(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】高スループットのマルチ電子ビームシステム
(51)【国際特許分類】
H01J 37/09 20060101AFI20240416BHJP
H01J 37/12 20060101ALI20240416BHJP
H01J 37/14 20060101ALI20240416BHJP
H01J 37/073 20060101ALI20240416BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H01J37/09 A
H01J37/12
H01J37/14
H01J37/073
H01J37/28 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554311
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-09-06
(86)【国際出願番号】 US2022026852
(87)【国際公開番号】W WO2022240595
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジアン シンロン
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101DD07
5C101EE03
5C101EE08
5C101EE14
5C101EE17
5C101EE25
5C101EE68
5C101EE69
5C101EE78
5C101FF02
(57)【要約】
複数の電子ビームレットが、1本の電子ビームから分割される。電子ビームは、加速管と、ビーム制限アパーチャと、電子ビーム源と加速管の間に配置されたアノードと、ビーム制限アパーチャの下流の集束レンズと、加速管の下流のマイクロアパーチャアレイとを通過する。マイクロアパーチャアレイは、電子ビームからビームレットを生成する。電子ビームは、発散照射ビームからテレセントリック照射ビームに集束させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを生成する電子ビーム源であって、チップ、抑制電極、および抽出電極を含む、電子ビーム源と、
前記電子ビームの経路内に配置された加速管と、
前記加速管内に配置されたビーム制限アパーチャと、
前記電子ビーム源と前記加速管の間の前記電子ビームの前記経路内に配置されたアノードと、
前記ビーム制限アパーチャから下流の前記電子ビームの前記経路内に配置された集束レンズと、
前記加速管から下流の前記電子ビームの前記経路内に配置されたマイクロアパーチャアレイであって、前記電子ビームから複数のビームレットを生成するように構成されたマイクロアパーチャアレイと
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記集束レンズは静電集束レンズであることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、前記集束レンズは、前記アノードから、前記加速管の反対側の前記電子ビームの前記経路内に配置されていることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項2に記載のシステムであって、前記マイクロアパーチャアレイは、前記加速管から、前記集束レンズの反対側の前記電子ビームの前記経路内に配置されていることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、前記集束レンズは磁気集束レンズであることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムであって、前記集束レンズは前記加速管のまわりに配置されていることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムであって、前記集束レンズは、前記アノードから、前記加速管の反対側に配置されていることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項6に記載のシステムであって、前記マイクロアパーチャアレイは前記加速管上に配置されていることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項6に記載のシステムであって、前記加速管は接地されていることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムであって、前記チップは熱電界エミッタであることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムであって、前記マイクロアパーチャアレイからビームレットを受け取る、マイクロレンズアレイをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムであって、前記マイクロアパーチャアレイの下流のビームレットの経路内に、転写レンズと対物レンズとをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムであって、前記マイクロアパーチャアレイは100個超のマイクロアパーチャを含むことを特徴とするシステム。
【請求項14】
電子ビーム源から加速管へ電子ビームを誘導するステップと、
前記加速管内のビーム制限アパーチャを通して前記電子ビームを誘導するステップと、
