(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】改善された耐汚染性を有する熱可塑性ポリウレタン
(51)【国際特許分類】
C08G 18/66 20060101AFI20240423BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20240423BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20240423BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C08G18/66 007
C08G18/42 008
C08G18/75 080
C08G18/76 057
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571590
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2022062500
(87)【国際公開番号】W WO2022243087
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/094889
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン リヒター
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康之
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ドーメン
(72)【発明者】
【氏名】シー チン グオ
(72)【発明者】
【氏名】ダー ハイ イー
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA08
4J034CA04
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC03
4J034CC12
4J034CC26
4J034CC45
4J034CC62
4J034CC65
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DC02
4J034DC43
4J034DF01
4J034DF16
4J034DF22
4J034DG01
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG06
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA08
4J034HB08
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA01
4J034JA32
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC16
4J034KC17
4J034KC23
4J034KC35
4J034KD02
4J034KD08
4J034KE02
4J034QA01
4J034QA03
4J034QB14
4J034QB17
4J034QD02
4J034QD04
4J034RA03
4J034RA07
4J034RA14
(57)【要約】
本発明は高い透明性および改善された耐汚染性を有する熱可塑性ポリウレタン(TPU)、そのような熱可塑性ポリウレタンを含む成形体の製造方法およびそのような熱可塑性ポリウレタンの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の成分:
(a)少なくとも1つのポリイソシアネート組成物と、
(b)少なくとも1つの連鎖延長剤と、
(c)ポリオール混合物と
を反応させることによって得ることができるかまたは得られた熱可塑性ポリウレタンであって、前記ポリオール混合物が500~3000g/モルの範囲の分子量Mwを有し且つ少なくとも1つの芳香族ポリエステルブロック(B1)を有するポリオール(P1)と、他の脂肪族ポリオールとを含む、前記熱可塑性ポリウレタン。
【請求項2】
前記ポリオール(P1)が、700~2500g/モルの範囲の分子量Mwを有する、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項3】
前記少なくとも1つの芳香族ポリエステルブロック(B1)が、ポリエチレンテレフタレートブロックまたはポリブチレンテレフタレートブロックを含む、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項4】
前記少なくとも1つの芳香族ポリエステルブロック(B1)が、ポリエチレンテレフタレートを含む、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項5】
前記他の脂肪族ポリオールが、ポリエーテルオール、ポリエステルオール、ポリカーボネートアルコール、およびハイブリッドポリオールからなる群から選択される、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項6】
前記他の脂肪族ポリオールが、ポリエステルオールまたはポリカーボネートジオールである、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項7】
前記少なくとも1つのポリイソシアネート組成物が、脂肪族または芳香族ジイソシアネートを含む、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項8】
前記脂肪族ポリイソシアネート組成物が、4,4’-、2,4’-および/または2,2’-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(H12-MDI)を含む、請求項7に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項9】
