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特表2024-518357封止材フィルム用組成物及びそれを含む封止材フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】封止材フィルム用組成物及びそれを含む封止材フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20240423BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20240423BHJP
【FI】
C09K3/10 Z
H01L31/04 560
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566908
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 KR2022016355
(87)【国際公開番号】W WO2023075364
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0145164
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジン・サム・ゴン
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】サン・ウン・パク
(72)【発明者】
【氏名】サン・ヒョン・ホン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・クク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ギル・キム
(72)【発明者】
【氏名】サン・ウク・ハン
【テーマコード(参考)】
4H017
5F251
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AB07
4H017AD05
5F251JA03
5F251JA04
5F251JA05
(57)【要約】
本発明は、エチレン/アルファオレフィン共重合体を含む封止材フィルム用組成物、封止材フィルム及び太陽電池モジュールに関する。
本発明による封止材フィルム用組成物を用いて封止材フィルムを製造する際に、エチレン/アルファオレフィン共重合体の浸漬時間を短縮することにより、封止材フィルム生産工程の経済性を改善することができる。また、本発明を用いて製造された封止材フィルム用組成物は優れた架橋度を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン/アルファオレフィン共重合体、架橋剤、架橋助剤及びシランカップリング剤を含み、
前記架橋助剤は、下記化学式1で表される化合物を含む、封止材フィルム用組成物:
【化1】
前記化学式1において、
~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基である。
【請求項2】
前記化学式1において、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基である、請求項1に記載の封止材フィルム用組成物。
【請求項3】
前記架橋助剤は、テトラキス(ビニルジメチルシロキシ)シラン、テトラキス(ビニルジエチルシロキシ)シラン及びテトラキス(ビニルジプロピルシロキシ)シランからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の封止材フィルム用組成物。
【請求項4】
前記架橋助剤は、封止材フィルム用組成物100重量部に対して、0.01重量部~1重量部である、請求項1に記載の封止材フィルム用組成物。
【請求項5】
架橋助剤として、アリル基含有化合物をさらに含み、
前記アリル基含有化合物は、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート及びジアリルマレエートからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の封止材フィルム用組成物。
【請求項6】
前記化学式1で表される化合物と前記アリル基含有化合物のモル比は、1:0.1~1:10である、請求項5に記載の封止材フィルム用組成物。
【請求項7】
前記アルファオレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン及び1-エイコセンからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の封止材フィルム用組成物。
【請求項8】
前記アルファオレフィンは、エチレン/アルファオレフィン共重合体に対して、0超99以下モル%含まれる、請求項1に記載の封止材フィルム用組成物。
【請求項9】
不飽和シラン化合物、アミノシラン化合物、光安定剤、UV吸収剤及び熱安定剤からなる群から選択される1種以上をさらに含む、請求項1に記載の封止材フィルム用組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の封止材フィルム用組成物を含む、封止材フィルム。
【請求項11】
請求項10に記載の封止材フィルムを含む、太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年10月28日付けの韓国特許出願第2021-0145164号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容が本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、エチレン/アルファオレフィン共重合体を含む封止材フィルム用組成物、封止材フィルム及び太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0003】
