(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-11
(54)【発明の名称】高粘度樹脂の重合反応装置
(51)【国際特許分類】
C08G 85/00 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
C08G85/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567218
(86)(22)【出願日】2022-08-02
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 KR2022011357
(87)【国際公開番号】W WO2023018088
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0106873
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0093906
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュンス・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨンス・ソン
(72)【発明者】
【氏名】イェ・フン・イム
(72)【発明者】
【氏名】ドンチョル・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ユン・チェ
【テーマコード(参考)】
4J031
【Fターム(参考)】
4J031CA02
4J031CA16
4J031CA32
4J031CE01
4J031CF01
4J031CF03
4J031CG04
4J031CG07
4J031CG08
(57)【要約】
生分解性樹脂のような高粘度樹脂の重合反応装置が開示される。前記高粘度樹脂の重合反応装置は、上部に形成された入口と下部に形成された吐出口とを含む円筒形の反応器と、前記反応器内部に回転可能に配置され、反応器内の物質を混合するインペラを含む。前記反応器内の物質は、インペラによって混合されて高粘度樹脂に重合され、重合された高粘度樹脂は、不活性気体が加わることによって吐出口を介して反応器外部に排出される。前記反応器の直径に対する前記吐出口の直径の比は、不活性気体が加わり始めた時点から不活性気体が前記吐出口に到達した時点まで80%以上の高粘度樹脂が反応器から吐出されるように設定されてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に形成された入口と下部に形成された吐出口とを含む円筒形の反応器と、
前記反応器内部に回転可能に配置され、反応器内の物質を混合するインペラと、
を含み、
前記反応器内の物質は、インペラによって混合されて高粘度樹脂に重合され、重合された高粘度樹脂は、不活性気体が加わることによって吐出口を介して反応器外部に排出され、
前記反応器の直径に対する前記吐出口の直径の比は、不活性気体が加わり始めた時点から不活性気体が前記吐出口に到達した時点まで80%以上の高粘度樹脂が反応器から吐出されるように設定される、
高粘度樹脂の重合反応装置。
【請求項2】
前記反応器の直径に対する前記吐出口の直径の比は、1/15以下である、請求項1に記載の高粘度樹脂の重合反応装置。
【請求項3】
前記反応器の下部は、前記吐出口に向かって下方に行くほどその直径が縮まるコーン部に形成され、
前記コーン部の側面と水平面の間の角度は、不活性気体が前記吐出口に到達した時点で反応器内に残った高粘度樹脂の表面と水平面の間の角度に対応するように設定された、請求項1に記載の高粘度樹脂の重合反応装置。
【請求項4】
前記コーン部の側面と水平面の間の角度は、40°~50°である、請求項3に記載の高粘度樹脂の重合反応装置。
【請求項5】
前記インペラは、
前記反応器内部に垂直方向に設けられ、回転動力を受けて回転する垂直フレームと、
前記垂直フレームに取り付けられ、径方向に延びる少なくとも一つの水平フレームと、
前記少なくとも一つの水平フレームに取り付けられ、垂直フレームを取り囲むように螺旋状に形成された少なくとも一つのブレードと、
前記少なくとも一つの水平フレームのうち最下側の水平フレームに取り付けられ、前記コーン部に対応する位置に下側に突出されたアンカーと、
を含む、請求項3に記載の高粘度樹脂の重合反応装置。
【請求項6】
前記アンカーは、
前記最下側の水平フレームの径方向外側端部に設けられ、前記コーン部の側面に対応するように斜めに下側に延びる第1部分と、
