(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】キャップバイアス電圧を使用した傾斜モードのSEMによる後方散乱電子(BSE)撮像
(51)【国際特許分類】
H01J 37/05 20060101AFI20240403BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20240403BHJP
H01J 37/244 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H01J37/05
H01J37/28 B
H01J37/244
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566479
(86)(22)【出願日】2022-01-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 US2022013479
(87)【国際公開番号】W WO2022231673
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504144253
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ イスラエル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ズール, ヤウダ
(72)【発明者】
【氏名】ペトロフ, イゴール
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101EE34
5C101EE51
5C101EE65
5C101EE68
5C101EE69
5C101GG05
5C101GG42
(57)【要約】
サンプルの領域を評価する方法であって、真空チャンバ内にサンプルを配置することと、一端に電子銃を備え、反対側の端にカラムキャップを備えた走査型電子顕微鏡(SEM)カラムを用いて電子ビームを生成することと、SEMカラムを傾斜モードで動作させながら、電子ビームをサンプル上に集束させ、集束した電子ビームをサンプルの領域にわたって走査することにより、領域内から二次電子および後方散乱電子を生成することと、走査中に、カラムキャップに負のバイアス電圧を印加して二次電子の軌道を変更することにより二次電子が1つまたは複数の検出器に到達するのを防ぎながら、1つまたは複数の検出器で後方散乱電子を収集することと、を含む、方法。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの領域を評価する方法であって、前記方法は、
真空チャンバ内にサンプルを配置することと、
走査型電子顕微鏡(SEM)カラムを使用して電子ビームを生成することであって、前記SEMカラムが、前記カラムの一端に電子銃を備え、前記カラムの反対側の端にカラムキャップを備える、電子ビームを生成することと、
前記SEMカラムを傾斜モードで動作させながら、前記電子ビームを前記サンプル上に集束させ、集束した前記電子ビームを前記サンプルの前記領域にわたって走査することにより、前記領域内から二次電子と後方散乱電子とを生成することと、
前記走査中に、前記カラムキャップに負のバイアス電圧を印加して前記二次電子の軌道を変更することにより前記二次電子が1つまたは複数の検出器に到達するのを防ぎながら、前記1つまたは複数の検出器で後方散乱電子を収集することと、
を含む、サンプルの領域を評価する方法。
【請求項2】
収集された前記後方散乱電子から、前記領域の少なくとも一部の画像を生成することをさらに含む、請求項1に記載のサンプルの領域を評価する方法。
【請求項3】
前記カラムキャップに負のバイアスを印加することが、マイナス50ボルトとマイナス1000ボルトとの間のバイアス電圧を印加することを含む、請求項1に記載のサンプルの領域を評価する方法。
【請求項4】
前記カラムキャップが、先端に開口部をもつ円錐形状を有しており、前記電子ビームが、前記開口部を通して照射される、請求項1に記載のサンプルの領域を評価する方法。
【請求項5】
前記1つまたは複数の検出器が、インレンズ検出器および上部検出器を含む、請求項1に記載のサンプルの領域を評価する方法。
【請求項6】
後方散乱電子を収集することが、外部検出器を用いて前記後方散乱電子を収集することを含む、請求項1に記載のサンプルの領域を評価する方法。
【請求項7】
