(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-24
(54)【発明の名称】分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/06 20060101AFI20240417BHJP
C08G 63/85 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
C08G63/06
C08G63/85
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568095
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 KR2022006489
(87)【国際公開番号】W WO2022235113
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】10-2021-0058539
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0055700
(32)【優先日】2022-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨンジュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ユン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ドンギョン・カン
(72)【発明者】
【氏名】チョル・ウン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スヒュン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ハリム・ジョン
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA02
4J029AB01
4J029AB04
4J029AD01
4J029AD06
4J029AD07
4J029AE01
4J029AE03
4J029EA02
4J029EA05
4J029EH01
4J029EH03
4J029FC03
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4J029FC08
4J029FC16
4J029FC17
4J029FC29
4J029JA061
4J029JB171
4J029JC361
4J029JF371
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE02
4J029KE05
4J029KE15
(57)【要約】
本発明は、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)の固有の物性を維持しながらも優れた製造収率を実現することができる新規な分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体およびその製造方法を提供するためのものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体:
[化学式1]
R-[A-B]
k
上記化学式1中、
Rは多官能性単量体に由来した3価以上の官能基であり、
Aは直接結合であるか、エーテル、スルフィド、エステル、チオエステル、ケトン、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、アミン、アミド、イミン、イミド、またはウレタンに由来した連結基であり、
Bは下記化学式1-1または化学式1-2で表される置換基であり、
【化1】
kは3以上の整数であり、
nは1~700の整数であり、
mは10~5,000の整数である。
【請求項2】
Rは置換もしくは非置換の炭素数1~60のアルキル、置換もしくは非置換の炭素数3~60のシクロアルキル、置換もしくは非置換の炭素数6~60のアリールまたはN、OおよびSのうちの1つ以上を含む置換もしくは非置換の炭素数2~60のヘテロアリールに由来した3価以上の連結基であり、前記アルキル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールの炭素原子のうちの少なくとも一つは、N、OおよびSからなる群より選択された少なくとも一つのヘテロ原子またはカルボニルで置換または非置換のものである、請求項1に記載の分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体。
【請求項3】
前記重合体は、
3-ヒドロキシプロピオン酸が多官能性単量体と縮合重合されるか、またはβ-プロピオラクトンが多官能性単量体と開環重合された分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体にラクチドが開環重合された、請求項1に記載の分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体。
【請求項4】
前記多官能性単量体は、
グリセロール、ペンタエリスリトール、3-arm-ポリ(エチレングリコール)
n=2~15、4-arm-ポリ(エチレングリコール)
n=2~10、ジ(トリメチロールプロパン)、トリペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、コール酸、β-シクロデキストリン、テトラヒドロキシペリレン、2,2’-bis(ヒドロキシメチル)酪酸(BHB)、ピリジンテトラアミン(PTA)、ジエチルトリアミンペンタ酢酸、メラミン、プロパン-1,2,3-トリアミン、テトラアセチレンペンタアミン、ベンゼン-1,3,5-トリアミン、トルエン-2,4,6-トリイソシアネート、2-イソシアネートエチル-2,6-ジイソシアネートカプロエート、トリフェニルメタン-4,4,4-トリイソシアネート、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、トリグリシジル、およびs-トリアジン-1,3,5-トリエタノールエーテルからなる群より選択される、請求項3に記載の分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体。
【請求項5】
重量平均分子量(Mw)が30,000~500,000である、請求項1に記載の分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体。
【請求項6】