前記芳香族ポリイソシアネート組成物が、2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含む、請求項7に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項10】
前記ポリオール組成物中に存在するポリオール(P1)および他の脂肪族ポリオールが、95:5~5:95、好ましくは75:25~5:95、最も好ましくは50:50~10:90の質量比で使用される、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項11】
前記熱可塑性ポリウレタンの全透過率が、DIN 11664-4の試験規格に準拠して86%よりも高い、請求項1から10までのいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項12】
前記熱可塑性ポリウレタンの硬さが、DIN ISO 7619-1の試験規格に準拠してショアA硬さ80~ショアD70である、請求項1から10までのいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項13】
オレイン酸中で16時間、55℃での処理後の熱可塑性ポリウレタンの汚染が、ASTM E313の試験規格に準拠して、デルタE値<7となる、請求項1から10までのいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項14】
人工皮脂溶液中で7日間、℃での処理後の熱可塑性ポリウレタンの汚染が、ASTM E313の試験規格に準拠して、デルタE値<1.2となる、請求項1から10までのいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項15】
成形体(SC)の製造方法であって、
(A) 熱可塑性ポリウレタンを調製し、前記調製が、
(a)少なくとも1つのポリイソシアネート組成物と、
(b)少なくとも1つの連鎖延長剤と
(c)ポリオール混合物と
の反応を含み、少なくともポリオール混合物が500~3000g/モルの範囲の分子量Mwを有し且つ少なくとも1つの芳香族ポリエステルブロック(B1)を有するポリオール(P1)と、他の脂肪族ポリオールとを含むこと、および
(B) 前記熱可塑性ポリウレタンから成形体(SC)を製造すること
を含む、前記製造方法。
【請求項16】
(B)の成形体(SC)が、押出法、射出成形法、または焼結法によって、または溶液から製造される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項15または16に記載の方法によって得ることができるかまたは得られた成形体。
【請求項18】
前記成形体が携帯電話のカバーである、請求項17に記載の成形体。
【請求項19】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン製の携帯電話のカバー。
【請求項20】
リストバンド、機器の表面コーティング、パッケージングのコーティング、アンテナ、ボタン、ゲーム装置およびイヤホンの表面などの、消費者電子機器用途における、請求項1から14までのいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高い透明性および改善された耐汚染性を有する熱可塑性ポリウレタン、そのような熱可塑性ポリウレタンを含む成形体の製造方法、およびそのような熱可塑性ポリウレタンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
個人用電子機器、例えばスマートフォン、タブレットまたは携帯型コンピュータのための保護ケースおよび他の部品またはアクセサリを製造するために有用なポリマー材料についての需要が存在する。
【0003】
比較的透明な外観または淡いまたは明るい色の保護ケースの見た目を好む消費者もいる。さらに、比較的柔らかく、触っても粘ついたりべとついたりしない保護ケースの感触を好む消費者もいる。さらに、保護ケースのために適した材料の開発についての焦点は、最近では、既に数週間または数ヶ月使用した後の、使用済みカバーの好ましくない黄ばみまたは茶色がかった見た目を回避するために、高い耐汚染性を達成するほうに向かっている。従って、材料の適した硬さと他の良好な機械的特性についての要件と共に、高い透明性および耐汚染性が必要とされる。
【0004】
様々な用途のための熱可塑性ポリウレタンは原則的に先行技術から公知である。供給原料を変化させることによって、特性の異なるプロファイルを得ることが可能である。
【0005】
国際公開第2018115460号(WO2018115460A1)は、ポリイソシアネート組成物、連鎖延長剤およびポリオール組成物を反応させることによって得ることができるかまたは得られた熱可塑性ポリウレタンであって、前記ポリオール組成物が、1500~2500g/モルの範囲の分子量MWを有し且つ少なくとも1つの芳香族ポリエステルブロック(B1)を有する少なくとも1つのポリオール(P1)を含む、前記熱可塑性ポリウレタンを開示している。
【0006】
国際公開第2019112757号(WO2019112757A1)は、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートを含むイソシアネート成分、ポリオール成分、およびアルキレン置換スピロ環式化合物を含む連鎖延長剤成分の反応生成物から製造され、耐汚染性並びに透明性を有する熱可塑性ポリウレタン組成物を開示している。
【0007】
高い透明性および改善された耐汚染性を有する、特に人工皮脂およびオレイン酸溶液の汚染によって模倣される天然の体液に対して改善された耐汚染性を有する熱可塑性ポリウレタンは先行技術に開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2018115460号
【特許文献2】国際公開第2019112757号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の概要
上述の需要は本発明の1つ以上の態様によって満たされる。
【0010】
