(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】EUV露光装置における測定のための回折格子
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
G03F7/20 503
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571282
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2022061398
(87)【国際公開番号】W WO2022248154
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】チョン,デリック,ユン,チェク
(72)【発明者】
【氏名】デ グロート,ピーター,クリスティアーン
(72)【発明者】
【氏名】エンゲレン,ウーター,ジョープ
(72)【発明者】
【氏名】レディ,ボガチ,ビシュヌ,バルダナ
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197CA10
2H197CC02
2H197DC14
2H197DC16
2H197GA01
(57)【要約】
投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子が開示される。格子は、EUVリソグラフィ装置においてウェーハレベル格子として用いられる2次元回折格子である。特に、回折格子は、円形貫通アパーチャ(51)の2次元アレイが設けられた基板を含み、自己支持型である。いくつかの実施形態において、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、波面再構成アルゴリズムの利得誤差及びクロストーク誤差を最小化するように選択することができる。例えば、この比は0.34~0.38とすればよい。いくつかの実施形態において、円形アパーチャは、隣接するアパーチャの中心間の距離が回折格子全体にわたって不均一であり変動するように分布している。例えば、格子のローカルピッチは回折格子全体にわたってランダムに変動し得る。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子であって、前記回折格子は円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を含み、前記円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は0.34~0.38である、回折格子。
【請求項2】
前記円形アパーチャの前記半径と隣接するアパーチャの前記中心間の前記距離との前記比は、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして前記回折格子を用いる場合に利得誤差及びクロストーク誤差を最小化する最適値に近く、前記位相ステッピング測定システムの再構成アルゴリズムは、前記格子がチェッカーボード格子の形態であることを想定する、請求項1に記載の回折格子。
【請求項3】
前記円形アパーチャの前記半径と隣接するアパーチャの前記中心間の前記距離との前記比は、測定面内の中央領域において干渉ビームマップの変動を最小化する最適値に近く、
前記測定面内の所与の位置における前記干渉ビームマップの値は、ゼロ収差に対して50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして前記回折格子を用いる場合に生じる振動位相ステッピング信号の第1高調波の振幅によって与えられ、
前記測定面内の前記中央領域は、前記回折格子を照明する前記レチクルレベルパターニングデバイスからの0次回折ビームから生じる第1及び第2の回折ビーム間の重なりに対応し、前記第1の回折ビームはシヤリング方向の+1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームであり、前記第2の回折ビームはシヤリング方向の-1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームである、請求項1から2のいずれかに記載の回折格子。
【請求項4】
投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子であって、前記回折格子は円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を含み、
前記円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして前記回折格子を用いる場合に利得誤差及びクロストーク誤差を最小化する最適値に近く、前記位相ステッピング測定システムの再構成アルゴリズムは、前記格子がチェッカーボード格子の形態であることを想定する、回折格子。
【請求項5】
投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子であって、前記回折格子は円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を含み、
前記円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、測定面内の中央領域において干渉ビームマップの変動を最小化する最適値に近く、
前記測定面内の所与の位置における前記干渉ビームマップの値は、ゼロ収差に対して50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして前記回折格子を用いる場合に生じる振動位相ステッピング信号の第1高調波の振幅によって与えられ、
前記測定面内の前記中央領域は、前記回折格子を照明する前記レチクルレベルパターニングデバイスからの0次回折ビームから生じる第1及び第2の回折ビーム間の重なりに対応し、前記第1の回折ビームはシヤリング方向の+1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームであり、前記第2の回折ビームはシヤリング方向の-1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームである、回折格子。
【請求項6】
投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子であって、前記回折格子は円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を含み、
前記円形貫通アパーチャは、隣接するアパーチャの中心間の距離が前記回折格子全体にわたって不均一であり変動するように分布している、回折格子。
【請求項7】
前記回折格子全体にわたる隣接するアパーチャの前記中心間の前記距離の前記変動はランダム又は擬似ランダムである、請求項6に記載の回折格子。
【請求項8】
前記回折格子全体にわたる隣接するアパーチャの前記中心間の前記距離の前記変動は公称距離±10%未満である、請求項6又は7に記載の回折格子。
【請求項9】
前記円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの前記中心間の前記距離との比は0.34~0.38である、請求項6から8のいずれか一項に記載の回折格子。
【請求項10】
前記円形アパーチャの前記半径と隣接するアパーチャの前記中心間の前記距離との前記比は、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして前記回折格子を用いる場合に利得誤差及びクロストーク誤差を最小化する最適値に近く、前記位相ステッピング測定システムの再構成アルゴリズムは、前記格子がチェッカーボード格子の形態であることを想定する、請求項6から9のいずれか一項に記載の回折格子。
【請求項11】
前記円形アパーチャの前記半径と隣接するアパーチャの前記中心間の前記距離との比は、測定面内の中央領域において干渉ビームマップの変動を最小化する最適値に近く、
前記測定面内の所与の位置における前記干渉ビームマップの値は、ゼロ収差に対して50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして前記回折格子を用いる場合に生じる振動位相ステッピング信号の第1高調波の振幅によって与えられ、
前記測定面内の前記中央領域は、前記回折格子を照明する前記レチクルレベルパターニングデバイスからの0次回折ビームから生じる第1及び第2の回折ビーム間の重なりに対応し、前記第1の回折ビームはシヤリング方向の+1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームであり、前記第2の回折ビームはシヤリング方向の-1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームである、請求項6から10のいずれかに記載の回折格子。
【請求項12】
投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子を設計する方法であって、前記回折格子は円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を含み、前記方法は、
前記収差マップの再構成における誤差を実質的に最小化する、前記円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比を選択することを含む、方法。
【請求項13】
投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子を設計する方法であって、前記回折格子は円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を含み、前記方法は、
膜上で方形アレイの複数の位置を選択することと、
前記方形アレイの複数の位置の各々に近接しているがずれているアパーチャの位置を選択することと、
を含み、アパーチャの前記位置を選択することは、±|x
max|間の第1の乱数又は擬似乱数N
xと、±|y
max|間の第2の乱数又は擬似乱数N
yとを発生させることを含み、前記アパーチャの前記位置は、前記アパーチャの中心が前記方形アレイ内の前記近接した位置からずれていて、このずれが、前記方形アレイの軸のうち第1のものに平行な距離N
x及び前記方形アレイの前記軸のうち第1のものに平行な距離N
yであるように選択される、方法。
【請求項14】
投影システムの収差マップを決定する測定システムであって、
パターニングデバイスと、
前記パターニングデバイスを放射で照明するように配置された照明システムであって、前記パターニングデバイスは、放射ビームを受光すると共に複数の第1の回折ビームを形成するように配置された第1のパターン付き領域を含み、前記第1の回折ビームはシヤリング方向に分離している、照明システムと、
請求項1から11のいずれか一項に記載の2次元回折格子を含む第2のパターン付き領域と放射検出器とを含むセンサ装置と、
を備え、前記投影システムは、前記第1の回折ビームを前記センサ装置上に投影するように構成され、前記第2のパターン付き領域は、前記投影システムから前記第1の回折ビームを受光すると共に前記第1の回折ビームの各々から複数の第2の回折ビームを形成するように配置され、
前記測定システムは更に、前記パターニングデバイス及び前記センサ装置のうち少なくとも1つを前記シヤリング方向に移動させるように構成された位置決め装置と、
コントローラと、を備え、前記コントローラは、
前記第1のパターニングデバイス及び前記センサ装置のうち少なくとも1つを前記シヤリング方向に移動させるように前記位置決め装置を制御して、前記放射検出器の各部分によって受光される放射の強度が前記シヤリング方向の前記移動の関数として変動して振動信号を形成するようにし、
前記放射検出器から、前記放射検出器上の複数の位置における前記振動信号の高調波の位相を決定し、
前記放射検出器上の前記複数の位置における前記振動信号の高調波の前記位相から、前記投影システムの前記収差マップを特徴付ける係数のセットを決定する、
ように構成されている、測定システム。
【請求項15】
請求項14の測定システムを備えるリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
[0001] 本出願は、2021年5月27日に出願された欧州特許出願第21176240.6号の優先権を主張する。この出願は援用により全体が本願に含まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子、及び、そのような回折格子を設計するための方法に関する。特に、本発明は、基板における円形アパーチャ又はピンホールのアレイによって形成されたシヤリング位相ステッピング干渉測定システムのための2次元回折格子に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に適用するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に使用可能である。リソグラフィ装置は、例えばパターニングデバイス(例えばマスク)でのパターンを、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)の層に投影することができる。
【0004】
[0004] 基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を使用することができる。この放射の波長は、基板上に形成可能なフィーチャの最小サイズを決定する。4~20nmの範囲内、例えば6.7nm又は13.5nmの波長を有する極端紫外線(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置は、例えば193nmの波長を有する放射を使用するリソグラフィ装置よりも小さいフィーチャを基板上に形成するのに使用することができる。
【0005】
[0005] パターニングデバイスによってパターン付与された放射は、投影システムを用いて基板上に集束される。投影システムは、基板上に形成される像を、所望の像(例えばパターニングデバイスの回折限界像)から逸脱させる光学収差を招く可能性がある。
【0006】
[0006] 投影システムによって生じたそのような収差をより良く制御できるように、そのような収差を正確に決定するための方法及び装置を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 本開示の第1の態様によれば、投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子が提供される。回折格子は、円形貫通アパーチャ(through-aperture)の2次元アレイが設けられた基板を備える。円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、0.34~0.38である。
【0008】
[0008] 投影システムの収差マップを決定するための測定システムを用いて、投影システムによって生じた収差を測定することができる。このような測定システムは、リソグラフィシステム内で用いることができ、シヤリング干渉計を含み得る。測定システムは典型的に、レチクルレベルの(すなわちリソグラフィ装置の対物面に配置された)パターニングデバイスと、ウェーハレベルの(すなわちリソグラフィ装置の像面に配置された)センサと、を用いる。レチクルレベルパターニングデバイスは、例えば回折格子を含み得る。ウェーハレベルセンサは、第2のパターニングデバイス(例えば2次元回折格子)及び放射検出器(例えばセンシング要素のアレイ)を含む。レチクルレベルパターニングデバイスは、放射で照明されて複数の第1の回折ビームを形成し、これらの第1の回折ビームはシヤリング方向に分離されている。投影システムは、複数の第1の回折ビームを少なくとも部分的に捕捉し、これらをウェーハレベルセンサのパターニングデバイス上に結像する。第2のパターニングデバイスは、投影システムから第1の回折ビームを受光し、第1の回折ビームの各々から複数の第2の回折ビームを形成する。これらは放射検出器に入射する。
【0009】
[0009] 第1及び第2のパターニングデバイスのピッチはシヤリング方向に整合され、投影システムが適用する縮小係数を考慮して、シヤリング方向における第2のパターン付き領域のピッチ(第1の態様に従ったものであり得る)が、シヤリング方向における第1のパターン付き領域のピッチの整数倍であるようにするか、あるいは、シヤリング方向における第1のパターン付き領域のピッチが、シヤリング方向における第2のパターン付き領域のピッチの整数倍でなければならない。
【0010】
[00010] レチクルレベルパターニングデバイス及びウェーハレベルセンサ装置のうち少なくとも1つをシヤリング方向にスキャン又はステップする(stepped)ことで、シヤリング方向のこの移動の関数として、放射検出器の各部分により受光される放射の強度が変動して振動信号(oscillating signal)を形成するようになっている。放射検出器上の複数の位置(例えば各センシング要素)における振動信号の高調波(例えば第1高調波)の位相を決定する。これらを形成し、投影システムの収差マップを特徴付けるゼルニケ係数のセットを決定する。
【0011】
[00011] 一般に、放射検出器における振動信号の高調波には複数の異なる寄与分(contribution)が存在し、その各々は、検出器に対して異なるオーバーレイを有し(すなわち、センシング要素の異なるセットと一致し)、概して、異なる強度を有する。(透過型)深紫外線(DUV)リソグラフィ装置において、1つの既知の機構は、レチクルレベルのパターニングデバイスのためにデューティサイクルが50%の1次元回折格子を使用し、ウェーハレベルのパターニングデバイスのためにチェッカーボード格子を使用する。このような機構を用いると、放射検出器の大部分において、放射検出器における振動(位相ステッピング)信号の第1高調波は、同じ強度を有する2つの寄与分のみを受ける。これにより、収差マップの再構成が著しく簡略化される。
【0012】
[00012] しかしながら、実際のチェッカーボード格子には透過性支持層が必要であり、これは極端紫外線(EUV)リソグラフィシステムで使用するには適していない。その理由は、(a)EUV放射はほとんどの材料によって強く吸収されること、及び(b)そのような透過性キャリアはEUVリソグラフィシステムのウェーハ生成環境で急速に汚染するので、透過性キャリアがEUVに対して非透過性となることである。上記の理由から、チェッカーボード格子機構は、EUV放射を用いるリソグラフィシステムで実施することが難しいので、既存の機構は通常、チェッカーボード格子の代わりにウェーハレベルのピンホールアレイを用いる。チェッカーボード格子は(面積で)50%のデューティサイクルを有するので、ピンホールのサイズは典型的に、ピンホールアレイも(面積で)50%のデューティサイクルを有するように選択される。これは、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比を約0.4に選択することによって達成される。
【0013】
[00013] ウェーハレベルパターニングデバイスにピンホールアレイ幾何学的形状を用いると、位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する望ましくない干渉ビームが発生することが知られている。特に、チェッカーボード格子に存在する2つの寄与分に加えて、放射検出器では、小さいがゼロでない強度を有する追加の干渉ビームが多数存在する。更に、これらの寄与分はそれぞれ、放射検出器に対して、例えば投影システムの開口数に対応する放射検出器の円形部分に対して、異なる重なり(overlap)を有する。
【0014】
[00014] 振動(位相ステッピング)信号の第1高調波に寄与する追加の干渉ビームの強度は、(チェッカーボードを用いる場合に存在する2つの寄与分の強度に比べて)小さい。従って、EUV放射用の第1のタイプの既知の収差測定システムは、ゼルニケ係数セットを見出すため、波面の再構成においてこれらの項を無視する(すなわち、これらがゼロであると仮定する)。この仮定は、波面測定の精度に影響を与える。次いでこれは、システム結像、オーバーレイ、及びリソグラフィ装置のフォーカス性能に悪影響を及ぼす。本発明の実施形態は、EUV放射用の収差測定システムの上述した問題に少なくとも部分的に対処するため考案された。
【0015】
[00015] 振動(位相ステッピング)信号の第1高調波に対する追加の寄与分の存在によって生じる問題に対処するため提案された1つの解決策は、位相ステッピング信号の第1高調波に大きく寄与する干渉ビームの合計数を減少させる幾何学的形状を有するウェーハレベルの2次元回折格子を用いることである。
【0016】
[00016] 第1の例では、方形アパーチャのアレイを用いることが提案された(アレイの軸はシヤリング方向に対して45度の角度回転させている)。特に、方形アパーチャの各々の長さを隣接するアパーチャの中心間の距離の半分にすることが、以前に教示された。このような構成によって提供できる自己支持型(self-supporting)格子は、位相ステッピング信号の第1高調波に対する寄与分が4つだけであり、これら4つ全てが等しい強度を有するので、特に有利であることが分かった。
【0017】
[00017] 代替案では、位相ステッピング信号の第1高調波に著しく(例えば閾値よりも大きい干渉強度で)寄与する干渉ビームの合計数を減らすように、ピンホールのアパーチャの直径と間隔を選択することが提案された。例えば、上記の問題に対する1つの既知の解決策では、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比を約0.4に選択する(面積で50%のデューティサイクルを達成するため)のではなく、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比を0.3又は0.43に選択することが提案された。第1の例では、アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比が約0.3である格子を選択して、ピンホール格子の(±2、0)及び(0、±2)回折次数を抑制又は最小化した(これら双方は、完璧なチェッカーボード格子ではゼロである)。この比は、(約0.4の公称値に比べて)収差マップの再構成のために有利であることが分かった。第2の例では、アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比が約0.43である格子を選択して、(±1、±1)回折次数を抑制又は最小化した(これらは、完璧なチェッカーボード格子ではゼロである)。この場合も、この比は、(約0.4の公称値に比べて)収差マップの再構成のために有利であることが分かった。
【0018】
[00018] しかしながら、これらの教示とは異なり、本発明の発明者らは、より良いピンホール幾何学的形状を選択できることを見出した。具体的に述べると、位相ステッピング信号の第1高調波に対する寄与分の数を減らすことは望ましいが、本発明者らは、以下で検討するように、再構成アルゴリズムの利得誤差及びクロストーク誤差に基づいてウェーハレベル格子の幾何学的形状を選択する方が良いことを見出した。
【0019】
[00019] 本発明者らは、収差マップ再構成における誤差を以下のようにより良く制御できることを認識した。波面収差マップは、投影システムの像面内のポイントに接近する光の波面の球状波面からのディストーションを表し、ゼルニケ多項式の線形結合として表現できる。純粋なゼルニケ波面収差マップ(例えばZn)を再構成アルゴリズムに入力し、これを再構成アルゴリズムがどのようにゼルニケ多項式の線形結合として再構成するかを査定することができる。理想的には、再構成アルゴリズムは、m=nに対してcm=1であり、m≠nに対してcm=0であるように、ゼルニケ係数cmのセットを出力しなければならない。1からのcnの変動を利得誤差と呼ぶことができる。更に、m≠nである場合の0からのcmの変動をクロストーク誤差と呼ぶことができる。
【0020】
[00020] 2次元シミュレーションから、50%のデューティサイクルを有するレチクルレベルの1次元回折格子及びウェーハレベルのピンホールアレイ格子を用いる収差マップ測定システムでは、円形ピンホールアパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比に、公称値の0.4に対して約0.36を用いることで、約2倍の利得誤差及びクロストーク誤差の全体的な減少が得られることが分かった。更に、この2次元シミュレーションから、以前に提案された0.3という最適化値に対しても、利得誤差及びクロストーク誤差の全体的な減少が達成されることが分かった。
【0021】
[00021] 円形ピンホールアパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比が公称値0.4から小さくなると、利得誤差及びクロストーク誤差は、あるポイントまで低減し、その後、この比が以前に提案した0.3という値に向かうにつれて、利得誤差及びクロストーク誤差は再び増大し始めると考えられる。
【0022】
[00022] 従って、0.3及び0.4という2つの以前に開示された値に対して、0.34~0.38の範囲内で利得誤差及びクロストーク誤差の低減が達成されると考えられる。
【0023】
[00023] 2つの理由から、円形ピンホールアパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比の値の最適化は難しい。
【0024】
[00024] 第1に、再構成された収差マップにおける実際の誤差は、双方の誤差(すなわち利得誤差及びクロストーク誤差)、及び、解析されている投影システムが経験する収差の双方に依存する。例えば、比較的大きいZi収差及び比較的小さいZj収差を生じやすい投影システムは、実際のところ、Zj収差に対して利得誤差及びクロストーク誤差が増大する場合であっても、Zi収差に対して利得誤差及びクロストーク誤差を最小化する円形ピンホールアパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比を用いて、より良く機能し得る。