分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体を製造する第1段階;および
前記分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体およびラクチドを開環重合して下記化学式1で表される分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体を製造する第2段階を含む、分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体の製造方法:
[化学式1]
R-[A-B]
k
上記化学式1中、
Rは多官能性単量体に由来した3価以上の官能基であり、
Aは直接結合であるか、エーテル、スルフィド、エステル、チオエステル、ケトン、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、アミン、アミド、イミン、イミド、またはウレタンに由来した連結基であり、
Bは下記化学式1-1または化学式1-2で表される置換基であり、
【化2】
kは3以上の整数であり、
nは1~700の整数であり、
mは10~5,000の整数である。
【請求項7】
前記分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体は下記化学式2で表される、請求項6に記載の分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体の製造方法:
[化学式2]
R-[A-(B’)n]
k
上記化学式2中、
Rは多官能性単量体に由来した3価以上の官能基であり、
Aは直接結合であるか、エーテル、スルフィド、エステル、チオエステル、ケトン、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、アミン、アミド、イミン、イミド、またはウレタンに由来した連結基であり、
B’は下記化学式1’-1または化学式1’-2で表される置換基であり、
【化3】
*はAと連結される部分であり、
kは3以上の整数であり、
nは1~700の整数である。
【請求項8】
前記分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体の重量平均分子量は1,000~100,000である、請求項6に記載の分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体の製造方法。
【請求項9】
前記第1段階で、前記分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体は、3-ヒドロキシプロピオン酸および多官能性単量体を縮合重合して製造するか、またはβ-プロピオラクトンおよび多官能性単量体を開環重合して製造する、請求項6に記載の分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体の製造方法。
【請求項10】
前記多官能性単量体は、
グリセロール、ペンタエリスリトール、3-arm-ポリ(エチレングリコール)
n=2~15、4-arm-ポリ(エチレングリコール)
n=2~10、ジ(トリメチロールプロパン)、トリペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、コール酸、β-シクロデキストリン、テトラヒドロキシペリレン、2,2’-bis(ヒドロキシメチル)酪酸(BHB)、ピリジンテトラアミン(PTA)、ジエチルトリアミンペンタ酢酸、メラミン、プロパン-1,2,3-トリアミン、テトラアセチレンペンタアミン、ベンゼン-1,3,5-トリアミン、トルエン-2,4,6-トリイソシアネート、2-イソシアネートエチル-2,6-ジイソシアネートカプロエート、トリフェニルメタン-4,4,4-トリイソシアネート、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、トリグリシジル、およびs-トリアジン-1,3,5-トリエタノールエーテルからなる群より選択される、請求項9に記載の分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体の製造方法。
【請求項11】
前記第1段階で、
前記分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体が3-ヒドロキシプロピオン酸および多官能性単量体を縮合重合して製造される場合、
前記3-ヒドロキシプロピオン酸含量に対して、多官能性単量体が0.1mol%~20mol%で含まれる、請求項9に記載の分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体の製造方法。
【請求項12】
前記第1段階で、
前記分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体がβ-プロピオラクトンおよび多官能性単量体を開環重合して製造される場合、
前記β-プロピオラクトン含量に対して、多官能性単量体が0.1mol%~20mol%で含まれる、請求項9に記載の分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体の製造方法。
【請求項13】
前記第2段階で、ラクチド100重量部に対して分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体が0.1~40重量部で含まれる、請求項6に記載の分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体の製造方法。
【請求項14】
前記第1段階は、スルホン酸系触媒およびスズ系触媒の存在下で行われる、請求項6に記載の分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体の製造方法。
【請求項15】
前記第1段階は、80℃~100℃および8mbar~12mbarで110分~130分間反応を行った後、
10
-2torrの真空条件下で4時間~26時間反応を行う、請求項6に記載の分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体の製造方法。
【請求項16】
前記第2段階で、前記重合は下記化学式3で表される触媒下で行われる、請求項6に記載の分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体の製造方法:
[化学式3]
MA
1
pA
2
2-p
上記化学式3中、
MはAl、Mg、Zn、Ca、Sn、Fe、Y、Sm、Lu、TiまたはZrであり、
pは0~2の整数であり、
A
1とA
