(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-18
(54)【発明の名称】製品上オーバレイターゲット
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20240411BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549638
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 US2022011516
(87)【国際公開番号】W WO2022220893
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マナッセン アムノン
(72)【発明者】
【氏名】レヴィンスキ ウラディミール
(72)【発明者】
【氏名】ドレフ イド
(72)【発明者】
【氏名】ウジエル ヨラム
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197DA03
2H197HA03
2H197JA17
2H197JA23
(57)【要約】
半導体基板を有する製品にて、スクライブラインにより分離されていてそれらスクライブラインにより囲まれた能動エリアが内在するダイのマトリクスを画定すべく、その基板上に少なくとも第1及び第2薄膜層を配置しパターニングする。複数個のオーバレイターゲットを、各能動エリア内で第1及び第2薄膜層内に形成し、各オーバレイターゲットを、その基板に対し平行な平面内で10μm×10μmを上回らない寸法を有するものとする。それら複数個のオーバレイターゲットを、第1薄膜層内に形成されていて第1格子ベクトルを有する第1リニア格子と、第1リニア格子付近の第2薄膜層内に形成されていて、第1格子ベクトルに対し平行な第2格子ベクトルを有する第2リニア格子と、を含むものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品であって、
半導体基板と、
ダイのマトリクスを画定すべく前記基板上に配置されパターニングされており、それらダイがスクライブラインにより分離されており且つそれらスクライブラインにより囲まれた能動エリアを内包している、少なくとも第1及び第2薄膜層と、
前記能動エリア各々の内部で前記第1及び第2薄膜層内に形成されており、各オーバレイターゲットが、前記基板に対し平行な平面内で10μm×10μmを上回らない寸法を有すると共に、
前記第1薄膜層内に形成されていて第1格子ベクトルを有する第1リニア格子と、
前記第1リニア格子付近の前記第2薄膜層内に形成されていて、前記第1格子ベクトルに対し平行な第2格子ベクトルを有する、第2リニア格子と、
を備える複数個のオーバレイターゲットと、
を備える製品。
【請求項2】
請求項1に記載の製品であって、5μm×5μmを上回らない寸法を有するオーバレイターゲットを備える製品。
【請求項3】
請求項1に記載の製品であって、前記複数個のオーバレイターゲットが、前記第1及び第2リニア格子が第1角度配置をなすことを特徴とする第1組の前記オーバレイターゲットと、前記第1及び第2リニア格子が第2角度配置をなすことを特徴とする第2組の前記オーバレイターゲットと、を含み、その第2角度配置が、前記半導体基板に対し平行な前記平面に対し垂直な軸周りで前記第1角度配置に対し180°回動されたものである製品。
【請求項4】
請求項1に記載の製品であって、前記複数個のオーバレイターゲットが、前記第1及び第2リニア格子が第1角度配置をなすことを特徴とする第1組の前記オーバレイターゲットと、前記第1及び第2リニア格子が第2角度配置をなすことを特徴とする第2組の前記オーバレイターゲットと、を含み、その第2角度配置が、前記半導体基板に対し平行な前記平面に対し垂直な軸周りで前記第1角度配置に対し90°回動されたものである製品。
【請求項5】
請求項1に記載の製品であって、前記オーバレイターゲット各々が、厳密に、1個の第1リニア格子と1個の第2リニア格子とを備える製品。
【請求項6】
請求項1に記載の製品であって、前記第2リニア格子が、前記半導体基板に対し平行な前記平面内で前記第1リニア格子と隣り合っているが重なっていない製品。
【請求項7】
請求項1に記載の製品であって、前記第1リニア格子が、第1ピッチを有する第1サブ格子と、その第1サブ格子と隣り合っているが重なっておらず、前記第1ピッチと等しくない第2ピッチを有する第2サブ格子と、を備え、
前記第2リニア格子が、前記第2ピッチと等しい第3ピッチを有しており前記第1サブ格子上に重畳されている第3サブ格子と、前記第3サブ格子と隣り合っているが重なっておらず、前記第1ピッチと等しい第4ピッチを有しており、前記第2サブ格子上に重畳されている第4サブ格子と、を備える製品。
【請求項8】
請求項1に記載の製品であって、前記スクライブラインの内部に形成されており、前記基板に対し平行な前記平面内で5μm×5μmを上回る寸法を有する、更なるオーバレイターゲットを備える製品。
【請求項9】
オーバレイ誤差を計測する方法であって、
ダイのマトリクスを画定すべく半導体基板上に少なくとも第1及び第2薄膜層を堆積させ且つパターニングし、それらのダイを、スクライブラインにより分離されていてそれらスクライブラインにより囲まれた能動エリアが内在するものとし、
前記能動エリア各々の内部で前記第1及び第2薄膜層内に複数個のオーバレイターゲットを形成し、各オーバレイターゲットを、前記基板に対し平行な平面内で10μm×10μmを上回らない寸法を有すると共に、前記第1薄膜層内に形成されていて第1格子ベクトルを有する第1リニア格子と、前記第1リニア格子付近の前記第2薄膜層内に形成されていて、前記第1格子ベクトルに対し平行な第2格子ベクトルを有する第2リニア格子と、を備えるものとし、
前記複数個のオーバレイターゲットの画像を捕捉し、
前記画像を処理することで、前記第1・第2リニア格子間の変位を見出し、
前記変位に応じて前記第1・第2薄膜層間のオーバレイ誤差を計測する方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記オーバレイターゲットを、5μm×5μmを上回らない寸法を有するものとする方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、前記複数個のオーバレイターゲットを形成する際に、前記第1及び第2リニア格子が第1角度配置をなすことを特徴とする第1組の前記オーバレイターゲットと、前記第1及び第2リニア格子が第2角度配置をなすことを特徴とする第2組の前記オーバレイターゲットと、を形成する方法であり、その第2角度配置を、前記半導体基板に対し平行な前記平面に対し垂直な軸周りで前記第1角度配置に対し180°回動されたものとする方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法であって、前記複数個のオーバレイターゲットを形成する際に、前記第1及び第2リニア格子が第1角度配置をなすことを特徴とする第1組の前記オーバレイターゲットと、前記第1及び第2リニア格子が第2角度配置をなすことを特徴とする第2組の前記オーバレイターゲットと、を形成する方法であり、その第2角度配置を、前記半導体基板に対し平行な前記平面に対し垂直な軸周りで前記第1角度配置に対し90°回動されたものとする方法。
