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特表2024-517870多段式ガスサンプリングトラップおよび硫黄種夾雑物の検出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】多段式ガスサンプリングトラップおよび硫黄種夾雑物の検出
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20240416BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20240416BHJP
   G01N 30/04 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G01N1/22 R
G01N1/22 L
G01N30/02 B
G01N30/04 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568308
(86)(22)【出願日】2022-05-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 US2022027847
(87)【国際公開番号】W WO2022235915
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/185,812
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ミラー, チャールズ
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA03
2G052AB01
2G052AB22
2G052AD22
2G052BA14
2G052ED06
2G052ED07
2G052FD09
2G052GA27
2G052JA08
(57)【要約】
ガスサンプリングトラップは、第1の段部と第2の段部を含む。第1の段部は、硫黄種と反応して酸性ガスを生成する金属塩を含む。第2の段部は、第1の段部で生成された酸性ガスを受けるように構成される。第2の段部の吸着剤基質は、酸性ガスを吸着する。ガスをサンプリングする方法は、酸性ガスを生成するために第1の段部内の金属段にガスを導くことと、酸性ガスを第2の段部に導くことと、第2の段部内の酸性ガスを吸着剤基質で吸着することとを含む。ガス中の硫黄種の濃度を検出する方法は、サンプリングトラップでガスをサンプリングすることと、サンプリングトラップの吸着剤基質から吸着した酸性ガスを溶媒で脱着することと、溶媒をイオンクロマトグラフィーで試験することとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスサンプリングトラップであって、
ガスの流れを受けるための入口を含む第1の段部であって、前記ガスに含有される硫黄種と反応して酸性ガスを生成するように構成された金属塩を含有する第1の段部と、
前記第1の段部で生成された前記酸性ガスが第2の段部に流入するように前記第1の段部に流体接続された第2の段部であって、前記第2の段部を通って流れる前記酸性ガスを吸着するように構成された吸着剤基質を含有する第2の段部と
を備える、ガスサンプリングトラップ。
【請求項2】
前記金属塩と前記硫黄種との前記反応が、前記酸性ガスおよび金属硫黄化合物を生成する、請求項1に記載のガスサンプリングトラップ。
【請求項3】
前記金属塩は、硝酸銀、酢酸亜鉛、および酢酸銅のうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載のガスサンプリングトラップ。
【請求項4】
前記硫黄種が、硫化水素、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、メチルメルカプタン、およびメチルスルフィド化合物のうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載のガスサンプリングトラップ。
【請求項5】
前記酸性ガスが、硝酸および酢酸のうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載のガスサンプリングトラップ。
【請求項6】
前記吸着剤基質が、10日間経過後も前記酸性ガスが前記吸着剤基質に安定して吸着されたままであるように前記酸性ガスを吸着する、請求項1に記載のガスサンプリングトラップ。
【請求項7】
前記吸着剤基質が、前記酸性ガスが前記多孔質ポリマー膜内に捕捉されるように前記酸性ガスを吸着する多孔質ポリマー膜である、請求項1に記載のガスサンプリングトラップ。
【請求項8】
前記ガスが、400ppb未満の前記硫黄種を含有する、請求項1に記載のガスサンプリングトラップ。
【請求項9】
前記ガスが、濾過された空気、周囲空気、精製窒素、および精製水素のうちの1つである、請求項1に記載のガスサンプリングトラップ。
【請求項10】
前記ガスサンプリングトラップが、少なくとも90%の前記硫黄種の初期捕捉効率を有する、請求項1に記載のガスサンプリングトラップ。
【請求項11】
前記ガスサンプリングトラップが、捕捉効率90%のとき少なくとも100ppb時間の容量を有する、請求項10に記載のガスサンプリングトラップ。
【請求項12】
前記第1の段部と前記第2の段部が、単一のハウジング内に設けられる、請求項1に記載のガスサンプリングトラップ。
【請求項13】
前記第2の段部に設けられた出口と、
前記入口から前記出口まで延びる流路であって、前記ガスの流れを前記第1の段部と前記第2の段部に順次通して導き、かつ前記第1の段部で生成された前記酸性ガスを前記第2の段部に導くように構成された流路と、
を更に備える、請求項1に記載のガスサンプリングトラップ。
【請求項14】
前記第1の段部を収容する第1のハウジングであって、中間出口を含む第1のハウジングと、
