(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】注射デバイスのためのコーディングされたハウジング構成要素
(51)【国際特許分類】
A61M 5/24 20060101AFI20240416BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61M5/24 500
A61M5/315 550R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567935
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 EP2022061642
(87)【国際公開番号】W WO2022233751
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ベアーテ・フランケ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・フレッシャ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ヘルマー
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・ミュッケ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・ノーバー
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス・ラウ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・シャバッハ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・ヴィット
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE06
4C066HH03
(57)【要約】
本開示は、薬物送達デバイス(1)のコーディングされたハウジング(10)に関し、ハウジング(10)は:- 薬剤が充填されたカートリッジ(6)を収容するように構成され、第1の連結端(101)を含む第1のハウジング構成要素(100)と、- 薬物送達デバイス(1)の駆動機構(8)を収容するように構成され、第2の連結端(201)を含む第2のハウジング構成要素(200)と、- 第1の連結端(101)および第2の連結端(201)のうちの一方に設けられた挿入部(110)と、- 第1の連結端(101)および第2の連結端(201)のうちの他方に設けられたレセプタクル(210)であって、挿入部(110)は、第1のハウジング構成要素(100)および第2のハウジング構成要素(200)を相互に締結するために、長手方向(z)に沿ってレセプタクル(210)内へ挿入可能である、レセプタクル(210)と、- 挿入部(110)に設けられた締結要素(120)と、- 締結要素(120)に対して相補形であり、レセプタクル(210)内に設けられた対向締結要素(220)と、- 挿入部(110)に設けられ、コーディング機能(151;351;551;751)を含む機械的コーディング(150;350;550;750)と、- レセプタクル(210)内に設けられ、対向コーディング機能(251;451;651)を含む機械的対向コーディング(250;450;650)とを含み、- ここで、機械的コーディング(150;350;550;750)および機械的対向コーディング(250;450;650)は、機械的コーディング(150;350;550;750)が機械的対向コーディング(250;450;650)に整合しないとき、締結要素(120)の対向締結要素(220)との係合を防止するように動作可能である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイス(1)のハウジング(10)であって:
薬剤が充填されたカートリッジ(6)を収容するように構成され、第1の連結端(101)を含む第1のハウジング構成要素(100)と、
薬物送達デバイス(1)の駆動機構(8)を収容するように構成され、第2の連結端(201)を含む第2のハウジング構成要素(200)と、
第1の連結端(101)および第2の連結端(201)のうちの一方に設けられた挿入部(110)と、
第1の連結端(101)および第2の連結端(201)のうちの他方に設けられたレセプタクル(210)であって、挿入部(110)は、第1のハウジング構成要素(100)および第2のハウジング構成要素(200)を相互に締結するために、長手方向(z)に沿ってレセプタクル(210)内へ挿入可能である、レセプタクル(210)と、
挿入部(110)に設けられた締結要素(120)と、
該締結要素(120)に対して相補形であり、レセプタクル(210)内に設けられた対向締結要素(220)と、
挿入部(110)およびレセプタクル(210)のうちの一方に設けられ、長手方向(2、3)に沿って延びる溝(130)と、
挿入部(110)およびレセプタクル(210)のうちの他方に設けられ、挿入部(110)をレセプタクル(210)内へ挿入したとき、溝(130)に沿って摺動し、それによって第1のハウジング構成要素(100)を第2のハウジング構成要素(200)に対して回転不能にロックするように構成された突起(230)と、
挿入部(110)に設けられ、コーディング機能(151;351;551;751)を含む機械的コーディング(150;350;550;750)と、
レセプタクル(210)内に設けられ、対向コーディング機能(251;451;651)を含む機械的対向コーディング(250;450;650)とを含み、
ここで、機械的コーディング(150;350;550;750)および機械的対向コーディング(250;450;650)は、機械的コーディング(150;350;550;750)が機械的対向コーディング(250;450;650)に整合しないとき、締結要素(120)の対向締結要素(220)との係合を防止するように動作可能である、前記ハウジング。
【請求項2】
機械的コーディング(150)は、挿入部(110)の側壁(102)のコーディング部分(152)の断面幾何形状によって画成される、請求項1に記載のハウジング(10)。
【請求項3】
機械的コーディング(150)は、挿入部(110)の長手方向端面(112)の断面幾何形状によって画成される、請求項1または2に記載のハウジング(10)。
【請求項4】
コーディング部分(152)の断面幾何形状は、円形、楕円形、三角形、矩形、および多角形のうちの1つを含む、請求項2または3に記載のハウジング(10)。
【請求項5】
機械的対向コーディング(250)は、レセプタクル(210)の側壁(202)の対向コーディング部分(252)の断面幾何形状によって画成される、請求項1~4のいずれか1項に記載のハウジング(10)。
【請求項6】
対向コーディング部分(252)の断面幾何形状は、円形、楕円形、三角形、矩形、および多角形のうちの1つを含む、請求項5に記載のハウジング(10)。
【請求項7】
レセプタクル(210)は、対向コーディング部分(252)と同軸の内側側壁部分(215)を含み、該内側側壁部分は、対向コーディング部分(252)を有する長手方向に延びる円周方向の対向コーディングスロット(254)を形成する、請求項5または6に記載のハウジング(10)。
【請求項8】
レセプタクル(210)は、第1の断面(D1)を有する挿入部開口部(211)を含み、対向コーディング部分(252)は、挿入部開口部(211)から長手方向にずれて位置し、第2の断面(D2)を含み、該第2の断面は、第1の断面(D1)より小さく、挿入部開口部(211)から対向コーディング部分(252)へ長手方向に延びる側壁(202)の内面(203)は、斜面セクション(204)を含む、請求項5~7のいずれか1項に記載のハウジング(10)。
【請求項9】
機械的コーディング(350)は、長手方向(z)に延びるコーディング凹部(352)およびコーディング突起のうちの少なくとも一方を含み、機械的対向コーディング(450)は、コーディング突起に整合する対向コーディング凹部およびコーディング凹部(352)に整合する対向コーディング突起(452)のうちの少なくとも一方を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のハウジング(10)。
【請求項10】
締結要素(120)は、スナップ要素(121)を含み、機械的コーディング(550)は、挿入部(110)上のスナップ要素(121)の長手方向位置および長手方向範囲のうちの少なくとも一方によって画成される、請求項1~9のいずれか1項に記載のハウジング。
【請求項11】
対向締結要素(220)は、対向スナップ要素(221)を含み、機械的対向コーディング(650)は、レセプタクル(210)内の対向スナップ要素(221)の長手方向位置および長手方向範囲のうちの少なくとも一方によって画成される、請求項1~10のいずれか1項に記載のハウジング(10)。
【請求項12】
レセプタクル(210)は、対向締結要素(220)に対して正反対に位置する別の対向締結要素(220’)を含み、レセプタクル(210)の側壁(202)は、対向締結要素(220)と別の対向締結要素(220’)との間の径方向距離を、締結要素(120)と挿入部(110)上で正反対に位置する別の締結要素(120’)との間の径方向距離より大きいまたはそれに等しい範囲まで増大させるように弾性変形可能である、請求項1~11のいずれか1項に記載のハウジング(10)。
【請求項13】
レセプタクル(210)の側壁(202)は、外面(205)を含み、該外面(205)は、第1の平坦部(206)と、該第1の平坦部(206)に対して径方向に反対に位置する第2の平坦部(207)とを含み、第1の平坦部(206)および第2の平坦部(207)と交差する第1の想像上の直線(L1)が、対向締結要素(220)および別の対向締結要素(220’)と交差する第2の想像上の直線(L2)に実質的に直交して延びる、請求項12に記載のハウジング(10)。
【請求項14】
薬剤の用量を注射するための注射デバイスであって:
請求項1~13のいずれか1項に記載のハウジング(10)と、
ハウジング(10)の内側に配置されたカートリッジ(6)であって、薬剤が充填されたバレル(25)を含み、該バレルは、可動の栓(7)によって長手近位方向(3)に封止されている、カートリッジ(6)と、
ハウジング(10)の内側に配置された駆動機構(8)であって、カートリッジ(6)の栓(7)に遠位向きの投薬力をかけるように動作可能なピストンロッド(20)を含む駆動機構(8)とを含む、前記注射デバイス。
【請求項15】
少なくとも請求項1~13のいずれか1項に記載の第1のハウジング(10)および請求項1~13のいずれか1項に記載の第2のハウジング(10’)を含むキットであって、第1のハウジング(10)のコーディング機能(151;351;551;751)は:
コーディング機能の数、
長手方向位置、
長手方向範囲、
円周方向位置、
円周方向範囲、
長手方向(z)を横断する平面内の断面の幾何形状または形状
のうちの少なくとも1つに関して、第2のハウジング(10’)のコーディング機能(151’;351’;551’;751’)とは区別される、前記キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬物送達デバイスおよびシステムの分野に関し、詳細には、液体薬剤を注射するための注射デバイスに関する。より詳細には、本開示は、概して複数の構成要素を含むハウジングを含む薬物送達デバイスおよびシステムを対象とし、1つのハウジング構成要素が、カートリッジなどの薬剤容器を収容するように構成され、別のハウジング構成要素が、薬剤容器に動作可能に係合して薬剤の用量を排出するまたは引き抜くための駆動機構を収容するように構成される。
【背景技術】
【0002】
液体薬剤の単一または複数の用量を設定および投薬するための薬物送達デバイスは、それ自体当技術分野ではよく知られている。概して、そのようなデバイスは、通常のシリンジの目的と実質的に類似した目的を有する。
【0003】
ペン型注射器などの薬物送達デバイスは、使用者特有の複数の要件を満たさなければならない。たとえば、患者が糖尿病などの慢性疾患を患っている場合、患者は身体的に虚弱である可能性があり、視覚障害を患っている可能性もある。したがって、特に家庭用医薬品向けの好適な薬物送達デバイスは、構造上頑強である必要があり、容易に使用できるべきである。さらに、デバイスおよびその構成要素の操作および一般的な取扱いは、分かりやすく容易に理解できるべきである。そのような注射デバイスは、可変サイズの薬剤の用量の設定および次の投薬を提供するべきである。さらに、用量設定ならびに用量投薬の手順は、容易に操作できて明快でなければならない。
【0004】
特定の疾患を患っている患者は、特定の量の薬剤がペン型注射シリンジを介して注射されること、またはポンプを介して注入されることを必要とすることがある。再利用可能な注射または送達デバイスに関して、患者はカートリッジを装填または交換しなければならないことがある。再利用可能な注射デバイスは、典型的には、複数の構成要素を含むハウジングを含む。たとえば、ハウジングは、本体などの近位ハウジング構成要素と、本体に取外し可能に連結可能なカートリッジホルダなどの遠位ハウジング構成要素とを含むことがある。カートリッジなどの薬剤容器内に提供された薬剤が空になった後、カートリッジホルダは注射デバイスの本体から切り離され、空のカートリッジが取り外されて、新しいカートリッジと交換されうる。
【0005】
