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特表2024-5163113Dフォトポリマー噴射用のサポート基礎構造体を製造するための放射線硬化性組成物
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  • 特表-3Dフォトポリマー噴射用のサポート基礎構造体を製造するための放射線硬化性組成物 図1
  • 特表-3Dフォトポリマー噴射用のサポート基礎構造体を製造するための放射線硬化性組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】3Dフォトポリマー噴射用のサポート基礎構造体を製造するための放射線硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/314 20170101AFI20240405BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240405BHJP
   B29C 64/40 20170101ALI20240405BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20240405BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240405BHJP
【FI】
B29C64/314
B33Y70/00
B29C64/40
B29C64/112
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568275
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 EP2022061536
(87)【国際公開番号】W WO2022233736
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/092113
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ファン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,チエ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チョン シー
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ,チー チョン
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA44
4F213AB04
4F213AR06
4F213AR15
4F213WA25
4F213WA67
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL62
4F213WL96
(57)【要約】
本発明は、(A)少なくとも1つの水溶性単官能エチレン性不飽和モノマー、(B)少なくとも1つの水溶性非硬化性成分であって、成分(B)の加重平均融点が22℃より高い、好ましくは25℃より高い、水溶性非硬化性成分、及び(C)少なくとも1つの光開始剤を含む、放射線硬化性組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
(A)少なくとも1つの水溶性単官能エチレン性不飽和モノマー、
(B)少なくとも1つの水溶性非硬化性成分であって、成分(B)の加重平均融点が22℃より高い、好ましくは25℃より高い、水溶性非硬化性成分、
(C)少なくとも1つの光開始剤
を含む、放射線硬化性組成物。
【請求項2】
成分(B)が、式(I)
【化1】
(式中、Rは、水素、又は6個以下の炭素原子、好ましくは3個以下の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは、水素、アルキル基又はアルコキシ基であり、アルキル基又はアルコキシ基は6個以下の炭素原子、好ましくは3個以下の炭素原子を有する)
で表される少なくとも1つの化合物を含む、請求項1に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項3】
成分(B)が、成分(A)と反応しない、請求項1又は2に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項4】
成分(B)が、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はそれらの任意の組み合わせであり、好ましくは、前記成分(B)がポリエチレングリコールである、請求項1から3のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項5】
成分(B)が、成分(A)の光硬化生成物と相溶性がない、請求項1から4のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項6】
成分(B)の加重平均融点が80℃以下、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項7】
成分(A)の量が、組成物の総質量に対して30~60質量%、好ましくは35~55質量%、より好ましくは40~50質量%の範囲である、請求項1から6のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項8】
成分(B)の量が、組成物の総質量に対して30~69質量%、好ましくは40~65質量%、より好ましくは50~60質量%の範囲である、請求項1から7のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項9】
成分(C)の量が、組成物の総質量に対して0.1~5質量%、好ましくは0.2~3質量%の範囲である、請求項1から8のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項10】
