(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】α2α5β2型ニコチン性アセチルコリン受容体のための発現系及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240405BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240405BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20240405BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20240405BHJP
C12Q 1/48 20060101ALI20240405BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20240405BHJP
C12N 9/10 20060101ALN20240405BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20240405BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20240405BHJP
【FI】
C12N15/12
C12N5/10 ZNA
C12N15/54
C12Q1/04
C12Q1/48 Z
C12Q1/06
C12N9/10
C07K14/47
C07K14/705
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564526
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2022060744
(87)【国際公開番号】W WO2022223806
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397060175
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカ エヌ.ベー.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】ブレット,デイビッド エス.
(72)【発明者】
【氏名】グ,シェンヤン
(72)【発明者】
【氏名】オー’キャロル,ミン レイ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ13
4B063QQ26
4B063QQ79
4B063QR06
4B063QR32
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4B065AC20
4B065BA01
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4B065CA46
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
α2α5β2型ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)の発現のための単離された組換え細胞及びその使用方法が本明細書に開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された組換え細胞であって、
a)ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)のα5サブユニットをコードする異種核酸と、
b)膜貫通内耳発現タンパク質TMIE及びタンパク質FAM163Bから選択されるシャペロンタンパク質をコードする異種核酸と、
を含む、単離された組換え細胞。
【請求項2】
c)nAChRのα2サブユニットをコードする異種核酸と、
d)nAChRのβ2サブユニットをコードする異種核酸と、
e)ジアミンアセチルトランスフェラーゼ1(SAT1)をコードする異種核酸と、
f)コリンO-アセチルトランスフェラーゼ(CHAT)をコードする異種核酸と、
を更に含み、
nAChRの前記α2、α5及びβ2サブユニットはα2α5β2型nAChRを形成する、請求項1に記載の単離された組換え細胞。
【請求項3】
前記組換え細胞が哺乳動物細胞である、請求項1又は2に記載の単離された組換え細胞。
【請求項4】
前記哺乳動物細胞が、ヒト胎児由来腎臓293T(HEK293T)細胞、HEK293F細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NIH3T3細胞、MCF-7細胞、Hep G2細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞及びCos7細胞からなる群から選択される、請求項3に記載の単離された組換え細胞。
【請求項5】
前記α2α5β2型nAChRの前記α2サブユニットが、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞。
【請求項6】
前記α2α5β2型nAChRの前記α5サブユニットが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞。
【請求項7】
前記α2α5β2型nAChRの前記β2サブユニットが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞。
【請求項8】
前記TMIEが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞。
【請求項9】
前記FAM163Bが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞。
【請求項10】
前記SAT1が、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項2~9のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞。
【請求項11】
前記CHATが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項2~10のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞。
【請求項12】
α5含有nAChRのアゴニスト、アンタゴニスト、又は正のアロステリック調節因子を同定するための方法であって、
a)請求項1~11のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞を作用物質と接触させる工程と、
b)前記単離された組換え細胞の前記α5含有nAChRの活性を決定する工程と、
を含み、前記単離された組換え細胞が前記作用物質と接触されなかった場合の前記α5含有nAChRの活性と比較して、前記作用物質が前記α5含有nAChRの活性を増強すれば、前記作用物質はアゴニスト又は正のアロステリック調節因子(PAM)として同定され、前記作用物質が前記α5含有nAChRの活性を減少させれば、前記作用物質はアンタゴニストとして同定される、方法。
【請求項13】
α2α5β2型nAChRのアゴニスト、アンタゴニスト、又は正のアロステリック調節因子を同定するための方法であって、
a)請求項2~11のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞を作用物質と接触させる工程と、
b)前記単離された組換え細胞の前記α2α5β2型nAChRの活性を決定する工程と、
を含み、前記単離された組換え細胞が前記作用物質と接触されなかった場合の前記α2α5β2型nAChRの活性と比較して、前記作用物質が前記α2α5β2型nAChRの活性を増強すれば、前記作用物質はアゴニスト又は正のアロステリック調節因子(PAM)として同定され、前記作用物質が前記α2α5β2型nAChRの活性を減少させれば、前記作用物質はアンタゴニストとして同定される、方法。
【請求項14】
工程b)が前記単離された組換え細胞のカルシウム流を決定することを含み、前記単離された組換え細胞が前記作用物質と接触されなかった場合の前記カルシウム流と比較して、前記作用物質が前記カルシウム流を増強すれば、前記作用物質はアゴニストとして同定される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程b)が、前記単離された組換え細胞のカルシウム流及びニコチン誘発性カルシウム流を決定することを含み、前記単離された組換え細胞が前記作用物質と接触されなかった場合の前記カルシウム流及びニコチン誘発性カルシウム流と比較して、前記作用物質がカルシウム流を増強せず、前記ニコチン誘発性カルシウム流を増強すれば、前記作用物質がPAMとして同定される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