前記電子ビームが前記加速管に入った後に前記電子ビームを集束させるステップと、
前記加速管の下流の前記電子ビームの経路内に配置されたマイクロアパーチャアレイを通して前記電子ビームを誘導するステップであって、それによって前記電子ビームから複数のビームレットを形成する、前記ステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記加速管は接地されていることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であって、前記加速管は、0V超の加速電圧を有することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法であって、前記加速管は、0V未満の加速電圧を有することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項14に記載の方法であって、前記ビーム制限アパーチャと前記マイクロアパーチャアレイの間の前記ビーム電流は、少なくとも10μAであることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項14に記載の方法であって、前記電子ビームは、発散照射ビームからテレセントリック照射ビームに集束されることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項14に記載の方法であって、前記マイクロアパーチャアレイを使用して、100本超のビームレットが生成されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子ビームシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造業界の進化により、歩留まり管理、特に計測システムおよび検査システムに対する要求が高まっている。限界寸法(critical dimensions)は縮小し続けているが、なお業界では、高収率で高価値の生産を達成するための時間を短縮する必要がある。歩留まりの問題を検出してから修正するまでの合計時間を最小限に抑えることで、半導体製造業者の投資収益率が決まる。
【0003】
ロジックデバイスおよびメモリデバイスなどの半導体デバイスの製作は、通常は、半導体デバイスの様々な特徴および複数のレベルを形成するために多数の製作プロセスを使用して半導体ウェハを処理することを含む。例えば、リソグラフィーは、レチクル(reticle)から半導体ウェハ上に配設されたフォトレジストにパターンを転写することを含む、半導体製作プロセスである。半導体製作プロセスのさらなる例には、それに限定はされないが、化学機械研磨(CMP)、エッチング、堆積、およびイオン注入が挙げられる。1枚の半導体ウェハ上に製作された複数の半導体デバイスの配列は、個々の半導体デバイスに分離することができる。
【0004】
ウェハ上の欠陥を検出して、製造工程の歩留まり向上と、ひいては利益向上とを促進するために、検査工程は半導体製造中の様々なステップで使用される。検査は、集積回路(IC)などの半導体デバイスを製作する上で、常に重要な部分である。しかし、半導体デバイスの寸法が減少するにつれて、より小さな欠陥がデバイスを故障させる可能性があるため、許容可能な半導体デバイスの製造の成功に対して、検査がさらに重要になる。例えば、半導体デバイスの寸法が小さくなるにつれて、比較的小さな欠陥でさえも半導体デバイスに不要な収差を引き起こす可能性があるため、より小さいサイズの欠陥の検出が必要になっている。
【0005】
しかし、設計ルールが縮小するにつれて、半導体製造プロセスは、プロセスの性能能力の限界に近づいて動作している可能性がある。さらに、設計ルールが縮小するにつれて、より小さな欠陥がデバイスの電気的パラメータに影響を与える可能性があり、このことにより、より敏感な検査が要求される。設計ルールが縮小するにつれて、検査によって検出される潜在的に歩留まりに関係する欠陥の母集団は劇的に増大し、検査によって検出される有害な欠陥の母集団も劇的に増大する。したがって、ウェハ上でより多くの欠陥が検出される可能性があり、すべての欠陥を排除するためにプロセスを修正することは困難で費用がかかる可能性がある。どの欠陥が実際にデバイスの電気的パラメータと歩留まりとに影響を与えるかを決定することで、プロセス制御方法がそれらの欠陥に焦点を当てながら、他の欠陥を概して無視することが可能になる。さらに、小規模な設計ルールでは、プロセスに起因する故障は、場合によっては系統的になる傾向がある。つまり、プロセスに起因する故障は、設計内で何度も繰り返されることが多い、所定の設計パターンにおいて故障する傾向がある。空間的に系統的で電気に関係する欠陥を排除することは、歩留まりに影響を与える可能性がある。
【0006】
集束電子ビームシステムは、通常、集積回路の製作に使用されるシリコンウェハなどの物品の微細構造を作成または試験するために使用される。電子ビームは、電子銃内のエミッタから放出される電子で形成され、微細構造を調べるためにウェハと相互作用するときに、微細なプローブとして機能する。
【0007】