2はそれぞれ独立してアルコキシまたはカルボキシル基である。
【請求項17】
前記第2段階で、前記重合はスズ(II)2-エチルヘキサノエート(Sn(Oct)
2)触媒下で行われる、請求項6に記載の分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体の製造方法。
【請求項18】
前記第2段階で、前記重合は、150℃~250℃窒素条件下で、60分~120分間反応を行う、請求項6に記載の分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2021年5月6日付韓国特許出願第10-2021-0058539号および2022年5月4日付韓国特許出願第10-2022-0055700号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、新規な分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ポリ乳酸(PLA;polylactic acid)はとうもろこしなどの植物から得られる植物由来の樹脂であって、生分解性特性を有すると同時に、引張強度および弾性率に優れた環境にやさしい素材として注目を浴びている。
【0004】
従来より使用されてきたポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンなどの石油系樹脂とは異なり、石油資源枯渇防止、炭酸ガス排出抑制などの効果があるため、石油系プラスチック製品の短所である環境汚染を減らすことができる。したがって、廃プラスチックなどによる環境汚染問題が社会問題として台頭するにつれて、食品包装材および容器、電子製品ケースなど一般プラスチック(石油系樹脂)が使用された製品分野まで適用範囲を拡大しようと努力している。
【0005】
しかし、ポリ乳酸は既存の石油系樹脂と比較して、耐衝撃性および耐熱性が劣っており、適用範囲に制限がある。また、伸び率(Elongation to break)脆性(Brittleness)を示して汎用樹脂として限界がある状況である。
【0006】
前記のような短所を改善するために、ポリ乳酸に他の繰り返し単位を含む共重合体に関する研究が行われており、特に伸び率の改善のために3-ヒドロキシプロピオン酸(3HP;3-hydroxypropionic acid)が共単量体として注目を浴びている。特に、乳酸-3HPブロック共重合体が注目を浴びており、前記共重合体はポリ乳酸固有の特性を維持しながらも伸び率特性が改善される効果がある。
【0007】
但し、商品化側面から、高分子量の乳酸-3HPブロック共重合体が製造されることが要求され、3-ヒドロキシプロピオン酸が縮重合される過程で、低分子量環状の構造が生成されて、高分子量のポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を製造することができないのはもちろん、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)の製造収率も低下するようになる。
【0008】
よって、構造的限界点を改善するために、他の単量体と共重合体を製造する研究が行われているが、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)の固有の物性を維持しながらも優れた製造収率を実現する樹脂を製造しにくいという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、優れた物性を示す新規な分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体およびその製造方法を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
まず、本明細書で“置換もしくは非置換”という用語は、重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミノ基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アルキルアミン基;アラルキルアミン基;ヘテロアリールアミン基;アリールアミン基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうちの1つ以上を含むヘテロ環基からなる群より選択された1つ以上の置換基で置換されたもしくは非置換であるか、前記例示された置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換基もしくは非置換であることを意味する。例えば、“2以上の置換基が連結された置換基”はビフェニル基であり得る。即ち、ビフェニル基はアリール基であってもよく、2つのフェニル基が連結された置換基と解釈できる。
【0011】
本明細書でカルボニル基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~40であることが好ましい。具体的に、下記のような構造の化合物になり得るが、これらに限定されるものではない。
【化1】
【0012】
本明細書において、エステル基はエステル基の酸素が炭素数1~25の直鎖、分枝鎖または環鎖アルキル基または炭素数6~25のアリール基で置換されてもよい。具体的に、下記構造式の化合物になり得るが、これらに限定されるものではない。
【化2】
【0013】
本明細書において、イミド基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~25であることが好ましい。具体的に、下記のような構造の化合物になり得るが、これらに限定されるのではない。
【化3】
【0014】
本明細書において、シリル基は具体的に、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などがあるが、これらに限定されない。
【0015】
本明細書において、ホウ素基は具体的に、トリメチルホウ素基、トリエチルホウ素基、t-ブチルジメチルホウ素基、トリフェニルホウ素基、フェニルホウ素基などがあるが、これらに限定されない。
【0016】
本明細書において、ハロゲン基の例としては、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素がある。
【0017】
