(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】プログラニュリンの結合パートナーを同定するための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20240403BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240403BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12N5/10
C12N15/63 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564501
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2022060724
(87)【国際公開番号】W WO2022223796
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】397060175
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカ エヌ.ベー.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】ゼン,ウェイ-ジェン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ボナベンチュラ,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】リウ,チャンル
(72)【発明者】
【氏名】ブレット,デイビッド エス.
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QR58
4B063QR80
4B063QS36
4B063QX02
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA60
(57)【要約】
プログラニュリンの細胞表面受容体を同定するためのスクリーニング方法が本明細書に開示される。プログラニュリンに結合する細胞内タンパク質を同定するためのスクリーニング方法も本明細書に開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラニュリン(PGRN)に結合する膜貫通タンパク質を同定するためのハイスループットスクリーニング方法であって、
a)複数の発現ベクターを含むcDNAコレクションを提供する工程であって、各発現ベクターが別個の膜貫通タンパク質をコードする、前記工程と、
b)複数のウェルを含むプレートを提供する工程であって、その1つ以上のウェルがそれぞれ宿主細胞を含有する、前記工程と、
c)前記1つ以上のウェルのそれぞれに、前記コレクションからの別個の発現ベクターを導入し、それによって、各ウェルにおいて別個のトランスフェクトされた細胞を産生する工程と、
d)各ウェルにおいて別個の膜貫通タンパク質の発現を可能にする条件下で、前記トランスフェクトされた細胞を培養する工程と、
e)前記1つ以上のウェルのそれぞれにおいて、前記トランスフェクトされた細胞を、検出可能なタグに付着したPGRNを含む標的タンパク質と接触させる工程と、
f)前記標的タンパク質との接触後に、前記トランスフェクトされた細胞を固定剤で固定する工程と、
g)前記固定された細胞を洗浄する工程と、
h)前記固定された細胞を洗浄する工程の後に、前記1つ以上のウェルのそれぞれにおける前記検出可能なタグの存在を決定する工程であって、前記検出可能なタグがウェル中に存在すると決定された場合、前記ウェル中の前記トランスフェクトされた細胞によって発現された前記膜貫通タンパク質が、PGRNに結合する膜貫通タンパク質として同定される、前記工程と、を含む、ハイスループットスクリーニング方法。
【請求項2】
前記宿主細胞が、ヒト胎児腎臓293T(HEK293T)細胞、HEK293F細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NIH 3T3細胞、MCF-7細胞、Hep G2細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、BV-2(マウス、C57BL/6、脳、ミクログリア)細胞、Neuro-2a(N2a)細胞及びCos7細胞からなる群から選択される、請求項1に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項3】
前記固定剤が、グルタルアルデヒド、メタノール及びパラホルムアルデヒドから選択される、請求項1又は2に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項4】
前記検出可能なタグが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、myc、myc-ピルビン酸キナーゼ(myc-PK)、His6、マルトース結合タンパク質(MBP)、ヒトインフルエンザウイルス赤血球凝集素(HA)タグ、flagタグ(FLAG)、及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)タグからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項5】
前記標的タンパク質が、FLAGタグ付きPGRNである、請求項4に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項6】
工程h)が、h1)蛍光色素に共有結合された抗FLAG抗体を、前記トランスフェクトされた細胞を含有する前記ウェルに添加して、前記FLAGタグ付きPGRNを、存在する場合、免疫染色する工程と、h2)蛍光光度計又は撮像装置を使用してハイスループット方式で前記蛍光色素を検出する工程と、を含む、請求項5に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項7】
前記蛍光色素が、シアニン色素である、請求項6に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項8】
前記標的タンパク質が、HAタグ付きPGRNである、請求項4に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項9】
工程h)が、h1)蛍光色素に共有結合している抗HA抗体を、前記トランスフェクトされた細胞を含有する前記ウェルに添加して、前記HAタグ付きPGRNを、存在する場合、免疫染色する工程と、h2)蛍光光度計又は撮像装置を使用してハイスループット方式で前記蛍光色素を検出する工程と、を含む、請求項8に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項10】
前記蛍光色素が、Dylight 650である、請求項6に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項11】
工程g)とh)との間に、前記固定された細胞を透過剤で透過処理する工程と、前記透過処理された細胞を洗浄する工程とを更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項12】
前記透過剤が、サポニン、Triton X-100、リゾレシチン、n-オクチル-B-D-グルコピラノシド、及びTween 20からなる群から選択される、請求項11に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項13】
PGRNに結合する細胞内タンパク質を同定するための方法であって、
a)異種タンパク質をコードする発現ベクターを宿主細胞に導入し、それによってトランスフェクトされた細胞を産生する工程と、
b)前記異種タンパク質の発現を可能にする条件下で、前記トランスフェクトされた細胞を培養する工程と、
c)前記トランスフェクトされた細胞を透過剤で透過処理する工程と、
d)前記透過処理された細胞を、検出可能なタグに付着したPGRNを含む標的タンパク質と接触させる工程と、
e)前記標的タンパク質との接触後に、前記トランスフェクトされた細胞を固定剤で固定する工程と、
f)前記固定された細胞を洗浄する工程と、
g)前記固定された細胞を洗浄した後、前記洗浄された細胞上の前記検出可能なタグの存在を決定する工程であって、前記検出可能なタグが存在すると決定された場合、前記細胞によって発現された前記異種タンパク質が、PGRNに結合する細胞内タンパク質として同定される、前記工程と、を含む、方法。
【請求項14】
