(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】選択的堆積および抵抗率低減による完全整合ビアの集積化
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20240423BHJP
H01L 21/314 20060101ALI20240423BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20240423BHJP
C23C 16/04 20060101ALI20240423BHJP
C23C 16/26 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/314 M
H01L21/90 A
C23C16/04
C23C16/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562820
(86)(22)【出願日】2022-04-15
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 US2022071758
(87)【国際公開番号】W WO2022221881
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハウスマン・デニス・エム.
(72)【発明者】
【氏名】ラムナニ・パンカジ・ガンシャム
(72)【発明者】
【氏名】シャーマ・カシシュ
(72)【発明者】
【氏名】ルメール・ポール・シー.
(72)【発明者】
【氏名】マホロワラ・アーパン・プラヴィン
【テーマコード(参考)】
4K030
5F033
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
金属表面へのグラフェンの選択的堆積、および誘電体材料の堆積前の露出したバリア表面への抑制剤層の選択的堆積を使用して完全整合ビアを形成するための集積化スキームのための方法および装置が提供される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理するための方法であって、
半導体基板を準備することであり、前記半導体基板が、誘電体層中に形成された金属層、および前記金属層と前記誘電体層との間のバリア層を含み、前記金属層が露出した金属表面を有し、前記バリア層が露出したバリア表面を有する、半導体基板の準備と、
前記露出した金属表面上にグラフェンを選択的に堆積させることと、
前記露出した金属表面上にグラフェンを選択的に堆積させた後、前記露出したバリア表面上に抑制剤層を選択的に堆積させることと、
前記誘電体層上に誘電体材料を選択的に堆積させることと
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記誘電体材料が前記誘電体層上に選択的に堆積される前に、前記抑制剤層が前記露出したバリア表面上に選択的に堆積される、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記抑制剤層が誘電体材料である、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記抑制剤層が、アミド、ベータ-ジケトネートおよびハロゲン化物からなる群から選択される材料である、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記抑制剤層が炭化水素基を有する分子を含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記抑制剤層が有機金属堆積前駆体を使用して堆積される、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記抑制剤層が、アルコールおよびアミドからなる群から選択される反応物を使用して堆積される、方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法であって、前記バリア層が金属窒化物を含む、方法。
【請求項9】
半導体デバイスであって、
第1の誘電体層と、
前記第1の誘電体層を裏打ちするバリア層と、
前記第1の誘電体層中、前記バリア層上に形成された第1の金属層と、
前記第1の誘電体層に対して前記第1の金属層の上面に選択的に形成された選択的グラフェン膜と、
前記選択的グラフェン膜および前記第1の誘電体層に対して前記バリア層の上面に選択的に形成された選択的抑制剤層と、
前記第1の金属層および前記バリア層に対して前記第1の誘電体層の上面に選択的に形成された選択的誘電体層と
を含む、半導体デバイス。
【請求項10】
基板を処理するための装置であって、前記装置が、
1つまたは複数のプロセスチャンバであり、各プロセスチャンバがチャックを含む、プロセスチャンバと、
前記プロセスチャンバへの1つまたは複数のガス入口および関連する流量制御ハードウェアと、
少なくとも1つのプロセッサおよびメモリを有するコントローラと
を含み、前記少なくとも1つのプロセッサと前記メモリとが互いに通信可能に接続され、
前記少なくとも1つのプロセッサが少なくとも前記流量制御ハードウェアと動作可能に接続され、
前記メモリが、少なくとも前記流量制御ハードウェアを:
炭化水素前駆体を導入して、基板の露出した金属表面上にグラフェンを選択的に堆積させ、
有機金属堆積前駆体を導入して、前記基板の露出したバリア表面上に抑制剤層を選択的に堆積させ、
誘電体堆積前駆体を導入して、前記基板上の誘電体層上に誘電体材料を選択的に形成させる
ように制御するために、前記少なくとも1つのプロセッサを制御するためのコンピュータ実行可能命令を格納する、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
参照による組込み
PCT願書様式は、本願の一部として本明細書と同時に出願される。同時に出願されたPCT願書様式において特定されるように、本出願がその利益またはそれに対する優先権を主張する各出願は、参照によりその全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、原子が規則正しい六角形状で単原子シートに配列している炭素の同素体である。グラフェンは、数ある有利な特性の中でも、その高い導電性、高い熱伝導性、優れた機械的強度および靭性、光学的透明性、ならびに高い電子移動度のために多くの分野および産業で関心を集めている。グラフェンへの関心は半導体産業で高まっている。
【0003】
本明細書で提供される背景説明は、本開示の文脈を一般的に提示するためのものである。この背景セクションに記載される範囲における現在列挙されている発明者らの業績、およびそうでなければ出願時に先行技術とみなされない場合がある本明細書の態様は、本開示に対して明示的にも黙示的にも先行技術として認められない。
【発明の概要】
【0004】
一態様は、基板を処理するための方法であって、半導体基板を準備することであり、半導体基板が、誘電体層中に形成された金属層、および金属層と誘電体層との間のバリア層を含み、金属層が露出した金属表面を有し、バリア層が露出したバリア表面を有する、半導体基板の準備と、露出した金属表面上にグラフェンを選択的に堆積させることと、露出した金属表面上にグラフェンを選択的に堆積させた後、露出したバリア表面上に抑制剤層を選択的に堆積させることと、誘電体層上に誘電体材料を選択的に堆積させることとを含む、方法を含む。
【0005】
様々な実施形態では、抑制剤層は、誘電体材料が誘電体層上に選択的に堆積される前に、露出したバリア表面上に選択的に堆積される。
【0006】
様々な実施形態では、抑制剤層は誘電体材料である。
【0007】
様々な実施形態では、抑制剤層は、アミド、ベータ-ジケトネート、およびハロゲン化物のうちの1種または複数などの材料である。
【0008】
様々な実施形態では、抑制剤層は、炭化水素基を有する分子を含む。いくつかの実施形態では、炭化水素基は、アルカン、アルケンおよびアルキンのうちの1種または複数である。
【0009】
様々な実施形態では、抑制剤層は、有機金属堆積前駆体を使用して堆積される。
【0010】
様々な実施形態では、抑制剤層は、アルコールおよびアミドのうちの1種または複数などの反応物を使用して堆積される。
【0011】
様々な実施形態では、バリア層は金属窒化物を含む。いくつかの実施形態では、金属窒化物は、窒化チタン、窒化タングステン、および窒化タンタルのうちの1種または複数である。
【0012】
様々な実施形態では、抑制剤層は原子層堆積によって堆積される。
【0013】
様々な実施形態では、抑制剤層はプラズマフリー条件下で堆積される。
【0014】
様々な実施形態では、グラフェンの表面は、水素末端部位およびヒドロキシル末端部位を含まないか、または実質的に含まない。
【0015】
様々な実施形態では、誘電体材料が誘電体層上に選択的に堆積されるとき、グラフェンはグラフェン上への誘電体材料の堆積を抑制する。
【0016】
様々な実施形態では、抑制剤層は、誘電体材料が誘電体層上に選択的に堆積されるとき、バリア層上への誘電体材料の堆積を抑制する。
【0017】
様々な実施形態では、誘電体材料は金属酸化物を含む。いくつかの実施形態では、金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、またはそれらの組合せを含む。
【0018】
様々な実施形態では、誘電体材料は低k誘電体材料を含む。いくつかの実施形態では、方法はまた、低k誘電体材料およびグラフェン上に金属酸化物を堆積させることを含み、金属酸化物は、低k誘電体材料とは異なるエッチング選択性を有し、低k誘電体材料の厚さは、金属酸化物の厚さよりも少なくとも2倍大きい。
【0019】
様々な実施形態では、金属層は、銅、コバルト、ルテニウム、ニッケル、モリブデン、またはそれらの組合せを含む。
【0020】
様々な実施形態では、方法はまた、グラフェンを非直接プラズマに曝露してグラフェンの表面を改質して、改質表面を形成することと、熱ベースの堆積技術によってグラフェンの改質表面および誘電体材料上に金属酸化物を堆積させることとを含む。いくつかの実施形態では、金属酸化物の堆積は、原子層堆積(ALD)による酸化アルミニウムの堆積を含む。いくつかの実施形態では、非直接プラズマは、酸素、アンモニア、窒素、またはそれらの組合せのラジカルと混合された水素のラジカルを含む。
【0021】
様々な実施形態では、方法はまた、グラフェンを除去することと、露出した金属表面および誘電体材料上に金属酸化物を堆積させることとを含む。
【0022】
様々な実施形態では、方法はまた、グラフェンを除去することと、露出した金属表面および誘電体材料上に気密バリアを堆積させることとを含む。
【0023】
様々な実施形態では、露出した金属表面上にグラフェンを選択的に堆積させることは、1種または複数の炭化水素前駆体を反応チャンバ中および半導体基板に向かって流すことと、水素原料ガスから遠隔プラズマ源で水素のラジカルを発生させることと、水素のラジカルを反応チャンバ中および半導体基板に向かって導入することとを含み、水素のラジカルは、1種または複数の炭化水素前駆体と反応して、露出した金属表面上にグラフェンを堆積させる。
【0024】
別の態様は、第1の誘電体層、第1の誘電体層を裏打ちするバリア層、第1の誘電体層中、バリア層上に形成された第1の金属層、第1の誘電体層に対して第1の金属層の上面に選択的に形成された選択的グラフェン膜、選択的グラフェン膜および第1の誘電体層に対してバリア層の上面に選択的に形成された選択的抑制剤層、ならびに第1の金属層およびバリア層に対して第1の誘電体層の上面に選択的に形成された選択的誘電体層を有する半導体デバイスを含む。
【0025】
別の態様は、基板を処理するための装置であって、装置が、1つまたは複数のプロセスチャンバであり、各プロセスチャンバがチャックを含むプロセスチャンバ、プロセスチャンバへの1つまたは複数のガス入口および関連する流量制御ハードウェア、ならびに少なくとも1つのプロセッサおよびメモリを有するコントローラを含み、少なくとも1つのプロセッサおよびメモリが互いに通信可能に接続され、少なくとも1つのプロセッサが少なくとも流量制御ハードウェアと動作可能に接続され、メモリが、少なくとも流量制御ハードウェアを、炭化水素前駆体を導入して、基板の露出した金属表面上にグラフェンを選択的に堆積させ、有機金属堆積前駆体を導入して、基板の露出したバリア表面上に抑制剤層を選択的に堆積させ、誘電体堆積前駆体を導入して、基板上の誘電体層上に誘電体材料を選択的に形成させるように制御するために、少なくとも1つのプロセッサを制御するためのコンピュータ実行可能命令を格納する、装置を含む。様々な実施形態では、命令はまた、特定の方法に従って実施される上記の動作のいずれか1つまたは複数を引き起こすための命令を含む。
【0026】
これらおよび他の態様を、図面を参照して以下にさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】いくつかの実装形態に対する特定の開示された実施形態による基板スタックの断面概略図である。
【0028】
【
図2】特定の開示された実施形態によるデュアルダマシン構造の選択的グラフェン膜および選択的誘電体層を有する例示的な半導体デバイスの断面概略図である。
【0029】
【
図3A】金属表面に選択的グラフェンを有する基板上に誘電体を堆積させるプロセスの断面概略図である。
【
図3B】金属表面に選択的グラフェンを有する基板上に誘電体を堆積させるプロセスの断面概略図である。
【0030】
【
図4A】特定の開示された実施形態による、抑制剤としてグラフェンを使用する選択的堆積のプロセスの断面概略図である。
【
図4B】特定の開示された実施形態による、抑制剤としてグラフェンを使用する選択的堆積のプロセスの断面概略図である。
【
図4C】特定の開示された実施形態による、抑制剤としてグラフェンを使用する選択的堆積のプロセスの断面概略図である。
【
図4D】特定の開示された実施形態による、抑制剤としてグラフェンを使用する選択的堆積のプロセスの断面概略図である。
【
図4E】特定の開示された実施形態による、抑制剤としてグラフェンを使用する選択的堆積のプロセスの断面概略図である。
【0031】
【
図5】特定の開示された実施形態による、グラフェンを使用する選択的堆積の例示的な方法のフロー図をである。
【0032】
【
図6A】特定の開示された実施形態による、グラフェンと抑制剤を使用する選択的堆積のプロセスの断面概略図である。
【
図6B】特定の開示された実施形態による、グラフェンと抑制剤を使用する選択的堆積のプロセスの断面概略図である。
【
図6C】特定の開示された実施形態による、グラフェンと抑制剤を使用する選択的堆積のプロセスの断面概略図である。
【
図6D】特定の開示された実施形態による、グラフェンと抑制剤を使用する選択的堆積のプロセスの断面概略図である。
【0033】
【
図7】特定の開示された実施形態による、基板の金属表面上にグラフェンを堆積させる例示的な方法のフロー図である。
【0034】
【
図8】特定の開示された実施形態による、遠隔プラズマ源を有する例示的なプラズマ処理装置の概略図である。
【0035】
【
図9】開示された実施形態を実施するための例示的なプロセスチャンバの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の説明では、提示された実施形態の徹底的な理解を提供するために、多数の具体的な詳細を記載する。開示された実施形態は、これらの具体的な詳細の一部または全部なしで実施することができる。他の例では、周知のプロセス動作は、開示された実施形態を不必要に不明瞭にしないために、詳細に記載されていない。開示された実施形態を具体的な実施形態と併せて説明するが、開示された実施形態を限定するものではないことが理解される。
【0037】
本開示において、「半導体ウェハ」、「ウェハ」、「基板」、「ウェハ基板」、および「部分的に作製された集積回路」という用語は、互換的に使用される。当業者であれば、「部分的に作製された集積回路」という用語は、集積回路作製の多くの段階のいずれかにおけるシリコンウェハを指し得ることを理解する。半導体デバイス産業で使用されるウェハまたは基板は、典型的に200mm、または300mm、または450mmの直径を有する。以下の詳細な説明は、本開示がウェハ上で実装されることを前提としている。しかし、本開示はそのように限定されない。ワークピースは、様々な形状、サイズ、および材料のものであってもよい。半導体ウェハに加えて、本開示を利用することができる他のワークピースには、プリント回路板などの様々な物品が含まれる。
【0038】
半導体用途において、大面積のグラフェン膜を合成することへの関心が高まっている。しかし、グラフェンを十分な量で、半導体集積化に適した条件下で製造することに関して多くの課題がある。多くの製造方法は、欠陥を最小限に抑えてグラフェンを成長させることが困難であるため、表面被覆率が低いという問題がある。そのため、大面積のグラフェン膜、とりわけ半導体ウェハ上の大面積のグラフェン膜を製造するためのスケーラビリティが特に問題となる。さらに、グラフェン膜は、典型的に熱化学蒸着(CVD)によって成長する。熱CVD法は、一般に大面積で高品質のグラフェンの合成に有利である。しかし、グラフェンの熱CVDは高温で実施される場合があり、これは必ずしも半導体用途に適合するわけではない。このような高温下では、半導体ウェハ上の半導体および金属などの様々な材料が物理的に損傷する可能性がある。熱CVDプロセスには、ガス前駆体の活性化、および好適な基板上に安定した固体膜を形成するための化学反応という少なくとも2つの工程が含まれる。熱CVDでは、ガス前駆体の活性化は熱分解によって生じ得る。高温では、炭化水素前駆体が熱分解し、基板表面に吸着する。炭化水素ラジカルは化学的に反応性であり、基板表面と相互作用する可能性がある。基板表面は、グラフェンの核形成および成長の触媒として作用する金属表面であってもよい。いかなる理論にも制限されることなく、触媒金属表面は、炭素原子が他の炭素原子と結合し得るように炭化水素ラジカルを脱水素化し、それによりグラフェンの核形成および成長を促進することができる。銅などの様々な遷移金属が、グラフェンの核形成および成長のための触媒として認識されている。
【0039】
炭化水素種の活性化およびグラフェンの成長は、温度およびグラフェンを成長させる金属表面などの要因に依存し得る。さらに、グラフェンの成長は、金属表面の炭素溶解度に依存し得る。金属の炭素溶解度が高い場合、炭素はより容易に金属に溶解し、金属表面に沈殿しやすい。このため、一般にグラフェン層は均一でなくなり、複数の核形成部位および金属表面上の予測不可能な量の偏析炭素のために、微細構造の欠陥が多くなる。例えばニッケル基板は炭素溶解度が高く、典型的に低品質のグラフェンまたは無秩序な炭素の複数の層が生じる。金属の炭素溶解度が低い場合、炭素は金属中に溶解しにくく、その結果、金属表面の炭素原子が広範囲に表面移動し、バルク金属への拡散が最小限に抑えられる。これにより、一般にグラフェン層はより均一になり、成長がより制御されるため微細構造の欠陥がより少なくなる。例えば、銅基板は炭素溶解度が低く、高品質のグラフェンのエピタキシャル成長をもたらす。高品質グラフェンは、単層、二層、または数層のグラフェン膜として成長し得る。
【0040】
プラズマ化学蒸着(PECVD)は、グラフェンを堆積させる別の方法である。熱CVD法は炭化水素前駆体を熱分解によって活性化させるのに対し、PECVD法では、プラズマによって発生されたエネルギーが付与された電子が、炭化水素前駆体のイオン化、励起および解離を引き起こす。プラズマは、in-situまたは遠隔で形成され得る。炭化水素前駆体(例えば、メタン)をプラズマ中で活性化させ、基板をプラズマに曝露してもよい。プラズマは、高周波(RF)プラズマ源、マイクロ波(MW)プラズマ源、表面波(SW)プラズマ源、または遠隔プラズマ源を使用して発生させることができる。一例として、水素分子およびメタンガスを反応チャンバに導入してもよく、直接RFプラズマを点火して基板上のグラフェンの成長を促進してもよい。PECVDでは、一部のPECVD法におけるグラフェン成長は、熱CVD法に比べて低い温度で実施されてもよい。さらに、一部のPECVD法におけるグラフェン成長は、誘電体材料などの非金属基板上で達成されてもよい。言い換えれば、プラズマベースの方法は、金属触媒の非存在下でグラフェンを堆積させることができる。プラズマベースの方法は、より低温で、金属触媒の援助なしでグラフェンを堆積させることができる。
【0041】
図1は、いくつかの実装形態による、グラフェンがその上に堆積された金属表面を有する例示的な基板の断面概略図を示す。基板100は、任意のウェハ、半導体ウェハ、部分的に作製された集積回路、プリント回路板、ディスプレイスクリーン、または他の好適なワークピースであってもよい。いくつかの実装形態では、基板100は、シリコン(Si)基板などの半導体基板である。基板100は、金属表面101を含んでもよい。以下で考察されるように、金属表面101は感温下地層とも称され得る。いくつかの実装形態では、金属表面101は、遷移金属などの任意の好適な金属を含んでもよい。例えば、金属表面101は、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、またはそれらの組合せを含んでもよい。グラフェン膜102を金属表面101上に堆積させることができる。
【0042】
いくつかの実装形態では、基板100の金属表面101へのグラフェン膜102の堆積は、遠隔水素プラズマCVDによって達成することができる。いくつかの他の実装形態では、基板100の金属表面101へのグラフェン膜102の堆積は、熱CVDまたはPECVDなどの任意の好適な堆積技術を使用して達成することができる。遠隔水素プラズマCVD法は、配線工程(BEOL)半導体処理などの半導体処理に適合する低温でグラフェン膜102を堆積させることができる。いくつかの実装形態では、グラフェン膜102は、約200℃~約500℃、または約500℃未満、約450℃未満、約400℃未満、約350℃未満、約300℃未満、または約200℃~約400℃の温度で堆積させることができる。
【0043】
遠隔水素プラズマCVDを使用してグラフェン膜102を堆積させる場合、炭化水素前駆体を基板100の金属表面101に流し、炭化水素前駆体流の上流の遠隔プラズマ源で水素ラジカルを発生させる。水素ラジカルは炭化水素前駆体と相互作用して、遠隔プラズマ源から下流の炭化水素前駆体を活性化させ、活性化された炭化水素前駆体は、金属表面101と相互作用してグラフェン膜102を堆積させる。いくつかの実装形態では、炭化水素前駆体はアルケン基またはアルキン基を含む。
【0044】
本開示のいくつかの実装形態では、基板100は感温下地層101を含み得る。感温下地層101は、感温限界を有してもよい。感温下地層101の感温限界を超えると、感温下地層101は溶融するか、または別様に物理的に損傷する。感温下地層101の多くの材料では、感温限界は約400℃~約700℃であってもよい。一部の熱CVD法および一部の従来のプラズマベースのCVD法は、感温下地層101の感温限界を超える場合がある。感温下地層101の例としては、銅、コバルトおよびルテニウムなどの遷移金属を挙げることができる。いくつかの実装形態では、グラフェン膜102が感温下地層101上に堆積される。いくつかの実装形態では、グラフェン膜102は、感温下地層101を溶融させない、または別様に物理的損傷を与えない十分に低い温度で堆積される。基板100は、半導体ウェハまたは半導体ワークピースであってもよい。したがって、グラフェン膜102は、基板100上に大面積のグラフェン膜としてフルウェハレベルで堆積させることができる。
【0045】
いくつかの実装形態では、グラフェン膜102は、遠隔水素プラズマCVDを使用して堆積される。本明細書で使用する場合、文献における「遠隔」という用語は、一般にプラズマからの基板の遠隔性を指す場合がある。本明細書で使用される場合、「遠隔プラズマ」は、プラズマ発生が基板から離れた場所で起こるプラズマを指す場合がある。ここで、遠隔水素プラズマは、水素ラジカルを含有することができるが、炭素ラジカルを含有しない。代わりに、炭素ラジカルは遠隔プラズマ源から下流で発生する。これは、いくつかの実装形態の「遠隔プラズマ」において、前駆体ガスがプラズマ発生領域に導入されないことを意味する。炭化水素前駆体は独立して反応チャンバ中に流れ、遠隔プラズマ源から発生された水素ラジカルによって活性化される。さらに、炭素ラジカルはアルケンまたはアルキン基を含有する炭化水素前駆体から発生する。実際、アルカンである炭化水素前駆体(例えば、メタン)は、遠隔水素プラズマCVDを含む実装形態では堆積しない。遠隔水素プラズマCVD法を使用すると、グラフェンは金属表面に選択的に堆積する。グラフェンは、誘電体または他の非金属表面に堆積しない。グラフェンは、窒化タンタルなどのバリア材料に堆積しない。遠隔水素プラズマCVD法は、高品質のグラフェン膜を半導体用途に好適な低温で堆積させることができる例示的な方法である。例えば、高品質グラフェン膜は、ダマシンまたはデュアルダマシン構造のバリア層として機能し得る。さらに、高品質グラフェンは金属表面上部のキャッピング層として機能してもよく、それにより表面散乱を低減させることによって抵抗を低減させる。しかし、高品質グラフェン膜は、完全整合ビアの作製などの多数の産業用途に使用できることが理解される。
【0046】
半導体デバイスの作製は、完全整合ビアの形成を含む場合がある。グラフェンは、誘電体材料上に堆積することなく金属材料上に選択的に堆積することができるため、完全整合ビアの形成に特に有用であり得る。
【0047】
図2は、いくつかの実装形態による、デュアルダマシン構造のグラフェン膜および選択的誘電体層を有する例示的な半導体デバイスの断面概略図を示す。半導体デバイス200は、第1の誘電体層210、および第1の誘電体層210に形成された第1の金属層220Aを含む。半導体デバイス200は、第1の誘電体層210に形成された近隣の第1の金属層220Bをさらに含み得、ここで第1の金属層220Aは、近隣の第1の金属層220Bに接触することなく近隣の第1の金属層220Bに隣接する。第1の金属層220Aおよび近隣の第1の金属層220Bのそれぞれは、第1のバリア層222で裏打ちされる。第1のバリア層222は、第1の金属層220Aと第1の誘電体層210との間、および近隣の第1の金属層220Bと第1の誘電体層210との間の界面で、拡散バリア層および/または裏打ち層を提供し得る。
【0048】
いくつかの実装形態では、第1の金属層220Aおよび近隣の第1の金属層220Bのそれぞれは、銅、コバルト、ルテニウム、ニッケル、モリブデン、またはそれらの組合せを含む。例えば、第1の金属層220Aおよび近隣の第1の金属層220Bのそれぞれは、銅を含む。いくつかの実装形態では、第1の誘電体層210は、酸化ケイ素またはドープされた炭化ケイ素などの任意の好適な誘電体材料を含む。
【0049】
半導体デバイス200は、第1の金属層220Aの露出表面上に形成された選択的グラフェン膜232をさらに含む。選択的グラフェン膜232は、第1の誘電体層210に対して第1の金属層220A上に選択的に堆積される。いくつかの実装形態では、選択的グラフェン膜232は、近隣の第1の金属層220Bの露出表面上にも形成される。選択的グラフェン膜232は、約3Å~約20Åまたは約5Å~約10Åの厚さを有することができる。選択的グラフェン膜232は、1種または複数の炭化水素前駆体を半導体デバイス200に向けて流し、水素原料ガスから遠隔プラズマ源で水素のラジカルを発生し、水素のラジカルを半導体デバイス200に向けて導入することにより、第1の金属層220Aの上面に堆積され、ここで水素のラジカルは、1種または複数の炭化水素前駆体から上流に導入され、水素のラジカルは、少なくとも第1の金属層220Aに隣接する環境において1種または複数の炭化水素前駆体と反応して、選択的グラフェン膜232を堆積させる。1種または複数の炭化水素前駆体は、それぞれアルケンまたはアルキン基を含んでもよい。いくつかの例では、水素原料ガスは、約1%~約25%の水素または約1%~約10%の水素の濃度でヘリウムキャリア中に提供されてもよい。選択的グラフェン膜232は、低い堆積温度で堆積され、ここで低い堆積温度は、約200℃~約400℃、約250℃~約400℃、または約200℃~約300℃であってもよい。
【0050】
半導体デバイス200は、第1の誘電体層210の上面に形成された選択的誘電体層225をさらに含む。選択的誘電体層225は、第1の金属層220Aおよび近隣の第1の金属層220Bに対して第1の誘電体層210上に選択的に堆積される。選択的誘電体層225は、約1nm~約10nmの厚さを有することができる。いくつかの実装形態では、選択的誘電体層225は、酸窒化ケイ素、酸炭化ケイ素、または酸炭窒化ケイ素などの低k誘電体材料を含む。いくつかの実装形態では、選択的誘電体層225は、遠隔水素プラズマCVDなどの非直接プラズマ堆積技術を使用して第1の誘電体層210上に堆積される。
【0051】
いくつかの実装形態では、半導体デバイス200は、選択的誘電体層225および選択的グラフェン膜232の上にエッチングストップ層230をさらに含み、エッチングストップ層230は金属酸化物を含む。金属酸化物の例としては、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、またはこれらの組合せが挙げられる。いくつかの実装形態では、エッチングストップ層230は酸化アルミニウムを含む。エッチングストップ層230は、約5Å~約30Åの厚さを有してもよい。いくつかの実装形態では、エッチングストップ層230は、熱ALDまたは熱CVDなどの熱堆積技術を使用して選択的誘電体層225および選択的グラフェン膜232上に堆積される。
【0052】
半導体デバイス200は、エッチングストップ層230の上に第2の誘電体層240をさらに含んでもよい。第2の誘電体層240は、酸化ケイ素またはドープされた炭化ケイ素などの任意の好適な誘電体材料を含む。エッチングストップ層230は、第2の誘電体層240とは異なるエッチング選択性を有してもよい。例えば、エッチングストップ層230は、第2の誘電体層240に1つまたは複数の凹部が形成されたときに、第2の誘電体層240のエッチング抵抗の10倍以上のエッチング抵抗を有してもよい。これにより、第2の誘電体層240を通したエッチングは、選択的グラフェン膜232のエッチングをもたらさない。選択的誘電体層225は、エッチングストップ層230とは異なるエッチング選択性を有してもよい。
【0053】
第2の誘電体層240を通して凹部または開口部を形成し、導電性材料で充填して、ビア260およびビア260上に第2の金属層270を形成する。第2の金属層270は、第1の金属層220A上に位置付けられ、ビア260は、選択的グラフェン膜232と第2の金属層270との間に位置付けられる。ビア260は、第1の金属層220Aと第2の金属層270との間の電気的相互接続を提供する。ビア260および第2の金属層270は、第2のバリア層262で裏打ちされてもよい。第2のバリア層262は、ビア260と第2の誘電体層240との間、および近隣の第2の金属層270と第2の誘電体層240との間の界面で拡散バリア層および/または裏打ち層を提供し得る。いくつかの実装形態では、ビア260および第2の金属層270のそれぞれは、銅、コバルト、ルテニウム、ニッケル、モリブデン、またはそれらの組合せを含む。例えば、ビア260および第2の金属層270のそれぞれは、銅を含む。
【0054】
図2に示すように、選択的グラフェン膜232は、ビア260と第1の金属層220Aとの間の界面に位置付けられる。選択的グラフェン膜232は、選択的誘電体層225が第1の金属層220Aおよび近隣の第1の金属層220Bに対して第1の誘電体層210上に堆積するように、抑制剤として機能する。選択的グラフェン膜232は、選択的誘電体層225が堆積された後に除去されない。選択的グラフェン膜232は、電子散乱の低減によってビア260における電気抵抗を低下させる。選択的誘電体層225は、ビア260が完全整合ビアであることを保証し、選択的誘電体層225は、ビア260と近隣の第1の金属層220Bとの間に追加の間隔を提供する。
【0055】
図2に示すように、グラフェンを使用すると、ビア260は完全に整合される。しかし、グラフェンは非金属表面に対して金属上に選択的に堆積するため、選択的堆積の間、バリア層322の露出したバリア表面には、グラフェンがほとんどまたは全く堆積しない。いくつかの実施形態では、バリア材料は元素金属層ではない。バリア材料は金属含有であってもよい。バリア材料は遷移金属窒化物であってもよい。いくつかの実施形態では、バリア材料は金属窒化物材料である。例えば、バリア材料は窒化タンタルであってもよい。窒化タンタルは、ビアに銅、タンタル、またはルテニウム金属が充填される場合にバリアとして使用することができる。しかし、グラフェンは、窒化タンタルまたは他の遷移金属表面に選択的に堆積しない。したがって、選択的誘電体層325が堆積されると、
図3Bに示すように、ビアの特徴開口部上に「マッシュルーム化」効果が形成される。
図3Aは、バリア層322がビア内に形成され、金属層320がビア内に充填された例示的な誘電体層310を含む。選択的グラフェン膜332は、金属層320の露出表面に選択的に堆積されるが、グラフェンは露出表面322sに堆積されない。選択的グラフェン膜332は、露出表面322sと非平面を形成してもよい。マッシュルーム効果は、選択的グラフェン膜332が露出表面322sと平面を形成するか否かに関わらず生じる可能性があり、これは、露出表面322s上の誘電体材料には、選択的グラフェン膜332が堆積していないため、選択的誘電体層325が露出表面322s上に堆積し、それにより選択的グラフェン膜332とバリア層322との間の界面にマッシュルーム効果が依然として形成され得るためである。
図3Bにおいて選択的誘電体層325を誘電体層310上に堆積させると、矢印350で示される湾曲した「マッシュルーム」効果またはオーバーハングが特徴開口部上に形成される。オーバーハンドは、完全整合ビアの形成に適合しない。
【0056】
露出したバリア表面への誘電体材料の堆積を防止するために、いくつかの抑制剤堆積技術が使用されてもよいが、そのような堆積技術は、露出した金属にも抑制剤材料を堆積させる。
【0057】
本明細書で提供されるのは、金属表面へのグラフェンの堆積を集積化して、露出したバリア表面への堆積を抑制しながら誘電体材料に誘電体材料を選択的に堆積させる方法である。方法は、グラフェンを選択的に堆積させてから、露出したバリア材料に抑制剤を堆積させることと、その後、誘電体表面に選択的な誘電体材料を堆積させることにより、金属表面と露出したバリア表面の両方に対する選択性を達成することとを含む。
【0058】
本明細書の特定の実施形態は、グラフェンの選択的堆積を堆積させることを含む。グラフェンは、誘電体表面に対して金属表面に選択的に堆積してもよい。グラフェンは、誘電体表面への材料の選択的堆積を促進する一方、金属表面への堆積を抑制する抑制剤として作用する。グラフェン膜は、一般に高温で安定である。金属表面に堆積されたグラフェン膜は、電子散乱の低減によって金属線の実効抵抗率を低下させる可能性があるため、グラフェン膜は半導体集積化時に組み込まれてもよい。いくつかの実装形態では、グラフェン膜は、半導体製造用途で必ずしもその後除去する必要はない。しかし、いくつかの他の実装形態では、誘電体材料の選択的堆積後にグラフェンを除去してもよく、後続の堆積動作を任意の場所で行うことができる。
【0059】
図4Aは、金属層402に隣接する誘電体層404を含む例示的な半導体基板400の断面概略図を示す。いくつかの実装形態では、金属層402は、誘電体層404に形成されてもよく、誘電体層404は、ダマシンまたはデュアルダマシン構造の層間誘電体であってもよい。誘電体層404を通して凹部がエッチングされてもよく、凹部は、好適なリソグラフィプロセスを使用してパターニングおよび形成されてもよい。凹部は、金属層402を形成するために導電性材料で充填されてもよい。いくつかの実装形態では、金属層402は、銅、ルテニウム、アルミニウム、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデン、またはそれらの組合せを含む。拡散バリア層および/または裏打ち層が、金属層402と誘電体層404との間に裏打ちされてもよい。拡散バリア層は、誘電体層404への金属原子の拡散を制限することができる。金属層402と誘電体層404のそれぞれは、露出した上面を有する。
【0060】
図4Bは、
図4Aの半導体基板400の断面概略図を示しており、ここでグラフェン膜406が金属層402上に選択的に堆積される。グラフェン膜406は、誘電体層404上に形成、配置、または別様に位置付けられることなく、金属層402上に形成される。グラフェン膜406は高品質のグラフェンを含んでもよく、グラフェン膜406は、単層グラフェン膜、二層グラフェン膜、または数層グラフェン膜である。グラフェン膜406は、誘電体材料の堆積前駆体が核形成し得る欠陥部位を含まない場合がある。グラフェン膜406の導電特性は、電子散乱の低減により、ビア(図示せず)に電気的に接続された場合に金属層402の実効抵抗率を低下させる可能性がある。いくつかの実装形態では、グラフェン膜406は、上述のように、遠隔水素プラズマCVDプロセスを使用して堆積させることができる。いくつかの実装形態では、グラフェン膜406は、約200℃~約300℃の低い堆積温度で堆積させることができる。いくつかの実装形態では、グラフェン膜406は、約3Å~約20Åまたは約5Å~約10Åの厚さを有する。
【0061】
図4Cは、
図4Bの半導体基板400の断面概略図を示しており、ここで第1の誘電体材料408が誘電体層404上に選択的に堆積される。第1の誘電体材料408は、グラフェン膜406の上面に形成、配置、または別様に位置付けられることなく、誘電体層404上に堆積される。グラフェン膜406は、金属層402への第1の誘電体材料408の堆積を抑制する。いくつかの実装形態では、第1の誘電体材料408は、グラフェン膜406に対して非損傷性の方法で堆積させることができる。いくつかの実装形態では、第1の誘電体材料408は、酸化アルミニウムなどの金属酸化物を含んでもよく、金属酸化物はALDなどの熱ベースの堆積技術を使用して堆積させることができる。いくつかの実装形態では、金属酸化物は、約5Å~約60Åの厚さを有してもよい。第1の誘電体材料408は、エッチングストップ層として機能してもよい。いくつかの実装形態では、第1の誘電体材料408は、酸炭化ケイ素、酸窒化ケイ素、または酸炭窒化ケイ素などの低k誘電体材料を含んでもよく、低k誘電体材料は、遠隔水素プラズマCVDなどの非直接プラズマ堆積技術によって堆積させることができる。いくつかの実装形態では、低k誘電体材料は、約1nm~約10nmの厚さを有してもよい。第1の誘電体材料408は、完全に整合されたパターニングスキームにおいてスペーサ層として機能してもよい。
【0062】
図4Dは、
図4Cの半導体基板400の断面概略図を示しており、ここでグラフェン膜406は、グラフェン膜406の表面改質を引き起こす処理条件410に曝露される。グラフェン膜406の改質表面は、核形成のためのより多くの欠陥部位によって特徴付けられてもよく、欠陥部位は、水素末端部位および/またはヒドロキシル末端部位の欠陥部位を含んでもよい。いくつかの実装形態では、処理条件410は、遠隔水素プラズマなどの遠隔プラズマへの曝露を含み得る。遠隔プラズマは、追加的または代替的に、酸素、窒素、アンモニアまたはそれらの組合せを含み得る。いくつかの実装形態では、処理条件410は、1回または複数の堆積動作への曝露を含む。十分な堆積動作によって、グラフェン膜406の表面は最終的に機能化され、したがってグラフェン膜406上で核形成を行うことができる。いくつかの実装形態では、処理条件410は、グラフェン膜406を、グラフェン膜406の経時的な品質の劣化が十分に遅延するように曝露することを含む。このような処理条件410は、例えば、グラフェン膜406を空気遮断に長時間曝露することを含み得る。
図4Dには図示されないが、グラフェン膜406は、代替的に改質ではなく除去することができる。グラフェン膜406を除去すると、グラフェン膜406が抑制剤として機能することなく、半導体基板400上の任意の場所での後続の堆積を容易にすることができる。
【0063】
図4Eは、
図4Dの半導体基板400の断面概略図を示しており、グラフェン膜406および第1の誘電体材料408上に第2の誘電体材料412が堆積されている。グラフェン膜406は、
図4Dの処理条件410に従って堆積を促進するように調整されてもよい。いくつかの実装形態では、第2の誘電体材料412は、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、またはそれらの組合せなどの金属酸化物を含む。金属酸化物は、熱ALDなどの熱ベースの堆積技術によって堆積させることができる。金属酸化物はエッチングストップ層として機能してもよい。いくつかの実装形態では、第2の誘電体材料412は、酸炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、または酸炭窒化ケイ素などの気密バリアを含む。気密バリアは、遠隔水素プラズマCVDなどの非直接プラズマ堆積技術によって堆積させることができる。気密バリアは、グラフェン膜406を封止し、保護するように機能してもよい。グラフェン膜406が除去される実装形態では、第2の誘電体材料412は、任意の好適な堆積技術を使用して堆積させることができることが理解される。第2の誘電体材料412は、金属層402および第1の誘電体材料408の上に堆積させることができる。
【0064】
図5は、いくつかの実装形態による、バリア層の露出表面上にグラフェンおよび抑制剤層を使用する選択的堆積の例示的な方法のフロー図を示す。プロセス500の動作は、異なる順序および/または異なる、より少ない、もしくは追加の動作で実施されてもよい。プロセス500の動作は、グラフェンが金属上の抑制剤として使用され、誘電体材料が露出したバリア表面上の抑制剤層として使用される、
図6A~6Dの選択的堆積の例示的プロセスを参照して説明される。プロセス500の1つまたは複数の動作は、
図2に示されるプラズマ処理装置を使用して実施することができる。いくつかの実装形態では、プロセス500の動作は、少なくとも部分的に、1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読媒体に格納されたソフトウェアに従って実装され得る。
【0065】
プロセス500は、半導体基板が準備される動作510を含み、半導体基板は、誘電体層中に形成された金属層を含む。金属層は、露出した金属表面を有する。半導体基板は、その上に堆積された誘電体、導体、または半導体材料などの材料の1つまたは複数の層を有するウェハを含む、200mmウェハ、300mmウェハ、または450mmウェハなどのシリコンウェハであってもよい。誘電体層は、酸化ケイ素またはドープされた炭化ケイ素などの低k誘電体材料であってもよい。低k誘電体材料は、誘電率が約4.0以下であってもよい。いくつかの実装形態では、誘電体層は、フッ素ドープまたは炭素ドープ酸化ケイ素などの超低k誘電体材料であってもよい。超低k誘電体材料は、約2.5以下の誘電率を有することができる。いくつかの実装形態では、金属層は、金属化スキームにおける金属化層であってもよく、金属層は、銅、ルテニウム、アルミニウム、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデン、またはそれらの組合せなどの任意の好適な導電性材料を含んでもよい。いくつかの実装形態では、金属層は、金属層上にグラフェンを堆積させる前に処理されてもよく、処理は、少なくとも金属層を研磨するか、または不純物を除去するように機能してもよい。例えば、金属層の露出した金属表面は、金属酸化物を還元するために還元剤に曝露されてもよい。いくつかの実装形態では、金属層と誘電体層との間にバリア層が形成される。バリア層は遷移金属窒化物である。いくつかの実施形態では、バリア層は金属と金属窒化物材料の混合物であってもよい。いくつかの実施形態では、バリア層はタンタル含有層である。いくつかの実施形態では、バリア層は窒化タンタルである。いくつかの実施形態では、バリア層は金属タンタルと窒化タンタルの混合物である。いくつかの実施形態では、バリア層はタングステン含有層である。バリア層材料の他の例としては、タングステンおよび窒化タングステンが挙げられる。
【0066】
図6Aは、バリア層622で裏打ちされ、金属層620で充填された、例示的なビアを有する誘電体層610を有する例示的な基板600を示す。基板600の表面は、露出した誘電体表面610s間の露出した金属表面620sおよび露出したバリア表面622sを含む。この特定の例では示されていないが、いくつかの実施形態では、金属層620は、誘電体層610に形成されてもよく、ここで誘電体層610は、ダマシンまたはデュアルダマシン構造のための層間誘電体である。ビアは、銅、ルテニウム、アルミニウム、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデンまたはそれらの組合せを含み得る金属層620を堆積させる前に誘電体層610を通してエッチングされてもよく、バリア層622がビア上に堆積される。
【0067】
図5に戻ると、プロセス500は、グラフェンを露出した金属表面上に選択的に堆積させる動作520を含む。グラフェンは、誘電体表面を含む他の表面に対して露出した金属表面上に選択的に堆積される。いくつかの実装形態では、グラフェンは、遠隔水素プラズマCVDプロセス、熱CVDプロセス、PECVDプロセス、または他の好適な堆積プロセスを使用して、露出した金属表面上に選択的に堆積される。例えば、グラフェンは、上述の遠隔水素プラズマCVDプロセスを使用して露出した金属表面上に選択的に堆積される。
【0068】
