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特表2024-518945架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体、それを含むリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜、及び該分離膜を備えるリチウム二次電池
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  • 特表-架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体、それを含むリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜、及び該分離膜を備えるリチウム二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体、それを含むリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜、及び該分離膜を備えるリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/36 20060101AFI20240426BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20240426BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20240426BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20240426BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20240426BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20240426BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240426BHJP
   H01M 50/457 20210101ALI20240426BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20240426BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240426BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C08J9/36 CES
H01M50/417
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/446
H01M50/451
H01M50/489
H01M50/457
H01M50/403 E
C08K3/013
C08L101/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568577
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2024-01-04
(86)【国際出願番号】 KR2022006578
(87)【国際公開番号】W WO2022235134
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】10-2021-0059583
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソン-ジェ・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ-ソン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・シク・ムン
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
5H021
【Fターム(参考)】
4F074AA18
4F074CD11
4F074CE16
4F074CE17
4F074CE34
4F074CE98
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA22
4F074DA23
4F074DA24
4F074DA49
4J002AA001
4J002AB031
4J002AC081
4J002BD021
4J002BD141
4J002BD161
4J002BE021
4J002BG011
4J002BG021
4J002DE046
4J002DE076
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE156
4J002DJ016
4J002EE020
4J002EL090
4J002EV300
4J002FD016
4J002FD200
4J002GH00
4J002GQ00
5H021BB15
5H021CC04
5H021EE04
5H021EE17
5H021EE22
5H021EE23
5H021EE32
5H021HH00
5H021HH06
(57)【要約】
本発明は、高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を有し、500Wの紫外線を照射して電子スピン共鳴法で測定したとき、2.010~2.030のg値で第1ピークが検出される架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体、それを含むリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜、及び該分離膜を備えるリチウム二次電池に関する。本発明による架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体は耐熱性に優れる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を有し、
500Wの紫外線を照射して電子スピン共鳴(Electron Spin Resonance)法で測定したとき、2.010~2.030のg値で第1ピークが検出される、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体。
【請求項2】
500Wの紫外線を照射して電子スピン共鳴法で測定したとき、1.990~2.009のg値で第2ピークがさらに検出される、請求項1に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体。
【請求項3】
500Wの紫外線を照射して電子スピン共鳴法で測定したとき、前記第2ピークの面積に対する前記第1ピークの面積の比率が10%~200%である、請求項2に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体。
【請求項4】
横軸が対数スケールに変換された振動数(rad/s)であり、縦軸が対数スケールに変換された貯蔵弾性率(G’、storage modulus)(A)及び損失弾性率(G’’、loss modulus)(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、
前記振動数が1rad/s以下の範囲で、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の前記損失弾性率(G’’)(B)に対する前記貯蔵弾性率(G’)(A)の比(A/B)が2以上である、請求項1に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体。
【請求項5】
横軸が対数スケールに変換された振動数(rad/s)であり、縦軸が対数スケールに変換された貯蔵弾性率(G’)(A)及び損失弾性率(G’’)(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、
前記振動数が10-1~1rad/sの範囲で、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の前記振動数に対する貯蔵弾性率(G’)(A)曲線の勾配が0.05~0.4である、請求項1に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体。
【請求項6】
前記貯蔵弾性率の値が1.0×10~1.0×10Paである、請求項4または5に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体。
【請求項7】
前記損失弾性率の値が3.0×10Pa以下である、請求項4または5に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体。
【請求項8】
請求項1に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体を含むリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜。
【請求項9】
前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜が、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及びバインダー高分子を含む無機物複合空隙層をさらに含む、請求項8に記載のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜。
【請求項10】
前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜が、
前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及び第1バインダー高分子を含む無機物複合空隙層と、
前記無機物複合空隙層上に位置し、第2バインダー高分子を含む多孔性接着層と、をさらに含む、請求項8に記載のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜。
【請求項11】
前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜のメルトダウン温度が160℃以上である、請求項8に記載のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜。
【請求項12】
前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜のシャットダウン温度が145℃以下である、請求項8に記載のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜。
【請求項13】
正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在されたリチウム二次電池用分離膜を含み、
前記リチウム二次電池用分離膜が請求項8に記載のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜である、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年5月7日付け出願の韓国特許出願第10-2021-0059583号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体、それを含むリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜、及び該分離膜を備えるリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、エネルギー貯蔵技術に対する関心が益々高まっている。携帯電話、カムコーダー及びノートパソコン、さらには電気自動車のエネルギーまで適用分野が拡がるとともに、このような電子機器の電源として使用される電池の高エネルギー密度化に対する要求が高まっている。リチウム二次電池は、このような要求に最も応えられる電池であって、現在これに対する研究が活発に行われている。
【0004】
このようなリチウム二次電池は、正極、負極、電解液、分離膜から構成され、そのうち分離膜には、正極と負極とを分離して電気的に絶縁させるための絶縁性、及び高い気孔度に基づいてリチウムイオンの透過性を高めるための高いイオン伝導度が求められる。
【0005】
このような分離膜としてポリオレフィン分離膜が広く使用されているが、代表的なポリオレフィン分離膜であるポリエチレン(PE)分離膜の場合、融点(Tm)が低いため、電池の誤使用環境で電池の温度がポリエチレンの融点以上に上昇すると、メルトダウン(melt-down)現象が発生して発火及び爆発を引き起こすおそれがあり、その材料的特性及び製造工程上の特性のため、高温などの状況で分離膜が甚だしい熱収縮挙動を見せ、内部短絡などの安全性の問題につながり得る。
【0006】
したがって、高温で安全性を確保可能な分離膜に対する要求が依然として高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、高温安全性が改善された架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体を提供することである。
【0008】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体を含むリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜、及び該分離膜を備えるリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様によれば、下記具現例の架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体が提供される。
【0010】
第1具現例は、
高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を有し、
500Wの紫外線を照射して電子スピン共鳴(Electron Spin Resonance:ESR)法で測定したとき、2.010~2.030のg値で第1ピークが検出される、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体に関する。
【0011】
第2具現例によれば、第1具現例において、
500Wの紫外線を照射して電子スピン共鳴法で測定したとき、1.990~2.009のg値で第2ピークがさらに検出され得る。
【0012】
第3具現例によれば、第2具現例において、
500Wの紫外線を照射して電子スピン共鳴法で測定したとき、前記第2ピークの面積に対する前記第1ピークの面積の比率が10%~200%であり得る。
【0013】
第4具現例によれば、第1~第3具現例のうちいずれか一具現例において、
横軸が対数スケールに変換された振動数(rad/s)であり、縦軸が対数スケールに変換された貯蔵弾性率(G’、storage modulus)(A)及び損失弾性率(G’’、loss modulus)(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、
前記振動数が1rad/s以下の範囲で、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の前記損失弾性率(G’’)(B)に対する前記貯蔵弾性率(G’)(A)の比(A/B)が2以上であり得る。
【0014】
第5具現例によれば、第1~第4具現例のうちいずれか一具現例において、
横軸が対数スケールに変換された振動数(rad/s)であり、縦軸が対数スケールに変換された貯蔵弾性率(G’、storage modulus)(A)及び損失弾性率(G’’、loss modulus)(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、
前記振動数が10-1~1rad/sの範囲で、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の前記振動数に対する貯蔵弾性率(G’)(A)曲線の勾配が0.05~0.4であり得る。
【0015】
第6具現例によれば、第4具現例または第5具現例において、
前記貯蔵弾性率の値が1.0×10~1.0×10Paであり得る。
【0016】
第7具現例によれば、第4具現例または第5具現例において、
前記損失弾性率の値が3.0×10Pa以下であり得る。
【0017】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様によれば、下記具現例のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜が提供される。
【0018】
第8具現例は、
第1~第7具現例のうちいずれか一具現例による架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体を含むリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜に関する。
【0019】
第9具現例によれば、第8具現例において、
前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜が、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及びバインダー高分子を含む無機物複合空隙層をさらに含み得る。
【0020】
第10具現例によれば、第9具現例において、
前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜が、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及び第1バインダー高分子を含む無機物複合空隙層と、
前記無機物複合空隙層上に位置し、第2バインダー高分子を含む多孔性接着層と、をさらに含み得る。
【0021】
第11具現例によれば、第8~第10具現例のうちいずれか一具現例において、