熱電界放出(TFE:thermal field emission)源または冷電界放出(CFE:cold field emission)源などの電子源は、エミッタチップから電子を放出する。電子は、ガンレンズ(GL:gun lens)によって大きなサイズの電子ビームに集束される。高電流電子ビームは、ガンレンズによってテレセントリックビーム(telecentric beam)にコリメートされ、マイクロアパーチャアレイ(μAA)を照射する。ガンレンズに続くビーム制限アパーチャ(BLA:beam-limiting aperture)は、アパーチャアレイを照射する際の合計ビーム電流を選択するために使用される。マイクロアパーチャアレイは、各単一のビームレットのビーム電流を選択するために使用される。マイクロアパーチャアレイの下流では、マイクロレンズアレイ(MLA)が各ビームレットを中間像平面(IIP:intermediate image plane)上に集束させる。マイクロレンズ(μL)は、磁気レンズまたは静電レンズとしてもよい。磁気マイクロレンズは、コイル励起または永久磁石によって駆動される、ある数の磁極片としてもよい。静電マイクロレンズは、静電アインツェルレンズ(electrostatic Einzel lens)、または静電加速/減速単電位レンズ(unipotential lens)としてもよい。
【0008】
図1における光学系は、中間像平面の上方の上部カラム光学系と中間像平面の下方の下部カラム光学系とに分けることができる。下部カラム光学系には、転写レンズ(TL)、対物レンズ(OL)、および転写レンズと対物レンズの間のビームクロスオーバ(xo)を含めてもよい。下部カラム光学系は投影光学系である。中間像平面において上部カラムによって形成されたビームレットは、転写レンズと対物レンズによって、ウェハ(WF)における各ビームレットの全てのビームぼやけが最小化される最適な倍率で、ウェハ上に投影される。ウェハの検査および検証のために、各一次ビームレットの衝撃によってウェハから放出された二次電子(SE)および/または後方散乱電子(BSE)は、光軸から分割され、ウィーンフィルタ(Wien filter)によって検出システム(Det)に向かって偏向されてもよい。
【0009】
ウェハ検査および検証用のマルチ電子ビーム装置のスループットは、
図1におけるビームレットの数によって制限される可能性がある。ビームレットの数が増えると、スループットを向上させることができる。しかしながら、ビームレットの数を増加させることは、
図1における上部カラムにおける光学系によって制限される。
【0010】
図2は、
図1における上部カラムの第1実施形態の構成を示す。ガンレンズは、組み合わせられた静電レンズおよび磁気レンズである。静電レンズは加速レンズであり、電子源とアノードとを含む。電子源は、電子放出チップ(electron emission tip)と、サプレッサ(Sup)、およびエキストラクタ(Ext)を含む。アノードは加速管と組み合わされ、加速管に加速電圧(V
a)を印加することができる。ビーム制限アパーチャは加速管の内側に設置されている。アノード、ビーム制限アパーチャ、および加速管は、同じ電位V
a上にある。V
aをゼロとして印加すると、アノード、ビーム制限アパーチャ、および加速管はすべて接地されているのと同等である。チップは接地に対してそれぞれ負の電位にバイアスされ、エキストラクタは、熱電界放出源に抽出電場を生成するために、チップよりも少なく負にバイアスされる。エキストラクタからアノードへの加速後、電子ビームエネルギーは(|V
tip|+V
a)である。磁気レンズを使用して、電子ビームをテレセントリックビームに集束させ、マイクロアパーチャアレイ上に照射する。磁気レンズは、極片(pole pieces)およびコイルを有する。極片およびコイルは、静電素子のための真空を汚染から保護するためにシーリング管により空気中で密封されている。
【0011】
図3は、
図2の実施形態の構造におけるマイクロアパーチャアレイを示す。
図4は、静電マイクロレンズアレイにおける導電プレートの1つを示す。
図3において、照射ビームは、ビーム制限アパーチャの直径を有する。マイクロアパーチャアレイのサイズは、各アパーチャに対して2aである。アパーチャ孔(2a)は、ピッチpで六角形分布している(hex-distributed)。
図4において、マイクロレンズアレイプレートの厚さはhであり、これは数十ミクロンであってもよい。マイクロレンズアレイは、複数のマイクロレンズ(μL)を含む。各マイクロレンズ孔のサイズは2Rであり、マイクロアパーチャアレイ内のマイクロアパーチャに整列してピッチPで配列されている。マイクロレンズアレイプレートは、同じ孔の数と分布でマイクロアパーチャアレイに整列されている。できるだけ回転対称に近づけるため、アパーチャプレートと導電プレートにおける孔の六角形分布は
図3および
図4に示すように構成されている。各アパーチャ孔のサイズは2aで、各プレートの孔のサイズは2Rである。aおよびRは数十ミクロン単位であり、Rはaより大きくなければならない。隣接孔(P)間の間隔(またはピッチ)は、数十から数百ミクロンの範囲としてもよい。
【0012】
図2のビーム制限アパーチャは、
図2に示すテレセントリック照射において、
図3の全てのアパーチャ孔を覆う大きなビームを選択するのに十分な大きさ(例えば、数百ミクロンから数ミリメートル)である。
【0013】
図2および
図4において静電マイクロレンズアレイにおける各マイクロレンズは、アインツェルレンズまたは加速(減速)単電位レンズであってもよい。
図4における3枚の導電プレートは、アインツェルマイクロレンズアレイを構成している。中央の導電プレートは、中間像平面上のビームレットの焦点を調整するために使用され、第1および第3の導電プレートは接地されている。
図4の2枚の導電プレートは、加速(減速)単電位レンズを構成してもよい。アパーチャ近くの1枚のプレートを接地してもよく、他のプレートに正の電圧を印加して加速レンズを形成するか、または負の電圧を印加して減速レンズを形成してもよい。導電プレート間の間隙は、数十ミクロンとしてもよい。
