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特表2024-518160パススルーインカプラを有する導波管結合器
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  • 特表-パススルーインカプラを有する導波管結合器 図1
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  • 特表-パススルーインカプラを有する導波管結合器 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-25
(54)【発明の名称】パススルーインカプラを有する導波管結合器
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568051
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 US2022028158
(87)【国際公開番号】W WO2022236113
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/185,543
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】メッサー, ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】バルガヴァ, サマース
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199CA12
2H199CA50
2H199CA55
2H199CA67
2H199CA69
2H199CA86
(57)【要約】
パススルーインカプラ格子を有する導波管結合器が、本明細書において説明される。導波管結合器は、少なくとも1つのマイクロディスプレイと、少なくとも2つの導波路層のスタックとを含む。本明細書において説明される導波管結合器の1つの構成において、緑FOVおよび青FOVは、単に第1の導波管内で伝搬し、赤FOVは、単に第2の導波管内で伝搬する。本明細書において説明される導波管結合器の別の構成において、青FOV、赤FOV、および緑FOVは、単に第1の導波管、第2の導波管、および、第3の導波管それぞれ内で伝搬する。導波路層のスタックを含む導波管結合器は、第1のマイクロディスプレイ、および、一部の実施形態において、第2のマイクロディスプレイからの重ね合わされたイメージの、輝度不均一性、色不均一性、ダブルイメージ、および、他の不均一性を低減する。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤瞳、緑瞳、および青瞳を投射するように動作可能なマイクロディスプレイ、
導波路層のスタックであって、前記導波路層の各々はインカプラ格子およびアウトカプラ格子を有し、前記導波路層のスタックは、
第1の導波路層であって、緑チャネルおよび青チャネルを前記第1の導波路層内へとインカップリングし、赤チャネルがパススルーすることを可能とするように動作可能であり、その結果、前記緑チャネルの緑視野(FOV)、および、前記青チャネルの青FOVが、単に前記第1の導波路層からアウトカップリングされ、前記赤チャネルは、単に第2の導波路層によりインカップリングされる、第1の導波路層と、
前記赤チャネルをインカップリングするように動作可能であり、その結果、前記赤チャネルの赤FOVが、単に前記第2の導波路層からアウトカップリングされる、前記第2の導波路層と
を含む、導波路層のスタック
を含む光学的拡張現実システム。
【請求項2】
前記第1の導波路層の前記インカプラ格子は、周期(ΛIC)を有する複数の第1の構造を含み、前記複数の第1の構造は、前記緑チャネルおよび前記青チャネルを前記第1の導波路層内へとインカップリングし、前記赤チャネルがパススルーすることを可能とするように動作可能であり、その結果、前記赤FOVは、単に前記第2の導波路層からアウトカップリングされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ΛICは、前記ΛICについての式の系を解くことにより選択され、前記式の系は、
を含み、式中、λ、λ、λは、赤チャネルピーク波長、緑チャネルピーク波長、および青チャネル波長に対応し、nは、前記第1の導波路層および前記第2の導波路層の屈折率であり、kFoVは、インカプラ格子ベクトル方向に沿ったk空間内のFOVの大きさであり、kmidは、前記インカプラ格子ベクトル方向に沿ったk空間距離である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
