(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】非球状一次シリカナノ粒子及びその使用
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20240412BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20240412BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240412BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20240412BHJP
【FI】
C01B33/18 Z
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
H01L21/304 622B
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564635
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 US2022071708
(87)【国際公開番号】W WO2022226471
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト ジョンシュカー
(72)【発明者】
【氏名】リーン ルッツ
(72)【発明者】
【氏名】クリストス キリアク
【テーマコード(参考)】
3C158
4G072
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB03
3C158CB05
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3C158DA02
3C158DA12
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4G072AA25
4G072BB05
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4G072GG01
4G072HH30
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4G072UU01
5F057AA28
5F057BA11
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA07
5F057EA16
5F057EA17
5F057EA18
5F057EA21
5F057EA23
5F057EA25
5F057EA26
5F057EA27
(57)【要約】
非球状一次シリカナノ粒子を合成する方法は、少なくとも2種のオルガノアルコキシシランを、水混和性有機溶媒及びアルカリ触媒を含む反応混合物中、アルカリ性条件下で水と反応させるステップを含む。少なくとも2種のオルガノアルコキシシランは、アルカリ性条件下で水との反応速度が異なる。各オルガノアルコキシシランは、SiR
1R
2R
3R
4(I)によって表される構造を有し、
【化1】
式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ独立して、OR又はRからなる群から選択され、ここで、Rは、置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖のC
1~C
12アルキル基、C
3~C
8脂環式基、C
2~C
6アルキレン基、ハロゲン、又はアリール基であり、R
1、R
2、R
3、及びR
4のうちの少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種は、ORであり、少なくとも2種のオルガノアルコキシシランのうちの少なくとも1種は、少なくとも3種のORを有する。水(H
2O)と少なくとも2種のオルガノアルコキシシラン上の加水分解性基(OR)とのモル比は、0超、かつ3.0未満、又は2.0未満である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非球状一次シリカナノ粒子を合成する方法であって、
a)少なくとも2種のオルガノアルコキシシランの混合物を提供するステップであって、各オルガノアルコキシシランは、独立して、式Iによって表される構造を有し、
【化1】
式中、
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ独立して、OR又はRからなる群から選択され、ここで、Rは、置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖のC
1~C
12アルキル基、C
3~C
8脂環式基、C
2~C
6アルキレン基、ハロゲン、又はアリール基であり、R
1、R
2、R
3、及びR
4のうちの少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種は、ORであり、
前記少なくとも2種のオルガノアルコキシシランのうちの少なくとも1種は、R
1、R
2、R
3、及びR
4のうちの少なくとも3種、好ましくは全てをORとして有し、及び
前記少なくとも2種のオルガノアルコキシシランは、アルカリ性条件下で水との反応速度が異なる、ステップと、
b)水混和性有機溶媒を提供するステップと、
c)アルカリ触媒を提供するステップと、
d)a)~c)を含む反応混合物を得るステップであって、前記反応混合物は、水を含有し、水(H
2O)と前記少なくとも2種のオルガノアルコキシシラン上の加水分解性基(OR)とのモル比(ROR)は、0超、かつ3.0未満、又は2.0未満であり、例えば、式:ROR=M(H
2O)/M(OR)に従って、0.5~1.5である、ステップと、
e)前記少なくとも2種のオルガノアルコキシシランを、前記反応混合物中、アルカリ性条件下で前記水と反応させることによって、非球状一次シリカナノ粒子を形成するステップと、
任意に、
f)前記非球状一次シリカナノ粒子が形成された後、前記水混和性有機溶媒の少なくとも一部を水で置換して、非球状一次シリカナノ粒子分散液を得るステップと、
g)ステップd)において前記RORを満たすのに十分な水がa)~c)から存在しない場合、ステップd)において水を添加するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記非球状一次シリカナノ粒子が、細長い形状、曲がった形状、分岐した形状、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される形状を有し、<0.2、<0.1、<0.05、<0.02、<0.01、<0.006、<0.005、又は<0.004mmol/g SiO
2の窒素レベルを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップd)が、(1)前記水混和性有機溶媒を前記少なくとも2種のオルガノアルコキシシランの混合物に添加して、第1の混合物を得るステップ、及び前記アルカリ触媒を前記第1の混合物に添加するステップ、(2)前記アルカリ触媒を前記水混和性有機溶媒に添加して、第1の混合物を得るステップ、及び前記少なくとも2種のオルガノアルコキシシランの混合物を前記第1の混合物に添加するステップ、又は(3)前記水混和性有機溶媒を前記少なくとも2種のオルガノアルコキシシランの混合物に添加して、第1の混合物を得るステップ、前記水混和性有機溶媒を前記アルカリ触媒に添加して、第2の混合物を得るステップ、並びに前記第1の混合物及び前記第2の混合物をフローリアクター中のミキサー中で混合するステップ、によって実行され得る、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の混合物及び前記反応混合物が、30℃~70℃、40℃~60℃、又は48℃~52℃の温度で加熱及び維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
任意に、中圧下である密閉容器中、又はフローリアクター中で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも2種のオルガノアルコキシシランのそれぞれが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラオクトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、フルオロトリイソプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、及びトリフルオロメチルトリエトキシシランからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
2種のオルガノアルコキシシランが、前記少なくとも2種のオルガノアルコキシシランの混合物中で使用され、前記オルガノアルコキシシランの一方が、約50~約99モル%で存在し、他方の前記オルガノアルコキシシランが、約50~約1モル%で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも2種のオルガノアルコキシシランが、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランを含み、前記テトラメトキシシランが、前記少なくとも2種のオルガノアルコキシシランの総モル数に基づいて約2~約25モル%又は7.5~12.5モル%で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも2種のオルガノアルコキシシランが、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランを含み、水(H