成分(D)としての水を、組成物の総質量に対して0~15質量%、好ましくは5~12質量%の量でさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項11】
成分(D)対成分(B)の質量比が1:20~1:5の範囲である、請求項10に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項12】
成分(E)としての少なくとも1つの阻害剤を、組成物の総質量に対して0.1~2質量%又は0.2~1質量%の量でさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項13】
フォトポリマー噴射3D印刷の方法であって、以下の工程:
(i)造形材料としての液体フォトポリマーの液滴とサポート材料としての請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物とをインクジェットプリントヘッドを通して造形プラットフォーム上に別々に噴射してパターンの層を形成し、そのパターンをUV放射、赤外線熱、マイクロ波、又はそれらの組み合わせによって硬化させる工程、
(ii)工程(i)の印刷プロセスを層ごとに繰り返して、3D印刷されたサポート基礎構造体によって支持された造形基礎構造体の3D印刷された物品を形成する工程、
(iii)水を用いて前記3D印刷されたサポート基礎構造体を除去する工程
を含む方法。
【請求項14】
工程(iii)における水の温度が30~90℃、好ましくは40~70℃、より好ましくは55~65℃である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
3D印刷されたサポート基礎構造体の除去が、超音波処理、撹拌、水噴射及び/又はこすり落としにより行われる、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から12のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物から形成されたサポート基礎構造体。
【請求項17】
請求項16に記載のサポート基礎構造体を用いて形成された、又は請求項13から15のいずれか一項に記載の方法によって得られた、3D印刷された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトポリマー噴射用の3D印刷されたサポート基礎構造体を製造することができる放射線硬化性組成物と、前記放射線硬化性組成物を使用する3D印刷の方法と、前記3D印刷の方法を用いて得ることができる3D印刷された物品とに関する。
【背景技術】
【0002】
フォトポリマー噴射(PPJ)3D印刷は、材料液滴を積み重ねることによって構造体を製造する、高解像度の積層造形(AM)手法である。PPJは、1台の機械に複数のドロップ・オン・デマンド方式のインクジェットプリントヘッドを搭載できる利点を生かし、ピコリットルの液滴に含まれる複数の機能性材料を選択的にターゲット位置に堆積させ、2D又は3Dの構造体を形成することで、共印刷(co-printing)を可能にする。マルチマテリアル印刷機能により、サポート材料は、造形材料と共に印刷して、インターロック、オーバーハング及び中空構造などの複雑な形状を形成することができ、そして印刷後に除去することができる。印刷された造形材料及びサポート材料は、サポート材料によって形成された3D印刷されたサポート基礎構造体及び造形材料によって形成された3D印刷された造形基礎構造体を有する、複合構造体を形成する。3D印刷されたサポート基礎構造体は、3D印刷された造形基礎構造体を支持する。プロセスの完了後、3D印刷されたサポート基礎構造体を除去すると、3D印刷された造形基礎構造体で作られた3D印刷された物品が最終製品として残る。
【0003】
米国特許第6569373号は、三次元物体のサポート材料として使用するのに好適な組成物を開示しており、硬化後に、前記組成物は、水又はアルカリ性又は酸性の水溶液に曝されると膨潤又は分解可能な固体形態となる。
【0004】
米国特許第9334402号は、3D物体を構築する際の支持に好適な組成物を開示しており、照射後に、組成物は、水、アルカリ性、酸性水、又は水洗浄剤溶液中に部分的に溶解するか、又は膨潤可能な固体、半固体、又はゲル材料となる。
【0005】
米国特許第8460451号は、水溶性であるがUV硬化性樹脂ではないワックス成分を含み、そして印刷には加熱機能を備えた特殊なプリントヘッドを必要とする三次元印刷システムで使用するサポート材料を開示している。
【0006】
3D印刷されたサポート基礎構造体の除去は、通常は、例えば苛性ソーダ水溶液を使用する化学洗浄プロセスによって、又は高圧水噴射ステーションによって、印刷作業の完了後に行われる。このような除去プロセスにはいくつかの欠点がある:1)専用の洗浄及び配管装置が必要である、2)複数の部品のための大きな労働力を要するプロセスが含まれる、3)特に3D印刷された造形基礎構造体の空洞内で、サポート材料の除去が不完全となる場合がある、4)機械的及び/又は化学的洗浄が原因で、低品質の表面品質又は細部の損失が起こる場合がある。
【0007】
上記の問題を克服するため、速く、容易で、化学物質を含まない除去プロセスによって除去することができるように、水溶性の放射線硬化性サポート基礎構造体を有することが非常に望ましい。同時に、良好な印刷精度を確実とするために、高温で高い硬度を有する放射線硬化性サポート基礎構造体を有することも非常に望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6569373号
【特許文献2】米国特許第9334402号
【特許文献3】米国特許第8460451号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、3Dフォトポリマー噴射用のサポート材料を製造するための放射線硬化性組成物を提供することであり、このサポート材料は、完全に水除去可能であり、且つ良好な印刷精度を確実とするために、高温で高い硬度を有する。