いくつかの実装形態では、露出した金属表面上に堆積したグラフェンは高品質グラフェンである。高品質グラフェンは、膜が核形成できる部位の数が限られているため、効果的な抑制剤として機能する。水素末端部位またはヒドロキシル末端部位などの欠陥部位がない場合、様々な前駆体がグラフェンの表面で核形成することができない。例えば、金属酸化物のALDまたはCVDは、そのような金属酸化物の前駆体が高品質グラフェンに吸着できない場合、高品質グラフェン上で核形成できない可能性がある。高品質グラフェンは、水素末端部位およびヒドロキシル末端部位を含まない、または実質的に含まないことによって特徴付けられてもよい。高品質グラフェンは、ラマンスペクトルにおいてGピークよりも有意に大きい2Dピーク、およびラマンスペクトルにおいて無視できるDピークによって特徴付けられてもよい。いくつかの実装形態では、2Dピークは、ラマンスペクトルにおいてGピークよりも少なくとも2倍大きい。
【0069】
グラフェンは、グラフェンの選択的堆積の間、半導体基板が半導体処理温度限界未満の堆積温度に維持される条件下で堆積させることができる。いくつかの実装形態では、半導体処理温度限界は、半導体基板中の材料または構成要素の感温限界に対応してもよい。例えば、感温限界は、銅の場合は約400℃、ルテニウムの場合は約450℃であってもよい。いくつかの実装形態では、半導体処理温度限界は約400℃である。したがって、堆積温度は、約400℃未満、約350℃未満、約300℃未満、約200℃~約400℃、または約200℃~約300℃であってもよい。より高い温度は、グラフェンの品質を低下させる可能性がある。グラフェンは、グラフェンが核形成遅延を引き起こすような条件下で堆積および加工されてもよい。堆積温度がグラフェンの特性に影響を与えるだけでなく、堆積時間、前駆体流量、および他のパラメータもグラフェンの特性に影響を与え得る。一般に、より短い堆積時間およびより高い前駆体流量は、改善された核形成遅延を有するグラフェンを提供することができる。いくつかの実装形態では、核形成遅延を有するグラフェンはアニールによって提供することができる。例えば、グラフェンを約300℃~約450℃(例えば、約400℃)の高温で約20秒~約3分間の期間(例えば、1分間)アニールすることにより、官能基を除去し、グラフェンの核形成を極めて困難にすることができる。
【0070】
いくつかの実装形態では、グラフェンは、誘電体層上に堆積させることなく、露出した金属表面上に選択的に堆積させることができる。グラフェンを露出した金属表面に選択的に堆積させることは、1種または複数の炭化水素前駆体を反応チャンバ中および半導体基板に向かって流すことと、水素原料ガスから遠隔プラズマ源で水素のラジカルを発生させることと、水素のラジカルを反応チャンバ中および半導体基板に向かって導入することとを含んでもよく、水素のラジカルは、1種または複数の炭化水素前駆体と反応して、グラフェンを露出した金属表面上に堆積させる。1種または複数の炭化水素前駆体は、水素のラジカルの下流に提供される。いくつかの実装形態では、1種または複数の炭化水素前駆体は、アルケンまたはアルキン基を含む。
【0071】
図6Bは、グラフェン632が露出した金属表面620s上に選択的に堆積された
図6Aの基板600を示す。グラフェンは、
図4Bに関して上述したプロセス条件のいずれかを使用して堆積させることができる。グラフェンは、
図7に示され、さらに後述されるようなプロセスを使用して堆積させることができる。いくつかの実施形態では、グラフェン632は、グラフェン632の上部水平面が露出したバリア表面622sと同一平面になるように堆積される。いくつかの実施形態では、グラフェン632は、グラフェン632の上部水平面が露出したバリア表面622sと非平面になるように堆積される。グラフェンの機能は、露出した金属表面への誘電体の堆積を防止することであり、抑制剤層の機能は、露出したバリア表面への誘電体の堆積を防止することであるため、グラフェン632の非平面的な過成長の量は、特定の開示された実施形態を使用する機能および効果に必ずしも影響しない可能性がある。さらに、グラフェンと抑制剤層の相対的な厚さは変化してもよく、様々な厚さが、露出したバリア表面および露出した金属表面への選択的誘電体材料の堆積を防止するのに好適であってもよい。
【0072】
図5に戻ると、プロセス500の動作599において、抑制剤層が露出したバリア表面上に堆積される。抑制剤層は分子抑制剤を含む。この抑制剤層は、バリア抑制剤層と称されてもよい。抑制剤層は、原子層堆積、化学蒸着、プラズマ原子層堆積、プラズマ化学蒸着、または任意の他の好適な技術を使用して堆積させることができる。
【0073】
抑制剤層の材料は誘電体材料であってもよい。材料は、シラン、アルキルシランアルコール、アミン、ベータ-ジケトネートおよびハロゲン化物を含む、窒化タンタルおよびコバルトに結合することができる任意の材料であってもよい。抑制剤層は、CxHy頭部基[式中、x=1~20であり、y=2x、2x+2、または2x+1である]を有する分子を含んでもよい。抑制剤層は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基およびドデシル基などの炭化水素基を有する分子を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抑制剤層は、炭素鎖中に12個を超える炭素を有する炭化水素基を有する分子を含む。様々な実施形態では、抑制剤層は、露出したバリア表面に選択的に堆積するが、露出したグラフェン表面または露出した誘電体表面には堆積しない。
【0074】
シランは、これに限定されないが有機ケイ素化合物を含む、ケイ素上に4つの置換基を有する化合物を含む。例としては、1-(トリエトキシシリル)-2-(ジエトキシメチルシリル)エタン、1,2,3,4,5,6-ヘキサメトキシ-1,2,3,4,5,6,-ヘキサメチルシクロヘキサシラン、1,2-ジメトキシ-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、1,4-ジオキサ-2,3,5,6-テトラシラシクロヘキサン、2-テトラメチルジシラン、ビス-トリエトキシシリルエタン(BTEOSE)、ビス-トリエトキシシリルメタン(BTEOSM)、ブタシラン、シクロブタシラン、シクロヘプタシラン、シクロヘキサシラン、シクロオクタシラン、シクロペンタシラン、デカブタオキシシクロペンタシラン、ジエトキシメチルシラン(DEMS)、ジエトキシシラン(DES)、ジメトキシメチルシラン、ジメトキシシラン(DMOS)、ジメチルジエトキシシラン(DMDEOS)、ジメチルジメトキシシラン(DMDMOS)、ジシラン、ドデカメトキシシクロヘキサシラン、エチルシラン、ヘプタシラン、ヘキサエトキシジシラン(HEODS)、ヘキサエトキシジスラゾキサン(hexaethoxydislazoxane)(HEDS-H)、ヘキサメトキシジシラン(HMODS)、ヘキサメトキシジシラゾキサン(HMDS-H)、ヘキサメトキシジシロキサン(HMODS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ヘキサシラン、水素シルセスキオキサン、メチルヘキサメトキシジシラゾキサン(HMDS-CH3)、メチル-ジエトキシシラン(MDES)、メチルジメトキシシラン(MDMS)、メチルシラン、メチルシラトラン、メチルトリエトキシオルトシリケート(MTEOS)、メチルトリエトキシシラン(CH3Si(OCH2)3、メチルトリエトキシシラン(MTES)、メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、ノナメトキシトリシラゾキサン(NMTS)、オクタエトキシシクロブタシランOctaHydroPOSS(商標)(多面体オリゴマーシルセスキオキサン)、オクタメトキシシクロシラゾキサン(OMCS)、オクタメトキシドデカシロキサン(OMODDS)、オクタメトキシトリシロキサン(OMOTS)、オクタメチル-1,4-ジオキサ-2,3,5,6-テトラシラシクロヘキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、オクタシラン、ペンタシラン、シラン(SiH4)、シラトラン、T8-ヒドリドフェロシロキサン、tert-ブトキシジシラン、テトラアセトキシシランSi(OAc)4、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトライソシアネートシラン(TICS)、テトラメトキシシラン、テトラメトキシシロキサン(TMOS)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、テトラメチルシラン(4MS)、テトラオキシメチルシクロテトラシロキサン(TOMCTS)、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン(TVTMCTS)、トリアセトキシシランSiH(OAc)3、トリエトキシシラン(TES)、トリエトキシシランSiH(OEt)3、トリエトキシシロキサン(TRIES)、トリメトキシメチルシラン(TMOMS)、トリメトキシシラン(TMSまたはTriMOS)、トリメトキシシランSiH(OMe)3、トリメトキシシロキサン(TRIMOS)、トリメチルメトキシシラン(TMMOS)、トリメチルシラン(3MS)、トリフェニルエトキシシラン、トリシランおよびトリ-t-ブトキシシラノールが挙げられる。
【0075】
アミンは、第一級、第二級、第三級、または第四級(例えば、テトラアルキルアンモニウム化合物)であってもよい。例示的なアミンとしては、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、t-ブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、シクロプロピルアミン、sec-ブチルアミン、シクロブチルアミン、イソアミルアミン、2-メチルブタン-2-アミン、トリメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、ジ-t-ブチルヒドラジン、ならびにアニリン、ピリジンおよびベンジルアミンなどの芳香族含有アミンが挙げられる。
【0076】
抑制剤層は、特定の堆積前駆体を使用して堆積させることができる。いくつかの実施形態では、堆積前駆体は、アルキルシランなどのシランであってもよい。
【0077】
ケイ素含有堆積前駆体を反応物と反応させて、抑制剤層を形成してもよい。例示的な反応物には、少なくとも1つのヒドロキシル官能基を有する任意の有機アルコールなどのアルコールが含まれる。例示的なアルコールには、第一級アルコール(RCH2OH(式中、RはHを含む任意の置換基である))、第二級アルコール(R1R2CHOH(式中、R1およびR2はHを含む任意の置換基である))、および第三級アルコール(R1R2R3COH(式中、R1、R2およびR3はHを含む任意の置換基である))が含まれる。例示的なアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデシルアルコール、およびこれらの異性体が挙げられる。アルコールは、上記で列挙されたものよりも長い炭素鎖を有してもよい。
【0078】
例示的な反応物には、アミド基(O=CR1-NR2R3(式中、R1、R2およびR3は、Hを含む任意の置換基である))を有する有機化合物を含む、少なくとも1つのアミド官能基を有する任意の有機アミド、単純アミド(O=CR-NH2(式中、RはHを含む任意の置換基である)を有する有機化合物)、および置換アミド(O=CR1-NH-R2(式中、R1およびR2はHを含む任意の置換基である)を有する有機化合物)などのアミドが含まれる。例示的なアミドとしては、ホルムアミド、エタンアミド、プロパンアミド、ブタンアミド、ペンタンアミド、ヘキサンアミド、ヘプタンアミド、オクタンアミド、ノナンアミド、デカンアミド、ウンデカンアミド、ドデシルアミド、およびこれらの異性体が挙げられる。
【0079】
いくつかの実施形態では、抑制剤層は、プラズマフリー条件で堆積される。いくつかの実施形態では、抑制剤層は熱的条件で堆積される。熱的条件では、堆積は、約25℃~約400℃の温度で実施され得る。
【0080】
抑制剤層は、サイクルを使用したALDによって堆積させることができる。ALDは、逐次的な自己制限的反応を使用して材料の薄層を堆積させる技術である。ALDプロセスは、表面媒介堆積反応を使用して、サイクルで層ごとに膜を堆積させる。例として、ALDサイクルは、以下の動作:(i)前駆体の送達/吸着、(ii)チャンバからの前駆体のパージ、(iii)第2の反応物の送達および任意選択でプラズマの点火、ならびに(iv)チャンバからの副生成物のパージを含んでもよい。基板の表面に膜を形成するための第2の反応物と吸着された前駆体との間の反応は、膜の組成および特性、例えば不均一性、応力、ウェットエッチングレート、ドライエッチングレート、電気特性(例えば、耐圧および漏洩電流)などに影響を与える。
【0081】
化学蒸着(CVD)技術とは異なり、ALDプロセスは、表面媒介堆積反応を使用して層ごとに膜を堆積させる。ALDプロセスの一例では、表面活性部位の集団を含む基板表面は、基板を収容するチャンバに提供されるドースの、ケイ素含有前駆体などの第1の前駆体の気相分布に曝露される。この第1の前駆体の分子は、第1の前駆体の化学吸着種および/または物理吸着分子を含む基板表面に吸着される。化合物が本明細書に記載されるように基板表面に吸着される場合、吸着層は、化合物および化合物の誘導体を含み得ることが理解されるべきである。例えば、ケイ素含有前駆体の吸着層は、ケイ素含有前駆体およびケイ素含有前駆体の誘導体を含んでもよい。第1の前駆体のドース後、主に吸着種が残るかまたは吸着種のみが残るように、チャンバを排気して気相中に残る第1の前駆体の大部分または全部を除去する。いくつかの実装形態では、チャンバは完全に排気されなくてもよい。例えば、反応器は、気相中の第1の前駆体の分圧が反応を緩和するのに十分低くなるように排気されてもよい。酸素含有ガスなどの第2の反応物がチャンバに導入され、それによりこれらの分子の一部が表面に吸着した第1の前駆体と反応する。いくつかのプロセスでは、第2の前駆体は、吸着された第1の前駆体と直ちに反応する。他の実施形態では、第2の反応物は、活性化源が時間的に適用された後にのみ反応する。その後、未結合の第2の反応物分子を除去するために、チャンバを再び排気してもよい。上述したように、いくつかの実施形態では、チャンバは完全に排気されなくてもよい。追加のALDサイクルを使用して膜厚を構築してもよい。
【0082】
いくつかの実装形態では、ALD法はプラズマ活性化を含む。本明細書に記載されるように、本明細書に記載されるALD法および装置は、コンフォーマル膜堆積(CFD)法であってもよく、これは、一般に、2011年4月11日に出願され、「PLASMA ACTIVATED CONFORMAL FILM DEPOSITION」と題する米国特許出願第13/084,399号(現在の米国特許第8,728,956号)、および2011年4月11日に出願され、「SILICON NITRIDE FILMS AND METHODS」と題する米国特許出願第13/084,305号に記載されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0083】
様々な実施形態では、抑制剤層は緻密な非透過性膜である。様々な実施形態では、抑制剤層は、少なくとも約2サイクルのALDを使用して堆積される。様々な実施形態では、抑制剤層は、少なくとも約10Åの厚さまで、または約10Å~約200Åの厚さまで堆積される。様々な実施形態では、抑制剤層は、抑制剤層の表面がグラフェン層の表面と同一平面になるような厚さに堆積される。
【0084】
抑制剤層の堆積の間の堆積温度、圧力および他のプロセス条件は、動作520におけるグラフェンの堆積および/もしくは動作530における誘電体材料の堆積、またはその両方の間に使用される堆積温度、圧力および他のプロセス条件と同じであってもよい。
【0085】
動作599は、動作520、530、またはその両方と集積化されてもよい。様々な実施形態では、抑制剤層の選択的堆積は、グラフェンの堆積に使用される装置のチャンバまたはステーションと同じチャンバまたは同じステーションで実施される。いくつかの実施形態では、抑制剤層の選択的堆積は、誘電体層の堆積に使用される装置のチャンバまたはステーションと同じチャンバまたは同じステーションで実施される。様々な実施形態では、抑制剤層の選択的堆積およびグラフェンの選択的堆積は、真空を破壊することなく実施される。様々な実施形態では、抑制剤層の選択的堆積および誘電体材料の選択的堆積は、真空を破壊することなく実施される。いくつかの実施形態では、グラフェンの選択的堆積、抑制剤層の選択的堆積、および誘電体材料の選択的堆積は、真空を破壊することなく実施される。
【0086】
動作599は動作530の前に実施される。様々な実施形態では、動作599は、グラフェンを露出した金属表面上に堆積させた後、誘電体材料を誘電体層上に選択的に堆積させる前に実施される。
【0087】
図6Cは、露出したバリア表面622s上に選択的に堆積された抑制剤層699を有する例示的な基板600を示す。抑制剤層699は、
図5の動作599に関して上述した技術を使用して堆積させることができる。
【0088】
図5に戻ると、プロセス500の動作530において、誘電体材料は、オーバーハングを引き起こすことなく誘電体層上に選択的に堆積される。誘電体材料は、グラフェンの上面を含む他の材料に対して誘電体層上に選択的に堆積される。誘電体材料が誘電体層上に選択的に堆積する際、グラフェンはグラフェンへの誘電体材料の堆積を抑制する。その結果、グラフェンは、金属層への誘電体材料の堆積を阻止する。グラフェンを除去する場合、これにより完全整合ビアが露出した金属表面に着地することが可能になる。抑制剤層は、誘電体材料が誘電体層上に選択的に堆積する際、露出したバリア表面への誘電体材料の堆積を抑制する。その結果、抑制剤層は、バリア表面への誘電体材料の堆積を阻止し、グラフェン材料に隣接してオーバーハングおよび「マッシュルーム化」を引き起こし得る露出したバリア表面への不均一および/または分厚い量の誘電体層の形成を防止する。誘電体材料は、誘電体層とは異なる組成を有してもよい。
【0089】
いくつかの実装形態では、誘電体材料は、PVD、ALD、CVD、PECVD、または遠隔プラズマCVDなどの任意の好適な堆積技術を使用して選択的に堆積させることができる。例えば、誘電体材料は、ALDを使用して選択的に堆積させることができる。誘電体層上に誘電体材料を選択的に堆積させた後、グラフェンの上面が露出されたままであるようにグラフェンをそのまま残し、抑制剤層も同様に、抑制剤層の上面が露出されたままであるようにそのまま残す。誘電体材料は、グラフェンおよび抑制剤層に対して非損傷性の堆積技術を使用して堆積させることができる。本明細書で使用する場合、「非損傷性」は、グラフェンをエッチングせず、グラフェンの結晶性を実質的に維持するプロセスを指す。グラフェンを特徴付けるラマンスペクトルに関して、これは、2DピークのGピークに対する比が増加するか、または少なくとも約10%より大きく減少しないこと、Gピークの強度が約10%より大きく増加しないこと、およびDピークの強度が約10%より大きく増加しないことを意味する。
【0090】
いくつかの実装形態では、誘電体材料は金属酸化物を含む。金属酸化物は誘電体層とのエッチングコントラストを有してもよく、これは、金属酸化物が誘電体層とは異なるエッチング選択性を提供することを意味する。いくつかの実施形態では、金属酸化物は、抑制剤層とのエッチングコントラストを有することができる。いくつかの実装形態では、金属酸化物はエッチングストップ層として機能してもよく、エッチングストップ層は周囲の材料とのエッチングコントラストを有する。金属酸化物は容易にエッチングされないため、そのまま残存するスペーサとして機能する。いくつかの実装形態では、金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、またはそれらの組合せを含む。例えば、金属酸化物は酸化アルミニウムを含み得る。いくつかの実装形態では、酸化アルミニウムは、ALDなどの熱ベースの堆積技術を使用して誘電体層上に堆積される。熱ベースの堆積技術は、グラフェンを損傷性プラズマに曝露する損傷を回避し得る。いくつかの実装形態では、金属酸化物の厚さは、約5Å~約60Åである。
【0091】
いくつかの実装形態では、誘電体材料は低k誘電体材料を含む。例示的な低k誘電体材料には、ドープもしくはアンドープ酸化ケイ素(SiO2)、ドープもしくはアンドープ炭化ケイ素(SiC)、ドープもしくはアンドープ窒化ケイ素(Si3N4)、またはドープもしくはアンドープ炭窒化ケイ素(SiCxNy)が含まれる。いくつかの実装形態では、低k誘電体材料は、酸窒化ケイ素、酸炭化ケイ素、または酸炭窒化ケイ素を含み、低k誘電体材料は、遠隔プラズマCVD技術などの非直接プラズマ堆積技術を使用して堆積させることができる。低k誘電体材料が遠隔プラズマCVD技術を使用して堆積される場合、低k誘電体材料は、グラフェンおよび抑制剤層と同じ反応チャンバまたはツール内で選択的に堆積させることができる。それにより、半導体基板は、動作520と530の堆積動作の間で真空破壊に曝露されない。
【0092】
低k誘電体材料を堆積させるための例示的な遠隔プラズマCVD技術では、ケイ素含有前駆体を半導体基板に流し、原料ガスから遠隔プラズマ源でラジカルを発生させ、ラジカルを反応チャンバに導入して半導体基板に向かって流し、反応チャンバ内でケイ素含有前駆体と反応させる。いくつかの実装形態では、原料ガスは水素原料ガス(H2)を含み、ラジカルは水素のラジカルを含む。ラジカルは、半導体基板に隣接した環境でケイ素含有前駆体と反応する際に、ラジカルが実質的に低エネルギー状態または基底状態になるように処理条件下で提供される。ラジカルは、ケイ素含有前駆体から上流の遠隔プラズマ源で発生する。ケイ素含有前駆体は、ケイ素-水素結合および/またはケイ素-ケイ素結合、ならびにケイ素-炭素結合、ケイ素-窒素結合および/またはケイ素-酸素結合を含有する。いくつかの実装形態では、ケイ素含有前駆体は、炭素-酸素結合または炭素-窒素結合を含有しない。ラジカルをケイ素含有前駆体から上流で、遠隔プラズマ源で発生させることにより、半導体基板はプラズマに直接曝露されない。これにより、グラフェンの損傷性プラズマへの曝露が回避される。ケイ素含有前駆体が半導体基板に隣接する環境中で水素ラジカルと反応すると、ケイ素含有材料が誘電体材料として誘電体層上に堆積する。
【0093】
誘電体材料は、コンタクトビアと近隣の金属層/線との間の距離を広げるスペーサ層として機能してもよい。言い換えれば、スペーサ層は、コンタクトビアと近隣の金属層/線との間の距離を広げる追加的なトポグラフィを提供し、それによりTDDB劣化を緩和してデバイス性能を改善する。誘電体層への選択的な誘電体堆積は、着地していないビアに関連する問題を排除または低減し、完全整合ビアパターニングスキームを支援する。
【0094】
図6Dは、選択的誘電体層625が誘電体層610の上面に形成された基板600を示す。選択的誘電体層625は、金属層620およびバリア層622に対して誘電体層610上に選択的に堆積される。選択的誘電体層625は、約1nm~約10nmの厚さを有することができる。いくつかの実装形態では、選択的誘電体層625は、酸窒化ケイ素、酸炭化ケイ素、または酸炭窒化ケイ素などの低k誘電体材料を含む。いくつかの実装形態では、選択的誘電体層625は、遠隔水素プラズマCVDなどの非直接プラズマ堆積技術を使用して誘電体層610上に堆積される。様々な実施形態では、選択的誘電体層625は酸化アルミニウム(Al
2O
3)である。
【0095】
図5に戻ると、プロセス500の動作540aにおいて、グラフェンは、グラフェンの表面を改質するのに十分な期間、非直接プラズマまたは処理条件で処理され得る。グラフェンが抑制剤として機能する誘電体材料の選択的堆積後、グラフェンの表面は、グラフェンへの後続の堆積を促進するために改質されてもよい。言い換えれば、高品質のグラフェンを、グラフェンの表面への材料の堆積を可能にするより低品質のグラフェンに変換することができる。処理によってグラフェンの表面が機能化され、それによりグラフェン上で核形成が生じ得る。
【0096】
いくつかの実装形態では、処理は、グラフェンを非直接プラズマに曝露することを含む。グラフェンを直接またはin-situプラズマに曝露すると、グラフェンがエッチングされるか、またはグラフェンの結晶構造が破壊されて無秩序もしくはアモルファス炭素が形成される。グラフェンを非直接または遠隔プラズマに曝露すると、グラフェンをエッチングすることなくグラフェンの表面を機能化することができる。いくつかの実装形態では、非直接プラズマは、水素のラジカルを含む遠隔水素プラズマ(例えば、H2プラズマ)であってもよい。いくつかの実装形態では、非直接プラズマは、酸素、アンモニア、窒素、またはそれらの組合せのラジカルと混合された水素のラジカルを含む遠隔プラズマ(例えば、H2/O2プラズマ)であってもよい。半導体基板は、非直接プラズマへの曝露中、低い処理温度に維持され得る。いくつかの実装形態では、処理温度は約20℃~約400℃または約20℃~約200℃であってもよい。低い処理温度での非直接プラズマへの曝露後、グラフェンの表面は、水素末端部位またはヒドロキシル末端部位などの欠陥部位を有し、グラフェンへの後続の材料堆積の核形成および成長を促進することができる。いくつかの実装形態では、動作540aでの処理および動作530での選択的誘電体堆積は、動作530および540aでの動作の間に真空破壊が導入されないように同じ反応チャンバまたはツールで実施することができる。
【0097】
いくつかの実装形態では、処理は、グラフェンを処理条件下に十分な時間曝露することを含む。処理条件は、グラフェンを1種または複数のガスに長時間曝露することを含んでもよい。1種または複数のガスは、水素および酸素の一方または両方を含み得る。例えば、グラフェンは、空気遮断を伴う大気条件に曝露されてもよい。いかなる理論によっても制限されないが、空気遮断は、酸素および/または水分子がグラフェンの表面を機能化することを可能にし得る。いくつかの実装形態では、処理条件は、大気圧(760Torr)以下への曝露、空気への曝露、およびほぼ室温(約15℃~約25℃)への曝露を含み得る。少なくとも約2分、少なくとも約5分、少なくとも約10分、または少なくとも約15分の長期間は、グラフェンの表面を十分に機能化するのに十分な期間である。いくつかの実装形態では、処理条件は、1回または複数の堆積動作を含む。誘電体層上に誘電体材料を選択的に堆積させた後、グラフェンの表面を少なくとも部分的に機能化することができる。さらに、グラフェンの表面は、半導体基板に追加の堆積動作を実施した後、より機能化される可能性がある。長時間にわたってまたは十分な堆積動作の後、グラフェンの表面に水素末端部位および/またはヒドロキシル末端部位の十分な欠陥部位が形成され、グラフェンへの後続の材料堆積の核形成および成長を促進する可能性がある。
【0098】
いくつかの実装形態では、処理条件は、グラフェン上に超薄層の堆積を引き起こす可能性があり、超薄層は、グラフェンへの後続の材料の堆積を促進する。例えば、このような超薄層は、CVDによって堆積された酸化アルミニウムそれ自体を含んでもよい。あるいは、超薄層は、炭窒化ケイ素、酸炭化ケイ素、または窒化ケイ素を含んでもよい。
【0099】
グラフェンの表面の改質後、グラフェンは、ラマンスペクトルのより高いDピークによって特徴付けられ得るより低品質のグラフェン膜である。いくつかの実装形態では、ラマンスペクトルのDピークは20%より大きく増加し得る。表面改質は、半導体集積化のためのグラフェンに対する後続の処理工程の実施を容易にする。プロセスフローにおけるこのような後続の処理工程は、エッチングストップおよび気密バリアの一方または両方を堆積させることを伴ってもよい。これはグラフェンの封止と称されてもよく、ここでグラフェンの膜特性は経時的に維持され得る。いくつかの実装形態では、エッチングストップおよび/または気密バリア上に追加の誘電体層(例えば、超低k誘電体)を堆積させてもよく、追加の誘電体層に導電性ビアを形成して、完全整合ビアパターニングスキームにおいてグラフェンと電気的に接触させることができる。
【0100】
あるいは、プロセス500の動作540bにおいてグラフェンを除去してもよい。いくつかの実装形態では、グラフェンは、直接または非直接プラズマへの曝露によって除去され得る。グラフェンは、誘電体層への誘電体材料の選択的堆積を容易にするための抑制剤として選択的に堆積させることができる。誘電体層への誘電体材料の選択的堆積後に、グラフェンを除去することができる。グラフェンは、もはや抑制剤として作用するために存在しない。グラフェンの除去は、完全整合ビアが金属層に接触するために望ましい可能性がある。
【0101】
いくつかの実施形態では、抑制剤層は任意選択で除去されてもよい。除去は、グラフェン除去前もしくはグラフェン除去後、またはグラフェン処理前もしくはグラフェン処理後に実施されてもよい。いくつかの実施形態では、除去は、熱的に、または紫外線に曝露することによって、または抑制剤層を脱着するためのエネルギーを提供するために基板をプラズマ放射線に曝露することによって実施されてもよい。
【0102】
いくつかの実施形態では、抑制剤層は基板から除去されない。いくつかの実施形態では、抑制剤層が他のプロセスガスに曝露されるにつれて、半導体デバイスの機能に実質的に影響を与えることなく、抑制剤層がわずかにエッチングされてもよく、および/またはその厚さが低減してもよい。
【0103】
堆積は、グラフェンの除去後に半導体基板上の任意の場所で生じてもよい。いくつかの実装形態では、グラフェンの除去後、露出した金属表面および誘電体材料上に金属酸化物を堆積させる。いくつかの実装形態では、グラフェンの除去後、露出した金属表面および誘電体材料上に気密バリアを堆積させる。金属酸化物または気密バリアは、プラズマベースの堆積技術を含む任意の好適な堆積技術を使用して堆積させることができる。
【0104】
図5に戻ると、プロセス500は、熱ベースの堆積技術によって金属酸化物を堆積させることをさらに含み得る。金属酸化物の厚さは、約5Å~約50Åであってもよい。あるいは、プロセス500は、非直接プラズマ堆積技術によって気密バリアを堆積させることをさらに含んでもよい。気密バリアの厚さは、約5Å~約100Åであってもよい。金属酸化物または気密バリアは、グラフェンの改質表面およびグラフェンがそのまま残る誘電体層上に堆積させることができる。グラフェンを除去する場合、金属酸化物または気密バリアは、露出した金属表面および誘電体層上に堆積させることができる。いくつかの実施形態では、このような動作の間、金属酸化物の堆積中に特定の処理条件に曝露されるため、抑制剤層の厚さが低減する場合があるが、厚さの低減はマッシュルーム化またはオーバーハングを引き起こさない。
【0105】
いくつかの実装形態では、金属酸化物は熱ALDまたは熱CVDによって堆積される。金属酸化物の堆積は、半導体処理温度限界未満の温度で行われてもよい。いくつかの例では、金属酸化物の堆積は、下に位置するグラフェンの結晶性を改善する可能性がある。金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、またはこれらの組合せが挙げられてもよい。例えば、金属酸化物は酸化アルミニウムを含む。酸化アルミニウムの堆積は、トリメチルアルミニウム(TMA)などのアルミニウム含有前駆体のドースを導入し、半導体基板をメタノールなどの酸化剤に曝露することにより、熱ALDによって行われてもよい。金属酸化物はエッチングストップとして機能してもよい。金属酸化物は、追加的または代替的に、潜在的に損傷性のプラズマに対するグラフェンの保護層として機能する。いくつかの実装形態では、誘電体層上に選択的に堆積された誘電体材料が低k誘電体材料である場合、金属酸化物は、低k誘電体材料およびグラフェン上、または低k誘電体材料および金属層上に堆積される。金属酸化物は、低k誘電体材料とは異なるエッチング選択性を有し、低k誘電体材料の厚さは、金属酸化物の厚さより少なくとも2倍大きい。
【0106】
いくつかの実装形態では、グラフェンへの金属酸化物の堆積後に気密バリアの堆積が続いてもよい。気密バリアは、非直接および直接プラズマ堆積技術を含む任意の好適な堆積技術によって堆積させることができる。グラフェン上の金属酸化物は、グラフェンを損傷性プラズマへの曝露から保護することができる。このように、気密バリアは、PECVDまたはPEALDを使用して堆積させることができ、ここでプラズマはin-situまたは遠隔で発生させることができる。
【0107】
いくつかの実装形態では、窒素ドープ炭化ケイ素、酸素ドープ炭化ケイ素、または窒化ケイ素などの気密バリアが堆積される。気密バリアがグラフェン上に堆積される場合、堆積は、非直接プラズマ堆積技術によって行われてもよい。非直接プラズマ堆積技術は、遠隔プラズマCVD技術であってもよい。グラフェンを除去した後に気密バリア層を堆積させる場合、堆積は、任意の好適な堆積技術を使用して行われてもよい。気密バリアは、エッチングストップおよび気密バリアとして機能してもよい。いくつかの実装形態では、気密バリアは、グラフェンの膜特性に悪影響を及ぼす可能性のある周辺環境の水、酸素および他の化学物質からグラフェンを密封することにより、グラフェンを保護することができる。
【0108】
遠隔プラズマCVD技術では、ケイ素含有前駆体を反応チャンバ内の半導体基板に流し、遠隔プラズマ源で原料ガスからラジカルを発生させ、ラジカルを反応チャンバに導入して半導体基板に流し、反応チャンバ内でケイ素含有前駆体と反応させることにより、気密バリアを形成する。いくつかの実装形態では、原料ガスは水素ガス(H2)を含み、ラジカルは水素ラジカルを含む。ラジカルは、半導体基板に隣接した環境でケイ素含有前駆体と反応する際に、ラジカルが実質的に低エネルギー状態または基底状態になるように処理条件下で提供される。ラジカルは、ケイ素含有前駆体から上流の遠隔プラズマ源で発生される。ケイ素含有前駆体は、ケイ素-水素結合および/またはケイ素-ケイ素結合、ならびにケイ素-炭素結合、ケイ素-窒素結合および/またはケイ素-酸素結合を含有する。いくつかの実装形態では、ケイ素含有前駆体は、炭素-酸素結合または炭素-窒素結合を含有しない。ラジカルをケイ素含有前駆体から上流で、遠隔のプラズマ源で発生させることにより、半導体基板はプラズマに直接曝露されない。
【0109】
図7は、いくつかの実装形態による、基板の金属表面上にグラフェンを堆積させる例示的な方法のフロー図を示す。プロセス700の動作は、異なる順序および/または異なる、より少ない、もしくは追加の動作で実施されてもよい。いくつかの実施形態では、プロセス700の動作は、
図5の動作520の間に実施される。プロセス700の動作は、
図2に示すプラズマ処理装置を使用して実施されてもよい。いくつかの実装形態では、プロセス700の動作は、少なくとも部分的に1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読媒体に格納されたソフトウェアに従って実装され得る。
【0110】
プロセス700の動作710では、グラフェンを堆積させる前に、基板の金属表面を任意選択で処理することができる。グラフェンの堆積は、グラフェンが成長する金属表面の平滑性および純度に依存し得る。基板を研磨して不純物を除去するために、金属表面に表面調製技術を適用することができる。いくつかの実装形態では、基板の研磨は、ライトエッチングによって実施されてもよい。不純物の除去は、例えば金属酸化物を除去する化学処理によって実施されてもよい。不純物の除去は、追加的または代替的に、化学的機械的平坦化(CMP)プロセスからの残留物または汚染物質の除去を含んでもよい。いくつかの実装形態では、金属表面の処理は、拡散バリア堆積、エッチングストップ堆積、または気密バリア堆積の前に行われてもよい。
【0111】
いくつかの実装形態では、基板の金属表面を処理することは、金属表面を還元性ガス種のプラズマに曝露することを含み得る。金属表面の処理は、少なくともプラズマへの曝露による不純物の除去および/または金属酸化物の還元を含んでもよい。いくつかの実装形態では、プラズマは、還元性ガス種のイオンおよびラジカルを含み得る。還元性ガス種としては、例えば、水素ガス(H2)、アンモニア(NH3)、またはそれらの組合せを挙げることができる。したがって、金属表面は、H2プラズマ、NH3プラズマ、またはH2/NH3プラズマによって処理することができる。プラズマは、直接(in-situ)プラズマまたは遠隔プラズマであってもよい。いくつかの実装形態では、金属表面を還元性ガス種のプラズマに曝露することは、金属表面を遠隔水素プラズマに曝露することを含む。
【0112】
いくつかの実装形態では、金属表面を処理することは、金属表面をシアノ系ラジカル種に曝露することをさらに含む。いくつかの他の実装形態では、金属表面を処理することは、金属表面を還元性ガス種に曝露することの代替として、金属表面をシアノ系ラジカル種に曝露することを含む。シアノ系ラジカル種は、グラフェンの成長前に金属表面を平滑化するためのライトエッチングを実施することができる。金属表面をシアノ系ラジカル種に曝露することは、金属表面を還元性ガス種のプラズマに曝露する前または後に行うことができる。これは、多工程前処理プロセスと称されてもよい。多工程前処理プロセス、または多工程前処理プロセスの少なくともいくつかの工程は、グラフェンを堆積させるためのプラズマ処理装置と同じまたは異なる装置で実施されてもよい。金属表面をシアノ系ラジカル種に曝露することは、金属表面を還元性ガス種のプラズマに曝露することと同時に行われてもよい。これは、一工程前処理プロセスと称されてもよい。一工程前処理プロセスは、グラフェンを堆積させるためのプラズマ処理装置と同じまたは異なる装置で実施されてもよい。
【0113】
多工程前処理プロセスにおいて、シアノ系ラジカル種は、プラズマを点火することによって発生されてもよく、プラズマは、直接(in-situ)プラズマまたは遠隔プラズマであってもよい。シアノ系ラジカル種は、少なくとも炭素含有原料ガスおよび窒素含有原料ガスを含有するガス混合物から、または炭素-窒素(CN)結合を有する前駆体を含有するガス混合物から発生させてもよい。したがって、金属表面を処理することは、少なくとも炭素含有原料ガスおよび窒素含有原料ガスから、または炭素-窒素結合を有する前駆体から、シアノ系ラジカル種を含有するプラズマを発生させることをさらに含み得る。例えば、炭化水素前駆体、窒素ガス、および水素ガスのガス混合物をプラズマ発生器に供給してもよく、ガス混合物のプラズマを点火させてシアノ系ラジカル種を形成してもよい。
【0114】
一工程前処理プロセスでは、シアノ系ラジカル種は、下流の炭素含有前駆体を活性化することによって発生させることができる。下流の炭素含有前駆体の活性化は、還元性ガス種のプラズマによる表面前処理と同時である。このような場合、遠隔プラズマ源が下流の炭素含有前駆体の上流に位置付けられ、還元性ガス種のプラズマが遠隔プラズマ源で発生される。いくつかの実装形態では、下流の炭素含有前駆体は炭化水素前駆体であってもよい。したがって、下流の炭素含有前駆体は、グラフェンの堆積に使用される炭化水素前駆体と化学的に同じであっても異なっていてもよい。このような場合、還元性ガス種のプラズマは、還元性ガス種および窒素含有剤のプラズマである。例えば、還元性ガス種は水素ガスを含んでもよい。窒素含有剤は窒素ガスを含んでもよい。したがって、還元性ガス種および窒素含有剤のプラズマは、遠隔H2およびN2プラズマであってもよい。還元性ガス種の濃度は、プラズマ中の窒素含有剤の濃度よりも大きくてもよい。いかなる理論によっても制限されることなく、窒素含有剤のイオン/ラジカルが下流の炭素含有前駆体と相互作用してシアノ系ラジカル種を形成すると考えられる。シアノ系ラジカル種は、金属表面を平滑化するためのライトエッチングを実施することができ、還元性ガス種のプラズマは、金属表面の金属酸化物を金属に還元することができる。いくつかの他の実装形態では、下流の炭素含有前駆体は、1つまたは複数のCN結合を含有する前駆体ガスであってもよい。このような前駆体は、還元性ガス種のプラズマによって活性化されてもよく、還元性ガス種のプラズマは、遠隔プラズマ源において上流に発生した遠隔プラズマである。いくつかの場合では、還元性ガス種のプラズマは、遠隔水素プラズマである。いかなる理論によっても制限されることなく、水素のイオン/ラジカルが1つまたは複数のCN結合を有する下流の炭素含有前駆体と相互作用して、シアノ系ラジカル種を形成すると考えられる。
【0115】
動作710における処理動作は、多工程前処理プロセスおよび一工程前処理プロセスの観点から説明される場合があるが、金属表面の前処理はそのような技術に制限されないことが理解される。基板の金属表面は、当技術分野で公知の任意の好適な表面調製技術を使用してグラフェン堆積の前に前処理することができる。
【0116】
プロセス700の動作720において、基板は反応チャンバ内に提供され、基板は金属表面を含む。いくつかの実装形態では、基板は、動作710での処理中に既に反応チャンバ内に提供されてもよい。基板は、半導体用途で使用される半導体基板であってもよい。金属表面は、遷移金属などの任意の好適な金属を含んでもよい。例えば、金属表面は、銅、ルテニウム、ニッケル、モリブデン、コバルト、またはそれらの組合せを含んでもよい。金属表面は、グラフェンの核形成および成長を促進するための触媒として機能することができる。グラフェンの堆積は、金属表面の特定の金属に対して選択的であってもよい。別の言い方をすれば、グラフェンの堆積は、誘電体表面または他の非金属表面で行われなくてもよい。
【0117】
反応チャンバは、基板を支持するための基板支持体または台座を含んでもよい。遠隔プラズマ源は、シャワーヘッドを介して反応チャンバに流体連結されてもよい。基板の金属表面は遠隔プラズマ源の方を向いていてもよい。前駆体ガスラインが、1つまたは複数のガス出口を介して反応チャンバに別個に流体連結されてもよい。1つまたは複数のガス出口は、遠隔プラズマ源から下流に位置してもよい。1つまたは複数のガス出口は、炭化水素前駆体を反応チャンバに送達してもよく、遠隔プラズマ源は、反応チャンバに送達するための水素ラジカルを発生させてもよい。
【0118】
プロセス700の動作730において、1種または複数の炭化水素前駆体が反応チャンバ中および基板に向かって流れる。1種または複数の炭化水素前駆体のそれぞれは、アルケンまたはアルキン基を含む。これは、炭化水素前駆体が1つまたは複数の不飽和炭素結合、例えば1つまたは複数の炭素-炭素二重結合および/または炭素-炭素三重結合を含むことを意味する。アルケンまたはアルキン基を有する炭化水素前駆体の例としては、トルエン、ベンゼン、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンタジエン(例えば、1,4ペンタジエン)、ヘキセン、アセチレン、プロピン、ブチン、またはペンチンが挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実装形態では、1種または複数の炭化水素前駆体のそれぞれは、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、少なくとも4個の炭素原子、少なくとも5個の炭素原子、少なくとも6個の炭素原子、または少なくとも7個の炭素原子を有する炭素鎖を含み得る。
【0119】
1種または複数の炭化水素前駆体は、反応チャンバに流体連結された1つまたは複数のガス出口を通って反応チャンバ中に流れてもよい。1つまたは複数のガス出口は、遠隔プラズマ源から下流に位置付けられる。1種または複数の炭化水素前駆体のプラズマは、反応チャンバまたは遠隔プラズマ源で発生しない。むしろ、1種または複数の炭化水素前駆体は、遠隔プラズマ源で発生したプラズマとは無関係に反応チャンバ中に流れる。
【0120】
1種または複数の炭化水素前駆体は、金属表面に吸着されるように基板に向かって流れるか、または少なくとも基板の金属表面に隣接する環境に位置付けられる。いくつかの実装形態では、1種または複数の炭化水素前駆体は、動作740および750で記載されるプラズマ発生およびプラズマ曝露と同時に反応チャンバ中に流れる。いくつかの実装形態では、1種または複数の炭化水素前駆体は、動作740および750で記載されるプラズマ発生およびプラズマ曝露の前に反応チャンバ中に流れる。
【0121】
いくつかの実装形態では、1種または複数の炭化水素前駆体は、他の種、特にキャリアガスとともに、基板の金属表面に隣接する環境中に送達される。堆積反応表面から上流では、1種または複数の炭化水素前駆体が不活性キャリアガスと混合され得る。例示的な不活性キャリアガスとしては、アルゴン(Ar)およびヘリウム(He)が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実装形態では、1種または複数の炭化水素前駆体は、複数の炭化水素前駆体の混合物として送達される。複数の炭化水素前駆体は、得られるグラフェンで主要骨格またはマトリックスを形成するのに好適なように、等モルまたは比較的類似した比率で存在してもよい。他の実装形態では、複数の炭化水素前駆体の相対量は、等モル濃度から実質的に偏っている。
【0122】
プロセス700の動作740では、水素のラジカルは、水素原料ガスから、1種または複数の炭化水素前駆体の上流に位置付けられる遠隔プラズマ源で発生する。具体的には、水素のラジカルは、1種または複数の炭化水素前駆体を反応チャンバ中に導入するための1つまたは複数のガス出口から上流にある遠隔プラズマ源で発生する。遠隔プラズマ源は、誘導結合プラズマ源または容量結合プラズマ源などの、プラズマ発生のための任意の好適なプラズマ源であってもよい。いくつかの実装形態では、水素原料ガスは水素ガス(H2)である。いくつかの実装形態では、水素ガスは、ヘリウム(He)などの1種または複数の追加のガスとともに遠隔プラズマ源中に流れる。特定の実施形態では、水素原料ガスは、ヘリウムなどのキャリアガス中で提供される。一例として、水素ガスは、約1%~約25%の水素または約1%~約10%の水素の濃度でヘリウムキャリア中に提供され得る。したがって、いくつかの場合では、H2/Heプラズマが遠隔プラズマ源で発生する。
【0123】