2O)と前記少なくとも2種のオルガノアルコキシシラン上の加水分解性基(OR)との前記モル比(ROR)が、0.75である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記アルカリ触媒が、アンモニア(NH
3)、水酸化アンモニウム、有機アミン、アルカノールアミン、水酸化第四級アンモニウム化合物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記反応混合物のpHが、7~14、10~14、又は12~14である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記アルカリ触媒が、NH
3又は有機アミンを含み、前記反応混合物が、8超又は9超のpHである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(d)が、連続フローリアクター又はバッチリアクター中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記置換するステップf)が、水(H
2O)と前記オルガノアルコキシシラン(ROR)上の加水分解性基(OR)とのモル比(ROR)が1.0以上又は2.0以上となる量で水を添加するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ステップd)の直後に、オルガノアルコキシシラン及び水及び任意にアルカリ触媒を前記反応混合物に添加する第2の成長ステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記置換するステップf)が、蒸留及び膜濾過の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
ステップf)で得られた前記非球状一次シリカナノ粒子分散液の前記pHを、前記分散液をイオン交換体に通し、任意に酸を添加することによって、アルカリ性から酸性に変化させるステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記非球状一次シリカナノ粒子の表面を、オルガノシラン、有機ポリマー、無機ポリマー、界面活性剤、無機塩、金属イオン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される表面改質剤で前記表面を処理することによって改質するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記表面を改質するために使用される前記オルガノシランが、アミノ官能性アルキル-アルコキシシラン、シアノ官能性アルキル-アルコキシシラン、アルキル及びアリール官能性アルコキシシラン、硫黄含有シラン、カルボキシ基含有シラン、リン含有シラン、アルキルシラン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記非球状一次シリカナノ粒子が、前記反応混合物の総重量によって生成され得るシリカナノ粒子の総重量に基づいて、3.0重量%~8.0重量%、4.0重量%~7.0重量%、4.5重量%~6.5重量%、又は5.5重量%~6.5重量%の重量%収率で生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記非球状一次シリカナノ粒子が、粒子の総重量に基づいて少なくとも50%、75%、又は85%の収率で生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
細長い形状、曲がった形状、分岐した形状、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される形状を有し、<0.2、<0.1、<0.05、<0.02、<0.01、<0.006、<0.005、又は<0.004mmol/g SiO
2の窒素レベルを有する、非球状一次シリカナノ粒子。
【請求項23】
細長い形状、曲がった形状、分岐した形状、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される形状を有し、<0.2、<0.1、<0.05、<0.02、<0.01、<0.006、<0.005、又は<0.004mmol/g SiO
2の窒素レベルを有し、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法によって調製される、非球状一次シリカナノ粒子。
【請求項24】
細長い形状、曲がった形状、分岐した形状、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される形状を有し、<0.2、<0.1、<0.05、<0.02、<0.01、<0.006、<0.005、又は<0.004mmol/g SiO
2の窒素レベルを有する非球状一次シリカナノ粒子を含む、化学機械平坦化(CMP)組成物。
【請求項25】
コロイド安定剤、可溶性触媒又は固体触媒、キレート剤、腐食防止剤、界面活性剤、殺生物剤、有機塩又は無機塩、及びpH調整剤のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項24に記載の化学機械平坦化(CMP)組成物。
【請求項26】
請求項1~21のいずれか一項に記載の方法によって調製される非球状一次シリカナノ粒子を含む、化学機械平坦化(CMP)組成物。
【請求項27】
コロイド安定剤、可溶性触媒又は固体触媒、キレート剤、腐食防止剤、界面活性剤、殺生物剤、有機塩又は無機塩、及びpH調整剤のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項26に記載の化学機械平坦化(CMP)組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月3日に出願された米国仮特許出願第63/264,912号及び2021年4月21日に出願された米国仮特許出願第63/177,539号の利益を主張するものであり、これらは、完全に記載されているかのように参照として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、CMP組成物中の研磨剤として使用するための非球状一次シリカナノ粒子の製造に関する。
【0003】
半導体産業では、化学機械研磨(CMPと略される)は、半導体ウェハなどの高度なフォトニック、微小電気機械、及び微小電子材料並びにデバイスの製造に適用される周知の技術である。
【0004】
半導体産業で使用される材料及びデバイスの製造中、CMPは、金属及び/又は酸化物表面を平坦化するために使用される。CMPは、化学的及び機械的作用の相互作用を利用して、研磨されるべき表面の平坦性を達成する。化学的作用は、CMP組成物又はCMPスラリーとも呼ばれる化学組成物によって提供される。機械的作用は、通常、研磨パッドによって実行され、研磨パッドは、典型的には、研磨されるべき表面に押し付けられ、移動プラテン上に取り付けられる。プラテンの運動は、通常、直線運動、回転運動、又は軌道運動である。
【0005】
典型的なCMP方法ステップでは、回転するウェハホルダが、研磨されるべきウェハを研磨パッドと接触させる。CMP組成物は、通常、研磨されるべきウェハと研磨パッドとの間に適用される。
【0006】
CMP研磨剤の形状は、平坦化方法におけるそれらの性能に実質的な影響を有する。最近、非球状粒子は、丸い形状の粒子よりも高い除去速度及び高い効率を示すことができることが見出されたので、研究は、再現可能な方法で非球状粒子を製造する方法を提供することに焦点を当てている。
【0007】
しかしながら、非球状粒子の再現可能な合成は、当技術分野で既知の球状粒子の合成よりもはるかに複雑である。サイズ制御は、典型的には、球状粒子の合成中に監視され調整される唯一の特徴であるが、細長い分岐した粒子を製造することは、全体的な三次元構造に加えて、分岐のサイズを制御することを必要とする。したがって、産業が、細長いナノ粒子構造の形状及び分岐を制御する費用効率の高い方法を求めていることは、驚くべきことではない。
【0008】
典型的には、今日、これらの粒子は、制御された凝集方法によって作製され、この方法において、製造の少なくとも1つの段階におけるコロイド状粒子形成は、中間的に形成された球状ナノ粒子が凝集し始めるように、不安定な領域に意図的に進められる。次いで、粒子は、所望のサイズ及び構造が形成されたときに、安定な領域に戻される。方法の例は、Fuso Chemical Co.Ltd.の米国特許第8,529,787号に見られる。
【0009】
しかしながら、このような方法は、自己調節できないという重大な欠点を有する。したがって、このような非常に不安定な条件下で反応を絶えず監視し、操作しなければならないことは、長々と続く努力である。更に、このような従来技術の方法は、種々の異なる形状及び分岐度の変化をほとんど製造することができない。
【0010】