パススルーフィルタが、前記第1の導波路層と前記第2の導波路層との間に配され、または、前記第2の導波路層の下側表面に結合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
赤瞳、緑瞳、および青瞳を投射するように動作可能なマイクロディスプレイ、
導波路層のスタックであって、前記導波路層の各々はインカプラ格子およびアウトカプラ格子を有し、前記導波路層のスタックは、
第1の導波路層であって、緑チャネルおよび青チャネルを前記第1の導波路層内へとインカップリングし、赤チャネルがパススルーすることを可能とするように動作可能であり、その結果、前記緑チャネルの緑視界(FOV)、および、前記青チャネルの青FOVが、単に前記第1の導波路層からアウトカップリングされ、前記赤チャネルは、単に第2の導波路層によりインカップリングされる、第1の導波路層と、
前記赤チャネルをインカップリングするように動作可能であり、その結果、前記赤チャネルの赤FOVが、単に前記第2の導波路層からアウトカップリングされる、前記第2の導波路層と、
前記第1の導波路層と前記第2の導波路層との間に配される、または、前記第2の導波路層の下側表面に結合される、パススルーフィルタと
を含む、導波路層のスタック
を含む光学的拡張現実システム。
【請求項6】
赤瞳、緑瞳、および青瞳のうちの1つまたは複数を投射するように動作可能な少なくとも1つのマイクロディスプレイ、
導波路層のスタックであって、前記導波路層の各々はインカプラ格子およびアウトカプラ格子を有し、前記導波路層のスタックは、
第1の導波路層であって、青チャネルを前記第1の導波路層内へとインカップリングし、赤チャネルがパススルーすることを可能とするように動作可能であり、その結果、前記青チャネルの青視界(FOV)が、単に前記第1の導波路層からアウトカップリングされ、前記赤チャネルは、単に第2の導波路層によりインカップリングされる、第1の導波路層と、
前記赤チャネルを前記第2の導波路層内へとインカップリングするように動作可能であり、結果として、前記赤チャネルの赤FOVが、単に前記第2の導波路層からアウトカップリングされる、前記第2の導波路層と、
第3の導波路層であって、緑チャネルを前記第3の導波路層内へとインカップリングするように動作可能であり、その結果、前記緑チャネルの緑FOVが、単に前記第3の導波路層からアウトカップリングされる、第3の導波路層と
を含む、導波路層のスタック
を含む光学的拡張現実システム。
【請求項7】
前記第1の導波路層の前記インカプラ格子は、周期(ΛIC)を有する複数の第1の構造を含み、前記複数の第1の構造は、前記青チャネルを前記第1の導波路層内へとインカップリングし、前記赤チャネルがパススルーすることを可能とするように動作可能であり、その結果、前記赤FOVは、単に前記第2の導波路層からアウトカップリングされる、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ΛICは、前記ΛICについての式の系を解くことにより選択され、前記式の系は、
を含み、式中、λおよびλは、赤チャネルピーク波長および青チャネル波長に対応し、nは、前記第1の導波路層および前記第2の導波路層の屈折率であり、kFoVは、インカプラ格子ベクトル方向に沿ったk空間内のFOVの大きさであり、kmidは、前記インカプラ格子ベクトル方向に沿ったk空間距離である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
パススルーフィルタが、前記第1の導波路層と前記第2の導波路層との間に配され、または、前記第2の導波路層の下側表面に結合される、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の導波路層は、前記第2の導波路層よりも、前記少なくとも1つのマイクロディスプレイの近くに配される、請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の導波路層は、前記第2の導波路層上に配され、前記第2の導波路層は、前記第3の導波路層上に配される、請求項6に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1の導波路層は、前記第3の導波路層上に配され、前記第3の導波路層は、前記第2の導波路層上に配される、請求項6に記載のシステム。
【請求項13】
前記第3の導波路層は、前記赤チャネルがパススルーすることを可能とするように動作可能であり、その結果、前記赤チャネルは、単に前記第2の導波路層によりインカップリングされる、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