【請求項13】
請求項9に記載の方法であって、前記複数個のオーバレイターゲットを形成する際に、それらオーバレイターゲット各々に、厳密に、1個の第1リニア格子と1個の第2リニア格子を形成する方法。
【請求項14】
請求項9に記載の方法であって、前記複数個のオーバレイターゲットを形成する際に、それらオーバレイターゲット各々に、前記半導体基板に対し平行な前記平面内で前記第1リニア格子と隣り合っているが重なっていない前記第2リニア格子を配置する方法。
【請求項15】
請求項9に記載の方法であって、前記複数個のオーバレイターゲットを形成する際に、
前記第1薄膜層内に、第1ピッチを有する第1サブ格子と、その第1サブ格子と隣り合っているが重なっておらず、前記第1ピッチと等しくない第2ピッチを有する第2サブ格子と、を作成することで前記第1リニア格子を形成し、
前記第2薄膜層内に、前記第2ピッチと等しい第3ピッチを有しており前記第1サブ格子上に重畳されている第3サブ格子と、前記第3サブ格子と隣り合っているが重なっておらず、前記第1ピッチと等しい第4ピッチを有しており、前記第2サブ格子上に重畳されている第4サブ格子と、を作成することで前記第2リニア格子を形成する方法。
【請求項16】
請求項9に記載の方法であって、前記スクライブライン内に更なるオーバレイターゲットを形成し、それら更なるオーバレイターゲットを、前記基板に対し平行な前記平面内で5μm×5μmを上回る寸法を有するものとする方法。
【請求項17】
オーバレイ誤差を計測する方法であって、
ダイのマトリクスを画定すべく半導体基板上に少なくとも第1及び第2薄膜層を堆積させ且つパターニングし、それらダイを、スクライブラインにより分離されていてそれらスクライブラインにより囲まれた能動エリアが内在するものとし、
前記第1及び第2薄膜層内に複数個のオーバレイターゲットを形成し、各オーバレイターゲットを、前記第1薄膜層内にある各自の第1ターゲットフィーチャと、前記第2薄膜層内にある各自の第2ターゲットフィーチャと、を備えるものとし、
前記半導体基板の法線に対し第1角度方位の前記半導体基板にて前記複数個のオーバレイターゲットの第1画像を捕捉し、
前記第1画像を処理することで、前記第1・第2ターゲットフィーチャ間の各自の第1変位を見出し、
前記半導体基板の法線に対し第2角度方位、即ち前記第1角度方位に対し回動された方位の前記半導体基板にて、前記複数個のオーバレイターゲットの第2画像を捕捉し、
前記第2画像を処理することで、前記第1・第2ターゲットフィーチャ間の各自の第2変位を見出し、
前記第1及び第2変位に基づき前記第1・第2薄膜層間のオーバレイ誤差のモデルを計算し、
前記モデルを用い前記半導体基板上の所与個所にて前記オーバレイ誤差を計算する方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記モデルを計算する際にスキャナモデルを適用し、そのスキャナモデルにより、前記第1及び第2薄膜層をフォトリソグラフィ的にパターニングする後続パターニングステージ間における前記半導体基板の誤配置と、そのフォトリソグラフィ的パターニングにおける光学歪と、が算入される方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、前記第2角度方位を、前記第1角度方位に比し法線に対し180°回動されたものとする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記モデルを計算する際に、前記第1及び第2変位それぞれに基づき第1及び第2オーバレイモデルを生成し、前記オーバレイ誤差を計算する際に、前記半導体基板上の前記所与個所にてそれら第1及び第2オーバレイモデルによりそれぞれもたらされた第1及び第2オーバレイ誤差間の差を計算する方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記オーバレイ誤差を計算する際に、前記所与個所にて前記第1及び第2オーバレイ誤差の個別値の平均を計算することで、前記半導体基板上のその所与個所におけるツール誘起シフトを計算する方法。
【請求項22】
請求項17に記載の方法であって、前記複数個のオーバレイターゲットを形成する際に、それらオーバレイターゲットのうち少なくとも幾つかを前記ダイの前記能動エリア内に形成する方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記能動エリア内の前記オーバレイターゲット各々を、10μm×10μmを上回らない寸法を有するものとする方法。
【請求項24】
請求項17に記載の方法であって、前記複数個のオーバレイターゲットを形成する際に、それらオーバレイターゲット各々に、前記第1薄膜層内の第1リニア格子と、前記第1リニア格子付近の前記第2薄膜層内の第2リニア格子とを、第1組の前記オーバレイターゲットにて前記第1及び第2リニア格子が第1角度配置をなすことが特徴となり且つ第2組の前記オーバレイターゲットにて前記第1及び第2リニア格子が第2角度配置をなすことが特徴となるよう、形成し、その第2角度配置を、前記半導体基板の法線周りで前記第1角度配置に対し180°回動されたものとする方法。
【請求項25】
請求項17に記載の方法であって、前記複数個のオーバレイターゲットを形成する際に、それらオーバレイターゲット各々に、前記第1薄膜層内の第1リニア格子と、前記第1リニア格子付近の前記第2薄膜層内の第2リニア格子とを、第1組の前記オーバレイターゲットにて前記第1及び第2リニア格子が第1角度配置をなすことが特徴となり且つ第2組の前記オーバレイターゲットにて前記第1及び第2リニア格子が第2角度配置をなすことが特徴となるよう、形成し、その第2角度配置を、前記半導体基板の法線周りで前記第1角度配置に対し90°回動されたものとする方法。
【請求項26】
請求項17に記載の方法であって、前記モデルを計算する際に、前記第1変位に基づきオーバレイモデルを生成し、前記オーバレイ誤差を計算する際に、そのオーバレイモデルによりもたらされる第1オーバレイ誤差と、前記半導体基板上の前記所与個所にて前記第2変位をもとに計測された第2オーバレイ誤差と、の間の差を計算する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に半導体デバイスの製造に関し、とりわけ半導体回路計量用の方法及びターゲットフィーチャに関する。
【背景技術】
【0002】
[関連出願への相互参照]