別の問題は、カートリッジが本質的に標準的なサイズで製造され、特定の認められた地域的および国際的な規格に準拠するように製造されることに起因しうる。その結果、そのようなカートリッジは、典型的には標準的なサイズのカートリッジ(たとえば、3mlのカートリッジ)で供給される。したがって、様々なカートリッジが複数の異なる供給業者によって供給され、異なる薬剤を収容するが、単一の薬物送達デバイスに適合することがある。一例であるが、第1の供給業者からの第1の薬剤を収容する第1のカートリッジが、第2の供給業者によって提供される薬物送達デバイスに適合することがある。したがって、使用者は、薬物送達デバイスに間違った薬剤を装填することが可能になり、このとき、その医療用送達デバイスがおそらくそのようなカートリッジ向けに設計されていない、またはそのようなカートリッジとともに使用されることが意図されていないことに気付くことなく、前記薬剤(速効型インスリンまたは基礎インスリンなど)を投薬するおそれがある。
【0006】
したがって、使用者、医療提供者、介護者、規制当局、および医療用デバイス供給業者から、使用者が間違った薬物タイプを薬物送達デバイスに装填するという潜在的なリスクを低減させたいという要求が高まっている。間違った薬剤(または誤った濃度の薬剤)をそのような薬物送達デバイスから投薬するリスクを低減させることも望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、望ましくないカートリッジの相互使用を防止するために、カートリッジおよび/またはカートリッジホルダを、その薬物タイプに対して物理的に専用のものにし、または機械的にコーディングし、カートリッジおよび/もしくはカートリッジホルダ上にもしくはカートリッジおよび/もしくはカートリッジホルダとともに設けられた専用のもしくはコーディングされた機能のみを受け入れる、またはそのような機能のみと動作する注射デバイスを設計することが、一般に必要とされている。同様に、医療用送達デバイスが特有の薬剤を収容する認可されたカートリッジのみとともに使用されることを可能にしながら、望ましくないカートリッジの相互使用を防止する専用のカートリッジも、一般に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本開示は、薬物送達デバイスのハウジング、特に手持ち式の注射ペンなどの注射デバイスのハウジングに関する。ハウジングは、薬剤が充填されたカートリッジを収容するように構成された第1のハウジング構成要素を含む。第1のハウジング構成要素は、第1の連結端を含む。ハウジングは、第2のハウジング構成要素をさらに含む。第2のハウジング構成要素は、薬物送達デバイスの駆動機構を収容するように構成される。典型的には、駆動機構は、長手方向に延びるピストンロッドを含み、ピストンロッドは、カートリッジのピストンまたは栓に動作可能に係合して、カートリッジから薬剤の用量を排出するように構成される。
【0009】
第2のハウジング構成要素は、第2の連結端を含む。典型的には、第1の連結端は、第2の連結端に連結可能であり、薬物送達デバイスのハウジングを形成または構成する。いくつかの例では、第1のハウジング構成要素は、細長いまたは管状のハウジング構成要素であり、長手方向近位端に第1の連結端を含む。第2のハウジング構成要素もまた、管状または細長い形状とすることができる。第2の連結端は、第2のハウジング構成要素の長手方向遠位端に位置することができる。
【0010】
第1の連結端および第2の連結端のうちの一方に、挿入部がさらに設けられる。挿入部は、典型的には、それぞれの第1または第2のハウジング構成要素と一体形成される。第1の連結端および第2の連結端のうちの他方に、レセプタクルがさらに設けられる。挿入部は、第1のハウジング構成要素および第2のハウジング構成要素を相互に締結するために、ならびに/または薬物送達デバイスのハウジングを形成もしくは確立するために、長手方向に沿ってレセプタクル内へ挿入可能である。典型的には、レセプタクルは、第1および第2の連結端のうちの一方に設けられ、それぞれの連結端を形成する。挿入部は、第1および第2の連結端のうちの他方に設けられ、それぞれの連結端を形成する。
【0011】
レセプタクルは、挿入部を受け入れるようなサイズおよび形状の内側断面を含む。典型的には、レセプタクルの内径または内側断面は、挿入部の外径または外側断面に密接に整合する。
【0012】
ハウジングは、挿入部に設けられた締結要素と、締結要素に対して相補形であり、レセプタクル内に設けられた対向締結要素とをさらに含む。典型的には、最終組立て構成に到達したとき、締結要素は対向締結要素に係合し、それによって第1のハウジング構成要素を第2のハウジング構成要素に締結および固定し、逆も同様である。
【0013】
ハウジングは、挿入部およびレセプタクルのうちの一方に設けられた溝をさらに含む。溝は、長手方向に沿って延びる。典型的には、溝は、線形または直線状であり、排他的に長手方向または長手方向に対して平行に延びる。ハウジングは、挿入部およびレセプタクルのうちの他方に設けられた突起をさらに含む。したがって、突起は、挿入部をレセプタクル内へ挿入したときに突起が溝に沿って摺動するようなサイズおよび/または形状になるように構成される。溝および突起の相互係合は、第1および第2のハウジング構成要素の相互組立て中に、第1のハウジング構成要素を第2のハウジング構成要素に対して回転不能にロックする。
【0014】
ハウジングは、挿入部に設けられた機械的コーディングをさらに含む。機械的コーディングは、コーディング機能を含む。ハウジングは、レセプタクル内に設けられた機械的対向コーディングをさらに含み、機械的対向コーディングは、対向コーディング機能を含む。機械的コーディングおよび機械的対向コーディングは、機械的コーディングが機械的対向コーディングに整合しないとき、締結要素の対向締結要素との係合を防止するように動作可能である。第1のハウジング構成要素および第2のハウジング構成要素の相互組立て、ならびに/または締結要素および対向締結要素の相互係合は、機械的コーディングを備える第1のハウジング構成要素が、対応するまたは相補形の機械的対向コーディングを備える第2のハウジング構成要素とともに組み立てられることを必要とする。
【0015】
挿入部の機械的コーディングがレセプタクル内の機械的対向コーディングに整合したときのみ、締結要素および対向締結要素が相互に係合することが有効にされる。機械的コーディング、たとえば第1のタイプの機械的コーディングの、整合しない機械的対向コーディング、たとえば第2のタイプの機械的対向コーディングとの他のすべてのペアリングまたは組合せの場合、締結要素および対向締結要素が相互に係合することが妨げられる。このとき、第1および第2のハウジング構成要素の相互組立ておよび/または固定は、実質的に防止される。
【0016】
締結要素の対向締結要素との相互係合は、機械的コーディングが機械的対向コーディングに整合することを必要とする。このようにして、第1の薬物送達デバイスの第1のハウジング構成要素と別の薬物送達デバイスの第2のハウジング構成要素との意図しない交差使用を実質的に防止することができる。
【0017】
締結要素の対向締結要素との相互係合の防止は、2つの異なる方法で実質的に実現することができる。いくつかの例によれば、機械的コーディングおよび整合しない機械的対向コーディングは、長手方向に沿ったレセプタクルへの挿入部の完全な挿入を防止するように構成される。ここで、挿入部がレセプタクル内の最終組立て位置に到達する前に、機械的コーディングは整合しない機械的対向コーディングに機械的に係合し、それによってレセプタクルへの挿入部のあらゆるさらなる長手方向運動を妨害する。ここで、締結要素は、相補形の対向締結要素に係合しうる意図された最終組立て位置に到達することが妨げられる。
【0018】
他の例では、締結要素は機械的コーディングに一体化され、対向締結要素は機械的対向コーディングに一体化される。ここで、機械的対向コーディングに整合しない機械的コーディングは、締結要素がレセプタクル内の所定の最終組立て位置に到達することを可能にし、それを支持することができるが、締結要素が対向締結要素に係合することは妨げられる。この例では、締結要素は、それぞれの対向締結要素に整合しない。それに応じて、締結要素が対向締結要素に係合することが妨げられ、第1のハウジング構成要素および第2のハウジング構成要素の相互締結を実質的に妨害することができる。
【0019】
挿入部およびレセプタクル上の溝および突起の相互係合は、第1のハウジング構成要素および第2のハウジング構成要素の取付けおよび/または相互組立てを提供する。典型的には、溝は、第1の連結端または第2の連結端の長手方向端面に隣接する。溝に係合するための突起は、第1の連結端および第2の連結端のうちの他方の長手方向端の近くに設けることができる。このようにして、挿入部をレセプタクル内へ挿入した直後に、挿入部をレセプタクルに対して回転不能にロックすることができる。したがって、第1および第2のハウジング構成要素の組立ては、第2のハウジング構成要素に対する第1のハウジング構成要素の純粋に長手方向の摺動運動に低減される。第1のハウジング構成要素が排他的に第2のハウジング構成要素に対する長手方向に沿った摺動運動を受ける非回転組立てプロセスは、副作用に苦しむ患者または使用者にとっても、より直観的かつ容易に実行することができる。
【0020】
別の例によれば、機械的コーディングは、挿入部の側壁のコーディング部分の断面幾何形状によって画成される。したがって、挿入部の側壁の形状、特に断面が、機械的コーディングを画成する。相補形の機械的対向コーディングを有するレセプタクルのみが、挿入部の側壁の機械的コーディング部分を受けるように動作可能である。したがって、ハウジングのレセプタクルは、それに対応して、その特定の断面幾何形状を有する挿入部の側壁のコーディング部分を受けるような形状とすることができる。典型的には、側壁のコーディング部分の外側断面は、機械的コーディングを形成し、または機械的コーディングを画成する。
【0021】
さらなる例によれば、機械的コーディングは、挿入部の長手方向端面の断面幾何形状によって画成される。挿入部の長手方向端面は、第1のハウジング構成要素の第1の連結端に一致することができる。ここでも、挿入部の長手方向端面の断面幾何形状の外周のみが、機械的コーディングを決定または画成することができる。特に、挿入部の長手方向端面の外側断面幾何形状は、機械的コーディングを画成する。
【0022】
したがって、長手方向端面および/または挿入部の断面幾何形状を変えることによって、より直観的かつ容易に認識可能な機械的コーディングを提供する。ここで、薬物送達デバイスを使用する使用者または患者は、1つの機械的コーディングを別の機械的コーディングからより容易かつより直観的に区別することができる。挿入部および/または挿入部の長手方向端面の断面幾何形状を変えることによって、機械的コーディングを触覚的に検出することもできる。
【0023】
さらなる例によれば、挿入部の側壁のコーディング部分の断面幾何形状は、円形、楕円形、三角形、矩形、および多角形のうちの1つを含む。いくつかの例では、コーディング部分の断面幾何形状および/または挿入部の端面の断面は、五角形、六角形、またはさらには八角形を含むことができる。
【0024】
さらなる例では、第1のコーディングのコーディング部分の断面幾何形状は、断面幾何形状だけでなく直径または断面サイズによっても、第2のコーディングまたは他のコーディングとは区別することができる。それぞれ、第1のコーディングは、第1の外径または内径を有する円形を含むことができ、第2のコーディングは、異なる外径または内径を有する円形の断面幾何形状を含むことができる。同じことは、上述した他のすべての幾何形状にも当てはまることができる。
【0025】
コーディング部分および/または挿入部の長手方向端面の断面幾何形状を変えることによって、第1および第2のハウジング構成要素のうちの一方の挿入部を第1および第2のハウジング構成要素のうちの他方のレセプタクル内へ挿入ことを防止する働きをする多種多様なコーディングを提供することができる。断面幾何形状の変化は、典型的には、コーディングの各々を複数の利用可能な対向コーディングのうちの1つにのみ挿入することができるように選択され、逆も同様である。したがって、円形のコーディング部分を、楕円形、三角形、矩形、または多角形の対向コーディング部分内へ長手方向に挿入することはできず、逆も同様である。
【0026】
さらなる例によれば、機械的対向コーディングは、レセプタクルの側壁の対向コーディング部分の断面幾何形状によって画成される。いくつかの例では、レセプタクルの側壁の内面全体に、機械的対向コーディングを設けることができる。他の例では、レセプタクルの側壁の一部分のみ、たとえばレセプタクルの挿入部開口部から所定の長手方向距離をあけて位置する内側側壁の長手方向部分のみに、機械的対向コーディングが設けられる。ここで、機械的対向コーディングをハウジングの外側から直接見ることはできない。したがって、第1および第2のハウジング構成要素が最終組立て構成で相互に組み立てられたとき、コーディング機能を隠すことができ、見えないようになっている。
【0027】
典型的には、レセプタクルの側壁の対向コーディング部分の内側断面幾何形状のみが、挿入部とレセプタクルとの間のコーディング係合に関連することができる。典型的には、異なる形状の対向コーディング部分の多数のサンプルはすべて、共通の外観を有するレセプタクルの側壁を含む。
【0028】
さらなる例によれば、対向コーディング部分の断面幾何形状は、円形、楕円形、三角形、矩形、および多角形のうちの1つを含む。挿入部のコーディング部分に関連して上述したように、対向コーディング部分の断面幾何形状は、それに応じて適用することができる。このようにして、コーディング部分が円形の断面幾何形状を含み、かつ対向コーディング部分が対応する円形の断面幾何形状を含むとき、挿入部はレセプタクル内へ挿入可能である。そうでない場合、レセプタクルの対向コーディング部分の内側断面幾何形状が挿入部の外側断面幾何形状に整合しないとき、挿入部が長手方向に沿ってレセプタクルに入ること、または完全に入ることが、実質的に妨げられる。
【0029】
