(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】二液型シアノアクリレート/フリーラジカル硬化性接着剤系
(51)【国際特許分類】
C09J 4/04 20060101AFI20240416BHJP
C09J 175/14 20060101ALI20240416BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C09J4/04
C09J175/14
C08F299/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566486
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 US2022026884
(87)【国際公開番号】W WO2022232475
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ、 ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】スリダー、 ラクシュミシャ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ハイア、 チェータン
(72)【発明者】
【氏名】アッターワラ、 シャビー ティー.
(72)【発明者】
【氏名】グリスマラ、 ロジャー
【テーマコード(参考)】
4J040
4J127
【Fターム(参考)】
4J040FA121
4J040FA122
4J040FA262
4J040FA291
4J040FA292
4J040HA306
4J040HD43
4J040JA13
4J040KA14
4J040KA17
4J040KA42
4J040LA01
4J040LA02
4J040MA10
4J127AA03
4J127BA01
4J127BA041
4J127BA051
4J127BA081
4J127BB031
4J127BB032
4J127BB111
4J127BB221
4J127BB222
4J127BC021
4J127BC022
4J127BC131
4J127BD182
4J127BD481
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BF141
4J127BF302
4J127BF351
4J127BF631
4J127BG051
4J127BG052
4J127BG102
4J127BG181
4J127BG271
4J127DA06
4J127DA12
4J127EA11
4J127FA14
(57)【要約】
【解決手段】
二液型シアノアクリレート/フリーラジカル硬化性接着剤系が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シアノアクリレート成分及びペルオキシド成分を含む第1の部分と;
(b)フリーラジカル硬化性成分及び遷移金属を含み、少なくともその一部が約50℃超過のTgを有するポリエステルウレタン(メタ)アクリレートを含む第2の部分と;
を含む二液型硬化性組成物であって、
前記第2の部分が、約30℃超過のTgを有する脂肪族ウレタンジアクリレート;無水物;少なくとも1つのマレイミド含有化合物、イタコンイミド含有化合物、又はナジイミド含有化合物の1つ又は複数をさらに含む、二液型硬化性組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルウレタン(メタ)アクリレート及び前記脂肪族ウレタンジアクリレートが、約2:1の重量比で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリエステルウレタン(メタ)アクリレートが、約2000~約5000Mnの分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記脂肪族ウレタンジアクリレートが、約900~約1900Mnの分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1の部分と前記第2の部分を混合すると、前記ペルオキシド成分が前記フリーラジカル硬化性成分の硬化を開始する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1の部分と前記第2の部分を混合して硬化すると、硬化した組成物は、エポキシ基材上でのラップせん断強度1000psi超過、及びグリットブラスト処理された軟鋼基材上での温度120℃での熱間強度300psi超過のうちの少なくとも1つを示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリエステルウレタン(メタ)アクリレートが、約60℃超過のTgを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリエステルウレタン(メタ)アクリレートが、約70℃超過のTgを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリエステルウレタン(メタ)アクリレートが、約3500Mnの分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記脂肪族ウレタンジアクリレートが、約1400Mnの分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1の部分と前記第2の部分を混合して硬化すると、硬化した組成物は、エポキシ基材上でのラップせん断強度1500psi超過、及びグリットブラスト処理された軟鋼基材上での温度120℃での熱間強度500psi超過のうちの少なくとも1つを示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記第2の部分が、約50℃超過のTgを有するポリエステルウレタン(メタ)アクリレート、及び約30℃超過のTgを有する脂肪族ウレタンジアクリレートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記無水物が約5400Mnの分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記第1の部分及び前記第2の部分が、約1:1の重量比で存在する、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ラップせん断強度及び熱間強度が向上した二液型シアノアクリレート/フリーラジカル硬化性接着剤系が提供される。
【背景技術】
【0002】
シアノアクリレート接着剤等の硬化性組成物は、一般に数分で、特定の基材によっては大抵数秒で、広範囲の基材を迅速に接着する優れた能力でよく知られている。
【0003】
シアノアクリレートの重合は、通常の大気条件下でほとんどの表面に存在する求核試薬によって開始される。表面化学による開始は、2つの表面が当該2つの表面間のシアノアクリレートの小さな層と密接に接触しているときに、十分な開始種が利用できることを意味する。これらの条件下では、短時間で強力な接着が得られる。したがって、シアノアクリレートは本質的に瞬間接着剤として機能することが多い。
【0004】
シアノアクリレート接着剤の性能、特に耐久性は、高温条件及び/又は高相対湿度条件に曝露されると疑わしいことがよくある。これらの用途に依存する欠点に対処するために、シアノアクリレート接着剤配合物に含める多数の添加剤が特定されている。改善は依然として有益であると考えられる。
【0005】
シアノアクリレート組成物には、物理的特性を変更するために様々な添加剤や充填剤が添加されてきた。
【0006】
例えば、米国特許第3,183,217号(セルニューク)は、メタクリル酸又はメタクリル酸メチルモノマーと無極性又は弱極性オレフィンとのフリーラジカル重合を開示しており、モノマーはフリーデルクラフツハロゲン化物と錯体を形成する。
【0007】
米国特許第3,963,772号(タケシタ)は、より反応性の高いアルキレン単位を有するポリマー鎖の一端で実質的に終結する短鎖交互コポリマーをもたらす、アルキレンモノマー及びアクリルモノマーの液体テロマーを開示している。液体テロマーは、その液相により、充填剤、添加剤等を容易に組み込むことができる高分子量ゴム用のエラストマーポリマーを製造するのに有用である。
【0008】
米国特許第4,440,910号(オコナー)は、エラストマー、すなわちアクリルゴムの添加によって達成される、改善された靱性を有するシアノアクリレート組成物に関する。これらのゴムは、(i)アクリル酸のアルキルエステルのホモポリマー、(ii)別の重合性モノマー、例えば低級アルケンと、アクリル酸のアルキルエステル又はアクリル酸のアルコキシエステルとのコポリマー;(iii)アクリル酸のアルキルエステルのコポリマー;(iv)アクリル酸のアルコキシエステルのコポリマー;及び(v)それらの混合物のいずれかである。
【0009】
米国特許第4,560,723号(ミレット)は、コアシェルポリマーを含む強化剤と、1つ又は複数の非置換又は置換アリール基を含有する有機化合物を含む持続剤とを含むシアノアクリレート接着剤組成物を開示している。持続剤は、接着剤の硬化結合の熱老化後の靱性の保持を改善すると報告されている。コアシェルポリマーの製造プロセスで残った塩、石鹸、その他の求核種等の重合を引き起こす不純物を除去するために、コアシェルポリマーは酸洗浄処理される。
【0010】
