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特表2024-518721薬物送達デバイスのための電子システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-02
(54)【発明の名称】薬物送達デバイスのための電子システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20240424BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
A61M5/315 550Z
A61M5/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564441
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2022060641
(87)【国際公開番号】W WO2022223747
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】21315069.1
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22315005.3
(32)【優先日】2022-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・アラディングス
(72)【発明者】
【氏名】アダム・モヨ・ハーヴィー-クック
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・メレディス・ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】アイダン・マイケル・オヘア
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066EE14
4C066FF05
4C066QQ52
4C066QQ73
4C066QQ79
4C066QQ82
(57)【要約】
本発明は、薬物送達デバイス(1)のための電子システム(100)に関する。電子システム(100)は、電源(132)と、メモリと、電子システムの動作を制御するように構成され、電源(132)およびメモリに連結されたプロセッサ(131)と、2つの光センサユニット(133、134)とを含むことができる。電子システムは、第1の低消費電力状態と、第1の状態と比較して消費電力がより高い少なくとも1つのさらなる状態とを有する。プロセッサ(131)は、第1の低消費電力状態において両方の光センサ(134)を定期的にポーリングし、両方の光センサ(134)の応答が互いに同一であり、かつ先行する応答と同一である場合には、第1の低消費電力状態を維持し、光センサ(134)の応答が互いに異なるか、または先行する応答と異なる場合には、少なくとも1つのさらなる状態に切り替わるように構成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイス(1)から送達される用量を記録する、薬物送達デバイス(1)とともに使用するための電子システムであって:
電源(132)と、
メモリと、
電子システムの動作を制御するように構成され、電源(132)およびメモリに連結されたプロセッサ(131)と、
プロセッサ(131)と通信する第1の光源(133)、第2の光源(133)、第1の光センサ(134)、および第2の光センサ(134)と、
を含み、ここで、光センサ(134)は、逆位相配置で薬物送達デバイスのエンコーダ(21)の動きを検出するのに好適であり、該動きは、ダイヤル設定されかつ/または薬物送達デバイス(1)から送達される用量を示し、
電子システムは、第1の低消費電力状態と、第1の状態と比較して消費電力がより高い少なくとも1つのさらなる状態とを有し、
プロセッサ(131)は、第1の低消費電力状態において両方の光センサ(134)を定期的にポーリングし、両方の光センサ(134)の応答が互いに同一であり、かつ先行する応答と同一である場合には、第1の低消費電力状態を維持し、光センサ(134)の応答が互いに異なるか、または先行する応答と異なる場合には、少なくとも1つのさらなる状態に切り替わるように構成されていることを特徴とする、前記電子システム。
【請求項2】
第1の光源(133)および第1の光センサ(134)は、互いに隣接して配置され、第1のライトパイプ(121)のセンサ側端部の方に向いており、第2の光源および第2の光センサは、互いに隣接して配置され、第2のライトパイプ(122)のセンサ側端部の方に向いており、ライトパイプ(121、122)は、各々、反対側のエンコーダ側端部を有し、該エンコーダ側端部は、光反射材料(200)によって遮蔽された場合、それぞれの第1または第2の光源(133)から放出された光がそれぞれの第1または第2の光センサ(134)によって検出されるようにする、請求項1に記載の電子システム。
【請求項3】
光源(133)とそれぞれの光センサ(134)との間のそれぞれの光路に位置する少なくとも1つの取り外し可能な遮蔽要素(200)をさらに含む、請求項1または2に記載の電子システム。
【請求項4】
取り外し可能な遮蔽要素(200)は、光センサ(134)を遮蔽する反射面を含む、請求項3に記載の電子システム。
【請求項5】
プロセッサ(131)は、第1の低消費電力状態において光センサ(134)を定期的に、たとえば10~40秒毎、理想的には15~25秒毎、たとえば20秒毎にポーリングするように構成されており、プロセッサ(131)は、少なくとも1つのさらなる状態において光センサ(134)を定期的に、第1の低消費電力状態よりも高い周波数でポーリングするように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項6】
プロセッサ(131)は、両方の光センサ(134)の応答が、両方の光源(133)から放出された光がそれぞれの第1および第2の光センサ(134)によって検出されることである場合、第1の低消費電力状態を維持するように構成されている、請求項5に記載の電子システム。
【請求項7】
別のデバイスと通信するための通信ユニットをさらに含み、ここで、プロセッサ(131)は、第1の低消費電力状態において光センサ(134)を定期的に、たとえば0.5~2秒毎に、たとえば1Hzの周波数でポーリングするように構成されており、ここで、プロセッサ(131)は、少なくとも1つのさらなる状態において光センサ(134)を定期的に、第1の低消費電力状態よりも高い周波数でポーリングし、かつ/または通信ユニットのスイッチをオンにするように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項8】
プロセッサ(131)は、両方の光センサ(134)の応答が、両方の光源(133)から放出された光ビームが両方の光センサ(134)のいずれによっても検出されないことである場合には、第1の低消費電力状態を維持し、光センサ(134)の応答が互いに異なり、かつ先行する応答と異なる場合には、少なくとも1つのさらなる状態に切り替わるように構成されている、請求項7に記載の電子システム。
【請求項9】
プロセッサ(133)は、第1の低消費電力状態において光センサ(134)を定期的に、たとえば100Hz~300Hz、たとえば200Hzの周波数でポーリングするように構成されており、プロセッサ(131)は、少なくとも1つのさらなる状態において光センサ(134)を定期的に、第1の低消費電力状態よりも高い周波数でポーリングするように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項10】
光源(133)が起動されないスリープ状態をさらに有し、ここで、電子システムは、該電子システムの動きを検出するのに好適な少なくとも1つの運動センサ(140)をさらに含み、プロセッサ(131)は、少なくとも1つの運動センサ(140)によって動きが検出されない場合にはスリープ状態を維持し、少なくとも1つの運動センサ(140)によって動きが検出された場合には第1の低消費電力状態または少なくとも1つのさらなる状態に切り替わるように構成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項11】
少なくとも1つのさらなる状態は、電子システムが薬物送達デバイスに取り付けられるかまたは一体化されたとき、用量ダイヤル設定および/または用量送達を検出するために光源(133)および光センサ(134)が使用される用量記録状態であり、プロセッサ(131)は、用量記録状態において光センサ(134)の応答を処理および/または記録するように構成されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項12】
中心軸を有する外側キャップ(110)と、キャップ(110)内に少なくとも部分的に保持されるシャーシ(120)と、メモリおよびプロセッサ(131)を含むPCBユニット(130)とをさらに含み、該PCBユニット(130)および電源(132)は、キャップ(110)およびシャーシ(120)内に保持され、光源(133)および光センサ(134)は、中心軸を中心とする円形領域に配置され、第1の光源(133)および第1の光センサ(134)は、第2の光源および第2の光センサから角度的にオフセットしている、請求項1~11のいずれか1項に記載の電子システム。
【請求項13】