前記カラムキャップに負のバイアスを印加することが、マイナス100ボルトとマイナス500ボルトとの間のバイアス電圧を印加することを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のサンプルの領域を評価する方法。
【請求項8】
サンプルの領域を評価するためのシステムであって、
真空チャンバと、
サンプル評価プロセス中に前記真空チャンバ内にサンプルを保持するように構成されたサンプル支持体と、
前記サンプルに向けて前記真空チャンバ内に荷電粒子ビームを照射するように構成された走査型電子顕微鏡(SEM)カラムであって、前記SEMカラムは前記カラムの一端に電子銃を備え、前記カラムの反対側の端にカラムキャップを備えている、SEMカラムと、
後方散乱電子を検出するように構成された検出器と、
プロセッサおよび前記プロセッサに接続されたメモリとを備え、前記メモリは、前記プロセッサによって実行されると、前記システムに、
真空チャンバ内にサンプルを配置し、
前記走査型電子顕微鏡(SEM)カラムで電子ビームを生成し、
前記SEMカラムを傾斜モードで動作させながら、前記電子ビームを前記サンプル上に集束させ、集束した前記電子ビームを前記サンプルの前記領域にわたって走査することにより、前記領域内から二次電子と後方散乱電子とを生成し、
前記電子ビームが前記領域にわたって走査されている間、前記カラムキャップに負のバイアス電圧を印加して前記二次電子の軌道を変更することにより前記二次電子が1つまたは複数の検出器に到達するのを防ぎながら、前記1つまたは複数の検出器で後方散乱電子を収集する、
ことを行わせる複数のコンピュータ可読命令を含む、システム。
【請求項9】
前記複数のコンピュータ可読命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記システムに、検出された前記後方散乱電子から前記領域の少なくとも一部の画像を生成させることをさらに行わせる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記カラムキャップに負のバイアスを印加することが、マイナス50ボルトとマイナス1000ボルトとの間のバイアス電圧を印加することを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記カラムキャップに負のバイアスを印加することが、マイナス100ボルトとマイナス500ボルトとの間のバイアス電圧を印加することを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記カラムキャップが、先端に開口部をもつ円錐形状を有し、前記電子ビームが、前記開口部を通して照射される、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記1つまたは複数の検出器が、インレンズ検出器および上部検出器を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記システムが外部検出器を備える、請求項8から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
サンプルの領域を評価するための複数のコンピュータ可読命令を格納する非一時的なコンピュータ可読メモリであって、
真空チャンバ内にサンプルを配置し、
走査型電子顕微鏡(SEM)カラムであって、前記カラムの一端に電子銃を備え、前記カラムの反対側の端にカラムキャップを備えたSEMカラムを使用して電子ビームを生成し、
前記SEMカラムを傾斜モードで動作させながら、前記電子ビームを前記サンプル上に集束させ、集束した前記電子ビームを前記サンプルの前記領域にわたって走査することにより、前記領域内から二次電子と後方散乱電子とを生成し、
前記走査中に、前記カラムキャップに負のバイアス電圧を印加して前記二次電子の軌道を変更することにより前記二次電子が1つまたは複数の検出器に到達するのを防ぎながら、前記1つまたは複数の検出器で後方散乱電子を収集する、
ことにより、前記サンプルの前記領域を評価する、非一時的なコンピュータ可読メモリ。
【請求項16】
サンプルの領域を評価するための前記複数のコンピュータ可読命令が、収集された前記後方散乱電子から前記領域の少なくとも一部の画像を生成するための命令をさらに含む、請求項15に記載の非一時的なコンピュータ可読メモリ。
【請求項17】
前記カラムキャップに負のバイアスを印加することが、マイナス50ボルトとマイナス1000ボルトとの間のバイアス電圧を印加することを含む、請求項15に記載の非一時的なコンピュータ可読メモリ。
【請求項18】
