(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】正極活物質およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20240412BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240412BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240412BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20240412BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
H01M4/131
C01G53/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569714
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(85)【翻訳文提出日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 KR2022006725
(87)【国際公開番号】W WO2022240176
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】10-2021-0061000
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ナ・リ・キム
(72)【発明者】
【氏名】サン・スン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ドン・リョン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ラム・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ア・パク
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・クク・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・グン・キム
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
4G048AE07
5H050AA08
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA14
5H050HA01
5H050HA04
(57)【要約】
本発明は、高容量およびハイレート特性を有する正極活物質およびその製造方法に関し、本発明の正極活物質は、下記化学式1で表される組成を有するリチウム遷移金属酸化物粒子を含み、前記リチウム遷移金属酸化物粒子の表面での(003)d-スペーシング(d-spacing)が、粒子の内部での(003)d-スペーシング(d-spacing)より大きい。
[化学式1]
Lia[NixCoyMnzM1
w]O2
前記化学式1中、0.8≦a≦1.2、0.6≦x<1、0<y<0.4、0<z<0.4、0≦w≦0.1であり、M1は、Al、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、F、PおよびSからなる群から選択される1種以上である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される組成を有するリチウム遷移金属酸化物粒子を含み、
前記リチウム遷移金属酸化物粒子の表面での(003)d-スペーシング(d-spacing)が、粒子の内部での(003)d-スペーシング(d-spacing)より大きい、正極活物質。
[化学式1]
Li
a[Ni
xCo
yMn
zM
1
w]O
2
前記化学式1中、
0.8≦a≦1.2、0.6≦x<1、0<y<0.4、0<z<0.4、0≦w≦0.1であり、
M
1は、Al、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、F、PおよびSからなる群から選択される1種以上である。
【請求項2】
前記リチウム遷移金属酸化物粒子の表面での(003)d-スペーシング(d-spacing)と粒子の内部での(003)d-スペーシング(d-spacing)との差が0.005nm以上である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記リチウム遷移金属酸化物粒子の表面での(003)d-スペーシング(d-spacing)は、0.46nm~0.50nmであり、
前記リチウム遷移金属酸化物粒子の内部での(003)d-スペーシング(d-spacing)は、0.45nm~0.50nmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記[化学式1]において、0.8≦x<1、0<y<0.2、0<z<0.2である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
ニッケル、コバルトおよびマンガンのうち2種以上の元素が互いに異なる領域に沈殿された多層構造の正極活物質用前駆体を製造するステップと、
前記正極活物質用前駆体とリチウム原料物質を混合した後、焼成するステップとを含む、請求項1に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項6】
前記正極活物質用前駆体を製造するステップは、ニッケル-コバルト金属溶液、アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物を投入しながら共沈反応を行わせて、ニッケルおよびコバルトが共沈された水酸化物粒子を形成するステップと、
前記ニッケルおよびコバルトが共沈された水酸化物粒子を含む反応溶液にマンガン金属溶液、アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物を投入しながら沈殿反応を行わせて、前記ニッケルおよびコバルトが共沈された水酸化物粒子上にマンガン水酸化物を沈殿させるステップとを含む、請求項5に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項7】
前記正極活物質用前駆体を製造するステップは、
ニッケル金属溶液、アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物を投入しながら沈殿反応を行わせて、ニッケル水酸化物を形成するステップと、
前記ニッケル水酸化物を含む反応溶液に、コバルト金属溶液、アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物を投入しながら沈殿反応を行わせて、前記ニッケル水酸化物上にコバルト水酸化物が沈殿したニッケル-コバルト水酸化物を形成するステップと、
前記ニッケル-コバルト水酸化物を含む反応溶液に、マンガン金属溶液、アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物を投入しながら沈殿反応を行わせて、ニッケル水酸化物、コバルト水酸化物およびマンガン水酸化物が順に沈殿されたニッケル-コバルト-マンガン水酸化物粒子を形成するステップとを含む、請求項5に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記正極活物質用前駆体を製造するステップは、
ニッケル金属溶液、アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物を投入しながら沈殿反応を行わせて、ニッケル水酸化物を形成するステップと、
前記ニッケル水酸化物を含む反応溶液にマンガン金属溶液、アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物を投入しながら沈殿反応を行わせて、前記ニッケル水酸化物上にマンガン水酸化物が沈殿したニッケル-マンガン水酸化物を形成するステップと、