シャーシ(120)は少なくとも部分的に透明であり、互いに30°~60°、たとえば45°離れて配置されたライトパイプ(121、122)を含む、請求項2または12に記載の電子システム。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の電子システムと、薬物送達デバイスによって送達予定の用量を選択する用量ダイヤル設定動作、および設定された用量を送達する用量送達動作を実行するように構成されている用量設定および駆動機構とを含む、薬物送達デバイス(1)であって、用量設定および駆動機構は、少なくとも用量送達動作においてかつ/または用量設定動作において回転可能なエンコーダ(21)を含み、該エンコーダ(21)は、互いに30°の間隔を空けて配置された12個の光反射歯(22)のリングを含み、電子システム(100)は、エンコーダ(21)の回転位置に応じて、光源(133)のうちの一方によって放出される光が、歯(22)のうちの1つによって反射され、それぞれの光センサ(134)によって検出され、一方、光源のうちの他方によって放出される光が、歯のうちの1つによって反射されないように配置されている、前記薬物送達デバイス。
【請求項15】
薬剤を収容するカートリッジをさらに含む、請求項14に記載の薬物送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、薬物送達デバイスのための電子システムに関する。本発明はさらに、好ましくは電子システムを含む薬物送達デバイスに関する。より詳細には、本発明は、好適に構成されたペン注射器で、そのペン注射器から送達される用量を記録する目的で再使用可能なクリップオンモジュールとして具現化することができる、電子モジュールの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
ペン型薬物送達デバイスには、正規の医療訓練を受けていない人が定期的に注射を行うという用途がある。これは、糖尿病患者の間でますます一般的になっている可能性があり、そのような患者は、自己治療によって自身の疾患の効果的な管理を行うことができる。実際には、そのような薬物送達デバイスにより、ユーザは、薬剤の複数のユーザ可変の用量を個々に選択して投薬することができる。
【0003】
基本的に、2つのタイプの薬物送達デバイス:すなわち、再設定可能な(すなわち、再使用可能)デバイスおよび再設定不能な(すなわち、使い捨て)デバイスがある。たとえば、使い捨てペン送達デバイスは、自己完結型デバイスとして供給される。そのような自己完結型デバイスには、取り外し可能な充填済みカートリッジがない。逆に、デバイス自体を破壊しない限り、充填済みカートリッジをこれらのデバイスから取り外して交換することはできない。したがって、そのような使い捨てデバイスは、再設定可能な用量設定機構を有する必要がない。本発明は、使い捨てデバイスにも再使用可能デバイスにも適用可能である。
【0004】
そのようなデバイスの場合、ダイヤル設定されてペンから送達される用量を記録する機能は、多種多様なデバイスユーザにとって、記憶の補助として、または用量履歴の詳細なログ記録をサポートするために、有用でありうる。したがって、電子機器を使用する薬物送達デバイスは、製薬業界においてだけでなく、ユーザまたは患者にとって、ますます一般的になりつつある。たとえば、特許文献1から、排出手段によってリザーバから排出される薬物の量に関するデータを捕捉する電子制御式の捕捉システムを含む薬物送達デバイスが知られている。
【0005】
しかしながら、特に、デバイスが自己完結型であるように、すなわち、デバイスの動作に対して電力を提供するために必要な電源への接続用のコネクタがないように設計されている場合、デバイスに一体化された電源の資源の管理は特に重要である。特許文献2では、デバイスが使用されていないときの消費電力の問題が対処され、電池寿命を延ばすための種々の消費電力状態が提案されている。
【0006】
消費電力状態の切り替えに関する先行技術には、いくつかの代替案がある。たとえば、特許文献3では、光センサおよびタッチセンサを含む監視ユニットが提案されており、ここで、タッチセンサは電子回路に動作可能に接続され、タッチセンサが監視ユニットのタッチまたは動きを検出したときに電子回路が起動するようになっている。これにより、使用されていないときには非アクティブまたはスリープモードにすることができ、監視ユニットが取り付けられている薬剤送達デバイスをユーザが手に取ったときに、起動させることができるという点で、監視デバイスの電力を節約することができる。さらに、特許文献4では、捕捉システムの初期化を開始するようにスイッチ手段を作動させる中間位置に移動するように適用された作動部材が提案されている。
【0007】
特許文献5は、データ管理ユニットと無線通信するように構成された薬物送達ペンを含む糖尿病管理システムを開示している。このペンは、薬物送達ペンの動作を監視するためにつまみの動きを監視する、投与量センサ、たとえば光センサを含むことができる。さらに、ユーザがデバイスを手に取ったときにデバイスがスリープモードである場合にデバイスをウェークアップさせるために、慣性センサも使用することができる。
【0008】
薬物送達デバイスのための監視ユニットで使用される運動検出センサのさらなる例には、聴覚信号を検出するための、特許文献6に開示されているような加速度計、ペンが適切にプライミングされたか否か、インスリンタイプがペン内で適切に混合されたか否か、またはペンがスリープモードからウェークアップすべきか否かを決定するための、特許文献7に開示されているような加速度計が含まれる。薬物送達デバイスで使用されるさらなる加速度計は、たとえば、特許文献8、特許文献9、および特許文献10から知られている。
【0009】
特許文献11では、薬物送達アセンブリは、光ベースの非接触追跡手段を備え、追跡手段が、追跡手段に対して相対的に動いた表面の動き特性を決定するように適用されている、電子センサ回路を含む。この電子センサ回路は、スリープ状態と、第1の動き特性が決定されるのを可能にする低電力検出状態と、第2の動き特性が決定されるのを可能にする高電力測定状態との間で作動させることができる。電子センサ回路は、予め決められた間隔で、スリープ状態から検出状態へ、またスリープ状態に戻るように、動作状態を変更するように適用される。光ベースのセンサによって動きを検出するには、一定期間にわたる検出が必要である。加えて、その間隔は、迅速な用量設定動作でさえも検知するように十分短くなければならない。いずれも、消費電力が比較的高くなる。しかしながら、長期的にセンサ回路を使用しない状態の間、たとえば初回使用前のデバイスの収納中、消費電力のさらなる低減が望ましい場合がある。
【0010】
特許文献12および特許文献13は、光センサが通電されない低電力状態と、光センサが通電される高電力状態とを有する、薬物送達デバイスのためのモジュールを開示している。注射ボタンの変位によって起動するスイッチによって、システムを高電力状態に切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】EP2729202B1
【特許文献2】WO2021/191327A1
【特許文献3】EP3525844B1
【特許文献4】WO2013/004844A1
【特許文献5】EP2767297B1
【特許文献6】EP2911717B1
【特許文献7】EP2926846B1
【特許文献8】EP2401006B1
【特許文献9】WO2016/071912A1
【特許文献10】WO2017/189970A1
【特許文献11】WO2019/219825A1
【特許文献12】WO2019/101962A1
【特許文献13】WO2021/116387A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本開示の目的は、薬物送達デバイスのための1つの電子システムまたは複数の電子システムを含む薬物送達デバイスのためのエネルギー管理に関する改善を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、たとえば、独立請求項に定義された主題によって解決される。有利な実施形態および改良形態は、従属請求項に従う。しかしながら、本開示は、添付の特許請求の範囲で定義された主題に制限されないことが留意されるべきである。むしろ、本開示は、以下の説明から明らかになるように、独立請求項で定義されているものに加えて、またはその代わりに、改良形態を含むことができる。
【0014】
本開示の1つの態様は、薬物送達デバイスのための電子システムに関する。本開示の別の態様は、そのような電子システムを含む薬物送達デバイスに関する。したがって、薬物送達デバイスに関連して本明細書に記載する構成は、電子システムについて開示されているものとみなされるべきであり、その逆もまた同様である。
【0015】
薬物送達デバイスとともに使用するための電子システムは、薬物送達デバイスから送達される用量を記録するのに好適でありうる。電子システムは、電源、たとえばコイン電池型の電池のような電池と、データを記憶するメモリと、電子システムの動作を制御するように構成され、電源およびメモリに連結されたプロセッサとを含むことができる。加えて、電子システムは、少なくとも2つの光センサユニット、たとえば、対応する第1の光センサとともに第1の光源と、対応する第2の光センサとともに第2の光源とを含むことができ、これらは、プロセッサと通信する。光センサは、薬物送達デバイスのエンコーダの動きを検出するのに好適でありうる。ここで、動きは、ダイヤル設定され(すなわち選択され)かつ/または薬物送達デバイスから送達される用量を示す。消費電力を低減させるために、電子システムは、第1の低消費電力状態と、第1の状態と比較して消費電力がより高い少なくとも1つのさらなる状態とを有することができる。