【0010】
本発明の別の目的は、サポート材料としての本発明の放射線硬化性組成物から形成された3D印刷された物体を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、本発明の放射線硬化性組成物をサポート材料として用いることにより3D印刷された物体を形成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、上記の目的は以下の実施形態によって達成できることが見出された:
1. 以下の成分:
(A)少なくとも1つの水溶性単官能エチレン性不飽和モノマー、
(B)少なくとも1つの水溶性非硬化性成分であって、成分(B)の加重平均融点が22℃より高い、好ましくは25℃より高い、水溶性非硬化性成分、
(C)少なくとも1つの光開始剤
を含む、放射線硬化性組成物。
【0013】
2. 成分(B)が、式(I)
【化1】
(式中、Rは、水素、又は6個以下の炭素原子、好ましくは3個以下の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは、水素、アルキル基又はアルコキシ基であり、アルキル基又はアルコキシ基は6個以下の炭素原子、好ましくは3個以下の炭素原子を有する)
で表される少なくとも1つの化合物を含む、項目1に記載の放射線硬化性組成物。
【0014】
3. 成分(B)が、成分(A)と反応しない、項目1又は2に記載の放射線硬化性組成物。
【0015】
4. 成分(B)が、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はそれらの任意の組み合わせであり、好ましくは、前記成分(B)がポリエチレングリコールである、項目1から3のいずれかに記載の放射線硬化性組成物。
【0016】
5. 成分(B)が、成分(A)の光硬化生成物と相溶性がない、項目1から4のいずれかに記載の放射線硬化性組成物。
【0017】
6. 成分(B)の加重平均融点が80℃以下、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下である、項目1から5のいずれかに記載の放射線硬化性組成物。
【0018】
7. 成分(A)の量が、組成物の総質量に対して30~60質量%、好ましくは35~55質量%、より好ましくは40~50質量%の範囲である、項目1から6のいずれかに記載の放射線硬化性組成物。
【0019】
8. 成分(B)の量が、組成物の総質量に対して30~69質量%、好ましくは40~65質量%、より好ましくは50~60質量%の範囲である、項目1から7のいずれかに記載の放射線硬化性組成物。
【0020】
9. 成分(C)の量が、組成物の総質量に対して0.1~5質量%、好ましくは0.2~3質量%の範囲である、項目1から8のいずれかに記載の放射線硬化性組成物。
【0021】
10. 成分(D)としての水を、組成物の総質量に対して0~15質量%、好ましくは5~12質量%の量でさらに含む、項目1から9のいずれかに記載の放射線硬化性組成物。
【0022】
11. 成分(D)対成分(B)の質量比が1:20~1:5の範囲である、項目10に記載の放射線硬化性組成物。
【0023】
12. 成分(E)としての少なくとも1つの阻害剤を、組成物の総質量に対して0.1~2質量%又は0.2~1質量%の量でさらに含む、項目1から11のいずれかに記載の放射線硬化性組成物。
【0024】
13. フォトポリマー噴射3D印刷の方法であって、以下の工程:
(i)造形材料としての液体フォトポリマーの液滴とサポート材料としての項目1から12のいずれかに記載の組成物とをインクジェットプリントヘッドを通して造形プラットフォーム上に別々に噴射してパターンの層を形成し、そのパターンをUV放射、赤外線熱、マイクロ波、又はそれらの組み合わせによって硬化させる工程、
(ii)工程(i)の印刷プロセスを層ごとに繰り返して、3D印刷されたサポート基礎構造体によって支持された造形基礎構造体の3D印刷された物品を形成する工程、
(iii)水を用いて3D印刷されたサポート基礎構造体を除去する工程
を含む方法。
【0025】
14. 工程(iii)における水の温度が30~90℃、好ましくは40~70℃、より好ましくは55~65℃である、項目13に記載の方法。
【0026】
15. 3D印刷されたサポート基礎構造体の除去が、超音波処理、撹拌、水噴射及び/又はこすり落としにより行われる、項目13又は14に記載の方法。
【0027】
16. 項目1から12のいずれかに記載の放射線硬化性組成物から形成されたサポート基礎構造体。
【0028】
17. 項目16に記載のサポート基礎構造体を用いて形成された、又は項目13から15のいずれかに記載の方法によって得られた、3D印刷された物品。
【0029】
本発明による放射線硬化性組成物は、完全に水除去可能な3Dフォトポリマー噴射用のサポート基礎構造体として使用することができる。一方で、放射線硬化性組成物を用いて製造されたサポート基礎構造体は、高温で高い硬度を有し、良好な印刷精度を確実とする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、サポート材料としての実施例13の組成物と造形材料としての実施例14の組成物を共に印刷して得られたサポート基礎構造体の溶解時間の写真を示す。
図2図2は、標準的なベンチマークモデルに従って、サポート材料としての実施例13の組成物と造形材料としての実施例14の組成物を共に印刷して得られた3D印刷された物体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
他に定義がない限り、本明細書で使用されるあらゆる技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。本明細書で使用される以下の用語は、他に定めがない限り、以下の意味を有する。
