、炭素質材料が、活性炭、カーボンブラック、カーボンナノチューブ及びグラフェンからなる群から選択される。
【0080】
第1又は第2の態様による第3の態様は、炭素質材料が、粉末、微粒子材料、繊維、又はシートの形態である。
【0081】
前述の態様のいずれかによる第4の態様は、G25粒子保持率が、5%単層で約65%~約80%である。
【0082】
前述の態様のいずれかによる第5の態様は、膜が、約10psi~約40psiのバブルポイントを示す。
【0083】
前述の態様のいずれかによる第6の態様は、膜が、14.2psiで測定した場合に約845秒/500ml~約1665秒/500mlのイソプロパノールフロー時間を示す。
【0084】
前述の態様のいずれかによる第7の態様は、ポリマーが、約65μg/g未満の抽出可能な有機化合物及び/又は金属イオンを含有する。
【0085】
前述の態様のいずれかによる第8の態様は、ポリマーが、ポリスルホン又はポリ(テトラフルオロエタン)以外である。
【0086】
前述の態様のいずれかによる第9の態様は、ポリマーが、約10~約80%(重量基準)の炭素質材料を中に混合している。
【0087】
前述の態様のいずれかによる第10の態様は、膜が、約35~約400μmの厚さを有する。
【0088】
前述の態様のいずれかによる第11の態様は、ポリマーが、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリエステル、セルロース、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリ(スチレン)、ハロゲン化ポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0089】
第12の態様では、フィルタは、請求項1に記載の多孔質ポリマー膜を含む。
【0090】
第13の態様では、複合膜は、第1の多孔質ポリマー膜と第2の多孔質ポリマー膜とを含み、
第1の多孔質ポリマー膜の外表面が、第2の多孔質ポリマー膜の外表面と接しており、
第1の多孔質ポリマー膜が、0より大きく約80%(重量基準)未満の第1の炭素質材料が中に混合している第1のポリマーを含み、
第2の多孔質ポリマー膜が、第1の多孔質ポリマー膜とは異なる。
【0091】
第13の態様による第14の態様は、第1の多孔質ポリマー膜の外表面が出力対向面であり、第2の多孔質ポリマー膜の外表面が入力対向面である。
【0092】
第13又は第14の態様による第15の態様は、複合膜が、第1の多孔質ポリマー膜と第2の多孔質ポリマー膜との共キャスト膜である。
【0093】
第16の態様では、フィルタは、請求項13に記載の複合膜を含む。
【0094】
第17の態様では、炭素質材料が中に混合しているポリマーを含む多孔質ポリマー膜を調製する方法は、
a.炭素質材料とポリマーの流動可能な形態とを組み合わせることであって、ポリマーが、(i)流動可能な形態を提供するために有効量の少なくとも1つの溶媒及び/又は分散剤と混合されている;及び/又は(ii)流動可能な形態を提供するのに十分な温度に加熱されている、炭素質材料とポリマーの流動可能な形態とを組み合わせること;
b.炭素質材料をポリマー中に分散させることにより、炭素質材料が中に混合しているポリマー組成物を提供すること;及び
c.存在する場合に溶媒又は分散剤を除去すること、及び/又はポリマー組成物を冷却して多孔質ポリマー膜を形成すること、を含む。
【0095】
第17の態様による第18の態様は、ポリマーが、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリエステル、セルロース、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリ(スチレン)、ハロゲン化ポリマー、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0096】
第17又は第18の態様による第19の態様は、ポリマーが、0より大きく約80%(重量基準)未満の炭素質材料が中に混合している。
【0097】
第20の態様では、液体組成物から不純物を除去する方法は、
薬液及び1又は複数の不純物を含む液体組成物を、請求項1に記載の多孔質ポリマー膜と接触させることと、
薬液及び低減された量の1又は複数の不純物を含む精製された液体組成物を形成することとを含む。
【0098】
第20の態様による第21の態様は、薬液が、ケトン又はアルコールである。
【0099】
第20又は第21の態様による第22の態様は、薬液が、メチルアミルケトン、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)とPGMEAとの混合溶液(例えば7:3)、メタノール、酢酸エチル、乳酸エチル、酢酸n-ブチル(nBA)、イソプロピルアルコール(IPA)、酢酸2-エトキシエチル(2EEA)、キシレン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸イソアミル、ウンデカン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される有機材料である。
【0100】
第20から第22の態様による第23の態様は、薬液が、アンモニア水、ヒドロキシルアミン、モノエタノールアミン(MEA)、トリエタノールアミン(TEA)、モルホリン、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)、N-モノメチルエタノールアミン(MMEA)、N-エチルアミノエトキシエタノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール)、テトラエチルアンモニウム水酸化物(TEAH)、テトラブチルアンモニウム水酸化物(TBAH)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアミン溶媒である。
【0101】
第20から第23の態様による第24の態様は、薬液が、脱イオン水、過酸化水素、塩酸、硫酸、又はそれらの組み合わせである。
【0102】
第20から第24の態様による第25の態様は、1又は複数の不純物が、金属イオン、酸、塩基、過酸化物又は有機夾雑物である。
【0103】
第20から第25の態様による第26の態様は、精製された液体組成物が、99.99重量パーセント以上の薬液及び合計で約2000ppb以下の1又は複数の不純物を含む。
【0104】
第20から第26の態様による第27の態様は、1又は複数の不純物が、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルアミン、ヘプチルアミン、及び3,3,5,5-テトラメチルベンジリデンから選択される有機アミン不純物を含む。
【0105】
第20から第27の態様による第28の態様は、1又は複数の不純物が金属イオンを含み、精製された液体組成物が合計で約12ppb以下の金属イオンを含む。
【0106】
第28の態様による第29の態様は、金属イオンが、マグネシウム、アルミニウム、チタン、バナジウム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、銀、カドミウム、スズ、鉛及びそれらの組み合わせからなる群のカチオンから選択される。
【0107】
第30の態様では、精製された液体組成物が、請求項20に記載の方法に従って精製される。
【国際調査報告】