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特表2024-518481フレキシブル基板搬送用ローラ、真空処理装置及びローラの冷却方法
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  • 特表-フレキシブル基板搬送用ローラ、真空処理装置及びローラの冷却方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】フレキシブル基板搬送用ローラ、真空処理装置及びローラの冷却方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/56 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
C23C14/56 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569658
(86)(22)【出願日】2022-04-18
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 US2022025197
(87)【国際公開番号】W WO2022240549
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】17/317,115
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バンゲルト, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】デピッシュ, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュベック, ヴォルフガング
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA11
4K029AA25
4K029CA05
4K029DC16
4K029KA01
4K029KA03
(57)【要約】
フレキシブル基板を搬送するためのローラ(100)が説明される。ローラ(100)は、ローラ(100)の第1の部分(101)を冷却するための第1の冷却剤供給(110)と、ローラ(100)の第2の部分(102)及び第3の部分(103)を冷却するための第2の冷却剤供給(120)とを含む。第1の部分(101)は、第2の部分(102)と第3の部分(103)との間に設けられる。さらに、ローラを含む真空処理装置及びローラを冷却する方法について説明する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル基板を搬送するためのローラ(100)であって、前記ローラ(100)の第1の部分(101)を冷却するための第1の冷却剤供給(110)と、前記ローラ(100)の第2の部分(102)及び第3の部分(103)を冷却するための第2の冷却剤供給(120)とを含み、前記第1の部分(101)は、前記第2の部分(102)と前記第3の部分(103)との間に設けられている、ローラ(100)。
【請求項2】
前記第1の部分(101)が、前記ローラ(100)の本体(106)の軸方向中間部分である、請求項1に記載のローラ(100)。
【請求項3】
前記第1の冷却剤供給(110)が、第1の温度(T1)の第1の冷却剤を提供するために構成されており、前記第2の冷却剤供給(120)は、前記第1の温度(T1)とは異なる第2の温度(T2)の第2の冷却剤を提供するために構成されており、特に、前記第1の温度(T1)は前記第2の温度(T2)よりも低い、請求項1又は2に記載のローラ(100)。
【請求項4】
前記第1の冷却剤供給(110)が第1の冷却剤配管(141)を含み、前記第2の冷却剤供給(120)が第2の冷却剤配管(142)を含み、いずれも共通の冷却剤流出配管(150)に接続され、特に、前記冷却剤流出配管は、前記ローラの中心回転軸(111)の方向に沿って延びている、請求項1から3のいずれか一項に記載のローラ(100)。
【請求項5】
前記第1の部分(101)が、前記ローラの円筒形の本体(106)の第1の円筒部分であり、前記第2の部分(102)は前記本体(106)の第2の円筒部分であり、前記第3の部分(103)は、前記本体(106)の第3の円筒部分である、請求項1から4のいずれか一項に記載のローラ(100)。
【請求項6】
