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特表2024-517816注射デバイスのためのハウジング構成要素および薬剤容器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】注射デバイスのためのハウジング構成要素および薬剤容器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/24 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
A61M5/24 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567934
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 EP2022061648
(87)【国際公開番号】W WO2022233757
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】21315078.2
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ベアーテ・フランケ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ヘルマー
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE06
4C066HH03
(57)【要約】
本開示は、薬物送達デバイス(1)のハウジング(10)に関し、ハウジング(10)は:- 締結要素(120)を備えた第1の連結端(101)を含む第1のハウジング構成要素(100)であって、薬剤容器(300)を収容するような形状および構成であり、薬剤容器(300)は、機械的コーディング(350)および位置合わせ要素(330)を含む、第1のハウジング構成要素(100)と、- 薬物送達デバイス(1)の駆動機構(8)を収容するように構成され、締結要素(120)に対して相補形の対向締結要素(220)を備えた第2の連結端(201)を含む第2のハウジング構成要素(200)であって、第2の連結端(201)は、第1の連結端(101)に連結可能である、第2のハウジング構成要素(200)と、- 位置合わせ要素(330)に対して相補形であり、第1のハウジング構成要素(100)内または第1のハウジング構成要素(100)上に設けられた対向位置合わせ要素(130)と、- 第2のハウジング構成要素(200)内または第2のハウジング構成要素(200)上に設けられた機械的対向コーディング(250)とを含み、- ここで、薬剤容器(300)が第1のハウジング構成要素(100)内に配置され、機械的コーディング(350)が機械的対向コーディング(250)に整合しないとき、機械的コーディング(350)および機械的対向コーディング(250)は、締結要素(120)の対向締結要素(220)との係合を防止するように動作可能である。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイス(1)のハウジング(10)であって:
締結要素(120)を備えた第1の連結端(101)を含む第1のハウジング構成要素(100)であって、薬剤容器(300)を収容するような形状および構成であり、薬剤容器(300)は、機械的コーディング(350)および位置合わせ要素(330)を含む、第1のハウジング構成要素(100)と、
薬物送達デバイス(1)の駆動機構(8)を収容するように構成され、締結要素(120)に対して相補形の対向締結要素(220)を備えた第2の連結端(201)を含む第2のハウジング構成要素(200)であって、第2の連結端(201)は、第1の連結端(101)に連結可能である、第2のハウジング構成要素(200)と、
位置合わせ要素(330)に対して相補形であり、第1のハウジング構成要素(100)内または第1のハウジング構成要素(100)上に設けられた対向位置合わせ要素(130)と、
第2のハウジング構成要素(200)内または第2のハウジング構成要素(200)上に設けられた機械的対向コーディング(250)とを含み、
ここで、薬剤容器(300)が第1のハウジング構成要素(100)内に配置され、機械的コーディング(350)が機械的対向コーディング(250)に整合しないとき、機械的コーディング(350)および機械的対向コーディング(250)は、締結要素(120)の対向締結要素(220)との係合を防止するように動作可能である、前記ハウジング。
【請求項2】
第1の連結端(101)は、第1の側壁(102)を含み、第2の連結端(201)は、第2の側壁(202)を含み、第1の連結端(101)および第2の連結端(201)のうちの一方は、挿入部(110)を含み、第1の連結端(101)および第2の連結端(201)のうちの他方は、挿入部(110)に対して相補形のレセプタクル(210)を含み、挿入部(110)は、第1のハウジング構成要素(100)および第2のハウジング構成要素(200)を相互に締結するために、長手方向(z)に沿ってレセプタクル(210)内へ挿入可能である、請求項1に記載のハウジング(10)。
【請求項3】
締結要素(120)および対向締結要素(220)のうちの一方は、締結突出物(124)を含み、締結要素(120)および対向締結要素(220)のうちの他方は、締結凹部(222)を含む、請求項1または2に記載のハウジング(10)。
【請求項4】
締結突出物(124)は、スナップ要素(121)を含み、または構成し、締結凹部(222)は、スナップ要素(121)に対して相補形の対向スナップ要素(221)を含み、または構成する、請求項3に記載のハウジング(10)。
【請求項5】
締結凹部(222)は、第1の溝部分(225)および第2の溝部分(226)を含む締結溝(224)を含み、第1の溝部分(225)は、長手方向(z)に沿って延び、第2の溝部分(226)は、円周方向(w)に沿って延び、第1の溝部分(225)に合流する、請求項3または4に記載のハウジング(10)。
【請求項6】
機械的コーディング(350)および機械的対向コーディング(250)のうちの一方は、径方向コーディング突出物(352)を含み、機械的コーディング(350)および機械的対向コーディング(250)のうちの他方は、コーディング突出物(352)に対して相補形のコーディング凹部(252)を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のハウジング(10)。
【請求項7】
コーディング凹部(252)は、第1の溝部分(255)および第2の溝部分(256)を含むコーディング溝(254)を含み、第1の溝部分(225)は、長手方向(z)に沿って延び、第2の溝部分(226)は、円周方向(w)に沿って延び、第1の溝部分(225)に合流する、請求項6に記載のハウジング(10)。
【請求項8】
機械的対向コーディング(250)は、少なくとも1つの対向コーディング機能(251)を含み、機械的対向コーディング(250)は:
第2の側壁(202)上の対向コーディング機能(251)の数、
対向締結要素(220)に対する対向コーディング機能(251)の円周方向位置、
対向コーディング機能(251)の円周方向範囲、
第2の側壁(202)上の対向コーディング機能(251)の径方向範囲、および
長手方向(z)を横断する平面内の対向コーディング機能(251)の断面の幾何形状または形状
のうちの少なくとも1つによって画成される、請求項1~7のいずれか1項に記載のハウジング(10)。
【請求項9】
位置合わせ要素(330)および対向位置合わせ要素(130)のうちの一方は、位置合わせ突出物(332)を含み、位置合わせ要素(330)および対向位置合わせ要素(130)のうちの他方は、位置合わせ突出物(332)に対して相補形の位置合わせ凹部(132)を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のハウジング(10)。
【請求項10】
挿入部(110)は、第1または第2の側壁(102、202)のうちの一方に貫通凹部(152)を含み、該貫通凹部(152)は、機械的コーディング(350)および機械的対向コーディング(150)のうちの少なくとも一方を径方向に受け入れるようなサイズおよび形状である、請求項2~9のいずれか1項に記載のハウジング(10)。
【請求項11】
貫通凹部(152)は、薬剤容器(300)の機械的コーディング(350)に対して相補形の、または第2のハウジング構成要素(200)の機械的対向コーディング(250)に対して相補形の2次機械的対向コーディング(150)を提供または形成し、2次機械的対向コーディング(150)が機械的コーディング(350)または機械的対向コーディング(250)に整合しないとき、機械的コーディング(350)および2次機械的対向コーディング(150)は、第1のハウジング構成要素(100)内への薬剤容器(300)の完全な挿入およびレセプタクル(210)内への挿入部(110)の完全な挿入のうちの少なくとも一方を防止するように動作可能である、請求項10に記載のハウジング(10)。
【請求項12】
薬剤容器(300)であって:
請求項1~11のいずれか1項に記載のハウジング(10)の第1のハウジング構成要素(100)内へ挿入されるようなサイズおよび構成のバレル(301)と、
バレル(301)が第1のハウジング構成要素(100)内へ長手方向(z)に挿入されたときに第1のハウジング構成要素(100)の対向位置合わせ要素(130)に係合するようなサイズおよび形状であるバレル(301)上の位置合わせ要素(330)と、
バレル(301)が内側に配置された第1のハウジング構成要素(100)が第2のハウジング構成要素(200)に連結されたときに第2のハウジング構成要素(200)の機械的対向コーディング(250)に係合するようなサイズおよび形状であるバレル(301)上の機械的コーディング(350)とを含む、前記薬剤容器。
【請求項13】
機械的コーディング(350)は、少なくとも1つのコーディング機能(351)を含み、機械的コーディング(350)は:
バレル(301)上の少なくとも1つまたは2つのコーディング機能(351)の数、
バレル(301)上の位置合わせ要素(330)に対する少なくとも1つのコーディング機能(351)の円周方向位置、
少なくとも1つのコーディング機能(351)の円周方向範囲、
バレル(301)上の少なくとも1つのコーディング機能(351)の径方向範囲、および
長手方向(z)を横断する平面内の少なくとも1つのコーディング機能(351)の断面の幾何形状または形状
によって画成される、請求項12に記載の薬剤容器。
【請求項14】
注射デバイスであって:
請求項1~11のいずれか1項に記載のハウジング(10)と、
請求項12または13に記載の薬剤容器(300)であって、機械的コーディング(350)および位置合わせ要素(330)を含み、第1のハウジング構成要素(100)の内側に配置された、薬剤容器(300)と、
第2のハウジング構成要素(200)の内側に配置された駆動機構(8)とを含む、前記注射デバイス。
【請求項15】
請求項14に記載の第1の注射デバイス(1)と、請求項14に記載の第2の注射デバイス(1’)とを含む、注射デバイスのキットであって、第1の注射デバイス(1)の機械的コーディング(350)および機械的対向コーディング(250)のうちの一方は:
コーディング機能(351)または対向コーディング機能(251)の数、
バレル(301)上の位置合わせ要素(330)に対するコーディング機能(351)の円周方向位置、
対向締結要素(220)に対する対向コーディング機能(251)の円周方向位置、
コーディング機能(351)または対向コーディング機能(251)の円周方向範囲、
コーディング機能(351)または対向コーディング機能(251)の径方向範囲、および
長手方向(z)を横断する平面内のコーディング機能(351)または対向コーディング機能(251)の断面の幾何形状または形状
のうちの少なくとも1つに関して、第2の注射デバイス(1’)のそれぞれの機械的コーディング(350’)または機械的対向コーディング(250’)から区別される、前記キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬物送達デバイスおよびシステムの分野に関し、詳細には、液体薬剤を注射するための注射デバイスに関する。より詳細には、本開示は、概して複数の構成要素を含むハウジングを含む薬物送達デバイスおよびシステムを対象とし、1つのハウジング構成要素が、カートリッジなどの薬剤容器を収容するように構成され、別のハウジング構成要素が、薬剤容器に動作可能に係合して薬剤の用量を排出するまたは引き抜くための駆動機構を収容するように構成される。
【背景技術】
【0002】
液体薬剤の単一または複数の用量を設定および投薬するための薬物送達デバイスは、それ自体当技術分野ではよく知られている。概して、そのようなデバイスは、通常のシリンジの目的と実質的に類似した目的を有する。
【0003】
ペン型注射器などの薬物送達デバイスは、使用者特有の複数の要件を満たさなければならない。たとえば、患者が糖尿病などの慢性疾患を患っている場合、患者は身体的に虚弱である可能性があり、視覚障害を患っている可能性もある。したがって、特に家庭用医薬品向けの好適な薬物送達デバイスは、構造上頑強である必要があり、容易に使用できるべきである。さらに、デバイスおよびその構成要素の操作および一般的な取扱いは、分かりやすく容易に理解できるべきである。そのような注射デバイスは、可変サイズの薬剤の用量の設定および次の投薬を提供するべきである。さらに、用量設定ならびに用量投薬の手順は、容易に操作できて明快でなければならない。
【0004】
特定の疾患を患っている患者は、特定の量の薬剤がペン型注射シリンジを介して注射されること、またはポンプを介して注入されることを必要とすることがある。再利用可能な注射または送達デバイスに関して、患者はカートリッジを装填または交換しなければならないことがある。再利用可能な注射デバイスは、典型的には、複数の構成要素を含むハウジングを含む。たとえば、ハウジングは、本体などの近位ハウジング構成要素と、本体に取外し可能に連結可能なカートリッジホルダなどの遠位ハウジング構成要素とを含むことがある。カートリッジなどの薬剤容器内に提供された薬剤が空になった後、カートリッジホルダは注射デバイスの本体から切り離され、空のカートリッジが取り外されて、新しいカートリッジと交換されうる。
【0005】
別の問題は、カートリッジが本質的に標準的なサイズで製造され、特定の認められた地域的および国際的な規格に準拠するように製造されることに起因しうる。その結果、そのようなカートリッジは、典型的には標準的なサイズのカートリッジ(たとえば、3mlのカートリッジ)で供給される。したがって、様々なカートリッジが複数の異なる供給業者によって供給され、異なる薬剤を収容するが、単一の薬物送達デバイスに適合することがある。一例であるが、第1の供給業者からの第1の薬剤を収容する第1のカートリッジが、第2の供給業者によって提供される薬物送達デバイスに適合することがある。したがって、使用者は、薬物送達デバイスに間違った薬剤を装填することが可能になり、このとき、その医療用送達デバイスがおそらくそのようなカートリッジ向けに設計されていない、またはそのようなカートリッジとともに使用されることが意図されていないことに気付くことなく、前記薬剤(速効型インスリンまたは基礎インスリンなど)を投薬するおそれがある。
【0006】
したがって、使用者、医療提供者、介護者、規制当局、および医療用デバイス供給業者から、使用者が間違った薬物タイプを薬物送達デバイスに装填するという潜在的なリスクを低減させたいという要求が高まっている。間違った薬剤(または誤った濃度の薬剤)をそのような薬物送達デバイスから投薬するリスクを低減させることも望ましい。
【0007】