本願では、2021年4月13日付米国仮特許出願第63/174045号及び2021年7月29日付米国仮特許出願第63/227295号に基づく利益を主張し、参照によりそれらの全容を本願に繰り入れる。
【0003】
半導体回路は、一般に、フォトリソグラフィ的な方法を用い製造される。フォトリソグラフィでは、感光性ポリマ(フォトレジスト)の薄層が半導体基板の上方に堆積され、その層が光学輻射その他の輻射を用いパターン化され、その基板のうちそのフォトレジストにより覆われた部分が存置される。パターン化後は、エッチング、イオン爆射等の方法によりその基板を修正することでその基板の素材特性やトポグラフィが改変されるが、その基板のうちフォトレジストにより覆われた部分には影響が及ぼされない。
【0004】
半導体回路計量は、パターン化されたフォトレジストの特性、例えばパターン化フィーチャのトポグラフィ及び所在個所の計測に用いられている。先行プロセス層に対するフォトレジストのパターン化フィーチャの正確な位置特定は、フォトリソグラフィ的プロセスにて高い歩留まりを確保する上で重要である。何であれ、下地をなすプロセス層に対するパターン化フォトレジストの位置合わせ(レジストレーション)の誤差(ミスレジストレーション)は、「オーバレイ誤差」と呼ばれる。一例としては、最小ライン幅が10~14nmである(いわゆる10nmデザインルールの)典型的な半導体回路では、最大許容オーバレイ誤差が2~3nmとなる。最先端の半導体回路ではライン幅が5nmへと縮小されつつあり、それに伴い最大許容オーバレイ誤差が減らされてきている。
【0005】
可視波長や近赤外波長の光学輻射であればフォトレジスト層内やフォトレジスト下の誘電体層内を通り抜けうるため、オーバレイ誤差は一般に光学式オーバレイ計量ツールを用い計測される。光学式オーバレイ計量ツール、例えばKLA Corporation(米国カリフォルニア州ミルピタス)によるArcher(商標)シリーズツールでは、半導体基板のスクライブライン(隣り合うダイを分けるライン)内に所在するオーバレイターゲット(例えばKLAによるAIM(商標)オーバレイターゲット)がイメージングされる。獲得された画像に画像分析アルゴリズムを適用することで、プロセス層内ターゲットフィーチャの対称中心(CoS)と、パターン化フォトレジスト層内ターゲットフィーチャのCoSとを、位置特定することができる。オーバレイ誤差は、それら二層のターゲットフィーチャの対称中心間の距離として計算される。
【0006】
参照によりその開示内容が本願に繰り入れられるところの、特許文献1には、オーバレイ誤差決定用のオーバレイマーク及び方法が記載されている。この特許のある態様は、継続変化性オフセットマークに関連している。継続変化性オフセットマークは、周期的構造が重なり合っておりそれらのオフセットが位置の関数として変化する、単体のマークである。例えば、それら周期的構造を、格子特性例えばピッチの値が異なる格子に対応付けることができる。この特許の別の態様は、その継続変化性オフセットマークをもとにオーバレイ誤差を決定する方法に関連している。
【0007】
語「光線」、「光学輻射」、「光」及び「輻射のビーム」は、本明細書及び特許請求の範囲での用法によれば、一般に、可視、赤外及び紫外輻射全般のことを指している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
後述される本発明の諸実施形態では、半導体回路計量用の改良されたターゲットフィーチャ及び方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのため、本発明のある実施形態により提供される製品は、半導体基板と、ダイのマトリクスを画定すべくその基板上に配置及びパターニングされた少なくとも第1及び第2薄膜層とを有するものとされ、またそれらのダイが、スクライブラインにより分離されていて、それらスクライブラインにより囲まれた能動エリアが内在するものとされる。各能動エリア内では、第1及び第2薄膜層内に複数個のオーバレイターゲットが形成され、基板に対し平行な平面における各オーバレイターゲットの寸法が、10μm×10μmを上回らない寸法とされる。それらオーバレイターゲットが、第1薄膜層内に形成されていて第1格子ベクトルを有する第1リニア格子と、第1リニア格子付近の第2薄膜層内に形成されていて、第1格子ベクトルに対し平行な第2格子ベクトルを有する第2リニア格子と、を有するものとされる。
【0011】
ある種の実施形態では、それらオーバレイターゲットの寸法が、5μm×5μmを上回らない寸法とされる。
【0012】
付加的な諸実施形態では、それら複数個のオーバレイターゲットが、第1及び第2リニア格子が第1角度配置をなすことを特徴とする第1組のオーバレイターゲットと、第1及び第2リニア格子が第2角度配置をなすことを特徴とする第2組のオーバレイターゲットとを含むものとされ、その第2角度配置が、その半導体基板に対し平行な平面に対し垂直な軸周りで180°に亘り、第1角度配置に対し回動されたものとされる。
【0013】
これに加え又は代え、それら複数個のオーバレイターゲットが、第1及び第2リニア格子が第1角度配置をなすことを特徴とする第1組のオーバレイターゲットと、第1及び第2リニア格子が第2角度配置をなすことを特徴とする第2組のオーバレイターゲットとを含むものとされ、その第2角度配置が、その半導体基板に対し平行な平面に対し垂直な軸周りで90°に亘り、第1角度配置に対し回動されたものとされる。
【0014】
ある開示実施形態では、各オーバレイターゲットが、厳密に、1個の第1リニア格子と1個の第2リニア格子を有するものとされる。
【0015】
これに加え又は代え、その第2リニア格子が、その半導体基板に対し平行な平面内で第1リニア格子と隣り合っているが重なっていないものとされる。
【0016】
ある実施形態では、その第1リニア格子が、第1ピッチを有する第1サブ格子と、その第1サブ格子と隣り合っているが重なっておらず且つ第1ピッチと等しくない第2ピッチを有する第2サブ格子とを、有するものとされ、第2リニア格子が、第2ピッチと等しい第3ピッチを有しており第1サブ格子上に重畳されている第3サブ格子と、第3サブ格子と隣り合っているが重なっておらず且つ第1ピッチと等しい第4ピッチを有しており第2サブ格子上に重畳されている第4サブ格子とを、有するものとされる。
【0017】
ある種の実施形態では、本製品が、そのスクライブライン内に形成された更なるオーバレイターゲットを有するものとされ、その更なるオーバレイターゲットが、その基板に対し平行な平面における寸法が5μm×5μmを上回るものとされる。
【0018】