前記第1部分の径方向内側で最下側の水平フレームに設けられ、下側に延びて第1部分に連結される第2部分と、
を含む、請求項5に記載の高粘度樹脂の重合反応装置。
【請求項7】
前記第2部分は、吐出口の外周面から径方向外側に設定された距離だけ離隔した、請求項6に記載の高粘度樹脂の重合反応装置。
【請求項8】
前記不活性気体は、窒素である、請求項1に記載の高粘度樹脂の重合反応装置。
【請求項9】
前記高粘度樹脂は、生分解性樹脂である、請求項1に記載の高粘度樹脂の重合反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(等)との相互引用
本出願は、2021年8月12日付の韓国特許出願第10-2021-0106873号および2022年7月28日付の韓国特許出願第10-2022-0093906号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、高粘度樹脂の重合反応装置に関するものであって、より詳細には、生分解性樹脂のような高粘度樹脂の吐出速度を高めて不吐出量を減らすことができる高粘度樹脂の重合反応装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
PLA、PLH、PBATのような生分解性樹脂は、重合反応装置にモノマーと開始剤を投入して重合することによって生成される。このような生分解性樹脂は、その粘度が数十~数百万cPに達する高粘度樹脂であるので、これに適するインペラと重合反応装置の設計が必要となる。
【0004】
また、重合が完了した樹脂は、その上部に加圧用窒素を加えることによって、重合反応装置下部を通って吐出されるが、重合反応装置下部の吐出部の形状および大きさによって樹脂の吐出速度が変わることになる。仮に、樹脂の吐出速度が早すぎると、加圧用窒素が重合反応装置下部の吐出部まで到達するに要する時間が早すぎて、樹脂の不吐出量が増加することがある。言い換えると、加圧用窒素が重合反応装置下部の吐出部に到達する前には樹脂を十分な加圧力で押し付けて吐出させるが、加圧用窒素が重合反応装置下部の吐出部に到達した後には加圧用窒素自体が前記吐出部を通って重合反応装置外部に抜け出すので、樹脂を吐出する効率が低下することになる。これにより、樹脂の不吐出量が増加することがある。
【0005】
この背景技術の部分に記載された事項は、発明の背景に対する理解を増進させるために作成されたものであって、この技術の属する分野における通常の知識を有する者に既に知られた従来の技術でない事項を含むこともある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施例は、生分解性樹脂のような高粘度樹脂の吐出速度を高める反面、高粘度樹脂の不吐出量を減すことができる高粘度樹脂の重合反応装置を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施例に係る高粘度樹脂の重合反応装置は、上部に形成された入口と下部に形成された吐出口とを含む円筒形の反応器と、前記反応器内部に回転可能に配置され、反応器内の物質を混合するインペラを含む。
【0008】
前記反応器内の物質は、インペラによって混合されて高粘度樹脂に重合され、重合された高粘度樹脂は、不活性気体が加わることによって吐出口を介して反応器外部に排出される。
【0009】
前記反応器の直径に対する前記吐出口の直径の比は、不活性気体が加わり始めた時点から不活性気体が前記吐出口に到達した時点まで80%以上の高粘度樹脂が反応器から吐出されるように設定されてもよい。
【0010】
一部の例において、前記反応器の直径に対する前記吐出口の直径の比は、1/15以下であってもよい
【0011】
前記反応器の下部は、前記吐出口に向かって下方に行くほどその直径が縮まるコーン部に形成されてもよい。前記コーン部の側面と水平面の間の角度は、不活性気体が前記吐出口に到達した時点で反応器内に残った高粘度樹脂の表面と水平面の間の角度に対応するように設定されてもよい。
【0012】
一部の例において、前記コーン部の側面と水平面の間の角度は、40°~50°であってもよい。
【0013】
前記インペラは、前記反応器内部に垂直方向に設けられ、回転動力を受けて回転する垂直フレームと、前記垂直フレームに取り付けられ、径方向に延びる少なくとも一つの水平フレームと、前記少なくとも一つの水平フレームに取り付けられ、垂直フレームを取り囲むように螺旋状に形成された少なくとも一つのブレードと、前記少なくとも一つの水平フレームのうち最下側の水平フレームに取り付けられ、前記コーン部に対応する位置に下側に突出されたアンカーを含んでもよい。
【0014】
