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特表2024-519069高弾性率を有する膜を堆積させるための新規な前駆体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】高弾性率を有する膜を堆積させるための新規な前駆体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20240426BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
H01L21/316 X
C23C16/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571659
(86)(22)【出願日】2022-05-16
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 US2022029471
(87)【国際公開番号】W WO2022245742
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/190,650
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ロバート エントリー
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー リン アン アクティル
(72)【発明者】
【氏名】シンチエン レイ
(72)【発明者】
【氏名】マンチャオ シアオ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ピー.スペンス
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ゴードン リッジウェイ
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド エヌ.ブルティス
【テーマコード(参考)】
4K030
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA06
4K030AA09
4K030AA14
4K030BA44
4K030CA04
4K030FA01
4K030JA10
4K030JA12
4K030LA15
5F058BA20
5F058BC02
5F058BC04
5F058BD04
5F058BD06
5F058BF07
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF31
(57)【要約】
向上した機械特性を備えた高密度のオルガノシリカ膜の製造方法であって、本方法は、以下の工程を含んでいる:反応チャンバ内に基材を準備すること、反応チャンバ中にヒドリドジメチルアルコキシシランを含むガス状組成物を導入すること、および反応チャンバ中でヒドリドジメチルアルコキシシランを含むガス状組成物にエネルギーを加えて、ヒドリドジメチルアルコキシシランを含むガス状組成物の反応を誘起させて、基材上にオルガノシリカ膜を堆積させること、ここでオルガノシリカ膜は、約2.70~約3.2の誘電率、約6~約32GPaの弾性率、およびXPSによって測定された約10~約35の原子%炭素を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノシリカ膜の堆積方法であって、
反応チャンバ内に基材を準備すること、
前記反応チャンバ中に、式Iで与えられる構造を有するヒドリドジメチルアルコキシシラン、
H(Me)2SiOCH2R (I)
式中、Rは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、2-ペンチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルからなる群から選択される、
を含むガス状組成物を導入すること、ならびに、
前記反応チャンバ中で前記ガス状組成物にエネルギーを加えて、前記ヒドリドジメチルアルコキシシランの反応を誘発させ、それによって前記基材上に前記オルガノシリカ膜を堆積させること、
を含む、方法。
【請求項2】