本発明のある実施形態によれば、オーバレイ誤差を計測する方法も提供される。本方法では、ダイのマトリクスを画定すべく少なくとも第1及び第2薄膜層が半導体基板上に堆積及びパターニングされ、それらのダイが、スクライブラインにより分離されていてそれらスクライブラインにより囲まれた能動エリアが内在するものとされる。各能動エリア内では、第1及び第2薄膜層内に複数個のオーバレイターゲットが形成され、各オーバレイターゲットが、その基板に対し平行な平面内で10μm×10μmを上回らない寸法を有するものとされ、且つ、第1薄膜層内に形成されていて第1格子ベクトルを有する第1リニア格子と、第1リニア格子付近の第2薄膜層内に形成されていて、第1格子ベクトルに対し平行な第2格子ベクトルを有する第2リニア格子とを、有するものとされる。本方法では、更に、それら複数個のオーバレイターゲットの画像が捕捉され、それら画像を処理することで第1・第2リニア格子間の変位が見出され、その変位に応じて第1・第2薄膜層間のオーバレイ誤差が計測される。
【0019】
本発明の別の実施形態によれば、オーバレイ誤差を計測する方法が付加的に提供される。本方法では、ダイのマトリクスを画定すべく少なくとも第1及び第2薄膜層が半導体基板上に堆積及びパターニングされ、それらのダイが、スクライブラインにより分離されていてそれらスクライブラインにより囲まれた能動エリアが内在するものとされる。第1及び第2薄膜層内に複数個のオーバレイターゲットが形成され、各オーバレイターゲットが、第1薄膜層内にある各自の第1ターゲットフィーチャと、第2薄膜層内にある各自の第2ターゲットフィーチャとを、有するものとされる。それら複数個のオーバレイターゲットの第1画像が、その半導体基板の法線に対し第1角度方位の半導体基板にて捕捉され、第1・第2ターゲットフィーチャ間の個別第1変位を見出すべく処理される。それら複数個のオーバレイターゲットの第2画像が、その半導体基板の法線に対し第2角度方位、即ち第1角度方位に対し回動された方位の半導体基板にて捕捉され、第1・第2ターゲットフィーチャ間の個別第2変位を見出すべく処理される。第1・第2薄膜層間オーバレイ誤差のモデルが第1及び第2変位に基づき計算され、その半導体基板上の所与個所におけるオーバレイ誤差がそのモデルを用い計算される。
【0020】
ある種の実施形態では、そのモデルを計算する際にスキャナモデルが適用され、そのスキャナモデルにより、第1及び第2薄膜層をフォトリソグラフィ的にパターニングする後続パターニングステージ間における半導体基板の誤配置と、そのフォトリソグラフィ的パターニングにおける光学歪とが、共に算入される。
【0021】
ある開示実施形態では、その第2角度方位が、第1角度方位に比し法線に対し180°回動されたものとされる。これに加え又は代え、そのモデルを計算する際に、第1及び第2変位それぞれに基づき第1及び第2オーバレイモデルが生成され、オーバレイ誤差を計算する際に、その半導体基板上の所与個所にてそれら第1及び第2オーバレイモデルによりそれぞれもたらされた第1及び第2オーバレイ誤差間の差が計算される。更にこれに加え又は代え、そのオーバレイ誤差を計算する際に、所与個所にて第1及び第2オーバレイ誤差の個別値の平均を計算することで、その半導体基板上のその所与個所におけるツール誘起シフトが計算される。
【0022】
ある種の実施形態では、それら複数個のオーバレイターゲットを形成する際に、それらオーバレイターゲットのうち少なくとも幾つかがそれらのダイの能動エリア内に形成される。これに加え又は代え、それら能動エリア内の各オーバレイターゲットが、10μm×10μmを上回らない寸法を有するものとされる。
【0023】
更なる諸実施形態では、それら複数個のオーバレイターゲットを形成する際に、各オーバレイターゲットにて、第1薄膜層内の第1リニア格子と、第1リニア格子付近の第2薄膜層内の第2リニア格子とが、第1組のオーバレイターゲットにて第1及び第2リニア格子が第1角度配置をなすことが特徴となり且つ第2組のオーバレイターゲットにて第1及び第2リニア格子が第2角度配置をなすことが特徴となるよう形成され、その第2角度配置が、その半導体基板の法線周りで第1角度配置に対し180°回動されたものとされる。
【0024】
付加的な諸実施形態では、それら複数個のオーバレイターゲットを形成する際に、各オーバレイターゲットにて、第1薄膜層内の第1リニア格子と、第1リニア格子付近の第2薄膜層内の第2リニア格子とが、第1組のオーバレイターゲットにて第1及び第2リニア格子が第1角度配置をなすことが特徴となり且つ第2組のオーバレイターゲットにて第1及び第2リニア格子が第2角度配置をなすことが特徴となるよう形成され、その第2角度配置が、その半導体基板の法線周りで第1角度配置に対し90°回動されたものとされる。
【0025】
ある代替的実施形態では、そのモデルを計算する際に、第1変位に基づきオーバレイモデルが生成され、そのオーバレイ誤差を計算する際に、そのオーバレイモデルによりもたらされる第1オーバレイ誤差と、その半導体基板上の所与個所にて第2変位をもとに計測された第2オーバレイ誤差と、の間の差が計算される。
【0026】
本発明を、その諸実施形態についての後掲の詳細記述と併せ以下の図面から、より全面的に理解しえる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態に係り、半導体基板上でのオーバレイ誤差を計測する光学検査装置の模式的側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る半導体基板の模式的上面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るオーバレイターゲットの模式的前面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る一対のオーバレイターゲットの模式的前面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る二対のオーバレイターゲットの模式的前面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る一対のオーバレイ校正ターゲットの模式的前面図である。
【
図7a】本発明の代替的実施形態に係るオーバレイターゲットの模式的前面図である。
【
図7b】本発明の一実施形態に係り、
図7aのオーバレイターゲットの構築に際し用いられる格子の模式的前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[概観]
オーバレイ計量用オーバレイターゲットは、半導体基板上にあり相連続しているパターン化層間のオーバレイ誤差の精密且つ正確な計測に、広く用いられている。これらの層は、例えばプロセス層及びレジスト層(フォトレジスト)であることがあり、またエッチング後アプリケーションでは2個のプロセス層であることもある。従って、プロセス層及びレジスト層との関わりで幾つかの例示的諸実施形態が後述されるものの、それら実施形態の諸原理を、必要な変更を加えて第1プロセス層及び第2プロセス層に適用してもよい。
【0029】
オーバレイターゲットのなかには、例えばAIM(商標)ターゲットのように、相直交する二方向(x及びy方向)に沿い方位決めされた格子を備え、それら格子が以下の諸条件を満たすよう設計されているものがある:
・180°回転対称性があり、2個の象限で格子がx方向沿い、2個の象限でy方向沿いであることが必要な、ツール誘起シフト(TIS)の計測が可能なこと、
・ピッチが1600nm超であり、それら格子のコントラストが十分となりうること、
・格子1個当たり少なくとも3本のラインがあり、それら格子の空間位相の決定が可能なこと、並びに
・象限1個当たり2個の格子(プロセス層向けの格子1個とレジスト層向けの格子1個、或いは相連続する2個のプロセス層各々向けの格子各1個)があること。
【0030】
層毎に、その層に係るAIM(商標)ターゲットの対称中心が、(xオーバレイ誤差に関し)2個のx方向沿い格子間及び(yオーバレイ誤差に関し)2個のy方向沿い格子間の相関を通じて特定される。その上で、それら二層間のオーバレイ誤差を、x及びy方向に沿い各2個ある対称中心間の距離に基づき、正確に推定することができる。しかしながら、上掲の諸条件に合致させるため、オーバレイターゲットのサイズが通常は少なくとも20μm×20μmとされる。このサイズのオーバレイターゲットは、半導体基板のスクライブライン内にフィットさせうるけれども、スクライブライン間にあるダイの能動エリア(別称デバイスエリア)内にはフィットさせえない。オーバレイターゲットの寸法を、能動エリア内に実際にフィットさせうるサイズまで小さくし、能動エリア内オーバレイ誤差の正確な計測を可能にすることが望ましかろう。
【0031】
本発明の諸実施形態のうち本願記載のものでは、能動エリア内にオーバレイターゲットをフィットさせる問題に対処すべく、サイズ低減されたターゲットが設けられる。各オーバレイターゲットに、格子ベクトルが平行であり隣り合う一対のリニア格子が、格子のうち1個がプロセス層内、1個がレジスト層内に形成される態で備わる(語「格子ベクトル」は、その格子を構成するラインに対し垂直な方向を有する格子平面内ベクトルのことを指している)。格子ピッチが1600nmであれば、そうしたオーバレイターゲットの全体サイズを5μm×5μmとすること、或いはより小さくもすることができるため、この種のオーバレイターゲットは能動エリア内にフィットさせることができる。
【0032】
それら二層間のオーバレイ誤差は、そのオーバレイターゲットの2個の格子間の格子ベクトル方向沿いシフトに基づき計測される。相直交する二方向、例えばx及びy方向に沿いオーバレイ誤差を計測するため、それぞれx,y方向沿い格子ベクトルを有する別々なx,yオーバレイターゲットが設けられる。
【0033】
TIS計測に係る180°対称性の条件を満たすには、第1群のxオーバレイターゲットを、第2群に対し180°回動させて印刷すればよい。同様に、2個の群のyオーバレイターゲットを、互いに180°回動させて印刷すればよい。半導体基板を0°及び180°に方位決めしてこれらの群のオーバレイターゲットを計測し、計測結果を比較することで、それら計測されたオーバレイ誤差に関しTIS補正を計算することができる。そのTIS計算における食い違いを、逆回動のターゲットの諸対を(そのデバイス構造にて供される程度まで)密接させて印刷すること、及び/又は、より大きなオーバレイターゲット、例えばスクライブライン内のそれらをもとに計算されたオーバレイ誤差モデルか、(後に詳述する通り)x及びyオーバレイターゲットの2個の群各々をもとに別々に計算されたオーバレイ誤差モデルを用いることで、軽減することができる。
【0034】
それら開示実施形態では、少なくとも第1及び第2薄膜層が半導体基板上に配置され、ダイのマトリクスが画定されるようパターニングされ、またそれらダイが、スクライブラインにより分離されておりそれらスクライブラインにより囲まれた能動エリアが内在するものとされる。各能動エリア内では、第1及び第2薄膜層内に複数個のオーバレイターゲットが形成される。各オーバレイターゲットは、その基板に対し平行な平面における寸法が10μm×10μmを上回っておらず、且つ、第1薄膜層内に形成された第1リニア格子と第2薄膜層内に形成された第2リニア格子とを有していて、それら格子が互いに近くにあり且つ相平行な格子ベクトルを有するものとされる。付加的な諸実施形態では、それらオーバレイターゲットを、5μm×5μmを上回らない寸法を有するものとすることができる。
【0035】
[システムの記述]
図1は、本発明の一実施形態に係り、半導体基板12上でのオーバレイ誤差を計測する光学検査装置10模式的側面図である。
【0036】
光学検査装置10は、イメージングアセンブリ14、照明アセンブリ16、コントローラ18、並びにその上に基板12が載せられるテーブル20を備えている。イメージングアセンブリ14は対物レンズ22、キューブビームスプリッタ24及びイメージングレンズ26を備えている。イメージングアセンブリ14は更にセンサ28を備えており、例えば二次元アレイをなす画素30を有する相補型金属酸化物半導体(CMOS)検出器がそれに備わっている。
【0037】
照明アセンブリ16は、光学輻射を放射する光源32とレンズ34を備えている。テーブル20は対物レンズ22付近に配置されており、またコントローラ18により制御されるアクチュエータを備えているので、それらアクチュエータにより、(デカルト座標36基準で)x、y及びz方向に沿い直線的にそのテーブルを動かすことや、z軸周りでそのテーブルを回動させることができる。この図及び後続の諸図には、装置10に対するそれらの図の向きを明示するため、デカルト座標36を示してある。
【0038】
図示実施形態では、後続する諸図に示される通り、第1及び第2薄膜層38及び40が半導体基板12上に堆積され、リソグラフィ的プロセスにてパターニングされている。本例では第1の層38がプロセス層であり、第2の層40がそのプロセス層の上方に堆積されたレジスト層である。これに代え、層38及び40の双方をプロセス層としてもよい。
【0039】
基板12上の層40内パターンと下側層38内パターンとの間のオーバレイ誤差を計測すべく、後続する諸図に示される通り、ターゲットフィーチャがフォトリソグラフィのプロセスにより層38及び40内に形成されている。基板12は、レンズ22及びレンズ26からなる複合的光学系によりその基板がセンサ28上へとイメージングされるよう、即ちそれら基板及びセンサが光学的に共役な平面に所在することとなるよう、テーブル20上で位置決めされる。
【0040】
コントローラ18は、センサ28から画像を受け取れるよう、且つテーブル20の位置及び方位を調整しうるよう、結合されている。コントローラ18は、通常、本願記載の諸機能を実行するようソフトウェア及び/又はファームウェア内にプログラミングされているプログラマブルプロセッサ、並びに装置10の他の諸要素との接続用の相応なディジタル及び/又はアナログインタフェースを、備えている。これに代え又は加え、コントローラ18は、自コントローラの諸機能のうち少なくとも一部分を実行するハードワイヤド及び/又はプログラマブルハードウェア論理回路を備える。