地球環境問題、エネルギー問題などがますます深刻になっている中で、環境汚染と枯渇の恐れのないエネルギー生成手段として太陽電池が注目されている。建物の屋根など屋外で太陽電池を用いる場合、一般に太陽電池モジュールの形態で用いる。太陽電池モジュールの製造時、結晶型太陽電池モジュールを得るためには、前面ガラス/太陽電池封止材/結晶型太陽電池素子/太陽電池封止材/後面ガラス(又は後面保護シート)の順に積層する。前記太陽電池封止材として、一般に、透明性、柔軟性、接着性などに優れたエチレン/酢酸ビニル共重合体やエチレン/アルファオレフィン共重合体などが用いられる。
【0004】
太陽電池モジュールは、シリコン、ガリウム-ヒ素、銅-インジウム-セレンなどの太陽電池素子を上部透明保護材と下部基板保護材とで保護し、太陽電池素子と保護材とを密封材で固定してパッケージ化したものである。一般に、太陽電池モジュールにおける太陽電池素子の密封材は、有機過酸化物やシランカップリング剤を配合したエチレン/アルファオレフィン共重合体をシート状に押出成形することにより作製されており、得られたシート状の密封材を用いて太陽電池素子を密封することにより太陽電池モジュールが製造されている。
【0005】
上記のような太陽電池モジュールの製造時、生産性の向上のために封止材フィルム用組成物に含まれる様々な原料とエチレン/アルファオレフィン共重合体との親和性を高めて吸収性を高めることが1つの方法となり得る。特に、封止材フィルムの製造のために必須に用いられる架橋剤、架橋助剤などは、極性物質であるので、非極性のエチレン/アルファオレフィン共重合体への吸収性が低く、それは生産性の低下を招く要因の1つとして挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-211189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、エチレン/アルファオレフィン共重合体との親和性の高い架橋剤、架橋助剤などを用いることにより、封止材フィルムの製造時、初期段階でエチレン/アルファオレフィン共重合体の含浸時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、封止材フィルム用組成物、封止材フィルム及び太陽電池モジュールを提供する。
【0009】
(1)本発明は、エチレン/アルファオレフィン共重合体、架橋剤、架橋助剤及びシランカップリング剤を含み、前記架橋助剤は、下記化学式1で表される化合物を含む、封止材フィルム用組成物を提供する。
【0010】
【化1】
前記化学式1において、
~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基である。
【0011】
(2)本発明は、前記(1)において、前記化学式1において、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基である、封止材フィルム用組成物を提供する。
【0012】
(3)本発明は、前記(1)又は(2)において、前記架橋助剤は、テトラキス(ビニルジメチルシロキシ)シラン、テトラキス(ビニルジエチルシロキシ)シラン及びテトラキス(ビニルジプロピルシロキシ)シランからなる群から選択される1種以上である、封止材フィルム用組成物を提供する。
【0013】
(4)本発明は、前記(1)~(3)のいずれかにおいて、前記架橋助剤は、封止材フィルム用組成物100重量部に対して、0.01~1重量部である、封止材フィルム用組成物を提供する。
【0014】
(5)本発明は、前記(1)~(4)のいずれかにおいて、架橋助剤として、アリル基含有化合物をさらに含み、前記アリル基含有化合物は、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート及びジアリルマレエートからなる群から選択される1種以上を含む、封止材フィルム用組成物を提供する。
【0015】
(6)本発明は、前記(5)において、前記化学式1で表される化合物と前記アリル基含有化合物のモル比は、1:0.1~1:10である、封止材フィルム用組成物を提供する。
【0016】
(7)本発明は、前記(1)~(6)のいずれかにおいて、前記アルファオレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン及び1-エイコセンからなる群から選択される1種以上を含む、封止材フィルム用組成物を提供する。
【0017】
(8)本発明は、前記(1)~(7)のいずれかにおいて、前記アルファオレフィンは、エチレン/アルファオレフィン共重合体に対して、0超99以下モル%含まれる、封止材フィルム用組成物を提供する。
【0018】
(9)本発明は、前記(1)~(8)のいずれかにおいて、不飽和シラン化合物、アミノシラン化合物、光安定剤、UV吸収剤及び熱安定剤からなる群から選択される1種以上をさらに含む、封止材フィルム用組成物を提供する。
【0019】
(10)本発明は、前記(1)~(9)のいずれかに記載の封止材フィルム用組成物を含む、封止材フィルムを提供する。
【0020】
(11)本発明は、前記(10)に記載の封止材フィルムを含む、太陽電池モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明による封止材フィルム用組成物を用いて封止材フィルムを製造する際に、エチレン/アルファオレフィン共重合体の浸漬時間を短縮することにより、封止材フィルム生産工程の経済性を改善することができる。また、本発明を用いて製造された封止材フィルム用組成物は優れた架橋度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の理解を助けるために本発明をより詳細に説明する。
