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特表2024-516739メラノコルチン受容体アゴニスト化合物とバニリンの共結晶およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】メラノコルチン受容体アゴニスト化合物とバニリンの共結晶およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 207/16 20060101AFI20240409BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 15/10 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C07D207/16 CSP
A61K31/5377
A61P3/04
A61P3/10
A61P15/10
A61P29/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568579
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 KR2022006482
(87)【国際公開番号】W WO2022235107
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】10-2021-0059376
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ユン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スル・ア・チュン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ウォン・キム
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC73
4C086GA07
4C086GA12
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086ZA70
4C086ZA81
4C086ZB11
4C086ZC35
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、化学式1で表される化合物とバニリンの共結晶、その製造方法、およびそれを含む医薬組成物に関する。本発明の化学式1で表される化合物とバニリンの共結晶は、化学的および物理的安定性に優れるという特徴を有し、XRPDパターン、DSCプロファイル、および/またはTGAプロファイルによって特性化されることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1の化合物およびバニリンの共結晶であって、
X線粉末回折(XRPD)パターンで、下記回折角(2θ値):5.85±0.2°、7.23±0.2°、9.08±0.2°、11.18±0.2°、14.47±0.2°、14.81±0.2°、15.43±0.2°、16.35±0.2°、16.80±0.2°、17.48±0.2°、18.05±0.2°、18.85±0.2°、19.00±0.2°、19.97±0.2°、20.29±0.2°、21.30±0.2°、21.65±0.2°、22.48±0.2°、22.80±0.2°、および27.41±0.2°から選択される5個以上の特徴的なピークを有する、共結晶。
【化1】
(前記化学式1中、
は、C-Cアルキルである。)
【請求項2】
前記Rは、C~Cアルキルである、請求項1に記載の共結晶。
【請求項3】
前記化学式1の化合物が、N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドである、請求項2に記載の共結晶。
【請求項4】
前記化学式1の化合物およびバニリンが2:1~1:2のモル比で含まれる、請求項1に記載の共結晶。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の共結晶の製造方法であって、
前記化学式1の化合物およびバニリンが混合された混合溶液を製造するステップと、
前記混合溶液から前記共結晶を得るステップと、を含む、共結晶の製造方法。
【請求項6】
前記混合溶液中の前記化学式1の化合物と前記バニリンのモル比が2:1~1:2である、請求項5に記載の共結晶の製造方法。
【請求項7】
前記混合溶液は、C~C10の脂肪族鎖状炭化水素系溶媒、C~C10の脂肪族環状炭化水素系溶媒、C~C20のエステル系溶媒、C~C20のエーテル系溶媒、C~C20の有機ニトリル系溶媒、またはこれらの混合溶媒を含む、請求項5に記載の共結晶の製造方法。
【請求項8】
前記混合溶液は、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルアセテート、メチルターシャリーブチルエーテル、およびアセトニトリルからなる群から選択される少なくとも一つを含む溶媒を含む、請求項7に記載の共結晶の製造方法。
【請求項9】
請求項1から4の何れか一項に記載の共結晶と、薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬組成物。
【請求項10】
請求項1から4の何れか一項に記載の共結晶と、薬学的に許容可能な担体と、を含む、メラノコルチン-4受容体機能亢進用医薬組成物。
【請求項11】
前記組成物は、肥満、糖尿、炎症、または勃起不全の予防または治療用である、請求項10に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2021年5月7日に出願された韓国特許出願第10-2021-0059376号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、メラノコルチン受容体に対する優れた亢進活性を示す新規化合物の共結晶、その製造方法、およびそれを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
レプチン(leptin)タンパク質は、脂肪細胞(adipocyte)により分泌されるホルモンであり、体内脂肪の含量の増加に伴ってその分泌量が増加し、視床下部(hypothalamus)で生成される様々な神経ペプチド(neuropeptide)の機能を調節することで、食欲、体脂肪含量およびエネルギー代謝をはじめ、多様な生体内機能を調節する(Schwartz,et al.,Nature 404,661-671(2000))。レプチンタンパク質による食欲と体重調節のシグナル伝逹は、その下流(downstream)における多くの要因の調節により行われるが、その最も代表的なものが、メラノコルチン(melanocortin)、AgRP(agoutirelated peptide)、および神経ペプチドY(neuropeptide Y、NPY)ホルモンである。
【0004】
生体内のカロリー過多による結果として、血液中のレプチンの濃度が増加すると、脳下垂体(pituitary gland)でのプロオピオメラノコルチン(proopiomelanocortin;POMC)タンパク質ホルモンの分泌は増加し、AgRPとNPYの生成は減少する。POMC神経細胞から小さなペプチドホルモンであるalpha-MSH(melanocyte stimulating hormone)が生成され、このホルモンは、二次神経細胞のメラノコルチン-4受容体(Melanocortin-4 Receptor、MC4R)アゴニスト(agonist)として食欲減少を究極的に誘導する。これに対し、カロリー不足による結果として、レプチンの濃度が減少すると、MC4R拮抗剤(antagonist)であるAgRPの発現が増加し、NPYの発現も増加して、究極的に食欲を増進させることになる。つまり、レプチンの変化によって、alpha-MSHホルモンとAgRPホルモンは、MC4Rに対して亢進と拮抗の役割を行うことで、食欲調節に関与する。
【0005】
Alpha-MSHホルモンは、MC4Rの他に、3つのMCR subtypeにも結合し、多様な生理反応を誘導する。現在まで5種のMCR subtypeが究明されており、そのうち、MC1Rは、主に皮膚細胞で発現してメラニン色素調節(skinpigmentation)に関与し、MC2Rは、副腎(adrenal gland)で主に発現し、グルココルチコイドホルモン(glucocorticoid hormone)の生成に関与すると知られており、POMCに由来のACTH(adrenocorticotropic hormone)のみがそのリガンドである。中枢神経系で主に発現するMC3RとMC4Rは、食欲、エネルギー代謝、および体内脂肪貯蔵効率の調節などに関与し、種々の組織で発現するMC5Rは、外分泌機能(exocrine function)を調節すると知られている(Wikberg,et al.,Pharm Res 42(5)393-420(2000))。特に、MC4R受容体の活性化は、食欲の減少とエネルギー代謝の増加を誘導することで、体重を効率的に減少させる効果を示すことから、肥満治療剤の開発の主な作用点として立証されている(Review:Wikberg,Eur.J.Pharmacol 375,295-310(1999));Wikberg,et al.,Pharm Res 42(5)393-420(2000);Douglas et al.,Eur J Pharm 450,93-109(2002);O’Rahilly et al.,Nature Med 10,351-352(2004))。
【0006】
食欲と体重調節において、MC4Rの役割は、アグーチ(agouti)タンパク質の異常発現動物モデル(agouti mouse)実験により、一次的に立証されている。アグーチマウス(Agouti mouse)では、遺伝的変異によりアグーチタンパク質が中枢神経系でも高い濃度で発現し、視床下部でMC4Rの拮抗剤(antagonist)の役割を行うことで、肥満を誘導することが明らかになっている(Yen,TT et al.,FASEB J.8,479-488(1994);Lu D.,et al.Nature 371,799-802(1994))。以後の研究結果では、視床下部神経で実際にアグーチタンパク質と類似のAgRP(agouti-related peptide)が発現することが観察され、これらも、MC4Rに対する拮抗剤として食欲調節に関与すると知られている(Shutter,et al.,Genes Dev.,11,593-602(1997);Ollman,et al.Science 278,135-138(1997))。
【0007】
生体内のMC4Rアゴニストであるalpha-MSHを動物に対して大脳投与すると、食欲を減少させる効果が示され、これにMC4R拮抗剤(antagonist)であるSHU9119(peptide)またはHS014(peptide)を処理すると、食欲を再び増加させる現象が観察されている(Kask et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.245,90-93(1998))。それだけでなく、Melanotan II(MTII、Ac-Nle-c[Asp-His-DPhe-Arg-Trp-Lys]-NH2)と、その類似のアゴニストであるHP228を用いた動物試験において、大脳、腹腔、または皮下投与の後に、食欲抑制、体重減少、エネルギー代謝の増加の効能などが確認されている(Thiele T.E.,et al.Am J Physiol 274(1 Pt 2),R248-54(1998);Lee M.D.,et al.FASEB J 12,A552(1998);Murphy B.,et al.J Appl Physiol 89,273-82(2000))。これと逆に、代表的なSHU9119を動物に投与すると、顕著且つ持続的な飼料摂取および体重増加を示し、MCRアゴニストが肥満治療剤となることができるという薬理学的な証拠を提供する。MTIIの投与時に著しく現れる食欲減少の効果が、MC4R KO(knock-out)マウスでは現れないが、この実験結果は、食欲減少の効果が、主にMC4Rの活性化により行われていることをさらに証明する(Marsh,et al.,Nat Genet 21,119-122(1999))。
【0008】
現在まで開発されている肥満治療剤は、中枢神経系に作用する食欲阻害剤が主な種類であり、中でも、神経シグナル伝達物質(neurotransmitter)の作用を調節する薬物がほとんどであった。その例としては、noradrenalin agent(フェンテルミン(phentermine)とマジンドール(mazindol))、serotonergic agentであるフルオキセチン(fluoxetine)およびシブトラミン(sibutramine)などがある。しかしながら、前記神経シグナル伝達物質調節剤は、数多いサブタイプ受容体により、食欲阻害の他に、様々な生理作用にも広範囲な影響を及ぼす。したがって、前記調節剤は、各サブタイプ毎の選択性に欠けており、長期間投与した際に、様々な副作用が伴われるという大きい欠点がある。
【0009】
一方、メラノコルチンアゴニストは、神経シグナル伝達物質ではなく神経ペプチド(neuropeptide)であり、MC4R遺伝子KOマウスにおいてエネルギー代謝以外の他の機能は何れも正常である点からみて、他の生理機能への影響なしに、食欲阻害による体重減少のみを誘導することができるという点から、作用点としての利点を有する。特に、その受容体が、現在まで開発されている新薬作用点の中で最も成功的な範疇に属するG-タンパク質結合受容体(G-protein coupled receptor、GPCR)であって、サブタイプ受容体に対する選択性の確保が相対的に容易であるという点から、既存の作用点とは大きく区別される。
【0010】
かかるメラノコルチン受容体を作用点として活用した例として、国際公開WO2008/007930号およびWO2010/056022号では、メラノコルチン受容体のアゴニストとしての化合物が開示されている。
【0011】
また、本発明の発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、メラノコルチン受容体、特に、メラノコルチン-4受容体(MC4R)に対する選択的な亢進活性に優れた下記化学式1の新規な化合物およびその製造方法を発明している(韓国特許出願第10-2019-0141649号(2019.11.07.出願))。