プロセス700の動作750では、水素のラジカルが反応チャンバ中および基板に向かって導入され、水素のラジカルが1種または複数の炭化水素前駆体と反応して、基板の金属表面上にグラフェンを堆積させる。水素のラジカルは、励起ラジカルが再結合することなく緩和ラジカルに遷移するようなプロセス条件下で反応チャンバ内に送達される。圧力、ヘリウムなどのキャリアガスの割合、シャワーヘッドのガスポートの形状、シャワーヘッドと1つまたは複数のガス出口との間の距離、および他のプロセス条件は、水素原子が再結合することなく低エネルギー状態(例えば、基底状態)のラジカルとして基板に遭遇するように構成される。いくつかの実装形態では、基板に隣接する環境中の水素のラジカルのすべてまたは実質的にすべてが、基底状態の水素のラジカルである。このようにして、基板は、表面成長損傷を最小限に抑える遠隔水素プラズマに曝露される。
【0124】
一旦発生すると、水素のラジカルは励起エネルギー状態にあってもよい。例えば、励起エネルギー状態にある水素は、少なくとも10.2eV(第1の励起状態)のエネルギーを有することができる。水素の励起ラジカルは、グラフェン成長中に表面成長損傷を引き起こす可能性がある。いくつかの実装形態では、励起水素ラジカルがそのエネルギーを失うか、または緩和すると、励起水素ラジカルは実質的に低エネルギー状態の水素ラジカルまたは基底状態の水素ラジカルになる可能性がある。いくつかの実装形態では、プロセス条件は、励起水素ラジカルがエネルギーを失うか、または緩和して実質的に低エネルギー状態または基底状態の水素ラジカルを形成するように提供されてもよい。例えば、遠隔プラズマ源または関連構成要素は、遠隔プラズマ源から基板に拡散する水素ラジカルの滞留時間が、励起水素ラジカルのエネルギー緩和時間よりも長くなるように設計され得る。励起水素原子ラジカルのエネルギー緩和時間は、約1x10-3秒とほぼ等しいか、またはそれ未満であってもよい。励起水素ラジカルがエネルギーを失って緩和し、基底状態の水素ラジカルを形成するように制御される他のプロセス条件としては、圧力、ガス流量、緩和ゾーンのサイズおよび形状、シャワーヘッド内のガスポートのサイズおよび形状、不活性キャリアガスに対する水素原料ガスの相対濃度が挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
基板の金属表面に隣接する環境は、1種または複数の炭化水素前駆体を含んでもよい。さらに、基板の金属表面に隣接する環境は、低エネルギー状態(例えば、基底状態)の水素のラジカルを含んでもよい。基板の金属表面に隣接する環境は、金属表面だけでなく、基板の露出した表面の真上の空間も含む。事実上、低エネルギー状態の水素のラジカルによる炭化水素前駆体の活性化は、金属表面上または基板の金属表面の上方の距離で起こり得る。いくつかの実装形態では、基板の金属表面の上方の距離は、基板の金属表面より最大約100ミリメートル上であってもよい。典型的に、基板の金属表面に隣接する環境における反応条件は、基板の金属表面全体にわたって一般に均一であるが、多少の変動は許容され得る。
【0126】
いくつかの実装形態では、水素原子ラジカルのすべて、または実質的にすべて、または実質的な割合が基底状態にあってもよく、例えば、基板の金属表面に隣接する水素原子ラジカルの少なくとも約90%または95%は基底状態にある。本明細書で使用する場合、水素のラジカルは、「水素ラジカル」および「水素原子ラジカル」とも称されることもある。水素原子ラジカルの実質的な割合が基底状態にある状態は、様々な技術によって達成することができる。
図2に記載されるようないくつかの装置は、この状態を達成するように設計されている。基底状態の水素原子ラジカルを達成するためのプロセス条件は、実質的な量のイオン、電子、または高エネルギー状態、例えば基底状態より上の状態のラジカル種を有しない場合がある。実質的な量のイオンまたは高エネルギーラジカルが存在すると、基板上の表面成長損傷を引き起こし、低品質のグラフェンまたは無秩序な炭素成長が生じる可能性がある。いくつかの実装形態では、基板の金属表面に隣接する環境中のイオンの濃度は、約10
7/cm
3以下である。基底状態の水素原子ラジカルは、1種または複数の炭化水素前駆体を活性化するのに十分なエネルギーを提供する一方で、表面成長損傷を制限するために、金属表面に隣接する環境で穏やかな条件を提供することができる。
【0127】
1種または複数の炭化水素前駆体は、水素のラジカルの下流で反応チャンバ中に流れる。水素のラジカルは、1種または複数の炭化水素前駆体を導入するための1つまたは複数のガス出口の上流に位置する遠隔プラズマ源で発生する。水素のラジカルが1種または複数の炭化水素前駆体に到達するまでに、水素のラジカルは、1種または複数の炭化水素前駆体と混合または相互作用する際に、低エネルギー状態または基底状態にある。
【0128】
いかなる理論によっても制限されることなく、堆積反応におけるより動力学的に有利な反応機構の1つは、活性化炭化水素前駆体をもたらす水素の引抜を含む。いかなる理論にも制限されることなく、低エネルギー状態または基底状態の水素ラジカルは、活性化アルカン(例えば、メタン)の形成をもたらす炭化水素分子のアルキンまたはアルケン基と相互作用することができる。いくつかの例では、炭化水素前駆体は、より小さな鎖の炭化水素分子またはラジカルに分解する。活性化アルカンは、活性部位として少なくとも1つの炭素ラジカルを含有し、活性部位が互いに反応してグラフェン中に炭素-炭素結合を形成することができる。活性部位での結合および架橋により、得られるグラフェン膜の主要骨格またはマトリックスが形成される。金属表面は、活性化された炭化水素前駆体間の反応を促進する触媒として作用してもよい。
【0129】
炭化水素前駆体は、受動的なスペクテーターとして機能するのではなく、グラフェンの組成に大きく寄与する。いくつかの実装形態では、グラフェンの原子の実質的にすべてまたは実質的な割合は、1種または複数の炭化水素前駆体によって提供され、遠隔水素プラズマからの少量の水素または他の元素は、膜質量の約5原子パーセント未満または約2原子パーセント未満を提供する。このような場合、堆積反応の駆動に使用される低エネルギーの水素原子ラジカルは、堆積されたグラフェンの質量に実質的に寄与しない。
【0130】
基板の金属表面に隣接する環境の温度は、堆積反応を容易にする任意の好適な温度であってもよい。いくつかの実装形態では、基板の金属表面に隣接する環境の温度は、グラフェンの堆積中に基板が支持される台座の温度によって大きく制御され得る。いくつかの実装形態では、動作温度は、約500℃以下、約450℃以下、約400℃以下、約350℃以下、約300℃以下、約200℃~約400℃、約250℃~約400℃、または約200℃~約300℃であってもよい。このような温度は、半導体用途に好適な場合がある。いくつかの実装形態では、温度は、グラフェンが堆積される金属表面の金属に依存し得る。例えば、銅は400℃以下の温度に耐え得る可能性があるが、ルテニウムは450℃以下の温度に耐え得る可能性がある。
【0131】
基板の金属表面に隣接する環境の圧力は、反応チャンバ中でグラフェン成長を促進するのに好適な任意の圧力であってもよい。いくつかの実施形態では、圧力は、約10Torr以下、または約5Torr以下であってもよい。例えば、圧力は、約1Torr~約2Torrであってもよい。
【0132】
グラフェンは、水素のラジカルと遠隔プラズマ源から下流に提供される1種または複数の炭化水素前駆体との反応から金属表面上に選択的に堆積させることができる。低エネルギー状態(例えば、基底状態)の水素のラジカルによって提供される比較的穏やかな反応条件により、1種または複数の炭化水素前駆体が活性化して炭素ラジカルを形成する。したがって、炭素ラジカルは、プラズマが発生する遠隔プラズマ源の外部で形成される。基板の金属表面に隣接する環境における炭素ラジカルの量は、グラフェン成長にとって多すぎる核形成部位を有することを制限するように制御することができる。いかなる理論によっても制限されることなく、過剰な数の核形成部位は、グラフェン成長中の過剰な数の欠陥に相当する可能性がある。
【0133】
グラフェンは、銅、ルテニウム、ニッケル、モリブデン、コバルト、またはそれらの組合せなどの遷移金属上に選択的に堆積させることができる。いくつかの実装形態では、金属表面は銅を含む。いくつかの実装形態では、金属表面上のグラフェンは比較的薄く、数単層程度の厚さである。いくつかの実装形態では、グラフェンの厚さは、約10nm以下、約5nm以下、約3nm以下、または約1nm以下である。グラフェンの厚さは、それが堆積する金属表面に依存してもよい。例えば、グラフェンの厚さは、銅に堆積した場合、約1nm未満であってもよい。グラフェンは、単一層グラフェン、二層グラフェンまたは数層グラフェンであってもよい。グラフェンのラマンスペクトルは、無視できる強度のDピーク、およびGピーク以上の2Dピークを有することによって特徴付けられてもよい。Dピークの強度は、2DピークおよびGピークよりも著しく小さいことが理解される。
【0134】
いくつかの実装形態では、プロセス700は、基板の金属表面上のグラフェンをアニールすることをさらに含み得る。グラフェンのアニールは、グラフェン結晶構造から欠陥を除去するために高温で行われてもよい。より具体的には、グラフェンのアニールは、グラフェンの堆積温度よりも高い高温で行われてもよい。これにより、高品質のグラフェンが確実に形成される。いくつかの実装形態では、高温は、約200℃以上、約250℃以上、約300℃以上、または約400℃以上であってもよい。例えば、グラフェンが約250℃未満の温度で堆積された場合、アニールは約250℃を超える高温で行われてもよい。
【0135】
グラフェンのアニールは、グラフェンの堆積温度と半導体処理温度限界との間の温度範囲で行われてもよい。半導体処理温度限界は、基板中の材料(例えば、金属)が溶融するか、または別様に物理的な損傷を受ける感温限界であってもよい。例えば、銅の感温限界は約400℃であり、ルテニウムの感温限界は約450℃である。アニールのための高温は、半導体基板中の金属および配線工程半導体処理に適合する温度限界に依存してもよい。したがって、アニールは、グラフェンの堆積温度よりも高いが、半導体処理温度限界を超えない温度で行われてもよい。いくつかの実装形態では、グラフェンをアニールするための温度範囲は、約200℃~約450℃、約200℃~約400℃、約250℃~約400℃、または約300℃~約350℃である。
【0136】
グラフェンをアニールすると、欠陥の低減を伴うグラフェンの品質の顕著な改善をもたらすことができ、ここでDピークが減少し、2DピークとGピークとの間の比が増加し、および/またはGピークとDピークとの間の比が増加する。上記で考察されたように、Dピークの減少は、グラフェンの結晶構造における欠陥の除去を示す。2DピークとGピークとの間の比の増加は、無秩序またはアモルファス炭素とは対照的に、単一層グラフェン、二層グラフェン、または数層グラフェンの存在を示す。比が高いほど、膜の結晶性が高い。例えば、グラフェンをアニールすると、2DピークとGピークとの間の比が約1:1から約2:1に増加し得る。さらに、GピークとDピークとの間の比の増加は、粒径の増加を示す。アニールによってグラフェンの平面構造を乱す吸着物または欠陥を除去する一方、粒径を増加させ、それにより膜質を向上させることができる。いくつかの実装形態では、グラフェンのアニールは、空気または不活性ガス雰囲気中で行われ、不活性ガス雰囲気は、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、窒素(N2)、またはそれらの組合せなどの不活性ガスを含む。いくつかの実装形態では、アニールは、約30分以下、約20分以下、約10分以下、または約5分以下の期間行われてもよい。
【0137】
グラフェン膜は、一般にアニール動作を受けない。これは、グラフェンが典型的に、例えば約400℃超の高温で堆積するためである。しかし、グラフェンが低温、例えば約200℃~約300℃で堆積する場合、アニールは、半導体処理における感温限界を超えることなくグラフェン膜の品質を改善させる重要な工程であり得る。言い換えれば、アニールは、配線工程のサーマルバジェット制約の範囲内で行われる。したがって、アニールは、グラフェンを半導体処理用途に集積化する際の重要な工程であり得る。いくつかの実装形態では、アニールは、グラフェン堆積後に、ただしエッチングストップ、拡散バリアもしくは気密バリアの堆積前および/または後に行われてもよい。
【0138】
グラフェンは、金属線の実効抵抗率を低下させ、エレクトロマイグレーションを制限する可能性がある。グラフェンの低温堆積により、半導体デバイスを製造するためのプロセスフロー、例えば配線工程(BEOL)半導体処理にグラフェンを集積化することができる。BEOL半導体処理は、1つまたは複数の導電性ビアを用いて金属化層間の電気的相互接続をもたらすことを含み得る。BEOL半導体処理の間、金属化層または金属線上にグラフェンを堆積させることができる。
【0139】
装置
本開示の一態様は、本明細書に記載のグラフェン堆積方法を達成するように構成された装置である。好適な装置は、プロセス動作を達成するためのハードウェアと、本開示に従ってプロセス動作を制御するための命令を有するシステムコントローラとを含む。いくつかの実装形態では、前述のプロセス動作を実施するための装置は、遠隔プラズマ源を含み得る。遠隔プラズマ源は、直接プラズマと比較して穏やかな反応条件を提供する。
【0140】
図8は、いくつかの実装形態による遠隔プラズマ源を有する例示的なプラズマ処理装置の概略図を示す。プラズマ処理装置800は、反応チャンバ804から分離された遠隔プラズマ源802を含む。遠隔プラズマ源802は、マルチポートガス分配器とも称され得るシャワーヘッド806を介して反応チャンバ804と流体連結される。ラジカル種は遠隔プラズマ源802で発生し、反応チャンバ804に供給される。1種または複数の炭化水素前駆体が、遠隔プラズマ源802から下流かつシャワーヘッド806から下流で反応チャンバ804に供給される。1種または複数の炭化水素前駆体は、反応チャンバ804の化学蒸着ゾーン808においてラジカル種と反応し、基板812の前面にグラフェン膜を堆積させる。化学蒸着ゾーン808は、基板812の前面に隣接する環境を含み、基板812の前面は遠隔プラズマ源802に面する。
【0141】
基板812は、基板支持体または台座814上に支持される。台座814は、反応チャンバ804内で移動して、基板812を化学蒸着ゾーン808内に位置付けることができる。
図8に示される実施形態では、台座814は、化学蒸着ゾーン808内で基板812を上昇させた状態で示されている。台座814はまた、いくつかの実施形態では、基板812の温度を調整することができ、それにより基板812上の熱的に活性化された表面反応に対するいくつかの選択的な制御を提供することができる。
【0142】
図8は、遠隔プラズマ源802の周囲に配列されたコイル818を示し、遠隔プラズマ源802は外壁(例えば、石英ドーム)を含む。コイル818は、プラズマ発生器コントローラ822に電気的に連結され、プラズマ発生器コントローラ822は、誘導結合プラズマ発生を介してプラズマ領域844内にプラズマを形成し、維持するために使用され得る。いくつかの実装形態では、プラズマ発生器コントローラ822は、コイル818に電力を供給するための電源を含んでもよく、電力は、プラズマ発生中に約1~約6キロワット(kW)の範囲内であってもよい。いくつかの実装形態では、平行平板または容量結合プラズマ発生のための電極またはアンテナを使用して、誘導結合プラズマ発生ではなく、プラズマ励起を介してラジカルの連続供給を発生させてもよい。プラズマ領域844においてプラズマを点火および維持するために使用される機構にかかわらず、ラジカル種は、膜堆積中にプラズマ励起を使用して連続的に発生し得る。いくつかの実装形態では、水素ラジカルは、定常状態の膜堆積中にほぼ定常状態の条件下で発生するが、堆積の開始および終了時に過渡事象が生じる場合がある。
【0143】
水素ラジカルの供給は、水素ガスまたは他の原料ガスが遠隔プラズマ源802に供給されている間にプラズマ領域844内で連続的に発生してもよい。励起水素ラジカルは、遠隔プラズマ源802で発生してもよい。再励起されないまたはエネルギーが再供給されない場合、または他のラジカルと再結合した場合、励起水素ラジカルはそのエネルギーを失うか、または緩和する。したがって、励起水素ラジカルは、緩和して実質的に低エネルギー状態または基底状態の水素ラジカルを形成し得る。実質的に低エネルギー状態または基底状態の水素ラジカル。
【0144】
水素ガス(H2)または他の原料ガスは、1種または複数の追加ガスで希釈されてもよい。これらの1種または複数の追加ガスは、遠隔プラズマ源802に供給されてもよい。いくつかの実装形態では、水素ガスまたは他の原料ガスは、1種または複数の追加ガスと混合されてガス混合物を形成し、1種または複数の追加ガスは、キャリアガスを含んでもよい。追加ガスの非限定的な例としては、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、および窒素(N2)を挙げることができる。1種または複数の追加ガスは、遠隔プラズマ源802内の定常状態のプラズマ条件を支持するもしくは安定化させるか、または過渡プラズマ点火もしくは消弧プロセスを補助することができる。いくつかの実装形態では、例えば、水素ガスまたは他の原料ガスをヘリウムで希釈することにより、同時のプラズマ破壊を伴うことなく、より高い全圧を許容することができる。別の言い方をすれば、水素ガスとヘリウムとの希釈ガス混合物は、遠隔プラズマ源802へのプラズマ電力を増加させることなく、より高い全ガス圧力を許容することができる。特定の実施形態では、水素ガスは、ヘリウムなどのキャリア中に提供される。例として、水素ガスは、約1%~約25%の水素または約1%~約10%の水素の濃度でヘリウムキャリア中に提供され得る。
【0145】
図8に示されるように、水素ガスもしくは原料ガスを供給するため、またはバリア層上に抑制剤層を堆積させるため、ケイ素含有ガスおよび/もしくは酸素含有ガスを供給するために、原料ガス供給装置826が遠隔プラズマ源802と流体連結される。いくつかの実施形態では、抑制剤層の堆積は、グラフェン層の堆積とは別の反応チャンバで実施される。いくつかの実施形態では、抑制剤層の堆積は、反応チャンバ804などの反応チャンバ内で実施されるが、抑制剤層堆積ガスを供給するために原料ガス供給装置826が使用され、遠隔プラズマ源802は任意選択である。さらに、追加ガス供給装置828は、1種または複数の追加ガスを供給するために遠隔プラズマ源802と流体連結される。1種または複数の追加ガスは、共反応ガスを含むこともできる。
図8の実施形態は、原料ガスと1種または複数の追加ガスとのガス混合物が別個のガス出口を通して導入されていることを示すが、ガス混合物が遠隔プラズマ源802に直接導入されてもよいことが理解される。すなわち、予め混合された希釈ガス混合物が、単一のガス出口を通して遠隔プラズマ源802に供給されてもよい。
【0146】
励起された水素およびヘリウムラジカルならびに緩和されたガス/ラジカルなどのガスは、遠隔プラズマ源802から流れ出て、シャワーヘッド806を介して反応チャンバ804中に流れる。シャワーヘッド806内および反応チャンバ804内のガスは、一般に、そこで継続的なプラズマ励起に供されない。いくつかの実装形態では、シャワーヘッド806は、イオンフィルタおよび/または光子フィルタを含む。イオンおよび/または光子をフィルタリングすることにより、反応チャンバ804内での基板の損傷、分子の望ましくない再励起、および/または炭化水素前駆体の選択的破壊もしくは分解を低減することができる。シャワーヘッド806は、ガスの流れを反応チャンバ804内に拡散させるための複数のガスポート844を有してもよい。いくつかの実装形態では、複数のガスポート844は、相互に離間されてもよい。いくつかの実装形態では、複数のガスポート844は、遠隔プラズマ源802と反応チャンバ804とを隔てる板を貫通して延びる規則的に離間されたチャネルまたは貫通穴のアレイとして配列されてもよい。複数のガスポート844は、遠隔プラズマ源802から反応チャンバ804に出るラジカルを滑らかに分散させ拡散させることができる。
【0147】
典型的な遠隔プラズマ源は、反応容器から遠く離れている。その結果、例えば、壁衝突事象を介したラジカルの消弧および再結合は、活性種を実質的に減少させる可能性がある。対照的に、いくつかの実装形態では、複数のガスポート844の寸法は、反応チャンバ804へのラジカルの自由な通過を助けるために、典型的な処理条件下での平均自由行程またはガス流滞留時間を考慮して構成され得る。いくつかの実装形態では、複数のガスポート844の開口部は、シャワーヘッド806の露出表面積の約5%~約20%を占めてもよい。いくつかの実装形態では、複数のガスポート844はそれぞれ、約3:1~約10:1または約6:1~約8:1の軸方向長さ対直径比を有してもよい。このようなアスペクト比は、励起状態のラジカル種の大部分が基底状態のラジカル種に緩和するのに十分な時間を提供しながら、複数のガスポート844を通過するラジカル種の壁衝突頻度を低減し得る。いくつかの実装形態では、複数のガスポート844の寸法は、シャワーヘッド806を通過するガスの滞留時間が励起状態のラジカル種の典型的なエネルギー緩和時間よりも大きくなるように構成され得る。水素原料ガスの励起状態のラジカル種は、
図8で・H
*で示されてもよく、水素原料ガスの基底状態のラジカル種は、
図8で・Hで示されてもよい。
【0148】
いくつかの実装形態では、複数のガスポート844を出る励起状態のラジカル種は、反応チャンバ804の内部に含まれる緩和ゾーン838中に流れてもよい。緩和ゾーン838は、化学蒸着ゾーン808の上流であるがシャワーヘッド806の下流に位置付けられる。シャワーヘッド806を出る励起状態のラジカル種の実質的にすべてまたは少なくとも90%は、緩和ゾーン838において緩和状態のラジカル種に遷移する。緩和ゾーン838に入る励起状態のラジカル種(例えば、励起水素ラジカル)のほぼすべては、緩和ゾーン838を出る前に脱励起されるか、または緩和状態のラジカル種(例えば、基底状態の水素ラジカル)に遷移する。いくつかの実装形態では、緩和ゾーン838を流れるラジカル種の滞留時間、例えば、平均自由行程および平均分子速度によって決定される時間が、緩和ゾーン838から流れ出る緩和状態のラジカル種をもたらすように、プロセス条件または緩和ゾーン838の形状が構成され得る。
【0149】
シャワーヘッド806から緩和ゾーン838へのラジカル種の送達とともに、1種または複数の炭化水素前駆体が化学蒸着ゾーン808に導入されてもよい。1種または複数の炭化水素前駆体は、ガス分配器またはガス出口842を介して導入されてもよく、ガス出口842は、前駆体供給源840と流体連結されてもよい。緩和ゾーン838は、シャワーヘッド806とガス出口842との間の空間内に含まれてもよい。ガス出口842は、1種または複数の炭化水素前駆体の流れが、緩和ゾーン838から流れるガス混合物と平行な方向に導入され得るように相互に離間した開口部を含んでもよい。ガス出口842は、シャワーヘッド806および緩和ゾーン838の下流に位置してもよい。ガス出口842は、化学蒸着ゾーン808および基板812から上流に位置してもよい。化学蒸着ゾーン808は、反応チャンバ804の内部内であって、ガス出口842と基板812との間に位置する。
【0150】
1種または複数の炭化水素前駆体の流れの実質的にすべてが、シャワーヘッド806に隣接する励起状態のラジカル種と混合することを防止されてもよい。緩和または基底状態のラジカル種は、基板812に隣接する領域で、1種または複数の炭化水素前駆体と混合する。化学蒸着ゾーン808は、緩和または基底状態のラジカル種が1種または複数の炭化水素前駆体と混合する、基板812に隣接する領域を含む。緩和または基底状態のラジカル種は、グラフェンのCVD形成中に気相中で1種または複数の炭化水素前駆体と混合する。
【0151】
いくつかの実装形態では、共反応物がシャワーヘッド806から導入され、遠隔プラズマ源802で発生したラジカル種とともに反応チャンバ804中に流れてもよい。これは、遠隔プラズマ源802に提供される共反応ガスのラジカルおよび/またはイオンを含んでもよい。共反応物は、追加ガス供給装置828から供給されてもよい。いくつかの実装形態では、共反応物は、窒素ガス(N2)などの窒素含有剤を含んでもよい。例えば、窒素のラジカルおよび/またはイオンは、基板812の金属表面の前処理中に、水素のラジカル種とともに発生して流れてもよい。
【0152】
ガス出口842は、1種または複数の炭化水素前駆体の逆拡散または逆ストリームを防止するのに十分な距離だけシャワーヘッド806から離れてもよい。これにより、水素のラジカル種が励起状態から緩和状態(例えば、基底状態)に遷移するのに十分な時間を与えることができる。いくつかの実装形態では、ガス出口842は、複数のガスポート844から、約0.5インチ~約5インチ(約1.27cm~約12.7cm)、または約1.5インチ~約4.5インチ(約3.81cm~約11.43cm)、または約1.5インチ~約3インチ(約3.81cm~約7.62cm)の距離だけ離れてもよい。
【0153】
プロセスガスは、ポンプ(図示せず)に流体連結された出口848を介して反応チャンバ804から除去され得る。したがって、過剰の炭化水素前駆体、共反応物、ラジカル種、および希釈剤および置換もしくはパージガスは、反応チャンバ804から除去され得る。いくつかの実装形態では、システムコントローラ850は、プラズマ処理装置800と動作可能に通信する。いくつかの実装形態では、システムコントローラ850は、データシステム854(例えば、メモリ)に保持された命令を実行するように構成されたプロセッサシステム852(例えば、マイクロプロセッサ)を含む。いくつかの実装形態では、システムコントローラ850は、プラズマパラメータおよび/または条件を制御するためにプラズマ発生器コントローラ822と通信してもよい。いくつかの実装形態では、システムコントローラ850は、台座の高さおよび温度を制御するために、台座814と通信してもよい。いくつかの実装形態では、システムコントローラ850は、とりわけRF電力設定、周波数設定、デューティサイクル、パルス時間、反応チャンバ804内の圧力、遠隔プラズマ源802内の圧力、原料ガス供給装置826および追加ガス供給装置828からのガス流量、前駆体供給源840および他の供給源からのガス流量、台座814の温度、ならびに反応チャンバ804の温度などの他の処理条件を制御することができる。
【0154】
コントローラ850は、プラズマ処理装置800の動作のためのプロセス条件を制御するための命令を含んでもよい。コントローラ850は、典型的に1つまたは複数のメモリデバイスおよび1つまたは複数のプロセッサを含む。プロセッサは、CPUまたはコンピュータ、アナログおよび/またはデジタル入力/出力接続、ステッパモータコントローラボードなどを含んでもよい。好適な制御動作を実装するための命令は、プロセッサ上で実行される。これらの命令は、コントローラ850に関連するメモリデバイスに格納されてもよいし、ネットワークを介して提供されてもよい。
【0155】
特定の実施形態では、コントローラ850は、本明細書に記載されるプラズマ処理装置800のすべてまたは大部分の活動を制御する。例えば、コントローラ850は、グラフェンの堆積に関連するプラズマ処理装置800のすべてまたは大部分の活動、および任意選択でグラフェンを含む作製フローにおける他の動作を制御することができる。コントローラ850は、タイミング、ガス組成、ガス流量、チャンバ圧力、チャンバ温度、RF電力レベル、基板位置、および/または他のパラメータを制御するための命令のセットを含むシステム制御ソフトウェアを実行することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ850に関連するメモリデバイスに格納された他のコンピュータプログラム、スクリプト、またはルーチンが利用されてもよい。基板812に隣接する環境で比較的穏やかな反応条件を提供するために、RF電力レベル、プラズマ領域844へのガス流量、化学蒸着ゾーン808へのガス流量、およびプラズマ点火のタイミングなどのパラメータを、コントローラ850によって調整および維持することができる。さらに、基板位置を調整することにより、基板812に隣接する環境における高エネルギーラジカル種の存在をさらに低減することができる。マルチステーション反応器では、コントローラ850は、異なる装置ステーションに対して異なるまたは同一の命令を含んでもよく、したがって装置ステーションは、独立してまたは同期して動作することができる。
【0156】
いくつかの実施形態では、コントローラ850は、1種または複数の炭化水素前駆体をガス出口842を通して反応チャンバ804中に流し、原料ガスを遠隔プラズマ源802中に提供し、1種または複数の炭化水素前駆体の上流で遠隔プラズマ源802内で原料ガスの1種または複数のラジカル種を発生させ、1種または複数のラジカル種を遠隔プラズマ源802から反応チャンバ804に導入して1種または複数の炭化水素前駆体と反応させて、基板812の金属表面上にグラフェンを堆積させるなどの動作を実施するための命令を含み得る。基板812に隣接する環境における反応チャンバ804内の1種または複数のラジカル種は、基底状態の水素ラジカルであってもよい。いくつかの実装形態では、コントローラ850は、グラフェンを堆積させる前に基板812の金属表面を処理するための命令を含み得る。いくつかの実装形態では、コントローラ850は、基板812の温度を約400℃以下、または約200℃~約400℃に維持するための命令を含み得る。いくつかの実装形態では、1種または複数の炭化水素前駆体のそれぞれは、アルケンまたはアルキン基を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、プラズマ処理装置800は、コントローラ850に関連するユーザインターフェースを含んでもよい。ユーザインターフェースは、ディスプレイスクリーン、プラズマ処理装置800および/またはプロセス条件のグラフィカルソフトウェアディスプレイ、ならびにポインティングデバイス、キーボード、タッチスクリーン、マイクロフォンなどのユーザ入力デバイスを含んでもよい。
【0158】
上記の動作を制御するためのコンピュータプログラムコードは、任意の従来のコンピュータ可読プログラミング言語:例えば、アセンブリ言語、C、C++、Pascal、Fortranなどで記述することができる。コンパイルされたオブジェクトコードまたはスクリプトは、プロセッサによって実行され、プログラムで特定されたタスクを実施する。
【0159】
プロセスを監視するための信号は、システムコントローラのアナログおよび/またはデジタル入力接続によって提供されてもよい。プロセスを制御するための信号は、処理システムのアナログおよびデジタル出力接続で出力される。
【0160】
一般に、本明細書に記載の方法は、1もしくは複数の処理ツール、1もしくは複数のチャンバ、1もしくは複数の処理用プラットフォーム、および/または特定の処理構成要素(ウェハ台座、ガス流システムなど)などの半導体処理機器を含むシステム上で実施することができる。これらのシステムは、半導体ウェハまたは基板の処理前、間および後の動作を制御するための電子機器と集積化されてもよい。一般に、電子機器はコントローラと称され、これらは1もしくは複数のシステムの様々な構成要素またはサブ部分を制御することができる。コントローラは、処理要件および/またはシステムの種類に応じて、処理ガスの送達、温度設定(例えば、加熱および/または冷却)、圧力設定、真空設定、電力設定、RF発生器設定、RFマッチング回路設定、周波数設定、流量設定、流体送達設定、位置および動作設定、ツールへのおよびツールからのウェハ搬送、ならびに特定のシステムに接続またはインターフェースされた他の搬送ツールおよび/またはロードロックを含む、本明細書に開示されるプロセスのいずれかを制御するようにプログラムされてもよい。
【0161】
概して、コントローラは、命令を受信し、命令を発行し、動作を制御し、洗浄動作を可能にし、エンドポイント測定を可能にするなどの様々な集積回路、ロジック、メモリおよび/またはソフトウェアを有する電子機器として定義され得る。集積回路は、プログラム命令を格納するファームウェアの形態のチップ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)として定義されるチップ、および/またはプログラム命令(例えば、ソフトウェア)を実行する1つまたは複数のマイクロプロセッサもしくはマイクロコントローラを含み得る。プログラム命令は、半導体ウェハ上もしくは半導体ウェハのための、またはシステムに対する特定のプロセスを行うための動作パラメータを定義する様々な個別設定(またはプログラムファイル)の形態でコントローラに通信される命令であってもよい。動作パラメータは、いくつかの実施形態では、ウェハの1つまたは複数の層、材料(例えば、炭化ケイ素)、表面、回路および/またはダイの作製中に、1つまたは複数の処理工程を達成するためにプロセスエンジニアによって定義されたレシピの一部であってもよい。
【0162】
コントローラは、いくつかの実装形態では、システムと集積化されている、システムに連結されている、そうでなければシステムにネットワーク接続されているコンピュータの一部であるか、またはコンピュータに連結されているか、またはそれらの組合せである可能性がある。例えば、コントローラは、「クラウド」またはファブホストコンピュータシステムの全部または一部にあってもよく、これによりウェハ処理の遠隔アクセスを可能にすることができる。コンピュータは、システムへの遠隔アクセスを可能にして作製動作の現在の進捗状況を監視し、過去の作製動作の履歴を調べ、複数の作製動作からの傾向または性能指標を調べ、現在の処理のパラメータを変更し、現在の処理に続く処理工程を設定するか、または新しいプロセスを開始することができる。いくつかの例では、遠隔コンピュータ(例えば、サーバー)は、ローカルネットワークまたはインターネットを含み得るネットワークを介してシステムにプロセスレシピを提供することができる。遠隔コンピュータは、パラメータおよび/または設定の入力またはプログラミングを可能にするユーザインターフェースを含んでもよく、パラメータおよび/または設定は、遠隔コンピュータからシステムに通信される。いくつかの例では、コントローラは、1つまたは複数の動作中に実施される処理工程のそれぞれのパラメータを指定するデータの形態の命令を受信する。パラメータは、実施されるプロセスのタイプ、およびコントローラがインターフェースまたは制御するように構成されるツールのタイプに固有であり得ることが理解されるべきである。したがって、上述したように、コントローラは、互いにネットワーク接続され、本明細書に記載されるプロセスおよび制御などの共通の目的に向かって作動する1つまたは複数の個別のコントローラを含むことなどにより、分散型であってもよい。このような目的のための分散型コントローラの例は、チャンバ上のプロセスを制御するために組み合わされる、遠隔に(例えばプラットフォームレベルで、または遠隔コンピュータの一部として)位置する1つまたは複数の集積回路と通信するチャンバ上の1つまたは複数の集積回路である。
【0163】
本明細書に記載されるグラフェン堆積に加えて、例示的なシステムは、プラズマエッチングチャンバまたはモジュール、堆積チャンバまたはモジュール、スピンリンスチャンバまたはモジュール、金属めっきチャンバまたはモジュール、洗浄チャンバまたはモジュール、ベベルエッジエッチングチャンバまたはモジュール、物理蒸着(PVD)チャンバまたはモジュール、化学蒸着(CVD)チャンバまたはモジュール、原子層堆積(ALD)チャンバまたはモジュール、原子層エッチング(ALE)チャンバまたはモジュール、イオン注入チャンバまたはモジュール、トラックチャンバまたはモジュール、および半導体ウェハの作製および/または製造に関連するまたは使用される可能性のある任意の他の半導体処理システムを含み得る。
【0164】
上述したように、ツールによって実施される1または複数のプロセス工程に応じて、コントローラは、他のツール回路またはモジュール、他のツール構成要素、クラスタツール、他のツールインターフェース、隣接ツール、近隣ツール、工場全体に位置するツール、メインコンピュータ、別のコントローラ、または半導体製造工場内のツール位置および/もしくはロードポートに、かつそれらからウェハの容器を運ぶ材料輸送に使用されるツールのうちの1つまたは複数と通信する可能性がある。
【0165】
図9は、プロセスチャンバ本体902を有する原子層堆積(ALD)プロセスステーション900の実施形態の概略図を示す。複数のALDプロセスステーション900が共通の低圧プロセスツール環境に含まれてもよい。いくつかの実施形態では、以下で詳細に考察されるものを含むALDプロセスステーション900の1つまたは複数のハードウェアパラメータは、1つまたは複数のコンピュータコントローラ950によってプログラム的に調整され得る。
【0166】
ALDプロセスステーション900は、プロセスガスを分配シャワーヘッド906に送達するための反応物送達システム901aと流体通信する。反応物送達システム901aは、シャワーヘッド906に送達するためのブロック試薬ガス、金属前駆体ガス、または酸素含有ガスなどのプロセスガスをブレンドおよび/または調整するための混合容器904を含む。1つまたは複数の混合容器入口弁920は、混合容器904へのプロセスガスの導入を制御することができる。
【0167】
例として、
図9の実施形態は、混合容器904に供給される液体反応物を気化させるための気化点903を含む。いくつかの実施形態では、気化点903は加熱気化器であってもよい。そのような気化器から生成された飽和反応物蒸気は、下流の送達配管内で凝縮してもよい。凝縮した反応物に不適合ガスを曝露すると、小粒子が発生する場合がある。これらの小粒子は配管を詰まらせ、弁の動作を妨げ、基板を汚染するなどの可能性がある。このような問題に対処するためのいくつかのアプローチは、残留反応物を除去するために送達配管をパージおよび/または排気することを含む。しかし、送達配管のパージは、プロセスステーションのサイクルタイムを増加させ、プロセスステーションのスループットを低下させる可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、気化点903の下流の送達配管は、ヒートトレースされてもよい。いくつかの例では、混合容器904もヒートトレースされてもよい。非限定的な一例では、気化点903の下流の配管は、混合容器904でおよそ100℃からおよそ150℃に及ぶ増加する温度プロファイルを有する。
【0168】
いくつかの実施形態では、液体前駆体または液体反応物は、液体注入器で気化させることができる。例えば、液体注入器は、混合容器の上流のキャリアガスストリームに液体反応物のパルスを注入することができる。一実施形態では、液体注入器は、液体をより高圧からより低圧にフラッシングすることによって反応物を気化させることができる。別の例では、液体注入器は、液体を霧化して分散した微小液滴にすることができ、微小液滴は、その後加熱された送達パイプ内で気化される。より小さな液滴はより大きな液滴よりも速く気化し、液体注入と完全な気化との間の遅延を低減させることができる。より速い気化は、気化点903から下流の配管の長さを短くすることができる。1つの状況では、液体注入器は混合容器904に直接取り付けられてもよい。別の状況では、液体注入器はシャワーヘッド906に直接取り付けられてもよい。
【0169】
いくつかの実施形態では、気化およびプロセスステーション900への送達のための液体の質量流量を制御するために、気化点903の上流の液体流量コントローラ(LFC)が提供されてもよい。例えば、LFCは、LFCの下流に位置する熱質量流量メータ(MFM)を含んでもよい。LFCのプランジャー弁は、MFMと電気通信する比例-積分-微分(PID)コントローラによって提供されるフィードバック制御信号に応答して調整されてもよい。しかし、フィードバック制御を使用して液体流量を安定させるのに1秒以上かかる場合がある。このため、液体反応物をドースする時間が延びる可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、LFCをフィードバック制御モードと直接制御モードとの間で動的に切り替えることができる。いくつかの実施形態では、これは、LFCおよびPIDコントローラのセンスチューブを無効にすることによって実施され得る。
【0170】
シャワーヘッド906は、基板912に向けてプロセスガスを分配する。
図9に示される実施形態では、基板912はシャワーヘッド906の下に位置し、台座908の上にある状態で示されている。シャワーヘッド906は、任意の好適な形状を有することができ、基板912にプロセスガスを分配するための任意の好適な数および配列のポートを有することができる。
【0171】
いくつかの実施形態では、台座908は、基板912とシャワーヘッド906との間の容積に基板912を曝露するために上昇または下降させることができる。いくつかの実施形態では、台座の高さは、好適なコンピュータコントローラ950によってプログラム的に調整され得ることが理解される。プロセスフェーズの終了時に、台座908は、台座908からの基板912の取り外しを可能にするために、別の基板搬送フェーズの間に下げられてもよい。
【0172】
いくつかの実施形態では、台座908は、ヒータ910を介して温度制御されてもよい。いくつかの実施形態では、台座908は、少なくとも約25℃、または約25℃~約400℃の温度に加熱されてもよい。様々な実施形態では、プロセスステーション900は、プラズマを点火することなく使用される。
【0173】
さらに、いくつかの実施形態では、プロセスステーション900の圧力制御は、バタフライ弁918によってもたらされてもよい。
図9の実施形態に示されるように、バタフライ弁918は、下流の真空ポンプ(図示せず)によって提供される真空を絞る。しかし、いくつかの実施形態では、プロセスステーション900の圧力制御はまた、プロセスステーション900に導入される1種または複数のガスの流量を変化させることによって調整されてもよい。
【0174】
いくつかの実施形態では、シャワーヘッド906の位置は、基板912とシャワーヘッド906との間の容積を変化させるために、台座908に対して調整され得る。さらに、台座908および/またはシャワーヘッド906の垂直位置は、本開示の範囲内の任意の好適な機構によって変化させてもよいことが理解される。いくつかの実施形態では、台座908は、基板912の向きを回転させるための回転軸を含み得る。いくつかの実施形態では、これらの例示的な調整のうちの1つまたは複数が、1つまたは複数の好適なコンピュータコントローラ950によってプログラム的に実施されてもよいことが理解される。
【0175】
プラズマベースのプロセスでは、台座908の高さを調整すると、プラズマが点火される実施形態におけるプロセス中のプラズマ活性化サイクル中にプラズマ密度を変化させることができる。プラズマが使用され得るいくつかの実施形態では、シャワーヘッド906および台座908は、プラズマに電力を供給するための無線周波数(RF)電源914およびマッチングネットワーク916と電気通信する。いくつかの実施形態では、プラズマエネルギーは、プロセスステーション圧力、ガス濃度、RF源電力、RF源周波数、およびプラズマ電力パルスタイミングのうちの1つまたは複数を制御することによって制御され得る。例えば、RF電源914およびマッチングネットワーク916は、ラジカル種の所望の組成を有するプラズマを形成するために、任意の好適な電力で動作し得る。好適な電力の例は、約150W~約6000Wである。プラズマは、抑制剤層の堆積および/または除去に使用することができる。RF電源914は、任意の好適な周波数のRF電力を提供することができる。いくつかの実施形態では、RF電源914は、高および低周波RF電源を互いに独立して制御するように構成されてもよい。例示的な低周波RF周波数としては、約0kHz~約500kHzの周波数を挙げることができるがこれらに限定されない。例示的な高周波RF周波数としては、約1.8MHz~約2.45GHz、または約13.56MHz超、または27MHz超、または40MHz超、または60MHz超の周波数を挙げることができるがこれらに限定されない。表面反応のためのプラズマエネルギーを提供するために、任意の好適なパラメータを離散的または連続的にモジュレートすることができることが理解される。
【0176】
いくつかの実施形態では、プラズマは、1つまたは複数のプラズマモニタによってin-situで監視されてもよい。1つの状況では、プラズマ電力は、1つまたは複数の電圧、電流センサ(例えば、VIプローブ)によって監視されてもよい。別の状況では、プラズマ密度および/またはプロセスガス濃度は、1つまたは複数の発光分光センサ(OES)によって測定されてもよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のプラズマパラメータは、そのようなin-situプラズマモニタからの測定に基づいてプログラム的に調整されてもよい。例えば、OESセンサは、プラズマ電力のプログラム制御を提供するためのフィードバックループに使用されてもよい。いくつかの実施形態では、プラズマおよび他のプロセス特性を監視するために他のモニタが使用され得ることが理解される。このようなモニタとして、赤外線(IR)モニタ、音響モニタおよび圧力変換器を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0177】
いくつかの実施形態では、コントローラ950に対する命令は、入力/出力制御(IOC)シーケンス命令によって提供されてもよい。一例では、プロセスフェーズの条件を設定するための命令は、プロセスレシピの対応するレシピフェーズに含まれてもよい。いくつかの場合では、プロセスレシピフェーズは、プロセスフェーズに対するすべての命令がそのプロセスフェーズと同時に実行されるように、順次配列されてもよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の反応器パラメータを設定するための命令は、レシピフェーズに含まれてもよい。例えば、第1のレシピフェーズは、抑制剤層堆積前駆体の流量を設定するための命令、キャリアガス(アルゴンなど)の流量を設定するための命令、および第1のレシピフェーズの時間遅延命令を含んでもよい。第2のレシピフェーズは、不活性および/もしくは反応ガスの流量をモジュレートまたは停止するための命令、ならびにキャリアまたはパージガスの流量をモジュレートするための命令、ならびに第2のレシピフェーズの時間遅延命令を含んでもよい。第3の後続のレシピフェーズは、アルコールなどの抑制剤層反応ガスの流量をモジュレートするための命令、キャリアまたはパージガスの流量をモジュレートするための命令、および第3のレシピフェーズの時間遅延命令を含んでもよい。第4の後続のレシピフェーズは、不活性および/もしくは反応ガスの流量をモジュレートまたは停止するための命令、ならびにキャリアまたはパージガスの流量をモジュレートするための命令、ならびに第4のレシピフェーズの時間遅延命令を含んでもよい。これらのレシピフェーズは、開示された実施形態の範囲内で、任意の好適な方法でさらに細分化および/または反復され得ることが理解される。いくつかの実施形態では、コントローラ950は、