前記ニッケル-マンガン水酸化物を含む反応溶液に、コバルト金属溶液、アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物を投入しながら沈殿反応を行わせて、ニッケル水酸化物、マンガン水酸化物およびコバルト水酸化物が順に沈殿されたニッケル-マンガン-コバルト水酸化物粒子を形成するステップとを含む、請求項5に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、正極。
【請求項10】
請求項9に記載の正極を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年5月11日付けの韓国特許出願第10-2021-0061000号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、正極活物質およびその製造方法に関し、より詳細には、急速充電が可能であるようにハイレート特性を有する高容量正極活物質およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器、電池自動車などに対する需要の増加に伴い、エネルギー源として、二次電池の需要が急激に増加しており、二次電池の中でも、エネルギー密度が高く自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化し、広く使用されている。特に、最近、電気自動車市場が急速に拡大するにつれて、高容量二次電池に対する需要が増加しており、急速充電が可能であるように優れたハイレート特性を有するリチウム二次電池の開発が求められている。
【0004】
二次電池の容量特性を改善するために、正極活物質として、NCM、NCMAのように、2種以上の遷移金属を含むリチウム複合遷移金属酸化物が開発され使用されている。従来、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンなどの遷移金属原料物質を水に溶解させて遷移金属水溶液を製造した後、前記遷移金属水溶液と、カチオン錯体および塩基性化合物を反応器に投入し、共沈反応を行って水酸化物形態の遷移金属前駆体を製造し、前記遷移金属前駆体とリチウム原料物質を混合した後、焼成する方法でリチウム複合遷移金属酸化物を製造することが一般的であった。しかし、前記のような方法により製造された従来のリチウム複合遷移金属酸化物では、十分な容量特性およびハイレート特性を実現することが困難であった。
【0005】
したがって、高容量およびハイレート特性を有する正極活物質の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決するためのものであり、正極活物質の表面での(003)d-スペーシング(spacing)が内部での(003)d-スペーシング(spacing)より大きく形成されて容量が大きく、ハイレート充放電時にも高い容量を維持することができる正極活物質と、このような正極活物質の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実現例によると、本発明は、下記化学式1で表される組成を有するリチウム遷移金属酸化物粒子を含み、前記リチウム遷移金属酸化物粒子の表面での(003)d-スペーシング(d-spacing)が、粒子の内部での(003)d-スペーシング(d-spacing)より大きい正極活物質を提供する。
[化学式1]
Lia[NixCoyMnzM1
w]O2
前記化学式1中、0.8≦a≦1.2、0.6≦x<1、0<y<0.4、0<z<0.4、0≦w≦0.1であり、M1は、Al、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、F、PおよびSからなる群から選択される1種以上である。
【0008】
他の実現例によると、本発明は、ニッケル、コバルトおよびマンガンのうち2種以上の元素が互いに異なる領域に沈殿された多層構造の正極活物質用前駆体を製造するステップと、前記正極活物質用前駆体とリチウム原料物質を混合した後、焼成して、リチウム遷移金属酸化物を製造するステップとを含む正極活物質の製造方法を提供する。
【0009】
さらに他の実現例によると、前記本発明による正極活物質を含む正極および前記正極を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明による正極活物質の製造方法は、正極活物質用前駆体の製造時に、ニッケル、コバルトおよびマンガン元素を同時に共沈させず、ニッケル、コバルトおよびマンガンのうち2種以上の元素を個別に投入して、ニッケル、コバルト、マンガンのうち2種以上の元素が互いに異なる領域に沈殿した多層構造の正極活物質用前駆体を製造し、前記正極活物質用前駆体をリチウム原料物質と混合した後、焼成して正極活物質を製造する。
【0011】
上記のような方法により製造された本発明の正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物粒子の表面での(003)面間の距離(d-spacing)が粒子の内部での(003)面間の距離(d-spacing)より大きく形成される。リチウム遷移金属酸化物の表面で(003)面間の距離が増加すると、リチウムイオンの移動通路が広くなって、リチウムイオンの挿入、脱離が容易になる。したがって、本発明の正極活物質は、粒子の全体において一定の(003)面間の距離を有する従来の正極活物質に比べて、優れた容量特性およびハイレート特性を有する。したがって、本発明の正極活物質をリチウム二次電池に適用する場合、優れた容量特性および急速充電性能を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0013】
本発明者らは、急速充電時にも容量の劣化が少ない正極活物質を開発するために鋭意研究を重ねた結果、正極活物質用前駆体の製造時に、ニッケル、コバルトおよびマンガンを同時に共沈させず、ニッケル、コバルトおよびマンガンのうち2種以上の元素を個別に沈殿させる方法により、リチウム遷移金属酸化物粒子の内部に比べて、表面での(003)面間の距離(d-spacing)が相対的に大きい正極活物質を製造することができ、このような正極活物質をリチウム二次電池に適用する場合、高い充放電速度でも高い容量を維持することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
正極活物質の製造方法
先ず、本発明の正極活物質の製造方法について説明する。
【0015】
本発明による正極活物質の製造方法は、(1)ニッケル、コバルトおよびマンガンのうち2種以上の元素が互いに異なる領域に沈殿された多層構造の正極活物質用前駆体を製造するステップと、(2)前記正極活物質用前駆体とリチウム原料物質を混合した後、焼成して、リチウム遷移金属酸化物を製造するステップとを含む。
【0016】
(1)正極活物質用前駆体の製造ステップ
先ず、ニッケル、コバルトおよびマンガンのうち2種以上の元素が互いに異なる領域に沈殿された多層構造の正極活物質用前駆体を製造する。
【0017】
従来、ニッケル、コバルト、マンガンを含む正極活物質用前駆体を製造するために、ニッケル含有原料、コバルト含有原料、マンガン含有原料をともに混合して、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む複合遷移金属溶液を製造し、前記複合遷移金属溶液とアンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物を反応器に投入し、共沈反応させる方法が使用されていた。前記のような従来の方法を用いると、ニッケル、コバルト、マンガンが前駆体粒子の全体に均一な組成で分布するニッケル-コバルト-マンガン水酸化物が製造される。
【0018】