前記第2の段部を収容する第2のハウジングであって、中間入口を含む第2のハウジングと、
前記第1のハウジングを前記第2のハウジングに流体接続する通路であって、前記中間出口から前記中間入口まで延びる通路と
を備える、請求項1に記載のガスサンプリングトラップ。
【請求項15】
第1の段部と第2の段部を含むガスサンプリングトラップを利用してガスをサンプリングする方法であって、
前記ガスの流れを前記第1の段部と前記第2の段部に順次通して導くことを含み、前記ガスの流れを前記導くことが、
前記ガスを前記第1の段部内の金属塩に導き前記金属塩を前記ガスに含まれる硫黄種と反応させて酸性ガスを生成することと、
前記酸性ガスを前記第1の段部から前記第2の段部に導くことと、
前記第2の段部を通って流れる前記酸性ガスを前記第2の段部に含有される吸着剤基質で吸着させることと
を含む、方法。
【請求項16】
前記金属塩が、硝酸銀、酢酸亜鉛、および酢酸銅のうちの1つまたは複数を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記酸性ガスが、硝酸および酢酸のうちの1つまたは複数を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記硫黄種が、硫化水素、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、メチルメルカプタン、およびメチルスルフィド化合物のうちの1つまたは複数を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記吸着剤基質が、10日間経過後も前記酸性ガスが前記吸着剤基質に安定に吸着されたままであるように前記酸性ガスを吸着する、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記吸着剤基質が多孔質ポリマー膜であり、前記酸性ガスの前記吸着が、前記酸性ガスを前記多孔質ポリマー膜内に捕捉することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
ガス中の硫黄種の濃度を検出する方法であって、
請求項14に記載の方法によるガスサンプリングトラップを利用してガスをサンプリングすることと、
前記ガスサンプリングトラップを切り離すことと、
前記吸着剤基質に吸着された前記酸性ガスを溶媒中に脱着させる溶媒を前記第2の段部に通して導くことと、
前記脱着した酸性ガスを含有する前記溶媒をイオンクロマトグラフィーで試験して、前記ガス中の前記硫黄種の濃度を決定することと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、夾雑物のガスサンプリングに関する。特に、本開示は、硫黄夾雑物を検出するためにガスをサンプリングする際に使用されるサンプリングトラップに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスサンプリングは、化学処理、半導体製造、ガス分配などで、ガス流中の夾雑物を検出するために使用することができる。特に、ガスサンプリングを用いて、ガス流中の浮遊微小夾雑物を検出することができる。サンプリングされ得るガス流の例は、濾過された空気(例えば、清浄な乾燥空気など)、周囲空気、精製窒素、および精製水素を含むことができるが、これらに限定されない。キャニスタサンプリングは、サンプリングキャニスタにガスの試料を充填する。ガスサンプリングトラップは、対象となる特定の化合物のみをサンプリングトラップ内に収容するように構成することができる。試料キャニスタまたはガスサンプリングトラップの含有量を用いて、サンプリングされたガス中の夾雑物の濃度を決定することができる。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態では、ガスサンプリングトラップは、第1の段部と第2の段部を含む。第1の段部は、ガスの流れおよび金属塩を受け入れるための入口を含む。金属塩は、ガス中に含有される硫黄種と反応して酸性ガスを生成するように構成されている。第2の段部は、第1の段部で生成された酸性ガスが第2の段部に流入するように、第1の段部に流体接続される。第2の段部は、第2の段部を通って流れる酸性ガスを吸着するように構成された吸着剤基質を含む。
【0004】
一実施形態では、金属塩と硫黄種との反応により、酸性ガスおよび金属硫黄化合物が生成される。
【0005】
一実施形態では、金属塩は、硝酸銀、酢酸亜鉛、および酢酸銅のうちの1つまたは複数を含む。
【0006】
一実施形態では、硫黄種は、硫化水素、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、メチルメルカプタン、およびメチルスルフィド化合物のうちの1つまたは複数を含む。
【0007】
一実施形態では、酸性ガスは、硝酸および酢酸のうちの1つまたは複数を含む。
【0008】
一実施形態では、吸着剤基質は、酸性ガスが10日間の後も吸着剤基質に安定に吸着されたままであるように、酸性ガスを吸着する。
【0009】
一実施形態では、吸着剤基質は、酸性ガスが多孔質ポリマー膜内に捕捉されるように酸性ガスを吸着する多孔質ポリマー膜である。
【0010】
一実施形態では、ガスは400ppb未満の硫黄種を含有する。
【0011】
一実施形態では、ガスは、濾過された空気、周囲空気、精製窒素、および精製水素のうちの1つである。
【0012】
一実施形態では、ガスサンプリングトラップは、硫黄種に対して少なくとも90%の捕捉効率を有する。
【0013】
一実施形態では、第1の段部と第2の段部は、単一のハウジング内に設けられる。
【0014】
一実施形態では、ガスサンプリングトラップは、第2の段部に設けられた出口と、入口から出口まで延びる流路とを含む。流路は、ガスの流れを第1の段部と第2の段部に順次通し、第1の段部で生成された酸性ガスを第2の段部に導くように構成されている。
【0015】