したがって、当技術分野では、簡単かつ再現可能な方法で様々な形状及びサイズのナノ粒子を合成することが可能な、酸化ケイ素などの細長い分岐したCMP研磨剤を製造する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、非球状一次シリカナノ粒子を提供し、CMP方法における研磨剤として非球状一次シリカナノ粒子を使用することによって、この必要性を満たす。
【0012】
一態様では、非球状一次シリカナノ粒子又は非球状一次シリカナノ粒子分散液を合成する方法であって、
a)少なくとも2種のオルガノアルコキシシランを含有し、それぞれが式Iの構造を有する第1の混合物を提供するステップであって、
【化1】
式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ独立して、OR又はRからなる群から選択され、ここで、Rは、置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖のC
1~C
12アルキル基、C
3~C
8脂環式基、C
2~C
6アルキレン基、ハロゲン、又はアリール基であり、R
1、R
2、R
3、及びR
4のうちの少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種は、ORであり、
少なくとも2種のオルガノアルコキシシランのうちの少なくとも1種は、R
1、R
2、R
3、及びR
4のうちの少なくとも3種、好ましくは全てをORとして有し、
少なくとも2種のオルガノアルコキシシランは、アルカリ性条件下で水との反応速度が異なる、ステップと、
b)水混和性有機溶媒を提供するステップと、
c)アルカリ触媒を提供するステップと、
d)a)~c)を含む反応混合物を得るステップであって、反応混合物は、水を含有し、水(H
2O)と少なくとも2種のオルガノアルコキシシラン上の加水分解性基(OR)とのモル比(ROR)は、0超、かつ3.0未満、又は2.0未満であり、例えば、式:ROR=M(H
2O)/M(OR)に従って、0.5~1.5である、ステップと、
e)少なくとも2種のオルガノアルコキシシランを、反応混合物中、アルカリ性条件下で水と反応させることによって、非球状一次シリカナノ粒子を形成するステップと、
及び
任意に、
f)非球状一次シリカナノ粒子が形成された後、水混和性有機溶媒の少なくとも一部を水で置換して、非球状一次シリカナノ粒子分散液を得るステップと、
g)ステップd)においてRORを満たすのに十分な水がa)~c)から存在しない場合、ステップd)において水を添加するステップと、を含む、方法を提供する。
【0013】
反応混合物のpHは、一般的に7~14、好ましくは10~14、より好ましくは12~14の範囲内である。
【0014】
ステップd)は、(1)水混和性有機溶媒を少なくとも2種のオルガノアルコキシシランの混合物に添加して、第1の混合物を得るステップ、及びアルカリ触媒を第1の混合物に添加するステップ、(2)アルカリ触媒を水混和性有機溶媒に添加して、第1の混合物を得るステップ、及び少なくとも2種のオルガノアルコキシシランの混合物を第1の混合物に添加するステップ、又は(3)水混和性有機溶媒を少なくとも2種のオルガノアルコキシシランの混合物に添加して、第1の混合物を得るステップ、水混和性有機溶媒をアルカリ触媒に添加して、第2の混合物を得るステップ、並びに第1の混合物及び第2の混合物をフローリアクター中のミキサー中で混合するステップ、によって実行され得る。a)~c)の混合物中に十分な水が存在しない場合、反応混合物中に水を添加することができる。
【0015】
少なくとも2種のオルガノアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラオクトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、フルオロトリイソプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、及びトリフルオロメチルトリエトキシシランからなる群が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい少なくとも2種のオルガノアルコキシシランは、テトラメトキシシラン(TMOS)及びテトラエトキシシラン(TEOS)を含む。
【0016】
2種のオルガノアルコキシシランが存在する一実施形態では、第1のオルガノアルコキシシランは、約50~約99モル%で存在してもよく、第2のオルガノアルコキシシランは、約50~約1モル%で存在してもよい。別の実施形態では、第1のオルガノアルコキシシランは、約75~約95モル%で存在してもよく、第2のオルガノアルコキシシランは、約5~約25モル%で存在してもよい。別の実施形態では、第1のオルガノアルコキシシランは、約85~約90モル%で存在してもよく、第2のオルガノアルコキシシランは、約15~約10モル%で存在してもよい。モル%は、100%である2種のオルガノアルコキシシランの総モルに基づく。
【0017】
第1の混合物、第2の混合物、及び反応混合物は、30℃~70℃、40℃~60℃、又は48℃~52℃の温度で加熱及び維持され得る。
【0018】
非球状一次シリカナノ粒子は、本方法において生成される粒子の総重量に基づいて少なくとも50%、75%、又は85%の収率で生成される。
【0019】
非球状一次シリカナノ粒子は、3.0重量%~8.0重量%、4.0重量%~7.0重量%、4.5重量%~6.5重量%、5.5重量%~6.5重量%の重量%収率で生成される。重量%収率は、反応混合物の総重量によって生成され得るシリカナノ粒子の総重量に基づく。
【0020】
非球状一次シリカナノ粒子は、細長い形状、曲がった形状、分岐した形状、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される形状を有し、<0.2、0.1、0.02、0.01、0.006、0.005、又は0.004mmol/g SiO2の窒素レベル(又は窒素含有量)を有する。
【0021】
別の態様では、非球状一次シリカナノ粒子又は非球状一次シリカナノ粒子分散液が提供され、非球状一次シリカナノ粒子は、細長い形状、曲がった形状、分岐した形状、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される形状を有し、<0.2、0.1、0.02、0.01、0.006、0.005、又は0.004mmol/g SiO2の窒素レベル(又は窒素含有量)を有する。
【0022】
更に別の態様では、非球状一次シリカナノ粒子又は非球状一次シリカナノ粒子分散液を含む化学機械平坦化(CMP)組成物が提供され、非球状一次シリカナノ粒子は、細長い形状、曲がった形状、分岐した形状、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される形状を有し、<0.2、0.1、0.02、0.01、0.006、0.005、又は0.004mmol/g SiO2の窒素レベル(又は窒素含有量)を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施例2によって製造された非球状一次シリカナノ粒子の20,000倍での走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)顕微鏡写真である。
【
図2】実施例2によって製造された非球状一次シリカナノ粒子の100,000倍でのSEM顕微鏡写真である。
【
図3】実施例3によって製造された非球状一次シリカナノ粒子の20,000倍でのSEM顕微鏡写真である。
【
図4】実施例3によって製造された非球状一次シリカナノ粒子の100,000倍でのSEM顕微鏡写真である。
【
図5】実施例4によって製造された非球状一次シリカナノ粒子の20,000倍でのSEM顕微鏡写真である。
【
図6】実施例4によって製造された非球状一次シリカナノ粒子の100,000倍でのSEM顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に引用される刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれることが個々にかつ具体的に示され、その全体が本明細書に記載されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