これに対し、本発明は、ニッケル、コバルトおよびマンガンのうち2種以上の元素を互いに異なる個別の溶液に含ませ、反応器への投入時点を異ならせて正極活物質用前駆体を製造することを特徴とする。本発明の方法によると、ニッケル、コバルトおよびマンガンのうち2種以上の元素が互いに異なる領域に沈殿された多層構造の正極活物質用前駆体が製造され、前記のような多層構造の前駆体を用いると、粒子の表面と粒子の内部の(003)d-スペーシング値が相違する正極活物質を製造することができる。
【0019】
具体的には、前記ニッケル、コバルトおよびマンガンのうち2種以上の元素が互いに異なる領域に沈殿された多層構造の正極活物質用前駆体は、下記(I)~(III)のいずれか一つの方法により製造されることができる。
【0020】
(I)方法:
先ず、ニッケル-コバルト金属溶液、アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物を混合した後、共沈反応を行わせてニッケル-コバルト水酸化物粒子を形成する。
【0021】
ここで、前記共沈反応は、例えば、反応溶液のpHが11.5~12.5、好ましくは11.8~12.3である条件で、反応を所定の時間行って水酸化物粒子の核を形成した後、反応溶液のpHを下げ、追加反応を行って水酸化物粒子を成長させる方法により行われることができる。
【0022】
一方、前記ニッケル-コバルト金属溶液は、ニッケル原料物質およびコバルト原料物質を水のような溶媒に溶解させて製造されることができる。
【0023】
ここで、前記ニッケル原料物質は、ニッケルの酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、または酸化物などであることができ、具体的には、NiO、NiCO3・2Ni(OH)2・4H2O、NiC2O2・2H2O、Ni(NO3)2・6H2O、NiSO4、NiSO4・6H2O、ニッケルハロゲン化物またはこれらの組み合わせであることができるが、これに限定されるものではない。
【0024】
前記コバルト原料物質は、コバルト金属の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、または酸化物などであることができ、具体的には、CoSO4、Co(OCOCH3)2・4H2O、Co(NO3)2・6H2O、CoSO4・7H2Oまたはこれらの組み合わせであることができるが、これに限定されるものではない。
【0025】
一方、前記ニッケル-コバルト金属溶液は、必要に応じて、M1含有原料物質をさらに含むことができる。ここで、前記M1は、Al、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、F、PおよびSからなる群から選択される1種以上であり、M1含有原料物質は、M1金属の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、または酸化物などであることができる。
【0026】
前記アンモニウムカチオン錯体形成剤は、NH4OH、(NH4)2SO4、NH4NO3、NH4Cl、CH3COONH4、およびNH4CO3からなる群から選択される少なくとも一つ以上であることができ、前記化合物を溶媒に溶解させた溶液状で反応器内に投入されることができる。ここで、前記溶媒としては、水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水の混合物が使用されることができる。
【0027】
また、前記塩基性化合物は、NaOH、KOH、およびCa(OH)2からなる群から選択される少なくとも一つ以上であることができ、前記化合物を溶媒に溶解させた溶液状で反応器内に投入されることができる。ここで、溶媒としては、水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水の混合物が使用されることができる。
【0028】
前記のようにニッケルとコバルトを同時共沈させると、粒子の全体においてニッケルとコバルトの濃度が一定であるニッケル-コバルト水酸化物粒子が得られる。
【0029】
次に、ニッケル-コバルト金属溶液の投入を中断し、前記ニッケル-コバルト水酸化物粒子を含む反応溶液に、マンガン金属溶液、アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物を投入しながら沈殿反応を行わせる。
【0030】
ここで、前記マンガン沈殿反応は、例えば、反応溶液のpHが11.0以下、好ましくはpH10.0~11.0である条件で行われることが好ましい。反応溶液のpHが前記範囲を満たす時に、マンガンの沈殿がスムーズに行われる。
【0031】
前記マンガン金属溶液は、マンガン原料物質を水のような溶媒に溶解させて製造されることができる。マンガン原料物質は、マンガン金属の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、または酸化物などであることができ、具体的には、Mn2O3、MnO2、Mn3O4、MnCO3、Mn(NO3)2、MnSO4・H2O、酢酸マンガン、マンガンハロゲン化物またはこれらの組み合わせであることができるが、これに限定されるものではない。
【0032】
一方、前記マンガン金属溶液は、必要に応じて、M1含有原料物質をさらに含むことができる。ここで、前記M1は、Al、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、F、PおよびSからなる群から選択される1種以上であり、M1含有原料物質は、M1金属の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、または酸化物などであることができる。
【0033】
一方、前記アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物は、上述のとおりである。
【0034】
前記沈殿反応により前記ニッケルおよびコバルトが共沈された水酸化物粒子の表面にマンガン水酸化物が沈殿し、ニッケル-コバルト水酸化物上にマンガン水酸化物が沈殿した2層構造の正極活物質用前駆体を形成することができる。
【0035】
(II)方法:
先ず、ニッケル金属溶液、アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物を投入しながら沈殿反応を行ってニッケル水酸化物を形成する。
【0036】
ここで、前記ニッケルの沈殿反応は、反応溶液のpHが11.4~11.8である条件で行われることが好ましい。反応溶液のpHが前記範囲を満たす時に、ニッケルの沈殿がスムーズに行われることができる。
【0037】
一方、前記ニッケル金属溶液は、ニッケル原料物質を水のような溶媒に溶解させて製造されることができる。ニッケル原料物質は、ニッケルの酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、または酸化物などであることができ、具体的には、NiO、NiCO3・2Ni(OH)2・4H2O、NiC2O2・2H2O、Ni(NO3)2・6H2O、NiSO4、NiSO4・6H2O、ニッケルハロゲン化物またはこれらの組み合わせであることができるが、これに限定されるものではない。
【0038】
一方、前記ニッケル金属溶液は、必要に応じて、M1含有原料物質をさらに含むことができる。ここで、前記M1は、Al、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、F、PおよびSからなる群から選択される1種以上であり、M1含有原料物質は、M1金属の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、または酸化物などであることができる。
【0039】
一方、前記アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物は、上述のとおりである。
【0040】