【0014】
単一のマルチ電子ビーム装置においてより多くの電子ビームレットを用いてスループットを増加させるために、コンピュータシミュレーションを用いて、
図2の実施形態の構造の光学的制限を分析した。
図5は、マルチ電子ビームスループット対ビームレット位置分布を示す。マルチ電子ビーム装置のスループットは、次式で与えられるビームレットの合計数MB
totで評価できる。
【数1】
ここで、M
xは
図5のx軸における全てのビームレットの数である。例えば、
図5の5つのリング内部では、x軸における全てのビームレットの数はM
x=11であり、合計ビームレットの数はMB
tot=91となる。10個のリング内部では、M
x=21およびMB
tot=331である。したがって、スループットはx軸におけるビームレットの数とともに増加する。
【0015】
ビームレットの合計数(例えば、MB
tot=331)およびビームレット間のピッチP(例えば、P=100μm)が与えられると、
図2におけるテレセントリック照射ビームのビーム制限アパーチャのサイズを決定することができる。それは2ミリメートルより大きく、照射ビームが全てのアパーチャ孔を覆うための一定のマージンを有する。
図2における大きな放出角αを有する大きなビーム制限アパーチャは、光学的問題を引き起こす。大きな放出角を横切る電子放出の均一性が第1の課題である。ガンレンズの球面収差は、大きな放出角αの3乗に正比例するため、別の問題となる。
【0016】
図2における実施形態の構造において、ガン球面収差(gun spherical aberration)がビームレットの分解能にどの程度影響するかを調べるために、モンテカルロシミュレーションによる計算モデルおよびソフトウェアが開発された。テレセントリック照射による分解能に対するガンの影響を強調するために、マイクロレンズアレイの各マイクロレンズは収差なしで理想的であると仮定されている。
図6は、コンピュータシミュレーションの結果を示し、中間像平面におけるビームレットのスポットサイズ対x軸におけるビームレットの位置を与えている。シミュレーションには、100ミクロンのピッチを持つ合計331個のビームレットが含まれている。
【0017】
図6のシミュレーション結果は、合計ビームレット数(MB
tot)の増加に伴ってビームレット分解能が急激に低下することを示唆している。したがって、ビームレット分解能は、スループットが高くなると低下する。(x,y)空間を横切るビームレット分解能の均質性要件から、
図6は、
図5の第3のリング内部のビームレット、または合計37のビームレットのみ(すなわち、M
x=7、およびMB
tot=37)を使用することを提案し得る。多くて、
図5における第5のリング内部の合計91個のビームレット(すなわち、M
x=11、およびMB
tot=91)を使用する場合、外側リングのビームレットの分解能は20%以上低下し、電子ビームウェハの検査および検証には受け入れられない。
【0018】
ウェハの検査および検証には、シングル電子ビームが使用されており、これは、ナノメートル限界寸法(CD)レベルにおいて、完成または未完成の集積回路コンポーネントを検査するためのアプローチである。シングル電子ビーム装置のスループットはかなり低いため、スループットを上げるためにマルチ電子ビームシステムが開発された。マルチ電子ビームシステムのスループットは、サブビームの数、または合計電子ビームレットの数に基づくことができる。ビームレット数が大きいほど、スループットは高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0155133号
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/0258714号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、半径方向のビームレットの数を増やすことは、マルチ電子ビームレットが1つの電子源から分割される電子光学カラムによって、制限される可能性がある。ビームレット数を増やすことは、電子源の放出角を大きくすることを意味し、このことは、ガンレンズの球面収差は放出角の3乗に比例するため、ガンレンズの球面収差の増加および外側リングのビームレット分解能の低下を引き起こす。したがって、改良型の電子ビームシステムが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
第1の実施形態において、システムが提供される。このシステムは、電子ビームを生成する電子ビーム源を含む。電子ビーム源は、チップと、抑制電極(suppression electrode)と、抽出電極(extraction electrode)とを含む。電子ビームの経路内に、加速管が配置される。加速管内には、ビーム制限アパーチャが配置される。電子ビーム源と加速管の間の電子ビームの経路内に、アノードが配置される。ビーム制限アパーチャから下流の電子ビームの経路内に、集束レンズが配置される。加速管から下流の電子ビームの経路内に、マイクロアパーチャアレイが配置される。マイクロアパーチャアレイは、電子ビームから複数のビームレットを生成するように構成されている。
【0022】
集束レンズは、静電集束レンズとすることができる。一例では、集束レンズは、アノードから加速管の反対側の電子ビームの経路内に配置され、マイクロアパーチャアレイは、加速管から収束レンズの反対側の電子ビームの経路内に配置される。