【0032】
本明細書で使用される「a」、「an」及び「the」という冠詞は、当該冠詞に続く用語で指定される1種又は複数種を指す。
【0033】
本開示の文脈では、特徴について言及された任意の具体的な値(終点としての範囲に言及された具体的な値を含む)を再結合して、新たな範囲を形成することができる。
【0034】
本明細書で使用される「放射線硬化性」という用語は、組成物の硬化の開始が活性光線又は放射線への曝露によって達成されることを意味する。
【0035】
本明細書で使用される「室温」という用語は、一般に25±2℃の温度を指す。
【0036】
「水溶性」という用語は、室温で水に可溶であると定義される。一実施形態において、「水溶性」とは、室温での成分の水溶性が0.1g/100g超、好ましくは1g/100g超、より好ましくは5g/100g超、10g/100g超、20g/100g超、最も好ましくは30g/100g超、又は40g/100g超、又は50g/100g超であることを意味する。
【0037】
放射線硬化性組成物
本発明の一態様は、以下の成分:
(A)少なくとも1つの水溶性単官能エチレン性不飽和モノマー、
(B)少なくとも1つの水溶性非硬化性成分であって、成分(B)の加重平均融点が22℃より高い、好ましくは25℃より高い、水溶性非硬化性成分、
(C)少なくとも1つの光開始剤
を含む、硬化性組成物に関する。
【0038】
成分(A)
本発明によれば、成分(A)は、少なくとも1個の単官能エチレン性不飽和基を含有する少なくとも1つの水溶性モノマーを含む。この文脈における「単官能」という用語は、化学式中に重合可能な二重結合を1つだけ有することを意味し、好ましくは重合可能な二重結合はC=C二重結合である。成分(A)の例には、ビニル基、アクリル基、アクリレート基、メタクリレート基、ビニルアミド基、又はアクリルアミド基を含有する単官能モノマーが含まれる。
【0039】
単官能アクリレートの例には、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-(2-エトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソデシルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタジエニルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、モルホリンアクリレート、エポキシ-アクリレートハイブリッドモノマー、例えば3,4-エポキシ-シクロヘキシル-14-メチルアクリレートが含まれる。
【0040】
単官能メタクリレートの例には、例えばイソボルニルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、エトキシ化フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、オクチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、カプロラクトンメタクリレート、ノニルフェノールメタクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリプロピレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート及びグリシジルメタクリレート、エポキシ-アクリレートハイブリッドモノマー、例えば3,4-エポキシ-シクロヘキシル-14メチルメタクリレートが含まれる。
【0041】
単官能ビニルアミド成分の例には、例えばN-ビニル-ピロリドン、ビニルイミダゾール、N-ビニルカプロラクタム、N-(ヒドロキシメチル)ビニルアミド、N-ヒドロキシエチルビニルアミド、N-イソプロピルビニルアミド、N-イソプロピルメチルビニルアミド、N-tert-ブチルビニルアミド、N,N’-メチレンビスビニルアミド、N-(イソブトキシメチル)ビニルアミド、N-(ブトキシメチル)ビニルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メチルビニルアミド、N,N-ジメチルビニルアミド、N,N-ジエチルビニルアミド及びN-メチル-N-ビニルアセトアミドが含まれる。
【0042】
単官能アクリルアミド又はメタクリルアミド成分の例には、例えばアクリロイルモルホリン(ACMO)、メタクリロイルモルホリン、N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N-(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-(ヒドロキシメチル)メタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタメタクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)メタクリルアミド、N-(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド及びN,N-ジエチルメタクリルアミドが含まれる。
【0043】
成分(A)の量は、放射線硬化性組成物の総質量に対して30~60質量%、例えば35質量%、40質量%、45質量%、50質量%、55質量%、好ましくは35~55質量%、より好ましくは40~50質量%の範囲とすることができる。
【0044】
成分(B)
本発明によれば、成分(B)は水溶性及び非硬化性である。成分(B)の加重平均融点は22℃より高く、好ましくは25℃より高く、例えば23℃、26℃、28℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、60℃、70℃である。好ましくは、成分(B)の加重平均融点は80℃以下、より好ましくは70℃以下、又はより好ましくは60℃以下である。
【0045】