前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜のメルトダウン温度が160℃以上であり得る。
【0022】
第12具現例によれば、第8~第11具現例のうちいずれか一具現例において、
前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜のシャットダウン温度が145℃以下であり得る。
【0023】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様によれば、下記具現例のリチウム二次電池が提供される。
【0024】
第13具現例は、
正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在されたリチウム二次電池用分離膜を含み、
前記リチウム二次電池用分離膜が第8~第12具現例のうちいずれか一具現例によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜であるリチウム二次電池に関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様による架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体は、優れた耐熱性を有する。
【0026】
本発明の一態様による架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体を含むリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、耐熱性に優れた架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体を含むことで、優れた耐熱性を有する。
【0027】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜を概略的に示した図である。
図2】本発明の他の実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜を概略的に示した図である。
図3】実施例1で製造した架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体に、500Wの紫外線を照射したとき(A)と紫外線を照射する前(B)の電子スピン共鳴スペクトルである。
図4】実施例2で製造した架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体に、500Wの紫外線を照射したとき(A)と紫外線を照射する前(B)の電子スピン共鳴スペクトルである。
図5】実施例3で製造した架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体に、500Wの紫外線を照射したとき(A)と紫外線を照射する前(B)の電子スピン共鳴スペクトルである。
図6】比較例1で製造した架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体に、500Wの紫外線を照射したとき(A)と紫外線を照射する前(B)の電子スピン共鳴スペクトルである。
図7】比較例2で製造した架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体に、500Wの紫外線を照射したとき(A)と紫外線を照射する前(B)の電子スピン共鳴スペクトルである。
図8】比較例3で製造した架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体に、500Wの紫外線を照射したとき(A)と紫外線を照射する前(B)の電子スピン共鳴スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の望ましい実施形態を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲において使用された用語や単語は通常的及び辞書的な意味に限定して解釈されるものではなく、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されるものである。
【0030】
したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明の最も望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを表すものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解されたい。
【0031】
本明細書において、「第1」、「第2」などの用語は一つの構成要素を他の構成要素と区別するために使用されるものであって、各構成要素がこれら用語によって限定されることはない。
【0032】
本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体は、
高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を有し、
500Wの紫外線を照射して電子スピン共鳴法で測定したとき、2.010~2.030のg値で第1ピークが検出されることを特徴とする。
【0033】
本明細書において、「高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造」とは、実質的にポリオレフィンからなる高分子鎖、より望ましくはポリオレフィンのみからなる高分子鎖がタイプII光開始剤の添加によって反応性を持ち、高分子鎖同士が互いに直接的に架橋結合を成した状態を意味する。したがって、追加的な架橋剤の投入によって架橋剤同士の間で起きた架橋反応は、本発明で称する「高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造」に該当しない。また、追加的な架橋剤と高分子鎖との間で起きた架橋反応は、前記高分子鎖が実質的にポリオレフィンからなったかまたはポリオレフィンのみからなったものであっても、本発明で称する「高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造」に該当しない。
【0034】
また、タイプII光開始剤同士が架橋されるかまたはタイプII光開始剤と高分子鎖とが架橋され得るが、このような架橋構造はポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖同士の間の架橋構造よりも反応エンタルピーが低いため、電池の充放電時に分解されて副反応を起こすおそれがある。前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体は、タイプII光開始剤と高分子鎖とが直接的に連結された架橋構造を含まず、高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造のみを含み得る。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体は、高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造のみを含み、タイプII光開始剤と高分子鎖とが直接的に連結された架橋構造は含まない。
【0036】
本発明の一実施形態において、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の架橋度は、10%~45%、15%~40%、または20%~35%であり得る。前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体が上述した架橋度の範囲を満たす場合、目的とする水準の耐熱性を有しながらも、モジュラス(modulus)を増大させ易い。例えば、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の架橋度が20%以上である場合、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体を含む分離膜のメルトダウン温度が170℃以上になり易い。
【0037】
このとき、架橋度は、ASTM D2765に従って架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体を135℃のキシレン溶液に浸漬して12時間沸騰させた後、残余重量を測定し、最初重量に対する残余重量の百分率で計算する。
【0038】
本発明の一実施形態において、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体では、タイプII光開始剤による架橋反応によってポリオレフィン鎖に二重結合が生成され得る。
【0039】
本発明の一実施形態において、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体は、H-NMR測定時に、ポリオレフィン鎖に存在する二重結合の個数が1000個の炭素原子当り0.01個~0.6個、または0.02個~0.5個であり得る。前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体が上述した個数の二重結合を有する場合、副反応が起きる部分を最小化することができる。
【0040】
本発明の一実施形態において、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の末端を除いたポリオレフィン鎖に存在する二重結合の個数は、1000個の炭素原子当り0.005個~0.59個であり得る。本明細書において、「末端を除いたポリオレフィン鎖に存在する二重結合」とは、ポリオレフィン鎖の末端を除いたポリオレフィン鎖の全体に存在する二重結合を称する。ここで、「末端」とは、ポリオレフィン鎖の両側の終端にそれぞれ連結されている炭素原子の位置を意味する。
【0041】
本発明の一実施形態において、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体は多孔性フィルムであり得る。
【0042】
本発明の一実施形態において、前記ポリオレフィンは、ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリブチレン;ポリペンテン;ポリヘキセン;ポリオクテン;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、4-メチルペンテン、ヘキセン及びオクテンのうち二種以上の共重合体;またはこれらの混合物を含み得る。
【0043】
前記ポリエチレンの非制限的な例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)などが挙げられる。前記ポリエチレンが、結晶度が高くて樹脂の融点が高い高密度ポリエチレンである場合、目的とする水準の耐熱性を有しながらも、モジュラスを増大させ易い。
【0044】
本発明の一実施形態において、前記ポリオレフィンの重量平均分子量は200,000~1,500,000、220,000~1,000,000、または250,000~800,000であり得る。前記ポリオレフィンの重量平均分子量が上述した範囲である場合、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の均一性及び製膜工程性を確保しながらも、最終的に強度及び耐熱性に優れた分離膜が得られる。
【0045】
前記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography、PL GPC220、アジレント・テクノロジー社製)を用いて下記の条件で測定し得る。
【0046】
-カラム:PL Olexis(Polymer Laboratories社)
-溶媒:TCB(トリクロロベンゼン)
-流速:1.0ml/分
-試料濃度:1.0mg/ml
-注入量:200μl
-カラム温度:160℃
-検出器:アジレント製の高温RI検出器
-スタンダード:ポリスチレン(3次関数で補正)
【0047】
本発明の一実施形態において、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の厚さは3μm~16μm、または5μm~12μmであり得る。前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の厚さが上述した範囲である場合、電池の使用中に分離膜が損傷され易いという問題を防止できるとともに、エネルギー密度を容易に確保することができる。
【0048】
本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体は、500Wの紫外線を照射して電子スピン共鳴法で測定したとき、2.010~2.030のg値で第1ピークが検出される。「第1ピーク」とは、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体が光吸収によってラジカルを形成することを意味する。すなわち、紫外線を照射した結果、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖でラジカルが形成されたことを意味する。
【0049】
本発明の一実施形態において、500Wの紫外線を照射して電子スピン共鳴法で測定したとき、前記第1ピークの外に、1.990~2.009のg値で第2ピークがさらに検出され得る。「第2ピーク」とは、前記電子スピン共鳴法によるスペクトルを測定する過程で照射される紫外線によって単一電子(single electron)または単一電子様の挙動を見せる電子の存在を意味する。前記第2ピークは、上方に凸状のピークと下方に凸状のピークとが対称的に現れ得る。
【0050】
本発明の一実施形態において、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体は、光開始剤、具体的にはタイプII光開始剤を含み得る。タイプII光開始剤は高分子鎖同士の間を架橋させ、多孔支持体内に残留し得る。前記タイプII光開始剤が多孔支持体内に残留することで、500Wの紫外線を照射する場合、前記第2ピークが検出され得る。
【0051】
前記第2ピークの面積に対する前記第1ピークの面積が増加するほど、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖からラジカルがさらに円滑に形成されることを意味する。
【0052】
本発明の一実施形態において、500Wの紫外線を照射して電子スピン共鳴法で測定したとき、前記第2ピークの面積に対する前記第1ピークの面積の比率は、10%~200%、または10%~180%であり得る。
【0053】
前記第2ピークの面積に対する前記第1ピークの面積の比率は、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体30mg~40mgを電子スピン共鳴測定装置に投入したときの前記第2ピークの面積に対する前記第1ピークの面積の比率であり得る。
【0054】
本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体は、高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を有することで耐熱性を改善することができる。
【0055】
本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体は、架橋後にもポリオレフィン多孔支持体の気孔構造が実質的に架橋前のまま維持され得る。
【0056】
横軸が対数スケールに変換された振動数(rad/s)であり、縦軸が対数スケールに変換された貯蔵弾性率(G’、storage modulus)(A)及び損失弾性率(G’’、loss modulus)(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、
前記振動数が1rad/s以下の範囲で、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の前記損失弾性率(G’’)(B)に対する前記貯蔵弾性率(G’)(A)の比(A/B)が2以上であり得る。
【0057】
本発明者らは、高温でも安全性が確保可能な架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体を見いだそうとして鋭意研究を重ねた。それを解決するための手段として、高温で架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の粘性を下げる一方、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の弾性を高めることで、結果的に高温安全性を改善させようとした。
【0058】
具体的には、高温で架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の粘性を下げ、且つ、弾性を高める場合、高温で架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の強度が維持され、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体自体の流動性が発生しないため、正極と負極との短絡を防止することができ、結果的に架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の安全性が改善される。
【0059】
本発明の具体的な一実施形態において、横軸が対数スケールに変換された振動数(rad/s)であり、縦軸が対数スケールに変換された、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の貯蔵弾性率(G’)(A)及び損失弾性率(G’’)(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、G’の値がG’’に比べて大きい場合、具体的には2以上である場合、安全性が向上した架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体を提供することができる。
【0060】