【0023】
本発明の説明及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則って、本発明の技術思想に合致する意味と概念に解釈されるべきである。
【0024】
<封止材フィルム用組成物>
本発明の封止材フィルム用組成物は、(a)エチレン/アルファオレフィン共重合体、(b)架橋剤、(c)架橋助剤、及び(d)シランカップリング剤を含み、前記架橋助剤は、化学式1で表される化合物を含むことを特徴とする。
【0025】
以下、各成分別に詳細に説明する。
【0026】
(a)エチレン/アルファオレフィン共重合体
本発明の封止材フィルム用組成物は、エチレン/アルファオレフィン共重合体を含む。前記エチレン/アルファオレフィン共重合体は、エチレンとアルファオレフィン系単量体を共重合して製造されたものであり、ここで、共重合体中のアルファオレフィン系単量体に由来する部分を意味する前記アルファオレフィンは、炭素数4~20のアルファオレフィン、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられ、それらの1種単独又は2種以上の混合物であってもよい。
【0027】
それらの中でも、前記アルファオレフィンは、1-ブテン、1-ヘキセン又は1-オクテンであってもよく、好ましくは1-ブテン、1-ヘキセン又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0028】
また、前記エチレン/アルファオレフィン共重合体において、アルファオレフィンの含有量は、上述の物性的要件を満たす範囲内で適宜選択することができ、具体的には、0超99以下モル%、10~50モル%であってもよいが、それに限定されるものではない。
【0029】
本発明において、エチレン/アルファオレフィン共重合体を用意する方法や取得経路は限定されず、通常の技術者が封止材フィルム用組成物の物性と目的を考慮して適宜選択して用いることができる。
【0030】
(b)架橋剤
本発明の封止材フィルム用組成物は、架橋剤を含む。前記架橋剤は、シラン変性樹脂組成物の製造ステップでは、ラジカル開始剤として、樹脂組成物に不飽和シラン化合物がグラフトする反応を開始する役割を果たすことができる。また、光電子装置の製造時のラミネーションステップでは、前記シラン変性樹脂組成物間又はシラン変性樹脂組成物と非変性樹脂組成物間の架橋結合を形成することにより、最終の製品、例えば封止材シートの耐熱・耐久性を向上させることができる。
【0031】
前記架橋剤は、ビニル基のラジカル重合を開始するか又は架橋結合を形成する架橋性化合物であれば、当該技術分野における公知の多様な架橋剤を様々に用いることができ、例えば、有機過酸化物、ヒドロ過酸化物及びアゾ化合物からなる群から選択される1種又は2種以上を用いることができる。
【0032】
例えば、太陽電池用封止材は、架橋剤として有機過酸化物を含んでもよく、前記有機過酸化物は、太陽電池用封止材の耐候性を向上させる役割を果たす。
【0033】
具体的には、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジ-クミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシンなどのジアルキルペルオキシド類、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ヒドロペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、o-メチルベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類、t-ブチルペルオキシイソブチレート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(TBEC)、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシオクトエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルペルオキシフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)-3-ヘキシンなどのペルオキシエステル類、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシドなどのケトンペルオキシド類、ラウリルペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物からなる群から選択される1種以上が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0034】
前記有機過酸化物は、120℃~135℃、例えば、120℃~130℃、120℃~125℃、好ましくは121℃の1時間半減期温度を有する有機過酸化物であってもよい。前記「1時間半減期温度」とは、前記架橋剤の半減期が1時間になる温度を意味する。前記1時間半減期温度に応じて、ラジカル開始反応が効率的に起こる温度が異なり、よって、前述の範囲の1時間半減期温度を有する有機過酸化物を架橋剤として用いた場合、光電子装置を製造するためのラミネーション工程温度でラジカル開始反応、すなわち架橋反応が効果的に起こる。
【0035】
前記架橋剤は、前記エチレン/アルファオレフィン共重合体100重量部に対して、0.01重量部~2重量部、例えば、0.05重量部~1.5重量部、0.1~1.5重量部、又は0.5~1.5重量部の含有量で含まれてもよい。架橋剤が上記範囲で含まれる場合、耐熱特性の向上の効果が十分に発揮されながらも、封止材フィルムの成形性も優れていて工程上の制約や封止材の物性の低下が発生しなくなる。
【0036】