前記ローラ(100)の第4の部分(104)及び第5の部分(105)を冷却するための第3の冷却剤供給(130)をさらに含み、前記第2の部分(102)は、前記第1の部分(101)と前記第4の部分(104)との間に設けられており、前記第3の部分(103)は、前記第1の部分(101)と前記第5の部分(105)との間に設けられている、請求項1から5のいずれか一項に記載のローラ(100)。
【請求項7】
前記第3の冷却剤供給(130)が、前記ローラの中心回転軸(111)の方向に沿って延びている冷却剤流出配管に接続されている第3の冷却剤配管(143)を含み、特に、前記冷却剤流出配管は、請求項4に記載の共通の冷却剤流出配管(150)である、請求項6に記載のローラ(100)。
【請求項8】
前記第4の部分(104)が、前記ローラ(100)の前記円筒形の本体(106)の第4の円筒部分であり、前記第5の部分(105)は、前記円筒形の本体(106)の第5の円筒部分である、請求項6又は7に記載のローラ(100)。
【請求項9】
前記第3の冷却剤供給(130)が、前記第1の温度(T1)及び前記第2の温度(T2)とは異なる第3の温度(T3)の第3の冷却剤を提供するために構成されており、特に、前記第3の温度(T3)は、前記第1の温度(T1)よりも低く、かつ、前記第2の温度(T2)よりも低い、請求項3と組み合わせた請求項6から8のいずれか一項に記載のローラ(100)。
【請求項10】
前記本体(106)が銅を含む材料で作られている円筒である、請求項2から9のいずれか一項に記載のローラ(100)。
【請求項11】
フレキシブル基板(10)を処理するための真空処理装置(200)であって、
少なくとも1つの堆積ユニットを含む複数の処理ユニット(221)を含む処理チャンバ(220)と、
前記フレキシブル基板を前記複数の処理ユニット(221)を通過するように案内するための請求項1から10のいずれか一項に記載のローラ(100)と
を含み、前記ローラ(100)は冷却剤供給(225)に接続されている、真空処理装置(200)。
【請求項12】
前記冷却剤供給(225)が、異なる温度の2つ以上の冷却剤、特に、少なくとも、第1の温度(T1)を有する第1の冷却剤と、第1の温度(T)とは異なる第2の温度(T2)を有する第2の冷却剤とを提供するように構成されている、請求項11に記載の真空処理装置(200)。
【請求項13】
フレキシブル基板を案内するためのローラ(100)を冷却する方法(300)であって、
第1の冷却剤を第1の部分(101)に提供すること(311)によって、前記ローラ(100)の前記第1の部分(101)を冷却すること(310)と、
第2の冷却剤を第2の部分(102)及び第3の部分(103)に提供すること(321)によって、前記ローラ(100)の前記第2の部分(102)及び前記第3の部分(103)を冷却すること(320)とを含み、前記第1の部分(101)は、前記第2の部分(102)と前記第3の部分(103)との間に設けられ、特に、前記第1の冷却剤は第1の温度(T1)を有し、前記第2の冷却剤は前記第1の温度(T1)とは異なる第2の温度(T2)を有し、特に、第1の温度(T1)は第2の温度(T2)よりも低い、方法(300)。
【請求項14】
前記ローラ(100)の第4の部分(104)及び第5の部分(105)に第3の冷却剤を供給すること(331)によって、前記ローラ(100)の前記第4の部分(104)及び前記第5の部分(105)を冷却すること(330)をさらに含み、前記第2の部分(102)は、前記第1の部分(101)と前記第4の部分(104)との間に設けられ、前記第3の部分(103)は、前記第1の部分(101)と前記第5の部分(105)との間に設けられ、特に、前記第3の冷却剤は、第3の温度(T3)を有し、特に、前記第3の温度(T3)は、前記第1の温度(T1)及び前記第2の温度(T2)とは異なり、特に、前記第3の温度(T3)は、前記第1の温度(T1)よりも低く、かつ、前記第2の温度(T2)よりも低い、請求項13に記載の方法(300)。
【請求項15】
前記ローラ(100)の少なくとも一部を熱膨張(341)又は熱収縮(342)させることによって前記ローラ(100)の形状を変化させること(340)をさらに含み、特に、前記ローラ(100)の形状を変化させること(340)は、凸状のローラ形状を提供すること、又は凹状のローラ形状を提供することを含む、請求項13又は14に記載の方法(300)。
【請求項16】
請求項1から10のいずれか一項に記載のローラ(100)を使用することをさらに含む、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法(300)。
【請求項17】
