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特表2024-518634マイクロキャリア、細胞複合体およびこれを含む医療用組成物、美容組成物、医療用品および美容用品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-01
(54)【発明の名称】マイクロキャリア、細胞複合体およびこれを含む医療用組成物、美容組成物、医療用品および美容用品
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/16 20060101AFI20240423BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240423BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 8/65 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K47/30
A61K47/36
A61K47/42
A61K8/73
A61K8/65
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572018
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 KR2022012636
(87)【国際公開番号】W WO2023054902
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0130366
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ユンソプ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ソン・キム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076EE37
4C076EE42
4C083AD331
4C083AD411
4C083DD16
(57)【要約】
本発明によれば、第1生体適合性高分子、金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含むコア;および前記コアの全部または一部を囲み、第2生体適合性高分子、金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含むシェル;を含む、コア-シェル構造を有する高分子マイクロ粒子、および前記高分子マイクロ粒子の表面上に形成された細胞付着誘導層;を含む、マイクロキャリア、これを含む細胞複合体、医療用組成物、美容組成物、医療用品および美容用品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1生体適合性高分子、金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含むコア;および前記コアの全部または一部を囲み、第2生体適合性高分子、金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含むシェル;を含む、コア-シェル構造を有する高分子マイクロ粒子、および
前記高分子マイクロ粒子の表面上に形成された細胞付着誘導層;を含む、マイクロキャリア。
【請求項2】
前記コアは、第1生体適合性高分子が金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを含み、
前記シェルは、第2生体適合性高分子が金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを含む、請求項1に記載のマイクロキャリア。
【請求項3】
前記第1生体適合性高分子は、ヒアルロン酸を含み、
前記第2生体適合性高分子は、ゼラチンを含む、請求項1に記載のマイクロキャリア。
【請求項4】
前記コアは、コアに含まれる高分子マトリックス全体の体積に対して、
ヒアルロン酸が金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを50体積%超で含む、請求項2に記載のマイクロキャリア。
【請求項5】
前記シェルは、シェルに含まれる高分子マトリックス全体の体積に対して、
ゼラチンが金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを50体積%超で含む、請求項2に記載のマイクロキャリア。
【請求項6】
前記高分子マイクロ粒子は、蒸留水における平均直径が1μm以上である、請求項1に記載のマイクロキャリア。
【請求項7】
前記高分子マイクロ粒子の最長直径を有する断面を基準として、
前記シェルの厚さが前記高分子マイクロ粒子の最長直径の95%以下である、請求項1に記載のマイクロキャリア。
【請求項8】
前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤は、
反応性官能基を1個以上含む炭素数1~30の架橋剤を含む、請求項1に記載のマイクロキャリア。
【請求項9】
前記高分子マイクロ粒子は、
粒子平均直径の25%水準に変形した時の平均圧縮強度が0.1mN以上である、請求項1に記載のマイクロキャリア。
【請求項10】
前記高分子マイクロ粒子は、
光学写真における任意の粒子の最も長い直径に対する最も短い直径の比率(長径比)である球形化度が0.9以上1.0以下である、請求項1に記載のマイクロキャリア。
【請求項11】
前記細胞付着誘導層は、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチンキトサン、ポリドーパミン、ポリL-リジン、ビトロネクチン、RGDを含むペプチド、RGDを含むアクリル系高分子、リグニン、陽イオン性デキストラン、およびこれらの誘導体からなる群より選択される1種以上の細胞付着性物質を含む、請求項1に記載のマイクロキャリア。
【請求項12】
前記細胞付着誘導層は、1nm~10,000nmの層厚さを有する、請求項1に記載のマイクロキャリア。
【請求項13】
前記マイクロキャリアは、1μm~1000μmの平均直径を有する、請求項1に記載のマイクロキャリア。
【請求項14】
前記マイクロキャリアは、下記の数式で計算される細胞付着性が2000%以上である、請求項1に記載のマイクロキャリア:
[数式]
細胞付着性=(マイクロキャリアを細胞培養液に投入して37℃で7日間培養した後の細胞数/細胞培養液に最初に含まれる細胞数)×100。
【請求項15】
前記マイクロキャリアは、細胞培養用マイクロキャリアである、請求項1に記載のマイクロキャリア。
【請求項16】
請求項1に記載のマイクロキャリア;および
前記マイクロキャリアの表面上に付着した細胞;を含む、細胞複合体。
【請求項17】
請求項1に記載のマイクロキャリア、または請求項16に記載の細胞複合体のいずれか1つを含む、医療用組成物。
【請求項18】
請求項1に記載のマイクロキャリア、または請求項16に記載の細胞複合体のいずれか1つを含む、美容組成物。
【請求項19】
請求項17に記載の医療用組成物を含む、医療用品。
【請求項20】
請求項18に記載の美容組成物を含む、美容用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2021年9月30日付の韓国特許出願第10-2021-0130366号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、優れた機械的強度および安定性を実現することができ、細胞脱着工程なしに3次元培養後すぐに体内注入が可能であり、付着性細胞に安定した環境を提供して細胞生存率が高くかつ高い体内移植率に寄与できるマイクロキャリア、およびこれを含む細胞複合体、医療用組成物、美容組成物、医療用品および美容用品に関する。
【背景技術】
【0003】
バイオ医薬品および再生医療分野が広がるにつれ、細胞、組織、微生物などを効率的に生産できる細胞大量培養技術の要求が増大している。
【0004】
付着性を有する細胞は、3Dバイオリアクター(bioreactor)内でマイクロキャリアを用いて培養される。バイオリアクター内に細胞、培養液およびマイクロキャリアを入れて、培養液を撹拌して細胞およびマイクロキャリアを接触させることによって、細胞をマイクロキャリアの表面に付着させて培養する。この時、使用するマイクロキャリアは、細胞が付着して増殖できる高い表面積比率(surface area/volume)を提供するため、細胞の大量培養に適している。しかし、マイクロキャリアを用いて付着性細胞を拡張培養する場合、培養が終了した後の細胞脱着過程により細胞を回収する過程が必須的に伴う。前記細胞脱着過程は、タンパク質分解酵素を使用したり、温度を変化させて細胞の脱着を誘導するが、このような脱着工程が追加される場合、製造費用が増加して経済性が低下し、細胞損傷が誘発されうる問題点が存在していた。
【0005】
これを解決するための新たな素材や工程の開発が着実に進められており、特に、生体内細胞を注入する細胞治療剤の場合、細胞を培養するマイクロキャリアの生体適合性を確保して分離精製過程を省略しようとする努力がある。この場合、培養過程および生体注入後、キャリア周辺の流体によって加えられるストレスに耐えられる強度を実現する粒子が必要である。
【0006】
それだけでなく、薬物あるいは生理活性物質を捕集したマイクロキャリアをマイクロニードルに搭載して伝達する経皮型薬物伝達技術の場合、マイクロキャリアは、生体への適用に適した高分子を用いなければならず、皮膚の角質層(stratum corneum layer)を通過する過程で粒子の変形が起こらないように十分な強度を持たなければならない。安定的に経皮を透過したマイクロキャリアは、搭載された薬物を局所的(local)あるいは全身(systemic)に送達(delivery)して必要な病巣に作用することが可能になる。
【0007】
生体適合性物質として主に用いられるヒアルロン酸は、N-アセチル-D-グルコサミンとD-グルクロン酸とからなり、前記繰り返し単位が線状に連結されている生体高分子物質である。眼球の硝子体液、関節の滑液および鶏冠などに多く存在する。ヒアルロン酸は、優れた生体適合性と粘弾性により生体注入型物質としてよく使用されるが、それ自体だけでは生体内(in vivo)または酸、アルカリなどの条件で分解されやすくて使用が限られている。また、マイクロキャリアに適用する場合、生体pH範囲でヒアルロン酸は負電荷を示し、これによって細胞付着性が顕著に低下する問題点があった。