【0016】
光センサユニットを実装するのに好適ないくつかの異なる方法がある。たとえば、光センサユニットは、電磁放射エミッタ、たとえばIR-LEDにおけるようなLEDと放射線検出器とを含む、放射線検出器を含むことができる。
【0017】
1つの例では、エンコーダと光センサユニットとは逆位相配置になっており、これは、両方の光源が同時に光を放出した場合、光センサのうちの一方のみが光を受け、他方の光センサは放出された光を受けないことを意味する。エンコーダとセンサユニットとが互いに対して移動すると、以前は光を受け取っていた光センサが、今度は放出された光を受けず、他方の光センサが光を受ける。これは、エンコーダが選択的に光を反射することによって実現することができる。代替形態として、エンコーダは、選択的に光を遮断してもよい。他の例では、エンコーダと光センサユニットとは逆位相配置になっておらず、両方の光源が同時に光を放出した場合、エンコーダの相対的な位置に応じて、いずれの光センサも光を検出しないか、1つのみ、またはすべての光センサが光を検出するようになっている。
【0018】
電子システムは、注射デバイスのための再使用可能なクリップオンモジュールとして構成することができる。代替形態として、電子システムは、注射デバイスに一体化された(組み込まれた)ユニットまたはモジュールであってもよい。電子システムおよび(電子)モジュールという用語は、以下では両方の代替形態について同義に使用する。用量を記録する機能は、記憶の補助として、または用量履歴の詳細なログ記録をサポートするために、多種多様なデバイスユーザにとって有用でありうる。電子システム、たとえば電子モジュールは、携帯電話などに接続可能であり、用量履歴を定期的にシステムからダウンロードすることができるように構成することができることが想定される。
【0019】
本開示によれば、光センサユニットのうちの少なくとも1つは、電子符号化モジュールを第1の低消費電力状態から少なくとも1つのさらなる状態へウェークアップするために使用することができる。たとえば、用量を検出し、記憶し、送信するためにより高い電力状態にウェークアップする手段を有する電子モジュールを、低電力状態で収納することにより、デバイスが使用されていないときの消費電力が制限され、電池寿命が延びる。この機能を実行するために、(たとえば、用量を符号化するために)電子モジュールに既に存在する光センサを使用することにより、この目的を達成するために特別にいかなる追加のハードウェアも不要になる。後述するように、このような光学検知システムには多くの異なる例がある。
【0020】
本開示の第1の態様において、プロセッサは、第1の低消費電力状態において、両方の光センサを定期的にポーリングするように構成することができ、すなわち、光源によって光信号が放出され、光が光センサによって受けられたか否かが検出される。光センサによる動き検出とは対照的に、光センサをポーリングするには単一の光フラッシュで十分である。これにより、消費電力が低減する。たとえば、プロセッサは、両方の光センサの応答が互いに同一であり、かつ先行する応答と同一である場合、第1の低消費電力状態を維持し、光センサの応答が互いに異なり、かつ/または先行する応答と異なる場合、少なくとも1つのさらなる状態に切り替わるように構成することができる。
【0021】
たとえば、薬物送達デバイスから送達される用量を記録する、薬物送達デバイスとともに使用するための電子システムにおいて、電子システムは、電源と;メモリと;電子システムの動作を制御するように構成され、電源およびメモリに連結されたプロセッサと;プロセッサと通信する第1の光源、第2の光源、第1の光センサ、および第2の光センサとを含み、ここで、光センサは、(両方の光源が同時に光を放出する場合、光センサのうちの一方のみが光を受け、他方の光センサは放出された光を受けないことを意味する)逆位相配置で薬物送達デバイスの(動きが、ダイヤル設定されかつ/または薬物送達デバイスから送達される用量を示すように、配置および構成されている)エンコーダの動きを検出するのに好適であり、その動きは、ダイヤル設定されかつ/または薬物送達デバイスから送達される用量を示し、電子システムは、第1の低消費電力状態と、第1の状態と比較して消費電力がより高い少なくとも1つのさらなる状態とを有する。このような電子システムにおいて、プロセッサは、第1の低消費電力状態において両方の光センサを定期的にポーリングし(センサをポーリングすることは、光源によって光信号が放出されることによって達成され、光がそれぞれの光センサによって受けられたか否かが検出される)、両方の光センサの応答が互いに同一であり、かつ先行する応答と同一である場合には、第1の低消費電力状態を維持し、光センサの応答が互いに異なり、かつ/または先行する応答と異なる場合には、少なくとも1つのさらなる状態に切り替わるように構成することができる。
【0022】
エンコーダと光センサユニットとが逆位相配置になっている電子システムにおいて、ポーリング中に両方の光センサの応答が互いに同じである場合、これは電子システムが用量検出に好適な配置になっていないという標示である可能性がある。このような配置は、たとえば、電子システムが最初に使用する前に薬物送達デバイスから離れた場所に収納されている場合に生じる可能性がある。代替形態として、このような配置は、電子システムが薬物送達デバイスに取り付けられているが、センサがエンコーダから過度に遠い、たとえば薬物送達デバイスを最初に使用する前の初期位置にある場合に、生じる可能性がある。両方の代替形態においても、消費電力を可能な限り低く維持することが望ましい。
【0023】
より詳細には、第1の光源および第1の光センサは、互いに隣接して配置され、第1のライトパイプのセンサ側端部の方に向いていることができ、第2の光源および第2の光センサは、互いに隣接して配置され、第2のライトパイプのセンサ側端部の方に向いていることができる。さらに、ライトパイプは、各々、反対側のエンコーダ側端部を有することができ、エンコーダ側端部は、光反射材料によって遮蔽された場合、それぞれの第1または第2の光源から放出された光ビームがそれぞれの第1または第2の光センサによって検出されるようにする。たとえば、電子システムは、光源とそれぞれの光センサとの間のそれぞれの光路に位置する少なくとも1つの取り外し可能な遮蔽要素をさらに含むことができる。さらに、取り外し可能な遮蔽要素は、光センサを遮蔽する反射面を含むことができる。
【0024】
電子システムまたはモジュールは、最初に使用される前の長期収納中の電池の放電を低減させるために、製造直後にその最初の包装に配置されるとき、低電力長期収納モードで収納される。この低電力長期収納モードでは、電子回路の消費電力を低減させる機構のうちの1つは、ユーザ入力の検出を無効にすることである。最初に使用する前にモジュールをその包装から取り出す行為によって、モジュールは、この収納モードからユーザ入力を検出することができる高電力モードにウェークアップすることができる。
【0025】
より具体的には、電子システムの包装は、モジュール内の2つの光センサに接続された2つのライトパイプの端面を遮蔽する反射面を含むことができる。光センサは、低電力長期収納モードの間、定期的にポーリングされるが、高頻度ではポーリングされない。たとえば、プロセッサは、第1の低消費電力状態において、光センサを定期的に、たとえば10~40秒毎、理想的には15~25秒毎、たとえば20秒毎にポーリングするように構成することができ、プロセッサは、電子システムをウェークアップするように、少なくとも1つのさらなる状態において光センサを定期的に、第1の低消費電力状態よりも高い周波数でポーリングするように構成されている。プロセッサは、第1の低消費電力状態において、光センサを定期的に、5~15秒毎、または15~25秒毎、または25~50秒毎にポーリングするように構成することができる。光センサがポーリングされるとき、両方が遮蔽されたままである場合、モジュールは低電力長期収納モードのままでありうる。言い換えれば、プロセッサは、両方の光センサの応答が、両方の光源から放出された光ビームがそれぞれの第1および第2の光センサによって検出されることである場合、第1の低消費電力状態を維持するように構成することができる。このポーリングは最初に使用される前にのみ使用することができ;すなわち、この方法を使用して、モジュールが包装から取り出されたことが検出されると、この定期的なポーリングのモードは停止することができる。
【0026】
モジュールが包装から取り出されても、注射デバイスに取り付けられる前には、いずれの光センサも遮蔽されない。同様に、モジュールが、用量ボタンを押すことによりセンサをエンコーダに近づける必要がある注射デバイスに取り付けられても、用量ボタンが押し下げられていない場合、いずれの光センサも遮蔽されない。センサがポーリングされるとき、モジュールがこのいずれも遮蔽されていない状態にある場合、モジュールはウェークアップすることができる。モジュールがそのような注射デバイスに取り付けられ、(たとえば、Bluetoothを使用してモジュールを携帯電話にペアリングするために)用量ボタンが押し下げられると、単一の光センサが、注射ペンのエンコーダによって遮蔽される。センサが上述したいずれも遮蔽されていない状態でポーリングされないように、モジュールが包装から迅速に取り出されて、注射デバイスに取り付けられ、ユーザが用量ボタンを保持する場合、センサがこの単一の遮蔽状態でポーリングされたとき、モジュールはウェークアップすることができる。
【0027】