本明細書において、前記アルキル基は直鎖または分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1~40であることが好ましい。一実施状態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~20である。また一つの実施状態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。また一つの実施状態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、へプチル、n-へプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルへプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルへプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書において、前記アルケニル基は直鎖または分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、2~40であることが好ましい。一実施状態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~20である。また一つの実施状態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~10である。また一つの実施状態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~6である。具体的な例としては、ビニル、1-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、1,3-ブタジエニル、アリル、1-フェニルビニル-1-イル、2-フェニルビニル-1-イル、2,2-ジフェニルビニル-1-イル、2-フェニル-2-(ナフチル-1-イル)ビニル-1-イル、2,2-ビス(ジフェニル-1-イル)ビニル-1-イル、スチルベニル基、スチレニル基などがあるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書において、シクロアルキル基は特に限定されないが、炭素数3~60であることが好ましく、一実施状態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~30である。また一つの実施状態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~20である。また一つの実施状態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~6である。具体的に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチルなどがあるが、これに限定されない。
【0020】
本明細書において、アリール基は特に限定されないが、炭素数6~60であることが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。一実施状態によれば、前記アリール基の炭素数は6~30である。一実施状態によれば、前記アリール基の炭素数は6~20である。前記アリール基が単環式アリール基としてはフェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基などになり得るが、これに限定されるのではない。前記多環式アリール基としてはナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリルレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などになり得るが、これに限定されるのではない。
【0021】
本明細書において、フルオレニル基は置換されてもよく、置換基2つが互いに結合してスピロ構造を形成することができる。前記フルオレニル基が置換される場合、
【化4】
などになり得る。但し、これに限定されるのではない。
【0022】
本明細書において、ヘテロアリール基は異種元素としてO、N、SiおよびSのうちの1つ以上を含み、芳香族性(aromatic)を有するヘテロ環基であって、炭素数は特に限定されないが、炭素数2~60であることが好ましい。ヘテロアリール基の例としては、チオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾ-ル基、トリアゾール基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジン基、アクリジル基、ピリダジン基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリン基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリン基、インドール基、カルバゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、フェナントロリン基(phenanthroline)、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基、およびジベンゾフラニル基などがあるが、これらのみに限定されるのではない。
【0023】
本明細書において、アラルキル基、アラルケニル基、アルキルアリール基、アリールアミン基中のアリール基は前述のアリール基の例示のとおりである。本明細書において、アラルキル基、アルキルアリール基、アルキルアミン基中のアルキル基は前述のアルキル基の例示のとおりである。本明細書において、ヘテロアリールアミン中のヘテロアリールは前述のヘテロ環基に関する説明が適用できる。本明細書において、アラルケニル基中のアルケニル基は前述のアルケニル基の例示のとおりである。本明細書において、アリーレンは2価基であることを除いては前述のアリール基に関する説明が適用できる。本明細書において、ヘテロアリーレンは2価基であることを除いては前述のヘテロ環基に関する説明が適用できる。本明細書において、炭化水素環は1価基ではなく、2つの置換基が結合して形成したことを除いては前述のアリール基またはシクロアルキル基に関する説明が適用できる。本明細書において、ヘテロ環は1価基ではなく、2つの置換基が結合して形成したことを除いては前述のヘテロ環基に関する説明が適用できる。
【0024】
本発明の課題を解決するために、本発明は下記化学式1で表される分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体を提供する:
[化学式1]
R-[A-B]
k
上記化学式1中、
Rは多官能性単量体に由来した3価以上の官能基であり、
Aは直接結合であるか、エーテル、スルフィド、エステル、チオエステル、ケトン、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、アミン、アミド、イミン、イミド、またはウレタンに由来した連結基であり、