一実施形態では、ガスサンプリングトラップは、第1のハウジングと、第2のハウジングと、第1のハウジングを第2のハウジングに流体接続する通路とを含む。第1のハウジングは、第1の段部を収容し、中間出口を含む。第2のハウジングは、第2の段部を収容し、中間入口を含む。通路は、中間出口から中間入口まで延びる。
【0016】
一実施形態では、一方法は、吸着剤基質を有する第1の段部と第2の段部を含むガスサンプリングトラップを利用してガスをサンプリングすることに関する。本方法は、ガスの流れを第1の段部と第2の段部に順次通して導くことを含む。このガスの流れの方向付けは、ガスを第1の段部内の金属塩に導き、金属塩をガス中の硫黄種と反応させて酸性ガスを生成することを含む。このガスの流れの方向付けは、また、酸性ガスを第1の段部から第2の段部に導くことと、第2の段部を通って流れる酸性ガスを吸着剤基質で吸着することとを含む。
【0017】
一実施形態では、吸着剤基質は多孔質ポリマー膜である。第2の段部を通って流れる酸性ガスの吸着は、酸性ガスを多孔質ポリマー膜内に捕捉することを含む。
【0018】
一実施形態では、一方法は、ガス中の硫黄種の濃度を検出することに関する。この方法は、ガスサンプリングトラップを利用してガスをサンプリングすることと、ガスサンプリングトラップをサンプリングマニホールドから切り離すことと、溶媒を第2の段部に通して導き、吸着された酸性ガスを吸着剤基質から溶媒中に脱着させることとを含む。この方法はまた、脱着した酸性ガスを含有する溶媒をイオンクロマトグラフィーで試験して、ガス中の硫黄種の濃度を決定することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ガスサンプリングシステムの一実施形態の上面図である。
図2】一実施形態による、図1のガスサンプリングシステムのガスサンプリングトラップの上面図である。
図3】実施形態による、図2のガスサンプリングトラップの縦断面図である。
図4】ガスサンプリングトラップの一実施形態の縦断面図である。
図5】ガス中の硫黄種の濃度を検出する方法のブロックフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
同様の数字は同様の特徴を表す。
【0021】
本開示は、夾雑物のためのガスのサンプリングに関する。特に、本開示は、夾雑物を検出するためにガスをサンプリングする際に使用されるガストラップに関する。例えば、本明細書のガスサンプリングトラップは、ガス中の浮遊微小夾雑物をサンプリングするように構成されている。
【0022】
図1は、ガスサンプリングシステム1の上面図である。ガスサンプリングシステム1は、サンプリングマニホールドと、複数のガスサンプリングトラップ20、22、24、30とを備える。ガスサンプリングシステム1は、ガス流中の1つまたは複数の夾雑物をサンプリングすることができる。サンプリングマニホールドは、マニホールド入口12およびマニホールド出口14を有し、ガスは、マニホールド入口12からマニホールド出口14までサンプリングマニホールドを通って流れる。マニホールド入口12には、サンプリング対象のガスFが供給される。ガスFは、ガスサンプリングシステム1を通って流れ、出口14から排出される。ガスの流れを示すために、図に点線の矢印が示されている。例えば、図1には、ガスサンプリングシステム1を通るガスFの流れを示す点線の矢印が含まれる。ガスサンプリングトラップ20、22、24、30は、サンプリングマニホールド内で並列に接続されている。ガスFは、マニホールド入口12からマニホールド出口14までサンプリングマニホールドを通って流れる際に、ガスサンプリングトラップ20、22、24、30を並行して流れる。例えば、ガスFのそれぞれの部分は、各ガスサンプリングトラップ20、22、24、30を通って流れるように導かれる。
【0023】
ガスサンプリングトラップ20、22、24、30は、ガスF中の様々な成分をサンプリングすることができる。ガスサンプリングトラップ30は、以下でより詳細に説明するように、ガスF1中の硫黄種をサンプリングするように構成されている。ガスサンプリングトラップ20、22、24、30は、サンプリングマニホールドから非破壊的に切り離し可能に(例えば、ねじを緩めるなど)構成されている。例えば、これにより、含有量を試験するためのガスサンプリングトラップの容易な除去が可能になる。図示の実施形態では、ガスサンプリングシステム1は、4つのガスサンプリングトラップ20、22、24、30を含む。しかしながら、他の実施形態でのガスサンプリングシステム1は、1つまたは複数のガスサンプリングトラップを有することができることを理解されたい。いくつかの実施形態では、サンプリングマニホールドなしでガスサンプリングトラップ30を使用することができる。例えば、ガスサンプリングトラップ30は、サンプリングマニホールドなしでガス源(図示せず)に直接接続されていてもよい。
【0024】
図2は、一実施形態による、試料トラップ30の上面図である。サンプリングトラップ30は、入口32および出口34を含む。ガスは、入口32を通って入り、出口34を通って出ることによってサンプリングトラップ30を通って流れる。サンプリングトラップ30の入口32には、サンプリングトラップ30によってサンプリングされるガスFの流れ(「試料ガス」と呼ぶことができる)が供給される。例えば、サンプリングマニホールドは、試料ガスFの流れをサンプリングトラップ30の入口32に供給する。
【0025】
図3は、一実施形態による、試料トラップ30の縦断面図である。図3の断面図は、図2に示すIII-III線に沿っている。サンプリングトラップ30は、多段式の試料トラップである。図3に示すように、サンプリングトラップ30は、第1の段部50と第2の段部70を含む。第1の段部50と第2の段部70とは、流体的に直列に接続されている。サンプリングトラップ30は、入口32から出口34まで延びる流路36を有する。試料ガスFは、入口32から出口34まで流路36を通って流れることにより、サンプリングトラップ30を通って流れる。流路36は、試料ガスFの流れを、入口32から第1の段部50を通り、第1の段部50から第2の段部70へ、そして第2の段部70を通って出口34へと導く。