式Iの前記ヒドリドジメチルアルコキシシランを含む前記ガス状組成物が、ハライド化合物、水、金属、酸素含有不純物、窒素含有不純物およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1種もしくは2種以上の不純物を実質的に含まない、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記基材上に堆積されたままの前記オルガノシリカ膜が、組成Siであって、v+w+x+y=100%であり、Vは10~35原子%であり、Wは10~65原子%であり、xは10~45原子%であり、そしてyは10~50原子%である組成、赤外分光法によって測定された少なくとも10の相対SiCHSi密度、ならびに少なくとも50の、XPSによる膜中の炭素の割合によって割り算された相対SiCHSi密度、を有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記オルガノシリカ膜が、約2.70~約3.50の誘電率、約6~約36GPaの弾性率、および約18~約40原子%のXPS炭素含有量を有する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記オルガノシリカ膜が、少なくとも4MV/cmの電界において10-9A/cm以下の漏洩電流を有する、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記ヒドリドジメチルアルコキシシランを含む前記ガス状組成物が、硬化剤を含まない、請求項1記載の方法。
【請求項7】
化学気相堆積法である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
プラズマ促進化学気相堆積法である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記ヒドリドジメチルアルコキシシランを含む前記ガス状組成物が、O、NO、NO、NO、CO、CO、水、H、オゾン、アルコール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の酸化剤を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記ヒドリドジメチルアルコキシシランを含む前記ガス状組成物が、酸化剤を含まない、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記反応チャンバが、前記のエネルギーを加える工程の間に、He、Ar、N、Kr、Ne、およびXeからなる群から選択される少なくとも1種のガスを含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記反応チャンバが、前記のエネルギーを加える工程の間に、O、NO、NO、NO、CO、CO、水、H、オゾン、アルコール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の酸化剤を更に含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記オルガノシリカ膜が、約5nm/分~約400nm/分の速度で堆積される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記オルガノシリカ膜が、IR分光法によって測定された、約10~約30の相対架橋メチレン(SiCHSi)密度の値を有する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記オルガノシリカ膜が、XPSによって測定された、少なくとも50の、膜中の炭素の割合によって割り算された相対SiCHSi密度の値を有する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記ガス状化学組成物を導入する前記の工程および前記ガス状組成物にエネルギーを加える前記の工程の間に、前記基材の温度が、約300~400℃の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
誘電体膜の気相堆積用の組成物であって、前記組成物が、式I、
H(Me)2SiOCH2R (I)
式中、Rは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、2-ペンチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルからなる群から選択される、
で与えられる構造を有するヒドリドジメチルアルコキシシランを含む、組成物。
【請求項18】
前記組成物が、ハライド化合物、水、酸素含有不純物、窒素含有不純物および金属からなる群から選択される1種もしくは2種以上の不純物を実質的に含まない、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、クロリド化合物を実質的に含まず、もし存在する場合には、ICによって測定されて5ppm以下の濃度である、請求項17記載の組成物。
【請求項20】