工程b)が、前記単離された組換え細胞のニコチン誘発性カルシウム流を決定することを含み、前記単離された組換え細胞が前記作用物質と接触されなかった場合の前記ニコチン誘発性カルシウム流と比較して、前記作用物質が前記ニコチン誘発性カルシウム流を減少させれば、前記作用物質がアンタゴニストとして同定される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記単離された組換え細胞が、前記作用物質と接触される前に、約25℃~35℃で約20~50時間インキュベートされる、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記作用物質が、小分子又はペプチドである、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
(i)請求項1~11のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞と、(ii)使用説明書と、を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる2021年4月23日出願の米国特許仮出願第63/178,813号の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、α2α5β2型ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)の発現のための単離された組換え細胞及びその使用方法が本明細書に関する。
【0003】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、配列表を含み、この配列表は、ASCIIフォーマットで電子的に提出済みであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。当該ASCIIコピーは、2022年02月28日に作成され、名称はPRD4128WOPCT1_SL.txtであり、サイズは24,576バイトである。
【0004】
(発明の背景)
ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)は、ニコチン中毒、疼痛及び精神病性障害を含むいくつかの神経学的及び精神医学的症状に関与している(Gotti et al.,Neuronal nicotinic receptors:from structure to pathology,Prog Neurobiol.2004 Dec;74(6):363-96)。喫煙に伴うニコチン中毒は、肺癌の主な原因である。ゲノムワイド関連解析は、nAChRのα5サブユニットの配列における変化(D398N)をコードするヌクレオチド多型(SNP)rs16969968が、ニコチン中毒に対する感受性を増加させることを示す。α5 nAChRが特に濃縮されている手綱脚間路は、ニコチン摂取を調節する重要な神経回路である。これらの理由から、α5 nAChRは、有益な薬物標的として提案されてきた(Fowler et al.,Habenular nicotinic receptors containing the α5*subunit controls nicotine intake,Nature.2011 Mar 31;471(7340):597-601;Maskos,The nicotinic receptor alpha5 coding polymorphismrs16969968as a major target in disease:Functional dissection and remaining challenges,Journal of Neurochemistry.2020:154-241-250)。しかしながら、α5含有nAChR(α2α5β2型nAChRなど)を調節する化合物の同定は、この受容体が創薬のために通例使用される組換え細胞株中で機能的に発現されないので、不可能であった。
【0005】
nAChRのα5サブユニットを強固に発現し、創薬のために使用することができる細胞株を開発する必要性が依然として存在する。
【0006】
(発明の簡単な概要)
a)ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)のα5サブユニットをコードする異種核酸をコードする異種核酸と、b)膜貫通内耳発現タンパク質TMIE及びタンパク質FAM163Bから選択されるシャペロンタンパク質をコードする異種核酸と、を含む単離された組換え細胞が本明細書において提供される。
【0007】
上で提供される単離された組換え細胞の一実施形態において、細胞は、c)nAChRのα2サブユニットをコードする異種核酸と、d)nAChRのβ2サブユニットをコードする異種核酸と、e)ジアミンアセチルトランスフェラーゼ1(SAT1)をコードする異種核酸と、f)コリンO-アセチルトランスフェラーゼ(CHAT)をコードする異種核酸と、を更に含み、nAChRのα2、α5及びβ2サブユニットはα2α5β2型nAChRを形成する。
【0008】
単離された組換え細胞の更なる実施形態において、組換え細胞は哺乳動物細胞である。
【0009】
単離された組換え細胞の更なる実施形態において、哺乳動物細胞は、ヒト胎児由来腎臓293T(human embryonic kidney 293T、HEK293T)細胞、HEK293F細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese hamster ovary、CHO)細胞、NIH3T3細胞、MCF-7細胞、Hep G2細胞、ベビーハムスター腎臓(baby hamster kidney、BHK)細胞及びCos7細胞からなる群から選択される。
【0010】
単離された組換え細胞の更なる実施形態において、α2α5β2型nAChRのα2サブユニットは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0011】
単離された組換え細胞の更なる実施形態において、α2α5β2型nAChRのα5サブユニットは、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0012】
単離された組換え細胞の更なる実施形態において、α2α5β2型nAChRのβ2サブユニットは、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0013】
単離された組換え細胞の更なる実施形態において、TMIEは、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0014】
単離された組換え細胞の更なる実施形態において、FAM163Bは、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0015】
単離された組換え細胞の更なる実施形態において、SAT1は、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0016】
単離された組換え細胞の更なる実施形態において、CHATは、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0017】
α5含有nAChRのアゴニスト、アンタゴニスト又は正のアロステリック調節因子を同定するための方法であって、a)請求項1~11のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞を作用物質と接触させる工程と、b)単離された組換え細胞のα5含有nAChRの活性を決定する工程と、を含み、単離された組換え細胞が作用物質と接触されなかった場合のα5含有nAChRの活性と比較して、作用物質がα5含有nAChRの活性を増強すれば、作用物質はアゴニスト又は正のアロステリック調節因子(positive allosteric modulator、PAM)として同定され、作用物質がα5含有nAChRの活性を減少させれば、作用物質はアンタゴニストとして同定される、方法、が本明細書において更に提供される。
【0018】
α2α5β2型nAChRのアゴニスト、アンタゴニスト又は正のアロステリック調節因子を同定するための方法であって、a)請求項2~11のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞を作用物質と接触させる工程と、b)単離された組換え細胞のα2α5β2型nAChRの活性を決定する工程と、を含み、単離された組換え細胞が作用物質と接触されなかった場合のα2α5β2型nAChRの活性と比較して、作用物質がα2α5β2型nAChRの活性を増強すれば、作用物質はアゴニスト又は正のアロステリック調節因子(PAM)として同定され、作用物質がα2α5β2型nAChRの活性を減少させれば、作用物質はアンタゴニストとして同定される、方法、が本明細書において更に提供される。