前記宿主細胞が、ヒト胎児腎臓293T(HEK293T)細胞、HEK293F細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NIH 3T3細胞、MCF-7細胞、Hep G2細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、BV-2(マウス、C57BL/6、脳、ミクログリア)細胞、Neuro-2a(N2a)細胞及びCos7細胞からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記検出可能なタグが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、myc、myc-ピルビン酸キナーゼ(myc-PK)、His6、マルトース結合タンパク質(MBP)、ヒトインフルエンザウイルス赤血球凝集素(HA)タグ、flagタグ(FLAG)、及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)タグからなる群から選択される、13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記標的タンパク質が、FLAGタグ付きPGRNである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程g)が、g1)前記細胞を、蛍光色素に共有結合している抗FLAG抗体に曝露して、前記FLAGタグ付きPGRNを、存在する場合、免疫染色する工程と、g2)蛍光光度計又は撮像装置を使用して前記蛍光色素を検出する工程と、を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記蛍光色素が、シアニン色素である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記標的タンパク質が、HAタグ付きPGRNである、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
工程g)が、g1)前記細胞を、蛍光色素に共有結合している抗HA抗体に曝露して、前記HAタグ付きPGRNを、存在する場合、免疫染色する工程と、g2)蛍光光度計又は撮像装置を使用して前記蛍光色素を検出する工程と、を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記蛍光色素が、Dylight 650である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
工程b)とc)との間に、前記培養細胞を固定剤で固定する工程と、前記固定された細胞を洗浄する工程と、を更に含む、請求項13~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記固定剤が、グルタルアルデヒド、メタノール及びパラホルムアルデヒドから選択される、請求項13~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
工程f)とg)との間に、前記固定された細胞を透過剤で透過処理する工程と、前記透過処理された細胞を洗浄する工程とを更に含む、請求項13~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記透過剤が、サポニン、Triton X-100、リゾレシチン、n-オクチル-B-D-グルコピラノシド、及びTween 20からなる群から選択される、請求項13~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
PGRNに結合する細胞内タンパク質を同定するためのハイスループットスクリーニング方法であって、
a)複数の発現ベクターを含むcDNAコレクションを提供する工程であって、各発現ベクターが別個の異種タンパク質をコードする、前記工程と、
b)複数のウェルを含むプレートを提供する工程であって、その1つ以上のウェルがそれぞれ宿主細胞を含有する、前記工程と、
c)前記1つ以上のウェルのそれぞれに、前記コレクションからの別個の発現ベクターを導入し、それによって、各ウェルにおいて別個のトランスフェクトされた細胞を産生する工程と、
d)各ウェルにおいて別個の異種タンパク質の発現を可能にする条件下で、前記トランスフェクトされた細胞を培養する工程と、
e)前記トランスフェクトされた細胞を透過剤で透過処理する工程と、
f)前記1つ以上のウェルのそれぞれにおいて、前記透過処理された細胞を、検出可能なタグに付着したPGRNを含む標的タンパク質と接触させる工程と、
g)前記標的タンパク質との接触後に、前記トランスフェクトされた細胞を固定剤で固定する工程と、
h)前記固定された細胞を洗浄する工程と、
i)前記固定された細胞を洗浄する工程の後に、前記1つ以上のウェルのそれぞれにおける前記検出可能なタグの存在を決定する工程であって、前記検出可能なタグがウェル中に存在すると決定された場合、前記ウェル中の前記トランスフェクトされた細胞によって発現された前記異種タンパク質が、PGRNに結合する細胞内タンパク質として同定される、前記工程と、を含む、ハイスループットスクリーニング方法。
【請求項27】
前記宿主細胞が、ヒト胎児腎臓293T(HEK293T)細胞、HEK293F細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NIH 3T3細胞、MCF-7細胞、Hep G2細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、BV-2(マウス、C57BL/6、脳、ミクログリア)細胞、Neuro-2a(N2a)細胞及びCos7細胞からなる群から選択される、請求項26に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項28】
前記検出可能なタグが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、myc、myc-ピルビン酸キナーゼ(myc-PK)、His6、マルトース結合タンパク質(MBP)、インフルエンザウイルス赤血球凝集素タグ、flagタグ(FLAG)、及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)タグからなる群から選択される、26又は27に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項29】
前記標的タンパク質が、FLAGタグ付きPGRNである、請求項28に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項30】
工程i)が、i1)蛍光色素に共有結合された抗FLAG抗体を、前記トランスフェクトされた細胞を含有する前記ウェルに添加して、前記FLAGタグ付きPGRNを、存在する場合、免疫染色する工程と、i2)蛍光光度計又は撮像装置を使用してハイスループット方式で前記蛍光色素を検出する工程と、を含む、請求項29に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項31】
前記蛍光色素が、シアニン色素である、請求項30に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項32】
前記標的タンパク質が、HAタグ付きPGRNである、請求項28に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項33】
工程i)が、i1)蛍光色素に共有結合された抗HA抗体を、前記トランスフェクトされた細胞を含有する前記ウェルに添加して、前記HAタグ付きPGRNを、存在する場合、免疫染色する工程と、i2)蛍光光度計又は撮像装置を使用してハイスループット方式で前記蛍光色素を検出する工程と、を含む、請求項32に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項34】
前記蛍光色素が、Dylight 650である、請求項33に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項35】
工程d)とe)との間に、前記培養細胞を固定剤で固定する工程と、前記固定された細胞を洗浄する工程とを更に含む、請求項26~34のいずれか一項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項36】
前記固定剤が、グルタルアルデヒド、メタノール及びパラホルムアルデヒドから選択される、請求項26~35のいずれか一項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項37】
工程h)とi)との間に、前記固定された細胞を透過剤で透過処理する工程と、前記透過処理された細胞を洗浄する工程とを更に含む、請求項26~36のいずれか一項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【請求項38】
前記透過剤が、サポニン、Triton X-100、リゾレシチン、n-オクチル-B-D-グルコピラノシド、及びTween 20からなる群から選択される、請求項26~37のいずれか一項に記載のハイスループットスクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その全容を参照により本明細書に援用するところの2021年4月23日出願の米国特許仮出願第63/178,831号の利益を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、プログラニュリンの結合パートナーを同定するためのハイスループットスクリーニング方法に関する。
【0003】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、配列表を含み、この配列表は、ASCIIフォーマットで電子的に提出済みであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。当該ASCIIコピーは、2022年2月28日に作成され、名称はPRD4129WOPCT1_SL.txtであり、サイズは16,384バイトである。