【0025】
[00025] 第2に、シミュレーションは、回折格子が3次元であるということを考慮しなければならないが、これは、格子が完璧なバイナリ格子でないことを意味する。例えば、格子の厚さが有限で非ゼロであることに起因して、基板のアパーチャ間に入射する放射は概して、完璧には吸収されない。更に、使用時、放射はある角度範囲で格子に入射し得る。この結果、膜に(例えば大きい入射角度で、貫通アパーチャのうち1つの近くに)入射する放射の少なくとも一部は、膜の厚さのごく一部である距離だけ膜内を伝搬するので、充分には減衰されない。更に、概して、基板と(貫通アパーチャ内の)周囲の媒質との間で屈折率に差が存在し得る。この結果、膜を伝搬する放射とそうでない放射との間に位相差が誘発される(光路長が異なるため)。
【0026】
[00026] このような3次元効果を考慮すると、円形ピンホールアパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との最適な比に小さいシフトが生じ得ると考えられ、このシフトは、格子が形成される材料の光学特性と膜の厚さとに依存し得る。しかしながら、この最適な比は0.34~0.38の範囲内にあると考えられる。
【0027】
[00027] 円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、0.35~0.37とすればよい。
【0028】
[00028] 円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、約0.36とすればよい。
【0029】
[00029] 円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして回折格子を用いる場合に利得誤差及びクロストーク誤差を最小化する最適値に近いものとすればよい。位相ステッピング測定システムの再構成アルゴリズムは、格子がチェッカーボード格子の形態であることを想定する。
【0030】
[00030] 円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、測定面内の中央領域において干渉ビームマップの変動を最小化する最適値に近い。測定面内の所与の位置における干渉ビームマップの値は、ゼロ収差に対して50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして回折格子を用いる場合に得られる、振動位相ステッピング信号の第1高調波の振幅によって与えられる。測定面の中央領域は、回折格子を照明するレチクルレベルパターニングデバイスからの0次回折ビームから生じる第1及び第2の回折ビーム間の重なりに対応する。第1の回折ビームはシヤリング方向の+1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームであり、第2の回折ビームはシヤリング方向の-1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームである。
【0031】
[00031] 本開示の第2の態様によれば、投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子が提供される。回折格子は、円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を備える。円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして回折格子を用いる場合に利得誤差及びクロストーク誤差を最小化する最適値に近い。位相ステッピング測定システムの再構成アルゴリズムは、格子がチェッカーボード格子の形態であることを想定する。
【0032】
[00032] 本開示の第3の態様によれば、投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子が提供される。回折格子は、円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を備える。円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、測定面内の中央領域において干渉ビームマップの変動を最小化する最適値に近い。測定面内の所与の位置における干渉ビームマップの値は、ゼロ収差に対して50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして回折格子を用いる場合に得られる、振動位相ステッピング信号の第1高調波の振幅によって与えられる。測定面の中央領域は、回折格子を照明するレチクルレベルパターニングデバイスからの0次回折ビームから生じる第1及び第2の回折ビーム間の重なりに対応する。第1の回折ビームはシヤリング方向の+1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームであり、第2の回折ビームはシヤリング方向の-1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームである。
【0033】
[00033] 測定面は、位相ステッピング測定システムの放射検出器の位置に対応し得る。
【0034】
[00034] 収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとしてチェッカーボード格子を用いる場合、測定面における第1及び第2の回折ビーム(回折格子を照明するレチクルレベルパターニングデバイスからの0次回折ビームから生じる)間の重なりに対応する領域内の干渉ビームマップは均一である。その理由は、測定面のこの領域全体にわたって、2つの回折ビームが振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与し、それらの干渉強度は等しいからである。
【0035】
[00035] しかしながら、ウェーハレベルパターニングデバイスにピンホールアレイ幾何学的形状を用いる場合、これによって、位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する望ましくない干渉ビームが発生する。特に、チェッカーボード格子で存在する2つの寄与分に加えて、放射検出器では、小さいがゼロでない強度を有する追加の干渉ビームが複数存在する。これらの寄与分の各々は測定面内の位置が異なるので、一般に、干渉ビームマップには多少の変動が存在する(異なる位置は、概して、振動位相ステッピング信号の第1高調波に対して異なる寄与分を有するからである)。
【0036】
[00036] 一般に、振動位相ステッピング信号の第1高調波は、次数が±1異なる第1の回折ビーム(すなわち、レチクルレベルパターニングデバイスによって形成される回折ビーム)からの寄与分にのみ依存する。50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスでは、次数が±1異なる第1の回折ビームのペアが2つだけあり、0次ビームと±1次ビームである。
【0037】
[00037] 各干渉ビームは、回折格子によって形成された複数の干渉する第2の干渉ビームを表し得る。そのような干渉ビームの各々は、測定面上の各干渉ビームの投影が異なるように、異なる方向に伝搬すると考えることができる。
【0038】
[00038] 振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与するそのような干渉ビームの干渉強度を、以下のように決定することができる。
【0039】
[00039] 第1に、回折格子の散乱効率プロットを決定する。次に、回折格子のこの散乱効率プロットの第2のコピーを、レチクルレベルパターニングデバイスの±1次回折ビームの散乱効率で重み付けし、次いで回折格子の散乱効率プロットを重ね合わせるが、(レチクルレベルパターニングデバイスの)1ペアの回折次数の分離だけシヤリング方向にシフトさせる。レチクルレベル及びウェーハレベルのパターニングデバイスのシヤリング方向のピッチが等しい場合(投影システムが適用する縮小係数を考慮して)、回折格子の散乱効率プロットの第2のコピーを、回折格子の1回折次数だけシヤリング方向にシフトさせる。次いで、これら2つの重ね合わせた散乱効率プロットの散乱効率の積を求める。これにより、全ての干渉ビームの干渉強度が与えられる。
【0040】
[00040] 本開示の第4の態様によれば、投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子が提供される。回折格子は、円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を備える。円形貫通アパーチャは、隣接するアパーチャの中心間の距離が回折格子全体にわたって不均一であり変動するように分布している。
【0041】
[00041] 典型的には、回折格子は複数のアパーチャを含み、これらのアパーチャは、隣接するアパーチャの中心間の距離が回折格子全体にわたって均一であるように分布している。これは、円形貫通アパーチャの各々の中心が方形アレイの複数の位置のうち1つと一致するようにアパーチャを配置することによって達成される。これに対して、第4の態様に従った回折格子を形成するには、円形貫通アパーチャの各々の中心が方形アレイの複数の位置のうち1つに近接すると共にこの1つの位置からずれており、このずれ(offset)の量が回折格子全体にわたって変動するように、アパーチャを配置する。
【0042】
[00042] 隣接するアパーチャの中心間の距離を、回折格子のローカルピッチと呼ぶことができる。本発明者らは、ローカルピッチ変動を導入することによって、第4の態様に従った回折格子が回折パターンを変化させることを認識した。特に、本発明者らは、このようなローカルピッチ変動が低次回折ビームよりも高次回折ビームをいっそう抑制することを認識した。次いで、有利には、これによって、2次元チェッカーボード格子を用いる場合に存在しない位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する追加の干渉ビームの影響の効果が低減する。
【0043】
[00043] シミュレーションから、50%のデューティレベルを有するレチクルレベルの1次元回折格子及びウェーハレベルのピンホールアレイ格子を用いる収差マップ測定システムでは、格子全体にわたってランダムなピッチ変動を用いることで、約2倍の利得誤差及びクロストーク誤差の全体的な減少が得られることが分かった。
【0044】
[00044] 回折格子全体にわたる隣接するアパーチャの中心間の距離の変動は、ランダム又は擬似ランダムとすればよい。
【0045】
[00045] 回折格子全体にわたる隣接するアパーチャの中心間の距離の変動は、公称距離±10%未満とすればよい。
【0046】
[00046] 回折格子全体にわたる隣接するアパーチャの中心間の距離の変動は、公称距離±5%とすればよい。
【0047】
[00047] すなわち、ローカルピッチは公称ピッチの95%~105%の間で変動し得る。
【0048】
[00048] 回折格子全体にわたる隣接するアパーチャの中心間の距離の分布は、低い値から高い値まで概ね均一とすればよい。
【0049】
[00049] 例えば、回折格子全体にわたる隣接するアパーチャの中心間の距離のランダムな変動は公称距離±5%であるので、低い値は公称ピッチの95%であり、高い値は公称ピッチの105%であり得る。
【0050】
[00050] 公称位置からの各アパーチャのずれの分布は、低い値から高い値まで概ね均一とすればよい。
【0051】
[00051] 回折格子の軸方向における公称位置からの各アパーチャのずれの分布は、低い値から高い値まで概ね均一とすればよい。
【0052】
[00052] 例えば、アパーチャは、円形貫通アパーチャの各々の中心が方形アレイの複数の位置のうち1つに近接すると共にこの1つの位置からずれており、このずれの量が回折格子全体にわたって変動するように、配置すればよい。回折格子の軸は、方形アレイの複数の位置の軸とすればよい。回折格子の軸をx方向及びy方向と呼ぶことができる。
【0053】
[00053] x方向における公称位置からのずれΔxの分布は均一とすることができ、y方向における公称位置からのずれΔyの分布は均一とすることができる。あるいは、公称位置からの合計のずれΔrの分布は均一とすることができる。
【0054】
[00054] あるいは、公称位置からのアパーチャのずれは他の任意の分布を有し得る。
【0055】
[00055] 円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、0.34~0.38とすればよい。
【0056】
[00056] 円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、0.35~0.37とすればよい。
【0057】
[00057] 円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、約0.36とすればよい。
【0058】
[00058] 円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして回折格子を用いる場合に利得誤差及びクロストーク誤差を最小化する最適値に近いものとすればよい。位相ステッピング測定システムの再構成アルゴリズムは、格子がチェッカーボード格子の形態であることを想定する。
【0059】
[00059] 円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、測定面内の中央領域において干渉ビームマップの変動を最小化する最適値に近い。測定面内の所与の位置における干渉ビームマップの値は、ゼロ収差に対して50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして回折格子を用いる場合に生じる、振動位相ステッピング信号の第1高調波の振幅によって与えられる。測定面内の中央領域は、回折格子を照明するレチクルレベルパターニングデバイスからの0次回折ビームから生じる第1及び第2の回折ビーム間の重なりに対応する。第1の回折ビームはシヤリング方向の+1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームであり、第2の回折ビームはシヤリング方向の-1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームである。
【0060】
[00060] 回折格子は自己支持型とすることができる。
【0061】
[00061] 使用時、回折格子に吸収層のためのサポートを設けることができる。サポートは、吸収層の周辺部にのみ接触し得る。すなわちサポートは、フレームの形態とすることができ、吸収層の中央部に隣接しない。このような機構では、吸収層の中央部において、吸収層は自己支持型と考えることができる。これを達成するため、吸収層をサポート上でピンと張ることができる(例えば概ね平面形状を維持するように)。
【0062】
[00062] 有利には、吸収層の中央部が自己支持型である実施形態において、格子は、例えば透過性支持層を必要としない。このような機構は、EUV放射を用いる投影システムの収差マップを決定するための位相ステッピング測定システムで使用するには特に有益である。このような透過性支持層を用いると、回折格子を透過したEUV放射の量が著しく低減するからである。
【0063】
[00063] 基板は放射吸収層を含み得る。
【0064】
[00064] 放射吸収層は、例えば、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、又はアルミニウム(Al)等の金属から形成され得る。
【0065】
[00065] いくつかの実施形態において、吸収層はセラミックを含み得る。セラミックは、EUV放射に対して比較的高い消光係数を有する金属又は半金属コンポーネントと、非金属コンポーネントと、を含み得る。双方のコンポーネントは、EUVに対して比較的1に近い屈折率を有し得る。セラミックは窒化アルミニウム(AlN)を含み得る。いくつかの実施形態において、吸収層は窒化アルミニウム(AlN)を含み得る。
【0066】
[00066] 基板は更に支持層を含み得る。貫通アパーチャは、支持層と放射吸収層の双方を貫通し得る。
【0067】
[00067] 支持層は、例えばSiNから形成され得る。
【0068】
[00068] 本開示の第5の態様によれば、投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子を設計する方法が提供される。回折格子は、円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を含む。方法は、収差マップの再構成における誤差を実質的に最小化する、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比を選択することを含む。
【0069】
[00069] 円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、投影システムの収差マップを決定するための位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして回折格子を用いる場合に利得誤差及びクロストーク誤差を実質的に最小化するよう選択され得る。位相ステッピング測定システムの再構成アルゴリズムは、格子がチェッカーボード格子の形態であることを想定する。
【0070】
[00070] 任意選択的に、投影システムの収差マップを決定するための位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして回折格子を用いる場合に利得誤差及びクロストーク誤差を実質的に最小化するよう選択することは、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて回折格子を用いる場合のためである。
【0071】
[00071] 円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、測定面内の中央領域において干渉ビームマップの変動を最小化する最適値に近い。測定面内の所与の位置における干渉ビームマップの値は、ゼロ収差に対して投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして回折格子を用いる場合に生じる振動位相ステッピング信号の第1高調波の振幅によって与えられる。測定面内の中央領域は、回折格子を照明するレチクルレベルパターニングデバイスからの0次回折ビームから生じる第1及び第2の回折ビーム間の重なりに対応する。第1の回折ビームはシヤリング方向の+1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームであり、第2の回折ビームはシヤリング方向の-1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームである。
【0072】
[00072] 任意選択的に、投影システムの収差マップを決定するための位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして回折格子を用いる場合に干渉ビームマップの変動を実質的に最小化するよう選択することは、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて回折格子を用いる場合のためである。
【0073】
[00073] 本開示の第6の態様によれば、投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子を設計する方法が提供される。回折格子は、円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を含む。方法は、膜上で方形アレイの複数の位置を選択することと、方形アレイの複数の位置の各々に近接しているがずれているアパーチャの位置を選択することと、を含む。アパーチャの位置を選択することは、±|xmax|間の第1の乱数又は擬似乱数Nxと、±|ymax|間の第2の乱数又は擬似乱数数Nyとを発生させることを含む。アパーチャの位置は、アパーチャの中心が方形アレイ内の近接した位置からずれていて、このずれが、方形アレイの軸のうち第1のものに平行な距離Nx及び方形アレイの軸のうち第1のものに平行な距離Nyであるように選択される。
【0074】
[00074] 本開示の第7の態様によれば、本開示の第5の態様に従った方法又は本開示の第6の態様に従った方法に従って設計された回折格子が提供される。
【0075】
[00075] 本開示の第8の態様によれば、投影システムの収差マップを決定する測定システムが提供される。測定システムは、パターニングデバイスと、パターニングデバイスを放射で照明するように配置された照明システムと、を備える。パターニングデバイスは、放射ビームを受光すると共に複数の第1の回折ビームを形成するように配置された第1のパターン付き領域を含み、第1の回折ビームはシヤリング方向に分離されている。測定システムは更に、本開示の第1、第2、第3、第4、又は第7の態様のいずれか1つに従った2次元回折格子を含む第2のパターン付き領域と、放射検出器と、を含むセンサ装置を備える。投影システムは、第1の回折ビームをセンサ装置上に投影するように構成され、第2のパターン付き領域は、投影システムから第1の回折ビームを受光すると共に第1の回折ビームの各々から複数の第2の回折ビームを形成するように配置されている。測定システムは更に、パターニングデバイス及びセンサ装置のうち少なくとも1つをシヤリング方向に移動させるように構成された位置決め装置と、コントローラと、を備える。コントローラは、第1のパターニングデバイス及びセンサ装置のうち少なくとも1つをシヤリング方向に移動させるように位置決め装置を制御して、放射検出器の各部分によって受光される放射の強度がシヤリング方向の移動の関数として変動して振動信号を形成するようにし、放射検出器から、放射検出器上の複数の位置における振動信号の高調波の位相を決定し、放射検出器上の複数の位置における振動信号の高調波の位相から、投影システムの収差マップを特徴付ける係数のセットを決定する、ように構成されている。
【0076】
[00076] 本発明の第8の態様に従った測定システムは、特にEUVを用いる投影システムでは有利である。これは、2次元回折格子が自己支持型でありながら、位相ステッピング信号の高調波(例えば第1高調波)に対する寄与分をより良好に制御できるからである。
【0077】
[00077] 従って、本発明の第8の態様に従った測定システムは、位相ステッピング信号の第1高調波に対する寄与分をより良好に制御することができる、EUV投影システムの収差を決定する測定システムを提供できる。次いでこれは、投影システムの収差マップを特徴付ける決定された係数セットの誤差を低減することができる。
【0078】
[00078] 本開示の第9の態様によれば、本開示の第8の態様に従った測定システムを備えるリソグラフィ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
[00079] 本発明の実施形態を、添付の概略図を参照して、単なる例示として以下に説明する。
【0080】
【
図1】リソグラフィ装置及び放射源を備えたリソグラフィシステムを示す。
【
図2】本発明の一実施形態に従った測定システムの概略図である。
【
図3A】
図2の測定システムの一部を形成し得るパターニングデバイスの概略図である。
【
図3B】
図2の測定システムの一部を形成し得るセンサ装置の概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態に従った測定システムの概略図であり、測定システムは第1のパターン付き領域及び第2のパターン付き領域を含み、第1のパターン付き領域は放射を受光すると共に複数の第1の回折ビームを形成するように配置されている。
【
図5A】
図4に示されている測定システムの第2のパターン付き領域によって形成された第2の回折ビームのセットを示し、この第2の回折ビームセットは第1のパターン付き領域によって形成されたそれぞれの第1の回折ビームによって生成されている。
【
図5B】
図4に示されている測定システムの第2のパターン付き領域によって形成された第2の回折ビームのセットを示し、この第2の回折ビームセットは第1のパターン付き領域によって形成されたそれぞれの第1の回折ビームによって生成されている。
【
図5C】
図4に示されている測定システムの第2のパターン付き領域によって形成された第2の回折ビームのセットを示し、この第2の回折ビームセットは第1のパターン付き領域によって形成されたそれぞれの第1の回折ビームによって生成されている。
【
図6A】50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子の散乱効率を示し、
図4に示されている測定システムの第1のパターン付き領域を表し得る。
【
図6B】50%のデューティサイクルを有するチェッカーボードの形態の2次元回折格子の散乱効率を示し、
図4に示されている測定システムの第2のパターン付き領域を表し得る。
【
図6C】
図6Aに示されている第1のパターン付き領域及び
図6Bに示されている第2のパターン付き領域を使用した場合の
図4に示されている測定システムの干渉強度マップを示し、図示されている干渉強度の各々が表す第2の干渉ビームは、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与し、放射検出器において、投影システムPSの開口数を表す円と異なる重なりを有する。
【
図7A】
図4に示されている3つの異なる第1の回折ビームのうち1つによって充填される、
図4に示されている測定システムの投影システムの開口数の部分を示す。
【
図7B】
図4に示されている3つの異なる第1の回折ビームのうち1つによって充填される、
図4に示されている測定システムの投影システムの開口数の部分を示す。
【
図7C】
図4に示されている3つの異なる第1の回折ビームのうち1つによって充填される、