図8のシステムコントローラ850に関して上述した特徴のいずれかを含み得る。
【0178】
定義
本明細書で互換的に使用される用語「アシル」または「アルカノイル」は、本明細書で定義されるカルボニル基によって親分子基に結合した直鎖、分岐、環式構造、飽和、不飽和および芳香族、ならびにそれらの組合せの1、2、3、4、5、6、7、8またはそれ以上の炭素原子の基、または水素を表す。この基は、ホルミル(-C(O)H)、アセチル(Acまたは-C(O)Me)、プロピオニル、イソブチリル、ブタノイルなどによって例示される。いくつかの実施形態では、アシルまたはアルカノイル基は-C(O)-R(式中、Rは、本明細書で定義される、水素、脂肪族基、または芳香族基である)である。
【0179】
「アルカノイルオキシ」は、本明細書で定義されるオキシ基によって親分子基に結合した、本明細書で定義されるアルカノイル基を意味する。この基は、アセトキシ(-OAcまたは-OC(O)Me)によって例示される。いくつかの実施形態では、アルカノイルオキシ基は-OC(O)-R(式中、Rは、本明細書で定義される、水素、脂肪族基、または芳香族基である)である。
【0180】
「脂肪族」は、少なくとも1個の炭素原子~50個の炭素原子(C1~50)、例えば1~25個の炭素原子(C1~25)、または1~10個の炭素原子(C1~10)を有し、それらの環式バージョンを含むアルカン(またはアルキル)、アルケン(またはアルケニル)、アルキン(またはアルキニル)を含み、直鎖および分岐鎖配列、ならびにすべての立体および位置異性体もさらに含む炭化水素基を意味する。脂肪族基は非置換であるか、または例えば本明細書に記載の官能基によって置換されている。例えば、脂肪族基は、アルキルについて本明細書に記載される1つまたは複数の置換基で置換され得る。
【0181】
「脂肪族-カルボニル」は、本明細書に開示される化合物に結合しているまたは結合し得る脂肪族基を意味し、脂肪族基は、カルボニル基(-C(O)-)を介して結合しているまたは結合するようになる。いくつかの実施形態では、脂肪族-カルボニル基は-C(O)-R(式中、Rは、本明細書で定義される任意選択で置換された脂肪族基である)である。
【0182】
「脂肪族-カルボニルオキシ」は、本明細書に開示される化合物に結合しているまたは結合し得る脂肪族基を意味し、ここで脂肪族基は、カルボニルオキシ基(-OC(O)-)を介して結合しているまたは結合するようになる。いくつかの実施形態では、脂肪族-カルボニルオキシ基は-OC(O)-R(式中、Rは、本明細書で定義される任意選択で置換された脂肪族基である)である。
【0183】
「脂肪族-オキシ」は、本明細書に開示される化合物に結合しているまたは結合し得る脂肪族基を意味し、脂肪族基は、オキシ基(-C(O)-)を介して結合しているまたは結合するようになる。いくつかの実施形態では、脂肪族-オキシ基は-O-R(式中、Rは、本明細書で定義される任意選択で置換された脂肪族基である)である。
【0184】
「脂肪族-オキシカルボニル」は、本明細書に開示される化合物に結合しているまたは結合し得る脂肪族基を意味し、脂肪族基は、オキシカルボニル基(-C(O)O-)を介して結合しているまたは結合するようになる。いくつかの実施形態では、脂肪族-オキシカルボニル基は-C(O)O-R(式中、Rは、本明細書で定義される任意選択で置換された脂肪族基である)である。
【0185】
「アルキル-アリール」、「アルケニル-アリール」、および「アルキニル-アリール」は、本明細書で定義されるアリール基を介して親分子基に連結(もしくは結合)しているまたは連結(もしくは結合)し得る、それぞれ本明細書で定義されるアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を意味する。アルキル-アリール、アルケニル-アリールおよび/またはアルキニル-アリール基は、置換または非置換であってもよい。例えば、アルキル-アリール、アルケニル-アリールおよび/またはアルキニル-アリール基は、アルキルおよび/またはアリールについて本明細書に記載される1つまたは複数の置換基で置換され得る。例示的な非置換アルキル-アリール基は、炭素数7~16のもの(C7~16アルキル-アリール)、ならびに炭素数1~6のアルキル基および炭素数4~18のアリール基を有するもの(すなわち、C1~6アルキル-C4~18アリール)である。例示的な非置換アルケニル-アリール基は、炭素数7~16のもの(C7~16アルケニル-アリール)、ならびに炭素数2~6のアルケニル基および炭素数4~18のアリール基を有するもの(すなわち、C2~6アルケニル-C4~18アリール)である。例示的な非置換アルキニル-アリール基は、炭素数7~16のもの(C7~16アルキニル-アリール)、ならびに炭素数2~6のアルキニル基および炭素数4~18のアリール基を有するもの(すなわち、C2~6アルキニル-C4~18アリール)である。いくつかの実施形態では、アルキル-アリール基は-L-R(式中、Lは、本明細書で定義されるアリール基またはアリーレン基であり、Rは本明細書で定義されるアルキル基である)である。いくつかの実施形態では、アルケニル-アリール基は-L-R(式中、Lは、本明細書で定義されるアリール基またはアリーレン基であり、Rは本明細書で定義されるアルケニル基である)である。いくつかの実施形態では、アルキニル-アリール基は-L-R(式中、Lは、本明細書で定義されるアリール基またはアリーレン基であり、Rは本明細書で定義されるアルキニル基である)である。
【0186】
「アルケニル」は、少なくとも2個の炭素原子~50個の炭素原子(C2~50)、例えば2~25個の炭素原子(C2~25)、または2~10個の炭素原子(C2~10)、および少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する不飽和一価炭化水素を意味し、ここで不飽和一価炭化水素は、親アルケンの1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することから誘導され得る。アルケニル基は、分岐、直鎖、環式(例えば、シクロアルケニル)、シス、またはトランス(例えば、EまたはZ)であってもよい。例示的なアルケニルは、1つまたは複数の二重結合を有する任意選択で置換されたC2~24アルキル基を含む。アルケニル基は、1つまたは複数の水素を除去して、親分子基への適切な結合または親分子基と別の置換基との間の適切な結合を形成することによって一価または多価(例えば、二価)にすることができる。アルケニル基はまた、置換または非置換であってもよい。例えば、アルケニル基は、アルキルについて本明細書に記載される1つまたは複数の置換基で置換され得る。非限定的なアルケニル基としては、アリル(All)、ビニル(Vi)、1-ブテニル、2-ブテニルなどが挙げられる。
【0187】
「アルコキシ」は-OR(式中、Rは、本明細書に記載される任意選択で置換された脂肪族基である)を意味する。例示的なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシ、トリハロアルコキシ、例えばトリフルオロメトキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルコキシ基は、置換または非置換であってもよい。例えば、アルコキシ基は、アルキルについて本明細書に記載される1つまたは複数の置換基で置換され得る。例示的な非置換アルコキシ基としては、C1~3、C1~6、C1~12、C1~16、C1~18、C1~20またはC1~24アルコキシ基が挙げられる。
【0188】
「アルコキシアルキル」は、本明細書で定義されるアルコキシ基で置換された、本明細書で定義されるアルキル基を意味する。例示的な非置換アルコキシアルキル基としては、炭素数2~12(C2~12アルコキシアルキル)、ならびに炭素数1~6のアルキル基および炭素数1~6のアルコキシ基を有するもの(すなわち、C1~6アルコキシ-C1~6アルキル)が挙げられる。いくつかの実施形態では、アルコキシアルキル基は-L-O-R(式中、LおよびRのそれぞれは、独立して本明細書で定義されるアルキル基である)である。
【0189】
「アルコキシカルボニル」は-C(O)-OR(式中、Rは、本明細書に記載される任意選択で置換された脂肪族基である)を意味する。特定の実施形態では、アルコキシカルボニル基は-C(O)-OAk(式中、Akは、本明細書で定義されるアルキル基である)である。アルコキシカルボニル基は、置換または非置換であってもよい。例えば、アルコキシカルボニル基は、アルキルについて本明細書に記載される1つまたは複数の置換基で置換され得る。例示的な非置換アルコキシカルボニル基としては、C2~3、C2~6、C2~7、C2~12、C2~16、C2~18、C2~20またはC2~24アルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0190】
「アルキル」は、少なくとも1個の炭素原子~50個の炭素原子(C1~50)、例えば1~25個の炭素原子(C1~25)、または1~10個の炭素原子(C1~10)を有する飽和一価炭化水素を意味し、ここで飽和一価炭化水素は、親化合物(例えば、アルカン)の1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することから誘導され得る。アルキル基は、分岐、直鎖、または環式(例えば、シクロアルキル)であってもよい。例示的なアルキルとしては、炭素原子数1~24の分岐または非分岐飽和炭化水素基、例えばメチル(Me)、エチル(Et)、n-プロピル(nPr)、イソプロピル(iPr)、n-ブチル(nBu)、イソブチル(iBu)、sec-ブチル(sBu)、tert-ブチル(tBu)、ペンチル(Pe)、n-ペンチル(nPe)、イソペンチル(iPe)、s-ペンチル(sPe)、ネオペンチル(neoPe)、tert-ペンチル(tPe)、ヘキシル(Hx)、ヘプチル(Hp)、オクチル(Oc)、ノニル(Nn)、デシル(De)、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどが挙げられる。アルキル基はまた、置換または非置換であってもよい。アルキル基は、1つまたは複数の水素を除去して、親分子基への適切な結合または親分子基と別の置換基との間の適切な結合を形成することにより、一価または多価(例えば、二価)にすることができる。例えば、アルキル基は、以下からなる群から独立して選択される1個、2個、3個、または炭素数2以上のアルキル基の場合は4個の置換基で置換されてもよい:(1)C1~6アルコキシ(例えば-O-R(式中、RはC1~6アルキルである))、(2)C1~6アルキルスルフィニル(例えば-S(O)-R(式中、RはC1~6アルキルである))、(3)C1~6アルキルスルホニル(例えば-SO2-R(式中、RはC1~6アルキルである))、(4)アミノ(例えば-NR1R2(式中、R1およびR2のそれぞれは、独立して本明細書で定義される、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族、もしくはそれらの任意の組合せから選択されるか、またはR1およびR2は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、本明細書で定義されるヘテロシクリル基を形成し得る))、(5)アリール、(6)アリールアルコキシ(例えば-O-L-R(式中、LはアルキルでありRはアリールである))、(7)アリーロイル(例えば-C(O)-R(式中、Rはアリールである))、(8)アジド(例えば-N3)、(9)シアノ(例えば-CN)、(10)アルデヒド(例えば-C(O)H)、(11)C3~8シクロアルキル、(12)ハロ、(13)ヘテロシクリル(例えば、本明細書で定義されるように、例えば1個、2個、3個または4個の非炭素ヘテロ原子を含む5、6または7員環)、(14)ヘテロシクリルオキシ(例えば-O-R(式中、Rは、本明細書で定義されるヘテロシクリルである))、(15)ヘテロシクリロイル(例えば-C(O)-R(式中、Rは、本明細書中で定義されるヘテロシクリルである))、(16)ヒドロキシル(例えば-OH)、(17)N-保護アミノ、(18)ニトロ(例えば-NO2)、(19)オキソ(例えば=O)、(20)C1~6チオアルキル(例えば-S-R(式中、Rはアルキルである))、(21)チオール(例えば-SH)、(22)-CO2R1(式中、R1は、(a)水素、(b)C1~6アルキル、(c)C4~18アリール、および(d)C4~18アリール-C1~6アルキル(例えば-L-R(式中、LはC1~6アルキルであり、RはC4~18アリールである)からなる群から選択される)、(23)-C(O)NR1R2(式中、R1およびR2のそれぞれは、独立して(a)水素、(b)C1~6アルキル、(c)C4~18アリール、および(d)C4~18アリール-C1~6アルキル(例えば-L-R(式中、LはC1~6アルキルであり、RはC4~18アリールである))からなる群から選択される)、(24)-SO2R1(式中、R1は、(a)C1~6アルキル、(b)C4~18アリール、および(c)C4~18アリール-C1~6アルキル(例えば-L-R(式中、LはC1~6アルキルであり、RはC4~18アリールである))からなる群から選択される)、(25)-SO2NR1R2(式中、R1およびR2のそれぞれは、独立して(a)水素、(b)C1~6アルキル、(c)C4~18アリール、および(d)C4~18アリール-C1~6アルキル(例えば-L-R(式中、LはC1~6アルキルであり、RはC4~18アリールである))からなる群から選択される)、ならびに(26)-NR1R2(式中、R1およびR2のそれぞれは、独立して(a)水素、(b)N-保護基、(c)C1~6アルキル、(d)C2~6アルケニル、(e)C2~6アルキニル、(f)C4~18アリール、(g)C4~18アリール-C1~6アルキル(例えば-L-R(式中、LはC1~6アルキルであり、RはC4~18アリールである))、(h)C3~8シクロアルキル、および(i)C3~8シクロアルキル-C1~6アルキル(例えば-L-R(式中、LはC1~6アルキルであり、RはC3~8シクロアルキルである))からなる群から選択され、一実施形態では、2つの基は、カルボニル基またはスルホニル基を介して窒素原子に結合しない)。アルキル基は、1つまたは複数の置換基(例えば、1つまたは複数のハロまたはアルコキシ)で置換された第一級、第二級または第三級アルキル基であってもよい。いくつかの実施形態では、非置換アルキル基は、C1~3、C1~6、C1~12、C1~16、C1~18、C1~20またはC1~24アルキル基である。
【0191】
「アルキレン」、「アルケニレン」、または「アルキニレン」は、それぞれ本明細書に記載されるアルキル、アルケニルまたはアルキニル基の多価(例えば、二価)形態を意味する。例示的なアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、アルキレン基は、C1~3、C1~6、C1~12、C1~16、C1~18、C1~20、C1~24、C2~3、C2~6、C2~12、C2~16、C2~18、C2~20またはC2~24アルキレン基である。他の実施形態では、アルキレン基は、C2~3、C2~6、C2~12、C2~16、C2~18、C2~20またはC2~24アルケニレンもしくはアルキニレン基である。アルキレン、アルケニレンまたはアルキニレン基は、分岐または非分岐であってもよい。アルキレン、アルケニレンまたはアルキニレン基はまた、置換または非置換であってもよい。例えば、アルキレン、アルケニレンまたはアルキニレン基は、アルキルについて本明細書に記載される1つまたは複数の置換基で置換され得る。
【0192】
「アルキルスルフィニル」は、-S(O)-基を介して親分子基に結合した、本明細書で定義されるアルキル基を意味する。いくつかの実施形態では、非置換アルキルスルフィニル基は、C1~6またはC1~12アルキルスルフィニル基である。他の実施形態では、アルキルスルフィニル基は-S(O)-R(式中、Rは、本明細書で定義されるアルキル基である)である。
【0193】
「アルキルスルフィニルアルキル」は、アルキルスルフィニル基で置換された、本明細書で定義されるアルキル基を意味する。いくつかの実施形態では、非置換アルキルスルフィニルアルキル基は、C2~12またはC2~24アルキルスルフィニルアルキル基(例えば、C1~6アルキルスルフィニル-C1~6アルキルまたはC1~12アルキルスルフィニル-C1~12アルキル)である。他の実施形態では、アルキルスルフィニルアルキル基は-L-S(O)-R(式中、LおよびRのそれぞれは、独立して本明細書で定義されるアルキル基である)である。
【0194】
「アルキルスルホニル」は、-SO2-基を介して親分子基に結合した、本明細書で定義されるアルキル基を意味する。いくつかの実施形態では、非置換アルキルスルホニル基は、C1~6またはC1~12アルキルスルホニル基である。他の実施形態では、アルキルスルホニル基は-SO2-R(式中、Rは、任意選択で置換されたアルキル(例えば、本明細書に記載されるように、任意選択で置換されたC1~12アルキル、ハロアルキル、またはペルフルオロアルキルを含む)である)である。
【0195】
「アルキルスルホニルアルキル」は、アルキルスルホニル基で置換された、本明細書で定義されるアルキル基を意味する。いくつかの実施形態では、非置換アルキルスルホニルアルキル基は、C2~12またはC2~24アルキルスルホニルアルキル基(例えば、C1~6アルキルスルホニル-C1~6アルキルまたはC1~12アルキルスルホニル-C1~12アルキル)である。他の実施形態では、アルキルスルホニルアルキル基は-L-SO2-R(式中、LおよびRのそれぞれは、独立して本明細書で定義されるアルキル基である)である。
【0196】
「アルキニル」は、少なくとも2個の炭素原子~50個の炭素原子(C2~50)、例えば2~25個の炭素原子(C2~25)、または2~10個の炭素原子(C2~10)、および少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する不飽和一価炭化水素を意味し、ここで不飽和一価炭化水素は、親アルキンの1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することから誘導され得る。アルキニル基は、分岐、直鎖、または環式(例えば、シクロアルキニル)であってもよい。例示的なアルキニルには、1つまたは複数の三重結合を有する任意選択で置換されたC2~24アルキル基が含まれる。アルキニル基は、環式または非環式であってもよく、エチニル、1-プロピニルなどによって例示される。アルキニル基は、1つまたは複数の水素を除去して、親分子基への適切な結合または親分子基と別の置換基との間の適切な結合を形成することにより、一価または多価(例えば、二価)にすることができる。アルキニル基はまた、置換または非置換であってもよい。例えば、アルキニル基は、アルキルについて本明細書に記載される1つまたは複数の置換基で置換され得る。
【0197】
「周囲温度」は、16℃~26℃、例えば19℃~25℃または20℃~25℃の範囲の温度を意味する。
【0198】
「アミド」は、-C(O)NR1R2または-NHCOR1(式中、R1およびR2のそれぞれは、独立して本明細書で定義される、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族もしくはそれらの任意の組合せから選択されるか、またはR1およびR2は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、本明細書で定義されるヘテロシクリル基を形成し得る)を意味する。
【0199】
「アミノ」は-NR1R2(式中、R1およびR2のそれぞれは、独立して本明細書で定義される、水素、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたシリル、または任意選択で置換されたシリルオキシ、もしくはそれらの任意の組合せから選択されるか、またはR1およびR2は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、本明細書で定義されるヘテロシクリル基を形成し得る)を意味する。特定の実施形態では、R1およびR2のそれぞれは、独立してH、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたアルキル-アリール、任意選択で置換されたアリール-アルキル、任意選択で置換されたシリル、または任意選択で置換されたシリルオキシである。特定の実施形態では、R1およびR2は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができる。
【0200】
「アミノアルキル」は、本明細書で定義されるアミノ基で置換された、本明細書で定義されるアルキル基を意味する。いくつかの実施形態では、アミノアルキル基は-L-NR1R2(式中、Lは本明細書で定義されるアルキル基であり、R1およびR2のそれぞれは、独立して本明細書で定義される、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、もしくは芳香族もしくはそれらの任意の組合せから選択されるか、またはR1およびR2は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、本明細書で定義されるヘテロシクリル基を形成し得る)である。他の実施形態では、アミノアルキル基は-L-C(NR1R2)(R3)-R4(式中、Lは、本明細書で定義される共有結合またはアルキル基であり、R1およびR2のそれぞれは、独立して本明細書で定義される、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、もしくは芳香族もしくはそれらの任意の組合せから選択されるか、またはR1およびR2は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、本明細書で定義されるヘテロシクリル基を形成してもよく、R3およびR4のそれぞれは、独立してHまたは本明細書で定義されるアルキルである)である。
【0201】
「アミノオキシ」は、本明細書で定義されるアミノ基で置換された、本明細書で定義されるオキシ基を意味する。いくつかの実施形態では、アミノオキシ基は-O-NR1R2(式中、R1およびR2のそれぞれは、独立して本明細書で定義される、水素、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたシリル、もしくは任意選択で置換されたシリルオキシもしくはそれらの組合せから選択されるか、またはR1およびR2は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、本明細書で定義されるヘテロシクリル基を形成し得る)である。特定の実施形態では、R1およびR2のそれぞれは、独立してH、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたアルキル-アリール、任意選択で置換されたアリール-アルキル、任意選択で置換されたシリル、または任意選択で置換されたシリルオキシである。
【0202】
「芳香族」は、別段の指定がない限り、単環(例えば、フェニル)、または少なくとも1つの環が芳香族である複数の縮合環(例えば、ナフチル、インドリル、またはピラゾロピリジニル)を有する5~15個の環原子の環式共役基または部分を意味する、すなわち、少なくとも1つの環、および任意選択で複数の縮合環は、連続した非局在化π電子系を有する。典型的に、面外π電子の数は、ヒュッケル則(4n+2)に対応する。親構造への結合点は、典型的に縮合環系の芳香族部分を介する。芳香族基は非置換であるか、または例えば本明細書に記載の官能基で置換されている。例えば、芳香族基は、アルキルおよび/またはアリールについて本明細書に記載される1つまたは複数の置換基で置換され得る。
【0203】
「芳香族-カルボニル」は、本明細書に開示される化合物に結合しているまたは結合し得る芳香族基を意味し、ここで芳香族基は、カルボニル基(-C(O)-)を介して結合しているまたは結合するようになる。いくつかの実施形態では、芳香族-カルボニル基は-C(O)-R(式中、Rは、本明細書で定義される任意選択で置換された芳香族基である)である。
【0204】
「芳香族-カルボニルオキシ」は、本明細書に開示される化合物に結合しているまたは結合し得る芳香族基を意味し、ここで芳香族基は、カルボニルオキシ基(-OC(O)-)を介して結合しているまたは結合するようになる。いくつかの実施形態では、芳香族-カルボニルオキシ基は-OC(O)-R(式中、Rは、本明細書で定義される任意選択で置換された芳香族基である)である。
【0205】
「芳香族-オキシ」は、本明細書に開示される化合物に結合しているまたは結合し得る芳香族基を意味し、ここで芳香族基は、オキシ基(-O-)を介して結合しているまたは結合するようになる。いくつかの実施形態では、芳香族-オキシ基は-O-R(式中、Rは、本明細書で定義される任意選択で置換された芳香族基である)である。
【0206】
「芳香族-オキシカルボニル」は、本明細書に開示される化合物に結合しているまたは結合し得る芳香族基を意味し、ここで芳香族基は、オキシカルボニル基(-C(O)O-)を介して結合しているまたは結合するようになる。いくつかの実施形態では、芳香族-カルボニル基は-C(O)O-R(式中、Rは、本明細書で定義される任意選択で置換された芳香族基である)である。
【0207】
「アリール」は、少なくとも5個の炭素原子~15個の炭素原子(C5~15)、例えば5~10個の炭素原子(C5~10)を含み、単環または複数の縮合環を有する芳香族炭素環式基を意味し、これらの縮合環は、本明細書に開示される化合物の残りの位置への結合点が芳香族炭素環式基の原子を介していることを条件として、芳香族であってもなくてもよい。アリール基は、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、他の官能基、またはそれらの任意の組合せなどの水素以外の1つまたは複数の基で置換されていてもよい。例示的なアリール基としては、ベンジル、ナフタレン、フェニル、ビフェニル、フェノキシベンゼンなどが挙げられるが、これらに限定されない。アリールという用語にはヘテロアリールも含まれ、ヘテロアリールは、芳香族基の環内に少なくとも1つのヘテロ原子が組み込まれた芳香族基を含有する基として定義される。ヘテロ原子の例としては、窒素、酸素、硫黄およびリンが挙げられるが、これらに限定されない。同様に、アリールという用語にも含まれる非ヘテロアリールという用語は、ヘテロ原子を含有しない芳香族基を含有する基を定義する。アリール基は置換または非置換であってもよい。アリール基は、以下からなる群から独立して選択される1個、2個、3個、4個または5個の置換基で置換され得る:(1)C1~6アルカノイル(例えば-C(O)-R(式中、RはC1~6アルキルである))、(2)C1~6アルキル、(3)C1~6アルコキシ(例えば-O-R(式中、RはC1~6アルキルである))、(4)C1~6アルコキシ-C1~6アルキル(例えば-L-O-R(式中、LおよびRのそれぞれは独立してC1~6アルキルである))、(5)C1~6アルキルスルフィニル(例えば-S(O)-R(RはC1~6アルキルである))、(6)C1~6アルキルスルフィニル-C1~6アルキル(例えば-L-S(O)-R(式中、LおよびRのそれぞれは独立してC1~6アルキルである))、(7)C1~6アルキルスルホニル(例えば-SO2-R(式中、RはC1~6アルキルである))、(8)C1~6アルキルスルホニル-C1~6アルキル(例えば-L-SO2-R(式中、LおよびRのそれぞれは独立してC1~6アルキルである))、(9)アリール、(10)アミノ(例えば-NR1R2(式中、R1およびR2のそれぞれは、独立して本明細書で定義される、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族もしくはそれらの任意の組合せから選択されるか、またはR1およびR2は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、本明細書で定義されるヘテロシクリル基を形成し得る))、(11)C1~6アミノアルキル(例えば-L1-NR1R2または-L2-C(NR1R2)(R3)-R4(式中、L1はC1~6アルキルであり、L2は共有結合またはC1~6アルキルであり、R1およびR2のそれぞれは、独立して本明細書で定義される、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族もしくはそれらの任意の組合せから選択されるか、またはR1およびR2は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、本明細書で定義されるヘテロシクリル基を形成してもよく、R3およびR4のそれぞれは、独立してHまたはC1~6アルキルである))、(12)ヘテロアリール、(13)C4~18アリール-C1~6アルキル(例えば-L-R(式中、LはC1~6アルキルであり、RはC4~18アリールである))、(14)アリーロイル(例えば-C(O)-R(式中、Rはアリールである))、(15)アジド(例えば-N3)、(16)シアノ(例えば-CN)、(17)C1~6アジドアルキル(例えば-L-N3(式中、LはC1~6アルキルである))、(18)アルデヒド(例えば-C(O)H)、(19)アルデヒド-C1~6アルキル(例えば-L-C(O)H(式中、LはC1~6アルキルである))、(20)C3~8シクロアルキル、(21)C3~8シクロアルキル-C1~6アルキル(例えば-L-R(式中、LはC1~6アルキルであり、RはC3~8シクロアルキルである))、(22)ハロ、(23)C1~6ハロアルキル(例えば-L1-Xまたは-L2-C(X)(R1)-R2(式中、L1はC1~6アルキルであり、L2は共有結合またはC1~6アルキルであり、Xは、フルオロ、ブロモ、クロロまたはヨードであり、R1およびR2のそれぞれは、独立してHまたはC1~6アルキルである))、(24)ヘテロシクリル(例えば、本明細書で定義されるように、例えば1個、2個、3個または4個の非炭素ヘテロ原子を含む5、6または7員環)、(25)ヘテロシクリルオキシ(例えば-O-R(Rは、本明細書で定義されるヘテロシクリルである))、(26)ヘテロシクリロイル(例えば-C(O)-R(式中、Rは、本明細書で定義されるヘテロシクリルである))、(27)ヒドロキシル(-OH)、(28)C1~6ヒドロキシアルキル(例えば-L1-OHまたは-L2-C(OH)(R1)-R2(式中、L1はC1~6アルキルであり、L2は共有結合またはアルキルであり、R1およびR2のそれぞれは、独立してHまたは本明細書で定義されるC1~6アルキルである))、(29)ニトロ、(30)C1~6ニトロアルキル(例えば-L1-NOまたは-L2-C(NO)(R1)-R2(式中、L1はC1~6アルキルであり、L2は共有結合またはアルキルであり、R1およびR2のそれぞれは、独立してHまたは本明細書で定義されるC1~6アルキルである))、(31)N-保護アミノ、(32)N-保護アミノ-C1~6アルキル、(33)オキソ(例えば=O)、(34)C1~6チオアルキル(例えば-S-R(式中、RはC1~6アルキルである))、(35)チオ-C1~6アルコキシ-C1~6アルキル(例えば-L-S-R(式中、LおよびRのそれぞれは、独立してC1~6アルキルである))、(36)-(CH2)rCO2R1(式中、rは0~4の整数であり、R1は、(a)水素、(b)C1~6アルキル、(c)C4~18アリール、および(d)C4~18アリール-C1~6アルキル(例えば-L-R(式中、LはC1~6アルキルであり、RはC4~18アリールである))からなる群から選択される)、(37)-(CH2)rCONR1R2(式中、rは0~4の整数であり、各R1およびR2は、独立して(a)水素、(b)C1~6アルキル、(c)C4~18アリール、および(d)C4~18アリール-C1~6アルキル(例えば-L-R(式中、LはC1~6アルキルであり、RはC4~18アリールである))からなる群から選択される)、(38)-(CH2)rSO2R1(式中、rは0~4の整数であり、R1は、(a)C1~6アルキル、(b)C4~18アリール、および(c)C4~18アリール-C1~6アルキル(例えば-L-R(式中、LはC1~6アルキルであり、RはC4~18アリールである))からなる群から選択される)、(39)-(CH2)rSO2NR1R2(式中、rは0~4の整数であり、R1およびR2のそれぞれは、独立して(a)水素、(b)C1~6アルキル、(c)C4~18アリール、および(d)C4~18アリール-C1~6アルキル(例えば-L-R(式中、LはC1~6アルキルであり、RはC4~18アリールである))からなる群から選択される)、(40)-(CH2)rNR1R2(式中、rは0~4の整数であり、R1およびR2のそれぞれは、独立して(a)水素、(b)N-保護基、(c)C1~6アルキル、(d)C2~6アルケニル、(e)C2~6アルキニル、(f)C4~18アリール、(g)C4~18アリール-C1~6アルキル(例えば-L-R(式中、LはC1~6アルキルであり、RはC4~18アリールである))、(h)C3~8シクロアルキル、および(i)C3~8シクロアルキル-C1~6アルキル(例えば-L-R(式中、LはC1~6アルキルであり、RはC3~8シクロアルキルである))からなる群から選択され、一実施形態では、2つの基は、カルボニル基またはスルホニル基を介して窒素原子に結合していない)、(41)チオール(例えば-SH)、(42)ペルフルオロアルキル(例えば-(CF2)nCF3(式中、nは、0~10の整数である))、(43)ペルフルオロアルコキシ(例えば-O-(CF2)nCF3(式中、nは0~10の整数である))、(44)アリールオキシ(例えば-O-R(式中、Rはアリールである))、(45)シクロアルコキシ(例えば-O-R(式中、Rはシクロアルキルである))、(46)シクロアルキルアルコキシ(例えば-O-L-R(式中、Lはアルキルであり、Rはシクロアルキルである))、および(47)アリールアルコキシ(例えば-O-L-R(式中、Lはアルキルであり、Rはアリールである))。特定の実施形態では、非置換アリール基は、C4~18、C4~14、C4~12、C4~10、C6~18、C6~14、C6~12、またはC6~10アリール基である。
【0208】
「アリール-アルキル」、「アリール-アルケニル」、および「アリール-アルキニル」は、それぞれ本明細書で定義されるアルキル、アルケニルもしくはアルキニル基を介して親分子基に連結(もしくは結合)している、または連結(もしくは結合)することができるアリール基を意味する。アリール-アルキル、アリール-アルケニルおよび/またはアリール-アルキニル基は、置換または非置換であってもよい。例えば、アリール-アルキル、アリール-アルケニルおよび/またはアリール-アルキニル基は、アリールおよび/またはアルキルについて本明細書に記載される1つまたは複数の置換基で置換され得る。例示的な非置換アリール-アルキル基は、炭素数7~16のもの(C7~16アリール-アルキル)、ならびに炭素数4~18のアリール基および炭素数1~6のアルキル基を有するもの(すなわち、C4~18アリール-C1~6アルキル)である。例示的な非置換アリール-アルケニル基は、炭素数7~16のもの(C7~16アリール-アルケニル)、ならびに炭素数4~18のアリール基および炭素数2~6のアルケニル基を有するもの(すなわち、C4~18アリール-C2~6アルケニル)である。例示的な非置換アリール-アルキニル基は、炭素数7~16のもの(C7~16アリール-アルキニル)、ならびに炭素数4~18のアリール基および炭素数2~6のアルキニル基を有するもの(すなわち、C4~18アリール-C2~6アルキニル)である。いくつかの実施形態では、アリール-アルキル基は-L-R(式中、Lは、本明細書で定義されるアルキル基またはアルキレン基であり、Rは、本明細書で定義されるアリール基である)である。いくつかの実施形態では、アリール-アルケニル基は-L-R(式中、Lは、本明細書で定義されるアルケニル基またはアルケニレン基であり、Rは、本明細書で定義されるアリール基である)である。いくつかの実施形態では、アリールアルキニル基は-L-R(式中、Lは、本明細書で定義されるアルキニル基またはアルキニレン基であり、Rは、本明細書で定義されるアリール基である)である。
【0209】
「アリーレン」は、本明細書に記載されるアリール基の多価(例えば、二価)形態を意味する。例示的なアリーレン基としては、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、トリフェニレン、ジフェニルエーテル、アセナフテニレン、アントリレン、またはフェナントリレンが挙げられる。いくつかの実施形態では、アリーレン基は、C4~18、C4~14、C4~12、C4~10、C6~18、C6~14、C6~12、またはC6~10アリーレン基である。アリーレン基は、分岐または非分岐であってもよい。アリーレン基はまた、置換または非置換であってもよい。例えば、アリーレン基は、アリールについて本明細書に記載される1つまたは複数の置換基で置換され得る。
【0210】
「アリールアルコキシ」は、酸素原子を介して親分子基に結合した、本明細書で定義されるアリールアルキル基を意味する。いくつかの実施形態では、アリールアルコキシ基は-O-L-R(式中、Lは本明細書で定義されるアルキル基であり、Rは本明細書で定義されるアリール基である)である。
【0211】
「アリールオキシ」は-OR(式中、Rは、本明細書に記載される任意選択で置換されたアリール基である)を意味する。いくつかの実施形態では、非置換アリールオキシ基は、C4~18またはC6~18アリールオキシ基である。他の実施形態では、Rは、アルキル、アルカノイル、アミノ、ヒドロキシルなどで任意選択で置換されたアリール基である。
【0212】
「アリールオキシカルボニル」は、カルボニル基を介して親分子基に結合している、本明細書で定義されるアリールオキシ基を意味する。いくつかの実施形態では、非置換アリールオキシカルボニル基は、C5~19アリールオキシカルボニル基である。他の実施形態では、アリールオキシカルボニル基は-C(O)O-R(式中、Rは、本明細書で定義されるアリール基である)である。
【0213】
「アリーロイル」は、カルボニル基を介して親分子基に結合しているアリール基を意味する。いくつかの実施形態では、非置換アリーロイル基は、C7~11アリーロイルまたはC5~19アリーロイル基である。他の実施形態では、アリーロイル基は-C(O)-R(式中、Rは、本明細書で定義されるアリール基である)である。
【0214】
「アリーロイルオキシ」は、オキシ基を介して親分子基に結合している、本明細書で定義されるアリーロイル基を意味する。いくつかの実施形態では、非置換アリーロイルオキシ基は、C5~19アリーロイルオキシ基である。他の実施形態では、アリーロイルオキシ基は-OC(O)-R(式中、Rは、本明細書で定義されるアリール基である)である。
【0215】
「アジド」は-N3基を意味する。
【0216】
「アジドアルキル」は、本明細書で定義されるアルキル基を介して親分子基に結合したアジド基を意味する。いくつかの実施形態では、アジドアルキル基は-L-N3(式中、Lは、本明細書で定義されるアルキル基である)である。
【0217】
「アゾ」は、-N=N-基を意味する。
【0218】
「カルバモイル」は、本明細書で定義されるカルボニル基を介して親分子基に結合したアミノ基を意味する。いくつかの実施形態では、カルバモイルは、-C(O)NR1R2基(式中、R1およびR2のそれぞれは、独立して本明細書で定義される、水素、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたシリルもしくは任意選択で置換されたシリルオキシ、もしくはそれらの組合せから選択されるか、またはR1およびR2は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、本明細書で定義されるヘテロシクリル基を形成し得る)である。
【0219】
「カルバモイルオキシ」は、本明細書で定義されるn個のオキシ基を介して親分子基に結合した、本明細書で定義されるカルバモイル基を意味する。いくつかの実施形態では、カルバモイルは-OC(O)NR1R2基(式中、R1およびR2のそれぞれは、独立して本明細書で定義される、水素、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたシリル、もしくは任意選択で置換されたシリルオキシ、もしくはそれらの組合せから選択されるか、またはR1およびR2は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、本明細書で定義されるヘテロシクリル基を形成し得る)である。
【0220】
「カルボンイミドイル」は、-C(NR)-基を意味する。いくつかの実施形態では、Rは、本明細書で定義される水素、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたシリル、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアルキル-アリール、または任意選択で置換されたアリール-アルキル、任意選択で置換されたシリルオキシ、またはそれらの組合せから選択される。
【0221】
「カルボニル」は、-C(O)-基を意味し、これは>C=Oとしても表すことができる。
【0222】
「カルボキシル」は、-CO2H基またはそのアニオンを意味する。
【0223】
「触媒」は、当業者によって容易に理解されるように、通常は反応物に対して少量で存在し、合成反応を触媒することができる化合物を意味する。いくつかの実施形態では、触媒は、遷移金属配位錯体を含み得る。
【0224】
「シアナト」は、-OCN基を意味する。
【0225】
「シアノ」は、-CN基を意味する。
【0226】
「シクロ脂肪族」は、環式である本明細書で定義される脂肪族基を意味する。
【0227】
「シクロアルコキシ」は、酸素原子を介して親分子基に結合した、本明細書で定義されるシクロアルキル基を意味する。いくつかの実施形態では、シクロアルコキシ基は-O-R(式中、Rは、本明細書で定義されるシクロアルキル基である)である。
【0228】
「シクロアルキルアルコキシ」は、-O-L-R基(式中、Lは、本明細書で定義されるアルキル基またはアルキレン基であり、Rは、本明細書で定義されるシクロアルキル基である)を意味する。
【0229】
「シクロアルキル」は、特に断らない限り、炭素数3~8の一価の飽和または不飽和非芳香族環式炭化水素基を意味し、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ビシクロ[2.2.1.ヘプチル]などによって例示される。また、シクロアルキル基は、置換または非置換であってもよい。例えば、シクロアルキル基は、アルキルについて本明細書に記載されるものを含む1つまたは複数の基で置換され得る。さらに、シクロアルキルは、1つまたは複数の二重結合および/または三重結合を含み得る。
【0230】
「シクロヘテロ脂肪族」は、環式である本明細書で定義されるヘテロ脂肪族基を意味する。
【0231】
「ジシラニル」は、Si-Si結合を含む基を意味する。いくつかの実施形態では、ジシラニル基は、-SiRS1RS2-SiRS3RS4RS5または-SiRS1RS2-SiRS3RS4基であり、RS1、RS2、RS3、RS4およびRS5のそれぞれは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、または任意選択で置換されたアミノである。
【0232】
「ジスルフィド」は、-SSR(式中、Rは、本明細書で定義される、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族、またはそれらの任意の組合せから選択される)を意味する。
【0233】
「電子供与基」は、その電子密度の少なくとも一部を、共鳴などによってそれが直接結合している環に供与することができる官能基を意味する。
【0234】
「電子求引基」は、誘導性電子求引などにより、それが直接結合している環から電子密度を受け入れることができる官能基を意味する。
【0235】
「ハロ」は、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0236】
「ハロ脂肪族」は、1個または複数の水素原子、例えば1~10個の水素原子が、独立してフルオロ、ブロモ、クロロまたはヨードなどのハロゲン原子で置き換えられている、本明細書で定義される脂肪族基を意味する。
【0237】
「ハロアルキル」は、1個または複数の水素原子、例えば1~10個の水素原子が、独立してフルオロ、ブロモ、クロロ、またはヨードなどのハロゲン原子で置き換えられている、本明細書で定義されるアルキル基を意味する。独立した実施形態では、ハロアルキルは-CX3基(式中、各Xは、独立してフルオロ、ブロモ、クロロ、またはヨードから選択され得る)であってもよい。いくつかの実施形態では、ハロアルキル基は-L-X(式中、Lは本明細書で定義されるアルキル基であり、Xは、フルオロ、ブロモ、クロロ、またはヨードである)である。他の実施形態では、ハロアルキル基は-L-C(X)(R1)-R2(式中、Lは、共有結合または本明細書で定義されるアルキル基であり、Xは、フルオロ、ブロモ、クロロ、またはヨードであり、R1およびR2のそれぞれは、独立してHまたは本明細書で定義されるアルキルである)である。