G’値に比べてG’’値が大きいと、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の弾性に比べて粘性が大きくなって、高温で架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の気孔が素早く閉塞される問題がある。
【0061】
一方、G’’に対するG’の値が2未満であると、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の流動性が発生し、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体を含む分離膜による隔離機能が失われて適切ではない。
【0062】
本発明において、貯蔵弾性率(G’、storage modulus)とは、エネルギーを貯蔵する物質の能力を意味し、数式1のように表し得る。
【0063】
[数式1]
G’=(応力/歪み)cosδ
【0064】
本発明において、前記貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定(Dynamic Mechanical Analysis)を使用して測定し得る。
【0065】
本発明において、前記貯蔵弾性率は、180~220℃の温度範囲及び1rad/sの振動数で、温度掃引試験(Temperature Sweep Test)で動的粘弾性測定を使用して測定したものである。
【0066】
本発明の具体的な一実施形態において、前記貯蔵弾性率の値は、190℃の温度範囲及び1rad/sの振動数で1.0×10~1.0×10Pa、1.2×10~5.0×10Pa、1.5×10~2.0×10Pa、1.7×10~1.0×10Pa、または1.9×10~3.8×10Paであり得る。前記貯蔵弾性率の値が上記の数値範囲である場合、高温での架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の強度を維持できるという点で有利である。
【0067】
本発明において、損失弾性率(G’’、loss modulus)とは、変形によってエネルギーを失う物質の能力を意味し、数式2のように表し得る。
【0068】
[数式2]
G’’=(応力/歪み)sinδ
【0069】
本発明において、前記損失弾性率は、動的粘弾性測定を使用して測定し得る。
【0070】
本発明において、前記損失弾性率は、180~220℃の温度範囲及び1rad/sの振動数で、温度掃引試験で動的粘弾性測定を使用して測定したものである。
【0071】
本発明の具体的な一実施形態において、前記損失弾性率の値は、190℃の温度範囲及び1rad/sの振動数で3.0×10Pa以下、1.0×10~3.0×10Pa、2.0×10~1.5×10Pa、5.0×10~1.2×10Pa、または7.0×10~1.1×10Paであり得る。前記損失弾性率の値が上記の数値範囲である場合、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の流動性が発生しないという点で有利である。
【0072】
本発明において、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の損失弾性率(G’’)(B)に対する貯蔵弾性率(G’)(A)の比(A/B)の意味は、粘性寄与に対する弾性寄与の相対的な尺度である。
【0073】
具体的には、前記比率が1以上である場合は、固体と類似の特性を示し、前記比率が1以下である場合は、液体と類似の特性を示す。
【0074】
一方、前記A/Bは、キャスティング及び延伸工程では、押出シートの均一性及び流動性を決定する相対的な尺度として使われる。
【0075】
したがって、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の製造工程では、工程の円滑な進行のため、A/Bの値が低いことが望ましい、最終的な架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体においては、A/Bの比が高いことが望ましく、本発明では特に、2以上である場合が望ましい。
【0076】
本発明の具体的な一実施形態において、振動数1rad/s以下の範囲で、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の前記損失弾性率(G’’)(B)に対する前記貯蔵弾性率(G’)(A)の比(A/B)は、2以上、2~7、2~5、2.1~4.7、または2.18~4.68であり得る。前記A/Bの比が上記の範囲であると、高温で前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の強度を維持しながらも、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体を含む分離膜が隔離機能を維持できるという点で有利である。
【0077】
本発明の一実施形態において、横軸が対数スケールに変換された振動数(rad/s)であり、縦軸が対数スケールに変換された貯蔵弾性率(G’)(A)及び損失弾性率(G’’)(B)である振動数-損失貯蔵弾性率曲線において、
前記振動数が10-1~1rad/sの範囲で、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の前記振動数に対する貯蔵弾性率(G’)(A)曲線の勾配が0.05~0.4であり得る。
【0078】
このとき、貯蔵弾性率及び損失弾性率は、上述した内容を参照されたい。
【0079】
本発明の具体的な一実施形態において、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の振動数が10-1~1rad/sの範囲で、前記振動数に対する貯蔵弾性率(G’)(A)曲線の勾配は、0.05~0.4、0.07~0.35、0.1~0.3、0.12~0.28、または0.133~0.267であり得る。前記A/Bの比が上記の範囲であると、高温で架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体を含む分離膜が隔離機能を維持できるという点で有利である。
【0080】
本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体は、リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜として使用し得る。
【0081】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体を含み得る。
【0082】
本発明の一実施形態において、前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜が上述した個数の二重結合を有する架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体を含む場合、高温及び/または高電圧で電池の性能が劣化する問題を容易に防止することができる。
【0083】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体を含み得る。
【0084】
本発明の他の実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及びバインダー高分子を含む無機物複合空隙層をさらに含み得る。これを図1に示した。
【0085】
図1を参照すると、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜1は、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体10と、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体10の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及びバインダー高分子を含む無機物複合空隙層20と、を含み得る。
【0086】
前記無機物複合空隙層20は、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体10の一面または両面に形成され得る。前記無機物複合空隙層20は、無機フィラー、及び前記無機フィラー同士が互いに結着した状態を維持できるようにこれらを互いに付着(すなわち、バインダー高分子が無機フィラー同士の間を連結及び固定)させるバインダー高分子を含み、前記バインダー高分子によって無機フィラーと架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体10とが結着した状態を維持できる。前記無機物複合空隙層20は、無機フィラーによって架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体10が高温で甚だしい熱収縮挙動を見せることを防止し、分離膜の安全性を向上させることができる。例えば、120℃で30分間放置してから測定した機械方向(MD)及び横方向(TD)における分離膜の熱収縮率がそれぞれ、20%以下、2%~15%、または2%~10%であり得る。
【0087】
本明細書において、「機械方向(Machine direction:MD)」とは、分離膜が連続生産されるときの進行方向であって、分離膜の長手方向を称し、「横方向(Transverse direction:TD)」とは、機械方向の横方向、すなわち、分離膜が連続生産されるときの進行方向に垂直な方向であって、分離膜の長手方向と垂直な方向を称する。
【0088】
前記無機フィラーは、電気化学的に安定さえすれば特に限定されない。すなわち、本発明で使用可能な無機フィラーは、適用される電気化学素子の作動電圧範囲(例えば、Li/Li基準で0~5V)で酸化及び/または還元反応が起きないものであれば、特に限定されない。特に、無機フィラーとして誘電率の高い無機物粒子を使用する場合、液体電解質内の電解質塩、例えばリチウム塩の解離度増加に寄与して電解液のイオン伝導度を向上させることができる。
【0089】
上述した理由から、本発明の一実施形態において、前記無機フィラーは、誘電率定数が5以上、望ましくは10以上の高誘電率無機フィラーを含み得る。誘電率定数が5以上の無機フィラーの非制限的な例としては、BaTiO、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT、0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、ハフニア(HfO)、SrTiO、SnO、CeO、MgO、Mg(OH)、NiO、CaO、ZnO、ZrO、SiO、Y、Al、AlOOH、Al(OH)、SiC、TiO、またはこれらの混合体などが挙げられる。
【0090】
また、本発明の他の実施形態において、前記無機フィラーとしては、リチウムイオン伝達能力を有する無機フィラー、すなわちリチウム元素を含むもののリチウムを貯蔵せず、リチウムイオンを移動させる機能を有する無機フィラーを使用し得る。リチウムイオン伝達能力を有する無機フィラーの非制限的な例としては、リチウムホスフェート(LiPO)、リチウムチタンホスフェート(LiTi(PO、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LiAlTi(PO、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、14LiO-9Al-38TiO-39Pなどの(LiAlTiP)系ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LiLaTiO、0<x<2、0<y<3)、Li3.25Ge0.250.75などのリチウムゲルマニウムチオホスフェート(LiGe、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、LiNなどのリチウムナイトライド(Li、0<x<4、0<y<2)、LiPO-LiS-SiSなどのSiS系ガラス(LiSi、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、LiI-LiS-PなどのP系ガラス(Li、0<x<3、0<y<3、0<z<7)、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0091】
本発明の一実施形態において、前記無機フィラーの平均粒径は、0.01μm~1.5μmであり得る。前記無機フィラーの平均粒径が上述した範囲を満たす場合、均一な厚さ及び適切な気孔度を有する無機物複合空隙層20の形成が容易であり、無機フィラーの分散性が良好であり、所望のエネルギー密度を達成することができる。
【0092】
このとき、前記無機フィラーの平均粒径とは、D50粒径を意味して、「D50粒径」は、粒径に応じた粒子個数累積分布の50%地点における粒径を意味する。前記粒径は、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定し得る。具体的には、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(例えば、Microtrac S3500)に導入し、粒子がレーザービームを通過するとき、粒子サイズに応じた回折パターンの差を測定して粒度分布を算出する。測定装置における粒径に応じた粒子個数累積分布の50%になる地点での粒子直径を算出することで、D50粒径を測定し得る。
【0093】
前記バインダー高分子は、ガラス転移温度(glass transition temperature、T)が-200~200℃であり得る。前記バインダー高分子のガラス転移温度が上述した範囲を満たす場合、最終的に形成される無機物複合空隙層20の柔軟性及び弾性などの機械的物性が向上できる。前記バインダー高分子はイオン伝導能力を有するものであり得る。前記バインダー高分子がイオン伝導能力を有する場合、電池の性能を一層向上させることができる。前記バインダー高分子は、誘電率定数が1.0~100(測定周波数=1kHz)または10~100であり得る。前記バインダー高分子の誘電率定数が上述した範囲を満たす場合、電解液における塩の解離度を向上させることができる。
【0094】
本発明の一実施形態において、前記バインダー高分子は、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-トリクロロエチレン、アクリル系共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリアリレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0095】
前記アクリル系共重合体は、エチルアクリレート-アクリル酸-N,N-ジメチルアクリルアミド共重合体、エチルアクリレート-アクリル酸-2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート共重合体、エチルアクリレート-アクリル酸-N,N-ジエチルアクリルアミド共重合体、エチルアクリレート-アクリル酸-2-(ジエチルアミノ)エチルアクリレート共重合体、またはこれらのうち二つ以上を含み得るが、これらに限定されない。
【0096】
本発明の一実施形態において、前記無機フィラーとバインダー高分子との重量比は、最終的に製造される無機物複合空隙層20の厚さ、気孔径及び気孔度を考慮して決定されるが、50:50~99.9:0.1、または60:40~99.5:0.5であり得る。前記無機フィラーとバインダー高分子との重量比が上述した範囲である場合、無機フィラー同士の間に形成される空き空間を十分に確保して無機物複合空隙層20の気孔径及び気孔度を容易に確保できる。また、無機フィラー同士の接着力も容易に確保することができる。
【0097】
本発明の一実施形態において、前記無機物複合空隙層20は、分散剤及び/または増粘剤のような添加剤をさらに含み得る。本発明の一実施形態において、前記添加剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、シアノエチレンポリビニルアルコール、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0098】
本発明の一実施形態において、前記無機物複合空隙層20は、前記無機フィラーが充填されて互いに接触した状態で前記バインダー高分子によって互いに結着し、これにより無機フィラー同士の間にインタースティシャル・ボリューム(interstitial volume)が形成され、前記無機フィラー同士の間のインタースティシャル・ボリュームは空き空間になって気孔を形成する構造を有し得る。
【0099】
本発明の他の実施形態において、前記無機物複合空隙層20は、前記無機フィラー、及び前記無機フィラーの表面の少なくとも一部を被覆するバインダー高分子を含む複数のノード(node)と、前記ノードの前記バインダー高分子から糸(thread)状に形成された一つ以上のフィラメントと、を含み、前記フィラメントは前記ノードから延びて他のノードを連結するノード連結部分を備え、前記ノード連結部分は、前記バインダー高分子から由来した複数のフィラメント同士が互いに交差して3次元網状構造体を成す構造を有し得る。
【0100】
本発明の一実施形態において、前記無機物複合空隙層20の平均気孔径は0.001μm~10μmであり得る。前記無機物複合空隙層20の平均気孔径は、キャピラリーフローポロメトリー(Capillary flow porometry)方法によって測定し得る。キャピラリーフローポロメトリーは、厚さ方向で最も小さい気孔の直径を測定する方式である。したがって、キャピラリーフローポロメトリーによって無機物複合空隙層20のみの平均気孔径を測定するためには、無機物複合空隙層20を架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体10から分離し、分離した無機物複合空隙層20を支持可能な不織布で包んだ状態で測定しなければならず、このとき、前記不織布の気孔サイズは無機物複合空隙層20の気孔サイズに比べて遥かに大きくなければならない。
【0101】