次に、ニッケル金属溶液の投入を中断し、前記ニッケル水酸化物が形成された反応溶液に、コバルト金属溶液、アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物を投入しながら沈殿反応を行わせて、前記ニッケル水酸化物上にコバルト水酸化物が沈殿したニッケル-コバルト水酸化物粒子を形成する。
【0041】
前記コバルト沈殿反応は、反応溶液のpHが11.0~11.4である条件で行われることが好ましい。反応溶液のpHが前記範囲を満たす時に、コバルトの沈殿がスムーズに行われることができる。
【0042】
一方、前記コバルト金属溶液は、コバルト原料物質を水のような溶媒に溶解させて製造されることができる。前記コバルト原料物質は、コバルト金属の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、または酸化物などであることができ、具体的には、CoSO4、Co(OCOCH3)2・4H2O、Co(NO3)2・6H2O、CoSO4・7H2Oまたはこれらの組み合わせであることができるが、これに限定されるものではない。
【0043】
一方、前記コバルト金属溶液は、必要に応じて、M1含有原料物質をさらに含むことができる。ここで、前記M1は、Al、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、F、PおよびSからなる群から選択される1種以上であり、M1含有原料物質は、M1金属の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、または酸化物などであることができる。
【0044】
一方、前記アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物は、上述のとおりである。
【0045】
次に、コバルト金属溶液の投入を中断し、前記ニッケル-コバルト水酸化物を含む反応溶液に、マンガン金属溶液、アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物を投入しながら沈殿反応を行わせる。
【0046】
ここで、前記マンガン沈殿反応は、例えば、反応溶液のpHが11.0以下、好ましくはpH10.0~11.0である条件で行われることが好ましい。反応溶液のpHが前記範囲を満たす時に、マンガン沈殿がスムーズに行われる。
【0047】
前記マンガン金属溶液は、マンガン原料物質を水のような溶媒に溶解させて製造されることができる。マンガン原料物質は、マンガン金属の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、または酸化物などであることができ、具体的には、Mn2O3、MnO2、Mn3O4、MnCO3、Mn(NO3)2、MnSO4・H2O、酢酸マンガン、マンガンハロゲン化物またはこれらの組み合わせであることができるが、これに限定されるものではない。
【0048】
一方、前記マンガン金属溶液は、必要に応じて、M1含有原料物質をさらに含むことができる。ここで、前記M1は、Al、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、F、PおよびSからなる群から選択される1種以上であり、M1含有原料物質は、M1金属の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、または酸化物などであることができる。
【0049】
一方、前記アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物は、上述のとおりである。
【0050】
前記のような方法により、ニッケル水酸化物、コバルト水酸化物およびマンガン水酸化物が順に沈殿された3層構造のニッケル-コバルト-マンガン水酸化物を製造することができる。
【0051】
(III)方法:
先ず、ニッケル金属溶液、アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物を投入しながら沈殿反応を行ってニッケル水酸化物を形成する。
【0052】
ここで、前記ニッケルの沈殿反応は、反応溶液のpHが11.4~11.8である条件で行われることが好ましい。反応溶液のpHが前記範囲を満たす時に、ニッケルの沈殿がスムーズに行われることができる。
【0053】
一方、前記ニッケル金属溶液は、ニッケル原料物質を水のような溶媒に溶解させて製造されることができる。ニッケル原料物質は、ニッケルの酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、または酸化物などであることができ、具体的には、NiO、NiCO3・2Ni(OH)2・4H2O、NiC2O2・2H2O、Ni(NO3)2・6H2O、NiSO4、NiSO4・6H2O、ニッケルハロゲン化物またはこれらの組み合わせであることができるが、これに限定されるものではない。
【0054】
一方、前記ニッケル金属溶液は、必要に応じて、M1含有原料物質をさらに含むことができる。ここで、前記M1は、Al、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、F、PおよびSからなる群から選択される1種以上であり、M1含有原料物質は、M1金属の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、または酸化物などであることができる。
【0055】
一方、前記アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物は、上述のとおりである。
【0056】
次に、ニッケル金属溶液の投入を中断し、前記ニッケル水酸化物が形成された反応溶液に、マンガン金属溶液、アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物を投入しながら沈殿反応を行わせて、前記ニッケル水酸化物上にマンガン水酸化物が沈殿したニッケル-マンガン水酸化物を形成する。
【0057】
ここで、前記マンガン沈殿反応は、例えば、反応溶液のpHが11.0以下、好ましくはpH10.0~11.0である条件で行われることが好ましい。反応溶液のpHが前記範囲を満たす時に、マンガン沈殿がスムーズに行われる。
【0058】
前記マンガン金属溶液は、マンガン原料物質を水のような溶媒に溶解させて製造されることができる。マンガン原料物質は、マンガン金属の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、または酸化物などであることができ、具体的には、Mn2O3、MnO2、Mn3O4、MnCO3、Mn(NO3)2、MnSO4・H2O、酢酸マンガン、マンガンハロゲン化物またはこれらの組み合わせであることができるが、これに限定されるものではない。
【0059】
一方、前記マンガン金属溶液は、必要に応じて、M1含有原料物質をさらに含むことができる。ここで、前記M1は、Al、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、F、PおよびSからなる群から選択される1種以上であり、M1含有原料物質は、M1金属の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、または酸化物などであることができる。
【0060】
一方、前記アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物は、上述のとおりである。
【0061】
次に、マンガン金属溶液の投入を中断し、前記ニッケル-マンガン水酸化物を含む反応溶液に、コバルト金属溶液、アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物を投入しながら沈殿反応を行わせる。
【0062】
前記コバルト沈殿反応は、反応溶液のpHが11.0~11.4である条件で行われることが好ましい。反応溶液のpHが前記範囲を満たす時に、コバルトの沈殿がスムーズに行われることができる。
【0063】