図4に示されている測定システムの投影システムの開口数の部分を示す。
【
図8A】測定システムの投影システムの開口数に対応し、
図7Bに表された第1の回折ビームから生じる3つの第2の回折ビームのうち1つによって充填される、
図4に示されている測定システムの放射検出器の一部を示す。
【
図8B】測定システムの投影システムの開口数に対応し、
図7Bに表された第1の回折ビームから生じる3つの第2の回折ビームのうち1つによって充填される、
図4に示されている測定システムの放射検出器の一部を示す。
【
図8C】測定システムの投影システムの開口数に対応し、
図7Bに表された第1の回折ビームから生じる3つの第2の回折ビームのうち1つによって充填される、
図4に示されている測定システムの放射検出器の一部を示す。
【
図9A】測定システムの投影システムの開口数に対応し、
図7Aに表された第1の回折ビームから生じる3つの第2の回折ビームのうち1つによって充填される、
図4に示されている測定システムの放射検出器の一部を示す。
【
図9B】測定システムの投影システムの開口数に対応し、
図7Aに表された第1の回折ビームから生じる3つの第2の回折ビームのうち1つによって充填される、
図4に示されている測定システムの放射検出器の一部を示す。
【
図9C】測定システムの投影システムの開口数に対応し、
図7Aに表された第1の回折ビームから生じる3つの第2の回折ビームのうち1つによって充填される、
図4に示されている測定システムの放射検出器の一部を示す。
【
図10A】測定システムの投影システムの開口数に対応し、
図7Cに表された第1の回折ビームから生じる3つの第2の回折ビームのうち1つによって充填される、
図4に示されている測定システムの放射検出器の一部を示す。
【
図10B】測定システムの投影システムの開口数に対応し、
図7Cに表された第1の回折ビームから生じる3つの第2の回折ビームのうち1つによって充填される、
図4に示されている測定システムの放射検出器の一部を示す。
【
図10C】測定システムの投影システムの開口数に対応し、
図7Cに表された第1の回折ビームから生じる3つの第2の回折ビームのうち1つによって充填される、
図4に示されている測定システムの放射検出器の一部を示す。
【
図11A】測定システムの投影システムの開口数に対応し、
図8B及び
図9Aに示されている第2の回折ビーム間の重なりと、
図8A及び
図10Bに示されている第2の回折ビーム間の重なりとを表す、
図4に示されている測定システムの放射検出器の一部を示す。
【
図11B】測定システムの投影システムの開口数に対応し、
図8B及び
図10Cに示されている第2の回折ビーム間の重なりと、
図8C及び
図9Bに示されている第2の回折ビーム間の重なりとを表す、
図4に示されている測定システムの放射検出器の一部を示す。
【
図12】円形ピンホールのアレイを含み、(面積で)50%のデューティサイクルを有する格子の単位セルを示す。
【
図13A】50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子の散乱効率を示し、
図4に示されている測定システムの第1のパターン付き領域を表し得る。
【
図13B】
図12の単位セルを含む2次元回折の散乱効率を示し、
図4に示されている測定システムの第2のパターン付き領域を表し得る。
【
図13C】
図13Aに示されている第1のパターン付き領域及び
図13Bに示されている第2のパターン付き領域を使用した場合の
図4に示されている測定システムの干渉強度マップを示し、図示されている干渉強度の各々が表す第2の干渉ビームは、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与し、放射検出器において、投影システムPSの開口数を表す円と異なる重なりを有する。
【
図14A】
図12に示されている単位セルを有する第2のパターン付き領域によって発生した21の第2の回折ビームの図であり、これらの第2の回折ビームは
図13Bの白い点線内に含まれる回折効率に対応する。
【
図14B】16の干渉ビームの図であり、これらの干渉ビームの各々は、
図14Aに示されている第2の回折ビームのペアの干渉によって発生し、
図13Cの白い点線内に含まれる干渉強度に対応する。
【
図15A】誤差行列の要素のプロットを示し、255nmのピッチを有する格子の誤差行列を示し、チェッカーボード格子の誤差行列を表す。
【
図15B】誤差行列の要素のプロットを示し、255nmのピッチを有する格子の誤差行列を示し、半径とピッチとの公称比が約0.4であるピンホール格子の誤差行列を表す。
【
図15C】誤差行列の要素のプロットを示し、1414nmのピッチを有する格子の誤差行列を示し、チェッカーボード格子の誤差行列を表す。
【
図15D】誤差行列の要素のプロットを示し、1414nmのピッチを有する格子の誤差行列を示し、半径とピッチとの公称比が約0.4であるピンホール格子の誤差行列を表す。
【
図16A】255nmのピッチを有する格子の誤差行列の要素のプロットを示し、半径とピッチとの比が
図16Bから
図16Dとは異なるピンホール格子の誤差行列を表す。
【
図16B】255nmのピッチを有する格子の誤差行列の要素のプロットを示し、半径とピッチとの比が
図16A及び
図16Cから
図16Dとは異なるピンホール格子の誤差行列を表す。
【
図16C】255nmのピッチを有する格子の誤差行列の要素のプロットを示し、半径とピッチとの比が
図16Aから
図16B及び
図16Dとは異なるピンホール格子の誤差行列を表す。
【
図16D】255nmのピッチを有する格子の誤差行列の要素のプロットを示し、半径とピッチとの比が
図16Aから
図16Cとは異なるピンホール格子の誤差行列を表す。
【
図17A】1414nmのピッチを有する格子の誤差行列の要素のプロットを示し、半径とピッチとの比が
図17Bから
図17Fとは異なるピンホール格子の誤差行列を表す。
【
図17B】1414nmのピッチを有する格子の誤差行列の要素のプロットを示し、半径とピッチとの比が
図17A及び
図17Cから
図17Fとは異なるピンホール格子の誤差行列を表す。
【
図17E】1414nmのピッチを有する格子の誤差行列の要素のプロットを示し、半径とピッチとの比が
図17Aから
図17D及び
図17Fとはとは異なるピンホール格子の誤差行列を表す。
【
図17F】1414nmのピッチを有する格子の誤差行列の要素のプロットを示し、半径とピッチとの比が
図17Aから
図17Eとは異なるピンホール格子の誤差行列を表す。
【
図19A】1414nmのピッチを有する格子の誤差行列の要素のプロットを示し、半径とピッチとの公称比が約0.4であるピンホール格子の誤差行列を表す。
【
図19B】1414nmのピッチを有する格子の誤差行列の要素のプロットを示し、半径とピッチとの比が公称比の0.9倍であるピンホール格子の誤差行列を表す。
【
図20A】投影システムの収差マップを決定する測定システムの第2のパターン付き領域の、
図20Bから
図20Eとは異なる幾何学的形状の回折格子の干渉ビームマップを示す。
【
図20B】投影システムの収差マップを決定する測定システムの第2のパターン付き領域の、
図20A及び
図20Cから
図20Eとは異なる幾何学的形状の回折格子の干渉ビームマップを示す。
【
図20D】投影システムの収差マップを決定する測定システムの第2のパターン付き領域の、
図20Aから
図20C及び
図20Eとは異なる幾何学的形状の回折格子の干渉ビームマップを示す。
【
図20E】投影システムの収差マップを決定する測定システムの第2のパターン付き領域の、
図20Aから
図20Dとは異なる幾何学的形状の回折格子の干渉ビームマップを示す。
【
図21A】
図21Bと共に、2つの異なるピンホール格子の幾何学的形状を概略的に示し、
図21Aは、隣接するアパーチャの中心間の距離が回折格子全体にわたって均一であるように分布する複数のアパーチャを含む。
【
図21B】
図21Aと共に、2つの異なるピンホール格子の幾何学的形状を概略的に示し、
図21Bは、円形貫通アパーチャの各々の中心が方形アレイの複数の位置のうち1つに近接しているがずれており、このずれの量が回折格子全体にわたって変動するように配置された複数のアパーチャを含む。
【
図22】
図21Bに示されている回折格子全体にわたる、隣接するアパーチャの中心間の距離の分布の一例を示す。
【
図23A】255nmの公称ピッチを有する格子の誤差行列の要素のプロットを示し、アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の公称距離との比が公称値の約0.4に等しく、
図23Bから
図23Cとは異なるローカルピッチ変動を有するピンホール格子の誤差行列を表す。
【
図23B】255nmの公称ピッチを有する格子の誤差行列の要素のプロットを示し、アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の公称距離との比が公称値の約0.4に等しく、
図23A及び
図23Cとは異なるローカルピッチ変動を有するピンホール格子の誤差行列を表す。
【
図23C】255nmの公称ピッチを有する格子の誤差行列の要素のプロットを示し、アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の公称距離との比が公称値の約0.4に等しく、
図23A及び
図23Bとは異なるローカルピッチ変動を有するピンホール格子の誤差行列を表す。
【
図23D】255nmの公称ピッチを有する格子の誤差行列の要素のプロットを示し、アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の公称距離との比が公称値の0.9(すなわち約0.36)に等しく、ローカルピッチ変動が公称ピッチの0.1倍であるピンホール格子の誤差行列を表す。
【
図24A】1414nmの公称ピッチを有する格子の誤差行列の要素のプロットを示し、アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の公称距離との比が公称値の約0.4に等しく、ローカルピッチ変動が存在しないピンホール格子の誤差行列を表す。
【
図24B】1414nmの公称ピッチを有する格子の誤差行列の要素のプロットを示し、アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の公称距離との比が公称値の0.9倍(すなわち約0.36の比)に等しく、ローカルピッチ変動が存在しないピンホール格子の誤差行列を表す。
【
図24C】1414nmの公称ピッチを有する格子の誤差行列の要素のプロットを示し、アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の公称距離との比が公称値の0.9倍(すなわち約0.36の比)に等しく、
図24Dとは異なるローカルピッチ変動を有するピンホール格子の誤差行列を表す。
【
図24D】1414nmの公称ピッチを有する格子の誤差行列の要素のプロットを示し、アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の公称距離との比が公称値の0.9倍(すなわち約0.36の比)に等しく、
図24Cとは異なるローカルピッチ変動を有するピンホール格子の誤差行列を表す。
【発明を実施するための形態】
【0081】
[00080]
図1は、放射源SO及びリソグラフィ装置LAを備えたリソグラフィシステムを示している。放射源SOは、EUV放射ビームBを生成し、このEUV放射ビームBをリソグラフィ装置LAに供給するように構成される。リソグラフィ装置LAは、照明システムILと、パターニングデバイスMA(例えばマスク)を支持するように構成された支持構造MTと、投影システムPSと、基板Wを支持するように構成された基板テーブルWTとを備える。
【0082】
[00081] 照明システムILは、EUV放射ビームBがパターニングデバイスMAに入射する前にEUV放射ビームBを調節するように構成される。そのため、照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11を備えることができる。ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11は共に、EUV放射ビームBに所望の断面形状と所望の強度分布とを与える。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11に加えて又はこれらの代わりに、他のミラー又はデバイスを備えることができる。
【0083】
[00082] このように調節された後、EUV放射ビームBはパターニングデバイスMAと相互作用する。この相互作用の結果、パターン付きEUV放射ビームB’が生成される。投影システムPSは、パターン付きEUV放射ビームB’を基板Wに投影するように構成される。この目的のため、投影システムPSは、基板テーブルWTにより保持された基板Wにパターン付きEUV放射ビームB’を投影するように構成された複数のミラー13、14を備えることができる。投影システムPSは、パターン付きEUV放射ビームB’に縮小係数を適用し、これによってパターニングデバイスMAにおける対応するフィーチャよりも小さいフィーチャの像を形成することができる。例えば、4又は8の縮小係数を適用することができる。投影システムPSは、
図1では2つのミラー13、14のみを有するものとして示されているが、投影システムPSは様々な数のミラー(例えば6個又は8個のミラー)を備えることができる。
【0084】
[00083] 基板Wは、前もって形成されたパターンを含むことができる。このような場合、リソグラフィ装置LAは、パターン付きEUV放射ビームB’により形成された像を、基板W上に前もって形成されたパターンと位置合わせする。
【0085】
[00084] 相対真空、すなわち大気圧を大きく下回る圧力の少量のガス(例えば水素)を、放射源SO、照明システムIL、及び/又は投影システムPS内に供給することができる。
【0086】
[00085] 放射源SOは、レーザ生成プラズマ(LPP:laser produced plasma)源、放電生成プラズマ(DPP:discharge produced plasma)源、自由電子レーザ(FEL:free electron laser)、又はEUV放射を生成できる他の任意の放射源とすればよい。
【0087】
[00086] 一般に、投影システムPSが有する光学転写機能は不均一である可能性があるので、基板Wに結合されるパターンに影響を及ぼし得る。非偏光放射では、このような影響は、投影システムPSから出射する放射の透過(アポダイゼーション)及び相対位相(収差)を瞳面内の位置の関数として記述する2つのスカラーマップによって、非常に良く記述することができる。透過マップ及び相対位相マップと呼ぶことができるこれらのスカラーマップは、基底関数の完全なセットの線形結合として表現できる。特に便利なセットは、単位円上に定義された直交多項式セットを形成するゼルニケ多項式である。各スカラーマップの決定は、そのような展開における係数を決定することを含み得る。ゼルニケ多項式は単位円上で直交するので、測定されたスカラーマップと各ゼルニケ多項式との内積を順番に計算し、これをそのゼルニケ多項式のノルムの2乗で除算することにより、測定されたスカラーマップからゼルニケ係数が得られる。以下では、特に明記しない限り、ゼルニケ係数に対する言及は、相対位相マップ(本明細書では収差マップとも呼ばれる)のゼルニケ係数を意味するものと理解される。代替的な実施形態では、他の基底関数セットが使用され得ることは認められよう。例えば、いくつかの実施形態は、例えば遮蔽アパーチャシステム(obscured aperture system)のためにタチアンゼルニケ多項式(Tatian Zernike polynomial)を使用できる。
【0088】
[00087] 波面収差マップは、投影システムPSの像面内のポイントに接近する光の波面の球状波面からのディストーションを表す(瞳面内の位置、あるいは、放射が投影システムPSの像面に接近する角度の関数として)。上記のように、この波面収差マップW(x,y)は、ゼルニケ多項式の線形結合として表現できる。
【0089】
【0090】
ここで、x及びyは瞳面内の座標であり、Zn(x,y)はn次のゼルニケ多項式であり、cnは係数である。以下では、ゼルニケ多項式及び係数を、一般的にノール指数(Noll index)と呼ばれる指数で示すことは認められよう。従って、Zn(x,y)はノール指数がnであるゼルニケ多項式であり、cnはノール指数がnである係数である。このため、このような展開において、ゼルニケ係数と呼ぶことができる係数cnのセットによって波面収差マップを特徴付けることができる。
【0091】
[00088] 有限数のゼルニケ次数のみが考慮されることは認められよう。位相マップの様々なゼルニケ係数は、投影システムPSによって生じた異なる形態の収差に関する情報を提供することができる。ノール指数が1であるゼルニケ係数を第1のゼルニケ係数と呼び、ノール指数が2であるゼルニケ係数を第2のゼルニケ係数と呼ぶ等とすればよい。
【0092】
[00089] 第1のゼルニケ係数は、測定された波面の平均値(ピストンと呼ぶことができる)に関連する。第1のゼルニケ係数は、投影システムPSの性能とは無関係であるので、本明細書に記載されている方法を用いて決定されない場合がある。第2のゼルニケ係数は、測定された波面のx方向の傾斜に関連する。x方向の波面の傾斜は、x方向における配置に相当する。第3のゼルニケ係数は、測定された波面のy方向の傾斜に関連する。y方向の波面の傾斜は、y方向における配置に相当する。第4のゼルニケ係数は、測定された波面のデフォーカスに関連する。第4のゼルニケ係数は、z方向における配置に相当する。更に高次のゼルニケ係数は、投影システムによって生じる他の形態の収差に関連する(例えば、非点収差、コマ収差、球面収差、及び他の効果)。
【0093】
[00090] 本明細書全体を通して、「収差」という用語は、完璧な球状波面からの全ての形態の波面のずれを含むことを意図するべきである。すなわち、「収差」という用語は、像の配置(例えば第2、第3、及び第4のゼルニケ係数)に関連し得る、及び/又は、ノール指数が5以上であるゼルニケ係数に関連するもの等、より高次の収差に関連し得る。更に、投影システムの収差マップに対する言及は、像の配置に起因したものを含めて、完璧な球状波面からの全ての形態の波面のずれを含み得る。
【0094】
[00091] 透過マップ及び相対位相マップは、フィールド及びシステムに依存する。すなわち、一般に、各投影システムPSは、各フィールドポイントで(すなわち、その像面内の各空間位置で)異なるゼルニケ展開を有する。
【0095】
[00092] 以下で詳述するように、投影システムPSの瞳面における相対位相を決定するには、投影システムPSの対物面(すなわちパターニングデバイスMAの面)から投影システムPSを介して放射を投影し、シヤリング干渉計を用いて、波面(すなわち同一位相を有するポイントの軌跡)を測定すればよい。シヤリング干渉計は、投影システムの像面(すなわち基板テーブルWT)における例えば2次元回折格子のような回折格子と、投影システムPSの瞳面と共役の面内で干渉パターンを検出するように配置された検出器と、を含み得る。
【0096】
[00093] 投影システムPSは、複数の光学要素(ミラー13、14を含む)を備える。すでに説明したように、
図1では投影システムPSは2つのみのミラー13、14を有するものとして示されているが、投影システムPSは異なる数のミラー(例えば6又は8のミラー)を含んでもよい。リソグラフィ装置LAは更に、収差(フィールド全体にわたる瞳面内の任意のタイプの位相変動)を補正するようにこれらの光学要素を調整するための調整手段PAを備える。これを達成するため、調整手段PAは、投影システムPS内の光学要素を1つ以上の異なるやり方で操作するように動作可能であり得る。投影システムは、光軸がz方向に延出している座標系を有し得る(このz軸の方向は投影システム内で光路に沿って、例えば各ミラー又は光学要素において変化することは認められよう)。調整手段PAは、1つ以上の光学要素を変位させること、1つ以上の光学要素を傾斜させること、及び/又は1つ以上の光学要素を変形させることのいずれかの組み合わせを実行するように動作可能であり得る。光学要素の変位は、任意の方向とすればよい(x、y、z、又はそれらの組み合わせ)。光学要素の傾斜は典型的に、x又はy方向の軸を中心とした回転による、光軸に垂直な面外のものであるが、非回転対称の光学要素ではz軸を中心とした回転を用いてもよい。光学要素の変形は、例えば、光学要素の側方に力を加えるアクチュエータを用いること、及び/又は光学要素の選択された領域を加熱する加熱要素を用いることによって実行され得る。一般に、投影システムPSを調整してアポダイゼーション(瞳面における透過の変動)を補正することは不可能であり得る。投影システムPSの透過マップは、リソグラフィ装置LAのマスクMAを設計する場合に使用され得る。
【0097】
[00094] いくつかの実施形態において、調整手段PAは、支持構造MT及び/又は基板テーブルWTを移動させるように動作可能であり得る。調整手段PAは、支持構造MT及び/又は基板テーブルWTを(x、y、z方向又はこれらの組み合わせのいずれかに)変位させるように、及び/又は(x又はy方向の軸を中心とした回転によって)傾斜させるように動作可能であり得る。
【0098】
[00095] リソグラフィ装置の一部を形成する投影システムPSは、定期的に較正プロセスを行うことができる。例えば、工場でリソグラフィ装置が製造される場合、初期較正プロセスを実行することによって、投影システムPSを形成する光学要素(例えばミラー)をセットアップできる。リソグラフィ装置が使用される予定の場所にリソグラフィ装置を設置した後、投影システムPSを再び較正すればよい。更に、一定の時間間隔で投影システムPSの較正を実行すればよい。例えば、通常の使用時に、2~3か月ごとに(例えば3か月に1度)投影システムPSを較正すればよい。
【0099】
[00096] 投影システムPSの較正は、投影システムPSに放射を通過させることと、これによって投影された放射を測定することと、を含み得る。投影放射の測定値を用いて、投影システムPSにより生じた投影放射の収差を決定することができる。投影システムPSによって生じた収差は、測定システムを用いて決定できる。決定された収差に応じて、投影システムPSによって生じた収差を補正するように、投影システムPSを形成する光学要素を調整すればよい。
【0100】
[00097]
図2は、投影システムPSによって生じた収差を決定するために使用され得る測定システム10の概略図である。測定システム10は、照明システムILと、測定パターニングデバイスMA’と、センサ装置21と、コントローラCNと、を含む。測定システム10は、リソグラフィ装置の一部を形成し得る。例えば、
図2に示されている照明システムIL及び投影システムPSは、
図1に示されているリソグラフィ装置の照明システムIL及び投影システムPSとすればよい。説明を容易にするため、リソグラフィ装置のこれ以外のコンポーネントは
図2に示されていない。
【0101】
[00098] 測定パターニングデバイスMA’は、照明システムILから放射を受光するように配置されている。センサ装置21は、投影システムPSから放射を受光するように配置されている。リソグラフィ装置の通常の使用中、
図2に示されている測定パターニングデバイスMA’及びセンサ装置21は、
図2に示されている位置とは異なる位置に配置され得る。例えば、リソグラフィ装置の通常の使用中、基板Wに転写されるパターンを形成するように構成されたパターニングデバイスMAは、照明システムILから放射を受光するように位置決めされ、基板Wは、投影システムPSから放射を受光するように位置決めされ得る(例えば
図1に示されているように)。測定パターニングデバイスMA’及びセンサ装置21は、投影システムPSによって生じた収差を決定するため、
図2に示されている位置へ移動させることができる。測定パターニングデバイスMA’は、
図1に示されている支持構造のような支持構造MTによって支持され得る。センサ装置21は、
図1に示されている基板テーブルWTのような基板テーブルによって支持され得る。あるいは、センサ装置21は、センサテーブルWTとは別個とすることができる測定テーブル(図示せず)によって支持してもよい。
【0102】
[00099]
図3A及び
図3Bに、測定パターニングデバイスMA’及びセンサ装置21が更に詳しく示されている。
図2、
図3A、及び
図3Bでは、一貫してデカルト座標が用いられる。
図3Aはx-y面内の測定パターニングデバイスMA’の概略図であり、
図3Bはx-y面内のセンサ装置21の概略図である。
【0103】
[000100] 測定パターニングデバイスMA’は複数のパターン付き領域15a~15cを含む。
図2及び
図3Aに示されている実施形態では、測定パターニングデバイスMA’は反射パターニングデバイスMA’である。パターン付き領域15a~15cの各々は反射回折格子を含む。測定パターニングデバイスMA’のパターン付き領域15a~15cに入射する放射は、これによって少なくとも部分的に散乱され、投影システムPSによって受光される。これに対して、測定パターニングデバイスMA’の残り部分に入射する放射は、反射されず、投影システムPSの方へ散乱されることもない(例えば、測定パターニングデバイスMA’によって吸収され得る)。
【0104】
[000101] 照明システムILは、測定パターニングデバイスMA’を放射で照明する。
図2に示されていないが、照明システムILは放射源SOから放射を受光し、測定パターニングデバイスMA’を照明するように放射を調節することができる。例えば照明システムILは、所望の空間及び角度分布を有する放射を与えるように放射を調節できる。
図2に示されている実施形態では、照明システムILは別個の測定ビーム17a~17cを形成するように構成されている。各測定ビーム17a~17cは、測定パターニングデバイスMA’の各パターン付き領域15a~15cを照明する。
【0105】