意外なことに、平均分子量(Mw)500~3000g/モルを有し且つ芳香族ポリエステルブロックを有するポリオール(P1)と、他の脂肪族ポリオールとを含むポリオール混合物の反応物を使用することによって、汚染に対して強化された耐性を有する一方で、良好な透明性および他の所望の特性も示す熱可塑性ポリウレタン化合物およびそこから形成される成形体(SC)を提供することが可能であることが判明した。
【0011】
従って、本発明の課題は、少なくとも、(a)少なくとも1つのポリイソシアネート組成物、(b)少なくとも1つの連鎖延長剤、および(c)分子量(Mw)500~3000g/モルおよび少なくとも1つの芳香族ポリエステルブロック(B1)を有するポリオール(P1)と、他の脂肪族ポリオールとを含むポリオール混合物の成分を反応させることによって得ることができるかまたは得られた熱可塑性ポリウレタンを提供することである。
【0012】
本発明の他の課題は、前記熱可塑性ポリウレタンを含む成形体(SC)の製造方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の課題は、前記方法によって得ることができるかまたは得られた成形体を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる課題は、前記熱可塑性ポリウレタン製の携帯電話のカバー、およびリストバンド、機器の表面コーティング、パッケージングのコーティング、アンテナ、ボタン、ゲーム装置およびイヤホンの表面などの、消費者電子機器用途における、前記熱可塑性ポリウレタンの使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の詳細な説明
第1の態様において、本発明は、少なくとも以下の成分:
(a)少なくとも1つのポリイソシアネート組成物と、
(b)少なくとも1つの連鎖延長剤と、
(c)ポリオール混合物と
を反応させることによって得ることができるかまたは得られた熱可塑性ポリウレタンであって、前記ポリオール混合物が500~3000g/モルの範囲の平均分子量(Mw)を有し且つ少なくとも1つの芳香族ポリエステルブロック(B1)を有するポリオール(P1)と、他の脂肪族ポリオールとを含む、前記熱可塑性ポリウレタンに関する。
【0016】
本発明によれば、ポリオール混合物(c)は、500~3000g/モル、好ましくは500~1500g/モルの範囲のMwを有するポリオール(P1)を含む。さらに、ポリオール(P1)は芳香族ポリエステルブロック(B1)を有する。本発明に関し、これは、芳香族ポリエステルブロック(B1)は芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのポリエステル、または脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジオールとのポリエステルであってよいことを意味すると理解される。好ましくは、本発明に関する芳香族ポリエステルブロック(B1)は芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのポリエステルである。適した芳香族ジカルボン酸は例えば、テレフタル酸、イソフタル酸またはフタル酸、好ましくはテレフタル酸である。従って、本発明に関して適したポリオール(P1)は、例えば少なくとも1つのポリエチレンテレフタレートブロックまたは少なくとも1つのポリブチレンテレフタレートブロックを有するものである。好ましくは、芳香族系の繰り返し単位の十分なブロック長を確保するために、芳香族ポリエステルブロック(B1)は相応のポリエステル構造から解糖によって、ポリオール(P1)の合成の間に調製される。好ましい芳香族ブロック長は平均2~3の芳香族の繰り返し単位によって特定される。
【0017】
本発明によれば、前記熱可塑性ポリウレタンは特に緻密な熱可塑性ポリウレタンであることができる。従って、本発明はさらなる実施態様において、前記熱可塑性ポリウレタンが緻密な熱可塑性ポリウレタンである、上述の熱可塑性ポリウレタンに関する。
【0018】
従って、さらなる実施態様において、本発明は、芳香族ポリエステルブロック(B1)が芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのポリエステルである、上述の熱可塑性ポリウレタンに関する。さらなる実施態様において、本発明は、芳香族ポリエステルブロック(B1)がポリエチレンテレフタレートブロックまたはポリブチレンテレフタレートブロックである、上述の熱可塑性ポリウレタンにも関する。さらに好ましい実施態様において、本発明はさらに、芳香族ポリエステルブロック(B1)がポリエチレンテレフタレートブロックである、上述の熱可塑性ポリウレタンに関する。
【0019】
意外なことに、少なくとも、500~3000g/モルの範囲のMwを有し且つ少なくとも1つの芳香族ポリエステルブロック(B1)を有するポリオール(P1)と、他の脂肪族ポリオールとを含むポリオール混合物の使用が、天然の体液に対する非常に良好な耐汚染性、並びにショアA80~ショアD70の適した硬さを有する熱可塑性ポリウレタンをもたらすことが判明した。
【0020】
本発明に関し、適したポリオール(P1)は特に、芳香族ポリエステルに基づくもの、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)またはポリエチレンテレフタレート(PET)である。好ましくは、ここでポリオール(P1)は芳香族ポリエステルをジカルボン酸およびジオールと反応させて、混合された芳香族/脂肪族ポリエステルジオールをもたらすことによって調製される。例えば、本発明に関し、芳香族ポリエステルを固体または液体の形態でジカルボン酸およびジオールと反応させることが可能である。本発明によれば、典型的に使用される芳香族ポリエステルは、ポリオール(P1)中に存在するブロック(B1)よりも高い分子量を有する。
【0021】
本発明によって適したポリエステルポリオール(P1)は典型的には、それぞれポリエステルポリオール(P1)全体に対して20質量%~70質量%、好ましくは30質量%~60質量%、より好ましくは35質量%~55質量%の芳香族ポリエステルブロック(B1)を含む。従って、さらなる実施態様において、本発明は、ポリオール(P1)がポリエステルポリオール(P1)全体に対して20質量%~70質量%の芳香族ポリエステルブロック(B1)を含む、上述の熱可塑性ポリウレタンに関する。