コーティングされたフレキシブル基板を製造する方法であって、請求項1から11のいずれか一項に記載のローラ(100)、請求項12に記載の真空処理装置(200)、及び請求項13から16のいずれか一項に記載の、ローラの冷却方法(300)のうちの少なくとも1つを使用することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示の実施形態は、フレキシブル基板を搬送するためのローラに関する。さらに、本開示の実施形態は、ロールツーロールプロセスを使用したフレキシブル基板の処理、特に薄層によるフレキシブル基板のコーティングのための装置及び方法に関する。特に、本開示の実施形態は、例えば、薄膜太陽電池製造、薄膜電池製造、又はフレキシブルディスプレイ製造のための、フレキシブル基板を層のスタックでコーティングするための装置及び方法において、フレキシブル基板の搬送に使用されるローラに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]プラスチック膜やフォイルなどのフレキシブル基板の処理は、パッケージング産業、半導体産業、その他の産業で高い需要がある。処理は、金属、半導体、誘電体材料などの材料でフレキシブル基板をコーティングすること、エッチング、及びそれぞれの用途に応じて基板上で行われる他の処理操作からなる場合がある。このタスクを実行するシステムは通常、基板を搬送するためのローラアセンブリを含む処理システムに結合され、基板の少なくとも一部がコーティングされるコーティングドラム、例えば円筒形ローラを含む。
【0003】
[0003]例えば、CVDプロセス、PVDプロセス、又は蒸発プロセスなどのコーティングプロセスを利用して、フレキシブル基板上に薄層を堆積することができる。ロールツーロール堆積装置は、そこで、1キロメートル以上など、かなりの長さのフレキシブル基板が、供給スプールから巻き出され、薄い層のスタックでコーティングされ、巻き取りスプールに再び巻き付けられると理解されている。特に、薄膜電池の製造においては、例えば、リチウム電池、ディスプレイ産業、太陽光発電(PV)産業、ロールツーロール堆積システムは高い関心を集めている。例えば、フレキシブルなタッチパネル要素、フレキシブルなディスプレイ、及びフレキシブルなPVモジュールに対する需要の増大により、ロールツーローターで適切な層を堆積する需要が増大している。
【0004】
フレキシブル基板において高品質コーティングを達成するためには、フレキシブル基板の搬送に関する様々な課題を克服しなければならない。例えば、減圧条件下で移動するフレキシブル基板の処理中に適切な基板張力を提供すること、良好な基板とローラの接触及び基板の冷却を提供することは依然として課題である。さらに、冷却された基板ローラを使用したフレキシブル基板からの熱抽出は、特に熱抽出の均一性に関してまだ改善の必要があることが判明した。
【0005】
[0005]したがって、改良された基板搬送ローラ、改良されたロールツーロール処理装置及びその方法に対する需要が継続的に存在する。
【発明の概要】
【0006】
[0006]上記に鑑み、フレキシブル基板を搬送するためのローラと、フレキシブル基板を処理するための真空処理装置と、独立請求項によるローラを冷却する方法が提供される。更なる態様、利点、及び特徴は、従属請求項、明細書、及び添付の図面から明らかである。
【0007】
[0007]本開示の一態様によれば、フレキシブル基板を搬送するためのローラが提供される。ローラは、ローラの第1の部分を冷却するための第1の冷却剤供給を含む。さらに、ローラは、ローラの第2の部分及び第3の部分を冷却するための第2の冷却剤供給を含む。第1の部分は、第2の部分と第3の部分との間に設けられる。
【0008】
本開示の別の態様によれば、フレキシブル基板を処理するための真空処理装置が提供される。真空処理装置は、少なくとも1つの堆積ユニットを有する複数の処理ユニットを含む処理チャンバを含む。さらに、真空処理装置は、複数の処理ユニットを通過するようにフレキシブル基板を案内するための、本明細書に記載の任意の実施形態によるローラを含む。特に、ローラは冷却剤供給に接続される。
【0009】
[0009]本開示の別の態様によれば、フレキシブル基板を案内するためのローラの冷却方法が提供される。本方法は、ローラの第1の部分に第1の冷却剤を供給することによって、ローラの第1の部分を冷却することを含む。さらに、本方法は、ローラの第2の部分及び第3の部分に第2の冷却剤を供給することによって、ローラの第2の部分及び第3の部分を冷却することを含む。第1の部分は、第2の部分と第3の部分との間に設けられる。特に、第1の冷却剤は第1の温度を有し、第2の冷却剤は第1の温度とは異なる第2の温度を有し、特に、第1の温度は第2の温度よりも低い。