[000102] 投影システムPLによって生じた収差の決定を実行するため、測定パターニングデバイスMA’を別個の測定ビーム17a~17cで照明するために照明システムILのモードを変化させることができる。例えば、リソグラフィ装置の通常動作の間、照明システムILは、パターニングデバイスMAを放射スリットで照明するように構成され得る。しかしながら、投影システムPLによって生じた収差の決定を実行するため、照明システムILのモードを変化させて、照明システムILが別個の測定ビーム17a~17cを形成するように構成できる。いくつかの実施形態では、異なるパターン付き領域15a~15cを異なる時点で照明することができる。例えば、パターン付き領域15a~15cの第1のサブセットを第1の時点で照明して測定ビーム17a~17cの第1のサブセットを形成し、パターン付き領域15a~15cの第2のサブセットを第2の時点で照明して測定ビーム17a~17cの第2のサブセットを形成すればよい。
【0106】
[000103] 他の実施形態では、投影システムPSによって生じた収差の決定を実行するため、照明システムILのモードを不変としてもよい。例えば、照明システムILは、測定パターニングデバイスMA’を放射スリット(例えば基板の露光中に用いられる照明エリアと実質的に一致する)で照明するように構成され得る。次いで、測定パターニングデバイスMA’によって別個の測定ビーム17a~17cを形成することができる。これは、パターン付き領域15a~15cのみが放射を投影システムPSの方へ反射又は散乱させるからである。
【0107】
[000104] 図面において、デカルト座標系は投影システムPSを通して保存されるものとして示されている。しかしながら、いくつかの実施形態では、投影システムPSの特性によって座標系の変換が生じ得る。例えば投影システムPSは、測定パターニングデバイスMA’に対して拡大、回転、及び/又は鏡映された測定パターニングデバイスMA’の像を形成し得る。いくつかの実施形態において、投影システムPSは、測定パターニングデバイスMA’の像を、z軸を中心として約180度回転させ得る。そのような実施形態では、
図2に示されている第1の測定ビーム17a及び第3の測定ビーム17cの相対的な位置が交換され得る。他の実施形態では、x-y面内に存在し得る軸を中心として像が鏡映され得る。例えば、x軸又はy軸を中心として像が鏡映され得る。
【0108】
[000105] 投影システムPSが測定パターニングデバイスMA’の像を回転させる及び/又は投影システムPSによって像が鏡映される実施形態では、投影システムは座標系を変換すると考えられる。すなわち、本明細書で言及される座標系は、投影システムPSが投影する像に対して定義され、この像の回転及び/又は鏡映は、座標系の対応する回転及び/又は鏡映を引き起こす。説明を容易にするため、座標系は、投影システムPSによって保存されるものとして図示されている。しかしながら、いくつかの実施形態では、座標系は投影システムPSによって変換され得る。
【0109】
[000106] パターン付き領域15a~15cは、測定ビーム17a~17cを変更する。具体的に述べると、パターン付き領域15a~15cは測定ビーム17a~17cの空間変調を引き起こし、測定ビーム17a~17cの回折を引き起こす。
図3Bに示されている実施形態では、パターン付き領域15a~15cの各々は2つの別個の部分を含む。例えば、第1のパターン付き領域15aは第1の部分15a’及び第2の部分15a’’を含む。第1の部分15a’はu方向に対して平行に位置合わせされた回折格子を含み、第2の部分15a’’はv方向に対して平行に位置合わせされた回折格子を含む。u及びv方向は
図3Aに示されている。u及びv方向は双方とも、x及びy方向の双方に対して約45度に位置合わせされ、相互に垂直に位置合わせされている。
図3Aに示されている第2のパターン付き領域15b及び第3のパターン付き領域15cは第1のパターン付き領域15aと同一であり、それぞれ、回折格子が相互に垂直に位置合わせされた第1及び第2の部分を含む。
【0110】
[000107] パターン付き領域15a~15cの第1及び第2の部分は、異なる時点で測定ビーム17a~17cによって照明され得る。例えば、パターン付き領域15a~15cの各々の第1の部分を第1の時点で測定ビーム17a~17によって照明すればよい。第2の時点で、パターン付き領域15a~15cの各々の第2の部分を測定ビーム17a~17によって照明すればよい。上述したように、いくつかの実施形態において、異なるパターン付き領域15a~15cは異なる時点で照明され得る。例えば、パターン付き領域15a~15cの第1のサブセットの第1の部分を第1の時点で照明し、パターン付き領域15a~15cの第2のサブセットの第1の部分を第2の時点で照明すればよい。パターン付き領域の第1及び第2のサブセットの第2の部分は、同一又は異なる時点で照明され得る。一般に、パターン付き領域15a~15cの異なる部分を照明する任意のスケジュールを用いることができる。
【0111】
[000108] 変更された測定ビーム17a~17cは、投影システムPSによって受光される。投影システムPSは、センサ装置21上にパターン付き領域15a~15cの像を形成する。センサ装置21は、複数の回折格子19a~19c及び放射検出器23を備える。回折格子19a~19cは、投影システムPLから出力される各変更測定ビーム17a~17cを各回折格子19a~19cが受光するように配置されている。回折格子19a~19cに入射する変更測定ビーム17a~17cは、回折格子19a~19cによって更に変更される。回折格子19a~19cで透過される変更測定ビームは、放射検出器23に入射する。
【0112】
[000109] 放射検出器23は、放射検出器23に入射する放射の空間強度プロファイルを検出するように構成されている。放射検出器23は、例えば、個別の検出器要素又はセンシング要素のアレイを含み得る。例えば放射検出器23は、例えばCMOS(complementary metal-oxide-semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)センサアレイ等の能動画素センサを含み得る。あるいは放射検出器23は、CCD(charge-coupled device:電荷結合素子)センサアレイを含み得る。回折格子19a~19cと、変更測定ビーム17a~17cを受光する放射センサ23の部分とが、検出器領域25a~25cを形成する。例えば、第1の回折格子19aと第1の測定ビーム17aを受光する放射センサ23の第1の部分とが、共に第1の検出器領域25aを形成する。(図示のような)各検出器領域25a~25cにおいて、所与の測定ビーム17a~17cの測定を実行することができる。上述したように、いくつかの実施形態では、変更測定ビーム17a~17c及び座標系の相対的な位置決めは投影システムPSによって変換され得る。
【0113】
[000110] パターン付き領域15a~15c及び検出器領域25a~25cの回折格子19a~19cで発生する測定ビーム17a~17cの変更により、放射検出器23上に干渉パターンが形成される。干渉パターンは、測定ビームの位相の導関数に関連し、投影システムPSによって生じた収差に依存する。従って、干渉パターンを用いて、投影システムPSによって生じた収差を決定することができる。
【0114】
[000111] 一般に、検出器領域25a~25cの各々の回折格子19a~19cは2次元透過性回折格子を含む。
図3Bに示されている実施形態では、検出器領域25a~25cの各々は、チェッカーボードの形態に構成された回折格子19a~19cを含む。以下で更に記載するように、本発明の実施形態は、検出器領域25a~25cの各々がチェッカーボードの形態に構成されていない2次元透過性回折格子19a~19cを含む機構に特に適用される。
【0115】
[000112] パターン付き領域15a~15cの第1の部分の照明は、第1の方向の収差に関連した情報を提供することができ、パターン付き領域15a~15cの第2の部分の照明は、第2の方向の収差に関連した情報を提供することができる。
【0116】
[000113] いくつかの実施形態において、測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21は、2つの垂直な方向で順次スキャン及び/又はステップされる。例えば、測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21は、u方向及びv方向で相互にステップされ得る。パターン付き領域15a~15cの第2の部分15a’’~15c’’を照明しながら測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21をu方向にステップし、パターン付き領域15a~15cの第1の部分15a’~15c’を照明しながら測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21をv方向にステップすることができる。すなわち、測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21は、照明されている回折格子の位置合わせに対して垂直な方向にステップすればよい。
【0117】
[000114] 測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21は、回折格子の格子周期の分数(fraction)と一致する距離ずつステップすることができる。ステッピング方向の波面に関する情報を導出するため、異なるステッピング位置で行われた測定を解析することができる。例えば、測定信号(位相ステッピング信号と呼ぶことができる)の第1高調波の位相は、ステッピング方向の波面の導関数に関する情報を含み得る。従って、測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21をu方向及びv方向(相互に垂直である)の双方にステップすると、2つの垂直な方向で波面に関する情報を導出することができ(特にこれは、2つの垂直な方向の各々で波面の導関数に関する情報を与える)、これにより完全な波面を再構成することが可能となる。
【0118】
[000115] (上述したように)照明されている回折格子の位置合わせに対して垂直な方向で測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21のステップを行うことに加えて、測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21を相互にスキャンしてもよい。測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21のスキャンは、照明されている回折格子の位置合わせに対して平行な方向に実行され得る。例えば、パターン付き領域15a~15cの第1の部分15a’~15c’を照明しながら測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21をu方向にスキャンし、パターン付き領域15a~15cの第2の部分15a’’~15c’’を照明しながら測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21をv方向にスキャンすることができる。照明されている回折格子の位置合わせに対して平行な方向に測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21をスキャンすると、回折格子全体で測定を平均化することができ、これにより、スキャン方向における回折格子の変動に対処する(account for)。測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21のスキャンは、上述した測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21のステップとは異なる時点で実行され得る。
【0119】
[000116] 投影システムPSによって生じた収差を決定するため、多種多様な構成のパターン付き領域15a~15c及び検出器領域25a~25cを使用できることは認められよう。パターン付き領域15a~15c及び/又は検出器領域25a~25cは回折格子を含み得る。いくつかの実施形態において、パターン付き領域15a~15c及び/又は検出器領域25a~25cは、回折格子以外のコンポーネントを含み得る。例えばいくつかの実施形態において、パターン付き領域15a~15c及び/又は検出器領域25a~25cは、測定ビーム17a~17cの少なくとも一部が通過できる単一のスリット又はピンホール開口を含み得る。一般に、パターン付き領域及び/又は検出器領域は、測定ビームを変更するように機能する任意の構成を含み得る。
【0120】
[000117] コントローラCNは、センサ装置21で行われた測定値を受信し、この測定値から、投影システムPSによって生じた収差を決定する。コントローラは、測定システム10の1つ以上のコンポーネントを制御するように構成され得る。例えばコントローラCNは、センサ装置21及び/又は測定パターニングデバイスMA’を相互に対して移動させるように動作可能である位置決め装置PWを制御できる。コントローラは、投影システムPSのコンポーネントを調整するための調整手段PAを制御できる。例えば調整手段PAは、投影システムPSによって生じ、コントローラCNによって決定された収差を補正するように、投影システムPSの光学要素を調整することができる。
【0121】
[000118] いくつかの実施形態において、コントローラCNは、支持構造MT及び/又は基板テーブルWTを調整するための調整手段PAを制御するように動作可能であり得る。例えば調整手段PAは、パターニングデバイスMA及び/又は基板Wの配置誤差によって生じた(更に、コントローラCNによって決定された)収差を補正するように、支持構造MT及び/又は基板テーブルWTを調整することができる。
【0122】
[000119] 収差(投影システムPSによって、又はパターニングデバイスMAもしくは基板Wの配置誤差によって生じ得る)の決定は、ゼルニケ係数を得るため、センサ装置21が実行した測定をゼルニケ多項式にフィッティングすることを含み得る。異なるゼルニケ係数は、投影システムPSによって生じた異なる形態の収差に関する情報を提供することができる。ゼルニケ係数は、x方向及び/又はy方向における様々な位置で独立して決定され得る。例えば
図2、
図3A、及び
図3Bに示されている実施形態では、各測定ビーム17a~17cについてゼルニケ係数を決定できる。
【0123】
[000120] いくつかの実施形態において、測定パターニングデバイスMA’は4つ以上のパターン付き領域を含み、センサ装置21は4つ以上の検出器領域を含み、4つ以上の測定ビームを形成することができる。このため、より多くの位置でゼルニケ係数を決定できる。いくつかの実施形態において、パターン付き領域及び検出器領域は、x方向及びy方向の双方で様々な位置に分布させることができる。これにより、x方向及びy方向の双方において複数の分離した位置でゼルニケ係数を決定できる。
【0124】
[000121]
図2、
図3A、及び
図3Bに示されている実施形態では、測定パターニングデバイスMA’は3つのパターン付き領域15a~15cを含み、センサ装置21は3つの検出器領域25a~25cを含むが、他の実施形態では、測定パターニングデバイスMA’は3つよりも多いか又は少ないパターン付き領域15a~15cを含み、及び/又は、センサ装置21は3つよりも多いか又は少ない検出器領域25a~25cを含み得る。
【0125】
[000122] 次に、
図4を参照して、投影システムPSによって生じた収差を決定するための方法を説明する。
【0126】
[000123] 一般に、測定パターニングデバイスMA’は少なくとも1つの第1のパターン付き領域15a~15cを含み、センサ装置21は少なくとも1つの第2のパターン付き領域19a~19cを含む。
【0127】
[000124]
図4は、投影システムPSによって生じた収差を決定するために使用され得る測定システム30の概略図である。測定システム30は、
図2に示されている測定システム10と同一であり得るが、異なる数の第1のパターン付き領域(測定パターニングデバイスMA’上)及び第2のパターン付き領域(センサ装置21内)を有し得る。従って、
図4に示されている測定システム30は、上述した
図2に示されている測定システム10の任意の特徴を含むことができ、以下ではそれらの特徴について詳しく記載しない。
【0128】
[000125]
図4では、測定パターニングデバイスMA’上に1つだけの第1のパターン付き領域31が提供され、センサ装置21内に1つだけの第2のパターン付き領域32が提供されている。
【0129】
[000126] 測定パターニングデバイスMA’は、照明システムILからの放射33で照射される。理解を容易にするため、
図4では、単一のライン(例えば入射放射ビームの主光線のような単一の光線を表し得る)のみが示されている。しかしながら、放射33は、測定パターニングデバイスMA’の第1のパターン付き領域31に入射する、ある角度範囲を含むことは認められよう。すなわち、測定パターニングデバイスMA’の第1のパターン付き領域31上の各ポイントは、円錐形の光によって照明され得る。一般に、各ポイントは実質的に同じ角度範囲によって照明され、これは、照明システムILの瞳面(図示せず)内の放射の強度によって特徴付けられる。
【0130】
[000127] 第1のパターン付き領域31は、放射33を受光すると共に複数の第1の回折ビーム34、35、36を形成するように配置されている。中央の第1の回折ビーム35は第1のパターン付き領域31の0次回折ビームに相当し、他の2つの第1の回折ビーム34、36は第1のパターン付き領域31の±1次の回折ビームに相当する。また、一般に、もっと高次の回折ビームも存在することは認められよう。ここでも、理解を容易にするため、
図4には3つのみの第1の回折ビーム34、35、36が示されている。
【0131】
[000128] また、入来する放射33は、第1のパターン付き領域31上のポイントに集束する円錐形の放射を含むので、第1の回折ビーム34、35、36の各々も、第1のパターン付き領域31上のそのポイントから発散する円錐形の放射を含むことは認められよう。
【0132】
[000129] 第1の回折ビーム34、35、36の生成を実現するため、第1のパターン付き領域31は回折格子の形態とすることができる。例えば、第1のパターン付き領域31は概ね、
図3Aに示されているパターン付き領域15aの形態とすればよい。具体的には、第1のパターン付き領域31の少なくとも一部を、
図3Aに示されているパターン付き領域15aの第1の部分15a’の形態、すなわち、u方向に対して平行に位置合わせされた回折格子とすればよい(
図4はz-v面内で示されていることに留意するべきである)。従って、第1の回折ビーム34~36は、v方向であるシヤリング方向で分離されている。
【0133】
[000130] 第1の回折ビーム34~36は、以下で説明するように、少なくとも部分的に投影システムPSで捕捉される。第1の回折ビーム34~36のうちどのくらいが投影システムPSで捕捉されるかは、照明システムILからの入射放射33の瞳充填、第1の回折ビーム34~36の角度分離(これは第1のパターン付き領域31のピッチ及び放射33の波長に依存する)、並びに、投影システムPSの開口数に依存する。
【0134】
[000131] 測定システム30は、0次回折ビームに相当する第1の回折ビーム35が、投影システムPSの瞳面37の円形領域によって表される投影システムPSの開口数を実質的に充填するように、かつ、±1次回折ビームに相当する第1の回折ビーム34、36が、0次回折ビームに対応する第1の回折ビーム35と著しく重なるように、配置することができる。このような配置により、0次回折ビームに相当する第1の回折ビーム35の実質的に全て、及び、±1次回折ビームに相当する第1の回折ビーム34、36のほとんどが、投影システムPSによって捕捉されてセンサ装置21上へ投影される。(更に、このような配置により、第1のパターン付き領域31によって発生した複数の回折ビームの少なくとも一部がセンサ装置21上へ投影される)。
【0135】
[000132] 第1のパターン付き領域31の役割は、以下で述べるように、空間コヒーレンスを導入することである。
【0136】
[000133] 一般に、測定パターニングデバイスMA’の同一ポイントに異なる入射角度で入射する照明システムILからの放射33の2つの光線は、コヒーレントでない。第1のパターン付き領域31は、放射33を受光し、複数の第1の回折ビーム34、35、36を形成することにより、入射放射円錐33の複数のコピーを形成すると考えることができる(これらのコピーは一般に、異なる位相と強度を有する)。これらのコピーすなわち第1の回折ビーム34、35、36のいずれか1つ内で、測定パターニングデバイスMA’上の同一ポイントから生じるが散乱角度が異なる2つの放射光線は、(照明システムILの特性のため)コヒーレントでない。しかしながら、第1の回折ビーム34、35、36のいずれか1つ内の所与の放射光線に対して、他の第1の回折ビーム34、35、36の各々には、その所与の光線と空間的にコヒーレントである対応する放射光線が存在する。例えば、第1の回折ビーム34、35、36の各々の主光線(入射放射33の主光線に対応する)はコヒーレントであり、組み合わせた場合に振幅レベルで干渉し得る。
【0137】
[000134] このコヒーレンスは、測定システム30によって、投影システムPSの収差マップを決定するために利用される。
【0138】
[000135] 投影システムPSは、(投影システムの開口数によって捕捉された)第1の回折ビーム34、35、36の一部をセンサ装置21上に投影する。
【0139】
[000136]
図4において、センサ装置21は単一の第2のパターニング領域32を含む。(
図5Aから
図5Cを参照して)以下で詳述するように、第2のパターン付き領域32は、投影システムPSからこれらの第1の回折ビーム34~36を受光すると共に、第1の回折ビームの各々から複数の第2の回折ビームを形成するように配置されている。これを達成するため、第2のパターニング領域32は2次元透過性回折格子を含む。
図4において、第2のパターニング領域32で透過される全ての放射は単一の矢印38で表されている。この放射38は、放射検出器23の検出器領域39で受光され、収差マップを決定するために用いられる。
【0140】
[000137] パターニング領域32に入射する第1の回折ビーム34~36の各々は、回折して複数の第2の回折ビームを形成する。第2のパターニング領域32は2次元回折格子を含むので、入射する各第1の回折ビームから、第2の回折ビームの2次元アレイが生成される(これらの第2の回折ビームの主光線は、シヤリング方向(v方向)及びこれに垂直な方向(u方向)の双方で分離されている)。以下では、シヤリング方向(v方向)のn次の回折次数と非シヤリング方向(u方向)のm次の回折次数を、第2のパターン付き領域32の(n,m)次の回折次数と呼ぶ。以下では、非シヤリング方向(u方向)における第2の回折ビームの次数が重要でない場合、第2のパターン付き領域32の(n,m)次の回折次数を、単にn次の第2の回折ビームと呼ぶことがある。
【0141】
[000138]
図5Aから
図5Cは、第1の回折ビーム34~36の各々によって生成された第2の回折ビームのセットを示す。
図5Aは、第1のパターン付き領域31の0次回折ビームに相当する第1の回折ビーム35によって生成された第2の回折ビーム35a~35eのセットを示す。
図5Bは、第1のパターン付き領域31の-1次回折ビームに相当する第1の回折ビーム36によって生成された第2の回折ビーム36a~36eのセットを示す。
図5Cは、第1のパターン付き領域31の+1次回折ビームに相当する第1の回折ビーム34によって生成された第2の回折ビーム34a~34eのセットを示す。
【0142】
[000139]
図5Aにおいて、第2の回折ビーム35aは、(第2のパターン付き領域32のシヤリング方向の)0次回折ビームに相当し、第2の回折ビーム35b、35cは±1次の回折ビームに相当し、第2の回折ビーム35d、35eは±2次の回折ビームに相当する。
図5Aから
図5Cはv-z面内で示されており、図示されている第2の回折ビームは、例えば、非シヤリング方向(すなわちu方向)における第2のパターン付き領域32の0次回折ビームに相当し得ることは認められよう。また、
図5Aから
図5Cの紙面内へ又は紙面外へ進む非シヤリング方向の更に高次の回折ビームを表すこれらの第2の回折ビームの複数のコピーが存在し得ることは認められよう。
【0143】
[000140]
図5Bにおいて、第2の回折ビーム36aは、(第2のパターン付き領域32のシヤリング方向の)0次回折ビームに相当し、第2の回折ビーム36b、36cは±1次の回折ビームに相当し、第2の回折ビーム36d、36eは±2次の回折ビームに相当する。
【0144】
[000141]
図5Cにおいて、第2の回折ビーム34aは、(第2のパターン付き領域32のシヤリング方向の)0次回折ビームに相当し、第2の回折ビーム34b、34cは±1次の回折ビームに相当し、第2の回折ビーム34d、34eは±2次の回折ビームに相当する。
【0145】
[000142]
図5Aから
図5Cから、第2の回折ビームのいくつかが相互に空間的に重なっていることが分かる。例えば、第1のパターン付き領域31の0次回折ビーム35から生じ、第2のパターン付き領域32の-1次回折ビームに相当する第2の回折ビーム35bは、第1のパターン付き領域31の-1次回折ビーム36から生じ、第2のパターン付き領域32の0次回折ビームに相当する第2の回折ビーム36aと重なっている。
図4及び
図5Aから
図5Cにおける全てのラインは、照明システムILからの単一の入力光線33から生じた単一の放射光線を表すと考えられる。従って、上述したように、これらのラインは空間的にコヒーレントな光線を表し、これらの光線は、放射検出器23で空間的に重なった場合に干渉パターンを生成する。更に、この干渉は、投影システムPSの瞳面37の異なる部分を通過した(シヤリング方向に分離している)光線間のものである。従って、単一の入力光線33から生じた放射の干渉は、瞳面の2つの異なる部分間の位相差に依存する。
【0146】