米国特許第5,340,873号(ミトリー)は、二塩基性脂肪族又は芳香族カルボン酸及びグリコールから誘導される有効強化量のポリエステルポリマーを包含することによって、改善された靱性を有するシアノアクリレート接着剤組成物を開示している。
【0011】
米国特許第5,994,464号(オーサワ)は、シアノアクリレートモノマー、当該シアノアクリレートモノマーと混和性又は相溶性のエラストマー、及び当該シアノアクリレートモノマーと相溶性であるが混和性ではないコアシェルポリマーを含有するシアノアクリレート接着剤組成物を開示している。
【0012】
米国特許第6,833,196号(ウォジアク)は、鋼とEPDMゴム基材との間のシアノアクリレート組成物の靱性を高める方法を開示している。開示された方法は、シアノアクリレート成分を提供する工程と、メチルメタクリルモノマーと、ブチルアクリルモノマー及びイソボルニルアクリルモノマーのうちの少なくとも1つとを含む強化剤を提供する工程によって定義され、これにより、アクリルモノマー強化剤は、シアノアクリレート組成物の靭性を高め、硬化するとシアノアクリレート組成物は、室温で72時間硬化後、及び121℃で2時間硬化後、約4400psi以上の平均引張せん断強度を有する。
【0013】
(メタ)アクリル酸エステル(すなわち、アクリレート)のフリーラジカル重合によって硬化する反応性アクリル接着剤が知られているが、いくつかの欠点がある。商業的に重要なアクリル接着剤、特にメタクリル酸メチルから製造される接着剤は、悪臭を放つ傾向がある。メタクリル酸メチルベースのアクリル接着剤は引火点も低い(約59°F)。引火点が低いことは、接着剤の保管及び輸送中に特に問題となる。引火点が141°F以下の場合、米国運輸省はその製品を「可燃性」として分類し、マーキングと特別な保管及び輸送条件を要求する。
【0014】
米国特許第6,562,181号(リゲッティーニ)は、(a)それぞれがオレフィン基の不飽和炭素原子に直接結合した少なくとも3つの官能基を有するオレフィン基を含む三官能性オレフィン性の第1のモノマー;(b)前記第1のモノマーと共重合可能なオレフィン性の第2のモノマー;(c)レドックス開始剤系;及び(d)反応性希釈剤を含む接着剤組成物を記載することにより、前段落で取り上げた問題の解決策を提供することを目的としており、この組成物は室温で液体であり、100%反応性で揮発性有機溶媒を実質的に含まず、室温で硬化可能である。
【0015】
最近、米国特許第9,371,470号(バーンズ)は、(a)シアノアクリレート成分と、前記シアノアクリレート成分の約0.01重量%~約10重量%の量で存在するペルオキシド触媒としての過安息香酸t-ブチルとを含む第1の部分;並びに(b)フリーラジカル硬化性成分と遷移金属とを含む第2の部分を含む二液型硬化性組成物に関する請求項を記載して発行された。混合すると、ペルオキシド触媒はフリーラジカル硬化性成分の硬化を開始し、遷移金属はシアノアクリレート成分の硬化を開始する。
【0016】
最新技術にもかかわらず、例えば、シアノアクリレートで観察される固定時間の速さ、並びに金属及びプラスチック等の広範囲の基材を接着する能力等、瞬間接着剤の特徴と、(メタ)アクリレート組成物で観察されるさらに多様な基材及び/又は選択された基材に対する改善された接着強度(特にラップせん断強度及び熱間強度)との両方を備えた代替の接着剤系を提供することが望ましいであろう。そうすることで、エンドユーザーには、直面している問題に適した選択を行うための、より多様な可能な解決策が与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第3,183,217号
【特許文献2】米国特許第3,963,772号
【特許文献3】米国特許第4,440,910号
【特許文献4】米国特許第4,560,723号
【特許文献5】米国特許第5,340,873号
【特許文献6】米国特許第5,994,464号
【特許文献7】米国特許第6,833,196号
【特許文献8】米国特許第6,562,181号
【特許文献9】米国特許第9,371,470号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
一態様では、
(a)シアノアクリレート成分及びペルオキシド成分を含む第1の部分と;
(b)フリーラジカル硬化性成分及び遷移金属を含み、少なくともその一部が約50℃超過、例えば約60℃超過、例えば約70℃超過等のTgを有するポリエステルウレタン(メタ)アクリレートを含む第2の部分と;
を含む二液型シアノアクリレート/フリーラジカル硬化性組成物が提供される。
【0019】
第2の部分は、約30℃超過のTgを有する1つ又は複数の脂肪族ウレタンジアクリレート;無水物;及び少なくとも1つのマレイミド含有化合物、イタコンイミド含有化合物、又はナジイミド含有化合物も含むべきである。
【0020】
脂肪族ウレタンジアクリレートは、約30℃超過のTgを有するべきである。
【0021】
ポリエステルウレタン(メタ)アクリレートと、存在する場合には脂肪族ウレタンジアクリレートは、重量比が約2:1であるべきである。
【0022】
ポリエステルウレタン(メタ)アクリレートは、約2000~約5000Mn、例えば約3500Mnの分子量を有する。
【0023】
脂肪族ウレタンジアクリレートは、約900~約2000Mn、例えば約1400Mnの分子量を有する。
【0024】
第1の部分と第2の部分を混合して、ペルオキシド成分が金属塩と組み合わせてフリーラジカル硬化性成分の硬化を開始する必要がある。
【0025】
本組成物は、前記第1の部分と前記第2の部分を混合して硬化すると、硬化した組成物は、エポキシ基材上で約1000psi超過、例えば約1500psi超過のラップせん断強度、及びグリットブラスト処理された軟鋼基材上で温度120℃にて約300psi超過、例えば約400psi超過の熱間強度のうちの少なくとも1つを示す。
【0026】
本組成物は、第1の部分と第2の部分が使用前に混合する前に相互作用しないため室温で安定であり、多種多様な材料から構成される基材全体にわたって良好な性能を提供し、従来のシアノアクリレート組成物を上回る耐久性能の向上、並びに従来のフリーラジカル硬化性組成物を上回るラップせん断強度及び熱間強度の向上を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
上で述べたように、一態様では、
(a)シアノアクリレート成分及びペルオキシド成分を含む第1の部分と;
(b)フリーラジカル硬化性成分及び遷移金属を含み、少なくともその一部が約50℃超過、例えば約60℃超過、例えば約70℃超過等のTgを有するポリエステルウレタン(メタ)アクリレートを含む第2の部分と;
を含む二液型シアノアクリレート/フリーラジカル硬化性組成物が提供される。
【0028】
第2の部分は、約30℃超過のTgを有する1つ又は複数の脂肪族ウレタンジアクリレート;無水物;及び少なくとも1つのマレイミド含有化合物、イタコンイミド含有化合物、又はナジイミド含有化合物も含むべきである。
【0029】
ポリエステルウレタン(メタ)アクリレートと、存在する場合には脂肪族ウレタンジアクリレートは、重量比が約2:1で使用されるべきである。
【0030】
ポリエステルウレタン(メタ)アクリレートは、約2000~約5000Mn、例えば約3500Mnの分子量を有する。
【0031】
脂肪族ウレタンジアクリレートは、約900~約2000Mn、例えば約1400Mnの分子量を有する。
【0032】
第1の部分と第2の部分を混合し、ペルオキシド成分がフリーラジカル硬化性成分の硬化を開始する必要がある。
【0033】
本組成物は、前記第1の部分と前記第2の部分を混合して硬化すると、硬化した組成物は、エポキシ基材上で約1000psi超過、例えば約1500psi超過のラップせん断強度、及びグリットブラスト処理された軟鋼基材上で温度120℃にて約300psi超過、例えば約400psi超過の熱間強度のうちの少なくとも1つを示す。
【0034】
パートA
シアノアクリレート成分としては、H2C=C(CN)-COORで表されるシアノアクリレートモノマーが挙げられ、式中、Rは、C1-15アルキル、C2-15アルコキシアルキル、C3-15シクロアルキル、C2-15アルケニル、C7-15アラルキル、C6-15アリール、C3-15アリル、及びC1-15ハロアルキル基から選択される。望ましくは、シアノアクリレートモノマーは、メチルシアノアクリレート、エチル-2-シアノアクリレート(「ECA」)、プロピルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート(例えば、n-ブチル-2-シアノアクリレート)、オクチルシアノアクリレート、アリルシアノアクリレート、β-メトキシエチルシアノアクリレート、及びそれらの組み合わせから選択される。特に望ましいものはエチル-2-シアノアクリレートである。
【0035】
シアノアクリレート成分は、パートA組成物中に、約50重量%~約99.98重量%の範囲内の量で包含されるべきであり、例えば、パートA組成物の約70重量%~約99重量%が望ましく、約80重量%~約97重量%が特に望ましい。
【0036】
二液型接着剤系のパートA組成物に包含されるペルオキシド成分として、多くの材料が使用されてよい。例えば、パートA組成物に包含されるペルオキシド触媒として、過安息香酸t-ブチル等の過安息香酸塩を使用すべきである。
【0037】