【背景技術】
【0004】
神経変性疾患は、脳及び脊髄の神経系細胞(ニューロン)が劣化し始めるときに起こる。今日、540万人のアメリカ人がアルツハイマー病に罹患している。500,000人はパーキンソン病由来であり、50,000~60,000人は前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia、FTD)由来である。神経変性疾患は、主に中年から晩年に発症するので、発症率は人口の高齢化に伴い急上昇すると予想される。2030年までに、5人に1人ものアメリカ人が65歳を超える。神経変性疾患の治療及び治癒を見出すことは、緊急性が増している課題である。
【0005】
プログラニュリン(progranulin、PGRN)は、GRN遺伝子によってコードされるシステインリッチな分泌タンパク質であり、神経変性及び他の疾患に関与することが知られている。脳内のPGRNレベルの減少は、前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration、FTLD)の家族型と相関する。強い相関にもかかわらず、神経変性を引き起こすその生物学的メカニズムは不明なままである。PGRNに結合する細胞表面受容体が提案されているが、これらの受容体と神経変性との間の関連は依然として曖昧であり、このことは、他の結合パートナーが働いている可能性があることを示唆している。これらの相互作用パートナーをハイスループットかつ偏りのない様式で同定する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
プログラニュリン(PGRN)に結合する膜貫通タンパク質を同定するためのハイスループットスクリーニング方法が本明細書で提供され、この方法は、a)複数の発現ベクターを含むcDNAコレクションを提供する工程であって、各発現ベクターが別個の膜貫通タンパク質をコードする、工程と、b)複数のウェルを含むプレートを提供する工程であって、その1つ以上のウェルがそれぞれ宿主細胞を含有する、工程と、c)1つ以上のウェルのそれぞれに、当該コレクションからの別個の発現ベクターを導入し、それによって、各ウェルにおいて別個のトランスフェクトされた細胞を産生する工程と、d)各ウェルにおいて別個の膜貫通タンパク質の発現を可能にする条件下で、トランスフェクトされた細胞を培養する工程と、e)1つ以上のウェルのそれぞれにおいて、トランスフェクトされた細胞を、検出可能なタグに付着したPGRNを含む標的タンパク質と接触させる工程と、f)標的タンパク質との接触後に、トランスフェクトされた細胞を固定剤で固定する工程と、g)固定された細胞を洗浄する工程と、h)固定された細胞を洗浄する工程の後に、1つ以上のウェルのそれぞれにおける検出可能なタグの存在を決定する工程であって、検出可能なタグがウェル中に存在すると決定された場合、ウェル中のトランスフェクトされた細胞によって発現された膜貫通タンパク質は、PGRNに結合する膜貫通タンパク質として同定される、工程と、を含む、方法、に関する。
【0007】
ハイスループットスクリーニング方法の1つの態様において、宿主細胞は、ヒト胎児腎臓293T(human embryonic kidney 293T、HEK293T)細胞、HEK293F細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese hamster ovary、CHO)細胞、NIH 3T3細胞、MCF-7細胞、Hep G2細胞、ベビーハムスター腎臓(baby hamster kidne、BHK)細胞、BV-2(マウス、C57BL/6、脳、ミクログリア)細胞、Neuro-2a(N2a)細胞及びCos7細胞からなる群から選択される。
【0008】
ハイスループットスクリーニングの更なる実施形態において、固定剤は、グルタルアルデヒド、メタノール及びパラホルムアルデヒドから選択される。
【0009】
ハイスループットスクリーニング方法の尚更なる実施形態において、検出可能なタグは、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein、GFP)、myc、myc-ピルビン酸キナーゼ(myc-pyruvate kinase、myc-PK)、His6、マルトース結合タンパク質(maltose binding protein、MBP)、ヒトインフルエンザウイルス赤血球凝集素(hemagglutinin、HA)タグ、flagタグ(FLAG)、及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(glutathione-S-transferase、GST)タグからなる群から選択される。
【0010】
ハイスループットスクリーニング方法の尚更なる実施形態において、標的タンパク質は、FLAGタグ付きPGRNである。一態様では、工程h)は、h1)蛍光色素に共有結合した抗FLAG抗体をトランスフェクトされた細胞を含有するウェルに添加して、FLAGタグ付きPGRNを、存在する場合、免疫染色する工程と、h2)蛍光光度計又は撮像装置を使用してハイスループット方式で蛍光色素を検出する工程と、を含む。別の態様では、蛍光色素は、シアニン色素である。
【0011】
ハイスループットスクリーニング方法の尚更なる実施形態において、標的タンパク質は、HAタグ付きPGRNである。一態様では、工程h)は、h1)蛍光色素に共有結合された抗HA抗体に細胞を曝露して、HAタグ付きPGRNを、存在する場合、免疫染色する工程と、h2)蛍光光度計又は撮像装置を使用して蛍光色素を検出する工程と、を含む。別の態様では、蛍光色素は、Dylight 650である。
【0012】
ハイスループットスクリーニング方法の尚更なる実施形態において、工程g)とh)との間に、この方法は、固定された細胞を透過剤で透過処理する工程と、当該透過処理された細胞を洗浄する工程と、を更に含む。
【0013】
ハイスループットスクリーニング方法の尚更なる実施形態において、透過剤は、サポニン、Triton X-100、リゾレシチン、n-オクチル-B-D-グルコピラノシド、及びTween 20からなる群から選択される。
【0014】
本明細書において更に提供されるのは、PGRNに結合する細胞内タンパク質を同定するための方法であって、a)異種タンパク質をコードする発現ベクターを宿主細胞に導入し、それによってトランスフェクトされた細胞を産生する工程と、b)異種タンパク質の発現を可能にする条件下で、トランスフェクトされた細胞を培養する工程と、c)トランスフェクトされた細胞を透過剤で透過処理する工程と、d)透過処理された細胞を、検出可能なタグに付着したPGRNを含む標的タンパク質と接触させる工程と、e)標的タンパク質との接触後に、トランスフェクトされた細胞を固定剤で固定する工程と、f)固定された細胞を洗浄する工程と、g)固定された細胞を洗浄した後、洗浄された細胞上の検出可能なタグの存在を決定する工程であって、検出可能なタグが存在すると決定された場合、細胞によって発現された異種タンパク質が、PGRNに結合する細胞内タンパク質として同定される、工程と、を含む、方法、である。
【0015】
本方法の一実施形態において、宿主細胞は、ヒト胎児腎臓293T(HEK293T)細胞、HEK293F細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NIH 3T3細胞、MCF-7細胞、Hep G2細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、BV-2(マウス、C57BL/6、脳、ミクログリア)細胞、Neuro-2a(N2a)細胞及びCos7細胞からなる群から選択される。
【0016】
本方法の更なる実施形態において、検出可能なタグは、緑色蛍光タンパク質(GFP)、myc、myc-ピルビン酸キナーゼ(myc-PK)、His6、マルトース結合タンパク質(MBP)、ヒトインフルエンザ赤血球凝集素(HA)タグ、flagタグ(FLAG)、及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)タグからなる群から選択される。
【0017】
方法の尚更なる実施形態において、標的タンパク質は、FLAGタグ付きPGRNである。一態様では、工程g)は、g1)細胞を、蛍光色素に共有結合している抗FLAG抗体に曝露して、FLAGタグ付きPGRNを、存在する場合、免疫染色する工程と、g2)蛍光光度計又は撮像装置を使用して当該蛍光色素を検出する工程と、を含む。別の態様では、蛍光色素は、シアニン色素である。
【0018】
ハイスループットスクリーニング方法の尚更なる実施形態において、標的タンパク質は、HAタグ付きPGRNである。一態様では、工程g)は、g1)細胞を、蛍光色素に共有結合している抗HA抗体に曝露して、HAタグ付きPGRNを、存在する場合、免疫染色する工程と、g2)蛍光光度計又は撮像装置を使用して当該蛍光色素を検出する工程と、を含む。別の態様では、蛍光色素は、Dylight 650である。
【0019】
本方法の尚更なる実施形態において、工程b)とc)との間に、本方法は、培養細胞を固定剤で固定する工程と、固定された細胞を洗浄する工程と、を更に含む。
【0020】
本方法の尚更なる実施形態において、固定剤は、グルタルアルデヒド、メタノール及びパラホルムアルデヒドから選択される。
【0021】