【0022】
本発明によれば、ポリオール(P1)は500~3000の範囲、好ましくは500~2000の範囲、より好ましくは500~1500の範囲のMwを有する。従って、さらなる実施態様において、本発明は、ポリオール(P1)が500~3000g/モルの範囲の分子量Mwを有する、上述の熱可塑性ポリウレタンに関する。
【0023】
平均分子量(Mw)は以下の式を使用して計算され、ここでzはポリエステルポリオールの官能価であり、且つz=2である:
Mw=1000mg/g×[(z×56.106g/モル)/(OHN[mg/g])]
ポリオール(P1)の調製において、好ましくは芳香族ポリエステル、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)またはポリエチレンテレフタレート(PET)が使用される。ポリエチレンテレフタレートは重縮合によって調製される熱可塑性ポリマーである。PETの品質、およびその物理的特性、例えば靱性および耐久性は鎖長に依存する。古いPET合成方法は、ジメチルテレフタレートとエチレングリコールとのエステル交換に基づく。現在、PETはほぼ、テレフタル酸とエチレングリコールとの直接エステル化によってのみ合成されている。同様に、テレフタル酸をブタン1,4-ジオールと反応させて、ポリブチレンテレフタレート(PBT)をもたらすこともできる。この同様の熱可塑性ポリマーは、CRASTIN(登録商標)(DuPont)、POCAN(登録商標)(Lanxess)、ULTRADUR(登録商標)(BASF)、またはENDURAN(登録商標)(SABIC IP)、およびVESTODUR(登録商標)(Evonik)などの商品名で入手可能である。その化学的および物理的/技術的特性は、PETの特性にほぼ相応する。
【0024】
本発明によれば、リサイクルプロセスから得られる芳香族ポリエステル、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)またはポリエチレンテレフタレート(PET)を使用することも可能である。例えば、ポリエチレンテレフタレートをプラスチックのリサイクルプロセスから得られるフレークの形態で使用することができる。この種の材料は典型的には約12,000g/モルの分子量を有する。
【0025】
本発明によれば、適したポリオール(P1)を、より高い分子量を有する芳香族ポリエステル、例えばポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレート、およびジオールを使用して、エステル交換によって得ることもできる。適した反応条件は当業者に自体公知である。
【0026】
さらに、ポリオール(P1)の調製において、特に2~10個の炭素原子を有するジオール、例えばエタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールまたはジ-またはトリエチレングリコール、さらに好ましくはブタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、または環式脂肪族ジオール、例えばシクロヘキサンジメタノール、またはそれらの混合物が使用される。10個を上回る炭素原子を有するジオール、または短いポリエーテルジオール、例えばPTHF250またはPTHF650、または短鎖ポリプロピレングリコール、例えばPPG500を使用することも可能である。使用されるジカルボン酸は例えば、4~12個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の二酸、またはそれらの混合物であってよい。アジピン酸、コハク酸、グルタル酸またはセバシン酸、または上述の酸の混合物を使用することが好ましい。本発明に関してはアジピン酸が特に好ましい。本発明によれば、ポリオール(P1)の調製において、供給原料としてさらなるポリエステルジオール、例えばアジピン酸ブタンジオールまたはアジピン酸エチレンを使用することも可能である。
【0027】
本発明によれば、ポリオール混合物(c)は他の脂肪族ポリオール並びに少なくとも1つのポリオール(P1)を含む。脂肪族ポリオールは好ましくはポリエチレンテレフタレートブロックを有さない。従って、他の実施態様において、本発明は、ポリオール混合物がポリエーテルオール、ポリエステルオール、ポリカプロラクトンアルコール、およびハイブリッドポリオールからなる群から選択される他の脂肪族ポリオールを含む、上述の熱可塑性ポリウレタンを提供する。
【0028】
使用されるイソシアネートに対して反応性の水素原子を有する、より高分子量の化合物は、イソシアネートに対して反応性の化合物を有する一般に公知のポリオールであってよい。
【0029】
ポリオールは基本的に当業者に公知であり、例えば「Kunststoffhandbuch, Band 7, Polyurethane」[プラスチックハンドブック、第7巻、ポリウレタン], Carl Hanser Verlag, 第3版、1993, 第3.1章内に記載されている。ポリオールとして、ポリエステルオールまたはポリエーテルオールを使用することが特に好ましい。ポリエステルポリオールが特に好ましい。ポリカーボネートを使用することも可能である。本発明に関してコポリマーを使用してもよい。本発明によって使用されるポリオールの数平均分子量は好ましくは500g/モル~8000g/モル、好ましくは600g/モル~5000g/モル、特に800g/モル~3000g/モルである。
【0030】
それらは好ましくはイソシアネートに関する平均官能価1.8~2.3、より好ましくは1.9~2.2、特に2を有する。
【0031】
本発明において使用されるポリエーテルオールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラヒドロフラン(PTHF)であってよい。本発明によれば、様々な他の脂肪族ポリエーテルオールが適している。
【0032】