【0012】
【化1】
(Rは、C-Cアルキルである。)
【0013】
一方、薬学的に活性である成分の結晶構造は、その薬物の化学的安定性に影響を及ぼすことがある。異なる結晶化条件および貯蔵条件は、その化合物の結晶構造を変化させる可能性があり、時には、異なる形態の結晶形が伴われる生産を引き起こすことがある。一般に、無定形薬物生成物は、規則的な結晶構造を有しておらず、不良な生成物安定性、さらに小さい粒子サイズ、難しい濾過、凝集しやすさ、および不良な流動性といった、その他の欠陥を有することがある。したがって、生成物の多様な物性を改善させる必要がある。このように、一つの化合物に対して、高純度および高い化学的安定性を有する結晶構造を研究する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際特許出願公開WO2008/007930号
【特許文献2】国際特許出願公開WO2010/056022号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、メラノコルチン受容体、特に、メラノコルチン-4受容体(MC4R)に対する選択的な亢進活性に優れた新規な化合物の安定な共結晶、およびその製造方法を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、前記新規な化合物の安定な共結晶を含む医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、
一側面において、本発明は、下記化学式1の化合物およびバニリン(vanillin)の共結晶であって、X線粉末回折(XRPD)パターンで、下記回折角(2θ値):5.85±0.2°、7.23±0.2°、9.08±0.2°、11.18±0.2°、14.47±0.2°、14.81±0.2°、15.43±0.2°、16.35±0.2°、16.80±0.2°、17.48±0.2°、18.05±0.2°、18.85±0.2°、19.00±0.2°、19.97±0.2°、20.29±0.2°、21.30±0.2°、21.65±0.2°、22.48±0.2°、22.80±0.2°、および27.41±0.2°から選択される5個以上の特徴的なピークを有する共結晶を提供する。
【0018】
【化2】
【0019】
前記化学式1中、
は、C-Cアルキルである。
【0020】
前記化学式1の化合物は、不斉炭素中心と不斉軸または不斉平面を有し得るため、cisまたはtrans異性体、RまたはS異性体、ラセミ体、ジアステレオ異性体混合物および個々のジアステレオ異性体として存在することができ、これらの異性体および混合物は、何れも前記化学式1の化合物の範囲に含まれる。
【0021】
本明細書において、便宜上、他に断らない限り、化学式1の化合物は、化学式1の化合物、その薬学的に許容可能な塩、その異性体およびその溶媒和物を何れも含む意味で用いられる。
【0022】
本発明に係る一具体例において、前記化学式1のRは、C~Cアルキルである。本発明に係る他の具体例において、前記化学式1のRは、直鎖状または分岐状のC~Cアルキル、例えば、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、またはtert-ブチルである。
【0023】
本発明に係る他の具体例において、前記化学式1のRは、C~Cアルキルである。本発明に係る他の具体例において、前記化学式1のRは、直鎖状または分岐状のC~Cアルキル、例えば、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチルである。具体的に、前記Rはiso-プロピルであってもよい。
【0024】
本発明に係る一具体例において、前記化学式1の化合物の薬学的に許容可能な塩は、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などの無機酸、酒石酸、ギ酸、クエン酸、酢酸、卜リクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、グルコン酸、安息香酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸などの有機カルボン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、またはナフタレンスルホン酸などのスルホン酸などにより形成された酸付加塩を含むが、これに制限されるものではない。
【0025】
本発明に係る一具体例において、前記溶媒和物(solvate)は、水和物;メタノール、エタノール、2-プロパノール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、n-ブタノール、1,4-ブタンジオール、tert-ブタノール、酢酸、アセトン、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、n-ブチルアセテート、t-ブチルアセテート、イソブチルアセテート、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、クロロホルム、トルエン、およびこれらの混合物などの有機溶媒との溶媒和物を含んでもよい。
【0026】
本発明に係るさらに他の具体例において、前記化学式1の化合物、例えば、N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドは、L-アルギニン(L-arginine)、コリンヒドロキシド(Choline hydroxide)、メグルミン(Meglumine)、メチルパラベン(Methyl paraben)、L-リジン(L-lysine)、プロピルガレート(Propyl gallate)、ソルビン酸(Sorbic acid)、トロメタミン(Tromethamine)、またはウレア(Urea)とは共結晶を形成しないものであってもよいが、本発明がこれに制限されるものではない。
【0027】
本発明に係るさらに他の具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、化学式1の化合物、その薬学的に許容可能な塩、その結晶形またはその溶媒和物と比べて、より優れた化学的および/または物理的安定性と生体利用率を有することができるが、本発明がこれに制限されるものではない。
【0028】
本発明に係る一具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、X線粉末回折パターンで、5.85±0.2°、7.23±0.2°、9.08±0.2°、11.18±0.2°、14.47±0.2°、14.81±0.2°、15.43±0.2°、16.35±0.2°、16.80±0.2°、17.48±0.2°、18.05±0.2°、18.85±0.2°、19.00±0.2°、19.97±0.2°、20.29±0.2°、21.30±0.2°、21.65±0.2°、22.48±0.2°、22.80±0.2°、および27.41±0.2°から選択される5個以上、7個以上、9個以上、10個以上、13個以上、15個以上、17個以上、または20個の特徴的なピークを有してもよい。
【0029】
本発明に係る一具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、X線粉末回折パターンで、5.85±0.2°、7.23±0.2°、9.08±0.2°、11.18±0.2°、14.47±0.2°、14.81±0.2°、15.43±0.2°、16.35±0.2°、16.80±0.2°、17.48±0.2°、18.05±0.2°、18.85±0.2°、19.00±0.2°、19.97±0.2°、20.29±0.2°、21.30±0.2°、21.65±0.2°、22.48±0.2°、22.80±0.2°、および27.41±0.2°の特徴的なピークを有してもよい。
【0030】
本発明に係る一具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、図1に示したX線粉末回折(XRPD)パターンを有するものであってもよい。
【0031】
本発明に係る一具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は無水物質であってもよい。例えば、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶を乾燥した後、乾燥前のXRPDパターンと対照した時に、XRPDパターンに変化が現れないことから確認することができる。
【0032】
本発明に係る一具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、前記化学式1の化合物とバニリンを2:1~1:2、例えば、1:1~1:2、または1:1のモル比で含んでもよい。
【0033】
前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶中の、前記化学式1の化合物とバニリンのモル比は、例えば、H NMRスペクトルから確認されることができるが、モル比の測定方法がこれに制限されるものではない。
【0034】
本発明に係る他の具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、図1に示したX線粉末回折(XRPD)パターンを有するものであってもよい。
【0035】
本発明に係る他の具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、熱重量分析(TGA)プロファイルで、約35℃~180℃の温度範囲で10%以下、8%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1.5%以下、または1.4%の重量損失を有するものであってもよく、および/または、約260℃以後からは分解されるものであってもよい。
【0036】
本発明に係る他の具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、示差走査熱量測定(DSC)プロファイルで、40℃~130℃で少なくとも一つ以上の熱的挙動を示すピークが示されるものであってもよい。例えば、40℃~50℃、75℃~85℃、90℃~95℃、および120℃~130℃の少なくとも一つの温度範囲で吸熱ピークが示されるものであってもよい。
【0037】
本発明に係る他の具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、図2に示したTGA(上)および/またはDSC(下)プロファイルを有するものであってもよい。
【0038】
本発明に係るさらに他の具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、図3に示したTGA(上)および/またはDSC(下)プロファイルを有するものであってもよい。
【0039】
本発明に係る他の具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、ホットステージ顕微鏡検査(HSM)の結果、約70℃~130℃で溶融されるものであってもよい。
【0040】
上記のDSC結果およびHSM結果によると、前記DSC結果において約70℃~130℃で現れる熱的挙動が、HSMの結果から、前記共結晶の溶融によることであると類推される。
【0041】
本発明に係る他の具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、図4から図6に示したHSM写真を有するものであってもよい。
【0042】
本発明に係る他の具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、水溶液で1mg/mL未満の溶解度を有するものであってもよい。
【0043】
本発明に係る他の具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶の1H NMRスペクトルから、前記共結晶が、化学式1の化合物とバニリンを1:1のモル比で含むことが確認される。
【0044】
本明細書において、X線粉末回折(XRPD)分析は、PANalytical X’Pert Pro MPD system(Malvern Panalytical Ltd)を用いて行った結果を示す。
【0045】
熱重量分析(TGA)および示差走査熱量(DSC)分析は、TGA/DSC 3(Mettler-Toledo AG)を用いて行った結果を示す。
【0046】
ホットステージ顕微鏡検査(HSM)は、Leica DM LP顕微鏡にて、TMS 93コントローラーとともにLinkmanホットステージ(モデルFTIR 600)を用いて行った結果を示す。
【0047】
溶解度は、試料に水を添加し、完全に溶解されることを目視で確認した時に、試料に加えた水の最終体積を基準として測定した結果を示し、実際の試料の溶解度は、測定された溶解度より高い値を示し得る。
【0048】
H NMRは、Bruker Advance 600 MHz NMR分光器を用いて測定した結果を示す。
【0049】
本明細書において、温度値は±5℃の誤差を有し得る。
【0050】
前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、化学式1の化合物、その薬学的に許容可能な塩、その結晶形または溶媒和物と比べて、より高い純度を有することができ、物理的および化学的にさらに安定していることができる。
【0051】
さらに、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、公知のメラノコルチン-4-受容体アゴニストと比べて、メラノコルチン-4受容体に対する亢進能力、肥満、糖尿、炎症、勃起不全などの疾病の予防または治療効果がさらに優れるが、本発明の効果がこれに制限されるものではない。
【0052】
他の側面において、本発明は、前記化学式1の化合物およびバニリン(Vanillin)が混合された混合溶液を製造するステップと、前記混合溶液から前記化学式1の化合物およびバニリンの共結晶を得るステップと、を含む、共結晶の製造方法を提供する。
【0053】
本発明に係る一具体例において、前記共結晶の製造のための、前記化学式1の化合物は、化学式1の化合物、その塩、その異性体、またはこれらの溶媒和物であってもよい。
【0054】