本方法の尚更なる実施形態において、工程f)とg)との間に、本方法は、固定された細胞を透過剤で透過処理する工程と、透過処理された細胞を洗浄する工程と、を更に含む。
【0022】
本方法の尚更なる実施形態において、透過剤は、サポニン、Triton X-100、リゾレシチン、n-オクチル-B-D-グルコピラノシド、及びTween 20からなる群から選択される。
【0023】
本明細書において更に提供されるのは、PGRNに結合する細胞内タンパク質を同定するためのハイスループットスクリーニング方法であって、a)複数の発現ベクターを含むcDNAコレクションを提供する工程であって、各発現ベクターが別個の異種タンパク質をコードする、工程と、b)複数のウェルを含むプレートを提供する工程であって、その1つ以上のウェルがそれぞれ宿主細胞を含有する、工程と、c)1つ以上のウェルのそれぞれに、当該コレクションからの別個の発現ベクターを導入し、それによって、各ウェルにおいて別個のトランスフェクトされた細胞を産生する工程と、d)各ウェルにおいて別個の異種タンパク質の発現を可能にする条件下で、トランスフェクトされた細胞を培養する工程とe)トランスフェクトされた細胞を透過剤で透過処理する工程と、f)1つ以上のウェルのそれぞれにおいて、透過処理された細胞を、検出可能なタグに付着したPGRNを含む標的タンパク質と接触させる工程と、g)標的タンパク質との接触後に、トランスフェクトされた細胞を固定剤で固定する工程と、h)固定された細胞を洗浄する工程と、i)固定された細胞を洗浄する工程の後、1つ以上のウェルのそれぞれにおける検出可能なタグの存在を決定する工程であって、検出可能なタグがウェル中に存在すると決定された場合、ウェル中のトランスフェクトされた細胞によって発現された異種タンパク質が、PGRNに結合する細胞内タンパク質として同定される、工程と、を含む、方法、である。
【0024】
ハイスループットスクリーニング方法の1つの実施形態において、宿主細胞は、ヒト胎児腎臓293T(HEK293T)細胞、HEK293F細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NIH 3T3細胞、MCF-7細胞、Hep G2細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、BV-2(マウス、C57BL/6、脳、ミクログリア)細胞、Neuro-2a(N2a)細胞及びCos7細胞からなる群から選択される。
【0025】
ハイスループットスクリーニング方法の更なる実施形態において、検出可能なタグは、緑色蛍光タンパク質(GFP)、myc、myc-ピルビン酸キナーゼ(myc-PK)、His6、マルトース結合タンパク質(MBP)、ヒトインフルエンザ赤血球凝集素(HA)タグ、flagタグ(FLAG)、及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)タグからなる群から選択される。
【0026】
ハイスループットスクリーニング方法の尚更なる実施形態において、標的タンパク質は、FLAGタグ付きPGRNである。一態様では、工程i)は、i1)蛍光色素に共有結合された抗FLAG抗体を、トランスフェクトされた細胞を含有するウェルに添加して、FLAGタグ付きPGRNを、存在する場合、免疫染色する工程と、i2)蛍光光度計又は撮像装置を使用してハイスループット方式で蛍光色素を検出する工程と、を含む。別の態様では、蛍光色素は、シアニン色素である。
【0027】
ハイスループットスクリーニング方法の尚更なる実施形態において、標的タンパク質は、HAタグ付きPGRNである。一態様では、工程i)は、i1)細胞を、蛍光色素に共有結合している抗HA抗体に曝露して、HAタグ付きPGRNを、存在する場合、免疫染色する工程と、i2)蛍光光度計又は撮像装置を使用して当該蛍光色素を検出する工程と、を含む。別の態様では、蛍光色素は、Dylight 650である。
【0028】
ハイスループットスクリーニング方法の尚更なる実施形態において、工程d)とe)との間に、この方法は、培養細胞を固定剤で固定する工程と、固定された細胞を洗浄する工程と、を更に含む。
【0029】
ハイスループットスクリーニング方法の尚更なる実施形態において、固定剤は、グルタルアルデヒド、メタノール及びパラホルムアルデヒドから選択される。
【0030】
ハイスループットスクリーニング方法の尚更なる実施形態において、工程h)とi)との間に、この方法は、固定された細胞を透過剤で透過処理する工程と、透過処理された細胞を洗浄する工程と、を更に含む。
【0031】
ハイスループットスクリーニング方法の尚更なる実施形態において、透過剤は、サポニン、Triton X-100、リゾレシチン、n-オクチル-B-D-グルコピラノシド、及びTween 20からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】PGRNに結合する細胞内タンパク質を検出するためのスクリーニング戦略を示す概略図である。
【
図2】pcDNA3ベクターでトランスフェクトされた細胞(陰性対照)、ソルチリンのコード配列を有する発現ベクターでトランスフェクトされた細胞(陽性対照)、及びヒット細胞内タンパク質(hit intracellular protein)のコード配列を有する発現プラスミドでトランスフェクトされた細胞のCy3強度を示す図である。
【
図3A】FLAGタグ付きPGRN又はHAタグ付きPGRNに曝露され、その後、それぞれ抗Flag M2-Cy3抗体又はDylight 650抗HA抗体で免疫染色されたトランスフェクト細胞(陰性対照、陽性対照、及びHit#1)のCy3強度又はDylight 650強度を示す図である。
【
図3B】Hit#1プラスミドでトランスフェクトされたが、免疫染色前にタグ付きPGRNに曝露されなかった細胞についてのCy3シグナル及びDylight 650シグナルを示す図である。
【
図3C】FLAGタグ付きPGRN又はHAタグ付きPGRNに曝露され、その後、それぞれ抗Flag M2-Cy3抗体又はDylight 650抗HA抗体で免疫染色されたトランスフェクト細胞(陰性対照、陽性対照、及びHit#1)のCy3強度又はDylight 650強度を示す図である。
【
図4】FLAGタグ付きPGRN又はHAタグ付きPGRNへの曝露及び免疫染色の前に透過処理されなかったトランスフェクト細胞(陰性対照、陽性対照、及びHit#1)のCy3強度又はDylight 650強度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
「背景技術」において、また、本明細書全体を通じて、各種刊行物、論文及び特許を引用又は記載し、これら参照文献の各々はその全容が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれる文書、操作、材料、デバイス、物品などの考察は、本発明のコンテキストを与えるためのものである。かかる考察は、これらの事物のいずれか又は全てが、開示又は特許請求されるいずれかの発明に対する先行技術の一部を構成することを容認するものではない。
【0034】
特に規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。そうでない場合、本明細書で使用される特定の用語は、本明細書に記載される意味を有するものである。
【0035】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に文脈上明らかでない限り、複数の指示対象物を含むことに留意する必要がある。
【0036】
特に明記しない限り、本明細書に記載される濃度又は濃度範囲などのあらゆる数値は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、数値は、通常、記載される値の±10%を含む。例えば、1mg/mLの濃度は0.9mg/mL~1.1mg/mLを含む。同様に、1%~10%(w/v)の濃度範囲は0.9%(w/v)~11%(w/v)を含む。本明細書で使用するとき、数値範囲の使用は、文脈上そうでない旨が明確に示されない限り、その範囲内の整数及び値の分数を含む、全ての可能な部分範囲、その範囲内の全ての個々の数値を明示的に含む。
【0037】
別途記載のない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の全ての要素を指すと理解されるべきである。当業者であれば、単なる通常の実験手順を使用するだけで、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態に対して多くの均等物を認識するか、又は確認することができよう。かかる均等物は、本発明によって包含されることが意図される。
【0038】
本明細書で使用するとき、用語「備える(comprises)、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、若しくは「含有する(containing)」、又はこれらの任意の他の変形形態は、述べられている整数又は整数群を含むことが意図されるが、これら以外の他の整数又は整数群を除外するものではなく、非排他的又は非制限的であることが意図されることが理解されよう。例えば、一連の要素を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されない、又はかかる組成物、混合物、プロセス、方法、物品、若しくは装置に本来存在しない他の要素を含んでもよい。更に、明示的に反対に明記されない限り、「又は」は包括的な「又は」を指すものであり、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは、Aが真であり(又は存在する)かつBが偽である(又は存在しない)場合、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)場合、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)場合、のいずれか1つによって満たされる。