本発明を記載する文脈における(特に下記の特許請求の範囲の文脈における)「a」及び「an」及び「the」という用語並びに同様の言及の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、又は文脈によって明確に否定されない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」という用語は、別段の記載がない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「含むが、それに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段の指示がない限り、その範囲内に入る各個別の値を個々に言及する省略法としての役割を果たすことが単に意図されており、各個別の値は、本明細書において個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書において別段の指示がない限り、又は文脈によって明確に否定されない限り、任意の好適な順序で実行することができる。本明細書で提供される任意の及び全ての例、又は例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく説明することを意図しており、別様に特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言語も、本発明の実施に不可欠なものとして、任意の特許請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0026】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、「含む(including)」、及び「含む(includes)」という用語は、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素、組成物成分、又は方法ステップを除外しない。したがって、これらの用語は、より限定的な用語「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」を包含する。特に明記しない限り、本明細書で提供される全ての値は、与えられた終点までを含み、組成物の構成要素又は成分の値は、組成物中の各成分の重量パーセントで表される。
【0027】
本発明を実施するために本発明者らに知られている最良の形態を含む実施形態が本明細書に記載されている。これらの実施形態の変形は、前述の記述を読めば当業者には明らかになり得る。本発明者らは、当業者が必要に応じてそのような変形形態を使用することを予想し、本発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載されているものとは別の方法で実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用法によって許容されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に引用された主題の全ての改変形態及び均等物を含む。更に、その全ての可能な変形形態における上記要素の任意の組み合わせは、本明細書において別段の指示がない限り、又は文脈によって明確に否定されない限り、本発明によって包含される。
【0028】
用語「ナノ粒子」及び「コロイド」は同義であり、サイズが1~1000ナノメートルである粒子を意味する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「約」は、述べられた値の±5%に対応することが意図される。
【0030】
組成物の特定の成分が0の下限を含む重量パーセント範囲を参照して論じられる全てのそのような組成物において、そのような成分は、組成物の様々な特定の実施形態において存在しても存在しなくてもよいこと、及びそのような成分が存在する場合、そのような成分は、そのような成分が使用される組成物の総重量に基づいて、0.00001重量パーセント程度の低い濃度で存在してもよいことが理解されるであろう。
【0031】
「非球状シリカナノ粒子」という用語は、非球状シリカ一次ナノ粒子及び非球状シリカ二次ナノ粒子の両方を指す。
【0032】
本明細書で使用される「非球状」という用語は、球状でない全ての形状又は構造を含む。それは、「細長い」、「曲がった構造」、及び「分岐した構造」、並びにこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0033】
「非球状一次シリカナノ粒子」という用語は、シリカが非線状、細長い形状、曲がった形状、分岐した形状、又は組み合わせの形状で成長する構造を有する一次シリカ粒子を指す。より具体的には、シリカ粒子が同時に複数の方向に不均一に成長し、それによって非球状構造を生成する構造を指す。
【0034】
非球状一次シリカナノ粒子とは対照的に、球状一次シリカナノ粒子は、シリカ粒子が全方向に均一に成長し、それによって球状構造を生成するときの構造を指す。
【0035】
「非球状一次シリカナノ粒子」という用語は、凝集粒子、又は凝集一次粒子、又は凝集球状一次粒子を含まない。
【0036】
本発明は、少なくとも2種のオルガノアルコキシシランを同時に使用して非球状一次シリカナノ粒子を合成する方法であって、選択されたオルガノアルコキシシランは、アルカリ性条件下で水との反応速度が異なる方法を提供する。
【0037】
具体的には、本発明は、非球状一次シリカナノ粒子又は非球状一次シリカナノ粒子分散液を合成する方法であって、当該方法は、以下のステップ:
a)少なくとも2種のオルガノアルコキシシランの第1の混合物を提供するステップであって、各オルガノアルコキシシランは、独立して、式Iによって表される構造を有し、
【化2】
式中、
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ独立して、OR又はRからなる群から選択され、ここで、Rは、置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖のC
1~C
12アルキル基、C
3~C
8脂環式基、C
2~C
6アルキレン基、ハロゲン、又はアリール基であり、R
1、R
2、R
3、及びR
4のうちの少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種は、ORであり、
少なくとも2種のオルガノアルコキシシランのうちの少なくとも1種は、R
1、R
2、R
3、及びR
4のうちの少なくとも3種、好ましくは全てをORとして有し、
及び少なくとも2種のオルガノアルコキシシランは、アルカリ性条件下で水との反応速度が異なる、ステップと、
b)水混和性有機溶媒を提供するステップと、
c)アルカリ触媒を提供するステップと、
d)a)~c)を含む反応混合物を得るステップであって、反応混合物は、水を含有し、水(H
2O)と少なくとも2種のオルガノアルコキシシラン上の加水分解性基(OR)とのモル比(ROR)は、0超、かつ3.0未満、又は2.0未満であり、例えば、式:ROR=M(H
2O)/M(OR)に従って、0.5~1.5である、ステップと、
e)少なくとも2種のオルガノアルコキシシランを、反応混合物中、アルカリ性条件下で水と反応させることによって、非球状一次シリカナノ粒子を形成するステップと、
及び
任意に、
f)非球状一次シリカナノ粒子が形成された後、水混和性有機溶媒の少なくとも一部を水で置換して、非球状一次シリカナノ粒子分散液を得るステップと、
g)ステップd)においてRORを満たすのに十分な水がa)~c)から存在しない場合、ステップd)において水を添加するステップと、を含む、方法を提供する。
【0038】
反応混合物のpHは、一般的に7~14、好ましくは10~14、より好ましくは12~14の範囲内である。
【0039】
ステップd)は、(1)水混和性有機溶媒を少なくとも2種のオルガノアルコキシシランの混合物に添加して、第1の混合物を得るステップ、及びアルカリ触媒を第1の混合物に添加するステップ、(2)アルカリ触媒を水混和性有機溶媒に添加して、第1の混合物を得るステップ、及び少なくとも2種のオルガノアルコキシシランの混合物を第1の混合物に添加するステップ、又は(3)水混和性有機溶媒を少なくとも2種のオルガノアルコキシシランの混合物に添加して、第1の混合物を得るステップ、水混和性有機溶媒をアルカリ触媒に添加して、第2の混合物を得るステップ、並びに第1の混合物及び第2の混合物をフローリアクター中のミキサー中で混合するステップ、によって実行され得る。a)~c)の混合物中に十分な水が存在しない場合、反応混合物中に水を添加することができる。
【0040】
少なくとも2種のオルガノアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラオクトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、フルオロトリイソプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、及びトリフルオロメチルトリエトキシシランからなる群が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい少なくとも2種のオルガノアルコキシシランは、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランを含む。
【0041】
好ましい少なくとも2種のオルガノアルコキシシランは、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランを含む。
【0042】
少なくとも2種のオルガノアルコキシシランの濃度(モル%)は、任意の値であり得る。
【0043】
2種のオルガノアルコキシシランが存在する一実施形態では、第1のオルガノアルコキシシランは約50~約99モル%で存在してもよく、第2のオルガノアルコキシシランは約50~約1モル%で存在してもよい。別の実施形態では、第1のオルガノアルコキシシランは約75~約95モル%で存在してもよく、第2のオルガノアルコキシシランは約5~約25モル%で存在してもよい。別の実施形態では、第1のオルガノアルコキシシランは約85~約90モル%で存在してもよく、第2のオルガノアルコキシシランは約15~約10モル%で存在してもよい。モル%は、100%である2種のオルガノアルコキシシランの総モルに基づく。
【0044】
第1の混合物、第2の混合物、及び反応混合物は、30℃~70℃、40℃~60℃、又は48℃~52℃の温度で加熱及び維持され得る。