したがって、望ましくないカートリッジの相互使用を防止するために、カートリッジおよび/またはカートリッジホルダを、その薬物タイプに対して物理的に専用のものにし、または機械的にコーディングし、カートリッジおよび/もしくはカートリッジホルダ上にもしくはカートリッジおよび/もしくはカートリッジホルダとともに設けられた専用のもしくはコーディングされた機能のみを受け入れる、またはそのような機能のみと動作する注射デバイスを設計することが、一般に必要とされている。同様に、医療用送達デバイスが特有の薬剤を収容する認可されたカートリッジのみとともに使用されることを可能にしながら、望ましくないカートリッジの相互使用を防止する専用のカートリッジも、一般に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
薬物送達デバイスが複数の構成要素を含むハウジングを含み、たとえば第1および第2のハウジング構成要素を有するとき、これらのハウジング構成要素間にフェイルセーフの明確な機械的連結を提供することも望ましく、これらのハウジング構成要素は、取外し可能または取外し不能に連結可能とすることができる。ここで、本開示は、薬物送達デバイスの第1および第2のハウジング構成要素を連結および切断することに対する改善を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、本開示は、デバイスのハウジング、特に注射デバイスのハウジングに関する。ハウジングは、ペン型注射器のハウジングとして実装することができる。ハウジングは、第1のハウジング構成要素を含む。第1のハウジング構成要素は、第1の連結端を含む。第1の連結端には、締結要素が設けられる。第1のハウジング構成要素は、薬剤容器または薬剤リザーバ、たとえばカートリッジを収容するような形状および構成である。典型的には、薬剤容器には液体薬剤が充填される。薬剤容器は、機械的コーディングを含む。薬剤容器は、位置合わせ要素をさらに含む。位置合わせ要素は、機械的コーディングに加えて提供される。この文脈で、薬剤容器および薬剤リザーバという用語は同義語として使用される。
【0010】
機械的コーディングおよび位置合わせ要素は、薬剤容器の外面に設けることができる。典型的には、機械的コーディングおよび位置合わせ要素は、薬剤容器の共通の側壁に設けられる。機械的コーディングおよび位置合わせ要素はどちらも、薬剤容器の側壁の外面に、たとえば薬剤容器のバレルに設けることができる。
【0011】
ハウジングは、第2のハウジング構成要素をさらに含む。第2のハウジング構成要素は、駆動機構を収容するようなサイズおよび構成である。典型的には、駆動機構は、薬剤リザーバに動作可能に係合して薬剤リザーバから薬剤の1つまたは複数の用量を排出するまたは引き抜くように実装される。第2のハウジング構成要素は、第2の連結端を含む。
【0012】
第2の連結端には、対向締結要素が設けられる。対向締結要素は、第1のハウジング構成要素の締結要素に対して相補形である。第2の連結端は、第1の連結端に連結可能である。典型的には、第1および第2のハウジング構成要素は、それぞれの第1および第2の連結端によって相互に連結可能である。第1の連結端を第2の連結端に連結するとき、締結要素は対向締結要素に係合し、逆も同様である。
【0013】
典型的には、第1のハウジング構成要素および第2のハウジング構成要素は、締結要素および対向締結要素の相互係合によって相互に連結可能および固定可能である。
【0014】
ハウジングは、位置合わせ要素に対して相補形の対向位置合わせ要素をさらに含み、対向位置合わせ要素は、第1のハウジング構成要素内または第1のハウジング構成要素上に設けられる。対向位置合わせ要素によって、典型的には薬剤容器を第1のハウジング構成要素内へ挿入するとき、薬剤容器を第1のハウジング構成要素に対して位置合わせすることができる。位置合わせ要素および対向位置合わせ要素の相互係合は、第1のハウジング構成要素の内側に薬剤リザーバに対する回転インターロックを提供することができる。典型的には、第1のハウジング構成要素は管状である。第1のハウジング構成要素は、管状バレルを構成することができる。対向位置合わせ要素が位置合わせ要素に係合することによって、薬剤リザーバが長手方向軸を回転軸として第1のハウジング構成要素に対して回転することが妨げられる。薬剤リザーバを第1のハウジング構成要素内へ挿入するとき、薬剤リザーバの位置合わせ要素を第1のハウジング構成要素の対向位置合わせ要素に位置合わせして係合させることによって、薬剤リザーバを第1のハウジング構成要素に回転不能にロックすることができる。
【0015】
さらに、ハウジングは、第2のハウジング構成要素内または第2のハウジング構成要素上に設けられた機械的対向コーディングを含む。機械的対向コーディングは、薬剤リザーバの機械的コーディングに対して相補形である。薬剤リザーバが第1のハウジング構成要素内に配置され、かつ機械的コーディングが機械的対向コーディングに整合しないとき、機械的コーディングおよび機械的対向コーディングは、締結要素の対向締結要素との係合を防止するように動作可能である。言い換えれば、1対の機械的コーディングおよび機械的対向コーディングが整合しないことによって、第1のハウジング構成要素を第2のハウジング構成要素に締結することが実質的に阻止および防止される。このようにして、特定の駆動機構に連結することが意図されていない誤った薬剤リザーバの意図しない相互使用を実質的に防止することができる。
【0016】
薬剤容器の位置合わせ要素の第1のハウジング構成要素の対向位置合わせ要素との相互係合によって、第1のハウジング構成要素と薬剤リザーバとの間の回転インターロックを提供することができる。さらに、相互に係合する位置合わせ要素および対向位置合わせ要素によって、薬剤容器は、1つまたはいくつかの所定または専用の向きでのみ、第1のハウジング構成要素内へ挿入可能とすることができる。それに応じて、位置合わせ要素および対向位置合わせ要素は、第1のハウジング構成要素内への薬剤容器の挿入が可能になり支持される、第1のハウジング構成要素に対する薬剤容器の1つまたはいくつかの選択されたまたは専用の向きまたは位置のみを可能にしてそれを支持する。
【0017】
したがって、位置合わせ要素および対向位置合わせ要素は、第1のハウジング構成要素の締結要素に対する機械的コーディングの1つまたはいくつかの許容可能な向きまたは位置を画成する。このようにして、締結要素が対向締結要素に係合するとき、第2のハウジング構成要素の機械的対向コーディングに対する薬剤容器の機械的コーディングの相対位置を画成することができる。
【0018】
ハウジングは、薬剤容器と第2のハウジング構成要素との間の直接連結を提供することなく、薬剤容器と第2のハウジング構成要素との相互コーディングおよび対向コーディングを提供する。典型的には、ハウジングは、薬剤容器と第2のハウジング構成要素との間の直接相互連結をもたない。いくつかの例では、第2のハウジング構成要素は、第1のハウジング構成要素に排他的に連結可能である。薬剤容器は、第1のハウジング構成要素に排他的に挿入可能および係合可能である。このとき、第1のハウジング構成要素は、第2のハウジング構成要素に連結可能および係合可能である。
【0019】
典型的には、薬剤容器および第1のハウジング構成要素は、たとえば相互に対応する当接面によって、長手方向に係合可能であり、そのような当接面は、たとえばそれぞれ第1のハウジング構成要素および薬剤容器の長手方向遠位端に設けることができる。薬剤容器が事前に組み立てられた第1のハウジング構成要素は、長手方向に沿った挿入運動によって、第2のハウジング構成要素に連結可能とすることができる。薬剤容器のコーディングが第2のハウジング構成要素の対向コーディングに整合しないとき、第2のハウジング構成要素に対する第1のハウジング構成要素のそのような長手方向の組立て運動を実質的に阻止または妨害することができる。
【0020】
いくつかの例では、薬剤容器の位置合わせ要素は、2次機械的コーディングと見なすことができ、または2次機械的コーディングを提供することができ、対向位置合わせ要素は、2次機械的対向コーディングを提供することができる。いくつかの例では、薬剤容器は、位置合わせ要素によって、したがってその2次機械的コーディングによって符号化することができる。こうして、位置合わせ要素がサイズ、形状、または輪郭に関して対向位置合わせ要素に整合するときのみ、第1のハウジング構成要素内への薬剤容器の挿入が可能にされ、そのように支持される。他の組合せでは、位置合わせ要素が対向位置合わせ要素に整合しないとき、または複数の位置合わせ要素が複数の対向位置合わせ要素に整合しないとき、第1のハウジング構成要素内への薬剤リザーバの挿入を実質的に防止および阻止することができる。このようにして、位置合わせ要素と対向位置合わせ要素との相互係合は2次機械的コーディングを提供することができ、それによって第1のハウジング構成要素内への誤った薬剤容器の挿入を妨害または阻止することができる。
【0021】
いくつかの例では、薬剤容器は、2重に機械的に符号化することができる。位置合わせ要素によって、薬剤容器は、第1のハウジング構成要素に対して機械的に符号化することができる。機械的コーディングによって、薬剤容器は、第2のハウジング構成要素に対して符号化することができる。
【0022】
2つの異なるハウジング構成要素に対する、すなわち一方の側では第1のハウジング構成要素、他方の側では第2のハウジング構成要素に対する、薬剤容器の意図された2倍の機械的符号化は、異なる形で符号化されたハウジング構成要素を含むキットを提供するために、第1のハウジング構成要素および第2のハウジング構成要素を締結要素および対向締結要素に対して修正する必要がないという利益をさらに提供する。それに応じて、第1のハウジング構成要素を第2のハウジング構成要素に連結可能および/または固定可能である締結機構を、一連の異なる形で符号化された薬剤容器および第2のハウジング構成要素の対に対して、場合により異なる形で符号化された第1のハウジング構成要素のみに対して、同様に実装することができる。これにより、第1および第2のハウジング構成要素の大量製造が有効になり、簡略化される。それに応じて、第1および第2のハウジング構成要素のための生産コストを低減させることができる。
【0023】
いくつかの例では、異なる形で符号化された多数のハウジング構成要素を含むキットまたはセットによって、第1のハウジング構成要素を常に同様に実装することができる。ここで、機械的コーディングによって区別される薬剤リザーバを含むキットを有することによって、符号化を排他的に提供することができる。このとき、異なる形で符号化されたハウジングを含むキットまたはセットの第2のハウジング構成要素にのみ、相補形の機械的対向コーディングを設けることができる。このようにして、異なる形で符号化された複数のハウジングに対して、第2のハウジング構成要素のみが対向コーディング機能に対して変動することができ、第1のハウジング構成要素は実質的に変化しないままとすることができる。第1のハウジング構成要素は、機械的コーディングまたは機械的対向コーディングを含まなくてよい。したがって、第1のハウジング構成要素は、それぞれの対向コーディング機能またはコーディング機能を含まなくてよい。
【0024】
さらなる例によれば、第1の連結端は、第1の側壁を含む。第2の連結端は、第2の側壁を含む。第1の連結端および第2の連結端のうちの一方は、挿入部を含む。第1の連結端および第2の連結端のうちの他方は、レセプタクルを含む。レセプタクルは、挿入部に対して相補形である。挿入部は、第1のハウジング構成要素および第2のハウジング構成要素を相互に締結するために、長手方向に沿ってレセプタクル内へ挿入可能である。最終組立て構成で、挿入部はレセプタクルによって密閉される。薬剤容器が第1のハウジング構成要素の内側に事前に組み立てられている場合、挿入部は、薬剤容器の機械的コーディングが第2のハウジング構成要素の機械的対向コーディングに整合するときのみ、またはそのようなときのみ排他的に、レセプタクル内へ挿入可能である。
【0025】
典型的には、第1の連結端は長手方向連結端である。第1の連結端は、第1のハウジング構成要素の長手方向近位端に設けることができる。相補的に、第2の連結端は、第2のハウジング構成要素の長手方向連結端としても実装することができる。第2の連結端は、第2のハウジング構成要素の長手方向遠位端に設けることができる。挿入部およびレセプタクルは、少なくとも第1および第2の連結端に対して、第1および第2のハウジング構成要素の入れ子状の配置または嵌め込み式の配置を提供する。挿入部およびレセプタクルの入れ子状の挿入または相互に重複する挿入は、第1および第2のハウジング構成要素間に耐久性のある機械的に安定した明確な連結インターフェースを提供する。
【0026】
典型的には、締結要素は、挿入部の外面およびレセプタクルの内面のうちの一方に設けられる。対向締結要素は、挿入部の外面およびレセプタクルの内面のうちの他方に設けられる。このようにして、挿入部がレセプタクル内へ挿入されるとき、締結要素は対向締結要素に係合し、レセプタクルに対する挿入部の機械的固定を提供し、それによって第1のハウジング構成要素を第2のハウジング構成要素に機械的にロックする。
【0027】
締結要素および対向締結要素の相互係合は、取外し不能または解放可能なタイプとすることができる。締結要素および対向締結要素の取外し不能な実装では、第1のハウジング構成要素は第2のハウジング構成要素に恒久的に連結可能および固定可能である。第1および第2のハウジング構成要素のうちの一方を破壊しない限り、相互の固定を破棄または解放することはできない。締結要素および対向締結要素の取外し可能または解放可能な実装では、第1および第2のハウジング構成要素間の連結を解放することができる。これにより、たとえば薬剤容器内に提供された薬剤が使い尽くされたとき、薬剤容器を交換する可能性が提供される。
【0028】
さらなる例によれば、締結要素および対向締結要素のうちの一方は、締結突出物を含む。締結要素および対向締結要素のうちの他方は、相補形の締結凹部を含む。典型的には、たとえば第1または第2のハウジング構成要素の管状の形状に対して、締結突出物は径方向締結突出物であり、締結凹部は径方向締結凹部である。
【0029】
締結突出物は、挿入部をレセプタクル内へ挿入したとき、締結凹部に係合することができる。レセプタクル内への挿入部の挿入運動によって、径方向締結突出物は、相補形の径方向締結凹部に係合する。
【0030】
いくつかの例では、1対の締結要素および1対の相補形の対向締結要素を設けることができる。2対の締結要素および対向締結要素の場合、それぞれの締結要素を挿入部またはレセプタクルの側壁の両側に設けることができる。このようにして、挿入部とレセプタクルとの間に2倍の機械的係合を提供することができる。第1および第2のハウジング構成要素間の相互連結の安定性および剛性を改善することができる。
【0031】
さらなる例では、3つまたはそれ以上の締結要素を第1のハウジング構成要素に設けることもでき、そのような締結要素は、第2のハウジング構成要素に設けられたそれぞれの数の3つまたはそれ以上の対向締結要素に対して相補形とすることができる。
【0032】
別の例によれば、締結突出物は、スナップ要素を含み、または構成する。締結凹部は、スナップ要素に対して相補形のそれぞれの対向スナップ要素を含み、または構成する。径方向締結突出物および径方向締結凹部によって、それぞれのスナップ要素および対向スナップ要素は、径方向に弾性変形可能になるような構成および形状である。スナップ要素が相補形の対向スナップ要素に係合することによって、締結要素が対向締結要素に係合したという可聴および/または触覚のフィードバックを使用者に提供することができる。
【0033】
締結要素を備えたスナップ要素および対向締結要素を備えた対向スナップ要素はまた、明確な最終組立て構成を提供し、締結要素は対向締結要素に固定して係合される。
【0034】
さらなる例によれば、締結凹部は締結溝を含む。締結溝は、第1の溝部分および第2の溝部分を含む。第1の溝部分は、長手方向に沿って延びる。第2の溝部分は、円周方向に沿って延び、第1の溝部分に合流する。ここで、長手方向および円周方向は、それぞれの第1または第2のハウジング構成要素の管状の形状によって画成される。いくつかの例では、第2の溝部分は、第1の溝部分に実質的に直交して延びる。こうして、締結凹部はL字形の輪郭である。