パススルーフィルタが、前記第1の導波路層と前記第3の導波路層との、前記第3の導波路層と前記第2の導波路層との間に配され、または、前記第2の導波路層の下側表面に結合される、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記第3の導波路層は、前記第1の導波路層上に配され、前記第1の導波路層は、前記第2の導波路層上に配される、請求項6に記載のシステム。
【請求項16】
前記第3の導波路層は、前記青チャネルおよび前記赤チャネルが前記第1の導波路層にパススルーすることを可能とするように動作可能である、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
パススルーフィルタが、前記第1の導波路層と前記第2の導波路層との間に配され、または、前記第2の導波路層の下側表面に結合される、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、一般的には、拡張現実導波管結合器に関する。より詳しくは、本明細書において説明される実施形態は、パススルーインカプラグレーティングを有する導波管結合器に関する。
【背景技術】
【0002】
仮想現実は、一般的には、ユーザが、見かけの物理的存在を有する、コンピュータが生成したシミュレート環境であると考えられる。仮想現実体験は、3Dで生成され、実際の環境に取って代わる仮想現実環境を表示するためのレンズとしてニアアイディスプレイパネルを有する、眼鏡または他のウェアラブルディスプレイ装置などのヘッドマウントディスプレイ(HMD)で見ることができる。
【0003】
しかしながら、拡張現実によって、ユーザが、眼鏡または他のHMD装置のディスプレイレンズを通して取り巻く環境を見ることができるが、表示のために生成され、環境の一部分として現れる仮想物体のイメージも見ることができる、体験が可能になる。拡張現実は、ユーザが体験する環境を強化または拡張する、音声および触覚入力、ならびに、仮想イメージ、グラフィックス、およびビデオなどの、任意の型の入力を含み得る。新興の技術として、拡張現実に関する多くの課題および設計制約が存在する。
【0004】
そのような課題の1つは、周囲環境上に仮想画像を重ね合わせて表示することである。導波管結合器が、画像を重ね合わせることを支援するために使用される。生成された光は、導波管結合器内へと入力結合され、増強された拡張導波管結合器を通して伝搬させられ、増強された拡張導波管結合器からアウトカップリングされ、周囲環境上に重ね合わされる。光は、表面レリーフ回折格子を使用して、増強された拡張導波管結合器内外へ結合される。
【0005】
導波管結合器は、光の赤、緑、および青チャネルが、重ね合わされたイメージにおいて表示されるように、導波路層のスタックを含むことがある。重ね合わされたイメージは、導波路層のスタックの、少なくとも2つの導波路層内で伝搬する、赤視野(FOV)、緑FOV、または青FOVのうちの少なくとも1つを含むことがある。導波路層のスタックの、少なくとも2つの層内での、少なくとも1つのFOVの伝搬によって、重ね合わされたイメージの、輝度不均一性、色不均一性、ダブルイメージ、および、他の不均一性のうちの1つまたは複数が結果的に生じることがある。
【0006】
したがって、当技術分野において必要とされるものは、パススルーインカプラグレーティングを有する導波管結合器である。
【発明の概要】
【0007】
1つの実施形態において、装置が提供される。装置は、赤瞳、緑瞳、および青瞳を投射するように動作可能なマイクロディスプレイと、導波路層のスタックであって、導波路層の各々はインカプラ格子およびアウトカプラ格子を有する、導波路層のスタックとを含む。導波路層のスタックは、第1の導波路層であって、緑チャネルおよび青チャネルをその第1の導波路層内へとインカップリングし、赤チャネルがパススルーすることを可能とするように動作可能であり、その結果、緑チャネルの緑視野(FOV)、および、青チャネルの青FOVが、単にその第1の導波路層からアウトカップリングされ、赤チャネルは、単に第2の導波路層によりインカップリングされる、第1の導波路層と、赤チャネルをインカップリングするように動作可能であり、その結果、赤チャネルの赤FOVが、単に第2の導波路層からアウトカップリングされる、第2の導波路層とを含む。
【0008】