本発明の一実施形態において、前記無機物複合空隙層20の気孔度(porosity)は、5%~95%、10%~95%、20%~90%、または30%~80%であり得る。前記気孔度は、前記無機物複合空隙層20の厚さ、横長及び縦長から計算した体積から、前記無機物複合空隙層20の各構成成分の重量と密度から換算した体積を引き算(subtraction)した値に該当する。
【0102】
前記無機物複合空隙層20の気孔度は、走査電子顕微鏡(SEM)イメージ、水銀ポロシメーター(mercury porosimeter)、または細孔分布測定装置(porosimetry analyzer;Bell Japan、Belsorp-II mini)を使用して窒素ガス吸着フローによってBET6点法で測定し得る。
【0103】
本発明の一実施形態において、前記無機物複合空隙層20の厚さは、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体10の一面で1.5μm~5.0μmであり得る。前記無機物複合空隙層20の厚さが上述した範囲を満たす場合、電極との接着力が優れながらも電池のセル強度を容易に増加させることができる。
【0104】
本発明の他の実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及び第1バインダー高分子を含む無機物複合空隙層と、前記無機物複合空隙層上に位置し、第2バインダー高分子を含む多孔性接着層と、をさらに含み得る。これを図2に示した。
【0105】
図2を参照すると、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜1’は、高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を有する架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体10’と、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体10’の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及び第1バインダー高分子を含む無機物複合空隙層20’と、前記無機物複合空隙層20’上に位置し、第2バインダー高分子を含む多孔性接着層30’と、を含み得る。
【0106】
前記無機物複合空隙層20’は、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体10’の一面または両面に形成され得る。前記無機物複合空隙層20’は、無機フィラー、及び前記無機フィラー同士が互いに結着した状態を維持できるようにこれらを互いに付着(すなわち、第1バインダー高分子が無機フィラー同士の間を連結及び固定)させる第1バインダー高分子を含み、前記第1バインダー高分子によって無機フィラーと架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体10’とが結着した状態を維持できる。前記無機物複合空隙層20’は、無機フィラーによって架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体10’が高温で甚だしい熱収縮挙動を見せることを防止し、分離膜の安全性を向上させることができる。例えば、150℃で30分間放置してから測定した機械方向(MD)及び横方向(TD)における分離膜の熱収縮率がそれぞれ、20%以下、2%~15%、または2%~10%であり得る。
【0107】
前記無機フィラーについては、上述した内容を参照されたい。
【0108】
前記第1バインダー高分子は、ガラス転移温度(T)が-200~200℃であり得る。前記第1バインダー高分子のガラス転移温度が上述した範囲を満たす場合、最終的に形成される無機物複合空隙層20’の柔軟性及び弾性などの機械的物性が向上できる。前記第1バインダー高分子はイオン伝導能力を有するものであり得る。前記第1バインダー高分子がイオン伝導能力を有する場合、電池の性能を一層向上させることができる。前記第1バインダー高分子は、誘電率定数が1.0~100(測定周波数=1kHz)または10~100であり得る。前記第1バインダー高分子の誘電率定数が上述した範囲を満たす場合、電解液における塩の解離度を向上させることができる。
【0109】
本発明の一実施形態において、前記第1バインダー高分子は、耐熱性に優れたバインダー高分子であり得る。前記第1バインダー高分子が優れた耐熱性を有する場合、無機物複合空隙層の耐熱特性がさらに向上できる。例えば、150℃で30分間放置してから測定した機械方向(MD)及び横方向(TD)における分離膜の熱収縮率がそれぞれ、20%以下、2%~15%、2%~10%、2%~5%、0%~5%、または0%~2%であり得る。本発明の一実施形態において、前記第1バインダー高分子は、アクリル系重合体、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0110】
具体的には、前記アクリル系重合体は、アクリル系単量体のみを重合したアクリル系単独重合体を含み得、アクリル系単量体と他の単量体との共重合体も含み得る。例えば、前記アクリル系重合体は、エチルヘキシルアクリレート-メチルメタクリレート共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ブチルアクリレート-メチルメタクリレート共重合体、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0111】
本発明の一実施形態において、前記第1バインダー高分子は粒子状であり得る。
【0112】
本発明の一実施形態において、前記無機フィラーと第1バインダー高分子との重量比は、95:5~99.9:0.1、96:4~99.5:0.5、または97:3~99:1であり得る。前記無機フィラーと第1バインダー高分子との重量比が上述した範囲である場合、分離膜の単位面積当りに分布する無機フィラーの含量が多くなって、高温における分離膜の熱的安全性が改善できる。例えば、150℃で30分間放置してから測定した機械方向(MD)及び横方向(TD)における分離膜の熱収縮率がそれぞれ、20%以下、2%~15%、2%~10%、2%~5%、0%~5%、または0%~2%であり得る。以下、上述した無機物複合空隙層20と異なる無機物複合空隙層20’の特徴を説明する。
【0113】
本発明の一実施形態において、前記無機物複合空隙層20’は、前記無機フィラーが充填されて互いに接触した状態で前記第1バインダー高分子によって互いに結着し、これにより無機フィラー同士の間にインタースティシャル・ボリュームが形成され、前記無機フィラー同士の間のインタースティシャル・ボリュームは空き空間になって気孔を形成する構造を有し得る。
【0114】
前記多孔性接着層30’は、第2バインダー高分子を含むことで、前記無機物複合空隙層20’を備える分離膜と電極との接着力を確保することができる。また、前記多孔性接着層30’には気孔が形成されており、分離膜の抵抗が高くなることを防止することができる。
【0115】
本発明の一実施形態において、前記多孔性接着層30’は、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体10’の表面及び/または内部に第2バインダー高分子が浸透しないため、分離膜の抵抗が高くなる現象を最小化することができる。
【0116】
前記第2バインダー高分子は、接着層の形成に通常使用されるバインダー高分子であり得る。前記第2バインダー高分子は、ガラス転移温度(T)が-200~200℃であり得る。前記第2バインダー高分子のガラス転移温度が上述した範囲を満たす場合、最終的に形成される接着層の柔軟性及び弾性などの機械的物性が向上できる。前記第2バインダー高分子はイオン伝導能力を有するものであり得る。イオン伝導能力を有するバインダー高分子を第2バインダー高分子として使用する場合、電池の性能を一層向上させることができる。前記第2バインダー高分子は、誘電率定数が1.0~100(測定周波数=1kHz)または10~100であり得る。前記第2バインダー高分子の誘電率定数が上述した範囲を満たす場合、電解液における塩の解離度を向上させることができる。
【0117】
本発明の一実施形態において、前記第2バインダー高分子は、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン-トリクロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチルヘキシルアクリレート-メチルメタクリレート共重合体、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリアリレート、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0118】
本発明の一実施形態において、前記多孔性接着層30’は、前記第2バインダー高分子を含む一つ以上の接着部と前記接着部が形成されていない一つ以上の無地部(non-coating region)とを含むパターンを有するものであり得る。前記パターンは、ドット型、ストライプ型、斜線型、波型、三角形、四角形、または半円形であり得る。前記多孔性接着層がパターンを有する場合、分離膜の抵抗が改善され、多孔性接着層が形成されていない無地部を通じて電解液が含浸可能であるため、分離膜の電解液含浸性が改善できる。
【0119】
本発明の一実施形態において、前記多孔性接着層30’の厚さは、0.5μm~1.5μm、0.6μm~1.2μm、または0.6μm~1.0μmであり得る。前記多孔性接着層の厚さが上述した範囲である場合、電極との接着力に優れ、その結果、電池のセル強度が増加できる。また、電池のサイクル特性及び抵抗特性の面で有利である。
【0120】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を有する本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体を備えることで、高温安全性に優れる。例えば、架橋されていないポリオレフィン多孔支持体を備える分離膜に比べて、前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜のメルトダウン温度が上昇可能である。例えば、分離膜のメルトダウン温度が160℃以上、170℃以上、または180℃~230℃であり得る。
【0121】
本明細書において、「架橋されていないポリオレフィン多孔支持体を含む分離膜」とは、架橋されていない架橋構造不含のポリオレフィン多孔支持体からなる分離膜;架橋されていない架橋構造不含のポリオレフィン多孔支持体と、前記架橋構造不含のポリオレフィン多孔支持体の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及びバインダー高分子を含む無機物複合空隙層とを含む分離膜;または架橋されていない架橋構造不含のポリオレフィン多孔支持体と、前記架橋構造不含のポリオレフィン多孔支持体の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及び前記第1バインダー高分子を含む無機物複合空隙層と、前記無機物複合空隙層上に位置し、第2バインダー高分子を含む多孔性接着層とを含む分離膜;を称する。
【0122】
前記メルトダウン温度は、熱機械分析方法(Thermomechanical Analysis:TMA)で測定し得る。例えば、機械方向と横方向におけるサンプルをそれぞれ採取した後、TMA装置(TAインスツルメント製、Q400)に幅4.8mm×長さ8mmのサンプルを入れて0.01Nの張力を加えた状態で、昇温速度5℃/分で温度を30℃から220℃まで変化させながら、長さが急増してサンプルが切れる温度を測定してメルトダウン温度とし得る。
【0123】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、架橋されていないポリオレフィン多孔支持体を含む分離膜と比べて、シャットダウン温度の上昇が大きくなく、その変化率も小さい。本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、架橋されていないポリオレフィン多孔支持体を含む分離膜と比べて、分離膜のメルトダウン温度は上昇する一方、シャットダウン温度はあまり上昇しないため、シャットダウン温度による過充電安全性を確保できると同時に、分離膜の高温安全性が大幅に改善される。
【0124】
本発明の一実施形態において、前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、シャットダウン温度が145℃以下、140℃以下、または133℃~140℃であり得る。前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜が上述したシャットダウン温度を有する場合、過充電安全性を確保できるとともに、電池組み立て時の高温、加圧工程で架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の気孔が損傷されて抵抗が上昇する問題を容易に防止することができる。
【0125】
前記シャットダウン温度は、王研式通気度測定装置を用いて1分で5℃ずつ昇温させたとき、0.05MPaの一定圧力で100mlの空気が分離膜を通過するのにかかる時間(秒)を測定し、分離膜の通気度が急激に増加する温度をシャットダウン温度とし得る。
【0126】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、通気度、坪量、引張強度、引張伸度(tensile elongation)、突刺し強度(puncture strength)、電気抵抗などが、架橋前のポリオレフィン多孔支持体を含む分離膜の通気度、坪量、引張強度、引張伸度、突刺し強度、電気抵抗などと比べて著しく劣化することなしに、その変化率も小さい。
【0127】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、架橋前のリチウム二次電池用分離膜と比べて、通気度の変化率が10%以下、0%~10%、0%~5%、または0%~3%であり得る。
【0128】
通気度の変化率は、下記の式で計算し得る。
【0129】
通気度の変化率(%)=[(架橋後のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の通気度)-(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の通気度)]/(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の通気度)×100
【0130】
本明細書の全体において、「架橋後のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜」とは、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体からなる分離膜;架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体と、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及びバインダー高分子を含む無機物複合空隙層とを含む分離膜;または架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体と、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及び第1バインダー高分子を含む無機物複合空隙層と、前記無機物複合空隙層の上面に位置し、第2バインダー高分子を含む多孔性接着層とを含む分離膜;を称する。
【0131】
前記通気度(ガーレー)は、ASTM D726-94方法によって測定し得る。ここで使用されるガーレーは空気の流れに対する抵抗であって、ガーレーデンソメーターによって測定される。ここで説明された通気度の値は、100mlの空気が12.2 in HOの圧力下で、サンプル多孔支持体1inの断面を通過するのにかかる時間(秒)、すなわち通気時間として示す。
【0132】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、架橋前のリチウム二次電池用分離膜と比べて、坪量の変化率が5%以下、または0%~5%であり得る。
【0133】
坪量の変化率は、下記の式で計算し得る。
【0134】
坪量の変化率(%)=[(架橋後のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の坪量)-(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の坪量)]/(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の坪量)×100
【0135】
前記坪量(g/m)は、縦横がそれぞれ1mであるサンプルを用意し、その重量を測定して示す。
【0136】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、架橋前のリチウム二次電池用分離膜と比べて、機械方向及び横方向における引張強度の変化率が20%以下、0%~20%、0%~10%、0%~9%、0%~8%、または0%~7.53%であり得る。
【0137】
引張強度の変化率は、下記の式で計算し得る。
【0138】
機械方向における引張強度の変化率(%)=[(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の機械方向における引張強度)-(架橋後のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の機械方向における引張強度)]/(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の機械方向における引張強度)×100
【0139】
横方向における引張強度の変化率(%)=[(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の横方向における引張強度)-(架橋後のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の横方向における引張強度)]/(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の横方向における引張強度)×100