【0023】
集束レンズは、磁気集束レンズとすることができる。一例において、集束レンズは、加速管のまわりに配置されるとともに、アノードから加速管の反対側に配置される。マイクロアパーチャアレイは、加速管上に配置することができる。加速管は接地させることができる。
【0024】
チップは、熱電界エミッタ(thermal field emitter)とすることができる。
【0025】
システムには、マイクロアパーチャアレイからビームレットを受け取るマイクロレンズアレイをさらに含めることができる。
【0026】
システムには、マイクロアパーチャアレイの下流のビームレットの経路内に、転写レンズおよび対物レンズをさらに含めることができる。
【0027】
マイクロアパーチャアレイには、100個超のマイクロアパーチャを含めることができる。
【0028】
第2の実施形態において、方法が提供される。この方法は、電子ビーム源から加速管まで電子ビームを誘導するステップを含む。電子ビームは、加速管内のビーム制限アパーチャを通って誘導される。電子ビームは、電子ビームが加速管に入った後に、集束される。電子ビームは、加速管から下流の電子ビームの経路内に配置されたマイクロアパーチャアレイを通って誘導され、それによって、電子ビームから複数のビームレットを形成する。
【0029】
加速管は、接地させるか、0V超の加速電圧を持たせるか、または0Vより小さい加速電圧を持たせることができる。
【0030】
ビーム制限アパーチャとマイクロアパーチャアレイの間のビーム電流は、少なくとも10μAとすることができる。
【0031】
電子ビームは、発散照射ビームから、テレセントリック照射ビームに集束させることができる。
【0032】
100本超のビームレットを、マイクロアパーチャアレイを使用して生成することができる。
【0033】
本開示の性質および目的をより完全に理解するために、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照すべきであり、図面は以下の図を含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】マルチ電子ビームシステムの従来の設計を示す図である。
【
図2】
図1のマルチ電子ビームシステムにおける、上部カラムの実施形態の図である。
【
図3】
図2のマイクロアパーチャアレイの実施形態の図である。
【
図4】静電マイクロレンズアレイとして使用される導電プレートの図である。
【
図5】マルチ電子ビームスループット対ビームレット位置分布を示す図である。
【
図6】
図2の実施形態のテレセントリック照射における、ビームレットスポットサイズ対x軸におけるビームレット位置のシミュレーション結果を示す図である。
【
図7】本開示による電子ビームシステムの第1の実施形態の図である。
【
図8】
図7の実施形態に対して改善された結果を示す、ビームレット分解能対ビームレット位置の比較を示す図である。
【
図9】(a)内側照射電子ビームと、(b)外側照射電子ビームの直接レイトレーシングを示す図である。
【
図10】各電子ビームレットに対するシングルビーム電流(SBC)の選択を示す図である。
【
図11】本開示による電子ビームシステムの第2の実施形態の図である。
【
図12】本開示による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
特許請求される主題は特定の実施形態の観点から説明されるが、本明細書に記載される利益および特徴の全てを提供しない実施形態を含む、他の実施形態も、本開示の範囲内にある。様々な構造的、論理的、プロセスステップ、および電子的な変更を、開示の範囲から逸脱することなく行うことができる。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することによってのみ定義される。
【0036】
本明細書で開示される実施形態では、より小さな放出角を有する発散照射ビームが、コリメートレンズによってテレセントリック照射ビームに集束される。これによって、ガンレンズの球面収差が低減されるだけでなく、マイクロレンズアレイの軸外ぼやけ(off-axis blurs)や歪み(distortion)が取り除かれ、スループットを5倍以上に向上させることができる。ガンレンズからの球面収差は、マイクロレンズアレイ内の各マイクロレンズは収差無しで理想的であると仮定されるため、スループットを増加させるとき(または合計ビームレットの数を増やすとき)にビームレット分解能の低下の原因となる可能性がある。ガンレンズからの球面収差は、ビーム制限アパーチャサイズ(または放出角α)の3乗に比例する。
【0037】
ガンレンズからの球面収差を低減するために、高い輝度(または角度強度(angular intensity))の電子源を使用して、放出角αが低減される。例えば、放出角αを2分の1に低減し、同時に同じビーム電流で角度強度を4倍にすると、球面収差は8分の1に減少する。この場合、放出角は約150mradから200mradとすることができ、角度強度は約0.8mA/srから1.2mA/srとすることができる。
図6における球面収差の8分の1への低減は、合計331のビームレット(すなわち、M
x=21、およびMB
tot=331)に対して十分であり、300から500までの数のビームレットが使用され得るが、スループットを3.6倍から9倍(例えば、5倍以上)に増加させる。
【0038】
図8は、
図2における合計61のビームレット(M
x=9、およびMB
tot=61)を有する直接テレセントリック照射法による第4のリングにおける分解能が、