前記アンカーは、前記最下側の水平フレームの径方向外側端部に設けられ、前記コーン部の側面に対応するように斜めに下側に延びる第1部分と、前記第1部分の径方向内側で最下側の水平フレームに設けられ、下側に延びて第1部分に連結される第2部分と、を含んでもよい。
【0015】
前記第2部分は、吐出口の外周面から径方向外側に設定された距離だけ離隔されてもよい。
【0016】
前記不活性気体は、窒素であってもよい。
【0017】
前記高粘度樹脂は、生分解性樹脂であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施例によると、反応器の直径に対する吐出口の直径の比を適切に設定することによって、第1フェーズで高粘度樹脂の吐出量を増加させることができる。これにより、高粘度樹脂の吐出速度が高まる反面、高粘度樹脂の不吐出量を減らすことができる。
【0019】
また、反応器下部をコーン部に形成することによって、高粘度樹脂の吐出時に重力の影響をより多く受けることになる。
【0020】
さらには、コーン部の側面と水平面の間の角度を適切に設定することによって、第1フェーズで高粘度樹脂の吐出量をさらに増加させることができる。
【0021】
その他に本発明の実施例によって得られるか予測される効果については、本発明の実施例に対する詳細な説明で直接または暗示的に開示することにする。つまり、本発明の実施例により予測される多様な効果については、後述する詳細な説明内で開示される。
【0022】
本明細書の実施例は、類似の参照符号等が同一または機能的に類似の要素を指す添付の図面と連携した以下の説明を参照してよりよく理解できるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施例に係る高粘度樹脂の重合反応装置の概略図である。
【
図2】本発明の実施例に係る高粘度樹脂の重合反応装置の他の概略図である。
【
図3】加圧用窒素を加えるとき、時間経過に応じた反応器内の高粘度樹脂の流れを示した概略図である。
【
図4】加圧用窒素を加えるとき、時間経過に応じた高粘度樹脂の吐出量と反応器に残った高粘度樹脂の量を示したグラフである。
【
図5】反応器の直径に対する吐出口の直径の比が4/30であるとき、時間経過に応じた反応器内の高粘度樹脂の流れを示した概略図である。
【
図6】反応器の直径に対する吐出口の直径の比が2/30であるとき、時間経過に応じた反応器内の高粘度樹脂の流れを示した概略図である。
【
図7】コーン部の側面と水平面の間の角度が30°であるとき、高粘度樹脂の混合時の高粘度樹脂の流れを示した概略図である。
【
図8】コーン部の側面と水平面の間の角度が45°であるとき、高粘度樹脂の混合時の高粘度樹脂の流れを示した概略図である。
【0024】
前記参照された図面は、必ず縮尺に合わせて図示されたものではなく、本発明の基本原理を例示する多様な好ましい特徴等の多少簡略な表現を提示するものと理解されるべきである。例えば、特定の寸法、方向、位置、および形状を含む本発明の特定の設計特徴等が、特定の意図した応用と使用環境によって一部決定される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ここで使用される用語は、ただ特定の実施例を説明することを目的とするものであり、本発明を制限することを意図するものではない。ここで使用されているように、単数形等は、文脈上明示的に異ならせて表示されない限り、複数形等も含むことを意図する。「含む(comprise)」および/または「含む(comprising)」という用語は、本明細書で使用される場合、言及された特徴等、整数等、ステップ等、作動等、構成要素等および/またはコンポーネント等の存在を特定するが、他の特徴等、整数等、ステップ等、作動等、構成要素等、コンポーネント等および/またはこれらのグループ等のうち一つ以上の存在または追加を排除しないことも理解されるべきである。ここで使用されているように、用語「および/または」は、関連して並べられた項目等のうち任意の一つまたはすべての組み合わせ等を含む。
【0026】
本発明の実施例に係る高粘度樹脂の重合反応装置は、反応器の直径に対する吐出口の直径の比と、コーン部の側面と水平面の間の角度を適切に設定することによって、第1フェーズで高粘度樹脂の吐出量を増加させることができる。これにより、反応器から吐出できずに反応器内に残る高粘度樹脂の不吐出量を減らすことができる。
【0027】
以下、添付の図面を参考にして、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施例に係る高粘度樹脂の重合反応装置の概略図であり、