別の実施形態において、装置が提供される。装置は、赤瞳、緑瞳、および青瞳を投射するように動作可能なマイクロディスプレイと、導波路層のスタックであって、導波路層の各々はインカプラ格子およびアウトカプラ格子を有する、導波路層のスタックとを含む。導波路層のスタックは、第1の導波路層であって、緑チャネルおよび青チャネルをその第1の導波路層内へとインカップリングし、赤チャネルがパススルーすることを可能とするように動作可能であり、その結果、緑チャネルの緑視野(FOV)、および、青チャネルの青FOVが、単にその第1の導波路層からアウトカップリングされ、赤チャネルは、単に第2の導波路層によりインカップリングされる、第1の導波路層と、赤チャネルをインカップリングするように動作可能であり、その結果、赤チャネルの赤FOVが、単に第2の導波路層からアウトカップリングされる、第2の導波路層と、第1の導波路層と第2の導波路層との間に配される、または、第2の導波路層の下側表面に結合される、パススルーフィルタとを含む。
【0009】
さらに別の実施形態において、装置が提供される。装置は、赤瞳、緑瞳、および青瞳のうちの1つまたは複数を投射するように動作可能な少なくとも1つのマイクロディスプレイ、導波路層のスタックであって、導波路層の各々はインカプラ格子およびアウトカプラ格子を有する、導波路層のスタックを含む。導波路層のスタックは、第1の導波路層であって、青チャネルをその第1の導波路層内へとインカップリングし、赤チャネルがパススルーすることを可能とするように動作可能であり、その結果、青チャネルの青視野(FOV)が、単にその第1の導波路層からアウトカップリングされ、赤チャネルは、単に第2の導波路層によりインカップリングされる、第1の導波路層と、赤チャネルを第2の導波路層内へとインカップリングするように動作可能であり、その結果、赤チャネルの赤FOVが、単に第2の導波路層からアウトカップリングされる、第2の導波路層と、第3の導波路層であって、緑チャネルをその第3の導波路層内へとインカップリングするように動作可能であり、その結果、緑チャネルの緑FOVが、単にその第3の導波路層からアウトカップリングされる、第3の導波路層とを含む。
【0010】
本開示の上記の特徴を詳説した様式が、詳細に理解され得るように、上記で簡潔に約言された、本開示のより個別の説明が、実施形態への参照によりなされることがあり、それらの実施形態のうちの一部は、添付される図面において例示される。しかしながら、添付される図面は、単に例示的な実施形態を例示し、それゆえに、本開示の範囲について制限的と考えられるべきではなく、他の等しく効果的な実施形態を認めることがあるということが留意されるべきである。
【0011】
本開示は、カラーで制作された少なくとも1つの図面を内包する。カラー図面を伴う本開示のコピーは、要求、および、必要な料金の支払を基に、米国特許商標庁に提供されることになる。カラー図面は、EFS-ウエブを介して電子的にファイリングされているので、図面の1つのセットのみが提出される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態による導波路層の全体像正面図である。
図2】実施形態による導波管結合器の概略断面図である。
図3】実施形態による導波管結合器の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
理解を容易にするために、同一の参照番号が、可能な場合、図に共通である同一の要素を指定するために使用されている。1つの実施形態の要素および特徴は、さらなる詳説なしに、他の実施形態に有益に組み込まれ得ることが企図される。
【0014】
本明細書において説明される実施形態は、パススルーインカプラ格子を有する導波管結合器に関する。導波管結合器は、少なくとも1つのマイクロディスプレイと、少なくとも2つの導波路層のスタックとを含む。各導波路層は、インカプラ格子およびアウトカプラ格子を含む。
【0015】
図1は、導波路層100の正面図である。下記で説明される導波路層100は、例示的な導波路層100であり、他の導波路層が、本開示の態様によって使用され得、または、本開示の態様を成し遂げるために変更され得ることが理解されるべきである。
【0016】
導波路層100は、複数の第1の構造108により画定されるインカプラ格子102と、複数の第2の構造110により画定される瞳拡大格子104と、複数の第3の構造112により画定されるアウトカプラ格子106とを含む。インカプラ格子102は、マイクロディスプレイから、所定の強度を有する光の入射ビーム(仮想イメージ)を受け取る。インカプラ格子102の各第1の構造108は、入射ビームを複数のモードへと分割し、各ビームは、モードを有する。0次モード(T0)ビームは、戻るように屈折させられ、または、導波路層100内で失われ、正の1次モード(T1)ビームは、導波路層100を通って瞳拡大格子104に結合され、負の1次モード(T-1)ビームは、T1ビームと反対の方向において導波路層100内で伝搬する。理想的には、入射ビームは、仮想イメージを瞳拡大格子104に指向するために、入射ビームの強度のすべてを有するT1ビームへと分割される。T1ビームは、T1ビームが瞳拡大格子104の複数の第2の構造110とコンタクトするまで、導波路層100を通って全内部反射(TIR)を受ける。