使用される好ましいポリエステルオールは、脂肪族二酸およびジオールに基づくポリエステルオールであってよい。使用されるジオールは好ましくは、2~12個の炭素原子を有するジオール、例えばエタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、またはジエチレングリコールまたはトリエチレングリコール、特にブタン-1,4-ジオール、またはそれらの混合物である。使用される二酸は任意の公知の二酸、例えば、4~12個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の二酸、またはそれらの混合物であってよい。二酸としてアジピン酸を使用することが好ましい。
【0033】
特に好ましい実施態様において、ポリオールは、アジピン酸および1,4-ブタンジオール、または1,4-ブタンジオールとエチレングリコールとの混合物に基づくポリエステルオールであって、800g/モル~3500g/モルのMw範囲における分子量を有するものである。
【0034】
本発明によれば、様々な他のポリエステル、ブロックコポリマー、およびハイブリッドポリオール、例えばポリ(エステル/アミド)も使用可能である。
【0035】
好ましくは、使用されるポリオールは平均官能価1.8~2.3、好ましくは1.9~2.2、特に2を有する。好ましくは、本発明によって使用されるポリオールは第一級ヒドロキシル基のみを有する。
【0036】
本発明によれば、ポリオールを純粋な形態で、またはポリオールと少なくとも1つの溶剤とを含む組成物の形態で使用してよい。適した溶剤は当業者に自体公知である。
【0037】
ポリオール(P1)は好ましくは、脂肪族ポリオールに対して95:5~5:95の範囲の質量比で使用される。さらに好ましい実施態様において、ポリオール(P1)および脂肪族ポリオールは75:25~5:95の範囲、さらに好ましくは50:50~10:90の範囲の質量比で使用される。
【0038】
本発明に関し、熱可塑性ポリウレタンの調製において少なくとも1つの連鎖延長剤(b)および上述のポリオール混合物(c)を使用することが必須である。
【0039】
本発明によれば、1つの連鎖延長剤を使用することが可能であるが、異なる連鎖延長剤の混合物を使用することも可能である。
【0040】
本発明に関して使用される連鎖延長剤は例えば、ヒドロキシルまたはアミノ基を有する、特に2つのヒドロキシルまたはアミノ基を有する化合物であってよい。しかしながら、本発明によれば、異なる化合物の混合物を連鎖延長剤として使用することも可能である。本発明によれば、前記混合物の平均官能価は2である。
【0041】
本発明によれば、連鎖延長剤として、ヒドロキシル基を有する化合物、特にジオールを使用することが好ましい。分子量50g/モル~350g/モルを有する脂肪族、芳香脂肪族、芳香族または脂環式ジオールを使用することが可能であることが好ましい。アルキレン鎖中に2~12個の炭素原子を有するアルカンジオール、特にジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-、オクタ-、ノナ-、デカ-、ウンデカ-、および/またはドデカ-アルキレングリコールが好ましい。本発明について、1,2-エチレングリコール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、および1,4-シクロヘキサンジメタノールが特に好ましい。芳香族化合物、例えばヒドロキノンビス(2-ヒドロキシエチル)エーテルを使用することも可能である。
【0042】
本発明によれば、アミノ基を有する化合物、例えばジアミンを使用することも可能である。ジオールとジアミンとの混合物を使用することも可能である。
【0043】
連鎖延長剤は好ましくは分子量Mw<350g/モルを有するジオールである。本発明によれば、分子量Mw<350g/モルを有する1つだけのジオールを使用して透明な熱可塑性ポリウレタンを調製することが可能である。
【0044】
さらなる実施態様において、1つより多くのジオールが連鎖延長剤として使用される。従って、少なくとも1つのジオールが分子量Mw<350g/モルを有する、連鎖延長剤の混合物を使用することも可能である。1つより多くの連鎖延長剤が使用される場合、第2の、またはさらなる連鎖延長剤も分子量Mw<350g/モルを有し得る。
【0045】
さらなる実施態様において、連鎖延長剤はブタン-1,4-ジオールおよびヘキサン-1,6-ジオールまたはブタン-1,4-ジオールおよびプロパン-1,3-ジオールからなる群から選択される。
【0046】
従って、さらなる実施態様において、本発明は、(b)において使用される連鎖延長剤が分子量Mw<350g/モルを有するジオールである、上述の熱可塑性ポリウレタンに関する。
【0047】
連鎖延長剤、特に分子量Mw<350g/モルを有するジオールは、ポリオール混合物(c)に対して好ましくは40:1~1:10の範囲のモル比で使用される。好ましくは、連鎖延長剤およびポリオール混合物は、20:1~1:9の範囲、さらに好ましくは10:1~1:5の範囲のモル比で使用される。
【0048】
従って、さらなる実施態様において、本発明は、(b)において使用される連鎖延長剤およびポリオール組成物中に存在するポリオール混合物(c)が40:1~1:10のモル比で使用される、上述の熱可塑性ポリウレタンに関する。
【0049】
本発明によれば、少なくとも1つのイソシアネートが使用される。本発明によれば、2つ以上のポリイソシアネートの混合物を使用することも可能である。
【0050】
本発明に関して好ましいポリイソシアネートはジイソシアネート、特に脂肪族または芳香族ジイソシアネート、さらに好ましくは芳香族ジイソシアネートである。
【0051】
従って、さらなる実施態様において、本発明は、ポリイソシアネートが脂肪族または芳香族ジイソシアネートである、上述の熱可塑性ポリウレタンに関する。
【0052】
さらに、本発明に関し、使用されるイソシアネート成分は、先行する反応段階においてOH成分のいくつかがイソシアネートと反応している、予備反応プレポリマーであってよい。それらのプレポリマーはさらなる段階、実際のポリマー反応において残りのOH成分と反応して、熱可塑性ポリウレタンを形成する。プレポリマーの使用は、第二級アルコール基を有するOH成分の使用も可能にする。
