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特表2024-518054分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-24
(54)【発明の名称】分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/06 20060101AFI20240417BHJP
   C08G 63/85 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
C08G63/06
C08G63/85
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568096
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 KR2022006488
(87)【国際公開番号】W WO2022235112
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】10-2021-0058832
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0055701
(32)【優先日】2022-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨンジュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ユン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】チョル・ウン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スヒョン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】キョンミン・キム
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA02
4J029AB01
4J029AB04
4J029AD01
4J029EA02
4J029EA05
4J029FC03
4J029FC07
4J029FC08
4J029FC16
4J029FC17
4J029FC29
4J029JB171
4J029JC022
4J029JC152
4J029JC282
4J029JC361
4J029JF371
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE02
4J029KE05
4J029KE15
(57)【要約】
本発明に係る新規な分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体、およびその製造方法は、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)の固有物性を維持し、かつ優れた製造収率を実現する重合体を効果的に製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される、分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体:
[化学式1]
R-[A-(B)n]
前記化学式1中、
Rは、多官能性単量体に由来する3価以上の官能基であり、
Aは、直接結合であるか、エーテル、スルフィド、エステル、チオエステル、ケトン、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、アミン、アミド、イミン、イミド、またはウレタンに由来する連結基であり、
Bは、下記化学式1-1または化学式1-2で表される置換基であり、
【化1】
*はAと連結される部分であり、
kは3以上の整数であり、
nは1~700の整数である。
【請求項2】
Rは、置換または非置換の炭素数1~60のアルキル、置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル、置換または非置換の炭素数6~60のアリールまたはN、OおよびSのうちの1個以上を含む置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリールに由来する3価以上の連結基であり、前記アルキル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールの炭素原子のうちの少なくとも1つは、N、OおよびSからなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子またはカルボニルで置換または非置換される、請求項1に記載の分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体。
【請求項3】
前記重合体は、3-ヒドロキシプロピオン酸が多官能性単量体と縮合重合されるか、またはβ-プロピオラクトンが多官能性単量体と開環重合された、請求項1に記載の分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体。
【請求項4】
前記多官能性単量体は、
グリセロール、ペンタエリスリトール、3-arm-ポリ(エチレングリコール)n=2~15、4-arm-ポリ(エチレングリコール)n=2~10、ジ(トリメチロールプロパン)、トリペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、コール酸、β-シクロデキストリン、テトラヒドロキシペリレン、2,2’-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(BHB)、ピリジンテトラアミン(PTA)、ジエチルトリアミンペンタ酢酸、メラミン、プロパン-1,2,3-トリアミン、テトラアセチレンペンタアミン、ベンゼン-1,3,5-トリアミン、トルエン-2,4,6-トリイソシアネート、2-イソシアネートエチル-2,6-ジイソシアネートカプロエート、トリフェニルメタン-4,4,4-トリイソシアネート、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、トリグリシジル、およびs-トリアジン-1,3,5-トリエタノールエーテルからなる群より選択される、請求項3に記載の分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体。
【請求項5】
重量平均分子量が1、000~100、000である、請求項1に記載の分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体。
【請求項6】
数平均分子量が500~50、000である、請求項1に記載の分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体。
【請求項7】
多分散指数が1.80~13.0である、請求項1に記載の分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体の構造を含む、分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体。
【請求項9】
3-ヒドロキシプロピオン酸またはβ-プロピオラクトンを多官能性単量体と重合して下記化学式1で表される分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体を製造する段階を含む、分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体の製造方法:
[化学式1]
R-[A-(B)n]
前記化学式1中、
Rは、多官能性単量体に由来する3価以上の官能基であり、
Aは、直接結合であるか、エーテル、スルフィド、エステル、チオエステル、ケトン、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、アミン、アミド、イミン、イミド、またはウレタンに由来する連結基であり、
Bは、下記化学式1-1または化学式1-2で表される置換基であり、
【化2】
*はAと連結される部分であり、
kは3以上の整数であり、
nは1~700の整数である。
【請求項10】
前記多官能性単量体は、
グリセロール、ペンタエリスリトール、3-arm-ポリ(エチレングリコール)n=2~15、4-arm-ポリ(エチレングリコール)n=2~10、ジ(トリメチロールプロパン)、トリペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、コール酸、β-シクロデキストリン、テトラヒドロキシペリレン、2,2’-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(BHB)、ピリジンテトラアミン(PTA)、ジエチルトリアミンペンタ酢酸、メラミン、プロパン-1,2,3-トリアミン、テトラアセチレンペンタアミン、ベンゼン-1,3,5-トリアミン、トルエン-2,4,6-トリイソシアネート、2-イソシアネートエチル-2,6-ジイソシアネートカプロエート、トリフェニルメタン-4,4,4-トリイソシアネート、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、トリグリシジル、およびs-トリアジン-1,3,5-トリエタノールエーテルからなる群より選択される、請求項9に記載の分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体の製造方法。
【請求項11】
前記分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体が3-ヒドロキシプロピオン酸および多官能性単量体と縮合重合して製造される場合、
前記3-ヒドロキシプロピオン酸の含有量に対して、多官能性単量体0.1mol%~20mol%で含まれる、請求項9に記載の分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体の製造方法。
【請求項12】
前記分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体がβ-プロピオラクトンおよび多官能性単量体と開環重合して製造される場合、