【0017】
T1ビームは、(1)導波路層100内で、戻るように屈折させられる、または、導波路層失われるT0ビーム、(2)T1ビームであって、T1ビームが複数の第2の構造110のうちの別の第2の構造とコンタクトするまで、瞳拡大格子104内でTIRを受ける、T1ビーム、および、(3)導波路層100を通してアウトカプラ格子106に結合されるT-1ビームへと分割する。瞳拡大格子104内でTIRを受けるT1ビームは、導波路層100を通して瞳拡大格子104に結合されるT1ビームの強度が激減するか、または、瞳拡大格子104を通って伝搬する残存するT1ビームが瞳拡大格子104の端に達するまで、第2の構造110とコンタクトし続ける。複数の第2の構造110は、導波路層100を介して瞳拡大回折格子104に結合されるT1ビームを制御して、アウトカプラ回折格子106に結合されるT1ビームの強度を制御し、マイクロディスプレイから生成される仮想画像のFOVをユーザの視点から変調し、加えて、ユーザが仮想画像を見ることができる視野角を拡大するように、調整されなければならない。
【0018】
導波路層100を通してアウトカプラ格子106に結合されるT-1ビームは、T-1ビームが複数の第3の構造112のうちの所定の第3の構造112とコンタクトするまで、導波路層100内でTIRを受け、その所定の第3の構造112において、T-1ビームは、(1)戻るように屈折させられる、または、導波路層100内で失われるT0ビーム、(2)T1ビームであって、T1ビームが複数の第3の構造112のうちの別の第3の構造112とコンタクトするまで、アウトカプラ格子106内でTIRを受ける、T1ビーム、および、(3)導波路層100の外に結合されるT-1ビームへと分割される。アウトカプラ格子106内でTIRを受けるT1ビームは、導波路層100を通してアウトカプラ格子106に結合されるT-1ビームの強度が激減するか、または、アウトカプラ格子106を通って伝搬する残存するT1ビームがアウトカプラ格子106の端に達するまで、複数の第3の構造112のうちの第3の構造112とコンタクトし続ける。アウトカプラ格子106の複数の第3の構造112は、マイクロディスプレイから生成される仮想画像のFOVをユーザの視点からさらに変調し、そして、ユーザが仮想画像を見ることができる視野角をさらに拡大する。。
【0019】
図2Aは、導波管結合器200Aの概略断面図である。図2Bは、導波管結合器200Bの概略断面図である。導波管結合器200A、200Bは、1つのマイクロディスプレイ201と、第1の導波路層204および第2の導波路層206のスタック202A、202Bとを含む。マイクロディスプレイ201は、赤瞳、緑瞳、および青瞳を、第1の導波路層204のインカプラ格子102Aに投射するように動作可能である。第1の導波路層204および第2の導波路層206は、少なくとも、インカプラ格子102と、アウトカプラ格子106などのアウトカプラ格子とを含む。本明細書において説明される他の実施形態と組み合わされ得る、一部の実施形態において、第1の導波路層204または第2の導波路層206のうちの少なくとも1つは、瞳拡大格子104などの瞳拡大格子を含む。
【0020】
インカプラ格子102Aは、パススルーインカプラ格子である。インカプラ格子102Aは、第1の構造108などの複数の第1の構造を含む。インカプラ格子102Aの複数の第1の構造は、緑チャネル205および青チャネル207を第1の導波路層204内へとインカップリングし、赤チャネル203が第1の導波路層204をパススルーすることを可能とするように動作可能である。緑チャネル205および青チャネル207は、第1の導波路層204を通ってTIRを受け、緑FOVおよび青FOVとしてアウトカップリングされる。インカプラ格子102Bの複数の第1の構造は、赤チャネル203を第2の導波路層206内へとインカップリングするように動作可能である。赤チャネル203は、第2の導波路層206を通ってTIRを受け、赤FOVとしてアウトカップリングされる。
【0021】
スタック202Bは、赤パスフィルタ208をさらに含む。本明細書において説明される他の実施形態と組み合わされ得る、1つの実施形態において、赤パスフィルタ208は、第1の導波路層204と第2の導波路層206との間に配される。本明細書において説明される他の実施形態と組み合わされ得る、別の実施形態において、赤パスフィルタ208は、第2の導波路層206の下側に結合される。赤パスフィルタ208は、緑チャネルおよび青チャネル吸収性であり、一方で、赤チャネル203がインカプラ格子102Bにパススルーすることを可能とする。