図1では単純性に鑑み単一単板な機能ブロックとしてコントローラ18が示されているが、実際には、コントローラを、複数個の相互接続された制御ユニット、並びに図中に描かれ文中に記載されている信号を受け取り出力する相応なインタフェースが、備わるものとすることができる。方法、例えば本願記載のそれらを実現するプログラム命令を、キャリア媒体上で伝送し又はそれに格納することができる。そのキャリア媒体に含まれうるものには格納媒体、例えばリードオンリメモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気又は光ディスク、不揮発性メモリ、固体メモリ、磁気テープ等がある。
【0041】
半導体基板12上のオーバレイターゲットの画像を捕捉すべく、光源32により光学輻射のビームがレンズ34へと投射され、それによりそのビームがキューブビームスプリッタ24へと更に投射される。ビームスプリッタ24によりそのビームが対物レンズ22内へと反射され、それによりそのビームが基板12上へと投射される。基板12上に射突した輻射が対物レンズ22へと遡行散乱され、ビームスプリッタ24を通過し、レンズ26へと伝達され、センサ28上に合焦される。コントローラ18は、センサ28により捕捉された画像を読み出し、それら画像を処理することで、基板12上の層40内及び下側層38内オーバレイターゲットのフィーチャの個別所在個所を識別する。コントローラ18は、それらターゲットフィーチャの個別所在個所間の変位に基づき、それらパターニング済の二層間のオーバレイ誤差を計測する。
【0042】
図2は、本発明の一実施形態に係る半導体基板12の(z方向から見た)模式的上面図である。ダイ102のマトリクス100が、フォトリソグラフィ的プロセスにて基板12上に形成されている。ダイ102はスクライブライン104により分離されており、それらスクライブラインにより囲まれた能動エリア106がそのなかにある。半導体基板12は、通常、300mmなる直径を有している。各ダイ102は、通常は正方形であり、例えば20mm×20mmなる寸法を有しているが、それに代え他のサイズ及び形状も用いられる。スクライブライン104は、通常、約100μmなる幅を有している。能動エリア106には、フィーチャサイズが数ナノメートルまで下る密な電気回路コンポーネント108が備わっている。
【0043】
半導体基板12上の薄膜層(例えば
図1に示した層38及び40)は、各能動エリア106内でオーバレイターゲット112が画定され回路コンポーネント108間に散在することとなるよう、パターニングされている。価値ある回路「不動産」が奪われることを避けるため、各オーバレイターゲット112のxy平面内寸法は、10μm×10μmを上回らない寸法、可能なら5μm×5μmをも上回らない寸法とされる。図示実施形態では、それら薄膜層を更にパターニングすることで、スクライブライン104内にて更なるオーバレイターゲット114が画定され、またそのxy平面内寸法が5μm×5μmを上回らない寸法とされている。オーバレイターゲット112及び114のデザイン、並びにそれらオーバレイターゲットを用いオーバレイ誤差を計測する方法について、以下更に記述する。
【0044】
[オーバレイターゲット]
図3は、本発明の一実施形態に係るオーバレイターゲット120の模式的前面図である。ターゲット120は、層38内に形成された平行で等間隔な格子ライン130が備わり第1格子ベクトル124を有している第1リニア格子122と、層40内に形成された平行で等間隔な格子ライン132が備わり第2格子ベクトル128を有している第2リニア格子126とを備えている。格子122及び126は、隣り合っているが重なってはいない。これら2個の格子は同じ格子ピッチPを有している。本実施形態で述べているターゲットデザインでは、格子ピッチPを1600nm超とすることで、広く用いられているオーバレイ計量装置により捕捉される格子画像のコントラストを十分なものとすることができる。とはいえ、格子画像捕捉に用いられる計量装置により十分なコントラストが達成されるのであれば、1600nm未満のピッチで印刷してもよい。格子ベクトル124及び128は個々の格子ライン130及び132に対し垂直なベクトルであり、各ベクトルの長さが格子ピッチPに反比例している。
【0045】
格子122及び126は、層38・層40間x方向沿いオーバレイ誤差が0であるときそれら2個の格子それぞれの個別ライン130及び132がx方向沿いで互いに整列するよう設計され、能動エリア106内に諸構造を作成するのに用いられるフォトリソグラフィ的プロセスに従い基板12上に印刷されている。何らかのx方向沿いオーバレイ誤差があれば、それら2個の格子間の相対シフトΔxがはっきりと現れる。
【0046】
このシフトが、格子122及び126の画像を捕捉し、それら捕捉画像間の相関をそれら2枚の画像の相対シフトの関数として計算すること等でそれら2個の格子の位相を比較することによって、コントローラ18(
図1)により計測される。相対位相の正確な計算は、格子122及び126が個別ライン130及び132を3本しか有していなくても行うことができる。従って、例えば1600nmなる幅を有するラインを用い、オーバレイターゲット120のx方向沿い幅L
xを5μm未満とすることができる。y方向に沿い短く例えば2μmであるライン130及び132を用いることで、ターゲット120の幅L
yも5μm未満となるので、xy平面、即ち基板12に対し平行な平面におけるターゲット寸法を5μm×5μmより小さくすることができる。こうした小サイズであるので、それら回路におけるオーバレイ誤差を計測できる長所付で、ターゲット120を回路コンポーネント108(
図2)間に散在させることができる。更に、各能動エリア106内に複数個のターゲット120を配設することで、フォトリソグラフィ的プロセスにおける光学歪が原因で能動エリア内に生じうるオーバレイ誤差の、正確なモデル化が可能となる。
【0047】
図4は、本発明の一実施形態に係り、基板12上に印刷されていて、一方のターゲットが他方のターゲットに対し180°回動されている、一対のオーバレイターゲット120及び140の模式的前面図である。オーバレイターゲット140はターゲット120(
図3)と同様なものであるが、ターゲット120の角度配置に対しz軸周りで180°回動された、即ち基板12の平面に対し垂直な軸周りで回動された、角度配置となっている。
【0048】
z軸周りで(例えば
図1に示した通りテーブル20にて)基板12を180°回動させることにより、ターゲット140が、0°方位でのターゲット120と名目上同一な方位に持ち込まれるので、x方向沿いでのツール誘起シフト(TIS)をコントローラ18により計算することができる。この目的を踏まえ、コントローラ18は、基板12の回動前におけるターゲット120のオーバレイ誤差OVL
x,0°と、その基板の180°回動後におけるターゲット140のオーバレイ誤差OVL