(c)架橋助剤
本発明の封止材フィルム用組成物は、架橋助剤を含み、ここで、架橋助剤は、下記化学式1で表される化合物を含む。
【0037】
【化2】
前記化学式1において、
~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基である。
【0038】
前記化学式1において、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~3のアルキル基、例えばメチル基、エチル基又はプロピル基であってもよい。
【0039】
より具体的には、前記架橋助剤は、テトラキス(ビニルジメチルシロキシ)シラン、テトラキス(ビニルジエチルシロキシ)シラン及びテトラキス(ビニルジプロピルシロキシ)シランからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0040】
本発明において用いた前記架橋助剤は、従来主に用いられてきたトリアリルイソシアヌレート(TAIC)などと比較して、疎水性が高く、液相の粘度が低いため、エチレン/アルファオレフィン共重合体との相溶性に優れ、封止材フィルム用組成物中のエチレン/アルファオレフィン共重合体の含浸速度を向上させることができる。
【0041】
また、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルなどのように、粘度が低く、二重結合が2個である架橋助剤を用いた場合、含浸速度は速くなるが、架橋反応が起こる二重結合が不足し、架橋度が低下するという問題が生じる。
【0042】
前記架橋助剤が封止材フィルム用組成物に含まれることにより、前述の架橋剤による封止材フィルム用組成物の架橋度を高めることができ、それにより、最終の製品、例えば封止材フィルムの耐熱性及び耐久性をより向上させることができる。
【0043】
前記架橋助剤は、前記エチレン/アルファオレフィン共重合体100重量部に対して、0.01重量部~1重量部、具体的には、0.05重量部以上、0.1重量部以上、0.2重量部以上、0.3重量部以上、1.0重量部以下、0.8重量部以下であってもよい。
【0044】
上記範囲内で、架橋助剤による耐熱特性の向上及びエチレン/アルファオレフィン共重合体の含浸速度の増進の効果を十分に奏することができ、封止材フィルムの物性の低下を抑制することができる。
【0045】
本発明において、前記封止材フィルム用組成物は、架橋助剤としてアリル基含有化合物をさらに含んでもよく、ここで、アリル基含有化合物は、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート及びジアリルマレエートからなる群から選択される1種以上を含む。
【0046】
ここで、前記化学式1で表される化合物と前記アリル基含有化合物のモル比は、1:0.1~1:10であってもよく、具体的には、1:0.15~1:5、より具体的には1:0.2~1:2であってもよい。
【0047】
上記範囲内で、エチレン/アルファオレフィン共重合体の含浸時間を短縮しながらも、封止材フィルム用組成物の架橋度も高めることができる。
【0048】
(d)シランカップリング剤
本発明の封止材フィルム用組成物は、シランカップリング剤を含み、それは、封止材フィルムと太陽電池セルとの接着力を向上させる役割を果たすことができる。
【0049】
前記シランカップリング剤としては、例えば、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びγ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)からなる群から選択される1種以上を用いてもよいが、それらに限定されるものではない。
【0050】
前記シランカップリング剤は、封止材フィルム用組成物100重量部に対して、0.1~0.4重量部含まれてもよい。シランカップリング剤の含有量が上記範囲内の場合、太陽電池モジュールの作製時、ガラスとの接着力に優れ、水分の浸透によるモジュールの長期性能の低下を防止することができる。
【0051】
また、本発明の封止材フィルム用組成物は、不飽和シラン化合物、アミノシラン化合物、光安定剤、UV吸収剤及び熱安定剤からなる群から選択される1種以上をさらに含んでもよい。
【0052】
前記不飽和シラン化合物は、ラジカル開始剤などの存在下で本発明の共重合体の単量体の重合単位を含む主鎖にグラフト(grafting)してシラン変性樹脂組成物又はアミノシラン変性樹脂組成物に重合した形態で含まれてもよい。
【0053】
前記不飽和シラン化合物は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペントキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリアセトキシシランなどであってもよく、一例として、それらのうちビニルトリメトキシシラン又はビニルトリエトキシシランを用いてもよいが、それらに限定されるものではない。
【0054】
また、前記アミノシラン化合物は、エチレン/アルファオレフィン共重合体のグラフト変性ステップで、共重合体の主鎖にグラフトした不飽和シラン化合物、例えばビニルトリエトキシシランのアルコキシ基などの反応性官能基をヒドロキシ基に変換する加水分解反応を促進させる触媒として作用することにより、上下部のガラス基板又はフッ素樹脂などで構成される裏面シートとの接着強度をより向上させることができる。さらに、それと同時に、前記アミノシラン化合物は、直接共重合反応に反応物としても関与することにより、アミノシラン変性樹脂組成物にアミン官能基を有する分子(モイエティ)を提供することができる。
【0055】