[000143] 放射検出器23における第2の回折ビームのこの空間的重なり及び空間コヒーレンスを達成するには、所与の第1の回折ビームから生じた異なる第2の回折ビーム間の(シヤリング方向の)角度分離が、第2のパターン付き領域32上に集束する際の異なる第1の回折ビーム間の(シヤリング方向の)角度分離と同じになるように、第1及び第2のパターン付き領域31、32を整合する。放射検出器23における第2の回折ビームのこの空間的重なり及び空間コヒーレンスは、第1及び第2のパターン付き領域31、32のシヤリング方向のピッチを整合することによって達成される。第1及び第2のパターン付き領域31、32のシヤリング方向のピッチのこのような整合は、投影システムPSによって適用される縮小係数を考慮に入れることは認められよう。本明細書で用いられる場合、2次元回折格子の特定方向のピッチは、以下のように規定される。
【0147】
[000144] 1次元回折格子は一連のラインを含み、これらのラインは、これらのラインに対して垂直な方向における(反射率又は透過率の)反復パターンから形成されることは認められよう。これらのラインに対して垂直な方向で、反復パターンが形成される最小の非反復部分を単位セルと呼び、この単位セルの長さを1次元回折格子のピッチと呼ぶ。一般に、このような1次元回折格子の回折パターンは、入射放射ビームを回折して、角度的に離隔した(が、空間的に重なり得る)回折ビームの1次元アレイを形成するようになっている。第1のパターン付き領域31は、角度的に離隔した第1の回折ビーム34~36のそのような1次元アレイを形成する。これらのビームはシヤリング方向にずれている(角度的に離隔している)。
【0148】
[000145] 2次元回折格子は、反射率又は透過率の2次元反復パターンを含むことは認められよう。この反復パターンが形成される最小の非反復部分を単位セルと呼ぶことができる。単位セルは方形とすることができ、このような2次元回折格子の基本ピッチは、方形単位セルの長さとして規定できる。一般に、このような2次元回折格子の回折パターンは、入射放射ビームを回折して、角度的に離隔した(が、空間的に重なり得る)回折ビームの2次元アレイを形成するようになっている。回折ビームのこの2次元(方形)アレイの軸は、単位セルの辺に対して平行である。これら2つの方向における隣接する回折ビーム間の角度分離は、放射の波長と格子のピッチとの比によって与えられる。従って、ピッチが小さくなればなるほど、隣接する回折ビーム間の角度分離は大きくなる。
【0149】
[000146] いくつかの実施形態において、2次元の第2のパターン付き領域32の単位セルの軸は、第1のパターン付き領域31によって規定されるシヤリング方向及び非シヤリング方向に対して非ゼロの角度に配置することができる。例えば、2次元の第2のパターン付き領域32の単位セルの軸は、第1のパターン付き領域31によって規定されるシヤリング方向及び非シヤリング方向に対して45度の角度に配置され得る。前述のように、波面の測定を可能とする放射検出器23における第2の回折ビームの空間的重なり及び空間コヒーレンスを達成するには、所与の第1の回折ビームから生じた異なる第2の回折ビーム間の(シヤリング方向の)角度分離が、第2のパターン付き領域32上に集束する際の異なる第1の回折ビーム間の(シヤリング方向の)角度分離と同じであることを保証する。2次元の第2のパターン付き領域32の単位セルの軸がシヤリング方向及び非シヤリング方向に対して非ゼロの角度(例えば45度)に配置される構成では、以下のように擬似単位セル及び擬似ピッチを規定することが有用であり得る。擬似単位セルは、回折格子の反復パターンが形成される最小の非反復方形として規定され、このセルの辺が(第1のパターン付き領域31によって規定されるシヤリング方向及び非シヤリング方向に対して平行であるような向きを有する。擬似ピッチは、方形擬似単位セルの長さとして規定され得る。これを、シヤリング方向の2次元回折格子のピッチと呼ぶことができる。第1のパターン付き領域31のピッチに対して(このピッチの整数倍又は分数に)整合させなければならないのは、この擬似ピッチである。
【0150】
[000147] 回折格子の回折パターンは、角度的に離隔した(が、空間的に重なり得る)擬似回折ビームの2次元アレイを形成すると考えることができる。擬似回折ビームのこの2次元(方形)アレイの軸は、擬似単位セルの辺に対して平行である。この方形は、単位セル(回折格子の反復パターンが形成される任意の向きの最小の方形として規定される)でないので、擬似ピッチはピッチ(又は基本ピッチ)よりも大きい。従って、(単位セルの辺に対して平行な方向での)回折パターンの隣接する回折ビーム間よりも、(擬似単位セルの辺に対して平行な方向での)回折パターンの隣接する擬似回折ビーム間の分離の方が小さい。これは以下のように理解することができる。擬似回折ビームのいくつかは回折パターンの回折ビームに対応するが、他の擬似回折ビームは非物質的であり、回折格子によって生成された回折ビームを表さない(また、真の単位セルよりも大きい擬似単位セルの使用によってのみ生じる)。
【0151】
[000148] 投影システムPSによって適用される縮小(又は拡大)率を考慮に入れると、シヤリング方向の第2のパターン付き領域32のピッチはシヤリング方向の第1のパターン付き領域31のピッチの整数倍でなければならないか、又は、シヤリング方向の第1のパターン付き領域31のピッチはシヤリング方向の第2のパターン付き領域32のピッチの整数倍でなければならない。
図5Aから
図5Cに示されている例では、(縮小率を考慮して)シヤリング方向の第1及び第2のパターン付き領域31、32のピッチは実質的に等しい。
【0152】
[000149]
図5Aから
図5Cから分かるように、放射検出器23の検出器領域39上の各ポイントは一般に、コヒーレントに加算されたいくつかの寄与分を受光する。例えば、第1のパターン付き領域31の0次回折ビーム35から生じる、第2のパターン付き領域32の-1次回折ビームに相当する第2の回折ビーム35bを受光する検出器領域39上のポイントは、(a)第1のパターン付き領域31の-1次回折ビーム36から生じる、第2のパターン付き領域32の0次回折ビームに相当する第2の回折ビーム36a、及び、(b)第1のパターン付き領域31の+1次回折ビーム34から生じる、第2のパターン付き領域32の-2次回折ビームに相当する第2の回折ビーム34dの双方と重なる。第1のパターン付き領域31の更に高次の回折ビームを考慮する場合は、検出器領域39上の各ポイント(例えば、センシング要素の2次元アレイ内の対応する画素)で測定される放射の強度を決定するために、検出器領域39のその部分で更に多くのビームを加算しなければならないことは認められよう。
【0153】
[000150] 一般に、検出器領域39の各部分で受光される放射に対して、複数の異なる第2の回折ビームが寄与する。このようなコヒーレント和からの放射の強度は、以下によって与えられる。
I=DC+Σpairs{i}γicos(ΔΦi) (2)
ここで、DCは定数項(異なる回折ビームのインコヒーレント和と同等である)であり、和は様々な第2の回折ビームの全てのペアに対するものであり、γiは第2の回折ビームのペアの干渉強度であり、ΔΦiは第2の回折ビームのペア間の位相差である。
【0154】
[000151] 第2の回折ビームのペア間の位相差ΔΦiは、2つの寄与分に依存する。(a)第1の寄与分は、それらのビームが生じる投影システムPSの瞳面37の異なる部分に関連し、(b)第2の寄与分は、それらのビームが生じる第1及び第2のパターン付き領域31、32の各々の単位セル内の位置に関連する。
【0155】
[000152] これらの寄与分のうち第1のものは、異なるコヒーレント放射ビームが投影システムPSの異なる部分を通過し、従って、決定することが望まれる収差に関連するという事実から生じると理解することができる(実際、それらは、シヤリング方向に分離した収差マップ内の2つのポイント間の差に関連する)。
【0156】
[000153] これらの寄与分のうち第2のものは、回折格子に入射する単一の光線から生じる複数の放射光線の相対位相が、その格子の単位セルのどの部分に光線が入射したかに依存するという事実から生じると理解することができる。従ってこれは、収差に関連する情報を含まない。上述のように、いくつかの実施形態において、測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21は、シヤリング方向に順次スキャン及び/又はステップされる。これにより、放射検出器23によって受光される干渉放射ビームの全てのペア間の位相差が変化する。測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21は、第1及び第2のパターン付き領域31、32の(シヤリング方向の)ピッチの分数と同等の量だけシヤリング方向に順次ステップされるので、一般に、第2の回折ビームのペア間の位相差は全て変化する。もしも、測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21が、第1及び第2のパターン付き領域31、32の(シヤリング方向の)ピッチの整数倍と同等の量だけシヤリング方向にステップされたら、第2の回折ビームのペア間の位相差は同じままである。従って、測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21がシヤリング方向に順次スキャン及び/又はステップされると、放射検出器23の各部分が受ける強度は振動する。放射検出器23によって測定されるこの振動信号(位相ステッピング信号と呼ぶことができる)の第1の高調波は、隣接する第1の回折ビーム34~36、すなわち次数が±1異なる第1の回折ビームから生じる方程式(1)に対する寄与分に依存する。異なる量ずつ次数が異なる第1の回折ビームから生じる寄与分は、このような位相ステッピング技法のため、放射検出器23によって決定される信号の更に高次の高調波に寄与する。
【0157】
[000154] 例えば、上記で検討した3つの重なる第2の回折ビーム(35b、36a、及び34d)のうち、位相ステッピング信号の第1の高調波に寄与するのは、これらの回折ビームの3つの可能なペアのうち2つのみである。すなわち、(a)第2の回折ビーム35bと36a(第1のパターン付き領域31の0次回折ビーム35と-1次回折ビーム36からそれぞれ生じる)、及び、(b)第2の回折ビーム35aと34d(第1のパターン付き領域31の0次回折ビーム35及び+1次回折ビーム34からそれぞれ生じる)である。
【0158】
[000155] 第2の回折ビームの各ペアによって、位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する、方程式(2)に示される形態の干渉項、すなわち以下の形態の干渉項が得られる。
γcos(2π/p・v+ΔW) (3)
ここで、γは干渉項の振幅であり、pは第1及び第2のパターン付き領域31、32の(シヤリング方向の)ピッチであり、vは第1及び第2のパターン付き領域31、32のシヤリング方向の相対位置をパラメータ化し、ΔWは投影システムPSの瞳面内の2つの位置における収差マップの値間の差であり、これら2つの位置は、2つの第2の回折ビームが生じる位置に対応する。干渉項の振幅γは、以下で更に説明するように、2つの第2の回折ビームの複合散乱効率の積に比例する。位相ステッピング信号の第1高調波の周波数は、第1及び第2のパターン付き領域31、32のシヤリング方向のピッチpの逆数によって与えられる。位相ステッピング信号の位相は、ΔW(投影システムPSの瞳面内の2つの位置における収差マップの値間の差であり、これら2つの位置は2つの第2の回折ビームが生じる位置に対応する)によって与えられる。
【0159】
[000156] 第2の回折ビームのペアの干渉強度γiは、以下で説明するように、それら2つの第2の回折ビームの複合散乱効率の積に比例する。
【0160】
[000157] 一般に、回折格子によって生成される回折ビームの散乱効率は、格子の幾何学的形状に依存する。これらの回折効率は、0次回折ビームの効率に規格化することができ、回折ビームの相対強度を記述する。本明細書で用いる場合、第2の回折ビームの複合散乱効率は、この第2の回折ビームを生じた第1の回折ビームの散乱効率と、この第2の回折ビームに対応する第2のパターン付き領域32の回折次数に対する散乱効率との積によって与えられる。
【0161】
[000158]
図3Aから
図5Cに示されている実施形態の上記の記載では、
図3Aに示されているパターン付き領域15aの第1の部分15a’が照明される場合、シヤリング方向はv方向に対応し、非シヤリング方向はu方向に対応する。
図3Aに示されているパターン付き領域15aの第2の部分15a’’が照明される場合、シヤリング方向はu方向に対応し、非シヤリング方向はv方向に対応することは認められよう。これらの上述した実施形態では、u方向とv方向(2つのシヤリング方向を規定する)は双方ともリソグラフィ装置LAのx方向とy方向に対して約45度に位置合わせされているが、代替的な実施形態では、2つのシヤリング方向が、リソグラフィ装置LAのx方向とy方向(リソグラフィ装置LAの非スキャン方向とスキャン方向に対応し得る)に対して任意の角度に配置され得ることは認められよう。一般に、2つのシヤリング方向は相互に垂直である。以下では、2つのシヤリング方向をx方向及びy方向と呼ぶ。しかしながら、これらのシヤリング方向は、リソグラフィ装置LAのx方向とy方向の双方に対して任意の角度に配置され得ることは認められよう。
【0162】
[000159]
図6Aは、50%のデューティサイクルを有する、
図3Aに示されているパターン付き領域15aの第1の部分15a’の形態である第1のパターン付き領域31の散乱効率を示す。横軸はシヤリング方向の回折次数を表す。
図6Aに示されている回折効率は0次回折ビームの効率に規格化され、0次回折ビームの効率を100%としている。この幾何学的形状(50%デューティサイクル)では、偶数の回折次数(0次回折を除く)の効率はゼロである。±1次回折ビームの効率は63.7%である。
【0163】
[000160]
図6Bは、
図3Bに示されている回折格子19aの形態、すなわち50%デューティサイクルのチェッカーボードの形態である、第2のパターン付き領域32の散乱効率を示す。横軸はシヤリング方向の回折次数を表す。縦軸は非シヤリング方向の回折次数を表す。
図6Bに示されている回折効率は(0,0)次回折ビームの効率に規格化され、(0,0)次回折ビームの効率を100%としている。
【0164】
[000161] 上述のように、振動位相ステッピング信号の第1高調波は、次数が±1異なる第1の回折ビームからの方程式(1)に対する寄与分にのみ依存する。
図6Aから分かるように、測定パターニングデバイスMA’上の50%デューティサイクルの格子では、次数が±1異なる第1の回折ビームのペアが2つだけあり、0次ビームと±1次ビームである。更に、第1のパターン付き領域31のこの幾何学的形状では、散乱効率は対称的であり、±1次回折ビームの効率は双方とも同じ(63.7%)である。従って、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する第2の回折ビームの全てのペアの干渉強度γ
iは、以下のように決定することができる。
図6Bに示されている第2のパターン付き領域32の散乱効率プロットの第2のコピーを、第1のパターン付き領域31の±1次回折ビームの散乱効率で重み付けし、次いで
図6Bに示されている第2のパターン付き領域32の散乱効率プロットを重ねるが、(第1のパターン付き領域31の)回折次数の1つのペアの分離だけシヤリング方向にシフトさせる。ここで、第1及び第2のパターン付き領域31、32のシヤリング方向のピッチは等しく(投影システムPSによって適用される縮小率を考慮して)、従ってこの例では、第2のパターン付き領域32の散乱効率プロットの第2のコピーを、第2のパターン付き領域31の1回折次数だけシヤリング方向にシフトさせる。次いで、これら2つの重ねた散乱効率プロットの散乱効率の積を求める。
図6Cに、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する第2の回折ビームの全てのペアの干渉強度γ
iのそのようなプロットが示されている。
【0165】
[000162]
図6Cに示されている干渉強度γ
iの各々は、実際には第2の回折ビームの2つの異なるペアを表すことに留意するべきである。例えば、
図6Cに示されている左側の画素は、(a)第2の回折ビーム35aと34bとの間の干渉、及び(b)第2の回折ビーム35bと36aとの間の干渉の双方を表す。同様に、
図6Cに示されている右側の画素は、(a)第2の回折ビーム35aと36cとの間の干渉、及び(b)第2の回折ビーム35cと34aとの間の干渉の双方を表す。一般に、このようなマップの各画素は第2の回折ビームの2つのペアを表す。すなわち、(a)第1のパターニングデバイス31の0次回折次数に対応する第1の回折ビーム35から生じる1つの第2の回折ビームと、第1のパターン付き領域31の+1次回折次数に対応する第1の回折ビーム34から生じる別の第2の回折ビームと、を含む第2の回折ビームの第1のペア、及び、(b)第1のパターニングデバイス31の0次回折次数に対応する第1の回折ビーム35から生じる1つの第2の回折ビームと、第1のパターン付き領域31の-1次回折次数に対応する第1の回折ビーム36から生じる別の第2の回折ビームと、を含む第2の回折ビームの第2のペアである。
【0166】
[000163] 一般に、
図6Cに示されている干渉強度γ
iの各々は、第2の回折ビームの2つの異なるペアを表す。すなわち、(a)(第1のパターン付き領域31の0次回折ビームに相当する)第1の回折ビーム35によって生成されるn次の第2の回折ビームを含む1つのペア、及び(b)第1の回折ビーム35によって生成される(n+1)次の第2の回折ビームを含む別のペアである。従って、各干渉強度γ
iは、寄与する第1の回折ビーム35の2つの回折次((n,m)次及び(n+1,m)次)によって特徴付けることができ、γ
n,n+1:mと表記することができる。以下で、m=0であることが明白である場合、又はmの値が重要でない場合、この干渉強度をγ
n,n+1と表記することができる。
【0167】
[000164]
図6Cに示されている干渉強度γ
i(又はγ
n,n+1:m)の各々は第2の回折ビームの2つの異なるペアを表すが、
図6Cに示されている干渉強度γ
iの各々は、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与すると共に、放射検出器23において投影システムPSの開口数を表す円と異なる重なりを有する第2の回折ビームを表す。次にこれについて説明する。
【0168】
[000165]
図7A、
図7B、及び
図7Cは、それぞれ第1の回折ビーム34、35、36によって充填される投影システムPSの開口数に対応する投影システムPSの瞳面37の部分を示す。
図7A、
図7B、及び
図7Cの各々において、投影システムPSの開口数は円40によって表され、第1の回折ビーム34、35、36によって充填される投影システムPSの瞳面37の部分は、
図7A、
図7B、及び
図7Cのこの円40の陰影領域によって示される。
図7Bから分かるように、図示されている例では、0次回折ビームに相当する中央の第1の回折ビーム35は、投影システムPSの開口数を実質的に充填する。
図7A及び
図7Cから分かるように、第1のパターン付き領域31の±1次回折ビームに相当する2つの第1の回折ビーム34、36の各々は、開口数の一部のみを充填するようにシフトしている。開口数に対する1次の第1の回折ビーム34、36のこのシフトは、実際は極めて小さく、ここでは理解を容易にするため誇張されていることは認められよう。
【0169】
[000166]
図8Aから
図10Cは、様々な第2の回折ビームによって充填される放射検出器23の部分を示す。
図8Aから
図10Cの各々において、投影システムPSの開口数は円40によって表され、第2の回折ビームによって充填されるこの円の部分はこの円40の陰影領域によって示される。
図8Aから
図8Cは、第1のパターン付き領域31の0次回折ビームに相当する第1の回折ビーム35から生じる(-1,0)次、(0,0)次、及び(1,0)次の回折ビーム35b、35a、35cによって充填される円40の部分を示す。
図9Aから
図9Cは、第1のパターン付き領域31の1次回折ビームに相当する第1の回折ビーム34から生じる(-1,0)次、(0,0)次、及び(1,0)次の回折ビーム34b、34a、34cによって充填される円40の部分を示す。
図10Aから
図10Cは、第1のパターン付き領域31の-1次回折ビームに相当する第1の回折ビーム36から生じる(-1,0)次、(0,0)次、及び(1,0)次の回折ビーム36b、36a、36cによって充填される円40の部分を示す。
【0170】
[000167]
図8B、
図9A、
図8A、及び
図10Bから、(a)第2の回折ビーム35aと34bとの間の干渉、及び(b)第2の回折ビーム35bと36aとの間の干渉の双方からの寄与分を受ける放射検出器の領域は、
図11Aに示されている領域41であることが分かる。同様に、
図8B、
図10C、
図8C、及び
図9Bから、(a)第2の回折ビーム35aと36cとの間の干渉、及び(b)第2の回折ビーム35cと34aとの間の干渉の双方からの寄与分を受ける放射検出器の領域は、
図11Bに示されている領域42であることが分かる。
【0171】
[000168] 一般に、
図6Cに示されている干渉強度γ
iの各々は、複数の干渉する第2の干渉ビームによって形成された放射ビームを表すと考えることができ、複数の干渉する第2の干渉ビームによって形成されたそのような放射ビームの各々は異なる方向に伝搬するので、放射検出器23におけるそのような各放射ビームと投影システムPSの開口数を表す円との重なりが異なるようになっている。
【0172】
[000169] 一般に、第2の回折ビームは複数の放射ビームを形成し、そのような放射ビームの各々は干渉する第2の回折ビームのセットによって形成されると考えることができる。そのような放射ビームの各々を、本明細書では干渉ビームと呼ぶことができる。複数の干渉する第2の回折ビームによって形成されたそのような干渉ビームの各々は異なる方向に伝搬するので、放射検出器23における各干渉ビームと投影システムPSの開口数を表す円との重なりが異なるようになっている。それらは異なる方向に伝搬し、投影システムPSの開口数を表す円と異なる重なりを有すると考えることができるが、放射検出器23では異なる干渉ビーム間に顕著な重なりが存在する。
図6Cに示されている干渉強度γ
iの各々は、(複数の干渉する第2の干渉ビームによって形成された)異なる干渉ビームを表すと考えることができる。
【0173】
[000170] 前述のように、
図6Cに示されている干渉強度γ
i(又はγ
n,n+1:m)の各々は、第2の回折ビームの2つの異なるペアを表す。しかしながら、放射検出器上の所与の位置では、寄与する第2の回折ビームのこれらのペアの双方は、投影システムPSの瞳面37内の2つの同じ位置から生じる2つの干渉する光線を含む。具体的には、放射検出器上の位置(x,y)では(これらの座標は投影システムPSの瞳面37の座標に対応し、x方向はシヤリング方向に対応する)、寄与すると共に干渉強度γ
n,n+1:mを有する干渉する第2の回折ビームの2つのペアの各々は、瞳面37内の位置(x-ns、y-ms)から生じた第2の回折ビームの光線と、瞳面37内の位置(x-(n+1)s、y-ms)から生じた第2の回折ビームの光線とを含む。ここで、sはシヤリング距離である。シヤリング距離sは、隣接する第1の回折ビーム34~36の2つのコヒーレントな光線間の瞳面37内の距離に対応する。従って、寄与する第2の回折ビームの双方のペアは、方程式(3)の形態の干渉項を発生させる。方程式(3)において、ΔWは瞳面37内のこれら2つの位置における収差マップの値間の差である。
【0174】
[000171]
図6Cを見ると、50%デューティサイクルのチェッカーボードの形態である第2のパターン付き領域32では、位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する第2の回折ビームが2セットのみ存在することが分かる。これらのセットは双方とも25.8%の干渉強度(γ
-1,0、γ
0,+1)を有する。これはチェッカーボード幾何学的形状に起因し、
図6Aから分かるように、これによって生じる回折効率プロットでは、(-1,0)次、(0,0)次、及び(1,0)次回折ビームを除いて、シヤリング方向に移動すると、1つおきの回折ビームで回折効率が0%である。すなわち、n±mが偶数である(n,m)回折次数の格子効率は、(0,0)回折次を除いて全てゼロである。これらの効率がゼロである結果として、位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する干渉強度は、γ
-1,0、γ
0,+1を除いて全てゼロである。
【0175】
[000172] 投影システムPSの開口数に対応する放射検出器23の部分(
図7Aから
図11Bに円40で表されている)は、3つの部分を含むと考えることができる。3つの部分の各々は、これらの部分で振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する干渉ビームによって区別される。これら3つの部分は、干渉強度γ
-1,0の干渉ビームのみが寄与する第1の三日月形部分、干渉強度γ
0,+1の干渉ビームのみが寄与する第2の三日月形部分、及び、これらの干渉ビームの双方が寄与する中央部であると考えられる。第1の三日月形部分は
図11Bに示されている白い部分であり、第2の三日月形部分は
図11Aに示されている白い部分であり、中央部は2つの領域41、42間の重なりである。2つの領域41、42の重なりである中央部を、放射検出器23の3ビーム領域と呼ぶことができる。
【0176】
[000173]
図11A及び
図11Bに示されている2つの領域41、42間の重なりでは(この重なり領域は、小さいシヤリング角度では円40の大部分を形成する)、振動位相ステッピング信号の第1高調波は、2つのコサインの和に比例する(方程式(2)及び式(3)を参照のこと)。
I=DC+γ
-1,0cos(W