【0010】
[0010]本開示の別の態様によれば、コーティングされたフレキシブル基板を製造する方法が提供される。本方法は、本明細書に記載の任意の実施形態によるローラ、本明細書に記載の任意の実施形態による真空処理装置、及び本明細書に記載される任意の実施形態によるローラを冷却する方法を含む。
【0011】
[0011]実施形態は、開示方法を実施するための装置も対象としており、説明されている各方法態様を実行するための装置部分を含む。これらの方法の態様は、ハードウェア構成要素、適切なソフトウェアによってプログラムされたコンピュータによって、2つの任意の組み合わせによって、又は任意の他の方法によって実行され得る。さらに、本開示による実施形態は、記載された装置を操作するための方法にも関する。記載された装置を操作するための方法は、装置のあらゆる機能を実行するための方法の態様を含む。
【0012】
[0012]本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、実施形態を参照することによって、上で簡単に概説した本開示のより具体的な説明を得ることができる。添付の図面は、本開示の実施形態に関し、以下において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本明細書に記載の実施形態によるローラの概略縦断面図を示す。
図2】本明細書に記載のさらなる実施形態によるローラの概略縦断面図を示す。
図3】本明細書に記載の実施形態による真空処理装置の概略図を示す。
図4A-4B】図4のA及びBは、本発明によるフレキシブル基板を案内するローラを冷却する方法の実施形態を説明するためのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0013]本開示の様々な実施形態について、これより詳細に参照する。これらの実施形態の一又は複数の実施例は、図面で示されている。図面の以下の説明において、同じ参照番号は同じ構成要素を表わす。個々の実施態様に関する相違点のみが説明されている。本開示の説明のために各実施例が提供されているが、各実施例は、本開示を限定することを意図するものではない。さらに、1つの実施態様の一部として図示又は説明された特徴は、さらに別の実施態様を創出するために、他の実施態様で使用され得るか又は他の実施態様と併せて使用され得る。説明は、そのような修正及び変形を含むことが意図される。
【0015】
[0014]例示的に図1を参照して、本開示によるフレキシブル基板を搬送するためのローラ100を説明する。実施形態によれば、これは、本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができ、ローラ100は、ローラ100の第1の部分101を冷却するための第1の冷却剤供給110を含む。さらに、ローラ100は、ローラ100の第2の部分102及び第3の部分103を冷却するための第2の冷却剤供給120を含む。第1の部分(101)は、第2の部分(102)と第3の部分(103)との間に設けられる。特に、第1の部分101は、ローラ100の本体106の軸方向中間部分である。通常、第1の部分101は、ローラ100の円筒形の本体106の第1の円筒部分である。したがって、典型的には、第2の部分102は本体106の第2の円筒部分であり、第3の部分103は本体106の第3の円筒部分である。
【0016】
[0015]したがって、従来技術と比較して、フレキシブル基板を搬送するための改良されたローラが提供されるという利点がある。特に、本明細書に記載のローラの実施形態は、フレキシブル基板を搬送するためのローラの異なる部分を選択的且つ個別に冷却することを提供する。したがって、ローラの一部が高温にさらされると、通常、材料の堆積中に高温にさらされるローラの中央部分は、ローラの他の部分から独立して冷却できる。さらに、本明細書に記載のローラの実施形態は、フレキシブル基板から均一な方法で熱を抽出する可能性を有利に提供する。したがって、フレキシブル基板の輸送中にしわが発生する危険性を低減又は排除することができる。その結果、フレキシブル基板上に堆積されるコーティングの品質を向上させることができる。さらに、選択的に冷却可能な部分を有するローラを提供すると、熱膨張及び熱収縮などの熱的材料変形効果を使用することにより、ローラの形状を制御できるという利点がある。例えば、ローラの形状、特に基板支持面を変更することができる。特に、ローラの形状は、平坦な基板支持面、凹状の基板支持面、又は凸状の基板支持面を有するように制御することができる。