前記ヒドリドジメチルアルコキシシランが、ジメチル-メトキシシラン(R=H)、ジメチル-エトキシシラン(R=Me)、ジメチル-n-プロポキシシラン(R=Et)、ジメチル-n-ブトキシシラン(R=n-プロピル)、ジメチル-2-メチル-プロポキシシラン(R=イソ-プロピル)、ジメチル-n-ペントキシシラン(R=n-ブチル)、ジメチル-2-メチル-ブトキシシラン(R=sec-ブチル)、ジメチル-3-メチル-ブトキシシラン(R=イソ-ブチル))、ジメチル-2,2-ジメチル-プロポキシシラン(R=tert-ブチル)、ジメチル-n-ヘキシルオキシシラン(R=n-ペンチル)、ジメチル-2-メチル-ペントキシシラン(R=2-ペンチル)、ジメチル-3,3-ジメチル-ブトキシシラン(R=ネオ-ペンチル)、ジメチル-1-シクロペンチル-メトキシシラン(R=シクロペンチル)、ジメチル-1-シクロヘキシル-メトキシシラン(R=シクロヘキシル)からなる群から選択される、請求項17記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに記載されているのは、新規な種類のヒドリドジメチルアルコキシランを前駆体として用いた高密度のオルガノシリカ誘電体膜の形成のための組成物および方法である。より具体的には、ここに記載されているのは、k≧2.5、好ましくはk≧2.7の誘電率を有する高密度膜の形成のための組成物および化学気相堆積(CVD)法であり、ここで、堆積されたままの膜は、従来技術の前駆体から作られた膜と比較して、誘電率の同じ値で、絶縁破壊における高電界、低漏洩電流、プラズマ誘起損傷(PID)に対する強い耐性および高い機械的性質を有している。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス産業では、絶縁層として、誘電体材料が、集積回路(IC)の回路と部品および関連する電子装置の間に用いられる。マイクロ電子装置(例えば、コンピュータチップ)の速度とメモリ記憶容量を向上させるために、ラインの寸法が縮小されている。ライン寸法が減少するに従って、中間層誘電体(ILD)への絶縁要求は、遥かにより厳密になってきている。空間の縮小で、RC時定数を最小化するように、より低い誘電率が必要とされ、ここでRは、導電線の抵抗、Cは絶縁性誘電体中間層の静電容量である。静電容量(C)は間隔に反比例し、そして中間層誘電体(ILD)の誘電率(k)に比例する。SiHまたはTEOS(Si(OCHCH、テトラエチルオルソシリケート)およびOから生成された慣用のシリカ(SiO)CVD誘電体膜は、約4.0以上の誘電率kを有している。産業が、より低い誘電率を有するシリカ系CVD膜を生成するように試みてきた幾つかの方法が存在しており、最も成功しているのは有機基での絶縁酸化ケイ素膜のドーピングであり、約2.7~約3.5の範囲の誘電率を与える。このオルガノシリカガラス(またはlow-k膜)は、典型的には、オルガノシリコン前駆体、例えばメチルシランまたはシロキサン、および酸化剤、例えばOもしくはNOから、高密度膜(密度約1.5g/cm)として堆積される。オルガノシリカガラスは、ここではOSGとして表される。より高い装置密度とより小さい寸法を有して誘電率または「k」値が2.7よりも小さくなるにつれて、業界は、高密度膜のために好適なほとんどのlow-k組成物を使い果たしてきており、そして向上した絶縁特性のために、種々の多孔質材料に向かってきている。不幸にも、酸化ケイ素ネットワーク中への有機基の組み込みおよび/または多孔性の導入は誘電率を低下させる一方で、このことはまた、膜の機械的性質を有意に低下させる。実際に、米国特許第8,137,764号および米国特許第9,922,818号に教示されているように、高密度low-k膜の機械的性質は、low-k酸化ケイ素系ネットワーク中の有機基のパーセントが増加するにつれて、遥かに速く低下する(図1)。同様に、low-k酸化ケイ素系ネットワーク中の多孔率のパーセントが増加するにつれて、多孔質low-k膜の機械的性質は、誘電率よりも遥かに速く低下する。しかしながら、ラインの最終工程の最下位のレベルにおける最も進歩した技術ノードでは、最も高い可能性がある機械的性質を有する高密度low-k材料が必要とされる。チップパッケージングとCMPに利益をもたらすことに加えて、low-k膜の向上した機械的性質は、パターン化されたフィーチャのラインエッジの粗さを減少させ、パターンの崩壊を減少させ、そしてより大きな相互接続内の内部機械的応力を与えて、エレクトロマイグレーションによる故障を減少させる。向上した機械的性質への要求は、進歩した技術ノードにおいて、特にはラインの最終工程における最下層のレベルでは、ピッチが減少するにつれてより重要になってきている。この要求は、比較的に高い誘電率(k<3.5)および最も高い可能性のある機械的性質を有する新規なlow-k膜への探求に駆り立てる。
【0003】