いくつかの例では、対向コーディング部分がレセプタクルの挿入部開口部から所定のずれでのみ設けられたとき、挿入部の長手方向端面がレセプタクルの側壁の内側の対向コーディング部分の整合しない断面幾何形状に軸方向に当接するまで、挿入部をレセプタクル内へ少なくとも部分的に挿入することができる。この軸方向の当接によって、挿入部がレセプタクルに完全に入ることは妨げられる。同時に、挿入部の長手方向端面が、たとえばレセプタクルの側壁の内面に設けられた対向コーディングの径方向減少部分に軸方向に当接したとき、挿入部のコーディングがレセプタクルの対向コーディングに整合しないという明確な触覚フィードバックが使用者に提供される。
【0030】
別の例によれば、レセプタクルは、対向コーディング部分と同軸の内側側壁部分を含み、内側側壁部分は、対向コーディング部分を有する長手方向に延びる円周方向の対向コーディングスロットを形成する。内側側壁は、レセプタクルの側壁に対して平行に延びる補助的な側壁を形成または構成する。内側側壁は、レセプタクル内に位置することができる。内側側壁部分の軸方向端は、完全にレセプタクル内に位置する。典型的には、レセプタクルの挿入部開口部の方を向いている内側側壁部分の長手方向端は、レセプタクルの挿入部開口部から所定の長手方向のずれで位置する。いくつかの例では、内側側壁部分はハウジングの外側から見えず、またはほとんど見えない。内側側壁部分は、レセプタクルの長手方向に凹状の部分内に位置することができる。
【0031】
側壁部分の外面は、挿入部の側壁の対向コーディング部分の内面に適用することができ、または共形となることができる。いくつかの例では、内側側壁部分の外面は、挿入部の側壁の対向コーディング部分の内面とは異なる。いずれにしても、対向コーディングスロットは、内側側壁部分および挿入部の側壁のコーディング部分によって径方向外方に制限される。対向コーディングスロットは、内側側壁部分の外面によって径方向内方に制限される。いくつかの例では、内側側壁部分の長手方向範囲は、レセプタクルの側壁の対向コーディング部分の長手方向範囲に実質的に等しい。内側側壁部分の長手方向端、または両長手方向端が、対向コーディング部分の長手方向端、または反対に位置する両長手方向端に一致することができる。
【0032】
対向コーディングスロットは、長手方向に見たとき、均質で変化しない断面を含むことができる。同じことは、挿入部のコーディング部分にも当てはまることができる。これにより、対向コーディングスロット内への挿入部のより平滑かつ容易な挿入を可能にし、それを支持する。
【0033】
対向コーディングスロットは、挿入部の側壁のコーディング部分の断面幾何形状または断面形状に整合する断面形状を含む。正確に組み立てられ、機械的コーディングを有する挿入部が、整合する機械的対向コーディングを有するレセプタクル内へ挿入されたとき、挿入部の側壁のコーディング部分は、対向コーディングスロット内に位置する。対向コーディングスロットは、挿入部の側壁の内面によって径方向外方に制限される。対向コーディングスロットは、内側側壁部分の外面によって径方向内方に制限される。
【0034】
レセプタクルは、レセプタクルの側壁の内径を横切って延びる端面によって長手方向に制限することができる。この端面は、径方向または横断方向に延びるウエブを含むことができ、ウエブは典型的には貫通口を含み、薬物送達デバイスの駆動機構の構成要素、たとえばピストンロッドは、この貫通口を通って延びることができる。いくつかの例では、内側側壁部分は、挿入部をレセプタクル内へ長手方向に挿入可能な挿入方向に沿ってレセプタクルを制限する端面に一体形成することができ、または連結することができる。
【0035】
いくつかの例では、たとえば内側端面の形態の端面は、レセプタクルの側壁に一体形成される。さらなる例では、内側側壁部分は、ウエブまたは端面に一体形成される。内側側壁部分は、増大された安定性および剛性をレセプタクルに提供することができる。さらに、機械的対向コーディングの断面幾何形状に整合する断面幾何形状を有する内側側壁部分、特に内側側壁部分の長手方向端面は、レセプタクル内に設けられた螺旋形の対向コーディングの頑強性および安定性を強化する。
【0036】
さらなる例によれば、レセプタクルは、第1の断面を有する挿入部開口部を含む。対向コーディング部分は、挿入部開口部から長手方向にずれて位置し、第2の断面を含む。ここで、第2の断面は第1の断面より小さい。挿入部開口部から対向コーディング部分へ長手方向に延びる側壁の内面は、斜面セクションを含む。斜面セクションは、挿入部開口部から対向コーディング部分または内側端面の方を見て、狭くなった断面または狭くなった直径を有する。その限りにおいて、斜面セクションは、レセプタクルの側壁の内側に設けられた対向コーディング部分内へ挿入部を横断方向または径方向に案内する働きをする。このようにして、レセプタクルへの挿入部のより平滑かつ容易な挿入運動を提供することができる。
【0037】
斜面セクションは、レセプタクルの側壁の内面に排他的に設けることができ、レセプタクルの側壁の外面は、長手方向に見て、より直線または均一の形状である。このようにして、レセプタクルの側壁の厚さは、長手方向に挿入部開口部から対向コーディング部分へ平滑または突然に増大することができる。このようにして、対向コーディング部分の領域内だけで、レセプタクルの側壁を機械的に補強することができ、レセプタクルの側壁の長手方向端には、たとえば挿入部開口部の領域内で、比較的薄い側壁を設けることができる。ここで、挿入部開口部は、挿入部開口部から長手方向にずれて位置する対向コーディング部分と比べて、増大された機械的柔軟度を示すことができる。したがって、いくつかの例では、挿入部開口部からずれた長手方向セクションにおけるレセプタクルの側壁の厚さは、挿入部開口部における側壁の厚さより大きい。
【0038】
別の例によれば、機械的コーディングは、長手方向に延びるコーディング凹部およびコーディング突起のうちの少なくとも一方を含む。ここで、機械的対向コーディングは、コーディング突起に整合する対向コーディング凹部、およびコーディング凹部に整合する対向コーディング突起のうちの少なくとも一方を含む。このタイプの機械的コーディングは、挿入部の側壁または挿入部の長手方向端面の変化する断面幾何形状の形態の上述したタイプの機械的コーディングと組み合わせることができる。
【0039】
いくつかの例では、コーディング凹部およびコーディング突起、したがって対向コーディング凹部および対向コーディング突起は、挿入部および/またはレセプタクルの側壁の断面幾何形状の上述した変化の代替として設けることができる。いくつかの例では、コーディング凹部および/またはコーディング突起の長手方向範囲が、挿入部に機械的コーディングを提供する。他の例では、コーディング凹部およびコーディング突起の形状が、それぞれの機械的コーディングを画成する。さらなる他の例では、コーディング凹部およびコーディング突起の総数および/または空間分布が、機械的コーディングを画成する。他の例では、コーディング凹部および/またはコーディング突起の円周方向位置が、それぞれの機械的コーディングを画成する。
【0040】
これらすべての例で、対向コーディングは、コーディング突起および/またはコーディング凹部に整合するそれに対応する形状の対向コーディング機能を含む。
【0041】
ほんの一例として、第1のハウジング構成要素の長手方向端、典型的には第1の連結端は、たとえば第1の連結端の長手方向端面に隣接する細長いスリットの形態のコーディング凹部を含むことができる。典型的には、そのような凹部は、挿入部のそれぞれの長手方向端に設けることができる。このとき、それに対応する形状の対向コーディング突起を、レセプタクル内に設けることができる。対向コーディング突起は、明確な円周方向位置において側壁から径方向内方に突出することができ、挿入部のコーディング凹部の長手方向範囲に整合するそれぞれの長手方向範囲を含むことができる。対向コーディング突起は、レセプタクルの内側端面から長手方向に延長または突出することができる。
【0042】
コーディングは、コーディング凹部および/またはコーディング突起の長手方向範囲を修正することによって、容易に変えることができる。コーディングはまた、コーディング凹部、コーディング突起、対向コーディング凹部、および対向コーディング突起の数を修正することによって、ならびにコーディング凹部、コーディング突起、対向コーディング凹部、および対向コーディング突起の接線方向または円周方向位置、およびそれぞれの幾何形状を修正することによって、変えることもできる。
【0043】
さらなる例によれば、締結要素は、スナップ要素を含む。ここで、機械的コーディングは、挿入部上のスナップ要素の長手方向位置および長手方向範囲のうちの少なくとも一方によって画成される。この例では、締結要素は、機械的コーディングに一体形成される。機械的コーディングおよび締結要素は、一致することができる。言い換えれば、締結要素は、2重または2倍の機能を提供することができる。締結要素は、第1および第2のハウジング構成要素の相互締結または固定を提供することができる。加えて、締結要素は、整合しない第1および第2のハウジング構成要素のペアリングまたは相互組立てを防止することができる。
【0044】
さらなる例によれば、機械的コーディングは、挿入部上のスナップ要素の長手方向位置と長手方向範囲との間の関係によって画成される。異なる機械的コーディングは、挿入部上のスナップ要素の異なる長手方向位置によって区別することができる。ここで、異なる長手方向位置に位置するスナップ要素は、挿入部上のその長手方向位置だけでなく、その長手方向範囲によっても区別することができる。このようにして、スナップ要素が整合しない対向スナップ要素に空間的に重複するとき、そのような整合しない対向スナップ要素に係合することを実質的に回避することができる。
【0045】
したがって、機械的コーディングは、少なくとも2つの個々のパラメータ、すなわち挿入部上の長手方向位置の変化およびスナップ要素の長手方向範囲の変化によって符号化される。
【0046】
さらなる例によれば、機械的コーディングは、挿入部上のスナップ要素の円周方向位置および円周方向範囲のうちの少なくとも一方によって画成される。ここでも、スナップ要素の円周方向位置が機械的コーディングを画成するだけでなく、スナップ要素の円周方向範囲も機械的コーディングに寄与する。機械的コーディングは、2つの個々のパラメータ、すなわちたとえば挿入部に設けられた溝および突起のうちの少なくとも一方に対する挿入部上のスナップ要素の円周方向位置、および挿入部上の円周方向範囲によって提供することができる。いくつかのさらなる例では、機械的コーディングは、少なくとも3つの個々のパラメータ、すなわち長手方向位置、長手方向範囲、および円周方向範囲によって符号化することもできる。
【0047】
いくつかのさらなる例では、機械的コーディングは、4つの個々のパラメータ、すなわちスナップ要素の長手方向位置、スナップ要素の長手方向範囲、スナップ要素の円周方向位置、およびスナップ要素の円周方向範囲によって画成することができる。
【0048】
さらに、別の例によれば、機械的コーディングは、挿入部上のスナップ要素の長手方向位置と円周方向範囲との間の関係によって画成される。
【0049】
いくつかの例では、スナップ要素および対向スナップ要素のうちの少なくとも一方は、径方向凹部を含み、スナップ要素および対向スナップ要素のうちの他方は、径方向凹部に係合するためのそれに対応する形状の径方向突出物を含む。径方向突出物および径方向凹部のうちの少なくとも一方は、スナップ要素の対向スナップ要素とのスナップフィット係合を有効にするように、たとえば径方向に、可撓性を有し、弾性変形可能である。
【0050】
さらなる例によれば、コーディング機能および対向コーディング機能は、それに対応して径方向凹部の長手方向位置および径方向突出物の長手方向位置を変えることによって、別のハウジングのコーディング機能および対向コーディング機能とは区別され、第1または第2の連結端の自由端から径方向凹部までの長手方向距離の増大は、長手方向範囲の増大および/または径方向凹部の横断方向もしくは円周方向範囲の増大、ならびに対応する径方向突出物の長手方向範囲および/または横断方向範囲の対応する増大を伴い、またはそのような増大と組み合わされる。
【0051】
さらなる例によれば、対向締結要素は、対向スナップ要素を含む。機械的対向コーディングは、レセプタクル内の対向スナップ要素の長手方向位置および/または長手方向範囲のうちの少なくとも一方によって画成される。
【0052】
さらなる例によれば、機械的対向コーディングは、レセプタクル内の対向スナップ要素の長手方向位置と長手方向範囲との間の関係によって画成される。異なる機械的対向コーディングは、レセプタクル内の対向スナップ要素の異なる長手方向位置によって区別することができる。ここで、異なる長手方向位置に位置する対向スナップ要素は、レセプタクル内のその長手方向位置だけでなく、その長手方向範囲によっても区別することができる。このようにして、対向スナップ要素が整合しないスナップ要素に空間的に重複するとき、そのような整合しないスナップ要素に係合することを実質的に回避することができる。
【0053】
したがって、機械的対向コーディングは、少なくとも2つの個々のパラメータ、すなわちレセプタクル内の長手方向位置の変化および対向スナップ要素の長手方向範囲の変化によって符号化される。
【0054】
さらなる例によれば、機械的対向コーディングは、レセプタクル内の対向スナップ要素の円周方向位置および円周方向範囲のうちの少なくとも一方によって画成される。ここでも、対向スナップ要素の円周方向位置が機械的対向コーディングを画成するだけでなく、対向スナップ要素の円周方向範囲も機械的対向コーディングに寄与することができ、または機械的対向コーディングを画成することができる。機械的対向コーディングは、2つの個々のパラメータ、すなわちたとえばレセプタクル内に設けられた溝および突起のうちの少なくとも一方に対するレセプタクル内の対向スナップ要素の円周方向位置によって提供することができる。いくつかのさらなる例では、機械的対向コーディングは、少なくとも3つの個々のパラメータ、すなわち長手方向位置、長手方向範囲、および円周方向範囲によって符号化することもできる。