典型的に、ペルオキシド触媒の量は、組成物の約0.001重量%~約10.00重量%、望ましくは組成物の約0.01重量%~約5.00重量%、例えば組成物の約0.50~2.50重量%の範囲内にあるべきである。
【0038】
接着剤系のパートA組成物には、固定速度の向上、保存安定性の向上、柔軟性、チキソトロピー性、粘度の増加、色、及び靱性の向上等の物理的特性を改変するために、添加剤が包含されてもよい。したがって、そのような添加剤は、促進剤、フリーラジカル安定剤、アニオン安定剤、ゲル化剤、増粘剤[PMMA等]、チキソトロピー付与剤(ヒュームドシリカ等)、染料、強化剤、可塑剤、及びそれらの組み合わせから選択されてよい。
【0039】
シアノアクリレート成分の硬化を促進するために、1つ又は複数の促進剤を接着剤系、特にパートA組成物に使用してもよい。このような促進剤は、カリックスアレーン及びオキサカリックスアレーン、シラクラウン、クラウンエーテル、シクロデキストリン、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、エトキシル化水素化合物及びそれらの組み合わせから選択されてよい。
【0040】
カリックスアレーン及びオキサカリックスアレーンのうち、多くが知られており、特許文献に報告されている。例えば、米国特許第4,556,700号、同第4,622,414号、同第4,636,539号、同第4,695,615号、同第4,718,966号、及び同第4,855,461号を参照。それぞれの開示が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0041】
例えば、カリックスアレーンに関しては、以下の構造内のものが本明細書で有用である。
【0042】
【0043】
式中、R1はアルキル、アルコキシ、置換アルキル又は置換アルコキシであり、R2はH又はアルキルであり、nは4、6、又は8である。
【0044】
1つの特に望ましいカリックスアレーンは、テトラブチルテトラ[2-エトキシ-2-オキソエトキシ]カリックス-4-アレーンである。
【0045】
多数のクラウンエーテルが知られている。例えば、本明細書で個別に又は組み合わせて使用できる例としては、15-クラウン-5、18-クラウン-6、ジベンゾ-18-クラウン-6、ベンゾ-15-クラウン-5-ジベンゾ-24-クラウン-8、ジベンゾ-30-クラウン-10、トリベンゾ-18-クラウン-6、非対称のジベンゾ-22-クラウン-6、ジベンゾ-14-クラウン-4、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6、ジシクロヘキシル-24-クラウン-8、シクロヘキシル-12-クラウン-4、1,2-デカリル-15-クラウン-5、1,2-ナフト-15-クラウン-5、3,4,5-ナフチル-16-クラウン-5、1,2-メチル-ベンゾ-18-クラウン-6、1,2-メチルベンゾ-5、6-メチルベンゾ-18-クラウン-6、1,2-t-ブチル-18-クラウン-6、1,2-ビニルベンゾ-15-クラウン-5、1,2-ビニルベンゾ-18-クラウン-6、1,2-t-ブチル-シクロヘキシル-18-クラウン-6、非対称の-ジベンゾ-22-クラウン-6、及び1,2-ベンゾ-1,4-ベンゾ-5-オキシジェン-20-クラウン-7が挙げられる。米国特許第4,837,260号(サトウ)を参照されたい。その開示内容が、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0046】
シラクラウンのうち、やはり多くが知られており、文献で報告されている。例えば、典型的なシラクラウンは以下の構造で表されてよい。
【0047】
【0048】
式中、R3及びR4は、それ自体はシアノアクリレートモノマーの重合を引き起こさない有機基であり、R5はH又はCH3であり、nは1~4の整数である。適切なR3及びR4基の例は、R基、メトキシ基等のアルコキシ基、及びフェノキシ等のアリールオキシ基である。R3及びR4基は、ハロゲン又は他の置換基を含有していてもよく、一例としてトリフルオロプロピルが挙げられる。しかしながら、R4及びR5基として適さない基は、アミノ、置換アミノ、及びアルキルアミノ等の塩基性基である。
【0049】
本発明の組成物において有用なシラクラウン化合物の具体例としては、以下が挙げられる。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
例えば、米国特許第4,906,317号(リュー)を参照。その開示内容が参照により明示的に本明細書に組み込まれる。
【0054】
多くのシクロデキストリンが本発明に関連して使用されてよい。例えば、その開示が参照により本明細書に明示的に組み込まれる米国特許第5,312,864号(ウェンズ)に、シアノアクリレートに少なくとも部分的に可溶性であるα、β、又はγ-シクロデキストリンのヒドロキシル基誘導体として記載され特許請求されているものは、促進剤成分として本明細書で使用するのに適切な選択である。
【0055】
さらに、本明細書での使用に適したポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートには、以下の構造内のものが挙げられる。
【0056】
【0057】
式中、nは3超過であり、例えば3~12の範囲内であり、特に望ましいのnは9である。より具体的な例としては、PEG200DMA(nは約4)、PEG400DMA(nは約9)、PEG600DMA(nは約14)、及びPEG800DMA(nは約19)が挙げられる。数字(例えば、400)は、2つのメタクリレート基を除いた分子のグリコール部分の平均分子量を表し、グラム/モル(つまり、400g/mol)で表される。特に望ましいPEG DMAはPEG400DMAである。
【0058】
そして、エトキシル化水素化合物(又は使用されてよいエトキシル化脂肪族アルコール)のうち適切なものは、以下の構造内のものから選択されてよい。
【0059】
【化7】
式中、C
mは直鎖状又は分枝状のアルキル鎖又はアルケニル鎖であり得、mは1~30の整数、例えば5~20であり、nは2~30の整数、例えば5~15であり、Rは、H又はC
1~6アルキル等のアルキルであってよい。
【0060】
さらに、促進剤は以下の構造内に包含される。
【0061】
【0062】
式中、Rは水素、C1-6アルキル、C1-6アルキルオキシ、アルキルチオエーテル、ハロアルキル、カルボン酸及びそのエステル、スルフィン酸、スルホン酸及び亜硫酸及びそのエステル、ホスフィン酸、ホスホン酸及び亜リン酸及びそのエステルであり、Zはポリエーテル結合であり、nは1~12、pは1~3であり、R'はRと同じであり、gはnと同じである。
【0063】
このクラス内の促進剤成分として特に望ましい化学物質は、以下の通りである。
【0064】
【0065】
式中、nとmの合計は12以上である。
【0066】
促進剤は、約0.01重量%~約10重量%の範囲内の量で組成物中に包含されるべきであり、約0.1~約0.5重量%の範囲が望ましく、組成物全体の約0.4重量%が特に望ましい。
【0067】
接着剤系のパートA組成物に有用な安定剤としては、フリーラジカル安定剤、アニオン安定剤、及びそれらの組み合わせを包含する安定剤パッケージが挙げられる。このような安定剤の識別及び量は、当業者にはよく知られている。例えば、米国特許第5,530,037号及び第6,607,632号を参照。それぞれの開示が参照により本明細書に組み込まれる。一般に使用されるフリーラジカル安定剤としては、ハイドロキノンが挙げられ、一方、一般に使用されるアニオン安定剤としては、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素エーテラート、三酸化硫黄(及びその加水分解生成物)並びにメタンスルホン酸が挙げられる。
【0068】
パートB
接着剤系のパートB組成物に使用するためのフリーラジカル硬化性成分としては、(メタ)アクリレートモノマー及びオリゴマーが挙げられる。
【0069】
(メタ)アクリレートモノマーとしては多数の(メタ)アクリレートモノマーが挙げられ、(メタ)アクリレートモノマーの一部は芳香族であり、他のものは脂肪族であり、さらに他のものは脂環式である。こうした(メタ)アクリレートモノマーの例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ-又はトリ-官能性(メタ)アクリレート、テトラヒドロフラン(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(「HPMA」)、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(「TMPTMA」)、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(「TRIEGMA」)、ベンジルメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジ-(ペンタメチレングリコール)ジメタクリレート、テトラエチレンジグリコールジアクリレート、ジグリセロールテトラメタクリレート、テトラメチレンジメタクリレート、エチレンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化ビスフェノール-A(メタ)アクリレート(「EBIPMA」)等のビスフェノール-Aモノ及びジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ビスフェノール-F(メタ)アクリレート等のビスフェノール-Fモノ及びジ(メタ)アクリレート、並びにメタクリレート官能性ウレタンが挙げられる。