電子システムは、別のデバイスと通信するための通信ユニットをさらに含むことができる。好ましくは、電子システムは、第1の状態から第2の状態に切り替えられ、それによって通信ユニットが別のデバイスとの前記通信、たとえば、同期またはペアリング動作を確立するように誘導するように構成されている。電子制御ユニットは、電子システムの別のユニットに対して、このユニットがスイッチオンされるかまたは動作可能になるように、コマンド、たとえば信号を発行することができる。このユニットは、別のデバイスと通信するための通信ユニット、たとえばWi-FiまたはBluetoothなどの無線ネットワークを介して別のデバイスと通信する無線通信インターフェース、またはさらにはユニバーサルシリーズバス(USB)、ミニUSB、もしくはマイクロUSBコネクタを受けるソケットなどの有線通信リンク用のインターフェースであってもよい。好ましくは、電子システムは、通信ユニットとしてRF、WiFi、および/またはBluetoothユニットを含む。通信ユニットは、システムまたは薬物送達デバイスと、他の電子デバイス、たとえば携帯電話、パーソナルコンピュータ、ラップトップなどの外部との間の通信インターフェースとして提供することができる。たとえば、用量データを、通信ユニットによって外部デバイスに送信することができる。用量データは、外部デバイスにおいて確立された用量ログまたは用量履歴に使用することができる。
【0028】
本開示のさらなる態様によれば、プロセッサは、第1の低消費電力状態において光センサを定期的に、たとえば0.5~2秒毎に、たとえば1Hzの周波数でポーリングするように構成することができ、少なくとも1つのさらなる状態において電子システムのさらなる構成要素をウェークアップさせるように構成することができる。周波数は、0.2Hz~0.7Hz、または0.7Hz~1.3Hz、または1.3Hz~3Hz、または3Hz~5Hzでありうる。たとえば、プロセッサは、光センサを定期的に、第1の低消費電力状態よりも高い周波数でポーリングし、かつ/または通信ユニットのスイッチをオンにする(すなわち、ウェークアップさせる)ように構成することができる。たとえば、プロセッサは、両方の光センサの応答が、両方の光源から放出された光ビームが両方の光センサのいずれによっても検出されないことである場合には、第1の低消費電力状態を維持し、光センサの応答が互いに異なり、かつ/または先行する応答と異なる場合には、少なくとも1つのさらなる状態に切り替わるように構成することができる。
【0029】
低電力モードで、電子システムまたはモジュール内の一対の光センサのたとえば1Hzの一定の低周波数ポーリングを使用して、たとえば、Bluetoothを使用してモジュールを携帯電話と同期またはペアリングするために、ユーザが注射デバイス用量ボタンを押し下げたときを検出することができる。この一定の低周波ポーリングは、低電力モードで、モジュールが非アクティブであるとき、すなわち用量が記録されていないとき、最初の使用に続いて使用することができる。この低周波数ポーリングは、モジュールが包装内にあるが、注射デバイスに取り付けられる前にも、使用することもできる。
【0030】
より詳細には、モジュールが注射デバイスに取り付けられていない(たとえば、その最初の包装からまだ取り出されていない)とき、光センサは、反射遮蔽要素が設けられていない場合、いずれも遮蔽されていない状態にありうる。同様に、モジュールが注射デバイスに取り付けられているが、用量ボタンが押し下げられていない(たとえば、モジュールがBluetoothを使用して携帯電話とペアリングされていない)場合、光センサは、いずれも遮蔽されていない状態にありうる。このいずれも遮蔽されていない状態でセンサがポーリングされた場合、モジュールはウェークアップしない。しかしながら、モジュールが注射デバイスに取り付けられ、用量ボタンが押し下げられると、逆位相配置で、2つの光センサのうちの一方を遮蔽することができる。ユーザがこの状態で用量ボタンを十分に長い時間(たとえば、ペアリングを開始するために数秒間)保持した場合、光センサは、この単一の遮蔽状態でポーリングされる。これにより、モジュールがウェークアップする。
【0031】
本開示のさらなる態様によれば、プロセッサは、第1の低消費電力状態において光センサを定期的に、たとえば100Hz~300Hz、たとえば200Hzの周波数でポーリングするように構成することができ、プロセッサは、電子システムのさらなる構成要素をウェークアップさせ、追加の機能を開始し、かつ/または少なくとも1つのさらなる状態において光センサを定期的に、第1の低消費電力状態よりも高い周波数でポーリングするように構成することができる。周波数は、50Hz~150Hz、または150Hz~250Hz、または250Hz~400Hzでありうる。より詳細には、電子システムの少なくとも1つのさらなる状態は、電子システムが薬物送達デバイスに取り付けられるかまたは一体化されたとき、用量ダイヤル設定および/または用量送達を検出するために光源および光センサが使用される用量記録状態でありうる。プロセッサは、用量記録状態における光センサの応答を処理および/または記録するように構成することができる。
【0032】
この例では、低電力モードで、モジュール内の一対の光センサの一定の中周波数ポーリング(たとえば、200Hz)を使用して、ユーザが注射デバイスを使用して用量を投薬し始めたことを検出することができる。この一定の低周波数ポーリングは、低電力モードで、モジュールが非アクティブであるとき、すなわち用量が記録されていないときの最初の使用に続いて使用することができる。低周波数ポーリングは、モジュールが包装内にあるが、注射デバイスに取り付けられる前にも使用することができる。
【0033】
逆位相配置では、用量ボタンが最初に押されたとき、2つの光センサのうちの一方が、エンコーダ上の構成によって遮蔽され、他方は遮蔽されない。薬物の最初の単位が投薬されると、エンコーダがセンサに対して移動し、たとえば回転して、最初に遮蔽されていた光センサが遮蔽されなくなり、最初に遮蔽されていなかった光センサが遮蔽されるようになる。光センサのこの中周波数ポーリングにより、この遮蔽状態の変化が検出されることが可能になり、モジュールはウェークアップして、投薬されている用量を即座に記録することができる。
【0034】
本開示のさらに他の態様によれば、電子システムは、光源が起動されない(電源から電力が提供されない)スリープ状態をさらに有する。電子システムは、電子システムの動きを検出するのに好適な少なくとも1つの運動センサをさらに含むことができる。この例では、プロセッサは、少なくとも1つの運動センサによって動きが検出されない場合にはスリープ状態を維持し、少なくとも1つの運動センサによって動きが検出された場合には第1の低消費電力状態または少なくとも1つのさらなる状態に切り替わるように構成することができる。概して、スリープ状態またはモードは、モジュールのすべての機能が最小限のまたは実質的にゼロの消費電力であるが、電子システム(または薬物送達デバイス)がスリープモードから解除された場合にシステムの起動を必要としないモードでありうる。
【0035】
たとえば、電子システムがその低電力モードにある間、このような運動センサを使用して、モジュールが静止しているか否かを検出することができる。動きが検出されない場合、モジュールは収納またはアイドル状態であると想定され、ユーザインタラクションは発生せず、光センサはポーリングされず、電子システムまたはモジュールはウェークアップしない。動きが検出された場合、ユーザがモジュールとインタラクトしている可能性があると想定され、電子システムまたはモジュールは部分的にウェークアップして、上述した低周波数ポーリングモードまたは中周波数ポーリングモードになる。これにより、モジュールが静止しているときに引き出される電力の量が減少し、電池寿命が長くなる。
【0036】
運動センサの一例として、加速度計を使用して、デバイスが静止している間、デバイスを低電力スタンバイモードに維持することができる。加速度計は、1uA未満、たとえば300nA未満の超低電力モードを有することができ、スリーピングモード、すなわち、運動センサはアクティブであるが、他の大部分またはすべての機能が非アクティブであるモードでのエネルギー消費は、200Hzでセンサをポーリングするときに、たとえば約320μAの静止電流を有する第1の低消費電力状態と比較して著しく低い。このような加速度計の好適な例としては、とりわけ、2つのスニフモード:1Hz(1.8Vで0.3μA)および6Hz(1.8Vで0.4μA)を有するMelexisMC3635がある。
【0037】
一例では、動きによりデバイスが起動すると、デバイスは、用量が検出されるまで、またはタイムアウト、たとえば20秒のタイムアウトにより、デバイスがスリープモードに戻るまで、200Hzでセンサをポーリングする。一般に、加速度計は、環境からの衝撃または振動によって誤作動しやすい。このため、加速度計が1日あたり最大200分間デバイスをウェークアップさせた場合、電池の寿命(たとえば、非充電式のコイン電池の場合)は約1年になる可能性がある。電動輸送機関で長時間過ごすかまたは歩行するユーザの場合、アウェイク時間はより長くなり、電池寿命は短くなる。
【0038】
代替形態として、充電式電池によって電力を供給してもよい。これにより、電池寿命は実質的に無制限となる。充電は、充電ステーションおよび物理的接点ピンを使って達成することができる。任意選択的に加速度計を使用することが、充電間隔を長くするのに役立つ。
【0039】