【0238】
「ハロヘテロ脂肪族」は、1個または複数の水素原子、例えば1~10個の水素原子が、独立してフルオロ、ブロモ、クロロ、またはヨードなどのハロゲン原子で置き換えられている、本明細書で定義されるヘテロ脂肪族を意味する。
【0239】
「ヘテロ脂肪族」は、これらに限定されないが、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、ホウ素、セレン、リン、およびそれらの酸化形態から選択され得る少なくとも1個のヘテロ原子~20個のヘテロ原子、例えば1~15個のヘテロ原子、または1~5個のヘテロ原子を基の中に含む、本明細書で定義される脂肪族基を意味する。ヘテロ脂肪族基は、非置換であるか、または例えば本明細書に記載される官能基によって置換されている。例えば、ヘテロ脂肪族基は、アルキルについて本明細書に記載される1つまたは複数の置換基で置換され得る。
【0240】
「ヘテロ脂肪族-カルボニル」は、本明細書に開示される化合物に結合しているまたは結合し得るヘテロ脂肪族基を意味し、ここでヘテロ脂肪族基は、カルボニル基(-C(O)-)を介して結合しているまたは結合するようになる。いくつかの実施形態では、ヘテロ脂肪族-カルボニル基は-C(O)-R(式中、Rは、本明細書で定義される任意選択で置換されたヘテロ脂肪族基である)である。
【0241】
「ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ」は、本明細書に開示される化合物に結合しているまたは結合し得るヘテロ脂肪族基を意味し、ここでヘテロ脂肪族基は、カルボニルオキシ基(-OC(O)-)を介して結合しているまたは結合するようになる。いくつかの実施形態では、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ基は-OC(O)-R(式中、Rは、本明細書で定義される任意選択で置換されたヘテロ脂肪族基である)である。
【0242】
「ヘテロ脂肪族-オキシ」は、本明細書に開示される化合物に結合しているまたは結合し得るヘテロ脂肪族基を意味し、ここでヘテロ脂肪族基は、オキシ基(-C(O)-)を介して結合しているまたは結合するようになる。いくつかの実施形態では、ヘテロ脂肪族-オキシ基は-O-R(式中、Rは、本明細書で定義される任意選択で置換されたヘテロ脂肪族基である)である。
【0243】
「ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル」は、本明細書に開示される化合物に結合しているまたは結合し得るヘテロ脂肪族基を意味し、ここでヘテロ脂肪族基は、オキシカルボニル基(-C(O)O-)を介して結合しているまたは結合するようになる。いくつかの実施形態では、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル基は-C(O)O-R(式中、Rは、本明細書で定義される任意選択で置換されたヘテロ脂肪族基である)である。
【0244】
「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」、および「ヘテロアルキニル」は、これらに限定されないが、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、ホウ素、セレン、リン、およびそれらの酸化形態から選択され得る少なくとも1個のヘテロ原子~20個のヘテロ原子、例えば1~15個のヘテロ原子、または1~5個のヘテロ原子を基の中に含む、それぞれ本明細書で定義されるアルキル、アルケニル、またはアルキニル基(これらは分岐、直鎖または環式であり得る)を意味する。
【0245】
「ヘテロアルキレン」、「ヘテロアルケニレン」、および「ヘテロアルキニレン」は、それぞれ本明細書に記載されるヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニル基の多価(例えば、二価)形態を意味する。
【0246】
「ヘテロ芳香族」は、これらに限定されないが、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、ホウ素、セレン、リン、およびそれらの酸化形態から選択され得る少なくとも1個のヘテロ原子~20個のヘテロ原子、例えば1~15個のヘテロ原子、または1~5個のヘテロ原子を基の中に含む、本明細書で定義される芳香族基を意味する。ヘテロ芳香族基は非置換であるか、または例えば、本明細書に記載の官能基によって置換されている。例えば、ヘテロ芳香族基は、アルキルおよび/またはアリールについて本明細書に記載される1つまたは複数の置換基で置換され得る。
【0247】
「ヘテロ芳香族-カルボニル」は、本明細書に開示される化合物に結合しているまたは結合し得るヘテロ芳香族基を意味し、ここでヘテロ芳香族基は、カルボニル基(-C(O)-)を介して結合しているまたは結合するようになる。いくつかの実施形態では、ヘテロ芳香族-カルボニル基は-C(O)-R(式中、Rは、本明細書で定義される任意選択で置換されたヘテロ芳香族基である)である。
【0248】
「ヘテロ芳香族-カルボニルオキシ」は、本明細書に開示される化合物に結合しているまたは結合し得るヘテロ芳香族基を意味し、ここでヘテロ芳香族基は、カルボニルオキシ基(-OC(O)-)を介して結合しているまたは結合するようになる。いくつかの実施形態では、ヘテロ芳香族-カルボニルオキシ基は-OC(O)-R(式中、Rは、本明細書で定義される任意選択で置換されたヘテロ芳香族基である)である。
【0249】
「ヘテロ芳香族-オキシ」は、本明細書に開示される化合物に結合しているまたは結合し得るヘテロ芳香族基を意味し、ここでヘテロ芳香族基は、オキシ基(-O-)を介して結合しているまたは結合するようになる。いくつかの実施形態では、ヘテロ芳香族-オキシ基は-O-R(式中、Rは、本明細書で定義される任意選択で置換されたヘテロ芳香族基である)である。
【0250】
「ヘテロ芳香族-オキシカルボニル」は、本明細書に開示される化合物に結合しているまたは結合し得るヘテロ芳香族基を意味し、ここでヘテロ芳香族基は、オキシカルボニル基(-C(O)O-)を介して結合しているまたは結合するようになる。いくつかの実施形態では、ヘテロ芳香族-カルボニル基は-C(O)O-R(式中、Rは、本明細書で定義される任意選択で置換されたヘテロ芳香族基である)である。
【0251】
「ヘテロアリール」は、これらに限定されないが、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、ホウ素、セレン、リン、およびこれらの酸化形態から選択され得る少なくとも1個のヘテロ原子~6個のヘテロ原子、例えば1~4個のヘテロ原子を環内に含むアリール基を意味する。このようなヘテロアリール基は、単環または複数の縮合環を有することができ、縮合環は、結合点が芳香族ヘテロアリール基の原子を介していることを条件として、芳香族であってもなくてもよく、および/またはヘテロ原子を含有してもしなくてもよい。ヘテロアリール基は、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、他の官能基、またはそれらの任意の組合せなどの水素以外の1つまたは複数の基で置換されていてもよい。例示的なヘテロアリールには、本明細書で定義されるヘテロシクリル基のサブセットが含まれ、これらは芳香族であり、すなわち、単環式または多環式環系内に4n+2個のπ電子を含有する。
【0252】
「ヘテロアリーレン」は、本明細書に記載されるヘテロアリール基の多価(例えば、二価)形態を意味する。
【0253】
「ヘテロ原子」は、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、ホウ素、セレン、またはリンなどの炭素以外の原子を意味する。特定の開示される実施形態では、例えば原子価の制約によって許容されない場合、ヘテロ原子はハロゲン原子を含まない。
【0254】
「ヘテロシクリル」は、特に断らない限り、1個、2個、3個、または4個の非炭素ヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン、硫黄またはハロからなる群から独立して選択される)を含有する5、6または7員環を意味する。5員環は0~2個の二重結合を有し、6および7員環は0~3個の二重結合を有する。用語「ヘテロシクリル」はまた、上記の複素環式環のいずれかが、アリール環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、シクロペンタン環、シクロペンテン環、および別の単環式複素環式環、例えばインドリル、キノリル、イソキノリル、テトラヒドロキノリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニルなどからなる群から独立して選択される1、2または3個の環に縮合した二環式、三環式および四環式基を含む。複素環式環としては、チイラニル、チエタニル、テトラヒドロチエニル、チアニル、チエパニル、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、アゼパニル、ピロリル、ピロリニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピリジル、ホモピペリジニル、ピラジニル、ピペラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリドニル、イソオキサゾリル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、イソチアゾリジニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズオキサゾリル、フリル、チエニル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、イソインダゾイル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、ウリシル、チアジアゾリル、ピリミジル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロインドリル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、ピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、ジチアゾリル、ジオキサニル、ジオキシニル、ジチアニル、トリチアニル、オキサジニル、チアジニル、オキソチオラニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニルなどが挙げられる。
【0255】
「ヘテロシクリルオキシ」は、酸素原子を介して親分子基に結合した、本明細書で定義されるヘテロシクリル基を意味する。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルオキシ基は-O-R(式中、Rは、本明細書で定義されるヘテロシクリル基である)である。
【0256】
「ヘテロシクリロイル」は、カルボニル基を介して親分子基に結合した、本明細書で定義されるヘテロシクリル基を意味する。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリロイル基は-C(O)-R(式中、Rは、本明細書で定義されるヘテロシクリル基である)である。
【0257】
「ヒドラジノ」は、-NR1-NR2R3(式中、R1、R2およびR3のそれぞれは、独立して本明細書で定義される、水素、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたシリル、もしくは任意選択で置換されたシリルオキシ、もしくはそれらの組合せから選択されるか、またはR1とR2の組合せ、またはR2とR3の組合せは、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、本明細書で定義されるヘテロシクリル基を形成し得る)を意味する。いくつかの実施形態では、R1、R2またはR3のそれぞれは、独立してH、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアルキル-アリール、または任意選択で置換されたアリール-アルキルである。特定の実施形態では、R2およびR3は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができる。
【0258】
「ヒドロキシル」は-OHを意味する。
【0259】
「ヒドロキシアルキル」は、1個を超えるヒドロキシル基がアルキル基の単一の炭素原子に結合してはならないことを条件として、1~3個のヒドロキシル基で置換された本明細書で定義されるアルキル基を意味し、ヒドロキシメチル、ジヒドロキシプロピルなどによって例示される。いくつかの実施形態では、ヒドロキシアルキル基は-L-OH(式中、Lは、本明細書で定義されるアルキル基である)である。他の実施形態では、ヒドロキシアルキル基は-L-C(OH)(R1)-R2(式中、Lは、共有結合または本明細書で定義されるアルキル基であり、R1およびR2のそれぞれは、独立してHまたは本明細書で定義されるアルキルである)である。
【0260】
「イミドイル」は、カルボンイミドイル基を含む部位を意味する。いくつかの実施形態では、イミドイル基はC(NR1)R2(式中、R1およびR2のそれぞれは、独立して本明細書で定義される、水素、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたシリル、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアルキル-アリール、または任意選択で置換されたアリール-アルキル、任意選択で置換されたシリルオキシ、またはそれらの組合せから選択される)である。他の実施形態では、イミドイル基は、-C(NR1)H、-C(NR1)RAk、または-C(NRN1)RAr(式中、R1は、水素、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたシリル、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアルキル-アリール、または任意選択で置換されたアリール-アルキル、または任意選択で置換されたシリルオキシであり、RAkは、任意選択で置換されたアルキルまたは任意選択で置換された脂肪族であり、RArは、任意選択で置換されたアリールまたは任意選択で置換された芳香族である)である。
【0261】
「イミノ」は、-NR-基を意味する。いくつかの実施形態では、Rは、水素、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、または任意選択で置換されたヘテロ芳香族から選択される。特定の実施形態では、Rは、H、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたアルキル-アリール、または任意選択で置換されたアリール-アルキルである。
【0262】
「イソシアナト」は-NCO基を意味する。
【0263】
「イソシアノ」は-NC基を意味する。
【0264】
「ケトン」は、-C(O)R(式中、Rは、本明細書で定義される脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、またはそれらの任意の組合せから選択される)またはそのような基を含む化合物を意味する。ケトンの例としては、R1C(O)R(式中、RおよびR1のそれぞれは、独立して本明細書で定義される脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、脂肪族-芳香族、ヘテロ脂肪族-芳香族、またはそれらの任意の組合せから選択される)を挙げることができる。
【0265】
「ニトロ」は-NO2基を意味する。
【0266】
「ニトロアルキル」は、1~3個のニトロ基で置換された本明細書で定義されるアルキル基を意味する。いくつかの実施形態では、ニトロアルキル基は-L-NO(式中、Lは、本明細書で定義されるアルキル基である)である。他の実施形態では、ニトロアルキル基は-L-C(NO)(R1)-R2(式中、Lは、共有結合または本明細書で定義されるアルキル基であり、R1およびR2のそれぞれは、独立してHまたは本明細書で定義されるアルキルである)である。
【0267】
「オキソ」は=O基を意味する。
【0268】
「オキシ」は-O-を意味する。
【0269】
「ペルフルオロアルキル」は、各水素原子がフッ素原子で置換された、本明細書で定義されるアルキル基を意味する。例示的なペルフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、ペルフルオロアルキル基は、-(CF2)nCF3であり、nは0~10の整数である。
【0270】
「ペルフルオロアルコキシ」は、各水素原子がフッ素原子で置換された、本明細書で定義されるアルコキシ基を意味する。いくつかの実施形態では、ペルフルオロアルコキシ基は-O-R(式中、Rは、本明細書で定義されるペルフルオロアルキル基である)である。
【0271】
「塩」は、電気的に中性の化合物または構造を形成するためにカチオンまたはアニオン化合物を含む化合物または構造(例えば、本明細書に記載される任意の式、化合物または組成物)のイオン形態を意味する。塩は当技術分野で周知である。例えば、非毒性の塩は、Berge S.M.ら、「Pharmaceutical salts」、J.Pharm.Sci.1977年1月、66(1):1~19、および「Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use」Wiley-VCH、2011年4月(2nd rev. ed.、P.H.StahlおよびC.G.Wermuth編に記載されている。塩は、遊離塩基基を好適な有機酸と反応させる(それによりアニオン塩を生成する)か、または酸基を好適な金属もしくは有機塩と反応させる(それによりカチオン塩を生成する)ことにより、本発明の化合物の最終的な単離および精製中にin-situで、または別々に調製されてもよい。代表的なアニオン塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、塩化物塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、二塩酸塩、二リン酸塩、ドデシル硫酸塩、エデト酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、臭化メチル塩、硝酸メチル塩、硫酸メチル塩、ムチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオフィリン酸塩、チオシアン酸塩、トリエチオジド塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。代表的なカチオン塩としては、金属塩、例えばアルカリ塩またはアルカリ土類塩、例えばバリウム、カルシウム(例えば、エデト酸カルシウム)、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムなど、他の金属塩、例えばアルミニウム、ビスマス、鉄および亜鉛、ならびにアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、ピリジニウムなどを含むがこれらに限定されない非毒性アンモニウム、第四級アンモニウム、およびアミノカチオンが挙げられる。他のカチオン塩としては、クロロプロカイン、コリン、ジベンジルエチレンジアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メチルグルカミンおよびプロカインなどの有機塩が挙げられる。さらに他の塩としては、アンモニウム、スルホニウム、スルホキソニウム、ホスホニウム、イミニウム、イミダゾリウム、ベンズイミダゾリウム、アミジニウム、グアニジニウム、ホスファジニウム、ホスファゼニウム、ピリジニウムなど、ならびに本明細書に記載の他のカチオン性基(例えば、任意選択で置換されたイソオキサゾリウム、任意選択で置換されたオキサゾリウム、任意選択で置換されたチアゾリウム、任意選択で置換されたピロリウム、任意選択で置換されたフラニウム、任意選択で置換されたチオフェニウム、任意選択で置換されたイミダゾリウム、任意選択で置換されたピラゾリウム、任意選択で置換されたイソチアゾリウム、任意選択で置換されたトリアゾリウム、任意選択で置換されたテトラゾリウム、任意選択で置換されたフラザニウム、任意選択で置換されたピリジニウム、任意選択で置換されたピリミジニウム、任意選択で置換されたピラジニウム、任意選択で置換されたトリアジニウム、任意選択で置換されたテトラジニウム、任意選択で置換されたピリダジニウム、任意選択で置換されたオキサジニウム、任意選択で置換されたピロリジニウム、任意選択で置換されたピラゾリジニウム、任意選択で置換されたイミダゾリニウム、任意選択で置換されたイソオキサゾリジニウム、任意選択で置換されたオキサゾリジニウム、任意選択で置換されたピペラジニウム、任意選択で置換されたピペリジニウム、任意選択で置換されたモルホリニウム、任意選択で置換されたアゼパニウム、任意選択で置換されたアゼピニウム、任意選択で置換されたインドリウム、任意選択で置換されたイソインドリウム、任意選択で置換されたインドリジニウム、任意選択で置換されたインダゾリウム、任意選択で置換されたベンズイミダゾリウム、任意選択で置換されたイソキノリニウム(isoquinolinum)、任意選択で置換されたキノリジニウム、任意選択で置換されたデヒドロキノリジニウム、任意選択で置換されたキノリニウム、任意選択で置換されたイソインドリニウム、任意選択で置換されたベンズイミダゾリニウム、および任意選択で置換されたプリニウム)が挙げられる。
【0272】
「シリル」は、-SiR1R2R3または-SiR1R2-基を意味する。いくつかの実施形態では、R1、R2およびR3のそれぞれは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、または任意選択で置換されたアミノである。特定の実施形態では、R1、R2およびR3のそれぞれは、独立してH、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたアルキル-アリール、任意選択で置換されたアリール-アルキル、または任意選択で置換されたアミノである。他の実施形態では、シリル基は-Si(R)a(OR)b(NR2)c(式中、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、または任意選択で置換されたヘテロ芳香族であり、a、b、およびcのそれぞれは0以上であり、a+b+c=3である)である。特定の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアルキル-アリール、または任意選択で置換されたアリール-アルキルである。
【0273】
「シリルオキシ」は-OR(式中、Rは、本明細書に記載される任意選択で置換されたシリル基である)を意味する。いくつかの実施形態では、シリルオキシ基は-O-SiR1R2R3(式中、R1、R2およびR3のそれぞれは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、または任意選択で置換されたアミノである)である。特定の実施形態では、R1、R2およびR3のそれぞれは、独立してH、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたアルキル-アリール、任意選択で置換されたアリール-アルキル、または任意選択で置換されたアミノである。他の実施形態では、シリルオキシ基は-O-Si(R)a(OR)b(NR2)c(式中、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、または任意選択で置換されたヘテロ芳香族であり、a、b、およびcのそれぞれは0以上であり、a+b+c=3である)である。特定の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアルキル-アリール、または任意選択で置換されたアリール-アルキルである。
【0274】
「スルフィニル」は-S(O)-基を意味する。
【0275】
「スルホ」は-S(O)2OH基を意味する。
【0276】
「スルホニル」または「スルホネート」は、-S(O)2-基または-SO2R(式中、Rは、本明細書で定義される水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族、またはそれらの任意の組合せから選択される)を意味する。
【0277】
「チオアルキル」は、硫黄原子を介して親分子基に結合した、本明細書で定義されるアルキル基を意味する。例示的な非置換チオアルキル基としては、C1~6チオアルキルが挙げられる。いくつかの実施形態では、チオアルキル基は-S-R(式中、Rは、本明細書で定義されるアルキル基である)である。
【0278】
「チオール」は-SH基を意味する。
【0279】
当業者であれば、上記で与えられた定義は、許容されない置換パターン(例えば、5つの異なる基で置換されたメチルなど)を含むことを意図しないことを認識する。そのような許容されない置換パターンは、当業者によって容易に認識される。本明細書に開示され、および/または上記で定義された官能基は、そこに別段の指示がない限り、置換または非置換であってもよい。
【0280】
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、任意の列挙された値の+/-10%を意味する。本明細書で使用する場合、この用語は、任意の列挙された値、値の範囲、または1つまたは複数の範囲の端点を修飾する。
【0281】
本明細書で使用する場合、「上部」、「下部」、「上側」、「下側」、「上」および「下」という用語は、構造間の相対関係を提供するために使用される。これらの用語の使用は、特定の構造が装置内の特定の位置に位置しなければならないことを示さない、または要求しない。
【0282】
本発明の他の特徴および利点は、以下の説明および特許請求の範囲から明らかである。
【0283】
前駆体
シラン
膜は、任意の有用なケイ素含有前駆体(Si含有前駆体)を使用して堆積させることができる。いくつかの実施形態では、前駆体は、式(I):
Si(R’)4 (I)、
(式中、少なくとも1つのR’は炭素原子を含む)
の構造を含む。他の実施形態では、少なくとも1つのR’は、ヘテロ原子(例えば、窒素、酸素および/またはケイ素)を含む。さらに他の実施形態では、少なくとも1つのR’は、炭素原子およびヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、および/またはケイ素)を含む。特定の実施形態では、R’はハロゲン原子を含まない。
【0284】
他の実施形態では、前駆体は、式(II):
(R’)3Si-[L-Si(R’)2]-R’ (II)、
(式中、少なくとも1つのR’は炭素原子を含み、Lはリンカーである)
の構造を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのR’は、ヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、および/またはケイ素)を含む。さらに他の実施形態では、少なくとも1つのR’は、炭素原子およびヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、および/またはケイ素)を含む。特定の実施形態では、R’はハロゲン原子を含まない。
【0285】
式(II)に関して、Lの非限定的なリンカーとしては、共有結合、オキシ(-O-)、カルボニル(-C(O)-)、任意選択で置換されたカルボンイミドイル(例えば-C(NR)-)、任意選択で置換されたイミノ(例えば-NR-)、任意選択で置換されたアルキレン、任意選択で置換されたヘテロアルキレン、任意選択で置換されたアリーレンなどが挙げられる。
【0286】
本明細書の任意の式に関して(例えば、式(I)または(II)に関して)、R’は、H、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル(例えば、アミノシリル、アルコキシシリルなど)、シリルオキシ(例えば、アミノシリルオキシ、アルコキシシリルオキシなど)、シアナト(-OCN)、イソシアナト(-NCO)、シアノ(-CN)、またはイソシアノ(-NC)であってもよく、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよい。
【0287】
特定の実施形態では、本明細書の任意の式(例えば、式(I)または(II)に関して)中の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のR’は、任意選択で置換された脂肪族を含む。非限定的な脂肪族基としては、アルキル、アルケニル、またはアルキニルが挙げられ、これらの直鎖、分岐、環式、飽和または不飽和形態を含む。このような基は、非置換であってもよく、または例えば、アルキルについて本明細書に記載される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。脂肪族基のさらなる例としては、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(Pr)、イソプロピル(iPr)、シクロプロピル(cPr)、ブチル(Bu)、sec-ブチル(sBu)、イソブチル(iBu)、tert-ブチル(tBu)、ペンチル(Pe)、tert-ペンチル(tPe)、アリル(All)、ビニル(Vi)、エチニルなどが挙げられる。
【0288】
いくつかの実施形態では、本明細書の任意の式(例えば、式(I)または(II)に関して)中の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のR’は、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族を含む。ヘテロ脂肪族基は、1つまたは複数の炭素原子および1つまたは複数のヘテロ原子(例えば、酸素、窒素など)を含むいずれかを含み得る。
【0289】
非限定的なヘテロ脂肪族基としては、脂肪族-カルボニル(例えば、アルカノイルまたは-C(O)RAk)、脂肪族-カルボニルオキシ(例えば、アルカノイルオキシまたは-OC(O)RAk)、脂肪族-オキシ(例えば、アルコキシまたは-ORAk)、脂肪族-オキシカルボニル(例えば、アルコキシカルボニルまたは-C(O)ORAk)、アミノ(例えば、-NRN1RN2)、芳香族-カルボニル(例えば、アリーロイルまたは-C(O)RAr)、芳香族-カルボニルオキシ(例えば、アリーロイルオキシまたは-OC(O)RAr)、芳香族-オキシ(例えば、アリールオキシまたは-ORAr)、芳香族-オキシカルボニル(例えば、アリーロキシカルボニルまたは-C(O)ORAr)、イミドイル(例えば、-C(NRN1)H、-C(NRN1)RAk、または-C(NRN1)RAr)、カルバモイル(例えば-C(O)NRN1RN2)、カルバモイルオキシ(例えば-OC(O)NRN1RN2)、カルボキシル(-CO2H)、ホルミル(-C(O)H)、ヘテロ芳香族、ヘテロシクリル(例えば、任意選択で置換されたフラニル、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピペリジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、オキサゾリル、モルホリニルなど)、ヒドラジノ(例えば-NRN1-NRN2RN3)、シリル(例えば-SiRS1RS2RS3)、およびシリルオキシ(例えば-O-SiRS1RS2RS3)が挙げられる。これらの基のそれぞれは、本明細書に記載の任意の置換基で任意選択で置換され得る(例えば、アルキルについて本明細書に記載される通り)。ヘテロ脂肪族基には、それらの直鎖、分岐、環式(例えば、ヘテロシクリル)、飽和または不飽和形態が含まれ得る。
【0290】
ヘテロ脂肪族基は、RAkおよび/またはRAr部位を含み得る。いくつかの実施形態では、RAkは、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたヘテロアルケニル、任意選択で置換されたヘテロアルキニル、または任意選択で置換されたヘテロシクリルである。他の実施形態では、RArは、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたアリール、または任意選択で置換されたヘテロアリールである。
【0291】
窒素含有基(例えば、アミノ、イミドイルなど)は、窒素原子に結合したRN1、RN2および/またはRN3部位を含み得る。いくつかの実施形態では、RN1、RN2およびRN3のそれぞれは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたシリル、または任意選択で置換されたシリルオキシである。特定の実施形態では、RN1およびRN2、またはRN2およびRN3は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができる。このような窒素含有基は、他の部分、例えば、シリルまたはシリルオキシ基内に含まれ得る。
【0292】
ケイ素含有基(例えば、シリルなど)は、ケイ素原子に結合したRS1、RS2および/またはRS3を含み得る。いくつかの実施形態では、RS1、RS2およびRS3のそれぞれは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、または任意選択で置換されたアミノである。このようなケイ素含有基は、他の部分、例えばアミノ基内に含まれ得る。
【0293】
いくつかの実施形態では、シリル基は、ケイ素原子に結合した1つまたは複数の脂肪族基を有するアルキルシリル基である。一例では、アルキルシリル基は-Si(R)a(RAk)b(式中、Rは、独立してH、芳香族、ヘテロ芳香族、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル(例えば、アミノシリル、アルコキシシリルなど)、シリルオキシ(例えば、アミノシリルオキシ、アルコキシシリルオキシなど)、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、RAkは、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたヘテロアルケニル、任意選択で置換されたヘテロアルキニル、または任意選択で置換されたヘテロシクリルであり、a≧0であり、b≧1であり、a+b=3である)である。さらに他の非限定的なアルキルシリル基としては、-SiH2RAk、-SiH[RAk]2、または-Si[RAk]3(式中、RAkは本明細書で提供されるいずれかである)が挙げられる。
【0294】
いくつかの実施形態では、シリル基は、オキシ(-O-)基を介してケイ素原子に結合した1つまたは複数の脂肪族基を有するアルコキシシリル基である。一例では、アルコキシシリル基は-Si(R)a(ORAk)b(式中、Rは、独立してH、芳香族、ヘテロ芳香族、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル(例えば、アミノシリル、アルコキシシリルなど)、シリルオキシ(例えば、アミノシリルオキシ、アルコキシシリルオキシなど)、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、RAkは、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたヘテロアルケニル、任意選択で置換されたヘテロアルキニル、または任意選択で置換されたヘテロシクリルであり、a≧0であり、b≧1であり、a+b=3である)である。さらに他の非限定的なアルコキシシリル基としては、-SiH2[ORAk]、-SiH[ORAk]2、または-Si[ORAk]3(式中、RAkは本明細書に記載されるいずれかである)が挙げられる。
【0295】
他の実施形態では、シリル基は、ケイ素原子に結合した1つまたは複数の芳香族基を有するアリールシリル基である。一例では、アリールシリル基は-Si(R)a(RAr)b(式中、Rは、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル(例えば、アミノシリル、アルコキシシリルなど)、シリルオキシ(例えば、アミノシリルオキシ、アルコキシシリルオキシなど)、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、RArは、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたアリール、または任意選択で置換されたヘテロアリールであり、a≧0であり、b≧1であり、a+b=3である)である。さらに他の非限定的なアリールシリル基としては、-SiH2RAr、-SiH[RAr]2、または-Si[RAr]3(式中、RArは本明細書に記載されるいずれかである)が挙げられる。
【0296】
さらに他の実施形態では、シリル基は、オキシ(-O-)基を介してケイ素原子に結合した1つまたは複数の芳香族基を有するアリールオキシシリル基である。一例では、アリールシリル基は-Si(R)a(ORAr)b(式中、Rは、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル(例えば、アミノシリル、アルコキシシリルなど)、シリルオキシ(例えば、アミノシリルオキシ、アルコキシシリルオキシなど)、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、RArは、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたアリール、または任意選択で置換されたヘテロアリールであり、a≧0であり、b≧1であり、a+b=3である)である。さらに他の非限定的なアリールオキシシリル基としては、-SiH2[ORAr]、-SiH[ORAr]2、または-Si[ORAr]3(式中、RArは本明細書に記載されるいずれかである)が挙げられる。
【0297】
シリル基は、ケイ素原子に結合した1つまたは複数の任意選択で置換されたアミノ基を有するアミノシリルも含み得る。一例では、アミノシリル基は-Si(R)a(NRN1RN2)b(式中、Rは、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル(例えば、アミノシリル、アルコキシシリルなど)、シリルオキシ(例えば、アミノシリルオキシ、アルコキシシリルオキシなど)、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、RN1およびRN2のそれぞれは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたシリル、または任意選択で置換されたシリルオキシであり、RN1およびRN2は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができ、a≧0であり、b≧1であり、a+b=3である)である。アミノシリル基のさらに他の非限定的な実施形態としては、-SiH2[NRN1RN2]、-SiH[RAk][NRN1RN2]、-Si[RAk]2[NRN1RN2]、-SiH[NRN1RN2]2、-Si[RAk][NRN1RN2]2、または-Si[NRN1RN2]3)、例えば-SiH2[NH2]、-SiHRAk[NH2]、-Si[RAk]2[NH2]、-SiH2[NH(RAk)]、-SiHRAk[NH(RAk)]、-Si[RAk]2[NH(RAk)]、-SiH2[N(RAk)2]、-SiHRAk[N(RAk)2]、-Si[RAk]2[N(RAk)2]、-SiH[NH2]2、-SiRAk[NH2]2、-SiH[NH(RAk)]2、-SiRAk[NH(RAk)]2、-SiH[NH(RAk)][NH2]、-SiRAk[NH(RAk)][NH2]、-SiH[N(RAk)2]2、-SiRAk[N(RAk)2]2、-SiH[N(RAk)2][NH2]、-SiRAk[N(RAk)2][NH2]、-Si[NH2]3、-Si[N(RAk)2][NH2]2、-Si[N(RAk)2]2[NH2]、-Si[N(RAk)2]3、-Si[NH(RAk)][NH2]2、-Si[NH(RAk)2]2[NH2]、-Si[NH(RAk)]3、-Si[NH(RAk)][N(RAk)2]2、-Si[NH(RAk)]2[N(RAk)2]などが挙げられ、RAkは、任意選択で置換された脂肪族、ヘテロ脂肪族、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアルコキシであり、RN1およびRN2のそれぞれは、本明細書に記載されるいずれかである。
【0298】
いくつかの実施形態では、シリル基は-Si(R’)a(OR)b(NR2)c(式中、各R’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、または任意選択で置換されたヘテロ芳香族であり、a、b、およびcのそれぞれは0以上であり、a+b+c=3である)である。特定の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアルキル-アリール、または任意選択で置換されたアリール-アルキルである。
【0299】
他の実施形態では、本明細書におけるシリル基のいずれかは、オキシ結合を介して親化合物に結合してもよい。いくつかの実施形態では、シリルオキシ基は-O-Si(R’)a(OR)b(NR2)c(式中、各R’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、または任意選択で置換されたヘテロ芳香族であり、a、b、およびcのそれぞれは0以上であり、a+b+c=3である)である。特定の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアルキル-アリール、または任意選択で置換されたアリール-アルキルである。さらに他の非限定的なシリルオキシ基としては、-O-Si(R)a(RAk)b、-O-Si(R)a(ORAk)b、-O-Si(R)a(RAr)b、-O-Si(R)a(ORAr)b、-O-Si(R)a(NRN1RN2)bが挙げられ、ここでRは、独立してH、芳香族、ヘテロ芳香族、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル(例えば、アミノシリル、アルコキシシリルなど)、シリルオキシ(例えばアミノシリルオキシ、アルコキシシリルオキシなど)、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、RAkは、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたヘテロアルケニル、任意選択で置換されたヘテロアルキニル、または任意選択で置換されたヘテロシクリルであり、RArは、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたアリール、または任意選択で置換されたヘテロアリールであり、RN1およびRN2のそれぞれは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたシリル、または任意選択で置換されたシリルオキシであり、ここでRN1およびRN2は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成し、a≧0であり、b≧1であり、a+b=3である。さらに他の非限定的なシリルオキシ基としては、アルキルシリルオキシ(例えば、-O-SiH2RAk、-O-SiH[RAk]2、または-O-Si[RAk]3)、アルコキシシリルオキシ(例えば、-O-SiH2[ORAk]、-O-SiH[ORAk]2、または-O-Si[ORAk]3)、アリールシリルオキシ(例えば、-O-SiH2RAr、-O-SiH[RAr]2、または-O-Si[RAr]3)、またはアリールオキシシリルオキシ(例えば、-O-SiH2[ORAr]、-O-SiH[ORAr]2、または-O-Si[ORAr]3)が挙げられる。いくつかの実施形態では、シリル基は、アミノシリルオキシ(例えば、-O-SiH2[NRN1RN2]、-O-SiH[RAk][NRN1RN2]、-O-Si[RAk]2[NRN1RN2]、-O-SiH[NRN1RN2]2、-O-Si[RAk][NRN1RN2]2、または-O-Si[NRN1RN2]3)である。
【0300】
シリルおよびシリルオキシ基は、脂肪族基と芳香族基の混合された組合せを有することができる。一例では、シリル基は-Si(R)a(RAk)b(RAr)cまたは-Si(R)a(ORAk)b(ORAr)c(式中、Rは、独立してH、芳香族、ヘテロ芳香族、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル(例えば、アミノシリル、アルコキシシリルなど)、シリルオキシ(例えば、アミノシリルオキシ、アルコキシシリルオキシなど)、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、RAkは、任意選択で置換された脂肪族(例えば、任意選択で置換されたアルキル)、または任意選択で置換されたヘテロ脂肪族(例えば、任意選択で置換されたアルコキシまたは任意選択で置換されたアミノ)であり、RArは、任意選択で置換された芳香族または任意選択で置換されたヘテロ芳香族であり、a、bおよびcのそれぞれは0以上であり、a+b+c=3である)である。
【0301】
別の例では、シリル基は-Si(R)a(NRAk
2)b、-Si(R)a(NRAkRAr)b、または-Si(R)a(NRAr