【0039】
本明細書に使用される場合、複数の列挙された要素間の「及び/又は」という接続的な用語は、個々の及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって接続される場合、第1の選択肢は、第2の要素なしに第1の要素が適用可能であることを指す。第2の選択肢は、第1の要素なしに第2の要素が適用可能であることを指す。第3の選択肢は、第1の要素及び第2の要素が一緒に適用可能であることを指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つが、意味の範疇に含まれ、したがって、本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」の要件を満たすことが理解される。選択肢のうちの2つ以上の同時適用性もまた、意味の範疇に含まれ、したがって、用語「及び/又は」の要件を満たすことが理解される。
【0040】
本明細書で使用するとき、用語「からなる(consists of)」、又は「からなる(consist of)」若しくは「からなる(consisting of)」などの変形は、明細書及び特許請求の範囲全体にわたって使用されるとき、任意の列挙された整数又は整数群を包含するが、追加の整数又は整数群が、指定の方法、構造、又は組成物に追加されないことを示す。
【0041】
本明細書で使用するとき、用語「から本質的になる(consists essentially of)」、又は「から本質的になる(consist essentially of)」若しくは「から本質的になる(consisting essentially of)」などの変形は、明細書及び特許請求の範囲全体にわたって使用されるとき、任意の列挙された整数又は整数群を包含し、任意選択で、指定の方法、構造、又は組成物の基本的又は新規の特性を実質的に変化させない任意の列挙された整数又は整数群を包含することを示す。M.P.E.P.§ 2 111.03.を参照されたい。
【0042】
好ましい本発明の構成要素の寸法又は特徴を指すときに本明細書で使用される「約」、「およそ」、「概ね」、「実質的に」などの用語は、当業者には理解されるように、記載の寸法/特徴が厳密な境界又はパラメータではなく、機能的に同じ又は類似する、それらからのわずかな相違を除外するものではないことを示すことも理解すべきである。最小値では、数値パラメータを含むこのような参照は、当該技術分野において受け入れられている数学的及び工業的原理(例えば、四捨五入、測定又は他の系統的誤差、製造公差など)を使用すると、最下位桁は変化しない変形形態を含む。
【0043】
本明細書で使用するとき、用語「ポリヌクレオチド」は、同義的に「核酸分子」、「ヌクレオチド」、又は「核酸」とも称され、非修飾RNA若しくはDNA又は修飾RNA若しくはDNAであってもよい、任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを指す。「ポリヌクレオチド」としては、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、並びに一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるRNA、一本鎖又はより典型的には二本鎖又は一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であってもよいDNA及びRNAを含むハイブリッド分子が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、「ポリヌクレオチド」は、RNA若しくはDNA、又はRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。ポリヌクレオチドという用語はまた、1つ以上の修飾された塩基を含有するDNA又はRNA、及び安定性若しくは他の理由により修飾された骨格を有するDNA又はRNAも含む。「修飾された」塩基は、例えば、トリチル化塩基及び異常な塩基、例えば、イノシンを含む。様々な修飾をDNA及びRNAに行うことができる。したがって、「ポリヌクレオチド」は、典型的には天然に認められるポリヌクレオチドの化学的、酵素的又は代謝的に修飾された形態、並びにウイルス及び細胞のDNA及びRNAの特徴を有する化学的形態を包含する。「ポリヌクレオチド」はまた、比較的短い核酸鎖(多くの場合、オリゴヌクレオチドと称される)も包含する。
【0044】
本明細書で使用するとき、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、又は「タンパク質」は、アミノ酸から構成される分子を指すことができ、当業者によってタンパク質として認識され得る。本明細書では、アミノ酸残基の従来の1文字又は3文字コードが使用される。用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために、本明細書において互換的に使用することができる。ポリマーは、直鎖又は分岐鎖であってもよく、修飾されたアミノ酸を含むことができ、かつ非アミノ酸により中断されてもよい。この用語はまた、天然に修飾されているか、又は介入によって修飾されているアミノ酸ポリマー、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は任意の他の操作若しくは修飾、例えば、標識成分とのコンジュゲートを包含する。また、定義には、例えば、アミノ酸の1つ以上の類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)を含有するポリペプチド、並びに当該技術分野において既知の他の修飾が含まれる。
【0045】
本明細書に記載のペプチド配列は、通常の慣習に従って記載され、ペプチドのN末端領域は左側にあり、C末端領域は右側にある。アミノ酸の異性体形態は既知であるが、別途明示的に示されない限り、示されるのはアミノ酸のL型である。
【0046】
PGRNに結合する膜貫通タンパク質の同定
一態様では、本明細書に開示される本発明は、プログラニュリン(PGRN)に結合する膜貫通タンパク質をハイスループット(high throughput、HTP)方式でスクリーニングするための方法である。
【0047】
特に、検出可能なタグと融合したPGRNから構成される標的タンパク質、cDNAライブラリー又はコレクション、及び宿主細胞が、スクリーニング方法において利用される。
【0048】
PGRNは、GRN遺伝子(NCBIアクセッション番号NM_002087.3)によってコードされるシステインリッチな分泌タンパク質である。標的タンパク質の形成において、PGRNは検出可能なタグペプチドと融合される。このようなタグペプチドは、当該分野で周知であり、緑色蛍光タンパク質(GFP)、myc、myc-ピルビン酸キナーゼ(myc-PK)、ポリヒスチジン(His6)タグ、マルトース結合タンパク質(MBP)、ヒトインフルエンザウイルス赤血球凝集素(HA)タグ(YPYDVPDYA、配列番号1)、flagタグ(FLAG)(DYKDDDDK、配列番号2)、及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)タグが挙げられるが、これらに限定されない。しかしながら、本発明は、上記に列挙したタグに限定されると決して解釈されるべきではない。むしろ、これらのタグと実質的に同様の様式で機能し得る任意のペプチド又はポリペプチドは本発明に含まれると解釈されるべきである。
【0049】
cDNAライブラリーは、各々が別個の膜貫通タンパク質をコードする複数の発現ベクターを含む。1つの実施形態において、発現ベクターの各々は、ヒト膜貫通タンパク質をコードする。用語「ベクター」は、連結されたもう1つの核酸を輸送する能力をもつ核酸分子を意味する。ベクターの代表的な一例であるプラスミドは、環状二本鎖DNAループを指し、追加のDNAセグメントがこれに挿入され得る。別のタイプのベクターは、追加のDNAセグメントを挿入することができるウイルスベクターである。発現ベクターは、それらが操作可能に連結される遺伝子の発現を指向することができるベクターである。本明細書で使用される発現ベクターは、宿主細胞における核酸の発現に適した形態のタンパク質配列をコードする核酸を含む。したがって、発現ベクターは、発現のために使用される宿主細胞に基づいて選択され、発現される核酸配列に作動可能に連結された1つ以上の調節配列(例えば、プロモーター)を含むことができる。発現ベクターに関して使用される場合、「作動可能に連結された」とは、目的のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で(例えば、インビトロ転写/翻訳系において、又はベクターが宿主細胞に導入される場合、宿主細胞において)調節配列に連結されることを意味することが意図される。発現ベクターの設計は、ベクターの意図される用途のみならず、形質転換される宿主細胞の選択及び望ましいタンパク質の発現レベルなどの因子に依存し得るということを、当業者は理解するであろう。本明細書において好適な例示的なcDNAライブラリーとしては、ThermoFisherからのUltimate(登録商標)ORF Clones、OriGeneからのPathway Study又はHTP ScreeningのためのヒトcDNA Clone Setsなどが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0050】