【0055】
いくつかのさらなる例では、機械的対向コーディングは、4つの個々のパラメータ、すなわち対向スナップ要素の長手方向位置、対向スナップ要素の長手方向範囲、対向スナップ要素の円周方向位置、および対向スナップ要素の円周方向範囲によって画成することができる。
【0056】
さらに、別の例によれば、機械的対向コーディングは、レセプタクル内の対向スナップ要素の長手方向位置と円周方向範囲との間の関係によって画成される。
【0057】
さらなる例によれば、第1の機械的コーディングのコーディング機能は、コーディング機能の数、長手方向位置、長手方向範囲、円周方向位置、円周方向範囲、および/または長手方向を横断する平面内の断面の幾何形状もしくは形状のうちの少なくとも1つに関して、別の機械的コーディングのコーディング機能とは区別される。同様に、さらなる例によれば、第1の機械的対向コーディングの対向コーディング機能は、コーディング機能の数、長手方向位置、長手方向範囲、円周方向位置、円周方向範囲、および/または長手方向を横断する平面内の断面の幾何形状もしくは形状のうちの少なくとも1つに関して、別の機械的対向コーディングの対向コーディング機能とは区別される。
【0058】
さらなる例によれば、レセプタクルは、対向締結要素に対して正反対に位置する別の対向締結要素を含む。さらなる例では、レセプタクルの側壁は、対向締結要素と別の対向締結要素との間の径方向距離を、締結要素と挿入部上で正反対に位置する別の締結要素との間の径方向距離より大きいまたはそれに等しい範囲まで増大させるように弾性変形可能である。このようにして、レセプタクルの弾性変形可能な側壁を提供することによって、正反対に位置する対向締結要素間の径方向距離を、挿入部に設けられた対応するまたは相補形の締結要素から係合解除される範囲または程度まで増大させることができる。
【0059】
それに応じて、締結要素は、それに対応する形状または相補形の対向締結要素に解放可能に係合することができる。第1および第2のハウジング構成要素は、要求に応じて切断することができる。
【0060】
レセプタクルの側壁の十分な弾性変形性を有効にしまたは提供するために、レセプタクルの側壁が少なくともその挿入部開口部の領域内に比較的薄い側壁を含むと特に有益である。典型的には、側壁、したがってレセプタクル、および/またはそれぞれのハウジング構成要素全体は、本質的に十分な弾性を提供するプラスチック材料、たとえば射出成形プラスチック材料から作られる。
【0061】
さらなる例によれば、レセプタクルの側壁は、外面を含む。外面は、第1の平坦部と、第1の平坦部に対して径方向に反対に、たとえば正反対に位置する第2の平坦部とを含む。第1の平坦部および第2の平坦部と交差する第1の想像上の直線が、締結要素および別の締結要素と交差する第2の想像上の直線に実質的に直交して延びる。レセプタクルおよび/またはレセプタクルを制限する側壁は、管状形、円形、および楕円形のうちの1つを含むことができる。
【0062】
第1および第2の平坦部は、特定の押圧ツールのための係合セクションとして構成され、それによって第1および第2の平坦部間の径方向距離を所定の程度まで減少させることができる。第1および第2の平坦部間の径方向距離の減少は、本質的に、第1の締結要素と別の締結要素との間の径方向距離の増大を招く。したがって、対向する方向の径方向内方向きの圧力を第1および第2の平坦部に印加することによって、レセプタクルは、ある程度楕円形に適用することができ、または共形となることができ、楕円形の長軸は、締結要素および別の締結要素と交差する第2の想像上の直線に一致する。
【0063】
平坦部は、ハウジング構成要素の明確な把持および押圧を提供することができるだけでなく、押圧ツールを使用するための視覚および触覚による案内も提供することができる。
【0064】
別の態様によれば、薬剤の用量を注射するための注射デバイスが提供される。注射デバイスは、上述したハウジングと、ハウジングの内側に配置されたカートリッジとを含む。カートリッジは、薬剤が充填されたバレルを含み、バレルは、可動の栓によって長手近位方向に封止されている。注射デバイスは、ハウジングの内側に配置された駆動機構をさらに含む。駆動機構は、カートリッジの栓に遠位向きの投薬力をかけるように動作可能なピストンロッドを含む。典型的には、注射デバイスは、手持ち式または携帯型の注射デバイスとして実装される。注射デバイスは、ペン型注射器を含むことができる。
【0065】
いくつかの例では、レセプタクルは、細長いハウジング構成要素、たとえば薬物送達デバイスのハウジングの第1または第2のハウジング構成要素に固定して取付け可能でありまたは固定して取り付けられたハウジング挿入部として提供される。ハウジング挿入部は、細長いハウジング構成要素に対して回転不能および/または長手方向に固定することができる。その限りにおいて、レセプタクルに関連して上述したすべての構成および利益は、それぞれのハウジング構成要素に対して固定して連結可能でありまたは固定して連結されたハウジング挿入部にも等しく当てはまる。
【0066】
別の態様によれば、本開示は、少なくとも上述した第1のハウジングおよび少なくとも上述した第2のハウジングを含むキットに関する。ここで、第1のハウジングのコーディング機能は、コーディング機能の数、長手方向位置、長手方向範囲、円周方向位置、円周方向範囲、および/または長手方向を横断する平面内の断面の幾何形状もしくは形状のうちの少なくとも1つに関して、第2のハウジングのコーディング機能とは区別される。同様に、第1のハウジングはまた、第1の対向コーディング機能を含み、第1の対向コーディング機能は、上述した機能、長手方向位置、長手方向範囲、円周方向位置、円周方向範囲、および/または長手方向を横断する平面内の断面の幾何形状もしくは形状のうちの少なくとも1つに関して、第2のハウジングのそれぞれの対向コーディング機能とは区別される。
【0067】
ここで、相補形の機械的コーディングおよび機械的対向コーディングを装備した第1のハウジングのハウジング構成要素のみが、相互に締結および固定されることが可能になり、そのように支持される。第1のハウジングには、第1のタイプの1対のコーディングおよび対向コーディングが設けられる。第2のハウジングには、第2のタイプの1対のコーディングおよび対向コーディングが設けられる。第1のタイプのコーディングは、第2のタイプの対向コーディングに適合しない。第1のタイプの対向コーディングは、第2のタイプのコーディングに適合しない。第1のハウジングのハウジング構成要素を第2のハウジングのハウジング構成要素と組み立てようとした使用者は、整合しない機械的コーディングおよび機械的対向コーディングによって、それが妨げられる。
【0068】
概して、いくつかの例では、異なるハウジングの第1のハウジング構成要素は、薬剤容器またはカートリッジを受けるための収容空間のサイズおよび/または幾何形状によって区別することができる。特に、第1のタイプのコーディングを有するハウジングは、第1のカートリッジまたは薬剤容器を排他的に装備することができる。第2のタイプのコーディングを有するハウジングは、第2のカートリッジまたは薬剤容器を排他的に装備することができる。このため、薬剤容器、カートリッジ、ならびに第1のハウジング構成要素の内部は、1つの専用のカートリッジまたは薬剤容器のみが1つの専用の第1のハウジング構成要素のみに明確に適合するように、さらなるコーディングもしくはコーディング機能を含むことができ、またはそれらのサイズもしくは幾何形状に関して区別することができる。
【0069】
いくつかの例では、第1のハウジング構成要素には、カートリッジの相補形の対向コーディングに係合するための機械的コーディングが設けられる。さらなる例では、第1のハウジング構成要素には、カートリッジの相補形の対向コーディングに整合するように構成された電子、視覚、または光学コーディングのうちの少なくとも1つを設けることができ、相補形の対向コーディングもまた、電子、視覚、または光学タイプである。
【0070】
さらに、カートリッジおよび第1のハウジング構成要素のうちの少なくとも一方には、ロッキングまたは締結機能を設けることができ、それによってカートリッジを第1のハウジング構成要素内で固定および/または保持することができる。ここで、たとえばカートリッジホルダとして実装される第1のハウジング構成要素、およびその中に組み立てられたカートリッジは、事前に製作されたハウジングアセンブリとして、または専用のカートリッジおよびカートリッジホルダの組合せとして提供することができる。
【0071】
いずれにしても、特定のカートリッジ内に提供される特定の薬剤が、第1のハウジング構成要素の特定のタイプに、すなわち特に機械的に符号化された第1のハウジング構成要素に明確に関連付けられることを保証または実現することができる。実質的に、いくつかの例では、特定の薬剤が提供されたカートリッジは、それぞれの機械的コーディングを装備したそれに対応する形状の第1のハウジング構成要素内にのみ収容することができる。
【0072】
さらなる例では、事前に製作されたハウジングアセンブリまたは専用のカートリッジおよびカートリッジホルダの組合せは、製薬会社によって市販されている。ここで、カートリッジは、第1のハウジング構成要素の内側に取外し不能または着脱不能に固定することができ、製薬会社は、特定の薬剤が充填されたカートリッジと、カートリッジの内側に位置する薬剤のタイプに従って機械的に符号化された好適な第1のハウジング構成要素との間に、それぞれの整合を提供する。
【0073】
さらなる態様によれば、本開示はまた、注射デバイスのキットに関する。注射デバイスのキットは、少なくともどちらも第1のタイプのコーディングおよび対向コーディングが設けられた第1のハウジングを含む第1の注射デバイスを含み、どちらも第1のタイプのそれぞれの対向コーディングまたはコーディングに整合しない第2のタイプのコーディングおよび対向コーディングが設けられて装備された第2のハウジングを有する第2の注射デバイスをさらに含む。
【0074】
概して、本開示の範囲は、特許請求の範囲の内容によって画成される。注射デバイスは、特有の実施形態または例に限定されるものではなく、異なる実施形態または例の要素のあらゆる組合せを含む。その限りにおいて、本開示は、特許請求の範囲のあらゆる組合せ、および異なる例または実施形態に関連して開示する構成のあらゆる技術的に実行可能な組合せを包含する。
【0075】
この文脈において、「遠位」または「遠位端」という用語は、人または動物の注射部位の方を向いている注射デバイスの端部に関する。「近位」または「近位端」という用語は、人または動物の注射部位から最も離れた注射デバイスの反対の端部に関する。
【0076】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、1つもしくはそれ以上の活性医薬成分またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、場合により薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬製剤を記述する。活性医薬成分(「API」)とは、最広義には、ヒトまたは動物に対して生物学的効果を有する化学構造体のことである。薬理学では、薬剤または医薬は、疾患の治療、治癒、予防、または診断に使用されるか、さもなければ身体的または精神的なウェルビーイングを向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限定された継続期間で、または慢性障害では定期的に使用可能である。
【0077】
以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つのAPIまたはその組合せを含みうる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが挙げられうる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。1つまたはそれ以上の薬物の混合物も企図される。
【0078】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他の硬性もしくは可撓性のベッセルでありうる。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(たとえば、APIと希釈剤、または2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジでありうるか、またはそれを含みうる。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0079】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物または薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療および/または予防のために使用可能である。障害の例としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。障害のさらなる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。APIおよび薬物の例は、ローテリステ2014年(Rote Liste 2014)(たとえば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)または86(オンコロジー薬剤))やメルク・インデックス第15版(Merck Index,15th edition)などのハンドブックに記載されているものである。
【0080】