図7における合計331のビームレット(M
x=21、およびMB
tot=331)を有するコリメート照射法による第10のリングにおける分解能に近づくことを実証する。これは、後者のスループットが前者のスループットよりも5倍高くなったことを意味する。
図2におけるスループットは、半導体製造における最近の用途には許容できない場合がある。
【0039】
図7の電子ビームシステム100において、電子ビーム源101は、電子ビーム102を生成する。電子ビーム102は、コリメートされたテレセントリックビームである。電子ビーム源101には、チップ103、抑制電極104、および抽出電極105を含めることができる。チップ103は、熱電界エミッタまたは別のタイプの電子ビーム源とすることができる。
【0040】
電子ビーム源101のチップのサイズ(半径)は、高い角度強度(例えば、1mA/sr)に対して、およそ1μmとしてもよい。チップは、30keVの有効ビームエネルギーに対して-30kV付近にバイアスがかけられてもよい。加速管106は、30keVの照射ビーム用に接地されるか、またはクーロン相互作用(Coulomb interactions)を低減するために加速照射ビームに対して約10kVから30kVの正のバイアスがかけられていてもよい。エキストラクタのボアサイズは、約500μmから1000μmとしてもよい。エキストラクタと加速管106の間の距離は、10mmより大きくてもよい。
【0041】
加速管106は、電子ビーム102の経路内に配置されている。加速管106は、電子ビーム源101の下流側にある。ビーム制限アパーチャ107は、加速管106内に位置づけることができる。例えば、ビーム制限アパーチャ107は、電子ビーム源101に近接する加速管106の開口部近くの加速管106内に位置づけることができる。仮想ガンレンズ113が図示されている。
【0042】
電子ビーム源101および加速管106に近接して、シーリング管114がある。コイル115および極片(pole pieces)116が、シーリング管114の外側またはそのまわりに位置している。
【0043】
ビーム制限アパーチャ107とマイクロアパーチャアレイ110との距離(または加速管106の長さ)は、例えば、ソース放出角(ガンレンズ球面収差)を低減するために、およそ100mmから150mmとしてもよい。この距離が短すぎると、コリメートレンズを使用しても放出角が大きくなる可能性がある。機械コンポーネント(例えば、バルブおよびポンプシステム)は、ビーム制限アパーチャ107およびマイクロアパーチャアレイ110から合理的な距離を提供するように構成することができる。
【0044】
コリメートレンズの助けによって、ガン磁気レンズ励起によって制御される約10μAから25μAの照射ビーム電流に対して、ビーム制限アパーチャ107のサイズを、約750μmから1000μmのサイズに低減することができる。
【0045】
加速管が常に接地されている場合、ビーム制限アパーチャ107は、加速管106の前方に別個に位置づけされて、接地されてもよい。しかし、加速管106を加速に使用すると、ビーム制限アパーチャ107および加速管106が静電レンズを形成することになる。実施形態では、
図7におけるビーム制限アパーチャ107と、加速管106の上端部をフローティングアノード内に置くことができる。
【0046】
アノード108は、電子ビーム源101と加速管106の間の電子ビーム102の経路内に配置することができる。アノード108は、加速管106上に配置することができる。例えば、アノード108は、電子ビーム源101に近接する加速管106上、またはその開口部に配置することができる。
【0047】
集束レンズ109は、ビーム制限アパーチャ107より下流の電子ビーム102の経路内に配置される。集束レンズ109は、静電集束レンズまたは磁気集束レンズとすることができる。集束レンズ109が磁気集束レンズである場合、集束レンズ109は、
図11に示すように、アノード108とは反対側の加速管106のまわりに配置することができる。
図11の例では、マイクロアパーチャアレイ110を加速管106上に配置することができるとともに、加速管106を接地することができる。
【0048】
図7に戻ると、集束レンズ109は、それが静電集束レンズであれば、アノード108から、加速管106の反対側にすることができる。これにより、アノード108は、電子ビーム源101に近接する加速管106上またはその開口部に位置づけすることができ、集束レンズ109は、加速管106の反対側の開口部に近接して位置づけすることができる。
【0049】
加速管106から下流の電子ビーム102の経路内にはマイクロアパーチャアレイ110が配置されている。マイクロアパーチャアレイ110は、電子ビーム102からビームレット111を生成するように構成されている。各ビームレットに対して1つのマイクロアパーチャがあってもよい。例えば、マイクロアパーチャアレイ110には、100個超のマイクロアパーチャを含めることができ、これは、100本超のビームレット111を生成する。ビームレット111間に約100μmの間隔を有する例では、約30μmのマイクロアパーチャおよび約50μmのマイクロレンズボアによって、100から500本のビームを生成することができる。マイクロアパーチャアレイ110は、加速管106から集束レンズ109の反対側の電子ビーム102の経路内に配置することができる。マイクロアパーチャアレイ110は、加速管106からゼロ以外の距離に位置づけることができる。
【0050】
