(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-02
(54)【発明の名称】マイクロリソグラフィのマスクの特性評価方法および装置
(51)【国際特許分類】
G03F 1/84 20120101AFI20240424BHJP
【FI】
G03F1/84
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573235
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 EP2022062684
(87)【国際公開番号】W WO2022248216
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】102021113780.2
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】マテイカ ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ペルリッツ ザシャ
(72)【発明者】
【氏名】デギュンター マルクス
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BA10
2H195BA12
2H195BD14
2H195BD15
2H195BD20
2H195BD24
(57)【要約】
本発明は、マイクロリソグラフィのマスクを特性評価する方法および装置に関する。本発明による方法では、一態様において、特性評価されるマスク(140、240、340、740、803)が、照明光学ユニット(801)を介して光源からの光で照射され、該光が、30nm未満の波長を有し、光源(705)からマスクを経てセンサユニット(770、806)に至るまでの、使用ビーム経路を通過する光が評価され、光源から放射される光の一部分が、独立して調整可能な多数のミラー要素を有するミラーアレイ(130、230、330、630、730)を用いて、使用ビーム経路から少なくとも断続的にアウトカップリングされ、センサユニットの所定の照射時間を確立するために、ミラーアレイを用いて断続的に、すべての光が、使用ビーム経路からアウトカップリングされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロリソグラフィのマスクを特性評価する方法であって、
- 特性評価されるマスク(140、240、340、640、740、803)が、照明光学ユニット(801)を介して光源(705)からの光で照射され、前記光は、30nm未満の波長を有し、
- 前記光源(705)から前記マスク(140、240、340、640、740、803)を経てセンサユニット(770、806)までの、使用ビーム経路を通過する光が評価され、
- 前記光源(705)から放射される前記光の一部分が、独立して調整可能な多数のミラー要素を有するミラーアレイ(130、230、330、630、730)を用いて、前記使用ビーム経路から少なくとも断続的にアウトカップリングされ、
- 前記センサユニット(770、806)の所定の照射時間を確立するために、前記ミラーアレイ(130、230、330、630、730)を用いて断続的に、すべての光が、前記使用ビーム経路からアウトカップリングされる、
方法。
【請求項2】
前記アウトカップリングされた光が、少なくとも部分的にビームトラップ(150、250)に向けられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも断続的に、前記ミラーアレイ(230、330)によって、前記使用ビーム経路からアウトカップリングされた光成分の強度が、強度センサ(260、360、760)によって検出されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
マイクロリソグラフィのマスクを特性評価する方法であって、
- 特性評価されるマスク(240、340、740、803)が、照明光学ユニット(801)を介して光源(705)からの光で照射され、前記光は、30nm未満の波長を有し、
- 前記光源(705)から前記マスク(240、340、740、803)を経てセンサユニット(770、806)までの、使用ビーム経路を通過する光が評価され、
- 前記光源(705)から放射される前記光の一部分が、独立して調整可能な多数のミラー要素を有するミラーアレイ(230、330、630、730)を用いて、前記使用ビーム経路から少なくとも断続的にアウトカップリングされ、
- 少なくとも断続的に、前記ミラーアレイ(230、330、630、730)によって前記使用ビーム経路からアウトカップリングされた光成分の強度が、強度センサ(260、360、760)によって検出される、
方法。
【請求項5】
前記センサユニット(770、806)の照射期間の一部だけ、前記使用ビーム経路から光がアウトカップリングされるように、前記ミラー要素の少なくとも一部を作動させることにより、グレースケール調整が実現されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