前記β-プロピオラクトンの含有量に対して、多官能性単量体0.1mol%~20mol%で含まれる、請求項9に記載の分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体の製造方法。
【請求項13】
前記重合は、80℃~100℃および8mbar~12mbarで110分~130分間反応を行った後、
10-2torrの真空条件下で4時間~26時間反応を行う、請求項9に記載の分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体の製造方法。
【請求項14】
前記重合は、スルホン酸系触媒およびスズ系触媒の存在下で行われる、請求項9に記載の分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体の製造方法。
【請求項15】
前記スルホン酸系触媒は、3-ヒドロキシプロピオン酸またはβ-プロピオラクトンそれぞれの含有量に対して0.001mol%~1mol%で含まれ、
前記スズ系触媒は、3-ヒドロキシプロピオン酸またはβ-プロピオラクトンそれぞれの含有量に対して0.00025mol%~1mol%で含まれる、請求項14に記載の分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体の製造方法。
【請求項16】
前記3-ヒドロキシプロピオン酸、β-プロピオラクトンおよび多官能性単量体はそれぞれ独立して、重合前に30℃~100℃、30mbar~150mbarで前処理される、請求項9に記載の分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年5月6日付の韓国特許出願第10-2021-0058832号および2022年5月4日付の韓国特許出願第10-2022-0055701号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、新規な分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)は生分解性高分子であって、壊れにくい性質を有するだけでなく、機械的物性にも優れているので、環境にやさしい素材として注目されている。
【0004】
ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)は、単量体である3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP;3-hydroxypropionic acid)を縮重合して製造するが、産業上の利用可能性を考慮すると、熱的安定性に優れたポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)を製造しなければならない。しかし、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)鎖内にはエステル構造が含まれており、エステル構造は、熱分解温度が約220℃であるため、熱的安定性を改善するのに限界がある。
【0005】
また、高分子量のポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を製造して熱的安定性を改善することができるが、3-ヒドロキシプロピオン酸が縮重合される過程で、低分子量環状構造が生成され、高分子量のポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を製造することができないことはもちろん、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)の製造収率も低下する。
【0006】
そこで、構造的な限界を改善するために、他の単量体と共重合体を製造する研究が行われているが、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)の固有の物性を維持しながらも優れた製造収率を実現する樹脂を製造しにくい問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れた物性を示す新規な分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において、「置換または非置換の」という用語は、重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミノ基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アルキルアミン基;アラルキルアミン基;ヘテロアリールアミン基;アリールアミン基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうちの1個以上を含むヘテロ環基からなる群より選択される1個以上の置換基で置換または非置換されるか、前記例示された置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換または非置換されることを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であってもよい。すなわち、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されてもよい。
【0009】
本明細書において、カルボニル基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~40であることが好ましい。具体的には、下記のような構造の化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化1】
【0010】
本明細書において、エステル基は、エステル基の酸素が炭素数1~25の直鎖、分枝鎖もしくは環鎖アルキル基、または炭素数6~25のアリール基で置換されていてもよい。具体的には、下記構造式の化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化2】
【0011】
本明細書において、イミド基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~25であることが好ましい。具体的には、下記のような構造の化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化3】
【0012】
本明細書において、シリル基は、具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
本明細書において、ホウ素基は、具体的には、トリメチルホウ素基、トリエチルホウ素基、t-ブチルジメチルホウ素基、トリフェニルホウ素基、フェニルホウ素基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
本明細書において、ハロゲン基の例としては、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素がある。
【0015】
本明細書において、前記アルキル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1~40であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~20である。さらに1つの実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。さらに1つの実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
本明細書において、前記アルケニル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、2~40であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~20である。さらに1つの実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~10である。さらに1つの実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~6である。具体的な例としては、ビニル、1-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、1,3-ブタジエニル、アリル、1-フェニルビニル-1-イル、2-フェニルビニル-1-イル、2,2-ジフェニルビニル-1-イル、2-フェニル-2-(ナフチル-1-イル)ビニル-1-イル、2,2-ビス(ジフェニル-1-イル)ビニル-1-イル、スチルベニル基、スチレニル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本明細書において、シクロアルキル基は特に限定されないが、炭素数3~60であることが好ましく、一実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~30である。さらに1つの実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~20である。さらに1つの実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~6である。具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本明細書において、アリール基は特に限定されないが、炭素数6~60であることが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~30である。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~20である。前記単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などであってもよいが、これらに限定されるものではない。前記多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0019】
本明細書において、フルオレニル基は置換されていてもよく、置換基2個が互いに結合してスピロ構造を形成してもよい。前記フルオレニル基が置換される場合、
【化4】
などであってもよい。但し、これらに限定されるものではない。
【0020】