前記化学式1の化合物は、韓国特許出願第10-2019-0141649号(2019.11.07.出願)の明細書に記載の製造方法により得られるものであってもよい。
【0055】
先ず、前記化学式1の化合物とバニリンを混合して混合溶液を製造する。
【0056】
本発明に係る一具体例において、前記混合溶液中の前記化学式1の化合物およびバニリンのモル比は、2:1~1:2、例えば、1.5:1~1:1.5、1:1~1:2、または1:1であってもよい。
【0057】
前記混合溶液は、溶媒として、前記化学式1の化合物およびバニリンを溶解できるものであれば特に制限されず、有機溶媒を含んでもよい。
【0058】
前記有機溶媒は、例えば、C~C10の脂肪族鎖状炭化水素系溶媒、C~C10の脂肪族環状炭化水素系溶媒、C~C20のエステル系溶媒、C~C20のエーテル系溶媒、C~C20の有機ニトリル系溶媒、またはこれらの混合溶媒であってもよい。具体的に、前記有機溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルアセテート、メチルターシャリーブチルエーテル、およびアセトニトリルからなる群から選択される少なくとも一つを含む溶媒を含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0059】
本発明に係る一具体例において、前記混合溶液は、溶媒として、アセトニトリル、シクロヘキサン、およびメチルターシャリーブチルエーテルを含んでもよい。
【0060】
本発明に係る一具体例において、有機溶媒(第1溶媒)中で前記化学式1の化合物とバニリンを混合した後、第1溶媒を蒸発させ、第1溶媒とは異なる種類の少なくとも一つの溶媒を順に投入しながら混合溶液を製造してもよい。
【0061】
本発明に係る他の具体例において、アセトニトリル中で前記化学式1の化合物とバニリンを一定時間攪拌した後、アセトニトリルを蒸発させてゲル化し、シクロヘキサンを追加して一定時間攪拌した後、シクロヘキサンを蒸発させてからメチルターシャリーブチルエーテルを追加して一定時間攪拌した後、メチルターシャリーブチルエーテルを蒸発させてからヘキサンを追加して一定時間攪拌して混合してもよい。
【0062】
本発明に係るさらに他の具体例において、エチルアセテート中で前記化学式1の化合物とバニリンを一定時間攪拌した後、エチルアセテートを蒸発させ、ヘプタンを追加して一定時間攪拌して混合してもよい。
【0063】
前記化学式1の化合物とバニリンの混合は、室温、例えば、20~40℃、具体的に、25℃~30℃の温度で行われてもよい。
【0064】
次に、前記化学式1の化合物およびバニリンが溶解された混合溶液から結晶を得る。
【0065】
前記結晶を得るステップは、例えば、溶液を冷却させるか、溶媒を蒸発させるか、逆溶媒を添加して過飽和させるか、スラリー転換などの方法を用いることで行われてもよい。
【0066】
本発明に係る一具体例において、前記結晶を得るステップは、混合溶液から溶媒を蒸発させることを含んでもよい。
【0067】
本発明に係る一具体例において、前記混合溶液から攪拌しながら溶媒を蒸発させることで固体を生成させ、生成された固体を濾過し、化学式1の化合物とバニリンの共結晶を得ることができる。
【0068】
前記溶媒を蒸発させるための攪拌は、例えば、室温より昇温された温度、例えば、30~80℃、具体的に、40~60℃の温度で行ってもよい。
【0069】
本発明に係る一具体例において、前記攪拌は、前記混合溶液を次第に昇温しながら行ってもよい。
【0070】
本発明に係る他の具体例において、前記混合溶液を50℃で一定時間攪拌した後、60℃で一定時間攪拌して共結晶を得ることができる。
【0071】
本発明に係るさらに他の具体例において、前記混合溶液を40℃で一定時間攪拌した後、50℃で一定時間攪拌した後、60℃で一定時間攪拌して共結晶を得ることができる。
【0072】
本発明に係る一具体例において、上記のように得られる共結晶は無水物質であってもよい。これは、上記のように得られる共結晶を乾燥した後、乾燥前のXRPD結果を示したグラフと、乾燥後のXRPD結果を示したグラフとで特徴ピークが変化しないことから、無水物質として得られることを確認することができる。
【0073】
上記のように得られた共結晶は、化学式1の化合物、その薬学的に許容可能な塩、または化学式1の任意の結晶形と比べて、より高い純度を有することができ、物理的および化学的にさらに安定していることができるが、本発明の効果がこれに制限されるものではない。
【0074】
さらに他の側面において、本発明は、(i)前記共結晶と、(ii)薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬組成物を提供する。
【0075】
本発明に係る共結晶は、メラノコルチン受容体、特に、メラノコルチン-4受容体(MC4R)に対して優れた亢進作用を示すため、本発明は、また、上述の共結晶を有効成分として含むメラノコルチン受容体の機能亢進用医薬組成物を提供することができる。具体的に、前記医薬組成物は、メラノコルチン-4受容体機能亢進用組成物であってもよい。
【0076】
また、前記医薬組成物は、肥満、糖尿、炎症、および勃起不全の予防または治療において優れた効果を奏することができるため、肥満の予防または治療用、糖尿の予防または治療用、炎症の予防または治療用、または勃起不全の予防または治療用組成物であってもよいが、本発明の用途がこれらの疾病のみに制限されるものではない。
【0077】
本明細書において、「担体(carrier)」とは、細胞または組織内への化合物の投入を容易にする化合物を意味する。
【0078】
本発明の共結晶を臨床的な目的で投与する時に、単一用量または分離用量で宿主に投与される総一日用量は、体重1kg当たりに0.01~10mgの範囲が好ましいが、個々の患者における特異的な用量水準は、使用される特定の化合物、患者の体重、性別、健康状態、食餌、薬剤の投与時間、投与方法、排泄率、薬剤混合、および疾患の重症度などによって変わり得る。
【0079】
本発明の共結晶は、目的に応じて、如何なる経路でも投与可能である。例えば、本発明の共結晶は、注射または経口投与することができる。
【0080】
本発明の医薬組成物は、錠剤、丸剤、散剤、カプセル剤、粒剤、シロップ、またはエマルジョンなどの多様な経口投与の形態であってもよく、または、筋肉内、静脈内、または皮下投与のための注射用製剤などの非経口投与の形態であってもよい。
【0081】
注射用製剤は、公知の技術によって、適した分散剤、湿潤剤、懸濁剤、または賦形剤を用いて製造することができる。
【0082】
本発明の薬学的製剤に使用可能な賦形剤としては、甘味剤、結合剤、溶解剤、溶解補助剤、湿潤剤、乳化剤、等張化剤、吸着剤、崩壊剤、酸化防止剤、防腐剤、滑沢剤、充填剤、芳香剤などが含まれてもよいが、これに制限されない。例えば、賦形剤として、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、グリシン、シリカ、マグネシウムアルミニウムケイ酸塩、デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、アルギニン酸、ナトリウムアルギン酸塩、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、水、エタノール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、オレンジエッセンス、ストロベリーエッセンス、バニラ香などが使用できる。
【0083】
本発明の医薬組成物が経口投与の形態である場合、用いられる担体の例としては、セルロース、ケイ酸カルシウム、トウモロコシデンプン、ラクトース、スクロース、デキストロース、リン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ゼラチン、タルクなどが挙げられるが、これに制限されない。
【0084】
本発明の医薬組成物が注射用製剤の形態である場合、前記担体としては、水、食塩水、ブドウ糖水溶液、疑似糖水溶液、アルコール、グリコール、エーテル、オイル、脂肪酸、脂肪酸エステル、グリセリドなどが挙げられるが、これに制限されない。
【0085】
さらに他の側面において、メラノコルチン受容体、特に、メラノコルチン-4受容体(MC4R)の機能亢進用途に用いるための上述の共結晶を提供する。
【0086】
一実施形態において、肥満、糖尿、炎症、または勃起不全の治療または予防用途に用いるための、上述の共結晶を提供する。
【0087】
さらに他の側面において、上述の共結晶を対象体(subject)に投与するステップを含む、メラノコルチン受容体、特に、メラノコルチン-4受容体(MC4R)の機能亢進方法を提供する。
【0088】
さらに他の側面において、上述の共結晶を対象体(subject)に投与するステップを含む、肥満、糖尿、炎症、または勃起不全を治療する方法を提供する。
【発明の効果】
【0089】
本発明に係る共結晶は、メラノコルチン受容体、特に、メラノコルチン-4受容体(MC4R)に対して優れた亢進作用を示すため、肥満、糖尿、炎症、および勃起不全の予防または治療に有用に利用されることができる。
【0090】
本発明に係る共結晶は、メラノコルチン-4受容体に対するon-target効果を示し、体重減少および食餌減少の効果を奏するとともに、不安感および憂鬱に影響を与えることなく、hERG(human ether-a-go-go related gene)阻害に対する副作用や突然変異の誘発といった安全性の問題なしに投与可能である。
【0091】
また、本発明に係る共結晶は、任意の化学式1の化合物、その薬学的に許容可能な塩、または化学式1の任意の結晶形と比べて、純度、収率、物理的および化学的安定性に優れる。
【0092】
具体的に、前記共結晶は、化学式1の化合物、その薬学的に許容可能な塩、または化学式1の任意の結晶形と比べて、吸湿性、溶解性、貯蔵安定性、生成安定性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
図1】実施例1のXRPD結果を示したグラフである。
図2】実施例1のTGA(上)およびDSC(下)結果を示したグラフである。
図3】実施例2のTGA(上)およびDSC(下)結果を示したグラフである。
図4】実施例1のHSM写真である(20x0.40倍率)。
図5】実施例1のHSM写真である(20x0.40倍率)。
図6】実施例1のHSM写真である(20x0.40倍率)。
【発明を実施するための形態】
【0094】
以下、製造例および実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、これらの実施例は、本発明の例示にすぎず、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【0095】
製造例1:メチル(2S,4S)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレート塩酸塩の製造
【化3】
下記ステップA、B、C、D、およびEの過程を経て標題化合物を得た。
【0096】
ステップA:1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-アジドピロリジン-1,2-ジカルボキシレートの製造
窒素下で、1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4R)-4-((メチルスルホニル)オキシ)ピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(48.5g、150mmol)をN,N’-ジメチルホルムアミド(250ml)に溶かし、アジ化ナトリウム(19.5g、300ml)を添加した。80℃で16時間攪拌し、反応溶媒を減圧濃縮させた後、水を添加し、エチルアセテートで2回抽出した。有機層を塩化ナトリウム水溶液と水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥濾過した。濾液を減圧濃縮し、粗製(crude)の1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-アジドピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(39.59g、98%)を得て、精製せずに次のステップで使用した。
MS [M+H] = 271 (M+1)
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 4.43-4.37 (m, 1H), 4.35-4.27 (br, 1H), 3.77 (s, 1.8H), 3.76 (s, 1.2H), 3.73-3.66 (m, 1H), 3.44-3.38 (m, 1H), 2.63-2.49 (m, 1H), 2.19-2.11 (m, 1H), 1.50 (s, 4.5H), 1.44 (s, 4.5H)
【0097】
ステップB:1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-アミノピロリジン-1,2-ジカルボキシレートの製造
上記のステップAで得られた1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-アジドピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(24.59g、91.0mmol)をテトラヒドロフラン(180ml)に溶かした後、0℃で1Mのトリメチルホスフィンテトラヒドロ溶液(109.2ml、109.2mmol)をゆっくりと添加した。同一温度で1時間攪拌した後、常温で3時間攪拌した。反応溶媒を減圧濃縮させた後、ジクロロメタン(100ml)と水(150ml)を入れて30分程度攪拌した。層分離し、ジクロロメタンでさらに1回抽出した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥濾過した。濾液を減圧濃縮し、粗製の1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-アミノピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(20.62g、93%)を得て、精製せずに次のステップで使用した。
MS [M+H] = 245 (M+1)