【0140】
前記引張強度は、ASTM D882に準じて、前記試片をUniversal Testing Systems(Instron(登録商標) 3345)を用いて50mm/分の速度で機械方向及び横方向にそれぞれ引っ張ったとき、試片が破断する時点における強度であり得る。
【0141】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、架橋前のリチウム二次電池用分離膜と比べて、機械方向及び横方向における引張伸度の変化率が20%以下、または0%~20%であり得る。
【0142】
引張伸度の変化率は、下記の式で計算し得る。
【0143】
機械方向における引張伸度の変化率(%)=[(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の機械方向における引張伸度)-(架橋後のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の機械方向における引張伸度)]/(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の機械方向における引張伸度)×100
【0144】
横方向における引張伸度の変化率(%)=[(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の横方向における引張伸度)-(架橋後のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の横方向における引張伸度)]/(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の横方向における引張伸度)×100
【0145】
前記引張伸度は、ASTM D882に準じて、前記試片をUniversal Testing Systems(Instron(登録商標) 3345)を用いて50mm/分の速度で機械方向及び横方向にそれぞれ引っ張ったとき、試片が破断するまで伸びた最大長さを測定し、下記の式で計算し得る。
【0146】
機械方向における引張伸度(%)=(破断直前試片の機械方向の長さ-延伸前試片の機械方向の長さ)/(延伸前試片の機械方向の長さ)×100
【0147】
横方向における引張伸度(%)=(破断直前試片の横方向の長さ-延伸前試片の横方向の長さ)/(延伸前試片の横方向の長さ)×100
【0148】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、架橋前のリチウム二次電池用分離膜と比べて、突刺し強度の変化率が10%以下、0.5%~10%、1%~9%、または1.18%~8.71%であり得る。
【0149】
突刺し強度の変化率は、下記の式で計算し得る。
【0150】
突刺し強度の変化率(%)=[(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の突刺し強度)-(架橋後のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の突刺し強度)]/(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の突刺し強度)×100
【0151】
前記突刺し強度は、ASTM D2582に準じて測定し得る。具体的には、1mmのラウンドチップが120mm/分の速度で作動するように設定した後、ASTM D2582に従って突刺し強度を測定し得る。
【0152】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、架橋前のリチウム二次電池用分離膜と比べて、電気抵抗の変化率が15%以下、2%~10%、または2%~5%であり得る。
【0153】
電気抵抗の変化率は、下記の式で計算し得る。
【0154】
電気抵抗の変化率(%)=[(架橋後のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の電気抵抗)-(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の電気抵抗)]/(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の電気抵抗)×100
【0155】
電気抵抗は、分離膜サンプルを含んで製作されたコインセルを常温で1日間放置した後、分離膜の抵抗をインピーダンス測定法で測定して求め得る。
【0156】
本発明による架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体は、下記の方法で製造され得るが、これによって限定されない。
【0157】
本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の製造方法は、
タイプII光開始剤を含むポリオレフィン多孔支持体を用意する段階と、
前記ポリオレフィン多孔支持体に紫外線(UV)を照射する段階と、を含む。
【0158】
以下、本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の製造方法を主要部分を中心にして説明する。
【0159】
まず、タイプII光開始剤を含むポリオレフィン多孔支持体を用意する。
【0160】
前記タイプII光開始剤は、ポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖を直接的に光架橋させる。本発明では、ポリオレフィン多孔支持体の表面にタイプII光開始剤が導入されて、紫外線の照射時にポリオレフィン多孔支持体が架橋され得る。ここで、前記「ポリオレフィン多孔支持体の表面」は、ポリオレフィン多孔支持体を構成している数~数十nmの高分子鎖の表面を称する。
【0161】
従来、ポリオレフィン多孔支持体を光架橋させるために使用されるタイプI光開始剤は、架橋剤を一緒に使用することが一般的である。タイプI光開始剤は、光を吸収した後、単分子結合切断(unimolecular bond cleavage)して反応性化合物種になり、光開始剤または架橋剤がポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖と結合されて光架橋が発生した。
【0162】
一方、前記タイプII光開始剤は、架橋剤、または共開始剤や相乗剤などの他の構成要素なく、光開始剤単独でポリオレフィン多孔支持体を架橋させることができる。光吸収のみで水素引き抜き反応(hydrogen abstraction)によってタイプII光開始剤内の水素原子が除去されながらタイプII光開始剤が反応性化合物になり、このようなタイプII光開始剤がポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖にラジカルを形成して高分子鎖を反応性にして、高分子鎖が互いに直接連結されて光架橋される。例えば、ポリオレフィン内に存在する少量の二重結合構造または分岐構造において前記タイプII光開始剤による水素引き抜き反応が可能であるため、光吸収のみで水素引き抜き反応によってポリオレフィン鎖から水素原子が引き抜かれながらラジカルを形成し得る。
【0163】
本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の製造方法は、前記タイプII光開始剤を使用することで、ポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖にラジカルを生成可能であるため、高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を形成し得る。
【0164】
また、タイプII光開始剤を使用することで、タイプI光開始剤やその他の架橋剤を利用する場合より、さらに少ない光量で架橋が可能であるため、量産の面でさらに有利である。
【0165】
高分子鎖にラジカルを形成した後、タイプII光開始剤は安定化して、それ以上ポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖からラジカルを生成しない。これにより、最終的に製造された架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体も活性化したラジカルを持たない。
【0166】
しかし、電子スピン共鳴法によるスペクトルを測定する過程で紫外線を照射すると、このような紫外線がタイプII光開始剤を再び活性化させて、活性化したタイプII光開始剤がポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖から再度ラジカルを形成するようになる。これにより、2.010~2.030のg値で第1ピークが検出される。
【0167】
本発明の一実施形態において、前記タイプII光開始剤は、チオキサントン(TX:Thioxanthone)、チオキサントン誘導体、ベンゾフェノン(BPO:Benzophenone)、ベンゾフェノン誘導体、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0168】
前記チオキサントン誘導体は、例えば、2-イソプロピルチオキサントン(2-Isopropyl thioxanthone:ITX)、2-クロロチオキサントン、2-ドデシルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-メトキシカルボニルチオキサントン、2-エトキシカルボニルチオキサントン、3-(2-メトキシエトキシカルボニル)-チオキサントン、4-ブトキシカルボニル-チオキサントン、3-ブトキシカルボニル-7-メチルチオキサントン、1-シアノ-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-エトキシチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-アミノチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-フェニルスルフリルチオキサントン、3,4-ジ[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-(1-メチル-1-モルホリノ-エチル)-チオキサントン、2-メチル-6-ジメトキシメチル-チオキサントン、2-メチル-6-(1,1-ジメトキシ-ベンジル)-チオキサントン、2-モルホリノメチルチオキサントン、2-メチル-6-モルホリノメチル-チオキサントン、N-アリルチオキサントン-3,4-ジカルボキシミド、N-オクチルチオキサントン-3,4-ジカルボキシミド、N-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-チオキサントン-3,4-ジカルボキシミド、1-フェノキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メトキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メチルチオキサントン、チオキサントン-2-ポリエチレングリコールエステル、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロライドなどを含み得るが、これらに限定されない。
【0169】
前記ベンゾフェノン誘導体は、例えば、4-フェニルベンゾフェノン、4-メトキシベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシ-ベンゾフェノン、4,4’-ジメチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-(4-メチルチオフェニル)-ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシ-ベンゾフェノン、メチル-2-ベンゾイルベンゾエート、4-(2-ヒドロキシエチルチオ)-ベンゾフェノン、4-(4-トリルチオ)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N,N-トリメチルベンゼンメタンアミニウムクロライド、2-ヒドロキシ-3-(4-ベンゾイルフェノキシ)-N,N,N-トリメチル-プロパンアミニウムクロライド一水和物、4-ヒドロキシベンゾフェノン、4-(13-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキサトリデシル)-ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロフェニル)オキシ]エチル-ベンゼンメタンアミニウムクロライドなどを含み得るが、これらに限定されない。
【0170】
特に、2-イソプロピルチオキサントンまたはチオキサントンは紫外線に対する反応性がさらに優れるため、前記タイプII光開始剤が2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントン、またはこれらの混合物を含む場合、ベンゾフェノンなどを含む場合よりも少ない光量、例えば500mJ/cm水準でもポリオレフィン多孔支持体の光架橋が可能であるため、量産の面でさらに有利である。これにより、500Wの紫外線を照射して電子スピン共鳴法で測定したとき、前記第2ピークの面積に対する前記第1ピークの面積の比率がベンゾフェノンなどを含む場合よりも大きくなる。
【0171】
また、前記タイプII光開始剤が2-イソプロピルチオキサントン(ITX)を含むと、ITXの融点が約70℃~80℃と低いため、光架橋温度を80℃~100℃に調節する場合、ポリオレフィン多孔支持体の表面のITXが溶融しながら前記ポリオレフィン多孔支持体内へのITXの移動性(mobility)が発生して架橋効率が増加でき、最終的に製造される架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の物性変化を容易に防止することができる。
【0172】
本発明の一実施形態において、前記タイプII光開始剤の含量は、ポリオレフィン多孔支持体100重量部に対して0.015重量部~0.36重量部、0.015重量部~0.09重量部、0.03重量部~0.07重量部、または0.036重量部~0.073重量部であり得る。前記タイプII光開始剤の含量が上述した範囲を満たす場合、ラジカルが形成された高分子鎖同士の間のみで架橋が起き、タイプII光開始剤が高分子鎖と架橋されることがなく、タイプII光開始剤と高分子鎖との架橋による過量のラジカルによって副反応が発生する問題をより容易に防止することができる。タイプII光開始剤同士が架橋されるかまたはタイプII光開始剤と高分子鎖とが互いに架橋されると、このような架橋構造はポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖同士の間の架橋構造よりも反応エンタルピーが低いため、分解されて副反応を起こすおそれがある。また、タイプII光開始剤と高分子鎖とが架橋されると、ポリオレフィン鎖の溶融温度を低下させてシャットダウン温度のような特性を劣化させるおそれがある。
【0173】
また、前記タイプII光開始剤の含量が上述した範囲を満たす場合、ラジカルが形成された高分子鎖同士の間のみで架橋が起きる程度でラジカルが形成されるため、急激な架橋反応によって架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体が収縮するかまたはポリオレフィンの主鎖切断(main chain scission)などが発生して架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の機械的強度などの他の物性を下げることを容易に防止することができる。タイプII光開始剤が上述した範囲で含まれても、量産生産性を確保可能な光量(すなわち、従来よりも少ない光量)の紫外線の照射によってポリオレフィン多孔支持体を架橋させることができる。
【0174】
ポリオレフィン多孔支持体100重量部に対する前記タイプII光開始剤の含量は、ポリオレフィン多孔支持体の全体気孔体積に充填されているタイプII光開始剤の含量を測定して求め得る。例えば、ポリオレフィン多孔支持体の全体気孔体積を後述する溶剤が100%充填しており、ポリオレフィン多孔支持体の表面に存在する溶剤はないと仮定したとき、溶剤の密度からポリオレフィン多孔支持体の全体気孔体積内に含まれた溶剤の重量を求め、溶剤に含まれたタイプII光開始剤の含量からポリオレフィン多孔支持体100重量部に対するタイプII光開始剤の含量を求め得る。
【0175】
前記ポリオレフィン多孔支持体は、上述したポリオレフィン物質から優れた通気性及び孔隙率を確保するため、当業界に公知の通常の方法、例えば溶媒、希釈剤または気孔形成剤を使用する湿式法、若しくは、延伸方式を使用する乾式法を用いて気孔を形成することで製造され得る。
【0176】
本発明の一実施形態において、前記ポリオレフィン多孔支持体は、H-NMR測定時に、ポリオレフィン鎖に存在する二重結合の個数が1000個の炭素原子当り0.01個~0.5個、0.01個~0.3個、または0.01個~0.2個であり得る。前記ポリオレフィン多孔支持体が上述した個数の二重結合を有する場合、ポリオレフィン鎖に存在する二重結合構造からタイプII光開始剤による水素引き抜き反応によって形成されるラジカルの調節が可能になり、ポリオレフィン多孔支持体を効果的に架橋できるとともに、ラジカルが過剰に生成されて副反応が発生することを最小化することができる。
【0177】
ポリオレフィン鎖に存在する二重結合のうち、末端を除いたポリオレフィン鎖に存在する二重結合が高分子鎖同士の間の架橋に影響を及ぼし得る。本発明の一実施形態において、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の末端を除いたポリオレフィン鎖に存在する二重結合の個数は、1000個の炭素原子当り0.005個~0.49個であり得る。
【0178】
本発明の一実施形態において、前記ポリオレフィン鎖に存在する二重結合の個数は、ポリオレフィン合成時の触媒の種類、純度、連結剤の添加などを調節して調節し得る。