-1-W
0)+γ
0,+1cos(W
0-W
+1) (4)
ここで、第1のコサインは瞳面内の第1の2つのポイント間の収差マップの差であり、第2のコサインは瞳面内の第2の2つのポイント間の収差マップの差である(ここで、理解を明白にするため、位相ステッピング項は省略されている)。具体的には、放射検出器上の所与の位置(x,y)について(xはシヤリング方向を表す)、第1の2つのポイントは、瞳面内の対応するポイント(x,y)(方程式(4)においてW
0として表される)と、シヤリング方向に沿って第1の方向にシヤリング距離だけシフトした別のポイント(x-s,y)(方程式(4)においてW
-1として表される)と、を含む。同様に、第2の2つのポイントは、瞳面内の対応するポイント(x,y)(方程式(4)においてW
0として表される)と、シヤリング方向に沿って第2の方向にシヤリング距離だけシフトした別のポイント(x+s,y)(方程式(4)においてW
+1として表される)と、を含む。
【0177】
[000174] 既存の波面再構成技法では、方程式(4)における2つの干渉強度が等しいので、三角関数の公式を用いて、2つのコサインのこの和を、シヤリング距離の2倍だけシヤリング方向に分離した2つの位置間の収差マップの差の2分の1のコサイン、すなわちcos(1/2(W
-1-W
+1)に書き直すことができ、小さいシヤリング距離では約1である係数をこれに乗算することができるという事実を利用する。従って、このような既知の技法は、(2つの領域41、42間の重なり内の)位相ステッピング信号の第1高調波の位相を、シヤリング距離の2倍だけシヤリング方向に分離した瞳面内の2つの位置間の収差マップの差の2分の1に等しくすることによって、ゼルニケ係数のセットを決定することを含む。任意選択的に、第1及び第2の三日月形部分では、位相ステッピング信号の第1高調波の位相を、シヤリング距離だけシヤリング方向に分離した瞳面内の2つの位置間の収差マップの差に等しくすればよい。しかしながら、上述のように、
図11A及び
図11Bに示されている2つの領域41、42間の重なりは、小さいシヤリング角では円40の大部分を形成するので、いくつかの既存の再構成アルゴリズムは、2つの領域41、42間の重なりのみを用いる(放射検出器23の第1及び第2の三日月形部分は用いない)。収差マップはゼルニケ係数に依存し得ることを想起されたい(方程式(1)を参照のこと)。これは、放射センサ上の複数の位置で(例えば、複数の画素又はアレイ内の個々のセンシング要素で)、最初は第1のシヤリング方向に、次いで第2の直交する方向に行われる。2つのシヤリング直交方向に対するこれらの制約を同時に解いて、ゼルニケ係数セットを見出す。
【0178】
[000175] 上述のように、線形格子を含む第1のパターン付き領域31と2次元チェッカーボードを含む第2のパターン付き領域32との組み合わせは有利である(2つの干渉ビームのみが位相ステッピング信号の第1高調波に寄与するからである)。チェッカーボードの幾何学的形状のため、チェッカーボード格子は通常、光透過性キャリア又は支持層を含む。しかしながら、EUV放射はほとんどの材料によって強く吸収されるので、EUV放射にとって良好な透過性材料は存在しない。更に、そのような透過性キャリアはEUVリソグラフィシステムのウェーハ生成環境で急速に汚染するので、このような環境に適していない。これにより、透過性キャリアはEUVに対して非透過性となる。定期的な洗浄動作でしか対処できないこのような汚染の問題は、システム可用性に影響を及ぼし、従ってリソグラフィシステムのスループットに影響する。上述の理由から、チェッカーボード格子構成は、EUV放射を使用するリソグラフィシステムでは実施することが難しい。
【0179】
[000176] この理由から、EUV放射用の既存の収差測定システムは、第2のパターン付き領域32として、円形ピンホールのアレイを用いる幾何学的形状を使用する。
図12は、(面積で)50%デューティサイクルを有するそのような格子の単位セル50を示す。単位セル50は、EUV吸収膜52に設けられた円形アパーチャ51を含む。円形アパーチャ51は、EUV吸収膜52の空隙を表す貫通アパーチャであり、これをEUV放射が透過する。(面積で)50%デューティサイクルを達成するため、アパーチャ51の半径rと格子のピッチp(すなわち、隣接するアパーチャの中心間の距離)との比は、以下によって与えられる。
r/p=√1/2π (5)
これは約0.4である。しかしながら、このようなピンホールアレイ幾何学的形状(
図12に示されている)は、位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する望ましくない干渉ビームを発生させる。これについて、以下で
図13Aから
図13Bを参照して説明する。
【0180】
[000177]
図13Aは、(
図6Aに示されているものと同じ幾何学的形状の)50%デューティサイクルを有する
図3Aに示されているパターン付き領域15aの第1の部分15a’の形態である第1のパターン付き領域31の散乱効率を示す。この場合も、回折効率は0次回折ビームの効率に規格化され、0次回折ビームの効率を100%としている。
図13Bは、
図12に示されている単位セル50を有するピンホールアレイの形態である第2のパターン付き領域32の散乱効率を示す。
図13Bに示されている回折効率は、(0,0)次回折ビームの効率に規格化され、(0,0)次回折ビームの効率を100%としている。
【0181】
[000178]
図13Cは、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する干渉ビームの干渉強度γ
n,n+1のプロットである(これは、
図6A及び
図6Bの散乱効率からの
図6Cの構築と同様に、
図13A及び
図13Bの散乱効率から構築される)。
【0182】
[000179]
図13Cを見ると、
図12に示されている単位セル50を有する第2のパターン付き領域32では、2つの主な干渉ビーム(25.2%の干渉強度γ
-1,0、γ
0,+1)に加えて、小さいがゼロではない干渉強度γ
n,n+1を有する追加の干渉ビームが複数存在することが分かる。更に、干渉ビームの各々は放射検出器23において異なる重なりを有し、放射検出器23の円形部分は投影システムPSの開口数に対応する。これについて、以下で
図14A及び
図14Bを参照して説明する。
【0183】
[000180]
図14Aは、
図12に示されている単位セル50を有する第2のパターン付き領域32によって発生した21の第2の回折ビームの図である。具体的には、これらは、このような第2のパターン付き領域32によって発生し、0次の第1の回折ビーム35から生じた第2の回折ビームと考えることができる。
図14Aは、これらの第2の回折ビームの回折効率を示し、これらは、
図13Bに示されている点線内に含まれる回折効率に対応する。実際、
図13Bの点線は25の第2の回折ビームに対応するが、これらのうち4つの回折効率は無視することができるので、
図14Aには含まれていない。更に、
図14Aでは、円形の破線は、投影システムPSの開口数に対応する放射検出器23上の領域を示す。
【0184】
[000181]
図14Bは、第2のパターン付き領域32によって発生し、±1次の第1の回折ビーム34、36から生じた第2の回折ビームと、
図14Aに示されている第2の回折ビームのペアとの干渉によってそれぞれ発生した、16の干渉ビームの図である。
図14Bは、これらの干渉ビームの干渉強度を示し、これらは、
図13Cに示されている点線内に含まれる回折効率に対応する。実際、
図13Cの点線は20の異なる第2の回折ビームに対応するが、これらのうち4つの干渉強度は無視することができるので、
図14Bには含まれていない。更に、
図14Bでは、円形の破線は、投影システムPSの開口数に対応する放射検出器23上の領域を示す。
【0185】
[000182]
図13C及び
図14Bを見ると、
図12に示されている単位セル50を有する第2のパターン付き領域32では、2つの主な干渉ビーム(25.2%の干渉強度γ
-1,0、γ
0,+1)に加えて、小さいがゼロではない干渉強度γ
n,n+1を有する追加の干渉ビームが複数存在することが分かる。これらの追加の干渉ビームの干渉強度は同一でないので、複数の干渉ビームが重なる放射検出器23の領域では、振動位相ステッピング信号の第1高調波は、異なる重みを有する複数のコサインの重み付けされた和に比例する(方程式(4)を参照のこと)。この結果、これらは、三角関数の公式を用いて容易に結合することができない。しかしながら、追加の干渉ビームの干渉強度γ
n,n+1は、(干渉強度γ
-1,0、γ
0,+1に比べて)小さいので、通常、EUV放射用の既知の既存の収差測定システムは、波面の再構成でこれらの項を無視して(すなわち、それらがゼロであると仮定して)、ゼルニケ係数のセットを見出す。
【0186】
[000183] この仮定は、波面測定の精度に影響を及ぼす。これは次いで、システム結像、オーバーレイ、及びフォーカス性能に悪影響を与える。本発明の実施形態は、EUV放射用の収差測定システムの上述した問題に少なくとも部分的に対処するように考案された。
【0187】
[000184] 本発明の実施形態は、(干渉強度γ-1,0、γ0,+1を有する2つの主な干渉ビームの他に)追加の干渉ビームが存在することによって生じる問題に対処するように提案された新規の代替的な解決策に関する。特に、本発明のいくつかの実施形態は、第2のパターン付き領域32として用いるための新規の代替的な2次元回折格子に関する。
【0188】
[000185] (干渉強度γ-1,0、γ0,+1を有する2つの主な干渉ビームの他に)追加の干渉ビームが存在することによって生じる問題に対処するように提案された1つの解決策は、固有の幾何学的形状を有する第2のパターン付き領域32のための2次元回折格子を用いることである。
【0189】
[000186] 第1の例では、第2のパターン付き領域32に、方形アパーチャのアレイを使用することが提案された(アレイ時の軸はシヤリング方向に対して45度回転させている)。特に、方形アパーチャの各々の長さを隣接するアパーチャの中心間の距離の半分にすることが、以前に教示された。このような構成によって提供できる自己支持型格子は、位相ステッピング信号の第1高調波に対する寄与分が4つだけであり、これら4つ全てが等しい強度を有するので、特に有利であることが分かった。
【0190】
[000187] 代替案では、第2のパターン付き領域32に、概ね
図12に示されている単位セル50の形態である単位セルを有する格子を使用することが提案されたが、アパーチャ51の半径rと格子のピッチp(すなわち、隣接するアパーチャの中心間の距離)との比を、方程式(5)によって与えられる約0.4の公称値から変動させる。具体的には、位相ステッピング信号の第1高調波に著しく(例えば、閾値よりも大きい干渉強度で)寄与する干渉ビームの合計数を減らすように、ピンホールアレイのアパーチャの直径と間隔を選択することが提案された。例えば、上記の問題に対する1つの既知の解決策では、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比を約0.4に選択する(面積で50%デューティサイクルを達成するため)のではなく、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比を0.3又は0.43に選択することが提案された。第1の例では、アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比が約0.3である格子を選択して、ピンホール格子の(±2,0)及び(0,±2)回折次数を抑制又は最小化した(これら双方は、完璧なチェッカーボード格子ではゼロである)。この比は、(約0.4の公称値に比べて)収差マップの再構成のために有利であることが分かった。第2の例では、アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比が約0.43である格子を選択して、(±1,±1)回折次数を抑制又は最小化した(これらは、完璧なチェッカーボード格子ではゼロである)。この場合も、この比は、(約0.4の公称値に比べて)収差マップの再構成のために有利であることが分かった。
【0191】
[000188] 概ね
図12に示されている単位セル50の形態である単位セルを有する格子を、ピンホールアレイと呼ぶことができる。
【0192】
[000189] これらの教示とは異なり、本発明の発明者らは、より良いピンホールアレイ幾何学的形状を選択できることを見出した。具体的に述べると、位相ステッピング信号の第1高調波に対する寄与分を減らすことは望ましいが、本発明者らは、以下で検討するように、再構成アルゴリズムの利得誤差及びクロストーク誤差に基づいてウェーハレベル格子(すなわち第2のパターン付き領域32)の幾何学的形状を選択する方が良いことを見出した。
【0193】
[000190] 本発明者らは、収差マップ再構成における誤差を以下のようにより良く制御できることを認識した。波面収差マップは、投影システムの像面内のポイントに接近する光の波面の球状波面からのディストーションを表し、ゼルニケ多項式の線形結合として表現できる(方程式(1)を参照のこと)。純粋なゼルニケ波面収差マップ(例えばZn)を再構成アルゴリズムに入力し、これを再構成アルゴリズムがどのようにゼルニケ多項式の線形結合として再構成するかを査定することができる。理想的には、再構成アルゴリズムは、m=nに対してcm=1であり、m≠nに対してcm=0であるように、ゼルニケ係数cmのセットを出力しなければならない。1からのcnの変動を利得誤差と呼ぶことができる。更に、m≠0である場合の0からのcmの変動をクロストーク誤差と呼ぶことができる。
【0194】
[000191] 一般に、投影システムが、ゼルニケ係数cactualのベクトルによって記述できる収差マップを有する場合、再構成アルゴリズムによって再構成されたゼルニケ係数creconstructedのベクトルは、以下によって与えることができる。
creconstructed=M・cactual (6)
ここで、Mは、再構成の利得誤差及びクロストーク誤差を含む行列である。具体的には、行列Mの対角要素は理想的には1であり、非対角要素はクロストーク誤差である(理想的にはゼロであるはずである)。従って、理想的には、行列Mは完璧な再構成を表す単位行列であるはずである。誤差行列Eは以下によって定義できる。
E=M-I (7)
ここで、Iは単位行列である。行列Eの対角要素は利得誤差であり(理想的にはゼロであるはずである)、非対角要素はクロストーク誤差である(理想的にはゼロであるはずである)。従って行列Mは、収差マップ再構成における誤差を査定するための良好な性能指数を表す。これについて以下で説明する。
【0195】
[000192] 2次元シミュレーションから、50%のデューティサイクルを有するレチクルレベルの1次元回折格子(すなわち第1のパターン付き領域31)及びウェーハレベルのピンホールアレイ格子を用いる収差マップ測定システムでは、円形ピンホールアパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比に、(公称値の0.4に対して)約0.36を用いることで、約2倍の利得誤差及びクロストーク誤差の全体的な減少が得られることが分かった。更に、この2次元シミュレーションから、以前に提案された0.3という最適化値に対しても、利得誤差及びクロストーク誤差の全体的な減少が達成されることが分かった。これについて、以下で
図15Aから
図20Eを参照して説明する。
【0196】
[000193]
図15Aから
図15Dは、百分率誤差として方程式(7)によって規定された誤差行列Eの要素のプロットを示す。
図15Aから
図15Dでは、実際のゼルニケ係数c
actualはZ
inと表記された軸に対応し、再構成されたゼルニケ係数c
reconstructedはZ
outと表記された軸に対応する。
図15A及び
図15Bは、255nmのピッチを有する格子の第1の25のゼルニケ係数の誤差行列Eを示し、
図15C及び
図15Dは、1414nmのピッチを有する格子の第1の25のゼルニケ係数の誤差行列Eを示す。
図15A及び
図15Cは、チェッカーボード格子の誤差行列Eを表し、
図15B及び
図15Dは、半径とピッチとの公称比約0.4を有する(方程式5を参照のこと)ピンホール格子の誤差行列Eを表す。
図15Aから
図15Dを見ると、チェッカーボード格子の誤差行列(
図15A及び
図15Cを参照のこと)は無視できるほど小さいが、半径とピッチとの公称比を有するピンホールアレイの誤差行列(
図15B及び
図15Dを参照のこと)の少なくともいくつかの要素は著しく大きいことが分かる。
【0197】
[000194]
図16Aから
図16Dは、第1の25のゼルニケ係数及び255nmのピッチを有する格子について、百分率誤差として方程式(7)によって規定された誤差行列Eの要素のプロットを示す。
図16Aから
図16Dでは、実際のゼルニケ係数c
actualはZ
inと表記された軸に対応し、再構成されたゼルニケ係数c
reconstructedはZ
outと表記された軸に対応する。
図16Aから
図16Dの各々は、半径とピッチとの比が異なるピンホール格子の誤差行列Eを表す。具体的には、
図16Aは、半径とピッチとの比が公称比の約0.4であるピンホール格子を表し(従って
図15Bと同一である)、
図16Bは、半径とピッチとの比が公称比の0.95倍であるピンホール格子を表し、
図16Cは、半径とピッチとの比が公称比の0.9倍であるピンホール格子を表し、
図16Dは、半径とピッチとの比が公称比の0.8倍であるピンホール格子を表す。
図16Aから
図16Dを見ると、誤差行列Eの要素は概して、半径とピッチとの比が公称比の0.9倍であるピンホール格子で最小であることが分かる。
【0198】
[000195]
図17Aから
図17Fは、第1の100のゼルニケ係数及び1414nmのピッチを有する格子について、百分率誤差として方程式(7)によって規定された誤差行列Eの要素のプロットを示す。
図17Aから
図17Fの各々は、半径とピッチとの比が異なるピンホール格子の誤差行列Eを表す。具体的には、
図17Aは、半径とピッチとの比が公称比の約0.4であるピンホール格子を表し(従って、
図15Dに示されている行列の拡大図である)、
図17Bは、半径とピッチとの比が公称比の0.92倍であるピンホール格子を表し、
図17Cは、半径とピッチとの比が公称比の0.9倍であるピンホール格子を表し、
図17Dは、半径とピッチとの比が公称比の0.88倍であるピンホール格子を表し、
図17Eは、半径とピッチとの比が公称比の0.86倍であるピンホール格子を表し、
図17Fは、半径とピッチとの比が公称比の0.84倍であるピンホール格子を表す。
図17Aから
図17Fを見ると、誤差行列Eの要素は概して、半径とピッチとの比が公称比の0.88~0.92倍であるピンホール格子で最小であり、また、半径とピッチとの比が公称比の0.9倍であるピンホール格子は、半径とピッチとの比が公称比であるピンホール格子に比べて著しい改善を与えることが分かる。
【0199】
[000196]
図18は、利得誤差、(すなわち、ある範囲の様々な半径とピッチとの比に対する、第1の100のゼルニケ係数及び1414nmのピッチを有する格子について百分率誤差として方程式(7)によって規定された誤差行列Eの対角要素を示す。具体的には、
図18は、
図17Aから
図17Fに示されている様々な半径とピッチとの比に対する利得誤差を示す(すなわち、
図18は
図17Aから
図17Fに示されている誤差行列の全ての対角要素を表す)。
図18を見ると、利得誤差は概して、半径とピッチとの比が公称比の0.88~0.92倍であるピンホール格子で最小であり、また、半径とピッチとの比が公称比の0.9倍であるピンホール格子は、半径とピッチとの比が公称比であるピンホール格子に比べて著しい改善を与えることが分かる。
【0200】
[000197] 再構成された収差マップにおける実際の誤差は、再構成誤差(すなわち利得誤差とクロストーク誤差)、及び、解析されている投影システムPSが経験する収差の双方に依存する。従って、誤差行列Eの他の要素がわずかに大きくなることを犠牲にして、誤差行列Eの特定の要素を最小化することが望ましい場合がある。例えば、比較的大きいZi収差及び比較的小さいZj収差を生じやすい投影システムは、実際のところ、Zj収差に対して利得誤差及びクロストーク誤差が増大する場合であっても、Zi収差に対して利得誤差及びクロストーク誤差を最小化する円形ピンホールアパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比を用いて、より良く機能し得る。第1のn個のゼルニケ次数に特に注意しながらピンホールアレイの半径とピッチとの比の値を最適化することが、特に望ましい場合がある。例えば、第1の25のゼルニケ次数に特に注意しながらピンホールアレイの半径とピッチとの比の値を最適化することが、特に望ましい場合がある。
【0201】
[000198]
図19A及び
図19Bは、第1の25のゼルニケ係数及び1414nmのピッチを有する格子について、百分率誤差として方程式(7)によって規定された誤差行列Eの要素のプロットを示す。
図19Aは、半径とピッチとの比が公称比の約0.4であるピンホール格子の誤差行列Eを表し(従って、
図17Aの拡大図である)、
図19Bは、半径とピッチとの比が公称比の0.9倍であるピンホール格子の誤差行列Eを表す(従って、
図17Cの拡大図である)。
図19A及び
図19Bを見ると、第1の25のゼルニケ次数では、半径とピッチとの比が公称比の0.9倍であるピンホール格子(
図19Bを参照のこと)は、半径とピッチとの比が公称比であるピンホール格子に比べ、利得誤差及びクロストーク誤差が著しく低減することが分かる。
【0202】
[000199] いくつかの実施形態において、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、利得誤差及びクロストーク誤差を最小化する最適値に近い。例えば、この最適化は、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイス(すなわち第1のパターン付き領域31)と組み合わせて投影システムの収差マップを決定するための位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイス(すなわち第2のパターン付き領域32)として回折格子を用いる状況のためであり得る。位相ステッピング測定システムの再構成アルゴリズムは、格子がチェッカーボード格子の形態であると想定し得る。
【0203】
[000200] いくつかの実施形態において、ピンホールアレイは、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比が0.36~0.38である。いくつかの実施形態において、ピンホールアレイは、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比が0.35~0.37である。いくつかの実施形態において、ピンホールアレイは、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比が0.36である。
【0204】
[000201] 円形ピンホールアパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比が公称値0.4から小さくなると、利得誤差及びクロストーク誤差は、あるポイントまで低減し、その後、この比が以前に提案した0.3という値に向かうにつれて、利得誤差及びクロストーク誤差は再び増大し始めると考えられる。
【0205】
[000202] 従って、0.3及び0.4という2つの以前に開示された値に対して、0.34~0.38の範囲内で利得誤差及びクロストーク誤差の低減が達成されると考えられる。
【0206】
[000203] 2つの理由から、円形ピンホールアパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比の値の最適化は難しい。
【0207】
[000204] 第1に、再構成された収差マップにおける実際の誤差は、再構成誤差(すなわち利得誤差とクロストーク誤差)、及び、解析されている投影システムPSが経験する収差の双方に依存する。例えば、比較的大きいZi収差及び比較的小さいZj収差を生じやすい投影システムは、実際のところ、Zj収差に対して利得誤差及びクロストーク誤差が増大する場合であっても、Zi収差に対して利得誤差及びクロストーク誤差を最小化する円形ピンホールアパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比を用いて、良好に機能し得る。
【0208】
[000205] 第2に、シミュレーションは、回折格子が3次元であるということを考慮しなければならないが、これは、格子が完璧なバイナリ格子でないことを意味する。例えば、格子の厚さが有限の非ゼロであることに起因して、基板のアパーチャ間に入射する放射は概して、完璧には吸収されない。更に、使用時、放射はある角度範囲で格子に入射し得る。この結果、膜に(例えば大きい入射角度で、貫通アパーチャのうち1つの近くに)入射する放射の少なくとも一部は、膜の厚さのごく一部である距離だけ膜内を伝搬するので、充分には減衰されない。更に、概して、基板と(貫通アパーチャ内の)周囲の媒質との間で屈折率に差が存在し得る。この結果、膜を伝搬する放射とそうでない放射との間に位相差が誘発される(光路長が異なるため)。
【0209】
[000206] このような3次元効果を考慮すると、円形ピンホールアパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との最適な比に小さいシフトが生じ得ると考えられ、このシフトは、格子が形成される材料の光学特性と膜の厚さとに依存し得る。しかしながら、この最適な比は0.34~0.38の範囲内にあると考えられる。
【0210】
[000207] 次に、
図20Aから
図20Eを参照して、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との適切な比を選択するために考慮され得る別のタイプの最適化について検討する。