前記アミノシラン化合物は、アミン基を含むシラン化合物であって、第一級アミン、第二級アミンであれば特に限定されない。例えば、アミノシラン化合物としては、アミノトリアルコキシシラン、アミノジアルコキシシランなどを用いてもよく、その例としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(3-aminopropyltrimethoxysilane;APTMS)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(3-aminopropyltriethoxysilane;APTES)、ビス[(3-トリエトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]アミン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]ethylenediamine;DAS)、アミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノエチルアミノメチルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノメチルメチルジエトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルトリエトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ジエチレンアミノメチルメチルジエトキシシラン、(N-フェニルアミノ)メチルトリメトキシシラン、(N-フェニルアミノ)メチルトリエトキシシラン、(N-フェニルアミノ)メチルメチルジメトキシシラン、(N-フェニルアミノ)メチルメチルジエトキシシラン、3-(N-フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(N-フェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、3-(N-フェニルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、及びN-(N-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1種以上が挙げられる。前記アミノシラン化合物は、単独で又は混合して用いることができる。
【0056】
前記光安定剤は、前記組成物が適用される用途によって、樹脂の光劣化開始の活性種を捕捉し、光酸化を防止する役割を果たすことができる。使用可能な光安定剤の種類は、特に限定されず、例えば、ヒンダードアミン系化合物やヒンダードピペリジン系化合物などの公知の化合物を用いることができる。
【0057】
前記UV吸収剤は、組成物の用途によって、太陽光などからの紫外線を吸収し、分子内で無害な熱エネルギーに変換し、樹脂組成物中の光劣化開始の活性種が励起されることを防止する役割を果たすことができる。使用可能なUV吸収剤の具体的な種類は、特に限定されず、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アクリルニトリル系、金属錯塩系、ヒンダードアミン系、超微粒子酸化チタン、超微粒子酸化亜鉛などの無機系UV吸収剤などの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0058】
また、前記熱安定剤の例としては、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジイルビスホスホネート、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系熱安定剤、及び8-ヒドロキシ-5,7-ジ-tert-ブチル-フラン-2-オンとo-キシレンとの反応生成物などのラクトン系熱安定剤が挙げられ、上記のうち1種又は2種以上を用いることができる。
【0059】
前記光安定剤、UV吸収剤、熱安定剤の含有量は特に限定されない。すなわち、前記添加剤の含有量は、樹脂組成物の用途、添加剤の形状や密度などを考慮して適宜選択することができ、通常、封止材フィルム用組成物の全固形分100重量部に対して、0.01~5重量部の範囲内で適宜調整することができる。
【0060】
<封止材フィルム及び太陽電池モジュール>
また、本発明は、前記封止材フィルム用組成物を含む封止材フィルムを提供する。
【0061】
本発明の封止材フィルムは、前記封止材フィルム用組成物をフィルム又はシート状に成形することにより製造することができる。そのような成形方法は、特に限定されず、例えば、Tダイ工程又は押出などの通常の工程でシート化又はフィルム化して製造することができる。例えば、前記封止材フィルムの製造は、前記封止材フィルム用組成物を用いた変性樹脂組成物の製造及びフィルム化又はシート化工程が互いに連結されている装置を用いてインサイチュ(in situ)工程で行うことができる。
【0062】
前記封止材フィルムの厚さは、光電子装置における素子の支持効率及び破損可能性、装置の軽量化や作業性などを考慮して、約10~2,000μm又は約100~1,250μmに調整することができ、具体的な用途に応じて変更することができる。
【0063】
さらに、本発明は、前記封止材フィルムを含む太陽電池モジュールを提供する。本発明において、太陽電池モジュールは、直列又は並列に配置された太陽電池セルの間隔を本発明の前記封止材フィルムで埋め、太陽光にさらされる面にはガラス面を配置し、裏面はバックシートで保護する構成を有し得るが、それに限定されるものではなく、当該技術分野において封止材フィルムを含むように製造した太陽電池モジュールの様々な種類及び形態の全てを本発明に適用することができる。
【0064】
前記ガラス面としては、外部の衝撃から太陽電池を保護し、破損を防止するために、強化ガラスを用いることができ、太陽光の反射を防止し、太陽光の透過率を高めるために、鉄成分の含有量が低い低鉄強化ガラス(low iron tempered glass)を用いることができるが、それに限定されるものではない。