1型もしくは2型糖尿病または1型もしくは2型糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、はそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「アナログ」および「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/または交換によりおよび/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造たとえばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基または他の天然に存在する残基または純合成アミノ酸残基のどれかでありうる。インスリンアナログは、「インスリンレセプターリガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、たとえば、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば脂肪酸)がアミノ酸の1つまたはそれ以上に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然に存在するペプチドに存在する1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失し、および/または非コード可能アミノ酸を含めて他のアミノ酸によって置き換えられ、または天然に存在するペプチドに非コード可能なものを含めてアミノ酸が付加される。
【0081】
インスリンアナログの例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28~B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0082】
インスリン誘導体の例は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、レベミル(Levemir)(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、トレシーバ(Tresiba)(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0083】
GLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストの例は、たとえば、リキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、バイエッタ(Byetta)(登録商標)、ビデュリオン(Bydureon)(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(ビクトーザ(Victoza)(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(シンクリア(Syncria)(登録商標))、デュラグルチド(トルリシティ(Trulicity)(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C(エフペグレナチド)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(ペガパモドチド(Pegapamodtide))、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマドゥチド(Bamadutide)(SAR425899)、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0084】
オリゴヌクレオチドの例は、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセンナトリウム(キナムロ(Kynamro)(登録商標))、またはアルポート症候群の治療のためのRG012である。
【0085】
DPP4阻害剤の例は、リナグリプチン、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0086】
ホルモンの例としては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0087】
多糖の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(シンビスク(Synvisc)(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0088】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体でありうる。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体でありうる。抗体という用語は、4価二重特異的タンデムイムノグロブリン(TBTI)および/またはクロスオーバー結合領域配向を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗原結合分子も含む。
【0089】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含みうるが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、四重特異的および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価または多価抗体フラグメント、たとえば、2価、3価、4価および多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0090】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与しうるか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼしうる。
【0091】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0092】
本明細書に記載のいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物または薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。
【0093】
本発明の完全な範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載するAPI、構成、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素に修正(追加および/または削除)を加えることができ、本発明はそのような修正およびそのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。
【0094】
本開示の範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を本開示に加えることができることが、当業者にはさらに明らかであろう。さらに、添付の特許請求の範囲で使用されるいずれの参照番号も、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0095】
以下、専用のまたはコーディングされたハウジング構成要素を有する注射デバイスの多数の例について、図面を参照することによってより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【
図1】薬物送達デバイスの一例を概略的に示す図である。
【
図2】
図1の薬物送達デバイスの分解図の一例を示す図である。
【
図3】注射デバイスの第1および第2のハウジング構成要素の一例を示す図である。
【
図4】第1のハウジング構成要素の分離斜視図である。
【
図5】第2のハウジング構成要素の遠位端の拡大図である。
【
図6】第1のハウジング構成要素の別の例を示す図である。
【
図7】第2のハウジング構成要素の別の例の遠位端を示す図である。
【
図8】組立て前の
図6および
図7の第1および第2のハウジング構成要素の斜視断面図である。
【
図9】最終組立て構成に到達したときの
図8のハウジング構成要素を示す図である。
【
図10】
図8の第2のハウジング構成要素の断面の別の斜視図である。
【
図11】第2のハウジング構成要素の対向コーディングスロットの一例を示す図である。
【
図12】第2のハウジング構成要素の対向コーディングスロットの別の例を示す図である。
【
図13】第2のハウジング構成要素の対向コーディングスロットの別の例を示す図である。
【
図14】第1のハウジング構成要素の挿入部に設けられた機械的コーディングのさらなる例を示す図である。
【
図15】それぞれの対向コーディングを備える第2のハウジング構成要素のレセプタクルの斜視図である。
【
図18】第1のハウジング構成要素の挿入部に設けられた別のコーディングを示す図である。
【
図19】レセプタクル内に設けられ、
図18による挿入部の機械的コーディングに整合する別の対向コーディングを示す図である。
【
図20】第2のハウジング構成要素の横断方向変形能力を示す図である。
【
図21】相互に組み立てられた第1および第2のハウジング構成要素の斜視図である。
【
図22】挿入部上およびレセプタクル内に設けられたコーディングおよび対向コーディングの別の例を示す図である。
【
図23】コーディングおよび対向コーディングのさらなる例を示す図である。
【
図24】第1および第2のハウジング構成要素の挿入部上およびレセプタクル内に設けられたコーディングおよび対向コーディングの別の例を示す図である。
【
図25】径方向突起を備えた第1のハウジング構成要素の挿入部の拡大斜視図である。
【
図26】相互に組み立てられた第1および第2のハウジング構成要素の長手方向断面図である。
【
図27】コーディングおよび整合する対向コーディングの一例を示す図である。
【
図28】対向コーディングに整合する1対のコーディングのさらなる例を示す図である。
【
図29】相補形の機械的対向コーディングに整合する機械的コーディングのさらなる例を示す図である。
【
図30】機械的対向コーディングに整合する機械的コーディングの別の例を示す図である。
【
図31】機械的対向コーディングに整合する機械的コーディングの別の例を示す図である。
【
図32】機械的対向コーディングに整合する機械的コーディングの別の例を示す図である。
【
図33】長手方向に対して横断方向の平面内で見たその断面幾何形状によって区別される機械的コーディングの3つの例を示す図である。
【
図34】挿入部上に実装された
図33の機械的コーディングのうちの1つを幾何学的に示す図である。
【
図35】挿入部上に実装された
図33の機械的コーディングのうちのもう1つを概略的に示す図である。
【
図36】挿入部上に実装された
図33の機械的コーディングの別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0097】
図1および
図2に、手持ち式注射デバイスの多数の例のうちの1つのみが示されており、これは概してウェアラブル電子デバイスと組み合わせて使用可能である。
図1および
図2に示されているデバイスは、ハウジング10を含む充填済みの使い捨て注射デバイスであり、ハウジング10には注射針15を取り付けることができる。注射針15は、注射デバイス1のハウジング10の遠位セクションを密閉および保護するように構成された内側ニードルキャップ16および外側ニードルキャップ17または保護キャップ18のいずれかによって保護される。ハウジング10は、第1のハウジング構成要素100および第2のハウジング構成要素200を含む。第2のハウジング構成要素は、
図2に示されている駆動機構8および/または用量設定機構9を収容するように構成された主ハウジング部材を形成することができる。第1のハウジング構成要素100は、カートリッジホルダとして構成される。第1のハウジング構成要素100は、第2のハウジング構成要素200に恒久的または解放可能に連結することができる。
【0098】
第1のハウジング構成要素100は、典型的には、液体薬剤が充填されたカートリッジ6を収容するように構成される。カートリッジ6は、バレル25の内側に位置する栓7によって近位方向3に封止された円筒形または管状のバレル25を含む。栓7は、ピストンロッド20によってカートリッジ6のバレル25に対して遠位方向2に変位可能である。カートリッジ6の遠位端は、セプタムとして構成された穿孔可能な封止部26によって封止されており、封止部26は、注射針15の近位向きの先端を有する端部によって穿孔可能である。カートリッジホルダ、したがって第1のハウジング構成要素100は、その遠位端にねじ付ソケット28を含み、ねじ付ソケット28は、注射針15のそれに対応するねじ付部分にねじ係合する。注射針15を第1のハウジング構成要素100の遠位端に取り付けることによって、カートリッジ6の封止部26を貫通し、それによってカートリッジ6の内部への流体伝達アクセスを確立する。
【0099】
注射デバイス1がたとえばヒトインスリンを投与するように構成されるとき、注射デバイス1の近位端にある用量ダイヤル12によって設定される投与量を、いわゆる国際単位(IU)で表示することができ、1IUは約45.5μg(1/22mg)の純結晶インスリンと生物学的に同等である。用量ダイヤル12は、用量ダイヤルを含むことができ、または用量ダイヤルを形成することができる。
【0100】
図1および
図2にさらに示されているように、ハウジング10、たとえば第2のハウジング構成要素200は、投与量窓13を含み、投与量窓13は、ハウジング10内のアパーチャの形態とすることができる。投与量窓13は、現在設定されている用量の視覚インジケーションを提供するために、用量ダイヤル12が回されたときに動くように構成された数字スリーブ80の制限された部分を使用者が見ることを可能にする。用量ダイヤル12は、用量の設定および/または投薬もしくは排出中に回されたとき、ハウジング10に対して螺旋経路上を回転させられる。
【0101】