【0017】
[0016]本開示の様々なさらなる実施形態をより詳細に説明する前に、本明細書で使用されるいくつかの用語に関するいくつかの態様を説明する。
【0018】
[0017]本開示において、「ローラ」は、フレキシブル基板と接触するための基板支持面を有するドラム又はローラとして理解され得る。「フレキシブル基板と接触するための基板支持面」という表現は、ローラの外面、例えば本明細書に記載のスリーブの外面が、フレキシブル基板の案内又は搬送中にフレキシブル基板と接触するように構成されていると理解することができる。典型的に、支持面は、ローラの湾曲した外面、特に円筒形の外面である。したがって、典型的には、ローラは回転軸の周りを回転可能であり、基板案内領域を含む。通常、基板案内領域は、ローラの湾曲した基板支持面、例えば円筒対称面である。ローラの湾曲した基板支持面は、フレキシブル基板の案内中にフレキシブル基板と(少なくとも部分的に)接触するように適合され得る。基板案内領域は、基板の案内中に基板が湾曲した基板支持面と接触するローラの角度範囲として定義することができ、ローラの巻き込み角度に対応することができる。例えば、ローラの巻き込み角度は、120°以上、特に180°以上、さらには270°以上であってもよい。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、ローラ100は円筒形であり、0.5m≦L≦8.5mの長さLを有する。また、ローラ100の直径Dは、0.2m≦D≦3.0m、特に0.2m≦D≦2.0m、例えば、D=0.4m±0.2mであってもよい。したがって、有利には、ローラは、幅の広いフレキシブル基板を案内し、搬送するように構成される。
【0019】
[0018]本開示において、「フレキシブル基板」は、曲げ可能な基板として理解することができる。例えば、「フレキシブル基板」は「フォイル」又は「ウェブ」であり得る。本開示において、「フレキシブル基板」という用語と「基板」という用語は同義的に使用される場合がある。例えば、本明細書で説明するフレキシブル基板は、PET、HC-PET、PE、PI、PU、TaC、OPP、BOOP、CPP、1つ又は複数の金属(銅など)、紙、それらの組み合わせ、及びハードコートPETなどのすでにコーティングされた基板(HC-PET、HC-TaC)などのような材料で作られているか、又は次のような材料を含んでいる可能性がある。いくつかの実施形態では、フレキシブル基板は、その両面上に屈折率整合(IM)層が設けられたCOP基板である。例えば、基板の厚さは、1μm以上1mm以下、特に500μm以下、さらには200μm以下であってもよい。基板幅WSは、0.3m≦W≦8mとすることができる。基板は透明基板であっても不透明基板であってもよい。
【0020】
[0019]本開示において、ローラの「本体」は、円筒形の本体、特に固体材料の円筒形のシェル本体として理解され得る。典型的には、本体は、高い熱伝導率λ、特にλ≧50W/(m・K)、より具体的にはλ≧100W/(m・K)を有する材料で作られる。例えば、本体は、銅合金などの銅を含む材料で構成することができる。特に、本体は銅で作ることができる。あるいは、本体は、高い熱伝導率λを有する他の適切な材料で作られてもよいことを理解されたい。
【0021】
[0020]本開示において、「冷却剤供給」は、冷却剤を提供するために構成された装置又はシステムとして理解され得る。したがって、本明細書に記載の冷却剤供給は、典型的には、冷却剤と、冷却剤を送出する配管とを含む。より詳細には、冷却剤供給は、吸熱器、減圧器、増圧器、及び排熱器を有する閉ループ冷凍システムを含むことができる。一般に、吸熱器は、冷却される部位、例えば、本明細書に記載のローラの1つ又は複数の部品に設けられた配管によって提供される。本開示では、「冷却剤」は、冷却流体、特に、-100℃~+80℃、特に-50℃~+80℃、より具体的には-30℃~+80℃の範囲の冷却温度を提供できる非圧縮性の冷却流体として理解できる。さらに、通常、冷却剤は無毒であり、リチウムとは反応しない。例えば、冷却剤はオイルであってもよい。
【0022】
[0021]本開示において、「ローラの一部」とは、基板支持面を有するローラの一部として理解することができる。典型的には、本明細書に記載の「ローラの一部」は、本明細書に記載の円筒形の本体の円筒部分として理解することができる。