Bは下記化学式1-1または化学式1-2で表される置換基であり、
【化5】
*はAと連結される部分であり、
kは3以上の整数であり、
nは1~700の整数であり、
mは10~5,000の整数である。
また、本発明は、分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体を製造する第1段階;および
前記分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体およびラクチドを開環重合して下記化学式1で表される分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体を製造する第2段階を含む、分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体の製造方法を提供する。
【0025】
ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体を製造するためには、従来P3HP(ポリヒドロキシプロピオン酸)を合成し、ここにラクチドを投入して開環重合を行うか、PLA(ポリ乳酸)とP3HPをそれぞれ別途に重合した後、これをアニーリングする多段階反応が適用されて工程効率が低下する問題があった。特に、このような多段階反応過程中に低分子量の副産物、特に環状のオリゴマーが生成されて、環状のオリゴマーは縮重合が行われないため共重合体の製造収率が低下し、また副産物の分離が必要な追加的な工程が必要であるという問題点があった。
【0026】
よって、本発明者らは、特有の多官能性単量体を使用して新規な分枝型のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体を形成し、これを、開環反応を通じてPLAと共重合する場合、優れた物性を有し、合成収率も優れたことを確認して、本発明を完成した。
【0027】
特に、新規の分枝型構造の導入で、高いshear rateで粘度が急激に低下し、樹脂の加工性を向上させることができ、前記構造によって結晶化度を低下させ、脆性を補完することができるのを確認して、本発明を完成した。
【0028】
以下、本発明の新規な重合体構造およびその製造方法を詳細に説明する。
【0029】
(分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体)
発明の一実施形態において、分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体は下記化学式1で表される:
[化学式1]
R-[A-B]
k
上記化学式1中、
Rは多官能性単量体に由来した3価以上の官能基であり、
Aは直接結合であるか、エーテル、スルフィド、エステル、チオエステル、ケトン、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、アミン、アミド、イミン、イミド、またはウレタンに由来した連結基であり、
Bは下記化学式1-1または化学式1-2で表される置換基であり、
【化6】
kは3以上の整数であり、
nは1~700の整数であり、
mは10~5,000の整数である。
【0030】
ここで、分枝型(Branched)とは各官能基が3つ以上である単量体の重合物であって、化学式1でR部分を分枝構造と定義する。
【0031】
好ましくは、kは3~10または3~8の整数である。
【0032】
好ましくは、前記Rは置換もしくは非置換の炭素数1~60のアルキル、置換もしくは非置換の炭素数3~60のシクロアルキル、置換もしくは非置換の炭素数6~60のアリールまたはN、O、およびSのうちの1つ以上を含む置換もしくは非置換の炭素数2~60のヘテロアリールに由来した3価以上の連結基であり、前記アルキル、シクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールの炭素原子のうちの少なくとも一つは、N、O、およびSからなる群より選択された少なくとも一つのヘテロ原子またはカルボニルで置換もしくは非置換のものである。
【0033】
前記共重合体は3-ヒドロキシプロピオン酸および多官能性単量体を縮合重合して製造されるか、またはβ-プロピオラクトンおよび多官能性単量体を開環重合して製造された分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体にラクチドが開環重合されてポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体を形成したものである。
【0034】
前記多官能性単量体は、好ましくは、グリセロール、ペンタエリスリトール、3-arm-ポリ(エチレングリコール)
n=2~15、4-arm-ポリ(エチレングリコール)
n=2~10、ジ(トリメチロールプロパン)、トリペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、コール酸、β-シクロデキストリン、テトラヒドロキシペリレン、2,2’-bis(ヒドロキシメチル)酪酸(BHB)、ピリジンテトラアミン(PTA)、ジエチルトリアミンペンタ酢酸、メラミン、プロパン-1,2,3-トリアミン、テトラアセチレンペンタアミン、ベンゼン-1,3,5-トリアミン、トルエン-2,4,6-トリイソシアネート、2-イソシアネートエチル-2,6-ジイソシアネートカプロエート、トリフェニルペンタン-4,4,4-トリイソシアネート、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、トリグリシジル、およびs-トリアジン-1,3,5-トリエタノールエーテルなどが挙げられる。
【化7】
【0035】
前記共重合体は重量平均分子量(Mw)が30,000~500,000であってもよく、好ましくは、32,000~300,000、35,000~280,000、または38,000~270,000であるか、32,000以上、35,000以上、または38,000以上であるか、300,000以下、280,000以下、または270,000以下であってもよい。当該重量平均分子量値を有する場合、適正加工性を実現することに適合する。
【0036】
前記共重合体は数平均分子量(Mn)が10,000~150,000であってもよく、好ましくは、15,000~120,000、20,000~100,000、または23,000~80,000であるか、15,000以上、20,000以上、または23,000以上であるか、120,000以下、100,000以下、または8,000以下であってもよい。
【0037】