電子システムが、薬物送達デバイスに解放可能に取り付けられる再使用可能なモジュールである場合、電子システムまたはモジュールは、中心軸を有する外側キャップと、キャップ内に少なくとも部分的に保持されるシャーシと、メモリおよびプロセッサを含むPCBユニットとを含むことができる。たとえば、PCBおよび電源は、キャップおよびシャーシ内に保持することができる。さらに、光源および光センサは、中心軸を中心とする円形領域に配置することができ、第1の光源および第1の光センサは、第2の光源および第2の光センサから角度的にオフセットしている。たとえば、シャーシは少なくとも部分的に透明とすることができ、ライトパイプを含むことができる。言い換えれば、ライトパイプは、透明なシャーシの突出部として形成することができる。
【0040】
本開示のさらなる態様によれば、ライトパイプは、互いに30°~60°の間、たとえば45°離れて配置されている。センサのエンコーダとの逆位相配置を確立するために、エンコーダは、非反射領域、たとえば光吸収領域または空隙によって間隔が空けられた反射要素のパターンを有することができる。たとえば、ライトパイプが互いに45°離れて配置されている場合、エンコーダは、互いに30°だけ間隔を空けて配置された12個の光反射歯のリングを含むことができる。
【0041】
本開示による薬物送達デバイスは、上述したような電子システムと、薬物送達デバイスによって送達予定の用量を選択する用量ダイヤル設定動作、および設定された用量を送達する用量送達動作を実行するように構成されている用量設定および駆動機構とを含むことができる。用量設定および駆動機構は、少なくとも用量送達動作においてかつ/または用量設定動作において回転可能なエンコーダを含むことができる。好ましくは、エンコーダのパターンは、センサユニットの逆位相配置を確立するように光センサユニットの位置に適合される。言い換えれば、電子システムは、エンコーダの回転位置に応じて、光源のうちの一方によって放出される光が、歯のうちの1つによって反射されるとともに、それぞれの光センサによって検出され、一方、光源のうちの他方によって放出される光が、歯のうちの1つによって反射されないように配置することができる。これは、2つの光センサが、事実上、逆位相であり、投薬される用量単位毎に、センサユニットの2つのチャネルが交差することを意味する。
【0042】
1つの実施形態では、薬物送達デバイスは、ダイヤルスリーブ、たとえば数字スリーブ、またはそれに軸方向にかつ/または回転不能にロックされた部材を含み、この部材は、少なくとも用量設定動作において、たとえば螺旋経路に沿って、用量設定および駆動機構のハウジングに対して回転可能である。加えて、用量および/または注射ボタン、またはそれに軸方向にかつ/または回転不能にロックされた部材は、少なくとも用量送達動作において、ダイヤルスリーブに対して軸方向に変位可能であり、ハウジングに回転不能に拘束することができる。本開示の1つの態様によれば、ダイヤルスリーブは、エンコーダリングを含む。エンコーダリングは、ダイヤルスリーブ上に恒久的にまたは解放可能にクリップ留めすることができる。エンコーダリングは、ダイヤルスリーブと一体的な構成要素であってもよい。エンコーダリングは、半径方向外側に延び、互いに間隔を空けて配置された、複数の歯を有することができる。2つの隣接する歯の間の間隔は、1用量単位に対応することができる。言い換えれば、1用量単位を選択または送達するためにダイヤルスリーブを回転させると、エンコーダリングが1つの歯から隣接する歯まで回転することになる。
【0043】
本開示は、たとえばユーザが注射ボタンに力を加えることによって、手動で駆動されるデバイス、ばねなどによって駆動されるデバイス、およびこれらの2つの概念を組み合わせたデバイス、すなわち、依然としてユーザが注射力をかける必要がある、ばね式のデバイスに適用可能である。ばねタイプのデバイスは、予荷重がかけられているばねと、用量選択中にユーザが負荷をかけるばねとを含む。いくつかのエネルギー貯蔵デバイスは、ばねの予荷重と、たとえば用量設定中に、ユーザが提供する追加のエネルギーとの組合せを使用する。
【0044】
本開示はさらに、上述したような電子システムを備え、薬剤を収容するカートリッジを含む薬物送達デバイスに関する。
【0045】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、1つもしくはそれ以上の活性医薬成分またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、場合により薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬製剤を記述する。活性医薬成分(「API」)とは、最広義には、ヒトまたは動物に対して生物学的効果を有する化学構造体のことである。薬理学では、薬剤または医薬は、疾患の治療、治癒、予防、または診断に使用されるか、さもなければ身体的または精神的なウェルビーイングを向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限定された継続期間で、または慢性障害では定期的に使用可能である。
【0046】
以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つのAPIまたはその組合せを含みうる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが挙げられうる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。1つまたはそれ以上の薬物の混合物も企図される。
【0047】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他の硬性もしくは可撓性のベッセルでありうる。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(たとえば、APIと希釈剤、または2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジでありうるか、またはそれを含みうる。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0048】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物または薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療および/または予防のために使用可能である。障害の例としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。障害のさらなる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。APIおよび薬物の例は、ローテリステ2014年(Rote Liste 2014)(たとえば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)または86(オンコロジー薬剤))やメルク・インデックス第15版(Merck Index,15th edition)などのハンドブックに記載されているものである。
【0049】
1型もしくは2型糖尿病または1型もしくは2型糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、はそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「アナログ」および「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/または交換によりおよび/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造たとえばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基または他の天然に存在する残基または純合成アミノ酸残基のどれかでありうる。インスリンアナログは、「インスリンレセプターリガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、たとえば、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば脂肪酸)がアミノ酸の1つまたはそれ以上に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然に存在するペプチドに存在する1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失し、および/または非コード可能アミノ酸を含めて他のアミノ酸によって置き換えられ、または天然に存在するペプチドに非コード可能なものを含めてアミノ酸が付加される。
【0050】
インスリンアナログの例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28~B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0051】
インスリン誘導体の例は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、レベミル(Levemir)(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、トレシーバ(Tresiba)(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0052】
GLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストの例は、たとえば、リキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、バイエッタ(Byetta)(登録商標)、ビデュリオン(Bydureon)(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(ビクトーザ(Victoza)(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(シンクリア(Syncria)(登録商標))、デュラグルチド(トルリシティ(Trulicity)(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C(エフペグレナチド)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(ペガパモドチド(Pegapamodtide))、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマドゥチド(Bamadutide)(SAR425899)、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0053】
オリゴヌクレオチドの例は、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセンナトリウム(キナムロ(Kynamro)(登録商標))、またはアルポート症候群の治療のためのRG012である。
【0054】
DPP4阻害剤の例は、リナグリプチン、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0055】
ホルモンの例としては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0056】
多糖の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(シンビスク(Synvisc)(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0057】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体でありうる。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体でありうる。抗体という用語は、4価二重特異的タンデムイムノグロブリン(TBTI)および/またはクロスオーバー結合領域配向を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗原結合分子も含む。
【0058】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含みうるが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、四重特異的および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価または多価抗体フラグメント、たとえば、2価、3価、4価および多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0059】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与しうるか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼしうる。
【0060】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0061】
本明細書に記載のいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物または薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。
【0062】
当業者であれば、本明細書に記載するAPI、製剤、装置、方法、システム、および実施形態のさまざまな構成要素の変更(追加および/または除去)を、こうした変更およびそのありとあらゆる均等物を包含する本発明の完全な範囲および趣旨から逸脱することなく行うことができることを理解するであろう。
【0063】
薬物送達デバイス例は、ISO11608-1:2014(E)の第5.2章の表1に記載されているような針ベースの注射システムを含むことができる。ISO11608-1:2014(E)に記載されているように、針ベースの注射システムは、複数用量の容器システムおよび(部分または完全排出を伴う)単一用量の容器システムに広く区別することができる。容器は、交換可能な容器または一体化された交換不能の容器でありうる。
【0064】
ISO11608-1:2014(E)にさらに記載されているように、複数用量の容器システムは、交換可能な容器を有する針ベースの注射デバイスを含むことができる。こうしたシステムでは、各容器が複数の用量を保持し、用量のサイズは、固定であっても可変(ユーザによって事前設定される)であってもよい。別の複数用量の容器システムは、一体化された交換不能の容器を有する針ベースの注射デバイスを含むことができる。こうしたシステムでは、各容器が複数の用量を保持し、用量のサイズは、固定であっても可変(ユーザによって事前設定される)であってもよい。
【0065】
ISO11608-1:2014(E)にさらに記載されているように、単一用量の容器システムは、交換可能な容器を有する針ベースの注射デバイスを含むことができる。こうしたシステムに対する1つの例では、各容器が単一の用量を保持し、それによって送達可能な体積全体が排出される(完全排出)。さらなる例では、各容器が単一の用量を保持し、それによって送達可能な体積の一部が排出される(部分排出)。同様にISO11608-1:2014(E)に記載されているように、単一用量の容器システムは、一体化された交換不能の容器を有する針ベースの注射デバイスを含むことができる。こうしたシステムに対する1つの例では、各容器が単一の用量を保持し、それによって送達可能な体積全体が排出される(完全排出)。さらなる例では、各容器が単一の用量を保持し、それによって送達可能な体積の一部が排出される(部分排出)。
【0066】
本明細書で使用する「軸方向」、「半径方向」、または「円周方向」という用語は、デバイス、カートリッジ、ハウジング、またはカートリッジホルダの主な長手方向軸に、たとえば、カートリッジ、カートリッジホルダ、または薬物送達デバイスの近位端および遠位端を通って延びる軸に関して使用することができる。
【0067】
ここで、本開示の非限定的で例示的な実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】薬物送達デバイスの一実施形態を示す図である。
図2】包装内に収納中の第1実施形態のシステムの断面図である。
図3a】ボタンが押し下げられていない0U位置にある、注射デバイスに取り付けられた第1の実施形態のシステムの断面図である。
図3b】ボタンが押し下げられている0U位置にある、注射デバイスに取り付けられた第1の実施形態のシステムの断面図である。
図4】機構がダイヤルアウト(dialled out)され、ボタンが押し下げられている、用量の投薬を開始したときの注射デバイスに取り付けられた第2の実施形態のシステムの断面図である。
図5】システムの構成要素の分解図である。
図6図5のシャーシの詳細を示す図である。
図7】充電ステーションにおける充電中のさらなる実施形態のシステムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図において、同一の要素、同一に作用する要素、または同じ種類の要素には、同一の参照番号を与えている場合がある。
【0070】
以下では、いくつかの実施形態について、インスリン注射デバイスに関して説明する。しかしながら、本開示は、このような用途に限定されるものではなく、他の薬剤を排出するように構成された注射デバイス、または全体として薬物送達デバイス、好ましくはペン型デバイスおよび/または注射デバイスで、等しく良好に展開することができる。
【0071】
実施形態は、注射デバイスによって送達される用量に関するデータを記録および/または追跡する注射デバイス、特に可変用量注射デバイスに関連して提供される。これらのデータは、選択された用量のサイズ、および/または実際に送達された用量のサイズ、投与の日時、投与の持続時間などを含むことができる。本明細書に記載する構成は、検知素子の配置、および(たとえば、小型電池を容易にするため、かつ/または効率的な電力使用を有効にするための)電力管理技法を含む。
【0072】
本明細書におけるいくつかの実施形態は、WO2014033195またはWO2014033197に記載されているような注射デバイスに関して示しており、そこでは、注射ボタンおよびグリップ(用量設定部材または用量設定具)が組み合わされている。注射ボタンは、薬物送達デバイスの用量送達動作を開始および/または実行するためのユーザインターフェース部材を提供することができる。グリップまたはつまみは、用量設定動作を開始および/または実行するためのユーザインターフェース部材を提供することができる。両方のデバイスが、ダイヤル延長型であり、すなわち用量設定中にこれらのデバイスの長さが増大する。用量設定および用量排出動作モード中のダイヤル延長部およびボタンの同じ運動学的挙動を有する他の注射デバイスは、たとえば、Eli Lillyによって市販されているKwikpen(登録商標)デバイス、およびNovo Nordiskによって市販されているNovopen(登録商標)4デバイスとして知られている。したがって、これらのデバイスへの一般原理の適用は明瞭であり、これ以上の説明は省略する。しかしながら、本開示の一般原理は、その運動学的挙動に限定されるものではない。WO2004078239に記載されているような、別個の注射ボタンおよびグリップ構成要素/用量設定部材がある注射デバイスへの適用のための特定の他の実施形態も考えることができる。したがって、2つの別個のユーザインターフェース部材があってもよく、1つは用量設定動作のため、1つは用量送達動作のためのものである。