【0035】
締結要素と対向締結要素との相互係合には、挿入部をレセプタクル内へ純粋に長手方向に誘導する挿入運動を行い、それに続いて、長手方向軸を回転軸として第1のハウジング構成要素を第2のハウジング構成要素に対して回転させる必要がある。このようにして、2段階の組立てプロセスを提供することができる。第1の相互組立て段階中、たとえばレセプタクル内への挿入部の最終挿入位置に到達するまで、第1のハウジング構成要素は、第2のハウジング構成要素に対して長手方向摺動運動を受ける。
【0036】
その後、第2の組立て段階中、締結要素および対向締結要素の相互締結を確立するために、第1のハウジング構成要素を第2のハウジング構成要素に対して回転させなければならない。典型的には、スナップ要素および対向スナップ要素は、第2のハウジング構成要素に対する第1のハウジング構成要素の回転後または回転中に相互に係合する。中間組立て構成である最終挿入位置から始まり、最終組立て構成に到達するまで、第1のハウジング構成要素を第2のハウジング構成要素に対して回転させまたは捩らなければならず、最終組立て構成は、たとえばスナップ要素の対向スナップ要素との相互係合によって画成され、それによってそれぞれ第1および第2のハウジング構成要素に対する回転止めも提供する。
【0037】
さらなる例によれば、締結溝の第1の溝部分は、第1および第2の連結端のうちの一方の長手方向端面に隣接する。第2の溝部分は、第1および第2の連結端のうちの一方のそれぞれの長手方向端面から長手方向距離をあけて、第1の溝部分に合流する。第1の溝部分が長手方向端面に隣接するため、挿入部をレセプタクル内へ挿入したとき、締結突出物が第1の溝部分に入り、第1の溝部分に沿って摺動することが可能になる。最終挿入位置または構成に到達したとき、締結突出物は第2の溝部分と位置合わせされており、このとき第1のハウジング構成要素が第2のハウジング構成要素に対して回転させられると、第2の溝部分に入り、円周方向に第2の溝部分に沿って摺動することが可能になる。締結突出物が締結溝に係合することによって、第1および第2のハウジング構成要素間に一種のバイオネット接合を提供および確立することができる。
【0038】
いくつかの例では、対向スナップ要素は第2の溝部分内に位置する。対向スナップ要素は、第2の溝部分の底部または側壁または側縁に設けることができる。たとえば、対向スナップ要素は、第2の溝部分の底部に径方向凹部または径方向突起として実装することができる。別法として、対向スナップ要素は、第2の溝部分の側壁または側縁から内方に突出する突起として実装することができる。対向スナップ要素を第2の溝部分の内側に実装することで、それぞれの対向スナップ要素のより小型の設計のための多数の可能性および選択肢が提供される。
【0039】
さらなる例によれば、対向スナップ要素は、第1の溝部分とは反対に位置する第2の溝部分の長手方向端に位置する。第2の溝部分の長手方向端は、第2の溝部分の終端に提供または形成することができる。第2の溝部分の長手方向端は、第2の溝部分の第1の円周方向端を画成することができ、第2の溝部分の第1の円周方向端は、第2の溝部分の第2の円周方向端とは反対に位置する。典型的には、第2の溝部分の第2の円周方向端は、第1の溝部分に合流することができる。ここで、第2の溝部分は円周方向に延びるため、第2の溝部分の長手方向端は、第1の溝部分から円周方向および/または接線方向にずれて位置することができる。
【0040】
別の例によれば、対向スナップ要素は、第2の溝部分内に径方向凹部を含み、スナップ要素は、対向スナップ要素の径方向凹部に係合するための径方向突起を含む。ここで、いくつかの例では、スナップ要素は、締結要素の径方向突起に一致することができる。代替の例では、対向スナップ要素は、第2の溝部分内に突起を含み、スナップ要素は、対向スナップ要素の径方向突起に係合するための相補形の凹部を含む。ここで、対向スナップ要素は、第2の溝部分に沿って摺動するような形状および構成であるスナップ要素の相補形の凹状構造に係合するように第2の溝部分の底部または第2の溝部分の側縁から内方に突出する突起を含むことができる。
【0041】
さらなる例によれば、機械的コーディングおよび機械的対向コーディングのうちの一方は、径方向コーディング突出物を含む。機械的コーディングおよび機械的対向コーディングのうちの他方は、コーディング突出物に対して相補形のコーディング凹部を含む。いくつかの例では、径方向コーディング突出物は、薬剤容器の側壁の外面に設けられる。このとき、コーディング凹部は、第2のハウジング構成要素の側壁の内面に、たとえば第2のハウジング構成要素のレセプタクルの内面に設けられる。
【0042】
典型的には、機械的コーディングは、1つまたはいくつかのコーディング機能を含む。それに対応して、機械的対向コーディングは、少なくとも1つの相補形の機械的対向コーディング機能を含む。機械的コーディングは、コーディング機能の数、コーディング機能の幾何形状、コーディング機能の円周方向位置、それぞれのコーディング機能の円周方向範囲、コーディング機能の径方向位置、それぞれのコーディング機能の径方向範囲、および/または長手方向を横断する平面内、したがって第1もしくは第2のハウジング構成要素の管状の形状に対して径方向および円周方向によって画成された平面内のそれぞれのコーディング機能の断面の幾何形状もしくは形状によって画成することができ、これらによって他の機械的コーディングから区別することができる。
【0043】
機械的対向コーディングは、それぞれの対向コーディング・パラメータに関して、たとえばそれぞれの対向コーディング機能の数、円周方向位置、円周方向範囲、径方向位置、径方向範囲に関して、および/または横断平面内の断面の幾何形状もしくは形状に関して、相補形とすることができ、それに応じて画成することができる。
【0044】
いくつかの例では、機械的対向コーディングは、第2のハウジング構成要素の遠位端面で内側側壁から径方向に延びる径方向凹部または径方向突起を含むことができる。挿入部をレセプタクル内へ挿入したとき、機械的対向コーディング、したがって機械的対向コーディング機能は、鍵孔または鍵として働き、そのように挙動することができ、第1のハウジング構成要素の内側に正確に事前に組み立てられたとき、薬剤容器の機械的コーディングの相補形のコーディング機能の摺動運動を提供することができる。
【0045】
最終挿入位置または最終挿入構成に到達した後、機械的コーディングは、機械的対向コーディングを長手方向に通過している。最終挿入位置または挿入構成に到達したとき、機械的コーディングを機械的対向コーディングから係合解除することができ、逆も同様である。
【0046】
他の例では、機械的コーディングおよび機械的対向コーディングは、最終挿入位置に到達したとき、相互係合状態を維持することができる。機械的コーディングおよび機械的対向コーディングはまた、第2の組立て段階中、たとえば第1のハウジング構成要素が第2のハウジング構成要素に対して回転させられたとき、相互係合状態を維持することができる。
【0047】
さらなる例によれば、コーディング凹部は、コーディング溝を含む。コーディング溝は、第1の溝部分および第2の溝部分を含む。第1の溝部分は、長手方向に沿って延びる。第2の溝部分は、円周方向に沿って延び、第1の溝部分に合流する。こうして、コーディング溝は、L字形の幾何形状を含むことができる。コーディング溝は、それぞれの第1または第2のハウジング構成要素の第1または第2の側壁のうちのいずれか一方を通って延びる貫通口を含まなくてもよい。
【0048】
いくつかの例では、第2の溝部分は、第1の溝部分に直交して延びる。典型的には、コーディング溝の全体的な形状は、締結溝の全体的な形状と実質的に同一である。このようにして、締結突出物が締結溝の第1および第2の溝部分を通って案内されるとき、コーディング突出物は、コーディング溝のそれぞれの第1および第2の溝部分内へ摺動される。
【0049】
さらなる例によれば、コーディング溝の第1の溝部分は、第1および第2の連結端のうちの一方の長手方向端面に隣接する。第2の溝部分は、第1および第2の連結端のうちの一方の長手方向端面から所定の長手方向距離をあけて、第1の溝部分に合流する。こうして、L字形の幾何形状を有する一種のバイオネット溝を提供することができる。コーディング突出物およびコーディング溝の相互係合によって、薬剤容器と第2のハウジング構成要素との間に明確な直接の機械的係合を提供することができる。このようにして、駆動機構と薬剤リザーバとの間の機械的公差を低減させることができる。
【0050】
いくつかの例では、第2の溝部分を円周方向に傾斜させることも考えられる。したがって、第2の溝部分は、螺旋形の形状を含むことができ、したがって特定の、したがって0以外のリードを含むことができる。こうして、第1および第2のハウジング構成要素の相互回転中、それによって薬剤容器は第2のハウジング構成要素に対して第1のハウジング構成要素とともに回転し、コーディング突出物のコーディング溝との相互係合は、薬剤リザーバを近位方向に駆動機構の方へ動かす働きをすることができる。いくつかの例では、薬剤容器は、たとえば薬剤リザーバの遠位端から薬剤の用量を排出するためにバレルの側壁に対して長手方向に沿って可動の栓またはストッパによって近位方向に封止された管状バレルを含む。
【0051】
機械的コーディングまたは機械的対向コーディングのうちの少なくとも一方によって提供される螺旋形のコーディング溝により、第1および/または第2のハウジング構成要素、したがって駆動機構に対する薬剤リザーバの少なくともわずかな軸方向または長手方向の運動を容易に実装することができる。こうして、最終組立て構成に到達したとき、駆動機構、たとえばピストンロッドの遠位端が、薬剤リザーバの栓またはストッパの近位端面に長手方向に直接当接することを実現することができる。
【0052】
このようにして、駆動機構の長手方向の公差または駆動機構と薬剤リザーバとの間の長手方向の公差を実質的に低減させることができる。それに対応して、薬剤リザーバを最初に使用するとき、プライミング手順または空気ショットの実施を不要にすることができ、実質的に回避することができる。
【0053】
いくつかの例では、機械的コーディングは、たとえば第1または第2の側壁の正反対に位置する部分に設けられた、少なくとも2つのコーディング機能を含む。相補的に、機械的対向コーディングは、第1および第2の側壁のうちの他方のそれぞれの正反対の場所に設けられた、それぞれの第1および第2の対向コーディング機能を含む。このようにして、機械的コーディングと機械的対向コーディングとの間に少なくとも2倍の機械的係合を提供することができる。機械的コーディングが機械的対向コーディングに係合することを介して長手方向の力の作用が伝達されるはずである場合、第2のハウジング構成要素と薬剤リザーバとの間に非対称の力が作用することを防止するために、少なくとも2つのコーディング機能と少なくとも2つの相補形の対向コーディング機能との複数の同時係合が有益である。
【0054】
さらなる例によれば、機械的対向コーディングは、少なくとも1つの対向コーディング機能を含み、機械的対向コーディングは、第2の側壁上の対向コーディング機能の数、対向締結要素に対する対向コーディング機能の円周方向位置、対向コーディング機能の円周方向範囲、第2の側壁上の対向コーディング機能の径方向範囲のうちの少なくとも1つによって、および/または長手方向を横断する平面内の対向コーディング機能の断面幾何形状もしくは断面形状によって画成される。
【0055】
機械的対向コーディングが相補形の機械的コーディングに整合するためには、上記のコーディング・パラメータのうちの各々が機械的コーディングのそれぞれのコーディング・パラメータに整合することが必要とされる。機械的対向コーディングの上述した対向コーディング・パラメータのうちのいずれか1つが機械的コーディングのそれぞれのコーディング・パラメータに整合しない場合、それぞれのコーディング機能が対向コーディング機能に整合しないことで、第2のハウジング構成要素に対する薬剤容器の相互組立てを防止する働きをし、さらに薬物送達デバイスの第1のハウジング構成要素および第2のハウジング構成要素の相互組立てを防止する働きをする。
【0056】
別の例によれば、機械的コーディングは、長手方向に対するコーディング機能の位置および長手方向におけるコーディング機能の範囲の組合せによって画成することができる。コーディング機能が相補形の対向コーディング機能に整合するためには、径方向コーディング突出物の長手方向範囲がコーディング溝の第2の溝部分の長手方向範囲、したがって長手方向延長幅に整合することを必要とすることができる。そうではなく、コーディング突出物の長手方向範囲が第2の溝部分の幅または長手方向範囲より大きい場合、コーディング突出物が第2の溝部分に入ることが妨げられ、それによって第1のハウジング構成要素に対する薬剤容器の回転運動が阻止される。薬剤容器は、位置合わせ要素の対向位置合わせ要素との相互係合によって、第1のハウジング構成要素に回転不能にロックされており、またはロック可能であるため、コーディング機能が対向コーディング機能に整合しないことで、第1のハウジング構成要素が第2のハウジング構成要素に対して最終組立て構成の方へ回転することも防止する。
【0057】
いくつかの例では、コーディング機能の長手方向位置、したがってコーディング突出物の長手方向位置は、第2の溝部分の長手方向位置に整合しない。このとき、コーディング突出物を長手方向にコーディング溝の第1の溝部分へ挿入することは可能であるが、第1および第2のハウジング構成要素の最終挿入構成に到達したとき、コーディング突出物は、第2の溝部分と適切に位置合わせされない。このとき、薬剤容器の回転、したがって第2のハウジング構成要素に対する第1のハウジング構成要素の回転も同様に、実質的に阻止および妨害される。
【0058】
いくつかの例では、ハウジングキットの第1のハウジングのコーディング機能および対向コーディング機能は、第2の溝部分の長手方向位置を変動させ、それに対応してコーディング突起の長手方向位置を変動させることによって、別のハウジングのコーディング機能および対向コーディング機能とは区別される。ここで、第2のハウジング構成要素および薬剤容器の側壁のうちの一方の長手方向端から第2の溝部分までの長手方向距離の増大は、相補形のコーディング突出物の長手方向範囲の増大を伴い、それに対応して第2のハウジング構成要素および薬剤容器の側壁のうちの他方の長手方向端からコーディング突出物までの距離の減少を伴う。このようにして、1つの専用の機械的コーディングが1つの専用の機械的対向コーディングのみに整合または嵌合し、逆も同様であることを実現することができる。
【0059】
さらなる例によれば、位置合わせ要素および対向位置合わせ要素のうちの一方は、位置合わせ突出物を含む。位置合わせ要素および対向位置合わせ要素のうちの他方は、位置合わせ凹部を含む。位置合わせ凹部は、位置合わせ突出物に対して相補形である。典型的には、位置合わせ要素は、薬剤リザーバの外面に設けられる。対向位置合わせ要素は、第1のハウジング構成要素の内面に設けられる。位置合わせ要素および機械的コーディングは、薬剤容器の側壁の共通の長手方向位置または長手方向部分に位置することができる。
【0060】
いくつかの例では、位置合わせ要素および機械的コーディングはどちらも、薬剤容器の近位端に設けることができる。
【0061】
いくつかの例では、位置合わせ要素は、機械的コーディングから長手方向および/または接線方向にずらすことができる。
【0062】
いくつかの例では、機械的対向コーディングは、対向締結要素から長手方向および/または接線方向にずれて設けられ、または位置する。
【0063】
典型的には、対向コーディングは、対向締結要素から分離される。
【0064】
いくつかの例では、対向位置合わせ要素は、締結要素から長手方向および/または接線方向にずれて設けられ、または位置する。
【0065】
典型的には、対向位置合わせ要素は、締結要素から分離される。
【0066】