low-k膜の機械的性質を向上させる多数の方法が報告されてきている。それらとしては、限定されるものではないが、熱処理(米国特許第6,846,515号)、広帯域紫外線(UV)硬化(米国特許第8,951,342号)、および硬化剤の使用(米国特許第8,137,764号)が挙げられる。しかしながら、機械的性質を向上させる最も単純な方法は、優れた機械的性質を有するlow-k膜の堆積を固有にもたらすLow-k前駆体を使用することである。例えば、米国特許第6,846,515号では、ジエトキシメチルシラン(DEMS(登録商標))前駆体が3.5以下のkを有するlow-k膜を堆積させることが示されており、これは、代替の前駆体トリメチルシラン(TMS)およびジメチルジメトキシシラン(DMDMOS)と比較して、ヤング率とナノインデンテーション硬度によって示されるように、予想外に優れた機械的性質を有している。このことは、DEMS(登録商標)系の膜が、誘電率の同じ値において、他の膜に対して、より高い酸素含有率とより低い炭素含有量を有していることに起因すると考えられた。増加した酸素含有率は、より良好な三次元ネットワークの結合性を、そして従って向上した機械的性質をもたらすと考えられる。付加的な後堆積工程なしに(すなわち、堆積されたままの膜で)、優れた機械的性質を有するlow-k膜の堆積を固有にもたらす単一のlow-k前駆体の使用はまた、処理量が最大化され(後堆積工程が必要とされない)、そして追加的な機器(すなわち、UVアニールチャンバ)が必要とされないので、所有者の最も低い費用を備えた単純化されたプロセス体系をもたらす。
【0004】
高密度のlow-k膜については、low-k前駆体中のケイ素-アルコキシ基(例えば、Si-OCH、Si-OCHCHなど)の数が増加し、そしてこの前駆体中のケイ素-炭素結合(例えば、Si-CH、Si-CHCHなど)の数が減少するにつれて、堆積された膜の誘電率と機械的性質が増加し、そしてこの膜の炭素含有量が低下することがまた理解されている。従って、前駆体中に4つのケイ素-アルコキシ基を有し、そしてケイ素原子当たりにケイ素-炭素結合を含まない前駆体(例えば、TEOS)を用いて堆積された膜は、ケイ素当たりに3つのケイ素-アルコキシ基およびケイ素当たりに1つ以下のケイ素-炭素結合を含む前駆体(例えば、トリエトキシシランもしくはTESおよびメチルトリエトキシシランもしくはMTES)を用いて堆積された膜よりも、より高い誘電率、より大きな機械的性質およびより低い炭素含有量を有しており、それは、次には、ケイ素当たりに2つのケイ素-アルコキシ基と1つもしくは2つのケイ素-炭素結合を含む前駆体(例えば、DEMS(登録商標)およびDMDMOS)を用いて堆積された膜よりも、より高い誘電率、より高い機械的性質およびより低い炭素含有量を有しており、それは、次には、ケイ素当たりにただ1つのケイ素-アルコキシ基と3つ以下のケイ素-炭素結合を有する前駆体(例えば、ジエチルイソプロポキシメチルシラン)を用いて堆積された膜よりも、より高い弾性率を有している。実際に、米国特許第8,137,764号では、堆積プロセスの間に2種の異なる前駆体の制御された混合物を用いて膜を堆積させることによって、高密度のlow-k膜の機械的性質を高めるように、この概念が用いられた。膜の機械的性質を増大させるために選択された1種の前駆体(硬化性添加剤)は、ケイ素原子当たりに3~4個のケイ素-酸素結合を含み、そしてケイ素-炭素結合を含まない、例えばTEOSおよびトリエトキシシラン(TES)。第2の前駆体、low-k前駆体は、1つもしくは2つ以上のケイ素-炭素結合を含む、例えばDEMS(登録商標)またはDMDMOS。代表的な例は、TES(50%)とDEMS(登録商標)(50%)の混合物を用いたlow-k膜の堆積である。TESとDEMS(登録商標)の混合物を用いて堆積された、結果として得られるk=3.17の膜は、DEMS(登録商標)のみを用いて堆積された膜よりも(1.58GPa)、誘電率の同様の値で、より高い硬度(1.76GPa)を有していた。TESとDEMS(登録商標)の混合物から堆積されたlow-k膜の、より高い硬度は、この膜の、DEMS(登録商標)からのみ堆積された膜に対する、より高い酸素含有量、およびおそらくはより低い炭素含有量に起因すると考えられた。増加した酸素含有量、および減少された炭素含有量は、より良好な三次元寸法のネットワーク結合性、そして従って向上した機械的性質をもたらすと思われる。
【0005】