【0022】
インカプラ格子102Aは、複数の第1の構造が周期(ΛIC)を有するように構成される。ΛICによって、緑チャネル205および青チャネル207が、第1の導波路層204にインカップリングされ、第1の導波路層204を通って伝搬することが可能になり、赤チャネル203がパススルーすることが可能になる。インカプラ格子102AのΛICによって、赤チャネル203がパススルーすることが可能となり、その結果、赤チャネル203は、第2の導波路層206内にインカップリングされ、第2の導波路層206を通して伝搬させられる。すなわち、赤チャネル203は、第1の導波路層204内で回折させられない。ΛICを決定するために、λ、λ、λ(赤チャネルピーク波長、緑チャネルピーク波長、および青チャネル波長)、n(第1の導波路層204および第2の導波路層206の基板の屈折率)、kFoV(インカプラ格子ベクトル方向に沿ったk空間内のFOVの大きさ)、およびkmid(入力FOVの傾きを説明する、原点からFoVの中心までのインカプラ格子ベクトル方向に沿ったk空間距離)に基づいて、3つの式の系が解かれる。
【0023】
第1の式は、
であり、第2の式は、
であり、第3の式は、
である。ΛICについて解き、インカプラ格子102Aを有することによって、アウトカップリングされる緑FOV、および、アウトカップリングされる青FOVが、第1の導波路層204からの緑チャネル205および青チャネル207のものであり、アウトカップリングされる赤FOVが、第2の導波路層206からのものであるということが確実になる。赤パスフィルタ208は、残留緑および青光を吸収し、その結果、緑FOVおよび青FOVは、単に第1の導波路層204内で伝搬する。導波管結合器200A、200Bは、単に第1の導波路層204内で伝搬する緑FOVおよび青FOVと、単に第2の導波路層206内で伝搬する赤FOVとを含む。スタック202A、202Bを有する導波管結合器200A、200Bは、1つのマイクロディスプレイ201からの重ね合わされたイメージの、輝度不均一性、色不均一性、ダブルイメージ、および、他の不均一性を低減する。
【0024】
表1は、導波管結合器200A、200Bの構成に基づく、潜在的なΛICを示す。
【0025】
図3Aは、導波管結合器300Aの概略断面図である。図3Bは、導波管結合器300Bの概略断面図である。導波管結合器300A、300Bは、少なくとも1つのマイクロディスプレイ301と、第1の導波路層304、第2の導波路層306、および、第3の導波路層308のスタック302A、302Bとを含む。少なくとも1つのマイクロディスプレイ301は、緑瞳を、第1の導波路層304および第2の導波路層306を通して、ならびに、第3の導波路層308のインカプラ格子102Cに投射するように動作可能である。マイクロディスプレイ301は、赤瞳および青瞳を、第1の導波路層304のインカプラ格子102Aに投射するように動作可能である。本明細書において説明される他の実施形態と組み合わされ得る、一部の実施形態において、第1のマイクロディスプレイは、緑瞳を投射するように動作可能であり、第2のマイクロディスプレイは、赤瞳および青瞳を投射するように動作可能である。第1の導波路層304、第2の導波路層306、および、第3の導波路層308は、少なくとも、インカプラ格子102と、アウトカプラ格子106などのアウトカプラ格子とを含む。本明細書において説明される他の実施形態と組み合わされ得る、一部の実施形態において、第1の導波路層304、第2の導波路層306、および、第3の導波路層308のうちの少なくとも1つは、瞳拡大格子104などの瞳拡大格子を含む。
【0026】
インカプラ格子102Aは、パススルーインカプラ格子である。インカプラ格子102Aは、第1の構造108などの複数の第1の構造を含む。インカプラ格子102Aの複数の第1の構造は、青チャネル207を第1の導波路層304内へとインカップリングし、赤チャネル203が第1の導波路層304をパススルーすることを可能とするように動作可能である。青チャネル207は、第1の導波路層304を介してTIRを受け、導波路層青FOVとしてアウトカップリングされる。インカプラ格子102Bの複数の第1の構造は、赤チャネル203を第2の導波路層306内へとインカップリングするように動作可能である。赤チャネル203は、第2の導波路層306を通ってTIRを受け、赤FOVとしてアウトカップリングされる。インカプラ格子102Cの複数の第1の構造は、緑チャネル205を第3の導波路層308内へとインカップリングするように動作可能である。緑チャネル205は、第2の導波路層308を通ってTIRを受け、緑FOVとしてアウトカップリングされる。