任意の適切な宿主細胞が本明細書で使用され得る。一実施形態では、本明細書で使用される宿主細胞は哺乳動物細胞である。適切な哺乳動物細胞は、ヒト胎児腎臓293T(HEK293T)細胞、HEK293F細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NIH 3T3細胞、MCF-7細胞、Hep G2細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、BV-2(マウス、C57BL/6、脳、ミクログリア)細胞、Neuro-2a(N2a)細胞及びCos7細胞から選択され得る。
【0051】
プログラニュリン(PGRN)に結合する膜貫通タンパク質を同定するためのハイスループットスクリーニング方法は、96ウェル、384ウェル、又は1536ウェルプレートなどのマルチウェルプレートを使用し、培養培地中の宿主細胞は、プレートの少なくとも1つのウェルに配置される。ハイスループット方式において、cDNAライブラリー由来の発現ベクターは、宿主細胞を含むウェルの各々に導入され、そしてマルチウェルプレートは、適切な培養条件下で維持されて、発現ベクターによってコードされる膜貫通タンパク質のトランスフェクション及び発現を可能にする。ここで用いられる培地は特に限定されない。例示的な培養培地としては、ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium、DMEM)、Roswell Park Memorial Institute 1640培地(RPMI 1640)、Ham’s F-12 Nutrient Mixture(F-12)、ダルベッコ改変イーグル培地:栄養素混合物F-12(DMEM/F-12)及び最小必須培地(MEM)が挙げられるが、これらに限定されない。適切な培養条件は、5%CO2及び約30~37℃で1~3日間であり得る。
【0052】
培養培地を除去した後、ハイスループット方式で、標的タンパク質(すなわち、検出可能なタグと融合したPGRN)を、トランスフェクトされた宿主細胞を含有するウェルのそれぞれに分注し、マルチウェルプレートを、膜貫通タンパク質と標的タンパク質との間の潜在的な結合を可能にするために適切な条件下で維持する。一実施形態において、トランスフェクトされた細胞を、約20~37℃で1~3時間、標的タンパク質と接触させて維持する。次いで、固定剤をマルチウェルプレートの各ウェルに添加して、トランスフェクトされた細胞を固定し、続いて洗浄緩衝液で洗浄して、結合していない標的タンパク質を除去する。適切な固定剤の例としては、グルタルアルデヒド、メタノール及びパラホルムアルデヒドが挙げられる。これらの固定剤の濃度範囲は、一般に、パラホルムアルデヒドについては0.01~8%、グルタルアルデヒドについては0.001~2%である。これら2つの試薬の組合せも使用することができる。パラホルムアルデヒドの好ましい濃度は0.1~6%であり、最も好ましい濃度は1~5%である。グルタルアルデヒドの好ましい濃度は0.01~1%であり、最も好ましい濃度は0.05~0.5%である。固定剤の特定の濃度を、特定の細胞型を最適に固定するように調整する。適切な洗浄緩衝液の例としては、HEPES平衡塩類溶液(HEPES Balanced Salt Solution、HBSS)、リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate-Buffered Saline、PBS)、トリス緩衝生理食塩水(Tris-Buffered Saline、TBS)などが挙げられる。
【0053】
最後に、プレートを、各ウェル中の検出可能なタグの存在についてスクリーニングし、ここで、検出可能なタグがウェル中に存在すると決定される場合、ウェル中に含まれるトランスフェクトされた細胞によって発現される膜貫通タンパク質は、膜貫通タンパク質がPGRNに結合すると同定される。好ましくは、検出可能なタグについてのスクリーニングは、自動化プロセスである。
【0054】
必要に応じて、検出可能なタグについての最終スクリーニングの前に、各ウェル中の細胞を透過剤で透過処理し、続いて洗浄緩衝液で洗浄する。透過剤は、一般に、界面活性剤又は界面活性剤様化合物であり、サポニン、Triton X-100、リゾレシチン、n-オクチル-B-D-グルコピラノシド、及びTween 20を含み得るが、これらに限定されない。
【0055】
宿主細胞を1つ以上のウェルに配置することから開始して、検出可能なタグの存在についてスクリーニングするまで、プロセスの各工程は、ロボットアームなどによってハイスループット方式で実施され得る。
【0056】
一実施形態では、検出可能なタグはFLAGタグであり、標的タンパク質はN末端FLAGタグ付きPGRNである。最終スクリーニングは、蛍光色素(例えば、Cy3又はCy5などのシアニン色素)に共有結合された抗FLAG抗体を、トランスフェクトされた細胞を含有するウェルに添加して、FLAGタグ付きPGRNを、存在する場合、免疫染色する工程と、例えば、蛍光光度計又は撮像装置を使用して蛍光色素を検出する工程と、を含む。
【0057】
N末端FLAGタグ付きPGRN:
配列番号3
ATGTGGACTCTGGTCTCATGGGTGGCTCTGACTGCTGGACTGGTGGCTGGAACCGACTACAAGGACGACGACGACAAACTCGCTGCCCTGACGGCCAGTTCTGCGACAAATGGCCCACAACACTGAGCAGGCATCTGGGTGGCCCCTGCCAGGTTGATGCCCACTGCTCTGCCGGCCACTCCTGCATCTTTACCGTCTCAGGGACTTCCAGTTGCTGCCCCTTCCCAGAGGCCGTGGCATGCGGGGATGGCCATCACTGCTGCCCACGGGGCTTCCACTGCAGTGCAGACGGGCGATCCTGCTTCCAAAGATCAGGTAACAACTCCGTGGGTGCCATCCAGTGCCCTGATAGTCAGTTCGAATGCCCGGACTTCTCCACGTGCTGTGTTATGGTCGATGGCTCCTGGGGGTGCTGCCCCATGCCCCAGGCTTCCTGCTGTGAAGACAGGGTGCACTGCTGTCCGCACGGTGCCTTCTGCGACCTGGTTCACACCCGCTGCATCACACCCACGGGCACCCACCCCCTGGCAAAGAAGCTCCCTGCCCAGAGGACTAACAGGGCAGTGGCCTTGTCCAGCTCGGTCATGTGTCCGGACGCACGGTCCCGGTGCCCTGATGGTTCTACCTGCTGTGAGCTGCCCAGTGGGAAGTATGGCTGCTGCCCAATGCCCAACGCCACCTGCTGCTCCGATCACCTGCACTGCTGCCCCCAAGACACTGTGTGTGACCTGATCCAGAGTAAGTGCCTCTCCAAGGAGAACGCTACCACGGACCTCCTCACTAAGCTGCCTGCGCACACAGTGGGGGATGTGAAATGTGACATGGAGGTGAGCTGCCCAGATGGCTATACCTGCTGCCGTCTACAGTCGGGGGCCTGGGGCTGCTGCCCTTTTACCCAGGCTGTGTGCTGTGAGGACCACATACACTGCTGTCCCGCGGGGTTTACGTGTGACACGCAGAAGGGTACCTGTGAACAGGGGCCCCACCAGGTGCCCTGGATGGAGAAGGCCCCAGCTCACCTCAGCCTGCCAGACCCACAAGCCTTGAAGAGAGATGTCCCCTGTGATAATGTCAGCAGCTGTCCCTCCTCCGATACCTGCTGCCAACTCACGTCTGGGGAGTGGGGCTGCTGTCCAATCCCAGAGGCTGTCTGCTGCTCGGACCACCAGCACTGCTGCCCCCAGGGCTACACGTGTGTAGCTGAGGGGCAGTGTCAGCGAGGAAGCGAGATCGTGGCTGGACTGGAGAAGATGCCTGCCCGCCGGGCTTCCTTATCCCACCCCAGAGACATCGGCTGTGACCAGCACACCAGCTGCCCGGTGGGGCAGACCTGCTGCCCGAGCCTGGGTGGGAGCTGGGCCTGCTGCCAGTTGCCCCATGCTGTGTGCTGCGAGGATCGCCAGCACTGCTGCCCGGCTGGCTACACCTGCAACGTGAAGGCTCGATCCTGCGAGAAGGAAGTGGTCTCTGCCCAGCCTGCCACCTTCCTGGCCCGTAGCCCTCACGTGGGTGTGAAGGACGTGGAGTGTGGGGAAGGACACTTCTGCCATGATAACCAGACCTGCTGCCGAGACAACCGACAGGGCTGGGCCTGCTGTCCCTACCGCCAGGGCGTCTGTTGTGCTGATCGGCGCCACTGCTGTCCTGCTGGCTTCCGCTGCGCAGCCAGGGGTACCAAGTGTTTGCGCAGGGAGGCCCCGCGCTGGGACGCCCCTTTGAGGGACCCAGCCTTGAGACAGCTGCTGTGAGGGACAGTACTGAAGACTCTGCAGCCCTCGGGACCCCACTCGGAGGGTGCCCTCTGCTCA