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 4.27 (m, 1H), 3.77 (s, 1.8H), 3.76 (s,1.2H), 3.75-3.67 (m, 1H), 3.50-3.42 (m, 1H), 3.22-3.17 (m, 1H), 2.58-2.47 (m,1H), 1.82-1.71 (m, 1H), 1.48 (s, 4.5H), 1.42 (s, 4.5H)
【0098】
ステップC:1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-(((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)アミノ)ピロリジン-1,2-ジカルボキシレートの製造
上記のステップBで得られた1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-アミノピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(20.62g、84.4mmol)をジクロロエタン(150ml)に溶かし、4-メチルシクロヘキサノン(9.5ml、101.3mmol)を添加した。0℃でナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(26.8g、126.6mmol)を添加し、常温で16時間攪拌した。反応溶媒を減圧濃縮させて水を添加し、エチルアセテートで2回抽出した。有機層を塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥濾過した。濾液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製して1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-(((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)アミノ)ピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(22.9g、80%)を得た。
MS [M+H] = 341 (M+1)
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 4.26 (m, 1H), 3.76 (s, 1.8H), 3.75 (s, 1.2H), 3.78-3.71 (m, 1H), 3.49-3.40 (m, 1H), 3.22-3.16 (m, 1H), 2.69-2.60(br, 1H), 2.58-2.46 (m, 1H), 1.87-1.77 (m, 1H), 1.73-1.63 (m, 1H), 1.62-1.35(m, 8H), 1.48 (s, 4.5H), 1.42 (s, 4.5H), 0.96 (d, 3H)
【0099】
ステップD:1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-1,2-ジカルボキシレートの製造
上記のステップCで得られた1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-(((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)アミノ)ピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(37.29g、109.5mmol)をジクロロメタン(500ml)に溶かし、トリエチルアミン(61.1ml、438.1mmol)を入れた後、0℃でイソブチリルクロリド(11.7ml、219mmol)をゆっくりと添加した。常温で16時間攪拌した後、反応溶媒を減圧濃縮させてから炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し、エチルアセテートで2回抽出した。有機層を塩化ナトリウム水溶液と水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥濾過した。濾液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製して1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(38.79g、86%)を得た。
MS [M+H] = 411 (M+1)
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 4.27 (m, 1H), 3.76 (s, 1.8H), 3.75 (s, 1.2H), 3.78-3.72 (m, 1H), 3.50-3.41 (m, 1H), 3.33-3.14 (m, 1H), 2.69-2.60 (m, 2H), 2.57-2.43 (m, 1H), 1.87-1.79 (m, 1H), 1.70-1.61 (m, 1H), 1.60-1.32 (m, 8H), 1.47 (s, 4.5H), 1.41 (s, 4.5H), 1.10 (dd, 6H), 0.99 (d, 3H)
【0100】
ステップE:メチル(2S,4S)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレート塩酸塩の製造
上記のステップDで得られた1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(34.0g、82.8mmol)をジクロロメタン(200ml)に溶かした後、0℃で4Nの塩酸1,4-ジオキサン溶液(82.8ml、331.3mmol)を添加した。常温で6時間攪拌した後、反応溶媒を減圧濃縮し、粗製の標題化合物(28.7g、99%)を得て、精製せずに次のステップで使用した。
MS[M+H] = 311 (M+1)
【0101】
製造例2:(3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボン酸の製造
【化4】
国際公開WO2004/092126号に記載の方法により標題化合物を得た。
MS[ M+H] = 282 (M+1)
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.43-7.33 (m, 4H), 3.90-3.69 (m, 3H), 3.59 (dd, J = 11.2, 10.0 Hz, 1H), 3.29 (dd, J = 11.2, 11.2 Hz, 1H), 3.18-3.09 (m, 1H), 1.44 (s, 9H)
【0102】
製造例3:N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドの製造(MC70)
【化5】
下記ステップA、B、およびCの過程を経て標題化合物を得た。
【0103】
ステップA:メチル(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレートの製造
製造例1で得られたメチル(2S,4S)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレート塩酸塩(28.7g、82.73mmol)、製造例2で得られた(3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボン酸(24.5g、86.87mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(22.2g、115.83mmol)、および1-ヒドロキシベンゾトリアゾールハイドレート(15.7g、115.83mmol)をN,N’-ジメチルホルムアミド(400ml)に溶かし、N,N’-ジイソプロピルエチルアミン(72.0ml、413.66mmol)をゆっくりと添加した。常温で16時間攪拌し、反応溶媒を減圧濃縮させた後、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を入れ、エチルアセテートで2回抽出した。有機層を塩化ナトリウム水溶液と水で2回ずつ洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥濾過した。濾液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製してメチル(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレート(41.19g、87%)を得た。
MS [M+H] = 575 (M+1)
【0104】
ステップB:(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボン酸の製造
上記のステップAで得られたメチル(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレート(39.4g、68.62mmol)をメタノール(450ml)に溶かした後、6Nの水酸化ナトリウム水溶液(57.2ml、343.09mmol)を添加した。常温で16時間攪拌し、6Nの塩酸水溶液でpH5程度に調整した後、反応溶液を減圧濃縮させた。濃縮液をジクロロメタンで溶かした後、溶解されていない固体は紙フィルターで濾過した。濾液を減圧濃縮し、粗製の標題化合物(38.4g、99%)を得て、精製せずに次のステップで使用した。
MS [M+H] = 561 (M+1)
【0105】
ステップC:N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドの製造
上記のステップBで得られた(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボン酸(38.4g、68.60mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(18.4g、96.04mmol)、および1-ヒドロキシベンゾトリアゾールハイドレート(13.0g、96.04mmol)をN,N’-ジメチルホルムアミド(200ml)に溶かした後、順にモルホリン(5.9ml、68.80mmol)とN,N’-ジイソプロピルエチルアミン(59.7ml、343.02mmol)をゆっくりと添加した。常温で16時間攪拌し、反応溶液を減圧濃縮させた後、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を入れ、エチルアセテートで2回抽出した。有機層を塩化ナトリウム水溶液と水で2回ずつ洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥濾過した。濾液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製してN-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド(37.05g、86%、MC70)を得た。
MS [M+H] = 630 (M+1)
【0106】
実施例1:N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドおよびバニリンの共結晶の製造
アセトニトリルに、前記製造例3で製造した化合物(MC70)とバニリン(vanillin)を1:1のモル比で入れ、室温で1日間攪拌した。アセトニトリルを蒸発させてゲル化させ、シクロヘキサンを入れて常温で2時間攪拌し、ゲルが含まれている溶液を製造した。シクロヘキサンを蒸発させてさらにゲル化させた後、メチルターシャリーブチルエーテルを入れて溶解させた。メチルターシャリーブチルエーテルをさらに蒸発させた後、ゲル状態でヘキサンを入れ、5日間室温で攪拌することで、ゲルが含まれている溶液を製造した。次に、50℃で3日間攪拌した後、60℃で3日間攪拌し、薄紅色の懸濁液の標題の共結晶を得た。
【0107】
実施例2:N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドおよびバニリンの共結晶の製造
上記で得られた実施例1に係る共結晶を65℃の真空乾燥下で1日間乾燥し、標題の共結晶を得た。
【0108】
実施例3:N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドおよびバニリンの共結晶の製造
エチルアセテートに、前記製造例3で製造した化合物(MC70)とバニリン(vanillin)を1:1のモル比で入れ、室温で5時間攪拌した後、40℃で3日間攪拌した。エチルアセテートを蒸発させた後、ヘプタンを入れて室温で5時間攪拌し、ゲルが含まれている溶液状態を得た。次に、40℃で3日間攪拌した後、50℃で3日間攪拌し、一部結晶が形成されることを確認した。さらに60℃で9日間攪拌し、赤黒い懸濁液の標題の共結晶を得た。
【0109】
比較例1:N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドおよびウレアの共結晶の製造
エチルアセテートに、前記製造例3で製造した化合物(MC70)とウレア(urea)を1:1のモル比で入れ、室温で1日間攪拌し、固体が含まれている溶液を得た後、50℃で2日間攪拌した後、60℃で14日間攪拌しても、標題の共結晶が形成されないことを確認した。
【0110】
実験例1.XRPD評価
粉末XRPD回折パターンは、Cu放射線入射ビームを用いるPanalytical Xpert Pro MPD回折計を用いて行った。約20-30mgの試料を、ガラスサンプルホルダーに平らな表面を有するように均して載せた後、機器のジェネレータを45kV(acceration voltage)、40mA(filament emission)に設定し、reflection mode(not-spin)で測定した。0.026°のステップサイズ(step size)および51秒のTime per stepの条件で、4~40°の範囲のブラッグ角(2θ)を測定した。
【0111】
図1に示したスペクトルから確認されるように、実施例1に係る共結晶は、結晶性物質とともに無定形が含まれていて、ハロー(halo)パターンが現れることが確認され、XRPDの具体的な値は下記表1に示した。
【0112】
実施例2に係る共結晶と、実施例3に係る共結晶のXRPDスペクトルも、実施例1に係る共結晶のXRPDスペクトルと一致することを確認した。
【0113】