一方、前記コバルト金属溶液は、コバルト原料物質を水のような溶媒に溶解させて製造されることができる。前記コバルト原料物質は、コバルト金属の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、または酸化物などであることができ、具体的には、CoSO4、Co(OCOCH3)2・4H2O、Co(NO3)2・6H2O、CoSO4・7H2Oまたはこれらの組み合わせであることができるが、これに限定されるものではない。
【0064】
一方、前記コバルト金属溶液は、必要に応じて、M1含有原料物質をさらに含むことができる。ここで、前記M1は、Al、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、F、PおよびSからなる群から選択される1種以上であり、M1含有原料物質は、M1金属の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、または酸化物などであることができる。
【0065】
一方、前記アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物は、上述のとおりである。
【0066】
前記(I)、(II)または(III)の方法により、ニッケル、コバルトおよびマンガンのうち少なくとも2種の金属元素が互いに異なる領域に沈殿された多層構造の前駆体を製造することができる。前駆体粒子が所望の粒径まで成長すると、反応を終了し、反応溶液から正極活物質用前駆体を分離した後、洗浄および乾燥させて正極活物質用前駆体を取得する。
【0067】
(2)リチウム遷移金属酸化物の製造ステップ
次に、前記のような方法により製造された正極活物質用前駆体をリチウム原料物質と混合した後、焼成して、リチウム遷移金属酸化物を製造する。
【0068】
前記リチウム原料物質としては、例えば、リチウム含有炭酸塩(例えば、炭酸リチウムなど)、水和物(例えば、水酸化リチウム水和物(LiOH・H2O)など)、水酸化物(例えば、水酸化リチウムなど)、硝酸塩(例えば、硝酸リチウム(LiNO3)など)、塩化物(例えば、塩化リチウム(LiCl)など)などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。
【0069】
一方、前記正極活物質用前駆体とリチウム原料物質の混合は、固相混合で行われることができ、前記正極活物質用前駆体とリチウム原料物質の混合比は、最終的に製造される正極活物質での各成分の原子分率を満たす範囲として決定されることができる。例えば、前記正極活物質用前駆体とリチウム原料物質は、遷移金属:Liのモル比が1:0.8~1:1.2、好ましくは1:0.85~1:1.15、より好ましくは1:0.9~1:1.1になるようにする量で混合することができる。前記前駆体およびリチウム原料物質が前記範囲で混合される場合、優れた容量特性を示す正極活物質を製造することができる。
【0070】
また、必要に応じて、前記焼成時に、ドーピング元素M1含有物質をさらに混合することができる。前記ドーピング元素M1は、例えば、Al、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、F、PおよびSからなる群から選択される1種以上であることができ、前記ドーピング元素M1含有原料物質は、ドーピング元素M1を含む酢酸塩、硫酸塩、硫化物、水酸化物、酸化物またはオキシ水酸化物からなる群から選択される少なくとも一つ以上であることができる。
【0071】
前記焼成は、600℃~1000℃、好ましくは700~900℃で行われることができ、焼成時間は、5~30時間、好ましくは8~15時間であることができるが、これに限定されるものではない。
【0072】
正極活物質
次に、本発明による正極活物質について説明する。
【0073】
本発明による正極活物質は、粒子の表面での(003)d-スペーシング(d-spacing)が、粒子の内部での(003)d-スペーシング(d-spacing)より大きいリチウム遷移金属酸化物粒子を含む。ここで、前記粒子の内部は、正極活物質粒子の表面から500nm以上の距離にある領域を意味し、前記粒子の表面は、正極活物質粒子の表面から500nm以内の距離にある領域を意味する。
【0074】
前記リチウム遷移金属酸化物粒子は、例えば、下記化学式1で表される組成を有することができる。
【0075】
[化学式1]
Lia[NixCoyMnzM1
w]O2
【0076】
前記M1は、Al、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、F、PおよびSからなる群から選択される1種以上であり、好ましくはAl、Zr、B、およびWからなる群から選択される1種以上であることができる。前記M1元素がさらに含まれる場合、正極活物質の容量特性、寿命特性などを改善する効果を得ることができる。
【0077】
前記aは、リチウム遷移金属酸化物内のリチウムのモル比を示し、0.8≦a≦1.2、0.85≦a≦1.15、または0.9≦a≦1.1であることができる。リチウム遷移金属酸化物内のリチウムのモル比が前記範囲を満たす時に、層状結晶構造がよく発達し、電気化学的特性に優れる正極活物質を得ることができる。
【0078】
前記xは、リチウム遷移金属酸化物内のリチウム以外の金属成分のうちニッケルのモル比を示し、0.6≦x<1、0.8≦x<1または0.85≦x<1であることができる。ニッケルのモル比が前記範囲を満たす時に、高容量特性を実現することができる。
【0079】
前記yは、リチウム遷移金属酸化物内のリチウム以外の金属成分のうちコバルトのモル比を示し、0<y<0.4、0<y<0.2または0<y<0.15であることができる。
【0080】
前記zは、リチウム遷移金属酸化物内のリチウム以外の金属成分のうちマンガンのモル比を示し、0<z<0.4、0<z<0.2または0<z<0.15であることができる。
【0081】
前記wは、リチウム遷移金属酸化物内のリチウム以外の金属成分のうちM1元素のモル比を示し、0≦w≦0.1、0≦w≦0.05または0≦w≦0.02であることができる。
【0082】
前記リチウム遷移金属酸化物は、粒子の表面での(003)d-スペーシング(面間の距離)が、粒子の内部での(003)d-スペーシング(面間の距離)より大きい。粒子の表面で(003)面間の距離が増加すると、Li層の厚さが増加し、これにより、リチウム移動性が向上する。
【0083】
一方、前記リチウム遷移金属酸化物粒子の表面での(003)d-スペーシング(d-spacing)と粒子の内部での(003)d-スペーシング(d-spacing)との差が0.005nm以上、好ましくは0.005nm~0.02nm、より好ましくは0.005nm~0.015nmであることができる。粒子の表面と粒子の内部での(003)d-スペーシングの差が前記範囲を満たす時に、優れた容量特性およびハイレート特性の改善効果を奏する。
【0084】
具体的には、前記リチウム遷移金属酸化物粒子の表面での(003)d-スペーシング(d-spacing)は、0.46nm~0.50nm、好ましくは0.465nm~0.50nm、より好ましくは0.465nm~0.490nmであることができる。
【0085】
また、前記リチウム遷移金属酸化物粒子の内部での(003)d-スペーシング(d-spacing)は、0.45nm~0.50nm、好ましくは0.45nm~0.49nm、より好ましくは0.46nm~0.485nmであることができる。
【0086】
正極
次に、本発明による正極について説明する。
【0087】
本発明による正極は、上述の本発明の正極活物質を含む。具体的には、前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体上に形成された正極活物質層とを含み、前記正極活物質層は、本発明による正極活物質を含む。
【0088】
正極活物質については上述したため、具体的な説明を省略し、以下、残りの構成についてのみ具体的に説明する。
【0089】