前記カラムキャップに負のバイアスを印加することが、マイナス100ボルトとマイナス500ボルトとの間のバイアス電圧を印加することを含む、請求項15に記載の非一時的なコンピュータ可読メモリ。
【請求項19】
前記カラムキャップが、先端に開口部をもつ円錐形状を有し、前記電子ビームが、前記開口部を通して照射される、請求項15に記載の非一時的なコンピュータ可読メモリ。
【請求項20】
前記1つまたは複数の検出器が、インレンズ検出器および上部検出器を含む、請求項15から19のいずれか一項に記載の非一時的なコンピュータ可読メモリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2021年4月28日に出願された米国特許出願第17/243,478号に対する優先権を主張する。その開示は、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
電子材料およびそのような材料を電子構造に製造するプロセスの研究では、電子構造の標本を故障解析やデバイスの検証を目的とした顕微鏡検査に使用できる。例えば、シリコンウエハなどの電子構造の標本を走査型電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)で分析して、ウエハの特定の特徴的なフィーチャを研究できる。このような特徴的なフィーチャには、製造された回路や製造プロセス中に形成された欠陥が含まれる場合がある。電子顕微鏡は、半導体デバイスの微細構造を解析するのに最も役立つ機器の1つである。
【0003】
SEMツールからの電子ビームでサンプルを検査する場合、電子ビームがサンプルに衝突すると、二次電子と後方散乱電子とが生成される。二次電子はサンプル自体の原子から発生し、電子ビームとサンプルとの間の非弾性相互作用の結果である。二次電子は比較的エネルギーが低く(例えば、0~20eV)、サンプルの表面または表面近くから発生する。後方散乱電子(BSE:backscattered electrons)は、ビームとサンプルとの間の弾性相互作用の後に反射される。後方散乱電子は電子ビームのエネルギーレベルに近いエネルギーレベルを持つ可能性があるため、サンプルのより深い領域から発生する可能性がある。
【0004】
これらおよびその他の違いにより、二次電子と後方散乱電子とはさまざまな種類の情報を提供できる。二次電子はサンプルに関する詳細な表面情報を提供できるが、後方散乱電子は原子番号の違いに高い感度を示すため、対象を撮像する際に物質のコントラストを提供するのに役立つ。
【0005】
通常、二次電子収量は後方散乱電子収量よりもはるかに大きくなる。したがって、後方散乱電子を収集する場合、後方散乱電子信号を正確に見るために二次電子信号を抑制する必要がある。一般的なSEMツールでは、二次電子信号を抑制するには、サンプルと検出器との間にエネルギーフィルタを配置し、比較的低エネルギーの二次電子が検出器に到達するのをエネルギーフィルタがブロックする。このアプローチは過去にうまく使用されてきたが、後方散乱電子を検出する新しい方法が望まれている。
【発明の概要】
【0006】
本開示のいくつかの実施形態は、走査型電子顕微鏡でサンプルを撮像する際に後方散乱電子を収集するための改良された方法および技術に関する。収集された電子は、材料のコントラストを提供するなど、サンプルの特性を評価するために使用できる。
【0007】
いくつかの実施形態では、サンプルの領域を評価する方法は、真空チャンバ内にサンプルを配置することと、一端に電子銃を備え、反対側の端にカラムキャップを備えた走査型電子顕微鏡(SEM)カラムを用いて電子ビームを生成することと、SEMカラムを傾斜モードで動作させながら、電子ビームをサンプル上に集束させ、集束した電子ビームをサンプルの領域にわたって走査することにより、領域内から二次電子および後方散乱電子を生成することと、走査中に、カラムキャップに負のバイアス電圧を印加して二次電子の軌道を変更することにより二次電子が1つまたは複数の検出器に到達するのを防ぎながら、1つまたは複数の検出器で後方散乱電子を収集することと、を含む。
【0008】
本明細書で説明される実施形態のさまざまな実装には、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含めることができる。検出された後方散乱電子から、領域の少なくとも一部の画像を生成する。カラムキャップにマイナス50ボルトおよびマイナス1000ボルトの負のバイアスを印加する。カラムキャップにマイナス100とマイナス500ボルトとの間の負のバイアスを印加する。カラムキャップは先端に開口部を備えた円錐形であってもよく、その開口部を通して電子ビームを照射することができる。後方散乱電子は、インレンズ検出器と上部検出器で収集されてもよい。後方散乱電子は、外部検出器で収集されてもよい。