【0019】
この方法の一実施形態において、工程b)は単離された組換え細胞のカルシウム流を決定することを含み、単離された組換え細胞が作用物質と接触されなかった場合のカルシウム流と比較して、作用物質がカルシウム流を増強すれば、作用物質はアゴニストとして同定される。
【0020】
この方法の更なる実施形態において、工程b)は、単離された組換え細胞のカルシウム流及びニコチン誘発性カルシウム流を決定することを含み、単離された組換え細胞が作用物質と接触されなかった場合のカルシウム流及びニコチン誘発性カルシウム流と比較して、作用物質がカルシウム流を増強せず、ニコチン誘発性カルシウム流を増強すれば、作用物質はPAMとして同定される。
【0021】
この方法のなお更なる実施形態において、工程b)は、単離された組換え細胞のニコチン誘発性カルシウム流を決定することを含み、単離された組換え細胞が作用物質と接触されなかった場合のニコチン誘発性カルシウム流と比較して、作用物質がニコチン誘発性カルシウム流を減少させれば、作用物質はアンタゴニストとして同定される。
【0022】
この方法のなお更なる実施形態において、単離された組換え細胞は、作用物質と接触される前に、約25℃~35℃で約20~50時間インキュベートされる。
【0023】
この方法のなお更なる実施形態において、作用物質は、小分子又はペプチドである。
【0024】
(i)上で提供される単離された組換え細胞と、(ii)使用説明書と、を含むキットが本明細書において更に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】異なるシャペロンタンパク質と同時発現された場合のα2β2型nAChR及びα2α5β2型nAChRの機能的発現を示すグラフである。
【
図2】異なるシャペロンタンパク質と同時発現された場合のα2β2型nAChR及びα2α5β2型nAChRのニコチン誘発性活性化についての濃度応答曲線である。
【0026】
(発明の詳細な記述)
「背景技術」において、また、本明細書全体を通じて各種刊行物、論文及び特許を引用又は記載し、これら参照文献の各々はその全容が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれる文書、操作、材料、デバイス、物品などの考察は、本発明のコンテキストを与えるためのものである。かかる考察は、これらの事物のいずれか又は全てが、開示又は特許請求されるいずれかの発明に対する先行技術の一部を構成することを容認するものではない。
【0027】
特に規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。そうでない場合、本明細書で使用される特定の用語は、本明細書に記載される意味を有するものである。
【0028】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に文脈上明らかでない限り、複数の指示対象物を含むことに留意する必要がある。
【0029】
特に明記しない限り、本明細書に記載される濃度又は濃度範囲などのあらゆる数値は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、数値は、通常、記載される値の±10%を含む。例えば、1mg/mLの濃度は、0.9mg/mL~1.1mg/mLを含む。同様に、1%~10%(w/v)の濃度範囲は0.9%(w/v)~11%(w/v)を含む。本明細書で使用するとき、数値範囲の使用は、文脈上そうでない旨が明確に示されない限り、その範囲内の整数及び値の分数を含む、全ての可能な部分範囲、その範囲内の全ての個々の数値を明示的に含む。
【0030】
別途記載のない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の全ての要素を指すと理解されるべきである。当業者であれば、単なる通常の実験手順を使用するだけで、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態に対して多くの均等物を認識するか、又は確認することができよう。かかる均等物は、本発明によって包含されることが意図される。
【0031】
本明細書で使用するとき、用語「備える(comprises)、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、若しくは「含有する(containing)」、又はこれらの任意の他の変形形態は、述べられている整数又は整数群を含むことが暗示されるが、これら以外の他の整数又は整数群を除外するものではなく、非排他的又は非制限的であることが意図されることが理解されよう。例えば、一連の要素を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されない、又はかかる組成物、混合物、プロセス、方法、物品、若しくは装置に本来存在しない他の要素を含んでもよい。更に、明示的に反対に明記されない限り、「又は」は包括的な「又は」を指すものであり、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは、Aが真であり(又は存在する)かつBが偽である(又は存在しない)場合、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)場合、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)場合、のいずれか1つによって満たされる。
【0032】
本明細書に使用される場合、複数の列挙された要素間の「及び/又は」という接続的な用語は、個々の選択肢及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって接続される場合、第1の選択肢は、第2の要素なしに第1の要素が適用可能であることを指す。第2の選択肢は、第1の要素なしに第2の要素が適用可能であることを指す。第3の選択肢は、第1の要素及び第2の要素が一緒に適用可能であることを指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つが、意味の範疇に含まれ、したがって、本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」の要件を満たすことが理解される。選択肢のうちの2つ以上の同時適用性もまた、意味の範疇に含まれ、したがって、用語「及び/又は」の要件を満たすことが理解される。
【0033】
本明細書で使用するとき、用語「からなる(consists of)」、又は「からなる(consist of)」若しくは「からなる(consisting of)」などの変形は、明細書及び特許請求の範囲全体にわたって使用されるとき、任意の列挙された整数又は整数群を包含するが、追加の整数又は整数群が、指定の方法、構造、又は組成物に追加されないことを示す。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「から本質的になる(consists essentially of)」、又は「から本質的になる(consist essentially of)」若しくは「から本質的になる(consisting essentially of)」などの変形は、明細書及び特許請求の範囲全体を通じて使用されるとき、任意の列挙された整数又は整数群を包含し、任意選択で、指定の方法、構造又は組成物の基本的な又は新規の特性を実質的に変化させない任意の列挙された整数又は整数群も包含することを示す。M.P.E.P.§2 111.03を参照されたい。
【0035】
好ましい本発明の構成要素の寸法又は特徴を指すときに本明細書で使用される「約」、「およそ」、「概ね」、「実質的に」などの用語は、当業者には理解されるように、記載の寸法/特徴が厳密な境界又はパラメータではなく、機能的に同じ又は類似する、それらからのわずかな相違を除外するものではないことを示すことも理解すべきである。最小値では、数値パラメータを含むこのような参照は、当該技術分野において受け入れられている数学的及び工業的原理(例えば、四捨五入、測定又は他の系統的誤差、製造公差など)を使用すると、最下位桁は変化しない変形形態を含む。
【0036】
2つ若しくは3つ以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈における用語「同一である」又はパーセント「同一性」は、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して又は目視検査によって測定したとき、
一致が最大になるように比較及び位置合わせさせた場合に同じである、又は特定のパーセント分の同じであるアミノ酸残基若しくはヌクレオチドを有する、2つ若しくは3つ以上の配列又はサブ配列を指す。配列比較のために、典型的には1つの配列は、試験配列がそれに対して比較される参照配列としての役割を果たす。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験及び参照配列がコンピュータに入力され、必要に応じて、サブ配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0037】