【0008】
また、ゼラチンは、生体結合組織であるコラーゲンを加水分解した高分子であり、細胞培養用スキャフォールドとして活用される。細胞を捕集したり培養することができるが、その強度が弱く、温度に敏感で、化学的方法で官能基を導入してその強度を向上させようとする努力がある。
【0009】
そこで、生体に適していながらも、物理的強度、および熱と酵素に対する安定性など優れた物性と優れた安定性を有するマイクロキャリア、または高分子マイクロ粒子の開発が必要なのが現状である。
【0010】
また、マイクロキャリアを用いて付着性細胞の大量拡張過程で既存の2次元培養の限界を克服するために表面効率を増加させることができる球状のマイクロキャリアが開発されて3次元的拡張培養に用いられており、培養終了後の細胞脱着過程により細胞を回収している従来技術上、脱着工程の追加による製造費用増加、細胞損傷誘発の問題があった。
【0011】
そして、注射型細胞治療剤の場合、主に液相に細胞が浮遊する状態で患部に注入することにより、付着性細胞の場合、生存に安定的でない環境と体内免疫反応により体内移植率および細胞生存率が低くなる限界があった。
【0012】
そこで、細胞脱着工程なしに3次元培養後すぐに体内注入が可能であり、付着性細胞に安定した環境を提供して細胞生存率が高くかつ高い体内移植率に寄与できるマイクロキャリアの開発が必要なのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、優れた機械的強度および安定性を実現することができ、細胞脱着工程なしに3次元培養後すぐに体内注入が可能であり、付着性細胞に安定した環境を提供して細胞生存率が高くかつ高い体内移植率に寄与できるマイクロキャリアを提供する。
【0014】
また、本発明は、前記マイクロキャリアを含む、細胞複合体を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記のマイクロキャリア、または細胞複合体を含む医療用組成物を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記のマイクロキャリア、または細胞複合体を含む美容組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記の医療用組成物を含む医療用品を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記の美容組成物を含む美容用品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本明細書においては、第1生体適合性高分子、金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含むコア;および前記コアの全部または一部を囲み、第2生体適合性高分子、金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含むシェル;を含む、コア-シェル構造を有する高分子マイクロ粒子、および前記高分子マイクロ粒子の表面上に形成された細胞付着誘導層;を含む、マイクロキャリアが提供される。
【0020】
本明細書においてはまた、前記マイクロキャリア;および前記マイクロキャリアの表面上に付着した細胞;を含む、細胞複合体が提供される。
【0021】
本明細書においてはまた、前記のマイクロキャリア、または細胞複合体を含む、医療用組成物が提供される。
【0022】
本明細書においてはまた、前記のマイクロキャリア、または細胞複合体を含む、美容組成物が提供される。
【0023】
本明細書においてはまた、前記の医療用組成物を含む医療用品が提供される。
【0024】
本明細書においてはまた、前記の美容組成物を含む美容用品が提供される。
【0025】
以下、発明の具体的な実施形態によるマイクロキャリア、およびこれを含む細胞複合体、医療用組成物、美容組成物、医療用品および美容用品についてより詳細に説明する。
【0026】
本明細書において、明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0027】
本明細書で使用される単数形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。
【0028】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるわけではない。
【0029】
そして、本明細書において、「第1」および「第2」のように序数を含む用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使用され、前記序数によって限定されない。例えば、本発明の権利範囲内で第1構成要素は第2構成要素と名付けられてもよく、類似して、第2構成要素は第1構成要素と名付けられてもよい。
【0030】
本明細書において、(共)重合体は、重合体または共重合体をすべて含む意味であり、前記重合体は、単一の繰り返し単位からなる単独重合体を意味し、共重合体は、2種以上の繰り返し単位を含む複合重合体を意味する。
【0031】
本発明は多様な変更が加えられ様々な形態を有することができるが、特定の実施例を例示して下記に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、前記思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0032】
本明細書において、マイクロ粒子とは、粒子断面が円形または楕円形であり、粒子の短軸/長軸の比(球形化度)が0.7~1.0の範囲のものを意味する。粒子の短軸および長軸の長さは、粒子に対する光学写真を撮影し、光学写真における任意の粒子30個~100個の平均値を計算することによって導出される。
【0033】
本明細書において、直径(Dn)は、直径による粒子個数累積分布のn体積%地点での直径を意味する。つまり、D50は、粒子の直径を昇順に累積させた時、粒子個数累積分布の50%地点での直径であり、D90は、直径による粒子個数累積分布の90%地点での直径であり、D10は、直径による粒子個数累積分布の10%地点での直径である。
【0034】
前記Dnは、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。具体的には、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザ回折粒度測定装置(Horiba LA-960)に導入して、粒子がレーザビームを通過する時の粒子サイズによる回折パターンの差を測定して粒度分布を算出する。測定装置における直径による粒子個数累積分布の10%、50%および90%になる地点での粒子直径を算出することによって、D10、D50およびD90を測定することができる。より具体的には、本明細書において、直径は、D50を意味することができる。
【0035】
本明細書において、エマルジョンとは、油相または水相の混ざらない液体の1つ以上を、微粒子状態(分散質)で他の液体(分散媒)に分散させた混合相を意味する。エマルジョンは、分散相の粒度サイズにより、通常、マクロエマルジョン、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョンに分けられる。
【0036】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0037】
1.マイクロキャリア
発明の一実施形態によれば、第1生体適合性高分子、金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含むコア;および前記コアの全部または一部を囲み、第2生体適合性高分子、金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含むシェル;を含む、コア-シェル構造を有する高分子マイクロ粒子、および前記高分子マイクロ粒子の表面上に形成された細胞付着誘導層;を含む、マイクロキャリアが提供される。
【0038】
本発明者らは、高分子マイクロ粒子に関する研究を進めて、上述のように金属イオンによって架橋反応させた後、追加の架橋反応を行うことによって、工程の効率性が最大化されると同時に、マイクロ粒子の機械的強度と細胞付着性が顕著に向上することを、実験を通して確認して、発明を完成した。
【0039】
また、前記一実施形態のマイクロキャリアは、前記高分子マイクロ粒子の表面上に形成された細胞付着誘導層を含むことによって、細胞脱着工程なしに3次元培養後すぐに体内注入が可能であり、付着性細胞が安定的にマイクロキャリアと付着した状態で複合体を形成することによって、細胞生存率が高くかつ高い体内移植率を実現できることを、実験を通して確認して、発明を完成した。
【0040】
発明の一実施形態において、前記コアは、第1生体適合性高分子が金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを含み、前記シェルは、第2生体適合性高分子が金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを含むことができる。
【0041】
具体的には、前記高分子マトリックスは、生体適合性高分子が金属イオンを介して架橋された第1架橋領域;および生体適合性高分子が反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された第2架橋領域;を含むことができる。
【0042】
前記第1架橋領域は、生体適合性高分子と金属イオンとの架橋反応が進行して形成された架橋領域を意味し、前記第2架橋領域は、生体適合性高分子と金属イオンとの架橋反応の代わりに、反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤と架橋反応が進行して形成された架橋領域、および第1架橋領域と反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤が追加の架橋反応により形成された架橋領域を意味することができる。つまり、前記実施形態の高分子マイクロ粒子は、金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を用いた架橋反応を経て製造できる。
【0043】