締結要素を対向位置合わせ要素から分離すること、および/または対向締結要素を機械的対向コーディングから分離することによって、共通の締結構造、たとえば同一の形状および/または同一の構成の締結要素および対向締結要素を含む、薬物送達デバイスの異なる形で符号化されたハウジングを含むキットを提供することができる。ここで、キットの異なるハウジングは、対向位置合わせ要素および機械的対向コーディングの位置および形状または構成のうちの少なくとも1つによってのみ区別することができる。
【0067】
典型的には、機械的コーディングは、薬剤容器の近位端に設けられる。位置合わせ要素は、薬剤容器の近位端、薬剤容器の長手方向中間部、または薬剤容器の遠位端に位置することができる。
【0068】
対向位置合わせ要素は、第1のハウジング構成要素の近位端に設けることができる。このとき、位置合わせ要素もまた、薬剤容器の近位端に設けられる。そのような配置は、薬物送達デバイスの最終組立ての途中に薬剤容器を第1のハウジング構成要素内へ挿入するための視覚または触覚の案内を提供するために有益となることができる。対向位置合わせ要素は、たとえば第1のハウジング構成要素の近位端で可視または触知可能であり、薬剤リザーバの正しい向きに関して可視または触知可能インジケーションを使用者に提供することができ、したがって薬剤リザーバを長手方向に沿って第1のハウジング構成要素内へ、典型的には第1のハウジング構成要素の近位端から第1のハウジング構成要素の遠位端へ、正確に挿入することができる。
【0069】
好ましくは、位置合わせ突出物は、薬剤リザーバの側壁の近位端に設けられる。位置合わせ凹部は、第1のハウジング構成要素の近位端に設けることができる。位置合わせ凹部は、挿入部の近位端に設けることができる。位置合わせ凹部は、第1のハウジング構成要素の側壁の内面に径方向凹部として設けることができる。位置合わせ凹部は、第1のハウジング構成要素の側壁の近位端面に隣接することができ、たとえば第1のハウジング構成要素の挿入部の近位端面に隣接することができる。対向位置合わせ要素を第1のハウジング構成要素の近位端またはその付近に設けることは、薬剤容器を第1のハウジング構成要素内へ任意の向きで挿入することができることから有益である。薬剤リザーバが第1のハウジング構成要素内に完全に受け入れられた事前組立て構成に到達する前、または到達したときのみ、位置合わせ要素が対向位置合わせ要素に整合および係合するように、薬剤リザーバを向けなければならない。挿入運動の残り部分においては、位置合わせ要素および対向位置合わせ要素は、第1のハウジング構成要素内への薬剤容器の挿入に作用および影響しない。
【0070】
さらなる例によれば、位置合わせ突出物は、薬剤容器の側壁および第1のハウジング構成要素の側壁のうちの一方にある径方向突出物である。位置合わせ凹部は、薬剤容器の側壁および第1のハウジング構成要素の側壁のうちの他方にある径方向凹部である。
【0071】
他の例では、位置合わせ突出物が、たとえば第1のハウジング構成要素の内側および薬剤容器の外側のうちの一方の遠位端に設けられた長手方向突出物であることも考えられる。相補的に、位置合わせ凹部は、薬剤容器の遠位端および第1のハウジング構成要素の遠位端のうちの他方にあるそれぞれの長手方向凹部である。いずれにしても、すなわち径方向突出物が径方向凹部に整合および嵌合すること、ならびに長手方向突出物が長手方向凹部に嵌合することによって、第1のハウジング構成要素の内側の薬剤容器の回転インターロックを提供することができる。薬剤容器は、第1のハウジング構成要素に対して専用の向きのうちの1つまたはいくつかでのみ、第1のハウジング構成要素の内側の事前組立て構成内へ挿入可能である。
【0072】
さらなる例によれば、位置合わせ凹部は、薬剤容器の側壁および第1のハウジング構成要素の側壁のうちの一方の長手方向端面に長手方向に隣接する。いくつかの例では、位置合わせ凹部は、第1のハウジング構成要素の側壁の内面に設けられ、第1のハウジング構成要素の側壁の近位端面に隣接する。位置合わせ凹部は、貫通凹部として設けることができる。他の例では、位置合わせ凹部は、貫通していない凹部であり、すなわちそれぞれの側壁部分の径方向厚さより小さい径方向深さを有する凹部である。後者の場合、位置合わせ凹部は、第1のハウジング構成要素のそれぞれの側壁の安定性または剛性に最小の影響のみを与える。
【0073】
別の例によれば、挿入部は、第1または第2の側壁のうちの一方に貫通凹部を含む。貫通凹部は、機械的コーディングおよび機械的対向コーディングのうちの少なくとも一方を径方向に受け入れるようなサイズおよび形状である。いくつかの例では、貫通凹部は、第1の側壁に設けられており、第1のハウジング構成要素の側壁の近位端面に隣接する長手方向スロットを含む。このようにして、薬剤リザーバに設けられ、第1のハウジング構成要素の内側に位置する機械的コーディングは、貫通凹部を通って径方向に延びて、第2の側壁の内面に設けられた相補形の機械的対向コーディングに係合することができる。
【0074】
第1のハウジング構成要素が第1の連結端に挿入部を備えるとき、機械的コーディングは、薬剤リザーバから貫通凹部を通って径方向外方に延びて、第2のハウジング構成要素のレセプタクルの側壁の内側に設けられた機械的対向コーディングに係合することができる。
【0075】
代替の例では、機械的対向コーディングは、径方向コーディング突出物を含むことができ、径方向コーディング突出物は、第1のハウジング構成要素の貫通凹部を通って径方向内方に延びて、薬剤リザーバの外面に設けられた相補形の径方向コーディング凹部に係合する。
【0076】
別の例によれば、第2のハウジング構成要素が、第2の側壁に貫通凹部を含む。ここでも、貫通凹部は、機械的コーディングおよび機械的対向コーディングのうちの少なくとも一方を径方向に受け入れるようなサイズおよび形状である。この実装では、第1のハウジング構成要素が、第1の連結端にレセプタクルを含むことができ、第2のハウジング構成要素が、第2の連結端に設けられた挿入部を含むことができる。ここで、この場合も、挿入部、したがって挿入部の側壁が貫通凹部を含み、機械的コーディングおよび機械的対向コーディングのうちの一方のコーディング突出物が、機械的コーディングおよび機械的対向コーディングのうちの他方の相補形のコーディング凹部に係合することを有効にする。
【0077】
別の例によれば、貫通凹部は、薬剤容器の機械的コーディングに対して相補形の2次機械的対向コーディングを提供または形成する。2次機械的対向コーディングが薬剤容器の機械的コーディングに整合しないとき、機械的コーディングおよび2次機械的対向コーディングは、第1のハウジング構成要素内への薬剤リザーバの完全な挿入を防止するように、または第1のハウジング構成要素および第2のハウジング構成要素の相互組立てを防止するように動作可能である。
【0078】
たとえば、挿入部が第1の連結端に設けられるとき、貫通凹部は挿入部の側壁に設けられ、2次機械的対向コーディングを形成する。ここで、事前組立て構成の薬剤容器を第1のハウジング構成要素の内側に挿入することは、位置合わせ要素が対向位置合わせ要素に整合し、かつ機械的コーディングが貫通凹部に、したがって2次機械的対向コーディングに整合および嵌合するときにのみ可能である。
【0079】
このようにして、第1のハウジング構成要素の2次機械的対向コーディングに適合しない機械的コーディングを含む薬剤リザーバが第1のハウジング構成要素内へ挿入されることを実質的に防止することができる。いくつかの例では、貫通凹部は、薬剤リザーバの機械的コーディングの円周方向サイズに整合するような形状およびサイズである。他の例では、貫通凹部は、薬剤リザーバに設けられた機械的コーディングのサイズまたは形状より大きい、またははるかに大きい。後者の場合、貫通凹部が機械的コーディングの円周方向サイズまたは幅を少なくとも2倍またはさらには3倍超過する円周方向サイズまたは幅を含むとき、この貫通凹部は任意のタイプの利用可能な機械的コーディングに好適であり、使用可能である。ここで、機械的コーディングの第2のハウジング構成要素の機械的対向コーディングとの相互係合または非係合が排他的に、機械的コーディングが機械的対向コーディングに整合しないときに第1および第2のハウジング構成要素の相互組立てを防止することができる。
【0080】
さらなる例によれば、貫通凹部は、第1の連結端または第2の連結端の長手方向端面に隣接する。貫通凹部は、それぞれの第1または第2の連結端のそれぞれの長手方向端面の方へ開いている。このようにして、径方向コーディング突起は、第1および第2のハウジング構成要素の第1の相互組立て段階中、すなわち第1および第2のハウジング構成要素が第1の最終組立て段階中に長手方向の摺動運動を受けるとき、それぞれの貫通凹部に入ることが可能になる。
【0081】
さらなる例によれば、2次機械的対向コーディングは、少なくとも1つの2次対向コーディング機能を含む。2次機械的対向コーディングは、第1の側壁および第2の側壁のうちの一方における2次対向コーディング機能の数、2次機械的対向コーディングが第1のハウジング構成要素に設けられたときの対向位置合わせ要素および/もしくは締結要素に対する2次対向コーディング機能の円周方向位置、貫通凹部が第2の側壁に設けられたときの対向締結要素に対する2次対向コーディング機能の円周方向位置、2次対向コーディング機能の円周方向範囲、第1の側壁もしくは第2の側壁上の2次対向コーディング機能の径方向範囲、ならびに/または長手方向を横断する平面内の2次対向コーディング機能の断面の幾何形状もしくは形状のうちの少なくとも1つによって画成される。
【0082】
上述した2次機械的対向コーディング機能のうちのいずれか1つが薬剤リザーバの対応するコーディング機能に整合しないとき、第1のハウジング構成要素内への薬剤リザーバの挿入または第1および第2のハウジング構成要素の相互組立ては、実質的に阻止、防止され、または少なくとも妨害される。
【0083】
いくつかの例では、レセプタクルは、細長いハウジング構成要素、たとえば薬物送達デバイスのハウジングの第1または第2のハウジング構成要素に固定して取付け可能でありまたは固定して取り付けられたハウジング挿入部として提供される。ハウジング挿入部は、細長いハウジング構成要素に対して回転不能および/または長手方向に固定することができる。その限りにおいて、レセプタクルに関連して上述したすべての構成および利益は、それぞれのハウジング構成要素に対して固定して連結可能でありまたは固定して連結されたハウジング挿入部にも等しく当てはまる。
【0084】
別の態様によれば、本開示は薬剤容器に関する。薬剤容器は、上述したハウジングの第1のハウジング構成要素内へ挿入されるようなサイズおよび構成のバレルを含む。薬剤容器は、バレルが第1のハウジング構成要素内へ長手方向に挿入されたときに第1のハウジング構成要素の対向位置合わせ要素に係合するようなサイズおよび形状の位置合わせ要素をバレル上にさらに含む。典型的には、薬剤容器は、遠位方向に沿って第1のハウジング構成要素内へ、したがって第1のハウジング構成要素の近位端から第1のハウジング構成要素の遠位端へ挿入可能である。
【0085】
薬剤容器は、上述した機械的コーディングをバレル上にさらに含む。機械的コーディングは、バレルが内側に配置された第1のハウジング構成要素が第2のハウジング構成要素に連結されるときに第2のハウジング構成要素の機械的対向コーディングに係合するようなサイズおよび形状である。バレルが内側に配置された第1のハウジング構成要素を、第1のハウジング構成要素の事前組立て構成と見なすことができる。ここで、バレルは、第1のハウジング構成要素の内側で最終組立て位置に到達している。バレルは、第1のハウジング構成要素の近位端から部分的に突出することができ、またはハウジング構成要素の内側に完全に受け入れることができる。
【0086】
典型的には、さらなる例では、バレルは、ガラス状材料またはプラスチック材料から作られる。バレルの材料は、化学的または薬学的に不活性である。プラスチック材料は、複合材料を含むことができる。プラスチック材料および/または複合材料は、環状オレフィンコポリマー(COC)および/または環状オレフィンポリマー(COP)のいずれかを含むことができる。プラスチック材料および/または複合材料は、高い防湿層(たとえば、0.01より小さい吸湿)および良好な材料強度(たとえば、約13~15のシャルピー衝撃強度)を提供するために、高い複屈折(たとえば、1.5より高い屈折率)を有するように構成することができる。たとえば、COC材料などのプラスチック材料は、高い純度、高い防湿層、優れた複屈折、破損防止、および低い密度を含む。ほとんどのCOC等級は、ガンマ線放射、高温の蒸気、またはエチレンオキシドによる滅菌を受けることができる。COCはまた、非常に低いエネルギーおよび非反応性表面を有し、それにより薬剤容器内に収納されたインスリンおよび他のタンパク薬物などの医薬品の貯蔵寿命および純度を延ばすことができる。
【0087】
さらなる例によれば、位置合わせ要素および機械的コーディングのうちの少なくとも一方は、薬剤容器のバレルに一体形成される。いくつかの例では、位置合わせ要素および機械的コーディングはどちらも、バレルと一体形成される。他の例では、位置合わせ要素および機械的コーディングのうちの少なくとも一方は、バレルの側壁の外面に組み立てられて固定される。
【0088】
いくつかの例では、薬剤容器は、カートリッジとして実装される。カートリッジは、穿孔可能な封止によって封止された、たとえばセプタムとして実装された遠位端を含む。カートリッジは、管状バレルの内側に可動に配置されたピストンまたは栓によって近位方向に封止される。薬剤容器、したがってバレルは、液体薬剤によって充填された内部空間を提供する。内部空間は、遠位封止および近位に位置する栓またはストッパによって、長手方向に制限される。内部体積は、円周方向にバレルの側壁によって制限される。
【0089】
さらなる例によれば、位置合わせ要素および機械的コーディングは、コーディングリングに設けることができる。コーディングリングは、バレルの側壁に取り付けられるように構成された別個の部材とすることができる。典型的には、コーディングリングは、バレルの側壁に対して摩擦フィットまたはフォームフィットを形成するような構成およびサイズである。いくつかの例では、コーディングリングは、バレルの外面へのコーディングリングの取付けを有効および容易にするように、径方向に弾性変形可能とすることができる。コーディングリングは、バレルに締め付けることができる。コーディングリングは、プラスチック材料を含むことができる。他の例では、コーディングリングは、金属から作ることができる。位置合わせ要素および機械的コーディングは、コーディングリング内へ一体形成することができる。位置合わせ要素および機械的コーディングのうちの少なくとも一方は、バレルの管状の形状に対して長手方向に沿って延びる径方向隆起部を含むことができる。
【0090】
他の例では、位置合わせ要素および機械的コーディングのうちの少なくとも一方は、ラベルに一体形成され、またはラベルによって提供される。ラベルには、インジケータまたは印刷面を設けることができる。ラベルは、バレルの側壁の外面に接着によって取り付けることができる。その限りにおいて、薬剤容器のバレルにラベルを取り付けることによって、薬剤容器を機械的に符号化することができ、薬剤容器にそれぞれの位置合わせ要素を設けることができる。
【0091】
さらなる例によれば、機械的コーディングは、少なくとも1つのコーディング機能を含み、機械的コーディングは、バレル上の少なくとも1つのコーディング機能の数、バレル上の位置合わせ要素に対する少なくとも1つのコーディング機能の円周方向位置、少なくとも1つのコーディング機能の円周方向範囲、バレル上の少なくとも1つのコーディング機能の径方向範囲、および/または長手方向を横断する平面内の少なくとも1つのコーディング機能の断面の幾何形状もしくは形状によって画成される。
【0092】
さらなる態様によれば、本開示はまた、注射デバイスに関する。注射デバイスは、上述したハウジングおよび上述した薬剤容器を含む。ここで、薬剤容器は、機械的コーディングおよび位置合わせ要素を含み、薬剤容器は、第1のハウジング構成要素の内側に配置されており、または配置可能である。注射デバイスは、第2のハウジング構成要素の内側に配置された駆動機構をさらに含む。駆動機構は、典型的には、第2のハウジング構成要素の内側に固定される。