【0070】
典型的には、フリーラジカル硬化性成分は、パートB組成物中に組成物の約50重量%~約98重量%、望ましくは約80重量%~約95重量%の量で、例えば、組成物の約85~約92重量%存在すべきである。
【0071】
フリーラジカル硬化性成分の一部として、パートBはまた、約50℃超過、例えば約60℃、約70℃等のTgを有するポリエステルウレタン(メタ)アクリレート、及び約30℃超過のTgを有する脂肪族ウレタンジアクリレートも包含する。
【0072】
望ましくは、上記及び本明細書で述べたように、ポリエステルウレタン(メタ)アクリレートは、約60℃超過、より望ましくは約70℃超過のTgを有するべきである。
【0073】
有用なポリエステルウレタン(メタ)アクリレートの例は、シクロヘキサノール、1,3-ジイソシアナトメチルベンゼン及びテトラヒドロフランとの4,4-(1-メチルエチリデン)ビス-ポリマー、プロピレングリコールモノマー(CAS番号2243075-64-9)として知られるブロック樹脂であり、プロピレングリコールモノマーとジカルボン酸を反応させてポリエステルジオールを形成した後、トルエンジイソシアネートと反応させ、最後にヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートでキャッピングするという一連の工程で製造される。他のいくつかの短鎖ジオール及びジカルボン酸を使用してポリエステルポリオールを製造できる。ポリエステルポリオールの合成に使用される典型的な二酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、及びフラン2,4-ジカルボン酸が挙げられる。ポリエステルポリオールの合成に使用される短鎖ジオールとしては、プロパン-1,3-ジオール、ネオペンチルグリコール、及びテトラメチルシクロブタンジオールが挙げられる。他のいくつかの市販のジイソシアネートは、IPDI及び水素化MDI等のポリエステルウレタンアクリレートオリゴマーの合成に使用できる。
【0074】
ポリエステルウレタン(メタ)アクリレートの中には、芳香族、脂肪族、又は脂環式ジイソシアネートと反応させ、ヒドロキシアクリレートでキャップされたポリエステルをベースとするものある。
【0075】
例えば、イソホロンジイソシアネートで末端処理され、2-ヒドロキシエチルアクリレートでキャップされたヘキサン二酸、ジエチレングリコールのポリエステル(CAS72121-94-9)及びイソホロンジイソシアネートで末端処理され、2-ヒドロキシエチルアクリレートでキャップされたヒドロキシ末端ポリブタジエンが適切な例である。
【0076】
さらに、イソホロンジイソシアネートで末端処理され、2-ヒドロキシエチルアクリレートでキャップされたヘキサン二酸及びジエチレングリコールのポリエステル(CAS72121-94-9);トリエン-2,6-ジイソシアネートで末端処理され、2-ヒドロキシエチルアクリレートでキャップされたポリプロピレングリコール(CAS37302-70-8);4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)で末端処理され,2-ヒドロキシエチルアクリレートでキャップされたヘキサン二酸及びジエチレングリコールのポリエステル(CAS69011-33-2);トリレン-2,4-ジイソシアネートで末端処理され、2-ヒドロキシエチルアクリレート(CAS69011-31-0)でキャップされたヘキサン二酸、1,2-エタンジオール、及び1,2プロパンジオールのポリエステル;4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネートで末端処理され、2-ヒドロキシエチルアクリレートでキャップされたヘキサン二酸、1,2-エタンジオール、及び1,2プロパンジオールのポリエステル(CAS69011-32-1);並びに4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)で末端処理され、2-ヒドロキシエチルアクリレートでキャップされたポリテトラメチレングリコールエーテル等の二官能性ウレタンアクリレートオリゴマーである。
【0077】
ポリエステルウレタン(メタ)アクリレートの別の例は、ポリウレタン主鎖を有するものであり、その少なくとも一部がイソホランジイソシアネートから形成されたウレタン結合を包含する。例えば、このような(メタ)アクリレート官能化ウレタンは、イソホロンジイソシアネートで末端処理され、2-ヒドロキシエチルアクリレートでキャップされた、ヘキサン二酸、ジエチレングリコールのポリエステルから製造される。
【0078】
(メタ)アクリレート官能化ウレタンの配合に有用なアルキル(メタ)アクリレートとしては、とりわけイソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマルアクリレート、オクチルデシルアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0079】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、N-ビニルカプロラクタム、N,N-ジメチルアクリルアミド、2(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0080】
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの代わりに、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートも同様に使用してよい。
【0081】
適切なポリエステルウレタン(メタ)アクリレートの別の例は、飽和ポリエステルジオール(ペンシルベニア州ピッツバーグのコベストロLLCから商業的に入手可能なデスモフェンS-1011-35等)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、及び2-ヒドロキシエチルアクリレートから製造され、その反応生成物は、取り扱いを容易にするためにイソボルニルアクリレートで希釈されてよい。
【0082】
有用なポリエステルウレタン(メタ)アクリレートのさらに別の例は、ヒドロキシ官能化ポリエステル(クラレポリオールP-2010として市販されている)及びTDIと、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートから製造されるもの;並びにポリTHF(Mw2,000)及びTDIと、HBPA、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートから製造されるものである。
【0083】
有用なポリエステルウレタン(メタ)アクリレートの別の例は、シクロヘキサノール、1,3-ジイソシアナトメチルベンゼン及びテトラヒドロフランの4,4-(1-メチルエチリデン)ビス-ポリマー、プロピレングリコールモノマー(CAS番号2243075-64-9)として知られるブロック樹脂であり、プロピレングリコールモノマーとジカルボン酸を反応させてポリエステルジオールを形成した後、トルエンジイソシアネートと反応させ、最後にヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートでキャッピングするという一連の工程で製造される。
【0084】
疎水性(メタ)アクリレート官能化ウレタンは、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート及びそれらの混合物、例えば、ポリブタジエン系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリイソブチレン系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリイソプレン系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリブチルゴム系ウレタン(メタ)アクリレート及びそれらの混合物から選択されてよい。適切な市販の疎水性ウレタン(メタ)アクリレートとしては、日本合成から入手可能なUT-4462及びUV36301B90;サートマーから入手可能なCN9014;並びにSHIIN-A T&Cから入手可能なSUO-H8628が挙げられる。
【0085】
他の適切なポリエステルウレタン(メタ)アクリレートとしては、バッセイの米国特許第4,018,851号、同第4,295,909号、及び同第4,309,526号に開示されたもの、並びにラパンらの米国再発行特許第33,211号、同第4,751,273号、同第4,775,732号、同第5,019,636号、及び同第5,139,872号に開示されたものが挙げられる。
【0086】
したがって、ポリエステルウレタン(メタ)アクリレートは、様々な材料から選択されてよく、その一部はコネチカット州トリントンのダイマックス社から市販されており、特定の公開された特徴と共に以下の表に列挙されている。
【0087】
【0088】
【0089】
ダイマックスから市販されている他のポリエステルウレタンアクリレート及びメタクリレートとしては、BR-742S、BR-741、BR-441Bi20、BR-744BT、BR-771F、BR-371S、BR-374、BR-3042、BR-571、及びBR-930Dが挙げられる。