図2は、本発明の実施例に係る高粘度樹脂の重合反応装置の他の概略図である。
【0029】
図1および
図2に示されているように、本発明の実施例に係る高粘度樹脂の重合反応装置10は、反応器11と、前記反応器11内部のインペラ20を含む。
【0030】
反応器11は、概ね円筒形状に形成され、上部に形成された入口12と下部に形成された吐出口14とを含む。重合反応に使用されるモノマーと開示剤とは、前記入口12を介して反応器11内部に投入され、重合が完了した高粘度樹脂は、加圧用不活性気体(例えば、窒素など)と重力によって前記吐出口14を介して反応器11外部に吐出される。
【0031】
反応器11は、上から下に順次に上部、中間部、並びに下部を含む。反応器11は、インペラ20が位置した上部(例えば、入口12)から中間部まで概ね一定の直径D1を有し、中間部から下部(例えば、吐出口14)までその直径が漸進的に縮まるコーン部16に形成される。つまり、吐出口14は、反応器11で最も直径が小さく、反応器11の直径はD2と指す。また、反応器11の直径が縮まる比率、例えば、コーン部16の側面と水平面の間の角度はθ1と指す。通常、反応器11は、楕円形に形成されるが、本発明の実施例では、反応器11の下部を最適化したθ1を有するコーン部16に形成することによって、高粘度樹脂の吐出時に重力の影響をより多く受けるようにした。
【0032】
本発明の実施例では、高粘度樹脂の吐出速度を高める反面、不吐出量を減らすために反応器11の直径D1に対する吐出口14の直径D2の比が1/15以下と設定される。また、高粘度樹脂の吐出速度を高める反面、不吐出量をさらに減らすためにコーン部16の側面と水平面の間の角度θ1は、40°~50°の範囲で設定される。これについては、後でより詳細に説明する。
【0033】
インペラ20は、反応器11内部に回転可能に配置され、入口12を介して反応器11内部に投入されたモノマーと開示剤とを混合して重合反応を円滑にする。一つの例において、前記インペラ20は、二重螺旋リボン状のインペラ20であってもよいが、インペラ20の類型はこれに限定されない。
【0034】
この例において、前記インペラ20は、棒状の垂直フレーム22、棒状の少なくとも一つの水平フレーム24、並びに少なくとも一つのブレード26を含む。
【0035】
垂直フレーム22は、反応器11内部の中心部に垂直方向に(つまり、上下方向に)設けられ、その上端は、動力源(図示せず)に連結されて回転動力を伝達される。
【0036】
少なくとも一つの水平フレーム24は、前記垂直フレーム22の設定された位置で径方向に延びて取り付けられる。垂直フレーム22に二つ以上の水平フレーム24が設けられると、前記二つ以上の水平フレーム24は互いに離隔して垂直フレーム22に設けることができる。前記水平フレーム24は、両端が反応器11の外周面付近までに延びていてもよい。
【0037】
少なくとも一つのブレード26は、少なくとも一つの水平フレーム24の端部に前記垂直フレーム22を取り囲むように螺旋状に設けられてもよい。水平フレーム24を反応器11の外周面付近まで延び、ブレード26を前記水平フレーム24の端部に螺旋状に設けることによって、インペラ20による高粘度樹脂の混合効率を向上させることができる。
【0038】
前記インペラ20は少なくとも一つのアンカー28をさらに含む。前記アンカー28は反応器11のコーン部16に対応する位置に配置される。つまり、前記アンカー28は少なくとも一つの水平フレーム24のうち最下側の水平フレーム24で下側に突出されてコーン部16の形状および位置に対応するように形成される。前記アンカー28は反応器11の下部、特にコーン部16で高粘度樹脂の円滑な混合のために設けられる。
【0039】
前記アンカー28は一体に形成される第1、2部分30、32を含んでもよい。アンカー28の第1部分30は、最下側の水平フレーム24の径方向外側端部に設けられ、下側で斜めに延びる。前記アンカー28の第1部分30は、コーン部16の側面に対応するように斜めに下側に延びる。つまり、第1部分30と水平面の間の角度はθ1であるか、θ1に近く形成される。アンカー28の第2部分32は、第1部分30の径方向内側で最下側の水平フレーム24に設けられ、下側に垂直にまたは垂直に近く延びて第1部分30に連結されてもよい。前記第2部分32は、吐出口14の外周面から径方向外側に設定された距離D3だけ離隔して配置され、吐出口14を介する樹脂の排出を妨げない。
【0040】
以下、本発明の実施例に係る高粘度樹脂の重合反応装置の作動を簡略に説明する。
【0041】