一実施形態では、成分(B)は成分(A)と反応しない。別の実施形態では、成分(B)は、成分(A)の光硬化生成物と相溶性がない。
【0046】
好ましい実施形態において、成分(B)は、式(I)
【化2】
(式中、Rは、水素、又は6個以下の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは、水素、アルキル基、又はアルコキシ基であり、アルキル基又はアルコキシ基は、6個以下の炭素原子を有する)
で表される少なくとも1つの化合物を含む。
【0047】
好ましくは、式(I)中のR又はRの少なくとも1つは水素である。
【0048】
好ましくは、Rのアルキル基は、3個以下の炭素原子を有する。好ましい実施形態では、アルキル基はメチル基である。
【0049】
好ましくは、Rのアルキル基又はアルコキシ基は、3個以下の炭素原子を有する。好ましい実施形態において、アルキル基又はアルコキシ基は、C~Cアルキル基、又はC~Cアルコキシ基である。最も好ましい実施形態では、アルキル基又はアルコキシ基は、メチル基又はメトキシ基である。
【0050】
式(I)で表される化合物の例として、R及びRが水素(ポリエチレングリコール(PEG))、又は
が水素、RがC~Cアルキル基、特にメチル基(ポリプロピレングリコール(PPG))、又は
がC~Cアルキル基、特にメチル基、Rが水素(メトキシポリエチレングリコール)であるものが挙げられる。
【0051】
特に好ましい成分(B)は、PEG及びメトキシポリエチレングリコールであり、最も好ましいのはPEGである。
【0052】
一実施形態において、成分(B)の分子量は、60~10000g/モル、例えば100g/モル、150g/モル、200g/モル、400g/モル、600g/モル、1000g/モル、2000g/モル、4000g/モル、6000g/モル、8000g/モル、好ましくは100~6000g/モル、例えば200~4000g/モルの範囲であってよい。
【0053】
成分(B)の量は、硬化性組成物の総質量に対して30~69質量%、例えば35質量%、40質量%、45質量%、50質量%、55質量%、60質量%、65質量%、好ましくは40~65質量%、より好ましくは50~60質量%の範囲とすることができる。
【0054】
光開始剤(C)
放射線硬化性組成物は、成分(C)として少なくとも1つの光開始剤を含む。例えば、光開始剤成分(C)には、少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤及び/又は少なくとも1つのイオン性光開始剤が含まれてよく、そして好ましくは少なくとも1つ(例えば1つ又は2つ)のフリーラジカル光開始剤が含まれる。例えば、3D印刷用の組成物に使用するために当該技術分野で既知のあらゆる光開始剤を使用することが可能であり、例えば、SLA、DLP又はPPJ(フォトポリマー噴射)プロセスで使用される当該技術分野で既知の光開始剤を使用することが可能である。
【0055】
例示的な光開始剤には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、塩素化アセトフェノン、ジアルコキシアセトフェノン、ジアルキルヒドロキシアセトフェノン、ジアルキルヒドロキシアセトフェノンエステル、ベンゾイン及び誘導体(例えばベンゾインアセテート、ベンゾインアルキルエーテル)、ジメトキシベンジオン、ジベンジルケトン、ベンゾイルシクロヘキサノール及び他の芳香族ケトン、アルファ-アミノケトン化合物、フェニルグリオキシレート化合物、オキシムエステル、アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキシド、アシルホスホネート、ケトスルフィド、ジベンゾイルジスルフィド、ジフェニルジチオカーボネート、それらの混合物、及びアルファ-ヒドロキシケトン化合物、又はアルファ-アルコキシケトン化合物との混合物が含まれる。
【0056】
例えば、フリーラジカル光開始剤は、ラジカル光重合を開始するために一般的に使用されるものから選択してよい。フリーラジカル光開始剤の例には、Irgacure(登録商標)369、Irgacure(登録商標)TPO-L、ベンゾイン、例えばベンゾイン、ベンゾインエーテル、例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、及びベンゾインアセテート、アセトフェノン、例えばアセトフェノン、2,2-ジメトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン及び1,1-ジクロロアセトフェノン、ベンジルケタール、例えばベンジルジメチルケタール及びベンジルジエチルケタール、アントラキノン、例えば2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tertブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン及び2-アミルアントラキノン、トリフェニルホスフィン、ベンゾイルホスフィンオキシド、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin TPO)、エチル-2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、ビスアシルホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、例えばベンゾフェノン及び4,4’-ビス(N,N’-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、チオキサントン及びキサントン、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、キノキサリン誘導体、1-フェニル-1,2-プロパンジオン2-O-ベンゾイルオキシム、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-プロピル)ケトン(Irgacure(登録商標)2959)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン、1-アミノフェニルケトン又は1-ヒドロキシフェニルケトン、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシイソプロピルフェニルケトン、フェニル1-ヒドロキシイソプロピルケトン、及び4-イソプロピルフェニル1-ヒドロキシイソプロピルケトン、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0057】