2)b(式中、Rは、独立してH、芳香族、ヘテロ芳香族、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル(例えば、アミノシリル、アルコキシシリルなど)、シリルオキシ(例えばアミノシリルオキシ、アルコキシシリルオキシなど)、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、RN1およびRN2のそれぞれは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたシリル、または任意選択で置換されたシリルオキシであり、RN1およびRN2は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができ、aおよびbのそれぞれは0以上であり、a+b=3である)である。
【0302】
さらに別の例では、シリルオキシ基は-O-Si(R)a(RAk)b(RAr)c、-O-Si(R)a(ORAk)b(ORAr)c、-O-Si(R)a(NRAk
2)b、-O-Si(R)a(NRAkRAr)b、または-O-Si(R)a(NRAr
2)b(式中、R、RAkおよびRArは、本明細書に記載されるいずれかであり、a、bおよびcは、本明細書に記載されるいずれかである)である。
【0303】
いくつかの実施形態では、本明細書の任意の式(例えば、式(I)または(II)に関して)の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のR’は、任意選択で置換された脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、芳香族-オキシ、またはヘテロ芳香族-オキシを含む。例えば、R’は-O-R(式中、Rは、任意選択で置換された脂肪族(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、またはシクロアルキニル)、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族(例えば、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、またはヘテロシクリル)、任意選択で置換された芳香族(例えば、アリール)、任意選択で置換されたヘテロ芳香族(例えば、ヘテロアリール)、任意選択で置換された脂肪族-カルボニル(例えば、アルカノイルまたは-C(O)RAk(式中、RAkは、任意選択で置換された脂肪族または本明細書に記載されるいずれかである))、任意選択で置換されたシリル(例えば、本明細書に記載されるいずれかを含む-SiRS1RS2RS3または-Si(R’)a(OR)b(NR2)c)、または任意選択で置換されたアミノ(例えば、本明細書に記載されるいずれかを含む-NRN1RN2)である)であってもよい。
【0304】
特定の実施形態では、本明細書の任意の式(例えば、式(I)または(II)に関して)の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のR’は、任意選択で置換された芳香族または任意選択で置換されたヘテロ芳香族を含む。非限定的な芳香族およびヘテロ芳香族基としては、フェニル、ベンジル、ナフチル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、オキサゾリルなどが挙げられる。
【0305】
特定の実施形態では、本明細書の任意の式(例えば、式(I)または(II)に関して)の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のR’は、任意選択で置換されたアミノ(例えば-NH2、-NRN1H、または-NRN1RN2)を含む。特定の実施形態では、RN1およびRN2のそれぞれは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたアミノ、ヒドロキシル、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたアルキル-アリール、任意選択で置換されたアリール-アルキル、任意選択で置換されたシリル、または任意選択で置換されたシリルオキシである。特定の実施形態では、RN1およびRN2は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができる。
【0306】
RN1およびRN2の非限定的な例としては、H、脂肪族、アルキル(例えば-RAk)、アルケニル、アルキニル、脂肪族カルボニル(例えば、アルカノイルまたは-C(O)RAk)、脂肪族-カルボニルオキシ(例えば、アルカノイルオキシまたは-OC(O)RAk)、脂肪族-オキシ(例えば、アルコキシまたは-ORAk)、脂肪族-オキシカルボニル(例えば、アルコキシカルボニルまたは-C(O)ORAk)、アミノ(例えば-NR2(式中、各Rは、例えばH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、または任意選択で置換されたヘテロ芳香族である))、芳香族(例えば、アリールまたは-RAr)、芳香族-カルボニル(例えば、アリーロイルまたは-C(O)RAr)、芳香族-カルボニルオキシ(例えば、アリーロイルオキシまたは-OC(O)RAr)、芳香族-オキシ(例えば、アリールオキシまたは-ORAr)、芳香族-オキシカルボニル(例えば、アリールオキシカルボニルまたは-C(O)ORAr)、イミドイル(例えば、-C(NR)H、-C(NR)RAk、または-C(NR)RAr(式中、各Rは、例えばH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、または任意選択で置換されたヘテロ芳香族である))、カルバモイル(例えば-C(O)NR2(式中、各Rは、例えばH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、または任意選択で置換されたヘテロ芳香族である))、カルバモイルオキシ(例えば-OC(O)NR2(式中、各Rは、例えば、H、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、または任意選択で置換されたヘテロ芳香族である))、カルボキシル(-CO2H)、ホルミル(-C(O)H)、ヘテロ芳香族、ヘテロシクリル(例えば、任意選択で置換されたフラニル、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピペリジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、オキサゾリル、モルホリニルなど)、ヒドロキシル(-OH)、シリル(例えば、-SiRS1RS2RS3または-Si(R’)a(OR)b(NR2)c)、およびシリルオキシ(例えば、-O-SiRS1RS2RS3または-O-Si(R’)a(OR)b(NR2)c)を挙げることができる。これらの基のいずれかについて、指示される場合、RAk、RAr、R’、R、RS1、RS2、RS3、a、b、およびcは、本明細書に記載されるいずれかであってもよい。
【0307】
さらに他の非限定的なアミノ基としては、-NH2、-NHMe、-NMe2、-NHEt、-NMeEt、-NEt、-NHnPr、-NMenPr、-NnPr2、-NHiPr、-NMeiPr、-NiPr2、-NHsBu、-NMesBu、-NsBu2、-NHtBu、-NMetBu、-NtBu2、-N[SiH3]2、-N[Si(Me)3]2、-N[Si(Et)3]2、-NH[SiH3]、-NH[Si(Me)3]、-NH[Si(Et)3]、-NMe[SiH3]、-NMe[Si(Me)3]、-NMe[Si(Et)3]、-N[SiH2Me]2、-N[SiHMe2]2、-N[SiH2Et]2、-N[SiHEt2]2、-N[SiHMeEt]2、-NH[SiH2Me]、-NH[SiHMe2]、-NH[SiH2Et]、-NH[SiHEt2]2、-NH[SiHMeEt]、-NMe[SiH2Me]、-NMe[SiHMe2]、-NMe[SiH2Et]、-NMe[SiHEt2]2、-NMe[SiHMeEt]などが挙げられる。
【0308】
特定の実施形態では、本明細書の任意の式(例えば、式(I)または(II)に関して)の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のR’は、任意選択で置換されたヒドラジノ(例えば、-NH-NH2または-NRN1-NRN2RN3)を含む。特定の実施形態では、RN1、RN2およびRN3のそれぞれは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたアミノ、ヒドロキシル、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたアルキル-アリール、任意選択で置換されたアリール-アルキル、任意選択で置換されたシリル、または任意選択で置換されたシリルオキシである。特定の実施形態では、RN1およびRN2、またはRN2およびRN3は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができる。さらに他の非限定的なヒドラジノ基としては、-NH-NH2、-NMe-NH2、-NH-NHMe、-NH-NMe2、-NMe-NMe2、-NEt-NH2、-NH-NHEt、-NH-NEt2、-NMe-NEt2などが挙げられる。
【0309】
いくつかの実施形態では、本明細書の任意の式(例えば、式(I)または(II)に関して)の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のR’は、任意選択で置換されたシリルを含む。一実施形態では、シリルは-SiRS1RS2RS3(式中、RS1、RS2およびRS3のそれぞれは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたアミノ、任意選択で置換されたヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、任意選択で置換されたシリル、任意選択で置換されたシリルオキシ、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたヘテロアルケニル、任意選択で置換されたヘテロアルキニル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、イソシアノなどである)である。非限定的なシリル基としては、本明細書に記載されるいずれか、例えば-Si(R)a(RAk)b、-Si(R)a(ORAk)b、-Si(R)a(RAr)b、-Si(R)a(ORAr)b、-Si(R)a(NRN1RN2)b、-Si(R’)a(OR)b(NR2)cなどが挙げられる。さらに他の非限定的なシリル基としては、-SiH3、-SiH2Me、-SiHMe2、-SiMe3、-Si(OH)3、-SiH2(OMe)、-SiH(OMe)2、-Si(OMe)3、-SiH2(NH2)、-SiHMe(NH2)、-SiMe2(NH2)、-SiH(NH2)2、-SiMe(NH2)2、-Si(NH2)3、-SiH2(NMe2)、-SiH2(NMe2)、-SiHMe(NMe2)、-Si(Me)2(NMe2)2、-SiMe(NMe2)2、-Si(NMe2)3、-SiH2(NHMe)、-SiHMe(NHMe)、-SiH(NHMe)2、-SiMe(NHMe)2、-Si(NHMe)3などが挙げられる。
【0310】
他の実施形態では、本明細書の任意の式(例えば、式(I)または(II)に関して)の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のR’は、任意選択で置換されたシリルオキシを含む。非限定的なシリルオキシ基としては、本明細書に記載されるいずれか、例えば、-O-Si(R)a(RAk)b、-O-Si(R)a(ORAk)b、-O-Si(R)a(RAr)b、-O-Si(R)a(ORAr)b、-O-Si(R)a(NRN1RN2)b、-O-Si(R’)a(OR)b(NR2)cなどが挙げられる。さらに他の非限定的なシリルオキシ基としては、-O-SiH3、-O-SiH2Me、-O-SiHMe2、-O-SiMe3、-O-Si(OH)3、-O-SiH2(OMe)、-O-SiH(OMe)2、-O-Si(OMe)3、-O-SiH2(NH2)、-O-SiHMe(NH2)、-O-SiMe2(NH2)、-O-SiH(NH2)2、-O-SiMe(NH2)2、-O-Si(NH2)3、-O-SiH2(NMe2)、-O-SiH2(NMe2)、-O-SiHMe(NMe2)、-O-Si(Me)2(NMe2)2、-O-SiMe(NMe2)2、-O-Si(NMe2)3、-O-SiH2(NHMe)、-O-SiHMe(NHMe)、-O-SiH(NHMe)2、-O-SiMe(NHMe)2、-O-Si(NHMe)3などが挙げられる。
【0311】
さらに他の実施形態では、本明細書の任意の式(例えば、式(I)または(II)に関して)の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のR’は、アジド(-N3)、ヒドロキシル(-OH)、シアナト(-OCN)、イソシアナト(-NCO)、シアノ(-CN)、および/またはイソシアノ(-NC)を含む。
【0312】
有機ケイ素含有前駆体は、シラン、ジシラン、トリシラン、テトラシラン、前述のシランのいずれかのアミン置換バージョン、およびトリシリルアミンからなる群から選択され得る。
【0313】
有機ケイ素含有前駆体の例としては、シラン、ポリシラン、ハロシランおよびアミノシランが挙げられるが、これらに限定されない。シランは、水素および/または炭素基を含有するが、ハロゲンを含有しない。ポリシランは、式(H3Si-(SiH2)n-SiH3)を有してもよく、ここでn≧1である。シランの例としては、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、トリシラン、テトラシラン、および有機シラン、例えばメチルシラン、エチルシラン、イソプロピルシラン、t-ブチルシラン、ジメチルシラン、ジエチルシラン、ジ-t-ブチルシラン、アリルシラン、sec-ブチルシラン、テキシルシラン、イソアミルシラン、t-ブチルジシラン、ジ-t-ブチルジシラン、テトラ-エチル-オルト-シリケート(テトラ-エトキシ-シランまたはTEOSとしても公知)などが挙げられる。
【0314】
アミノシランは、ケイ素原子に結合した少なくとも1つの窒素原子を含むが、水素、酸素、ハロゲンおよび炭素も含有することができる。アミノシランの例は、モノ-、ジ-、トリ-およびテトラ-アミノシラン(それぞれ、H3Si(NH2)4、H2Si(NH2)2、HSi(NH2)3およびSi(NH2)4)、ならびに置換モノ-、ジ-、トリ-およびテトラ-アミノシラン、例えば、t-ブチルアミノシラン、メチルアミノシラン、tert-ブチルシランアミン、ビス(ターシャリーブチルアミノ)シラン(SiH2(NHC(CH3)3)2(BTBAS)、tert-ブチルシリルカルバメート、SiH(CH3)-(N(CH3)2)2、SiHCl-(N(CH3)2)2、(Si(CH3)2NH)3、ジ(sec-ブチルアミノ)シラン(DSBAS)、ジ(イソプロピルアミド)シラン(DIPAS)、ビス(ジエチルアミノ)シラン(BDEAS)などである。アミノシランのさらなる例は、トリシリルアミン(N(SiH3)3)である。
【0315】
炭化ケイ素を堆積させるためのケイ素含有前駆体の例には、シロキサン、アルキルシランまたは炭化水素置換シラン、または窒素含有炭素含有反応物が含まれる。シロキサンの例としては、2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、ヘプタメチルシクロテトラシロキサン(HMCTS)、シルセスキオキサン、ペンタメチルジシロキサン(PMDSO)またはテトラメチルジシロキサン(TMDSO)などのジシロキサン、およびヘキサメチルトリシロキサンまたはヘプタメチルトリシロキサンなどのトリシロキサンなどが挙げられる。アルキルシランは、それに結合した1つまたは複数のアルキル基、およびそれに結合した1つまたは複数の水素原子を有する中心ケイ素原子を含む。いくつかの実施形態では、アルキル基のいずれか1つまたは複数は、1~5個の炭素原子を含有する。炭化水素基は、飽和または不飽和(例えば、アルケン(例えば、ビニル)、アルキン、および芳香族基)であってもよい。例としては、トリメチルシラン(3MS)、トリエチルシラン、ペンタメチルジシラメタン((CH3)2Si-CH2-Si(CH3)3)およびジメチルシラン(2MS)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、モノシランの代わりに、ジシラン、トリシラン、または他の高級シランが使用されてもよい。いくつかの実施形態では、ケイ素原子の1つは、炭素含有基または炭化水素基がそれに結合していてもよく、ケイ素原子の1つは、水素原子がそれに結合していてもよい。窒素を含む例示的な炭素含有反応物としては、メチル置換ジシラザンおよびトリシラザン、例えばテトラメチルジシラザンおよびヘキサメチルトリシラザンが挙げられる。
【0316】
有機ケイ素含有前駆体のさらに他の例としては、ヘプタメチルシクロテトラシロキサン(HMCTS)およびテトラメチルシクロテトラシロキサンなどのシクロテトラシロキサンなどのシロキサンを挙げることができる。他の環式シロキサンとしては、シクロトリシロキサンおよびシクロペンタシロキサンを挙げることができるが、これらに限定されない。好適な前駆体の他の例としては、ペンタメチルジシロキサン(PMDSO)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)などのジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサンおよびヘプタメチルトリシロキサンなどの直鎖シロキサンが挙げられるが、これらに限定されない。アンドープ炭化ケイ素の場合、好適な前駆体の例としては、例えば1~5個の炭素原子を含有する1つまたは複数のアルキル、アルケン、および/またはアルキン基で置換されたモノシランが挙げられる。例として、トリメチルシラン(3MS)、ジメチルシラン(2MS)、トリエチルシラン(TES)およびペンタメチルジシラメタンが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、モノシランの代わりに、ジシラン、トリシラン、または他の高級シランが使用されてもよい。1つのこのようなアルキルシラン類のジシランの例は、ヘキサメチルジシラン(HMDS)である。アルキルシラン類のジシランの別の例としては、ペンタメチルジシラン(PMDS)を挙げることができる。他のタイプのアルキルシランとしては、ケイ素原子に結合した炭素およびケイ素原子に結合したアルキル基を有する分岐ポリマー構造を有し得るアルキルカルボシランを挙げることができる。例としては、ジメチルトリメチルシリルメタン(DTMSM)およびビス-ジメチルシリルエタン(BDMSE)が挙げられる。他の好適な前駆体の例としては、例えばアルキルジシラザン、および場合により、1つまたは複数のケイ素原子に別々に結合したアミノ基(-NH2)およびアルキル基を含む化合物が挙げられる。アルキルジシラザンは、シリザンおよび2個のケイ素原子に結合したアルキル基を含む。例としては、1,1,3,3-テトラメチルジシラザン(TMDSN)が挙げられる。
【0317】
本明細書に記載のSi含有前駆体では、異なる種類のR’がケイ素原子に結合してもよい。さらなるSi含有前駆体が本明細書に記載される。
【0318】
アミノシラン
ケイ素含有前駆体は、1つまたは複数の任意選択で置換されたアミノ基を含んでもよく、それにより非限定的なアミノシランを提供する。一実施形態では、前駆体は、
(R’)4-xSi(NR’’2)x
[式中、
xは1、2、3、または4であり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、
各R’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、もしくはアミノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよいか、または任意選択で、2つのR’’は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができる]
の式を有する。
【0319】
別の実施形態では、前駆体は、
(R’’2N)x(R’)3-xSi-L-Si(R’)3-x(NR’’2)x
[式中、
各xは、独立して0、1、2、または3であり、
Lは、共有結合、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、オキシ(-O-)、イミノ、またはシリルなどのリンカーであり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、
各R’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、またはアミノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよいか、または任意選択で、2つのR’’は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができる]
の式を有する。
【0320】
特定の実施形態では、Lは、任意選択で置換されたイミノ、例えば-NR-(式中、Rは、H、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、または任意選択で置換された芳香族である)である。他の実施形態では、Lは、任意選択で置換されたシリル、例えば-SiR2-であり、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、または任意選択で置換された芳香族である。
【0321】
一例では、少なくとも1つのxは0ではない。別の実施形態では、xは0であり得る(例えば、Lが炭素原子またはヘテロ原子を含む場合)。さらに別の実施形態では、xは0であり、および/またはLは、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキレン、任意選択で置換されたアルケニレン、任意選択で置換されたアルキニレン、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたヘテロアルキレン、任意選択で置換されたヘテロアルケニレン、任意選択で置換されたヘテロアルキニレン、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたアリーレン、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたヘテロアリーレン、オキシ(-O-)、イミノ、またはシリルを含む。
【0322】
特定の実施形態では、少なくとも1つのR’またはR’’はHではない。前駆体は、1つまたは複数のケイ素原子に結合したR’基およびアミノ基(NR’’2)の任意の有用な組合せを有することができる。
【0323】
いくつかの実施形態では、R’は、H、任意選択で置換されたアミノ(例えば-NR2)、脂肪族-オキシ(例えば、アルコキシまたは-OR)、脂肪族-カルボニル(例えば、アルカノイルまたは-C(O)R)、脂肪族-カルボニルオキシ(例えば、アルカノイルオキシまたは-OC(O)R)、脂肪族-オキシカルボニル(例えば、アルコキシカルボニルまたは-C(O)OR)、シリル(例えば-SiR3)、脂肪族-オキシ-シリル(例えばアルコキシシリルまたは-Si(R)a(OR)b)、アミノシリル(例えば-Si(R)a(NR2)b)、シリルオキシ(例えば-O-SiR3)、脂肪族-オキシ-シリルオキシ(例えば、アルコキシシリルオキシまたは-O-Si(R)a(OR)b)、アミノシリルオキシ(例えば、-O-Si(R)a(NR2)b)、芳香族(例えば、アリール)、芳香族-オキシ(例えば、アリールオキシまたは-OR)、ヒドロキシル(-OH)、ホルミル(-C(O)H)などである。特定の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたアリール、および任意選択で置換されたヘテロ芳香族であり、a≧0であり、b≧1であり、a+b=3である。いくつかの実施形態では、2つのR基は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成し得る。他の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、または任意選択で置換されたアリールである。
【0324】
他の実施形態では、R’’は、H、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたシリル、または任意選択で置換されたシリルオキシである。いくつかの実施形態では、R’’は、任意選択で置換されたアルキル(例えば、Me、Et、nPr、iPr、sBu、またはtBu)である。他の実施形態では、R’’は、-SiR’3、-SiR3、-Si(R’)a(OR)b、-Si(R)a(OR)b、-Si(R’)a(NR2)b、-Si(R)a(NR2)b、-Si(R’)a(OR)b(NR2)c、-Si(R)a(OR)b(NR2)c、-O-SiR’3、-O-SiR3、-O-Si(R’)a(OR)b、-O-Si(R)a(OR)b、-O-Si(R’)a(NR2)b、-O-Si(R)a(NR2)b、-O-Si(R’)a(OR)b(NR2)c、または-O-Si(R)a(OR)b(NR2)cであり、各R’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノまたはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、または任意選択で置換されたヘテロ芳香族であり、a、b、およびcのそれぞれは0以上であり、a+b+c=3またはa+b=3(cが存在しない場合)である。特定の実施形態では、Rは、H、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、または任意選択で置換されたアルキニルである。
【0325】
前駆体は、ケイ素原子に結合した少なくとも1つのR’基を含んでもよい。一実施形態では、前駆体は、(R’)(H)3-xSi(NR’’2)x(式中、R’およびR’’は本明細書に記載されるいずれかであってもよく、xは1、2、または3である)の式を有する。別の実施形態では、前駆体は(R’)(H)2Si(NR’’2)(式中、R’およびR’’は本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。一実施形態では、前駆体は(R’)(H)Si(NR’’2)2(式中、R’およびR’’は本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。別の実施形態では、前駆体は(R’)2(H)Si(NR’’2)(式中、R’およびR’’は本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。さらに別の実施形態では、前駆体は(R’)2Si(NR’’2)2(式中、R’およびR’’は本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。一実施形態では、前駆体は(R’)3Si(NR’’2)(式中、R’およびR’’は本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0326】
前駆体は、ケイ素原子に結合したR’基を欠くことができる。一実施形態では、前駆体は、(H)4-xSi(NR’’2)x(式中、各R’’は、独立して本明細書に記載されるいずれかであってもよく、xは1、2、3、または4である)の式を有する。別の実施形態では、前駆体は、Si(NR’’2)x(式中、各R’’は、独立して本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。特定の実施形態では、各R’’は、独立して脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、またはヘテロ芳香族である。
【0327】
前駆体は、ケイ素原子に結合した1つまたは複数の水素原子を含んでもよい。一実施形態では、前駆体は、(H)3Si(NR’’2)または(H)2Si(NR’’2)2または(H)Si(NR’’2)3(式中、各R’’は、独立して本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。特定の実施形態では、各R’’は、独立して脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、またはアミノであり、これらのいずれかは、任意選択で置換されていてもよい。
【0328】
前駆体は、窒素原子を有するヘテロシクリル基を含み得る。一実施形態では、式は、H
3Si-Het(式中、Hetは、少なくとも1つの窒素原子を含む任意選択で置換されたヘテロシクリルである)の式を有する。特定の実施形態では、前駆体は、
【化1】
[式中、ヘテロシクリル基は任意選択で置換されてもよく(例えば、アルキルの置換基として本明細書に記載される任意の置換基によって)、nは、1、2、3、4、または5である]
の式を有する。一実施形態では、式は、R’
3Si-Het(式中、Hetは、少なくとも1つの窒素原子を含む任意選択で置換されたヘテロシクリルであり、各R’は、独立して本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。特定の実施形態では、前駆体は、
【化2】
[式中、ヘテロシクリル基は任意選択で置換されてもよく(例えば、アルキルの置換基として本明細書に記載される任意の置換基によって)、各R’は独立して本明細書に記載されるいずれかであってもよく、nは1、2、3、4、または5である]
の式を有する。
【0329】
いくつかの例では、前駆体は2個以上のケイ素原子を有することができ、ここで前駆体はSi-Si結合を含んでもよい。特定の実施形態では、前駆体は、(R’’2N)x(R’)3-xSi-Si(R’)3-x(NR’’2)x(式中、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。一実施形態では、前駆体は、(R’’2N)(R’)2Si-Si(R’)2(NR’’2)(式中、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。別の実施形態では、前駆体は、(R’’2N)2(R’)Si-Si(R’)(NR’’2)2(式中、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。さらに別の実施形態では、前駆体は、(R’’2N)3Si-Si(NR’’2)3(式中、各R’’は、独立して本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0330】
前駆体は、ケイ素原子に結合した異なる基を含んでもよい。一例では、前駆体は、(R’’2N)x(R’)3-xSi-SiH3(式中、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0331】
2つのケイ素原子間にリンカーが存在してもよい。一例では、前駆体は、(R’’2N)x(R’)3-xSi-NR-Si(R’)3-x(NR’’2)x(式中、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよく、RはH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、または任意選択で置換された芳香族である)の式を有する。別の例では、前駆体は、(R’’2N)x(H)3-xSi-NR-Si(H)3-x(NR’’2)x(式中、R、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0332】
前駆体は、R’基とヘテロ原子を有するリンカーとの組合せを含んでもよい。一例では、前駆体は、(R’)3Si-NR-Si(R’)3(式中、RおよびR’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。別の例では、前駆体は(R’)3Si-L-Si(R’)3(式中、LおよびR’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。特定の実施形態では、Lは、オキシ(-O-)、任意選択で置換されたイミノ(例えば-NR-)、または任意選択で置換されたシリル(例えば-SiR2-)である。
【0333】
前駆体は、2個のケイ素原子と組み合わせたR’基およびNR’’2基の任意の有用な組合せを含んでもよい。一例では、前駆体は、(R’’2N)(R’)2Si-L-Si(R’)2(NR’’2)x(式中、L、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0334】
前駆体は、ケイ素および窒素原子を含む複素環式基を含んでもよい。一実施形態では、前駆体は、
【化3】
[式中、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよく、nは1、2、3または4である]
の式を有する。
【0335】
別の実施形態では、前駆体は、
【化4】
[式中、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよく、nは1、2、3、または4である]
の式を有する。さらに別の実施形態では、前駆体は、
【化5】
[式中、各R’’は、独立して本明細書に記載されるいずれかであってもよく、nは1、2、3、または4である]
の式を有する。別の実施形態では、前駆体は、
【化6】
[式中、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよく、nは1、2、3、または4である]
の式を有する。さらに別の実施形態では、前駆体は、
【化7】
[式中、R’’は、独立して本明細書に記載されるいずれかであってもよく、nは1、2、3、または4である]
の式を有する。
【0336】
本明細書の任意の前駆体において、2つのR’’は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができる。
【0337】
前駆体としては、以下、例えば(RAk)Si(NH2)(NRAk
2)2、(RAk)Si(NRAk
2)3、(RAk)2Si(NHRAk
2)2、(RAk)(H)Si(NHRAk)2、(RAk)3Si(NRAk
2)、(RAk)3Si(NHRAk)、H2Si(NHRAk
2)2、(RAk)(H)Si(NRAk
2)2、HSi(NH2)(NRAk
2)2、HSi(NRAk
2)3、Si(NRAk
2)4、(R’)(H)Si(NR’’2)2、(R’)2Si(NRAk
2)2、(R’)2Si(N[SiH3]2)2、(R’)2Si(N[SiR’’3]2)2、または(R’)3Si(NHRAk)のいずれかを挙げることができる。いくつかの実施形態では、R’およびR’’のそれぞれは、独立して本明細書に記載されるいずれか(例えば、H、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、または任意選択で置換されたアルキニル)であってもよい。他の実施形態では、各RAkは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、または任意選択で置換されたアルキニルである。特定の実施形態では、RAkは、メチル(Me)、エチル(Et)、n-プロピル(nPr)、イソプロピル(iPr)、n-ブチル(nBu)、sec-ブチル(sBu)、イソブチル(iBu)、tert-ブチル(tBu)などである。
【0338】
前駆体の非限定的な例としては、以下のいずれかが挙げられる:メチルアミノトリメチルシラン(SiMe3[NHMe])、ジメチルアミノジメチルシラン(SiMe2H[NMe2])、ジメチルアミノトリメチルシラン(SiMe3[NMe2])、ジメチルアミノジエチルシラン(SiHEt2[NMe2])、ジメチルアミノトリエチルシラン(SiEt3[NMe2])、エチルメチルアミノジメチルシラン(SiHMe2[NMeEt])、エチルメチルアミノトリメチルシラン(SiMe3[NMeEt])、エチルメチルアミノジエチルシラン(SiHEt2[NMeEt])、エチルメチルアミノトリエチルシラン(SiEt3[NMeEt])、ジエチルアミノメチルシラン(SiH2Me[NEt2])、ジエチルアミノエチルシラン(SiH2Et[NEt2])、エチルアミノトリメチルシラン(SiMe3[NHEt])、ジエチルアミノジメチルシラン(SiHMe2[NEt2])、ジエチルアミノジエチルシラン(SiHEt2[NEt2])、ジエチルアミノトリメチルシラン(SiMe3[NEt2])、ジエチルアミノトリエチルシラン(SiEt3[NEt2])、イソプロピルアミノジメチルシラン(SiHMe2[NHiPr])、イソプロピルアミノトリメチルシラン(SiMe3[NHiPr])、イソ-プロピルアミノジエチルシラン(SiHEt2[NHiPr])、イソ-プロピルアミノトリエチルシラン(SiEt3[NHiPr])、ジ-イソプロピルアミノトリメチルシラン(SiMe3[NiPr2])、ジ-イソ-プロピルアミノシラン(SiH3[NiPr2]、C6H17NSi、またはDIPAS)、ジ-イソ-プロピルアミノメチルシラン(SiH2Me[NiPr2])、ジ-イソプロピルアミノジメチルシラン(SiHMe2[NiPr2])、ジ-イソプロピルアミノジエチルシラン(SiHEt2[NiPr2])、ジ-イソプロピルアミノトリエチルシラン(SiEt3[NiPr2])、n-プロピルアミノトリメチルシラン(SiMe3[NHnPr])、ジ-sec-ブチルアミノシラン(SiH3[NsBu2]またはDSBAS)、ジ-sec-ブチルアミノメチルシラン(SiH2Me[NsBu2])、イソ-ブチルアミノトリメチルシラン(SiMe3[NHiBu])、n-ブチルアミノトリメチルシラン(SiMe3[NHnBu])、tert-ブチルアミノジメチルシラン(SiHMe2[NHtBu])、tert-ブチルアミノトリメチルシラン(SiMe3[NHtBu])、tert-ブチルアミノジエチルシラン(SiHEt2[NHtBu])、tert-ブチルアミノトリエチルシラン(SiEt3[NHtBu])、ジシクロヘキシルアミノシラン(SiH3[NCy2](式中、Cyはシクロヘキシルである))、N-プロピルイソプロピルアミノシラン(SiH3[NiPrnPr])、N-メチルシクロヘキシルアミノシラン(SiH3[NMeCy])、N-エチルシクロヘキシルアミノシラン(SiH3[NEtCy])、アリルフェニルアミノシラン(SiH3[NAllPh])、N-イソプロピルシクロヘキシルアミノシラン(SiH3[NiPrCy])、アリルシクロペンチルアミノシラン(SiH3[NAllCp])、フェニルシクロヘキシルアミノシラン(SiH3[NPhCy])、シクロヘキシルアミノトリメチルシラン(SiMe3[NHCy](式中、Cyはシクロヘキシルである))、ピロリルトリメチルシラン(SiMe3[NHPy](式中、Pyはピロリルである))、ピロリジノトリメチルシラン(SiMe3[NHPyr](式中、Pyrはピロリジルである))、ピペリジノトリメチルシラン(SiMe3[NHPip](式中、Pipはピペリジニルである))、ピペラジノトリメチルシラン(SiMe3[NHPz](式中、Pzはピペラジニルである))、イミダゾリルトリメチルシラン(SiMe3[NHIm](式中、Imはイミダゾリルである))、ビス(ジメチルアミノ)シラン(SiH2[NMe2]2またはBDMAS)、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン(SiMeH[NMe2]2)、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン(SiMe2[NMe2]2またはBDMADMS)、ビス(ジメチルアミノ)ジエチルシラン(SiEt2[NMe2]2)、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン(SiMeVi[NMe2]2)、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン(SiMe2[NHEt]2)、ビス(エチルメチルアミノ)シラン(SiH2[NMeEt]2)、ビス(エチルメチルアミノ)ジメチルシラン(SiMe2[NMeEt]2)、ビス(エチルメチルアミノ)ジエチルシラン(SiEt2[NMeEt]2)、ビス(エチルメチルアミノ)メチルビニルシラン(SiMeVi[NMeEt]2)、ビス(ジエチルアミノ)シラン(SiH2[NEt2]2、C8H22N2Si、またはBDEAS)、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン(SiMe2[NEt2]2)、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン(SiMeVi[NEt2]2)、ビス(ジエチルアミノ)ジエチルシラン(SiEt2[NEt2]2)、ビス(イソ-プロピルアミノ)ジメチルシラン(SiMe2[NHiPr]2)、ビス(イソ-プロピルアミノ)ジエチルシラン(SiEt2[NHiPr]2)、ビス(イソ-プロピルアミノ)メチルビニルシラン(SiMeVi[NHiPr]2)、ビス(ジ-イソ-プロピルアミノ)シラン(SiH2[NiPr2]2)、ビス(ジ-イソ-プロピルアミノ)ジメチルシラン(SiMe2[NiPr2]2)、ビス(ジ-イソ-プロピルアミノ)ジエチルシラン(SiEt2[NiPr2]2)、ビス(ジ-イソ-プロピルアミノ)メチルビニルシラン(SiMeVi[NiPr2]2)、ビス(メチルアミノ)シラン(SiH2[NHMe]2)、ビス(sec-ブチルアミノ)シラン(SiH2[NHsBu]2)、ビス(sec-ブチルアミノ)メチルシラン(SiHMe[NHsBu]2)、ビス(sec-ブチルアミノ)エチルシラン(SiHEt[NHsBu]2)、ビス(tert-ブチルアミノ)シラン(SiH2[NHtBu]2またはBTBAS)、ビス(tert-ブチルアミノ)ジメチルシラン(SiMe2[NHtBu]2)、ビス(tert-ブチルアミノ)メチルビニルシラン(SiMeVi[NHtBu]2)、ビス(tert-ブチルアミノ)ジエチルシラン(SiEt2[NHtBu]2)、ビス(1-イミダゾリル)ジメチルシラン(SiMe2[Im]2(式中、Imはイミダゾリルである))、トリス(ジメチルアミノ)シラン(SiH[NMe2]3、または3DMAS)、トリス(ジメチルアミノ)フェニルシラン(SiPh[NMe2]3)、トリス(ジメチルアミノ)メチルシラン(SiMe[NMe2]3)、トリス(ジメチルアミノ)エチルシラン(SiEt[NMe2]3)、トリス(エチルメチルアミノ)シラン(SiH[NEtMe]3)、トリス(ジエチルアミノ)シラン(SiH[NEt2]3)、トリス(イソ-プロピルアミノ)シラン(SiH[NHiPr]3、C9H25N3Si、またはTIPAS)、トリス(ジメチルアミノ)シリルアミド(Si[NMe2]3[NH2])、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[NMe2]4)、テトラキス(エチルメチルアミノ)シラン(Si[NEtMe]4)、テトラキス(ジエチルアミノ)シラン(Si[NEt2]4)、1,2-ジエチル-テトラキス(ジエチルアミノ)ジシラン([Et2N]2EtSi-SiEt[NEt2]2)、1,2-ジメチル-テトラキス(ジメチルアミノ)ジシラン([Me2N]2MeSi-SiMe[NMe2]2)、1,2-ジメチル-テトラキス(ジエチルアミノ)ジシラン([Et2N]2MeSi-SiMe[NEt2]2)、ヘキサキス(メチルアミノ)ジシラン([MeHN]3Si-Si[NHMe]3)、ヘキサキス(エチルアミノ)ジシラン([EtHN]3Si-Si[NHEt]3)、ヘキサキス(ジメチルアミノ)ジシラザン(Me2N-Si[NMe2]2-Si[NMe2]2-NMe2)など。
【0339】
イソシアナトシラン
ケイ素含有前駆体は、1つまたは複数のイソシアナト基を含んでもよく、それにより非限定的なイソシアナトシランを提供する。一実施形態では、前駆体は、
(R’)4-xSi(NCO)x
[式中、
xは1、2、3、または4であり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよい]
の式を有する。
【0340】
別の実施形態では、前駆体は、
(R’)zSi(NCO)x(NR’’2)y
[式中、
xは1、2、3、または4であり、
yおよびzのそれぞれは、独立して0、1、2または3であり、
x+y+z=4であり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、
各R’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、もしくはアミノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよいか、または任意選択で、2つのR’’は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができる]
の式を有する。
【0341】
さらに別の実施形態では、前駆体は、
(NCO)x(R’)3-xSi-L-Si(R’)3-x(NCO)x
[式中、
各xは、独立して0、1、2、または3であり、