【0009】
いくつかの実施形態は、上記または本明細書の方法のいずれかに従ってサンプルの領域のX線分光法表面物質分析を実行するための命令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体に関する。例えば、真空チャンバ内にサンプルを配置し、一端に電子銃を備え、反対側の端にカラムキャップを備えた走査型電子顕微鏡(SEM)カラムを用いて電子ビームを生成し、SEMカラムを傾斜モードで動作させながら、電子ビームをサンプル上に集束させ、集束した電子ビームをサンプルの領域にわたって走査することにより、領域内から二次電子および後方散乱電子を生成し、走査中に、カラムキャップに負のバイアス電圧を印加して二次電子の軌道を変更することにより二次電子が1つまたは複数の検出器に到達するのを防ぎながら、1つまたは複数の検出器で後方散乱電子を収集することによる。
【0010】
いくつかの実施形態は、上記または本明細書に記載の方法のいずれかに従って、サンプルの領域のX線分光法表面材料分析を実行するためのシステムに関する。例えば、システムは、真空チャンバと、サンプル評価プロセス中に真空チャンバ内にサンプルを保持するように構成されたサンプル支持体と、荷電粒子ビームをサンプルに向けて真空室内に照射するように構成された走査型電子顕微鏡(SEM)カラムであって、カラムの一端に電子銃を有し、カラムの他端にカラムキャップを含むSEMカラムと、後方散乱電子を検出するように構成された検出器と、プロセッサおよびプロセッサに接続されたメモリと、を含み得る。メモリは、プロセッサによって実行されると、システムに、真空チャンバ内にサンプルを配置し、一端に電子銃を備え、反対側の端にカラムキャップを備えた走査型電子顕微鏡(SEM)カラムを用いて電子ビームを生成し、SEMカラムを傾斜モードで動作させながら、電子ビームをサンプル上に集束させ、集束した電子ビームをサンプルの領域にわたって走査することにより、領域内から二次電子および後方散乱電子を生成し、カラムキャップに負のバイアス電圧を印加して二次電子の軌道を変更することにより二次電子が1つまたは複数の検出器に到達するのを防ぎながら、1つまたは複数の検出器で後方散乱電子を収集する、ことを行わせる複数のコンピュータ可読命令を含み得る。
【0011】
本開示の性質および利点をよりよく理解するために、以下の説明および添付の図面を参照する必要がある。ただし、各図は説明のみを目的として提供されており、本開示の範囲の限定を規定することを意図したものではないことを理解されたい。また、原則として、説明から反対のことが明らかでない限り、異なる図の要素が同一の参照番号を使用する場合、それらの要素は一般に、機能または目的において同一であるか、少なくとも類似している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示のいくつかの実施形態によるサンプル評価システムの簡略図である。
【
図2】SEMカラムによって生成された電子ビームがサンプルに衝突したときに、サンプルから生成された後方散乱電子の経路の例を示す簡略図である。
【
図3】既知のSEMカラムの一例におけるエネルギーフィルタの配置を示す簡略図である。
【
図4】本開示によるいくつかの実施形態に関連するステップを示す簡略化されたフローチャートである。
【
図5A】いくつかの実施形態による、負のバイアス電圧がカラムキャップに印加されたときの二次電子の軌道への影響の一例を示す簡略図である。
【
図5B】いくつかの実施形態による、負のバイアス電圧がカラムキャップに印加されたときの後方散乱電子の軌道への影響の一例を示す簡略図である。
【
図6A】コラムキャップにバイアス電圧が印加されないときの二次電子の軌道の例を示す簡略図である。
【
図6B】コラムキャップにバイアス電圧が印加されていないときの後方散乱電子の軌道の例を示す簡略図である。
【
図7】本開示のいくつかの実施形態による、外部検出器を含むサンプル評価システムの簡略図である。
【
図8】いくつかの実施形態による、後方散乱電子が収集される半導体ウエハ上の領域の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態は、走査型電子顕微鏡でサンプルを撮像する際に後方散乱電子を収集するための改良された方法および技術に関する。
【0014】
サンプル評価ツールの例