【0023】
[0022]図1を例示的に参照すると、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、第1の冷却剤供給110は、第1の温度T1の第1の冷却剤を提供するために構成されている。第2の冷却剤供給120は、第1の温度T1とは異なる第2の温度T2の第2の冷却剤を提供するために構成されている。特に、第1の温度T1は第2の温度T2よりも低い。
【0024】
[0023]図1に概略的に示すように、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、第1の冷却剤供給110は、ローラ100の第1の部分101から熱を除去するための第1の吸熱器161を含む。通常、第2の冷却剤供給120は、ローラ100の第2の部分102から熱を除去するための第2の吸熱器162を含む。さらに、図1に例示的に示すように、第2の冷却剤供給120は、ローラ100の第3の部分103から熱を除去するための第3の吸熱器163を含む。例えば、本明細書に記載の「吸熱器」は、特に冷却されるべきローラの部分と接触する配管によって設けることができる。例えば、吸熱器の配管は、ローラの中心回転軸111の周りに設けられた巻線を含むことができる。図を簡略化するために、図1の上部のみが冷却剤供給、すなわち第1の冷却剤供給110と第2の冷却剤供給120を示している。しかし、通常、完全な円筒形部分、例えば、第1の部分101、図1に示す第2の部分102及び第3の部分103は、本明細書で説明するように、それぞれの冷却剤供給によって冷却することができる。したがって、図1の上部の図は、図1の下部にも適用され得る。
【0025】
[0024]図1に概略的に示すように、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、第1の冷却剤供給110は第1の冷却剤配管141を含み、第2の冷却剤供給120は第2の冷却剤配管142を含み、両方とも共通の冷却剤流出配管150に接続されている。特に、図1に例示的に示すように、冷却剤流出配管は、ローラの中心回転軸111の方向に沿って延びている。
【0026】
[0025]図2を例示的に参照すると、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、ローラは、ローラ100の第4の部分104及び第5の部分105を冷却するための第3の冷却剤供給130をさらに含む。典型的には、第2の部分102は、第1の部分101と第4の部分104との間に設けられる。第3の部分103は、第1の部分101と第5の部分105との間に設けることができる。通常、第4の部分104は、ローラ100の円筒形の本体106の第4の円筒部分である。したがって、典型的には、第5の部分105は、円筒形の本体106の第5の円筒部分である。
【0027】
[0026]図2に概略的に示すように、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、第3の冷却剤供給130は、ローラ100の第4の部分104から熱を除去するための第4の吸熱器164を含む。さらに、典型的には、第3の冷却剤供給130は、ローラ100の第5の部分105から熱を除去するための第5の吸熱器165を含む。同様に、図1と同様に、図を簡略化するために、図2の下部のみが第3の冷却剤供給を示している。しかしながら、図2の下部に示される第3の冷却剤供給130の図は、通常、図2の上部にも当てはまることを理解されたい。
【0028】
[0027]図2に例示的に示すように、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、第3の冷却剤供給部130は、ローラ100の中心回転軸111の方向に沿って延びる冷却剤流出配管150に接続された第3の冷却剤配管143を含む。特に、図2に例示的に示すように、各第1の冷却剤配管141と、第2の冷却剤配管142と第3の冷却剤配管143は共通の冷却剤流出配管に接続されている。
【0029】
[0028]本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、第3の冷却剤供給130は、第1の温度T1及び第2の温度T2とは異なる第3の温度T3の第3の冷却剤を提供するために構成されている。特に、第3の温度T3は、第1の温度T1より低くてもよい。追加的に、あるいは代替的に、第3の温度T3は第2の温度T2より低くてもよい。
【0030】