具体的には、前記生体適合性高分子とは、人体に適用される有効物質を伝達するために、人体内に直接注入可能な高分子を意味する。具体的には、前記生体適合性高分子は、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)、カルボキシメチルセルロース(Carboxymethyl cellulose:CMC)、アルギン酸(alginic acid)、ペクチン、カラギーナン、コンドロイチン(スルフェート)、デキストラン(スルフェート)、キトサン、ポリリジン(polylysine)、コラーゲン、ゼラチン、カルボキシメチルキチン(carboxymethyl chitin)、フィブリン、アガロース、プルラン、ポリラクチド、ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド-グリコリド共重合体(PLGA)、ポリアンヒドリド(polyanhydride)、ポリオルトエステル(polyorthoester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリウレタン、ポリアクリレート、エチレン-ビニルアセテート重合体、アクリル置換セルロースアセテート、非-分解性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefins)、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリメタクリレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、シクロデキストリン、およびこのような高分子を形成する単量体の共重合体およびセルロースからなる群より選択された1つ以上の高分子であってもよい。
【0044】
より具体的には、前記生体適合性高分子は、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)およびゼラチンの混合物であってもよい。
【0045】
ヒアルロン酸のみを用いて製造された高分子マイクロ粒子は、それ自体だけでは生体内(in vivo)または酸、アルカリなどの条件で分解されやすくて使用が限られているだけでなく、細胞付着性が顕著に低下し、ゼラチンのみを用いて製造された高分子マイクロ粒子は、機械的物性が顕著に低下する。
【0046】
そこで、生体適合性高分子としてヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)およびゼラチンの混合物を使用することによって、優れた細胞付着性と同時に、機械的物性を実現することができる。
【0047】
具体的には、前記第1生体適合性高分子は、ヒアルロン酸を含み、前記第2生体適合性高分子は、ゼラチンを含むことができる。
【0048】
本明細書において、ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸自体とヒアルロン酸塩をすべて含む意味であってもよい。これによって、ヒアルロン酸水溶液は、ヒアルロン酸の水溶液、ヒアルロン酸塩の水溶液、およびヒアルロン酸とヒアルロン酸塩との混合水溶液をすべて含む概念であってもよい。前記ヒアルロン酸塩は、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、ヒアルロン酸コバルトなどの無機塩と、ヒアルロン酸テトラブチルアンモニウムなどの有機塩、およびその混合物であってもよい。
【0049】
発明の一実施形態において、ヒアルロン酸の分子量は特に制限されるわけではないが、多様な物性と生体適合性を実現するために、10,000g/mol以上5,000,000g/mol以下であることが好ましい。
【0050】
本明細書において、ゼラチンは、動物に由来するコラーゲンを酸またはアルカリで処理し、後続して抽出して得られるタンパク質を意味することができる。
【0051】
発明の一実施形態において、ゼラチンの分子量は特に制限されるわけではないが、多様な物性と生体適合性を実現するために、10,000g/mol以上5,000,000g/mol以下であることが好ましい。
【0052】
一方、前記高分子マイクロ粒子は、コア-シェル構造を有することができる。前記コア-シェル構造は、高分子マイクロ粒子に含まれる高分子マトリックスが2種以上の生体適合性高分子を含むことによって、生体適合性高分子と金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤間の反応性の差などによって実現できる。
【0053】
前記コア-シェル構造において、前記コアは、コアに含まれる高分子マトリックス全体の体積に対して、ヒアルロン酸が金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを50体積%超、60体積%以上、70体積%以上、または75体積%以上で含むことができる。また、100体積%以下、100体積%未満、95体積%以下、または90体積%以下で含むことができる。また、50体積%超100体積%以下、50体積%超100体積%未満、60体積%以上100体積%未満、60体積%以上95体積%以下、70体積%以上95体積%以下、70体積%以上90体積%以下、または75体積%以上90体積%以下で含むことができる。つまり、前記コアは、ゼラチンに対して過剰のヒアルロン酸を含むことができる。
【0054】
コアに含まれる高分子マトリックス全体の体積に対して、ヒアルロン酸が金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを50体積%超で含むことは、当該領域が全体面積の50%を超えて分布することを視覚的または測定装置により確認して知ることができる。
【0055】
具体的には、前記コアに含まれる高分子マトリックス全体の体積に対するヒアルロン酸が金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスの体積比率の計算は大きく制限されず、通常の測定方法によって計算することができる。例えば、製造された高分子マイクロ粒子のゼラチンの特性ピーク(1650cm-1)に対して相対化したヒアルロン酸の特性ピーク(1080cm-1)に対するIR写真を撮影して確認することができる。
【0056】
前記コア-シェル構造において、前記シェルは、シェルに含まれる高分子マトリックス全体の体積に対して、ゼラチンが金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを50体積%超、60体積%以上、70体積%以上、または75体積%以上で含むことができる。また、100体積%以下、100体積%未満、95体積%以下、または90体積%以下で含むことができる。また、50体積%超100体積%以下、50体積%超100体積%未満、60体積%以上100体積%未満、60体積%以上95体積%以下、70体積%以上95体積%以下、70体積%以上90体積%以下、または75体積%以上90体積%以下で含むことができる。つまり、前記シェルは、ヒアルロン酸に対して過剰のゼラチンを含むことができる。
【0057】
シェルに含まれる高分子マトリックス全体の体積に対して、ゼラチンが金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを50体積%超で含むことは、当該領域が全体面積の50%を超えて分布することを視覚的または測定装置により確認して知ることができる。
【0058】
前記シェルに含まれる高分子マトリックス全体の体積に対するゼラチンが金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスの体積比率の計算は大きく制限されず、通常の測定方法によって計算することができる。例えば、製造された高分子マイクロ粒子のゼラチンの特性ピーク(1650cm-1)に対するIR写真を撮影して確認することができる。
【0059】
ヒアルロン酸が金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを50体積%以上含むコアと、ゼラチンが金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを50体積%以上含むシェルとを含むコア-シェル構造は、溶解度、温度反応性、イオン結合性など物理化学的原因により実現できる。より具体的には、高分子マイクロ粒子製造工程において、エタノールなどの極性溶媒に対する溶解度が低く温度反応性が高いゼラチンは、流動性が低下して粒子表面に固定して存在してシェルを形成することができ、これによって、相対的に粒子内部にヒアルロン酸がより多く分布してコアを形成することができる。
【0060】
特に、後述する高分子マイクロ粒子の製造方法において、反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含む極性溶媒上で高分子架橋粒子を追加架橋する段階の前に、生体適合性高分子および金属イオンを含む混合物を反応して高分子架橋粒子を形成する段階を含むことによって、金属イオンとヒアルロン酸に含まれているカルボキシル基との間のイオン結合によってコア-シェル構造がより明確になる。
【0061】
一方、前記高分子マイクロ粒子は、蒸留水における平均直径が1μm以上、1μm以上450μm以下、100μm以上450μm以下、または200μm以上400μm以下、または300μm以上400μm以下であってもよいが、高分子マイクロ粒子の平均直径が上述した範囲を満足する場合、細胞付着および培養性能に優れている。
【0062】
前記平均直径とは、直径による粒子個数累積分布の50体積%地点での直径を意味することができる。
【0063】
前記高分子マイクロ粒子において、前記高分子マイクロ粒子の最長直径を有する断面を基準として、前記シェルの厚さが前記高分子マイクロ粒子の最長直径の95%以下、90%以下、80%以下、75%以下、50%以下、30%以下、25%以下、または20%以下であってもよい。また、前記高分子マイクロ粒子の最長直径を有する断面を基準として、前記シェルの厚さが前記高分子マイクロ粒子の最長直径の0.01%以上、1%以上、または5%以上であってもよい。
【0064】
また、前記高分子マイクロ粒子において、前記高分子マイクロ粒子の最長直径を有する断面を基準として、前記コアの厚さが前記高分子マイクロ粒子の最長直径の5%以上、10%以上、20%以上、25%以上、50%以上、70%以上、75%以上、または80%以上であってもよい。さらに、前記高分子マイクロ粒子の最長直径を有する断面を基準として、前記コアの厚さが前記高分子マイクロ粒子の最長直径の99.99%以下、99%以下、または95%以下であってもよい。
【0065】