入口12を介して反応器11内部にモノマーと開示剤とが投入されると、インペラ20は動力源から回転動力を受けて回転する。このとき、垂直フレーム22に取り付けられた少なくとも一つの水平フレーム24、少なくとも一つのブレード26およびアンカー28は垂直フレーム22と共に回転し、反応器11内部のモノマーと開示剤とを混合して重合反応が始まる。
【0042】
重合反応が完了し、インペラ20の回転が止まると、入口12を介して反応器11に加圧用不活性気体(例えば、窒素など)を加えて高粘度樹脂を吐出し始める。
【0043】
以下、加圧用窒素を加えるとき、反応器11内の高粘度樹脂の流れを説明する。
【0044】
図3は加圧用窒素を加えるとき、時間経過に応じた反応器内の高粘度樹脂の流れを示した概略図である。
【0045】
図3に示されているように、生分解性樹脂のような高粘度樹脂の重合反応が完了すると、高粘度樹脂に加圧用窒素が加わり始める(0秒を参考)。これにより、高粘度樹脂は、吐出口14を介して反応器11から吐出され始める。このとき、高い粘度によって反応器11の中心軸付近の高粘度樹脂が反応器11の外周面付近の高粘度樹脂よりもより速く下部に移動し、これにより高粘度樹脂の表面は径方向で中心部が下方に凹むように形成される(5秒を参考)。時間の経過に応じて、高粘度樹脂の凹んだ表面の深さはさらに深くなる(10秒を参考)。
【0046】
時間がさらに経過すると、加圧用窒素が反応器11の吐出口16に到達し、これにより第1フェーズ(Phase1)が終了する(15秒を参考)。ここで、第1フェーズは、加圧用窒素が加わった時点から加圧用窒素が吐出口16に到達した時点までの期間を意味する。第1フェーズでは加圧用窒素によって制御された方式で高粘度樹脂を吐出することができる。
【0047】
第1フェーズで排出されず、反応器11内部に残った高粘度樹脂は、反応器11の壁面付近に位置し、残った高粘度樹脂の表面と水平面の間には角度θ2が形成される。残った高粘度樹脂の表面と水平面の間の角度θ2は、加圧用窒素が高粘度樹脂を、吐出口16を介して強制的に吐出することによって形成されるので、コーン部16の側面と水平面の間の角度θ1を残った高粘度樹脂の表面と水平面の間の角度θ2に対応するように設定すると、第1フェーズで高粘度樹脂の吐出量を増加させることができ、残った高粘度樹脂の量(つまり、不吐出量)を減らすことができる。
【0048】
その後、第2フェーズ(Phase2)が始まる(15秒~35秒を参考)。第2フェーズでは、高粘度樹脂が加圧用窒素よりは重力によって反応器11とコーン部16の壁面とを伝って流れ落ちるため、高粘度樹脂を第1フェーズのように制御された方式で吐出させ難いことがある。また、加圧用窒素が高粘度樹脂の吐出に大きな影響を与えないので、残った高粘度樹脂の表面と水平面の間の角度θ2は大きく変化しない。
【0049】
図4は、加圧用窒素を加えるとき、時間経過に応じた高粘度樹脂の吐出量と反応器に残った高粘度樹脂の量とを示したグラフである。
図4で実線は反応器11から吐出された高粘度樹脂の吐出量を示し、点線は、吐出できずに反応器11内に残っている高粘度樹脂の量を示す。
【0050】
図4に示されているように、加圧用窒素を加えると、第1フェーズで高粘度樹脂の吐出量が一定に増加する。第1フェーズで高粘度樹脂の吐出量の増加率(吐出速度に対応する)は、通常窒素の圧力(例えば、3bar~7bar)に関連する。しかし、窒素の圧力を高めて吐出速度を増加させると、窒素が吐出口16に到達する時間が短くなることがある。つまり、第1フェーズが短くなることがある。この場合、短くなった第1フェーズによって第1フェーズでの高粘度樹脂の吐出量がむしろ減ることもある。
【0051】
その後、第2フェーズで高粘度樹脂の吐出量の増加が多少緩和され、高粘度樹脂は非制御方式で吐出されるようになる。
【0052】
前記で言及しているように、高粘度樹脂は、第1フェーズにおいて制御された方式で吐出され、第2フェーズにおいて非制御方式で吐出されるので、高粘度樹脂の吐出速度を高めて不吐出量を減らすためには、第1フェーズで吐出される高粘度樹脂の量を最大限増加させる必要がある。以下では、反応器の直径に対する吐出口の直径の比と第1フェーズでの高粘度樹脂の吐出量との関係を説明する。
【0053】
図5は、反応器の直径に対する吐出口の直径の比が4/30であるとき、時間経過に応じた反応器内の高粘度樹脂の流れを示した概略図であり、
図6は、反応器の直径に対する吐出口の直径の比が2/30であるとき、時間経過に応じた反応器内の高粘度樹脂の流れを示した概略図である。
図5および
図6は、同一の時点を基準に反応器内の高粘度樹脂の流れを示す。
【0054】