マイクロリソグラフィのマスクを特性評価する方法であって、
- 特性評価されるマスク(140、240、340、740、803)が、照明光学ユニット(801)を介して光源(705)からの光で照射され、前記光は、30nm未満の波長を有し、
- 前記光源(705)から前記マスク(140、240、340、740、803)を経てセンサユニット(770、806)までの、使用ビーム経路を通過する光が評価され、
- 前記光源(705)から放射される前記光の一部分が、独立して調整可能な多数のミラー要素を有するミラーアレイ(230、330、630、730)を用いて、前記使用ビーム経路から少なくとも断続的にアウトカップリングされ、
- 前記センサユニット(806)の照射期間の一部だけ、前記使用ビーム経路から光がアウトカップリングされるように、前記ミラー要素の少なくとも一部を作動させることにより、グレースケール調整が実現される、
方法。
【請求項7】
断続的な手法で、ミラー要素の第1のグループが、前記光源(705)から前記マスク(640、740)に至る照明ビーム経路(611)内にあり、ミラー要素の第2のグループが、前記マスク(640、740)から前記センサユニット(770)に至る結像ビーム経路(614)内にあるように、前記ミラー要素の設定が選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
断続的な手法で、光が、マスク表面を基準として少なくとも85°の角度で、特に90°の角度で前記マスク(640)に当たるように、前記ミラー要素の設定が選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記光源(705)からの光が、15nm未満、特に13nm~14nmの範囲内の波長を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
マイクロリソグラフィのマスクを特性評価するための装置であって、
・30nm未満の波長の光を生成するための光源(705)と、
・特性評価される前記マスク(140、240、340、803)を前記光源(705)からの光で照射するための照明光学ユニット(801)と、
・センサユニット(770、806)と、
・前記光源から前記マスク(140、240、340、740、803)を経て前記センサユニット(770、806)までの使用ビーム経路を通過する前記光を評価するための評価ユニットと、
・独立して調整可能な多数のミラー要素からなり、これによって前記光の少なくとも一部分を、前記使用ビーム経路からアウトカップリングすることができる、ミラーアレイ(130、230、330、630、730)と、
・前記ミラーアレイ(130、230、330、630、730)を作動させるための作動ユニットと
を備え、前記センサユニット(770、806)の所定の照射時間を確立するための前記作動により、前記ミラーアレイ(130、230、330、630、730)を用いて、前記使用ビーム経路からすべての光を断続的にアウトカップリングすることが可能である、
装置。
【請求項11】
前記ミラーアレイ(230、330)によって、前記使用ビーム経路からアウトカップリングされた光成分を受け取るためのビームトラップ(150、250)を備えることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記ミラーアレイ(230、330)によって、前記使用ビーム経路からアウトカップリングされた光成分の強度を検出するための強度センサ(260、360)を備えることを特徴とする、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
マイクロリソグラフィのマスクを特性評価するための装置であって、
・30nm未満の波長の光を生成するための光源(705)と、
・特性評価される前記マスク(140、240、340、740、803)を前記光源からの光で照射するための照明光学ユニット(801)と、
・センサユニット(770、806)と、
・前記光源(705)から前記マスク(140、240、340、740、803)を経て前記センサユニット(770、806)までの使用ビーム経路を通過する前記光を評価するための評価ユニットと、
・独立して調整可能な多数のミラー要素からなり、これによって前記光の少なくとも一部分を、前記使用ビーム経路からアウトカップリングすることができる、ミラーアレイ(230、330、630、730)と、
・前記ミラーアレイ(230、330)によって前記使用ビーム経路からアウトカップリングされた光成分の強度を検出するための強度センサ(260、360、760)と、
を備える、装置。
【請求項14】