また、前記高分子マイクロ粒子は、0.9以上1.0以下、0.93以上1.0以下、0.94以上0.99以下、または0.94以上0.98以下の球形化度を有することができる。前記球形化度は、高分子マイクロ粒子の光学写真を撮影し、光学写真における任意の粒子30個~100個の平均値を計算することによって得ることができる。
【0066】
さらに、前記高分子マイクロ粒子は、蒸留水で24時間以上膨潤した粒子に対して平均直径の25%水準に変形した時の平均圧縮強度が0.1mN以上、0.1mN以上100mN以下、0.3mN以上100mN以下、0.35mN以上100mN以下、0.35mN以上30mN以下、0.35mN以上10mN以下、または0.35mN以上3mN以下であってもよい。前記平均圧縮強度は、前記高分子マイクロ粒子n個に対して、平均直径の25%水準に変形した時の圧縮強度をnで割った値であってもよい。
【0067】
例えば、本明細書において、前記平均圧縮強度は、前記高分子マイクロ粒子30個に対して、平均直径の25%水準に変形した時の圧縮強度を30で割った値であってもよい。
【0068】
前記高分子マイクロ粒子の平均圧縮強度が0.1mN未満の場合、高分子マイクロ粒子の機械的強度に劣り安定性が低下する技術的問題点が発生しうる。
【0069】
一方、前記一実施形態のマイクロキャリアに含まれている高分子マイクロ粒子を製造する方法の例が大きく限定されるものではないが、例えば、生体適合性高分子および金属イオンを含む混合物を反応して高分子架橋粒子を形成する段階;および反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含む極性溶媒上で前記高分子架橋粒子を追加架橋する段階;を含む、高分子マイクロ粒子の製造方法が用いられる。
【0070】
従来の高分子マイクロ粒子は、オイルを用いるW/Oエマルジョンを形成した後、架橋されることによってオイル洗浄工程が必須的に伴い、工程の効率性が良くないだけでなく、残留オイルの除去が難しい技術的問題があった。
【0071】
そこで、本発明者らは、前記高分子マイクロ粒子の製造方法のように、金属イオンによって架橋させた後、反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を用いた追加の架橋反応を行うことによって、工程の効率性が最大化されると同時に、マイクロ粒子の機械的強度と安定性が顕著に向上することを、実験を通して確認して、発明を完成した。
【0072】
具体的には、前記生体適合性高分子とは、人体に適用される有効物質を伝達するために、人体内に直接注入可能な高分子を意味する。具体的には、前記生体適合性高分子は、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)、カルボキシメチルセルロース(Carboxymethyl cellulose:CMC)、アルギン酸(alginic acid)、ペクチン、カラギーナン、コンドロイチン(スルフェート)、デキストラン(スルフェート)、キトサン、ポリリジン(polylysine)、コラーゲン、ゼラチン、カルボキシメチルキチン(carboxymethyl chitin)、フィブリン、アガロース、プルラン、ポリラクチド、ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド-グリコリド共重合体(PLGA)、ポリアンヒドリド(polyanhydride)、ポリオルトエステル(polyorthoester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリウレタン、ポリアクリレート、エチレン-ビニルアセテート重合体、アクリル置換セルロースアセテート、非-分解性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefins)、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリメタクリレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、シクロデキストリンおよびこのような高分子を形成する単量体の共重合体およびセルロースからなる群より選択された1つ以上の高分子であってもよい。
【0073】
より具体的には、前記生体適合性高分子は、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)およびゼラチンの混合物であってもよい。
【0074】
ヒアルロン酸のみを用いて製造された高分子マイクロ粒子は、それ自体だけでは生体内(in vivo)または酸、アルカリなどの条件で分解されやすくて使用が限られているだけでなく、細胞付着性が顕著に低下し、ゼラチンのみを用いて製造された高分子マイクロ粒子は、機械的物性が顕著に低下する。
【0075】
そこで、生体適合性高分子としてヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)およびゼラチンの混合物を使用することによって、優れた細胞付着性と同時に、機械的物性を実現することができる。
【0076】
本明細書において、ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸自体とヒアルロン酸塩をすべて含む意味であってもよい。これによって、ヒアルロン酸水溶液は、ヒアルロン酸の水溶液、ヒアルロン酸塩の水溶液、およびヒアルロン酸とヒアルロン酸塩との混合水溶液をすべて含む概念であってもよい。前記ヒアルロン酸塩は、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、ヒアルロン酸コバルトなどの無機塩と、ヒアルロン酸テトラブチルアンモニウムなどの有機塩、およびその混合物であってもよい。
【0077】
発明の一実施形態において、ヒアルロン酸の分子量は特に制限されるわけではないが、多様な物性と生体適合性を実現するために、10,000g/mol以上5,000,000g/mol以下であることが好ましい。
【0078】
本明細書において、ゼラチンは、動物に由来するコラーゲンを酸またはアルカリで処理し、後続して抽出して得られるタンパク質を意味することができる。
【0079】
発明の一実施形態において、ゼラチンの分子量は特に制限されるわけではないが、多様な物性と生体適合性を実現するために、10,000g/mol以上5,000,000g/mol以下であることが好ましい。
【0080】
前記高分子マイクロ粒子の製造方法において、前記ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)およびゼラチンの混合物は、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)100重量部に対して、ゼラチンを50重量部以上500重量部以下、100重量部以上500重量部以下、または100重量部以上300重量部以下で含むことができる。
【0081】
ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)100重量部に対して、ゼラチンを50重量部未満で含む場合、製造される高分子マイクロ粒子の細胞付着性が不良になり、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)100重量部に対して、ゼラチンを500重量部超で含む場合、製造される高分子マイクロ粒子の機械的物性が低下することがある。つまり、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)およびゼラチンの混合物は、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)100重量部に対して、ゼラチンを50重量部以上500重量部以下で含むことによって、優れた細胞付着性と同時に、機械的物性を実現可能な高分子マイクロ粒子が製造できる。
【0082】
前記高分子マイクロ粒子の製造方法において、金属イオンは、鉄イオン(Fe3+)、アルミニウムイオン(Al3+)、銅イオン(Cu2+)、鉄イオン(Fe2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、バリウムイオン(Ba2+)、カルシウムイオン(Ca2+)などからなる群より選択された1つを含むことができる。より具体的には、前記金属イオンは、鉄イオン、アルミニウムイオン、またはそれらの混合物であってもよい。
【0083】
前記高分子マイクロ粒子の製造方法において、前記生体適合性高分子および金属イオンを含む混合物を反応して高分子架橋粒子を形成する段階は、前記生体適合性高分子を溶かした水溶液を形成する段階;前記金属イオンを含む化合物を極性溶媒に添加して金属イオンを含む溶液を形成する段階;および前記生体適合性高分子を溶かした水溶液液滴と前記金属イオンを含む溶液とを混合して混合溶液を形成する段階;を含むことができる。
【0084】
具体的には、前記生体適合性高分子を溶かした水溶液を形成する段階において、前記生体適合性高分子を溶かした水溶液は、全体生体適合性高分子を溶かした水溶液の重量に対して、前記生体適合性高分子を0.01重量%以上10重量%以下、0.01重量%以上5重量%以下、1重量%以上5重量%以下、1重量%以上3重量%以下、2重量%以上3重量%以下、2重量%以上2.5重量%以下で含むことができる。
【0085】
前記高分子マイクロ粒子の製造方法のように、金属イオンによって架橋反応させた後、反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤によって追加の架橋反応を行うことによって、従来のようにW/Oエマルジョンを形成した後に架橋反応させる場合と比較して、前記のように0.01重量%以上10重量%以下の少ない含有量の生体適合性高分子でも機械的強度と安定性に優れたマイクロ粒子を製造することができる。
【0086】
前記金属イオンを含む化合物を極性溶媒に添加して金属イオンを含む溶液を形成する段階は、大きく制限されないが、例えば、金属イオンを含む化合物をエタノールなどの極性溶媒に分散させて形成することができる。
【0087】
また、前記生体適合性高分子を溶かした水溶液液滴と前記金属イオンを含む溶液とを混合して混合溶液を形成する段階において、カプセル化(encapsulator)(BUCHI、B-390)機器を用いて、粒子の大きさを適切に制御することができる。
【0088】