【0053】
使用される脂肪族ジイソシアネートは、慣例的な脂肪族および/または脂環式ジイソシアネート、例えばトリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-および/またはオクタ-メチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン 1,5-ジイソシアネート、2-エチルテトラメチレン 1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレン 1,6-ジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレン 1,5-ジイソシアネート、ブチレン 1,4-ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレン 1,6-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4-および/または1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン 1,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキサン 2,4-および/または2,6-ジイソシアネート、メチレンジシクロヘキシル 4,4’-、2,4’-および/または2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)である。
【0054】
好ましい脂肪族ポリイソシアネートは、ヘキサメチレン 1,6-ジイソシアネート(HDI)、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサンおよびメチレンジシクロヘキシル 4,4’-、2,4’-および/または2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)であり、ヘキサメチレン 1,6-ジイソシアネート(HDI)、メチレンジシクロヘキシル 4,4’-、2,4’-および/または2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)、および1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、またはそれらの混合物が特に好ましい。
【0055】
適した芳香族ジイソシアネートは特にジフェニルメタン 2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン 1,5-ジイソシアネート(NDI)、トリレン 2,4-および/または2,6-ジイソシアネート(TDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニル(TODI)、p-フェニレンジイソシアネート(PDI)、ジフェニルエタン 4,4’-ジイソシアネート(EDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニル 3,3’-ジイソシアネート、ジフェニルエタン 1,2-ジイソシアネートおよび/またはフェニレンジイソシアネートである。
【0056】
本発明に関して特に好ましいイソシアネートは、ジフェニルメタン 2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジイソシアネート(MDI)、およびそれらの混合物である。
【0057】
高官能性イソシアネートの好ましい例は、トリイソシアネート、例えばトリフェニルメタン 4,4’,4’’-トリイソシアネート、およびさらに上述のジイソシアネートのシアヌレート、およびジイソシアネートと水との部分反応によって得られるオリゴマー、例えば上述のジイソシアネートのビウレット、およびさらにセミブロックジイソシアネートと、平均で2より多く、好ましくは3以上のヒドロキシル基を有するポリオールとの制御された反応によって得られるオリゴマーである。
【0058】
さらなる実施態様において、本発明は、ポリイソシアネートが脂肪族ジイソシアネートである、上述の方法に関する。
【0059】
本発明によれば、ポリイソシアネートを純粋な形態で、またはポリイソシアネートと少なくとも1つの溶剤とを含む組成物の形態で使用してよい。適した溶剤は当業者に公知である。適した例は非反応性溶剤、例えば酢酸エチル、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランおよび炭化水素である。
【0060】
本発明によれば、少なくとも1つのポリイソシアネート組成物と、少なくとも1つの連鎖延長剤と、ポリオール混合物との反応において、さらなる供給原料、例えば触媒または助剤および添加剤を追加することが可能である。
【0061】
適した助剤および添加剤は当業者に自体公知である。例は界面活性物質、難燃剤、核形成剤、酸化安定剤、酸化防止剤、潤滑剤および離型助剤、染料および顔料、例えば加水分解、光、熱または変色に対する安定剤、無機および/または有機充填剤、補強剤および可塑剤を含む。適した補助剤および添加剤は、例えばKunststoffhandbuch [Plastics Handbook], volume VII, Vieweg and Hoechtlen著, Carl Hanser Verlag, Munich 1966(103~113ページ)内で見出され得る。
【0062】
少なくとも1つの可塑剤を使用することがさらに好ましい。
【0063】