前記光源(705)からの前記光が、15nm未満、特に13nm~14nmの範囲内の波長を有することを特徴とする、請求項10~13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法を実施するよう構成されていることを特徴とする、請求項10~14のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2021年05月27日に出願されたドイツ特許出願第102021113780.2号の優先権を主張する。この出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、マイクロリソグラフィのマスク(microlithography mask)を特性評価する(characterizing)方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロリソグラフィは、たとえば、集積回路またはLCDなどの微細構造部品の生産に使用される。マイクロリソグラフィ工程は、照明デバイスおよび投影レンズを備える、いわゆる投影照明装置内で実施される。照明デバイスによって照射されたマスク(=レチクル)の像は、ここで、投影レンズによって、感光層(フォトレジスト)でコーティングされた基板(たとえば、シリコンウェーハ)上に投影され、マスク構造を基板の感光性コーティング上に転写するために、投影レンズの像面に配置される。
【0004】
リソグラフィ工程において、マスク上の望ましからざる欠陥は、照明ステップごとに再現される可能性があるので、特に不利な影響を与える。したがって、マスク欠陥を最小限に抑え、首尾良くマスク修復を実現するためには、起こり得る欠陥の位置の結像の影響を、直接解析することが望ましい。したがって原則として、仮に可能であれば、投影照明装置内に実際に存在するのと同じ条件下で、マスクを迅速かつ簡単に分析または識別する必要がある。
【0005】
これに関連して、マスク検査の範囲内で、投影照明装置をエミュレートする(すなわち、可能な限り、投影照明装置の条件と類似した条件下で、マスクを測定する)ための、様々な手法がある。
【0006】
最初に、マスク検査装置において、マスクの一部の空間像を記録し、評価するやり方が知られており、空間像を記録するために、マスク上の測定されるべき構造が、拡大照明光学ユニットを使って照射され、マスクから来る光が、結像光学ユニットを介して検出器ユニット上に投影され、該検出器ユニットによって検出される。
【0007】
この工程ではさらに、マスク検査装置において、投影照明装置での照射と同一の手法で、マスクの照射を行うことが知られており、特にマスク検査装置において、同じ波長、同じ開口数、そしてまた同一の(必要に応じて偏光された)照明設定が設けられる。
【0008】
従来技術に関しては、単に例として、ドイツ公開特許第102010063337号、ドイツ公開特許第102013212613号、およびドイツ公開特許第102011086345号を参照する。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、リソグラフィ工程で与えられる条件を考慮した、高速かつ信頼性の高い特性評価を可能にする、マイクロリソグラフィのマスクの特性評価方法および装置を提供することである。
【0010】
この目的は、独立請求項の特徴による方法およびデバイスそれぞれによって達成される。
【0011】
本発明は、一態様において、マイクロリソグラフィのマスクを特性評価する方法に関し、
- 特性評価されるマスク(mask to be characterized)は、照明光学ユニットを介して光源からの光で照射され、該光は、30nm未満の波長を有し、
- 光源からマスクを経てセンサユニットまでの、使用ビーム経路(used beam path)を通過する光が評価され、
- 光源から放射される光の一部分が、独立して調整可能な多数のミラー要素(a multitude of independently adjustable mirror elements)を有するミラーアレイを用いて、使用ビーム経路から少なくとも断続的にアウトカップリングされ(outcoupled)、
- センサユニットの所定の照射時間(defined illumination time)を確立するために、ミラーアレイを用いて断続的に、すべての光が、使用ビーム経路からアウトカップリングされる。
【0012】
アウトカップリングされた光は、特に、ビームトラップに向けられ得る。
【0013】
この構成は、一方では、たとえば特にプラズマ光源などの、EUV光の生成に使用可能な光源が、マスク検査工程で必要とされる短い時間尺度で、オンおよびオフすることはできないが、他方では、マスク検査工程で使用されるセンサ装置(たとえば、CCDカメラ)が、正確に規定された照射時間(通常は、200ミリ秒程度)を必要とするという事実を考慮している。本発明によれば、本発明に従って使用され、それぞれの入射光を、それぞれ規定された照射時間の所定の端点において、使用ビーム経路からアウトカップリングする(そして、たとえば、目的のために設けられたビームトラップへ向ける)、ミラーアレイのすべてのミラー要素によって、光源をオフするのと同じ効果を実現させることが可能であり(これは、EUV光源の場合には実現不可能である)、一方同時に、さもなければこの目的のために考えられる、高速シャッタの使用も不要となる。
【0014】