本明細書において、ヘテロアリールは、異種元素としてO、N、SiおよびSのうちの1個以上を含み、芳香族性(aromaticity)を有するヘテロ環基であって、炭素数は特に限定されないが、炭素数2~60であることが好ましい。ヘテロアリール基の例としては、チオフェン基、フラニル基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、アクリジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリル基、インドール基、カルバゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、フェナントロリン基(phenanthroline)、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基、およびジベンゾフラニル基などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0021】
本明細書において、アラルキル基、アラルケニル基、アルキルアリール基、アリールアミン基中のアリール基は、上述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アラルキル基、アルキルアリール基、アルキルアミン基中のアルキル基は、上述したアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリールアミン中のヘテロアリールは、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アラルケニル基中のアルケニル基は、上述したアルケニル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アリーレンは、2価の基であることを除けば、上述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリーレンは、2価の基であることを除けば、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。本明細書において、炭化水素環は1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成されたことを除けば、上述したアリール基またはシクロアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロ環は1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成したことを除けば、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。
【0022】
上記の課題を解決するために、本発明は、下記化学式1で表される分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体を提供する:
[化学式1]
R-[A-(B)n]
前記化学式1中、
Rは、多官能性単量体に由来する3価以上の官能基であり、
Aは、直接結合であるか、エーテル、スルフィド、エステル、チオエステル、ケトン、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、アミン、アミド、イミン、イミド、またはウレタンに由来する連結基であり、
Bは、下記化学式1-1または化学式1-2で表される置換基であり、
【化5】
*はAと連結される部分であり、
kは3以上の整数であり、
nは1~700の整数である。
【0023】
また、本発明は、3-ヒドロキシプロピオン酸またはβ-プロピオラクトンを、多官能性単量体と重合して前記化学式1で表される分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体を製造する段階を含む、分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体の製造方法を提供する。
【0024】
また、本発明は、前記分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体の構造を含む分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体を提供する。
【0025】
産業上の利用性を向上させるためにポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)の高分子量化が求められるが、高分子量のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)を製造するために3-ヒドロキシプロピオン酸が縮重合される過程で、低分子量環状構造が生成され、高分子量のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)を製造することができないことはもちろん、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)の製造収率も低下するという問題があった。また、他の単量体と共重合体を形成する場合、固有の物性が低下するか、または副産物の分離が必要な追加的な工程が必要であるという問題があった。
【0026】
そこで、本発明者らは、特有の多官能性単量体を使用して新規な分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体を形成する場合、優れた物性を有し、合成収率も優れたことを確認して、本発明を完成した。
【0027】
特に、前記新規な分枝型構造の導入で、高いshear rateで粘度が急激に低くなり、樹脂の加工性を向上させることができ、前記構造によって結晶化度を下げて脆性を補完することができることを確認して、本発明を完成した。
【0028】
以下、本発明の新規な重合体の構造およびその製造方法について詳しく説明する。
【0029】
(分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体)
本発明の一実施形態において、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体は、下記化学式1で表される:
[化学式1]
R-[A-(B)n]
前記化学式1中、
Rは、多官能性単量体に由来する3価以上の官能基であり、
Aは、直接結合であるか、エーテル、スルフィド、エステル、チオエステル、ケトン、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、アミン、アミド、イミン、イミド、またはウレタンに由来する連結基であり、
Bは、下記化学式1-1または化学式1-2で表される置換基であり、
【化6】
*はAと連結される部分であり、
kは3以上の整数であり、
nは1~700の整数である。
【0030】
ここで、分枝型(Branched)とは、各官能基が3個以上である単量体の重合物であって、化学式1中のR部分を分枝構造と定義する。例えば、
【化7】
などの構造を意味し、これに限定されるものではない。
【0031】
好ましくは、kは3~10または3~8の整数である。
【0032】
好ましくは、前記Rは置換または非置換の炭素数1~60のアルキル、置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル、置換または非置換の炭素数6~60のアリールまたはN、OおよびSのうちの1個以上を含む置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリールに由来する3価以上の連結基であり、前記アルキル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールの炭素原子のうちの少なくとも1つはN、OおよびSからなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子またはカルボニルで置換または非置換される。
【0033】
前記重合体は、3-ヒドロキシプロピオン酸が多官能性単量体と縮合重合されるか、またはβ-プロピオラクトンが多官能性単量体と開環重合されたものであって、前記多官能性単量体は、好ましくは、グリセロール、ペンタエリスリトール、3-arm-ポリ(エチレングリコール)n=2~15、4-arm-ポリ(エチレングリコール)n=2~10、ジ(トリメチロールプロパン)、トリペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、コール酸、β-シクロデキストリン、テトラヒドロキシペリレン、2,2’-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(BHB)、ピリジンテトラアミン(PTA)、ジエチルトリアミンペンタ酢酸、メラミン、プロパン-1,2,3-トリアミン、テトラアセチレンペンタアミン、ベンゼン-1,3,5-トリアミン、トルエン-2,4,6-トリイソシアネート、2-イソシアネートエチル-2,6-ジイソシアネートカプロエート、トリフェニルメタン-4,4,4-トリイソシアネート、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、トリグリシジル、およびs-トリアジン-1,3,5-トリエタノールエーテルなどが挙げられる。
【化8】
【0034】
前記重合体は、3-ヒドロキシプロピオン酸またはβ-プロピオラクトンそれぞれの含有量に対して、多官能性単量体0.1mol%~20mol%が縮合重合されたものであってもよく、好ましくは、前記多官能性単量体の含有量が0.1mol%~15mol%、0.5mol%~10mol%または1mol%~8mol%であるか、0.1mol%以上、0.5mol%以上または1.0mol%以上であるか、15mol%以下、10mol%以下、または8mol%以下で使用される。上記含有量の範囲で用いられ、目的とする新規な分枝構造を有する重合体を形成することが好ましい。
【0035】
前記重合体は、重量平均分子量(Mw)が1、000~100、000であってもよく、好ましくは、1、500~80、000、1、900~50、000、2、000~40、000、または5、000~30、000であるか、1、500以上、1、900以上、2、000以上、または2、000以上であるか、80、000以下、50、000以下、40、000以下、または30、000以下であってもよい。