前記生体適合性高分子を溶かした水溶液液滴と前記金属イオンを含む溶液とを混合して混合溶液を形成する段階を含むことによって、前記生体適合性高分子に金属イオンがキレートされながら金属イオンを介して生体適合性高分子が架橋構造を形成することができる。
【0089】
前記高分子マイクロ粒子の製造方法のように、生体適合性高分子および金属イオンを含む混合物を反応して高分子架橋粒子を形成する段階を含むことによって、反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤のみを用いて架橋反応を行う場合と比較して、オイルの使用なしに極性溶媒上でマイクロ粒子の製造が可能で、オイル洗浄工程が省略されて工程の効率性に優れるという効果が実現できる。
【0090】
つまり、生体適合性高分子に金属イオンがキレートされながら金属イオンを介して生体適合性高分子が架橋構造を形成することによって、反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤のみを用いて架橋反応を行う場合と比較して、オイルの使用なしに極性溶媒上でマイクロ粒子の製造が可能で、オイル洗浄工程が省略されて工程の効率性に優れるという効果が実現できる。
【0091】
また、前記金属イオンを含む化合物は、前記生体適合性高分子100重量部に対して、200重量部以上1000重量部以下、300重量部以上1000重量部以下、または500重量部以上1000重量部以下で含まれる。
【0092】
前記高分子マイクロ粒子の製造方法は、上述のように、金属イオンによる架橋反応後に追加の架橋反応を行うことによって、前記生体適合性高分子100重量部に対して、200重量部以上1000重量部以下で金属イオンを含む混合物を少量添加しても十分な機械的強度および球形化度を実現する高分子マイクロ粒子を製造することができる。
【0093】
前記金属イオンを含む化合物の含有量が前記生体適合性高分子100重量部に対して、1000重量部を超えて添加される場合、残量の金属イオンが架橋粒子に残存する技術的問題点が発生しうる。
【0094】
前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤は、反応性官能基を1個以上含む炭素数1~30の架橋剤を含むことができる。
【0095】
上述のように、金属イオンによって架橋させた後、反応性官能基を1個以上含む炭素数1~30の架橋剤を用いた追加の架橋反応を行うことによって、工程の効率性が最大化されると同時に、マイクロ粒子の機械的強度と安定性が顕著に向上できる。
【0096】
前記反応性官能基の種類が大きく制限されないが、例えば、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、アミノ基、(メタ)アクリレート基、ニトリル基、チオール基、アルデヒド基、またはビニル基が挙げられる。
【0097】
具体的には、前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤は、ホルミル基またはエポキシ基を1個以上、または2個以上含むことができる。前記ホルミル基またはエポキシ基は、上述した生体適合性高分子と反応して架橋粒子を形成する、架橋性官能基であってもよい。
【0098】
前記高分子マイクロ粒子の製造方法において、反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤は、その例が大きく制限されるわけではない。具体的には、前記架橋剤は、グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)、ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-butandiol diglycidyl ether:BDDE)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethylene glycol diglycidyl ether:EGDGE)、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(1,6-hexanediol diglycidyl ether)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(propylene glycol diglycidyl ether)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(polypropylene glycol diglycidyl ether)、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル(polytetramethylene glycol diglycidyl ether)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(neopentyl glycol diglycidyl ether)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(polyglycerol polyglycidyl ether)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(diglycerol polyglycidyl ether)、グリセロールポリグリシジルエーテル(glycerol polyglycidyl ether)、トリメチルプロパンポリグリシジルエーテル(tri-methylpropane polyglycidyl ether)、ビスエポキシプロポキシエチレン(1,2-(bis(2,3-epoxypropoxy)ethylene)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(pentaerythritol polyglycidyl ether)およびソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)、ジビニルスルホン(divinylsulfone)、エピクロロヒドリン(epichlorohydrin)からなる群より選択された1つを含むことができる。
【0099】
より具体的には、前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤は、グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)またはブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-butandiol diglycidyl ether:BDDE)であってもよい。
【0100】
一方、前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含む極性溶媒上で前記高分子架橋粒子を追加架橋する段階において、前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤は、前記生体適合性高分子100重量部に対して、150重量部以上1000重量部以下、200重量部以上1000重量部以下、300重量部以上800重量部以下、400重量部以上500重量部以下で含まれる。
【0101】
前記高分子マイクロ粒子の製造方法は、上述のように、架橋反応後に追加の架橋反応を行うことによって、前記生体適合性高分子100重量部に対して、150重量部以上1000重量部以下で反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を少量添加しても十分な機械的強度および球形化度を実現する高分子マイクロ粒子を製造することができる。
【0102】
反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤の含有量が前記生体適合性高分子100重量部に対して1000重量部を超えて添加される場合、残量の未反応架橋剤が架橋粒子に残存する技術的問題が発生しうる。
【0103】
一方、前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含む極性溶媒上で前記高分子架橋粒子を追加架橋する段階において、前記極性溶媒は大きく制限されないが、例えば、エタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチルウレア、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、ガンマ-ブチロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグリム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートからなる群より選択された1つであってもよい。
【0104】
また、前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含む極性溶媒上で前記高分子架橋粒子を追加架橋する段階において、前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含む極性溶媒は、アルカリ性混合溶媒であってもよい。
【0105】
つまり、極性溶媒にアルカリ水溶液を混合したアルカリ性混合溶媒上で本発明の追加の架橋反応が行われる。前記アルカリ水溶液の例は大きく制限されないが、例えば、水酸化ナトリウム水溶液などであってもよい。
【0106】
前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含む極性溶媒がアルカリ性混合溶媒であることによって、求核性置換反応(S reaction)に有利な環境を作り、架橋反応の効率を増加させることができる。
【0107】
一方、前記一実施形態のマイクロキャリアは、前記高分子マイクロ粒子の表面上に形成された細胞付着誘導層;を含むことができる。前記細胞付着誘導層は、細胞付着性物質で構成され、付着性細胞が安定的に付着、スプレディング(spreading)および培養できるようにする。
【0108】