【0179】
本発明の一実施形態において、前記ポリオレフィン多孔支持体は、BET比表面積が10m/g~27m/g、13m/g~25m/g、または15m/g~23m/gであり得る。前記ポリオレフィン多孔支持体のBET比表面積が上述した範囲を満たす場合、ポリオレフィン多孔支持体の表面積が増加して、少量のタイプII光開始剤を使用してもポリオレフィン多孔支持体の架橋効率が増加できる。
【0180】
前記ポリオレフィン多孔支持体のBET比表面積は、BET法によって測定し得る。具体的には、BEL Japan社のBelsorp-mini IIを用いて液体窒素温度下(77K)での窒素ガス吸着量から無機物粒子のBET比表面積を算出し得る。
【0181】
本発明の一実施形態において、前記ポリオレフィン多孔支持体は、酸化防止剤をさらに含み得る。酸化防止剤は、ポリオレフィン鎖に形成されたラジカルを制御することで、高分子鎖同士の間の架橋反応を調節することができる。酸化防止剤が高分子鎖の代わりに酸化して高分子鎖の酸化を防止するか、または、生成されたラジカルを吸収して高分子鎖同士の間の架橋反応を調節することができる。
【0182】
本発明の一実施形態において、前記酸化防止剤の含量は、前記ポリオレフィン多孔支持体の含量を基準にして500ppm~20000ppm、1000ppm~15000ppm、または2000ppm~13000ppmであり得る。酸化防止剤の含量が上述した範囲を満たす場合、酸化防止剤が過剰に生成されるラジカルを十分に制御できて副反応が発生する問題を容易に防止可能であるだけでなく、ポリオレフィン多孔支持体の表面が不均一になる現象を容易に防止することができる。
【0183】
このような酸化防止剤は、ポリオレフィンに生成されたラジカルと反応してポリオレフィンを安定化させるラジカル捕捉剤(radical scavenger)と、ラジカルによって生成される過酸化物を安定した形態の分子に分解する過酸化物分解剤(peroxide decomposer)とに大きく分けられる。前記ラジカル捕捉剤は、水素を引き抜いてラジカルを安定化させて自らがラジカルになるが、共鳴効果または電子の再配列を通じて安定した形態で残留し得る。前記過酸化物分解剤は、ラジカル捕捉剤と併用するとき、より優れた効果を発揮することができる。
【0184】
本発明の一実施形態において、前記酸化防止剤は、ラジカル捕捉剤である第1酸化防止剤、及び過酸化物分解剤である第2酸化防止剤を含み得る。前記第1酸化防止剤と第2酸化防止剤とはその作動メカニズムが相異なるため、前記酸化防止剤がラジカル捕捉剤である第1酸化防止剤及び過酸化物分解剤である第2酸化防止剤を同時に含むことで、これら酸化防止剤の相乗効果によって不要なラジカルの生成をより容易に抑制することができる。
【0185】
前記第1酸化防止剤の含量と第2酸化防止剤の含量とは同一であってもよく、異なってもよい。
【0186】
本発明の一実施形態において、前記第1酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、またはこれらの混合物を含み得る。
【0187】
前記フェノール系酸化防止剤は、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、4,4’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)、2,2’-チオジエチルビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、ペンタエリトリトールテトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、4,4’-チオビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)、オクタデシル-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェノール)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、6,6’-ジ-t-ブチル-2,2’-チオジ-p-クレゾール、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、ジオクタデシル3,3’-チオジプロピオネート、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0188】
本発明の一実施形態において、前記第1酸化防止剤の含量は、前記ポリオレフィン多孔支持体の含量を基準にして500ppm~10000ppm、1000ppm~12000ppm、または1000ppm~10000ppmであり得る。前記第1酸化防止剤の含量が上述した範囲を満たす場合、ラジカルの過剰生成によって副反応が発生する問題を容易に防止することができる。
【0189】
本発明の一実施形態において、前記第2酸化防止剤は、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、またはこれらの混合物を含み得る。
【0190】
前記リン系酸化防止剤は、過酸化物を分解してアルコールを生成し、ホスフェートに変化する。前記リン系酸化防止剤は、3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(2,6-ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)2-エチルヘキシルホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-6-メチルフェニル)-エチル-ホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0191】
前記硫黄系酸化防止剤は、3,3’-チオビス-1,1’-ジドデシルエステル、ジメチル3,3’-チオジプロピオネート、ジオクタデシル3,3’-チオジプロピオネート、2,2-ビス{[3-(ドデシルチオ)-1-オキソプロポキシ]メチル}プロパン-1,3-ジイルビス[3-(ドデシルチオ)プロピオネート]、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0192】
本発明の一実施形態において、前記第2酸化防止剤の含量は、前記ポリオレフィン多孔支持体の含量を基準にして500ppm~10000ppm、1000ppm~12000ppm、または1000ppm~10000ppmであり得る。前記第2酸化防止剤の含量が上述した範囲を満たす場合、ラジカルの過剰生成によって副反応が発生する問題を容易に防止することができる。
【0193】
本発明の一実施形態において、前記酸化防止剤がラジカル捕捉剤である第1酸化防止剤及び過酸化物分解剤である第2酸化防止剤を同時に含む場合、前記第1酸化防止剤の含量は前記ポリオレフィン多孔支持体の含量を基準にして500ppm~10000ppmであり得、前記第2酸化防止剤の含量は前記ポリオレフィン多孔支持体の含量を基準にして500ppm~10000ppmであり得る。
【0194】
本発明の一実施形態において、前記タイプII光開始剤を含むポリオレフィン多孔支持体を用意する段階は、前記ポリオレフィン多孔支持体を形成するためのポリオレフィン組成物を押出するとき、押出機に前記タイプII光開始剤を添加してポリオレフィン多孔支持体を用意する段階を含み得る。
【0195】
本発明の他の実施形態において、前記ポリオレフィン多孔支持体を用意する段階は、前記タイプII光開始剤及び溶剤を含む光架橋用組成物を前記ポリオレフィン多孔支持体の外側にコーティング及び乾燥する段階を含み得る。
【0196】
本明細書において、「外側にコーティング及び乾燥する段階」とは、ポリオレフィン多孔支持体の表面に光架橋用組成物をコーティング及び乾燥する場合だけでなく、ポリオレフィン多孔支持体上に他の層が形成された後、該他の層の表面に光架橋用組成物をコーティング及び乾燥する場合を含む。
【0197】
本発明の一実施形態において、前記光開始剤溶液を前記ポリオレフィン多孔支持体にコーティングする前に、ポリオレフィン多孔支持体をコロナ放電処理し得る。前記コロナ放電処理は、コロナ放電処理機に備えられた所定の放電電極と処理ロールとの間に、所定の駆動回路部によって発生する高周波、高電圧出力を印加して行われ得る。前記コロナ放電処理を通じてポリオレフィン多孔支持体の表面が改質され、光架橋用組成物に対するポリオレフィン多孔支持体の濡れ性がさらに改善できる。これにより、同じ含量のタイプII光開始剤が含まれてもポリオレフィン多孔支持体の架橋をより効率的に行うことができる。前記コロナ放電処理は常圧プラズマ方式によって行われ得る。
【0198】
本発明の一実施形態において、前記溶剤は、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの環状脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、エチルメチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどのケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などの塩素系脂肪族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのアシルニトリル類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類:メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド類;またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0199】
本発明の一実施形態において、前記光架橋用組成物内のタイプII光開始剤の含量は、ポリオレフィン多孔支持体100重量部に対して0.015重量部~0.36重量部であり、且つ、前記溶剤100重量部を基準にして0.01~0.5重量部、0.02重量部~0.45重量部、または0.25重量部~0.4重量部であり得る。
【0200】
前記タイプII光開始剤の含量が上述した範囲を満たす場合、ポリオレフィン多孔支持体を架橋できると同時に、ラジカルの過剰生成によって副反応が発生することをより容易に防止できる。
【0201】
また、本発明の一実施形態において、前記光架橋用組成物内のタイプII光開始剤の含量は、ポリオレフィン多孔支持体100重量部に対して0.015重量部~0.36重量部であり、且つ、前記ポリオレフィン多孔支持体の比表面積を基準にして0.01mg/m~1.0mg/m、0.03mg/m~0.8mg/m、または0.06mg/m~0.7mg/mであり得る。前記タイプII光開始剤の含量が上述した範囲を満たす場合、ポリオレフィン多孔支持体を架橋できると同時に、ラジカルの過剰生成によって副反応が発生することをより容易に防止できる。
【0202】
前記ポリオレフィン多孔支持体の比表面積を基準にしたタイプII光開始剤の含量はNMR分析を通じて測定し得る。
【0203】
本発明の一実施形態において、前記光架橋用組成物は、前記タイプII光開始剤及び前記溶剤を含む光開始剤溶液であり得る。
【0204】
前記光開始剤溶液を前記ポリオレフィン多孔支持体にコーティングする方法の非制限的な例としては、ディップコーティング法、ダイコーティング法、ロールコーティング法、コンマコーティング法、マイクログラビアコーティング法、ドクターブレードコーティング法、リバースロールコーティング法、マイヤーバー(Mayer bar)コーティング法、ダイレクトロールコーティング法などが挙げられる。
【0205】
前記光開始剤溶液を前記ポリオレフィン多孔支持体にコーティングした後の乾燥段階は、当業界で公知の方法が使用可能であり、使用された溶剤の蒸気圧を考慮した温度範囲でオーブンまたは加熱式チャンバを使用してバッチ式または連続式で行い得る。前記乾燥は、前記光開始剤溶液内に存在する溶剤をほとんど除去するものであり、生産性などを考慮して可能な限り速く行われることが望ましく、例えば1分間以下または30秒間以下の時間で行われ得る。
【0206】
本発明のさらに他の実施形態において、前記光架橋用組成物は、無機フィラー、バインダー高分子、前記タイプII光開始剤、及び前記溶剤を含む無機物複合空隙層形成用スラリーであり得る。
【0207】
前記光架橋用組成物が前記無機物複合空隙層形成用スラリーである場合、前記光架橋用組成物がポリオレフィン多孔支持体にコーティングされながらタイプII光開始剤がポリオレフィン多孔支持体の表面に導入され、紫外線の照射時にポリオレフィン多孔支持体を架橋させるとともに、ポリオレフィン多孔支持体の少なくとも一面に無機物複合空隙層を形成することができる。これにより、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体と、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及びバインダー高分子を含む無機物複合空隙層とを含むリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜を製造できる。
【0208】
前記光架橋用組成物として無機物複合空隙層形成用スラリーを使用する場合、前記タイプII光開始剤をポリオレフィン多孔支持体に直接適用するための設備、例えば前記タイプII光開始剤を含む溶液をポリオレフィン多孔支持体に直接コーティング及び乾燥するための設備などを追加的に必要とせず、無機物複合空隙層形成工程を用いてポリオレフィン多孔支持体を架橋させることができる。
【0209】
また、前記無機物複合空隙層形成用スラリーは、ポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖を直接架橋させるために前記タイプII光開始剤の外に他のモノマーなどを必要としないため、タイプII光開始剤が無機フィラー及びバインダー高分子とともに無機物複合空隙層形成用スラリーに含まれても、タイプII光開始剤がポリオレフィン多孔支持体の表面に到達することをモノマーなどが妨害することがなく、タイプII光開始剤をポリオレフィン多孔支持体の表面に十分に導入することができる。
【0210】
一般に、ポリオレフィン多孔支持体自体及び無機フィラーが高い紫外線遮断効果を持つため、無機フィラーを含む無機物複合空隙層を形成してから紫外線を照射すると、ポリオレフィン多孔支持体に達する紫外線の照射光量が減少するおそれがあるが、本発明では無機物複合空隙層が形成された後に紫外線を照射しても、ポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖同士の間が直接的に架橋できる。
【0211】
前記溶剤は、バインダー高分子の種類に応じてバインダー高分子を溶解させる溶媒の役割をしてもよく、バインダー高分子を溶解させずに分散させる分散媒の役割をしてもよい。また、前記溶剤は、前記タイプII光開始剤を溶解させ得る。前記溶剤は、使用しようとするバインダー高分子と溶解度指数が類似し、沸点が低いものを使用し得る。この場合、均一な混合、及び以降の溶剤除去が容易になる。このような溶剤の非制限的な例としては、上述した溶剤についての記載を参照されたい。
【0212】
前記無機フィラー及びバインダー高分子については、上述した内容を参照されたい。
【0213】
前記バインダー高分子は、バインダー高分子の種類に応じて前記溶剤に溶解されるものであってもよく、前記溶剤に溶解されずに分散するものであってもよい。
【0214】
本発明の一実施形態において、前記光架橋用組成物が前記無機物複合空隙層形成用スラリーであるとき、前記タイプII光開始剤としては、2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントン、またはこれらの混合物を含み得る。2-イソプロピルチオキサントンまたはチオキサントンは、透過率の高い長波長でも光架橋が可能である。これにより、無機フィラーとバインダー高分子などを含む無機物複合空隙層形成用スラリーにタイプII光開始剤が含まれても、ポリオレフィン多孔支持体を容易に架橋できる。
【0215】
前記無機物複合空隙層形成用スラリーは、前記バインダー高分子を前記溶剤に溶解または分散させた後、前記無機フィラーを添加し、これを分散させて製造し得る。前記無機フィラーは、予め所定の平均粒径を有するように破砕された状態で添加されてもよく、それとも、前記バインダー高分子が溶解または分散したスラリーに前記無機フィラーを添加した後、前記無機フィラーをボールミル法などを用いて所定の平均粒径を有するように制御しながら破砕して分散させてもよい。このとき、破砕は1~20時間行われ得、破砕された無機フィラーの平均粒径は上述した通りである。破砕方法としては通常の方法が使用可能であって、ボールミル法が使用され得る。
【0216】
本発明の一実施形態において、前記無機物複合空隙層形成用スラリーの固形分の含量は、5重量%~60重量%、または30重量%~50重量%であり得る。前記無機物複合空隙層形成用スラリーの固形分の含量が上述した範囲である場合、コーティング均一性を容易に確保でき、スラリーが流れてムラが発生するかまたはスラリーの乾燥に多大なエネルギーが必要となることを容易に防止することができる。
【0217】
本発明の一実施形態において、前記光架橋用組成物が前記無機物複合空隙層形成用スラリーである場合、前記光架橋用組成物を前記ポリオレフィン多孔支持体にコーティングした後、相分離過程が行われ得る。前記相分離は、加湿相分離または浸漬相分離方式で行われ得る。
【0218】
以下、前記相分離のうち加湿相分離について説明する。
【0219】
まず、加湿相分離は、15℃~70℃の温度範囲または20℃~50℃の温度範囲、及び15%~80%の相対湿度範囲または30%~50%の相対湿度範囲の条件で行われ得る。前記無機物複合空隙層形成用スラリーが乾燥過程を経ながら、当業界で公知の相分離(vapor-induced phase separation)現象によって相転移特性を有するようになる。
【0220】