【0045】
非球状一次シリカナノ粒子は、本方法において生成される粒子の総重量に基づいて少なくとも50%、75%、又は85%の収率で生成される。すなわち、方法において生成される全粒子の50%、75%、又は85%が、非球状一次シリカナノ粒子である。
【0046】
非球状一次シリカナノ粒子は、3.0重量%~8.0重量%、4.0重量%~7.0重量%、4.5重量%~6.5重量%、5.5重量%~6.5重量%の重量%収率で生成される。重量%収率は、反応混合物の総重量によって生成され得るシリカナノ粒子の総重量に基づく。
【0047】
非球状一次シリカナノ粒子は、細長い形状、曲がった形状、分岐した形状、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される形状を有し、<0.2、0.1、0.02、0.01、0.006、0.005、又は0.004mmol/g SiO2の窒素レベル(又は窒素含有量)を有する。
【0048】
ここでも、「非球状一次ナノ粒子」という用語は、凝集一次粒子などの凝集粒子を含まない。
【0049】
本明細書に開示される方法は、伸長、屈曲、及び/又は分岐の程度が所望の程度に調整されることを可能にする。
【0050】
反応混合物の成分及び反応方法は、本明細書中で詳細に記載される。
【0051】
オルガノアルコキシシラン
Stober法は、球状シリカ粒子を製造するための周知の従来技術の方法である。Stober法では、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を過剰の水、アルコール、及び水酸化アンモニウムの溶液に撹拌下で添加して、球状ナノ粒子を形成する。しかしながら、本発明の方法は、非球状一次シリカナノ粒子の驚くべき予想外の結果をもたらすStober法への改変を含む。
【0052】
すなわち、本発明の方法は、反応混合物中で少なくとも2種のオルガノアルコキシシランを水と反応させるステップを含む。
【0053】
少なくとも2種のオルガノアルコキシシランのそれぞれは、独立して、以下に示す式Iによって表される構造を有し、
【化3】
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ独立して、OR又はRからなる群から選択され、ここで、Rは、置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖のC
1~C
12アルキル基、C
3~C
8脂環式基、C
2~C
6アルキレン基、ハロゲン、又はアリール基であり、R
1、R
2、R
3、及びR
4のうちの少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種は、ORである。
【0054】
少なくとも2種のオルガノアルコキシシランのうちの少なくとも1種は、R1、R2、R3、及びR4のうちの少なくとも3種、好ましくは全てをORとして有する。
【0055】
式Iによって表されるオルガノアルコキシシランの例としては、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラオクトキシシラン、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、フルオロトリイソプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、及びトリフルオロメチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0056】
少なくとも2種のオルガノアルコキシシランは、アルカリ性条件下で水との反応速度が異なるように意図的に選択されるべきである。したがって、各オルガノアルコキシシランによるSiO2シード形成は、異なる時間に開始する。
【0057】
特定の理論に束縛されるものではないが、本発明の反応における2種のオルガノアルコキシシランを例に挙げると、より速い反応速度を有するオルガノアルコキシシランは、まず水と反応してシラノールを形成し、続いて、十分に確立されたLaMer理論に従ってSiO2シードを形成する。これらのシードが成長し始める一方で、より遅い反応速度を有する他のオルガノアルコキシシランは、新しいシラノールを生成し始め、これはまた、続いて新しいシードを生成する。したがって、シード形成及び粒子成長反応は、2種のオルガノアルコキシシランと水との異なる反応速度のために同時に起こっている。新しいシードは、それ自体で成長し得るか、又は新しいシードは、成長しているシードに付着して、別のシードを形成し得る。2種のオルガノアルコキシシランの反応の干渉のために、シード形成及び成長はもはや分離されず、したがって、全ての寸法における粒子の不均一な成長を規定する。結果として、本発明の方法は、非球状一次シリカナノ粒子という驚くべき予想外の結果を形成する。
【0058】
本方法は、アルカリ性条件下で水との反応速度が異なる少なくとも2種のオルガノアルコキシシランを同時に使用するので、1種のみのオルガノアルコキシシランを使用する、又は同時に使用する既知の方法と比較して、独特である。
【0059】
2種のオルガノアルコキシシランが存在する一実施形態では、第1のオルガノアルコキシシランは約50~約99モル%で存在してもよく、第2のオルガノアルコキシシランは約50~約1モル%で存在してもよい。別の実施形態では、第1のオルガノアルコキシシランは約75~約95モル%で存在してもよく、第2のオルガノアルコキシシランは約5~約25モル%で存在してもよい。別の実施形態では、第1のオルガノアルコキシシランは約85~約90モル%で存在してもよく、第2のオルガノアルコキシシランは約15~約10モル%で存在してもよい。モル%は、100%である2種のオルガノアルコキシシランの総モルに基づく。
【0060】
いくつかの実施形態では、少なくとも2種のオルガノアルコキシシランは、TEOS及びTMOSである。実施形態では、TEOSは約75~約98モル%存在し、TMOSは約2~約25モル%存在し、より好ましくは、TEOSは約85~約95モル%存在し、TMOSは約5~約15モル%存在し、最も好ましくは、TEOSは約88~約92.5モル%存在し、TMOSは約7.5~約12モル%存在する。例えば、一実施形態では、TEOSは90モル%で存在し、TMOSは10モル%で存在する。
【0061】
水
水は、本発明の方法における反応体である。Stober法に関して当技術分野で既知のこととは対照的に、本発明者らは、シリカナノ粒子の形状に対する効果が、少なくとも2種のオルガノアルコキシシランの異なる反応速度に加えて、反応混合物中に存在する水の量によっても影響され得ることを発見した。文献は、典型的には、Stober法における過剰の水の使用を教示しているが、少なくとも2種のオルガノアルコキシシランの混合物と共に使用される過剰の水は、球状からのわずかな逸脱をもたらすにすぎない。本発明者らは、現在の方法において加水分解反応のためにより少ない水が使用される場合、より顕著な偏差が観察されることを発見した。好ましくは、含水量は、3未満又は2未満のモル比RORで存在し、ここで、RORは、水とオルガノアルコキシシランの加水分解性基とのモル比として定義され、ROR=M(H2O)/M(OR)として定義される。最も好ましくは、RORは0.5(完全な加水分解及び縮合のための化学量論的最小値)~1.0である。
【0062】
触媒溶液の水、例えば25~35%アンモニア水溶液を唯一の水源として使用することが好ましい。
【0063】
方法で使用される触媒溶液が水を含有しない、又は十分な水を有さない場合、水を反応混合物に添加することができる。
【0064】
水混和性有機溶媒
水混和性有機溶媒が、本発明の方法において使用される。
【0065】
有機溶媒の例としては、アルコール、ケトン、エーテル、グリコール、及びエステルが挙げられ、アルコールが好ましい。より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノールなどのアルコール類;メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンなどのケトン類;プロピレングリコールモノプロピルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、及びヘキシレングリコールなどのグリコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル、及び乳酸エチルなどのエステル類が好ましい。これらの中でも、メタノール又はエタノールがより好ましく、エタノールが特に好ましい。これらの水混和性有機溶媒は、単独で使用されてもよく、2種以上を混合して使用されてもよい。
【0066】
水混和性有機溶媒は、好ましくは、反応混合物総重量の約25~約95重量%の量で、反応混合物中で使用される。他の実施形態では、水混和性有機溶媒は、反応混合物の40重量%~約90重量%、又は約50重量%~約80重量%で使用される。
【0067】
アルカリ触媒
少なくとも1種のアルカリ触媒が、本発明の方法において使用される。
【0068】
アルカリ触媒は、アンモニア(NH3)、水酸化アンモニウム、有機アミン、アルカノールアミン、水酸化第四級アンモニウム化合物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0069】
好ましいアルカリ触媒としては、アンモニア(NH3)又は少なくとも1種の有機アミンが挙げられる。
【0070】