比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズム、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:2444(1988)の類似性検索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group、575 Science Dr.,Madison,WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)、又は目視検査(全般的には、Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,eds.,Current Protocols,a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.,(1995 Supplement)(Ausubel)を参照されたい)によって行うことができる。
【0038】
配列同一性及び配列類似性のパーセントを決定するのに好適なアルゴリズムの例は、それぞれ、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402に記載されているBLAST及びBLAST2.0アルゴリズムである。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)を通じて公的に入手可能である。このアルゴリズムは、最初に、データベース配列における同じ長さのワードと位置合わせしたときに一致するか、又はいくつかの正の値の閾値スコアTを満たすかのいずれかの、クエリ配列における長さWの短いワードを同定することによって、高スコア配列対(high scoring sequence pair、HSP)を同定することを含む。上記のTは、隣接ワードスコア閾値(Altschul et al.,上記)と称される。これらの初期隣接ワードヒットは、それを含有するより長いHSPを見つけるために検索を開始するためのシードとして機能する。次いで、累積アライメントスコアを増加させることができる限り、各配列に沿ってワードヒットを両方向に延長する。
【0039】
ヌクレオチド配列については、パラメータM(一致する残基の対についてのリワードスコア、常に0より大きい)及びパラメータN(不一致の残基についてのペナルティスコア、常に0より小さい)を使用して累積スコアを計算する。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスを使用して累積スコアを計算する。累積アライメントスコアがその最大獲得値から量Xだけ低下したとき、1つ又は複数の負のスコアリング残基のアラインメントの蓄積により、累積スコアがゼロ以下になったとき、又はいずれかの配列の末端に達したときに、各方向におけるワードヒットの延長が停止される。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、及びXが、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に対するもの)は、デフォルトとして、ワード長(W)=11、期待値(E)=10、M=5、N=-4、及び両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列に対しては、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長(W)=3、期待値(E)=10、及びBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する(Henikoff & Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1992)を参照されたい)。
【0040】
配列同一性パーセントを計算することに加えて、BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計解析も行う(例えば、Karlin & Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5787(1993)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列間又は2つのアミノ酸配列間の一致が偶然に生じる確率の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核酸と参照核酸との比較における最小合計確率が、約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、参照配列に類似しているとみなされる。
【0041】
2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であることの更なる指標は、以下に記載されるように、第1核酸によりコードされるポリペプチドが、第2核酸によりコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることである。したがって、ポリペプチドは、典型的には、第2ポリペプチドと実質的に同一であり、例えば、2つのペプチドは保存的置換によってのみ異なる。2つの核酸配列が実質的に同一である別の指標は、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。
【0042】
本明細書で使用するとき、用語「ポリヌクレオチド」は、同義的に「核酸分子」、「ヌクレオチド」、又は「核酸」とも称され、非修飾RNA若しくはDNA又は修飾RNA若しくはDNAであってもよい、任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを指す。「ポリヌクレオチド」としては、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、並びに一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるRNA、一本鎖又はより典型的には二本鎖又は一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であってもよいDNA及びRNAを含むハイブリッド分子が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、「ポリヌクレオチド」は、RNA若しくはDNA、又はRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。ポリヌクレオチドという用語はまた、1つ若しくは複数の修飾された塩基を含有するDNA又はRNA、及び安定性若しくは他の理由により修飾された骨格を有するDNA又はRNAも含む。「修飾された」塩基は、例えば、トリチル化塩基及び異常な塩基、例えば、イノシンを含む。様々な修飾をDNA及びRNAに行うことができる。したがって、「ポリヌクレオチド」は、典型的には天然に認められるポリヌクレオチドの化学的、酵素的又は代謝的に修飾された形態、並びにウイルス及び細胞のDNA及びRNAの特徴を有する化学的形態を包含する。「ポリヌクレオチド」はまた、比較的短い核酸鎖(多くの場合、オリゴヌクレオチドと称される)も包含する。
【0043】
本明細書で使用するとき、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、又は「タンパク質」は、アミノ酸から構成される分子を指すことができ、当業者によってタンパク質として認識され得る。本明細書では、アミノ酸残基の従来の1文字又は3文字コードが使用される。用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために、本明細書において互換的に使用することができる。ポリマーは、直鎖又は分岐鎖であってもよく、修飾されたアミノ酸を含むことができ、かつ非アミノ酸により中断されてもよい。この用語はまた、天然に修飾されているか、又は介入によって修飾されているアミノ酸ポリマー、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は任意の他の操作若しくは修飾、例えば、標識成分とのコンジュゲートを包含する。また、定義には、例えば、アミノ酸の1つ又は複数の類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)を含有するポリペプチド、並びに当該技術分野において既知の他の修飾が含まれる。
【0044】