ケイ素-炭素結合を含むlow-k前駆体と硬化剤の組み合わせを用いて堆積されたlow-k膜は、向上した機械的性質を有している一方で、この戦略は、膜の炭素含有量を低下させ、そしてより大きなプラズマもしくはプロセス誘起損失(PID)をもたらす。low-k膜のプラズマもしくはプロセス誘起損失は、プラズマ暴露の間の、特にはエッチングおよびフォトレジスト剥離プロセス(例えば、NHを基にした剥離プロセス)の間の炭素の除去によって起こる。炭素枯渇は、プラズマ損傷領域の、疎水性から親水性への変化を引き起こす。親水性のプラズマ損傷領域の希HF系の湿式の化学的後プラズマ処理への暴露は、この損傷された領域の迅速な溶解、および膜のkの増加をもたらす(疎水性の損傷された層が水分の更新を増加させる)。パターン化されたlow-k膜(エッチングおよびフォトレジスト剥離プロセスを用いて作られた)では、希HF系後プラズマ処理への暴露は、プロファイルの浸食がもたらされる。プロファイルの浸食は、内に凹んだフィーチャ(結果として金属被覆欠陥をもたらす)および金属ラインの間の低下した間隔(結果として増加した静電容量)の形成をもたらす可能性がある。このことは、プロファイル浸食の深さが、論理的な1/2ピッチの有意な割合である可能性がある進歩した論理素子において、特に問題である。一般に、low-k膜の炭素含有量が大きくなればなるほど、PIDの深さはより小さくなる。プロセス誘起損失および結果としてもたらされるLow-k膜のプロファイル浸食は、重大な問題であり、装置の製造者は、low-k材料をULSI相互接続に組み込む場合には、特には、ラインの最終工程の最も低いレベルでは、克服しなければならない。従って、最も高い可能性がある機械的強度とPIDへの最も高い耐性の両方を備えたlow-k膜を堆積することが望ましい。不幸にも、それらの2つの因子は、しばしば互いに反対に働き、より高い炭素含有量はPIDに対するより大きな耐性を示す一方で、より高い炭素含有量は、通常は酸化物ネットワーク内により多くの末端ケイ素メチル基(Si-MeまたはSi(CH)の組み込みをもたらし、膜の機械的強度を低下させる(図1)。
【0006】
分子動力学(MD)シミュレーションは、low-k膜(すなわち、SiOCHマトリックス)中に組み込まれた炭素の種類が、その機械的性質に有意に影響を与える可能性があることを示している。特には、MDシミュレーションは、炭素がジシリルメチレン基(-SiCHSi-)として組み込まれたlow-k膜は、炭素が末端メチル基(-SiCH)として組み込まれたlow-k膜よりも、より高い弾性率を有することを示している。架橋炭素原子は、三次元ネットワーク結合性を維持するが、一方で、末端炭素原子は三次元ネットワーク結合性を中断させる。三次元ネットワーク結合性を中断することは、low-k膜の低下した機械的性質をもたらす。米国特許第7,892,648号では、low-k膜中に架橋炭素基、例えば-SiCHSi-または-SiCHCHSi-を組み込むための1つの方法は、-SiCHSi-または-SiCHCHSi-官能基を含むカルボシラン前駆体を用いて、プラズマ促進化学気相堆積(PECVD)プロセスによって、low-k膜を堆積させることが教示されている。あるいは、架橋カルボシラン前駆体は、現存するPECVDプロセスに加えられることができる。しかしながら、この取り組みに関連しては、3つの重大な制限がある。第1の制限は、カルボシラン前駆体は高価であることである。第2の制限は、架橋カルボシラン前駆体は、2つのケイ素基を有することからの増加された分子量のために、非常に高い沸点を有していることである。この高められた沸点は、化学前駆体を、上記供給ラインまたはプロセスポンプ排気菅中で凝縮させることなく、化学前駆体を反応チャンバ中に気相薬品として供給することを困難にさせることによって製造プロセスに悪影響を与える可能性がある。第3の制限は、高価な架橋カルボシラン前駆体を現存する堆積プロセスに加えることは、堆積プロセスの複雑性を増大させることである。例えば、この取り組みを用いて多孔質low-k膜中の-SiCHSi-または-SiCHCHSi-の密度を増加させるには、3つの液体供給ラインが必要とされる:1つの液体供給ラインが構造形成剤のために必要であり、1つの液体供給ラインがポロゲンのために必要であり、そして1つの液体供給ラインが加えられたカルボシランのために必要とされる。上記のように、多くのカルボシランはまた、低い蒸気圧を有する高い分子量の化合物であり、そして末端基のために、非常に可燃性である可能性がある。
【0007】