前記細胞付着誘導層は、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン(fibronectin)キトサン、ポリドーパミン、ポリL-リジン、ビトロネクチン(vitronectin)、RGDを含むペプチド、RGDを含むアクリル系高分子、リグニン(lignin)、陽イオン性デキストラン、およびこれらの誘導体からなる群より選択される1種以上の細胞付着性物質を含むことができる。つまり、前記細胞付着誘導層は、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン(fibronectin)キトサン、ポリドーパミン、ポリL-リジン、ビトロネクチン(vitronectin)、RGDを含むペプチド、RGDを含むアクリル系高分子、リグニン(lignin)、陽イオン性デキストラン、およびこれらの誘導体からなる群より選択される1種、またはこれらの2種以上の混合物を含む細胞付着性物質を含むことができる。
【0109】
前記細胞付着誘導層は、前記高分子マイクロ粒子の表面上に形成される。つまり、前記高分子マイクロ粒子の表面に前記細胞付着誘導層が直接接触したり、あるいは前記高分子マイクロ粒子の表面に接触したその他の層の表面に前記細胞付着誘導層が接触することができる。
【0110】
一例として、前記マイクロキャリアは、高分子マイクロ粒子の表面に直接接触するように形成される細胞付着誘導層を含み、マイクロキャリアの表面に細胞付着誘導層を導入して培養液内でマイクロキャリアの浮遊度が調節可能であり、細胞を安定的に付着培養する効果を有することができる。
【0111】
前記細胞付着誘導層は、1nm~10,000nm、または10nm~1000nm、または50nm~500nm、または80nm~200nmの層厚さを有することができ、前記細胞付着誘導層の層厚さは、前記マイクロキャリア全体の半径から内部の高分子マイクロ粒子の半径を引いた値により求められる。前記半径は、直径の1/2値を意味する。前記直径を測定する方法の例が大きく限定されるものではないが、一例を挙げると、共焦点蛍光顕微鏡、電子透過顕微鏡(TEM)または断面IR、断面SEMイメージにより測定可能である。
【0112】
前記マイクロキャリアは、1μm~1,000μm、または10μm~1000μm、または100μm~1,000μm、または100μm~800μmの平均直径を有することができる。前記直径を測定する方法の例が大きく限定されるものではないが、一例を挙げると、光学顕微鏡により測定可能である。
【0113】
一方、前記高分子マイクロ粒子の半径と細胞付着誘導層の厚さとの比率は、1:0.00001~1:0.1、または1:0.0001~1:0.01であってもよい。
【0114】
前記高分子マイクロ粒子の半径と細胞付着誘導層の厚さとの比率が1:0.00001未満の場合、前記高分子マイクロ粒子に比べて細胞付着誘導層が過度に薄くて、細胞培養時に細胞とマイクロキャリアとの付着度が減少する恐れがあり、1:0.1を超える場合、前記高分子マイクロ粒子に比べて細胞付着誘導層が厚くなって、高分子マイクロ粒子の親水性度などの物性を変化させて分散性を低下させる問題が発生しうる。
【0115】
前記マイクロキャリアは、下記の数式で計算される細胞付着性が2000%以上、または2500%以上、または2900%以上、または4000%以下、または2000%~4000%、または2500%~4000%、または2900%~4000%であってもよい。
【0116】
[数式]
細胞付着性=(マイクロキャリアを細胞培養液に投入して37℃で7日間培養した後の細胞数/細胞培養液に最初に含まれる細胞数)×100
【0117】
前記細胞培養液、細胞、培養条件については特に限定されず、従来知られた多様な細胞培養液、細胞、培養条件を制限なく適用可能である。そして、前記細胞数を測定する方法も特に限定されず、従来知られた多様な細胞数の測定方法を制限なく適用可能である。
【0118】
前記マイクロキャリアは、下記の数式で計算される細胞付着性が2000%以上、または2500%以上、または2900%以上、または4000%以下、または2000%~4000%、または2500%~4000%、または2900%~4000%を満足することによって、マイクロキャリアの細胞付着力が向上し、これによって、3次元的拡張培養により表面効率を増加させて付着性細胞の大量拡張が可能というメリットがある。
【0119】
これに対し、前記マイクロキャリアは、下記の数式で計算される細胞付着性が上述した範囲に及ばない場合、マイクロキャリアの表面の細胞付着力が弱くて、3次元的拡張培養が十分に行われにくい限界がある。
【0120】
一方、前記マイクロキャリアは、前記高分子マイクロ粒子の表面上に形成されたプライマー高分子層をさらに含むことができる。
【0121】
つまり、前記高分子マイクロ粒子の表面に、プライマー高分子層1種と細胞付着誘導層1種との混合層がさらに含まれる。プライマー高分子層1種と細胞付着誘導層1種との混合層においてこれらの積層順序は特に限定されず、プライマー高分子層上に細胞付着誘導層が積層された構造、あるいは細胞付着誘導層上にプライマー高分子層が積層された構造をすべて適用可能である。
【0122】
一方、前記プライマー高分子層は、前記高分子マイクロ粒子の表面に機能性高分子を導入できる粘着層の役割を果たし、これによって、マイクロキャリアの表面に細胞付着のための高分子層が効果的に導入され、培養中にも安定的に維持できるようにする。
【0123】
前記プライマー高分子層は、その例が大きく限定されるものではないが、水相接着を誘導できるカテコール誘導体として、L-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)、ドーパミン(dopamine)、ポリドーパミン、ノルエピネフリン(norepinephrine)、エピネフリン(epinephrine)、エピガロカテキン(epigallocatechin)、およびこれらの誘導体からなる群より選択されるいずれか1つ以上を含むことができる。
【0124】
前記マイクロキャリアは、細胞培養用マイクロキャリアであってもよい。
【0125】
2.細胞複合体
本発明の他の実施形態によれば、前記一実施形態のマイクロキャリア;および前記マイクロキャリアの表面上に付着した細胞;を含む、細胞複合体が提供される。前記マイクロキャリアに関する内容は、前記一実施形態において上述したすべての内容を含むことができる。
【0126】
前記他の実施形態の細胞複合体は、細胞が安定的にマイクロキャリアと付着した状態で複合体を形成することによって、細胞生存率が高くかつ高い体内移植率を実現することができる。
【0127】
前記細胞は、付着性動物細胞にその例が大きく限定されるものではないが、例えば、線維芽細胞(fibroblasts)、上皮細胞(epithelial cell)、骨芽細胞(osteoblast)、軟骨細胞(chondrocyte)、肝細胞、ヒト由来臍帯血細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)、CHO(Chinese hamster ovary)細胞、腎臓細胞(HEK293、BHK21、MDCK、ベロ細胞(vero cell)など)、またはこれらの2種以上の混合物であってもよい。
【0128】
前記細胞の密度は、1.02g/cm以上1.1g/cm未満であってもよい。
【0129】
前記細胞は、前記マイクロキャリアの表面上に付着できる。つまり、前記マイクロキャリアの表面に細胞が直接接触したり、あるいは前記マイクロキャリアの表面に接触したその他の層の表面に細胞が接触することができる。
【0130】
3.医療用組成物
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記一実施形態のマイクロキャリア、または前記他の実施形態の細胞複合体を含む医療用組成物が提供される。前記マイクロキャリアに関する内容は、前記一実施形態において上述したすべての内容を含むことができる。前記細胞複合体に関する内容は、前記他の実施形態において上述したすべての内容を含むことができる。
【0131】
前記薬学有効物質は、前記高分子マイクロ粒子内に含まれた状態で存在することができる。
【0132】
前記薬学有効物質の例は大きく限定されず、前記一実施形態の高分子マイクロ粒子の適用用途に応じて、当該用途に適した有効物質を制限なく適用可能である。つまり、前記薬学的有効物質の具体例は限定されず、アンフェタミニル(ampetaminil)、アレコリン(arecolin)、アトロピン(atropine)、ブプラノロール(bupranolol)、ブプレノルフィン(buprenorphine)、カプサイシン(capsaicin)、カリソプロドール(carisoprodol)、クロルプロマジン(chlorpromazine)、シクロピロクスオラミン(ciclopirox olamine)、コカイン(cocaine)、デシプラミン(desipramine)、ジクロニン(dyclonine)、エピネフリン(epinephrine)、エトスクシミド(ethosuximide)、フルオキセチン(floxetine)、ヒドロモルヒネ(hydromorphine)、イミプラミン(imipramine)、リドカイン(lidocaine)、メタンフェタミン(methamphetamine)、メルプロ酸(melproic acid)、メチルフェニデート(methylphenidate)、モルヒネ(morphine)、オキシブチニン(oxibutynin)、ナドロール(nadolol)、ニコチン(nicotine)、ニトログリセリン(nitroglycerin)、ピンドロール(pindolol)、プリロカイン(prilocaine)、プロカイン(procaine)、プロパノロール(propanolol)、リバスチグミン(rivastigmine)、スコポラミン(scopolamine)、セレギリン(selegiline)、ツロブテロール(tulobuterol)、バルプロ酸(valproic acid)、ドネペジル(Donepezil)などからなる群より選択される薬物、およびEPO(Erythropoietin)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エキセナチド(Exenatide)、GLP-1(Glucagon-like peptide-1)、インスリン、CSF(Granulocyte colony-stimulating factor)、エストロゲン、プロゲステロンパラサイロイドホルモン(PTH)などからなる群より選択されるペプチドまたはタンパク質系の薬物などがあり、薬理効果が立証されたすべての薬理物質が制限なく適用可能である。
【0133】
前記薬学有効物質の添加量も大きく限定されず、適用用途と対象に応じて含有量を制限なく使用可能である。例えば、前記有効物質は、前記高分子マイクロ粒子100重量部に対して0.0001重量部以上1000000重量部以下で、高分子マイクロ粒子に対して少量でも過剰量でも制限なく含まれる。