注射デバイス1は、投与量ノブ12を回すことで機械クリック音を引き起こし、使用者に音響フィードバックを提供するように構成することができる。クリック音は、典型的には、クリックノイズ生成器45によって生成される。概して、クリックノイズ生成器45は、様々な異なる方法で実装することができる。数字スリーブ80は、インスリンカートリッジ6内のピストンと機械的に相互作用する。針15が患者の皮膚部分に刺されて、トリガ11または注射ボタンが押されたとき、表示窓13内に表示されている用量が注射デバイス1から排出される。トリガ11が押されてから特定の時間にわたって注射デバイス1の針15が皮膚部分内に留まったとき、用量は実際に患者の体内へ注射される。液体薬剤の用量の排出もまた、機械クリック音を引き起こすことができるが、このクリック音は、用量ダイヤル12を使用したときに生じたクリック音とは異なる。このため、注射デバイス1は、別個の、したがって第2の、クリックノイズ生成器(図示せず)を含むことができる。
【0102】
この実施形態では、インスリン用量の送達中、用量ダイヤル12は、軸方向運動で、すなわち回転なしで、その初期位置まで戻され、数字スリーブ80は、回転してその初期位置へ戻り、たとえば0単位の用量を表示する。
【0103】
注射デバイス1は、カートリッジ6が空になるまで、または注射デバイス1内の薬剤の有効期日(たとえば、最初の使用から28日後)に到達するまで、いくつかの注射プロセスに対して使用することができる。
【0104】
図2に、駆動機構8の一例がより詳細に示されている。駆動機構8は、多数の機械的に相互作用する構成要素を含む。ハウジング10のフランジ状の支持体が、ピストンロッド20の第1のねじ山または遠位ねじ山22にねじ係合されるねじ付軸方向貫通口を含む。ピストンロッド20の遠位端は支承部21を含み、押さえ23が、ピストンロッド20の長手方向軸を回転軸として、支承部21上を自由に回転する。押さえ23は、カートリッジ6の栓7の近位向きの推力受け面に軸方向に当接するように構成される。投薬動作中、ピストンロッド20はハウジング10に対して回転し、それによってハウジング10に対して、したがってカートリッジ6のバレル25に対して、遠位向きの前進運動を受ける。結果として、カートリッジ6の栓7は、ピストンロッド20のハウジング10とのねじ係合により、遠位方向2に明確な距離だけ変位させられる。
【0105】
ピストンロッド20には、その近位端に第2のねじ山24がさらに設けられる。遠位ねじ山22および近位ねじ山24は、反対の向きである。
【0106】
ピストンロッド20を受けるために中空の内部を有する駆動スリーブ30がさらに設けられる。駆動スリーブ30は、ピストンロッド20の近位ねじ山24にねじ係合される内側ねじ山を含む。さらに、駆動スリーブ30は、その遠位端に外側ねじ付セクション31を含む。ねじ付セクション31は、遠位フランジ部分32と、遠位フランジ部分32から所定の軸方向距離をあけて位置する別のフランジ部分33との間に、軸方向に制限される。2つのフランジ部分32、33間に、半円形ナットの形態の最終用量リミッタ35が設けられ、最終用量リミッタ35は、駆動スリーブ30のねじ付セクション31に嵌合する内部ねじ山を有する。
【0107】
最終用量リミッタ35は、ハウジング10の側壁の内側にある相補形の凹部または突起に係合するための径方向凹部または突起を、その外周にさらに含む。このようにして、最終用量リミッタ35は、ハウジング10に、たとえば第2のハウジング構成要素200にスプライン連結される。連続した用量設定手順中の用量増分方向4または時計回り方向における駆動スリーブ30の回転は、駆動スリーブ30に対する最終用量リミッタ35の累積的な軸方向の変位をもたらす。フランジ部分33の近位向きの表面に軸方向に当接する環状ばね40がさらに設けられる。さらに、管状のクラッチ60が設けられる。クラッチ60の第1の端部に、一連の円周方向に向けられた鋸歯が設けられる。クラッチ60の第2の反対の端部に向かって、径方向内方に向けられたフランジが位置する。
【0108】
さらに、数字スリーブ80とも呼ばれる用量ダイヤルスリーブが設けられる。数字スリーブ80は、ばね40およびクラッチ60の外側に設けられ、ハウジング10の径方向内方に位置する。数字スリーブ80の外面の周りに、螺旋溝81が設けられる。ハウジング10には投与量窓13が設けられており、数字スリーブ80の外面の一部を、投与量窓13を通して見ることができる。ハウジング10には、挿入部62の内側側壁部分に螺旋リブがさらに設けられ、螺旋リブは、数字スリーブ80の螺旋溝81に着座させられる。管状の挿入部62は、ハウジング10の近位端内へ挿入される。挿入部62は、ハウジング10に対して回転不能および軸方向に固定される。数字スリーブ80がハウジング10に対して螺旋運動で回転させられている間の用量設定手順を制限するために、ハウジング10上に第1および第2の止め具が設けられる。
【0109】
用量ダイヤルグリップの形態の用量ダイヤル12が、数字スリーブ80の近位端の外面の周りに配置される。用量ダイヤル12の外径は、典型的には、ハウジング10の外径に対応および整合する。用量ダイヤル12は、数字スリーブ80に対して、これらの間の相対運動を防止するように固定される。用量ダイヤル12には、中心開口部が設けられる。
【0110】
用量ボタンとも呼ばれるトリガ11は、実質的にT字形である。トリガ11は、注射デバイス1の近位端に設けられる。トリガ11の心棒64が、用量ダイヤル12内の開口部を通り、駆動スリーブ30の延長の内径を通って、ピストンロッド20の近位端にある受け凹部内へ延びる。心棒64は、駆動スリーブ30内で制限された形で軸方向に動き、駆動スリーブ30に対して回転しないように保持される。トリガ11のヘッドは略円形である。トリガ側壁またはスカートは、ヘッドの周辺部から延びており、用量ダイヤル12の近位からアクセス可能な環状凹部に着座するようにさらに適用される。
【0111】
用量をダイヤル設定するために、使用者は用量ダイヤル12を回転させる。ばね40がクリックノイズ生成器45としても作用し、クラッチ60が係合された状態で、駆動スリーブ30、ばね40、クラッチ60、および数字スリーブ80は、用量ダイヤル12とともに回転する。用量がダイヤル設定されたという可聴および触覚フィードバックが、ばね40およびクラッチ60によって提供される。鋸歯によって、ばね40とクラッチ60との間でトルクが伝送される。数字スリーブ80上の螺旋溝81および駆動スリーブ30内の螺旋溝は、同じリードを有する。これにより、数字スリーブ80がハウジング10および駆動スリーブ30から延びてピストンロッド20を同じ速度で登ることが可能になる。行程の限界で、数字スリーブ80上の径方向止め具が、ハウジング10上に設けられた第1の止め具または第2の止め具に係合して、第1の回転方向、たとえば用量増分方向4のさらなる動きを防止する。ピストンロッド20の回転は、ピストンロッド20上の全体的な駆動されるねじ山の方向が反対になっていることによって防止される。
【0112】
ハウジング10に固定された最終用量リミッタ35は、駆動スリーブ30の回転によってねじ付セクション31に沿って前進させられる。最終用量投薬位置に到達したとき、最終用量リミッタ35の表面上に形成された径方向止め具が、駆動スリーブ30のフランジ部分33上の径方向止め具に当接し、最終用量リミッタ35および駆動スリーブ30の両方がさらに回転することを防止する。
【0113】
使用者が不注意で所望の投与量を超えてダイヤル設定した場合、ペン注射器として構成された注射デバイス1は、カートリッジ6から薬剤を投薬することなく、投与量を下方にダイヤル設定することを可能にする。このため、用量ダイヤル12は簡単に逆回転される。これにより、システムは逆に作用する。このとき、ばねまたはクリッカ40の可撓アームは、ばね40が回転することを防止するラチェットとして作用する。クラッチ60を介して伝送されるトルクにより、鋸歯は互いを載り越えて、ダイヤル設定された用量の低減に対応するクリックを生み出す。典型的には、鋸歯は、各鋸歯の円周方向範囲が単位用量に対応するように配置される。ここで、クラッチは、ラチェット機構として働くことができる。
【0114】
代替または追加として、ラチェット機構90は、管状クラッチ60の側壁上の可撓アームなど、少なくとも1つのラチェット機能91を含むことができる。少なくとも1つのラチェット機能91は、たとえば可撓アームの自由端上に径方向外方に延びる突起を含むことができる。突起は、数字スリーブ80の内側にあるそれに対応する形状の対向ラチェット構造に係合するように構成される。数字スリーブ80の内側は、鋸歯プロファイルを有する長手方向の形状の溝または突起を含むことができる。用量のダイヤル設定または設定中、ラチェット機構90は、数字スリーブ80が第2の回転方向5に沿ってクラッチ60に対して回転することを可能にしてそれを支持し、この回転は、クラッチ60の可撓アームの規則的なクリックを伴う。第1の回転方向に沿って数字スリーブ80に印加される角運動量は、クラッチ60へ不変に伝達される。ここで、ラチェット機構90の相互に対応するラチェット機能は、数字スリーブ80からクラッチ60へのトルク伝送を提供する。
【0115】
所望の用量がダイヤル設定されたとき、使用者は、トリガ11を押し下げることによって、設定された用量を簡単に投薬することができる。これにより、クラッチ60が数字スリーブ80に対して軸方向に変位し、その犬歯を係合解除する。しかし、クラッチ60は、駆動スリーブ30に対して回転方向に固定されたままである。数字スリーブ80および用量ダイヤル12はここで、螺旋溝81に従って自由に回転する。
【0116】
この軸方向運動により、ばね40の可撓アームを変形させて、投薬中に鋸歯が緩められないことを確実にする。これにより、駆動スリーブ30がハウジング10に対して回転することが防止されるが、駆動スリーブ30は依然としてハウジング10に対して軸方向には自由に動く。その後、遠位向きの投薬圧力がトリガ11から取り除かれたとき、この変形を使用してばね40およびクラッチ60を駆動スリーブ30に沿って逆方向に付勢し、クラッチ60と数字スリーブ80との間の連結を回復する。
【0117】
駆動スリーブ30の長手方向の軸方向運動は、ハウジング10の支持体の貫通口を通ってピストンロッド20を回転させ、それによってカートリッジ6内の栓7を前進させる。ダイヤル設定された用量が投薬された後、用量ダイヤル12から延びる少なくとも1つの止め具がハウジング10の少なくとも1つの対応する止め具に接触することによって、数字スリーブ80のさらなる回転が防止される。数字スリーブ80の軸方向に延びる縁部または止め具のうちの1つが、ハウジング10の少なくとも1つまたはいくつかの対応する止め具に当接することによって、0用量位置を決定することができる。
【0118】
上述した排出機構または駆動機構8は、概して使い捨てのペン注射器内に実装可能な複数の異なる構成の駆動機構のうちの1つに対する例示にすぎない。上述した駆動機構は、全体が参照によって本明細書に組み入れられる、たとえばWO2004/078239A1、WO2004/078240A1、またはWO2004/078241A1により詳細に説明されている。
【0119】
図3~
図36のいずれかに示されているハウジング10は、第1のハウジング構成要素100および第2のハウジング構成要素200を含む。第1のハウジング構成要素100は、カートリッジホルダとして構成される。第1のハウジング構成要素100は、その中空の内部の内側にカートリッジ6を収容するようなサイズおよび形状である。カートリッジホルダ、したがって第1のハウジング構成要素100は、第1の連結端101を含む。第1の連結端101は、第1のハウジング構成要素100の近位端を形成する。それに対応して、第2のハウジング構成要素200は、典型的にはハウジング構成要素200の遠位端に、第2の連結端201を含む。
【0120】
第1の連結端101は、第2の連結端201に対して機械的に連結可能である。示されているように、第1のハウジング構成要素100は、第1の連結端101を形成する挿入部110を含む。第2のハウジング構成要素200は、挿入部110を受けるような形状およびサイズのレセプタクル210を含む。挿入部110は、第2のハウジング構成要素200に対する長手方向摺動運動によって、特に近位方向3に沿って、レセプタクル210内へ挿入可能である。
【0121】
挿入部110は、第1のハウジング構成要素100の近位端を形成する。挿入部110は、近位端面112を含む。挿入部110は、遠位方向2に向かって、第1のハウジング構成要素100の管状の側壁102から、したがって挿入部110の側壁102からも、径方向外方に突出するフランジセクション115によって制限される。
【0122】
フランジセクション115は、管状の挿入部110の周囲全体にわたって延びる円周方向リムを含む。フランジセクション115は、近位方向3に向かって、近位方向3を向いている当接面114を含む。当接面114は、第2のハウジング構成要素の側壁202の遠位端面214に軸方向に当接するように構成される。
【0123】
第1および第2のハウジング構成要素100、200を相互に固定するために、挿入部110上に締結要素120が設けられ、締結要素120は、レセプタクル210の内側に設けられたそれに対応する形状または相補形の対向締結要素220に動作可能に係合する。たとえば
図4および
図5により詳細に示されているように、ここに示されている例では、締結要素120はスナップ要素121を含み、スナップ要素121は、レセプタクル210の側壁202の内側203に設けられたそれに対応する形状または相補形の対向スナップ要素221に係合するように構成される。スナップ要素121は、
図8に示されている径方向突起122と、径方向凹部127とを含み、径方向凹部127は、レセプタクル210の側壁202から径方向内方に突出する対向締結要素220の相補形の径方向突出物222に係合しかつ/またはそれを受けるような形状および構成である。
【0124】