【0093】
他の例では、駆動機構は、ポンプ、たとえば吸引ポンプを含み、それによって吸引により薬剤容器から薬剤の用量を引き抜くことができる。
【0094】
駆動機構は、薬剤の用量を設定し、薬剤容器から投薬するように動作可能とすることができる。駆動機構は、異なるサイズの用量を設定し、繰り返し多数の用量設定および用量注射手順を実施するように動作可能とすることができる。
【0095】
さらなる例によれば、薬剤容器はカートリッジを含み、カートリッジのバレルは、バレルの内側に配置された可動の栓またはストッパによって近位方向に封止される。駆動機構は、カートリッジのストッパまたは栓に遠位向きの投薬力をかけるように動作可能なピストンロッドを含む。
【0096】
別の態様によれば、本開示は、上述したタイプの注射デバイスのキットに関する。注射デバイスのキットは、少なくとも上述した第1の注射デバイスを含み、少なくとも上述した第2の注射デバイスをさらに含む。ここで、第1の注射デバイスの機械的コーディングおよび機械的対向コーディングのうちの一方は、第2の注射デバイスのそれぞれの機械的コーディングまたは機械的対向コーディングから区別される。第1の注射デバイスの機械的コーディングは、コーディング機能の数、バレル上の位置合わせ要素に対するコーディング機能の円周方向位置、コーディング機能の円周方向範囲、コーディング機能の径方向範囲、および/または長手方向を横断する平面内のコーディング機能の断面の幾何形状もしくは形状のうちの少なくとも1つに関して、第2の注射デバイスの機械的コーディングから区別される。
【0097】
相補的に、第1の注射デバイスの対向コーディング機能は、対向コーディング機能の数、対向締結要素に対する対向コーディング機能の円周方向位置、対向コーディング機能の円周方向範囲、対向コーディング機能の径方向範囲、および/または長手方向を横断する平面内の対向コーディング機能の断面の幾何形状もしくは形状のうちの少なくとも1つに関して、第2の注射デバイスのそれぞれの対向コーディング機能から区別される。
【0098】
第1の注射デバイスには、第1のタイプの1対のコーディングおよび対向コーディングが設けられる。第2の注射デバイスには、第2のタイプの1対のコーディングおよび対向コーディングが設けられる。第1のタイプのコーディングは、第2のタイプの対向コーディングにペアリングまたは係合することができない。逆も同様であり、第1のタイプの対向コーディングは、第2のタイプのコーディングにペアリングまたは係合することができない。このようにして、第1の注射デバイスの薬剤リザーバは、第2の注射デバイスの第2のハウジング構成要素にペアリングまたは連結することができない。薬剤リザーバの、異なる、したがって整合しないコーディングおよび対向コーディングが設けられて装備された第2のハウジング構成要素、したがって駆動機構との意図しない相互使用を、実質的に防止および妨害することができる。
【0099】
第1のタイプのコーディングのみが、第1のタイプの対向コーディングにペアリングまたは係合することが可能であり、そのように構成される。第2のタイプのコーディングは、第2のタイプの対向コーディングにのみ排他的に係合可能または連結可能であり、逆も同様である。
【0100】
概して、本開示の範囲は、特許請求の範囲の内容によって画成される。注射デバイスは、特有の実施形態または例に限定されるものではなく、異なる実施形態または例の要素のあらゆる組合せを含む。その限りにおいて、本開示は、特許請求の範囲のあらゆる組合せ、および異なる例または実施形態に関連して開示する構成のあらゆる技術的に実行可能な組合せを包含する。
【0101】
この文脈において、「遠位」または「遠位端」という用語は、人または動物の注射部位の方を向いている注射デバイスの端部に関する。「近位」または「近位端」という用語は、人または動物の注射部位から最も離れた注射デバイスの反対の端部に関する。
【0102】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、1つもしくはそれ以上の活性医薬成分またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、場合により薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬製剤を記述する。活性医薬成分(「API」)とは、最広義には、ヒトまたは動物に対して生物学的効果を有する化学構造体のことである。薬理学では、薬剤または医薬は、疾患の治療、治癒、予防、または診断に使用されるか、さもなければ身体的または精神的なウェルビーイングを向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限定された継続期間で、または慢性障害では定期的に使用可能である。
【0103】
以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つのAPIまたはその組合せを含みうる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが挙げられうる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。1つまたはそれ以上の薬物の混合物も企図される。
【0104】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他の硬性もしくは可撓性のベッセルでありうる。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(たとえば、APIと希釈剤、または2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジでありうるか、またはそれを含みうる。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0105】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物または薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療および/または予防のために使用可能である。障害の例としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。障害のさらなる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。APIおよび薬物の例は、ローテリステ2014年(Rote Liste 2014)(たとえば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)または86(オンコロジー薬剤))やメルク・インデックス第15版(Merck Index,15th edition)などのハンドブックに記載されているものである。
【0106】
1型もしくは2型糖尿病または1型もしくは2型糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、はそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「アナログ」および「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/または交換によりおよび/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造たとえばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基または他の天然に存在する残基または純合成アミノ酸残基のどれかでありうる。インスリンアナログは、「インスリンレセプターリガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、たとえば、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば脂肪酸)がアミノ酸の1つまたはそれ以上に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然に存在するペプチドに存在する1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失し、および/または非コード可能アミノ酸を含めて他のアミノ酸によって置き換えられ、または天然に存在するペプチドに非コード可能なものを含めてアミノ酸が付加される。
【0107】
インスリンアナログの例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28~B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0108】
インスリン誘導体の例は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、レベミル(Levemir)(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、トレシーバ(Tresiba)(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0109】
GLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストの例は、たとえば、リキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、バイエッタ(Byetta)(登録商標)、ビデュリオン(Bydureon)(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(ビクトーザ(Victoza)(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(シンクリア(Syncria)(登録商標))、デュラグルチド(トルリシティ(Trulicity)(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C(エフペグレナチド)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(ペガパモドチド(Pegapamodtide))、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマドゥチド(Bamadutide)(SAR425899)、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0110】
オリゴヌクレオチドの例は、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセンナトリウム(キナムロ(Kynamro)(登録商標))、またはアルポート症候群の治療のためのRG012である。
【0111】
DPP4阻害剤の例は、リナグリプチン、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0112】
ホルモンの例としては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0113】
多糖の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(シンビスク(Synvisc)(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0114】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体でありうる。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体でありうる。抗体という用語は、4価二重特異的タンデムイムノグロブリン(TBTI)および/またはクロスオーバー結合領域配向を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗原結合分子も含む。
【0115】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含みうるが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、四重特異的および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価または多価抗体フラグメント、たとえば、2価、3価、4価および多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0116】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与しうるか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼしうる。
【0117】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0118】
本明細書に記載のいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物または薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。
【0119】
本発明の完全な範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載するAPI、構成、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素に修正(追加および/または削除)を加えることができ、本発明はそのような修正およびそのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。
【0120】
本開示の範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を本開示に加えることができることが、当業者にはさらに明らかであろう。さらに、添付の特許請求の範囲で使用されるいずれの参照番号も、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0121】
以下、専用のまたはコーディングされたハウジング構成要素を有する注射デバイスおよび薬剤容器の多数の例について、図面を参照することによってより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0122】
図1】薬物送達デバイスの一例を概略的に示す図である。
図2図1の薬物送達デバイスの分解図の一例を示す図である。
図3】第1のハウジング構成要素内への薬剤容器の挿入前の注射デバイスの一例を示す図である。
図4】第1および第2のハウジング構成要素を連結する前の図3の注射デバイスを示す図である。
図5】第1のハウジング構成要素が第2のハウジング構成要素に対して最終挿入構成である、注射デバイスを示す図である。
図6】最終組立て構成にある注射デバイスを示す図である。
図7】第2のハウジング構成要素の遠位端の斜視図である。
図8】第2のハウジング構成要素の遠位端のさらなる斜視図である。
図9】第1のハウジング構成要素および第1のハウジング構成要素内への挿入前の薬剤容器の斜視図である。
図10】事前組立て構成にあるハウジング構成要素および薬剤容器を示す図である。
図11】第2のハウジング構成要素に連結された第1のハウジング構成要素の断面を概略的に示す図である。
図12】第2のハウジング構成要素の内側に位置する薬剤リザーバのさらなる断面図である。
図13】薬剤容器が組み立てられた第1のハウジング構成要素の近位端の拡大斜視図である。
図14】相互に連結されたときの第1および第2のハウジング構成要素の断面図である。