本発明はこの場合、同時に、パルス動作の結果、(典型的には約0.2ミリ秒程度の)連続するパルス間の残り期間が、ミラー要素のそれぞれに必要な傾斜動作のために使用可能であるという事実を、有利に利用する。
【0015】
一実施形態において、ミラーアレイによって、使用ビーム経路からアウトカップリングされた光成分の強度が、強度センサ(intensity sensor)によって検出される。
【0016】
本発明は、とりわけ、EUV光の場合、UV光または可視波長範囲の光の場合のように、部分的に透明なミラーを使ってアウトカップリング(outcoupling)を行うことができないという事実を、考慮している。というのは、EUVの場合、かかるミラーが存在しないからである。上記で言及された態様によれば、本発明には、少なくとも1つの光源から放射された光の一部分をアウトカップリングすること、およびこのアウトカップリングされた部分の強度またはエネルギーを検出することの、概念が含まれている。本発明によれば、これにより、(少なくとも1つの)光源の側でのエネルギー変動を確認できるため、センサユニットによって最終的に記録された像を、少なくとも1つの光源のエネルギーに対して正規化することができる。
【0017】
この場合、本発明による構成の1つの有利な結果は、センサユニットによって記録された像に生じる明るさの変化に関して、かかる明るさの変化が、現在特性評価されているマスクによって(たとえば、このマスク上に存在する可能性のある欠陥の結果として)引き起こされたものであるか、またはかかる明るさの変化が、使用されている光源のエネルギー変動によって引き起こされたものであるかを、区別できることである。このようにして、マスク上に存在していると認識される欠陥について、誤った結論を導き出すのを、回避することが可能であり得る。
【0018】
本発明は、この場合、少なくとも1つの光源から放射される強度またはエネルギーに関して、時間の経過に伴う相対的な変化または変動だけが対象であるという事実を利用することもできる。言い換えると、特に、空間的に分解された定量的な強度測定は不要である。本発明は、さらに、時間の経過に伴うエネルギーまたは強度の相対的な変化の該確認のために、少なくとも1つの光源から放射された光の、比較的僅かな部分だけをアウトカップリングすればよいので、光の極めて主たる部分は、依然として実際のマスクの特性評価に利用可能であるという事実を、利用することができる。
【0019】
本発明は、少なくとも1つの光源のエネルギーまたは強度の変化についての前述の考察により、特に、マイクロリソグラフィ用途では精度に対する要求が高いため、既に僅かな(1パーセントより大幅に小さい程度の)変化が、マスクの関連する欠陥を確実に特定するのに重要であるという状況を考慮している。
【0020】
強度センサを備えたミラーアレイによって、使用ビーム経路からアウトカップリングされた光成分を検出することも、上記で説明された、高速シャッタとしての機能とは無関係に、有利である。
【0021】
したがって本発明はまた、さらなる態様によれば、マイクロリソグラフィのマスクを特性評価する方法に関し、
- 特性評価されるマスクは、照明光学ユニットを介して光源からの光で照射され、該光は、30nm未満の波長を有し、
- 光源からマスクを経てセンサユニットまでの、使用ビーム経路を通過する光が評価され、
- 光源から放射される光の一部分が、独立して調整可能な多数のミラー要素を有するミラーアレイを用いて、使用ビーム経路から少なくとも断続的にアウトカップリングされ、
- 少なくとも断続的に、ミラーアレイによって、使用ビーム経路からアウトカップリングされた光成分の強度が、強度センサによって検出される。
【0022】
一実施形態において、センサユニットの照射期間の一部だけ、使用ビーム経路から光がアウトカップリングされるように、ミラー要素の少なくとも一部を作動させること(actuating)により、グレースケール調整(greyscale adjustment)が実現される。
【0023】
この構成では、独立して調整可能なミラー要素からなる、本発明によるアレイを利用して、このミラー要素に入射する光が、個別に規定可能な継続時間(全体の照射継続時間よりも短い)後、センサユニットに到達しないように、関連するミラー要素を「オフする(switched off)」か、または傾けることによって、それぞれの照射時間または照射量が、個々のミラー要素を経て個別に調整されるので、グレースケール値が実現される。
【0024】
この構成は、EUV光を用いたマスク検査システムの本発明の動作において、独立して調整可能なミラー要素からなる本発明によるアレイが、ミラー要素の寸法および間隔に比べて波長が数桁短いため、最終的には、幾何光学単位(geometric optics unit)に基づく必要があるので、(グレースケール値を、角度に依存する、回折効率の変化によって確立する)ブレーズド回折格子として利用できないという事実を考慮している。この考察に基づいて、この事実、すなわち、それぞれのミラー要素が、それぞれの照射時間の一部分の後であっても(たとえば、50ミリ秒の期間後、したがってたとえば200ミリ秒の総照射時間の、4分の1の期間後であっても)、使用ビーム経路から光をアウトカップリングするのに好適な位置に傾けられるという事実にもかかわらず、本発明によるグレースケール値が実現される。