図8に示されているように、それぞれ挿入部110の側壁102の外面およびレセプタクル210の側壁202の内面203には、多数の締結要素120および相補形の対向締結要素220が設けられる。相互に対応するスナップ要素121および対向スナップ要素221によって、第1および第2のハウジング構成要素100、200のスナップフィット係合を提供することができる。
【0125】
挿入部110の外面105には、長手方向端面112からフランジセクション115へ延びる長手方向溝130がさらに設けられる。ここに示されている例では、2つの正反対に位置する長手方向溝130が設けられる。レセプタクル210の内面203には、少なくとも1つの突起230が設けられ、突起230は、挿入部110をレセプタクル210内へ挿入したとき、溝130に係合して溝130に沿って摺動するような形状およびサイズである。突起230および溝130は、挿入部110およびレセプタクル210の固定された係合を提供する。この固定された係合によって、挿入部110はレセプタクル210に回転不能にロックされる。したがって、レセプタクル210内への挿入部110の純粋に長手方向の摺動運動によって、第1のハウジング構成要素100および第2のハウジング構成要素200の相互の固定および締結が得られる。
【0126】
図6および
図7にさらに示されているように、第1のハウジング構成要素100の外面105にインジケータ108が設けられる。第2のハウジング構成要素200の外面205には、相補形またはそれに対応する形状のインジケータ208が設けられる。最終組立て構成に到達したとき、インジケータ108およびインジケータ208は、長手方向(z)に相互に位置合わせされる。こうして、挿入部110をレセプタクル210内へ挿入する間に、インジケータ108およびインジケータ208は、レセプタクル210内への挿入部110の平滑な挿入を支持するために挿入部110をレセプタクル210に対してどのように位置合わせまたは配向するかに関する視覚的な案内を使用者に提供する。
【0127】
図8に示されているように、レセプタクル210は、側壁202から径方向内方に突出する端面212によって、近位方向に範囲が定められ、または制限される。端面212は、第1および第2のハウジング構成要素100、200の最終組立て構成に到達したとき、端面112に軸方向に当接することができる。径方向内方に突出する端面212は、たとえば第2のハウジング構成要素200の側壁202と一体形成された径方向内方に突出するフランジを含みまたは形成する。
【0128】
挿入部110には、機械的コーディング150がさらに設けられる。レセプタクル210には、相補形の機械的対向コーディング250が設けられる。機械的コーディング150は、コーディング機能151を含む。コーディング機能151は、機械的コーディング150、350、550、750の多数の例の図によって明らかになるように、異なる方法で画成することができる。
【0129】
たとえば、
図3~
図13の例では、機械的コーディング150は、挿入部110の側壁102のコーディング部分152の断面幾何形状によって画成される。
図3の例では、挿入部110の断面幾何形状は円形である。それに対応する形状または相補形の対向コーディング250は、それぞれの円形の断面幾何形状を備える。
【0130】
図6~
図9および
図11~
図13の例では、挿入部110のコーディング部分152は多角形である。それに応じて、レセプタクル210の内面203に設けられた相補形の対向コーディング部分252の内側断面幾何形状もまた、
図8に示されているように、それぞれの多角形を含む。一連の
図11~
図13には、対向コーディング機能250’、250”、および250’’’の断面形状の多数の異なる幾何形状が概略的に示されている。
【0131】
概して、挿入部110の外面105に設けられたコーディング部分152は、それぞれの対向コーディング部分252に対応する形状である。
図11に示されているように、六角形のコーディング150およびそれぞれのコーディング機能151がコーディング部分152に六角形の断面を含む場合、第2のタイプの対向コーディング250’およびそれぞれの対向コーディング機能251’の断面幾何形状もまた、整合する六角形の形状を含む。他のタイプのコーディングおよび対向コーディングは、形状および/または幾何形状が異なることができる。
図12に示されている第3のタイプの対向コーディング250”およびそれぞれの対向コーディング機能251”の断面幾何形状は、八角形の形状を含み、
図13に示されている対向コーディング機能251’’’の断面幾何形状は、12の角を含む。
【0132】
図10にさらに示されているように、レセプタクル210は、第2のハウジング構成要素200の側壁202の内面203によって制限および画成されるだけではない。対向コーディング250およびそれぞれの対向コーディング部分252は、第2のハウジング構成要素200の側壁202と同軸の内側側壁部分215によってさらに画成することができる。内側側壁部分215は、レセプタクル210の側壁202の内面203の内径より小さい外径を含む。したがって、対向コーディングスロット254が設けられ、対向コーディングスロット254は、遠位方向2に開いており、挿入部110の近位連結端101にあるコーディング部分152を受けるような形状および構成である。
【0133】
図10の例では、対向コーディングスロット254は、円形の幾何形状である。このようにして、たとえば
図4に示されているコーディング部分152のみが、長手方向(z)に対向コーディングスロット254に入って対向コーディングスロット254内を摺動することが可能になる。
図6に示されているコーディング部分152など、コーディング部分152のあらゆる他の利用可能な断面幾何形状は、対向コーディングスロット254に入ることが妨げられる。このようにして、挿入部110がレセプタクル210に完全に入ることが実質的に防止される。挿入部110は、締結要素120が対向締結要素220に係合する所定の最終組立て構成に到達することが妨げられる。
【0134】
補助的な内側側壁部分215は、レセプタクル210の機械的剛性および安定性をさらに強化する。
【0135】
図10にさらに示されているように、レセプタクル210は、挿入部開口部211を含む。挿入部開口部211は、レセプタクル210の遠位端に設けられる。挿入部開口部211は、第1の断面および/または第1の直径D1を含み、第1の断面および/または第1の直径D1は、挿入部開口部211から長手方向にずれて位置する長手方向領域内に設けられた第2の断面または直径D2より大きい。それに応じて、側壁202の内面203は、挿入部開口部211と対向コーディング部分252との間の領域内に、斜面セクション204を含む。
【0136】
斜面セクション204は、近位方向3に向かって径方向に狭くなる。斜面セクション204は、挿入方向に向かっておよび/または挿入方向に沿って、レセプタクル210内へ径方向に狭くなる。このようにして、挿入部110のコーディング部分152および/または近位端は、対向コーディング部分252および/または対向コーディングスロット254に平滑に係合するように径方向に案内される。
【0137】
加えて、径方向に狭くなった斜面セクション204は、挿入部開口部211から長手方向にずれて位置する側壁202の長手方向領域と比べて、挿入部開口部211の領域における側壁202の径方向の厚さを低減させるという利益を伴う。挿入部開口部211に向かって側壁202の厚さが低減されることで、少なくとも挿入部開口部211の領域内で側壁202の機械的弾性が増大するという利益を提供する。このようにして、レセプタクル210の側壁202は、少なくとも挿入部開口部211の長手方向領域内で、容易に弾性変形させることができる。
【0138】
図5および
図10にさらに示されているように、突起230はまた、遠位端および挿入部開口部211に向かって面取り端部231を含むことができる。このようにして、突起230の径方向サイズは、遠位方向に向かって低減する。これにより、突起230と挿入部110上の細長い溝130とのより平滑な係合が提供される。さらに、突起230のサイズが挿入部開口部211に向かって低減することで、特に挿入部110がレセプタクル210の内側に位置するとき、挿入部開口部211の領域における側壁202の弾性変形を容易にし、それを支持する。これにより、
図20に関連して説明するように、たとえば第1および第2のハウジング構成要素100、200を切断する目的で、側壁202の弾性変形を支持し、それを容易にすることができる。
【0139】
図14~
図19の例では、コーディング機能351を有する別の機械的コーディング350および対向コーディング機能451を有する相補形の対向コーディング450が概略的に示されている。ここで、挿入部110は、長手方向(z)に延びるコーディング凹部352を含む。対応する対向コーディング450、したがって対向コーディング機能451は、相補形の対向コーディング突起452を含む。コーディング機能351および相補形の対向コーディング機能451は、コーディング凹部352の長手方向範囲および対向コーディング突起452の相補形の長手方向範囲によって画成することができる。
【0140】
第1のハウジング構成要素100は、コーディング凹部352の長手方向範囲およびコーディング凹部352の円周方向位置または範囲のうちの一方によって、他の第1のハウジング構成要素100とは区別することができる。コーディング凹部352は、端面212に隣接する挿入部110の側壁102内に、細長いスリットまたはスロットを含みまたは形成する。
【0141】
図14と比べて、機械的コーディング350’およびそれぞれの機械的コーディング機能351’の円周方向位置を変えることによって、
図18に示されている別の第1のハウジング構成要素100’のさらなる機械的コーディング350’は、
図14のハウジング構成要素100機械的コーディング350とは区別される。
【0142】
ここで、コーディング凹部352’は、
図14に示されているコーディング凹部352と比べて、溝130および/または締結要素120に対して異なる円周方向位置に配置される。
【0143】
それに対応して、
図19に示されているように、第2のハウジング構成要素200は、相補形の機械的対向コーディング450’を装備する。機械的対向コーディング機能451’は対向コーディング突起452’を含み、対向コーディング突起452’は、
図17に示されている対向コーディング突起452とはその円周方向位置によって区別される。このようにして、機械的コーディング350を備えた挿入部110のみを、相補形の対向コーディング450を含む
図17に示されているレセプタクル210内へ挿入することができることが実現される。機械的コーディング350が機械的対向コーディング450’に整合しないため、
図14に示されているハウジング構成要素100を、
図19に示されているハウジング構成要素200に連結することはできない。
【0144】
同様に、コーディング機能351’の円周方向位置が機械的対向コーディング機能451の円周方向位置に整合しないため、
図18に示されている第1のハウジング構成要素100の挿入部110’を、
図15または
図17の第2のハウジング構成要素200のレセプタクル210内へ挿入することはできない。
【0145】
図16で、レセプタクル210はまた、内側側壁部分215を備える。ここで、突起452は、径方向に側壁202の内面203と内側側壁部分215の外面との間に位置する。ここで、機械的対向コーディング突起452は、内側側壁部分215を外側側壁202に機械的に連結し、それによってレセプタクル210の機械的安定性および剛性を増大させる。
【0146】
図20には、2つの想像上の直線L1およびL2が提供されている。第1の想像上の直線L1は、正反対に位置する対向締結要素220、220’を通って延びる。第2の想像上の直線L2は、レセプタクル210の側壁202の外面205にある第1の平坦部206および正反対に位置する第2の平坦部207を通って延びる。
【0147】
平坦部206、207は、たとえば挿入部開口部211の領域内で、または挿入部開口部211に長手方向に隣接して、したがって第2のハウジング構成要素200の遠位連結端201またはその付近で、側壁202の外面205に位置する。
【0148】
第1および第2の平坦部206、207は、プライヤー(図示せず)などの押圧ツールとの明確な係合を提供する。反対に位置する平坦部206、207に、径方向内方に向けられた圧力を印加することによって、平坦部206、207間の径方向距離または断面を低減させることができ、それによって対向締結要素220と別の対向締結要素220’との間の径方向距離を増大させることができる。それに応じて、挿入部開口部211の元のある程度円形の断面は、ある程度楕円形に適用するように弾性変形される。
【0149】
対向締結要素220と正反対に位置する対向締結要素220’との間の径方向距離を増大させることによって、対向締結要素220、220’を、挿入部110に設けられた相補形の締結要素120、120’から係合解除することができる。このようにして、第1および第2のハウジング構成要素100、200を係合解除することができ、解体することができる。第1および第2のハウジング構成要素100、200の係合解除は、空のカートリッジ6を交換し、薬物送達デバイス1を新しいカートリッジ6とともにさらに使用することを可能にすることができる。
【0150】
図22~
図29では、機械的対向コーディング650に対して相補形の機械的コーディング550の別の例が概略的に示されている。