マイクロレンズアレイ112が、マイクロアパーチャアレイ110からビームレット111を受け取るように位置づけられる。マイクロレンズアレイ112の像(すなわち、ビームレットのスポットサイズ)は、下流の投影光学系の対象物(objects)とすることができる。マイクロレンズアレイ112の下流のウェハにおいて、マルチ電子プローブを形成することができる。
【0051】
ウェハに到達するマルチ電子プローブ電流は、コリメートレンズおよびマイクロアパーチャアレイ110によって選択された、シングルビーム電流である。シングルビーム電流は、磁気ガンレンズ励起およびビーム制限アパーチャ107によって選択される、照射中の生ビーム電流(raw beam current)から分割される。
【0052】
転写レンズ117、対物レンズ118、およびウェハ119は、マイクロアパーチャアレイ110の下流のビームレット111の経路内に位置づけすることができる。転写レンズ117と対物レンズ118の間にクロスオーバ120を置くことができる。
図1と同様の検出器を使用するなど、ビームスキャンおよび/または各ビームレット111を使用して、別個の像を形成することができる。
【0053】
図7において、放出角α’が小さいと、ガンレンズ球面収差を排除できる。コリメートレンズ(CL)は、マイクロアパーチャアレイ110の前方に設置され、ガンからの発散電子ビーム102を集束させる。コリメートレンズは、電圧Vaを有する加速管106、コリメート電圧VCを印加される集束電極109、および接地されたマイクロアパーチャアレイ110の電極を含む、静電レンズとすることができる。コリメートレンズは、非対称アインツェルレンズとしてもよい。最適なコリメート電圧VCで、発散電子ビーム102は、テレセントリックビーム内でコリメートされ、マイクロアパーチャアレイ110およびマイクロレンズアレイ112を照射する。軸外収差および歪みが除去される。
【0054】
図2の設計を研究し、
図6の結果を生成するために使用されたコンピュータシミュレーションを使用して、
図7の電子ビームシステム100に対して分解能およびスループットを評価した。
図8は、
図2における直接テレセントリック照射と、
図7における発散-コリメート照射を使用する光学性能の比較を示す。
図8は、より小さな放出角α’を用いてガンレンズの球面収差を低減することにより、および発散ビームをコリメートしてマイクロアパーチャアレイ110およびマイクロレンズアレイ112をテレセントリックに照射して軸外ぼやけおよび歪みを除去することにより、スループット改善を達成できることを示している。より小さな放射角α’の影響の程度は驚くべきものである。
【0055】
図7における放出角α’およびビーム制限アパーチャ107のサイズは、十分な照射ビーム電流のために、選択して固定することができる。電子ビーム源101からマイクロレンズアレイ112へのレイトレーシングのコンピュータシミュレーションによって
図9に見られるように、所与の発散ビーム角に対して、発散ビームをテレセントリック照射ビームに完全にコリメートして、マイクロレンズアレイ112に生じる軸外ぼやけおよび歪みを排除することができる、最適なコリメートレンズ電圧V
c-optが存在し得る。
【0056】
図7および
図8において、800μmのビーム制限アパーチャを、約10μAから25μAの照射ビーム電流に対して使用した。1.0mA/srの角度強度では、放出角は約56mradから90mradである。照射ビームが完全にテレセントリックである場合、軸外ぼやけは完全に除去することができる。
【0057】
なお、
図9では、最大放出角α’におけるチップ放出電子軌道を、説明の便宜上、2群の電子線に分けている。内側照射ビームの群は、有用であると仮定され、マイクロアパーチャアレイ110に入り、ビームレット111に分割される。これらのビームレット111は、マイクロレンズアレイ112によって別々に集束され、中間像平面において像形成される。外側照射ビームの群はマージンビームであると仮定され、これらはマイクロアパーチャアレイ110によって阻止される。内側および外側の両方の照射ビームは、全て、コリメートレンズによって集束され、マイクロアパーチャアレイ110をテレセントリックに照射する。
【0058】
図2における直接テレセントリック照射法と比較して、
図7におけるコリメート照射法を用いた発散ビームは、広い範囲にわたりシングルビーム電流(SBC)を選択することができ、これは電子ビームシステム100の別の利点である。この利点は、
図10に示されている。
図10において、各ビームレット電流は、磁気ガンレンズのコイル電流を変化させることによって、特定の用途のために変化させてもよい。すなわち、ビームレット電流は、放出角ではなくビーム発散角を変更することによって影響を受ける可能性がある。例えば、磁気レンズ励起A、BおよびC(C>B>A)の使用は、それぞれ、
図10の(a)、(b)、および(c)における生ビーム電流(すなわちI
raw、固定されたビーム制限アパーチャ107の下方のビーム電流)10、15、および20マイクロアンペアに到達する。そして、発散ビームを集束させるのに、最適なコリメーション電圧V
Ca、V
Cb、V
Cc(V
Cc<V
Cb<V
Ca)を印加することは、
図10の(a)、(b)、(c)の光学カラムにおいて、それぞれ0.25nA、1.0nA、5.0nAのシングルビーム電流を選択する。例えば、
図10の(c)における、合計331のビームレットでは、合計ビームレット電流が5.0×331=1655(nA)となり得、20μAの生ビーム電流の使用率が8.3%となる。
【0059】