【0025】
グレースケール値を確立するこの態様は、高速シャッタの交換または強度センサに供給するためのアウトカップリングの、上記で説明された機能とは無関係であっても、有利である。
【0026】
したがって本発明はさらにまた、マイクロリソグラフィのマスクを特性評価する方法に関し、
- 特性評価されるマスクは、照明光学ユニットを介して光源からの光で照射され、該光は、30nm未満の波長を有し、
- 光源からマスクを経てセンサユニットまでの、使用ビーム経路を通過する光が評価され、
- 光源から放射される光の一部分が、独立して調整可能な多数のミラー要素を有するミラーアレイを用いて、使用ビーム経路から少なくとも断続的にアウトカップリングされ、
- センサユニットの照射期間の一部だけ、使用ビーム経路から光がアウトカップリングされるように、ミラー要素の少なくとも一部を作動させることにより、グレースケール調整が実現される。
【0027】
一実施形態において、断続的な手法で、ミラー要素の第1のグループが、光源からマスクに至る照明ビーム経路内にあり、ミラー要素の第2のグループが、マスクからセンサユニットに至る結像ビーム経路内にあるように、ミラー要素の設定が選択される。
【0028】
この構成は、EUV光を用いたマスク検査システムの本発明の動作において、一方では、使用可能な透過性材料が不足しているため、ビーム分割器として機能する使用可能な透過性光学素子がないが、他方では、かかるビーム分割器の機能は、たとえば、特定の用途では望ましい、光の垂直入射によるマスク検査を実現させるために、照明ビーム経路から結像ビーム経路を分離するのに必要であるという事実を考慮している。したがって本発明は、この考察に基づいて、独立して調整可能な多数のミラー要素からなる、使用されているアレイの特性を有利に利用しており、ミラー要素を好適に調整することで、ミラーアレイは、部分的に(光源からマスクに至る)照明ビーム経路に寄与し、部分的に(マスクからセンサ装置に至る)結像ビーム経路に寄与することができる。
【0029】
一実施形態において、断続的な手法で、光が、マスク表面を基準として少なくとも85°の角度で、特に90°の角度で(すなわち、マスク表面に対して直角に)マスクに当たるように、ミラー要素の設定が選択される。
【0030】
一実施形態において、光源からの光は、15nm未満、特に13nm~14nmの範囲内の波長を有する。
【0031】
本発明は、さらなる態様において、マイクロリソグラフィのマスクを特性評価するための装置に関し、装置は、
- 30nm未満の波長の光を生成するための光源と、
- 特性評価されるマスクを光源からの光で照射するための照明光学ユニットと、
- センサユニットと、
- 光源からマスクを経てセンサユニットまでの使用ビーム経路を通過する光を評価するための評価ユニットと、
- 独立して調整可能な多数のミラー要素からなり、これによって光の少なくとも一部分を、使用ビーム経路からアウトカップリングすることができる、ミラーアレイと、
- ミラーアレイを作動させるための作動ユニット(actuation unit)と
を備え、この作動により、センサユニットの所定の照射時間を確立するために、ミラーアレイを用いて、使用ビーム経路からすべての光を断続的にアウトカップリングする(outcouple)ことが可能である。
【0032】
一実施形態において、装置は、使用ビーム経路からミラーアレイによってアウトカップリングされた光成分を受光する、ビームトラップを備える。
【0033】
一実施形態において、装置は、使用ビーム経路からミラーアレイによってアウトカップリングされた光成分の強度を検出する、強度センサを備える。
【0034】
本発明は、さらなる態様において、マイクロリソグラフィのためのマスクを特性評価するための装置に関し、装置は、
- 30nm未満の波長の光を生成するための光源と、
- 特性評価されるマスクを光源からの光で照射するための照明光学ユニットと、
- センサユニットと、
- 光源からマスクを経てセンサユニットまでの使用ビーム経路を通過する光を評価するための評価ユニットと、
- 独立して調整可能な多数のミラー要素からなり、これによって光の少なくとも一部分を、使用ビーム経路からアウトカップリングすることができる、ミラーアレイと、
- ミラーアレイによって使用ビーム経路からアウトカップリングされた光成分の強度を検出するための強度センサと、
を備える。
【0035】
一実施形態において、装置は、上記で説明された特徴を有する方法を、実行するよう構成される。
【0036】
デバイスの利点および好ましい構成に関しては、本発明による方法に関連する上記の説明を参照されたい。
【0037】
本発明のさらなる構成は、明細書および従属請求項から知ることができる。
【0038】
本発明は、添付図に示されている例示的な実施形態に基づいて、下記でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1a】