本開示をよりよく理解して認識するために、まず
図1を参照する。
図1は、本開示のいくつかの実施形態によるサンプル評価システム100の簡略化された概略図である。サンプル評価システム100は、他の動作の中でも特に、半導体ウエハなどのサンプル上に形成された構造の欠陥レビューおよび分析に使用することができる。
【0015】
システム100は、走査型電子顕微鏡(SEM)カラム120とともに真空チャンバ110を含むことができる。支持要素150は、サンプル145(本明細書では「物体」または「試料」と呼ばれることもある)がSEMカラムからの荷電粒子ビーム126にさらされる処理動作中、チャンバ110内でサンプル145(例えば、半導体ウエハ)を支持することができる。
【0016】
SEMカラム120は、カラムによって生成された荷電粒子ビームがサンプル145に衝突する前に真空チャンバ110内に形成された真空環境を通って伝播するように、真空チャンバ110に接続されている。SEMカラム120は、荷電粒子ビーム126でサンプルを照射し、照射によって放出された粒子を検出し、検出された粒子に基づいて荷電粒子画像を生成することによって、サンプル145の一部の画像を生成することができる。この目的に向けて、SEMカラム120は、電子ビーム源122(すなわち、「電子銃」)、電子ビームドリフト空間を規定するアノード管128、コンデンサレンズ装置124、レンズ130、132などの1つまたは複数の偏向レンズ、1つまたは複数の集束レンズ134、およびコラムキャップ136を含むことができる。
【0017】
画像処理中、電子ビーム源122は電子ビーム126を生成し、電子ビーム126はコンデンサレンズ124を通過し、最初にコンデンサレンズ124によって収束され、次にサンプル145に当たる前にレンズ134によって集束される。コンデンサレンズ124は、解像度に直接関係する電子ビームの開孔数と電流(最終開孔とともに)を規定し、集束レンズ134はビームをサンプル上に集束させる。アノード管128の下端(第1の電極)とサンプル145(第2の電極)との間に位置するカラムキャップ136は、ウエハ近傍内に生成される電界を調節するシステム内の第3の電極となり得る。
【0018】
粒子撮像処理は、通常、撮像されるサンプルの特定の領域にわたって荷電粒子ビームを(例えば、ラスタまたは他の走査パターンで)往復走査することを含む。偏向レンズ130、132は、磁気レンズ、静電レンズ、または電気レンズと磁気レンズの両方の組み合わせであり得、当業者には知られているような走査パターンを実現することができる。走査される領域は、通常、サンプルの全体領域のごく一部である。例えば、サンプルは直径200または300mmの半導体ウエハであってもよく、ウエハ上で走査される各領域は、ミクロンまたは数十ミクロン単位で測定される幅および/または長さを持つ長方形の領域であってもよい。
【0019】
SEMカラム120は、撮像処理中にサンプルから生成された荷電粒子を検出するための1つまたは複数の検出器を含むこともできる。例えば、SEMカラム120は、荷電粒子ビーム126によるサンプルの照射の結果放出される二次電子および後方散乱電子を検出するように構成できるインレンズ検出器142および上部検出器144を含むことができる。インレンズ検出器142は、荷電粒子ビーム126が検出器を通過することを可能にし、荷電粒子カラム120に入る二次電子および後方散乱電子の両方が検出器142を通過して上部検出器144に到達することを可能にする中心開口部を含むことができる。いくつかの実施形態では、サンプル評価システム120は、二次電子および後方散乱電子を検出するように構成することもできる外部検出器(
図6に関して以下に説明する)を含むこともできる。
【0020】
さらに、システム100は、電圧供給源160およびプロセッサまたは他のハードウェアユニットなどの1つまたは複数のコントローラ170を含むことができる。電圧供給源を動作させてカラムに必要な実効電圧を提供できるため、画像解像度が向上する。これは、第1の電極と第2の電極との間(つまり、アノード管とサンプルとの間)に電圧供給を適切に分配することによって実現できる。コントローラ170は、当業者には知られているように、1つまたは複数のコンピュータ可読メモリ180に格納されたコンピュータ命令を実行することによって、電圧供給源160を含むシステムの動作を制御することができる。例として、コンピュータ可読メモリは、ソリッドステートメモリ(プログラム可能、フラッシュ更新可能などであり得る、ランダムアクセスメモリ(RAM:random access memory)および/または読み取り専用メモリ(ROM:read-only memory)など)、ディスクドライブ、光記憶デバイス、または同様の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含み得る。