【0036】
前記重合体は、数平均分子量(Mn)が500~50、000であってもよく、好ましくは、700~30、000、1、000~10、000、1、100~7、000、または1、200~5、500であるか、700以上、1、000以上、1、100以上、または1、200以上であるか、30、000以下、10、000以下、7、000以下、または5、500以下であってもよい。
【0037】
前記重合体は、多分散指数(PDI)が1.80~13.0であってもよく、好ましくは、1.85~12.8、1.85~12.55、または2.0~12.0であるか、1.85以上、1.90以上、1.95以上または2.0以上であるか、12.8以下、12.55以下、または12.3以下、または12.0以下であってもよい。
【0038】
前記重量平均分子量、数平均分子量、および多分散指数の測定方法は、後述する実験例で具体的に説明する。
【0039】
(分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体の製造方法)
本発明の他の一実施形態によれば、前記分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体を製造する方法を提供することができる。
【0040】
具体的には、3-ヒドロキシプロピオン酸またはβ-プロピオラクトンを多官能性単量体と重合して下記化学式1で表される分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体を製造する段階を含む:
[化学式1]
R-[A-(B)n]
前記化学式1中、
Rは、多官能性単量体に由来する3価以上の官能基であり、
Aは、直接結合であるか、エーテル、スルフィド、エステル、チオエステル、ケトン、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、アミン、アミド、イミン、イミド、またはウレタンに由来する連結基であり、
Bは、下記化学式1-1または化学式1-2で表される置換基であり、
【化9】
*はAと連結される部分であり、
kは3以上の整数であり、
nは1~700の整数である。
【0041】
ここで、前記化学式1で表される構造は、上述した分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体と同一の定義が適用され、前記重合体を形成する単量体の具体的な種類、含有量などは上述した内容と同じであるので、ここでは詳しく説明しない。
【0042】
前記重合体が3-ヒドロキシプロピオン酸および多官能性単量体と縮合重合して製造される場合、前記3-ヒドロキシプロピオン酸の含有量に対して、多官能性単量体0.1mol%~20mol%で含まれる。上記含有量の範囲で重合する場合、適正架橋構造として目的とする分枝型構造を優れた収率で形成するのに適合する。前記多官能性単量体が0.1mol%未満の場合、目的とする架橋構造の形成が難しく、20mol%を超える場合、相対的に低分子量であるオリゴマー形態で架橋が行われ、高分子型重合体を得にくく、反応時間が長くなって工程効率が低下する問題がある。好ましくは、前記多官能性単量体の含有量が0.1mol%~15mol%、0.5mol%~10mol%、または1mol%~8mol%であるか、0.1mol%以上、0.5mol%以上または1.0mol%以上であるか、15mol%以下、10mol%以下または8mol%以下で使用される。この場合、上述した問題なく重合体を形成することができる。
【0043】
また、前記重合体がβ-プロピオラクトンおよび多官能性単量体と開環重合して製造される場合、前記β-プロピオラクトンの含有量に対して、多官能性単量体は0.1mol%~20mol%で含まれる。上記含有量の範囲で重合する場合、適正架橋構造として目的とする分枝型構造を優れた収率で形成するのに適合する。前記多官能性単量体が0.1mol%未満の場合、目的とする架橋構造の形成が難しく、20mol%を超える場合、相対的に低分子量であるオリゴマー形態で架橋が行われ、高分子型重合体を得にくく、反応時間が長くなって工程効率が低下する問題がある。好ましくは、前記多官能性単量体の含有量が0.1mol%~15mol%、0.5mol%~10mol%、または1mol%~8mol%であるか、0.1mol%以上、0.5mol%以上または1.0mol%以上であるか、15mol%以下、10mol%以下または8mol%以下で使用される。この場合、上述した問題なく重合体を形成することができる。
【0044】
前記重合は、スルホン酸系触媒およびスズ系触媒の存在下で行うことができる。前記触媒は3-ヒドロキシプロピオン酸およびβ-プロピオラクトンそれぞれの重合を促進すると同時に重合される過程で環状オリゴマーの生成を抑制する効果がある。
【0045】
好ましくは、前記スルホン酸系触媒は、p-トルエンスルホン酸、m-キシレン-4-スルホン酸、2-メシチレンスルホン酸、またはp-キシレン-2-スルホン酸である。また、好ましくは、前記スズ系触媒はSnClまたはSn(oct)である。
【0046】
好ましくは、前記スルホン酸系触媒は、3-ヒドロキシプロピオン酸およびβ-プロピオラクトンに対してそれぞれ0.001mol%~1mol%で使用される。上記の範囲で重合を促進すると同時に環状オリゴマーの生成を抑制することができる。好ましくは、前記スルホン酸系触媒の含有量は0.01mol%~0.8mol%、または0.02mol%~0.5mol%であるか、0.01mol%以上、または0.02mol%以上であるか、0.8mol%以下、または0.5mol%以下であってもよい。
【0047】
好ましくは、前記スズ系触媒は、3-ヒドロキシプロピオン酸およびβ-プロピオラクトンに対してそれぞれ0.00025mol%~1mol%で使用される。上記の範囲で重合を促進すると同時に環状オリゴマーの生成を抑制することができる。好ましくは、前記スズ系触媒の含有量は0.001mol%~0.8mol%、0.005~0.5mol%、または0.01~0.3mol%であるか、0.001mol%以上、0.005mol%以上、または0.01mol%以上であるか、0.8mol%以下、0.5mol%以下、または0.3mol%以下であってもよい。
【0048】
前記重合は、80℃~100℃および8mbar~12mbarで110分~130分間反応を行った後、10-2torrの真空条件下で4時間~26時間反応を行うことができる。上記条件下で溶融重合される場合、副反応生成物の発生を抑制することができる。
【0049】
より具体的には、80℃~100℃および8mbar~12mbarで110分~130分間オリゴマー化反応が行われ、その後、10-2torrの真空条件下で4時間~26時間反応が行われ、化学式1の重合体を形成することができる。
【0050】
前記後行する重合は、オリゴマー化反応と同じ温度下で行うことができ、または100℃~120℃に昇温して行うことができる。
【0051】
好ましくは、約90±3℃および約10±1mbarで約120±5分間反応を行った後、同じ温度または約110±3℃に昇温して約10-2torrの真空条件下で反応を行うことができる。参考として、オリゴマー化後の反応は使用される多官能性単量体の含有量の範囲に応じて適切に調節することができ、過剰の多官能性単量体を使用する場合、反応時間が長くなりながら副反応で鎖移動(chain transfer)が起こり、ゲル化現象が発生することがあるので、24時間程度内で適切に調節して行うことができる。
【0052】
一方、必要に応じて重合前に前記3-ヒドロキシプロピオン酸、β-プロピオラクトンおよび多官能性単量体はそれぞれ独立して、重合前に30℃~100℃、30mbar~150mbarで前処理することができる。前記前処理段階により、3-ヒドロキシプロピオン酸および多官能性単量体に存在する水分を除去することができる。
【0053】
(分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体)
また、本発明の他の一実施形態によれば、上述した化学式1で表される分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体構造を含む分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体を提供する。
【0054】
より具体的には、化学式1で表される分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体内部に含まれる末端官能基が共単量体を追加重合し、共重合体を形成することができる。
【0055】
前記末端官能基は、化学式1で表される分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体の製造時に使用される多官能性単量体、3-ヒドロキシプロピオン酸、β-プロピオラクトンに由来するもので、追加重合反応が可能な末端官能基(例えば、-OH、-COOH)を意味する。
【0056】
また、前記共重合される共単量体の種類は、上述した末端官能基と反応可能な単量体であれば特に限定されず、例えば、エステル系共単量体であり得る。具体的には、glycolate、lactic acid、hydroxybutyrate、hydroxyvalerate、hydroxypentanoate、hydroxyotanoate、ラクトン系化合物などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
前記共重合体の重合方法は、使用される共単量体の種類によって適切に選択することができ、当該分野における通常の重合方法を特に制限なく全て適用することができる。
【0058】
(物品)
また、本発明の他の一実施形態によれば、前記新規な分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体を含む物品を提供する。
【0059】
前記物品は、包装材、フィルム、不織布などが挙げられ、当該物品に適用され、伸び率特性に優れ、かつ脆性を改善することができる。
【発明の効果】
【0060】