光開始剤の具体例には、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-N,N-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンとの組み合わせ、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル1-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-ホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィネート及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-ホスフィンオキシド、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0058】
光開始剤(C)の量は、組成物の総質量に対して0.1~5質量%、例えば0.2質量%、0.5質量%、0.8質量%、1質量%、2質量%、3質量%、4質量%又は5質量%、好ましくは0.1~4質量%又は0.2~3質量%の範囲とすることができる。
【0059】
一実施形態において、本発明の放射線硬化性組成物は、以下の成分:
(A)少なくとも1つの水溶性単官能エチレン性不飽和モノマー、
(B)少なくとも1つの水溶性非硬化性成分であって、成分(B)の加重平均融点が22℃より高い、好ましくは25℃より高い、水溶性非硬化性成分、
(C)少なくとも1つの光開始剤
を含み、
成分(A)の量は、30~60質量%又は35~55質量%又は40~50質量%で表すことができ、成分(B)の量は、30~69質量%又は40~65質量%又は50~60質量%で表すことができ、成分(C)の量は、0.1~5質量%又は0.1~4質量%又は0.2~3質量%で表すことができる。
【0060】
水(D)
本発明の組成物は、水をさらに含んでもよい。水には特別な要件はない。水の量は、組成物の総質量に対して0~15質量%、例えば1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%、11質量%、12質量%、13質量%又は14質量%、好ましくは5~12質量%の範囲とすることができる。好ましい実施形態では、水対成分(B)の質量比は、1:20~1:5の範囲である。
【0061】
阻害剤(E)
本発明の組成物は、少なくとも1つの重合阻害剤をさらに含んでよい。重合阻害剤の例として、フェノールベースの阻害剤、例えばヒドロキノン(HQ)、4-メトキシフェノール(MEHQ)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,2-メチレン-ビス-(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、及び1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、アミン化合物、例えばフェノチアジン、ニトロソフェニルヒドロキシルアミン(NPHA)及びその塩、芳香族アミン安定剤、例えばジフェニルアミン(DPA)及びフェニレンジアミン(PPD)、金属不活性化剤、例えばベンゾトリアゾール、アルコキシルアミン(NOR)HALS安定剤、例えば2,2,6,6-テトラメチルピペリジンの誘導体、ニトロキシル安定剤を挙げることができ、それらの混合物又は組み合わせも含む。
【0062】
重合阻害剤の量は、組成物の総量に対して2質量%未満、例えば0.1質量%、0.2質量%、0.5質量%、1質量%又は2質量%、好ましくは0.2~1質量%とすることができる。
【0063】
助剤(F)
本発明の組成物は、1つ以上の助剤をさらに含んでもよい。
【0064】
助剤として、好ましい例は、表面活性物質、難燃剤、核剤、潤滑ワックス、染料、顔料、触媒、UV吸収剤及び安定剤(例えば酸化、加水分解、光、熱又は変色に対する安定剤)、無機及び/又は有機充填剤、補強材及び可塑剤を挙げることができる。加水分解防止剤として、オリゴマー及び/又はポリマーの脂肪族又は芳香族カルボジイミドが好ましい。老化及び有害な環境影響に対して本発明の硬化材料を安定化させるために、好ましい実施形態では安定剤が系に添加される。
【0065】
本発明の組成物が使用中に熱酸化損傷に曝される場合、好ましい実施形態では酸化防止剤が添加される。フェノール系酸化防止剤が好ましい。BASF SE社からのIrganox(登録商標)1010などのフェノール系酸化防止剤は、Plastics Additive Handbook、第5版、H.Zweifel,ed.,Hanser Publishers、ミュンヘン、2001年、第98~107頁、第116頁及び第121頁に記載されている。
【0066】
本発明の組成物は、UV光に曝される場合、好ましくはUV吸収剤で追加的に安定化させる。UV吸収剤は、高エネルギーのUV光を吸収し、そしてエネルギーを放散する分子として一般に知られている。工業的に用いられている慣用のUV吸収剤は、例えば、桂皮酸エステル、ジフェニルシアンアクリレート、ホルムアミジン、ベンジリデンマロネート、ジアリールブタジエン、トリアジン及びベンゾトリアゾールの群に属する。市販のUV吸収剤の例は、Plastics Additive Handbook、第5版、H.Zweifel,ed,Hanser Publishers、ミュンヘン、2001年、第116~122頁に記載されている。