図1aは、第1の実施形態における、マスクの特性評価のための本発明の装置の、可能な構造および機能の手法を説明している、概略図である。
【
図1b-1c】
図1b及び
図1cは、第1の実施形態における、マスクの特性評価のための本発明の装置の、可能な構造および機能の手法を説明している、概略図である。
【
図2】さらなる実施形態における、本発明の装置の可能な構造を説明している、概略図である。
【
図3】さらなる実施形態における、本発明の装置の可能な構造を説明している、概略図である。
【
図4】本発明の装置の機能の可能な手法を説明している、概略図である。
【
図5】本発明の装置の機能の可能な手法を説明している、概略図である。
【
図6】さらなる実施形態における、本発明の装置の可能な構造を説明している、概略図である。
【
図7a】さらなる実施形態における、本発明の装置の構造および可能な機能モードを説明している、概略図である。
【
図7b】さらなる実施形態における、本発明の装置の構造および可能な機能モードを説明している、概略図である。
【
図7c】さらなる実施形態における、本発明の装置の構造および可能な機能モードを説明している、概略図である。
【
図7d】さらなる実施形態における、本発明の装置の構造および可能な機能モードを説明している、概略図である。
【
図8】マスクを特性評価するための装置の、一般的な構造を説明している、概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
マスク検査システム800は、
図8による一般的な構造では、照明システム801および投影レンズ805を備え、光源(
図1には図示せず)からの光が、照明システム801に入射し、照明光線802の光束は、投影レンズ805の物体面に配置されたマスク803に向けられ、マスク803の照射された領域は、観測光線804の光束によって、投影レンズ805を用いて、センサ装置806、たとえばCCDカメラ上に結像される(image)。
【0041】
マスク検査では、実際のリソグラフィ工程で投影照明システムまたはスキャナによって生じる照明条件の、再現性を最高品質にするために、マスク803と組み合わせた、生産用照明システムまたは生産用照明システムの照射デバイスで使用される照明設定、すなわち、照明設定に関連し得る、マスク803に当たる照明光の部分的コヒーレンスを含む照明設定を、エミュレートすることも重要であり、そのために、マスク検査システム800の照明システムでは、対応するシャッタ(すなわち、たとえば、後のリソグラフィ工程で4重極の設定が使用される場合、照明極(illumination pole)に適合した4つの切欠きを有する、4重極シャッタ)を使用するのが通例であり、これにより、マスク検査システムで、部分的コヒーレント照射を実施することが可能である。加えて、マスク検査システム800の投影レンズ805において、同様に、好適なマスク(典型的には、対応する円形または楕円形の切欠きを有する)を使用することにより、ビーム経路の制限、すなわちNAを模擬することが可能である。
【0042】
これ以降、
図1a~
図7dの概略図を参照しながら、マスクの特性評価のための本発明の装置の、様々な実施形態について説明する。
【0043】
これらの実施形態に共通するのは、EUV光源からの光(すなわち、30nm未満、特に15nm未満の波長の光)を用いて動作する、それぞれの装置において、光源からマスクを経てセンサ装置に至る、使用ビーム経路から、様々な機能を実現するための光を断続的にアウトカップリングするために、独立して調整可能な多数のミラー要素からなるミラーアレイが使用されることである。ミラーアレイのミラー要素はそれぞれ、光源が使用する波長(たとえば約13.5nm)に好適なコーティング、たとえばモリブデン(Mo)-シリコン(Si)反射層の積層体を備える。
【0044】
まず
図1aを参照すると、光源(
図1aには図示せず)からの該EUV光は、シャッタ110を通過し、ミラー120を経て、かかるミラーアレイ130に達し、そこからEUV光は、それぞれのミラー要素の設定に従って、マスク140を経てセンサ装置(同様に、
図1aには図示せず)に向けられるか、さもなければ、使用ビーム経路からアウトカップリングすることができる。
図1aに単に示されているように、該使用ビーム経路からアウトカップリングされた光成分は、ここでは「150」で特定されている、ビームトラップに向けられている。
【0045】
図1aの構造で実現可能な第1の機能では、次いで、ミラーアレイ130のミラー要素を好適に作動させることによって、すなわち、それぞれに好適な接続点でミラーアレイ130を経て、使用ビーム経路からすべての光をアウトカップリングすることによって、センサユニットの所定の照射時間を確立することが可能である。これは特に、EUV光源自体が、短い時間尺度でオンとオフとを繰り返すことができないという事実を考慮している。同時に、ミラーアレイ130のミラー要素の該作動により、高速シャッタの使用が不必要になる。
【0046】
図1bおよび
図1cは、ミラーアレイ130の上記で説明された機能を図示する、概略図を示している。