上述のように、本発明に係る分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体およびその製造方法は、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)の固有の物性を維持し、かつ優れた製造収率を実現する重合体を効果的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、本発明の実施形態を下記の実施例でより詳しく説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示したものに過ぎず、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【実施例
【0062】
<実施例および比較例>
実施例1
水に溶けている3-ヒドロキシプロピオン酸(3HP)およびグリセロールをRBFに入れて90℃、100torrで2時間水分を乾燥した。
【0063】
反応器に乾燥された3-ヒドロキシプロピオン酸(3HP)70gとグリセロール7.156g(3HPに対して10mol%)を入れて、触媒としてp-TSA295.6mg(3HPに対して0.2mol%)を使用して90℃で10mbarで2時間オリゴマー化反応を行った。0.1torrの真空度で助触媒としてSn(Oct) 157.4mg(3HPに対して0.05mol%)を投入しながら(t=5)5時間さらに重合反応を行い、分枝型共重合体を製造した。
【0064】
実施例2
実施例1でオリゴマー化反応を含む総重合時間を10時間行ったことを除いては、同様の方法で分枝型共重合体を製造した。
【0065】
実施例3~5
実施例1でグリセロールの含有量をそれぞれ3HPに対して5mol%で使用し、オリゴマー化反応を含む総重合時間を7時間(実施例3)、10時間(実施例4)、22時間(実施例5)行ったことを除いては、同様の方法で分枝型共重合体を製造した。
【0066】
実施例6~8
実施例1でグリセロールの含有量をそれぞれ3HPに対して1mol%で使用し、オリゴマー化反応を含む総重合時間を7時間(実施例6)、10時間(実施例7)、20時間(実施例8)行ったことを除いては、同様の方法で分枝型共重合体を製造した。
【0067】
実施例9~11
実施例1でグリセロールの含有量をそれぞれ3HPに対して0.5mol%で使用し、オリゴマー化反応を含む総重合時間を7時間(実施例9)、10時間(実施例10)、24時間(実施例11)行ったことを除いては、同様の方法で分枝型共重合体を製造した。
【0068】
比較例1
水に溶けている3-ヒドロキシプロピオン酸(3HP)をRBFに入れて90℃、100torrで2時間水分を乾燥した。
【0069】
反応器に乾燥された3-ヒドロキシプロピオン酸(3HP)60gを入れて、触媒としてp-TSA295.6mg(3HPに対して0.2mol%)を使用して90℃で10mbarで2時間オリゴマー化反応を行った。0.1torrの真空度で助触媒としてSnCl(3HPに対して0.05mol%)を投入しながら(t=5)5時間さらに重合反応を行い、共重合体を製造した。
【0070】
比較例2および3
比較例1でオリゴマー化反応を含む総重合時間を10時間(比較例2)、24時間(実施例3)行ったことを除いては、同様の方法で共重合体を製造した。
【0071】
<実験例>
前記実施例および比較例で製造した共重合体に対して、下記のようにその特性を評価した。
【0072】
1)GPC(gelpermeation chromatography)分子量の評価
前記実施例および比較例で製造される各段階別共重合体に対して、Water e2695モデルの装置およびAgilent Plgel mixed cとb columを使用して分子量を評価した。サンプルを4mg/mlでchloroformを溶媒として準備して20ul注入した。測定されたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography、Tosoh ECO SEC Elite)で重量平均分子量、数平均分子量、多分散指数を測定し、その結果を下記表1に示す。
溶媒:chloroform(eluent)
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
Standard:Polystyrene(3次関数で補正)
【表1】
【0073】
2)DSC(differential scanning calorimetry)熱的特性評価
前記実施例および比較例で製造される各段階別共重合体に対して、TA DSC250モデルの装置を用いて窒素ガスフロー状態で熱的特性(Tg、Tm、cold crystallization(2nd heatingの結果)、Tc(1st coolingの結果))を測定し、その結果を下記表2に示す。
40℃~190℃まで10℃/minで昇温(1s theating)/190℃で10分間温度維持
190℃~-60℃まで10℃/minで冷却(1st cooling)/-60℃で10分間温度維持
-60℃~190℃まで10℃/minで昇温(2nd heating)
【表2】
【0074】
一般に、結晶速度が速いとTcのエンタルピーが大きくcold crystallizationが少ないか、無く、結晶化度が高いほどTmのエンタルピーが大きくなることがある。また、結晶化度が高ければ物質の強度が高くなるが、壊れやすく(brittle)、弾性がないが、本発明のようにBranch構造の場合、結晶化度を下げ、壊れやすい(Brittle)特性を下げることができることを確認することができた。
【0075】
より具体的には、前記表1および表2で確認できるように、同じ分子量の範囲(比較例1、実施例3、実施例6)で、Brancherの含有量が増加するほど、cold crystallizationが観察され、Tcの温度およびエンタルピー値が減少する傾向を示すことを確認することができた。これにより、Tmのエンタルピー値が低くなることを確認することができた。
【0076】
実施例3~5のようにBrancherを5mol%で含むとき、最も優れた効果を示すことを確認することができた。但し、Brancherが過剰に含まれる場合、結晶性を観察しにくくなり、少量で含まれる場合、Linearと同様の熱特性を示し、目的とする期待効果を実現しにくいこともある。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年5月6日付の韓国特許出願第10-2021-0058832号および2022年5月4日付の韓国特許出願第10-2022-0055701号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、新規な分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)は生分解性高分子であって、壊れにくい性質を有するだけでなく、機械的物性にも優れているので、環境にやさしい素材として注目されている。
【0004】
ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)は、単量体である3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP;3-hydroxypropionic acid)を縮重合して製造するが、産業上の利用可能性を考慮すると、熱的安定性に優れたポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)を製造しなければならない。しかし、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)鎖内にはエステル構造が含まれており、エステル構造は、熱分解温度が約220℃であるため、熱的安定性を改善するのに限界がある。
【0005】
また、高分子量のポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を製造して熱的安定性を改善することができるが、3-ヒドロキシプロピオン酸が縮重合される過程で、低分子量環状構造が生成され、高分子量のポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を製造することができないことはもちろん、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)の製造収率も低下する。
【0006】
そこで、構造的な限界を改善するために、他の単量体と共重合体を製造する研究が行われているが、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)の固有の物性を維持しながらも優れた製造収率を実現する樹脂を製造しにくい問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れた物性を示す新規な分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において、「置換または非置換の」という用語は、重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミノ基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アルキルアミン基;アラルキルアミン基;ヘテロアリールアミン基;アリールアミン基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうちの1個以上を含むヘテロ環基からなる群より選択される1個以上の置換基で置換または非置換されるか、前記例示された置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換または非置換されることを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であってもよい。すなわち、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されてもよい。
【0009】
本明細書において、カルボニル基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~40であることが好ましい。具体的には、下記のような構造の化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化1】
【0010】
本明細書において、エステル基は、エステル基の酸素が炭素数1~25の直鎖、分枝鎖もしくは環鎖アルキル基、または炭素数6~25のアリール基で置換されていてもよい。具体的には、下記構造式の化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化2】