【0067】
上記の助剤に関するさらなる詳細は、専門文献、例えばPlastics Additive Handbook、第5版、H.Zweifel,ed,Hanser Publishers、ミュンヘン、2001年に見出される。
【0068】
本発明によれば、助剤は、硬化性組成物の総質量に対して0~50質量%、0.01~50質量%、例えば0.5~30質量%の量で存在させることができる。
【0069】
組成物の調製
本開示のさらなる態様は、本発明の放射線硬化性組成物を調製する方法に関し、この方法は、組成物の成分を混合することを含む。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、混合は室温又は好ましくは高温(例えば30~90℃、好ましくは35~80℃)で撹拌しながら行うことができる。混合時間及び撹拌速度は、あらゆる成分が合わせて均一に混合される限り、特に制限されない。具体的な実施形態において、混合は1000~3000RPM、好ましくは1500~2500RPMで5~60分間、より好ましくは6~30分間行うことができる。
【0071】
3D印刷されたサポート基礎構造体、その調製及び除去
本開示の一態様は、3D印刷されたサポート基礎構造体を形成する方法に関し、この方法は、本発明の硬化性組成物をサポート材料として使用することを含む。
【0072】
放射線硬化性液体組成物は、重合又は架橋反応を開始させるのに十分なエネルギーを有する活性線によって硬化させることができる。活性線には、限定するものではないが、α線、γ線、紫外線(UV放射線)、可視光線、及び電子線が含まれ、UV放射線及び電子線、特にUV放射線が好ましい。
【0073】
具体的な実施形態では、放射線光の波長は350~420nmの範囲、例えば355、365、385、395、405、420nmとすることができる。放射線のエネルギーは、0.5~2000mw/cmの範囲、例えば1mw/cm、2mw/cm、3mw/cm、4mw/cm、5mw/cm、8mw/cm、10mw/cm、20mw/cm、30mw/cm、40mw/cm、又は50mw/cm、100mw/cm、200mw/cm、400mw/cm、500mw/cm、1000mw/cm、1500mw/cm又は2000mw/cmとすることができる。照射時間は0.5~10秒、好ましくは0.6~6秒の範囲とすることができる。
【0074】
前記液体の3D印刷用サポート材料組成物の液滴を1つ以上のインクジェット3Dプリンタヘッドを介して造形プラットフォーム上に噴射し、その後直ちにUV光を照射することによって、フォトポリマー噴射3D印刷されたサポート基礎構造体が製造される。3D印刷用サポート材料組成物は、好ましくは、プリンタヘッド用のインクとして直接使用される。このプロセスは層ごとに繰り返され、3D印刷されたサポート基礎構造体が形成される。造形材料組成物は、造形プラットフォームに同時に噴射されて3D印刷された造形基礎構造体を形成し、この3D印刷された造形基礎構造体は、3D印刷されたサポート基礎構造体が3D印刷された造形基礎構造体をサポートする、3D印刷された複合構造体を形成する。
【0075】
使用する装置は当業者によく知られており、例としてStratasys,Eden Prairie,MN、米国から入手可能なEden250、Eden260V、Eden500V、CONNEX500、又は3D systems社、Rock Hill,SC、米国から入手可能なMJP2500シリーズ、又は日本国大阪、キーエンスから入手可能なAgilista3100が挙げられる。
【0076】
3D印刷用サポート材料組成物と共に(しかし異なる液滴として)造形プラットフォーム上に噴射される造形材料組成物は、当業者によく知られている。例えば、組成物の例として、BASF SE社から入手可能なEPJ1300、EPJ2100、EPJ2200などが挙げられる。例えば、組成物の例として、Stratasys,Eden Prairie,MN、米国から入手可能なRGD720、RGD525などが挙げられる。他の既知の造形材料を上述のサポート組成物と組み合わせて使用してもよいが、最適化された互換性のために上述の造形材料を使用することが好ましい。
【0077】
インクジェットプリントヘッドを介した造形材料の印刷、及び後続のUV光照射完了後、3D印刷されたサポート基礎構造体は、水を用いて除去することができる。特に、3D印刷されたサポート基礎構造体の除去時間は、超音波処理、撹拌、水噴射及び/又はこすり落としの有無にかかわらず、温水を所定の温度、例えば30~90℃、好ましくは40~70℃、より好ましくは約60℃で使用することによって短縮することができる。
【0078】
時間の測定を簡素化するために、3D印刷されたサポート基礎構造体よりもむしろ、1片のバルク重合させた3D印刷用サポート材料を使用することが可能である。そうするために、本発明の3D印刷用サポート材料組成物を調製し、3D印刷された造形基礎構造体及び3D印刷されたサポート基礎構造体を含む3D印刷された複合構造体を調製するのと同じ条件下で、任意の3D印刷された造形材料の非存在下で重合させる。得られたバルク重合させた3D印刷用サポート材料を、3D印刷された複合構造体から3D印刷されたサポート基礎構造体を除去するのと同じ条件下で水中に入れ、バルク重合させた3D印刷用サポート材料が完全に溶解するまでの時間を測定する。バルク重合させた3D印刷用サポート材料が完全に溶解するのにかかる時間は、3D印刷されたサポート基礎構造体が完全に溶解する時間とは異なるものの、上記の2つの時間は比例して密接に関連することを、当業者は理解するであろう。
【0079】
本発明の3D印刷されたサポート基礎構造体は、60℃でのアスカーC硬度が70を超え、好ましくは80を超え、より好ましくは90を超え、例えば75、85、90、95であり、そして60℃での溶解時間が950秒未満、好ましくは600秒未満、より好ましくは400秒未満、例えば945秒、900秒、800秒、700秒、600秒、500秒、400秒、300秒、200秒であり、これによって良好な印刷精度及び速く完全な水除去性が確実となる。