[0029]例示的に図3を参照して、本開示による真空処理装置200を説明する。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、真空処理装置200は、複数の処理ユニット221を含む処理室220を備える。複数の処理ユニット221は、少なくとも1つの堆積ユニットを含む。さらに、真空処理装置200は、複数の処理ユニット221を通過するようにフレキシブル基板を案内するための、本明細書に記載の任意の実施形態によるローラ100を含む。
【0031】
[0030]図3に概略的に示すように、ローラ100は冷却剤供給225に接続することができる。通常、冷却剤供給225は、異なる温度の2つ以上の冷却剤を提供するために構成されている。特に、冷却剤供給225は、第1の温度T1を有する第1の冷却剤と、第1の温度T1とは異なる第2の温度T2を有する第2の冷却剤とを供給するように構成されている。典型的には、第1の温度T1は第2の温度T2よりも低い。さらには、冷却剤供給225は、第3の温度T3を有する第3の冷却剤を提供するために構成でき、第3の温度T3は、第1の温度T1及び第2の温度T2とは異なることを理解されたい。例えば、第3の温度T3は、第1の温度T1よりも低く、かつ/又は第2の温度T2よりも低くすることができる。
【0032】
[0031]図3に例示的に示すように、通常、真空処理装置200はロールツーロール処理システムである。本明細書で説明される任意の実施形態によるローラ100は、真空処理装置の処理ドラム又はコーティングドラムであり得る。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、真空処理装置200は、フレキシブル基板10を提供するための保管スプール212を収容する第1のスプールチャンバ210を含む。また、真空処理装置200は、第1のスプールチャンバ210の下流側に処理チャンバ220を備えている。典型的には、処理チャンバ220は真空チャンバであり、複数の処理ユニット221を含む。複数の処理ユニット221は、少なくとも1つの堆積ユニットを含む。したがって、本開示では、「処理チャンバ」は、基板上に材料を堆積するための少なくとも1つの堆積ユニットを有するチャンバとして理解することができる。したがって、処理チャンバは、堆積チャンバとも呼ばれる。本明細書で使用する「真空」という用語は、例えば10ミリバール未満の真空圧を有する技術的真空の意味で理解することができる。通常、本明細書で説明する真空チャンバ内の圧力は、10-5ミリバール~約10-8ミリバールの間、より一般的には、10-5mbar~10-7mbarの間、さらに典型的には、約10-6ミリバール~約10-7ミリバールの間であり得る。
【0033】
[0032]図3に例示的に示すように、複数の処理ユニットは、ローラ100の周囲の周方向に配置されてもよい。ローラ100が回転すると、フレキシブル基板10は、ローラの湾曲した基板支持面に面する処理ユニットを通過して案内され、これにより、所定の速度で処理ユニットを通過しながらフレキシブル基板の表面を処理することができる。例えば、複数の処理ユニットは、堆積ユニット、エッチングユニット、及び加熱ユニットからなる群から選択される1つ又は複数のユニットを含んでもよい。本明細書に記載の真空処理装置の堆積ユニットは、スパッタ堆積ユニット、例えば、AC(交流)スパッタ源又はDC(直流)スパッタ源、RF(高周波)スパッタ源、MF(中周波)スパッタ源、パルススパッタ源、パルスDCスパッタ源、マグネトロンスパッタ源、反応性スパッタ源、CVD堆積ユニット、PECVD堆積ユニット、PVD堆積ユニット又は別の適切な堆積ユニットであることができる。通常、本明細書に記載の堆積ユニットは、例えばフレキシブル表示装置、タッチスクリーン装置コンポーネント、又は他の電子若しくは光学装置を形成するために、フレキシブル基板上に薄膜を堆積するように適合されることが理解されるべきである。本明細書に記載される堆積ユニットは、導電性材料、半導電性材料、誘電性材料、又は絶縁性材料の群から選択される少なくとも1つの材料を堆積するように構成することができる。
【0034】
[0033]さらに、図3に例示的に示すように、真空処理装置200は、処理チャンバ220の下流に配置された第2のスプールチャンバ250を含んでもよい。第2のスプールチャンバ250には、処理後のフレキシブル基板10を巻き取るための巻き取りスプール252が収容されている。
【0035】