米国特許出願公開第2011/10113184号明細書には、-SiCHSi-の増加した密度を有し、そしてk=2.4~k=2.8の範囲の誘電率を有する絶縁膜を、PECVDプロセスによって堆積させるために用いられることができるlow-k前駆体の種類が開示されている。米国特許出願公開第2011/10113184号明細書では、low-k膜がSi系前駆体を用いて堆積されており、ここでは少なくとも1つの分岐炭化水素基R(例えば、イソブチル、イソペンチル、ネオペンチル、またはネオへキシル基)が、low-k前駆体のケイ素原子に、メチレン基(SiCHR)またはエチレン基(SiCHCHR)を介して結合されている。この発明者らは、堆積プロセスの間に、炭化水素基Rを-SiCHSi-または-SiCHCHSi-中のメチレンもしくはエチレン基へと結合する結合のプラズマ解離によって、膜内に高密度のSiCHSi基を形成していると主張している。この取り組みには4つの重大な制限がある。第1の制限は、前駆体中への大きな分岐アルキル基の組み込みは費用が掛かることである。第2の制限は、前駆体中への1つもしくは2つ以上の大きな分岐アルキル基の組み込みは、通常は、大きな分岐アルキル基のための増大した分子量に因る非常に高い沸点を有する前駆体をもたらすことである。高められた沸点は、化学前駆体が蒸気供給ラインまたはプロセスポンプ排気菅中で凝縮することなく、化学前駆体を反応チャンバ中に気相として供給することを困難にさせることによって製造プロセスに悪影響を与える可能性がある。第3の制限は、米国特許出願公開第2011/10113184号明細書中に報告されたlow-k膜中のSiCHSi基の高い密度は、堆積された膜がUVアニールされた後に形成されるように見えることである。従って、low-k膜中のSiCHSi基の形成は、前駆体の選択よりも、UV硬化による(すなわち、堆積プロセスの後の後処理)によると思われる。Low-k膜の紫外線照射の暴露によるSiCHSi基の密度の増加は、文書でよく証明されていることが理解されている。第4の制限は、この取り組みにおいて報告されている誘電率のほとんどの値は低く、2.8以下である。適度な機械的性質を備えた高密度のLow-k膜で達成可能な最も低い誘電率は、約2.7~2.8であることが十分に確立されている。従って、米国特許出願公開第2011/10113184号明細書に開示された取り組みは、後堆積処理(すなわち、UVアニール)なしでの高密度low-k膜の堆積に関するものではなく、多孔質low-k膜を生成させるための係留ポロゲンの取り組みにより類似している。
【0008】
より良好な固有の電気的性質、例えばより低い漏洩電流密度および絶縁破壊時のより高い電界を備えたlow-k膜は、進歩した集積回路の製造に好ましい:最小限の固有の電気的要求としては典型的に、1MV/cmの電界強度における1×10-9A/cmの漏洩電流密度および4MV/cm以上の絶縁破壊時の電界が挙げられる。寸法が縮小するにつれて(すなわち、ムーアの法則に従う装置のスケールにつれて)装置構造の破壊電界は低下するので、絶縁破壊時に可能な限り最も高い電界を有するlow-k材料が好ましい(>4MV/cm)。このことは、小さな寸法が高い電界強度をもたらす可能性があるラインの最終工程(BEOL)の最も低いレベルにおいて特に重要である。また、低い漏洩電流水準が集積回路に良好な信頼性を確実にすることが報告されてきている。BEOLの最も低いレベルにおける小さな寸法が高い電界強度をもたらすことができるので、low-k膜がより高い電界強度(≧4MV/cm)における最も低い可能性がある漏洩電流を示すことが特に重要である。不幸にも、固有に低い漏洩電流密度を有するlow-k膜を堆積することに関連して多くの課題がある。例えば、おそらく酸素欠損に関連した欠陥の形成により、高い漏れ電流密度をもたらすための、単一の構造形成剤前駆体の使用が報告されている。更に、低漏洩電流密度はまた、後堆積処理、例えばUVアニールに依存する可能性がある。例えば、堆積されたままのlow-k膜は、UVアニーリング後の同じ膜よりも常に高い漏洩電流密度を有することが報告されている。UVアニールは、装置コスト、プロセスの複雑性を増大させ、そして生産量を低下されるので、このことは重大な制限である。従って、単一の構造形成剤前駆体から堆積された、より良好な固有の電気的性質、特には高い電界強度(>2MV/cm)、および最も高い可能性のある絶縁破壊電界(≧4MV/cm)において、特には最も低い可能性のある漏洩電流密度を備えた、堆積されたままのlow-k膜への要求が存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、ラインの最終工程の最下位のレベルでは、高い機械的強度、プラズマ誘起損傷に対する強い耐性、高い電界強度(≧4MV/cm)において1×10-9A/cm以下の漏洩電流密度、および誘電率の所定の値(k≦3.5)において高い絶縁破壊電圧(>5MV/cm)を有する高密度low-k膜を堆積するのに用いられることができる揮発性の構造形成剤low-k前駆体に対する要求が存在する。これらの前駆体は、蒸気供給ラインまたはプロセスポンプ排気菅中で凝縮することなしに、反応チャンバ中への気相としての供給を容易にする、高い蒸気圧(低い分子量)を有することが必要である。更には、そのような前駆体から堆積された膜は、膜の機械的性質または膜の電気的性質を向上させるための後堆積処理、例えばUV硬化を必要としない。