【0073】
本明細書において、「遠位」は、薬物送達デバイスもしくはその構成要素の投薬端の方を向きもしくは指すように配置されもしくは配置予定であり、かつ/または近位端から離れる方を指し、離れる方を向くように配置予定であり、もしくは離れる方を向いている方向、端部、または表面を指定するために使用する。他方、「近位」は、薬物送達デバイスまたはその構成要素の投薬端および/または遠位端から離れる方を向きまたは離れる方を指すように配置されまたは配置予定である方向、端部、または表面を指定するために使用する。遠位端は、投薬端に最も近く、かつ/または近位端から最も離れた端部とすることができ、近位端は、投薬端から最も離れた端部とすることができる。近位面は、遠位端から離れる方および/または近位端の方を向くことができる。遠位面は、遠位端の方および/または近位端から離れる方を向くことができる。投薬端は、たとえば、ニードルユニットがデバイスに取り付けられまたは取り付け予定である針の端部とすることができる。
【0074】
図1は、薬剤送達デバイスまたは薬物送達デバイスの分解図である。この例では、薬剤送達デバイスは、注射デバイス1、たとえば、WO2014033195またはWO2014033197に記載されているような注射ペンなどのペン型注射器である。
【0075】
図1の注射デバイス1は、ハウジング10を含む注射ペンであり、容器14、たとえばインスリン容器、またはそのような容器のためのレセプタクルを収容する。容器は、薬物を収容することができる。針15は、容器またはレセプタクルに取り付けることができる。容器をカートリッジとすることができ、レセプタクルをカートリッジホルダとすることができる。針は、内側ニードルキャップ16と、外側ニードルキャップ17または別のキャップ18のいずれかとによって保護される。注射デバイス1から排出予定のインスリン用量は、投与量つまみ12を回すことによって設定し、プログラムし、または「ダイヤルインする(dialled in)」ことができ、次いで、目下プログラムまたは設定されている用量が、投与量窓13を介して、たとえば単位の倍数で表示される。窓に表示される印は、数字スリーブまたはダイヤルスリーブに提供することができる。たとえば、注射デバイス1が、ヒトインスリンを投与するように構成されている場合、投与量は、いわゆる国際単位(IU)で表示することができ、1IUは、約45.5マイクログラムの純結晶インスリン(1/22mg)の生物学的等価量である。注射デバイスでは、アナログインスリンまたは他の薬剤を送達するために、他の単位を採用してもよい。選択された用量は、図1の投与量窓13に示されているものとは異なる形でも、等しく良好に表示することができることが留意されるべきである。
【0076】
投与量窓13は、ハウジング10内のアパーチャの形態とすることができ、それにより、ユーザは、目下設定されている用量の視覚標示を提供するために、投与量つまみ12が回されたときに動くように構成されているダイヤルスリーブ20(図3aに示す)の制限された部分を見ることができる。投与量つまみ12は、用量を設定するとき、ハウジング10に対して螺旋経路上を回転する。この例では、投与量つまみ12は、データ収集デバイスの取り付けを容易にするための1つまたはそれ以上の構造を含む。
【0077】
注射デバイス1は、投与量つまみ12を回すことで機械クリック音を引き起こして、音響フィードバックをユーザに提供するように構成することができる。この実施形態では、投与量つまみまたは用量ボタン12は、注射ボタンとしても作用する。針15が患者の皮膚部分に刺されて、次いで投与量つまみ12および/または注射ボタン11が軸方向に押されたとき、表示窓13に表示されているインスリン用量が注射デバイス1から排出される。投与量つまみ12が押されてからある一定の時間にわたって、注射デバイス1の針15が皮膚部分に残っているとき、この用量が患者の体内に注射される。インスリン用量の排出もまた、機械クリック音を引き起こすことができ、この音は、用量のダイヤル設定中に投与量つまみ12を回転させるときに生じる音とは異なりうる。
【0078】
この実施形態では、インスリン用量の送達中、投与量つまみ12は、回転することなく、軸方向運動でその初期位置に戻され、一方、ダイヤルスリーブ20は、その初期位置へ戻るように回転して、たとえばゼロ単位の用量を表示する。上述したように、本開示は、インスリンに制限されるものではなく、薬物容器14内のすべての薬物、特に液体薬物または薬物調合物を包含するべきである。
【0079】
注射デバイス1は、インスリン容器14が空になるか、または注射デバイス1内の薬剤の有効期限(たとえば、最初の使用から28日後)に達するまでに、数回の注射プロセスに使用することができる。再使用可能デバイスの場合、インスリン容器を交換することが可能である。
【0080】
さらに、注射デバイス1を最初に使用する前に、インスリン容器14および針15から空気を除去するために、たとえばインスリンの2単位を選択し、針15を上に向けた状態で注射デバイス1を保持しながら投与量つまみ12を押すことによって、いわゆる「プライムショット」を実行することが必要である場合がある。提示を簡単にするために、以下では、選択された量は注射された量に実質的に対応し、そのため、たとえば、注射デバイス1から選択された薬剤の量は、ユーザが受け取った用量に等しいものと想定する。
【0081】
上記で説明したように、投与量つまみ12は、注射ボタンとしても機能し、そのため、用量のダイヤル設定/設定および用量の投薬/送達に同じ構成要素が使用される。
【0082】
以下では、本発明による電子システム100について、いくつかの異なる例示的な実施形態に関して説明する。図示する例示的な実施形態では、電子システム100は、注射デバイス1に、具体的には図5に示すようなボタン11および投与量つまみ12に、解放可能に取り付けることができる、再使用可能なモジュールを構成する。注射デバイス1の中心長手方向軸は、電子モジュール100の中心軸と同一である。
【0083】
電子システム100のモジュールは、外側キャップ110、シャーシ120、およびPCBユニット130を含む。外側キャップ110は、シャーシ120とスナップフィット係合することができ、これにより、外側キャップ110とシャーシ120とが軸方向にかつ回転不能に拘束される。電子システムは、別のデバイスと通信するための通信ユニットをさらに含む。通信ユニットが手動同期モードまたはペアリングモードを実行するためにアクティブであるとき、電子システムは、エネルギー消費量が高い。したがって、通信ユニットは、使用されないときにはオフにすることができる。
【0084】
シャーシ120は透明または半透明であり、ポリカーボネートなどから作ることができる。シャーシ120は、少なくとも部分的に外側キャップ110に受けられ、次いでPCBユニット130を受ける。さらに、シャーシ120は、2つのライトパイプ121、122を含み、これらライトパイプ121、122は、光沢のある側壁と、センサ側端部(図2の上端部)およびエンコーダ側端部(図2の下端部)を形成する拡散端面とを有する、シャーシ120の軸方向に延びる突出部である。言い換えれば、光は、反対側のセンサ側端部およびエンコーダ側端部においてライトパイプに入るかまたはライトパイプから出ることができるが、側壁によって案内される(反射される)。図に示す例では、ライトパイプ121、122は、互いに対して45°だけ回転方向にオフセットしている。
【0085】
PCBユニット130は、プロセッサおよびメモリを備えたPCB131と、コイン電池型の電池132とを含む。さらに、2つの光センサユニットが、PCBユニット130内、たとえばシャーシ120の方を向いたPCB131の上に設けられている。各センサユニットは、光源133、たとえばIRトランスミッタのようなLEDと、光センサ134、たとえば受光器との対を含む。センサユニットは、それぞれのライトパイプ121、122のセンサ側端部の真上に位置して、光源133によって放出される光がライトパイプを通過し、エンコーダ側端部でライトパイプから出るようになっている。光は、ライトパイプのエンコーダ側端部より下方で反射された場合、エンコーダ側端部からライトパイプ内に再び入り、光信号を検出する光センサ134に案内される。しかしながら、ライトパイプのエンコーダ側端部から出る光が吸収されるか、またはライトパイプ内に反射されない場合、光センサ134は光信号を検出することができない。
【0086】
ボタン11は、ライトパイプ121、122がボタン11の内部および投与量つまみ12内に入るのを可能にするアパーチャを有することができる。図3a、図3b、および図4に示すように、ダイヤルスリーブ20に、互いに30°だけ間隔を空けて配置された12個の放射状に延びる歯22の形態のエンコーダリング21が設けられている。歯22は、光反射材料から作られており、または光反射材料でコーティングしてもよい。2つのライトパイプ121、122が45°離れて位置し、ダイヤルスリーブエンコーダリング21の12個の歯が30°離れて位置しているため、2つの光センサユニットは、事実上、逆位相であり、投薬される用量単位毎に、センサユニットの2つのチャネルが交差する。
【0087】