実施例1に係る共結晶と、実施例2に係る共結晶のXRPDスペクトルの比較結果、実施例1に係る共結晶を65℃の真空条件で1日間乾燥しても、共結晶の形態が変化しないことを確認した。
【0114】
【表1-1】
【表1-2】
【0115】
実験例2.熱重量分析(TGA)および示差走査熱量測定(DSC)
TGAおよびDSCのコンボ分析は、Mettler-Toledo TGA/DSC3+分析器を用いて行った。試料を開放型アルミニウムパンに入れ、パンを密封した後、蓋を突き抜き、TG溶鉱炉に挿入した。窒素下、10K/minの速度で、25℃から最大350℃まで加熱して測定した。
【0116】
図2から確認されるように、TGA分析の結果、実施例1に係る共結晶は、約39℃~180℃の温度範囲で約5.5wt%の重量損失が観察され、約270℃以後からは分解されることが確認された。
【0117】
また、DSC分析の結果、実施例1に係る共結晶は、約70℃~130℃で数回の熱的挙動(peak78.6℃、92.8℃、127.3℃)が観察された。
【0118】
図3から確認されるように、TGA分析の結果、実施例2に係る共結晶は、約37℃~120℃の温度範囲で約1.4wt%の重量損失が観察され、約260℃以後からは分解されることが確認された。
【0119】
また、DSC分析の結果、実施例2に係る共結晶は、47℃、83℃、および120℃で吸熱ピークが観察された。
【0120】
以上の結果から、実施例1に係る共結晶は無水物質であることを確認した。
【0121】
実験例3.ホットステージ顕微鏡検査(HSM)
Leica DM LP顕微鏡にて、TMS 93コントローラーとともにLinkmanホットステージ(モデルFTIR 600)を用いてHSMを測定した。サンプルは、10x0.22または20x0.40の倍率で、交差偏光板付きのラムダプレートを用いて観察した。サンプルはカバーガラス上に載置し、別のカバーガラスをサンプル上に載置した後、ステージが加熱されながら、サンプルを視覚的に観察した。ガスの放出を調べるために、場合によって、サンプルにミネラルオイルを一滴追加することができ、画像はSPOTソフトウェアv.4.5.9とともに、SPO Insightカラーデジタルカメラを用いて取り込んだ。
【0122】
図4乃至図6から確認されるように、HSM分析の結果、実施例1に係る共結晶は、70℃で溶融が開始し、123.9℃で溶融が完了することを確認した。
【0123】
このことから、前記実施例1のDSCにおける数回の熱的挙動は、共結晶の溶融によることであると類推された。
【0124】
実験例4.溶解度の評価
試料に水を添加し、完全に溶解されることを目視で確認した時に、試料に加えた水の最終体積を基準として溶解度を測定した。
【0125】
評価結果、実施例2に係る共結晶の溶解度は、1mg/mL未満であることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-11-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2021年5月7日に出願された韓国特許出願第10-2021-0059376号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、メラノコルチン受容体に対する優れた亢進活性を示す新規化合物の共結晶、その製造方法、およびそれを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
レプチン(leptin)タンパク質は、脂肪細胞(adipocyte)により分泌されるホルモンであり、体内脂肪の含量の増加に伴ってその分泌量が増加し、視床下部(hypothalamus)で生成される様々な神経ペプチド(neuropeptide)の機能を調節することで、食欲、体脂肪含量およびエネルギー代謝をはじめ、多様な生体内機能を調節する(Schwartz,et al.,Nature 404,661-671(2000))。レプチンタンパク質による食欲と体重調節のシグナル伝逹は、その下流(downstream)における多くの要因の調節により行われるが、その最も代表的なものが、メラノコルチン(melanocortin)、AgRP(agoutirelated peptide)、および神経ペプチドY(neuropeptide Y、NPY)ホルモンである。
【0004】
生体内のカロリー過多による結果として、血液中のレプチンの濃度が増加すると、脳下垂体(pituitary gland)でのプロオピオメラノコルチン(proopiomelanocortin;POMC)タンパク質ホルモンの分泌は増加し、AgRPとNPYの生成は減少する。POMC神経細胞から小さなペプチドホルモンであるalpha-MSH(melanocyte stimulating hormone)が生成され、このホルモンは、二次神経細胞のメラノコルチン-4受容体(Melanocortin-4 Receptor、MC4R)アゴニスト(agonist)として食欲減少を究極的に誘導する。これに対し、カロリー不足による結果として、レプチンの濃度が減少すると、MC4R拮抗剤(antagonist)であるAgRPの発現が増加し、NPYの発現も増加して、究極的に食欲を増進させることになる。つまり、レプチンの変化によって、alpha-MSHホルモンとAgRPホルモンは、MC4Rに対して亢進と拮抗の役割を行うことで、食欲調節に関与する。
【0005】
Alpha-MSHホルモンは、MC4Rの他に、3つのMCR subtypeにも結合し、多様な生理反応を誘導する。現在まで5種のMCR subtypeが究明されており、そのうち、MC1Rは、主に皮膚細胞で発現してメラニン色素調節(skinpigmentation)に関与し、MC2Rは、副腎(adrenal gland)で主に発現し、グルココルチコイドホルモン(glucocorticoid hormone)の生成に関与すると知られており、POMCに由来のACTH(adrenocorticotropic hormone)のみがそのリガンドである。中枢神経系で主に発現するMC3RとMC4Rは、食欲、エネルギー代謝、および体内脂肪貯蔵効率の調節などに関与し、種々の組織で発現するMC5Rは、外分泌機能(exocrine function)を調節すると知られている(Wikberg,et al.,Pharm Res 42(5)393-420(2000))。特に、MC4R受容体の活性化は、食欲の減少とエネルギー代謝の増加を誘導することで、体重を効率的に減少させる効果を示すことから、肥満治療剤の開発の主な作用点として立証されている(Review:Wikberg,Eur.J.Pharmacol 375,295-310(1999));Wikberg,et al.,Pharm Res 42(5)393-420(2000);Douglas et al.,Eur J Pharm 450,93-109(2002);O’Rahilly et al.,Nature Med 10,351-352(2004))。
【0006】
食欲と体重調節において、MC4Rの役割は、アグーチ(agouti)タンパク質の異常発現動物モデル(agouti mouse)実験により、一次的に立証されている。アグーチマウス(Agouti mouse)では、遺伝的変異によりアグーチタンパク質が中枢神経系でも高い濃度で発現し、視床下部でMC4Rの拮抗剤(antagonist)の役割を行うことで、肥満を誘導することが明らかになっている(Yen,TT et al.,FASEB J.8,479-488(1994);Lu D.,et al.Nature 371,799-802(1994))。以後の研究結果では、視床下部神経で実際にアグーチタンパク質と類似のAgRP(agouti-related peptide)が発現することが観察され、これらも、MC4Rに対する拮抗剤として食欲調節に関与すると知られている(Shutter,et al.,Genes Dev.,11,593-602(1997);Ollman,et al.Science 278,135-138(1997))。
【0007】
生体内のMC4Rアゴニストであるalpha-MSHを動物に対して大脳投与すると、食欲を減少させる効果が示され、これにMC4R拮抗剤(antagonist)であるSHU9119(peptide)またはHS014(peptide)を処理すると、食欲を再び増加させる現象が観察されている(Kask et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.245,90-93(1998))。それだけでなく、Melanotan II(MTII、Ac-Nle-c[Asp-His-DPhe-Arg-Trp-Lys]-NH2)と、その類似のアゴニストであるHP228を用いた動物試験において、大脳、腹腔、または皮下投与の後に、食欲抑制、体重減少、エネルギー代謝の増加の効能などが確認されている(Thiele T.E.,et al.Am J Physiol 274(1 Pt 2),R248-54(1998);Lee M.D.,et al.FASEB J 12,A552(1998);Murphy B.,et al.J Appl Physiol 89,273-82(2000))。これと逆に、代表的なSHU9119を動物に投与すると、顕著且つ持続的な飼料摂取および体重増加を示し、MCRアゴニストが肥満治療剤となることができるという薬理学的な証拠を提供する。MTIIの投与時に著しく現れる食欲減少の効果が、MC4R KO(knock-out)マウスでは現れないが、この実験結果は、食欲減少の効果が、主にMC4Rの活性化により行われていることをさらに証明する(Marsh,et al.,Nat Genet 21,119-122(1999))。
【0008】
現在まで開発されている肥満治療剤は、中枢神経系に作用する食欲阻害剤が主な種類であり、中でも、神経シグナル伝達物質(neurotransmitter)の作用を調節する薬物がほとんどであった。その例としては、noradrenalin agent(フェンテルミン(phentermine)とマジンドール(mazindol))、serotonergic agentであるフルオキセチン(fluoxetine)およびシブトラミン(sibutramine)などがある。しかしながら、前記神経シグナル伝達物質調節剤は、数多いサブタイプ受容体により、食欲阻害の他に、様々な生理作用にも広範囲な影響を及ぼす。したがって、前記調節剤は、各サブタイプ毎の選択性に欠けており、長期間投与した際に、様々な副作用が伴われるという大きい欠点がある。
【0009】
一方、メラノコルチン受容体アゴニストは、神経シグナル伝達物質ではなく神経ペプチド(neuropeptide)であり、MC4R遺伝子KOマウスにおいてエネルギー代謝以外の他の機能は何れも正常である点からみて、他の生理機能への影響なしに、食欲阻害による体重減少のみを誘導することができるという点から、作用点としての利点を有する。特に、その受容体が、現在まで開発されている新薬作用点の中で最も成功的な範疇に属するG-タンパク質結合受容体(G-protein coupled receptor、GPCR)であって、サブタイプ受容体に対する選択性の確保が相対的に容易であるという点から、既存の作用点とは大きく区別される。
【0010】
かかるメラノコルチン受容体を作用点として活用した例として、国際公開WO2008/007930号およびWO2010/056022号では、メラノコルチン受容体のアゴニストとしての化合物が開示されている。
【0011】
また、本発明の発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、メラノコルチン受容体、特に、メラノコルチン-4受容体(MC4R)に対する選択的な亢進活性に優れた下記化学式1の新規な化合物およびその製造方法を発明している(韓国特許出願第10-2019-0141649号(2019.11.07.出願))。
【0012】
【化1】
(Rは、C-Cアルキルである。)
【0013】
一方、薬学的に活性である成分の結晶構造は、その薬物の化学的安定性に影響を及ぼすことがある。異なる結晶化条件および貯蔵条件は、その化合物の結晶構造を変化させる可能性があり、時には、異なる形態の結晶形が伴われる生産を引き起こすことがある。一般に、無定形薬物生成物は、規則的な結晶構造を有しておらず、不良な生成物安定性、さらに小さい粒子サイズ、難しい濾過、凝集しやすさ、および不良な流動性といった、その他の欠陥を有することがある。したがって、生成物の多様な物性を改善させる必要がある。このように、一つの化合物に対して、高純度および高い化学的安定性を有する結晶構造を研究する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際特許出願公開WO2008/007930号
【特許文献2】国際特許出願公開WO2010/056022号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、メラノコルチン受容体、特に、メラノコルチン-4受容体(MC4R)に対する選択的な亢進活性に優れた新規な化合物の安定な共結晶、およびその製造方法を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、前記新規な化合物の安定な共結晶を含む医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、
一側面において、本発明は、下記化学式1の化合物およびバニリン(vanillin)の共結晶であって、X線粉末回折(XRPD)パターンで、下記回折角(2θ値):5.85±0.2°、7.23±0.2°、9.08±0.2°、11.18±0.2°、14.47±0.2°、14.81±0.2°、15.43±0.2°、16.35±0.2°、16.80±0.2°、17.48±0.2°、18.05±0.2°、18.85±0.2°、19.00±0.2°、19.97±0.2°、20.29±0.2°、21.30±0.2°、21.65±0.2°、22.48±0.2°、22.80±0.2°、および27.41±0.2°から選択される5個以上の特徴的なピークを有する共結晶を提供する。
【0018】
【化2】
【0019】
前記化学式1中、
は、C-Cアルキルである。
【0020】
前記化学式1の化合物は、不斉炭素中心と不斉軸または不斉平面を有し得るため、cisまたはtrans異性体、RまたはS異性体、ラセミ体、ジアステレオ異性体混合物および個々のジアステレオ異性体として存在することができ、これらの異性体および混合物は、何れも前記化学式1の化合物の範囲に含まれる。