前記正極集電体は、伝導性が高い金属を含むことができ、正極活物質層が容易に接着し、この際、電池の電圧範囲で反応性がないものであれば、特に制限されない。前記正極集電体は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したものなどが使用されることができる。また、前記正極集電体は、通常、3~500μmの厚さを有することができ、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用されることができる。
【0090】
前記正極活物質層は、前記正極活物質とともに、必要に応じて、選択的に導電材およびバインダーを含むことができる。
【0091】
ここで、前記正極活物質は、正極活物質層の全重量に対して80~99重量%、より具体的には85~98.5重量%の含量で含まれることができる。前記の含量範囲で含まれる時に、優れた容量特性を示すことができる。
【0092】
前記導電材は、電極に導電性を与えるために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;カーボンナノチューブなどの導電性チューブ;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記導電材は、正極活物質層の全重量に対して0.1~15重量%含まれることができる。
【0093】
前記バインダーは、正極活物質粒子間の付着および正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ポリアクリル酸(poly acrylic acid)、およびこれらの水素をLi、Na、またはCaで置換した高分子、またはこれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記バインダーは、正極活物質層の全重量に対して0.1~15重量%含まれることができる。
【0094】
前記正極は、上記の正極活物質を用いる以外は、通常の正極の製造方法により製造されることができる。具体的には、上記の正極活物質、および、必要に応じて、選択的にバインダー、導電材および分散剤を溶媒の中に溶解または分散させて製造した正極合材を正極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延することで製造するか、または前記正極合材を別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネートすることで製造することができる。
【0095】
前記溶媒としては、当該技術分野において一般的に使用される溶媒であることができ、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(dimethyl formamide、DMF)、アセトン(acetone)または水などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造歩留まりを考慮して、前記正極活物質、導電材、バインダーおよび分散剤を溶解または分散させ、以降、正極の製造のための塗布時に、優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0096】
リチウム二次電池
次に、本発明によるリチウム二次電池について説明する。
【0097】
前記リチウム二次電池は、具体的には、正極と、前記正極と対向して位置する負極と、前記正極と負極との間に介在されるセパレータと、電解質とを含み、前記正極は、上述のとおりであるため、具体的な説明を省略し、以下、残りの構成についてのみ具体的に説明する。
【0098】
また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、セパレータの電極組立体を収納する電池容器、および前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含むことができる。
【0099】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に位置する負極活物質層とを含む。
【0100】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、高い導電性を有するものであれば、特に制限されず、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に、炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用されることができる。また、前記負極集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有することができ、正極集電体と同様、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して、負極活物質の結合力を強化することもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用されることができる。
【0101】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに、選択的に、バインダーおよび導電材を含む。
【0102】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物が使用されることができる。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質の材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金など、リチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO2、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のように、リチウムをドープおよび脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。また、前記負極活物質として、金属リチウム薄膜が使用されることもできる。前記負極活物質は、負極活物質層の全重量に対して80重量%~99重量%含まれることができる。
【0103】
前記バインダーは、導電材、活物質および集電体の間の結合を容易にする成分であり、通常、負極活物質層の全重量に対して0.1重量%~10重量%添加されることができる。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの様々な共重合体などが挙げられる。
【0104】
前記導電材は、負極活物質の導電性をより向上させるための成分であり、負極活物質層の全重量に対して、10重量%以下、具体的には5重量%以下で添加されることができる。このような導電材は、当該電池において化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば、特に制限されず、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用されることができる。
【0105】
前記負極活物質層は、負極集電体上に、負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒の中に溶解または分散させて製造した負極合材を塗布し乾燥することで製造されるか、または前記負極合材を別の支持体上にキャストした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネートすることで製造されることができる。
【0106】
一方、前記リチウム二次電池において、セパレータは、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、リチウム二次電池においてセパレータとして使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に、電解質のイオン移動に対して低抵抗であるとともに、電解液の含湿能力に優れるものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用されることができる。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されてもよい。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されてもよく、選択的に、単層または多層構造として使用されることができる。