【0134】
4.美容組成物
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記一実施形態のマイクロキャリア、または前記他の実施形態の細胞複合体を含む美容組成物が提供される。前記マイクロキャリアに関する内容は、前記一実施形態において上述したすべての内容を含むことができる。前記細胞複合体に関する内容は、前記他の実施形態において上述したすべての内容を含むことができる。
【0135】
前記美容有効物質は、前記高分子マイクロ粒子内に含まれた状態で存在することができる。
【0136】
前記美容有効物質の例は大きく限定されず、前記一実施形態の高分子マイクロ粒子の適用用途に応じて、当該用途に適した有効物質を制限なく適用可能である。つまり、前記美容有効物質の具体例は限定されず、天然抽出物、タンパク質、ビタミン、酵素、抗酸化剤などがあり、美容効果が立証されたすべての物質が制限なく適用可能である。
【0137】
前記美容有効物質の添加量も大きく限定されず、適用用途と対象に応じて含有量を制限なく使用可能である。例えば、前記美容有効物質は、前記高分子マイクロ粒子100重量部に対して0.0001重量部以上1000000重量部以下で、高分子マイクロ粒子に対して少量でも過剰量でも制限なく含まれる。
【0138】
5.医療用品
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記他の実施形態の医療用組成物を含む医療用品が提供される。前記医療用組成物に関する内容は、前記他の実施形態において上述したすべての内容を含むことができる。
【0139】
前記医療用品の例が大きく限定されないが、本発明の特性が実現されるためには、体内に挿入されて使用されたり、あるいは長期間強度が維持されなければならない場合に適しており、例えば、体内補形物、体内挿入型薬物伝達体、経皮パッチ、創傷治療剤などが挙げられる。
【0140】
6.美容用品
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明は、前記他の実施形態の美容組成物を含む美容用品が提供される。前記美容組成物に関する内容は、前記他の実施形態において上述したすべての内容を含むことができる。
【0141】
前記美容用品の例が大きく限定されないが、本発明の特性が実現されるためには、例えば、美容クリーム、ローション、ヘアジェル、パックなどが挙げられる。
【0142】
前記美容パックの構造が大きく限定されるものではないが、例えば、支持体と、前記支持体上に形成され、前記他の実施形態の高分子マイクロ粒子を含む美容的有効物質伝達層とを含むことができる。前記支持体の例としては、織布、不織布、シリコーン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、金属網、ポリエステルなどが挙げられる。
【発明の効果】
【0143】
本発明によれば、優れた機械的強度および安定性を実現することができ、細胞脱着工程なしに3次元培養後すぐに体内注入が可能であり、付着性細胞に安定した環境を提供して細胞生存率が高くかつ高い体内移植率に寄与できるマイクロキャリア、これを含む細胞複合体、医療用組成物、美容組成物、医療用品および美容用品が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0144】
図1】実施例1の高分子マイクロ粒子に対する光学顕微鏡(OM)写真である。
図2】実施例1の高分子マイクロ粒子のゼラチンの特性ピーク(1650cm-1)に対するIR写真である。
図3】実施例1の高分子マイクロ粒子のゼラチンの特性ピーク(1650cm-1)に対して相対化したヒアルロン酸の特性ピーク(1080cm-1)に対するIR写真である。
【発明を実施するための形態】
【0145】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【0146】
<実施例:高分子マイクロ粒子および細胞培養用マイクロキャリアの製造>
実施例1
(1)高分子マイクロ粒子の製造
0.1N NaOH水溶液にヒアルロン酸塩(重量平均分子量:500kDa)200mgを2wt.%で溶かし、蒸留水にゼラチン(ゲル強度:300g Bloom)250mgを2.5wt.%で溶かしたそれぞれの溶液10mLを混合して20mLを製造した後、これを鉄イオン(Fe3+)を含む化合物であるFeClが4g添加されたエタノール溶液80mLに、カプセル化(encapsulator)機器を用いて形成された液滴を添加し、4℃で2時間架橋反応させた後、エタノールで洗浄して架橋粒子を製造した。
【0147】
0.1N NaOH水溶液を20%含有している80%エタノール溶液に1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-Butandiol diglycidyl ether、BDDE)を2.2g混合した後、前記架橋粒子を添加し、常温で3日間架橋反応させて、高分子マイクロ粒子を製造した。製造された粒子をエタノール、蒸留水の順に洗浄した後、篩目の大きさが45μmの網篩を用いて製造された架橋粒子を回収した。回収された架橋粒子を篩目の大きさが500μmの網篩でろ過して残った架橋粒子を分析した。
【0148】
製造された高分子マイクロ粒子に対して撮影した光学顕微鏡(OM)写真を図1に示した。
【0149】
製造された高分子マイクロ粒子のゼラチンの特性ピーク(1650cm-1)に対するIR写真を図2に示した。ゼラチンの特性ピーク(1650cm-1)の強度(intensity)の差によりゼラチンが含まれている部分が明るく表示されて、ゼラチンが製造された高分子マイクロ粒子のシェルに分布することを確認した。
【0150】
製造された高分子マイクロ粒子のゼラチンの特性ピーク(1650cm-1)に対して相対化したヒアルロン酸の特性ピーク(1080cm-1)に対するIR写真を図3に示した。ヒアルロン酸がゼラチンに対して高い相対量で含まれている部分が明るく表示されて、製造された高分子マイクロ粒子のコアに、ゼラチンと比較してヒアルロン酸が高い相対量で分布することを確認した。
【0151】
(2)細胞培養用マイクロキャリアの製造
回収された粒子をドーパミンが1mg/mLで溶解したトリス緩衝液(tris buffer)(pH8.0)に浸漬して、撹拌下、常温で2時間コーティングした。過剰のコーティング物質をエタノールで洗浄後、45μmのシーブ(sieve)に粒子をろ過した後、細胞培養用マイクロキャリアとして使用した。
【0152】
実施例2
鉄イオン(Fe3+)を含む化合物であるFeClが4g添加されたエタノール溶液の代わりに、アルミニウムイオン(Al3+)を含む化合物であるAlClが4g添加されたエタノール溶液を用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法で高分子マイクロ粒子および細胞培養用マイクロキャリアを製造した。
【0153】
実施例3
1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-Butandiol diglycidyl ether、BDDE)2.2gの代わりに、50%グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)2.2gを添加したことを除き、前記実施例1と同様の方法で高分子マイクロ粒子および細胞培養用マイクロキャリアを製造した。
【0154】
<比較例>
比較例1:高分子マイクロ粒子の製造
ヒアルロン酸塩(重量平均分子量:500kDa)およびゼラチン(ゲル強度:300g Bloom)をそれぞれ蒸留水に2wt.%、20wt.%で溶かして5mlずつ製造した後、これら2つの溶液を混合した溶液を液体パラフィン溶液と混合して、マイクロエマルジョンを含む混合液を製造した。以後、前記混合液に、架橋剤として1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-Butandiol diglycidyl ether、BDDE)を2.2g添加し、常温で5日間架橋反応させて、高分子マイクロ粒子を製造した。製造された粒子をアセトン、ジクロロメタン、蒸留水の順に洗浄した後、篩目の大きさが45μmの網篩を用いて製造された架橋粒子を回収した。回収された架橋粒子を篩目の大きさが500μmの網篩でろ過して残った架橋粒子を分析した。
【0155】
比較例2:高分子マイクロ粒子の製造
0.1N NaOH水溶液にヒアルロン酸塩(重量平均分子量:500kDa)を2wt.%で溶かし、蒸留水にゼラチン(ゲル強度:300g Bloom)を2.5wt.%で溶かしたそれぞれの溶液10mLを混合して20mLを製造した後、これを鉄イオン(Fe3+)を含む化合物であるFeClが4g添加されたエタノール溶液80mLに、カプセル化(encapsulator)機器を用いて形成された液滴を添加し、4℃で2時間架橋反応させた後、エタノールおよび蒸留水で洗浄して架橋粒子を製造した。製造された架橋粒子を篩目の大きさが45μmの網篩を用いて製造された架橋粒子を回収した。回収された架橋粒子を篩目の大きさが500μmの網篩でろ過して残った架橋粒子を分析した。
【0156】
比較例3:高分子マイクロ粒子の製造
ヒアルロン酸塩(重量平均分子量:500kDa)200mgを0.1N NaOH水溶液に2wt.%の濃度で、ゼラチン(ゲル強度:300g Bloom)250mgを蒸留水に2.5wt.%の濃度でそれぞれ溶かして10mlずつ製造した後、これら2つの溶液を混合した溶液を液体パラフィン溶液と混合して、マイクロエマルジョンを含む混合液を製造した。以後、前記混合液に、架橋剤として1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-Butandiol diglycidyl ether、BDDE)を2.2g添加し、常温で5日間架橋反応させた。これをアセトン、ジクロロメタン、蒸留水の順に洗浄した後、篩目の大きさが45μmの網篩を用いて製造された架橋粒子を回収した。回収された架橋粒子を篩目の大きさが500μmの網篩でろ過して残った架橋粒子を分析した。
【0157】
比較例4:高分子マイクロ粒子の製造