【0090】
ポリエステルウレタン(メタ)アクリレートは、約2000~約5000Mnの範囲、例えば約3500Mnの分子量を有すべきである。
【0091】
ポリエステルウレタン(メタ)アクリレートは、パートB組成物の総重量に基づいて、約10重量%~約60重量%、例えば約15重量%~約50重量%の範囲内の量で使用されるべきである。
【0092】
パートBには、フリーラジカル硬化性成分に加えて、遷移金属化合物も包含される。遷移金属化合物の代表的な例の非網羅的なリストは、銅、バナジウム、コバルト及び鉄化合物である。例えば、銅化合物に関しては、銅が1+又は2+の価数状態をとる銅化合物が望ましい。このような銅(I)及び(II)化合物の例の非網羅的なリストには、3,5-ジイソプロピルサリチル酸銅(II)水和物、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)銅、水酸化リン酸銅(II)、塩化銅(II)、臭化銅(I)、臭化銅(II)、酢酸銅(II)一水和物、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)ヘキサフルオロホスフェート、ギ酸銅(II)水和物、テトラキスアセトニトリル銅(I)トリフラート、テトラフルオロホウ酸銅(II)、過塩素酸銅(II)、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)テトラフルオロボレート、水酸化銅(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナート銅(II)水和物、及び炭酸銅(II)が包含される。これらの銅(I)及び(II)化合物は、(メタ)アクリレート等の担体ビヒクルに溶解又は懸濁したときに、約100ppm~約10,000ppm、例えば約500ppm~約5000ppm、例えば約1,000ppmの濃度で溶液又は懸濁液中に存在する。
【0093】
バナジウム化合物としては、バナジウムが2+価及び3+価の状態をとるバナジウム化合物が好ましい。このようなバナジウム(III)化合物の例としては、ナフタン酸バナジル及びアセチルアセトナトバナジルが挙げられる。これらのバナジウム(III)化合物は、50ppm~約5,000ppm、例えば約500ppm~約2,500ppm、例えば約1,000ppmの量で使用すべきである。
【0094】
コバルト化合物としては、コバルトが2+価以上のコバルト化合物が好ましい。このようなコバルト(II)化合物の例としては、ナフテン酸コバルト、テトラフルオロボレートコバルト、及びアセチルアセトンコバルトが挙げられる。これらのコバルト(II)化合物は、約100ppm~約1000ppmの量で使用すべきである。
【0095】
鉄化合物としては、鉄が3+価以上の鉄化合物が望ましい。このような鉄(III)化合物の例としては、酢酸鉄、鉄アセチルアセトネート、テトラフルオロボレート鉄、過塩素酸鉄、及び塩化鉄が含まれる。これらの鉄化合物は、約100ppm~約1000ppmの量で使用すべきである。
【0096】
さらに、パートB組成物は、脂肪族ウレタンジアクリレート、無水物、及びマレイミド含有化合物、イタコンイミド含有化合物又はナジイミド含有化合物、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むべきである。
【0097】
脂肪族ウレタンジアクリレートは多くの材料から選択されてよく、その多くは市販されている。例えば、以下の表を参照すると、IGMレジン社から市販されているフォトマー6210、6230及び6892、並びにペンシルベニア州エクストンのアルケマ社のサートマー部門から入手可能であるCN1963、CN2207、CN2920、CN9009、CN9167US、CN9290US、及びCN9026である。
【0098】
【0099】
特に興味深いのは、IGMレジンから市販されているものである。例えば、フォトマー6210は、放射線硬化系用に開発された独自の無黄変脂肪族ウレタンジアクリレートとして製造業者によって説明されている。この粘度が非常に低い高級オリゴマーは、優れた光安定性、耐薬品性、耐摩耗性、柔軟性を提供する。このウレタンアクリレートの粘度が低いため、配合者は幅広い配合の自由度を得ることができ、オリゴマー含有量を高くしたり、配合粘度を低くしたりすることができる。また、このオリゴマーは臭気が少なく、硬化速度が良好で、様々なプラスチック及び金属基材に対して優れた接着性を示す。また、このオリゴマーは比較的低いMn(約1400)を有するため、架橋密度が増加し、高温耐性に役立つ。
【0100】
脂肪族ウレタンジアクリレートは、約900~約1900Mn、例えば約1400Mnの分子量を有するべきである。
【0101】
脂肪族ウレタンジアクリレートは、存在する場合、パートB組成物の総重量に基づいて、約10重量%~約60重量%、例えば約15重量%~約40重量%、例えば約26重量%~約38重量%の量で使用すべきである。
【0102】
望ましくは、ポリエステルウレタン(メタ)アクリレート及び脂肪族ウレタンジアクリレートは、存在する場合、重量比で約2:1~約1:1で存在すべきである。
【0103】
無水物は様々な材料から選択されてよく、望ましくは2つ以上の無水物官能基を有する材料である。このような無水物の1つは、商品名リコボンド1739としてクレイバレーから市販されており、製造業者によりマレイン化ポリブタジエンと記載されている。
【0104】
無水物は、存在する場合、パートB組成物の総重量に基づいて、約0.5重量%~約12重量%、例えば約2重量%~約10重量%、望ましくは約4重量%~約8重量%の範囲内の量で使用すべきである。
【0105】
無水物は、約200~約10,000Mnの範囲、例えば約5400Mnの分子量を有するべきである。無水物の他の例としては、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、ポリエチレン-alt-無水マレイン酸、英国のディストルポールから市販されているアクリレート-無水マレイン酸ターポリマー、商品名ロタダー4720で知られ、アルケマから市販されているエチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸ターポリマー、ポリイソプレン-グラフト-無水マレイン酸、エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸ターポリマー、無水イタコン酸とMMA等のアクリレートとのコポリマー、無水イタコン酸-スチレンコポリマーが挙げられる。他の市販の芳香族二無水物及びポリ無水物も使用することができる。
【0106】
マレイミド含有化合物、ナジイミド含有化合物、及びイタコンイミド含有化合物としては、それぞれ以下の構造I、II、及びIIIを有する化合物が挙げられる。
【0107】
【0108】
式中、m=1~15、p=0~15であり、
各R2は水素又は低級アルキルから独立して選択され、
Jは、有機又はオルガノシロキサンラジカル、及びそれらの2つ以上の組み合わせを含む一価又は多価部分である。
【0109】
マレイミド、ナジイミド、及びイタコンイミドのより具体的な表現としては、それぞれ構造I、II、又はIIIに対応するものが挙げられ、式中、m=1~6、p=0、R2は独立して水素又は低級アルキルから選択され、Jは、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、ヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、ポリシロキサン、ポリシロキサン-ポリウレタンブロックコポリマー、及びそれらの2つ以上の組み合わせから選択される一価又は多価の基であり、共有結合、-O-、-S-、-NR-、-O-C(O)-、-O-C(O)-O-、-O-C(O)-NR-、-NR-C(O)-、-NR-C(O)-O-、-NR-C(O)-NR-、-S-C(O)-、-S-C(O)-O-、-S-C(O)-NR-、-S(O)-、-S(O)2-、-O-S(O)2-、-O-S(O)2-O-、-O-S(O)2-NR-、-O-S(O)-、-O-S(O)-O-、-O-S(O)-NR-、-O-NR-C(O)-、-O-NR-C(O)-O-、-O-NR-C(O)-NR-、-NR-O-C(O)-、-NR-O-C(O)-O-、-NR-O-C(O)-NR-、-O-NR-C(S)-、-O-NR-C(S)-O-、-O-NR-C(S)-NR-、-NR-O-C(S)-、-NR-O-C(S)-O-、-NR-O-C(S)-NR-、-O-C(S)-、-O-C(S)-O-、-O-C(S)-NR-、-NR-C(S)-、-NR-C(S)-O-、-NR-C(S)-NR-、-S-S(O)2-、-S-S(O)2-O-、-S-S(O)2-NR-、-NR-O-S(O)-、-NR-O-S(O)-O-、-NR-O-S(O)-NR-、-NR-O-S(O)2-、-NR-O-S(O)2-O-、-NR-O-S(O)2-NR-、-O-NR-S(O)-、-O-NR-S(O)-O-、-O-NR-S(O)-NR-、-O-NR-S(O)2-O-、-O-NR-S(O)2-NR-、-O-NR-S(O)2-、-O-P(O)R2-、-S-P(O)R2-、-NR-P(O)R2-から選択される1つ又は複数のリンカーを任意で含有し、式中、各Rは独立して水素、アルキル又は置換アルキル、及びそれらの任意の2つ以上の組み合わせである。