図15】第1のコーディングおよびそれぞれの対向コーディングの一例を示す図である。
図16】第2のコーディングおよびそれぞれの対向コーディングの一例を示す図である。
図17】第3のコーディングおよびそれぞれの対向コーディングの別の例を示す図である。
図18】第1のタイプの機械的コーディングの斜視図である。
図19】第1のタイプの機械的対向コーディングの斜視部分切欠図である。
図20】事前組立て構成にある図18および図19の機械的コーディングおよび機械的対向コーディングを示す図である。
図21】機械的コーディングの別の例を示す図である。
図22図21の機械的コーディングに整合する機械的対向コーディングの別の例を示す図である。
図23】事前組立て構成にある図21および図22の機械的コーディングおよび機械的対向コーディングを示す図である。
図24】コーディングリングを備えた薬剤容器を示す図である。
図25】コーディングリングが薬剤容器に組み立てられた、図24の薬剤容器を示す図である。
図26】ラベルを備えた薬剤容器の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0123】
図1および図2に、手持ち式注射デバイスの多数の例のうちの1つのみが示されており、これは概してウェアラブル電子デバイスと組み合わせて使用可能である。図1および図2に示されているデバイスは、ハウジング10を含む充填済みの使い捨て注射デバイスであり、ハウジング10には注射針15を取り付けることができる。注射針15は、注射デバイス1のハウジング10の遠位セクションを密閉および保護するように構成された内側ニードルキャップ16および外側ニードルキャップ17または保護キャップ18のいずれかによって保護される。ハウジング10は、第1のハウジング構成要素100および第2のハウジング構成要素200を含む。第2のハウジング構成要素は、図2に示されている駆動機構8および/または用量設定機構9を収容するように構成された主ハウジング部材を形成することができる。第1のハウジング構成要素100は、カートリッジホルダとして構成される。第1のハウジング構成要素100は、第2のハウジング構成要素200に恒久的または解放可能に連結することができる。
【0124】
第1のハウジング構成要素100は、典型的には、液体薬剤が充填されたカートリッジ6を収容するように構成される。カートリッジ6は、バレル25の内側に位置する栓7によって近位方向3に封止された円筒形または管状のバレル25を含む。栓7は、ピストンロッド20によってカートリッジ6のバレル25に対して遠位方向2に変位可能である。カートリッジ6の遠位端は、セプタムとして構成された穿孔可能な封止部26によって封止されており、封止部26は、注射針15の近位向きの先端を有する端部によって穿孔可能である。カートリッジホルダ、したがって第1のハウジング構成要素100は、その遠位端にねじ付ソケット28を含み、ねじ付ソケット28は、注射針15のそれに対応するねじ付部分にねじ係合する。注射針15を第1のハウジング構成要素100の遠位端に取り付けることによって、カートリッジ6の封止部26を貫通し、それによってカートリッジ6の内部への流体伝達アクセスを確立する。
【0125】
注射デバイス1がたとえばヒトインスリンを投与するように構成されるとき、注射デバイス1の近位端にある用量ダイヤル12によって設定される投与量を、いわゆる国際単位(IU)で表示することができ、1IUは約45.5μg(1/22mg)の純結晶インスリンと生物学的に同等である。用量ダイヤル12は、用量ダイヤルを含むことができ、または用量ダイヤルを形成することができる。
【0126】
図1および図2にさらに示されているように、ハウジング10、たとえば第2のハウジング構成要素200は、投与量窓13を含み、投与量窓13は、ハウジング10内のアパーチャの形態とすることができる。投与量窓13は、現在設定されている用量の視覚インジケーションを提供するために、用量ダイヤル12が回されたときに動くように構成された数字スリーブ80の制限された部分を使用者が見ることを可能にする。用量ダイヤル12は、用量の設定および/または投薬もしくは排出中に回されたとき、ハウジング10に対して螺旋経路上を回転させられる。
【0127】
注射デバイス1は、投与量ノブ12を回すことで機械クリック音を引き起こし、使用者に音響フィードバックを提供するように構成することができる。クリック音は、典型的には、クリックノイズ生成器45によって生成される。概して、クリックノイズ生成器45は、様々な異なる方法で実装することができる。数字スリーブ80は、インスリンカートリッジ6内のピストンと機械的に相互作用する。針15が患者の皮膚部分に刺されて、トリガ11または注射ボタンが押されたとき、表示窓13内に表示されている用量が注射デバイス1から排出される。トリガ11が押されてから特定の時間にわたって注射デバイス1の針15が皮膚部分内に留まったとき、用量は実際に患者の体内へ注射される。液体薬剤の用量の排出もまた、機械クリック音を引き起こすことができるが、このクリック音は、用量ダイヤル12を使用したときに生じたクリック音とは異なる。このため、注射デバイス1は、別個の、したがって第2の、クリックノイズ生成器(図示せず)を含むことができる。
【0128】
この実施形態では、インスリン用量の送達中、用量ダイヤル12は、軸方向運動で、すなわち回転なしで、その初期位置まで戻され、数字スリーブ80は、回転してその初期位置へ戻り、たとえば0単位の用量を表示する。
【0129】
注射デバイス1は、カートリッジ6が空になるまで、または注射デバイス1内の薬剤の有効期日(たとえば、最初の使用から28日後)に到達するまで、いくつかの注射プロセスに対して使用することができる。
【0130】
図2に、駆動機構8の一例がより詳細に示されている。駆動機構8は、多数の機械的に相互作用する構成要素を含む。ハウジング10のフランジ状の支持体が、ピストンロッド20の第1のねじ山または遠位ねじ山22にねじ係合されるねじ付軸方向貫通口を含む。ピストンロッド20の遠位端は支承部21を含み、押さえ23が、ピストンロッド20の長手方向軸を回転軸として、支承部21上を自由に回転する。押さえ23は、カートリッジ6の栓7の近位向きの推力受け面に軸方向に当接するように構成される。投薬動作中、ピストンロッド20はハウジング10に対して回転し、それによってハウジング10に対して、したがってカートリッジ6のバレル25に対して、遠位向きの前進運動を受ける。結果として、カートリッジ6の栓7は、ピストンロッド20のハウジング10とのねじ係合により、遠位方向2に明確な距離だけ変位させられる。
【0131】
ピストンロッド20には、その近位端に第2のねじ山24がさらに設けられる。遠位ねじ山22および近位ねじ山24は、反対の向きである。
【0132】
ピストンロッド20を受けるために中空の内部を有する駆動スリーブ30がさらに設けられる。駆動スリーブ30は、ピストンロッド20の近位ねじ山24にねじ係合される内側ねじ山を含む。さらに、駆動スリーブ30は、その遠位端に外側ねじ付セクション31を含む。ねじ付セクション31は、遠位フランジ部分32と、遠位フランジ部分32から所定の軸方向距離をあけて位置する別のフランジ部分33との間に、軸方向に制限される。2つのフランジ部分32、33間に、半円形ナットの形態の最終用量リミッタ35が設けられ、最終用量リミッタ35は、駆動スリーブ30のねじ付セクション31に嵌合する内部ねじ山を有する。
【0133】
最終用量リミッタ35は、ハウジング10の側壁の内側にある相補形の凹部または突起に係合するための径方向凹部または突起を、その外周にさらに含む。このようにして、最終用量リミッタ35は、ハウジング10に、たとえば第2のハウジング構成要素200にスプライン連結される。連続した用量設定手順中の用量増分方向4または時計回り方向における駆動スリーブ30の回転は、駆動スリーブ30に対する最終用量リミッタ35の累積的な軸方向の変位をもたらす。フランジ部分33の近位向きの表面に軸方向に当接する環状ばね40がさらに設けられる。さらに、管状のクラッチ60が設けられる。クラッチ60の第1の端部に、一連の円周方向に向けられた鋸歯が設けられる。クラッチ60の第2の反対の端部に向かって、径方向内方に向けられたフランジが位置する。
【0134】
さらに、数字スリーブ80とも呼ばれる用量ダイヤルスリーブが設けられる。数字スリーブ80は、ばね40およびクラッチ60の外側に設けられ、ハウジング10の径方向内方に位置する。数字スリーブ80の外面の周りに、螺旋溝81が設けられる。ハウジング10には投与量窓13が設けられており、数字スリーブ80の外面の一部を、投与量窓13を通して見ることができる。ハウジング10には、挿入部62の内側側壁部分に螺旋リブがさらに設けられ、螺旋リブは、数字スリーブ80の螺旋溝81に着座させられる。管状の挿入部62は、ハウジング10の近位端内へ挿入される。挿入部62は、ハウジング10に対して回転不能および軸方向に固定される。数字スリーブ80がハウジング10に対して螺旋運動で回転させられている間の用量設定手順を制限するために、ハウジング10上に第1および第2の止め具が設けられる。
【0135】
用量ダイヤルグリップの形態の用量ダイヤル12が、数字スリーブ80の近位端の外面の周りに配置される。用量ダイヤル12の外径は、典型的には、ハウジング10の外径に対応および整合する。用量ダイヤル12は、数字スリーブ80に対して、これらの間の相対運動を防止するように固定される。用量ダイヤル12には、中心開口部が設けられる。
【0136】
用量ボタンとも呼ばれるトリガ11は、実質的にT字形である。トリガ11は、注射デバイス1の近位端に設けられる。トリガ11の心棒64が、用量ダイヤル12内の開口部を通り、駆動スリーブ30の延長の内径を通って、ピストンロッド20の近位端にある受け凹部内へ延びる。心棒64は、駆動スリーブ30内で制限された形で軸方向に動き、駆動スリーブ30に対して回転しないように保持される。トリガ11のヘッドは略円形である。トリガ側壁またはスカートは、ヘッドの周辺部から延びており、用量ダイヤル12の近位からアクセス可能な環状凹部に着座するようにさらに適用される。
【0137】
用量をダイヤル設定するために、使用者は用量ダイヤル12を回転させる。ばね40がクリックノイズ生成器45としても作用し、クラッチ60が係合された状態で、駆動スリーブ30、ばね40、クラッチ60、および数字スリーブ80は、用量ダイヤル12とともに回転する。用量がダイヤル設定されたという可聴および触覚フィードバックが、ばね40およびクラッチ60によって提供される。鋸歯によって、ばね40とクラッチ60との間でトルクが伝送される。数字スリーブ80上の螺旋溝81および駆動スリーブ30内の螺旋溝は、同じリードを有する。これにより、数字スリーブ80がハウジング10および駆動スリーブ30から延びてピストンロッド20を同じ速度で登ることが可能になる。行程の限界で、数字スリーブ80上の径方向止め具が、ハウジング10上に設けられた第1の止め具または第2の止め具に係合して、第1の回転方向、たとえば用量増分方向4のさらなる動きを防止する。ピストンロッド20の回転は、ピストンロッド20上の全体的な駆動されるねじ山の方向が反対になっていることによって防止される。
【0138】
ハウジング10に固定された最終用量リミッタ35は、駆動スリーブ30の回転によってねじ付セクション31に沿って前進させられる。最終用量投薬位置に到達したとき、最終用量リミッタ35の表面上に形成された径方向止め具が、駆動スリーブ30のフランジ部分33上の径方向止め具に当接し、最終用量リミッタ35および駆動スリーブ30の両方がさらに回転することを防止する。
【0139】
使用者が不注意で所望の投与量を超えてダイヤル設定した場合、ペン注射器として構成された注射デバイス1は、カートリッジ6から薬剤を投薬することなく、投与量を下方にダイヤル設定することを可能にする。このため、用量ダイヤル12は簡単に逆回転される。これにより、システムは逆に作用する。このとき、ばねまたはクリッカ40の可撓アームは、ばね40が回転することを防止するラチェットとして作用する。クラッチ60を介して伝送されるトルクにより、鋸歯は互いを載り越えて、ダイヤル設定された用量の低減に対応するクリックを生み出す。典型的には、鋸歯は、各鋸歯の円周方向範囲が単位用量に対応するように配置される。ここで、クラッチは、ラチェット機構として働くことができる。
【0140】
代替または追加として、ラチェット機構90は、管状クラッチ60の側壁上の可撓アームなど、少なくとも1つのラチェット機能91を含むことができる。少なくとも1つのラチェット機能91は、たとえば可撓アームの自由端上に径方向外方に延びる突起を含むことができる。突起は、数字スリーブ80の内側にあるそれに対応する形状の対向ラチェット構造に係合するように構成される。数字スリーブ80の内側は、鋸歯プロファイルを有する長手方向の形状の溝または突起を含むことができる。用量のダイヤル設定または設定中、ラチェット機構90は、数字スリーブ80が第2の回転方向5に沿ってクラッチ60に対して回転することを可能にしてそれを支持し、この回転は、クラッチ60の可撓アームの規則的なクリックを伴う。第1の回転方向に沿って数字スリーブ80に印加される角運動量は、クラッチ60へ不変に伝達される。ここで、ラチェット機構90の相互に対応するラチェット機能は、数字スリーブ80からクラッチ60へのトルク伝送を提供する。
【0141】
所望の用量がダイヤル設定されたとき、使用者は、トリガ11を押し下げることによって、設定された用量を簡単に投薬することができる。これにより、クラッチ60が数字スリーブ80に対して軸方向に変位し、その犬歯を係合解除する。しかし、クラッチ60は、駆動スリーブ30に対して回転方向に固定されたままである。数字スリーブ80および用量ダイヤル12はここで、螺旋溝81に従って自由に回転する。
【0142】
この軸方向運動により、ばね40の可撓アームを変形させて、投薬中に鋸歯が緩められないことを確実にする。これにより、駆動スリーブ30がハウジング10に対して回転することが防止されるが、駆動スリーブ30は依然としてハウジング10に対して軸方向には自由に動く。その後、遠位向きの投薬圧力がトリガ11から取り除かれたとき、この変形を使用してばね40およびクラッチ60を駆動スリーブ30に沿って逆方向に付勢し、クラッチ60と数字スリーブ80との間の連結を回復する。
【0143】
駆動スリーブ30の長手方向の軸方向運動は、ハウジング10の支持体の貫通口を通ってピストンロッド20を回転させ、それによってカートリッジ6内の栓7を前進させる。ダイヤル設定された用量が投薬された後、用量ダイヤル12から延びる少なくとも1つの止め具がハウジング10の少なくとも1つの対応する止め具に接触することによって、数字スリーブ80のさらなる回転が防止される。数字スリーブ80の軸方向に延びる縁部または止め具のうちの1つが、ハウジング10の少なくとも1つまたはいくつかの対応する止め具に当接することによって、0用量位置を決定することができる。
【0144】
上述した排出機構または駆動機構8は、概して使い捨てのペン注射器内に実装可能な複数の異なる構成の駆動機構のうちの1つに対する例示にすぎない。上述した駆動機構は、全体が参照によって本明細書に組み入れられる、たとえばWO2004/078239A1、WO2004/078240A1、またはWO2004/078241A1により詳細に説明されている。
【0145】
図3図26の多数の例に示されているハウジング10は、第1のハウジング構成要素100および第2のハウジング構成要素200を含む。第1のハウジング構成要素100は、カートリッジホルダとして構成される。第1のハウジング構成要素100は、その中空の内部に薬剤容器300を収容するようなサイズおよび形状である。薬剤容器300は、カートリッジ6として実装することができる。カートリッジホルダ、したがって第1のハウジング構成要素100は、第1の連結端101を含む。第1の連結端101は、第1のハウジング構成要素100の近位端を形成する。それに対応して、第2のハウジング構成要素200は、典型的にはハウジング構成要素200の遠位端に、第2の連結端201を含む。