図25により詳細に示されているように、第1のハウジング構成要素100の挿入部110は、スナップ要素121を有する締結要素120を含み、スナップ要素121は、第2のハウジング構成要素200に設けられた対向締結要素220の相補形の対向スナップ要素221に係合するように構成される。締結要素120は、スナップ要素121として実装される。締結要素120は、径方向突起または突出物122を含み、径方向突起または突出物122は、第2のハウジング構成要素200の側壁202にある径方向凹部222に対して相補形である。径方向凹部222は、完全に側壁202を通って延びる貫通凹部としてここに示されている。他の例では、径方向凹部222は、レセプタクル210の内面203にのみ設けられた貫通していない凹部である。ここで、第2のハウジング構成要素200の外面205は、いかなる凹部または同様の対向締結要素220も含まない。
【0151】
示されている例では、スナップ要素121の径方向突起122は、挿入部110から径方向外方に突出する。径方向突起122は、径方向に弾性変形可能とすることができる。これは、舌部分124の外面に径方向外方に延びる径方向突起122を設けることによって実現することができる。舌部分124は、挿入部110の一部であるが、舌部分124を円周方向(w)に制限する第1および第2の長手方向スリット126によって、挿入部110の側壁から分離される。スリット126は、フランジセクション115から長手方向端面212へ長手方向(z)に延びる。舌部分124は、フランジセクション115に排他的に連結することができる。舌部分124は、挿入部110で径方向に対して弾性的に屈曲可能とすることができ、弾性的に変形可能とすることができ、かつ/または旋回可能に支持することができる。
【0152】
挿入方向の方を向いている、したがってそれぞれのハウジング構成要素100の自由端の方を向いている、舌部分124の長手方向端において、斜面セクションまたは面取り125が設けられる。この斜面セクションまたは面取り125は、レセプタクル210の側壁202に接触するとき、舌部分124の径方向内方に向けられた屈曲または曲げを誘起して支持する。
【0153】
締結要素120は、機械的コーディング550に一体形成される。言い換えれば、機械的コーディング550は、締結要素120内へ一体化することができ、逆も同様である。それに応じて、突起122は、機械的コーディング機能551を形成または構成する。それに応じて、レセプタクル210の側壁202内に設けられた径方向凹部222は、機械的対向コーディング650を画成する。径方向突起122の幾何形状、幾何学的延長、および/または位置のうちの少なくとも1つが、機械的コーディング機能551を画成する。同様に、径方向凹部222の幾何形状、範囲、サイズ、および/または位置のうちの少なくとも1つが、機械的対向コーディング機能651を画成する。
【0154】
一連の
図27~
図29に示されている例では、それぞれ第1のタイプ、第2のタイプ、および第3のタイプの相互に対応する機械的コーディング550、550’、550”およびそれぞれの機械的対向コーディング650、650’、650”の3つの異なるペアリングが示されている。その限りにおいて、
図27~
図29の各々は、薬物送達デバイス1の特に符号化されたハウジング10、10’、10”を示す。ハウジング10の第1のハウジング構成要素100は、他のハウジング10’、10”のうちのいずれかの第2のハウジング構成要素200’、200”に係合することができない。逆も同様であり、ハウジング10の第2のハウジング構成要素200は、他のハウジング10’、10”のうちのいずれか1つの第1のハウジング構成要素100’、100”に係合することができない。
【0155】
その限りにおいて、
図27~
図29は、注射デバイスの多数のハウジング10、10’、10”を含むキットを示し、選択されたハウジング10、10’、10”の第1のハウジング構成要素100は、同じハウジング10の第2のハウジング構成要素200に排他的に連結可能であり、これらのハウジングを含むキットの他のハウジング10’、10”のうちのいずれかの第2のハウジング構成要素200’、200”に連結することは防止される。
【0156】
機械的コーディング機能551は、締結要素120の長手方向位置の組合せによって、したがってそれぞれのスナップ要素121の長手方向位置ならびにスナップ要素121および/またはその径方向突起122の長手方向範囲の組合せによって画成される。概して、スナップ要素121は、コーディング機能551と見なすことができ、径方向突起122は、径方向コーディング突起552と見なすことができる。
【0157】
一連の
図27~
図29に見ることができるように、コーディング機能551、551’、551”の長手方向位置は、長手方向(z)に対して変化する。同様に、コーディング機能の長手方向範囲、特に径方向突起122、122’、122”の長手方向範囲も変化する。同様に、相補形の対向コーディング機能651、651’、651”の長手方向位置および径方向凹部222、222’、222”のそれぞれの長手方向範囲も、それに応じて変化する。このようにして、機械的コーディング550が機械的対向コーディング650に排他的にペアリング可能、組合せ可能、および/または係合可能になることを確実にすることができる。
【0158】
最終組立て構成で、すなわちフランジセクション115の近位面114が第2のハウジング構成要素200の遠位端面214に軸方向に当接するとき、スナップ要素121の径方向突起122は、相補形の対向締結要素220の径方向凹部222に係合する。示されているように、径方向突起122の長手方向範囲は、径方向凹部222の長手方向範囲に密接に整合する。
図28および
図29の例によって明らかになるように、径方向突起122’、122”の長手方向範囲が徐々に増大するにつれて、それぞれのコーディング機能551’、551”の長手方向位置は当接面114からますます離れる。
【0159】
それに応じて、径方向凹部222、したがって対向コーディング機能651’、651”の長手方向距離は、端面214からますます離れる。
【0160】
それに応じて、径方向凹部222、222’、222”の長手方向位置を変え、それに対応して径方向突起122、122’、122”の長手方向位置を変えることによって、第2の連結端201の自由端上の径方向凹部222、222’、222”の長手方向距離の増大は、径方向凹部222、222’、222”の長手方向範囲の増大、およびそれに対応する形状の径方向突起122、122’、122”の長手方向範囲の対応する増大を伴う。このようにして、コーディング機能551が、利用可能な対向コーディング機能651、651’、651”のうちの1つの特定の対向コーディング機能651のみに排他的に係合可能になることが保証される。
【0161】
コーディング機能551を整合しないまたは適合しない対向コーディング機能651’、651”のうちの1つとペアリングしようとしたとき、したがって
図27の挿入部110のコーディング機能551を、
図28または
図29に示されている対向コーディング機能651’、655’を備えたレセプタクル210内へ係合しようとしたとき、径方向突起122は、それぞれの対向コーディング機能651”の長手方向位置に到達しない。対向コーディング機能651’、651”のうちのいずれかに空間的に重複する前に、当接面114が軸方向端面214に係合し、レセプタクル210内への挿入部110のあらゆるさらなる近位向きの動きを阻止する。
【0162】
逆に、
図28または
図29のいずれかのコーディング機能551’、551”のうちのいずれかを
図27のレセプタクル210内へ挿入しようとしたとき、径方向突起122’、122”は、径方向凹部222の上を径方向凹部222を横切って摺動することがある。しかし、径方向突起122’、122”の長手方向範囲は径方向凹部222の長手方向範囲より大きいため、径方向突起122’、122”が径方向凹部222に係合することはできない。凹部222の長手方向範囲は、径方向突起122’、122”の長手方向範囲より小さい。それに応じて、コーディング機能551’、551”が対向コーディング機能651に係合することが妨げられる。長手方向範囲に関するこの差によって、スナップ要素121’、121”は、対向スナップ要素221に係合することができない。
【0163】
一連の
図30~
図32のさらなる例示では、ハウジング10、10’、10”を含むキットの機械的コーディング550、550’、550”の別の例が示されている。ここで、スナップ要素121、121’、121”の長手方向位置および/または長手方向範囲が修正および幾何学的変化を受けるだけでなく、円周方向延長に対する、したがって円周方向(w)に沿った、それぞれのスナップ要素121、121’、121”の範囲もまた、それぞれの修正を受ける。
【0164】
相補形の対向コーディング機能650、650’、650”およびそれぞれの対向コーディング機能651、651’、651”のサイズおよび位置は、それぞれの修正および変化を受ける。一連の
図30~
図32の例示から明らかになるように、径方向突起122’は、径方向突起122より当接面214から長手方向にさらに離れて位置する。同じことが、長手方向端面214に関して、径方向凹部222に対する径方向凹部222’にも当てはまる。同時に、径方向突起122’の長手方向範囲は、径方向突起122の長手方向範囲より大きい。
【0165】
同じことが、径方向突起122”と比べて、径方向突起122’に対しても当てはまる。径方向突起122”の円周方向の範囲またはサイズは、径方向突起122’の円周方向の延長またはサイズより大きい。このようにして、機械的コーディング550’、550”のうちの1つまたはコーディング機能551’、551”のうちの1つを、機械的対向コーディング650または機械的対向コーディング機能651に係合しようとしたとき、径方向凹部222の円周方向範囲が径方向突起122’、122”のうちのいずれかの円周方向範囲より小さいため、それぞれの径方向突起122’、122”は、対向コーディング機能651または径方向凹部222に係合することができない。
【0166】
図33には、挿入部110の側壁102の外面105に設けられた3つのさらなる機械的コーディング750、750’、750”の3つの例が提供されている。異なる機械的コーディング750、750’、750”は、その横断方向サイズ、断面形状、および/または幾何形状に関して異なる。機械的コーディング750は、ある程度矩形の機械的コーディング機能751を含む。機械的コーディング750’は、径方向外方に突出する凸形のコーディング機能751’を含み、機械的コーディング750”のさらなる例は、台形の断面または幾何形状を含む。コーディング機能751、751’、751”のうちのいずれか1つは、少なくとも径方向範囲および/または円周方向範囲に関して、コーディング機能751、751’、751”のうちの他の2つとは区別される。このようにして、機械的コーディング機能751、751’、751”のうちの各々が、ここではあまり詳細に示されていない相補形の対向コーディング機能のうちの1つのみに係合することができることを保証することができる。
【0167】
機械的コーディング750、750’、750”は、溝130に係合するように構成された径方向突起230に対して明確な円周方向位置にある。
図34~
図36の例では、径方向突起230は挿入部110に設けられ、溝130はレセプタクル210の内面203に設けられる。
【0168】
本明細書に示されている例では、挿入部110は、第1のハウジング構成要素100に設けられ、レセプタクル210は、第2のハウジング構成要素200内に設けられている。本出願の開示の範囲内で、多数のさらなる例が考えられ、挿入部が第2のハウジング構成要素に設けられ、それに対応する形状のレセプタクルが第1のハウジング構成要素に設けられる。同様に、機械的コーディング、機械的対向コーディングに関連して記載されている、または突起および溝に関連して、もしくは締結要素および対向締結要素に関連して記載されている、径方向に突出する機能および径方向に凹状の機能の特有の実装は、本明細書に示されている例と比べて反転させた形で交換、提供、および実装することができる。
【符号の説明】
【0169】
1 注射デバイス
2 遠位方向
3 近位方向
4 用量増分方向
5 用量減分方向
6 カートリッジ
7 栓
8 駆動機構
9 用量設定機構
10 ハウジング
11 トリガ
12 用量ダイヤル
13 投与量窓
14 カートリッジホルダ
15 注射針
16 内側ニードルキャップ
17 外側ニードルキャップ
18 保護キャップ
20 ピストンロッド
21 支承部
22 第1のねじ山
23 押さえ
24 第2のねじ山
25 バレル
26 封止部
28 ねじ付ソケット
30 駆動スリーブ
31 ねじ付セクション
32 フランジ
33 フランジ
35 最終用量リミッタ
40 ばね
60 クラッチ
62 挿入部
64 心棒
80 数字スリーブ
81 溝
90 ラチェット機構
91 ラチェット機能
100 ハウジング構成要素
101 連結端
102 側壁
105 外面
108 インジケータ
110 挿入部
112 端面
114 当接面
115 フランジセクション
120 締結要素
121 スナップ要素
122 凹部
124 舌部分
125 面取り
126 スリット
127 凹部
130 溝
150 機械的コーディング
151 コーディング機能
152 コーディング部分
200 ハウジング構成要素
201 連結端
202 側壁
203 内面
204 斜面セクション
205 外面
206 平坦部
207 平坦部
208 インジケータ
210 レセプタクル
211 挿入部開口部
212 端面
214 端面
215 側壁部分
218 インジケータ
220 対向締結要素
221 対向スナップ要素
222 突出物
225 凹部
230 突起
231 面取り部
250 機械的対向コーディング
251 対向コーディング機能
252 対向コーディング部分
254 対向コーディングスロット
350 機械的コーディング
351 コーディング機能
352 コーディング凹部
450 機械的対向コーディング
451 対向コーディング機能
452 対向コーディング突起
550 機械的コーディング
551 コーディング機能
650 機械的対向コーディング
651 対向コーディング機能
750 機械的コーディング
751 コーディング機能
【国際調査報告】