少なくとも1種のアルカリ触媒として使用するのに好適な有機アミンの例としては、ヘキシルアミン、5-アミノ-2-メチルペンタン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、アミルメチルアミン、メチルイソアミルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、ジメチルエチルアミン、メチルジエチルアミン、メチルジプロピルアミン、N-エチリデンメチルアミン、N-エチリデンエチルアミン、N-エチリデンプロピルアミン、N-ブチルアミンエチリデン、アルカノールアミン、エタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-プロピルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、1-アミノ-2-プロパノール、N-メチルアミンイソプロパノール、N-エチルイソプロパノールアミン、N-プロピルイソプロパノールアミン、2-アミノプロパン-1-オール、N-メチル-2-アミノプロパン-1-オール、N-エチル-2-アミノプロパン-1-オール、1-アミノプロパン-3-オール、N-メチル-1-アミノプロパン-3-オール、N-エチル-1-アミノプロパン-3-オール、1-アミノブタン-2-オール、N-メチル-1-アミノブタン-2-オール、N-エチル-1-アミノブタン-2-オール、2-アミノブタン-1-オール、N-メチル-2-アミノブタン-1-オール、N-エチル-2-アミノブタン-1-オール、N-ヒドロキシ-メチルエタノールアミン、N-ヒドロキシメチルエチレンジアミン、N,N’-ビス(ヒドロキシメチル)エチレンジアミン、N-ヒドロキシメチルプロパノールアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、1,3-ジアミノブタン、2,3-ジアミノブタン、ペンタメチレンジアミン、2,4-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、N-メチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、トリメチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、トリエチルエチレンジアミン、1,2,3-トリアミノプロパン、ヒドラジン、トリス(2-アミノエチル)アミン、テトラ(アミノメチル)メタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチルペンタミン、ヘプタエチレンオクタミン、ノナエチレンデカミン、ジアザビシクロウンデセン、ヒドロキシルアミン、N-メチルヒドロキシルアミン、N-エチルヒドロキシルアミン、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、オリゴ及びポリエチレンイミン、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0071】
好適なアルカノールアミンの例としては、1~5個の炭素原子を有する第一級、第二級、及び第三級アルカノールアミン、例えば、N-メチルエタノールアミン(NMEA)、モノエタノールアミン(MEA)、N-メチルジエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ、ジ、及びトリイソプロパノールアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、トリエタノールアミン、及びこれらの混合物などが挙げられる。一実施形態では、アルカノールアミンは、トリエタノールアミン(TEA)、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0072】
少なくとも1種のアルカリ触媒として使用するのに好適な水酸化第四級アンモニウム化合物の例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化トリメチルエチルアンモニウム、水酸化(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム、水酸化(2-ヒドロキシエチル)トリエチルアンモニウム、水酸化(2-ヒドロキシエチル)トリプロピルアンモニウム、水酸化(1-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、水酸化エチルトリメチルアンモニウム、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム、及び水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0073】
反応混合物へのアルカリ触媒の添加量は、反応混合物のpHが7~14、好ましくは10~14、より好ましくは12~14の範囲内に維持されるように適宜調整してもよい。
【0074】
アルカリ触媒は、少なくとも2種のオルガノアルコキシシランと水混和性有機溶媒との混合物に添加することができる、又は最初に水混和性有機溶媒に添加し、次いで少なくとも2種のオルガノアルコキシシランの混合物に添加して反応混合物を得ることができる。
【0075】
好ましい実施形態では、アルカリ触媒は、少なくとも2種のオルガノアルコキシシランと水混和性有機溶媒との混合物に撹拌しながら添加して、反応混合物を得る。触媒は、アンモニアの25%~35%水溶液などの水溶液として存在することができ、その結果、反応体としての水が触媒と同時に添加される。
【0076】
触媒の添加は、ゆっくりであっても、一度であってもよい。好ましくは、触媒は、予め加熱されたシラン/溶媒混合物に激しく撹拌しながら迅速に添加される。
【0077】
典型的な反応時間は1~5時間である。好ましくは、シラン/溶媒混合物及び触媒の両方を加熱する。更により好ましくは、両者は混合前に同じ温度に加熱される。例示的な温度としては、30℃~70℃、40℃~60℃、及び48℃~52℃の範囲内の温度が挙げられる。
【0078】
本方法は、反応混合物からの揮発性触媒(例えばNH3)の蒸発を回避するように設計されるべきである。反応が所望の程度(粒子形成)まで進行することを確実にするために、連続パイプ/フローリアクター又は十分に長いパイプを有するバッチリアクターを使用することができる。
反応が窒素含有アルカリ触媒の存在下で実行される場合、窒素化合物は、粒子成長中にコロイド状シリカ研磨剤粒子の内部に捕捉され、したがって、コロイド状シリカ研磨剤粒子内に内部的に組み込まれた窒素含有化合物を含むコロイド状シリカ研磨剤粒子をもたらし得る。窒素レベル又は窒素含有量(ミリモル/グラムシリカ又はmmol/gシリカ)を使用して、粒子中に含有される窒素を測定することができる。
【0079】
本発明の方法は、典型的なStober法と比較してより少ない水を用いて実行されるので、いくつかの実施形態では、反応が完了した後又はほぼ完了した後に、1~60分間撹拌しながら過剰の水を添加して、オルガノアルコキシシラン上の全ての反応部位を確実に使い果たすことができる。好ましくは、過剰の水は、少なくとも≧1.0、最も好ましくは≧2.0のROR値を達成するために添加される。粒子成長の独特な方法のために、本発明の方法によって製造された、非球状、細長い、曲がった、及び分岐した構造を有するコロイド状シリカを得ることができる。
【0080】
任意に、コロイド状シリカ粒子の所望の特性に応じて、第2の成長ステップを実行することができる。例えば、一実施形態では、本発明の方法は、少なくとも1種のオルガノアルコキシシラン及び水、並びに任意により多くのアルカリ触媒を反応混合物に添加するステップを更に含む。2種以上のオルガノアルコキシシランを添加することもできるが、任意の第2の成長ステップは、例えばTEOSなどのオルガノアルコキシシラン化合物1種のみを用いて実行することが好ましい。第2のステップの添加速度は、液状混合物のpHを≧7、好ましくは12~14に維持するようにオルガノアルコキシシランを滴下することが好ましい。任意の第2の成長ステップのためのオルガノアルコキシシランの添加速度は、好ましくは0.7~41gシリカ/時間/kg反応混合物である。
【0081】
本発明の方法の次のステップは、非球状一次シリカナノ粒子が形成されたら、水溶性有機溶媒の少なくとも一部を水と交換して、水中のシリカナノ粒子の分散液を得ることを含む。このような溶媒交換ステップは、有機溶媒を水と交換するための任意の既知のプロセス、例えば、蒸留又はクロスフロー濾過などを使用することができる。溶媒交換ステップは、好ましくは、使用されるプロセスの固有の制限に従って、できるだけ多くの有機溶媒が除去されるまで実行される。好ましくは、置換するステップは、水とオルガノアルコキシシラン上の加水分解性基とのモル比(ROR)が2.0以上となる量で水を添加するステップを含む。溶媒交換が蒸留によって行われる場合、コロイド安定性に影響を与え得るpH8未満にpHが決して下がらないことを確実にするために、方法の少なくとも一部の間、純水の代わりに希釈アンモニア溶液(水中1~15%NH3)を添加することが好ましい。
【0082】
好ましい実施形態では、溶媒交換ステップ後に得られる分散液は、任意の好適な手段によって濃縮されて、15~25%以上の固体濃度を得る。
【0083】