【0146】
第1の連結端101は、第2の連結端201に対して機械的に連結可能である。示されているように、第1のハウジング構成要素100は、第1の連結端101を形成する挿入部110を含む。第2のハウジング構成要素200は、挿入部110を受けるような形状およびサイズのレセプタクル210を含む。レセプタクル210は、第2のハウジング構成要素200の側壁202によって径方向に制限される。挿入部110は、第2のハウジング構成要素200に対する長手方向の摺動運動によって、特に近位方向3に沿って、レセプタクル210内へ少なくとも部分的に挿入可能である。
【0147】
挿入部110は、第1のハウジング構成要素100の近位端を形成する。挿入部110は、近位端面112を含む。挿入部110は、遠位方向2に向かって、第1のハウジング構成要素100の管状の側壁102から、したがって挿入部110の側壁102からも、径方向外方に突出するフランジセクション115によって制限される。フランジセクション115は、円周方向に突出して径方向外方に延びるリムによって構造的に補強することができ、このリムは、第1のハウジング構成要素100の側壁102の外面105から突出する。
【0148】
フランジセクション115は、近位方向3に向かって、近位方向3を向いている当接面または停止面114を含む。当接面または停止面114は、第2のハウジング構成要素200の側壁202の遠位端面214に軸方向に当接するように構成される。第1のハウジング構成要素100の側壁102は、窓103を含むことができ、窓103は、側壁102と交差する貫通凹部として実装することができる。窓103は、第1のハウジング構成要素100の内側に配置されたカートリッジ6およびその内容物の視覚検査を可能にし、それを支持する。
【0149】
レセプタクル210は、遠位方向2の方へ開いている。その限りにおいて、第1のハウジング構成要素100の挿入部110は、最終組立て構成に到達するまで、近位方向3に沿ってレセプタクル210内へ挿入することができる。レセプタクル210を制限する側壁202上に支持された対向締結要素220に対して相補形の締結要素120が、挿入部110の外面105に設けられる。
【0150】
図3図14の例では、締結要素120は挿入部110に設けられる。締結要素120は、締結突出物124を含む。締結突出物124は、第1の連結端101の外面105から径方向外方に突出するペグまたはピン状の径方向外方に延びる突出物を含むことができる。締結突出物124、したがって締結要素120は、スナップ要素121を含むことができる。レセプタクル210の内面203上に相補的に、対向締結要素220が設けられる。対向締結要素220は、側壁202の内面203に径方向凹部222を含む。
【0151】
対向締結要素220は、締結溝224を含む。図7に特に示されているように、締結溝224は、第1の溝部分225および第2の溝部分226を含む。第2の溝部分226は、円周方向(w)に延びる。第1の溝部分225は、長手方向(z)に延びる。第2の溝部分226は、第1の溝部分225に合流する。第1の溝部分225は、第2の溝部分226に直交して延びることができる。こうして、締結要素120が対向締結要素220に係合するための一種のバイオネット連結を支持する一種のL字形の締結溝224を提供することができる。
【0152】
対向締結要素220には、対向スナップ要素221が設けられる。対向スナップ要素221は、スナップ要素121に対して相補形である。図7に示されているように、対向スナップ要素221は、第1の溝部分225から離れる方を向いている第2の溝部分226の終端またはその付近に、径方向突起および/または径方向凹部を含む。第1の溝部分225の形状および断面は、径方向外方に突出する締結突出物124の形状および断面に対して相補形である。
【0153】
第1のハウジング構成要素100および第2のハウジング構成要素200の相互組立て中、その相互組立てのために、締結突出物124は、第1の溝部分225と位置合わせされる。このとき、第1のハウジング構成要素100が第2のハウジング構成要素200に対して近位方向3に長手方向に変位することによって、締結突出物124は、第1の溝部分225に入り、第1の溝部分225を通るように案内される。最終挿入位置または挿入構成に到達したとき、たとえば停止面114が第2のハウジング構成要素200の遠位端面214に係合し、長手方向に当接したとき、締結突出物124は、第2の溝部分226と長手方向または円周方向に位置合わせすることができる。このとき、第2のハウジング構成要素200に対する第1のハウジング構成要素100の捩れ運動によって、締結突出物124は第2の溝部分226に沿って摺動する。このとき、スナップ要素121、したがって締結突出物124は、第2の溝部分226内に設けられた相補形の対向スナップ要素221に機械的に係合する。
【0154】
図7および図14に示されているように、締結要素120のそれぞれの対向締結要素220との2倍の相互係合を提供することができる。したがって、挿入部110の正反対の側に、第1の締結要素120および第2の締結要素120を設けることができる。相補的に、レセプタクル210も、その挿入部開口部211またはその付近に、第1および第2の対向締結要素220を含む。それに応じて、第1および第2の対向締結要素220のそれぞれの第1の溝部分225は、第2のハウジング構成要素200の側壁202の遠位端面214に隣接する。
【0155】
締結要素120および対向締結要素220の形状は、2段階の組立てプロセスを有効にし、それを支持する。第1の組立て段階中、第1のハウジング構成要素100は、第2のハウジング構成要素200に対する長手方向の摺動運動を排他的に受ける。第2の組立て段階中、および最終挿入構成に到達した後、第1のハウジング構成要素100は、第2のハウジング構成要素に対する回転を受ける。
【0156】
第2の組立て段階は、図5および図6の比較からすぐ明らかである。第1のハウジング構成要素100は、外面105に視覚インジケータ108を備える。相補的に、第2のハウジング構成要素200は、側壁202の外面205に設けられた視覚対向インジケータ208を備える。インジケータ108は、フランジセクション115から遠位にずれて位置する。視覚対向インジケータ208は、第2の連結端201またはその付近に設けられる。
【0157】
図5で、第1および第2のハウジング構成要素100、200は最終挿入構成にあり、フランジセクション115の停止面114は、第2のハウジング構成要素200の側壁202の遠位端面214に軸方向に当接している。図5に示されているように、インジケータ108は、対向インジケータ208から円周方向にずれている。第2のハウジング構成要素200に対する第1のハウジング構成要素100の捩れ運動によって、インジケータ108は、相補形の対向インジケータ208と位置合わせされる。このようにして、最終組立て構成に到達したという視覚的および/または触知可能、したがって触覚的に検出可能なフィードバックが、使用者に提供される。
【0158】
第1のハウジング構成要素100は、管状の側壁102を含む。側壁102は、遠位端付近で径方向に狭くなり、径方向内方に延びる肩部分106を含む。肩部分106から遠位に、さらに段状のソケット部分が延びることができ、穿孔アセンブリに対する取外し可能な連結を提供することができる。
【0159】
第1のハウジング構成要素100の内部は、薬剤容器300を受け入れるようなサイズおよび形状である。薬剤容器300は、管状バレル301を含む。バレル301は、側壁304を含む。薬剤容器300は、遠位方向2に沿って第1のハウジング構成要素100内へ挿入可能である。バレル301の径方向に狭くなった肩306がハウジング構成要素の肩部分106の内側に係合することによって、挿入運動の範囲を定めることができる。追加または別法として、たとえば薬剤容器300の遠位端302に位置する遠位向きの端面307が、第1のハウジング構成要素100の径方向内方に延びる端面107の内側に長手方向に当接することができる。このようにして、第1のハウジング構成要素100内への薬剤容器300の挿入運動の範囲を定めることができる。
【0160】
図9により詳細に示されているように、薬剤容器300には、位置合わせ要素330が設けられ、機械的コーディング350がさらに設けられる。ここで、位置合わせ要素330は、バレル301の近位端303から位置合わせ突出物332として径方向外方に突出する位置合わせ機能331を含む。加えて、機械的コーディング350は、機械的コーディング機能351を含む。機械的コーディング機能351は、薬剤容器300のバレル301の近位端303から径方向外方に突出するコーディング突出物352として実装される。
【0161】
機械的コーディング350および位置合わせ要素330に対して相補的に、第1のハウジング構成要素100は、対向位置合わせ要素130を含む。対向位置合わせ要素130は、位置合わせ要素330に対して相補形である。この例では、対向位置合わせ要素130は、挿入部110の近位端に位置する。対向位置合わせ要素130は、挿入部110の内面に長手方向に延びる径方向凹部を含む。別法として、対向位置合わせ要素130は、挿入部110の側壁102の近位端面112に貫通凹部またはスリットを提供することができる。
【0162】
したがって、対向位置合わせ要素130は、位置合わせ機能331にサイズおよび形状が整合する対向位置合わせ機能131を含む。対向位置合わせ要素130、したがって対向位置合わせ機能131は、位置合わせ凹部132を含む。位置合わせ凹部132の長手方向範囲および位置合わせ突出物332の遠位端の長手方向位置も同様に、第1のハウジング構成要素100内への薬剤容器300の遠位に誘導される挿入運動の範囲を定めることができ、そのような挿入運動を画成することができる。
【0163】
第1のハウジング構成要素100は、貫通凹部152をさらに含み、貫通凹部152は、薬剤容器300に設けられた機械的コーディング350より大きく、または機械的コーディング350に形状が整合する。貫通凹部152は、長手方向スロットを含み、長手方向スロットは、機械的コーディング350のコーディング突出物352が第1のハウジング構成要素100の側壁102を通って径方向に到達することができる特定の円周方向幅を有する。これにより、機械的コーディング350の、レセプタクル210の内側203に設けられた相補形の機械的対向コーディング250との機械的係合が有効になる。
【0164】
機械的対向コーディング250の一例が図8に示されている。機械的対向コーディング250は、対向締結要素220から円周方向にずらすことができる。機械的対向コーディング250は、機械的対向コーディング機能251を含む。機械的対向コーディング250は、径方向凹部252、したがって薬剤容器300の径方向コーディング突出物352に係合するようなサイズおよび形状のコーディング凹部を含む。対向コーディング250、したがって径方向凹部252は、コーディング溝254を含む。コーディング溝254は、第1の溝部分255および第2の溝部分256を含む。第1の溝部分255は、長手方向に延びる。第2の溝部分256は、円周方向に延びる。第2の溝部分256は、第1の溝部分255に合流する。第1の溝部分255は、レセプタクル210の側壁202の遠位端面214に隣接する。
【0165】
薬剤容器300が第1のハウジング構成要素100の内側に正確に組み立てられたとき、位置合わせ機能331は、対向位置合わせ機能131に係合する。逆も同様であり、薬剤容器300を第1のハウジング構成要素100内へ挿入するには、位置合わせ機能331の対向位置合わせ機能131との正しい位置合わせが必要である。
【0166】
相互に対応する1対の位置合わせ突出物332および位置合わせ凹部132は、第1のハウジング構成要素100に対する薬剤容器300の回転を防止する働きをする。言い換えれば、事前組立て構成に到達したとき、薬剤容器300は、第1のハウジング構成要素100に回転不能にロックされる。それに応じて、機械的コーディング350のコーディング突出物352は、第1のハウジング構成要素100の側壁102の厚さより大きい径方向範囲を含むため、コーディング突出物352は、図13および図14に示されているように、第1のハウジング構成要素の側壁102を通って径方向外方に延びる。
【0167】
このとき、薬剤容器300が第1のハウジング構成要素100の内側に事前に組み立てられた状態で、第1のハウジング構成要素100および第2のハウジング構成要素200を相互に組み立てたとき、コーディング突出物352は、対向コーディング溝254の第1の溝部分255と位置合わせされる。第1の組立て段階中、したがって第1のハウジング構成要素100が第2のハウジング構成要素200に対して排他的に近位摺動運動を受けるとき、コーディング突出物352は、第1の溝部分255に沿って摺動する。
【0168】
最終挿入構成に到達したとき、コーディング突出物352は、相補形の第2の溝部分256と位置合わせされる。このとき、第1および第2のハウジング構成要素100、200が相互に捩れることが可能になり、それによって締結突出物124が第2の溝部分226に沿って摺動し、その間にコーディング突出物352は第2の溝部分256に沿って摺動する。
【0169】
図11に、締結突出物124、したがってスナップ要素121と相補形の対向スナップ要素221との機械的係合が概略的に示されている。図12に、最終組立て位置にある第2のハウジング構成要素200の内側における位置合わせ要素330および機械的コーディング350の場所が概略的に示されており、第1のハウジング構成要素100は示されていない。
【0170】
図11および図12で、第2のハウジング構成要素200は、ハウジング挿入部206によって表されている。ハウジング挿入部206は、管状の形状とすることができ、機械的対向コーディング250および/または対向締結要素220を含むレセプタクル210を提供することができる。ハウジング挿入部206は、近位ハウジング部材207に堅く締結することができ、または近位ハウジング部材207と一体形成することができる。したがって、第2のハウジング構成要素200が管状の近位ハウジング部材207を含むとき、ハウジング挿入部206を近位ハウジング部材の遠位端に取り付けて、締結または固定することができる。そうでない場合、第2のハウジング構成要素200は、単体として実装することができる。このとき、レセプタクル210の幾何構造は、第2のハウジング構成要素200の細長い管状の側壁202に一体化される。
【0171】
ハウジング挿入部206は、リム216を形成または構成する径方向外方に延びる段状部分を遠位端に含むことができる。リム216は、管状の近位ハウジング部材207に取り付けられたとき、レセプタクル210の安定性および剛性を強化することができる。ハウジング挿入部206は、近位ハウジング部材207に堅くまたは恒久的に締結することができる。このようにして、異なる薬剤容器300とともに使用されるように構成された異なるハウジング構成要素のセットまたはキットを提供するために、ハウジング挿入部206のみが第2のハウジング構成要素200に対して個々に提供されなければならない。異なる形で符号化されたハウジングのセットまたはキットの各ハウジング10に対して、好適な特徴的なハウジング挿入部206を個々に装備した同じ近位ハウジング部材207を常に使用することができる。
【0172】
同様に、第1のハウジング構成要素100は、機械的符号化を受けなくてもよい。したがって、薬剤容器300の外側に設けられた機械的コーディング350が、第1のハウジング構成要素100に到達することまたは第1のハウジング構成要素100を通って延びることが可能であることを条件として、異なる形で符号化されたハウジングまたは注射デバイスのキットまたはセットに対して、1つの同じ第1のハウジング構成要素100を常に使用することができる。ここで、異なる構成の薬剤容器300のすべての利用可能なタイプの機械的コーディング350の挿入を有効にするために、貫通凹部152の円周方向サイズまたは幅を増大させることができる。
【0173】