【0110】
当業者によって容易に認識されるように、上記の一価又は多価基の1つ又は複数が、マレイミド、ナジイミド又はイタコンイミド基の「J」付加を形成するために上記のリンカーの1つ又は複数を含有する場合、例えば、オキシアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、カルボキシルアルキル、オキシアルケニル、チオアルケニル、アミノアルケニル、カルボキシアルケニル、オキシアルケニル、チオアルケニル、アミノアルケニル、カルボキシアルケニル、オキシシクロアルキル、チオシクロアルキル、アミノシクロアルキル、カルボキシシクロアルキル、オキシシクロアルケニル、チオシクロアルケニル、アミノシクロアルケニル、カルボキシシクロアルケニル、複素環式、オキシ複素環式、チオ複素環式、アミノ複素環式、カルボキシ複素環式、オキシアリール、チオアリール、アミノアリール、カルボキシアリール、ヘテロアリール、オキシヘテロアリール、チオヘテロアリール、アミノヘテロアリール、カルボキシヘテロアリール、オキシアルキルアリール、チオアルキルアリール、アミノアルキルアリール、カルボキシアルキルアリール、オキシアリールアルキル、チオアリールアルキル、アミノアリールアルキル、カルボキシアリールアルキル、オキシアリールアルケニル、チオアリールアルケニル、アミノアリールアルケニル、カルボキシアリールアルケニル、オキシアルケニルアリール、チオアルケニルアリール、アミノアルケニルアリール、カルボキシアルケニルアリール、オキシアリールアルケニル、チオアリールアルケニル、アミノアリールアルケニル、カルボキシアリールアルケニル、オキシアルケニルアリール、チオアルケニルアリール、アミノアルケニルアリール又はカルボキシアルケニルアリール、オキシアルキレン、チオアルキレン、アミノアルキレン、カルボキシアルキレン、オキシアルケニレン、チオアルケニレン、アミノアルケニレン、カルボキシアルケニレン、オキシアルケニレン、チオアルケニレン、アミノアルケニレン、カルボキシアルケニレン、オキシシクロアルキレン、チオシクロアルキレン、アミノシクロアルキレン、カルボキシシクロアルキレン、オキシシクロアルケニレン、チオシクロアルケニル、アミノアルキルアリーレン、カルボキシアルキルアリーレン、オキシアリールアルキレン、チオアリールアルキレン、アミノアリールアルキレン、カルボキシアリールアルキレン、オキシアリールアルケニレン、チオアリールアルケニレン、アミノアリールアルケニレン、カルボキシアリールアルケニレン、オキシアルケニルアリーレン、チオアルケニルアリーレン、アミノアルケニルアリーレン、カルボキシアルケニルアリーレン、オキシアリールアルケニレン、チオアリールアルケニレン、アミノアリールアルケニレン、カルボキシアリールアルケニレン、オキシアルケニルアリーレン、チオアルケニルアリーレン、アミノアルケニルアリーレン、カルボキシアルケニルアリーレン、ヘテロアリーレン、オキシヘテロアリーレン、チオヘテロアリーレン、アミノヘテロアリーレン、カルボキシヘテロアリーレン、ヘテロ原子含有二価又は多価環状部分、オキシヘテロ原子含有二価又は多価環状部分、チオヘテロ原子含有二価又は多価環状部分、アミノヘテロ原子含有二価又は多価環状部分、カルボキシヘテロ原子含有二価又は多価環状部分、ジスルフィド、スルホンアミド、アミノシクロアルケニレン、カルボキシシクロアルケニレン、オキシアリーレン、チオアリーレン、アミノアリーレン、カルボキシアリーレン、オキシアルキルアリーレン、チオアルキルアリーレン等の様々なリンカーを製造できる。
【0111】
別の実施形態では、本発明の実施での使用が企図されるマレイミド、ナジイミド、及びイタコンイミドは、構造I、II、及びIIIを有し、式中、m=1~6、p=0~6、Jは、アルキル鎖上の置換基として、又はアルキル鎖の主鎖の一部として、任意で置換されたアリール部分を任意で含有し、アルキル鎖が約20個までの炭素原子を有する、飽和直鎖アルキル又は分枝鎖アルキル;
次の構造を有するシロキサン:
-(C(R3)2)d-[Si(R4)2-O]f-Si(R4)2-(C(R3)2)e-、-(C(R3)2)d-C(R3)-C(O)O-(C(R3)2)d-[Si(R4)2-O]f-Si(R4)2-(C(R3)2)e-O(O)C-(C(R3)2)e-,又は-(C(R3)2)d-C(R3)-O(O)C-(C(R3)2)d-[Si(R4)2-O]f-Si(R4)2-(C(R3)2)e-C(O)O-(C(R3)2)e-;
式中、
各R3は独立して水素、アルキル又は置換アルキルであり、
各R4は独立して水素、低級アルキル又はアリールであり、
d=1~10、
e=1~10、
f=1~50;
次の構造を有するポリアルキレンオキシド:
[(CR2)r-O-]f-(CR2)s-;
式中、
各Rは独立して水素、アルキル又は置換アルキルであり、
r=1~10、
s=1~10、
fは、上で定義した通りである;
次の構造を有する芳香族基:
【0112】
【0113】
式中、
各Arは、3個~10個の範囲の炭素原子を有する一置換、二置換又は三置換の芳香族又はヘテロ芳香族環であり、
Zは:
飽和直鎖アルキレン又は分枝鎖アルキレンであり、アルキレン鎖上の置換基として、又はアルキレン鎖の主鎖の一部として飽和環状部分を任意に含有する、あるいは、
次の構造を有するポリアルキレンオキシド:
-[(CR2)r-O-]q-(CR2)s-;
式中、
各Rは、独立して水素、アルキル又は置換アルキルであり、
r及びsは、それぞれ上記のように定義され、
qは1~50の範囲である;
次の構造を有する二置換又は三置換芳香族部分:
【0114】
【0115】
式中、
各Rは、独立して水素、アルキル又は置換アルキルであり、
tは2~10の範囲であり、
uは2~10の範囲であり、
Arは、上で定義した通りである;
次の構造を有する芳香族基:
【0116】
【0117】
式中、
各Rは、独立して水素、アルキル又は置換アルキルであり、
t=2~10、
k=1、2又は3、
g=1~約50、
各Arは、上で定義した通りであり、
Eは、-O-又は-NR5-であり、式中、R5は水素又は低級アルキルであり、
Wは、直鎖又は分岐鎖アルキル、アルキレン、オキシアルキレン、アルケニル、アルケニレン、オキシアルケニレン、エステル、又はポリエステル、構造-(C(R3)2)d-[Si(R4)2-O]f-Si(R4)2-(C(R3)2)e-、-(C(R3)2)d-C(R3)-C(O)O-(C(R3)2)d-[Si(R4)2-O]f-Si(R4)2-(C(R3)2)e-O(O)C-(C(R3)2)e-,又は-(C(R3)2)d-C(R3)-O(O)C-(C(R3)2)d-[Si(R4)2-O]f-Si(R4)2-(C(R3)2)e-C(O)O-(C(R3)2)e-を有するシロキサンであり、
各R3は、独立して水素、アルキル又は置換アルキルであり、
各R4は、独立して水素、低級アルキル又はアリールであり、
d=1~10、
e=1~10、
f=1~50;
下記構造を有するポリアルキレンオキシド:
-[(CR2)r-O-]f-(CR2)s-;
式中、
各Rは、独立して水素、アルキル又は置換アルキルであり、
r=1~10、
s=1~10、
fは、上で定義した通りであり;
ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ニトリル、シクロアルキル又はシクロアルケニルから選択される置換基を任意で含有する;
次の構造を有するウレタン基:
R7-U-C(O)-NR6-R8-NR6-C(O)-(O-R8-O-C(O)-NR6-R8-NR6-C(O))v-U-R8-
式中、
各R6は、独立して水素又は低級アルキルであり、
各R7は、独立して1~18個の炭素原子を有するアルキル、アリール,又はアリールアルキル基であり、
各R8は、鎖中に約100個までの原子を有するアルキル又はアルキルオキシ鎖、任意でArで置換されており、
Uは、-O-、-S-、-N(R)-、又は-P(L)1,2-であり、
式中、Rは上で定義した通りであり、各Lは独立して=O、=S、-OR又は-Rであり;
v=0~50;
多環式アルケニル;又はそれらの任意の2つ以上の混合物から選択される。
【0118】
それぞれ構造I、II及びIIIのこうしたマレイミド、ナジイミド、及びイタコンイミド含有化合物のより具体的な記載では、各Rは独立して水素又は低級アルキル(例えばC1-4)であり、-J-は、マレイミド、ナジイミド及び/又はイタコンイミド化合物を液体にするのに十分な長さと分枝を有する分枝鎖アルキル、アルキレン、アルキレンオキシド、アルキレンカルボキシル又はアルキレンアミド種を含み、mは1、2又は3である。
【0119】
特に望ましいマレイミド含有化合物としては、フェニル、ビフェニル、ビスフェニル又はナフチル結合等、間に芳香族基を有する2つのマレイミド基を有する化合物が挙げられる。
【0120】
マレイミド含有化合物、ナジイミド含有化合物、及びイタコンイミド含有化合物は、存在する場合、パートB組成物の総重量に基づき、約2~約15、例えば約5~約10、望ましくは約6~約8重量%の範囲の量で使用すべきである。
【0121】
上で説明したように、添加剤は、様々な性能特性に影響を与えるために、パートA又はパートB組成物のいずれか又は両方に包含されてよい。
【0122】