ヒアルロン酸塩(重量平均分子量:500kDa)を0.1N NaOH水溶液に2wt.%の濃度で、ゼラチン(ゲル強度:300g Bloom)を蒸留水に2.5wt.%の濃度でそれぞれ溶かして5mlずつ製造した後、これら2つの溶液を混合した溶液を液体パラフィン溶液と混合して、マイクロエマルジョンを含む混合液を製造した。以後、前記混合液に、架橋剤として1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-Butandiol diglycidyl ether、BDDE)を2.2g添加し、常温で5日間架橋反応させた。これをアセトン、ジクロロメタン、蒸留水の順に洗浄した後、篩目の大きさが45μmの網篩を用いて製造された架橋粒子を回収した。回収された架橋粒子を篩目の大きさが500μmの網篩でろ過して残った架橋粒子を分析した。
【0158】
比較例5:高分子マイクロ粒子の製造
ヒアルロン酸塩(重量平均分子量:500kDa)およびゼラチン(ゲル強度:300g Bloom)をそれぞれ蒸留水に2wt.%、2.5wt.%で溶かして5mlずつ製造した後、これら2つの溶液を混合した溶液を液体パラフィン溶液と混合して、マイクロエマルジョンを含む混合液を製造した。以後、前記混合液に、架橋剤として1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-Butandiol diglycidyl ether、BDDE)を2.2g添加し、常温で5日間架橋反応させた。これをアセトン、ジクロロメタン、蒸留水の順に洗浄した後、篩目の大きさが45μmの網篩を用いて製造された架橋粒子を回収した。回収された架橋粒子を篩目の大きさが500μmの網篩でろ過して残った架橋粒子を分析した。
【0159】
比較例6:高分子マイクロ粒子の製造
アルギネートおよびセルロースをそれぞれ蒸留水に2.5wt.%で溶かしたそれぞれの溶液10mLを混合して20mLを製造した後、これをカルシウムイオン(Ca2+)を含む化合物であるCaClが4g添加されたエタノール溶液80mLに、カプセル化(encapsulator)機器を用いて形成された液滴を添加し、常温で2時間架橋反応させた後、エタノールで洗浄して架橋粒子を製造した。
【0160】
0.1N NaOH水溶液を20%含有している80%エタノール溶液に1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-Butandiol diglycidyl ether、BDDE)を2.2g混合した後、前記架橋粒子を添加し、常温で3日間架橋反応させて、高分子マイクロ粒子を製造した。製造された粒子をエタノール、蒸留水の順に洗浄した後、篩目の大きさが45μmの網篩を用いて製造された架橋粒子を回収した。回収された架橋粒子を篩目の大きさが500μmの網篩でろ過して残った架橋粒子を分析した。
【0161】
比較例7:高分子マイクロ粒子の製造
ヒアルロン酸塩(重量平均分子量:500kDa)200mgを0.1N NaOH水溶液に2wt.%の濃度で、ゼラチン(ゲル強度:300g Bloom)250mgを蒸留水に2.5wt.%の濃度で溶かしたそれぞれの溶液10mLを混合して20mLを製造した後、これを鉄イオン(Fe3+)を含む化合物であるFeClが4g添加されたエタノール溶液80mLに、カプセル化(encapsulator)(BUCHI、B-390)機器を用いて形成された液滴を添加し、4℃で2時間架橋反応させた後、エタノールで洗浄して架橋粒子を製造した。
【0162】
前記架橋粒子をカルシウムイオン(Ca2+)を含む化合物であるCaClが4g添加されたエタノール溶液80mLに添加し、4℃で2時間架橋反応させた後、高分子マイクロ粒子を製造した。製造された粒子をエタノール、蒸留水の順に洗浄した後、篩目の大きさが45μmの網篩を用いて製造された架橋粒子を回収した。回収された架橋粒子を篩目の大きさが500μmの網篩でろ過して残った架橋粒子を分析した。
【0163】
比較例8:細胞培養用マイクロキャリアの製造
実施例1の(1)で得られた高分子マイクロ粒子を細胞培養用マイクロキャリアとして使用した。
【0164】
<実験例1>
前記実施例および比較例で製造された高分子マイクロ粒子に対して、次の方法で高分子マイクロ粒子の平均直径、球形化度、強度、細胞培養適合性、安定性を評価した。
【0165】
1.平均直径
前記実施例および比較例の高分子マイクロ粒子の蒸留水における平均直径は、レーザ粒度分析器(Horiba、Partica LA-960)装置を用いて測定した。
【0166】
2.球形化度
前記実施例および比較例の高分子マイクロ粒子の光学(Olympus、BX53)写真を撮影し、これから球形化度を計算した。
【0167】
本発明による球形化度は、光学写真における任意の30個の粒子の最も長い直径に対する最も短い直径の比率(長径比)の平均値として計算した。
【0168】
この時、球形化度値が1に近いほど球形に近いことを意味する。
【0169】
3.強度
前記実施例および比較例の高分子マイクロ粒子に対して、Texture analyzer装置を用いて、マイクロ粒子の強度を測定した。5Nロードセル(load cell)が装着された装置のflat cylindrical probeの下領域に、蒸留水で24時間膨潤したマイクロ粒子30個を単層として載せた。初期trigger forceは1mNに設定し、1mm/sの速度で粒子を圧縮した。粒子平均直径の25%水準に変形した時の力を圧縮力として定めた。
【0170】
平均圧縮強度は、前記圧縮力を測定対象のマイクロ粒子の個数である30で割って計算した。
【0171】
4.細胞培養適合性
6ウェルプレート(well plate)に細胞培養液を満たし、高分子マイクロ粒子と細胞を入れて、plate-rocking方式で細胞を培養した。この時、培養液の温度は37℃を維持し、3日間培養して高分子マイクロ粒子で培養された細胞数を確認した。
【0172】
この時、細胞培養適合性は以下の基準で評価した。
【0173】
適合:投入された細胞数に対して培養された細胞数が100%以上の場合
不適合:投入された細胞数に対して培養された細胞数が100%未満であるか、培養中にマイクロ粒子が分解される場合
【0174】
5.安定性
高温高圧方式の滅菌器(Autoclave)の使用により、リン酸緩衝食塩水(phosphate-buffered saline)溶液に含まれた高分子マイクロ粒子の滅菌処理時の安定性および長期間培養による粒子安定性を以下の基準で評価した。
【0175】
適合:滅菌器(Autoclave)の使用前と後の乾燥した高分子マイクロ粒子の重量減少率20%以下の場合
不適合:滅菌器(Autoclave)の使用前と後の乾燥した高分子マイクロ粒子の重量減少率20%超の場合
【0176】
【表1】
【0177】
前記表1に示されているように、実施例の高分子マイクロ粒子は、まず、投入された細胞数に対して培養された細胞数が100%以上で細胞培養に適しているだけでなく、滅菌器(Autoclave)処理前と後の乾燥した高分子マイクロ粒子の重量減少率20%以下となって滅菌処理および長期間培養に適していることを確認することができた。それだけでなく、実施例の高分子マイクロ粒子は、平均圧縮強度が0.37mN以上となって優れた機械的物性を実現すると同時に、高い架橋密度を示す粒子の比率が高いことを確認することができた。つまり、実施例の高分子マイクロ粒子は、細胞培養、滅菌処理および長期間培養に適していながらも、優れた架橋密度および機械的物性を実現することを確認した。これに対し、比較例1の高分子マイクロ粒子は、滅菌器(Autoclave)処理前と後の乾燥した高分子マイクロ粒子の重量減少率20%超となって滅菌処理および長期間培養に適さないだけでなく、平均圧縮強度が0.23mNとなって劣る機械的物性を示し、低い架橋密度を示す粒子の比率が高いことを確認することができた。
【0178】
そして、比較例2の高分子マイクロ粒子は、蒸留水洗浄段階で架橋されない高分子が溶解して粒子が収縮することが観察された。また、細胞培養中にマイクロ粒子が分解されて、投入された細胞数に対して培養された細胞数が100%未満で細胞培養に適さないだけでなく、滅菌器(Autoclave)処理前と後の乾燥した高分子マイクロ粒子の重量減少率20%超過となって滅菌処理および長期間培養に適さないことを確認することができた。また、平均圧縮強度が0.1mNとなって劣る機械的物性を示すことを確認することができた。
【0179】
また、比較例3~5の高分子マイクロ粒子は、比較例1とは異なり、生体適合性高分子を溶かした水溶液の濃度を実施例1と同一の水準に調節することによって、高分子マイクロ粒子が形成されず、実施例の場合に、低い生体適合性高分子濃度でも高分子マイクロ粒子の形成が可能であることを確認することができた。
【0180】
比較例6の高分子マイクロ粒子は、架橋剤による化学的架橋によって蒸留水状態で0.29mNの平均圧縮強度を示したが、生体適合性高分子として細胞付着性のないアルギネートとセルロースを使用することによって、細胞培養に適さないことを確認することができた。また、金属イオンとしてカルシウムイオン(Ca2+)を用いて架橋することによって、細胞培養液に存在するカルシウムイオンと可逆的に反応可能で、細胞培養時に粒子強度が低くなりうる。
【0181】
比較例7の高分子マイクロ粒子は、イオン架橋だけを経て製造されることによって、滅菌処理および細胞培養中に一部のマイクロ粒子が分解されて細胞培養に適さないことを確認することができた。
【0182】
<実験例2>
前記実施例1および比較例8で製造された細胞培養用マイクロキャリアに対して、次の方法で物性を測定し、表2に記載した。
【0183】
6.コーティング層の厚さ
細胞培養用マイクロキャリア内の高分子マイクロ粒子の表面に形成されたコーティング層の厚さは断面TEMイメージにより測定した。
【0184】
7.細胞付着性
100mL vertical wheel bioreactor(PBS社)に間葉系幹細胞(密度:1.05g/cm)を含む培養液を満たし、前記細胞培養用マイクロキャリアを培養液に注入して撹拌した。37℃で7日間培養した後、細胞培養用マイクロキャリアで培養した細胞数を確認した。そして、下記の数式のように、初期投入された細胞数と比較してマイクロキャリアの細胞付着性を評価した。
【0185】
細胞付着性=(マイクロキャリアを細胞培養液に投入して37℃で7日間培養した後の細胞数/細胞培養液に最初に含まれる細胞数)×100
【0186】
【表2】
【0187】
前記表2に示されているように、実施例1の細胞培養用マイクロキャリアは、高分子マイクロ粒子の表面に0.1μmの細胞付着性物質コーティング層を含むことによって、細胞付着性が比較例8に比べて顕著に向上したことを確認することができた。
図1
図2
図3
【国際調査報告】