【0026】
図示の実施形態では、サンプリングトラップ30は、第1の段部50を収容する第1のハウジング52と、第2の段部70を収容する第2のハウジング72とを含む。ハウジング52、72は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)などの剛性の化学的に不活性なポリマーで作ることができる。
【0027】
図3に示すように、第1の段部50は第1のハウジング52を含み、第2の段部70は第2のハウジング72を含む。サンプリングトラップ30は、流路36において入口32と出口34との間に配置された中間出口38と中間入口40を含む。第1の段部50は、入口32と中間出口38を含む(例えば、第1のハウジング52は、入口32と中間出口38を含む)。第2の段部70は、中間入口40と出口34を含む(例えば、第2のハウジング72は、中間入口40と出口34を含む)。サンプリングトラップ30は、第1のハウジング52を第2のハウジング72に接続する通路42を含む。通路42は、中間出口38から中間入口40まで延びる(例えば、中間出口38を中間出口40に直接取り付ける)。通路42は、第1および第2のハウジング52、72とは別個の部品であってもよいし、第1および第2のハウジング52、72の一方または両方と一体であってもよい。
【0028】
第1の段部50は、金属塩を含有する。第1の段部50は、金属塩を有する基質54を含む。試料ガスFは、第1の段部50を通って流れる際に金属塩と接触する。金属塩は、試料ガスF中の硫黄種と反応して酸性ガスを生成するように構成されている。一実施形態では、酸性ガスは水可溶型有機酸である。金属塩と硫黄種との反応によって生成される酸性ガスは、例えば、硝酸および酢酸のうちの1つまたは複数を含むことができる。用語「硫黄種」は、単一の硫黄含有化合物または複数の硫黄含有化合物を指すことができる。試料ガスF中の硫黄種は気体である。
【0029】
特に、金属塩は、試料ガスF中に存在する反応性硫黄種と反応するように構成されている。例えば、このような硫黄種は、硫化水素(HS)、ジメチルスルフィド((CHS)、ジメチルジスルフィド(CHSSCH)、メチルメルカプタン(CHSH)、およびメチルスルフィド化合物(RSCH)の1つまたは複数を含むことができる。一実施形態では、メチルスルフィド化合物は、ガス状メチルスルフィド化合物である。ガス状のメチルスルフィド化合物としては、R基がアルキル基である化合物が挙げられる。一実施形態では、硫黄種は、硫化水素、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、およびメチルメルカプタンの1つまたは複数を含む。反応性硫黄種は、当技術分野で一般に化学的に不活性であると考えられている安定な硫黄種を含まない。安定なガス状硫黄種(即ち、反応性硫黄種ではないガス状硫黄種)の例としては、硫黄二酸化物(SO)、六フッ化硫黄(SF)などが挙げられる。
【0030】
金属塩は、試料ガスF中に存在する硫黄種と反応して、酸性ガスおよび金属硫黄化合物を生成するように構成されている。金属塩は、例えば、硝酸銀、酢酸亜鉛、および酢酸銅のうちの1つまたは複数を含むことができる。金属硫黄化合物は、酸性ガスを生成する際の副生成物である。一実施形態では、金属化合物は、基質54上に形成された固体の金属化合物である。下記の式(I)は酸性ガス生成反応の一実施形態の例である。
(I) 2AgNO(s)HS(g)→AgS(s)+2HNO(g)
【0031】
図示の実施形態では、基質54は、被覆された多孔質ポリマー膜である。ポリマー膜は、焼結高密度ポリエチレン(HDPE)、焼結ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの剛性ポリマー材料から作製することができる。金属塩は、多孔質膜の表面(例えば、多孔質膜の細孔の表面)に設けられる。一実施形態では、金属塩と溶媒(例えば、非極性溶媒、水など)の溶液をポリマー膜材料に塗布し、乾燥させる。溶媒がエバポレートし、ポリマー膜材料の表面(例えば、膜の外面、膜の内部細孔表面)に金属塩の被膜が形成される。図3に示すように、試料ガスFは、第1の段部50を通って流れる際に多孔質基質54を通って流れる。例えば、試料ガスFは、多孔質被覆膜の細孔を通って流れる際に金属塩と接触する。別の実施形態では、基質54は、被覆粉末または被覆顆粒の形態であってもよい。例えば、被覆粉末/被覆顆粒は、金属塩で被覆された不活性粒子/顆粒(例えば、HDPE粉末/顆粒、PTFE粉末/顆粒、シリカゲルなど)から形成することができる。
【0032】
酸性ガスFと残留試料ガスFとの混合物(例えば、試料ガスFから消費された硫黄種を差し引いたもの)は、第1の段部50から流出する。酸性ガスFと試料ガスFは、第1の段部50から第2の段部70に流れる。図3に示すように、第2の段部70は、第1の段部50で生成された酸性ガスFが第2の段部70に流入するように、第1の段部50に流体接続される。酸性ガスFと試料ガスFは、第1のハウジング52から通路42を通って第2のハウジング72に流入する。
【0033】
第2の段部70は、吸着剤基質74を含有する。酸性ガスFと試料ガスFとの混合物は、混合物が第2の段部を通って流れる際に吸着剤基質74と接触する。吸着剤基質74は、酸性ガスFを吸着するように構成されている。酸性ガスFは、第2の段部70を通って流れる際に吸着剤基質74に吸着される。酸性ガスFは、酸性ガスFと試料ガスFとの混合物が第2の段部70を通って流れる際に吸着剤基質74によって該混合物から吸着される。
【0034】