図5に示されているように、反応器の直径に対する吐出口の直径の比が4/30であれば、残った高粘度樹脂の表面は相対的に速く下方に凹み、窒素が吐出口16に到達する時間が相対的に短い。つまり、第1フェーズが短くなる。
【0055】
これとは異なり、
図6に示されているように、反応器の直径に対する吐出口の直径の比が2/30であれば、残った高粘度樹脂の表面が概ね水平面上により長い時間維持され、窒素が吐出口16に到達する時間が相対的に長い。つまり、第1フェーズが長くなる。
【0056】
多様な反応器の直径D1に対する吐出口の直径D2の比で、第1フェーズでの高粘度樹脂の吐出量は、[表1]のとおりである。
【表1】
【0057】
[表1]で吐出量は、吐出前の反応器11内の高粘度樹脂の量に対する第1フェーズでの高粘度樹脂の吐出量の百分率である。
【0058】
[表1]を参考にすると、反応器の直径D1に対する吐出口の直径D2が相対的に大きいと(例えば、4/30以上)、高粘度樹脂の吐出速度が早すぎて窒素が吐出口16に非常に速く到達するようになる。したがって、第1フェーズが短くなり、第1フェーズの間半分の高粘度樹脂も吐出されない。
【0059】
しかし、反応器の直径D1に対する吐出口の直径D2が相対的に小さいと(例えば、3/30以下であれば)、第1フェーズが長くなり、約65%以上の高粘度樹脂が第1フェーズの間吐出される。特に、反応器の直径D1に対する吐出口の直径D2が1/15以下であれば、約82%以上の高粘度樹脂が第1フェーズの間吐出される。
【0060】
一方、第1フェーズで、コーン部16の側面付近の高粘度樹脂は窒素が加わることに大きな影響を受けず、第1フェーズの間反応器11内に残ることがある。このように、第1フェーズの間反応器11内に残る高粘度樹脂を減らすために、コーン部16の側面と水平面の間の角度θ1を残った高粘度樹脂の表面と水平面の間の角度θ2に対応するように設定することができる。この場合、窒素の影響を受けない高粘度樹脂の量が減り、第1フェーズの間反応器11内に残る高粘度樹脂が減ることになる。
【0061】
多様な実験を通じて、残った高粘度樹脂の表面と水平面の間の角度θ2が約45°であることが分かった。これにより、コーン部16の側面と水平面の間の角度θ1は40°~50°の範囲で設定することができる。
【0062】
ただし、コーン部16の側面と水平面の間の角度θ1は、高粘度樹脂の混合性能に影響を与えるものと知られている。コーン部16の側面と水平面の間の角度θ1による高粘度樹脂の混合性能を説明する。
【0063】
図7は、コーン部の側面と水平面の間の角度が30°であるとき、高粘度樹脂の混合時の高粘度樹脂の流れを示した概略図であり、一般に使用される反応器の混合性能を示す。
【0064】
図8は、コーン部の側面と水平面の間の角度が45°であるとき、高粘度樹脂の混合時の高粘度樹脂の流れを示した概略図であり、本発明の実施例に係る反応器の混合性能を示す。
【0065】
図7および
図8に示されているように、コーン部16の側面と水平面の間の角度θ1が30°であるときの反応器11の混合性能は、コーン部16の側面と水平面の間の角度θ1が45°であるときの反応器11の混合性能と大きな差がない。混合性能を示す単位体積当たり消耗動力(P/V)と上/下循環時間とは、[表2]に記載する。
【表2】
【0066】
[表2]を参考にすると、比較例で単位体積当たり消耗動力(P/V)は96.97kW/m3であり、実施例で単位体積当たり消耗動力(P/V)は95.40kW/m3であって、単位体積当たり消耗動力は比較例と実施例とで差がほとんどないだけでなく、むしろ実施例においてさらに減る。
【0067】
また、比較例において、上/下循環時間は2.79sであり、実施例において、上/下循環時間は2.73sであって、上/下循環時間も比較例と実施例とで差がほとんどなく、むしろ実施例においてさらに減る。
【0068】
したがって、コーン部16の側面と水平面の間の角度θ1を40°~50°の範囲で設定しても、反応器11の混合性能に大きな変化が起きないだけでなく、むしろ僅かに増加することが分かる。しかし、コーン部16の側面と水平面の間の角度θ1を40°~50°の範囲で設定すると、窒素が加わることに影響を受ける反応器11内の高粘度樹脂の量がさらに増加し、第1フェーズの間反応器11から吐出される高粘度樹脂の量が増加することがある。
【0069】
以上で本発明に関する好ましい実施例を説明したが、本発明は、前記実施例に限定されず、本発明の実施例から当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって容易に変更され、均等であると認められる範囲のすべての変更を含む。
【国際調査報告】