【0021】
本明細書において、便宜上、他に断らない限り、化学式1の化合物は、化学式1の化合物、その薬学的に許容可能な塩、その異性体およびその溶媒和物を何れも含む意味で用いられる。
【0022】
本発明に係る一具体例において、前記化学式1のRは、C~Cアルキルである。本発明に係る他の具体例において、前記化学式1のRは、直鎖状または分岐状のC~Cアルキル、例えば、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、またはtert-ブチルである。
【0023】
本発明に係る他の具体例において、前記化学式1のRは、C~Cアルキルである。本発明に係る他の具体例において、前記化学式1のRは、直鎖状または分岐状のC~Cアルキル、例えば、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチルである。具体的に、前記Rはiso-プロピルであってもよい。
【0024】
本発明に係る一具体例において、前記化学式1の化合物の薬学的に許容可能な塩は、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などの無機酸、酒石酸、ギ酸、クエン酸、酢酸、卜リクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、グルコン酸、安息香酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸などの有機カルボン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、またはナフタレンスルホン酸などのスルホン酸などにより形成された酸付加塩を含むが、これに制限されるものではない。
【0025】
本発明に係る一具体例において、前記溶媒和物(solvate)は、水和物;メタノール、エタノール、2-プロパノール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、n-ブタノール、1,4-ブタンジオール、tert-ブタノール、酢酸、アセトン、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、n-ブチルアセテート、t-ブチルアセテート、イソブチルアセテート、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、クロロホルム、トルエン、およびこれらの混合物などの有機溶媒との溶媒和物を含んでもよい。
【0026】
本発明に係るさらに他の具体例において、前記化学式1の化合物、例えば、N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドは、L-アルギニン(L-arginine)、コリンヒドロキシド(Choline hydroxide)、メグルミン(Meglumine)、メチルパラベン(Methyl paraben)、L-リジン(L-lysine)、プロピルガレート(Propyl gallate)、ソルビン酸(Sorbic acid)、トロメタミン(Tromethamine)、またはウレア(Urea)とは共結晶を形成しないものであってもよいが、本発明がこれに制限されるものではない。
【0027】
本発明に係るさらに他の具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、化学式1の化合物、その薬学的に許容可能な塩、その結晶形またはその溶媒和物と比べて、より優れた化学的および/または物理的安定性と生体利用率を有することができるが、本発明がこれに制限されるものではない。
【0028】
本発明に係る一具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、X線粉末回折パターンで、5.85±0.2°、7.23±0.2°、9.08±0.2°、11.18±0.2°、14.47±0.2°、14.81±0.2°、15.43±0.2°、16.35±0.2°、16.80±0.2°、17.48±0.2°、18.05±0.2°、18.85±0.2°、19.00±0.2°、19.97±0.2°、20.29±0.2°、21.30±0.2°、21.65±0.2°、22.48±0.2°、22.80±0.2°、および27.41±0.2°から選択される5個以上、7個以上、9個以上、10個以上、13個以上、15個以上、17個以上、または20個の特徴的なピークを有してもよい。
【0029】
本発明に係る一具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、X線粉末回折パターンで、5.85±0.2°、7.23±0.2°、9.08±0.2°、11.18±0.2°、14.47±0.2°、14.81±0.2°、15.43±0.2°、16.35±0.2°、16.80±0.2°、17.48±0.2°、18.05±0.2°、18.85±0.2°、19.00±0.2°、19.97±0.2°、20.29±0.2°、21.30±0.2°、21.65±0.2°、22.48±0.2°、22.80±0.2°、および27.41±0.2°の特徴的なピークを有してもよい。
【0030】
本発明に係る一具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、図1に示したX線粉末回折(XRPD)パターンを有するものであってもよい。
【0031】
本発明に係る一具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は無水物質であってもよい。例えば、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶を乾燥した後、乾燥前のXRPDパターンと対照した時に、XRPDパターンに変化が現れないことから確認することができる。
【0032】
本発明に係る一具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、前記化学式1の化合物とバニリンを2:1~1:2、例えば、1:1~1:2、または1:1のモル比で含んでもよい。
【0033】
前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶中の、前記化学式1の化合物とバニリンのモル比は、例えば、H NMRスペクトルから確認されることができるが、モル比の測定方法がこれに制限されるものではない。
【0034】
本発明に係る他の具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、図1に示したX線粉末回折(XRPD)パターンを有するものであってもよい。
【0035】
本発明に係る他の具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、熱重量分析(TGA)プロファイルで、約35℃~180℃の温度範囲で10%以下、8%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1.5%以下、または1.4%の重量損失を有するものであってもよく、および/または、約260℃以後からは分解されるものであってもよい。
【0036】
本発明に係る他の具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、示差走査熱量測定(DSC)プロファイルで、40℃~130℃で少なくとも一つ以上の熱的挙動を示すピークが示されるものであってもよい。例えば、40℃~50℃、75℃~85℃、90℃~95℃、および120℃~130℃の少なくとも一つの温度範囲で吸熱ピークが示されるものであってもよい。
【0037】
本発明に係る他の具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、図2に示したTGA(上)および/またはDSC(下)プロファイルを有するものであってもよい。
【0038】
本発明に係るさらに他の具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、図3に示したTGA(上)および/またはDSC(下)プロファイルを有するものであってもよい。
【0039】
本発明に係る他の具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、ホットステージ顕微鏡検査(HSM)の結果、約70℃~130℃で溶融されるものであってもよい。
【0040】
上記のDSC結果およびHSM結果によると、前記DSC結果において約70℃~130℃で現れる熱的挙動が、HSMの結果から、前記共結晶の溶融によることであると類推される。
【0041】
本発明に係る他の具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、図4から図6に示したHSM写真を有するものであってもよい。
【0042】
本発明に係る他の具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、水溶液で1mg/mL未満の溶解度を有するものであってもよい。
【0043】
本発明に係る他の具体例において、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶の1H NMRスペクトルから、前記共結晶が、化学式1の化合物とバニリンを1:1のモル比で含むことが確認される。
【0044】
本明細書において、X線粉末回折(XRPD)分析は、PANalytical X’Pert Pro MPD system(Malvern Panalytical Ltd)を用いて行った結果を示す。
【0045】
熱重量分析(TGA)および示差走査熱量(DSC)分析は、TGA/DSC 3(Mettler-Toledo AG)を用いて行った結果を示す。
【0046】
ホットステージ顕微鏡検査(HSM)は、Leica DM LP顕微鏡にて、TMS 93コントローラーとともにLinkmanホットステージ(モデルFTIR 600)を用いて行った結果を示す。
【0047】
溶解度は、試料に水を添加し、完全に溶解されることを目視で確認した時に、試料に加えた水の最終体積を基準として測定した結果を示し、実際の試料の溶解度は、測定された溶解度より高い値を示し得る。
【0048】
H NMRは、Bruker Advance 600 MHz NMR分光器を用いて測定した結果を示す。
【0049】
本明細書において、温度値は±5℃の誤差を有し得る。
【0050】
前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、化学式1の化合物、その薬学的に許容可能な塩、その結晶形または溶媒和物と比べて、より高い純度を有することができ、物理的および化学的にさらに安定していることができる。
【0051】
さらに、前記化学式1の化合物とバニリンの共結晶は、公知のメラノコルチン-4-受容体アゴニストと比べて、メラノコルチン-4受容体に対する亢進能力、肥満、糖尿、炎症、勃起不全などの疾病の予防または治療効果がさらに優れるが、本発明の効果がこれに制限されるものではない。
【0052】
他の側面において、本発明は、前記化学式1の化合物およびバニリン(Vanillin)が混合された混合溶液を製造するステップと、前記混合溶液から前記化学式1の化合物およびバニリンの共結晶を得るステップと、を含む、共結晶の製造方法を提供する。
【0053】
本発明に係る一具体例において、前記共結晶の製造のための、前記化学式1の化合物は、化学式1の化合物、その塩、その異性体、またはこれらの溶媒和物であってもよい。
【0054】
前記化学式1の化合物は、韓国特許出願第10-2019-0141649号(2019.11.07.出願)の明細書に記載の製造方法により得られるものであってもよい。
【0055】
先ず、前記化学式1の化合物とバニリンを混合して混合溶液を製造する。
【0056】
本発明に係る一具体例において、前記混合溶液中の前記化学式1の化合物およびバニリンのモル比は、2:1~1:2、例えば、1.5:1~1:1.5、1:1~1:2、または1:1であってもよい。
【0057】
前記混合溶液は、溶媒として、前記化学式1の化合物およびバニリンを溶解できるものであれば特に制限されず、有機溶媒を含んでもよい。
【0058】
前記有機溶媒は、例えば、C~C10の脂肪族鎖状炭化水素系溶媒、C~C10の脂肪族環状炭化水素系溶媒、C~C20のエステル系溶媒、C~C20のエーテル系溶媒、C~C20の有機ニトリル系溶媒、またはこれらの混合溶媒であってもよい。具体的に、前記有機溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルアセテート、メチルターシャリーブチルエーテル、およびアセトニトリルからなる群から選択される少なくとも一つを含む溶媒を含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0059】
本発明に係る一具体例において、前記混合溶液は、溶媒として、アセトニトリル、シクロヘキサン、およびメチルターシャリーブチルエーテルを含んでもよい。
【0060】
本発明に係る一具体例において、有機溶媒(第1溶媒)中で前記化学式1の化合物とバニリンを混合した後、第1溶媒を蒸発させ、第1溶媒とは異なる種類の少なくとも一つの溶媒を順に投入しながら混合溶液を製造してもよい。
【0061】
本発明に係る他の具体例において、アセトニトリル中で前記化学式1の化合物とバニリンを一定時間攪拌した後、アセトニトリルを蒸発させてゲル化し、シクロヘキサンを追加して一定時間攪拌した後、シクロヘキサンを蒸発させてからメチルターシャリーブチルエーテルを追加して一定時間攪拌した後、メチルターシャリーブチルエーテルを蒸発させてからヘキサンを追加して一定時間攪拌して混合してもよい。
【0062】
本発明に係るさらに他の具体例において、エチルアセテート中で前記化学式1の化合物とバニリンを一定時間攪拌した後、エチルアセテートを蒸発させ、ヘプタンを追加して一定時間攪拌して混合してもよい。
【0063】
前記化学式1の化合物とバニリンの混合は、室温、例えば、20~40℃、具体的に、25℃~30℃の温度で行われてもよい。
【0064】
次に、前記化学式1の化合物およびバニリンが溶解された混合溶液から結晶を得る。
【0065】
前記結晶を得るステップは、例えば、溶液を冷却させるか、溶媒を蒸発させるか、逆溶媒を添加して過飽和させるか、スラリー転換などの方法を用いることで行われてもよい。