Lは、共有結合、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキレン、任意選択で置換されたアルケニレン、任意選択で置換されたアルキニレン、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたヘテロアルキレン、任意選択で置換されたヘテロアルケニレン、任意選択で置換されたヘテロアルキニレン、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたアリーレン、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたヘテロアリーレン、オキシ(-O-)、イミノ、またはシリルなどのリンカーであり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよい]
の式を有する。
【0342】
いくつかの実施形態では、R’は、H、任意選択で置換されたアミノ(例えば-NR2)、脂肪族-オキシ(例えば、アルコキシまたは-OR)、脂肪族-カルボニル(例えば、アルカノイルまたは-C(O)R)、脂肪族-カルボニルオキシ(例えば、アルカノイルオキシまたは-OC(O)R)、脂肪族-オキシカルボニル(例えば、アルコキシカルボニルまたは-C(O)OR)、シリル(例えば-SiR3)、脂肪族-オキシ-シリル(例えば、アルコキシシリルまたは-Si(R)a(OR)b)、アミノシリル(例えば、-Si(R)a(NR2)b)、シリルオキシ(例えば、-O-SiR3)、脂肪族-オキシ-シリルオキシ(例えば、アルコキシシリルオキシまたは-O-Si(R)a(OR)b)、アミノシリルオキシ(例えば、-O-Si(R)a(NR2)b)、芳香族(例えば、アリール)、芳香族-オキシ(例えば、アリールオキシまたは-OR)、ヒドロキシル(-OH)、ホルミル(-C(O)H)などである。特定の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたアリール、および任意選択で置換されたヘテロ芳香族であり、a≧0であり、b≧1であり、a+b=3である。いくつかの実施形態では、2つのR基は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成し得る。他の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、または任意選択で置換されたアリールである。
【0343】
他の実施形態では、R’’は、H、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたシリル、または任意選択で置換されたシリルオキシである。いくつかの実施形態では、R’’は、任意選択で置換されたアルキル(例えば、Me、Et、nPr、iPr、sBu、またはtBu)である。他の実施形態では、R’’は、-SiR’3、-SiR3、-Si(R’)a(OR)b、-Si(R)a(OR)b、-Si(R’)a(NR2)b、-Si(R)a(NR2)b、-Si(R’)a(OR)b(NR2)c、-Si(R)a(OR)b(NR2)c、-O-SiR’3、-O-SiR3、-O-Si(R’)a(OR)b、-O-Si(R)a(OR)b、-O-Si(R’)a(NR2)b、-O-Si(R)a(NR2)b、-O-Si(R’)a(OR)b(NR2)c、または-O-Si(R)a(OR)b(NR2)cであり、各R’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、または任意選択で置換されたヘテロ芳香族であり、a、b、およびcのそれぞれは0以上であり、a+b+c=3またはa+b=3(cが存在しない場合)である。特定の実施形態では、Rは、H、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、または任意選択で置換されたアルキニルである。
【0344】
前駆体としては、以下、例えば、(R’)Si(NCO)(NR’’2)2、(R’)2Si(NCO)(NR’’2)、(R’)2Si(NCO)(N[SiR3]2)、またはテトライソシアナトシラン(Si[NCO]4)のいずれかを挙げることができる。いくつかの実施形態では、R’およびR’’のそれぞれは、独立して本明細書に記載されるいずれか(例えば、H、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、または任意選択で置換されたアルキニル)であってもよい。他の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたアリール、または任意選択で置換されたヘテロアリールである。
【0345】
アジドシラン
ケイ素含有前駆体は、1つまたは複数のアジド基を含んでもよく、それにより非限定的なアジドシランを提供する。一実施形態では、前駆体は、
(R’)4-xSi(N3)x
[式中、
xは1、2、3、または4であり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよい]
の式を有する。
【0346】
別の実施形態では、前駆体は、
(R’)zSi(N3)x(NR’’2)y
[式中、
xは1、2、3、または4であり、
yおよびzのそれぞれは、独立して0、1、2または3であり、
x+y+z=4であり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、
各R’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、もしくはアミノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよいか、または任意選択で、2つのR’’は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができる]
の式を有する。
【0347】
さらに別の実施形態では、前駆体は、
(N3)x(R’)3-xSi-L-Si(R’)3-x(N3)x
[式中、
各xは、独立して0、1、2、または3であり、
Lは、共有結合、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキレン、任意選択で置換されたアルケニレン、任意選択で置換されたアルキニレン、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたヘテロアルキレン、任意選択で置換されたヘテロアルケニレン、任意選択で置換されたヘテロアルキニレン、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたアリーレン、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたヘテロアリーレン、オキシ(-O-)、イミノ、またはシリルなどのリンカーであり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよい]
の式を有する。
【0348】
いくつかの実施形態では、R’は、H、任意選択で置換されたアミノ(例えば-NR2)、脂肪族-オキシ(例えば、アルコキシまたは-OR)、脂肪族-カルボニル(例えば、アルカノイルまたは-C(O)R)、脂肪族-カルボニルオキシ(例えば、アルカノイルオキシまたは-OC(O)R)、脂肪族-オキシカルボニル(例えば、アルコキシカルボニルまたは-C(O)OR)、シリル(例えば-SiR3)、脂肪族-オキシ-シリル(例えば、アルコキシシリルまたは-Si(R)a(OR)b)、アミノシリル(例えば-Si(R)a(NR2)b)、シリルオキシ(例えば、-O-SiR3)、脂肪族-オキシ-シリルオキシ(例えば、アルコキシシリルオキシまたは-O-Si(R)a(OR)b)、アミノシリルオキシ(例えば、-O-Si(R)a(NR2)b)、芳香族(例えば、アリール)、芳香族-オキシ(例えば、アリールオキシまたは-OR)、ヒドロキシル(-OH)、ホルミル(-C(O)H)などである。特定の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたアリール、および任意選択で置換されたヘテロ芳香族であり、a≧0であり、b≧1であり、a+b=3である。いくつかの実施形態では、2つのR基は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成し得る。他の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、または任意選択で置換されたアリールである。
【0349】
他の実施形態では、R’’は、H、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたシリル、または任意選択で置換されたシリルオキシである。いくつかの実施形態では、R’’は、任意選択で置換されたアルキル(例えば、Me、Et、nPr、iPr、sBu、またはtBu)である。他の実施形態では、R’’は、-SiR’3、-SiR3、-Si(R’)a(OR)b、-Si(R)a(OR)b、-Si(R’)a(NR2)b、-Si(R)a(NR2)b、-Si(R’)a(OR)b(NR2)c、-Si(R)a(OR)b(NR2)c、-O-SiR’3、-O-SiR3、-O-Si(R’)a(OR)b、-O-Si(R)a(OR)b、-O-Si(R)’a(NR2)b、-O-Si(R)a(NR2)b、-O-Si(R’)a(OR)b(NR2)c、または-O-Si(R)a(OR)b(NR2)cであり、各R’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、または任意選択で置換されたヘテロ芳香族であり、a、b、およびcのそれぞれは0以上であり、a+b+c=3またはa+b=3(cが存在しない場合)である。特定の実施形態では、Rは、H、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、または任意選択で置換されたアルキニルである。
【0350】
前駆体としては、以下、例えば、(R’)3Si(N3)、(R’)2Si(N3)2、(R’)Si(N3)3、またはSi(N3)(NR’’2)3のいずれかを挙げることができる。いくつかの実施形態では、R’およびR’’のそれぞれは、独立して本明細書に記載されるいずれか(例えば、H、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、または任意選択で置換されたアルキニル)であってもよい。前駆体の非限定的な例としては、トリス(ジメチルアミノ)シリルアジド([Me2N]3SiN3)、ジ-tert-ブチルジアジドシラン(tBu2Si(N3)2)、エチルシリコントリアジド(EtSi(N3)3)なども挙げられる。
【0351】
ヒドラジノシラン
ケイ素含有前駆体は、1つまたは複数の任意選択で置換されたヒドラジノ基を含んでもよく、それにより非限定的なヒドラジノシランを提供する。一実施形態では、前駆体は、
(R’)4-xSi(NR’’-NR’’2)x
[式中、
xは1、2、3、または4であり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、
各R’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、もしくはアミノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよいか、または任意選択で、2つのR’’は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができる]
の式を有する。
【0352】
別の実施形態では、前駆体は、
(NR’’2-NR’’)x(R’)3-xSi-L-Si(R’)3-x(NR’’-NR’’2)x
[式中、
各xは、独立して0、1、2、または3であり、
Lは、共有結合、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、オキシ(-O-)、イミノ、またはシリルなどのリンカーであり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、
各R’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、またはアミノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよいか、または任意選択で、2つのR’’は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができる]
の式を有する。
【0353】
さらに別の実施形態では、前駆体は、(R’)4-xSi(NR’’-L-NR’’2)x(式中、xは1、2、3、または4であり、各L、R’、およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0354】
特定の実施形態では、Lは、任意選択で置換されたイミノ、例えば-NR-(式中、Rは、H、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、または任意選択で置換された芳香族である)である。他の実施形態では、Lは、任意選択で置換されたシリル、例えば-SiR2-(式中、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、または任意選択で置換された芳香族である)である。さらに他の実施形態では、Lは-NR-NR-(式中、Rは、本明細書に記載されるいずれかである(例えば、Rは、H、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、または任意選択で置換された芳香族である))である。
【0355】
一例では、少なくとも1つのxは0ではない。別の実施形態では、xは0であり得る(例えば、Lが炭素原子またはヘテロ原子を含む場合)。さらに別の実施形態では、xは0であり、および/またはLは、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキレン、任意選択で置換されたアルケニレン、任意選択で置換されたアルキニレン、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたヘテロアルキレン、任意選択で置換されたヘテロアルケニレン、任意選択で置換されたヘテロアルキニレン、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたアリーレン、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたヘテロアリーレン、オキシ(-O-)、イミノ、またはシリルを含む。
【0356】
前駆体は、R’基およびヒドラジノ基の任意の有用な組合せを含んでもよい。一実施形態では、前駆体は、(R’)3Si(NR’’-L-NR’’2)または(R’)3Si(NR’’-NR’’2)(式中、L、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0357】
前駆体は、複数のヒドラジノ基を含んでもよい。一実施形態では、前駆体は、(R’)2Si(NR’’-L-NR’’2)2、(R’)2Si(NR’’-NR’’2)2、または(R’)2Si(NH-NHR’’)2(式中、L、R’、およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0358】
前駆体は、少なくとも2つのケイ素原子を含んでもよい。一実施形態では、前駆体は、(NR’’2-NR’’)(R’)2Si-Si(R’)2(NR’’-NR’’2)(式中、各R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0359】
非限定的な前駆体としては、ビス(tert-ブチルヒドラジノ)ジエチルシラン(SiEt2[NH-NHtBu]2)、トリス(ジメチルヒドラジノ)シラン(SiH[NH-NMe2]3)などを挙げることができる。
【0360】
シロキサンおよびその誘導体
ケイ素含有前駆体は、1つまたは複数の脂肪族-オキシ、芳香族-オキシ基、および/またはオキシ基を含んでもよく、それにより1つまたは複数のSi-O、O-Si-O、またはSi-O-Si結合を有するシロキサンまたはその誘導体を提供する。一実施形態では、前駆体は、
(R’)4-xSi(OR’’’)x
[式中、
xは1、2、3、または4であり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、
各R’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、シリル、またはシリルオキシであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよい]
の式を有する。
【0361】
別の実施形態では、前駆体は、
(R’’’O)x(R’)3-xSi-L-Si(R’)3-x(OR’’’)x
[式中、
各xは、独立して0、1、2、または3であり、
Lは、共有結合、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、オキシ(-O-)、イミノ、またはシリルなどのリンカーであり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、
各R’’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、シリル、またはシリルオキシであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよい]
の式を有する。
【0362】
特定の実施形態では、Lは、任意選択で置換されたイミノ、例えば-NR-(式中、Rは、H、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、または任意選択で置換された芳香族である)である。他の実施形態では、Lは、任意選択で置換されたシリル、例えば-SiR2-(式中、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、または任意選択で置換された芳香族である)である。他の実施形態では、Lは-O-L’-O-(式中、L’は、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたシリル(例えば、-SiR2-)、任意選択で置換されたアルキレン(例えば-(CH2)n-(式中、nは1~6である))、任意選択で置換されたアリーレンなどである)である。さらに他の実施形態では、Lはオキシである。
【0363】
一例では、少なくとも1つのxは0ではない。別の実施形態では、xは0であり得る(例えば、Lが炭素原子またはヘテロ原子を含む場合)。さらに別の実施形態では、xは0であり、および/またはLは、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキレン、任意選択で置換されたアルケニレン、任意選択で置換されたアルキニレン、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたヘテロアルキレン、任意選択で置換されたヘテロアルケニレン、任意選択で置換されたヘテロアルキニレン、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたアリーレン、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたヘテロアリーレン、オキシ(-O-)、イミノ、またはシリルを含む。
【0364】
いくつかの実施形態では、R’は、H、任意選択で置換されたアミノ(例えば-NR2)、脂肪族-オキシ(例えば、アルコキシまたは-OR)、脂肪族-カルボニル(例えば、アルカノイルまたは-C(O)R)、脂肪族-カルボニルオキシ(例えば、アルカノイルオキシまたは-OC(O)R)、脂肪族-オキシカルボニル(例えば、アルコキシカルボニルまたは-C(O)OR)、シリル(例えば-SiR3)、脂肪族-オキシ-シリル(例えば、アルコキシシリルまたは-Si(R)a(OR)b)、アミノシリル(例えば-Si(R)a(NR2)b)、シリルオキシ(例えば-O-SiR3)、脂肪族-オキシ-シリルオキシ(例えば、アルコキシシリルオキシまたは-O-Si(R)a(OR)b)、アミノシリルオキシ(例えば、-O-Si(R)a(NR2)b)、芳香族(例えば、アリール)、芳香族-オキシ(例えば、アリールオキシまたは-OR)、ヒドロキシル(-OH)、ホルミル(-C(O)H)などである。特定の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたアリール、および任意選択で置換されたヘテロ芳香族であり、a≧0であり、b≧1であり、a+b=3である。いくつかの実施形態では、2つのR基は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成し得る。他の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、または任意選択で置換されたアリールである。
【0365】
他の実施形態では、R’’’は、H、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたシリル、または任意選択で置換されたシリルオキシである。いくつかの実施形態では、R’’’は、任意選択で置換されたアルキル(例えば、Me、Et、nPr、iPr、sBu、またはtBu)である。他の実施形態では、R’’’は、-SiR’3、-SiR3、-Si(R’)a(OR)b、-Si(R)a(OR)b、-Si(R’)a(NR2)b、-Si(R)a(NR2)b、-Si(R’)a(OR)b(NR2)c、-Si(R)a(OR)b(NR2)c、-O-SiR’3、-O-SiR3、-O-Si(R’)a(OR)b、-O-Si(R)a(OR)b、-O-Si(R’)a(NR2)b、-O-Si(R)a(NR2)b、-O-Si(R’)a(OR)b(NR2)c、または-O-Si(R)a(OR)b(NR2)cであり、各R’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、または任意選択で置換されたヘテロ芳香族であり、a、b、およびcのそれぞれは0以上であり、a+b+c=3またはa+b=3(cが存在しない場合)である。特定の実施形態では、Rは、H、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、または任意選択で置換されたアルキニルである。
【0366】
前駆体は、ケイ素原子に結合した1つまたは複数の水素原子を含んでもよい。一実施形態では、前駆体は、H3Si(OR’’’)、H2Si(OR’’’)2、またはHSi(OR’’’)3(式中、各R’’’は、独立して本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0367】
前駆体は、R’基およびOR’’’基の任意の組合せを前駆体内に含んでもよい。一実施形態では、前駆体は、(R’)3Si(OR’’’)、(R’)2Si(OR’’’)2、または(R’)Si(OR’’’)3(式中、R’およびR’’’のそれぞれは、独立して本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。前駆体は、(RAk)3Si(ORAk)、(RAk)2Si(ORAk)2、または(RAk)Si(ORAk)3(式中、RAkは任意選択で置換されたアルキルである)の式を有する前駆体におけるように、アルキル基を含んでもよい。
【0368】
いくつかの例では、前駆体は2個以上のケイ素原子を有してもよく、ここで前駆体は、Si-Si結合を含んでもよい。特定の実施形態では、前駆体は、(R’’’O)x(R’)3-xSi-Si(R’)3-x(OR’’’)x(式中、R’およびR’’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。一実施形態では、前駆体は、(R’’’O)(R’)2Si-Si(R’)2(OR’’’)(式中、R’およびR’’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0369】
前駆体は、R’基とヘテロ原子を有するリンカーとの組合せを含んでもよい。一例では、前駆体は(R’)3Si-O-Si(R’)3の式を有し、R’は本明細書に記載されるいずれかであってもよい。別の例では、前駆体は(R’)3Si-O-L’-O-Si(R’)3(式中、L’およびR’は本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。さらに別の例では、前駆体は、(R’)3Si-(OSiR’2)z-R’(式中、R’は本明細書に記載されるいずれかであってもよく、zは1、2、3、4またはそれ以上である)の式を有する。別の例では、前駆体は、(R’)4-xSi-[(OSiR’2)z-R’]x(式中、R’は本明細書に記載されるいずれかであってもよく、xは1、2、3または4であり、zは1、2、3、4またはそれ以上である)の式を有する。
【0370】
前駆体は、2個のケイ素原子と組み合わせたR’基およびOR’’’基の任意の有用な組合せを含んでもよい。一例では、前駆体は、(R’’’O)x(R’)3-xSi-O-Si(R’)3-x(OR’’’)x(式中、R’およびR’’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。別の例では、前駆体は、(R’’’O)x(R’)3-xSi-O-L’-O-Si(R’)3-x(OR’’’)x(式中、L’、R’およびR’’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0371】
非限定的な前駆体としては、メトキシジメチルシラン(SiHMe2[OMe])、エトキシジメチルシラン(SiHMe2[OEt])、イソ-プロポキシジメチルシラン(SiHMe2[OiPr])、t-ブトキシジメチルシラン(SiHMe2[OtBu])、t-ペントキシジメチルシラン(SiHMe2[OtPe])、フェノキシジメチルシラン(SiHMe2[OPh])、アセトキシジメチルシラン(SiHMe2[OAc])、メトキシトリメチルシラン(SiMe3[OMe])、エトキシトリメチルシラン(SiMe3[OEt])、イソ-プロポキシトリメチルシラン(SiMe3[OiPr])、t-ブトキシトリメチルシラン(SiMe3[OtBu])、t-ペントキシトリメチルシラン(SiMe3[OtPe])、フェノキシトリメチルシラン(SiMe3[OPh])、アセトキシトリメチルシラン(SiMe3[OAc])、メトキシトリエチルシラン(SiEt3[OMe])、エトキシトリエチルシラン(SiEt3[OEt])、イソ-プロポキシトリエチルシラン(SiEt3[OiPr])、t-ブトキシトリエチルシラン(SiEt3[OtBu])、t-ペントキシトリエチルシラン(SiEt3[OtPe])、フェノキシトリエチルシラン(SiEt3[OPh])、アセトキシトリエチルシラン(SiEt3[OAc])、ジメトキシシラン(SiH2[OMe]2)、ジエトキシシラン(SiH2[OEt]2)、ジ-イソ-プロポキシシラン(SiH2[OPr]2)、ジ-tert-ブトキシシラン(SiH2[OtBu]2またはDTBOS)、ジ-tert-ペントキシシラン(SiH2[OtPe]2またはDTPOS)、ジアセトキシシラン(SiH2[OAc]2)、ジメトキシジメチルシラン(SiMe2[OMe]2)、ジエトキシジメチルシラン(SiMe2[OEt]2)、ジ-イソ-プロポキシジメチルシラン(SiMe2[OPr]2)、ジ-tert-ブトキシジメチルシラン(SiMe2[OtBu]2)、ジアセトキシジメチルシラン(SiMe2[OAc]2)、ジメトキシジエチルシラン(SiEt2[OMe]2)、ジエトキシジエチルシラン(SiEt2[OEt]2)、ジ-イソ-プロポキシジエチルシラン(SiEt2[OiPr]2)、ジ-tert-ブトキシジエチルシラン(SiEt2[OtBu]2)、ジアセトキシジエチルシラン(SiEt2[OAc]2)、ジメトキシジフェニルシラン(SiPh2[OMe]2)、ジメトキシジ-イソ-プロピルシラン(Si[iPr]2[OMe]2)、ジエトキシジ-イソ-プロピルシラン(Si[iPr]2[OEt]2)、ジ-イソ-プロポキシジ-イソ-プロピルシラン(Si[iPr]2[OiPr]2)、ジ-tert-ブトキシジ-イソ-プロピルシラン(Si[iPr]2[OtBu]2)、ジアセトキシジ-イソ-プロピルシラン(Si[iPr]2[OAc]2)、ジメトキシメチルビニルシラン(SiMeVi[OMe]2)、ジエトキシメチルビニルシラン(SiMeVi[OEt]2)、ジ-イソ-プロポキシメチルビニルシラン(SiMeVi[OiPr]2)、ジ-tert-ブトキシメチルビニルシラン(SiMeVi[OtBu]2)、ジアセトキシメチルビニルシラン(SiMeVi[OAc]2)、トリエトキシシラン(SiH[OEt]3またはTES)、トリメトキシエチルシラン(SiEt[OMe]3)、トリエトキシメチルシラン(SiMe[OEt]3)、トリエトキシフェニルシラン(SiPh[OEt]3)、テトラメトキシシラン(Si[OMe]4)、テトラエトキシシラン(Si[OEt]4またはTEOS)、テトラ-n-プロポキシシラン(Si[OnPr]4)、テトラ-イソ-プロポキシシラン(Si[OiPr]4)、テトラ-n-ブトキシシラン(Si[OnBu]4)、テトラ-t-ブトキシシラン(Si[OtBu]4)、テトラメチルジシロキサン(O[SiHMe2]2またはTMDO)、ヘキサメチルジシロキサン(O[SiMe3]2)、ヘキサエチルジシロキサン(O[SiEt3]2)、ヘキサプロピルジシロキサン(O[SiPr3]2)、ヘキサフェニルジシロキサン(O[SiPh3]2)、ヘキサメチルトリシロキサン(Me2SiH-O-SiMe2-O-SiHMe2)などが挙げられてもよい。
【0372】
酸素および窒素を含む混合シラン
ケイ素含有前駆体は、脂肪族-オキシ基または芳香族-オキシ基を有する1つまたは複数の任意選択で置換されたアミノ基を含んでもよく、それにより非限定的な混合シランを提供する。一実施形態では、前駆体は、
(R’)zSi(OR’’’)x(NR’’2)y
[式中、
xおよびyのそれぞれは、独立して1、2、3、または4であり、
zは0、1、または2であり、
x+y+z=4であり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、
各R’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、もしくはアミノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよいか、または任意選択で、2つのR’’は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができ、
各R’’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、シリル、またはシリルオキシであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよい]
の式を有する。
【0373】
別の実施形態では、前駆体は、
(R’’2N)y(R’’’O)x(R’)zSi-L-Si(R’)z(OR’’’)x(NR’’2)y
[式中、
xおよびyのそれぞれは0より大きく(例えば、1または2)、
zは0または1であり、
x+y+z=3であり、
Lは、共有結合、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキレン、任意選択で置換されたアルケニレン、任意選択で置換されたアルキニレン、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたヘテロアルキレン、任意選択で置換されたヘテロアルケニレン、任意選択で置換されたヘテロアルキニレン、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたアリーレン、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたヘテロアリーレン、オキシ(-O-)、イミノ、またはシリルなどのリンカーであり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、
各R’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、もしくはアミノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよいか、または任意選択で、2つのR’’は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができ、
各R’’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、シリル、またはシリルオキシであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよい]
の式を有する。
【0374】
R’、R’’、およびR’’’の非限定的な例は、例えば、アミノシラン、シロキサン、またはそれらの誘導体などについて本明細書に記載されている。
【0375】
前駆体は、R’、NR’’2、およびOR’’’基の任意の組合せを含んでもよい。一実施形態では、前駆体は、(R’)Si(OR’’’)2(NR’’2)または(R’)2Si(OR’’’)2(NR’’2)(式中、R’、R’’およびR’’’のそれぞれは、独立して本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。他の実施形態では、前駆体は、(R’)2Si(OR’’’)(N[SiR3]2)(式中、R’およびR’’’のそれぞれは、独立して本明細書に記載されるいずれかであってもよく、Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、または任意選択で置換されたヘテロ芳香族である)の式を有する。
【0376】
前駆体は、ケイ素原子に結合したアミノ基およびオキシ含有基のみを含んでもよい。一実施形態では、前駆体は、Si(OR’’’)3(NR’’2)、Si(OR’’’)2(NR’’2)2、またはSi(OR’’’)(NR’’2)3(式中、R’’およびR’’’のそれぞれは、独立して本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。非限定的な前駆体としては、例えば、ジエトキシ(イソ-プロピルアミノ)シラン(SiH[NHiPr][OEt]2)、ジエトキシ(tert-ブチルアミノ)シラン(SiH[NHtBu][OEt]2)、ジエトキシ(tert-ペンチルアミノ)シラン(SiH[NHtPe][OEt]2)、ジ-tert-ブトキシ(メチルアミノ)シラン(SiH[NHMe][OtBu]2)、ジ-tert-ブトキシ(エチルアミノ)シラン(SiH[NHEt][OtBu]2)、ジ-tert-ブトキシ(イソ-プロピルアミノ)シラン(SiH[NHiPr][OtBu]2)、ジ-tert-ブトキシ(n-ブチルアミノ)シラン(SiH[NHnBu][OtBu]2)、ジ-tert-ブトキシ(sec-ブチルアミノ)シラン(SiH[NHsBu][OtBu]2)、ジ-tert-ブトキシ(イソ-ブチルアミノ)シラン(SiH[NHiBu][OtBu]2)、ジ-tert-ブトキシ(tert-ブチルアミノ)シラン(SiH[NHtBu][OtBu]2)、ジ-tert-ペントキシ(メチルアミノ)シラン(SiH[NHMe][OtPe]2)、ジ-tert-ペントキシ(エチルアミノ)シラン(SiH[NHEt][OtPe]2)、ジ-tert-ペントキシ(イソ-プロピルアミノ)シラン(SiH[NHiPr][OtPe]2)、ジ-tert-ペントキシ(n-ブチルアミノ)シラン(SiH[NHnBu][OtPe]2)、ジ-tert-ペントキシ(sec-ブチルアミノ)シラン(SiH[NHsBu][OtPe]2)、ジ-tert-ペントキシ(イソ-ブチルアミノ)シラン(SiH[NHiBu][OtPe]2)、ジ-tert-ペントキシ(tert-ブチルアミノ)シラン(SiH[NHtBu][OtPe]2)、ジメトキシ(フェニルメチルアミノ)シラン(SiH[NPhMe][OMe]2)、ジエトキシ(フェニルメチルアミノ)シラン(SiH[NPhMe][OEt]2)、ジメトキシ(フェニルメチルアミノ)メチルシラン(SiMe[NPhMe][OMe]2)、ジエトキシ(フェニルメチルアミノ)メチルシラン(SiEt[NPhMe][OEt]2)などを挙げることができる。
【0377】
シリルアミン
ケイ素含有前駆体は、窒素原子に結合した1つまたは複数の任意選択で置換されたシリル基を含んでもよく、それにより非限定的なシリルアミンを提供する。一実施形態では、前駆体は、
(R’’)3-yN(SiR’3)y
[式中、
yは1、2、または3であり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、
各R’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、アミノ、シリル、もしくはシリルオキシであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよいか、または任意選択で、2つのR’’は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができる]
の式を有する。
【0378】
別の実施形態では、前駆体は、
(R’3Si)y(R’’)2-yN-L-N(R’’)2-y(SiR’3)y
[式中、
各yは独立して0、1、または2であり、
Lは、共有結合、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、オキシ(-O-)、イミノ、またはシリルなどのリンカーであり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、
各R’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、またはアミノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよいか、または任意選択で、2つのR’’は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができ、
任意選択で、N-L-Nは一緒になって多価ヘテロシクリル基を形成する]
の式を有する。
【0379】
一例では、少なくとも1つのyは0ではない。別の実施形態では、yは0であり得る(例えば、Lが炭素原子またはヘテロ原子を含む場合)。さらに別の実施形態では、yは0であり、および/またはLは、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキレン、任意選択で置換されたアルケニレン、任意選択で置換されたアルキニレン、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたヘテロアルキレン、任意選択で置換されたヘテロアルケニレン、任意選択で置換されたヘテロアルキニレン、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたアリーレン、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたヘテロアリーレン、オキシ(-O-)、イミノ(例えば、-NR-または-N(SiR3)-)、またはシリル(例えば、-SiR2-)、およびそれらの組合せ(例えば、-SiR2-NR-、-NR-SiR2-、-SiR2-NR-SiR2-など)を含む。特定の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたアリール、および任意選択で置換されたヘテロ芳香族である。
【0380】
いくつかの実施形態では、R’は、H、任意選択で置換されたアミノ(例えば、-NR2)、脂肪族-オキシ(例えば、アルコキシまたは-OR)、脂肪族-カルボニル(例えば、アルカノイルまたは-C(O)R)、脂肪族-カルボニルオキシ(例えば、アルカノイルオキシまたは-OC(O)R)、脂肪族-オキシカルボニル(例えば、アルコキシカルボニルまたは-C(O)OR)、シリル(例えば、-SiR3または-SiR2-L-SiR3)、脂肪族-オキシ-シリル(例えば、アルコキシシリルまたは-Si(R)a(OR)b)、アミノシリル(例えば、-Si(R)a(NR2)b)、シリルオキシ(例えば、-O-SiR3)、脂肪族-オキシ-シリルオキシ(例えば、アルコキシシリルオキシまたは-O-Si(R)a(OR)b)、アミノシリルオキシ(例えば、-O-Si(R)a(NR2)b)、芳香族(例えば、アリール)、芳香族-オキシ(例えば、アリールオキシまたは-OR)、ヒドロキシル(-OH)、ホルミル(-C(O)H)などである。特定の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたアリール、および任意選択で置換されたヘテロ芳香族であり、a≧0であり、b≧1であり、a+b=3である。いくつかの実施形態では、2つのR基は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成し得る。他の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、または任意選択で置換されたアリールである。Lは、任意の有用なリンカー(例えば、共有結合、任意選択で置換されたアルキレン、任意選択で置換されたヘテロアルキレン、オキシ、イミノ、シリルなど)であってもよい。
【0381】
他の実施形態では、R’’は、H、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたシリル、または任意選択で置換されたシリルオキシである。いくつかの実施形態では、R’’は、任意選択で置換されたアルキル(例えば、Me、Et、nPr、iPr、sBu、またはtBu)である。他の実施形態では、R’’は、-SiR’3、-SiR3、-Si(R’)a(OR)b、-Si(R)a(OR)b、-Si(R’)a(NR2)b、-Si(R)a(NR2)b、-Si(R’)a(OR)b(NR2)c、-Si(R)a(OR)b(NR2)c、-O-SiR’3、-O-SiR3、-O-Si(R’)a(OR)b、-O-Si(R)a(OR)b、-O-Si(R’)a(NR2)b、-O-Si(R)a(NR2)b、-O-Si(R’)a(OR)b(NR2)c、または-O-Si(R)a(OR)b(NR2)cであり、各R’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、または任意選択で置換されたヘテロ芳香族であり、a、b、およびcのそれぞれは0以上であり、a+b+c=3またはa+b=3(cが存在しない場合)である。特定の実施形態では、Rは、H、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、または任意選択で置換されたアルキニルである。
【0382】
前駆体は、窒素原子に結合した少なくとも1つのR’’基を含んでもよい。一実施形態では、前駆体は、(R’’)N(SiR’3)2、または(R’’)2N(SiR’3)(式中、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。別の実施形態では、前駆体は、(R’’)2N(SiH3)または(R’’)N(SiH3)2(式中、でR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。特定の実施形態では、R’は、任意選択で置換されたアルキル、アミノ、またはアルコキシであり、R’’は、任意選択で置換されたアルキルまたはアミノであり、任意選択で、2つのR’’は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になってヘテロシクリルを形成する。
【0383】
前駆体は、窒素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を含んでもよい。一実施形態では、前駆体は、(H)N(SiR’3)2(式中、R’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。別の実施形態では、前駆体は(H)N(SiRAk
3)2(式中、RAkは、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、または任意選択で置換されたアルキニルであってもよい)の式を有する。
【0384】
前駆体は、窒素原子に結合した3個のケイ素原子を含んでもよい。一実施形態では、前駆体はN(SiR’3)3(式中、R’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。別の実施形態では、前駆体はN(SiH3)(SiR’3)2(式中、R’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。さらに別の実施形態では、前駆体はN(SiH3)(SiRAk
3)2(式中、RAkは、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、または任意選択で置換されたアルキニルであってもよい)の式を有する。
【0385】
前駆体は、2個以上の窒素原子を有してもよく、ここで前駆体はN-N結合を含む。一例では、前駆体は(R’3Si)2N-N(SiR’3)2(式中、R’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0386】
リンカーは、窒素原子間に存在してもよい。一例では、前駆体は、(R’3Si)(R’’)N-L-N(R’’)(SiR’3)または(R’3Si)2N-L-N(SiR’3)2(式中、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。いくつかの実施形態では、Lは、共有結合、任意選択で置換されたアルキレン、任意選択で置換されたヘテロアルキレン、-O-、-SiR2-、または-Si-である。特定の実施形態では、R’’の少なくとも1つはHではない。別の例では、前駆体は、(H3Si)(R’’)N-L-N(R’’)(SiH3)(式中、R’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0387】