[0034]図4Aに示されるブロック図を例示的に参照すると、本開示による、フレキシブル基板を案内するためのローラを冷却する方法300が説明される。本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、方法300は、ローラ(100)の第1の部分101に第1の冷却剤を供給する(図4Aのブロック311で表す)ことによって、ローラ(100)の第1の部分101を冷却する(図4Aのブロック310で表す)ことを含む。さらに、方法300は、第2の冷却剤を第2の部分102及び第3の部分103に供給すること(図4Aのブロック321によって表される)によって、ローラ100の第2の部分102及び第3の部分103を冷却すること(図4Aのブロック320によって表される)を含む。本明細書に記載されているように、第1の部分101は、第2の部分102と第3の部分103との間に設けられる。特に、第1の冷却剤は第1の温度T1を有し、第2の冷却剤は第1の温度T1とは異なる第2の温度T2を有する。特に、第1の温度T1は第2の温度T2よりも低い。
【0036】
[0035]例示的に図4Bを参照すると、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、方法300は、ローラ100の第4の部分104及び第5の部分105に第3の冷却剤を供給すること(図4Bの331で表す)によって、ローラ100の第4の部分104及び第5の部分105を冷却すること(図4Bのブロック330で表す)を含む。本明細書に記載されるように、通常、第2の部分102は、第1の部分101と第4の部分104との間に設けられる。第3の部分103は、典型的には、第1の部分101と第5の部分105との間に設けられる。より詳細には、通常、第3の冷却剤は、第1の温度T1及び第2の温度T2とは異なる第3の温度T3を有する。特に、第3の温度T3は、第1の温度T1よりも低く、かつ/又は第2の温度T2よりも低くすることができる。
【0037】
[0036]本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、方法300は、ローラ100の少なくとも一部を熱膨張させること(図4Bのブロック341で表す)、又は熱収縮させること(図4Bのブロック342で表す)によって、ローラ100の形状を変更すること(図4Bのブロック340で表される)をさらに含む。特に、ローラの形状を変更することは、凸状のローラ形状を提供すること、又は凹状のローラ形状を提供することを含むことができる。例えば、ローラの軸方向中央部分(例えば、本明細書で説明する第1の部分101)を、ローラの側部部分(例えば、本明細書で説明する第2の部分102及び第3の部分103)よりも低い温度まで冷却することによって、凹ローラ形状が得られる。凹状のローラ形状を提供することは、しわを避けるのに有益なフレキシブル基板の伸長を達成することができるため、有益である可能性がある。
【0038】
[0037]本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、方法300は、本明細書に記載の任意の実施形態によるローラ100を使用することを含む。
【0039】
[0038]本明細書では明示的に説明していないが、3つ以上の個別に制御可能な冷却剤供給を設けることができることを理解されたい。例えば、第2及び第3の冷却剤供給と同様に構成された第4及び第5の冷却剤供給を設けることによって、ローラの10個の別々の部分を冷却することができる。
【0040】
[0039]本明細書に記載される実施形態を考慮すると、本開示の一態様によれば、コーティングされたフレキシブル基板を製造する方法が提供され得ることが理解されるべきである。この方法は、本明細書に記載の任意の実施形態によるローラ100のうちの少なくとも1つを使用することを含み、本発明は、本明細書に記載の任意の実施形態による真空処理装置200、及び本明細書に記載の任意の実施形態によるローラを冷却する方法300を提供する。
【0041】
[0040]上記を考慮すると、最先端技術と比較して、本明細書に記載される実施形態は、改善されたフレキシブル基板搬送を提供し、改善されたローラ冷却、改善された基板冷却により、有益なことに、より薄く、より広いフレキシブル基板を処理でき、処理結果が改善される。
【0042】
[0041]以上の説明は実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲を逸脱せずに他の実施形態及び更なる実施形態を考案してもよく、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
【国際調査報告】