図20Aから
図20Eの各々は、第2のパターン付き領域32の回折格子の異なる幾何学的形状の干渉ビームマップを示す。
【0211】
[000208] ここで、干渉ビームマップの定義及びどのようにこれを決定できるかを説明する。
【0212】
[000209] 干渉ビームマップは測定面内で規定される。測定面は、位相ステッピング測定システムの放射検出器23の面に対応し得る。具体的には、これは、回折格子を照明するレチクルレベルパターニングデバイス(すなわち第1のパターン付き領域31)からの0次回折ビーム35から生じる第1及び第2の回折ビーム間のこの測定面内の重なりに対して規定される。第1の回折ビームはシヤリング方向の+1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームであり、第2の回折ビームはシヤリング方向の-1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームである。
【0213】
[000210] 中央の第1の回折ビーム35(第1のパターン付き領域31の0次回折ビームに対応する)が、第2のパターン付き領域32を概ねテレセントリックに(telecentrically)照明することは認められよう。ここで用いる場合、物体のテレセントリック照明は、物体に入射する放射のエネルギ重心が物体の面に対して概ね垂直であることを意味することが意図されることは認められよう。例えば、入射放射は概ね集束する円錐の放射の形態であり、その円錐の軸は概ね物体の面に対して垂直であり得る。これとは対照的に、第1の回折ビーム34、36(第1のパターン付き領域31の±1次回折ビームに対応する)は、第2のパターン付き領域32を非テレセントリック(non-telecentrically)に照明する。
【0214】
[000211] 中央の第1の回折ビーム35は第2のパターン付き領域32を概ねテレセントリックに照明するので、2つの第2の回折ビーム35b、35c(±1次回折ビームに対応する)は、テレセントリック照明によって形成される第1及び第2の回折ビームであると考えられる。第1の回折ビームはシヤリング方向の+1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームであり、第2の回折ビームはシヤリング方向の-1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームである。
【0215】
[000212] これらの第1及び第2の回折ビーム間のこの測定面内の重なりは、干渉強度γ
-1,0の干渉ビームと干渉強度γ
0,+1の干渉ビームの双方が寄与する放射検出器23の中心部に対応する。すなわち、これらの第1及び第2の回折ビーム間のこの測定面内の重なりは、
図11A及び
図11Bに示されている2つの領域41、42間の重なりに対応する。
【0216】
[000213] 測定面内の所与の位置における干渉ビームマップの値は、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与すると共に測定面内のその位置と重なる干渉ビームの全てからの寄与分の和の大きさによって与えられる。これについて以下で説明する。具体的には、干渉ビームマップは、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイス(すなわち第1のパターン付き領域31)と組み合わせて投影システムの収差マップを決定するための位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイス(すなわち第2のパターン付き領域32)として回折格子を用いる場合に、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する干渉ビームの全てからの寄与分の和の大きさによって与えられる。
【0217】
[000214] 一般に、放射検出器23の所与の領域では、複数の干渉ビームが重なるので、振動位相ステッピング信号の第1高調波は、異なる重みを有する複数のコサインの重み付けされた和に比例する(方程式(4)を参照のこと)。これらのコサインの各々は、シヤリング方向の第1及び第2のパターン付き領域31、32の相対位置に対して同じ依存度を有し(方程式(3)を参照のこと。この式では、vはシヤリング方向の第1及び第2のパターン付き領域31、32の相対位置をパラメータ化する)、従って、複数のフェーザ(phasor)の加算として組み合わせることができる。これについて以下で説明する。
【0218】
[000215] 具体的には、放射検出器23上の所与の位置(例えば所与のセンシング要素又は画素)における位相ステッピング信号の第1高調波は、以下のように書くことができる。
【数2】
【0219】
ここで、M及びΔWは、それぞれ位相ステッピング信号の第1高調波の振幅及び位相であり、和は、放射検出器23上のこの位置と重なると共に振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する全ての干渉ビームに対するものであり、γiは、i番目の干渉ビームの干渉強度であり、ΔWiは、投影システムPSの瞳面内の2つの位置における収差マップの値の差であり、これら2つの位置は、i番目の干渉ビームに寄与する2つの第2の回折ビームが生じる位置に対応する。Mは位相ステッピング信号の第1高調波の振幅であるが、これは代替的に変調と呼ばれることがある。
【0220】
[000216] 干渉マップは、ゼロ収差の完璧なシステムから得られる位相ステッピング信号の第1高調波の振幅Mのマップである。一般に、方程式(8)において、測定面内の所与の位置における位相ステッピング信号の第1高調波の振幅Mは、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与すると共に測定面内のその位置と重なる干渉ビームの全ての干渉強度セット{γi}及び差のセット{ΔWi}に依存することは認められよう。
【0221】
[000217] 収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとしてチェッカーボード格子を用いる場合、測定面における第1及び第2の回折ビーム間の重なりに対応する領域内の干渉ビームマップは均一である。その理由は、測定面のこの領域全体にわたって、2つの回折ビームが振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与し、それらの干渉強度は等しいからである(干渉強度γ
-1,0の干渉ビームと干渉強度γ
0.+1の干渉ビーム)。
図20Aは、第2のパターン付き領域32として用いられるチェッカーボード格子の干渉ビームマップを示す。
【0222】
[000218] しかしながら、ウェーハレベルパターニングデバイスにピンホールアレイ幾何学的形状を用いる場合、これによって、位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する望ましくない干渉ビームが発生する。特に、チェッカーボード格子で存在する2つの寄与分に加えて、放射検出器23では、小さいがゼロでない強度を有する追加の干渉ビームが多数存在する。干渉ビームマップは、例えば、収差が存在しない場合に生じる放射検出器23上の各ポイントにおける位相ステッピング信号の第1高調波の大きさを見出すことによって形成され得る。これは、方程式(8)を参照して上述したように、
図14Bに示されている寄与分の全てを組み合わせることによって見出せることは認められよう。これらの寄与分の各々は測定面内の位置が異なるので、一般に、干渉ビームマップには多少の変動が存在する(異なる位置は、概して、振動位相ステッピング信号の第1高調波に対して異なる寄与分を有するからである)。更に、一般に、追加の望ましくない干渉ビームは、位相ステッピング信号の第1高調波の大きさを増大又は低減させる可能性がある。
【0223】
[000219]
図20Bは、第2のパターン付き領域32として用いられるピンホールアレイの干渉ビームマップを示す。この格子は255nmのピッチを有し、半径とピッチとの比は公称比0.4である。
図20Cは、第2のパターン付き領域32として用いられるピンホールアレイの干渉ビームマップを示す。この格子は255nmのピッチを有し、半径とピッチとの比は公称比の0.9倍である(すなわち、半径とピッチとの比は約0.36である)。
図20Dは、第2のパターン付き領域32として用いられるピンホールアレイの干渉ビームマップを示す。この格子は255nmのピッチを有し、半径とピッチとの比は公称比の1.08倍である(すなわち、半径とピッチとの比は約0.43である)。
図20Eは、第2のパターン付き領域32として用いられるピンホールアレイの干渉ビームマップを示す。この格子は255nmのピッチを有し、半径とピッチとの比は公称比の0.75倍である(すなわち、半径とピッチとの比は約0.3である)。
【0224】
[000220] 上述のように、一般に、振動位相ステッピング信号の第1高調波は、次数が±1異なる第1の回折ビーム(すなわち、レチクルレベルパターニングデバイスすなわち第1のパターン付き領域31によって形成された回折ビーム)からの寄与分にのみ依存する。50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイス(すなわち第1のパターン付き領域31)では、次数が±1異なる第1の回折ビームのペアが2つだけあり、0次ビームと±1次ビームである。
【0225】
[000221] 振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与するこのような干渉ビームの干渉強度は、
図6Cから
図13Cを参照して上述したように決定することができる。
【0226】
[000222] いくつかの実施形態において、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、回折格子を照明するレチクルレベルパターニングデバイス(すなわち第1のパターン付き領域31)からの0次回折ビーム35から生じる第1及び第2の回折ビーム間の測定面内の重なりに対応する領域における干渉ビームマップの変動を最小化する最適値に近いように選択される。第1の回折ビームは、シヤリング方向の+1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームであり、第2の回折ビームは、シヤリング方向の-1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームである。
【0227】
[000223]
図20Bから
図20Eを見ると、255nmのピッチを有するピンホールアレイでは、半径とピッチとの比が公称比の0.9倍である(すなわち、半径とピッチとの比が約0.36である。
図20Cを参照のこと)干渉ビームマップは、半径とピッチとの比が公称比であるもの(すなわち、半径とピッチとの比が約0.4である。
図20Bを参照のこと)、半径とピッチとの比が公称比の1.08倍であるもの(すなわち、半径とピッチとの比が約0.43である。
図20Dを参照のこと)、及び、半径とピッチとの比が公称比の0.75倍であるもの(すなわち、半径とピッチとの比が約0.3である。
図20Eを参照のこと)に比べて、干渉ビームマップの変動を低減することが分かる。
【0228】
[000224] 本発明のいくつかの実施形態は、投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子を設計する方法に関する。回折格子はピンホールアレイである。方法は、収差マップの再構成における誤差を実質的に最小化する、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比の値を選択することを含む。
【0229】
[000225] いくつかの実施形態において、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイス(すなわち第2のパターン付き領域32)として回折格子を用いる場合に利得誤差及びクロストーク誤差を実質的に最小化するように選択され得る。例えば、この最小化は、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイス(すなわち第1のパターン付き領域31)と組み合わせて使用される場合に得られる。例えば、位相ステッピング測定システムの再構成アルゴリズムは、格子がチェッカーボード格子の形態であることを想定し得る。
【0230】
[000226] いくつかの実施形態において、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、回折格子を照明するレチクルレベルパターニングデバイス(すなわち第1のパターン付き領域31)からの0次回折ビーム35によって生じる第1及び第2の回折ビーム間の測定面内の重なりに対応する領域で干渉ビームマップの変動を実質的に最小化するように選択される。第1の回折ビームは、シヤリング方向の+1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームであり、第2の回折ビームは、シヤリング方向の-1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームである。測定面内の所与の位置における干渉ビームマップの値は、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むと共に測定面内のその位置と重なるレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして回折格子を用いる場合に、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与すると共に測定面内で異なる重なりを有する干渉ビームの全ての干渉強度の和によって与えられる。
【0231】
[000227] 本発明のいくつかの実施形態は、概ね
図12に示されている単位セル50の形態の単位セルを有する回折格子に関するが、円形貫通アパーチャ51は、隣接するアパーチャの中心間の距離が回折格子全体にわたって不均一であり変動するように分布している。
【0232】
[000228]
図21Aに示されているように、典型的に、回折格子は複数のアパーチャ51を含み、これらのアパーチャ51は、隣接するアパーチャ51の中心間の距離が回折格子全体にわたって均一であるように分布している。これは、円形貫通アパーチャ51の各々の中心が方形アレイの複数の位置62のうち1つと一致するようにアパーチャ51を配置することによって達成される。これに対して、
図21Bで示されているように、いくつかの実施形態に従った回折格子は、円形貫通アパーチャ51の各々の中心64が方形アレイの複数の位置62のうち1つに近接しているがずれており、このずれの量が回折格子全体にわたって変動するようにアパーチャ51を配置することによって、形成される。
【0233】
[000229] 隣接するアパーチャの中心間の距離を、回折格子のローカルピッチと呼ぶことができる。本発明者らは、ローカルピッチの変動を導入することによって、回折格子が回折パターンを変更することを認識した。特に、本発明者らは、このようなローカルピッチ変動が、低次回折ビームよりも高次回折ビームを抑制することを認識した。次いで、有利には、これによって、2次元チェッカーボード格子が用いられる場合には存在しない位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する追加の干渉ビーム(例えば
図14B及びこれに伴う記載を参照のこと)の影響の効果が低減する。
【0234】
[000230] シミュレーションによって、50%のデューティサイクルを有するレチクルレベルの1次元回折格子(すなわち第1のパターン付き領域31)及びウェーハレベルのピンホールアレイ格子を用いる収差マップ測定システムでは、格子全体にわたるランダムなピッチ変動を用いて、約2倍の利得誤差及びクロストーク誤差の全体的な減少が得られることが分かった。
【0235】
[000231] 回折格子全体にわたる隣接するアパーチャ51の中心64間の距離は、ランダム又は擬似ランダムとすることができる。
【0236】
[000232] 高次回折ビームの抑制を増大するようにローカルピッチの変動を増大させることが望ましい場合がある。しかしながら、回折格子が破裂せず、使用中に破裂させることなく格子のたるみを軽減するよう充分にピンと張れるように、最大のローカルピッチ変動を与えてもよい。例えば、隣接するアパーチャ間には少なくとも最小距離が存在することを保証するのが望ましい場合がある。最大のローカルピッチ変動は、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の公称距離との比に依存し得ることは認められよう。例えば、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の公称距離との比が公称値の約0.4に等しいピンホールアレイでは(方程式(5)を参照のこと)、ピッチ変動なしの2つの隣接するアパーチャ間の最小距離はピッチの約0.2倍である。公称ピッチの±10%の回折格子全体にわたる隣接するアパーチャの中心間64間の距離の変動が導入された場合、2つの隣接するアパーチャ間の最小距離は約0~約0.4の範囲内であり得る。
【0237】
[000233] いくつかの実施形態において、回折格子全体にわたる隣接するアパーチャの中心64間の距離の変動は、公称距離±10%未満とすることができる。いくつかの実施形態において、回折格子全体にわたる隣接するアパーチャの中心間の距離の変動は、公称距離±5%とすることができる。すなわち、ローカルピッチは公称ピッチの95%~105%の間で変動し得る。
【0238】
[000234] いくつかの実施形態において、回折格子全体にわたる隣接するアパーチャ51の中心64間の距離の分布は、低い値から高い値まで概ね均一である。例えば、回折格子全体にわたる隣接するアパーチャの中心間の距離のランダムな変動は公称距離±5%であるので、低い値は公称ピッチの95%であり、高い値は公称ピッチの105%であり得る。
図22に、回折格子全体にわたる隣接するアパーチャ51の中心64間の距離の分布70の一例が示されている。
【0239】
[000235] いくつかの実施形態において、公称位置62からの各アパーチャ51のずれの分布は、低い値から高い値まで概ね均一である。
【0240】
[000236] いくつかの実施形態において、回折格子の軸方向における公称位置62からの各アパーチャ51のずれの分布は、低い値から高い値まで第1において概ね均一である。
【0241】
[000237] 例えば、アパーチャ51は、円形貫通アパーチャ51の各々の中心が方形アレイの複数の位置62のうち1つに近接すると共にこの1つの位置からずれており、このずれの量が回折格子全体にわたって変動するように、配置され得る。回折格子の軸は、方形アレイの複数の位置の軸とすることができる。回折格子の軸をx方向及びy方向と呼ぶことができる。
【0242】
[000238] 例えば、x方向における公称位置からのずれΔxの分布は均一とすることができ、y方向における公称位置からのずれΔyの分布は均一とすることができる。
【0243】
[000239] 本発明のいくつかの実施形態は、投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子を設計する方法に関する。回折格子は、
図21Bに示され、上述したタイプのピンホールアレイである。
【0244】
[000240] 方法は、膜上で方形アレイの複数の位置62を選択することを含み得る。方形アレイ内の隣接する位置は、方形アレイの軸に対して平行な2つの方向で公称ピッチpnだけ分離され得る。方法は更に、方形アレイの位置62の各々に近接しているがずれているアパーチャ51の位置を以下のように選択することを含み得る。具体的には、方形アレイの位置62の各々について、±|xmax|間の第1の乱数又は擬似乱数Nx、及び、±|ymax|間の第2の乱数又は擬似乱数数Ny。例えば、xmax及びymaxは双方とも、公称ピッチの設定された分数、例えば0.1pnに等しくすることができる。各アパーチャ51の位置は、方形アレイの位置62の1つに近接しており、アパーチャの中心が方形アレイ内のその位置からずれていて、このずれが、方形アレイの軸のうち第1のものに平行な距離Nx及び方形アレイの軸のうち第1のものに平行な距離Nyであるように選択される。
【0245】
[000241]
図23Aから
図23Dは、第1の25のゼルニケ係数及び255nmの公称ピッチを有する格子について、百分率誤差として方程式(7)によって規定された誤差行列Eの要素のプロットを示す。
図23Aから
図23Dでは、実際のゼルニケ係数c
actualはZ
inと表記された軸に対応し、再構成されたゼルニケ係数c
reconstructedはZ
outと表記された軸に対応する。
図23Aから
図23Cの各々は、アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の公称距離との比が公称値の約0.4に等しく、ローカルピッチ変動がそれぞれ異なるピンホール格子の誤差行列Eを表す。具体的には、
図23Aは、公称ピッチの0.1倍のローカルピッチ変動を有するピンホール格子を表し、
図23Bは、公称ピッチの0.2倍のローカルピッチ変動を有するピンホール格子を表し、
図23Cは、公称ピッチの0.3倍のローカルピッチ変動を有するピンホール格子を表す。
図23Dは、アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の公称距離との比が公称値の0.9に等しく(すなわち約0.36)、公称ピッチの0.1倍のローカルピッチ変動を有するピンホール格子の誤差行列Eを表す。
図23Aから
図23Dから、ローカルピッチ変動が増大するにつれて誤差行列Eの要素が低減することが分かる。更に、
図23Dから、このようなローカルピッチ変動を、アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の公称距離との最適化した比(例えば約0.36)と組み合わせて、誤差行列Eの要素を更に低減できることが分かる(例えば
図16A、
図16C、及び
図23Dとの比較によって)。
【0246】
[000242] (a)ピンホールアレイの公称ピッチと(b)ローカルピッチ変動を共に最適化することによって達成できるこの追加の利点は、
図24Aから
図24Dを検討することから理解できる。
【0247】
[000243]
図24Aから
図24Dは、第1の25のゼルニケ係数及び1414nmの公称ピッチを有する格子について、百分率誤差として方程式(7)によって規定された誤差行列Eの要素のプロットを示す。
図24Aから
図24Dでは、実際のゼルニケ係数c
actualはZ
inと表記された軸に対応し、再構成されたゼルニケ係数c
reconstructedはZ
outと表記された軸に対応する。
図24Aは、アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の公称距離との比が公称値の約0.4に等しく、ローカルピッチ変動が存在しない(従って
図19Aと同一である)ピンホール格子の誤差行列Eを表す。
図24Bは、アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の公称距離との比が公称値の0.9倍に等しく(すなわち約0.36の比)、ローカルピッチ変動が存在しない(従って
図19Bと同一である)ピンホール格子の誤差行列Eを表す。
【0248】
[000244]
図24C及び
図24Dの各々は、アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の公称距離との比が公称値の0.9倍に等しく(すなわち約0.36の比)、ローカルピッチ変動がそれぞれ異なるピンホール格子の誤差行列Eを表す。具体的には、
図24Cは、公称ピッチの0.1倍のローカルピッチ変動を有するピンホール格子を表し、
図24Dは、公称ピッチの0.2倍のローカルピッチ変動を有するピンホール格子を表す。
【0249】
[000245] いくつかの実施形態において、上述した回折格子は自己支持型とすることができる。使用時、回折格子に吸収層のためのサポートを設けることができる。サポートは、吸収層の周辺部にのみ接触し得る。すなわちサポートは、フレームの形態とすることができ、吸収層の中央部に隣接しない。このような機構では、吸収層の中央部において、吸収層は自己支持型と考えることができる。これを達成するため、吸収層をサポート上でピンと張ることができる(例えば概ね平面形状を維持するように)。
【0250】
[000246] 有利には、吸収層の中央部が自己支持型である実施形態において、格子は、例えば透過性支持層を必要としない。このような機構は、EUV放射を用いる投影システムの収差マップを決定するための位相ステッピング測定システムで使用するには特に有益である。このような透過性支持層を用いると、回折格子を透過したEUV放射の量が著しく低減するからである。
【0251】
[000247] いくつかの実施形態では、上述した回折格子において、(アパーチャが形成される)基板は放射吸収層を含む。放射吸収層は、例えば、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、又はアルミニウム(Al)等の金属から形成され得る。
【0252】
[000248] いくつかの実施形態において、吸収層はセラミックを含み得る。セラミックは、EUV放射に対して比較的高い消光係数を有する金属又は半金属コンポーネントと、非金属コンポーネントと、を含み得る。双方のコンポーネントは、EUVに対して比較的1に近い屈折率を有し得る。セラミックは窒化アルミニウム(AlN)を含み得る。いくつかの実施形態において、吸収層は窒化アルミニウム(AlN)を含み得る。
【0253】
[000249] いくつかの実施形態では、上述した回折格子において、(アパーチャが形成される)基板は更に支持層を含む。貫通アパーチャは、支持層と放射吸収層の双方を貫通し得る。支持層は、例えばSiNから形成され得る。
【0254】