吸着剤基質74は、第1の段部50で生成された酸性ガスを吸着する基質である。一実施形態では、吸着剤基質74は、被覆多孔質ポリマー膜である。ポリマー膜は、ポリマー材料からなる。ポリマー膜は、焼結高密度ポリエチレン(HDPE)、焼結ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの剛性ポリマー材料から作製することができる。吸着剤基質74のポリマー材料は、疎水性ポリマー材料であってもよいし、親水性ポリマー材料であってもよい。
【0035】
被膜は、酸性ガスが第2の段部70を通って流れる際に酸性ガスを引きつけて吸着する金属塩を含むことができる。金属塩は、吸着剤基質74の細孔を通って流れる際に酸性ガスFを引きつけて吸着する。金属塩は、炭酸塩、重炭酸塩、および/または水酸化物の1つまたは複数の土類金属塩を含むことができる。金属塩は、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、重炭酸ナトリウム(NaHCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、水酸化カリウム(KOH)などのうちの1つ以上を含むことができる。
【0036】
一実施形態では、金属塩および溶媒(例えば、非極性溶媒)の溶液をポリマー膜材料に塗布し、次いで乾燥させる。溶媒がエバポレートし、ポリマー膜材料の表面に金属塩の被膜が形成される(例えば、ポリマー膜の外面、ポリマー膜の内部細孔表面)。別の実施形態では、吸着剤基質74は、被覆粉末または被覆顆粒の形態であってもよい。例えば、被覆粉末/被覆顆粒は、吸着剤被覆(例えば、金属塩被覆など)で被覆された不活性粒子/顆粒(例えば、HDPE粉末/顆粒、PTFE粉末/顆粒、シリカゲルなど)から形成することができる。
【0037】
図示の実施形態では、吸着剤基質74は多孔質膜である。酸性ガスと試料ガスF、Fの混合物は、多孔質吸着剤基質74を通って導かれる。試料ガスFは吸着剤基質74を通過し、酸性ガスFは吸着剤基質74内に吸着される。酸性ガスFは、多孔質膜内に捕捉される。試料ガスFは、多孔質吸着剤基質74を通って流れた後、第2の段部70から流出する(例えば、試料ガスFは、吸着剤基質74から流出口34を通って第2のハウジング72およびサンプリングトラップ30から流出する)。
【0038】
吸着剤基質74は、酸性ガスFを安定して吸着するように構成されている。吸着された酸性ガスFは、反応性硫黄種を含有する従来のサンプリング(例えば、キャニスタサンプリング)よりも著しく長い期間安定なままである。例えば、従来のキャニスタサンプリングでは、ガス試料は密閉されたキャニスタ/容器内に保管され、硫黄種は、微量の水分およびコンテナ/容器の材料との反応性のために反応/分解する。酸性ガスFは、少なくとも10日間経過後も吸着剤基質74に安定に吸着されたままである。一実施形態では、酸性ガスFは、少なくとも14日間の後、吸着剤基質74に安定に吸着されたままである。一実施形態では、酸性ガスFは、21日間の後、吸着剤基質74に安定に吸着されたままである。多段式トラップ30の実施形態の実験では、金属塩吸着剤基質74と酸性ガスFとの間の化学吸着の結果、酸性ガスFは、吸着された後、21日間安定して吸着されたままである。これに関連して、「安定して吸着された」とは、密封された第2の段部を常温で所定期間保管した後、吸着された酸性ガスの少なくとも90%が吸着されたままであることを意味する。
【0039】
ガスサンプリングトラップ30は、ガスF中の硫黄種夾雑物を検出するために用いられる。一実施形態では、ガスサンプリングトラップ30は、気体サンプリングシステム1において、濾過された空気、周囲空気、精製窒素、または精製水素をサンプリングするために使用される。例えば、精製窒素は、少なくとも99%の窒素を含有し、半導体製造に使用するための不活性ガスとして適している。例えば、精製水素は、少なくとも99%の水素を含有し、水素燃料電池での使用に適している。例えば、濾過された空気は、データセンタや制御室(例えば、清浄な乾燥空気など)内の電子機器の腐食を低減するために空気濾過される。
【0040】
ガスサンプリングトラップ30は、1ppm未満の硫黄種を含有するガスFをサンプリングするように構成されている。いくつかの実施形態では、ガスサンプリングトラップ30は、100ppb未満など、400ppb未満の硫黄種を含有するガスFをサンプリングするように構成されている。一実施形態では、ガスサンプリングトラップ30は、10ppb未満の硫黄種を含有する試料ガスFをサンプリングするように構成されている。一実施形態では、ガスサンプリングトラップ30は、10ppb未満の硫黄種を含有する試料ガスFをサンプリングするように構成されている。試験中、ガスサンプリングトラップ30の実施形態は、硫黄種を100pptまで検出するのに有効であった。本明細書で論じるppm/ppb/pptは、体積対体積(例えば、サンプリングされたガスの体積当たりの硫黄の体積)である。いくつかの実施形態では、ガスサンプリングトラップ30は、より高濃度の硫黄種に適応するように(例えば、サンプリング時間や金属塩の濃度などを適宜調整することによって)構成することができる。
【0041】
図4は、サンプリングトラップの別の実施形態の断面図である。サンプリングトラップ130の図示の断面は、サンプリングトラップ30の図3に示す断面と同様のサンプリングトラップの長手方向の二断面である。サンプリングトラップ130は、硫黄種用の多段式サンプリングトラップである。サンプリングトラップ130は、図1図3のサンプリングトラップ30と同様に、試料ガス中の反応性硫黄種の濃度を測定するために使用される。一実施形態では、サンプリングトラップ130は、ガスサンプリングシステム(例えば、ガスサンプリングシステム1)で使用される。サンプリングトラップ130は、ガスサンプリングシステムのサンプリングマニホールド(例えば、サンプリングマニホールド)に接続することができる。一実施形態では、サンプリングトラップ130は、図1のガスサンプリングシステム1のサンプリングトラップ30の代わりに使用されてもよい。
【0042】