前記共重合体は多分散指数(PDI)が1.5~5.0であってもよく、好ましくは、1.6~4.5または1.61~4.0であるか、1.6以上、または1.61以上であるか、4.5以下、または4.0以下であってもよい。
【0038】
(分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体の製造方法)
発明の他の一実施形態によれば、前記分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体の製造方法が提供される。
【0039】
具体的に、分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体を製造する第1段階;および
前記分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体およびラクチドを開環重合して下記化学式1で表される分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体を製造する第2段階を含む:
[化学式1]
R-[A-B]
k
上記化学式1中、
Rは多官能性単量体に由来した3価以上の官能基であり、
Aは直接結合であるか、エーテル、スルフィド、エステル、チオエステル、ケトン、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、アミン、アミド、イミン、イミド、またはウレタンに由来した連結基であり、
Bは下記化学式1-1または化学式1-2で表される置換基であり、
【化8】
kは3以上の整数であり、
nは1~700の整数であり、
mは10~5,000の整数である。
【0040】
ここで、前記化学式1で表される構造は先に説明した分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体の内容が同一に適用され、前記重合体を形成する単量体の具体的な種類、含量などは前述の内容と同一なので、ここでは詳しく説明しないようにする。
【0041】
以下、各段階別に詳細に説明する。
【0042】
(第1段階)
前記第1段階で分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体の製造は、3-ヒドロキシプロピオン酸および多官能性単量体を縮合重合して製造するか、またはβ-プロピオラクトンおよび多官能性単量体を開環重合して製造する。
【0043】
ここで、前記多官能性単量体は、グリセロール、ペンタエリスリトール、3-arm-ポリ(エチレングリコール)
n=2~15、4-arm-ポリ(エチレングリコール)
n=2~10、ジ(トリメチロールプロパン)、トリペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、コール酸、β-シクロデキストリン、テトラヒドロキシペリレン、2,2’-bis(ヒドロキシメチル)酪酸(BHB)、ピリジンテトラアミン(PTA)、ジエチルトリアミンペンタ酢酸、メラミン、プロパン-1,2,3-トリアミン、テトラアセチレンペンタアミン、ベンゼン-1,3,5-トリアミン、トルエン-2,4,6-トリイソシアネート、2-イソシアネートエチル-2,6-ジイソシアネートカプロエート、トリフェニルメタン-4,4,4-トリイソシアネート、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、トリグリシジル、およびs-トリアジン-1,3,5-トリエタノールエーテルなどが挙げられる。
【化9】
【0044】
前記段階で重合される分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体は下記化学式2で表すことができる:
[化学式2]
R-[A-(B’)n]
k
上記化学式2中、
Rは多官能性単量体に由来した3価以上の官能基であり、
Aは直接結合であるか、エーテル、スルフィド、エステル、チオエステル、ケトン、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、アミン、アミド、イミン、イミド、またはウレタンに由来した連結基であり、
B’は下記化学式1’-1または化学式1’-2で表される置換基であり、
【化10】
*はAと連結される部分であり、
kは3以上の整数であり、
nは1~700の整数である。
【0045】
前記第1段階で、前記分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体が3-ヒドロキシプロピオン酸および多官能性単量体を縮合重合して製造される場合、前記3-ヒドロキシプロピオン酸含量に対して、多官能性単量体0.1mol%~20mol%で含まれて重合できる。前記含量範囲で重合される場合、適正架橋構造として目的とする分枝型構造を優れた収率で形成するのに適合する。前記多官能性単量体が0.1mol%未満である場合、目的とする架橋構造形成が難しく、20mol%を超過する場合、相対的に低分子量であるオリゴマー形態で架橋が行われて、高分子型重合体を得にくく、反応時間が長くなって工程効率が低下する問題がある。好ましくは、前記多官能性単量体含量が0.1mol%~15mol%、0.5mol%~10mol%、または1mol%~8mol%であるか、0.1mol%以上、0.5mol%以上または1.0mol%以上であるか、15mol%以下、10mol%以下、または8mol%以下で使用できる。この場合、前述の問題なく重合体を形成することができる。
【0046】
また前記第1段階で、前記分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体がβ-プロピオラクトンおよび多官能性単量体を開環重合して製造される場合、前記β-プロピオラクトン含量に対して、多官能性単量体が0.1mol%~20mol%で含まれて重合できる。前記含量範囲で重合される場合、適正架橋構造として目的とする分枝型構造を優れた収率で形成するのに適合する。前記多官能性単量体が0.1mol%未満である場合、目的とする架橋構造形成が難しく、20mol%を超過する場合、相対的に低分子量であるオリゴマー形態で架橋が行われて、高分子型重合体を得にくく、反応時間が長くなって工程効率が低下する問題がある。好ましくは、前記多官能性単量体含量が0.1mol%~15mol%、0.5mol%~10mol%、または1mol%~8mol%であるか、0.1mol%以上、0.5mol%以上または1.0mol%以上であるか、15mol%以下、10mol%以下、または8mol%以下で使用できる。この場合、前述の問題なく重合体を形成することができる。
【0047】