[000250] 上述した実施形態は位相ステッピング信号の第1高調波を用いるが、代替的な実施形態では、位相ステッピング信号の更に高次の高調波を代わりに使用してもよいことは認められよう。
【0255】
[000251] 上述した実施形態は、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子31を含む第1のパターン付き領域31を用いるが、代替的な実施形態では、他の第1のパターン付き領域31が異なる幾何学的形状を使用してもよいことは認められよう。例えば、いくつかの実施形態において、第1のパターン付き領域31は、50%のデューティサイクルを有する2次元チェッカーボード回折格子を含み得る。
【0256】
[000252] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。考えられる他の用途は、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。
【0257】
[000253] 以上、本発明の特定の実施形態を説明してきたが、本発明は以上の説明以外にも実施できることが理解されるであろう。上記の説明は例示を意図したものであって制限的なものではない。したがって、上記の発明に以下に記載の特許請求の範囲から逸脱することなく変更を加えることができることは当業者には明らかであろう。特に、本発明の一態様について開示された特徴は、本発明の任意の他の態様と組み合わせることができる。
【0258】
[000254] 文脈上許される場合、本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの任意の組み合わせにおいて実装することができる。本発明の実施形態は、1つ以上のプロセッサにより読み取られて実行され得る、機械可読媒体に記憶された命令として実装することも可能である。機械可読媒体は、機械(例えばコンピューティングデバイス)により読み取り可能な形態で情報を記憶又は伝送するための任意の機構を含むことができる。例えば機械可読媒体は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光、音響又は他の形態の伝搬信号(例えば搬送波、赤外信号、デジタル信号など)、及び他のものを含むことができる。さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令は、特定のアクションを実行するものとして本明細書で説明されることがある。しかしながら、そのような説明は単に便宜上のものであり、そのようなアクションは実際には、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行するコンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラ、又は他のデバイスから生じ、実行する際、アクチュエータ又は他のデバイスが物質世界と相互作用し得ることを理解すべきである。
【0259】
[000255] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることは理解されよう。上記の説明は例示的であり、限定的ではない。それ故、下記に示す特許請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。
【0260】
[000256] 条項
1.投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子であって、回折格子は円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を含み、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は0.34~0.38である、回折格子。
2.円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は約0.35~0.37である、条項1に記載の回折格子。
3.円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は約0.36である、条項1又は2に記載の回折格子。
4.円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして回折格子を用いる場合に利得誤差及びクロストーク誤差を最小化する最適値に近く、位相ステッピング測定システムの再構成アルゴリズムは、格子がチェッカーボード格子の形態であることを想定する、条項1から3のいずれかに記載の回折格子。
5.円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、測定面内の中央領域において干渉ビームマップの変動を最小化する最適値に近く、測定面内の所与の位置における干渉ビームマップの値は、ゼロ収差に対して50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして回折格子を用いる場合に生じる振動位相ステッピング信号の第1高調波の振幅によって与えられ、測定面内の中央領域は、回折格子を照明するレチクルレベルパターニングデバイスからの0次回折ビームから生じる第1及び第2の回折ビーム間の重なりに対応し、第1の回折ビームはシヤリング方向の+1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームであり、第2の回折ビームはシヤリング方向の-1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームである、条項1から4のいずれかに記載の回折格子。
6.投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子であって、回折格子は円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を含み、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして回折格子を用いる場合に利得誤差及びクロストーク誤差を最小化する最適値に近く、位相ステッピング測定システムの再構成アルゴリズムは、格子がチェッカーボード格子の形態であることを想定する、回折格子。
7.投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子であって、回折格子は円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を含み、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、測定面内の中央領域において干渉ビームマップの変動を最小化する最適値に近く、測定面内の所与の位置における干渉ビームマップの値は、ゼロ収差に対して50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして回折格子を用いる場合に生じる振動位相ステッピング信号の第1高調波の振幅によって与えられ、測定面内の中央領域は、回折格子を照明するレチクルレベルパターニングデバイスからの0次回折ビームから生じる第1及び第2の回折ビーム間の重なりに対応し、第1の回折ビームはシヤリング方向の+1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームであり、第2の回折ビームはシヤリング方向の-1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームである、回折格子。
8.投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子であって、回折格子は円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を含み、円形貫通アパーチャは、隣接するアパーチャの中心間の距離が回折格子全体にわたって不均一であり変動するように分布している、回折格子。
9.回折格子全体にわたる隣接するアパーチャの中心間の距離の変動はランダム又は擬似ランダムである、条項8に記載の回折格子。
10.回折格子全体にわたる隣接するアパーチャの中心間の距離の変動は公称距離±10%未満である、条項9の条項8に記載の回折格子。
11.回折格子全体にわたる隣接するアパーチャの中心間の距離の変動は公称距離±5%である、条項10に記載の回折格子。
12.回折格子全体にわたる隣接するアパーチャの中心間の距離の分布は、低い値から高い値まで概ね均一である、条項8から11のいずれか一項に記載の回折格子。
13.アパーチャの各々の公称位置からのずれの分布は、低い値から高い値まで概ね均一である、条項8から12のいずれか一項に記載の回折格子。
14.回折格子の軸の方向におけるアパーチャの各々の公称位置からのずれの分布は、低い値から高い値まで概ね均一である、条項13に記載の回折格子。
15.円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は0.34~0.38である、条項8から13のいずれか一項に記載の回折格子。
16.円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は約0.35~0.37である、条項15に記載の回折格子。
17.円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は約0.36である、条項15に記載の回折格子。
18.円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして回折格子を用いる場合に利得誤差及びクロストーク誤差を最小化する最適値に近く、位相ステッピング測定システムの再構成アルゴリズムは、格子がチェッカーボード格子の形態であることを想定する、条項8から17のいずれか一項に記載の回折格子。
19.円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、測定面内の中央領域において干渉ビームマップの変動を最小化する最適値に近く、測定面内の所与の位置における干渉ビームマップの値は、ゼロ収差に対して50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして回折格子を用いる場合に生じる振動位相ステッピング信号の第1高調波の振幅によって与えられ、測定面内の中央領域は、回折格子を照明するレチクルレベルパターニングデバイスからの0次回折ビームから生じる第1及び第2の回折ビーム間の重なりに対応し、第1の回折ビームはシヤリング方向の+1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームであり、第2の回折ビームはシヤリング方向の-1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームである、条項8から18のいずれかに記載の回折格子。
20.回折格子は自己支持型である、条項1から19のいずれかに記載の回折格子。
21.基板は放射吸収層を含む、条項1から20のいずれかに記載の回折格子。
22.基板は更に支持層を含み、貫通アパーチャは支持層及び放射吸収層の双方を貫通している、条項21に記載の回折格子。
23.投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子を設計する方法であって、回折格子は円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を含み、方法は、収差マップの再構成における誤差を実質的に最小化する、円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比を選択することを含む、方法。
24.円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして回折格子を用いる場合に利得誤差及びクロストーク誤差を実質的に最小化するように選択され、位相ステッピング測定システムの再構成アルゴリズムは、格子がチェッカーボード格子の形態であることを想定し、任意選択的に、投影システムの収差マップを決定するための位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして回折格子を用いる場合に利得誤差及びクロストーク誤差を実質的に最小化するように選択することは、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて回折格子を用いる場合のためである、条項23に記載の方法。
25.円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、測定面内の中央領域において干渉ビームマップの変動を最小化する最適値に近く、測定面内の所与の位置における干渉ビームマップの値は、ゼロ収差に対して投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして回折格子を用いる場合に生じる振動位相ステッピング信号の第1高調波の振幅によって与えられ、測定面内の中央領域は、回折格子を照明するレチクルレベルパターニングデバイスからの0次回折ビームから生じる第1及び第2の回折ビーム間の重なりに対応し、第1の回折ビームはシヤリング方向の+1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームであり、第2の回折ビームはシヤリング方向の-1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームである、条項23又は条項24に記載の方法。
26.投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子を設計する方法であって、回折格子は円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を含み、方法は、膜上で方形アレイの複数の位置を選択することと、方形アレイの複数の位置の各々に近接しているがずれているアパーチャの位置を選択することと、を含み、アパーチャの位置を選択することは、±|xmax|間の第1の乱数又は擬似乱数数Nxと、±|ymax|間の第2の乱数又は擬似乱数Nyとを発生させることを含み、アパーチャの位置は、アパーチャの中心が方形アレイ内の近接した位置からずれていて、このずれが、方形アレイの軸のうち第1のものに平行な距離Nx及び方形アレイの軸のうち第1のものに平行な距離Nyであるように選択される、方法。
27.条項23から26のいずれか一項に記載の方法に従って設計された回折格子。
28.投影システムの収差マップを決定する測定システムであって、パターニングデバイスと、パターニングデバイスを放射で照明するように配置された照明システムであって、パターニングデバイスは、放射ビームを受光すると共に複数の第1の回折ビームを形成するように配置された第1のパターン付き領域を含み、第1の回折ビームはシヤリング方向に分離している、照明システムと、条項1から22のいずれか一項又は条項27に記載の2次元回折格子を含む第2のパターン付き領域と放射検出器とを含むセンサ装置と、を備え、投影システムは、第1の回折ビームをセンサ装置上に投影するように構成され、第2のパターン付き領域は、投影システムから第1の回折ビームを受光すると共に第1の回折ビームの各々から複数の第2の回折ビームを形成するように配置され、測定システムは更に、パターニングデバイス及びセンサ装置のうち少なくとも1つをシヤリング方向に移動させるように構成された位置決め装置と、コントローラと、を備え、コントローラは、第1のパターニングデバイス及びセンサ装置のうち少なくとも1つをシヤリング方向に移動させるように位置決め装置を制御して、放射検出器の各部分によって受光される放射の強度がシヤリング方向の移動の関数として変動して振動信号を形成するようにし、放射検出器から、放射検出器上の複数の位置における振動信号の高調波の位相を決定し、放射検出器上の複数の位置における振動信号の高調波の位相から、投影システムの収差マップを特徴付ける係数のセットを決定する、ように構成されている、測定システム。
29.条項28の測定システムを備えるリソグラフィ装置。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子であって、前記回折格子は円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を含み、前記円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は0.34~0.38である、回折格子。
【請求項2】
前記円形アパーチャの前記半径と隣接するアパーチャの前記中心間の前記距離との前記比は、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして前記回折格子を用いる場合に利得誤差及びクロストーク誤差を最小化する最適値に近く、前記位相ステッピング測定システムの再構成アルゴリズムは、前記格子がチェッカーボード格子の形態であることを想定する、請求項1に記載の回折格子。
【請求項3】
前記円形アパーチャの前記半径と隣接するアパーチャの前記中心間の前記距離との前記比は、測定面内の中央領域において干渉ビームマップの変動を最小化する最適値に近く、
前記測定面内の所与の位置における前記干渉ビームマップの値は、ゼロ収差に対して50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして前記回折格子を用いる場合に生じる振動位相ステッピング信号の第1高調波の振幅によって与えられ、
前記測定面内の前記中央領域は、前記回折格子を照明する前記レチクルレベルパターニングデバイスからの0次回折ビームから生じる第1及び第2の回折ビーム間の重なりに対応し、前記第1の回折ビームはシヤリング方向の+1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームであり、前記第2の回折ビームはシヤリング方向の-1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームである、請求項1から2のいずれかに記載の回折格子。
【請求項4】
投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子であって、前記回折格子は円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を含み、
前記円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして前記回折格子を用いる場合に利得誤差及びクロストーク誤差を最小化する最適値に近く、前記位相ステッピング測定システムの再構成アルゴリズムは、前記格子がチェッカーボード格子の形態であることを想定する、回折格子。
【請求項5】
投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子であって、前記回折格子は円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を含み、
前記円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比は、測定面内の中央領域において干渉ビームマップの変動を最小化する最適値に近く、
前記測定面内の所与の位置における前記干渉ビームマップの値は、ゼロ収差に対して50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして前記回折格子を用いる場合に生じる振動位相ステッピング信号の第1高調波の振幅によって与えられ、
前記測定面内の前記中央領域は、前記回折格子を照明する前記レチクルレベルパターニングデバイスからの0次回折ビームから生じる第1及び第2の回折ビーム間の重なりに対応し、前記第1の回折ビームはシヤリング方向の+1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームであり、前記第2の回折ビームはシヤリング方向の-1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームである、回折格子。
【請求項6】
投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子であって、前記回折格子は円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を含み、
前記円形貫通アパーチャは、隣接するアパーチャの中心間の距離が前記回折格子全体にわたって不均一であり変動するように分布している、回折格子。
【請求項7】
前記回折格子全体にわたる隣接するアパーチャの前記中心間の前記距離の前記変動はランダム又は擬似ランダムである、請求項6に記載の回折格子。
【請求項8】
前記回折格子全体にわたる隣接するアパーチャの前記中心間の前記距離の前記変動は公称距離±10%未満である、請求項6又は7に記載の回折格子。
【請求項9】
前記円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの前記中心間の前記距離との比は0.34~0.38である、請求項6
又は7に記載の回折格子。
【請求項10】
前記円形アパーチャの前記半径と隣接するアパーチャの前記中心間の前記距離との前記比は、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして前記回折格子を用いる場合に利得誤差及びクロストーク誤差を最小化する最適値に近く、前記位相ステッピング測定システムの再構成アルゴリズムは、前記格子がチェッカーボード格子の形態であることを想定する、請求項6
又は7に記載の回折格子。
【請求項11】
前記円形アパーチャの前記半径と隣接するアパーチャの前記中心間の前記距離との比は、測定面内の中央領域において干渉ビームマップの変動を最小化する最適値に近く、
前記測定面内の所与の位置における前記干渉ビームマップの値は、ゼロ収差に対して50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を含むレチクルレベルパターニングデバイスと組み合わせて投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのウェーハレベルパターニングデバイスとして前記回折格子を用いる場合に生じる振動位相ステッピング信号の第1高調波の振幅によって与えられ、
前記測定面内の前記中央領域は、前記回折格子を照明する前記レチクルレベルパターニングデバイスからの0次回折ビームから生じる第1及び第2の回折ビーム間の重なりに対応し、前記第1の回折ビームはシヤリング方向の+1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームであり、前記第2の回折ビームはシヤリング方向の-1次回折ビームであると共に非シヤリング方向の0次回折ビームである、請求項6
又は7に記載の回折格子。
【請求項12】
投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子を設計する方法であって、前記回折格子は円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を含み、前記方法は、
前記収差マップの再構成における誤差を実質的に最小化する、前記円形アパーチャの半径と隣接するアパーチャの中心間の距離との比を選択することを含む、方法。
【請求項13】
投影システムの収差マップを決定する位相ステッピング測定システムのための回折格子を設計する方法であって、前記回折格子は円形貫通アパーチャの2次元アレイが設けられた基板を含み、前記方法は、
膜上で方形アレイの複数の位置を選択することと、
前記方形アレイの複数の位置の各々に近接しているがずれているアパーチャの位置を選
択することと、
を含み、アパーチャの前記位置を選択することは、±|x
max|間の第1の乱数又は擬似乱数N
xと、±|y
max|間の第2の乱数又は擬似乱数N
yとを発生させることを含み、前記アパーチャの前記位置は、前記アパーチャの中心が前記方形アレイ内の前記近接した位置からずれていて、このずれが、前記方形アレイの軸のうち第1のものに平行な距離N
x及び前記方形アレイの前記軸のうち第1のものに平行な距離N
yであるように選択される、方法。
【請求項14】
投影システムの収差マップを決定する測定システムであって、
パターニングデバイスと、
前記パターニングデバイスを放射で照明するように配置された照明システムであって、前記パターニングデバイスは、放射ビームを受光すると共に複数の第1の回折ビームを形成するように配置された第1のパターン付き領域を含み、前記第1の回折ビームはシヤリング方向に分離している、照明システムと、
請求項1
、2、4から
7のいずれか一項に記載の2次元回折格子を含む第2のパターン付き領域と放射検出器とを含むセンサ装置と、
を備え、前記投影システムは、前記第1の回折ビームを前記センサ装置上に投影するように構成され、前記第2のパターン付き領域は、前記投影システムから前記第1の回折ビームを受光すると共に前記第1の回折ビームの各々から複数の第2の回折ビームを形成するように配置され、
前記測定システムは更に、前記パターニングデバイス及び前記センサ装置のうち少なくとも1つを前記シヤリング方向に移動させるように構成された位置決め装置と、
コントローラと、を備え、前記コントローラは、
前記第1のパターニングデバイス及び前記センサ装置のうち少なくとも1つを前記シヤリング方向に移動させるように前記位置決め装置を制御して、前記放射検出器の各部分によって受光される放射の強度が前記シヤリング方向の前記移動の関数として変動して振動信号を形成するようにし、
前記放射検出器から、前記放射検出器上の複数の位置における前記振動信号の高調波の位相を決定し、
前記放射検出器上の前記複数の位置における前記振動信号の高調波の前記位相から、前記投影システムの前記収差マップを特徴付ける係数のセットを決定する、
ように構成されている、測定システム。
【請求項15】
請求項14の測定システムを備えるリソグラフィ装置。
【国際調査報告】