【0027】
図3Aおよび図3Bのスタック302A、302Bは、第1の導波路層304が、第2の導波路層306の上方に配され、第2の導波路層306が、第3の導波路層308の上方に配される様態で描写されるが、一部の実施形態において、第3の導波路層308は、第1の導波路層304と第2の導波路層306との間に配されることがあり、他の実施形態において、第3の導波路層308は、第2の導波路層306の上方に配される第1の導波路層304の上方に配される。スタック302A、302B内の層は、青チャネル207をインカップリングするように動作可能な第1の導波路層304が、赤チャネル203をインカップリングするように動作可能な第2の導波路層よりも、マイクロディスプレイ301に近いように整えられる。
【0028】
スタック302Bは、赤パスフィルタ310をさらに含む。本明細書において説明される他の実施形態と組み合わされ得る、1つの実施形態において、赤パスフィルタ310は、第1の導波路層304と第2の導波路層306との間に配され、または、第2の導波路層306の下側に結合される。赤パスフィルタ310は、青チャネル吸収性であり、一方で、赤チャネル203がインカプラ格子102Bにパススルーすることを可能とする。
【0029】
インカプラ格子102Aは、複数の第1の構造が周期(ΛIC)を有するように構成される。ΛICによって、青チャネル207が、第1の導波路層304にインカップリングされ、第1の導波路層204を通って伝搬することが可能になり、赤チャネル203がパススルーすることが可能になる。インカプラ格子102AのΛICによって、赤チャネル203がパススルーすることが可能となり、その結果、赤チャネル203は、第2の導波路層306内にインカップリングされ、第2の導波路層306を通して伝搬させられる。すなわち、赤チャネル203は、第1の導波路層304内で回折させられない。ΛICを決定するために、λおよびλ(赤チャネルピーク波長および青チャネル波長)、n(第1の導波路層304および第2の導波路層306の基板の屈折率)、kFoV(インカプラ格子ベクトル方向に沿ったk空間内のFOVの大きさ)、ならびにkmid(入力FOVの傾きを説明する、原点からFoVの中心までのインカプラ格子ベクトル方向に沿ったk空間距離)に基づく、3つの式の系が解かれる。
【0030】
第1の式は、
であり、第2の式は、
であり、第3の式は、
である。ΛICについて解き、インカプラ格子102Aを有することによって、アウトカップリングされる青FOVが、第1の導波路層304からのものであり、アウトカップリングされる赤FOVが、第2の導波路層306からのものであり、アウトカップリングされる緑FOVが、第3の導波路層308からのものであるということが確実になる。赤パスフィルタ310は、残留青光を吸収し、その結果、青FOVは、単に第1の導波路層304内で伝搬する。導波管コンバイナ300A、300Bは、単に第1の導波路層304、第2の導波路層306、および、第3の導波路層308それぞれ内で伝搬する、青FOV、赤FOV、および緑FOVを備えたものである。スタック302A、302Bを有する導波管コンバイナ300A、300Bは、マイクロディスプレイからの重ね合わされたイメージの、輝度不均一性、色不均一性、ダブルイメージ、および、他の不均一性を低減する。
【0031】
表2は、導波管結合器300A、300Bの構成に基づく、潜在的なΛICを示す。
【0032】
総括すると、パススルーインカプラ格子を有する導波管結合器が、本明細書において説明される。導波管結合器は、少なくとも1つのマイクロディスプレイと、少なくとも2つの導波路層のスタックとを含む。本明細書において説明される導波管結合器の1つの構成において、緑FOVおよび青FOVは、単に第1の導波管内で伝搬し、赤FOVは、単に第2の導波管内で伝搬する。本明細書において説明される導波管コンバイナの別の構成において、青FOV、赤FOV、および緑FOVは、単に第1の導波管、第2の導波管、および、第3の導波管それぞれ内で伝搬する。導波路層のスタックを含む導波管結合器は、第1のマイクロディスプレイ、および、一部の実施形態において、第2のマイクロディスプレイからの重ね合わされたイメージの、輝度不均一性、色不均一性、ダブルイメージ、および、他の不均一性を低減する。
【0033】
前述は、本開示の例に向けられたものであるが、本開示の他の、およびさらなる例が、本開示の基本的な範囲から逸脱することなく考案されることがあり、本開示の範囲は、後に続く特許請求の範囲により決定される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
【国際調査報告】