図3aおよび図3bは、注射デバイス1の上に取り付けられたモジュール100を、アイドル位置(図3a)、すなわちユーザからのいかなる入力もない位置と、ユーザが外側キャップ110に力をかけることによりボタン11を押した位置(図3b)とで示す。図3aと図3bとを比較すると、ボタン11を押すことにより、ダイヤルグリップ12/ボタン11が、取り付けられたモジュール100とともに、ダイヤルスリーブ20およびエンコーダリング21に向かって、すなわち図では下方に移動することが分かる。ライトパイプ121、122のエンコーダ側端部は、図3aのアイドル位置ではエンコーダリング21から軸方向に間隔が空けられているが、図3bの位置ではエンコーダリング21およびその歯22の真上にある。
【0088】
図2は、包装200内にある電子システム100を示す。包装200は、図2に示すように、ライトパイプ121、122の真下に位置する部分を含む。少なくともこのライトパイプの下方の部分は、光反射性であり、エンコーダ側端部において両方のライトパイプを遮蔽する。
【0089】
第1の動作モードについて、図2図3bを参照して説明する。この実施形態では、モジュール100は、最初に使用される前の長期収納中の電池の放電を低減させるために、製造直後に最初の包装内に配置されるとき、低電力長期収納モードで収納される。この低電力長期収納モードでは、電子回路の消費電力を低減させる機構のうちの1つは、ユーザ入力の検出を無効にすることである。最初に使用する前にモジュールを包装200から取り出す行為によって、モジュールは、この収納モードからユーザ入力を検出することができる高電力モードにウェークアップする。
【0090】
包装200は、モジュール内の2つの光センサ134に接続された2つのライトパイプ121、122の端面を遮蔽する反射面を含む。光センサ134は、低電力長期収納モードの間、定期的にポーリングされるが、高頻度ではポーリングされない(たとえば20秒毎)。光センサ134がポーリングされるとき、両方が遮蔽されたままである場合、モジュール100は低電力長期収納モードのままである。このポーリングは最初に使用される前にのみ使用され;すなわち、この方法を使用して、モジュールが包装200から取り出されたことが検出されると、この定期的なポーリングのモードは停止する。
【0091】
モジュール100が包装200から取り出されても、注射デバイス1に取り付けられる前には、いずれの光センサ134も遮蔽されない。同様に、モジュール100が注射デバイス1に取り付けられても、用量ボタン11が押し下げられていない場合、いずれの光センサ134も遮蔽されない。センサがポーリングされるとき、モジュール100がこのいずれも遮蔽されていない状態にある場合、モジュールはウェークアップする。
【0092】
モジュール100が注射デバイス1に取り付けられ、(たとえば、Bluetoothを使用してモジュール100を携帯電話にペアリングするために)用量ボタン11が押し下げられると、単一の光センサ134が、注射ペン1の歯22のうちの1つによって遮蔽される。センサ134が上述したいずれも遮蔽されていない状態でポーリングされないように、モジュール100が包装200から迅速に取り出されて、注射デバイス1に取り付けられ、ユーザが用量ボタン11を保持する場合、センサ134がこの単一の遮蔽状態でポーリングされたとき、モジュール100はウェークアップする。
【0093】
第2の動作モードについて、図3aおよび図3bを参照して説明する。モジュールは、注射デバイス1に取り付けられる前に包装内に受けることができるが、包装は、ライトパイプ121、122の下方に位置する光反射領域を有していない。この実施形態では、低電力モードで、モジュール100内の一対の光センサ134の一定の低周波数ポーリング(たとえば1Hz)を使用して、Bluetoothを使用してモジュール100を携帯電話と同期させてペアリングするために、ユーザが注射デバイス1の用量ボタン11を押し下げたときが検出される。この一定の低周波数ポーリングは、低電力モードで、モジュール100が非アクティブであるとき、すなわち用量が記録されていないとき、最初の使用に続いて使用される。この低周波数ポーリングは、ポーリングモジュール100が包装内にあるが、注射デバイス1に取り付けられる前にも、使用することもできる。
【0094】
モジュール100が注射デバイスに取り付けられていない(たとえば、その最初の包装からまだ取り出されていない)とき、光センサは、いずれも遮蔽されていない状態にある。同様に、モジュール100が注射デバイス1に取り付けられているが、用量ボタン11が押し下げられていない(たとえば、モジュールがBluetoothを使用して携帯電話とペアリングされていない)場合、光センサ134は、いずれも遮蔽されていない状態にある。このいずれも遮蔽されていない状態でセンサがポーリングされた場合、モジュール100はウェークアップしない。
【0095】
モジュール100が注射デバイス1に取り付けられ、用量ボタン1が押し下げられると、2つの光センサ134のうちの一方が遮蔽される。ユーザがこの状態で用量ボタン11を十分に長い時間(たとえば、ペアリングを開始するために数秒間)保持した場合、光センサ134は、この単一の遮蔽状態でポーリングされる。これにより、モジュール100がウェークアップする。
【0096】
第3の動作モードについて、図3aおよび図3bを参照して説明する。この実施形態では、低電力モードで、モジュール100内の一対の光センサ134の一定の中周波数ポーリング(たとえば、200Hz)を使用して、ユーザが注射デバイス1を使用して用量を投薬し始めたことが検出される。この一定の低周波数ポーリングは、低電力モードで、モジュール100が非アクティブであるとき、すなわち用量が記録されていないときの最初の使用に続いて使用される。低周波数ポーリングは、モジュール100が包装内にあるが、注射デバイス1に取り付けられる前にも使用することができる。
【0097】
用量ボタン11が最初に押されたとき、2つの光センサ134のうちの一方が、ダイヤルスリーブ20の歯22によって遮蔽され、他方は遮蔽されない。薬物の最初の単位が投薬されると、ダイヤルスリーブ20が回転して、最初に遮蔽されていた光センサ134が遮蔽されなくなり、最初に遮蔽されていなかった光センサ134が遮蔽されるようになる。
【0098】
光センサの中周波数ポーリングにより、この遮蔽状態の変化が検出されることが可能になり、モジュール100はウェークアップして、投薬されている用量を即座に記録する。
【0099】
第4の動作モードについて図4を参照して説明する。図4は、たとえばPCBユニット130の中央に位置する運動センサ140をさらに含むモジュール100の第2の実施形態を示す。この実施形態では、運動センサ140は、低電力モードにある間、モジュール100が静止しているか否かを検出するために使用される。動きが検出されない場合、モジュール100は収納またはアイドル状態であると想定され、ユーザインタラクションは発生せず、光センサ134はポーリングされず、モジュール100はウェークアップしない。動きが検出された場合、ユーザがモジュール100とインタラクトしている可能性があると想定され、モジュール100は部分的にウェークアップして、上述した低周波数ポーリングモード(第2の動作モード)または中周波数ポーリングモード(第3の動作モード)になる。これにより、モジュールが静止しているときに引き出される電力の量が減少し、第2または第3の動作モードと比較して電池寿命が長くなる。
【0100】
モジュール100の一般的な動作原理、その設計、および注射デバイス1との相互作用は、参照するWO2021/191326A1またはWO2021/116387A1に開示されているものと同様である。
【0101】
電子システム100のさらに他の実施形態を図7に示し、そこでは、電池132は充電式電池である。モジュール100は、薬物送達デバイスから取り外され、モジュールのPCBA130上に設けられた導電性パッドに接触して接続された2つのピン301を有する充電ステーション300の上に置かれた状態で示す。充電ステーションに、その頂部にピン301を有する実質的に円筒形または円錐形のソケットを設けることができる。キャップ110およびシャーシ120がソケットを覆って、モジュール100を充電ステーション300上に保持する。シャーシ120のクリップ機能123が、充電ステーション300の対応する保持機能と係合して、充電ステーション300上でモジュール100を正しい軸方向および/または回転方向の位置に保持することができる。充電ピン位置の周りのシャーシ120とPCB130との間にガスケット封止材があってもよい。光源133が起動されていないスリープ状態からシステムをウェークアップさせるために、モジュール100に任意選択的な運動センサ140(図7には図示せず)、たとえば加速度計を設けてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 デバイス
10 ハウジング
11 注射ボタン
12 投与量つまみ
13 投与量ウィンドウ
14 容器/容器レセプタクル
15 針
16 内側針キャップ
17 外側針キャップ
18 キャップ
20 用量ダイヤルスリーブ
21 エンコーダ
22 歯
100 電子システム
110 キャップ
120 シャーシ
121 ライトパイプ
122 ライトパイプ
123 クリップ機能
130 PCBユニット
131 PCB(プロセッサおよびメモリ)
132 電池
133 光源(IR LED)
134 光センサ
140 運動センサ
200 包装
300 充電ステーション
301 ピン
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】