リンカーは、ケイ素原子を含んでもよい。一例では、前駆体は、(R’3Si)2N-SiR’2-N(SiR’3)2(式中、R’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。別の例では、前駆体は、(R’3Si)(R’’)N-SiR’2-N(R’’)(SiR’3)または(R’3Si)2N-SiR’2-N(R’’)2(式中、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0388】
リンカーはSiH2基を含んでもよい。一例では、前駆体は、(R’3Si)2N-SiH2-N(SiR’3)2(式中、R’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。別の例では、前駆体は、(R’3Si)HN-SiH2-NH(SiR’3)または(R’3Si)2N-SiH2-N(R’’)2(式中、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0389】
複数の窒素およびケイ素含有部分が前駆体中に存在してもよい。一実施形態では、前駆体は、(R’3Si)(R’’)N-SiR’2-N(R’’)-SiR’2-N(R’’)(SiR’3)(式中、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0390】
非限定的な前駆体としては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシラザン(NH[SiHMe2]2またはTMDS)、1,1,2,3,3-ペンタメチルジシラザン(NMe[SiHMe2]2)、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(NH[SiMe3]2またはHMDS)、ヘプタメチルジシラザン(NMe[SiMe3]2)、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチル-2-エチルジシラザン(NEt[SiMe3]2)、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチル-2-イソプロピルジシラザン(NiPr[SiMe3]2)、1,1,1,3,3,3-ヘキサエチル-2-イソプロピルジシラザン(NiPr[SiEt3]2)、1,1,3,3-テトラメチル-2-イソプロピルジシラザン(NiPr[SiHMe2]2)、1,1,3,3-テトラエチル-2-イソプロピルジシラザン(NiPr[SiHEt2]2)、1,3-ジエチルテトラメチルジシラザン(NH[SiMe2Et]2)、1,1,3,3-テトラエチルジシラザン(NH[SiHEt2]2)、1,1,3,3-テトラエチル-2-メチルジシラザン(NMe[SiHEt2]2)、1,1,1,3,3,3-ヘキサエチルジシラザン(NH[SiEt3]2)、1,1,1,3,3,3-ヘキサエチル-2-メチルジシラザン(NMe[SiEt3]2)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタエチルジシラザン(NEt[SiEt3]2)、1,2,3-トリメチルトリシラザン(N[SiH2Me]3)、ノナメチルトリシラザン(N[SiMe3]3)、ジ-イソ-プロピルシリルアミン(NiPr2[SiH3])、ジエチルシリルアミン(NEt2[SiH3])、ジイソプロピルシリルアミン(NiPr2[SiH3])、ジ-sec-ブチルシリルアミン(NsBu2[SiH3])、ジ-tert-ブチルシリルアミン(NtBu2[SiH3])、ジシリルメチルアミン(NMe[SiH3]2)、ジシリルエチルアミン(NEt[SiH3]2)、ジシリルイソプロピルアミン(NiPr[SiH3]2)、ジシリル-tert-ブチルアミン(NtBu[SiH3]2)、ビス(トリメチルシリル)アミン(NH[SiMe3]2)、ビス(トリエチルシリル)アミン(NH[SiEt3]2)などを挙げることができる。
【0391】
シラザンおよびその誘導体
ケイ素含有前駆体は、1つまたは複数のアミノ、シリルおよび/またはイミノ基を含んでもよく、それにより1つまたは複数のSi-N、N-Si-N、Si-N-Si、N-Si-SiまたはN-Si-N-Si結合を有するシラザンまたはその誘導体を提供する。一実施形態では、前駆体は、
(R’’)3-yN(SiR’2-L-SiR’3)y
[式中、
yは1、2または3であり、
Lは、共有結合、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、オキシ(-O-)、イミノ、またはシリル、およびそれらの組合せなどのリンカーであり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、
各R’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、アミノ、シリル、もしくはシリルオキシであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよいか、または任意選択で、2つのR’’は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができる]
の式を有する。
【0392】
別の実施形態では、前駆体は、(R’’)3-yN(SiR’2-L-SiR’2-NR’’2)yの式を有し、yは1、2または3であり、L、R’およびR’’のそれぞれは、本明細書に記載されるいずれかであってもよい。
【0393】
さらに別の実施形態では、前駆体は、(R’’)3-yN(SiR’2-L-NR’’2)y(式中、yは1、2または3であり、L、R’およびR’’のそれぞれは、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0394】
一実施形態では、前駆体は、
(R’)4-xSi(NR’’-L-SiR’3)x
[式中、
xは1、2、3または4であり、
Lは、共有結合、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、オキシ(-O-)、イミノ、またはシリル、およびそれらの組合せなどのリンカーであり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、
各R’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、アミノ、シリル、もしくはシリルオキシであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよいか、または任意選択で、2つのR’’は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができる]
の式を有する。
【0395】
別の実施形態では、前駆体は、(R’’2N)-(SiR’2-L)z-SiR’3(式中、zは1、2または3であり、L、R’およびR’’のそれぞれは、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0396】
いくつかの実施形態では、Lは、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキレン、任意選択で置換されたアルケニレン、任意選択で置換されたアルキニレン、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたヘテロアルキレン、任意選択で置換されたヘテロアルケニレン、任意選択で置換されたヘテロアルキニレン、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたアリーレン、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたヘテロアリーレン、オキシ(-O-)、イミノ(例えば、-NR-または-N(SiR3)-)、またはシリル(例えば-SiR2-)、ならびにそれらの組合せ(例えば、-SiR2-NR-、-NR-SiR2-、-SiR2-NR-SiR2-など)を含む。特定の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたアリール、および任意選択で置換されたヘテロ芳香族である。
【0397】
いくつかの実施形態では、R’は、H、任意選択で置換されたアミノ(例えば-NR2)、脂肪族-オキシ(例えば、アルコキシまたは-OR)、脂肪族-カルボニル(例えば、アルカノイルまたは-C(O)R)、脂肪族-カルボニルオキシ(例えば、アルカノイルオキシまたは-OC(O)R)、脂肪族-オキシカルボニル(例えば、アルコキシカルボニルまたは-C(O)OR)、シリル(例えば、-SiR3または-SiR2-L-SiR3)、脂肪族-オキシ-シリル(例えば、アルコキシシリルまたは-Si(R)a(OR)b)、アミノシリル(例えば、-Si(R)a(NR2)b)、シリルオキシ(例えば、-O-SiR3)、脂肪族-オキシ-シリルオキシ(例えば、アルコキシシリルオキシまたは-O-Si(R)a(OR)b)、アミノシリルオキシ(例えば、-O-Si(R)a(NR2)b)、芳香族(例えば、アリール)、芳香族-オキシ(例えば、アリールオキシまたは-OR)、ヒドロキシル(-OH)、ホルミル(-C(O)H)などである。特定の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたアリール、および任意選択で置換されたヘテロ芳香族であり、a≧0であり、b≧1であり、a+b=3である。いくつかの実施形態では、2つのR基は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成し得る。他の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、または任意選択で置換されたアリールである。Lは、任意の有用なリンカー(例えば、共有結合、任意選択で置換されたアルキレン、任意選択で置換されたヘテロアルキレン、オキシ、イミノ、シリルなど)であってもよい。
【0398】
他の実施形態では、R’’は、H、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたシリル、または任意選択で置換されたシリルオキシである。いくつかの実施形態では、R’’は、任意選択で置換されたアルキル(例えば、Me、Et、nPr、iPr、sBu、またはtBu)である。他の実施形態では、R’’は、-SiR’3、-SiR3、-Si(R’)a(OR)b、-Si(R)a(OR)b、-Si(R’)a(NR2)b、-Si(R)a(NR2)b、-Si(R’)a(OR)b(NR2)c、-Si(R)a(OR)b(NR2)c、-O-SiR’3、-O-SiR3、-O-Si(R’)a(OR)b、-O-Si(R)a(OR)b、-O-Si(R’)a(NR2)b、-O-Si(R)a(NR2)b、-O-Si(R’)a(OR)b(NR2)c、または-O-Si(R)a(OR)b(NR2)cであり、各R’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノ、またはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、または任意選択で置換されたヘテロ芳香族であり、a、bおよびcのそれぞれは0以上であり、a+b+c=3またはa+b=3(cが存在しない場合)である。特定の実施形態では、Rは、H、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、または任意選択で置換されたアルキニルである。
【0399】
前駆体は、1つまたは複数のジシラニル基およびアミノ基を含んでもよい。一実施形態では、前駆体はR’’2N-SiR’2-SiR’3(式中、L、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。他の実施形態では、前駆体は、R’’2N-SiH2-SiH3(式中、R’’は、本明細書に記載されるいずれかである)の式を有する。別の実施形態では、前駆体は(R’’)3-yN-(SiR’2-SiR’3)y(式中、y、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。さらに別の実施形態では、前駆体は(R’’)3-yN-(SiH2-SiH3)y(式中、yおよびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0400】
前駆体は二価のジシラニル基を含んでもよい。一実施形態では、前駆体はR’’2N-SiR’2-SiR’2-L-NR’’2(式中、L、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。別の実施形態では、前駆体はR’’2N-SiR’2-SiR’2-NR’’2(式中、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0401】
リンカーLは、2つのシリル基の間に存在することができる。一実施形態では、前駆体は、R’’2N-SiR’2-L-SiR’3またはR’’N-(SiR’2-L-SiR’3)2の式を有し、L、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい。別の実施形態では、前駆体はR’’2N-SiR’2-L-SiR’2-NR’’2(式中、L、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。さらに別の実施形態では、前駆体は(R’’)3-yN-(SiR’2-L-SiH3)y(式中、y、L、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0402】
前駆体は、シリル基として-SiH3を含んでもよい。一実施形態では、前駆体はR’’2N-SiH2-SiH3(式中、R’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。別の実施形態では、前駆体は(R’’)N-(SiH2-L-SiH3)2または(R’’)2N-(SiH2-L-SiH3)(式中、LおよびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0403】
前駆体は、例えば-NR’’-SiR’3(式中、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)などのシリル置換アミノ基を含んでもよい。一実施形態では、前駆体は、(R’)4-xSi(NR’’-SiR’3)xまたは(R’)4-xSi(NH-SiR’3)x(式中、xは1、2、3または4であり、R’およびR’’は本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。別の実施形態では、前駆体はH2Si(NR’’-SiR’3)3(式中、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0404】
前駆体は、例えば-N(SiR’3)2(式中、R’は本明細書に記載されるいずれかであってもよい)などのビス-トリシリルアミノ基を含んでもよい。一実施形態では、前駆体はR’’2N-SiR’2-N(SiR’3)2(式中、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。別の実施形態では、前駆体は、R’’2N-SiH2-N(SiH3)2(式中、R’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。さらに別の実施形態では、前駆体は、(R’3Si)2N-[SiR’2-N(SiR’3)]z(SiR’3)(式中、zは0、1、2または3であり、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0405】
前駆体は、ケイ素原子と窒素原子との間に配置されたリンカーLを含んでもよい。一実施形態では、前駆体はR’’2N-SiR’2-L-NR’’2の式を有し、L、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい。
【0406】
前駆体は、2つの窒素原子の間に配置されたリンカーLを含んでもよい。一実施形態では、前駆体はR’3Si-SiR’2-NR’’-L-NR’’-SiR’2-SiR’3(式中、L、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0407】
リンカーは、例えば-N(SiR’3)-(式中、R’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)などのシリルイミノ基を含んでもよい。一実施形態では、前駆体は、R’’2N-[SiR’2-N(SiR’3)]z-SiR’3またはR’’2N-[N(SiR’3)]z-SiR’3(式中、zは1、2、3またはそれ以上であり、R’およびR’’は本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0408】
リンカーは、シリル基とイミノ基の両方を含んでもよい。一実施形態では、前駆体は、R’’2N-[SiR’2-NR’’]z-SiR’3(式中、zは1、2、3またはそれ以上であり、R’およびR’’は本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0409】
非限定的な前駆体としては、例えば、ジ-イソ-プロピルアミノジシラン([iPr2N]-SiH2-SiH3)、ジ-sec-ブチルアミノジシラン([sBu2N]-SiH2-SiH3)、メチルシクロヘキシルアミノジシラン([MeCyN]-SiH2-SiH3)、メチルフェニルアミノジシラン([MePhN]-SiH2-SiH3)、ピペリジノジシラン、3,5-ジメチルピペリジノジシラン、ジ-イソ-プロピルアミノトリシリルアミン([iPr2N]-SiH2-N[SiH3]2)、ジエチルアミノトリシリルアミン([Et2N]-SiH2-N[SiH3]2)、イソ-プロピルアミノトリシリルアミン([iPrHN]-SiH2-N[SiH3]2)、などが挙げられる。
【0410】
ケイ素および酸素を含む混合アミン
ケイ素含有前駆体は、シリル基で置換された1つまたは複数のアミノ基を含んでもよく、それにより非限定的な混合アミンを提供する。一実施形態では、前駆体は、
(R’’)3-yN[Si(OR’’’)xR’3-x]y
[式中、
xおよびyのそれぞれは、独立して1、2または3であり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノまたはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、
各R’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族もしくはアミノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよいか、または任意選択で、2つのR’’は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができ、
各R’’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、シリルまたはシリルオキシであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよい]
の式を有する。
【0411】
R’、R’’およびR’’’の非限定的な例は、例えば、アミノシラン、シロキサン、シリルアミンまたはそれらの誘導体などについて本明細書に記載されている。
【0412】
前駆体は、R’’基とケイ素含有基の任意の組合せを含んでもよい。一実施形態では、前駆体は、(R’’)3-yN[Si(ORAk)xRAk
3-x]yまたは(RAk)3-yN[Si(ORAk)xRAk
3-x]y(式中、R’’、xおよびyは、本明細書に記載されるいずれかであり、RAkは、H、任意選択で置換された脂肪族、または任意選択で置換されたヘテロ脂肪族である)の式を有する。特定の実施形態では、RAkは、H、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルキレンまたは任意選択で置換されたアルキニルである。他の実施形態では、前駆体は、(R’’)3-yN[Si(ORAk)xH3-x]yまたは(R’’)3-yN[Si(ORAk)H(RAk)]y(式中、R’’、RAk、xおよびyは、本明細書に記載されるいずれかである)の式を有する。
【0413】
前駆体は、2つのケイ素含有基を含んでもよい。一実施形態では、前駆体は、(R’’)N[Si(ORAk)xRAk
3-x]2または(RAk)N[Si(ORAk)xRAk
3-x]2(式中、R’’、RAk、xおよびyは、本明細書に記載されるいずれかである)の式を有する。特定の実施形態では、xは1または2である。
【0414】
前駆体は、窒素原子に結合した水素原子を含み得る。一実施形態では、前駆体は、(H)3-yN[Si(ORAk)xRAk
3-x]yまたは(H)3-yN[Si(ORAk)xH3-x]yまたは(H)3-yN[Si(ORAk)H(RAk)]y(式中、RAk、xおよびyは、本明細書に記載されるいずれかである)の式を有する。特定の実施形態では、xは1または2である。
【0415】
非限定的な前駆体としては、例えば、ビス(ジメトキシシリル)アミン(NH[Si(OMe)2H]2)、ビス(ジエトキシシリル)アミン(NH[Si(OEt)2H]2)、N-イソ-プロピルビス(ジエトキシシリル)アミン(NiPr[Si(OEt)2H]2)、ビス(メトキシメチルシリル)アミン(NH[Si(OMe)MeH]2)、トリス(ジメトキシシリル)アミン(N[Si(OMe)2H]3)、トリス(メトキシメチルシリル)アミン(N[Si(OMe)MeH]3)、トリス(ジエトキシシリル)アミン(N[Si(OEt)2H]3)、トリス(トリメトキシシリル)アミン(N[Si(OMe)3]3)などが挙げられる。
【0416】
環式シラザン
ケイ素含有前駆体は、1つまたは複数の窒素原子を有する環式基を含んでもよい。一実施形態では、前駆体は、
[NR’’-(SiR’2)n]z
[式中、
zは1、2、3、4、5またはそれ以上であり、
nは1、2または3であり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノまたはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、
各R’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、アミノ、シリルまたはシリルオキシであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよいか、または任意選択で、2つのR’’は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができる]
の式を有する。
【0417】
一実施形態では、前駆体は、
[NR’’-(SiR’2)n-L-(SiR’2)n]z
[式中、
zは1、2、3、4、5またはそれ以上であり、
各nは、独立して1、2または3であり、
各Lは、独立して共有結合、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、オキシ(-O-)、イミノまたはシリル、およびそれらの組合せなどのリンカーであり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノまたはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、
各R’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、アミノ、シリルもしくはシリルオキシであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよいか、または任意選択で、2つのR’’は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができる]
の式を有する。
【0418】
別の実施形態では、前駆体は、[NR’’-L-NR’’-(SiR’2)n]z(式中、zは、1、2、3、4、5またはそれ以上であり、各nは、独立して1、2または3であり、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0419】
さらに別の実施形態では、前駆体は、[L-(SiR’2)n]z(式中、zは1、2、3、4、5またはそれ以上であり、各nは、独立して1、2または3であり、Lは、イミノ(例えば-NR-)、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、またはそれらの組合せであり、R’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。特定の実施形態では、Lがヘテロ原子を含まない場合、R’は1つまたは複数のヘテロ原子(例えば、窒素原子)を含む。
【0420】
一実施形態では、前駆体は、
【化8】
[式中、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよく、nは1、2、3または4である]
の式を有する。
【0421】
別の実施形態では、前駆体は、
【化9】
[式中、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよく、nは1、2、3または4である]
の式を有する。
【0422】
さらに別の実施形態では、前駆体は、
【化10】
[式中、R’’およびR’’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよく、nは、1、2、3または4である]
の式を有する。特定の実施形態では、各R’’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、シリルまたはシリルオキシであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよい。
【0423】
一実施形態では、前駆体は、
【化11】
[式中、R’は、ヘテロ原子(例えば、任意選択で置換されたアミノ、アジド、イソシアナトまたは任意選択で置換されたヒドラジノにおけるような窒素原子)を含んでもよく、nは1、2、3または4である]
の式を有する。
【0424】
いくつかの実施形態では、Lは、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキレン、任意選択で置換されたアルケニレン、任意選択で置換されたアルキニレン、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたヘテロアルキレン、任意選択で置換されたヘテロアルケニレン、任意選択で置換されたヘテロアルキニレン、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたアリーレン、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたヘテロアリーレン、オキシ(-O-)、イミノ(例えば、-NR-または-N(SiR3)-)またはシリル(例えば、-SiR2-)、およびそれらの組合せ(例えば、-SiR2-NR-、-NR-SiR2-、-SiR2-NR-SiR2-など)を含む。特定の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたアリールおよび任意選択で置換されたヘテロ芳香族である。
【0425】
他の実施形態では、Lは任意選択で置換されたアルキレンであり、少なくとも1つのR’は、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたアミノ、任意選択で置換された脂肪族-オキシ、または任意選択で置換されたアルコキシを含む。
【0426】
いくつかの実施形態では、各R’は、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換された芳香族または任意選択で置換されたアリールである。他の実施形態では、各R’は、独立して任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたアミノまたは任意選択で置換されたアルコキシである。
【0427】
他の実施形態では、各R’’は、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたシリル、任意選択で置換されたアミノ、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロ芳香族または任意選択で置換されたヘテロアリールである。
【0428】
非限定的な前駆体としては、1,3,3-トリメチルシクロジシラザン([NH-SiMe2][NH-SiMeH])、ヘキサメチルシクロトリシラザン([NH-SiMe2]3)、オクタメチルシクロテトラシラザン([NH-SiMe2]4)、などが挙げられる。
【0429】
環式シロキサン
ケイ素含有前駆体は、1つまたは複数の酸素原子を有する環式基を含んでもよい。一実施形態では、前駆体は、
[L-(SiR’2)n]z
[式中、
zは1、2、3、4、5またはそれ以上であり、
nは1、2または3であり、
Lは、酸素含有リンカー(例えば、オキシまたはヘテロアルキレン)であり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノまたはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよい]
の式を有する。
【0430】
一実施形態では、前駆体は、
[O-L’-O-(SiR’2)n]z
[式中、
zは1、2、3、4、5またはそれ以上であり、
nは1、2または3であり、
各L’は、独立して任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、任意選択で置換されたシリル(例えば-SiR2-)、任意選択で置換されたアルキレン(例えば-(CH2)n-(式中、nは1~6である))、および任意選択で置換されたアリーレンなどのリンカーであり、
R’は、本明細書に記載されるいずれかである]
の式を有する。
【0431】
別の実施形態では、前駆体は、
[O-(SiR’2)n-L-(SiR’2)n]z
[式中、
zは1、2、3、4、5またはそれ以上であり、
各nは独立して1、2または3であり、
各Lは、独立して共有結合、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、オキシ(-O-)、イミノまたはシリル、およびそれらの組合せなどのリンカーであり、
R’は、本明細書に記載されるいずれかである]
の式を有する。
【0432】
さらに別の実施形態では、前駆体は、[L-(SiR’2)n]z(式中、zは1、2、3、4、5またはそれ以上であり、各nは、独立して1、2または3であり、Lは、オキシ(-O-)、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族またはそれらの組合せであり、R’は本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。特定の実施形態では、Lがヘテロ原子を含まない場合、R’は、1つまたは複数のヘテロ原子(例えば、酸素原子)を含む。
【0433】
一実施形態では、前駆体は
【化12】
[式中、R’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよく、nは1、2、3または4である]
の式を有する。
【0434】
別の実施形態では、前駆体は
【化13】
[式中、R’およびR’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよく、nは1、2、3または4である]
の式を有する。
【0435】
さらに別の実施形態では、前駆体は
【化14】
[式中、R’’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよく、nは1、2、3または4である]
の式を有する。特定の実施形態では、各R’’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、シリルまたはシリルオキシであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよい。
【0436】
一実施形態では、前駆体は、
【化15】
[式中、R’は、ヘテロ原子(例えば、任意選択で置換された脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアルコキシカルボニル、任意選択で置換されたアルカノイル、任意選択で置換されたアルカノイルオキシなどにおける酸素原子)を含んでもよく、nは1、2、3または4である]
の式を有する。
【0437】
いくつかの実施形態では、各R’は、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたアミノアルキル、任意選択で置換された芳香族、または任意選択で置換されたアリールである。他の実施形態では、各R’は、独立して任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換されたアミノ、または任意選択で置換されたアルコキシである。
【0438】
非限定的な前駆体としては、例えば、テトラメチルシクロテトラシロキサン([OSiHMe]4またはTMCTS)、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン([OSiMe2OSiHMe]2またはHMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン([OSiMe2]4、C8H24O4Si4またはOMCTS)、デカメチルシクロペンタシロキサン([OSiMe2]5またはC10H30O5Si5)、2-ジメチルアミノ-2,4,4,6,6-ペンタメチルシクロトリシロキサン([OSiMe2]2[OSiMe(NMe2)])、2-ジメチルアミノ-2,4,4,6,6,8,8-ヘプタメチルシクロテトラシロキサン([OSiMe2]3[OSiMe(NMe2)])などが挙げられる。
【0439】
アミノシロキサンおよびその誘導体
ケイ素含有前駆体は、1つまたは複数のアミノ置換を有するシロキサンまたはその誘導体を含んでもよく、それにより1つまたは複数のSi-O、O-Si-OまたはSi-O-Si結合を有し、1つまたは複数の-NR2置換を有するシロキサンまたはその誘導体を提供する。一実施形態では、前駆体は、
(R’’)3-yN[SiR’2-(OSiR’2)z-R’]y
[式中、
yは1、2または3であり、
zは1、2、3またはそれ以上であり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノまたはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、
各R’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族もしくはアミノであり、これらのいずれかは、任意選択で置換されていてもよいか、または任意選択で、2つのR’’は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成することができる]
の式を有する。
【0440】
別の実施形態では、前駆体は、(R’’)3-yN[(SiR’2-O)z-SiR’3]y(式中、R’、R’’、yおよびzは、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0441】
前駆体は、任意選択で置換されたシリル基を有する任意選択で置換されたアミノ基を含んでもよい。一実施形態では、前駆体は、R’’2N-SiR’2-(OSiR’2)z-R’またはR’’2N-SiR’2-O-SiR’3(式中、R’、R’’およびzは、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。別の実施形態では、前駆体は、R’’2N(SiR’2-O)z-SiR’3(式中、R’、R’’およびzは、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0442】
前駆体は、2つの任意選択で置換されたアミノ基を含んでもよい。一実施形態では、前駆体は、R’’2N-SiR’2-(OSiR’2)z-NR’’2(式中、R’、R’’およびzは、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。
【0443】
いくつかの実施形態では、R’は、H、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニルまたは任意選択で置換されたアルキニルである。他の実施形態では、R’’は、H、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニルまたは任意選択で置換されたアルキニルである。特定の実施形態では、zは、1、2または3である。
【0444】
非限定的な前駆体としては、例えば、1-ジメチルアミノ-ペンタメチルジシロキサン(Me2N-SiMe2-OSiMe3)、1-ジエチルアミノ-ペンタメチルジシロキサン(Et2N-SiMe2-OSiMe3)、1-エチルメチルアミノ-ペンタメチルジシロキサン(EtMeN-SiMe2-OSiMe3)、1,3-ビス(ジメチルアミノ)テトラメチルジシロキサン(Me2N-SiMe2-OSiMe2-NMe2)、1-ジメチルアミノ-ヘプタメチルトリシロキサン(Me2N-SiMe2-[OSiMe2]2-Me)、1,5-ビス(ジメチルアミノ)ヘキサメチルトリシロキサン(Me2N-SiMe2-[OSiMe2]2-NMe2)などを挙げることができる。
【0445】
アルキルシラノールまたはアルコキシシラノールを含むシラノール
ケイ素含有前駆体は、1つまたは複数のヒドロキシル基を含んでもよく、それにより非限定的なシラノールを提供する。一実施形態では、前駆体は、
(R’)4-xSi(OH)x
[式中、
xは1、2、3または4であり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノまたはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよい]
の式を有する。
【0446】
他の実施形態では、前駆体は、
(R’)zSi(OH)x(OR’’’)y
[式中、
xは1、2、3または4であり、
yおよびzのそれぞれは、独立して0、1、2または3であり、
x+y+z=4であり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-カルボニルオキシ、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-カルボニルオキシ、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-カルボニルオキシ、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノまたはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、
各R’’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、シリルまたはシリルオキシであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよい]
の式を有する。
【0447】
前駆体は、1つのヒドロキシル基を有することができる。一実施形態では、前駆体は、(R’)3Si(OH)(式中、各R’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。別の実施形態では、前駆体は、Si(OH)(OR’’’)3(式中、各R’’’は本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有する。特定の実施形態では、R’’’は、任意選択で置換されたアルキル(例えば、Me、Et、nPr、iPr、sBuまたはtBu)であり、任意選択で置換されたアルキルは、直鎖、分岐、置換または非置換である。
【0448】
非限定的な前駆体としては、例えば、トリ(t-ブトキシ)シラノール(SiOH[OtBu]3)、トリ(t-ペントキシ)シラノール(SiOH[OtPe]3)などが挙げられる。
【0449】
カルボニルオキシシラン
ケイ素含有前駆体は、1つまたは複数の任意選択で置換された脂肪族-カルボニルオキシ基を含んでもよく、それにより非限定的なカルボニルオキシシランを提供する。一実施形態では、前駆体は、
(R’)4-xSi(OC(O)-R’’’’)x
[式中、
xは1、2、3または4であり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノまたはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、
各R’’’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、アミノまたはアミノオキシであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよい]
の式を有する。
【0450】
別の実施形態では、前駆体は、
(R’’’’-C(O)O)x(R’)3-xSi-L-Si(R’)3-x(OC(O)-R’’’’)x
[式中、
各xは、独立して0、1、2または3であり、
Lは、共有結合、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたヘテロ芳香族、オキシ(-O-)、イミノまたはシリルなどのリンカーであり、
各R’は、独立してH、脂肪族、脂肪族-カルボニル、脂肪族-オキシ、脂肪族-オキシカルボニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂肪族-カルボニル、ヘテロ脂肪族-オキシ、ヘテロ脂肪族-オキシカルボニル、芳香族、芳香族-カルボニル、芳香族-オキシ、芳香族-オキシカルボニル、ヘテロ芳香族、ヘテロ芳香族-オキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、ヒドロキシル、シリル、シリルオキシ、シアナト、イソシアナト、シアノまたはイソシアノであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよく、
各R’’’’は、独立してH、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、アミノまたはアミノオキシであり、これらのいずれかは任意選択で置換されていてもよい]
の式を有する。
【0451】
いくつかの実施形態では、R’は、H、任意選択で置換されたアミノ(例えば、-NR2)、脂肪族-オキシ(例えば、アルコキシまたは-OR)、脂肪族-カルボニル(例えば、アルカノイルまたは-C(O)R)、脂肪族-オキシカルボニル(例えば、アルコキシカルボニルまたは-C(O)OR)、シリル(例えば-SiR3)、脂肪族-オキシ-シリル(例えば、アルコキシシリルまたは-Si(R)a(OR)b)、アミノシリル(例えば、-Si(R)a(NR2)b)、シリルオキシ(例えば、-O-SiR3)、脂肪族-オキシ-シリルオキシ(例えば、アルコキシシリルオキシまたは-O-Si(R)a(OR)b)、アミノシリルオキシ(例えば、-O-Si(R)a(NR2)b)、芳香族(例えば、アリール)、芳香族-オキシ(例えば、アリールオキシまたは-OR)、ヒドロキシル(-OH)、ホルミル(-C(O)H)などである。特定の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換された脂肪族、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたヘテロ脂肪族、任意選択で置換された芳香族、任意選択で置換されたアリールおよび任意選択で置換されたヘテロ芳香族であり、a≧0であり、b≧1であり、a+b=3である。いくつかの実施形態では、2つのR基は、それぞれが結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成し得る。他の実施形態では、各Rは、独立してH、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニルまたは任意選択で置換されたアリールである。
【0452】
いくつかの実施形態では、R’’’’は、H、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたアミノ、または任意選択で置換されたアミノオキシである。
【0453】
非限定的な前駆体としては、(R’)2Si(OC(O)-R’’’’)2(式中、R’およびR’’’’は、本明細書に記載されるいずれかであってもよい)の式を有するものが挙げられる。
【0454】
結論
前述の実施形態は、理解を明瞭にする目的である程度詳細に記載されているが、添付の特許請求の範囲の範囲内で特定の変更および修正が行われてもよいことは明らかである。本実施形態のプロセス、システムおよび装置を実装する多くの代替方法が存在することに留意すべきである。したがって、本実施形態は例示的とみなされるべきであり、制限的ではなく、実施形態は本明細書で与えられる詳細に限定されるべきではない。
【国際調査報告】