x,180°とを計測する。その上で、コントローラ18は、x方向沿いのTIS即ちTIS
xをTIS
x=(OVL
x,0°+OVL
x,180°)/2として、またTIS補正されたオーバレイ誤差OVL
x,corrをOVL
x,corr=(OVL
x,0°-OVL
x,180°)/2として計算する。これに加え又は代え、OVL
x,0°を基板12回動前のターゲット140から、またOVL
x,180°をその回動後のターゲット120から計測し、その後に上述の通りTIS
x計算及びOVL
x,corr計算を行ってもよい。
【0049】
ターゲット120とターゲット140を互いに近接させることで、各々のオーバレイ誤差同士、TIS値同士が近くなるので、例えばターゲット120からOVLx,0°、ターゲット140からOVLx,180°を計測するためだけに標本化されるデータの量が、低減される。
【0050】
図5は、本発明の一実施形態に係り、基板12上に印刷されている、一対のx方向沿いオーバレイ誤差計測用オーバレイターゲット120及び140と、一対のy方向沿いオーバレイ誤差計測用オーバレイターゲット150及び152の、模式的前面図である。ターゲット150,152はそれぞれターゲット120,140と同様なものであるが90°回動されており、ターゲット152が、基板12の180°回動後のターゲット150と名目上同一である。ターゲット120及び140がx方向沿いオーバレイ誤差に対し敏感であるのと同様に、ターゲット150及び152はy方向沿いオーバレイ誤差に対し敏感である。そのため、コントローラ18は、y方向沿いTIS即ちTIS
yを、基板12を回動させる前のターゲット150から計測されたオーバレイ誤差OVL
y,0°と、その基板を180°回動させた後のターゲット152から計測されたオーバレイ誤差OVL
y,180°とをもとに、TIS
y=(OVL
y,0°+OVL
y,180°)/2として計算する。コントローラ18は更に、TIS補正されたy方向沿いオーバレイ誤差OVL
y,corrをOVL
y,corr=(OVL
y,0°-OVL
y,180°)/2として計算する。ターゲット120及び140によるx方向沿い計測と同様、y方向沿い計測も、ターゲット150及び152の役割を入れ替えることで行うことができる。
【0051】
ターゲット120、140、150及び152を能動エリア106内の回路コンポーネント108間に適宜配設することで、TISとTIS補正されたオーバレイ誤差の双方を、x及びy方向の双方で計測することができる。
【0052】
[オーバレイモデル及び校正]
本発明のある種の実施形態では、スキャナモデルをダイ102及び基板12に亘りオーバレイ誤差の計測値に適用することで、オーバレイモデルが計算される。そのスキャナモデルにより、そのフォトリソグラフィ的プロセス内の後続するパターニングステージ間における基板12の直線及び回動誤配置による基板誘起オーバレイ誤差と、そのフォトリソグラフィ的パターニングを担う光学システム(スキャナ)の光学歪による各ダイ102内でのオーバレイ誤差とが、共に算入される。ひいては、その計算されたオーバレイモデルにより、後に更に説明される通り、基板12上の各ダイ102内の各点における実オーバレイ誤差が予測される。ここでは、この技術を、具体性及び明瞭性に鑑み、図中に示されているある具体的種類のオーバレイターゲットとの関連で述べるが、本実施形態の諸原理は、他の好適種類のターゲットを用い、ダイ102の能動エリア内とスクライブライン104内の双方に、同様に適用することができる。
【0053】
コントローラ18は、そのスキャナモデルを適用することで、0°方位の基板12にてそれぞれターゲット120,150を用い行われたxオーバレイ誤差OVLx,0°,yオーバレイOVLy,0°の計測を踏まえ、二成分0°オーバレイモデルM0°=[Mx,0°(x,y),My,0°(x,y)]を計算する。一般に、複数個のダイ102に亘りx及びyオーバレイ誤差を計測することで、基板誘起,スキャナ誘起双方のオーバレイ誤差を見出すことができる。0°オーバレイモデルM0°により、各ダイ102内の各点(x,y)でのx,yそれぞれのオーバレイ誤差Mx,0°(x,y),My,0°(x,y)が与えられる。コントローラ18は、同様に、180°方位の基板12にてそれぞれターゲット140,152を用い行われた複数ダイ102でのxオーバレイ誤差OVLx,180°,yオーバレイOVLy,180°の計測を踏まえ、180°オーバレイモデルM180°=[Mx,180°(x,y),My,180°(x,y)]を計算する。180°オーバレイモデルM180°°により、180°でのオーバレイ誤差計測をもとにモデル化された、各ダイ102内の各点(x,y)でのx,yそれぞれのオーバレイ誤差Mx,180°(x,y),My,180°(x,y)が与えられる。
【0054】
これに代え、xオーバレイ誤差OVLx,180°及びyオーバレイOVLy,180°の計測が済んでいる点(x180,y180)での補正オーバレイ誤差を、その点での0°オーバレイモデルM0°=[Mx,0°(x180,y180),My,0°(x180,y180)]と併せ、計測されたオーバレイ誤差を利用し、計算してもよい。即ち、その補正オーバレイ誤差を、[OVLcorr
x,180°,OVLcorr
y,180°]=1/2[Mx,0°(x180,y180)-OVLx,180°,My,0°(x180,y180)-OVLy,180°]として計算してもよい。
【0055】
各所与点(x,y)にて、コントローラ18は、モデル化されたTIS、即ちTISmod=[TISx,mod,TISy,mod]をTISmod=(M0°+M180°)/2として計算し、TIS補正されたモデル化オーバレイ誤差OVLmod=[OVLx,mod,OVLy,mod]をOVLmod=(M0°-M180°)/2として計算する。TISmod及びOVLmodの計算は、オーバレイモデルM0°及びM180°の個別成分を用いx及びy方向双方に沿い実行される。
【0056】
モデル化値からのツール誘起シフト及びオーバレイ誤差の値の計算により、基板12上のモデル化エリアに亘り任意個所にて、それらの値が得られる。更に、オーバレイターゲット間空間オフセット、例えばターゲット120・140(
図4)間オフセットによる、TIS及びオーバレイ誤差の値の潜在的誤差をなくすことができる。
【0057】
図6は、本発明の一実施形態に係る一対のオーバレイ校正ターゲット160及び162の模式的前面図である。校正ターゲット160及び162は、先行図面に示したオーバレイターゲットよりも大きいため、能動エリア106(
図2)内ではなくスクライブライン104内に置かれている。ターゲット160及び162を用い、基板12に亘り、TIS
x,scribeと補正されたオーバレイOVL
x,scribe,corrとを計測することができる。同様に、スクライブライン104内の複数個のターゲット162を利用し、基板12に亘り、TIS
y,scribeと、補正されたオーバレイOVL