本明細書に記載のペプチド配列は、通常の慣習に従って記載され、ペプチドのN末端領域は左側にあり、C末端領域は右側にある。アミノ酸の異性体形態は既知であるが、別途明示的に示されない限り、示されるのはアミノ酸のL型である。
【0045】
単離された組換え細胞及び組換え細胞を作製する方法
本明細書に開示される発明は、少なくとも部分的には、細胞中である種のシャペロンタンパク質をα5含有ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)(α2α5β2型nAChRなど)と同時発現させることにより、α5含有nAChRを高度に発現する細胞が生成され、細胞を創薬に有用なものとしたという予想外の知見に基づく。nAChRのα5サブユニットを発現する組換え細胞及びnAChRのα5サブユニットの発現のための単離された組換え細胞を作製する方法が本明細書において提供される。α2α5β2型nAChRを発現する組換え細胞及びα2α5β2型nAChRの発現のための単離された組換え細胞を作製する方法も本明細書において提供される。
【0046】
本明細書で使用される場合、「α2α5β2型ニコチン性アセチルコリン受容体」、「α2α5β2型nAChR」、「アルファ2アルファ5ベータ2型ニコチン性アセチルコリン受容体」及び「アルファ2アルファ5ベータ2型nAChR」という用語は、互換的に使用され、コリン作動性受容体のタンパク質ファミリーのメンバーであるα2α5β2型ニコチン性アセチルコリン受容体タンパク質、好ましくはヒトα2α5β2型nAChRを指す。
【0047】
α2α5β2型nAChRは、α2、α5及びβ2サブユニットから構成されるリガンド開口型イオンチャネルである。α2サブユニットは遺伝子CHRNA2(NM_000742)によってコードされ、α5サブユニットは遺伝子CHRNA5(NM_000745)によってコードされ、β2サブユニットは遺伝子CHRNB2(NM_000748)によってコードされる。一緒に発現されると、サブユニットは会合してα2α5β2型nAChRを形成し、α2α5β2型nAChRはニワトリでは視葉に、哺乳動物では手綱脚間系に特に濃縮されている(例えば、Balestra et al.,Chick Optic Lobe Contains a Developmentally Regulated α2α5β2 Nicotinic Receptor Subtype,MOL 58:300-311,2000/1/841787 and Salas et al,“Nicotinic Receptors in the Habenulo-Interpeduncular System Are Necessary for Nicotine Withdrawal in Mice,J.Neurosci.29:3014-18,2009を参照されたい)。
【0048】
「組換え細胞」とは、1つ又は複数の個々の細胞及び細胞が(1つ又は複数の)タンパク質を異種性に発現している組換え細胞株を指す。本明細書中で使用される場合、細胞におけるタンパク質の「異種発現」とは、外因性核酸、例えば、発現されるべきタンパク質をコードする外因性核酸を細胞に導入することによって、タンパク質を発現するように細胞を改変することを指す。「異種核酸」は、細胞内に導入される、細胞にとって外因性の核酸を指す。いくつかの実施形態において、異種核酸は、DNAである。いくつかの実施形態において、異種核酸は、RNAである。細胞におけるタンパク質の異種発現は、種々の方法を使用して達成されることができる。例えば、タンパク質の発現を駆動することができるプロモーター(例えば、構成的プロモーター)をコードする核酸に機能的に連結されているタンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを細胞内に導入してもよい。
【0049】
本明細書で使用するとき、用語「発現」は、遺伝子産物の生合成を指す。この用語は、遺伝子のRNAへの転写を包含する。この用語はまた、RNAの1つ以上のポリペプチドへの翻訳も包含し、全ての天然に生じる、転写後及び翻訳後修飾も更に包含する。
【0050】
一般的な局面において、本発明は、創薬に有用なα5含有nAChR(α2α5β2型nAChRなど)を発現する細胞を作製又は生成する方法に関する。一実施形態において、本方法は、nAChRのα5サブユニットをコードする核酸と、膜貫通内耳発現タンパク質TMIE及びタンパク質FAM163Bから選択されるシャペロンタンパク質をコードする核酸とを細胞に導入することを含む。nAChRのα5サブユニット及びシャペロンタンパク質(すなわち、TMIE又はFAM163B)をコードする(1つ又は複数の)核酸は、発現ベクター中(例えば、単一の発現ベクター中又は別々の発現ベクター中)に存在することができる。いくつかの実施形態において、nAChRのα5サブユニット及びシャペロンタンパク質(すなわち、TMIE又はFAM163B)をコードする核酸は、それぞれのタンパク質の発現を駆動することができるプロモーターに機能的に連結されている。いくつかの他の実施形態において、nAChRのα5サブユニット及びシャペロンタンパク質(すなわち、TMIE又はFAM163B)をコードする核酸の各々は、それぞれのタンパク質の発現を駆動することができるプロモーターに機能的に連結されている。いくつかの実施形態では、プロモーターは構成的プロモーターである。
【0051】
一態様において、本発明は、創薬に有用なα2α5β2型nAChRを発現する細胞を作製又は生成する方法に関する。一実施形態において、本方法は、α2α5β2型nAChRのα2サブユニットをコードする核酸、α2α5β2型nAChRのα5サブユニットをコードする核酸、α2α5β2型nAChRのβ2サブユニットをコードする核酸、ジアミンアセチルトランスフェラーゼ1(SAT1)をコードする核酸、コリンO-アセチルトランスフェラーゼ(CHAT)をコードする核酸、並びにTMIEをコードする核酸及びFAM163Bをコードする核酸の一方又は両方を細胞に導入することを含む。α2、α5及びβ2サブユニットα2α5β2型nAChR、SAT1、CHAT並びにTMIE及びFAM163Bから選択される1つをコードする(1つ又は複数の)核酸は、発現ベクター中(例えば、単一の発現ベクター中又は別々の発現ベクター中)に存在することができる。いくつかの実施形態において、α2α5β2型nAChRのα2、α5及びβ2サブユニット、SAT1、CHAT、並びにTMIE及びFAM163Bの一方又は両方をコードする核酸は、それぞれのタンパク質の発現を駆動することができるプロモーターに機能的に連結されている。いくつかの他の実施形態において、α2α5β2型nAChRのα2、α5及びβ2サブユニット、SAT1、CHAT、並びにTMIE及びFAM163Bの一方又は両方をコードする核酸の各々は、それぞれのタンパク質の発現を駆動することができるプロモーターに機能的に連結されている。いくつかの実施形態では、プロモーターは構成的プロモーターである。
【0052】
別の局面において、本方法は、α2α5β2型nAChRのα2サブユニットをコードする核酸、α2α5β2型nAChRのα5サブユニットをコードする核酸、α2α5β2型nAChRのβ2サブユニットをコードする核酸、SAT1をコードする核酸、CHATをコードする核酸、並びにTMIEをコードする核酸及びFAM163Bをコードする核酸の一方又は両方を細胞に導入することを含み、本方法によって生成された細胞は、α2α5β2型nAChRのα2、α5、β2サブユニットをコードする核酸、及びSAT1、CHAT、TMIE又はFAM163Bをコードする核酸なしの同じ細胞と比較して、α2α5β2型nAChRを増加したレベルで発現する。
【0053】
別の態様において、本発明は、TMIE又はFAM163Bを発現するように遺伝子改変された細胞であって、遺伝子改変された細胞は、同じ(又は実質的に同じ)条件下での非改変細胞における同じタンパク質の発現と比較して増加したレベルで少なくとも1つのタンパク質を発現する、遺伝子改変された細胞に関する。一実施形態において、細胞は、SAT1、CHAT、並びにTMIE及びFAM163Bから選択される一方又は両方を発現するように遺伝子改変されており、遺伝子改変された細胞は、同じ(又は実質的に同じ)条件下での非改変細胞における、それぞれSAT1、CHAT、並びにTMIE及びFAM163Bから選択される一方又は両方の発現と比較して増加したレベルで、SAT1、CHAT、並びにTMIE及びFAM163Bから選択される一方又は両方を発現する。
【0054】
別の局面において、本発明は、α2α5β2型nAChRのα2、α5及びβ2サブユニット、SAT1、CHAT、並びにTMIE又はFAM163Bを発現するように遺伝子改変された細胞であって、遺伝子改変された細胞は、同じ(又は実質的に同じ)条件下での非改変細胞における同じタンパク質の発現と比較して増加したレベルでこれらのタンパク質タンパク質を発現する、遺伝子改変された細胞に関する。一実施形態において、細胞は、α2α5β2型nAChRのα2、α5及びβ2サブユニット、SAT1、CHAT、TMIE、FAM163Bを発現するように遺伝子改変されており、遺伝子改変された細胞は、同じ(又は実質的に同じ)条件下での非改変細胞における同じタンパク質の発現と比較して増加したレベルでこれらのタンパク質タンパク質を発現する。