【0021】
図1に示すように、実施形態では、SEMカラム120をサンプル145に対して非垂直な角度で傾斜させることができる。例えば、
図1に示すように、カラム120は、サンプル145の実質的に平坦な上部表面に対して45度の角度で傾斜させることができる。カラム120を傾斜させることを可能にするために、キャップ136は、カラムキャップ136がサンプルと衝突することなくカラムをサンプル145の非常に近くに配置できるようにする円錐形を有することができる。さらに、以下で説明するように、いくつかの実施形態では、SEMカラム120は、二次電子がインレンズ検出器142に到達するのを防ぐためにいくつかのSEMツールによって使用されるエネルギーフィルタを含まない。代替的に、いくつかの実施形態では、SEMカラム120はエネルギーフィルタを含むことができるが、エネルギーフィルタを作動させずにサンプルを評価するために使用することもできる。
【0022】
後方散乱電子の収集における課題
上述したように、いくつかの実施形態は、二次イオン信号を抑制するエネルギーフィルタを使用せずに後方散乱電子を収集する。いくつかの実施形態の利点および利益をよりよく理解するために、サンプル245から離間したSEMカラム200の一部の簡略化された概略図である
図2を参照する。SEMカラム200は、
図1に示すSEMカラム120を表すことができる。説明を容易にするために、
図2にはSEMコラム200の選択された要素のみが示されている。図示のように、SEMカラム200は、カラムの遠位端にあるカラムキャップ236、インレンズ検出器242、および上部検出器244を含む。アノード管210の一部も示されている。
【0023】
撮像動作中、SEMカラム200は電子ビーム(図示せず)を生成し、ビームがサンプル245に衝突するように電子ビーム照射する。電子ビームとサンプル245との相互作用により、サンプルからあらゆる方向に遠ざかるさまざまな二次電子および後方散乱電子が生成される。生成された電子の一部の経路は、経路250、経路252、および経路254として示されている。図示のように、生成された電子の一部は、経路250に沿ってSEMカラムから遠ざかり、したがって検出器242または244のいずれにも到達できず、生成された電子の一部は、電子がインレンズ検出器242に衝突するような軌道でSEMカラムに入る経路252に沿って移動し、生成された電子の一部は、電子がインレンズ検出器242の中心開口部を通過して上部検出器244に到達することを可能にする軌道でSEMカラムに入る経路254に沿って移動する。
【0024】
後方散乱電子を収集するように設定された一部の既知のSEMツールでは、
図3に示すように、SEMカラムはエネルギーフィルタ310を含む。エネルギーフィルタ310は、所定のエネルギーレベル未満の電子がフィルタを通過するのを防ぐことによって二次電子から後方散乱電子を分離することができ、通常、上部検出器244の直前に配置される。したがって、SEMカラム300を含む評価システムは、経路254をたどって上部検出器244に到達する後方散乱電子のみを観察することができる。経路252に沿って移動して検出器242に到達する電子には、二次電子と後方散乱電子の両方が含まれることになる。検出器242は異なる種類の電子を区別できないため、インレンズ検出器242を使用して二次電子信号から後方散乱電子信号を分離することはできない。さらに、経路250をたどる後方散乱電子は、検出器242または244のいずれにも到達しない。
【0025】
カラムキャップへの負のバイアスの印加
本明細書に開示されるいくつかの実施形態によれば、SEMカラム(例えば、カラム120または200)は、傾斜モード(例えば、サンプルに対して45度の角度、またはその他の非垂直角度)で動作でき、また、撮像処理中にカラムキャップに負のバイアス電圧を印加して、二次電子が電子検出器のいずれか(カラムキャップよりサンプルから遠いインレンズ検出器142、242および上部検出器144、244を含む)に到達するのを抑制できる。
【0026】
図4は、いくつかの実施形態によるサンプルを撮像する方法400に関連するステップを示す簡略化されたフローチャートである。方法400は、サンプル評価システムの処理チャンバ内にサンプルを配置することから始まる(ステップ410)。処理チャンバは、例えばチャンバ110であり、傾斜モードで動作可能なSEMカラムと、インレンズ検出器142または上部検出器144などの1つまたは複数の電子検出器とを含むことができる。ステップ410は、真空チャンバ内でサンプル145などのサンプルを支持体150などのサンプル支持体上に配置することを含むことができる。