y,scribe,corrとを計測することができる。これらTIS
x,scribe、OVL
x,scribe,corr、TIS
y,scribe及びOVL
y,scribe,corrを、能動エリア106内オーバレイターゲットと併用し、モデル化値TIS
mod及びOVL
modの更なる校正を行うことができる。
【0058】
校正ターゲット160はターゲット120及び140(
図5)を接ぎ合わせることで形成されており、校正ターゲット162もターゲット150及び152を同様に接ぎ合わせることで形成されている。ターゲット120・140間に回転対称性があるため、校正ターゲット160は180°回動に対し対称である。同様に、校正ターゲット162は180°回動に対し対称である。校正ターゲット160がオーバレイターゲット120及び140で形成されているため、その校正ターゲットから計測されたx方向沿いTISでは、ダイ102内オーバレイターゲットから計測されたTISが、スクライブライン104内の校正ターゲットの所在個所によるTISへの潜在的寄与を除き、忠実に再現される。同様に、校正ターゲット162から計測されたy方向沿いTISでは、ダイ102内オーバレイターゲット150及び152から計測されたTISが忠実に再現される。
【0059】
これに代え又は加え、標準的なオーバレイターゲット、例えばスクライブライン104内のAIM(商標)ターゲットを校正に用いてもよい。
【0060】
[重畳格子を有する製品上オーバレイターゲット]
図7a及び
図7bには、本発明の代替的実施形態に係るオーバレイターゲット200及びその構造が示されている。
図7aはオーバレイターゲット200の模式的前面図であり、
図7bは
図7aのオーバレイターゲットの構築に際し用いられる格子206及び212の模式的前面図である。オーバレイターゲット200は、例えば先に言及した特許文献1に記載の要領で設計し、オーバレイ誤差の計測に用いることができる。しかしながら、同特許文献のターゲットとは対照的に、ターゲット200は10μm×10μmよりも小さく、潜在的には更に5μm×5μmよりも小さく作成することができ、ダイ102の能動エリア106(
図2)内に置くことができる。
【0061】
図7bに示されている通り、
図7aのターゲット200は、それぞれ層38内,層40内に形成された第1リニア格子206,第2リニア格子212を備えている。第1格子206は隣り合う(しかし重なっていない)サブ格子208,210を備えており、それらが各自の格子ピッチP,Q及び格子ベクトル209,211を有しており、またそれらピッチが少量だけ異なっている。例えば、ピッチQを、kを0.99、0.999又は1.02、或いは1に近い他の何らかの因数とし、Q=k×Pにより与えることができる。第2格子212は隣り合う(しかし重なっていない)サブ格子214,216を備えており、それらのxy位置がサブ格子208,210それぞれのそれらに対応しているので、層38及び40(
図1)を作成する際に用いられるリソグラフィ的プロセスにてそれらサブ格子を重ね合わせることができる。サブ格子214,216は、各自の格子ベクトル215,217及びピッチQ,P、即ちサブ格子208,210と同じだが空間的順序が逆なピッチを有している。4個の格子ベクトル209、211、215及び217は皆、互いに平行である。
図7bでは、明瞭性に鑑み、xy平面内であたかも空間的に分離されているかのように格子206及び212が示されているが、実際のリソグラフィ的プロセスでは、サブ格子214がサブ格子208上に重畳されることで格子状構造204がもたらされ、且つ、サブ格子216がサブ格子210上に重畳されることで格子状構造202がもたらされる(ここで言う「格子状構造」は、平行ではあるがライン幅及び/又はライン対ライン間隔に変動があるラインからなるアレイのことである)。
【0062】
先に言及した特許文献1に記載されている通り、各格子状構造202,204は、各自のx方向沿い対称中心218,220を有している。第1格子206・第2格子212間オーバレイ誤差OVL
xがないときには、それら対称中心218及び220が整列する。逆に、オーバレイ誤差OVL
xが非ゼロであると、オーバレイ誤差OVL
xが倍率MによりシフトΔxへと増倍されてΔx=M×OVL
xとなる態で、対称中心218・220間シフトΔxが発生する。また、その倍率MはM=P/(P-Q)により与えられる。格子208、210、214及び216の個々のラインではなく、格子状構造202及び204各自の対称中心218及び220しか識別される必要がないので、ピッチP及びQを、例えば格子122及び126(
図3)の最小ピッチたる1600nmよりも、かなり小さくすることができる。即ち、ピッチP及びQを、能動エリア106内電気回路コンポーネント108をパターニングするのに用いられるフォトリソグラフィ的プロセスとの両立性が1600nm(以上)のピッチよりも良好なピッチまで、有利なことに縮小することができる。
【0063】
コントローラ18は、x方向に沿い格子状構造202及び204各自の対称中心218及び220を識別し、それら対称中心間のシフトΔxを計算し、ΔxをもとにOVLx=Δx/Mを計算することで、層38・層40間オーバレイ誤差OVLxを計算する。
【0064】
オーバレイターゲット200の機能はオーバレイターゲット120(
図3)の機能と同じである。従って、前掲の
図4と同様、オーバレイターゲット200を、ターゲット200に比し180°回動させた第2オーバレイターゲットと対にしたもので、TIS
xの計測を行うことができる。更に、前掲の
図5と同様、90°回動させた2個の付加的なオーバレイターゲットを設け、それらによりy方向に沿いTIS及びオーバレイ誤差の双方を計測することができる。
図7a及び
図7bに示されているターゲットではTISが倍率Mに従い低減されるので、180°方位の基板12での計測が求められないことがある。
【0065】
これに代え、先に言及した特許文献1に記載されている通り、同じピッチを有するもののxy平面内である小角だけ互いに回動されている重畳格子を、層38及び層40内に形成することで、格子中心の同様なシフトを達成することができる。例えば、格子214を格子208に対しθなる角度だけ回動させることで、格子ベクトル215を格子ベクトル209に対しθなる角度だけ回動させることができる。更に、格子216を格子210に対し-θなる角度だけ回動させることで、格子ベクトル217を格子ベクトル211に対し-θなる角度だけ回動させることができる。
【0066】
上述の諸実施形態は一例として引用されており、本発明は、具体的に示されまた上述されたものに限定されない。寧ろ、本発明の技術的範囲には、上述した様々な特徴のコンビネーション及びサブコンビネーションの双方が包含されるし、それらの変形物及び修正物のうち、本件技術分野に習熟した者(いわゆる当業者)が前掲の記述を読んで想到しそうであり且つ従来技術にて開示されていないものも包含される。
【国際調査報告】