図4に示すように、サンプリングトラップ130は、入口132、出口134、第1の段部150、および第2の段部170を含む。サンプリングトラップ130は、一般に、図3のサンプリングトラップ30と同様に機能する。例えば、試料ガスFの流れは、サンプリングトラップ130の入口132に供給され、第1の段部150と第2の段部170を順次通って流れることによってサンプリングトラップ132を流れ、次いで出口134を通ってサンプリングトラップ130から出る。サンプリングトラップ130の第1の段部150と第2の段部170は、図3のサンプリングトラップ30の第1の段部50と第2の段部70について上述したのと同様の方法で機能する。第1の段部150は、試料ガスF中の硫黄種と反応して酸性ガスFを生成する金属塩(例えば、第1の段部150の基質154に含まれる)を含有する。生成された酸性ガスFと試料ガスFとの混合物(例えば、試料ガスFから消費された硫黄種を差し引いたもの)は、第2の段部170に流入し、第2の段部170において酸性ガスは吸着剤基質174に吸着される。サンプリングトラップ130内の金属塩、基質154、および吸着剤基質174は、サンプリングトラップ30の金属塩、基質54、および吸着剤基質74について上述したのと同様の特徴を有することができる。
【0043】
図4に示すように、サンプリングトラップ130は、単一のハウジング136を含む。第1の段部150と第2の段部170は、単一のハウジング136内に設けられている。金属塩(例えば、金属塩を有する基質154)と吸着剤基質174は、同じハウジング136内に収容される。ハウジング136内では、金属塩基質154は、ハウジング136の入口132と吸着剤基質174との間に配置され、吸着剤基質154は、金属塩(例えば、金属塩を有する基質154)とハウジング136の出口134との間に配置される。サンプリングトラップ130の流路において、金属塩(例えば、金属塩を有する基質154)と吸着剤基質174は入口132の下流側にあり、吸着剤基質174は、第1の段部150で生成された酸性ガスが第2の段部170に流入するように金属塩の下流にある。例えば、サンプリングトラップ130を通る試料ガスF、Fの流れにより、金属塩基質154で生成された酸性ガスFが第2の段部170における吸着剤基質174に流れる。
【0044】
図5は、ガス内の硫黄種の濃度を検出する方法1000のブロックフロー図を示す。本方法は1100から始まる。1100で、ガス(例えば、試料ガスF)がガスサンプリングトラップでサンプリングされる。例えば、1100でのガスサンプリングは、図1図3のガスサンプリングトラップ30または図4のガスサンプリングトラップ130を利用することができる。1110でのガスサンプリングは、サンプリングマニホールド(例えば、サンプリングマニホールド10)内のガスをサンプリングするためにガスサンプリングトラップを使用することができる。1110で、ガスは、ある時間(例えば、1回のシフト、6時間、8時間など)の間、ガスサンプリングトラップによってサンプリングされる。ガスサンプリングトラップは、第1の段部(例えば、第1の段部50、第1の段部150)および第2の段部(例えば、第2の段部70、170)を含む。
【0045】
1100でのガスサンプリングは、ガスの流れを第1の段部と第2の段部に順次通して導くこと1110を含むことができる。1110でガスの流れを導くことは、1112、1114、および1116を含む。ガスの流れを導くこと1110は、1112から始まる。1112で、ガスは、第1の段部内の金属塩上に導かれ、金属塩をガス内に含有される硫黄種と反応させて酸性ガス(例えば、酸性ガスF)を生成する。一実施形態では、第2の段部は、金属塩を有する基質(例えば、基質54、基質154)を含んでもよく、ガスを金属塩上に導くこと1112は、ガスを基質を通して(例えば、金属塩被覆ポリマー膜を通して)導くことを含むことができる。次いで、方法1000は1114に進む。
【0046】
1114で、第1の段部で生成された酸性ガスは第2の段部に導かれる。次いで、方法1000は1116に進む。
【0047】
1116で、第2の段部を通って流れる酸性ガスは、第2の段部に含有される吸着剤基質(例えば、吸着剤基質74、吸着剤基質174)によって吸着される。一実施形態では、吸着剤基質は多孔質ポリマー膜であり、1116での酸性ガスの吸着は、酸性ガスをポリマー膜内に捕捉することを含むことができる。方法1100は、1200に進む。
【0048】
1200で、サンプリングトラップが切り離される。一実施形態では、サンプリングトラップを切り離すこと1200は、サンプリングトラップをサンプリングマニホールド(例えば、サンプリングマニホールド)から切り離すことを含む。別の実施形態では、サンプリングトラップを切り離すこと1200は、サンプリングマニホールドをガス源から切り離すこと(例えば、マニホールド入口12とマニホールド出口14をガス源から切り離すこと)1200を含む。別の実施形態では、サンプリングトラップを切り離すこと1200は、サンプリングトラップをガス源から切り離すこと(例えば、サンプリングトラップの入口32と出口34をガス源から切り離すこと)を含む。次いで、切り離されたサンプリングトラップまたは切り離されたサンプリングマニホールド(サンプリングトラップを含む)を、試験所などのオフサイト試験施設に輸送することができる。サンプリングトラップを切り離すこと1200は、切り離されたサンプリングトラップまたは切り離されたサンプリングマニホールドの入口と出口を密封すること(例えば、入口32と出口34に蓋をし、マニホールド入口12とマニホールド出口14に蓋をすること)を含むことができる。例えば、これにより、輸送中のサンプリングトラップの汚染を防止することができる。一実施形態では、1200以降の工程は、サンプリング1100が行われる場所から離れた場所で実行される。次いで、方法1000は1300に進む。
【0049】