【0066】
本発明に係る一具体例において、前記結晶を得るステップは、混合溶液から溶媒を蒸発させることを含んでもよい。
【0067】
本発明に係る一具体例において、前記混合溶液から攪拌しながら溶媒を蒸発させることで固体を生成させ、生成された固体を濾過し、化学式1の化合物とバニリンの共結晶を得ることができる。
【0068】
前記溶媒を蒸発させるための攪拌は、例えば、室温より昇温された温度、例えば、30~80℃、具体的に、40~60℃の温度で行ってもよい。
【0069】
本発明に係る一具体例において、前記攪拌は、前記混合溶液を次第に昇温しながら行ってもよい。
【0070】
本発明に係る他の具体例において、前記混合溶液を50℃で一定時間攪拌した後、60℃で一定時間攪拌して共結晶を得ることができる。
【0071】
本発明に係るさらに他の具体例において、前記混合溶液を40℃で一定時間攪拌した後、50℃で一定時間攪拌した後、60℃で一定時間攪拌して共結晶を得ることができる。
【0072】
本発明に係る一具体例において、上記のように得られる共結晶は無水物質であってもよい。これは、上記のように得られる共結晶を乾燥した後、乾燥前のXRPD結果を示したグラフと、乾燥後のXRPD結果を示したグラフとで特徴ピークが変化しないことから、無水物質として得られることを確認することができる。
【0073】
上記のように得られた共結晶は、化学式1の化合物、その薬学的に許容可能な塩、または化学式1の任意の結晶形と比べて、より高い純度を有することができ、物理的および化学的にさらに安定していることができるが、本発明の効果がこれに制限されるものではない。
【0074】
さらに他の側面において、本発明は、(i)前記共結晶と、(ii)薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬組成物を提供する。
【0075】
本発明に係る共結晶は、メラノコルチン受容体、特に、メラノコルチン-4受容体(MC4R)に対して優れた亢進作用を示すため、本発明は、また、上述の共結晶を有効成分として含むメラノコルチン受容体の機能亢進用医薬組成物を提供することができる。具体的に、前記医薬組成物は、メラノコルチン-4受容体機能亢進用組成物であってもよい。
【0076】
また、前記医薬組成物は、肥満、糖尿、炎症、および勃起不全の予防または治療において優れた効果を奏することができるため、肥満の予防または治療用、糖尿の予防または治療用、炎症の予防または治療用、または勃起不全の予防または治療用組成物であってもよいが、本発明の用途がこれらの疾病のみに制限されるものではない。
【0077】
本明細書において、「担体(carrier)」とは、細胞または組織内への化合物の投入を容易にする化合物を意味する。
【0078】
本発明の共結晶を臨床的な目的で投与する時に、単一用量または分離用量で宿主に投与される総一日用量は、体重1kg当たりに0.01~10mgの範囲が好ましいが、個々の患者における特異的な用量水準は、使用される特定の化合物、患者の体重、性別、健康状態、食餌、薬剤の投与時間、投与方法、排泄率、薬剤混合、および疾患の重症度などによって変わり得る。
【0079】
本発明の共結晶は、目的に応じて、如何なる経路でも投与可能である。例えば、本発明の共結晶は、注射または経口投与することができる。
【0080】
本発明の医薬組成物は、錠剤、丸剤、散剤、カプセル剤、粒剤、シロップ、またはエマルジョンなどの多様な経口投与の形態であってもよく、または、筋肉内、静脈内、または皮下投与のための注射用製剤などの非経口投与の形態であってもよい。
【0081】
注射用製剤は、公知の技術によって、適した分散剤、湿潤剤、懸濁剤、または賦形剤を用いて製造することができる。
【0082】
本発明の薬学的製剤に使用可能な賦形剤としては、甘味剤、結合剤、溶解剤、溶解補助剤、湿潤剤、乳化剤、等張化剤、吸着剤、崩壊剤、酸化防止剤、防腐剤、滑沢剤、充填剤、芳香剤などが含まれてもよいが、これに制限されない。例えば、賦形剤として、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、グリシン、シリカ、マグネシウムアルミニウムケイ酸塩、デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、アルギニン酸、ナトリウムアルギン酸塩、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、水、エタノール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、オレンジエッセンス、ストロベリーエッセンス、バニラ香などが使用できる。
【0083】
本発明の医薬組成物が経口投与の形態である場合、用いられる担体の例としては、セルロース、ケイ酸カルシウム、トウモロコシデンプン、ラクトース、スクロース、デキストロース、リン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ゼラチン、タルクなどが挙げられるが、これに制限されない。
【0084】
本発明の医薬組成物が注射用製剤の形態である場合、前記担体としては、水、食塩水、ブドウ糖水溶液、疑似糖水溶液、アルコール、グリコール、エーテル、オイル、脂肪酸、脂肪酸エステル、グリセリドなどが挙げられるが、これに制限されない。
【0085】
さらに他の側面において、メラノコルチン受容体、特に、メラノコルチン-4受容体(MC4R)の機能亢進用途に用いるための上述の共結晶を提供する。
【0086】
一実施形態において、肥満、糖尿、炎症、または勃起不全の治療または予防用途に用いるための、上述の共結晶を提供する。
【0087】
さらに他の側面において、上述の共結晶を対象体(subject)に投与するステップを含む、メラノコルチン受容体、特に、メラノコルチン-4受容体(MC4R)の機能亢進方法を提供する。
【0088】
さらに他の側面において、上述の共結晶を対象体(subject)に投与するステップを含む、肥満、糖尿、炎症、または勃起不全を治療する方法を提供する。
【発明の効果】
【0089】
本発明に係る共結晶は、メラノコルチン受容体、特に、メラノコルチン-4受容体(MC4R)に対して優れた亢進作用を示すため、肥満、糖尿、炎症、および勃起不全の予防または治療に有用に利用されることができる。
【0090】
本発明に係る共結晶は、メラノコルチン-4受容体に対するon-target効果を示し、体重減少および食餌減少の効果を奏するとともに、不安感および憂鬱に影響を与えることなく、hERG(human ether-a-go-go related gene)阻害に対する副作用や突然変異の誘発といった安全性の問題なしに投与可能である。
【0091】
また、本発明に係る共結晶は、任意の化学式1の化合物、その薬学的に許容可能な塩、または化学式1の任意の結晶形と比べて、純度、収率、物理的および化学的安定性に優れる。
【0092】
具体的に、前記共結晶は、化学式1の化合物、その薬学的に許容可能な塩、または化学式1の任意の結晶形と比べて、吸湿性、溶解性、貯蔵安定性、生成安定性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
図1】実施例1のXRPD結果を示したグラフである。
図2】実施例1のTGA(上)およびDSC(下)結果を示したグラフである。
図3】実施例2のTGA(上)およびDSC(下)結果を示したグラフである。
図4】実施例1のHSM写真である(20x0.40倍率)。
図5】実施例1のHSM写真である(20x0.40倍率)。
図6】実施例1のHSM写真である(20x0.40倍率)。
【発明を実施するための形態】
【0094】
以下、製造例および実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、これらの実施例は、本発明の例示にすぎず、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【0095】
製造例1:メチル(2S,4S)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレート塩酸塩の製造
【化3】
下記ステップA、B、C、D、およびEの過程を経て標題化合物を得た。
【0096】
ステップA:1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-アジドピロリジン-1,2-ジカルボキシレートの製造
窒素下で、1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4R)-4-((メチルスルホニル)オキシ)ピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(48.5g、150mmol)をN,N’-ジメチルホルムアミド(250ml)に溶かし、アジ化ナトリウム(19.5g、300ml)を添加した。80℃で16時間攪拌し、反応溶媒を減圧濃縮させた後、水を添加し、エチルアセテートで2回抽出した。有機層を塩化ナトリウム水溶液と水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥濾過した。濾液を減圧濃縮し、粗製(crude)の1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-アジドピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(39.59g、98%)を得て、精製せずに次のステップで使用した。
MS [M+H] = 271 (M+1)
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 4.43-4.37 (m, 1H), 4.35-4.27 (br, 1H), 3.77 (s, 1.8H), 3.76 (s, 1.2H), 3.73-3.66 (m, 1H), 3.44-3.38 (m, 1H), 2.63-2.49 (m, 1H), 2.19-2.11 (m, 1H), 1.50 (s, 4.5H), 1.44 (s, 4.5H)
【0097】
ステップB:1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-アミノピロリジン-1,2-ジカルボキシレートの製造
上記のステップAで得られた1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-アジドピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(24.59g、91.0mmol)をテトラヒドロフラン(180ml)に溶かした後、0℃で1Mのトリメチルホスフィンテトラヒドロフラン溶液(109.2ml、109.2mmol)をゆっくりと添加した。同一温度で1時間攪拌した後、常温で3時間攪拌した。反応溶媒を減圧濃縮させた後、ジクロロメタン(100ml)と水(150ml)を入れて30分程度攪拌した。層分離し、ジクロロメタンでさらに1回抽出した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥濾過した。濾液を減圧濃縮し、粗製の1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-アミノピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(20.62g、93%)を得て、精製せずに次のステップで使用した。
MS [M+H] = 245 (M+1)
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 4.27 (m, 1H), 3.77 (s, 1.8H), 3.76 (s,1.2H), 3.75-3.67 (m, 1H), 3.50-3.42 (m, 1H), 3.22-3.17 (m, 1H), 2.58-2.47 (m,1H), 1.82-1.71 (m, 1H), 1.48 (s, 4.5H), 1.42 (s, 4.5H)
【0098】
ステップC:1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-(((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)アミノ)ピロリジン-1,2-ジカルボキシレートの製造
上記のステップBで得られた1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-アミノピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(20.62g、84.4mmol)をジクロロエタン(150ml)に溶かし、4-メチルシクロヘキサノン(9.5ml、101.3mmol)を添加した。0℃でナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(26.8g、126.6mmol)を添加し、常温で16時間攪拌した。反応溶媒を減圧濃縮させて水を添加し、エチルアセテートで2回抽出した。有機層を塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥濾過した。濾液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製して1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-(((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)アミノ)ピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(22.9g、80%)を得た。
MS [M+H] = 341 (M+1)
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 4.26 (m, 1H), 3.76 (s, 1.8H), 3.75 (s, 1.2H), 3.78-3.71 (m, 1H), 3.49-3.40 (m, 1H), 3.22-3.16 (m, 1H), 2.69-2.60(br, 1H), 2.58-2.46 (m, 1H), 1.87-1.77 (m, 1H), 1.73-1.63 (m, 1H), 1.62-1.35(m, 8H), 1.48 (s, 4.5H), 1.42 (s, 4.5H), 0.96 (d, 3H)