【0011】
本明細書において、イミド基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~25であることが好ましい。具体的には、下記のような構造の化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化3】
【0012】
本明細書において、シリル基は、具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
本明細書において、ホウ素基は、具体的には、トリメチルホウ素基、トリエチルホウ素基、t-ブチルジメチルホウ素基、トリフェニルホウ素基、フェニルホウ素基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
本明細書において、ハロゲン基の例としては、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素がある。
【0015】
本明細書において、前記アルキル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1~40であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~20である。さらに1つの実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。さらに1つの実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
本明細書において、前記アルケニル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、2~40であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~20である。さらに1つの実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~10である。さらに1つの実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~6である。具体的な例としては、ビニル、1-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、1,3-ブタジエニル、アリル、1-フェニルビニル-1-イル、2-フェニルビニル-1-イル、2,2-ジフェニルビニル-1-イル、2-フェニル-2-(ナフチル-1-イル)ビニル-1-イル、2,2-ビス(ジフェニル-1-イル)ビニル-1-イル、スチルベニル基、スチレニル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本明細書において、シクロアルキル基は特に限定されないが、炭素数3~60であることが好ましく、一実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~30である。さらに1つの実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~20である。さらに1つの実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~6である。具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本明細書において、アリール基は特に限定されないが、炭素数6~60であることが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~30である。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~20である。前記単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などであってもよいが、これらに限定されるものではない。前記多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0019】
本明細書において、フルオレニル基は置換されていてもよく、置換基2個が互いに結合してスピロ構造を形成してもよい。前記フルオレニル基が置換される場合、
【化4】
などであってもよい。但し、これらに限定されるものではない。
【0020】
本明細書において、ヘテロアリールは、異種元素としてO、N、SiおよびSのうちの1個以上を含み、芳香族性(aromaticity)を有するヘテロ環基であって、炭素数は特に限定されないが、炭素数2~60であることが好ましい。ヘテロアリール基の例としては、チオフェン基、フラニル基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、アクリジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリル基、インドール基、カルバゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、フェナントロリン基(phenanthroline)、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基、およびジベンゾフラニル基などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0021】
本明細書において、アラルキル基、アラルケニル基、アルキルアリール基、アリールアミン基中のアリール基は、上述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アラルキル基、アルキルアリール基、アルキルアミン基中のアルキル基は、上述したアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリールアミン中のヘテロアリールは、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アラルケニル基中のアルケニル基は、上述したアルケニル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アリーレンは、2価の基であることを除けば、上述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリーレンは、2価の基であることを除けば、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。本明細書において、炭化水素環は1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成されたことを除けば、上述したアリール基またはシクロアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロ環は1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成したことを除けば、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。
【0022】
上記の課題を解決するために、本発明は、下記化学式1で表される分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体を提供する:
[化学式1]
R-[A-(B)n]
前記化学式1中、
Rは、多官能性単量体に由来する3価以上の官能基であり、
Aは、直接結合であるか、エーテル、スルフィド、エステル、チオエステル、ケトン、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、アミン、アミド、イミン、イミド、またはウレタンに由来する連結基であり、
Bは、下記化学式1-1または化学式1-2で表される置換基であり、
【化5】
*はAと連結される部分であり、
kは3以上の整数であり、
nは1~700の整数である。
【0023】
また、本発明は、3-ヒドロキシプロピオン酸またはβ-プロピオラクトンを、多官能性単量体と重合して前記化学式1で表される分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体を製造する段階を含む、分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体の製造方法を提供する。
【0024】
また、本発明は、前記分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体の構造を含む分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体を提供する。
【0025】
産業上の利用性を向上させるためにポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)の高分子量化が求められるが、高分子量のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)を製造するために3-ヒドロキシプロピオン酸が縮重合される過程で、低分子量環状構造が生成され、高分子量のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)を製造することができないことはもちろん、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)の製造収率も低下するという問題があった。また、他の単量体と共重合体を形成する場合、固有の物性が低下するか、または副産物の分離が必要な追加的な工程が必要であるという問題があった。
【0026】
そこで、本発明者らは、特有の多官能性単量体を使用して新規な分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体を形成する場合、優れた物性を有し、合成収率も優れたことを確認して、本発明を完成した。
【0027】
特に、前記新規な分枝型構造の導入で、高いshear rateで粘度が急激に低くなり、樹脂の加工性を向上させることができ、前記構造によって結晶化度を下げて脆性を補完することができることを確認して、本発明を完成した。
【0028】
以下、本発明の新規な重合体の構造およびその製造方法について詳しく説明する。
【0029】