このようにして、1つの同じ第1のハウジング構成要素100に基づいて、異なる形で符号化された注射デバイスのセットまたはキットを提供することができる。したがって、異なる形で符号化された第2のハウジング構成要素を含むセットに対して、1つの同じ第1のハウジング構成要素100を使用することができる。ハウジングまたは注射デバイスのキットによって、薬剤容器300および近位、したがって第2のハウジング構成要素200のみが排他的に、特定の機械的符号化を受けることができる。第1のハウジング構成要素に設けられた締結要素120および第2のハウジング構成要素200に設けられた相補形の対向締結要素220は、異なる形で符号化されたハウジングまたは注射デバイスのキットまたはセットのすべての利用可能なハウジングおよび注射デバイスに対して、等しい形状とすることができる。
【0174】
図15に、機械的対向コーディング250に整合する機械的コーディング350の第1の例が示されている。ここで、第1のハウジング構成要素100に、径方向外方に延びる締結要素120が設けられており、締結要素120は、サイズおよび形状ならびに円周方向および径方向位置に関して、第2のハウジング構成要素200の相補形の対向締結要素220に整合する。薬剤容器300の位置合わせ要素330、したがって位置合わせ突出物332は、第1のハウジング構成要素100の側壁102の内面に設けられた相補形の対向位置合わせ要素130およびそれぞれの位置合わせ凹部132に整合する。
【0175】
第1のハウジング構成要素100は、貫通凹部152をさらに含み、貫通凹部152は、サイズおよび形状に関して、薬剤容器300の外面に設けられたコーディング機能351、したがって径方向外方に延びるコーディング突出物352のサイズおよび形状に整合する。それに応じて、薬剤容器300は、第1のハウジング構成要素100内へ長手方向に挿入することができ、それによって位置合わせ要素330を相補形の対向位置合わせ要素130と位置合わせすることができる。それに対応して、コーディング突出物352は、貫通凹部152に到達し、貫通凹部152を通って径方向に延びることができる。このとき、第1および第2のハウジング構成要素100、200の最終組立て中、コーディング突出物352は、相補形の対向コーディング機能251の径方向凹部252およびそれぞれの機械的対向コーディング溝254と位置合わせされる。
【0176】
本明細書に示されている例では、第1のハウジング構成要素100の貫通凹部152は、2次機械的対向コーディング150も提供することができる。2次機械的対向コーディング150は、貫通凹部152の形態の対向コーディング機能151を含む。このようにして、第1のハウジング構成要素100内への薬剤容器300の挿入は、機械的コーディング350が2次機械的対向コーディング150に整合するときのみ可能になる。そうでない場合、たとえば位置合わせ要素330に対する機械的コーディング350の円周方向位置が対向位置合わせ要素130に対する2次機械的対向コーディング150の円周方向位置に整合しないとき、または別法として、機械的コーディング350のサイズおよび/もしくは形状が2次機械的対向コーディング150に整合しないとき、薬剤容器300を第1のハウジング構成要素100内へ挿入することはできない。これにより、誤った第1のハウジング構成要素100内へ薬剤容器300を組み立てないための追加の安全性が提供される。
【0177】
図16に、機械的コーディング350’の別の例が示されている。ここで、機械的コーディング350’は、位置合わせ要素330の円周方向位置に対する機械的コーディング機能351’の円周方向位置、したがってコーディング突出物352’の円周方向位置によって、機械的コーディング350とは異なる。
【0178】
図15の機械的コーディング350と比べて、図16の機械的コーディング350’は、反時計回りに回転している。それに応じて、2次機械的対向コーディング150’も反時計回りに移動または回転している。そこで、それぞれの対向コーディング機能151’、したがって貫通凹部152’は、修正された機械的コーディング350’の長手方向の挿入を可能にする。
【0179】
それに応じて、第2のハウジング構成要素200に設けられた機械的対向コーディング250’、対向コーディング機能251’、したがって径方向凹部252’もまた、それに応じて変化している。図15に示されている第1のタイプの機械的コーディング350を有する薬剤容器300は、図16に示されている第2のタイプの2次機械的対向コーディング150’を備えた第1のハウジング構成要素100内へ挿入することができないことがすぐ明らかである。
【0180】
さらに、第2のタイプの2次機械的対向コーディング150’を備えたハウジング構成要素100の内側に正確に組み立てられた、第2のタイプの機械的コーディング350’を有する薬剤容器300は、図15に示されている第1のタイプの機械的対向コーディング250を備えた第2のハウジング構成要素200に取り付けることができず、または連結することができない。ここで、コーディング機能351’の円周方向位置は、対向締結要素220の円周方向位置に関して、対向コーディング機能251の円周方向位置に整合しない。
【0181】
図17のさらなる例では、薬剤容器300の位置合わせ要素330’の円周方向位置は、図15および図16の例と比べて修正されている。それに応じて、対向締結要素120に対する対向位置合わせ要素130’の円周方向位置もまた、図15および図16の例の対向締結要素120に対する対向位置合わせ要素130の位置と比べて変更されている。さらに、機械的コーディング350”の相対円周方向位置、したがって位置合わせ要素330’および位置合わせ突出物332’に対するそれぞれのコーディング機能351”の円周方向位置は、図15または図16の例の位置合わせ要素330に対する機械的コーディング350、350’の相対円周方向位置と比べて修正されている。
【0182】
図15図17に示されているように、第3のタイプの機械的コーディング350”は、図17による第1のハウジング構成要素によって提供される2次機械的対向コーディング150”内へ排他的に挿入可能である。
【0183】
第3のタイプの機械的コーディング350”を備えた薬剤容器300の事前組立ては、第3のタイプの相補形の機械的対向コーディング250”を備えた第2のハウジング構成要素200に排他的に連結可能である。図17の第1のハウジング構成要素100および薬剤容器300の事前組立ては、図15に示されている第1のタイプの機械的対向コーディング250を備えた第2のハウジング構成要素200、または図16に示されている第2のタイプの機械的対向コーディング250’を備えた第2のハウジング構成要素200のいずれにも、係合または連結することができない。
【0184】
図18図23に、機械的コーディング350、350’および相補形の機械的対向コーディング250、250’の2つのさらなる例が示されている。ここで、説明の目的で、第1のハウジング構成要素100は特に示されていない。第1のタイプの機械的コーディング350は、図18図20に示されている。機械的コーディング350は、2つのコーディング機能351を含み、コーディング機能351の各々は、薬剤容器300の側壁304の近位端上に径方向外方に延びるコーディング突出物352として実装される。コーディング突出物352の近位端は、バレル301の近位端面に隣接することができ、またはバレル301の近位端面と同一平面になることができる。コーディング突出物352は、長手方向に延びるコーディングリブを含むことができる。
【0185】
図19に、相補形の対向コーディング250が示されている。より詳細に上述したように、機械的対向コーディング250はコーディング溝254を含み、コーディング溝254は、第1の溝部分255および第2の溝部分256を有する。径方向内方に延びる端面112によって近位方向にレセプタクル210の範囲が定められ、たとえばレセプタクル210は、ハウジング挿入部206のフランジ部分によって形成される。示されているように、第2の溝部分256は、端面212に長手方向に隣接する。最終挿入位置に到達したとき、バレル301は、端面212に長手方向に当接することができ、コーディング突出物352は、第2の溝部分256と適切に位置合わせすることができる。
【0186】
図21図23のさらなる例では、機械的コーディング350’は、やはりコーディング突出物352’の形態のコーディング機能351を含む。図18のコーディング突出物352と比べて、コーディング突出物352’は、コーディング突出物352の長手方向範囲より小さい長手方向範囲を含む。さらに、コーディング突出物352’の長手方向位置は、バレル301の側壁304の自由端または近位端から長手方向にわずかにずれている。コーディング突出物352’は、コーディング突出物352と比べて遠位方向2に移動している。
【0187】
相補的に、図22に示されているように、相補形の対向コーディング機能251’、したがって対向コーディング凹部252の第2の溝部分256は、図19に示されている対向コーディング機能251の第2の溝部分256の位置および長手方向サイズに対して変動する。
【0188】
この場合も、バレル301がレセプタクル210の内側でその最終挿入構成に到達したとき、コーディング機能351’は、対向コーディング機能251’と位置合わせされ、コーディング凹部252’の第2の溝部分256に沿った円周方向(w)におけるコーディング突出物352’の摺動運動によって、第2のハウジング構成要素200に対する薬剤容器300の捩れ運動が有効になる。
【0189】
図18に示されている第1のタイプの機械的コーディング350の、図22に示されている第2のタイプの機械的対向コーディング250’との組合せが整合しないため、相互係合は可能でない。第1に、第1のタイプの機械的コーディング350のコーディング突出物352の長手方向範囲は、第2のタイプの機械的対向コーディング250’の第2の溝部分256のそれぞれの延長または幅より大きい。
【0190】
ここで、機械的コーディング350は、第2のタイプの機械的対向コーディング250’の第1の溝部分255内へ長手方向に挿入され、第1の溝部分255に沿って摺動することが可能である。しかしここで、コーディング突出物352は、最終挿入位置に到達することを防止し、第2のハウジング構成要素200に対する薬剤容器300、したがって第1のハウジング構成要素100の捩れ運動をさらに防止する。
【0191】
逆も同様であり、第2のタイプの機械的コーディング350’は、第1のタイプの機械的対向コーディング250にペアリングまたは嵌合することができない。ここで、最終挿入位置到達したとき、第2のタイプの機械的コーディング350’は、第1のタイプの機械的対向コーディング250の第2の溝部分256と適切に位置合わせされず、そのように位置合わせすることができない。したがって、最終挿入構成に到達したとき、第2のハウジング構成要素200に対する薬剤容器300の捩れ運動が阻止および妨害される。
【0192】
図24図26には、薬剤容器300に位置合わせ要素330および機械的コーディング350を設ける方法の一例が示されている。ここで、位置合わせ要素330および機械的コーディング350はどちらも、コーディングリング310の外面312に、径方向外方に突出するリブとして実装される。コーディングリング310は、環状体311を含む。環状体311は、閉じた環状構造を含むことができる。図24に示されているように、環状体311はまた、長手方向スリットを含むことができ、それによってコーディングリング310の弾性変形能力を増大させることができる。環状体311は、その内面313によって、薬剤容器300の側壁304にフォームフィット係合することができる。コーディングリング310は、接着剤の使用または溶接によって、薬剤容器300のバレル301に取り付けられた別個の部材として設けることができる。
【0193】
図26のさらなる例では、機械的コーディング350ならびに位置合わせ要素330が、ラベル320上に設けられている。機械的コーディング350ならびに位置合わせ要素330は、ラベル320に一体化することができる。ラベル320は、インジケータ322を含むことができる。インジケータ322は、可読または視覚情報を備えることができ、したがってバレル301の内側に位置する薬剤の使用または構成に関する補助的な情報を提供することができる。ここで、位置合わせ要素330および機械的コーディング350は、径方向外方に突出するリブとしてラベル320上に設けられる。ラベル320は、バレル301の外面に接着によって取り付けることができる。
【0194】
概して、薬剤容器300の外側に機械的コーディング350および位置合わせ要素330を設けるための多数の追加の方法が存在する。ここで示されていないさらなる例では、機械的コーディング350および/または位置合わせ要素330は、バレル301の側壁304と一体形成することができる。ここで、バレル301は、熱可塑性材料から作ることができる。バレル301は、射出成形された構成要素として実装することができる。
【0195】
本明細書に示されている例では、挿入部110は、第1のハウジング構成要素100に設けられ、レセプタクル210は、第2のハウジング構成要素200内に設けられている。本出願の開示の範囲内で、多数のさらなる例が考えられ、挿入部が第2のハウジング構成要素に設けられ、それに対応する形状のレセプタクルが第1のハウジング構成要素に設けられる。同様に、突出物および溝または締結要素および対向締結要素に関連して記載されている、径方向に突出する機能および径方向に凹状の機能の特有の実装は、本明細書に示されている例と比べて反転させた形で交換することができ、したがって提供および実装することができる。
【符号の説明】
【0196】
1 注射デバイス
2 遠位方向
3 近位方向
4 用量増分方向
5 用量減分方向
6 カートリッジ
7 栓
8 駆動機構
9 用量設定機構
10 ハウジング
11 トリガ
12 用量ダイヤル
13 投与量窓
14 カートリッジホルダ
15 注射針
16 内側ニードルキャップ
17 外側ニードルキャップ
18 保護キャップ
20 ピストンロッド
21 支承部
22 第1のねじ山
23 押さえ
24 第2のねじ山
25 バレル
26 封止部
28 ねじ付ソケット
30 駆動スリーブ
31 ねじ付セクション
32 フランジ
33 フランジ
35 最終用量リミッタ
40 ばね
60 クラッチ
62 挿入部
64 心棒
80 数字スリーブ
81 溝
90 ラチェット機構
91 ラチェット機能
100 ハウジング構成要素
101 連結端
102 側壁
103 窓
105 外面
106 肩部分
107 端面
108 インジケータ
110 挿入部
112 端面
114 停止面
115 フランジセクション
120 締結要素
121 スナップ要素
124 締結突出物
130 対向位置合わせ要素
131 対向位置合わせ機能
132 位置合わせ凹部
150 機械的対向コーディング
151 対向コーディング機能
152 貫通凹部
200 ハウジング構成要素
201 連結端
202 側壁
203 内面
205 外面
207 ハウジング部材
208 インジケータ
210 レセプタクル
211 挿入部開口部
212 端面
214 端面
216 リム
220 対向締結要素
221 対向スナップ要素
222 径方向凹部
224 締結溝
225 溝部分
226 溝部分
250 機械的対向コーディング
251 対向コーディング機能
252 径方向凹部
254 コーディング溝
255 溝部分
256 溝部分
300 薬剤容器
301 バレル
302 遠位端
303 近位端
304 側壁
306 肩部分
307 端面
310 コーディングリング
311 環状体
312 外面
313 内面
320 ラベル
322 インジケータ
330 位置合わせ要素
331 位置合わせ機能
332 位置合わせ突出物
350 機械的コーディング
351 コーディング機能
352 コーディング突出物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
【国際調査報告】