使用が考えられる充填剤としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、ダイヤモンド、グラファイト、酸化ベリリウム、マグネシア、ヒュームドシリカ又は溶融シリカ等のシリカ、アルミナ、過フッ素化炭化水素ポリマー(すなわち、テフロン)、熱可塑性ポリマー、熱可塑性エラストマー、マイカ、ガラス粉末等が挙げられる。好ましくは、これらの充填剤の粒径は約20μm以下である。
【0123】
シリカに関しては、シリカはナノ粒子サイズの平均粒径を有してよい。つまり、平均粒径は約10-9mである。シリカナノ粒子は、エポキシ樹脂中に予め分散させることができ、ドイツのナノレジン社から商品名ナノクリルで入手可能なものから選択されてよい。ナノクリルは、(メタ)アクリレートで強化されたシリカナノ粒子の製品ファミリーの商品名である。シリカ相は、直径50nm未満で粒度分布が非常に狭い、表面改質された合成SiO2ナノ粒子で構成されている。SiO2ナノ粒子は、(メタ)アクリレートマトリックス中に凝集物のない分散液であり、最大50重量%のシリカを含有する樹脂に対して低粘度をもたらす。
【0124】
シリカ成分は、組成物の総重量に基づいて、約1~約60重量%、例えば約3~約30重量%、望ましくは約5~約20重量%の範囲の量で存在すべきである。
【0125】
特にパートA組成物での使用が考えられる強化剤としては、低級アルケンモノマーと(i)アクリル酸エステル、(ii)メタクリル酸エステル又は(iii)酢酸ビニルとのエラストマーコポリマーから選択されるエラストマーポリマーが挙げられ、例えばアクリルゴム;ポリエステルウレタン;エチレン-酢酸ビニル;フッ素ゴム;イソプレン-アクリロニトリルポリマー;クロロスルフィド化ポリエチレン;及びポリ酢酸ビニルのホモポリマーが特に有用であることが判明した。米国特許第4,440,910号(オコナー)を参照。これらのそれぞれの開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。米国特許第4,440,910号では、エラストマーポリマーは、アクリル酸のアルキルエステルのホモポリマー;低級アルケン等の別の重合性モノマーと、アクリル酸のアルキルエステル又はアルコキシエステルとのコポリマー;並びにアクリル酸のアルキルエステル又はアルコキシエステルのコポリマーのいずれかとして記載されている。アクリルのアルキルエステル及びアルコキシエステルと共重合できる他の不飽和モノマーとしては、ジエン、反応性ハロゲン含有不飽和化合物、及びアクリルアミド等の他のアクリルモノマーが挙げられる。
【0126】
例えば、そのようなエラストマーポリマーの1つのグループは、ヴァマックの名称でデュポンによって製造される、ヴァマックN123及びヴァマックB-124等のアクリル酸メチルとエチレンのコポリマーである。ヴァマックN123及びヴァマックB-124は、エチレン/アクリルエラストマーのマスターバッチであるとデュポンによって報告されている。デュポンの材料ヴァマックGも同様のコポリマーであるが、色又は安定剤を提供するための充填剤は含有していない。ヴァマック CSゴムは、ヴァマック製品ラインの残りの要素が配合されるベースゴムであると思われる。ヴァマックVCS(ヴァマックMRとしても知られている)は、エチレン、アクリル酸メチル、及びカルボン酸硬化部位を有するモノマーの組み合わせの反応生成物であり、一度形成されると、加工助剤(離型剤のオクタデシルアミン、複合有機リン酸エステル及び/又はステアリン酸等)並びに酸化防止剤(置換ジフェニルアミン等)は実質的に含まれない。
【0127】
デュポンは、エチレン及びアクリル酸メチルから作られたゴムであるヴァマックVMX1012及びVCD6200の商品名で市場に提供している。ヴァマックVMX1012ゴムは、ポリマー主鎖にカルボン酸をほとんど又はまったく含まないと考えられている。ヴァマックVCSゴムと同様に、ヴァマックVMX1012及びVCD6200ゴムは、離型剤のオクタデシルアミン、複合有機リン酸エステル及び/又はステアリン酸等の加工助剤、並びに置換ジフェニルアミン等の酸化防止剤を実質的に含まない。これらのヴァマックエラストマーポリマーは全て、本明細書において有用である。
【0128】
さらに、塩化ビニリデン-アクリロニトリルコポリマー[米国特許第4,102,945号(グレーブ)を参照]、及び塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー[米国特許第4,444,933号(コロンブス)を参照]がパートA組成物に包含されてもよい。当然のことながら、これらの各米国特許の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0129】
ランクセス社から商品名レバメルトで市販されているポリエチレンとポリ酢酸ビニルのコポリマーが有用である。
【0130】
様々なレバメルトブランドのコポリマーが入手可能で、例えば、レバメルト400、レバメルト600、レバメルト900等が挙げられる。レバメルト製品は、存在する酢酸ビニルの量が異なる。例えば、レバメルト400は、40重量%の酢酸ビニルを含むエチレン-酢酸ビニルコポリマーを含む。レバメルト製品は顆粒状で提供される。顆粒はほぼ無色で、シリカ及びタルクがまぶされている。レバメルトは、ペンダントアセテート基を備えた飽和主鎖を形成するメチレン単位で構成されている。完全に飽和した主鎖の存在は、レバメルトブランドのコポリマーが特に安定であることを示している。これらは、従来のゴムを老化反応、オゾン、及び紫外線の影響を受けやすくする反応性二重結合を含有しない。飽和主鎖によりポリマーが堅牢になることが報告されている。
【0131】
興味深いことに、ポリエチレン/ポリ酢酸ビニルの比率に応じて、これらのレバメルトエラストマーの溶解度は様々なモノマーで変化し、溶解度の結果として強化する能力も変化する。
【0132】
レバメルトエラストマーはペレットの形状で入手でき、他の既知のエラストマー強化剤よりも配合が容易である。
【0133】
同じくランクセス社のレバプレンブランドのコポリマーも使用してよい。
【0134】
ドイツ、ミュンヘンのワッカーケミーAGから市販されているビンノール表面コーティング樹脂は、様々な産業用途での使用が促進されている広範囲の塩化ビニル由来のコポリマー及びターポリマーを代表するものである。これらのポリマーの主成分は、異なる組成の塩化ビニルと酢酸ビニルである。ビンノール製品ラインのターポリマーは、さらにカルボキシル基又はヒドロキシル基を包含する。これらの塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマーやターポリマーも使用してよい。
【0135】
カルボキシル基を有するビンノール表面コーティング樹脂は、塩化ビニル、酢酸ビニル、及びジカルボン酸のターポリマーであり、モル組成、重合度、重合プロセスが異なる。これらのターポリマーは、特に金属基材上で優れた接着性を示すことが報告されている。
【0136】
ヒドロキシル基を有するビンノール表面コーティング樹脂は、塩化ビニル、ヒドロキシアクリレート、及びジカルボキシレートのコポリマー及びターポリマーであり、その組成と重合度は異なる。
【0137】
官能基を有さないビンノール表面コーティング樹脂は、可変モル組成及び重合度の塩化ビニルと酢酸ビニルのコポリマーである。
【0138】
ゴム粒子、特に比較的小さい平均粒径(例えば、約500nm未満又は約200nm未満)を有するゴム粒子も、特にパートB組成物中に包含されてもよい。ゴム粒子は、既知のコアシェル構造に共通のシェルを有していても、有していなくてもよい
【0139】
コアシェル構造を有するゴム粒子の場合、こうした粒子は、一般に、非エラストマーポリマー材料(すなわち、周囲温度超過、例えば約50℃超過のガラス転移温度を有する熱可塑性又は熱硬化性/架橋ポリマー)から構成されるシェルによって囲まれた、エラストマー又はゴム状特性(すなわち、約0℃未満、例えば約-30℃未満のガラス転移温度)を有するポリマー材料から構成されるコアを有する。例えば、コアは、ジエンホモポリマー又はコポリマー(例えば、ブタジエン又はイソプレンのホモポリマー、ブタジエン又はイソプレンとビニル芳香族モノマー、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリレート等の1つ又は複数のエチレン性不飽和モノマーとのコポリマー)から構成されてよい一方、シェルは、適切に高いガラス転移温度を有する(メタ)アクリレート(例えば、メタクリル酸メチル)、ビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン)、シアン化ビニル(例えば、アクリロニトリル)、不飽和酸及び無水物(例えば、アクリル酸)、(メタ)アクリルアミド等の1つ又は複数モノマーのポリマー又はコポリマーから構成されてよい。ポリブチルアクリレート又はポリシロキサンエラストマー(例えば、ポリジメチルシロキサン、特に架橋ポリジメチルシロキサン)を包含する他のゴム状ポリマーもコアに適切に使用されてよい。
【0140】
典型的には、コアはゴム粒子の約50~約95重量%を構成し、シェルはゴム粒子の約5~約50重量%を構成する。
【0141】
ゴム粒子のサイズは比較的小さいことが好ましい。例えば、平均粒径は、約0.03~約2μm、又は約0.05~約1μmであってよい。ゴム粒子は、約500nm未満、例えば約200nm未満の平均直径を有してよい。例えば、コアシェルゴム粒子は、約25~約200nmの範囲内の平均直径を有してよい。
【0142】
これらのコアシェルゴムを使用すると、多くの場合、組成物内で予測可能な方法(硬化に向けた温度中性の観点から)で強化が起こる。これは、商業的に販売されるコアシェルゴムで通常観察される、実質的に均一な分散によるものである。