【0065】
前記バックシートは、太陽電池モジュールの裏面を外部から保護する耐候性フィルムであり、例えば、フッ素系樹脂シート、アルミニウムなどの金属板又は金属箔、環状オレフィン系樹脂シート、ポリカーボネート系樹脂シート、ポリ(メタ)アクリル系樹脂シート、ポリアミド系樹脂シート、ポリエステル系樹脂シート、耐候性フィルムとバリアフィルムをラミネート積層した複合シートなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0066】
その他にも、本発明の太陽電池モジュールは、前述の封止材フィルムを含むことを除き、当該技術分野において公知の方法により制限なく製造することができる。
【0067】
本発明の太陽電池モジュールは、体積抵抗に優れた封止材フィルムを用いて製造されたものであって、封止材フィルムにより、太陽電池モジュール内の電子が移動して電流が外部に流出することを防止することができ、よって、絶縁性が悪くなって漏れ電流が発生し、モジュールの出力が急激に低下するPID(電圧誘起出力低下、Potential Induced Degradation)現象を大幅に抑制することができる。
【実施例
【0068】
実施例
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例は本発明を例示するためのものであって、それらのみに本発明の範囲が限定されるものではない。
【0069】
実施例1
エチレン/アルファオレフィン共重合体として、LG化学製のLF675(エチレン/1-ブテン共重合体、密度0.877g/cc、MI14.0)を用いた。
【0070】
架橋剤の含浸には、Thermo Electron(Karlsruhe) GmbH社製のプラネタリーミキサーを用いた。エチレン/アルファオレフィン共重合体500gにt-ブチル1-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TBEC)1phr(parts per hundred rubber)、テトラキス(ビニルジメチルシロキシ)シラン(TVSS)0.5phr、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)0.2phrを投入し、その後40rpmで撹拌しながらトルク値の経時変化を観察し、トルク値が急激に増加すると含浸を終了した。架橋剤がエチレン/アルファオレフィン共重合体の内部に吸収される前は潤滑剤の役割を果たして低いトルク値を維持し、架橋剤が全て吸収されるとトルク値が増加するので、トルク値が急激に増加する時点を含浸完了時間として設定したのである。
【0071】
次いで、マイクロ押出機を用いて、高温架橋にならない程度の低温(押出機のバレル温度100℃以下の条件)で平均厚さ550μmの封止材フィルムを製造した。
【0072】
実施例2~8、比較例1及び2
下記表1のように変更したことを除き、実施例1と同様の方法で封止材フィルムを製造した。
【0073】
【表1】
【0074】
実験例1
前記製造した実施例及び比較例の封止材フィルムを対象として下記方法により物性を測定した。
【0075】
(1)含浸速度(含浸完了時間)
上述したように、トルク値が急激に増加する時点を含浸完了時間とし、撹拌を開始した時点から含浸が完了した時点までの時間を測定し、下記表2に示す。
【0076】
(2)架橋度
架橋度の評価は、CPIA(China Photovoltaic Industry Association)規格及びASTM D2765に基づいて行った。前記製造した封止材フィルムを10cm×10cmに切断し、その後150℃で20分間(5分真空/1分加圧/14分圧力持続)真空ラミネーションし、架橋した試料を得た。
【0077】
架橋した試料を適当なサイズに裁断し、その後200メッシュの鉄網ケージに0.5gずつ定量してキシレン還流(xylene reflux)下で5時間溶解処理した。次いで、試料を真空オーブンで乾燥し、その後還流前後の重量を比較して各試料の架橋度を測定した。
【0078】
(3)MDRトルク(M-M,Nm)
架橋度の評価のために、Alpha Technologies Production MDR(Moving Die Rheometer)を用いて各試料のMDRトルク値を測定した。
【0079】
具体的には、前記実施例及び比較例で製造した500μmの封止材フィルムを1gずつ切断し、その後4枚に重ねて総4gのサンプルを用意し、次いで150℃で20分間実行測定した。当該条件下でM値及びM値を測定した。測定したM値からM値を引くことによりMDRトルク(M-M)を計算した。ここで、Mは最大トルク(Maximum vulcanizing torque)であり、Mは最小トルク(Minimum vulcanizing torque)である。
【0080】
【表2】
【0081】
上記表2のように、本発明の封止材フィルム用組成物を用いた実施例1~8の場合、含浸速度が速いことから含浸完了時間が短縮されると共に、架橋度も優れたレベルであることが示された。それに対して、架橋助剤としてTAICを用いた比較例1の場合、含浸速度が遅いことから含浸完了時間が実施例に比べて大幅に長くなり、架橋助剤として1,4-CDDEを用いた比較例2の場合、架橋度が低下したことが確認された。また、TVSSとTAICとを混合して架橋助剤として用いた実施例3~8の場合、TVSSを単独で用いた実施例1及び2に比べて含浸速度又は架橋度において物性が改善され、特に実施例3~6においては、含浸速度と架橋度の両方とも優れていることが分かった。
【0082】
このように、本発明による封止材フィルム用組成物を用いた場合、適正なレベルの架橋度を示しながらも含浸時間を短縮するという効果がある。
【国際調査報告】