【0055】
別の局面において、本発明は、SAT1をコードする核酸配列を含む発現ベクターと、CHATをコードする核酸配列を含む発現ベクターと、TMIE又はFAM163Bをコードする核酸配列を含む発現ベクターと、からなる群から選択される少なくとも1つの発現ベクターを含む単離された組換え細胞に関する。一実施形態において、本発明は、SAT1をコードする核酸配列を含む発現ベクターと、CHATをコードする核酸配列を含む発現ベクターと、TMIEをコードする核酸配列を含む発現ベクターと、FAM163Bをコードする核酸配列を含む発現ベクターと、からなる群から選択される少なくとも1つの発現ベクターを含む単離された組換え細胞に関する。
【0056】
一局面において、本発明は、nAChRのα5サブユニットをコードする異種核酸と、膜貫通内耳発現タンパク質(TMIE)及びタンパク質FAM163Bから選択されるシャペロンタンパク質をコードする異種核酸とを含む単離された組換え細胞に関する。一実施形態において、異種核酸は、発現ベクターの形態で組換え細胞に導入される。一実施形態において、本明細書に開示される単離された組換え細胞は、nAChRのα5サブユニットをコードする核酸を含む発現ベクターと、TMIE及びFAM163Bから選択されるシャペロンタンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターとを含む。一実施形態において、本明細書に開示される単離された組換え細胞は、nAChRのα5サブユニットをコードする核酸を含む発現ベクターと、TMIEをコードする核酸を含む発現ベクターと、FAM163Bをコードする核酸を含む発現ベクターとを含む。
【0057】
更なる局面において、本発明は、nAChRのα2サブユニットをコードする異種核酸と、nAChRのα5サブユニットをコードする異種核酸と、nAChRのβ2サブユニットをコードする異種核酸と、ジアミンアセチルトランスフェラーゼ1(SAT1)をコードする異種核酸と、コリンO-アセチルトランスフェラーゼ(CHAT)をコードする異種核酸と、TMIE及び/又はFAM163Bをコードする異種核酸とを含む単離された組換え細胞であって、α2、α5及びβ2サブユニットは、α2α5β2型nAChRを形成する、単離された組換え細胞に関する。一実施形態において、異種核酸は、発現ベクターの形態で組換え細胞に導入される。一実施形態において、本明細書に開示される単離された組換え細胞は、nAChRのα2サブユニットをコードする核酸を含む発現ベクターと、nAChRのα5サブユニットをコードする核酸を含む発現ベクターと、nAChRのβ2サブユニットをコードする核酸を含む発現ベクターと、SAT1をコードする核酸を含む発現ベクターと、CHATをコードする核酸を含む発現ベクターと、TMIE又はFAM163Bをコードする核酸を含む発現ベクターとを含む。一実施形態において、本明細書に開示される単離された組換え細胞は、nAChRのα2サブユニットをコードする核酸を含む発現ベクターと、nAChRのα5サブユニットをコードする核酸を含む発現ベクターと、nAChRのβ2サブユニットをコードする核酸を含む発現ベクターと、SAT1をコードする核酸を含む発現ベクターと、CHATをコードする核酸を含む発現ベクターと、TMIEをコードする核酸を含む発現ベクターと、FAM163Bをコードする核酸を含む発現ベクターとを含む。
【0058】
本明細書に記載される実施形態の任意の1つにおいて、α2、α5及びβ2サブユニットnAChR、SAT1、CHAT、TMIE及びFAM163Bの任意の1つ又は複数をコードする核酸は、単一の発現ベクター中に又は別個の発現ベクター中に存在することができる。
【0059】
一実施形態において、nAChRのα2サブユニットは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0060】
配列番号1:
MGPSCPVFLSFTKLSLWWLLLTPAGGEEAKRPPPRAPGDPLSSPSPTALPQGGSHTETEDRLFKHLFRGYNRWARPVPNTSDVVIVRFGLSIAQLIDVDEKNQMMTTNVWLKQEWSDYKLRWNPTDFGNITSLRVPSEMIWIPDIVLYNNADGEFAVTHMTKAHLFSTGTVHWVPPAIYKSSCSIDVTFFPFDQQNCKMKFGSWTYDKAKIDLEQMEQTVDLKDYWESGEWAIVNATGTYNSKKYDCCAEIYPDVTYAFVIRRLPLFYTINLIIPCLLISCLTVLVFYLPSDCGEKITLCISVLLSLTVFLLLITEIIPSTSLVIPLIGEYLLFTMIFVTLSIVITVFVLNVHHRSPSTHTMPHWVRGALLGCVPRWLLMNRPPPPVELCHPLRLKLSPSYHWLESNVDAEEREVVVEEEDRWACAGHVAPSVGTLCSHGHLHSGASGPKAEALLQEGELLLSPHMQKALEGVHYIADHLRSEDADSSVKEDWKYVAMVIDRIFLWLFIIVCFLGTIGLFLPPFLAGMI
【0061】
一実施形態において、nAChRのα5サブユニットは、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0062】
配列番号2
MAARGSGPRALRLLLLVQLVAGRCGLAGAAGGAQRGLSEPSSIAKHEDSLLKDLFQDYERWVRPVEHLNDKIKIKFGLAISQLVDVDEKNQLMTTNVWLKQEWIDVKLRWNPDDYGGIKVIRVPSDSVWTPDIVLFDNADGRFEGTSTKTVIRYNGTVTWTPPANYKSSCTIDVTFFPFDLQNCSMKFGSWTYDGSQVDIILEDQDVDKRDFFDNGEWEIVSATGSKGNRTDSCCWYPYVTYSFVIKRLPLFYTLFLIIPCIGLSFLTVLVFYLPSNEGEKICLCTSVLVSLTVFLLVIEEIIPSSSKVIPLIGEYLVFTMIFVTLSIMVTVFAINIHHRSSSTHNAMAPLVRKIFLHTLPKLLCMRSHVDRYFTQKEETESGSGPKSSRNTLEAALDSIRYITRHIMKENDVREVVEDWKFIAQVLDRMFLWTFLFVSIVGSLGLFVPVIYKWANILIPVHIGNANK
【0063】
一実施形態において、nAChRのβ2サブユニットは、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0064】
配列番号3
MARRCGPVALLLGFGLLRLCSGVWGTDTEERLVEHLLDPSRYNKLIRPATNGSELVTVQLMVSLAQLISVHEREQIMTTNVWLTQEWEDYRLTWKPEEFDNMKKVRLPSKHIWLPDVVLYNNADGMYEVSFYSNAVVSYDGSIFWLPPAIYKSACKIEVKHFPFDQQNCTMKFRSWTYDRTEIDLVLKSEVASLDDFTPSGEWDIVALPGRRNENPDDSTYVDITYDFIIRRKPLFYTINLIIPCVLITSLAILVFYLPSDCGEKMTLCISVLLALTVFLLLISKIVPPTSLDVPLVGKYLMFTMVLVTFSIVTSVCVLNVHHRSPTTHTMAPWVKVVFLEKLPALLFMQQPRHHCARQRLRLRRRQREREGAGALFFREAPGADSCTCFVNRASVQGLAGAFGAEPAPVAGPGRSGEPCGCGLREAVDGVRFIADHMRSEDDDQSVSEDWKYVAMVIDRLFLWIFVFVCVFGTIGMFLQPLFQNYTTTTFLHSDHSAPSSK
【0065】
一実施形態において、TMIEは、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。あるいは、TMIEは、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、nAChRのα5サブユニットの発現を増強するという特性を含むタンパク質シャペロン特性を有する。
【0066】
配列番号4
MAGWPGAGPLCVLGGAALGVCLAGVAGQLVEPSTAPPKPKPPPLTKETVVFWDMRLWHVVGIFSLFVLSIIITLCCVFNCRVPRTRKEIEARYLQRKAAKMYTDKLETVPPLNELTEVPGEDKKKKKKKKKDSVDTVAIKVEEDEKNEAKKKKGEK
【0067】