【0107】
また、本発明で使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0108】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0109】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関わるイオンが移動することができる媒質の役割を果たすものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されることができる。中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の直鎖状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。
【0110】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において使用されるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記リチウム塩のアニオンとしては、F-、Cl-、Br-、I-、NO3
-、N(CN)2
-、BF4
-、CF3CF2SO3
-、(CF3SO2)2N-、(FSO2)2N-、CF3CF2(CF3)2CO-、(CF3SO2)2CH-、(SF5)3C-、(CF3SO2)3C-、CF3(CF2)7SO3
-、CF3CO2
-、CH3CO2
-、SCN-および(CF3CF2SO2)2N-からなる群から選択される少なくとも一つ以上であることができ、前記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiI、またはLiB(C2O4)2などが使用されることができる。前記リチウム塩の濃度は、0.1~4.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度および粘度を有することから優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0111】
前記電解質には、前記電解質の構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池の容量減少の抑制、電池の放電容量の向上などのために、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれることもできる。この際、前記添加剤は、電解質の全重量に対して0.1~5重量%含まれることができる。
【0112】
前記のように、本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性および寿命特性を安定的に示すことから、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラなどのポータブル機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などにおいて有用である。
【0113】
したがって、本発明の他の一実現例によると、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよびこれを含む電池パックが提供される。
【0114】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのいずれか一つ以上の中大型デバイスの電源として用いられることができる。
【0115】
本発明のリチウム二次電池の外形は、特に制限されないが、缶を使用した円筒型、角型、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などであることができる。
【0116】
本発明によるリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用されるだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールにおいて単位電池としても好ましく使用されることができる。
【0117】
前記中大型デバイスの例としては、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグ-インハイブリッド電気自動車および電力貯蔵用システムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
以下、具体的な実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0119】
実施例1
NiSO4とCoSO4をNi:Coのモル比が95:5になるようにする量で蒸留水に投入して濃度2.4Mの第1金属溶液を準備した。MnSO4を蒸留水に投入して濃度2.4Mの第2金属溶液を別に準備した。また、8.0M濃度のNaOH水溶液と5.1M濃度のNH4OH水溶液を準備した。
【0120】
反応器に、脱イオン水13L、前記NaOH水溶液0.013L、前記NH4OH水溶液0.64Lを投入した後、窒素ガスを反応器にパージして水中の溶存酸素を除去し、反応器内を非酸化雰囲気にした。
【0121】
その後、前記反応器に、前記第1金属溶液を3.8L/hrの速度で、前記NaOH水溶液を2.3L/hr、NH4OH水溶液を0.54L/hrの速度でそれぞれ投入しながらpH11.9の下で10分間沈殿反応させて、ニッケル-コバルト水酸化物の粒子核を形成した。次に、撹拌速度を順に下げ、pHセンサ連動方式でNaOHを投入して、反応溶液のpHをpH11.2~11.6に調節した後、前記第1金属溶液を3.8L/hrの速度で、前記NaOH水溶液を2.3L/hr、NH4OH水溶液を0.54L/hrの速度でそれぞれ投入しながら48時間共沈反応させて、ニッケル-コバルト水酸化物粒子を製造した。
【0122】
次に、第1金属溶液の投入を中断し、pHセンサ連動方式でNaOHを投入して、反応溶液のpHを10.7~11.2に調節した後、前記第2金属溶液を3.8L/hrの速度で、前記NaOH水溶液を2.3L/hr、NH4OH水溶液を0.54L/hrの速度でそれぞれ投入しながら撹拌して4時間沈殿反応させて、ニッケル-コバルト水酸化物粒子の表面にマンガン水酸化物が沈殿した正極活物質用前駆体を製造した。前記正極活物質用前駆体粒子全体のNi:Co:Mnのモル比は、88:5:7であった。
【0123】
前記のように製造された正極活物質用前駆体、LiOH・H2OおよびAl(OH)3をNi+Co+Mn:Li:Alのモル比が0.98:1.05:0.02になるように混合し、765℃で13時間焼成して、正極活物質を製造した。製造された正極活物質のNi:Co:Mn:Alのモル比は、86:5:7:2であった。
【0124】
実施例2
NiSO4を蒸留水に投入して濃度2.4Mの第1金属溶液を準備した。CoSO4を蒸留水に投入して濃度2.4Mの第2金属溶液を準備した。MnSO4を蒸留水に投入して濃度2.4Mの第3金属溶液を準備した。
【0125】
反応器に脱イオン水を入れた後、窒素ガスを反応器にパージして水中の溶存酸素を除去し、反応器内を非酸化雰囲気にした。前記反応器に8.0MのNaOH溶液と5.1MのNH4OH水溶液を投入してpH12の反応母液を準備した。
【0126】
その後、反応器に前記第1金属溶液を3.8L/hrの速度で、NaOH水溶液を2.3L/hr、NH4OH水溶液を0.54L/hrの速度でそれぞれ投入し、沈殿反応を42.2時間行った。ここで、反応溶液のpHは11.6を維持した。
【0127】