すなわち、堆積されたままの膜の固有の性質は、後堆積工程(すなわち、UVアニール)は必要でないように、集積回路の製造のための要求に適合していなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここに記載された方法および組成物は、上記の1つもしくは2つ以上の要求を満たしている。ここに記載された方法および組成物は、ヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物、例えばジメチルエトキシシラン(DMEOS)を構造形成剤として、堆積チャンバから取り出した後に、高機械的性質の従来技術の構造形成剤、例えばDEMS(登録商標)から堆積された膜よりも、誘電率の同じ値において、同じかもしくはより大きな機械的性質を有する、高密度の低誘電性膜を堆積させるために用いる。更に、ここに記載されたヒドリドジメチルアルコキシシラン前駆体を構造形成剤前駆体として用いて堆積された膜は、赤外線分光法によって測定されて、ジシリルメチレン基(-SiCHSi-)として組み込まれた比較的多い量の炭素を含んでいる(赤外線分光法によって測定された相対SiCHSi密度>10)。更に、ヒドリドジメチルアルコキシシラン前駆体を用いて堆積された膜の、XPSを用いて測定された全炭素含有量は、比較的に低い(<約25原子%)。従って、ヒドリドジメチルアルコキシシラン前駆体を用いて堆積された膜中のジシリルメチレン基で構成される全炭素のパーセンテージは、他の従来技術の構造形成剤前駆体、例えばDEMS(登録商標)および1-メチル-1-イソプロピル-1-シラシクロペンタン(MIPSCP)に比較して、高い(>50、赤外線分光法によって測定された相対SiCHSi密度の、XPSによって測定された膜中の炭素の割合に対する比として計算される)。更に、ここに記載されたヒドリドジメチルアルコキシシラン前駆体は、高密度のジシリルメチレン基を形成すると報告された他の従来技術の構造形成剤前駆体、例えば、2つのケイ素基を有するという性質から、より高い分子量(MW)とより高い沸点を有する、架橋前駆体(例えば、カルボシラン、例えば1,1,4,4-テトラエトキシ-1,4-ジ氏らブタンまたはジシロキサン、例えばヘキサエトキシジシロキサン)に対して、より低い分子量を有しており、それによって、ここに記載されたヒドリドジメチルアルコキシシラン前駆体を、プロセスに対して、例えば高容量の製造プロセスにおいて、より都合のよいものにさせている。
【0011】
ここに記載されているのは、式Siによって表される材料を含む低誘電率膜であり、ここで、v+w+x+y=100%であり、vは10~35原子%であり、wは10~65原子%であり、xは5~45原子%であり、そしてyは10~50原子%であり、この膜は、約2.50~約3.5、好ましくは約2.70~約3.5の誘電率を有している。特定の態様では、この膜は、例えば、OまたはNHプラズマに暴露された場合に、動的SIMS深さプロファイリングによって測定された炭素含有量を調べることによって測定された、炭素除去の減少された深さを示す。更に、特定の態様では、Hgプローブによって測定して、この膜は、≧4MV/cmの電界、そして≧5MV/cmの絶縁破壊時の電界において、1×10-9A/cm以下の漏洩電流密度を有している。この望ましい膜特性は、ヒドリドジメチルアルコキシシラン前駆体から堆積されたままの膜において、後堆積処理工程、例えばUV硬化の必要なしに、観察される。
【0012】
本発明の具体的な態様では、本発明は、式Siで表される材料を備えた低誘電率の膜を含んでおり、ここでXPSによって測定された炭素含有量は25原子%以下であり、ここでこの膜は、約2.70~約3.50の誘電率を有している。特定の態様では、この膜は、例えばOまたはNHプラズマに暴露された場合に、動的SIMS深さプロファイリングによって測定された炭素含有量を調べることよって測定された炭素除去の減少された深さを示す。更に、特定の態様では、Hgプローブによって測定して、この膜は、≧4MV/cmの電界、そして≧5MV/cmの絶縁破壊時の電界において、1×10-9A/cm以下の漏洩電流密度を有している。この望ましい膜特性は、ヒドリドジメチルアルコキシシラン前駆体から堆積されたままの膜において、後堆積処理工程、例えばUV硬化の必要なしに、観察される。
【0013】