【0058】
配列番号4
MWTLVSWVALTAGLVAGTDYKDDDDKRCPDGQFCPVACCLDPGGASYSCCRPLLDKWPTTLSRHLGGPCQVDAHCSAGHSCIFTVSGTSSCCPFPEAVACGDGHHCCPRGFHCSADGRSCFQRSGNNSVGAIQCPDSQFECPDFSTCCVMVDGSWGCCPMPQASCCEDRVHCCPHGAFCDLVHTRCITPTGTHPLAKKLPAQRTNRAVALSSSVMCPDARSRCPDGSTCCELPSGKYGCCPMPNATCCSDHLHCCPQDTVCDLIQSKCLSKENATTDLLTKLPAHTVGDVKCDMEVSCPDGYTCCRLQSGAWGCCPFTQAVCCEDHIHCCPAGFTCDTQKGTCEQGPHQVPWMEKAPAHLSLPDPQALKRDVPCDNVSSCPSSDTCCQLTSGEWGCCPIPEAVCCSDHQHCCPQGYTCVAEGQCQRGSEIVAGLEKMPARRASLSHPRDIGCDQHTSCPVGQTCCPSLGGSWACCQLPHAVCCEDRQHCCPAGYTCNVKARSCEKEVVSAQPATFLARSPHVGVKDVECGEGHFCHDNQTCCRDNRQGWACCPYRQGVCCADRRHCCPAGFRCAARGTKCLRREAPRWDAPLRDPALRQLL
【0059】
一実施形態では、検出可能なタグはHAタグであり、標的タンパク質はN末端HAタグ付きPGRNである。最終スクリーニングは、色素に共有結合された抗HA抗体(例えば、Dylight 650(登録商標)抗HA抗体)を、トランスフェクトされた細胞を含むウェルに添加して、HAタグ付きPGRNを、存在する場合、免疫染色する工程と、色素を検出する工程と、を含む。
【0060】
N末端HAタグ付きPGRN:
配列番号5
ATGTGGACTCTGGTCTCATGGGTGGCTCTGACTGCTGGACTGGTGGCTGGAACCTACCCATACGATGTTCCAGATTACGCTCGCTGCCCTGACGGCCAGTTCTGCGACAAATGGCCCACAACACTGAGCAGGCATCTGGGTGGCCCCTGCCAGGTTGATGCCCACTGCTCTGCCGGCCACTCCTGCATCTTTACCGTCTCAGGGACTTCCAGTTGCTGCCCCTTCCCAGAGGCCGTGGCATGCGGGGATGGCCATCACTGCTGCCCACGGGGCTTCCACTGCAGTGCAGACGGGCGATCCTGCTTCCAAAGATCAGGTAACAACTCCGTGGGTGCCATCCAGTGCCCTGATAGTCAGTTCGAATGCCCGGACTTCTCCACGTGCTGTGTTATGGTCGATGGCTCCTGGGGGTGCTGCCCCATGCCCCAGGCTTCCTGCTGTGAAGACAGGGTGCACTGCTGTCCGCACGGTGCCTTCTGCGACCTGGTTCACACCCGCTGCATCACACCCACGGGCACCCACCCCCTGGCAAAGAAGCTCCCTGCCCAGAGGACTAACAGGGCAGTGGCCTTGTCCAGCTCGGTCATGTGTCCGGACGCACGGTCCCGGTGCCCTGATGGTTCTACCTGCTGTGAGCTGCCCAGTGGGAAGTATGGCTGCTGCCCAATGCCCAACGCCACCTGCTGCTCCGATCACCTGCACTGCTGCCCCCAAGACACTGTGTGTGACCTGATCCAGAGTAAGTGCCTCTCCAAGGAGAACGCTACCACGGACCTCCTCACTAAGCTGCCTGCGCACACAGTGGGGGATGTGAAATGTGACATGGAGGTGAGCTGCCCAGATGGCTATACCTGCTGCCGTCTACAGTCGGGGGCCTGGGGCTGCTGCCCTTTTACCCAGGCTGTGTGCTGTGAGGACCACATACACTGCTGTCCCGCGGGGTTTACGTGTGACACGCAGAAGGGTACCTGTGAACAGGGGCCCCACCAGGTGCCCTGGATGGAGAAGGCCCCAGCTCACCTCAGCCTGCCAGACCCACAAGCCTTGAAGAGAGATGTCCCCTGTGATAATGTCAGCAGCTGTCCCTCCTCCGATACCTGCTGCCAACTCACGTCTGGGGAGTGGGGCTGCTGTCCAATCCCAGAGGCTGTCTGCTGCTCGGACCACCAGCACTGCTGCCCCCAGGGCTACACGTGTGTAGCTGAGGGGCAGTGTCAGCGAGGAAGCGAGATCGTGGCTGGACTGGAGAAGATGCCTGCCCGCCGGGCTTCCTTATCCCACCCCAGAGACATCGGCTGTGACCAGCACACCAGCTGCCCGGTGGGGCAGACCTGCTGCCCGAGCCTGGGTGGGAGCTGGGCCTGCTGCCAGTTGCCCCATGCTGTGTGCTGCGAGGATCGCCAGCACTGCTGCCCGGCTGGCTACACCTGCAACGTGAAGGCTCGATCCTGCGAGAAGGAAGTGGTCTCTGCCCAGCCTGCCACCTTCCTGGCCCGTAGCCCTCACGTGGGTGTGAAGGACGTGGAGTGTGGGGAAGGACACTTCTGCCATGATAACCAGACCTGCTGCCGAGACAACCGACAGGGCTGGGCCTGCTGTCCCTACCGCCAGGGCGTCTGTTGTGCTGATCGGCGCCACTGCTGTCCTGCTGGCTTCCGCTGCGCAGCCAGGGGTACCAAGTGTTTGCGCAGGGAGGCCCCGCGCTGGGACGCCCCTTTGAGGGACCCAGCCTTGAGACAGCTGCTGTGAGGGACAGTACTGAAGACTCTGCAGCCCTCGGGACCCCACTCGGAGGGTGCCCTCTGCTCA
【0061】
配列番号6
MWTLVSWVALTAGLVAGTYPYDVPDYARCPDGQFCPVACCLDPGGASYSCCRPLLDKWPTTLSRHLGGPCQVDAHCSAGHSCIFTVSGTSSCCPFPEAVACGDGHHCCPRGFHCSADGRSCFQRSGNNSVGAIQCPDSQFECPDFSTCCVMVDGSWGCCPMPQASCCEDRVHCCPHGAFCDLVHTRCITPTGTHPLAKKLPAQRTNRAVALSSSVMCPDARSRCPDGSTCCELPSGKYGCCPMPNATCCSDHLHCCPQDTVCDLIQSKCLSKENATTDLLTKLPAHTVGDVKCDMEVSCPDGYTCCRLQSGAWGCCPFTQAVCCEDHIHCCPAGFTCDTQKGTCEQGPHQVPWMEKAPAHLSLPDPQALKRDVPCDNVSSCPSSDTCCQLTSGEWGCCPIPEAVCCSDHQHCCPQGYTCVAEGQCQRGSEIVAGLEKMPARRASLSHPRDIGCDQHTSCPVGQTCCPSLGGSWACCQLPHAVCCEDRQHCCPAGYTCNVKARSCEKEVVSAQPATFLARSPHVGVKDVECGEGHFCHDNQTCCRDNRQGWACCPYRQGVCCADRRHCCPAGFRCAARGTKCLRREAPRWDAPLRDPALRQL
【0062】
好ましくは、タグ付けされたPGRNを検出するために、ハイコンテントスループット撮像装置が使用される。
【0063】
PGRNに結合する細胞内タンパク質の同定
別の態様において、本明細書に開示される本発明は、プログラニュリン(PGRN)に結合する細胞内タンパク質をスクリーニングする方法である。方法の概略を
図1に示す。
【0064】
この方法では、検出可能なタグと融合したPGRNからなる標的タンパク質(上記の通り)、それぞれが別個のタンパク質(好ましくはヒトタンパク質、より好ましくはヒト細胞内タンパク質)をコードする複数の発現ベクターを含むcDNAライブラリー又はコレクション、及び宿主細胞(上記の通り)が利用される。
【0065】
この方法は、cDNAライブラリー由来の発現ベクターを宿主細胞に導入する工程と、発現ベクターによってコードされるタンパク質のトランスフェクション及び発現を可能にする適切な培養条件下で、適切な培養培地中で発現ベクター及び宿主細胞を維持する工程と、を含む。適切な培養条件は、上記のものと同じである。
【0066】
培養培地を除去した後、トランスフェクトされた細胞を透過剤(上記の通り)で透過処理し、続いて洗浄緩衝液で洗浄する。透過剤は、細胞の細胞膜を十分に破壊して、標的タンパク質が細胞に入ることを可能にすることができる。次いで、透過処理した細胞を標的タンパク質と接触させ、細胞内タンパク質と標的タンパク質との間の潜在的結合を可能にする適切な条件下(上記の通り)で維持する。任意選択で、透過処理の前に、トランスフェクトされた細胞を固定剤で固定し、続いて洗浄緩衝液で洗浄する。
【0067】
標的タンパク質を接触させた後、細胞を固定剤(上記の通り)で固定し、洗浄緩衝液で洗浄して非結合標的タンパク質を除去する。
【0068】