【0047】
図1cによれば、ミラーアレイ130のすべてのミラー要素が、それぞれに所望の露光時間の開始前および終了後に、静止位置に対して傾けられ、光源から入射される照明光をビームトラップ150の方向に反射する。
図1bによるさらに可能な構成では、ミラーアレイ130のすべてのミラー要素が、それぞれに所望の照射時間の開始から終了まで、静止位置にあり、光源から入射される照明光をフォトマスクの方向に反射する。
【0048】
この機能と、特定の照明設定を形成する機能との組合せが望ましい場合、それぞれに所望の照射時間の開始から終了まで、静止位置にあるミラー要素は、所望の照明設定が明るい位置にあるミラー要素だけである。他のすべてのミラー要素は、所望の露光時間の前、途中、および後に、光をビームトラップ150の方向に向けるように傾けられる。
【0049】
図2は、マスクを特性評価するための、本発明の装置のさらなる実施形態を説明する概略図を示し、
図1aと比較して類似または実質的に機能上同一の構成要素は、「100」を加えた参照番号で指定されている。
【0050】
装置は、
図2によればさらに、ミラーアレイ230からアウトカップリングされた光成分の強度を検出できる、強度センサ260を備える。本発明では、強度センサ260を、ミラーアレイ230と組み合わせて使用することにより、センサユニットによって記録された像を、光源のエネルギーに対して正規化できるように、光源側のエネルギー変動を確認することができる。特に、たとえば、明るさの変動が発生した場合、センサユニットによって記録された像のかかる明るさの変動が、現在特性評価されているマスク240によって(たとえば、このマスク240に存在する何らかの欠陥によって)引き起こされているものか、または光源のエネルギーの変動によって引き起こされているものかを区別することができるため、マスク上に存在していると認識される欠陥に関する誤った結論を、回避することができる。
【0051】
ここでは、光成分のアウトカップリングは、比較的僅かでも該正規化には十分であるため、極めて主たる光成分が、依然として、実際のマスク特性評価に使用可能である。
図4は、ミラー装置400のミラー要素のうち、ハッチングされて示されたミラー要素(例として、そのうちの2つが「402」として特定されている)が、入射光を強度センサに向け、一方、他のミラー要素(例として、そのうちの1つが「401」として特定されている)からの光は、マスクに当たる、例示的な実施態様を示している。
【0052】
図2および
図4を参照して上記で説明された光のアウトカップリングは、原理的に同様に可能である、照射されるマスク領域の外側の強度の検出と比較すると、正規化する目的で強度センサの方向にアウトカップリングされる光が、瞳の外側の領域からではなく、瞳から直接アウトカップリングされるので、測定精度が向上するという利点がある。
【0053】
図5は、別の可能なシナリオを説明するための、
図4に類似した概略図を示しており、ハッチングされておらず、点状に示されてもいないミラー要素(例として、そのうちの1つが「501」として特定されている)はそれぞれ、入射光をマスクの方向に向け、点状に示されているミラー要素(例として、そのうちの1つが「502」として特定されている)はそれぞれ、上記で説明された正規化する目的で、入射光を強度センサの方向に向けており、ハッチングされて示されたミラー要素(例として、そのうちの1つが「503」として特定されている)は、入射光をビームトラップの方向に向けている。その結果、このようにして、所望の照明設定(具体的な実施例では、ダイポール照明)が実現される。
【0054】
図3は、マスクを特性評価するための、本発明の装置のさらなる実施形態を説明する概略図を示し、
図2と比較して類似または実質的に機能上同一の構成要素は、「100」を加えた参照番号で指定されている。
【0055】
図3による実施形態は、特に、光ビーム経路に基づくミラーアレイ330の様々な配置において、
図2の実施形態とは相異なる。具体的には、ミラーアレイ330は、光路に基づいて、ミラー320の上流かつシャッタ310の上流に配置され、そのために、連続するビーム経路において、別のミラー325が、ミラー320の後に設けられている。
図3によるミラーアレイ330の配置構成は、第1に、ミラーアレイ330をマスク340からより離れた位置に配置した結果として、マスク340と、ミラーアレイ330による結像光学系またはセンサユニットとの間の、使用可能な光路の制限が回避されるという点で、また、ミラーアレイ330の(たとえば、冷却流体との連結による)冷却用、ならびに電子部品および作動部品用に、使用可能な構造空間が増加するという点でも、有利である。
【0056】
本発明の実施形態では、
図1a~