使用される可塑剤は、TPUおける使用について知られている任意の可塑剤であってよい。それらは例えば、少なくとも1つのフェノール基を含む化合物を含む。そのような化合物は欧州特許出願公開第1529814号明細書(EP1529814A2)内に記載されている。さらに例えば、ジカルボン酸、安息香酸、および少なくとも1つのジオールまたはトリオール、好ましくはジオールに基づき約100~1500g/モルの分子量を有するポリエステルを使用することも可能である。使用される二酸成分は好ましくはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸および/またはテレフタル酸であり、使用されるジオールは好ましくはエタン-1,2-ジオール、ジエチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ジプロピレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオールおよび/またはヘキサン-1,6-ジオールである。ここで、ジカルボン酸の安息香酸に対する比は好ましくは1:10~10:1である。そのような可塑剤は例えば欧州特許出願公開第1556433号明細書(EP1556433Al)内に詳細に記載されている。クエン酸エステル、特にクエン酸トリエチル、クエン酸トリアセチルトリエチル、クエン酸トリ(n-ブチル)、クエン酸アセチルトリ(n-ブチル)、およびクエン酸アセチルトリ(2-エチルヘキシル)に基づく可塑剤も特に好ましい。さらに好ましい可塑剤は、トリアセチン、ジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオールジイソブチレート、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジブトキシエチル、フェニル(C10~C21)アルカンスルホネートの混合物、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル、N-ドデシル-2-ピロリドン、イソデシルベンゾエート、ジフェニルクレジルホスフェート42~47%と、トリフェニルホスフェート20~24%と、ビス(メチルフェニル)フェニルホスフェート20~24%と、トリクレジルホスフェート4~6%との混合物、およびアジピン酸ジエチルヘキシル、脂肪族脂肪酸エステル、トリエチレングリコールジ(2-エチルヘキサノエート)およびジオクチルテレフタレートである。
【0064】
適した触媒も原則的に先行技術から公知である。適した触媒は例えば、スズ、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ビスマス、亜鉛、アルミニウムおよび鉄オルガニルからなる群から選択される有機金属化合物、例えばスズオルガニル化合物、好ましくはスズジアルキル、例えばイソオクタン酸スズ(II)、ジオクタン酸スズ、ジメチルスズ、またはジエチルスズ、または脂肪族カルボン酸のスズオルガニル化合物、好ましくは二酢酸スズ、ジラウリン酸スズ、二酢酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、チタン酸エステル、ビスマス化合物、例えばビスマスアルキル化合物、好ましくはネオデカン酸ビスマスまたは類似物、または鉄化合物、好ましくは鉄(III)アセチルアセトネートである。
【0065】
好ましい実施態様において、触媒はスズ化合物およびビスマス化合物、好ましくはスズアルキル化合物またはビスマスアルキル化合物から選択される。イソオクタン酸スズ(II)およびネオデカン酸ビスマスが特に適している。
【0066】
触媒は典型的には3ppm~2000ppm、好ましくは10ppm~1000ppm、より好ましくは20ppm~500ppm、および最も好ましくは30ppm~300ppmの量で用いられる。
【0067】
本発明によれば、熱可塑性ポリウレタンはDIN 11664-4の試験規格に準拠して86%よりも高い全透過率を有する。
【0068】
本発明によれば、熱可塑性ポリウレタンはDIN ISO 7619-1の試験規格に準拠してショアA硬さ80~ショアD70、好ましくはショアA85~ショアD70の硬さを有する。
【0069】
本発明によれば、ASTM E313の試験規格に準拠して、オレイン酸中で16時間、55℃で処理後の熱可塑性ポリウレタンの汚染はデルタE値<7となり、人工皮脂溶液中で7日間、55℃での処理後はデルタE値<1.2となる。
【0070】
さらなる態様において、本発明は、以下の段階:
(A) 熱可塑性ポリウレタンを調製する段階であって、
(a)少なくとも1つのポリイソシアネート組成物と、
(b)少なくとも1つの連鎖延長剤と
(c)ポリオール混合物と
の反応を含み、前記ポリオール混合物が500~3000g/モルの範囲の分子量Mwを有し且つ少なくとも1つの芳香族ポリエステルブロック(B1)を有するポリオール(P1)と、他の脂肪族ポリオールとを含む、前記段階、および
(B) 前記熱可塑性ポリウレタンから成形体(SC)を製造する段階
を含む、成形体(SC)の製造方法にも関する。
【0071】
本発明の方法は段階(A)および(B)を含む。まず、段階(A)において、少なくとも1つのポリイソシアネート組成物と、少なくとも1つの連鎖延長剤と、ポリオール混合物とを反応させることにより、熱可塑性ポリウレタンが調製される。本発明によれば、このポリオール混合物は、500~3000g/モルの範囲の分子量Mwを有し、且つ上記で定義されたとおり、少なくとも1つの芳香族ポリエステルブロック(B1)、特にポリエチレンテレフタレートブロックを有する少なくとも1つのポリオール(P1)と、他の脂肪族ポリオールとを含む。
【0072】
段階(B)において、成形体(SC)が、段階(A)において得られた熱可塑性ポリウレタンから製造される。本発明に関し、成形体(SC)は例えばフィルムであってもよい。本発明に関し、成形体(SC)は全ての慣例的な方法によって、例えば押出法、射出成形法または焼結法によって、または溶液から製造され得る。
【0073】
従って、さらなる実施態様において、本発明は、成形体(SC)が段階(B)において押出法、射出成形法または焼結法によって、または溶液から製造される、上述の方法に関する。
【0074】
段階(A)の工程は原則的に、自体公知の反応条件下で実施され得る。
【0075】
好ましい実施態様において、段階(A)の工程は、周囲温度に比して高められた温度で、さらに好ましくは50℃~200℃の範囲、より好ましくは55℃~150℃の範囲、特に60℃~120℃の範囲の温度で実施される。