前記加湿相分離のため、前記バインダー高分子に対する非溶媒が気体状態で導入され得る。前記バインダー高分子に対する非溶媒は、バインダー高分子を溶解させることなく、前記溶剤と部分相溶性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、25℃の条件でバインダー高分子の溶解度が5重量%未満であるものが使用され得る。例えば、前記バインダー高分子に対する非溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、またはこれらのうち二つ以上であり得る。
【0221】
前記相分離のうち浸漬相分離について説明すれば、以下のようである。
【0222】
前記無機物複合空隙層形成用スラリーを前記ポリオレフィン多孔支持体の外側にコーティングした後、前記バインダー高分子に対する非溶媒を含む凝固液に所定の時間だけ浸漬する。これにより、コーティングされた無機物複合空隙層スラリーで相分離現象が誘発されながらバインダー高分子を固化させる。この工程で多孔化した無機物複合空隙層が形成される。その後、水洗することで凝固液を除去し、乾燥する。前記乾燥は、当業界で公知の方法が使用可能であり、使用された溶剤の蒸気圧を考慮した温度範囲でオーブンまたは加熱式チャンバを使用してバッチ式または連続式で行い得る。前記乾燥は、前記スラリー内に存在する溶剤をほとんど除去するものであり、生産性などを考慮して可能な限り速く行われることが望ましく、例えば1分間以下または30秒間以下の時間で行われ得る。
【0223】
前記凝固液としては、前記バインダー高分子に対する非溶媒のみを使用するか、または、前記バインダー高分子に対する非溶媒と上述したような溶剤との混合溶媒を使用し得る。前記バインダー高分子に対する非溶媒と溶剤との混合溶媒を使用する場合は、良好な多孔構造を形成し、生産性を向上させるという点から、凝固液100重量%に対して前記バインダー高分子に対する非溶媒の含量が50重量%以上であり得る。
【0224】
本発明の他の実施形態において、前記前記タイプII光開始剤及び溶剤を含む光架橋用組成物を前記ポリオレフィン多孔支持体の外側にコーティング及び乾燥する段階は、
無機フィラー、第1バインダー高分子、及び分散媒を含む無機物複合空隙層形成用スラリーを前記ポリオレフィン多孔支持体の少なくとも一面にコーティング及び乾燥して無機物複合空隙層を形成する段階と、
第2バインダー高分子、前記タイプII光開始剤、及び前記溶剤を含む多孔性接着層形成用コーティング液を前記無機物複合空隙層の上面にコーティング及び乾燥する段階と、を含み得る。
【0225】
これにより、架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体と、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及び第1バインダー高分子を含む無機物複合空隙層と、第2バインダー高分子を含む多孔性接着層とを含むリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜を製造できる。
【0226】
前記無機フィラーについては、上述した内容を参照されたい。
【0227】
前記分散媒は、第1バインダー高分子の種類に応じて第1バインダー高分子を溶解させる溶媒の役割をしてもよく、第1バインダー高分子を溶解させずに分散させる分散媒の役割をしてもよい。前記分散媒は、使用しようとする第1バインダー高分子と溶解度指数が類似し、沸点が低いものを使用し得る。この場合、均一な混合、及び以降の分散媒の除去が容易になる。
【0228】
本発明の一実施形態において、前記分散媒は水系分散媒であり得る。前記分散媒が水系分散媒である場合、環境にやさしく、無機物複合空隙層を形成してからの乾燥過程で過度な熱量を必要とせず、追加的な防爆設備が要らないため、無機物複合空隙層をより容易に形成することができる。
【0229】
本発明の一実施形態において、前記第1バインダー高分子は、前記溶剤及び後述する前記第2バインダー高分子に対する非溶媒に溶解されないものであり得る。この場合、無機物複合空隙層を形成した後、多孔性接着層を形成するため後述するコーティング液を塗布しても、第1バインダー高分子が溶解されないため、溶剤及び/または第2バインダー高分子に対する非溶媒に溶解された第1バインダー高分子が気孔を塞ぐ現象を容易に防止することができる。
【0230】
本発明の一実施形態において、前記第1バインダー高分子は、水系バインダー高分子であり得る。このとき、前記第1バインダー高分子は、水系溶媒に溶解されるかまたは水系分散媒によって分散するものであり得る。前記第1バインダー高分子が水系分散媒によって分散するものである場合、前記第1バインダー高分子は粒子状であり得る。
【0231】
前記無機物複合空隙層形成用スラリーについては、上述した内容を参照されたい。
【0232】
前記無機物複合空隙層形成用スラリーは、通常の分離膜製造時の乾燥方法によって乾燥され得る。例えば、前記コーティングされたスラリーの乾燥は、空気によって10秒間~30分間、30秒間~20分間、または3分間~10分間行われ得る。上記の時間範囲内で乾燥される場合、生産性を阻害しないながらも、残留溶剤を除去できるという効果を奏する。
【0233】
前記第2バインダー高分子については、上述した内容を参照されたい。
【0234】
前記溶剤は、25℃で前記第2バインダー高分子を5重量%以上、15重量%以上、または25重量%以上溶解させるものであり得る。
【0235】
前記溶剤は、前記第1バインダー高分子に対する非溶媒であり得る。例えば、前記溶剤は、25℃で前記第1バインダー高分子を5重量%未満で溶解させるものであり得る。
【0236】
前記溶剤の種類については、上述した内容を参照されたい。
【0237】
本発明の一実施形態において、前記第2バインダー高分子は、前記多孔性接着層形成用コーティング液100重量%を基準にして3重量%~30重量%、または5重量%~25重量%で含まれ得る。
【0238】
前記タイプII光開始剤が多孔性接着層形成用コーティング液に含まれることで、多孔性接着層形成用コーティング液を前記無機物複合空隙層の上面にコーティングするとき、タイプII光開始剤がポリオレフィン多孔支持体の表面に導入されると同時に多孔性接着層を形成することができる。
【0239】
多孔性接着層形成用コーティング液をコーティングする過程でポリオレフィン多孔支持体が前記溶剤に濡れるが、このとき、前記多孔性接着層形成用コーティング液に含まれたタイプII光開始剤がポリオレフィン多孔支持体の表面に導入され、紫外線の照射時にポリオレフィン多孔支持体の表面に存在するタイプII光開始剤によってポリオレフィン多孔支持体が光架橋され得る。
【0240】
これにより、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の製造方法は、ポリオレフィン多孔支持体を光架橋させるためにポリオレフィン多孔支持体にタイプII光開始剤を直接適用するための設備、例えばタイプII光開始剤を含む溶液をポリオレフィン多孔支持体に直接コーティング及び乾燥するための設備などを追加的に必要とせず、多孔性接着層形成工程を用いてポリオレフィン多孔支持体を光架橋できるという点で、工程を単純化することができる。
【0241】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の製造方法は、ポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖を直接架橋させるためにタイプII光開始剤の外にラジカルを形成するためのモノマーなどの他の構成要素を必要としないため、タイプII光開始剤が多孔性接着層形成用コーティング液に添加されても、タイプII光開始剤がポリオレフィン多孔支持体の表面に到達することを他の構成要素が妨害することがなく、タイプII光開始剤をポリオレフィン多孔支持体の表面に十分に導入することができる。
【0242】
また、一般に、ポリオレフィン多孔支持体自体及び無機フィラーが高い紫外線遮断効果を持つため、無機物複合空隙層及び多孔性接着層を形成してから紫外線を照射すると、ポリオレフィン多孔支持体に達する紫外線の照射光量が減少するおそれがあるが、本発明では少量の紫外線の照射光量でも架橋可能であるため、無機物複合空隙層及び多孔性接着層が形成された後に紫外線を照射しても、ポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖同士が架橋されて直接的に連結できる。
【0243】
本発明の一実施形態において、前記多孔性コーティング層形成用コーティング液は、前記タイプII光開始剤として2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントン、またはこれらの混合物を含み得る。2-イソプロピルチオキサントンまたはチオキサントンは、透過率の高い長波長でも光架橋が可能である。これにより、無機物形成空隙層及び多孔性接着層が形成された後に紫外線を照射しても、ポリオレフィン多孔支持体を容易に架橋できる。
【0244】
本発明の一実施形態において、前記多孔性接着層形成用コーティング液を前記無機物複合空隙層の上面にパターンコーティングすることで、最終的に製造される多孔性接着層にパターンを形成し得る。
【0245】
本発明の一実施形態において、前記多孔性接着層形成用コーティング液が無機物複合空隙層の上面にコーティングされた後、相分離過程が行われ得る。前記相分離は、浸漬相分離方式で行われ得る。
【0246】
前記多孔性接着層形成用コーティング液を前記無機物複合空隙層の上面にコーティングした後、前記第2バインダー高分子に対する非溶媒を含む凝固液に所定の時間だけ浸漬する。これにより、コーティングされた多孔性接着層形成用コーティング液で相分離現象が誘発されながら第2バインダー高分子を固化させる。この工程で多孔性接着層が形成される。その後、水洗することで凝固液を除去し、乾燥する。前記乾燥は、当業界で公知の方法が使用可能であり、使用された溶剤の蒸気圧を考慮した温度範囲でオーブンまたは加熱式チャンバを使用してバッチ式または連続式で行い得る。前記乾燥は、前記多孔性接着層形成用コーティング液内に存在する溶剤をほとんど除去するものであり、生産性などを考慮して可能な限り速く行われることが望ましく、例えば1分間以下または30秒間以下の時間で行われ得る。
【0247】
前記凝固液としては、前記第2バインダー高分子に対する非溶媒のみを使用するか、または、前記第2バインダー高分子に対する非溶媒と上述したような溶剤との混合溶媒を使用し得る。前記第2バインダー高分子に対する非溶媒と溶剤との混合溶媒を使用する場合は、良好な多孔構造を形成し、生産性を向上させるという点から、凝固液100重量%に対して前記第2バインダー高分子に対する非溶媒の含量が50重量%以上であり得る。
【0248】
第2バインダー高分子が固化する過程で第2バインダー高分子が凝縮し、それによってポリオレフィン多孔支持体の表面及び/または内部に第2バインダー高分子が浸透することを防止でき、分離膜の抵抗が増加する現象を防止することができる。また、第2バインダー高分子を含む接着層が多孔化することで分離膜の抵抗が改善できる。
【0249】
前記第2バインダー高分子に対する非溶媒は、25℃で第2バインダー高分子に対する溶解度が5重量%未満であり得る。
【0250】
前記第2バインダー高分子に対する非溶媒は、前記第1バインダー高分子に対しても非溶媒であり得る。例えば、前記第2バインダー高分子に対する非溶媒は、25℃で第1バインダー高分子に対する溶解度が5重量%未満であり得る。
【0251】
本発明の一実施形態において、前記第2バインダー高分子に対する非溶媒は、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0252】
本発明の一実施形態において、前記浸漬は3秒間~1分間行われ得る。浸漬時間が上述した範囲を満たす場合、相分離が適切に起きて無機物複合空隙層と多孔性接着層との間の接着力が確保され、接着層の脱離を防止することができる。
【0253】
本発明の一実施形態において、多孔性接着層形成用コーティング液は、通常の分離膜製造時の乾燥方法によって乾燥され得る。例えば、空気によって10秒間~30分間、30秒間~20分間、または3分間~10分間乾燥され得る。上記の時間範囲内で乾燥される場合、生産性を阻害しないながらも、残留分散媒を除去できるという効果を奏する。
【0254】
このような製造方法によって、無機物複合空隙層と多孔性接着層とが別途の段階を経て形成されることで、多孔性接着層を多様な形態で形成することができる。例えば、多孔性接着層をパターン形態で容易に形成可能である。
【0255】
その後、前記ポリオレフィン多孔支持体に紫外線を照射する。紫外線が照射されることで、ポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖が架橋されて架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体が得られる。
【0256】
紫外線の照射は、紫外線架橋装置を用いて、前記タイプII光開始剤の含量比のような条件を考慮して紫外線の照射時間及び照射光量を適切に調節して行われ得る。例えば、前記紫外線の照射時間及び照射光量は、ポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖が十分に架橋されて目的とする耐熱性を確保でき、且つ、紫外線ランプで発生する熱によって分離膜が損傷しない条件に設定され得る。また、前記紫外線架橋装置に使用される紫外線ランプは、使用するタイプII光開始剤に応じて高圧水銀ランプ、メタルランプ、ガリウムランプなどから適切に選択して使用し得、紫外線ランプの発光波長及び容量は、工程に合わせて適切に選択し得る。
【0257】
本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の製造方法は、一般的な光架橋に使用される光量に比べて著しく少量の紫外線の照射光量だけでも、ポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖を光架橋できるため、量産工程への適用性を高めることができる。例えば、前記紫外線の照射光量は、10~2000mJ/cm、50~1000mJ/cm、または150~500mJ/cmであり得る。
【0258】
本発明の一実施形態において、前記紫外線の照射光量は、Miltec社製の携帯用光量測定器HタイプUVバルブ及びUVパワーパックを使用して測定され得る。Miltec社製のHタイプUVバルブを用いて光量を測定する場合、波長毎にUVA、UVB、UVCの3種類の波長値が得られるが、本発明の紫外線はUVAに該当する。
【0259】
本発明において、前記紫外線の照射光量の測定方法は、UVパワーパックをサンプルと同じ条件で、光源の下、コンベヤー上で通過させ、このときUVパワーパックに示される紫外線光量数値を「紫外線の照射光量」と称する。
【0260】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜を正極と負極との間に介在してリチウム二次電池を製造し得る。
【0261】
前記リチウム二次電池は、円筒形、角形、またはパウチ型などの多様な形状であり得る。
【0262】
前記リチウム二次電池は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、またはリチウムイオンポリマー二次電池などを含み得る。
【0263】
本発明のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜とともに適用される電極は、特に限定されず、当業界で周知の通常の方法によって電極活物質、導電材、及びバインダーを含む電極活物質層が電流集電体に結着した形態で製造され得る。
【0264】
前記電極活物質のうち正極活物質の非制限的な例としては、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物、または、一つまたはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2-x(x=0~0.33)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、LiV、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-x(M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGa、x=0.01~0.3)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn1-x(M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTa、x=0.01~0.1)またはLiMnMO(M=Fe、Co、Ni、CuまたはZn)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn;ジスルフィド化合物;Fe(MoOなどが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0265】
前記電極活物質のうち負極活物質の非制限的な例としては、従来リチウム二次電池の負極に使用される通常の負極活物質が使用可能であり、特にリチウム金属またはリチウム合金、炭素、石油コークス(petroleum coke)、活性化炭素、グラファイトまたはその他の炭素類などのリチウム吸着物質などが使用され得る。
【0266】
正極電流集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがあり、負極電流集電体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケルまたは銅合金、またはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがある。
【0267】
本発明の一実施形態において、負極及び正極で使用される導電材は、それぞれ独立して、通常、活物質層の全体重量を基準にして1重量%~30重量%で添加され得る。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用され得る。
【0268】