前記分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体は重量平均分子量(Mw)が1,000~100,000であってもよく、好ましくは1,500~80,000、1,900~50,000、2,000~40,000、または5,000~30,000であるか、1,500以上、1,900以上、または2,000以上であるか、80,000以下、50,000以下、40,000以下、または30,000以下であってもよい。
【0048】
前記第1段階は、スルホン酸系触媒およびスズ系触媒の存在下で行うことができる。前記触媒は重合を促進すると同時に重合される過程で環状のオリゴマーの生成を抑制する効果がある。
【0049】
好ましくは、前記スルホン酸系触媒は、p-トルエンスルホン酸、m-キシレン-4-スルホン酸、2-メシチレンスルホン酸、またはp-キシレン-2-スルホン酸である。また好ましくは、前記スズ系触媒はSnCl2またはSn(oct)2である。
【0050】
好ましくは、前記スルホン酸系触媒は、3-ヒドロキシプロピオン酸またはβ-プロピオラクトンに対してそれぞれ0.001mol%~1mol%で使用される。前記の範囲で重合を促進すると同時に環状のオリゴマー生成を抑制することができる。好ましくは、前記スルホン酸系触媒の含量は0.01mol%~0.8mol%、または0.02mol%~0.5mol%であるか、0.01mol%以上、または0.02mol%以上であるか、0.8mol%以下、または0.5mol%以下であってもよい。
【0051】
好ましくは、前記スズ系触媒は3-ヒドロキシプロピオン酸またはβ-プロピオラクトンに対してそれぞれ0.00025mol%~1mol%で使用される。前記の範囲で重合を促進すると同時に環状のオリゴマー生成を抑制することができる。好ましくは、前記スズ系触媒は、0.001mol%~0.8mol%、0.005~0.5mol%、または0.01~0.3mol%であるか、0.001mol%以上、0.005mol%以上、または0.01mol%以上であるか、0.8mol%以下、0.5mol%以下、または0.3mol%以下であってもよい。
【0052】
前記重合は、80℃~100℃および8mbar~12mbarで110分~130分間反応を行った後、10-2torrの真空条件下で4時間~26時間反応を行うことができる。前記条件下で溶融重合される場合、副反応の生成物発生を抑制することができる。
【0053】
より具体的に80℃~100℃および8mbar~12mbarで110分~130分間オリゴマー化反応が行われ、その次に10-2torrの真空条件下で4時間~26時間反応が行われて化学式1の重合体が形成できる。
【0054】
前記後行する重合はオリゴマー化反応と同一の温度下で行うことができ、または100℃~120℃に昇温して行うことができる。
【0055】
好ましくは、約90±3℃および約10±1mbarで約120±5分間反応を行った後、同一温度または約110±3℃に昇温して約10-2torrの真空条件下で反応を行うことができる。参考として、オリゴマー化以後の反応は使用される多官能性単量体の含量範囲によって適切に調節でき、過量の多官能性単量体が使用される場合、反応時間が長くなり、副反応で鎖移動(chain transfer)が起こってゲル化現象が発生することがあるため、24時間程度以内で適切に調節して行うことができる。
【0056】
一方、必要に応じて、重合前に前記3-ヒドロキシプロピオン酸(またはβ-プロピオラクトン)および多官能性単量体はそれぞれ独立して、重合前に30℃~100℃、30mbar~150mbarで前処理することができる。前記前処理段階を通じて、3-ヒドロキシプロピオン酸および多官能性単量体に存在する水分を除去することができる。
【0057】
(第2段階)
その次に、前記分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体およびラクチドを開環重合して前述の化学式1で表される分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体を製造する第2段階を含む。
【0058】
本発明で使用する‘ラクチド’は、L-ラクチド、D-ラクチド、L-形態とD-形態がそれぞれ一つずつからなるmeso-ラクチド、またはL-ラクチドとD-ラクチドが50:50重量比で混合されているものをD,L-ラクチドまたはrac-ラクチドを称する。
【0059】
前記第2段階で、ラクチド100重量部に対して分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体0.1~40重量部で含まれてもよく、好ましくは、0.5~20重量部または1~15重量部であるか、0.5重量部以上または1重量部以上であるか、20重量部以下、または10重量部以下で使用できる。前記含量範囲で使用されて目的とする新規な分枝構造を有する重合体を形成するのに好ましい。
前記第2段階で、前記重合は下記化学式3で表される触媒下で行うことができる:
[化学式3]
MA1
pA2
2-p
上記化学式3中、
MはAl、Mg、Zn、Ca、Sn、Fe、Y、Sm、Lu、TiまたはZrであり、
pは0~2の整数であり、
A1とA2はそれぞれ独立してアルコキシまたはカルボキシル基である。
好ましくは、前記第2段階で、前記重合はスズ(II)2-エチルヘキサノエート(Sn(Oct)2)触媒下で行うことができる。
【0060】
前記第2段階で、前記重合は、150℃~250℃窒素条件下で、60分~120分間反応を行うことができ、好ましくは、170℃~200℃窒素条件下で、80分~100分間反応を行うことができる。前記条件下で重合される場合、副反応の生成物発生を抑制することができて好ましい。
【0061】
一方、必要によって、重合前に、1段階で製造された分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体およびラクチドはそれぞれ独立して、重合前に常温で約5時間~24時間前処理することができる。前記前処理段階を通じて、分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体およびラクチドに存在する水分を除去することができる。
【0062】
(物品)
また、本発明の他の一実施形態によれば、前記新規な分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体を含む物品を提供する。
前記物品は包装材、フィルム、不織布などが挙げられ、当該物品に適用されて伸び率特性に優れながらも同時に脆性が補完できる。
【発明の効果】
【0063】