【0143】
このようなシェルを有さないゴム粒子の場合、ゴム粒子はこうした構造のコアに基づいていてよい。
【0144】
ゴム粒子のサイズは比較的小さいことが望ましい。例えば、平均粒径は約0.03~約2μm、又は約0.05~約1μmであってよい。本発明の特定の実施形態では、ゴム粒子は約500nm未満の平均直径を有する。他の実施形態では、平均粒径は約200nm未満である。例えば、ゴム粒子は、約25~約200nm、又は約50~約150nmの範囲内の平均直径を有してよい。
【0145】
上述したように、ゴム粒子は、乾燥形態で使用してもよく、マトリックス中に分散させてもよい。
【0146】
典型的に、組成物は、約5~約35重量%のゴム粒子を含有してよい。
【0147】
異なるゴム粒子の組み合わせを本発明で有利に使用してよい。ゴム粒子は、例えば、粒径、それぞれの材料のガラス転移温度、材料が、官能化されているかどうか、どの程度、どのように官能化されているか、表面が処理されているかどうか、及びどのように処理されているか等が異なる場合がある。
【0148】
本発明での使用に適したゴム粒子は、商業的供給元から入手可能である。例えば、エリオケム社によって供給されるゴム粒子、例えば、NEP R0401及びNEP R401S(共にアクリロニトリル/ブタジエンコポリマーをベースとする);NEP R0501(カルボキシル化アクリロニトリル/ブタジエンコポリマーをベースとする;CAS番号9010-81-5);NEP R0601A(ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンをベースとする;CAS番号70131-67-8);並びにNEP R0701及びNEP 0701S(ブタジエン/スチレン/2-ビニルピリジンコポリマーをベースとする;CAS番号25053-48-9)を使用してよい。また、パラロイド2314、パラロイド2300、及びパラロイド2600等のパラロイド商品名で、ペンシルベニア州フィラデルフィアのダウ・ケミカル社から入手可能なもの、並びにスタフィロイドAC-3832等のスタフィロイド商品名で、日本、大阪のガンズ・ケミカル社から入手可能なものがある。
【0149】
例えば、反応性ガス又は他の試薬で処理して、粒子表面上に極性基(例えば、ヒドロキシル基、カルボン酸基)を生成することによって粒子の外表面を修飾したゴム粒子も、本明細書での使用に適している。例示的な反応性ガスとしては、例えば、オゾン、Cl2、F2、O2、SO3、及び酸化性ガスが挙げられる。このような試薬を使用してゴム粒子を表面改質する方法は当技術分野で知られており、例えば、米国特許第5,382,635号;同第5,506,283号;同第5,693,714号;及び同第5,969,053号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。適切な表面改質ゴム粒子は、エクスシア社によって商品名ヴィスタマーで販売されているゴム等の商業的供給源からも入手可能である。
【0150】
ゴム粒子が最初に乾燥形態で提供される場合、接着剤組成物を硬化する前に、こうした粒子が接着剤組成物中に十分に分散していることを保証することが有利である可能性がある。すなわち、ゴム粒子の凝集体は、好ましくは、個別の個々のゴム粒子を提供するように粉砕され、これは、乾燥ゴム粒子と接着剤組成物の他の成分とを緊密且つ完全に混合することによって達成されてよい。
【0151】
増粘剤も有用である。
【0152】
安定剤及び抑制剤を使用して、早期のペルオキシドの分解及び重合を制御及び防止してもよい。抑制剤は、ヒドロキノン、ベンゾキノン、ナフトキノン、フェナントロキノン、アントラキノン、及びそれらの置換化合物から選択されてよい。2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール等の様々なフェノールも抑制剤として使用してよい。抑制剤は、重合性接着剤組成物の硬化速度に悪影響を与えることなく、組成物全体の約0.1重量%~約1.0重量%の量で使用してよい。
【0153】
第1の部分又は第2の部分の少なくとも一方は、スルフィミド、スルホンアミド、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、ジカルボン酸、無水マレイン酸、マレイン酸二無水物、無水コハク酸、及び無水フタル酸等の約12以下のpKaを有する有機酸を包含してよい。
【0154】
実際には、パートA組成物及びパートB組成物のそれぞれは、使用前に装置内の別々の格納容器に収容され、使用中、2つのパートが容器から絞り出され、混合され、基材表面に塗布される。容器は、二重チャンバーカートリッジのチャンバーであってもよく、個別の部品は、オリフィス(共通のオリフィス又は隣接するオリフィスであってよい)を通ってプランジャーを用いてチャンバーを通って前進し、次いで混合分注ノズルを通って進む。あるいは、容器は、同軸又は並列のパウチであってもよく、これを切断又は引き裂き、その内容物を混合して基材表面に塗布してもよい。
【0155】
本発明は、以下の実施例を検討することによってより容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0156】
特に断りのない限り、実施例におけるCA又はシアノアクリレートは、それぞれECA又はエチル-2-シアノアクリレートを指す。
【0157】
接着剤系を調製した。パートA組成物はECAをベースとし、酸性成分として三フッ化ホウ素/メタンスルホン酸/硫酸の組み合わせ、及びエチレン/酢酸ビニルコポリマーと共にt-BPBと混合した。表1を参照すると、パートB組成物は、特定の量で列挙された成分から調製された。
【0158】
【0159】
パートB組成物を表1に示す二液型接着剤系を、間に接着剤系を挟んで重ね合わせ、オフセットして貼り合わせた一対の基材に塗布し、室温で24時間硬化させた。厚さ1mmの接着剤を形成するために、1mmのプラスチックシムを使用して、接着する基材間に1mmのギャップを作った。接着剤系は、基材間に接着結合を形成した。
【0160】
表2は、接着アセンブリを40℃の温度で24時間硬化させた場合の、落下衝撃強度、ラップせん断強度、及び熱間強度に関して二液型接着剤系(及び評価を行うために従った試験方法)で得られた観察結果をまとめたものである。コネチカット州ロッキーヒルのヘンケル社から市販されているロックタイト4080を対照として使用する。ロックタイト4080は、ギャップ0mmでの落下衝撃が12.45、ギャップ1mmでの落下衝撃が1.65、GBMSでのラップせん断強度が3446、G10エポキシでのラップせん断強度が998、及びGBMSでの120℃における熱間強度が220であり、この順で示されている。
【0161】
【0162】
表1及び2に示した試料の多くは、1mmギャップでの衝撃性能と120℃の温度での熱間強度の両方が良好である。
【0163】
例えば、試料番号1~7は、対照と比較した場合、1mmギャップで優れた落下衝撃強度性能を示す。さらに、試料番号1~7のラップせん断強度は、対照と少なくとも同等であり、多くの場合、対照より優れている(使用する基材に応じて、試料番号4及び試料番号1~2を除く)。
【0164】
特に試料番号7の熱間強度は対照の4倍近くである。
【0165】
試料番号3、4及び5におけるポリエステルウレタンアクリレートであるBR-742Sの重量%がより高いと、熱間強度がさらに改善されるようである(下記の表2)。BR-742Sは比較的高いTgを有するが、ポリエステルウレタンアクリレートを包含することで、特に1mmギャップでの対照のロックタイト4080と比較して落下衝撃性能が向上したことから明らかなように、接着剤系の靱性も向上した(試料番号1~5、表2)。[従来、当業者であれば、一般的により高いTgを有する材料の使用は、落下衝撃性能及び靱性に悪影響を与えるであろうと予想するであろう。]
【0166】
追加の接着剤系を調製した。ここで、パートA組成物は上記のようにECAをベースとし、酸性成分として三フッ化ホウ素/メタンスルホン酸/硫酸の組み合わせ及びエチレン/酢酸ビニルコポリマーと共にt-BPBと混合した。表3を参照すると、接着剤系に使用されるパートB組成物は、特定の量で列挙された成分から調製された。
【0167】
【0168】
パートB組成物を表3に示す二液型接着剤系を、間に接着剤系を挟んで重ね合わせ、オフセットして貼り合わせた一対の基材に塗布し、室温で24時間硬化させた。接着剤系は、基材間に接着結合を形成した。
【0169】
表4は、接着アセンブリを40℃の温度で24時間硬化させた場合の、落下衝撃強度、ラップせん断強度、高温強度に関して接着剤系(及び試験方法)で得られた観察結果をまとめたものである。
【0170】
【0171】
上で述べ、便宜上再度ここに示したように、ロックタイト4080は、ギャップ0mmでの落下衝撃が12.45、ギャップ1mmでの落下衝撃が1.65、GBMSでのラップせん断強度が3446、G10エポキシでのラップせん断強度が998、及びGBMSでの120℃における熱間強度が220であり、この順で示されている。
【0172】
表3及び表4に示した試料は、1mmギャップでの衝撃性能と120℃の温度での熱間強度の両方が良好である。
【0173】
例えば、試料番号8~9(それぞれ無水物とマレイミドを含む)は、対照と比較した場合、1mmギャップで優れた落下衝撃強度性能を示す。
【国際調査報告】