【実施例
【0080】
本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、これらは本発明を説明するために記載するものであり、本発明を限定するものとして解釈されるものではない。特に断りのない限り、全ての部及びパーセンテージは質量基準である。
【0081】
材料及び略語
ACMO:アクリロイルモルホリン、RAHN社から入手可能、粘度は25℃で12~14mPa・sである。
PEG600:ポリエチレングリコール600、分子量600g/モル、融点20℃
PEG1000:ポリエチレングリコール1000、分子量1000g/モル、融点37℃
PEG2000:ポリエチレングリコール2000、分子量2000g/モル、融点51℃
TPO-L:Omnicure社の2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド
MEHQ:4-メトキシフェノール、Sinoreagent社から入手可能
Laromer UA9089:ポリマー性ウレタンアクリレート、粘度は23℃で18~24Pa・sである。
イソボルニルアクリレート(IBOA)。
【0082】
試験方法
(1)加重平均融点:
【数1】
式中、M及びwは、それぞれ成分B中の個々の成分の融点及び量であり、nは、成分B中の成分の数である。
(2)溶解時間:印刷したサンプル(寸法1cm×1cm×1cm、~1グラム)を超音波で撹拌して60℃の水に完全に溶解させるのに要する時間。
(3)アスカーC硬度:ASTM D2240に準拠し、サンプル表面のアスカーC硬度計で測定。
【0083】
実施例1~8
実施例1~8の硬化性組成物は、表1に示す量のあらゆる成分をプラスチックバイアルに添加し、FlackTek DAC 600.1 VAC-Pスピードミキサーで2000RPM、50℃で10分間混合し、あらゆる固形分を確実に溶解させた後、孔径1μmの濾紙/カプセルフィルターで濾過して液体の硬化性組成物を得ることにより、調製した。
【0084】
Xaar1003GS12プリントヘッドを2個搭載したNotion PPJ3Dプリンタを実施例1~8の印刷に使用した。試験片は、20%のUVエネルギー(約400mW/cm)及び250mm/秒の印刷速度で3D印刷した後、NextDent UV硬化ボックスを使用して20分間UV後硬化を行うことにより、直接調製した。
【0085】
実施例1~8の組成物から3D印刷によって得られた硬化サンプルの様々な温度における溶解時間及び硬度を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
比較例1及び2
比較例1及び2の組成物は、表2に示す量のあらゆる成分をプラスチックバイアルに添加し、FlackTek DAC 600.1 VAC-Pスピードミキサーで2000RPM、50℃で10分間混合し、あらゆる固形分を確実に溶解させた後、孔径1μmの濾紙/カプセルフィルターで濾過して液体の硬化性組成物を得ることにより、調製した。
【0088】
3D印刷方法は、実施例1~8に記載した3D印刷方法と同じであった。
【0089】
【表2】
【0090】
このように、UV照射後、組成物はゲル様材料となり、又は全く硬化性とならず、フォトポリマー噴射用のサポート材料として使用できなかった。
【0091】
実施例9~12
実施例9~12の組成物は、表3に示す量のあらゆる成分をプラスチックバイアルに添加し、FlackTek DAC 600.1 VAC-Pスピードミキサーにより2000RPMで10分間混合して、均質な液体の硬化性組成物を得ることにより、調製した。次いで、組成物を4℃の冷蔵庫に24時間入れ、その凍結挙動を観察した。
【0092】
【表3】
【0093】
実施例13
実施例13の組成物は、表1に示す量のあらゆる成分をプラスチックバイアルに添加し、FlackTek DAC 600.1 VAC-Pスピードミキサーで2000RPM、50℃で10分間混合し、あらゆる固形分を確実に溶解させた後、孔径1μmの濾紙/カプセルフィルターで濾過して液状の硬化性組成物を得ることにより、調製した。
【0094】
3D印刷方法は、実施例1~8に記載した3D印刷方法と同じであった。
【0095】
【表4】
【0096】
このように、組成物内に水が存在すると、遷移金属、例えば銅、ニッケル、ステンレス鋼と接触した場合に安定性の問題が生じる。しかしながら、重合阻害剤(実施例13ではMEHQを選択)を添加することで、材料性能に明らかな影響を与えることなく、この問題を解決することができる。
【0097】
図1は、サポート材料としての実施例13の組成物と造形材料としての実施例14の組成物を印刷して得られたサポート材料基礎構造体の溶解時間を示す。サンプルの印刷には、2つのXaar1003GS12プリントヘッドを備えたNotion PPJ 3Dプリンタを使用した。20%のUVエネルギー(約400mW/cm)及び250mm/秒の印刷速度で3D印刷を行い、前述の3D物体を直接調製した。この間、サポート材料及び造形材料を単一液滴の形態でプリントヘッドから基材の所定の位置に吐出し、2Dパターンを形成した。このプロセスを層ごとに繰り返すことにより、3D物体を印刷した。
【0098】
サポート基礎構造体は、印刷された部品を60℃の水に浸し、超音波で30分間撹拌することにより、造形基礎構造体から除去した。溶解したサポート材料の濃度が2%に達した時点で水を交換した。
【0099】
【表5】
【0100】
標準的なベンチマークモデルに従って、サポート材料としての実施例13の組成物と造形材料としての実施例14の組成物を共に印刷して得られた3D印刷された物体の写真を、図2に示す。3D印刷方法は、図1で記載した方法と同じであった。サポート材料としての本発明の硬化性組成物により、長時間の印刷プロセスの間に良好な印刷精度を達成することができ、そして繊細な構造体が作製されることが実証された。
図1
図2
【国際調査報告】