1300で、溶媒は第2の段部を通して導かれる。例えば、溶媒は、第2の段部に配置された多孔質吸着剤基質を通過する。吸着剤基質は、溶媒が吸着した酸性ガスを脱着できるように、酸性ガスを吸着するように構成されている。溶媒は、吸着した酸性ガスを吸着剤基質から脱着させる液体極性溶媒(例えば、水、メタノールなど)を含むことができる。例えば、溶媒は、吸着された酸性酸と吸着剤基質との間の吸着/引力を乱す。第2の段部を通して導かれた後、溶媒は、脱着した酸性ガスを含有する。例えば、脱着した酸性ガスは、液体(例えば、液体酢酸、液体硝酸など)であり、溶媒と混合することで溶媒中に含有される。次いで、方法1000は1400に進む。
【0050】
1400で、脱着した酸性ガスを含有する溶媒をイオンクロマトグラフィーで試験して、サンプリングされたガス中の硫黄種の濃度を決定する。1400で、脱着した酸性酸を含有する溶媒をイオンクロマトグラフィーで試験することは、溶媒中に含有される脱着した酸性ガスの量(例えば、溶媒中の脱着した酸性酸の濃度×溶媒の総量)を決定するために溶媒をイオンクロマトグラフィーで試験することを含む。溶媒中で脱着した酸性ガスの量は、1116で吸着剤基質によって吸着された酸性ガスの量(例えば、脱着した酸性ガスの量=吸着剤基質が吸着した酸性酸の量)に一致する。吸着された酸性ガスの量は、サンプリングされたガスから消費された硫黄種の総量(例えば、1モルの硫黄種は、1モルの酸性ガスなどを生成する)を計算するために使用することができる。サンプリングされたガス中の硫黄種の濃度は、消費された硫黄種の総量および1100でサンプリングされたガスの既知の体積に基づいて計算すること(例えば、消費された硫黄種の量/サンプリングされたガスの量、消費された硫黄種の体積/サンプリングされたガスの体積)ができる。例えば、1100でサンプリングされたガスの体積は、文書化されていること、標準化されたサンプリング条件(例えば、標準サンプリング時間、流量、圧力など)を有すること、またはサンプリング条件が文書化されていることに基づいて既知である。
【0051】
吸着された酸性ガスの安定性により、1100でのサンプリングと1300および1400でのサンプリングトラップの試験との間の時間を、精度を著しく損なうことなく、より長くすることができる。例えば、安定性により、サンプリング場所から試験施設までのサンプリングトラップの輸送により長い時間がかかる状況(例えば、国際輸送、非特急輸送、輸送遅延など)に対応することが可能になる。サンプリングトラップの国際輸送は、常套的に10日を超える可能性があり、多くの状況で14日を超える時間がかかる可能性がある。
【0052】
サンプリングトラップの捕捉効率(CE)は式(II)を用いて決定することができる。
(II)
例えば、式(II)における「測定された吸着酸性ガスに基づく予想硫黄種濃度」は、化学発光を用いたイオンクロマトグラフィーで測定した吸着酸性ガス量とすることができる。式(II)中の「ガス試料中の硫黄種の既知濃度」は、重量測定で測定することができる。代替的に、捕捉効率は、式(III)を用いて決定し得る。
捕捉効率(CE)
硫黄種の濃度下流
硫黄種の濃度上流
捕捉効率は、サンプリングトラップの性能を測定し、トラップを通過するガス流中の量に対するトラップによって捕捉された硫黄種の量を比較する。例えば、サンプリングトラップ30は、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、または少なくとも95%の初期捕捉効率を有することが分かっている。試験において、多段式サンプリングトラップ30の実施形態は、少なくとも93.3%の初期捕捉効率を有していた。多段式サンプリングトラップ30の試験された実施形態は、第1の段部50の基質54に硝酸銀被覆多孔質膜または硝酸銀被覆シリカゲルを利用し、吸着剤基質74に水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム被覆疎水性膜を利用した。
【0053】
試料トラップには、試料トラップが何時間サンプリングできるかに関係する有限の容量があり、試料トラップが夾雑物を捕捉するにつれて捕捉効率は経時的に徐々に低下する。このため、試料トラップの容量は、実用的な動作限界として機能する特定の捕捉効率で定義されることが多い。より具体的には、容量は、試料トラップが保持することができる夾雑物(即ち、硫黄種)の絶対重量として定義され、一般的な単位はppb時間--時間と曝露濃度の積である。容量は、例えば、濃度、流量、温度、および相対湿度に依存することができ、更に処理濃度などの夾雑物と試料トラップ媒体との間の化学的または物理的相互作用に依存し得る。一般的には、容量は特定の捕捉効率で定義される。例えば、本明細書で開示される試料トラップは、捕捉効率90%のとき容量が少なくとも100ppb時間、例えば、捕捉効率90%のとき容量が少なくとも150ppb時間、少なくとも200ppb時間、または少なくとも約250ppb時間を有することが分かった。
【0054】
具体例としては、硝酸銀処理された多孔質フリットを挿入した試料トラップのハウジングの入口に、既知濃度の硫化水素(HS)を有するガス流を導入した。硫化水素ガスの流れは、ハウジングの入口から処理されたフリットを通過し、そこで硝酸銀と反応して硫化銀流出物を生成した。次いで、流出物はハウジングの出口から出て、出口硫黄濃度を15分ごとに記録した。次いで、式(III)を用いて容量を計算した。結果を以下の表1に示す。
容量値は、9-%の捕捉効率(ppb時間)で記録された。データが示すように、試料トラップの容量は、ガス流の相対湿度(較正済みハイドロメータを用いて測定)とは無関係であることが分かった。しかしながら、硝酸銀処理の回数が増えるほど、試料トラップ容量は大きくなる。
【0055】
実際の濃度値に対する硫黄ガス濃度値の正確度および精度も決定した。この実施例では、既知の濃度の硫化水素が生成され、硝酸銀処理された多孔質フリットを含む試料トラップを通過した。次いで、得られた流出物をイオンクロマトグラフィーで測定した。次いで、算出された硫化水素の平均値(ppb体積)を既知の値と比較した。結果を表2に示す。