【0027】
次に、負のバイアス電圧がカラムキャップに印加され(ステップ420)、SEMカラムが作動して電子ビームを生成し(ステップ430)、電子ビームが集束され、サンプル上の対象領域にわたって走査される(ステップ440)。電子ビームは、レンズ134などの集束レンズによって集束され、レンズ130および132などの1つまたは複数の偏向レンズによって基板の領域にわたって走査され得る。
【0028】
電子ビームが対象領域にわたって走査される間、負のバイアス電圧がカラムキャップに印加される。負のバイアス電圧は、二次電子を抑制するために十分に高くなければならないが、電子ビーム126に影響を与えて画像処理の解像度に悪影響を与えるほど高くすべきではない。負のバイアス電圧がカラムキャップに印加され、電子ビームが対象領域にわたって走査されている間、後方散乱電子は、インレンズ検出器142または上部検出器144などの適切な検出器で収集することができる(ステップ450)。実際の実装では、ステップ430、440、および450は本質的に同時に実行でき、非常に高速に実行できる。
【0029】
いくつかの実施形態では、負のバイアス電圧は、二次電子を抑制するために必要な最小電圧であり得る。負のバイアス電圧の適切な値は、部分的にはカラムキャップの形状に依存し、当業者であれば容易に決定できるように、シミュレーションまたは実験によって決定することができる。いくつかの実施形態では、バイアス電圧は、マイナス50ボルトとマイナス1000ボルトとの間であってもよく、他の実施形態では、バイアス電圧はマイナス100ボルトとマイナス500ボルトとの間であってもよい。
【0030】
図5Aおよび
図5Bは、いくつかの実施形態による、SEMカラム500のキャップに負のバイアスを印加することの影響を示す簡略図である。SEMカラム500は、上述のSEMカラム120または200を代表するものとすることができる。具体的には、
図5Aは、SEMカラム500のキャップ236に200ボルトの負の電圧を印加することが、撮像動作中に生成される二次電子510に及ぼす影響を示しており、
図5Bは、同じ負の電圧(200ボルト)をキャップ236に印加することが後方散乱電子520に与える影響を示している。
図5Aおよび
図5Bのそれぞれにおいて、SEMカラム500は、撮像処理中に1kVの電子ビームを生成する。
【0031】
シミュレーション結果に基づく
図5Aと
図5Bの比較から明らかなように、負の電圧によってより低いエネルギーの二次電子が反発し、二次電子510がSEMカラム500に進入しない。したがって、負のキャップ電圧を印加することにより、二次電子510がカラム500内のインレンズ検出器または上部検出器(
図5Aまたは
図5Bには示されていない)のいずれにも到達できないことが保証される。対照的に、キャップ236に負の電圧を印加すると、より高エネルギーの後方散乱電子520への影響は最小限に抑えられる。したがって、後方散乱電子の一部は、SEMカラムに入った経路に沿って移動し、インレンズまたは上部検出器のいずれかに到達し、カラム内のインレンズ検出器が別個のフィルタを使用せずに後方散乱信号を提供できるようになる。
【0032】
図6Aおよび
図6Bは、電子キャップにバイアスが印加されていない(すなわち、0ボルトのバイアス)場合の撮像中に生成された電子の経路例を示す、SEMカラム500の一部の簡略図である。具体的には、
図6Aは、キャップ236にバイアス電圧が印加されないときの二次電子610の軌道の例を示し、
図6Bは、キャップ236にバイアスが印加されないときの後方散乱電子620の軌道の例を示す。
図6Bからわかるように、後方散乱電子620の軌道は、200ボルトの負のバイアスがキャップに印加された場合の
図5Bに示される後方散乱電子520の軌道と実質的に同じである。しかしながら、
図6Aに示すように、キャップに負のバイアスがかかっていないと、一部の二次電子610がSEMカラム500に入り、レンズ内または上部検出器の1つに到達する可能性がある。検出器は二次電子と後方散乱電子とを区別できないため、二次電子が検出器の信号を汚染し、正確な後方散乱信号が得られなくなる。
【0033】
外部検出器を備えたサンプル評価ツール