本発明の一実施形態において、負極及び正極で使用されるバインダーは、それぞれ独立して、活物質と導電材などとの結合、及び集電体に対する結合を補助する成分であって、通常、活物質層の全体重量を基準にして1重量%~30重量%で添加され得る。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。
【0269】
本発明の一実施形態において、前記リチウム二次電池は、電解液を含み、前記電解液は有機溶媒及びリチウム塩を含むものであり得る。また、前記電解液としては、有機固体電解質、または無機固体電解質などが使用され得る。
【0270】
前記有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用され得る。
【0271】
前記リチウム塩は、前記有機溶媒に溶解され易い物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム、イミドなどが使用され得る。
【0272】
また、充放電特性、難燃性などの改善を目的として、前記電解液に、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加され得る。場合によっては、不燃性を付与するため、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含んでもよく、高温保存特性を向上させるため、二酸化炭酸ガスをさらに含んでもよい。
【0273】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリプロピレンオキサイド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエジテーションリシン(polyagitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが使用され得る。
【0274】
前記無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNI、LiN-LiI-LiOH、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiPO-LiS-SiSなどのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用され得る。
【0275】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び要求物性に応じて電池製造工程における適切な段階で行われ得る。すなわち、電池組み立ての前、または、電池組み立ての最終段階などで行われ得る。
【0276】
本発明の一実施形態において、前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜を電池に適用する工程としては、通常の工程である巻取(winding)以外にも、分離膜と電極との積層(lamination、stack)及び折畳み(folding)工程が適用可能である。
【0277】
本発明の一実施形態において、前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、リチウム二次電池の正極と負極との間に介在され、複数のセルまたは電極を集合させて電極組立体を構成するとき、隣接するセルまたは電極の間に介在され得る。前記電極組立体は、単なるスタック型、ゼリーロール型、スタックフォールディング型、ラミネーションスタック型などの多様な構造を有し得る。
【0278】
以下、本発明の理解を助けるため、実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0279】
実施例1
H-NMR測定時に、高分子鎖に存在する二重結合の個数が1000個の炭素原子当り0.2個であり、酸化防止剤としてIrganox 1010が3000ppm、Irgafos 168が2000ppmで添加された、厚さ9μmのポリエチレン多孔性フィルム(Senior社製、重量平均分子量:600,000、気孔度:50%)をポリオレフィン多孔支持体として用意した。
【0280】
光開始剤として、2-イソプロピルチオキサントン(Sigma Aldrich社製)を用意した。
【0281】
UV光源としては、高圧水銀ランプ(Lichtzen社製の高圧水銀ランプ、LH-250/800-A)を用意した。
【0282】
前記光開始剤をアセトン溶媒に溶解させ、アセトン100重量部を基準にして光開始剤が0.1重量部で含まれた光架橋用組成物を用意した。
【0283】
製造したポリオレフィン多孔支持体を前記光架橋用組成物に浸漬してから取り出し、多孔支持体の表面に光架橋用組成物が残留しないようにバーを用いてコーティング液をカットしながら、前記光開始剤の含量がポリオレフィン多孔支持体100重量部に対して0.073重量部になるようにして乾燥した。
【0284】
次いで、前記光架橋用組成物がコーティングされたポリオレフィン多孔支持体の上面に、積算光量、すなわちUVの照射光量が500mJ/cmになるようにUVを照射した。このとき、UVの照射強度(intensity)はUV光源の80%にした。
【0285】
これにより、高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を有する架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体を取得した。
【0286】
実施例2
光開始剤として2-イソプロピルチオキサントンをアセトン100重量部を基準にして0.05重量部になるように添加して光架橋用組成物を用意した後、製造したポリオレフィン多孔支持体を前記光架橋用組成物に浸漬してから取り出し、多孔支持体の表面に光架橋用組成物が残留しないようにバーを用いてコーティング液をカットしながら、前記光開始剤の含量がポリオレフィン多孔支持体100重量部に対して0.036重量部になるようにしたことを除き、実施例1と同様に架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体を取得した。
【0287】
実施例3
光開始剤としてベンゾフェノン(Sigma Aldrich社製)をアセトン100重量部を基準にして0.1重量部になるように添加して光架橋用組成物を用意した後、製造したポリオレフィン多孔支持体を前記光架橋用組成物に浸漬してから取り出し、多孔支持体の表面に光架橋用組成物が残留しないようにバーを用いてコーティング液をカットしながら、前記光開始剤の含量がポリオレフィン多孔支持体100重量部に対して0.073重量部になるようにしたことを除き、実施例1と同様の方法で架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体を取得した。
【0288】
比較例1
H-NMR測定時に、高分子鎖に存在する二重結合の個数が1000個の炭素原子当り0.2個である厚さ9μmのポリオレフィン多孔支持体としてのポリエチレン多孔性フィルム(Senior社製、重量平均分子量:600,000、気孔度:50%)に如何なる処理もしなかった。
【0289】
比較例2
光開始剤として、2-イソプロピルチオキサントンの代りに、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(イルガキュア819)を使用したことを除き、実施例1と同様にポリオレフィン多孔支持体を取得した。
【0290】
比較例3
光開始剤として2-イソプロピルチオキサントンの代りに、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(イルガキュア819)がアセトン100重量部を基準にして0.1重量部になるように、トリス(2-アクリルオキシエチル)イソシアヌレート(TEICTA、Sigma Aldrich社製)がアセトン100重量部を基準にして0.3重量部になるように添加して光架橋用組成物を用意した後、製造したポリオレフィン多孔支持体を前記光架橋用組成物に浸漬してから取り出し、多孔支持体の表面に光架橋用組成物が残留しないようにバーを用いてコーティング液をカットしながら、前記フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドの含量がポリオレフィン多孔支持体100重量部に対して0.073重量部、トリス(2-アクリルオキシエチル)イソシアヌレートが0.219重量部で存在するようにしたことを除き、実施例1と同様にポリオレフィン多孔支持体を取得した。
【0291】
評価例1:ポリオレフィン多孔支持体の電子スピン共鳴(ESR)スペクトルピークの評価
実施例1~3及び比較例1~3で製造したポリオレフィン多孔支持体に対し、紫外線を照射していない場合、及び500Wの紫外線を照射したときの電子スピン共鳴スペクトルをそれぞれ図3図8に示した。
【0292】
図3図8において、ポリオレフィン多孔支持体30mgに500Wの紫外線照射したときの電子スピン共鳴スペクトルをAで示し、分離膜に紫外線を照射していない場合を(B)で示した。
【0293】
また、実施例1~実施例3で製造した架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の電子スピン共鳴スペクトルについて下記の表1に示した。
【0294】
500Wの紫外線の照射時の電子スピン共鳴スペクトルは、下記の条件で測定した。
【0295】
測定装置:日本電子製ESR装置JES-FA100/周波数9215MHz/出力0.998mW/掃引時間30秒
【0296】
【表1】
【0297】
図3図5から、実施例1~実施例3で製造した架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の場合、500Wの紫外線を照射した場合、2.010~2.030のg値で第1ピークが検出されることを確認できる。また、1.990~2.009のg値で第2ピークが検出されることを確認できる。第2ピークの面積を積分して求めた第2ピークの面積に対する、第1ピークの面積を積分して求めた第1ピークの面積の比率は10%~200%であった。
【0298】
これらから、実施例1~3で製造した架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体はポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖からラジカルが形成されたことを確認できる。
【0299】
一方、図6に示されたように、比較例1のポリオレフィン多孔支持体ではピークが発生しなかった。
【0300】
図7及び図8から確認できるように、比較例2及び3で製造したポリオレフィン多孔支持体は、500Wの紫外線を照射した場合、1.990~2.009のg値でピークが検出されたが、2.010~2.030のg値ではピークが検出されていない。
【0301】
これらから、比較例1~3で製造したポリオレフィン多孔支持体は、ポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖からラジカルが形成されていないことを確認できる。
【0302】
評価例2:ポリオレフィン多孔支持体の物性の評価
実施例1~3及び比較例1~3で製造したポリオレフィン多孔支持体に対し、通気度、気孔度、坪量の変化率、電気抵抗、架橋度、及びメルトダウン温度を測定した結果を表2に示した。
【0303】
(1)通気度の評価
通気度(ガーレー)は、ASTM D726-94方法によって測定した。ここで使用されるガーレーは、空気の流れに対する抵抗であって、ガーレーデンソメーターによって測定される。ここで説明された通気度の値は、100mlの空気が12.2 in HOの圧力下で、ポリオレフィン多孔支持体1inの断面を通過するのにかかる時間(秒)、すなわち通気時間として示す。
【0304】
(2)気孔度の評価
気孔度(porosity)は、ポリオレフィン多孔支持体の横長/縦長/厚さを測定して体積を求め、重量を測定し、その体積においてポリオレフィン多孔支持体が100%を占めているときの重量に対する比率で計算して測定した。
【0305】
気孔度(%)=100×(1-ポリオレフィン多孔支持体のサンプルの重量/(ポリオレフィン多孔支持体のサンプル横長(50mm)×縦長(50mm)×厚さ×分離膜の密度))
【0306】
(3)坪量の変化率の評価
坪量(g/m)は、ポリオレフィン多孔支持体の縦横がそれぞれ1mであるサンプルを用意し、その重量を測定して評価した。
【0307】
坪量の変化率は、下記の式で計算し得る。
【0308】
坪量の変化率(%)=[(架橋後のポリオレフィン多孔支持体の坪量)-(架橋前のポリオレフィン多孔支持体の坪量)]/(架橋前のポリオレフィン多孔支持体の坪量)×100
【0309】
ここで、比較例1の場合、架橋が起きていないため、坪量の変化率が0%である。
【0310】
(4)電気抵抗の評価
電気抵抗は、実施例1~3及び比較例1~3で製造したポリオレフィン多孔支持体を分離膜として使用してコインセルを製作し、前記コインセルを常温で1日間放置した後、前記ポリオレフィン多孔支持体の抵抗をインピーダンス測定法で測定した。コインセルは下記のように製作した。
【0311】
負極の製造
負極活物質として人造黒鉛と、導電材としてデンカブラック(carbon black)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを75:5:20の重量比で混合し、溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)を添加して負極スラリーを製造した。
【0312】
前記負極スラリーを3.8mAh/cmのローディング量で銅集電体にコーティング及び乾燥して負極を用意した。
【0313】
正極の製造
正極活物質としてLiCoOと、導電材としてデンカブラックと、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを85:5:10の重量比で溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)に添加して正極活物質スラリーを用意した。前記正極活物質スラリーをシート状のアルミニウム集電体上にコーティングし乾燥して、最終の正極ローディング量が3.3mAh/cmになるように正極活物質層を形成した。
【0314】
コインセルの製造
上記のようにして製作された負極と正極との間に、上述した実施例及び比較例で製造したポリオレフィン多孔支持体を分離膜として介在し、非水電解液(1M LiPF、エチレンカーボネート(EC)/プロピレンカーボネート(PC)/ジエチルカーボネート(DEC))(体積比=3:3:4)を注入してコインセルを製作した。
【0315】
(5)架橋度の評価
架橋度は、実施例1~3及び比較例1~3で製造したポリオレフィン多孔支持体をASTM D2765に従って135℃のキシレン溶液に浸漬して12時間沸騰させた後、残余重量を測定し、最初重量に対する残余重量の百分率で計算した。
【0316】
(6)メルトダウン温度の評価
メルトダウン温度は、ポリオレフィン多孔支持体の機械方向におけるサンプルを採取した後、熱機械分析方法(TMA)で測定した。具体的には、TMA装置(TAインスツルメント製、Q400)に幅4.8mm×長さ8mmのサンプルを入れて0.01Nの張力を加えた状態で、昇温速度5℃/分で温度を30℃から220℃まで変化させた。温度の上昇とともに、サンプルの長さ変化が伴い、長さが急増して機械方向でサンプルが切れる温度を測定してこれをメルトダウン温度にした。
【0317】
【表2】
【0318】
表2から確認できるように、実施例1~実施例3で製造した架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体の場合、メルトダウン温度が160℃以上であった。これは、2-イソプロピルチオキサントンとベンゾフェノンのようなタイプII光開始剤を使用し、ポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖の直接的な光架橋が可能であったためである。
【0319】
一方、比較例1の場合、ポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖同士の間の直接的な光架橋が起こらず、メルトダウン温度が150℃にも達しなかった。
【0320】
比較例2、3で製造したポリオレフィン多孔支持体の場合、メルトダウン温度が160℃にならなかった。これは、タイプII光開始剤を使用しないことから、ポリオレフィン多孔支持体内の高分子鎖の直接的な光架橋がほとんど起こらなかったためである。
【0321】
評価例3:ポリオレフィン多孔支持体の貯蔵弾性率及び損失弾性率の測定
実施例1、2、及び比較例1で製造したポリオレフィン多孔支持体の貯蔵弾性率及び損失弾性率を測定した結果を表3に示した。
【0322】
実施例1、2、及び比較例1で製造したポリオレフィン多孔支持体を用いて直径25mm×厚さ1mmの円形の平行板(parallel-plate)状のサンプルを用意した。用意したサンプルで、レオロジー特性測定装置(ARES-G2、TAインスツルメント)を用いて190℃の温度条件で周波数掃引(frequency sweep)テストを行い、ポリオレフィン多孔支持体を構成するポリオレフィンに対する、1)振動数1rad/sでの貯蔵弾性率(G’、storage modulus)、2)1rad/sでの損失弾性率(G’’、loss modulus)、及び3)振動数10-1~1rad/sでの貯蔵弾性率(G’、storage modulus)勾配をそれぞれ測定した。その結果を下記の表3に示した。測定されたポリオレフィン多孔支持体を構成するポリオレフィンのG’、G’’から、このようなポリオレフィンから構成されたポリオレフィン多孔支持体の流動性を確認できる。
【0323】
【表3】
【0324】
表3を参照すると、ポリオレフィン多孔支持体の振動数が1rad/s以下の範囲で、前記損失弾性率(G’’)(B)に対する前記貯蔵弾性率(G’)(A)の比(A/B)が2以上であるか、または、前記振動数に対する貯蔵弾性率(G’)(A)曲線の勾配が0.05~0.4を満足する実施例1及び2で製造された架橋構造含有ポリオレフィン多孔支持体が、比較例1のポリオレフィン多孔支持体に比べて著しく高い被膜温度を示していることから、熱的安定性が大きく向上したことが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】