一実施形態において、FAM163Bは、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。あるいは、FAM163Bは、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、nAChRのα5サブユニットの発現を増強するという特性を含むタンパク質シャペロン特性を有する。
【0068】
配列番号5
MTAGTVVITGGILATVILLCIIAVLCYCRLQYYCCKKDESEEDEEEPDFAVHSHLPPLHSNRNLVLTNGPALYPTASTSFSQKSPQARALCRSCSHCEPPTFFLQEPPEEEEDVLNGGERVLYKSVSQEDVELPPGGFGGLQALNPNRLSAMREAFARSRSISTDV
【0069】
一実施形態において、SAT1は、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。あるいは、SAT1は、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、nAChRのα2及びβ2サブユニットの発現を増強するという特性を含むタンパク質シャペロン特性を有する。
【0070】
配列番号6
MAKFVIRPATAADCSDILRLIKELAKYEYMEEQVILTEKDLLEDGFGEHPFYHCLVAEVPKEHWTPEGHSIVGFAMYYFTYDPWIGKLLYLEDFFVMSDYRGFGIGSEILKNLSQVAMRCRCSSMHFLVAEWNEPSINFYKRRGASDLSSEEGWRLFKIDKEYLLKMATEE
【0071】
一実施形態において、CHATは、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。あるいは、CHATは、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、nAChRのα2及びβ2サブユニットの発現を増強するという特性を含むタンパク質シャペロン特性を有する。
【0072】
配列番号7
MAAKTPSSEESGLPKLPVPPLQQTLATYLQCMRHLVSEEQFRKSQAIVQQFGAPGGLGETLQQKLLERQEKTANWVSEYWLNDMYLNNRLALPVNSSPAVIFARQHFPGTDDQLRFAASLISGVLSYKALLDSHSIPTDCAKGQLSGQPLCMKQYYGLFSSYRLPGHTQDTLVAQNSSIMPEPEHVIVACCNQFFVLDVVINFRRLSEGDLFTQLRKIVKMASNEDERLPPIGLLTSDGRSEWAEARTVLVKDSTNRDSLDMIERCICLVCLDAPGGVELSDTHRALQLLHGGGYSKNGANRWYDKSLQFVVGRDGTCGVVCEHSPFDGIVLVQCTEHLLKHMTQSSRKLIRADSVSELPAPRRLRWKCSPEIQGHLASSAEKLQRIVKNLDFIVYKFDNYGKTFIKKQKCSPDAFIQVALQLAFYRLHRRLVPTYESASIRRFQEGRVDNIRSATPEALAFVRAVTDHKAAVPASEKLLLLKDAIRAQTAYTVMAITGMAIDNHLLALRELARAMCKELPEMFMDETYLMSNRFVLSTSQVPTTTEMFCCYGPVVPNGYGACYNPQPETILFCISSFHSCKETSSSKFAKAVEESLIDMRDLCSLLPPTESKPLATKEKATRPSQGHQP
【0073】
本明細書で開示される組換え細胞を調製するために、(例えば、DNAベクターを介した)DNA形質移入及びRNA形質導入などの、異種核酸を細胞に導入するための任意の適切な手段を本明細書で使用することができる。一実施形態において、組換え細胞を生成するために細胞に導入される異種核酸は、ベクター、好ましくは発現ベクターを使用することによって調製される。用語「ベクター」は、連結されたもう1つの核酸を輸送する能力をもつ核酸分子を指す。ベクターの1つの種類は「プラスミド」であり、これは環状2本鎖DNAループを指し、追加のDNAセグメントをその中に挿入することができる。ベクターの別の種類はウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントを挿入することができる。発現ベクターは、発現ベクターが機能的に連結されている遺伝子の発現を指示することができるベクターである。本明細書で使用される発現ベクターは、宿主細胞中での核酸の発現に適した形態で、タンパク質配列をコードする核酸を含む。従って、発現ベクターは、発現のために使用される宿主細胞に基づいて選択され、発現されるべき核酸配列に機能的に連結された、プロモーターなどの1つ又は複数の制御配列を含むことができる。発現ベクターに関して使用される場合、「機能的に連結された」とは、関心対象のヌクレオチド配列が、(例えば、インビトロ転写/翻訳系において、又はベクターが宿主細胞に導入される場合には宿主細胞において)ヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で制御配列に連結されていることを指すことが意図される。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、望ましいタンパク質の発現のレベル及びベクターの意図される使用などの因子に依存し得るということが、当業者によって理解されるであろう。
【0074】
本開示を考慮して、プラスミド、コスミド、ファージベクター又はウイルスベクターなどの、当業者に知られている任意のベクターを使用することができる。一実施形態において、ベクターは、プラスミドなどの発現ベクターである。ベクターは、例えば、プロモーター、リボソーム結合エレメント、ターミネータ、エンハンサ、選択マーカー、及び複製起点という、発現ベクターの従来の機能を確立するための任意のエレメントを含むことができる。プロモーターは、常時発現型、誘導型、又は再形成可能なプロモーターであり得る。細胞に核酸を送達することができる多数の発現ベクターが当該技術分野において知られており、本明細書において使用することができる。従来のクローニング技術又は人工遺伝子合成法を使用して、本発明の実施形態に従った発現ベクターを生成することができる。
【0075】
本開示を考慮して、当業者に知られている任意の細胞を、nAChRのα2、α5、β2サブユニット、SAT1、CHAT、TMIE及びFAM163Bの組換え発現のために使用することができる。一実施形態において、組換え細胞は、哺乳動物細胞である。適切な哺乳動物細胞は、ヒト胎児由来腎臓293T(HEK293T)細胞、HEK293F細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NIH 3T3細胞、MCF-7細胞、Hep G2細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞及びCos7細胞から選択されてもよい。
【0076】
α2α5β2型nAChRのアゴニスト、アンタゴニスト、又は正のアロステリック調節因子を同定する方法
α2α5β2型nAChRのアゴニスト、アンタゴニスト、又は正のアロステリック調節因子(PAM)を同定する方法が本明細書において更に提供される。PAMは、活性部位以外のタンパク質表面上の部位で結合し、したがって、タンパク質結合部位の立体構造を変化させる化合物である。
【0077】
一実施形態において、方法は、本明細書に開示される単離された組換え細胞を、組換え細胞が増殖する条件下で培養する工程と、組換え細胞を作用物質と接触させる工程と、作用物質がα2α5β2型nAChRのアゴニスト、アンタゴニスト又はPAMであるかどうかを決定する工程とを含み、アゴニスト又はPAMは、作用物質と接触されなかった組換え細胞におけるα2α5β2型nAChRの活性と比較して、α2α5β2型nAChRの活性を増強し、アンタゴニストは、α2α5β2型nAChRの活性を減少させる。本明細書で使用する場合、アゴニストは、α2α5β2型nAChRの機能を増強する働きをする分子/化合物/ペプチドを指す。本明細書で使用する場合、PAMは、受容体を直接活性化させることなく、リガンドに対するα2α5β2型nAChRの応答の効果を増強する分子/化合物/ペプチドを指す。本明細書で使用する場合、用語「増強する」、「増強された」、「増加する」、又は「増加された」は、α2α5β2型nAChR活性に関して使用されるときには、アゴニスト又はPAMが投与されていない細胞において観察される対応するシグナル伝達に対して、受容体を通じたシグナル伝達が増加していることを指す。本明細書で使用する場合、アンタゴニストは、α2α5β2型nAChRの機能を遮断させたり、減少させたり、又は減衰させたりする働きをする分子/化合物/ペプチドを指す。ある特定の実施形態では、薬剤は、小分子又はペプチドである。
【0078】