【0076】
本発明によれば、加熱は当業者に公知の任意の適した方式で、好ましくは電気加熱、加熱した油、加熱したポリマー液または水を介した加熱、誘導場、熱風またはIR放射によって実施され得る。
【0077】
生じる熱可塑性ポリウレタンを本発明に従って、成形体(SC)へと加工する。従って、前記方法は段階(A)および(B)を含む。本発明によれば、前記方法はさらなる段階、例えば熱処理を含み得る。
【0078】
本発明の方法により、高い透明性および改善された耐汚染性を有する、特に人工皮脂およびオレイン酸溶液の汚染によって模倣される天然の体液に対して改善された耐汚染性を有する成形体(SC)が得られる。さらなる態様において、本発明は上述の方法によって得ることができるかまたは得られた成形体にも関する。
【0079】
本発明によれば、成形体は携帯電話のカバーであることができる。さらなる態様において、本発明は上述の熱可塑性ポリウレタンから製造される携帯電話のカバーにも関する。
【0080】
本発明によれば、上述の熱可塑性プラスチックは、リストバンド、機器の表面コーティング、パッケージングのコーティング、アンテナ、ボタン、ゲーム装置およびイヤホンの表面などの、消費者電子機器用途において使用され得る。
【0081】
本発明のさらなる実施態様は請求項および実施例から明らかである。上記で列挙され且つ以下で説明される本発明による主題/方法/使用の特徴は各々の場合に特定された組み合わせのみでなく、本発明の範囲から逸脱することなく他の組み合わせにおいても有用であることが理解される。従って、例えば、好ましい特徴と特に好ましい特徴との組み合わせ、またはさらに特徴付けられていない特徴と特に好ましい特徴との組み合わせなども、この組み合わせが明示的に言及されていなくても、暗示的に包含される。
【実施例】
【0082】
測定および試験方法
測定および試験方法を表1に示す。
【0083】
【0084】
さらに、皮脂およびオレイン酸溶液の汚染は以下のように測定される:
オレイン酸試験: 試験プレートをそれぞれ、オレイン酸溶液(シス-オレイン酸、AR 500mL、Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd.製)中に、55℃で16時間または7日間浸漬させた。その後、試料を濯いでオレイン酸を表面から除去し、ΔE測定に使用した。
【0085】
皮脂試験: 試験プレートを人工皮脂溶液(人工皮脂、ZW-PZ-250L、ASTMD 4265-14または4265-98に準拠して調製、Shenzhen Zhongwei equipment co., Ltd.製)中に、55℃で7日間浸漬させた。その後、試料を濯いでオレイン酸を表面から除去し、ΔE測定に使用した。
【0086】
材料
実施例において使用された材料は以下のとおりである。
【0087】
ポリオール1: OH価56、官能価2を有する、アジピン酸および1,4-ブタンジオールに基づくポリエステルポリオール
ポリオール2: OH価112、官能価2を有する、アジピン酸、PET、1,4-ブタンジオールおよび1,3-プロパンジオールに基づくポリエステルポリオール
イソシアネート1: 4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート
連鎖延長剤1: 1,4-ブタンジオール
安定剤1: ポリカルボジイミドに基づく加水分解安定剤
安定剤2: 立体障害アミン
安定剤3: 立体障害フェノール
安定剤4: オキサニリド
添加剤1: モンタン酸エステル
【0088】
芳香族ブロックを含有するポリエステルポリオールの合成
ポリオール2の合成
788.52gのアジピン酸、309.27gの1,3-プロパンジオール(3%過剰)および366.24gの1,4-ブタンジオール(3%過剰)を、熱電対PT100、窒素入口、攪拌機、コンボイ、蒸留塔および加熱装置を備えた4000mlの丸形フラスコ内に添加した。その混合物を120℃に加熱し、均質な溶液が得られた。次いで、1250gのポリエチレンテレフタレート(PET)フレークをこの混合物に添加し、引き続き10ppm=2.5gのTTB(トルエン中、1%のオルトチタン酸テトラ-n-ブチル)を添加した。反応混合物を1.5時間、180℃で攪拌し、引き続き240℃に加熱した。形成される水を連続的に反応容器から除去した。合成の間、透明な溶液が得られるまでPETフレークが分解されることを観察する。この透明な溶液をさらに凝縮し、酸価<1.0mg KOH/gを有する生成物が得られる。
【0089】
最終的な生成物は以下の仕様によって特徴付けられる:
OH価: 112mg KOH/g
酸価: 0.38mg KOH/g
75℃での粘度: 1803mPas
【0090】
TPU合成の一般的な手順
表2からのポリオールを80℃に加熱し、引き続き表2に列挙される他の反応物と混合した。混合物を110℃に達するまで攪拌し、その後、125℃に加熱された金型に流し込んだ。流し込まれたスラップを15時間、80℃でアニールし、引き続きカッティングミルにおいて粒状化した。その顆粒を使用して、射出成形を介して2mm厚の試験プレートを製造した。それらの試験プレートを使用して、表3に要約される機械的特性を測定した。
【0091】
【0092】
【0093】
上記の表3からわかるとおり、比較例1(PETセグメントを含有しないポリオールを用いて調製)は、より高いΔE値を有し、より悪い耐汚染特性を示す。対照的に、例1~例5は改善された耐汚染特性を示す。比較例2(単独のPETセグメントを含有するポリオールを用いて調製)はより良好な耐汚染特性を有するが、それは良好な透明度を有しておらず、いくつかの特定の用途、例えば携帯電話のカバーのためには硬さが高すぎる。
【0094】
本願内で記載される構造、材料、組成物、および方法は、本発明の代表的な例であることが意図されており、本発明の範囲は実施例の範囲によって限定されないことが理解される。当業者は、開示された構造、材料、組成および方法を変化させて本発明を実施でき、そのような変更は本発明の範囲内であるとみなされることを認識する。従って、本発明は、添付の請求項およびその均等物の範囲内にあるそのような修正および変更を含む。
【国際調査報告】