いくつかの実施形態によるサンプル評価システムは、後方散乱電子を検出するために使用できる外部検出器を含むことができる。外部検出器は、上で説明したインレンズ検出器と上部検出器の一方または両方に加えて、またはその代わりに使用できる。
図7は、本開示のいくつかの実施形態によるサンプル評価システム700の簡略化された概略図である。サンプル評価システム700は、外部検出器710を含むことを除いて、評価システム100と同様とすることができる。便宜上、評価システム100の要素と同様の評価システム700の他の要素には同じ参照番号が付けられており、以下では説明しない。
【0034】
サンプル評価プロセス中、評価システム700のSEMカラム120は、
図1に関して上述したように、サンプル145に対して傾斜する可能性がある。
図7に示すように、外部検出器710は、SEMカラムのキャップ136から離間し、サンプルに電子ビーム126が照射されたときにサンプル145から生成される電子を収集するように配置することができる。インレンズ検出器142および上部検出器144は、キャップ136の開口部を通ってSEMカラムに入る後方散乱電子の検出に限定されているが、外部検出器710は、電子をSEMカラムから遠ざける軌道を有する後方散乱電子を検出することができる。実施形態は、二次電子信号を抑制する(すなわち、二次電子が外部検出器710に到達するのを防ぐ)ために、撮像処理中にキャップ136に負の電圧を印加することができ、外部検出器710が、主に、または後方散乱電子のみを含む信号を収集することを保証する。
【0035】
撮像するサンプルの例
本開示で説明される実施形態のいくつかの態様に文脈を提供するために、
図8を参照する。
図8は、いくつかの実施形態に従ってサンプルを評価するために後方散乱電子を収集することができるウエハ上の異なる位置にある複数の領域を含むことができる半導体ウエハ上の領域の簡略図である。具体的には、
図8は、ウエハ800の特定部分の2つの拡大図とともにウエハ800の上面図を含む。ウエハ800は、例えば、200mmまたは300mmの半導体ウエハであってもよく、その上に形成された複数の集積回路810(図示の例では52個)を含むことができる。集積回路810は、製造の中間段階にあることができ、本明細書で説明されるサンプル評価技術を使用して、集積回路の1つまたは複数の領域820を評価および分析することができる。例えば、
図8の拡大
図Aは、本明細書に記載の技術に従って評価および分析できる集積回路810のうちの1つの複数の領域820を示す。拡大
図Bは、その中に形成された異なるフィーチャを含む領域820のうちの1つを示す。
【0036】
本開示の実施形態は、例えば、
図4に関して上述した方法400を使用して、領域820を分析および評価することができる。評価は、
図8の拡大
図Bに簡略化した形式で示した走査パターン830などのラスタパターンに従って領域820内でSEMビームを前後に走査することによって行うことができる。
【0037】
追加の実施形態
本明細書で説明される特定の実施形態の前述の説明は、例示および説明の目的で提示されている。これらは、網羅的であること、または開示された正確な形式に実施形態を限定することを意図したものではない。また、本開示の異なる実施形態を上で開示したが、特定の実施形態の特定の詳細は、本開示の実施形態の精神および範囲から逸脱することなく、任意の適切な方法で組み合わせることができる。さらに、上記の教示を考慮して多くの修正および変形が可能であることは当業者には明らかであろう。
【0038】
上記の明細書における方法への言及は、その方法を実行できるシステムに準用して適用されるべきであり、一度実行されるとその方法が実行される命令を格納するコンピュータプログラム製品にも準用して適用されるべきである。同様に、上記の明細書におけるシステムへの言及は、システムによって実行できる方法にも準用して適用されるべきであり、システムによって実行できる命令を格納するコンピュータプログラム製品にも準用して適用されるべきであり、また、明細書内のコンピュータプログラム製品への言及は、コンピュータプログラム製品に格納された命令を実行するときに実行される方法にも準用して適用されるべきであり、また、コンピュータプログラム製品に格納された命令を実行するように構成されたシステムに準用して適用されるべきである。
【0039】
本開示の図示された実施形態が当業者に知られている電子部品および回路を使用して実装できる限り、そのような詳細は、本開示の基礎となる概念を理解および認識するために、また本開示の教示をわかりにくくしたり、気を散らしたりしないように、上で説明したように必要であると考えられる程度以上には説明されない。
【国際調査報告】