最後に、検出可能なタグの存在を決定し、ここで、検出可能なタグが存在すると決定される場合、発現ベクターによってコードされるタンパク質は、細胞内タンパク質がPGRNに結合すると同定する。
【0069】
必要に応じて、検出可能なタグを検出する前に、固定された細胞を、透過剤で再び透過処理し、続いて洗浄緩衝液で洗浄する。
【0070】
一実施形態では、検出可能なタグはFLAGタグであり、標的タンパク質はN末端FLAGタグ付きPGRNである。FLAGタグの存在を決定するために、蛍光色素(シアニン色素、例えば、Cy3又はCy5など)に共有結合した抗FLAG抗体を添加して、FLAGタグ付きPGRN(存在する場合)を免疫染色し、撮像装置又は蛍光光度計を使用して細胞上の蛍光色素の存在を検出する。
【0071】
一実施形態では、検出可能なタグはHAタグであり、標的タンパク質はN末端HAタグ付きPGRNである。最終スクリーニングは、色素に共有結合された抗HA抗体(例えば、Dylight 650(登録商標)抗HA抗体)を、トランスフェクトされた細胞を含むウェルに添加して、HAタグ付きPGRNを、存在する場合、免疫染色する工程と、色素を検出する工程と、を含む。
【0072】
一実施形態では、プログラニュリン(PGRN)に結合する細胞内タンパク質のスクリーニングは、ハイスループット方式で行われる。ハイスループットプロセスでは、96ウェルプレート、384ウェルプレート、又は1536ウェルプレートなどのマルチウェルプレートが使用される。適切な培養培地中の宿主細胞を、プレートの1つ以上のウェルに入れる。そして、宿主細胞を1つ以上のウェルに配置する工程から開始して、検出可能なタグの存在についてスクリーニングするまで、プロセスの各工程を、ロボットアームなどによってハイスループット方式で行う。
【実施例】
【0073】
当業者は、広い発明概念から逸脱することなく、上で説明される実施形態に変更を行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に制限されず、本明細書によって定義されるように本発明の趣旨及び範囲内の修正を包含することを意図するものと理解される。
【0074】
プログラニュリンの細胞表面受容体の同定
この研究では、膜貫通ドメイン(OriGeneから入手)を有するヒト及びマウスタンパク質の両方のための4,000を超えるトランスフェクション準備済みcDNAプラスミドを含有するcDNAコレクションを使用した。ヒトオープンリーディングフレーム(open reading frame、ORF)は、pCMV6-AC、pCMV6-XL4、pCMV6-XL5、pCMV6-XL6、又はpCMV6-NEOバックボーン上に位置し、マウスORFは、pCMV6-Kan/Neoスケルトン上に位置する。cDNAプラスミドを、Fugene 6(Promega)を使用して、384ウェルポリ-D-リジンコーティングプレート(Perkin Elmer)中のHEK293T細胞(ATCC)に個々にトランスフェクトした。各ウェルに10,000個の細胞を播種した。製造者の指示に従ってFugene 6を使用して、各ウェルを60ngのプラスミドDNAでトランスフェクトし、そのうちの0.3ngはトランスフェクション効率対照としてのGFPプラスミド(pcDNA3.1上に発現された緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子)であった。細胞を37℃で1日間インキュベートし、その後、細胞を30℃に移し、2日間インキュベートした。トランスフェクションの3日後、各ウェル中の細胞を、100nMのN末端flagタグ付きPGRNと共に室温で2時間インキュベートした。PGRNインキュベーション後、培地を除去し、細胞を室温で40分間、4%パラホルムアルデヒドで固定した。その後、細胞をHEPES 平衡塩類溶液(HEPES Balanced Salt Solution、HBSS)で3回洗浄し、0.3%Triton X-100を用いて室温で30分間透過処理した。透過処理後、細胞を再び3回洗浄し、次いで400ng/mLの抗Flag M2-Cy3抗体(Sigma)を用いて4℃で一晩免疫染色した。翌日、細胞を再び3回洗浄し、次いで、製造業者の指示に従ってNucBlue Live ReadyProbes Reagent(Invitrogen)で染色した。続いて、Opera Phenixハイコンテントスループットイメージングマシン(Perkin Elmer)を用いてプレートを画像化した。
【0075】
プログラニュリンの細胞内結合パートナーの同定
合計約9,000個のプラスミドの2つの別個のcDNAコレクションをスクリーニングした。第1のcDNAコレクションは、中枢神経系(central nervous system、CNS)において発現されるヒトタンパク質及びマウスタンパク質の両方についての約3000個のトランスフェクション準備済みcDNAプラスミドを含む。ヒトORFは、上記と同様であり、pCMV6-AC、pCMV6-XL4、pCMV6-XL5、pCMV6-XL6、又はpCMV6-NEOバックボーン上に位置する。このコレクションにおけるマウスORFは、pCMV6-Entryバックボーン上に位置する。このコレクション中のタンパク質のいくつかをMyc-DDKタグでタグ付けし、この場合、HAタグ付きPGRNをスクリーニングに使用した。第2のcDNAコレクションは、hORFeome V8.1ライブラリー(Broad Instituteから入手)から選択された約6000個のトランスフェクション準備済みcDNAプラスミドを含む。プラスミドを、Fugene 6(Promega)を使用して、384ウェルポリ-D-リジンコーティングプレート(Perkin Elmer)中のHEK293T細胞(ATCC)に個々にトランスフェクトした。各ウェルに10,000個の細胞を播種した。製造業者の指示に従ってFugene 6を使用して、各ウェルを60ngのプラスミドDNAでトランスフェクトし、そのうちの3ngはトランスフェクション対照としてのGFPプラスミドであった。細胞を37℃で1日間インキュベートし、その後、細胞を30℃に移し、2日間インキュベートした。トランスフェクションの3日後、培地を除去し、細胞を4%パラホルムアルデヒドで室温にて40分間固定した。その後、細胞をHBSSで3回洗浄し、0.3%Triton X-100を用いて室温で30分間透過処理した。透過処理後、細胞を再び3回洗浄し、100nMのN末端flagタグ付きPGRNを含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、室温で2時間インキュベートした。PGRNと共にインキュベートした後、DMEMを除去し、細胞を再び4%パラホルムアルデヒドで40分間室温で固定した。2回目の固定後、細胞を再びHBSSで3回洗浄し、次いで400ng/mLの抗Flag M2-Cy3抗体(Sigma)を用いて4℃で一晩免疫染色した。翌日、細胞を再び3回洗浄し、次いで、製造業者の指示に従ってNucBlue Live ReadyProbes Reagent(Invitrogen)で染色した。続いて、Opera Phenixハイコンテントスループットイメージングマシン(Perkin Elmer)を用いてプレートを画像化した。
図2は、pcDNA3ベクターでトランスフェクトした細胞(陰性対照)及びソルチリンのコード配列を有する発現ベクターでトランスフェクトした細胞(陽性対照)についてのCy3強度を示す。また、
図2に示されるのは、9000発現プラスミドの1つでトランスフェクトされた細胞についてのCy3強度であり、これは陽性対照に匹敵する。したがって、発現プラスミドによってコードされる細胞内タンパク質を、Hit#1として同定した。
【0076】
Hit#1の確認
Hit#1のプラスミドを、pcDNA3ベクター(陰性対照)及びソルチリンのコード配列を有する発現ベクター(陽性対照)と共に、HEK293細胞に個別にトランスフェクトした。「プログラニュリンに対する細胞内結合パートナーの同定」の下で記載される同じプロセスに従って、トランスフェクトされた細胞を、N末端FLAGタグ付きPGRN又はN末端HAタグ付きPGRNに曝露し、その後、それぞれ抗Flag M2-Cy3抗体及びDylight 650抗HA抗体で免疫染色した。
図3A及び
図3Cに示されるように、Hit#1プラスミドでトランスフェクトされた細胞についてのCy3及びDylight強度は、陽性対照についてのものと同等であった。加えて、Hit#1プラスミドでトランスフェクトされた細胞はまた、FLAGタグ付きPGRN又はHAタグ付きPGRNへの事前曝露なしに、抗Flag M2-Cy3抗体及びDylight 650抗HA抗体で免疫染色した。そして、
図3Bに示されるように、両方の場合において、蛍光シグナルは陰性対照と同じであり、Hit#1の同定は、Hit#1プラスミドでトランスフェクトされた細胞への非特異的抗体結合によるものではないことが確認された。
【0077】
更に、「プログラニュリンに対する細胞表面受容体の同定」に記載した同じプロセスに従って、pcDNA3ベクター(陰性対照)、ソルチリンのコード配列を有する発現ベクター(陽性対照)、及びHit#1プラスミドでトランスフェクトしたHEK293細胞を、透過処理せずにFLAGタグ付きPGRN又はHAタグ付きPGRNに曝露し、その後、それぞれ抗Flag M2-Cy3抗体及びDylight 650抗HA抗体で免疫染色した。
図4に示すように、Hit#1の蛍光シグナル強度は陰性対照と同じであり、Hit#1がPGRNの表面受容体ではないことが確認された。
【配列表】
【国際調査報告】