【0056】
態様
態様1~13のいずれかは、態様14~20のいずれかと組み合わせることができる。
【0057】
態様1.ガスサンプリングトラップであって、ガスの流れを受けるための入口を含む第1の段部であって、ガスに含有される硫黄種と反応して酸性ガスを生成するように構成された金属塩を含有する第1の段部と、第1の段部で生成された酸性ガスが第2の段部に流入するように第1の段部に流体接続された第2の段部であって、第2の段部を通って流れる酸性ガスを吸着するように構成された吸着剤基質を含有する第2の段部とを備える、ガスサンプリングトラップ。
【0058】
態様2.金属塩と硫黄種との反応が、酸性ガスおよび金属硫黄化合物を生成する、態様1に記載のガスサンプリングトラップ。
【0059】
態様3.金属塩が、硝酸銀、酢酸亜鉛、および酢酸銅のうちの1つまたは複数を含む、態様1または2のいずれかに記載のガスサンプリングトラップ。
【0060】
態様4.硫黄種が、硫化水素、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、メチルメルカプタン、およびメチルスルフィド化合物の1つまたは複数を含む、態様1~3のいずれか一態様に記載のガスサンプリングトラップ。
【0061】
態様5.酸性ガスが、硝酸および酢酸のうちの1つまたは複数を含む、態様1~4のいずれか一態様に記載のガスサンプリングトラップ。
【0062】
態様6.吸着剤基質が、10日間経過後も酸性ガスが吸着剤基質に安定に吸着されたままであるように酸性ガスを吸着する、態様1~5のいずれか一態様に記載のガスサンプリングトラップ。
【0063】
態様7.吸着剤基質が、酸性ガスが多孔質ポリマー膜内に捕捉されるように酸性ガスを吸着する多孔質ポリマー膜である、態様1~6のいずれか一態様に記載のガスサンプリングトラップ。
【0064】
態様8.ガスが、400ppb未満の硫黄種を含有する、態様1~7のいずれか一態様に記載のガスサンプリングトラップ。
【0065】
態様9.ガスが、濾過された空気、周囲空気、精製窒素、および精製水素のうちの1つである、態様1~8のいずれか一態様に記載のガスサンプリングトラップ。
【0066】
態様10.ガスサンプリングトラップが、少なくとも90%の硫黄種の初期捕捉効率を有する、態様1~9のいずれか一態様に記載のガスサンプリングトラップ。
【0067】
態様11.ガスサンプリングトラップが、捕捉効率90%のとき少なくとも100ppb時間の容量を有する、態様10に記載のガスサンプリングトラップ。
【0068】
態様12.第1の段部と第2の段部が単一のハウジング内に設けられる、態様1~10のいずれか一態様に記載のガスサンプリングトラップ。
【0069】
態様13.第2の段部に設けられた出口と、入口から出口まで延びる流路であって、ガスの流れを第1の段部と第2の段部に順次通して導き、かつ第1の段部で生成された酸性ガスを第2の段部を通して導くように構成された流路とを更に備える、態様1~11のいずれか一態様に記載のガスサンプリングトラップ。
【0070】
態様14.第1の段部を収容する第1のハウジングであって、中間出口を含む第1のハウジングと、第2の段部を収容する第2のハウジングであって、中間入口を含む第2のハウジングと、第1のハウジングを第2のハウジングに流体接続する通路であって、中間出口から中間入口まで延びる通路とを備える、態様1~10および12のいずれか一態様に記載のガスサンプリングトラップ。
【0071】
態様15.第1の段部と第2の段部を含むガスサンプリングトラップを利用してガスをサンプリングする方法であって、ガスの流れを第1の段部と第2の段部に順次通して導くことを含み、ガスの流れを導くことが、ガスを第1の段部内の金属塩に導き金属塩をガス内が含有する硫黄種と反応させて酸性ガスを生成することと、酸性ガスを第1の段部から第2の段部に導くことと、第2の段部を通って流れる前記酸性ガスを第2の段部に含有される吸着剤基質で吸着することとを含む、方法。
【0072】
態様16.金属塩が、硝酸銀、酢酸亜鉛、および酢酸銅のうちの1つまたは複数を含む、態様14に記載の方法。
【0073】
態様17.酸性ガスが、硝酸および酢酸のうちの1つまたは複数を含む、態様14および15のいずれか一態様に記載の方法。
【0074】
態様18.硫黄種が、硫化水素、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、メチルメルカプタンおよびメチルスルフィド化合物のうちの1つまたは複数を含む、態様14~16のいずれか一態様に記載の方法。
【0075】
態様19.吸着剤基質が、10日間経過後も酸性ガスが吸着剤基質に安定に吸着されたままであるように酸性ガスを吸着する、態様14~17のいずれか一態様に記載の方法。
【0076】
態様20.吸着剤基質が多孔質ポリマー膜であり、酸性ガスの吸着が、酸性ガスを多孔質ポリマー膜内に捕捉することを含む、態様14~18のいずれか一態様に記載の方法。
【0077】
態様21.ガス中の硫黄種の濃度を検出する方法であって、態様14~19のいずれか一態様に記載の方法に従ってガスサンプリングトラップを利用してガスをサンプリングすることと、ガスサンプリングトラップをサンプリングマニホールドから切り離すことと、溶媒を第2の段部に通して導き、溶媒が吸着剤基質に吸着された酸性ガスを溶媒中に脱着させることと、脱着した酸性ガスを含有する溶媒をイオンクロマトグラフィーで試験して、ガス中の硫黄種の濃度を決定することとを含む、方法。
【0078】
本出願で開示される例は、全ての点で例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。本発明の範囲は、前述の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内にある全ての変更は、特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】