図7の実施形態におけるコリメートレンズは、3つのレンズ集束モードで機能することができる。1つは、加速管を接地するか、加速電圧V
a=0ボルトを設定する場合の、アインツェルレンズモードである。2つ目は、加速管がV
a<0ボルトに設定されている場合の減速レンズモードである。3つ目は、加速管がV
a>0ボルトに設定されている場合の加速レンズモードである。マイクロアパーチャアレイ110およびマイクロレンズアレイ112をテレセントリックに最もよく照射して、軸外ぼやけや歪みを除去するための、任意のコリメートレンズ集束モードに対して、コリメートレンズ電圧V
C-optを選択することができる。
【0060】
ビーム制限アパーチャ107とマイクロアパーチャアレイ110の間のビーム電流はかなり高い(例えば、数マイクロアンペアから数十マイクロアンペア)場合があるので、電圧Va>>0ボルトを有する加速管106を使用して、ビームレット分解能に対する電子間のクーロン相互作用の影響を低減することができる。
【0061】
コリメートレンズは、マイクロアパーチャアレイ110の近くに位置づけされる場合に、改善することができる。例えば、
図7におけるコリメートレンズとマイクロアパーチャアレイ110の間の間隙は、およそ10mmとしてもよい。コリメートレンズがマイクロアパーチャアレイ110から遠ざかって設置されるほど、マイクロアパーチャアレイ110を一定のマージンで完全に覆うためにビームを集束させるのに、より大きな放出角α’が必要とされる場合がある。これにより、ガンレンズの球面収差が高くなり、中間像平面でのビームレット分解能が低下する可能性がある。一例において、ビーム制限アパーチャとアパーチャアレイの間の距離は、放出角α’を十分に減少させるために、およそ100mmから150mmとしてもよい。
【0062】
図11は電子ビームシステム200を示しており、この場合には、
図7からの静電コリメートレンズを置き換えるために、磁気コリメートレンズが使用されている。加速管106は、接地して、磁気コリメートレンズのシーリング管として使用してもよい。磁気コリメートレンズの極片201およびコイル202は、真空を汚染から保護するために、空気中で密封することができる。磁気コリメートレンズは、中間像平面でのビームレット分解能を向上させる、静電コリメートレンズよりもレンズ収差を低くすることができる。
図7の転写レンズ117、対物レンズ118、ウェハ119、およびクロスオーバ120は、
図11の電子ビームシステム200において使用することができるが、簡潔性を増すために
図11には図示されていない。
【0063】
図12は、方法300のフローチャートである。方法300は、電子ビームシステム100または電子ビームシステム200を用いて適用することができる。301において、電子ビームは、電子ビーム源から加速管に誘導される。加速管は、接地させるか、0Vを超える加速電圧を与えるか、または0V未満の加速電圧を与えることができる。302において、電子ビームは、加速管内のビーム制限アパーチャを通って誘導される。303において、電子ビームも、加速管に入った後に集束される。電子ビームは、発散照射ビームからテレセントリック照射ビームに集束させることができる。ビーム制限アパーチャとマイクロアパーチャアレイの間のビーム電流は、少なくとも10μAとすることができる。
【0064】
304において、電子ビームは、加速管の下流の電子ビームの経路内に配置されたマイクロアパーチャアレイを通って誘導される。これにより、電子ビームから複数のビームレットが形成される。マイクロアパーチャアレイを使用して、100を超えるビームレットを生成できる。
【0065】
これらのビームレットは、1つの電子ビーム源から分割される。マルチ電子ビームシステムのスループットは、ビームレットの数によって特徴付けることができる。ビームレットが多いほど、一般的に、スループットは大きくなる。
【0066】
ビームレットの数を増やしながら球面収差を回避するために、コリメートレンズは発散照射ビームをテレセントリック照射ビームに集束させ、これは、ビームレットの分解能に対するガンレンズの球面ぼやけの影響を排除するとともに、マイクロレンズアレイの軸外ぼやけおよび歪みを除去する。照射中の生ビーム電流およびシングルビーム電流は、ある範囲にわたって選択できる。この範囲には、約10μAから30μAの照射生ビーム電流と、合計300~400のビームレットに対して、約0.2nAから6nAのシングルビーム電流とを含めることができる。
【0067】
ビーム制限アパーチャからの発散ビームは、コリメートレンズによってテレセントリックビームに集束される。
【0068】
理論的には、結果として得られるテレセントリックビームに対して+/-0.5mradが許容されるが、最適なコリメートレンズ電圧は、IIPにおいて像を調べることによって決定できる。テレセントリック照射が完全であれば、影響、ぼやけ、歪みを排除できる。
【0069】
方法300において使用されたコリメートレンズは、アインツェルレンズモードにおける静電気レンズ、加速/減速モードにおける静電レンズ、または空気中で密封された磁気レンズとすることができる。
【0070】
本開示は、1つ以上の特定の実施形態について説明したが、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の他の実施形態をなし得ることが理解されよう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびその合理的な解釈によってのみ限定されるとみなされる。
【国際調査報告】