一実施形態において、α2α5β2型nAChR媒介性カルシウム流のアゴニストを同定するために、FLIPRアッセイが使用される。このアッセイでは、組換え細胞は、カルシウム感受性色素(Ca5など)と共にインキュベートされ、試験化合物に曝露され、FLIPRTETRAによってカルシウム流が画像化される。
【0079】
一実施形態において、ニコチン誘発性α2α5β2型nAChR媒介性カルシウム流のアンタゴニストを同定するために、FLIPRアッセイが使用される。このアッセイでは、組換え細胞は、カルシウム感受性色素(Ca5など)と共にインキュベートされる。二重添加プロトコールを使用して、組換え細胞は、第1の期間中に試験化合物に曝露され、第2の期間中にニコチン(例えば、EC
80(1μM)で)に曝露される。その後、カルシウム流は、FLIPR
TETRAによって画像化される。
図2に示されるように、α2α5β2型nAChRのアンタゴニストは、カルシウム流を低下させる。
【0080】
一実施形態において、ニコチン誘発性α2α5β2型nAChR媒介性カルシウム流を正に調節又は強化する化合物を同定するために、FLIPRアッセイが使用される。このアッセイでは、組換え細胞は、カルシウム感受性色素(Ca5など)と共にインキュベートされる。二重添加プロトコールを使用して、組換え細胞は、第1の期間中に試験化合物に曝露され、第2の期間中にニコチン(例えば、EC80(1μM)で)に曝露される。その後、カルシウム流は、FLIPRTETRAによって画像化される。試験化合物がニコチン誘発性α2α5β2型nAChR媒介性カルシウム流を増強するが、アゴニストとしてカルシウム流を増強しなければ(上記のように決定される)、試験化合物は、α2α5β2型nAChRの正のアロステリック調節因子(PAM)又は増強物質と呼ばれる。
【0081】
好ましい実施形態において、細胞は、FLIPRアッセイ又はα2α5β2型nAChR活性を測定するための他のアッセイの前に、約25~35℃で約20~50時間インキュベートされる。いくつかの実施形態において、細胞は、アッセイの前に、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃又は約35℃で、約20時間、約25時間、約30時間、約35時間、約40時間、約45時間又は約50時間インキュベートされる。
【0082】
発現系及びキット
単離された組換え細胞を含む発現系及びキットが、本明細書において更に提供される。発現系及びキットは、使用説明書を更に含んでもよい。
【実施例】
【0083】
当業者は、広い発明概念から逸脱することなく、上で説明した実施形態に変更を行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に制限されず、本明細書によって定義される本発明の趣旨及び範囲内の修正を包含することを意図するものと理解される。
【0084】
【0085】
細胞株
・FreeStyle 293F細胞株(ThermoFisher Scientificカタログ番号R79007)
【0086】
ベクター構築物
・pcDNA3.1-α2
・pcDNA3.1-α5
・pcDNA3.1-β2
・pcDNA3.1-SAT1
・pcDNA3.1-CHAT
・pcDNA3.1-TMIE
・pcDNA3.1-FAM163B
【0087】
培養培地
・FreeStyle 293発現培地
【0088】
形質移入試薬
・FreeStyle MAX試薬
【0089】
栽植培地
・DMEM
・10%FBS
・1%pen-strep
【0090】
化合物希釈/Ca5緩衝液
・1mM Mg2+及び2mM Ca2+が補充されたHEPES緩衝生理食塩水溶液(500mL)
【0091】
カルシウム5(Ca5)色素(Molecular Devices)
・カルシウム色素をハンクス緩衝塩溶液中に25倍濃度に希釈した。色素を、2mM CaCl2及び1mM MgCl2を含むHEPESアッセイ緩衝液中で1倍に希釈した。
【0092】
方法及び手順
1日目細胞調製
・細胞を遠心分離し、新鮮な予め加温された培地中に再懸濁することによって、1×106細胞/mLの細胞懸濁液を調製する;
・1900mLの細胞を振盪しながら、50mLのOptiPro SFM培地中で以下の形質移入ミックスを調製する;
・2.5mLのFreeStyle MAX試薬を、空の50mLチューブに対して47.5mLのOptiPro SFMに添加する;
・第2の50mLチューブ中で、2.5mgの全DNA(3:3:3:3:1:2の比率でα2、α5、β2、SAT1、CHAT及びTMIE又はFAM163B)をOptiPro SFM中に、50mLの最終体積になるように添加し、穏やかにボルテックス撹拌する;
・希釈されたDNAをFreeStyle MAX試薬に移し、溶液を直ちに穏やかに混合し、室温で10分間インキュベートする;
・100mLのFreeStyle MAX/DNA形質移入ミックスを細胞に移し、培養物をホモジナイズする;
・8% CO2と共に37℃で1時間インキュベートする;
・無菌500mLチューブの中に細胞を注ぐ;
・1000rpmで7分間回転させる;
・上清を除去する;
・細胞を凍結培地中に再懸濁し、一定分量をクライオチューブ中に入れ、-80℃で凍結する。
【0093】
2日目細胞を播種する
・除染するためのエタノールバイアル;
・細胞を50mLのコニカルチューブに注ぐ;
・10mLの加温されたプレーティング培地を滴下してゆっくり添加する;
・ペレットが存在する場合、ペレットから取り外すために、上下に穏やかに数回ピペット操作する;
・1000RPMで7分間回転させ、上清を吸引し、25mLの播種中に再懸濁する;
・35μL中35,000細胞/ウェル(1.0×106細胞/mL)を播種する;
・プレートを37℃で24時間インキュベートする。次いで、プレートを、加湿された雰囲気中5%CO2で30℃に24~48時間移す。
【0094】
3日目FLIPRアッセイ
・化合物希釈緩衝液を使用してプレート洗浄機でプレートを洗浄し(4回の洗浄×100μL/洗浄)、各ウェル中に25μLを残す;
・25μLの2×Ca5色素を各ウェルに添加する;
・室温で1時間インキュベートする;
・化合物希釈緩衝液を使用してプレート洗浄機でプレートを洗浄し(4回の洗浄×100μL/洗浄)、各ウェル中に50μLを残す;
・化合物添加のためにプレートをFLIPRに移す。
【0095】
α2β2型nAChR及びα2α5β2型nAChRの機能的発現
α2β2型nAChRのヒトα2及びβ2サブユニットを、cDNAの指定された組み合わせ(ベクター単独;SAT1+CHAT;SAT1+CHAT+TMIE又はSAT1+CHAT+FAM163B)と共にHEK293T細胞中に同時形質移入し、37℃で一晩、続いて30℃で24~48時間インキュベートした。形質移入された細胞をCa5色素と共に室温で1時間インキュベートし、続いてE
maxニコチン(33μM)で刺激した。形質移入されたもののニコチン誘発性Ca
2+シグナルを
図1(左)にグラフで示す。示されているように、SAT1及びCHATでの同時形質移入は、α2β2型nAChR機能(すなわち、ニコチン誘発性カルシウム流)を増強するが、TMIE又はFAM163Bでの同時形質移入は、α2β2型nAChR機能に影響を及ぼさない。
【0096】
別個に、α2α5β2型nAChRのヒトα2、α5及びβ2サブユニットを、cDNAの指定された組み合わせ(ベクター単独;SAT1+CHAT;SAT1+CHAT+TMIE又はSAT1+CHAT+FAM163B)と共にHEK293T細胞中に同時形質移入し、37℃で一晩、続いて30℃で24~48時間インキュベートした。形質移入された細胞をCa5色素と共に室温で1時間インキュベートし、続いてE
maxニコチン(33μM)で刺激した。形質移入されたもののニコチン誘発性Ca
2+シグナルを
図1(右)にグラフで示す。示されているように、(SAT1及びCHATの存在下での)TMIE又はFAM163B同時形質移入は、α2β2α5型nAChR機能(すなわち、ニコチン誘発性カルシウム流)を劇的に増強する。
【0097】
α2β2型nAChR及びα2α5β2型nAChRのニコチン誘発性活性に対するアンタゴニストの濃度応答曲線
α5あり又はなしのヒトnAChRサブユニットα2及びβ2サブユニットを、cDNAの指定された組み合わせ(SAT1+CHAT;SAT1+CHAT+TMIE又はSAT1+CHAT+FAM163B)と共にHEK293T細胞中に同時形質移入した。37℃での一晩のインキュベーション後、細胞を30℃で更に24~48時間インキュベートした。次いで、細胞をCa5色素と共に室温で1時間インキュベートし、種々の濃度のニコチンで刺激した。FLIPR
TETRA画像装置を使用して、ニコチン誘発性カルシウム流を記録した。FLIPRシグナルを平均し、各形質移入ごとに最大応答に対するパーセンテージでプロットした。
図2に示されているように、FAM163B又はTMIEとの同時形質移入は、α2β2型nAChR及びα2β2α5型nAChRの両方に対するニコチン作用強度を左にシフトさせた。
【配列表】
【国際調査報告】