本発明の方法は、製造されたコロイド状シリカの表面を化学改質するような他の任意のステップを含んでもよい。エッチング速度及び最終表面状態に影響を与えるシリカ表面の重要な特徴がある。典型的なシリカ表面は、中性又は塩基性条件下で-OH基で終端される(覆われる)。シリカ表面は親水性であり、したがって「湿潤性」である。これらの基は、多くの可能な化学又は物理吸収現象に対して表面を活性化する。Si-OH基は、塩の形成を可能にし、プロトン(H+)を様々な金属と交換する(イオン交換樹脂と同様に)弱酸効果を与える。これらのSi-O-及びSi-OHは、Al、Fe、Cu、Sn、及びCaを錯化するための配位子としても作用することができる。もちろん、表面は、非常に双極性であり、したがって、静電荷は、バルク溶液のpH、イオン濃度、及び電荷に応じて蓄積又は放散することができる。この蓄積された表面電荷は、ゼータ電位として測定することができる。
【0084】
研磨剤粒子を含有するCMP液は、例えば、コロイド安定性を保持するために高いゼータ電位が達成可能である場合、pH調整を受ける必要があり得る。研磨剤含有液体では、粒子が懸濁液から沈降することは望ましくない。粒子と液体との間の界面を取り囲む電荷は、コロイド系の安定性に強く影響する。ゼータ電位は、その剪断面における粒子表面の電位を測定し、コロイド系の安定性の一般的尺度を提供する。安定なコロイド系を維持するために、正電荷又は負電荷のいずれかの高いゼータ電位が望ましい。特定の粒子のゼータ電位は、その等電点に対応するpHで0に減少する。したがって、コロイドの安定性を高めるために、系のpHは、等電点でのpHと異なるべきである。例えば、シリカスラリーの等電点は、pH2である。好ましくは、次いで、コロイド安定性を高めるために、シリカスラリーをアルカリ性pHに維持する。粒子系のコロイド安定性に影響を及ぼす他の変数としては、粒子密度、粒径、粒子濃度、及び化学環境が挙げられる。
【0085】
したがって、製造されたコロイド状シリカの表面を化学改質する任意のステップは、コロイド状分散液のゼータ電位を調整するための、又はコロイド状シリカの表面に任意の他の所望の機能性を付与するための任意の表面改質を含むことができる。コロイド状シリカ粒子は、当技術分野で既知の任意の好適な方法を使用して表面改質することができる。これは、金属イオン、ホウ素、アルミニウムなどを添加することによってコロイド状シリカの表面を改質することを含む。任意の改質するステップはまた、アミノ含有シラン、硫黄含有シラン、カルボキシ基含有シラン、リン含有シラン、アルキルシランなどを含むシランなどの表面改質剤による処理を含む。
【0086】
一実施形態では、非球状シリカナノ粒子の表面を改質するステップは、表面シラノール基の少なくとも一部を、オルガノシラン、有機ポリマー、無機ポリマー、界面活性剤、及び無機塩からなる群から選択される少なくとも1つで置換することを含む。
【0087】
好ましい実施形態では、非球状シリカナノ粒子の表面を改質するステップは、表面シラノール基の少なくとも一部を、アミノ官能性アルコキシシラン、シアノ官能性アルコキシシラン、アルキル及びアリール官能性アルコキシシラン、硫黄シラン、並びにリンシランからなる群から選択されるオルガノシランで置換することを含む。硫黄シランの例としては、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及びビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ポリスルフィド(登録商標「Si 69」、Evonik製)が挙げられる。リンシランの例としては、N-ジフェニルホスホリル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(トリヒドロキシシリル)プロピルメチルホスホネート(アンモニウム塩)、及び2-(ジエチルホスファトエチル)メチルジエトキシシランが挙げられる。
【0088】
いくつかの用途では、分散液のpHは、酸性であることが好ましい場合がある。これは、当業者に既知の任意の手段によって、例えば、存在するカチオンがH+イオンによって交換されるまで、コロイド状シリカ分散液をイオン交換樹脂に通すことによって、又は好適な酸の添加によって達成され得る。このようなイオン交換は、任意の表面改質ステップの前又は後のいずれかに実行することができる。
【0089】
様々な粒子安定化添加剤を分散液に添加することができる。これらには、界面活性剤化合物が含まれる。好適な界面活性剤化合物としては、例えば、当業者に既知の多数の非イオン性、アニオン性、カチオン性、又は両性界面活性剤のいずれかが挙げられる。界面活性剤化合物は、スラリー組成物中に、スラリーの総重量の約0重量%~約1重量%の濃度で存在してもよく、存在する場合、好ましくは約0.001重量%~約0.1重量%の濃度で存在する。
【0090】
特定の最終用途に応じて、本明細書で調製される分散液に他の化合物を添加することができる。これらには、キレート剤、腐食防止剤、コロイド安定剤、有機塩又は無機塩、並びに殺菌剤、殺生物剤、及び殺真菌剤などの生物剤が含まれる。
【0091】
製造されたシリカナノ粒子
本明細書で製造されたシリカナノ粒子は、主に、非球状一次シリカ粒子を含み、すなわち、それらは、細長い及び/又は曲がった及び/又は分岐した粒子である。好ましくは、非球状一次シリカナノ粒子は、本明細書に開示される本発明の方法に従って製造されたシリカナノ粒子の約75%、85%、又はそれ以上を構成する。
【0092】
商業的観点から非球状一次ナノ粒子の製造方法の重要な点は、収率である。収率は、反応混合物の総重量によって生成され得るシリカナノ粒子の総重量として定義され、典型的には、重量%収率として報告される。
【0093】
典型的なStober法は、より高い収率を達成しようとする試みが常に制御されない凝集、沈殿、又は不均一なサイズ分布をもたらすので、その収率が非常に限られている。したがって、Stober法は、典型的には1~3%の収率で実行され、これは、反応混合物の大部分が、高価な後続処理において除去される必要がある溶媒であることを意味する。
【0094】
記載された非球状一次シリカナノ粒子の製造方法は、非常に高い収率で実行することができるという点で独特の利点を示し、この収率は、従来技術に記載されている既知のStober法では、可能ではない。
【0095】
記載された方法は、0.5~15%、好ましくは3%~8%、最も好ましくは5%~7%の範囲の収率で行うことができ、これは、最新技術で既知のStober法と比較して約半分の量の溶媒しか必要とされないことを意味し、大きな利点である。したがって、後続処理においても、溶媒の量の半分が水と交換されるか、又は除去される必要があるだけである。
【0096】
本出願における実施例は、4.5~6.5%、又は5.5~6.5%の収率を示した。
【0097】
非球状一次シリカ粒子は、互いに接触し、水素架橋又は共有結合のようなある種の結合を形成し、凝集して二次粒子を形成する可能性がある。シリカ二次粒子は、大部分が非球状である、又は細長い、曲がった、及び/又は分岐した構造を有する。
【0098】
「アスペクト比」という用語は、粒子の長軸と短軸との比を指す。好ましくは、本明細書に開示される方法に従って製造された非球状一次シリカナノ粒子は、上記の図において観察される粒子のアスペクト比の平均値(平均アスペクト比)が、好ましくは1.5以上、より好ましくは5未満である。平均アスペクト比が5を超えると、粘度の上昇などにより取り扱いが困難となり、ゲル化が生じる場合がある。
【0099】
非球状一次シリカナノ粒子は、約15nm~200nm、約20nm~約200nm、約20nm~約150nm、約20nm~約120nm、約20nm~約110nm、約20nm~約110nm、約30nm~約110nm、約30nm~約100nm、約30nm~約90nm、約30nm~約80nm、又は約40nm~70nmの平均粒径を有することができる。あるいは、又は加えて、非球状一次シリカナノ粒子は、約≧10nm、約≧15nm、及び約≦200nm、約≦150nm、約≦120nm、約≦100nm、約≦90nm、約≦80nm、又は約≦70nmの平均粒径を有することができる。したがって、非球状一次シリカナノ粒子は、前述の終点のいずれか2つによって境界付けられる平均粒径を有することができる。
【0100】
非球状シリカ二次ナノ粒子は、任意の好適な平均粒径を有することができる。例えば、非球状シリカ二次ナノ粒子は、約15nm~600nm、約20nm~600nm、約25nm~550nm、約30nm~500nm、約35nm~450nm、約40nm~400nm、約45nm~350nm、約50nm~300nm、又は約50nm~200nmの平均粒径を有することができる。あるいは、又は加えて、非球状シリカ二次ナノ粒子は、約≧15nm及び≦600nm、約≦500nm、約≦400nm、約≦300nm、又は約≦200nmの平均粒径を有することができる。したがって、シリカナノ粒子は、前述の終点のいずれか2つによって境界付けられる平均粒径を有することができる。本発明の非球状一次粒子は、凝集して二次粒子を形成しない、又は少ししか形成しないことが好ましい。
【0101】
したがって、別の実施形態では、本発明は、上で開示された方法によって調製された非球状一次シリカナノ粒子を提供する。
【0102】
更に、本発明の非球状一次シリカナノ粒子は、曲がった及び/又は分岐した構造を有し、したがって、大きなアスペクト比を有する。本発明の細長い/曲がった/凝集一次シリカ粒子は、互いに重なり合っている又は絡み合っているので、優れた塗布性を示し、したがって、水性塗布組成物のビヒクルとして使用した場合に塗布性を改善することができる。