【0099】
ステップD:1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-1,2-ジカルボキシレートの製造
上記のステップCで得られた1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-(((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)アミノ)ピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(37.29g、109.5mmol)をジクロロメタン(500ml)に溶かし、トリエチルアミン(61.1ml、438.1mmol)を入れた後、0℃でイソブチリルクロリド(11.7ml、219mmol)をゆっくりと添加した。常温で16時間攪拌した後、反応溶媒を減圧濃縮させてから炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し、エチルアセテートで2回抽出した。有機層を塩化ナトリウム水溶液と水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥濾過した。濾液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製して1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(38.79g、86%)を得た。
MS [M+H] = 411 (M+1)
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 4.27 (m, 1H), 3.76 (s, 1.8H), 3.75 (s, 1.2H), 3.78-3.72 (m, 1H), 3.50-3.41 (m, 1H), 3.33-3.14 (m, 1H), 2.69-2.60 (m, 2H), 2.57-2.43 (m, 1H), 1.87-1.79 (m, 1H), 1.70-1.61 (m, 1H), 1.60-1.32 (m, 8H), 1.47 (s, 4.5H), 1.41 (s, 4.5H), 1.10 (dd, 6H), 0.99 (d, 3H)
【0100】
ステップE:メチル(2S,4S)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレート塩酸塩の製造
上記のステップDで得られた1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(34.0g、82.8mmol)をジクロロメタン(200ml)に溶かした後、0℃で4Nの塩酸1,4-ジオキサン溶液(82.8ml、331.3mmol)を添加した。常温で6時間攪拌した後、反応溶媒を減圧濃縮し、粗製の標題化合物(28.7g、99%)を得て、精製せずに次のステップで使用した。
MS[M+H] = 311 (M+1)
【0101】
製造例2:(3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボン酸の製造
【化4】
国際公開WO2004/092126号に記載の方法により標題化合物を得た。
MS[ M+H] = 282 (M+1)
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.43-7.33 (m, 4H), 3.90-3.69 (m, 3H), 3.59 (dd, J = 11.2, 10.0 Hz, 1H), 3.29 (dd, J = 11.2, 11.2 Hz, 1H), 3.18-3.09 (m, 1H), 1.44 (s, 9H)
【0102】
製造例3:N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドの製造(MC70)
【化5】
下記ステップA、B、およびCの過程を経て標題化合物を得た。
【0103】
ステップA:メチル(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレートの製造
製造例1で得られたメチル(2S,4S)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレート塩酸塩(28.7g、82.73mmol)、製造例2で得られた(3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボン酸(24.5g、86.87mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(22.2g、115.83mmol)、および1-ヒドロキシベンゾトリアゾールハイドレート(15.7g、115.83mmol)をN,N’-ジメチルホルムアミド(400ml)に溶かし、N,N’-ジイソプロピルエチルアミン(72.0ml、413.66mmol)をゆっくりと添加した。常温で16時間攪拌し、反応溶媒を減圧濃縮させた後、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を入れ、エチルアセテートで2回抽出した。有機層を塩化ナトリウム水溶液と水で2回ずつ洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥濾過した。濾液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製してメチル(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレート(41.19g、87%)を得た。
MS [M+H] = 575 (M+1)
【0104】
ステップB:(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボン酸の製造
上記のステップAで得られたメチル(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレート(39.4g、68.62mmol)をメタノール(450ml)に溶かした後、6Nの水酸化ナトリウム水溶液(57.2ml、343.09mmol)を添加した。常温で16時間攪拌し、6Nの塩酸水溶液でpH5程度に調整した後、反応溶液を減圧濃縮させた。濃縮液をジクロロメタンで溶かした後、溶解されていない固体は紙フィルターで濾過した。濾液を減圧濃縮し、粗製の標題化合物(38.4g、99%)を得て、精製せずに次のステップで使用した。
MS [M+H] = 561 (M+1)
【0105】
ステップC:N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドの製造
上記のステップBで得られた(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボン酸(38.4g、68.60mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(18.4g、96.04mmol)、および1-ヒドロキシベンゾトリアゾールハイドレート(13.0g、96.04mmol)をN,N’-ジメチルホルムアミド(200ml)に溶かした後、順にモルホリン(5.9ml、68.80mmol)とN,N’-ジイソプロピルエチルアミン(59.7ml、343.02mmol)をゆっくりと添加した。常温で16時間攪拌し、反応溶液を減圧濃縮させた後、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を入れ、エチルアセテートで2回抽出した。有機層を塩化ナトリウム水溶液と水で2回ずつ洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥濾過した。濾液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製してN-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド(37.05g、86%、MC70)を得た。
MS [M+H] = 630 (M+1)
【0106】
実施例1:N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドおよびバニリンの共結晶の製造
アセトニトリルに、前記製造例3で製造した化合物(MC70)とバニリン(vanillin)を1:1のモル比で入れ、室温で1日間攪拌した。アセトニトリルを蒸発させてゲル化させ、シクロヘキサンを入れて常温で2時間攪拌し、ゲルが含まれている溶液を製造した。シクロヘキサンを蒸発させてさらにゲル化させた後、メチルターシャリーブチルエーテルを入れて溶解させた。メチルターシャリーブチルエーテルをさらに蒸発させた後、ゲル状態でヘキサンを入れ、5日間室温で攪拌することで、ゲルが含まれている溶液を製造した。次に、50℃で3日間攪拌した後、60℃で3日間攪拌し、薄紅色の懸濁液の標題の共結晶を得た。
【0107】
実施例2:N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドおよびバニリンの共結晶の製造
上記で得られた実施例1に係る共結晶を65℃の真空乾燥下で1日間乾燥し、標題の共結晶を得た。
【0108】
実施例3:N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドおよびバニリンの共結晶の製造
エチルアセテートに、前記製造例3で製造した化合物(MC70)とバニリン(vanillin)を1:1のモル比で入れ、室温で5時間攪拌した後、40℃で3日間攪拌した。エチルアセテートを蒸発させた後、ヘプタンを入れて室温で5時間攪拌し、ゲルが含まれている溶液状態を得た。次に、40℃で3日間攪拌した後、50℃で3日間攪拌し、一部結晶が形成されることを確認した。さらに60℃で9日間攪拌し、赤黒い懸濁液の標題の共結晶を得た。
【0109】
比較例1:N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドおよびウレアの共結晶の製造
エチルアセテートに、前記製造例3で製造した化合物(MC70)とウレア(urea)を1:1のモル比で入れ、室温で1日間攪拌し、固体が含まれている溶液を得た後、50℃で2日間攪拌した後、60℃で14日間攪拌しても、標題の共結晶が形成されないことを確認した。
【0110】
実験例1.XRPD評価
粉末XRPD回折パターンは、Cu放射線入射ビームを用いるPanalytical Xpert Pro MPD回折計を用いて行った。約20-30mgの試料を、ガラスサンプルホルダーに平らな表面を有するように均して載せた後、機器のジェネレータを45kV(acceration voltage)、40mA(filament emission)に設定し、reflection mode(not-spin)で測定した。0.026°のステップサイズ(step size)および51秒のTime per stepの条件で、4~40°の範囲のブラッグ角(2θ)を測定した。
【0111】
図1に示したスペクトルから確認されるように、実施例1に係る共結晶は、結晶性物質とともに無定形が含まれていて、ハロー(halo)パターンが現れることが確認され、XRPDの具体的な値は下記表1に示した。
【0112】
実施例2に係る共結晶と、実施例3に係る共結晶のXRPDスペクトルも、実施例1に係る共結晶のXRPDスペクトルと一致することを確認した。
【0113】
実施例1に係る共結晶と、実施例2に係る共結晶のXRPDスペクトルの比較結果、実施例1に係る共結晶を65℃の真空条件で1日間乾燥しても、共結晶の形態が変化しないことを確認した。
【0114】
【表1-1】
【表1-2】
【0115】
実験例2.熱重量分析(TGA)および示差走査熱量測定(DSC)
TGAおよびDSCのコンボ分析は、Mettler-Toledo TGA/DSC3+分析器を用いて行った。試料を開放型アルミニウムパンに入れ、パンを密封した後、蓋を突き抜き、TG溶鉱炉に挿入した。窒素下、10K/minの速度で、25℃から最大350℃まで加熱して測定した。
【0116】
図2から確認されるように、TGA分析の結果、実施例1に係る共結晶は、約39℃~180℃の温度範囲で約5.5wt%の重量損失が観察され、約270℃以後からは分解されることが確認された。
【0117】
また、DSC分析の結果、実施例1に係る共結晶は、約70℃~130℃で数回の熱的挙動(peak78.6℃、92.8℃、127.3℃)が観察された。
【0118】
図3から確認されるように、TGA分析の結果、実施例2に係る共結晶は、約37℃~120℃の温度範囲で約1.4wt%の重量損失が観察され、約260℃以後からは分解されることが確認された。
【0119】
また、DSC分析の結果、実施例2に係る共結晶は、47℃、83℃、および120℃で吸熱ピークが観察された。
【0120】
以上の結果から、実施例1に係る共結晶は無水物質であることを確認した。
【0121】
実験例3.ホットステージ顕微鏡検査(HSM)
Leica DM LP顕微鏡にて、TMS 93コントローラーとともにLinkmanホットステージ(モデルFTIR 600)を用いてHSMを測定した。サンプルは、10x0.22または20x0.40の倍率で、交差偏光板付きのラムダプレートを用いて観察した。サンプルはカバーガラス上に載置し、別のカバーガラスをサンプル上に載置した後、ステージが加熱されながら、サンプルを視覚的に観察した。ガスの放出を調べるために、場合によって、サンプルにミネラルオイルを一滴追加することができ、画像はSPOTソフトウェアv.4.5.9とともに、SPO Insightカラーデジタルカメラを用いて取り込んだ。
【0122】
図4乃至図6から確認されるように、HSM分析の結果、実施例1に係る共結晶は、70℃で溶融が開始し、123.9℃で溶融が完了することを確認した。
【0123】
このことから、前記実施例1のDSCにおける数回の熱的挙動は、共結晶の溶融によることであると類推された。
【0124】
実験例4.溶解度の評価
試料に水を添加し、完全に溶解されることを目視で確認した時に、試料に加えた水の最終体積を基準として溶解度を測定した。
【0125】
評価結果、実施例2に係る共結晶の溶解度は、1mg/mL未満であることが確認された。
【国際調査報告】