次に、第1金属溶液の投入を中断し、pHセンサ連動方式でNaOHを投入して反応溶液のpHを11.4に調節した後、第2金属溶液を3.8L/hr、NaOH水溶液を2.3L/hr、NH4OH水溶液を0.54L/hrの速度でそれぞれ投入し、沈殿反応を2.4時間行った。
【0128】
その後、第2金属溶液の投入を中断し、pHセンサ連動方式でNaOHを投入して反応溶液のpHを10.8~11.0の範囲に調節した後、第3金属溶液を3.8L/hrの速度で、NaOH水溶液を2.3L/hr、NH4OH水溶液を0.54L/hrの速度でそれぞれ投入して沈殿反応を3.4時間行って、正極活物質用前駆体を製造した。前記正極活物質用前駆体粒子全体のNi:Co:Mnのモル比は88:5:7であった。
【0129】
前記のように製造された正極活物質用前駆体、LiOH・H2OおよびAl(OH)3をNi+Co+Mn:Li:Alのモル比が0.98:1.05:0.02になるように混合し、765℃で13時間焼成して正極活物質を製造した。製造された正極活物質のNi:Co:Mn:Alのモル比は、86:5:7:2であった。
【0130】
実施例3
NiSO4を蒸留水に投入して濃度2.4Mの第1金属溶液を準備した。MnSO4を蒸留水に投入して濃度2.4Mの第2金属溶液を準備した。CoSO4を蒸留水に投入して濃度2.4Mの第3金属溶液を準備した。
【0131】
反応器に脱イオン水を入れた後、窒素ガスを反応器にパージして水中の溶存酸素を除去し、反応器内を非酸化雰囲気にした。前記反応器に8.0MのNaOH溶液と5.1MのNH4OH水溶液を投入し、pH12の反応母液を準備した。
【0132】
その後、反応器に、前記第1金属溶液を3.8L/hrの速度で、NaOH水溶液を2.3L/hr、NH4OH水溶液を0.54L/hrの速度でそれぞれ投入し、沈殿反応を42.2時間行った。ここで、反応溶液のpHは11.6を維持した。
【0133】
次に、第1金属溶液の投入を中断し、pHセンサ連動方式でNaOHを投入して反応溶液のpHを10.8~11.0に調節した後、第2金属溶液を3.8L/hr、NaOH水溶液を2.3L/hr、NH4OH水溶液を0.54L/hrの速度でそれぞれ投入し、沈殿反応を3.4時間行った。
【0134】
その後、第2金属溶液の投入を中断し、pHセンサ連動方式でNaOHを投入して反応溶液のpHを11.4に調節した後、第3金属溶液を3.8L/hrの速度で、NaOH水溶液を2.3L/hr、NH4OH水溶液を0.54L/hrの速度でそれぞれ投入して2.4時間沈殿反応を行って、正極活物質用前駆体を製造した。前記正極活物質用前駆体粒子全体のNi:Co:Mnのモル比は、88:5:7であった。
【0135】
前記のように製造された正極活物質用前駆体、LiOH・H2OおよびAl(OH)3を、Ni+Co+Mn:Li:Alのモル比が0.98:1.05:0.02になるように混合し、765℃で13時間焼成して正極活物質を製造した。製造された正極活物質のNi:Co:Mn:Alのモル比は、86:5:7:2であった。
【0136】
比較例1
NiSO4、CoSO4、およびMnSO4をニッケル:コバルト:マンガンウィモル比が88:5:7になるようにする量で蒸留水の中で混合し、濃度2.4Mの金属溶液を準備した。
【0137】
反応器に脱イオン水を入れた後、窒素ガスを反応器にパージして水中の溶存酸素を除去し、反応器内を非酸化雰囲気にした。前記反応器に8.0MのNaOH溶液と5.1MのNH4OH水溶液を投入して反応母液を準備した。
【0138】
その後、反応器に、前記金属溶液を3.8L/hrの速度で、NaOH水溶液を2.3L/hr、NH4OH水溶液を0.54L/hrの速度でそれぞれ投入して、反応溶液のpHを11.2~11.9に維持しながら共沈反応を48時間行って正極活物質用前駆体を製造した。前記正極活物質用前駆体粒子全体のNi:Co:Mnのモル比は88:5:7であった。
【0139】
前記のように製造された正極活物質用前駆体、LiOH・H2OおよびAl(OH)3をNi+Co+Mn:Li:Alのモル比が0.98:1.05:0.02になるように混合し、765℃で13時間焼成して正極活物質を製造した。製造された正極活物質のNi:Co:Mn:Alのモル比は、86:5:7:2であった。
【0140】
実験例1
実施例1~3および比較例1で製造された正極活物質をカーボンまたはPtコーティングした後、FIB(Focused Ion Beam)装置(Helios NanoLab 450、FEI)でイオンビームを照射して、粒子の断面を確認することができる薄膜試料(厚さ約100nm)を製造した。前記薄膜試料を透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)グリッド(Grid)に載せ、HR-TEM(High-resolution transmission Electron microscopy)装置を用いて、前記薄膜試料のHR-TEMイメージを得て、Gatanソフトウェア(Digital micrograph)を用いて、HR-TEMイメージを回折パターンに変化させた。その後、前記回折パターンで5~10個の点間距離を測定した後、これらの点間距離の平均値を求め、その逆数を(003)d-スペーシングとして計算した。測定結果は、下記[表1]に記載した。
【0141】
【0142】
前記表1に示されているように、実施例1~3によって製造された正極活物質の場合、粒子の表面の(003)d-spacingが、粒子の内部の(003)d-spacingより0.005nm以上大きく示されているのに対し、従来の方法により製造された比較例1の正極活物質は、粒子の表面と内部の(003)d-spacingが同等な水準であった。
【0143】
実験例2
実施例1~3および比較例1によって製造されたそれぞれの正極活物質、導電材(カーボンブラック)およびバインダー(PVdF)を97.5:1:1.5の重量比でN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒の中で混合して正極スラリーを製造した。前記正極スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布してから、130℃で乾燥した後、圧延して、それぞれの正極を製造した。
【0144】
前記のように製造されたそれぞれの正極と負極との間にセパレータを介在して電極組立体を製造してから、これを電池ケース内部に位置させた後、電池ケースの内部に電解液を注入し、2032規格のコインセル型リチウム二次電池を製造した。
【0145】
ここで、負極としては、リチウムメタルディスク(Li metal disk)を使用し、電解液としては、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート:ジエチルカーボネートを3:3:4の体積比で混合した有機溶媒に1MのLiPF6を溶解させた電解液を使用した。
【0146】
前記のように製造されたリチウム二次電池それぞれに対して、25℃で0.1Cの定電流で4.25VまでCC/CVモード充電(CV0.05C)を実施した後、3VになるまでCCモード放電を実施して、初期充電容量および放電容量を測定した。測定結果は、下記表2に示した。
【0147】
【0148】
前記[表2]により、粒子の表面の(003)d-spacingが、粒子の内部の(003)d-spacingより大きい実施例1~3の正極活物質を適用したリチウム二次電池が、比較例1の正極活物質を適用したリチウム二次電池に比べて、優れた容量特性を有することを確認することができる。
【0149】
実験例3
実験例2で製造されたそれぞれのリチウム二次電池を放電電流0.33C、0.5C、2Cで放電させた後、放電容量を測定した。測定結果は、表3に示した。
【0150】
【0151】
前記[表3]に示されているように、粒子の表面の(003)d-spacingが、粒子の内部の(003)d-spacingより大きい実施例1~3の正極活物質を適用したリチウム二次電池が、比較例1の正極活物質を適用したリチウム二次電池に比べて、ハイレート放電時に、より高い容量を維持することを確認することができる。
【国際調査報告】