【0103】
本明細書で製造された非球状一次シリカナノ粒子は、球状粒子と比較して高い除去速度及び高い効率を示すので、CMP組成物で使用するための優れた研磨剤である。したがって、別の実施形態では、本明細書に開示される方法に従って製造された非球状一次シリカナノ粒子を含むCMP組成物が本明細書で提供される。
【0104】
本発明の粒子は、これまでにない複雑な構造を有するため、非球状一次シリカナノ粒子を研磨材として使用する場合、研磨材と被研磨面との間の接触抵抗を調整して、研磨速度を向上させることができる。
【0105】
以下、実施例及び比較例に関して本発明を更に詳細に記載する。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0106】
実施例1:細長い粒子の合成(5%TMOS 95%TEOS、ROR0.75)
1204.96mmolのエタノールを撹拌下で50℃に加熱する。水酸化アンモニウム溶液(32重量%、74.78mmol)を添加して、第1の混合物を得た。混合物を再び50℃に達するまで更に撹拌した。次いで、50℃に予熱したテトラエトキシシラン(TEOS)(47.5mmol)及びテトラメトキシシラン(TMOS)(2.5mmol)の混合物を、激しく撹拌しながら第1の混合物に一度に素早く添加して、0.75のRORを有する反応混合物を得た。撹拌を10秒間続けた後、停止した。反応混合物を50℃で一晩維持した。
【0107】
分散液を撹拌し、50mmolの脱イオン水をゆっくり添加し、続いて50℃で8時間撹拌した。粒子は、91.2nmの平均粒径、及び動的光散乱法(Dynamic Light Scattering、DLS)によって測定して0.078の多分散指数(polydispersity index、PDI)を有していた。
【0108】
実施例2:細長い粒子の合成(10%TMOS、90%TEOS、ROR0.75)
12346.97mmolのエタノールを撹拌下で50℃に加熱した。水酸化アンモニウム溶液(32重量%、747.36mmol)を添加して、第1の混合物を得た。混合物を再び50℃に達するまで更に撹拌した。次いで、50℃に予熱したテトラエトキシシラン(TEOS)(451.17mmol)及びテトラメトキシシラン(TMOS)(50.07mmol)の混合物を、激しく撹拌しながら第1の混合物に一度に素早く添加して、反応混合物を得た。撹拌を10秒間続けた後、停止した。反応混合物を50℃で一晩維持した。粒子は、66.5nmの平均粒径、DLSによって測定して0.086のPDIを有していた。
【0109】
図1及び
図2は、実施例2によって製造された非球状一次シリカナノ粒子を示すSEM顕微鏡写真である。
【0110】
実施例3:(TEOS:TPOS 80:20、ROR0.75)
1234.7mmolのエタノールを撹拌下で50℃に加熱する。水酸化アンモニウム溶液(32重量%、70.11mmol)を添加して、第1の混合物を得た。第1の混合物を再び50℃に達するまで更に撹拌した。次いで、50℃に予熱したテトラエトキシシラン(TEOS)(40.06mmol)及びテトラプロポキシシラン(TPOS)(10.02mmol)の混合物を、第1の混合物を得るために、激しく撹拌しながら一度に素早く添加して、反応混合物を得た。撹拌を10秒間続けた後、停止した。反応混合物を50℃で一晩維持した。粒子は、50.0nmの平均粒径、及びDLSによって測定して0.051のPDIを有していた。
【0111】
図3及び
図4は、実施例3によって製造された非球状一次シリカナノ粒子を示すSEM顕微鏡写真である。
【0112】
実施例4:(60%TEOS、40%TPOS、ROR0.75)
1234.7mmolのエタノールを撹拌下で50℃に加熱する。水酸化アンモニウム溶液(32重量%、74.78mmol)を添加して、第1の混合物を得た。混合物を再び50℃に達するまで更に撹拌した。次いで、50℃に予熱したテトラエトキシシラン(TEOS)(30.50mmol)及びテトラプロポキシシラン(TPOS)(20.50mmol)の混合物を、激しく撹拌しながら第1の混合物に一度に素早く添加して、反応混合物を得た。撹拌を10秒間続けた後、停止した。反応混合物を50℃で一晩維持した。粒子は、53.5nmの平均粒径、及びDLSによって測定して0.053のPDIを有していた。
【0113】
図5及び
図6は、実施例4によって製造された非球状一次シリカナノ粒子を示すSEM顕微鏡写真である。
【0114】
実施例5:イオン交換及び酸性pHへのpHシフト
実施例2からの1247.1gのナノ粒子分散液を撹拌し、700gのイオン交換体Amberlite IRN-150を添加した。撹拌を1時間続けた後、イオン交換体を濾別した。pHをpH電極で測定したところ、4.3であった。分散液のpHが2.0になるまで、HNO3(1%)をゆっくり添加した。
【0115】
実施例6:表面改質、ゼータ電位調整、及び溶媒移動
42.44mmolの(3-アミノプロピル)トリメトキシシランを3.61molのメタノールで希釈した。激しく撹拌しながら、濃硝酸(65重量%、46.7mmol)を溶液に素早く添加した。撹拌を1分間続けた。
【0116】
実施例5の、イオン交換され、酸性化された粒子分散液を激しく撹拌し、上記の新たに調製した酸性化アミノシラン溶液を素早く添加した。撹拌を室温で1時間続け、次いで、分散液を70℃に加熱し、その温度で更に2時間撹拌した。
【0117】
次いで、分散液をロータリーエバポレーターに移し、アルコールを段階的に除去し、分散液が水中固形分21.5重量%に達するまで水を添加することによって置換した。
【0118】
最後に、分散液を2μmのガラス繊維フィルターで濾過した。
【0119】
粒子は、90.5nmの平均粒径、DLSによる0.058のPDI、及びpH2.2で40.3mVのゼータ電位を有していた。
【0120】
実施例7:第2の成長を伴う細長い粒子の合成(90%TEOS、10%TMOS、ROR0.75)
32.35molの無水エタノールを、1.58molのテトラエトキシシラン及び0.18molのテトラメトキシシランと混合して、第1の混合物を得た。第1の混合物を撹拌し、66℃に加熱した。激しく撹拌しながら、2.63molのアンモニア溶液(32%)を素早く添加し、撹拌を10秒間続けた後、停止した。温度は60℃に低下した。
【0121】
反応混合物を60℃で12時間維持し、次いで、粒径をDLSによって測定した。粒子は、77.7nmの平均粒径、及び0.054のPDIを有していた。
【0122】
25.53mol脱イオン水を60℃に加熱し、次いで、まだ60℃の温度を有する反応混合物に撹拌下でゆっくりと添加した。撹拌を60℃で30分間続けた。次いで、撹拌を続けながら、テトラエトキシシラン(1.67mol)を、ドジメーターポンプ(dosimeter pump)を用いて3時間かけて添加した。最後に、混合物を60℃で12時間撹拌し、次いで粒径分布をDLSで測定した。粒子は、89.3nmの平均粒径、及び0.047のPDIを有していた。
【0123】
比較例1(100%TEOS-本発明ではない)
無水エタノール(1,201.27mmol)及びテトラエトキシシラン(TEOS)(50.00mmol)の混合物を、撹拌下で55℃に加熱した。水酸化アンモニウム溶液(32%、74.78mmol)を激しく撹拌しながら素早く添加した。温度は50℃に低下した。撹拌を10秒間継続し、次いでスイッチを切り、反応混合物を50℃で12時間維持した後、粒径分布をDLSで測定した。
【0124】
粒子は、47.4nmの平均粒径、及び0.025のPDIを有していた。
【0125】
非常に低いPDIは、粒子が細長い形状や非球状ではほとんどなく、したがって要件プロファイルに関して好ましくないことの指標である。
【0126】
実施例8:窒素レベル(又は窒素含有量)
先の実施例1及び2に示されるように、本発明において製造された非球状一次シリカ粒子中の窒素レベル又は窒素含有量は、乾燥された非球状一次シリカ粒子をKOH中に溶解することによって測定し、次いで窒素種はイオンクロマトグラフィーによって測定した。粒子を乾燥させる前に、クロスフロー濾過によって窒素含有種から分散媒を除去した。
【0127】
【0128】
表1に示される結果から明らかなように、アンモニアの濃縮溶液が反応において触媒として使用されても、非球状一次シリカ粒子中の窒素のレベルは非常に低く、0.0041~0.0058mmol/g SiO2の範囲内である。
【0129】
この窒素含有量は、米国特許第9422456号明細書及び米国特許第949972号明細書に開示されているシリカ粒子に組み込まれた窒素含有量の約50分の1であり、窒素含有量は同じ方法によって測定された。
【0130】
本出願で製造される非球状一次シリカ粒子中の窒素含有量は、米国特許第9422456号明細書及び米国特許第949972号明細書において対照として使用される粒子から測定される窒素含有量未満(<0.02mmol/g SiO2)である。
【0131】
実施形態の前述の例及び記述は、特許請求の範囲によって定義される本発明を限定するものとしてではなく、例示するものとして解釈されるべきである。容易に理解されるように、特許請求の範囲に記載の本発明から逸脱することなく、上述の特徴の多数の変形形態及び組み合わせを利用することができる。かかる変形形態は、以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【国際調査報告】