前述のように、本発明による分枝型ポリ(乳酸-3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体およびその製造方法は、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)の固有の物性を維持しながらも優れた製造収率を実現する重合体を効果的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、本発明の実施形態を下記の実施例でより詳細に説明する。但し、下記の実施例は本発明の実施形態を例示するものに過ぎず、本発明の詳細な説明が下記の実施例によって限定されるのではない。
【実施例】
【0065】
<実施例および比較例>
実施例1
(1段階)水に溶けている3-ヒドロキシプロピオン酸(3HP)およびグリセロールをRBFに入れて90℃、100torrで2時間水分を乾燥した。
【0066】
反応器に乾燥された3-ヒドロキシプロピオン酸(3HP)70gとグリセロール7.156g(3HPに対して10mol%)入れ、触媒としてp-TSA 295.6mg(3HPに対して0.2mol%)を使用して90℃で10mbarで2時間オリゴマー化反応した。0.1torrの真空度で助触媒としてSnCl2 157.4mg(3HPに対して0.05mol%)を投入しながら(t=5)8時間追加重合反応を行って、分枝型共重合体(Mw2,700)を製造した。
(2段階)反応器に前記製造された分枝型のP3HP共重合体4gおよびラクチド40gを入れて、常温で約16時間水分を真空乾燥した。前記反応器にトルエン0.01M濃度のSn(Oct)2溶液180ulを注入し、前記トルエンを30分間真空乾燥した。その次に、前記反応器に窒素を満たして、180℃で予熱されたオイル槽で90分間反応を行い、新規な分枝型のP3HP-co-PLA共重合体を含む生成物を得た。生成物内の残留ラクチドを除去するために140℃で4時間devolatilizationを行って、分枝型のP3HP-co-PLA共重合体を製造した。
【0067】
実施例2
実施例1の1段階で、グリセロールの含量をそれぞれ3HPに対して5mol%で使用したことを除いては同様な方法で、分枝型のP3HP共重合体(Mw:2,300)を製造した。
【0068】
また、実施例1の2段階で、反応時間を60分間行ったことを除いては、同様な方法で分枝型のP3HP-co-PLA共重合体を製造した。
【0069】
実施例3
実施例1の1段階で、グリセロールの含量をそれぞれ3HPに対して1mol%で使用したことを除いては同様な方法で、分枝型のP3HP共重合体(Mw:16,000)を製造した。
【0070】
また、実施例1の2段階で、反応時間を70分間行ったことを除いては、同様な方法で分枝型のP3HP-co-PLA共重合体を製造した。
【0071】
実施例4
実施例1の1段階で、グリセロールの含量をそれぞれ3HPに対して0.5mol%で使用したことを除いては同様な方法で、分枝型のP3HP共重合体(Mw:39,000)を製造した。
【0072】
また、実施例1の2段階で、反応時間を90分間行ったことを除いては、同様な方法で分枝型のP3HP-co-PLA共重合体を製造した。
【0073】
比較例1
反応器に3-ヒドロキシプロピオン酸(3HP)の単独縮合反応で製造されたLinear P3HP共重合体(Mw9,600)4gおよびラクチド40gを入れ、常温で約16時間水分を真空乾燥した。前記反応器にトルエン0.01M濃度のSn(Oct)2溶液180ulを注入し、前記トルエンを30分間真空乾燥した。その次に、前記反応器に窒素を満たし、180℃で予熱されたオイル槽で90分間反応を行い、新規な分枝型のP3HP-co-PLA共重合体を含む生成物を得た。生成物内の残留ラクチドを除去するために140℃で4時間devolatilizationを行って、P3HP-co-PLA共重合体を製造した。
【0074】
比較例2
比較例1で、3-ヒドロキシプロピオン酸(3HP)の単独縮合反応で製造されたLinear P3HP共重合体(Mw28,500)を同一含量で使用し、反応時間を60分間行ったことを除いては、同様な方法でP3HP-co-PLA共重合体を製造した。
【0075】
<実験例>
前記実施例および比較例で製造した共重合体に対して下記のようにその特性を評価した。
【0076】
1)GPC(gel permeation chromatography)分子量評価
前記実施例および比較例で製造される各段階別共重合体に対して、Water e2695モデルの装備とAgilent Plgel mixed cとb columを使用して分子量を評価した。サンプルを4mg/mlでchloroformを溶媒として準備して20ul注入した。測定されたゲル透過クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography、Tosoh ECO SEC Elite)で重量平均分子量、数平均分子量、多分散指数を測定し、その結果を下記表1に示した。
溶媒:chloroform(eluent)
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
Standard:Polystyrene(3次関数で補正)
【表1】
【0077】
2)DSC(differential scanning calorimetry)熱的特性評価
前記実施例および比較例で製造される各段階別共重合体に対して、TA DSC250モデル装備を使用して窒素ガスフロー状態で熱的特性(Tg、Tm、cold crystallization(2nd heating結果)、Tc(1st cooling結果))を測定し、その結果を下記表2に示した。
40℃~190℃まで10℃/minで昇温(1st heating)/190℃で10分温度維持
190℃~-60℃まで10℃/minで冷却(1st cooling)/-60℃で10分温度維持
-60℃~190℃まで10℃/minで昇温(2nd heating)
【表2】
【0078】
一般に、結晶速度が速ければTcのエンタルピーが大きくcold crystallizationが少ないか、又は無く、結晶化度が高いほどTmのエンタルピーが大きくなることがある。また、結晶化度が高ければ物質の強度が高まるが壊れやすく(brittle)弾性がないが、本発明のように分枝構造の場合、結晶化度を低下させ、脆性(Brittle)を低下させることができるのを確認することができる。
【0079】
より具体的に、前記表1および表2で確認できるように、同じ分子量範囲でBrancherの含量が増加するほどcold crystallizationが観察され、Tcの温度およびエンタルピー値が減少する傾向を示すのを確認することができる。これにより、Tmのエンタルピー値が低まるのを確認することができる。
【国際調査報告】