(分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体)
本発明の一実施形態において、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体は、下記化学式1で表される:
[化学式1]
R-[A-(B)n]
前記化学式1中、
Rは、多官能性単量体に由来する3価以上の官能基であり、
Aは、直接結合であるか、エーテル、スルフィド、エステル、チオエステル、ケトン、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、アミン、アミド、イミン、イミド、またはウレタンに由来する連結基であり、
Bは、下記化学式1-1または化学式1-2で表される置換基であり、
【化6】
*はAと連結される部分であり、
kは3以上の整数であり、
nは1~700の整数である。
【0030】
ここで、分枝型(Branched)とは、各官能基が3個以上である単量体の重合物であって、化学式1中のR部分を分枝構造と定義する。例えば、
【化7】
などの構造を意味し、これに限定されるものではない。
【0031】
好ましくは、kは3~10または3~8の整数である。
【0032】
好ましくは、前記Rは置換または非置換の炭素数1~60のアルキル、置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル、置換または非置換の炭素数6~60のアリールまたはN、OおよびSのうちの1個以上を含む置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリールに由来する3価以上の連結基であり、前記アルキル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールの炭素原子のうちの少なくとも1つはN、OおよびSからなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子またはカルボニルで置換または非置換される。
【0033】
前記重合体は、3-ヒドロキシプロピオン酸が多官能性単量体と縮合重合されるか、またはβ-プロピオラクトンが多官能性単量体と開環重合されたものであって、前記多官能性単量体は、好ましくは、グリセロール、ペンタエリスリトール、3-arm-ポリ(エチレングリコール)n=2~15、4-arm-ポリ(エチレングリコール)n=2~10、ジ(トリメチロールプロパン)、トリペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、コール酸、β-シクロデキストリン、テトラヒドロキシペリレン、2,2’-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(BHB)、ピリジンテトラアミン(PTA)、ジエチルトリアミンペンタ酢酸、メラミン、プロパン-1,2,3-トリアミン、テトラアセチレンペンタアミン、ベンゼン-1,3,5-トリアミン、トルエン-2,4,6-トリイソシアネート、2-イソシアネートエチル-2,6-ジイソシアネートカプロエート、トリフェニルメタン-4,4,4-トリイソシアネート、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、トリグリシジル、およびs-トリアジン-1,3,5-トリエタノールエーテルなどが挙げられる。
【化8】
【0034】
前記重合体は、3-ヒドロキシプロピオン酸またはβ-プロピオラクトンそれぞれの含有量に対して、多官能性単量体0.1mol%~20mol%が縮合重合されたものであってもよく、好ましくは、前記多官能性単量体の含有量が0.1mol%~15mol%、0.5mol%~10mol%または1mol%~8mol%であるか、0.1mol%以上、0.5mol%以上または1.0mol%以上であるか、15mol%以下、10mol%以下、または8mol%以下で使用される。上記含有量の範囲で用いられ、目的とする新規な分枝構造を有する重合体を形成することが好ましい。
【0035】
前記重合体は、重量平均分子量(Mw)が1、000~100、000であってもよく、好ましくは、1、500~80、000、1、900~50、000、2、000~40、000、または5、000~30、000であるか、1、500以上、1、900以上、または2、000以上であるか、80、000以下、50、000以下、40、000以下、または30、000以下であってもよい。
【0036】
前記重合体は、数平均分子量(Mn)が500~50、000であってもよく、好ましくは、700~30、000、1、000~10、000、1、100~7、000、または1、200~5、500であるか、700以上、1、000以上、1、100以上、または1、200以上であるか、30、000以下、10、000以下、7、000以下、または5、500以下であってもよい。
【0037】
前記重合体は、多分散指数(PDI)が1.80~13.0であってもよく、好ましくは、1.85~12.8、1.85~12.55、または2.0~12.0であるか、1.85以上、1.90以上、1.95以上または2.0以上であるか、12.8以下、12.55以下、または12.3以下、または12.0以下であってもよい。
【0038】
前記重量平均分子量、数平均分子量、および多分散指数の測定方法は、後述する実験例で具体的に説明する。
【0039】
(分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体の製造方法)
本発明の他の一実施形態によれば、前記分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体を製造する方法を提供することができる。
【0040】
具体的には、3-ヒドロキシプロピオン酸またはβ-プロピオラクトンを多官能性単量体と重合して下記化学式1で表される分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体を製造する段階を含む:
[化学式1]
R-[A-(B)n]
前記化学式1中、
Rは、多官能性単量体に由来する3価以上の官能基であり、
Aは、直接結合であるか、エーテル、スルフィド、エステル、チオエステル、ケトン、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、アミン、アミド、イミン、イミド、またはウレタンに由来する連結基であり、
Bは、下記化学式1-1または化学式1-2で表される置換基であり、
【化9】
*はAと連結される部分であり、
kは3以上の整数であり、
nは1~700の整数である。
【0041】
ここで、前記化学式1で表される構造は、上述した分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体と同一の定義が適用され、前記重合体を形成する単量体の具体的な種類、含有量などは上述した内容と同じであるので、ここでは詳しく説明しない。
【0042】
前記重合体が3-ヒドロキシプロピオン酸および多官能性単量体と縮合重合して製造される場合、前記3-ヒドロキシプロピオン酸の含有量に対して、多官能性単量体0.1mol%~20mol%で含まれる。上記含有量の範囲で重合する場合、適正架橋構造として目的とする分枝型構造を優れた収率で形成するのに適合する。前記多官能性単量体が0.1mol%未満の場合、目的とする架橋構造の形成が難しく、20mol%を超える場合、相対的に低分子量であるオリゴマー形態で架橋が行われ、高分子型重合体を得にくく、反応時間が長くなって工程効率が低下する問題がある。好ましくは、前記多官能性単量体の含有量が0.1mol%~15mol%、0.5mol%~10mol%、または1mol%~8mol%であるか、0.1mol%以上、0.5mol%以上または1.0mol%以上であるか、15mol%以下、10mol%以下または8mol%以下で使用される。この場合、上述した問題なく重合体を形成することができる。
【0043】
また、前記重合体がβ-プロピオラクトンおよび多官能性単量体と開環重合して製造される場合、前記β-プロピオラクトンの含有量に対して、多官能性単量体は0.1mol%~20mol%で含まれる。上記含有量の範囲で重合する場合、適正架橋構造として目的とする分枝型構造を優れた収率で形成するのに適合する。前記多官能性単量体が0.1mol%未満の場合、目的とする架橋構造の形成が難しく、20mol%を超える場合、相対的に低分子量であるオリゴマー形態で架橋が行われ、高分子型重合体を得にくく、反応時間が長くなって工程効率が低下する問題がある。好ましくは、前記多官能性単量体の含有量が0.1mol%~15mol%、0.5mol%~10mol%、または1mol%~8mol%であるか、0.1mol%以上、0.5mol%以上または1.0mol%以上であるか、15mol%以下、10mol%以下または8mol%以下で使用される。この場合、上述した問題なく重合体を形成することができる。
【0044】
前記重合は、スルホン酸系触媒およびスズ系触媒の存在下で行うことができる。前記触媒は3-ヒドロキシプロピオン酸およびβ-プロピオラクトンそれぞれの重合を促進すると同時に重合される過程で環状オリゴマーの生成を抑制する効果がある。
【0045】
好ましくは、前記スルホン酸系触媒は、p-トルエンスルホン酸、m-キシレン-4-スルホン酸、2-メシチレンスルホン酸、またはp-キシレン-2-スルホン酸である。また、好ましくは、前記スズ系触媒はSnClまたはSn(oct)である。
【0046】
好ましくは、前記スルホン酸系触媒は、3-ヒドロキシプロピオン酸およびβ-プロピオラクトンに対してそれぞれ0.001mol%~1mol%で使用される。上記の範囲で重合を促進すると同時に環状オリゴマーの生成を抑制することができる。好ましくは、前記スルホン酸系触媒の含有量は0.01mol%~0.8mol%、または0.02mol%~0.5mol%であるか、0.01mol%以上、または0.02mol%以上であるか、0.8mol%以下、または0.5mol%以下であってもよい。
【0047】
好ましくは、前記スズ系触媒は、3-ヒドロキシプロピオン酸およびβ-プロピオラクトンに対してそれぞれ0.00025mol%~1mol%で使用される。上記の範囲で重合を促進すると同時に環状オリゴマーの生成を抑制することができる。好ましくは、前記スズ系触媒の含有量は0.001mol%~0.8mol%、0.005~0.5mol%、または0.01~0.3mol%であるか、0.001mol%以上、0.005mol%以上、または0.01mol%以上であるか、0.8mol%以下、0.5mol%以下、または0.3mol%以下であってもよい。