図5を参照しながら上記で説明された機能に追加して、または代替的に、本発明によるミラーアレイを使って、グレースケール設定を実施することも可能である。この目的のために、本発明のミラーアレイのミラー要素の一部は、それぞれの場合において、センサユニットまたはCCDカメラの照射期間の一部だけで、使用ビーム経路から光をアウトカップリングするように作動され得る。これは、EUV光を使って動作するマスク検査システムの本発明の構成では、DUVシステムとは異なり、ミラー要素の寸法および間隔に比べて、波長が数桁短いために、EUV光で動作する場合には幾何光学に基づく必要があるので、回折効率の変化による角度依存のグレースケール値の調整が不可能であるという事実を考慮している。その代わりに、本発明には、グレースケール値を実現するために、ミラー要素のそれぞれの傾斜の継続時間に対する(またはこの継続時間と全体的な照射時間との比に対する)、様々なグレースケール値を確立する原理が含まれる。
【0057】
単なる例として、グレースケール値を実現するために、ミラー要素の一部は、それぞれの照射時間の一部分の後(たとえば、50ミリ秒、したがってたとえば200ミリ秒の総照射時間のうちの、4分の1の期間の後)であっても、使用ビーム経路から光をアウトカップリングするのに好適な位置に傾けられる。
【0058】
図6a~
図7dは、マスクの特性評価のための本発明による装置の、さらなる実施形態を説明するための概略図を示している。この場合(上記で説明された機能に加えて、または代替的に)、特に、光の垂直入射によるマスク検査を可能にするために、照明ビーム経路から結像ビーム経路を分離する、ビーム分割器のさらなる機能が実施される。
【0059】
これは、EUV光を用いたマスク検査システムの本発明の動作において、使用可能な透過性材料が不足しているため、ビーム分割器として直接使用可能な透過性光学素子がないという事実を考慮している。この点において、本発明には、ミラーアレイのミラー要素を好適に調整することによって、ミラーアレイが最終的に、確実に照明ビーム経路および結像ビーム経路に寄与できるようにする、さらなる原理が含まれる。
【0060】
図6a~
図6bは、最初に、基礎となる原理を説明する概略図を示し、
図6aによれば、原理的に、マスク602へ垂直照射するための、かつセンサユニット603での結像を可能にするための、ビーム分割器601が必要である。
図6bは、本発明のミラーアレイ630の原理的な実施態様を示し、「611」は、ミラーアレイ630に入射する照明光を示し、「614」は、ミラーアレイ630によって結像光学系に向けられる光を示している。「615」は、上記で説明された実施形態と類似した、追加の強度センサの方向にアウトカップリングされる光成分を示している。
【0061】
図7aは、本発明による、対応する装置の可能な構造の概略図を示しており、この装置で、上記で説明された機能のすべて(すなわち、高速シャッタの実現、正規化または校正を目的とした、強度センサの方向への光成分のアウトカップリング、グレースケール値の確立、および光の垂直入射によるマスクの特性評価を目的とした、照明ビーム経路と結像ビーム経路の分離)が実施される。
図3と比較して、類似または実質的に機能上同一の構成要素は、ここでは、「400」を加えた参照番号で表記されている。
図7aは、(EUV)光源705およびセンサユニット770(たとえば、CCDカメラとして構成された)の位置をさらに示している。「715」、「735」、「745」、および「755」はそれぞれ、ビーム経路を実現するために存在するミラーを示し、実施例では湾曲している。「780」は、それぞれの静止位置にある、ミラーアレイ730のミラー要素によって反射された光を受光する、ビームトラップを示している。「790」は、ミラー要素によって反射され、強度センサ760の方向に光成分をアウトカップリングするために使用される、結像光を捕捉するための光トラップを示している。
【0062】
図7bは、ミラーアレイ730の拡大した詳細を参照しながら、装置が動作する際に、それぞれの場合に光が最初にミラーアレイ730に当たるときに起こる、シナリオを示している。たとえば、
図7bに示されているように、ミラー要素のうちの半分は静止位置にあり、これにより入射照明光を、ビームトラップの方向に反射する。対照的に、ミラーアレイ730の他のミラー要素は、入射照明光をマスク740の方向に反射するよう向きを変えられる。
図7cは、装置が動作する際に、光がミラーアレイ730に2度目に当たるときに起こる、さらなるシナリオを示している。ここでは、静止位置にあるミラー要素は、マスク740から来る光を、センサユニット770またはCCDカメラの方向に反射し、一方、他の、向きを変えられたミラー要素は、マスクに入射した光を反射して光源705に戻す。
【0063】
図7dは、装置が動作する際の、さらなるシナリオを示しており、ここでは、ミラーアレイ730の2つのミラー要素が、入射照明光を強度センサ760の方向に向けるように傾けられている。
【0064】
本発明を特定の実施形態に基づいて説明してきたが、たとえば、個々の実施形態の特徴を組み合わせること、および/または交換することによって、当業者には、多数の変形実施形態および代替実施形態が明らかとなろう。したがって、かかる変形実施形態および代替実施形態も、本発明に包含され、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内にのみ制限されることが、当業者には明らかであろう。
【国際調査報告】