【0048】
前記重合は、80℃~100℃および8mbar~12mbarで110分~130分間反応を行った後、10-2torrの真空条件下で4時間~26時間反応を行うことができる。上記条件下で溶融重合される場合、副反応生成物の発生を抑制することができる。
【0049】
より具体的には、80℃~100℃および8mbar~12mbarで110分~130分間オリゴマー化反応が行われ、その後、10-2torrの真空条件下で4時間~26時間反応が行われ、化学式1の重合体を形成することができる。
【0050】
前記後行する重合は、オリゴマー化反応と同じ温度下で行うことができ、または100℃~120℃に昇温して行うことができる。
【0051】
好ましくは、約90±3℃および約10±1mbarで約120±5分間反応を行った後、同じ温度または約110±3℃に昇温して約10-2torrの真空条件下で反応を行うことができる。参考として、オリゴマー化後の反応は使用される多官能性単量体の含有量の範囲に応じて適切に調節することができ、過剰の多官能性単量体を使用する場合、反応時間が長くなりながら副反応で鎖移動(chain transfer)が起こり、ゲル化現象が発生することがあるので、24時間程度内で適切に調節して行うことができる。
【0052】
一方、必要に応じて重合前に前記3-ヒドロキシプロピオン酸、β-プロピオラクトンおよび多官能性単量体はそれぞれ独立して、重合前に30℃~100℃、30mbar~150mbarで前処理することができる。前記前処理段階により、3-ヒドロキシプロピオン酸および多官能性単量体に存在する水分を除去することができる。
【0053】
(分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体)
また、本発明の他の一実施形態によれば、上述した化学式1で表される分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体構造を含む分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)共重合体を提供する。
【0054】
より具体的には、化学式1で表される分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体内部に含まれる末端官能基が共単量体を追加重合し、共重合体を形成することができる。
【0055】
前記末端官能基は、化学式1で表される分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体の製造時に使用される多官能性単量体、3-ヒドロキシプロピオン酸、β-プロピオラクトンに由来するもので、追加重合反応が可能な末端官能基(例えば、-OH、-COOH)を意味する。
【0056】
また、前記共重合される共単量体の種類は、上述した末端官能基と反応可能な単量体であれば特に限定されず、例えば、エステル系共単量体であり得る。具体的には、glycolate、lactic acid、hydroxybutyrate、hydroxyvalerate、hydroxypentanoate、hydroxyotanoate、ラクトン系化合物などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
前記共重合体の重合方法は、使用される共単量体の種類によって適切に選択することができ、当該分野における通常の重合方法を特に制限なく全て適用することができる。
【0058】
(物品)
また、本発明の他の一実施形態によれば、前記新規な分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体を含む物品を提供する。
【0059】
前記物品は、包装材、フィルム、不織布などが挙げられ、当該物品に適用され、伸び率特性に優れ、かつ脆性を改善することができる。
【発明の効果】
【0060】
上述のように、本発明に係る分枝型ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)重合体およびその製造方法は、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)の固有の物性を維持し、かつ優れた製造収率を実現する重合体を効果的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、本発明の実施形態を下記の実施例でより詳しく説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示したものに過ぎず、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【実施例
【0062】
<実施例および比較例>
実施例1
水に溶けている3-ヒドロキシプロピオン酸(3HP)およびグリセロールをRBFに入れて90℃、100torrで2時間水分を乾燥した。
【0063】
反応器に乾燥された3-ヒドロキシプロピオン酸(3HP)70gとグリセロール7.156g(3HPに対して10mol%)を入れて、触媒としてp-TSA295.6mg(3HPに対して0.2mol%)を使用して90℃で10mbarで2時間オリゴマー化反応を行った。0.1torrの真空度で助触媒としてSn(Oct) 157.4mg(3HPに対して0.05mol%)を投入しながら(t=5)5時間さらに重合反応を行い、分枝型共重合体を製造した。
【0064】
実施例2
実施例1でオリゴマー化反応を含む総重合時間を10時間行ったことを除いては、同様の方法で分枝型共重合体を製造した。
【0065】
実施例3~5
実施例1でグリセロールの含有量をそれぞれ3HPに対して5mol%で使用し、オリゴマー化反応を含む総重合時間を7時間(実施例3)、10時間(実施例4)、22時間(実施例5)行ったことを除いては、同様の方法で分枝型共重合体を製造した。
【0066】
実施例6~8
実施例1でグリセロールの含有量をそれぞれ3HPに対して1mol%で使用し、オリゴマー化反応を含む総重合時間を7時間(実施例6)、10時間(実施例7)、20時間(実施例8)行ったことを除いては、同様の方法で分枝型共重合体を製造した。
【0067】
実施例9~11
実施例1でグリセロールの含有量をそれぞれ3HPに対して0.5mol%で使用し、オリゴマー化反応を含む総重合時間を7時間(実施例9)、10時間(実施例10)、24時間(実施例11)行ったことを除いては、同様の方法で分枝型共重合体を製造した。
【0068】
比較例1
水に溶けている3-ヒドロキシプロピオン酸(3HP)をRBFに入れて90℃、100torrで2時間水分を乾燥した。
【0069】
反応器に乾燥された3-ヒドロキシプロピオン酸(3HP)60gを入れて、触媒としてp-TSA295.6mg(3HPに対して0.2mol%)を使用して90℃で10mbarで2時間オリゴマー化反応を行った。0.1torrの真空度で助触媒としてSnCl(3HPに対して0.05mol%)を投入しながら(t=5)5時間さらに重合反応を行い、共重合体を製造した。
【0070】
比較例2および3
比較例1でオリゴマー化反応を含む総重合時間を10時間(比較例2)、24時間(比較例3)行ったことを除いては、同様の方法で共重合体を製造した。
【0071】
<実験例>
前記実施例および比較例で製造した共重合体に対して、下記のようにその特性を評価した。
【0072】
1)GPC(gelpermeation chromatography)分子量の評価
前記実施例および比較例で製造される各段階別共重合体に対して、Water e2695モデルの装置およびAgilent Plgel mixed cとb columを使用して分子量を評価した。サンプルを4mg/mlでchloroformを溶媒として準備して20ul注入した。測定されたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography、Tosoh ECO SEC Elite)で重量平均分子量、数平均分子量、多分散指数を測定し、その結果を下記表1に示す。
溶媒:chloroform(eluent)
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
Standard:Polystyrene(3次関数で補正)
【表1】
【0073】
2)DSC(differential scanning calorimetry)熱的特性評価
前記実施例および比較例で製造される各段階別共重合体に対して、TA DSC250モデルの装置を用いて窒素ガスフロー状態で熱的特性(Tg、Tm、cold crystallization(2nd heatingの結果)、Tc(1st coolingの結果))を測定し、その結果を下記表2に示す。
40℃~190℃まで10℃/minで昇温(1s theating)/190℃で10分間温度維持
190℃~-60℃まで10℃/minで冷却(1st cooling)/-60℃で10分間温度維持
-60℃~190℃まで10℃/minで昇温(2nd heating)
【表2】
【0074】
一般に、結晶速度が速いとTcのエンタルピーが大きくcold crystallizationが少ないか、無く、結晶化度が高いほどTmのエンタルピーが大きくなることがある。また、結晶化度が高ければ物質の強度が高くなるが、壊れやすく(brittle)、弾性がないが、本発明のようにBranch構造の場合、結晶化度を下げ、壊れやすい(Brittle)特性を下げることができることを確認することができた。
【0075】
より具体的には、前記表1および表2で確認できるように、同じ分子量の範囲(比較例1、実施例3、実施例6)で、Brancherの含有量が増加するほど、cold crystallizationが観察され、Tcの温度およびエンタルピー値が減少する傾向を示すことを確認することができた。これにより、Tmのエンタルピー値が低くなることを確認することができた。
【0076】
実施例3~5のようにBrancherを5mol%で含むとき、最も優れた効果を示すことを確認することができた。但し、Brancherが過剰に含まれる場合、結晶性を観察しにくくなり、少量で含まれる場合、Linearと同様の熱特性を示し、目的とする期待効果を実現しにくいこともある。
【国際調査報告】