更に、ヒドリドジメチルアルコキシシラン前駆体、例えばジメチルエトキシシラン(DMEOS)が、高密度の低誘電性膜を堆積させるために、構造形成剤として用いられた場合には、主要な性質、例えば、IR分光法によって測定されたSiCHSi基の相対密度およびIR分光法によって測定されたSiCHSi基の密度のXPSによって測定された膜中の炭素の割合に対する比によって決定される、全炭素含有量中の全SiCHSi基の相対パーセンテージが、堆積パラメータ、例えば堆積温度、希ガスの流量、酸化剤流量、およびインサイチュRF出力(少なくともRF周波数の使用を含む)に決定的に依存することが予期される。例えば、SiCHSi基の高い密度が、以下の堆積条件の1つもしくは2つ以上が適合される場合には、好ましい:高い堆積温度、高い希ガス流量、低い酸化剤流量、および/または高いRF出力。更に、主要な膜特性、例えばIR分光法によって測定されたSiCHSi基の相対密度およびIR分光法によって測定されたSiCHSi基の密度のXPSによって測定された膜中の炭素の割合に対する比によって決定される、全炭素含有量中の全SiCHSi基の相対パーセンテージ、の向上の速度は、堆積温度の増加、希ガス流量の増加、酸化剤流量の減少、およびRF出力の増加の関数として、従来技術の構造形成剤前駆体、例えばDEMS(登録商標)よりも、より迅速に向上する。
【0014】
1つの態様では、式Iで与えられる式を有するヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物を含む高密度の誘電性膜の気相堆積のための組成物が提供される。
H(Me)SiOCHR (I)
式中、Rは、水素、直鎖もしくは分岐C~C10アルキル、または環式C~C10アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオ-ペンチル、2-ペンチル、シクロペンチル、またはシクロへキシルからなる群から選択され、そしてこの化合物は、ハライド化合物、水、金属、酸素含有不純物、窒素含有不純物およびそれらの組み合わせから選択される1種もしくは2種以上の不純物を実質的に含まない。
【0015】
更なる態様では、225℃~500℃の範囲の基材温度で、高密度の誘電性膜を生成させる、以下の工程を含む、プラズマ促進化学気相堆積方法が提供される:基材を反応チャンバ中に準備すること、ガス状薬品を反応チャンバ中に導入すること、このガス状薬品は、式Iで与えられる構造を有するヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物を含む構造形成性前駆体を含み、
H(Me)SiOCHR (I)
式中、Rは、水素、直鎖もしくは分岐C~C10アルキル、または環式C~C10アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオ-ペンチル、2-ペンチル、シクロペンチル、またはシクロへキシルからなる群から選択され、好ましくはこのアルキル基は、分子の沸点が200℃未満、好ましくは150℃未満であるように選択される、ならびに、反応チャンバ中で、ヒドリドジメチルアルコキシシランを含むこのガス状組成物にエネルギーを加えて、ヒドリドジメチルアルコキシシランを含むガス状組成物の反応を誘起して、基材上にオルガノシリコン膜を堆積させること、ここで堆積されたオルガノシリカ膜は、約2.70~約3.50の誘電率を有している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1には、材料の全てのパラメータがSiOのパラメータに正規化され、そして、Cの全てが、材料中に、ケイ素原子に結合されたメチル基として組み込まれていると仮定して、材料のC/Si比が増加したときの、誘電率と硬度との予想される関係が示されている。
【0017】
図2図2には、比較例1と本発明の例1についての、3500cm-1~500cm-1の範囲のIRスペクトルが示されている。吸光度は膜厚に対して正規化され、ベアSiウエハに対してバックグラウンドが補正され、そして明確にするためにベースラインオフセットが行われた。
【0018】
図3図3には、比較例1と本発明の例1についての、1390cm-1~1330cm-1の範囲のIRスペクトルが示されている。吸光度は膜厚に対して正規化され、ベアSiウエハに対してバックグラウンドが補正され、そして明確にするためにベースラインオフセットが行われた。
【0019】
図4図4には、比較例1と本発明の例1についての、1300cm-1~1240cm-1の範囲のIRスペクトルが示されている。吸光度は膜厚に対して正規化され、ベアSiウエハに対してバックグラウンドが補正され、そして明確にするためにベースラインオフセットが行われた。
【0020】
図5図5には、比較例3と本発明の例1についての、加えられた電界強度の関数としての測定された電流密度が示されている。
【0021】
図6図6には、膜がNHプラズマを用いて損傷された後の、比較の膜1、比較の膜2,および本発明の膜2の炭素除去に対する耐性が示されている。
【0022】
図7図7は、ここに記載された構造形成剤DMEOSを含む方法および組成物を用いた例示の高密度low-k誘電性膜、ならびに構造形成剤MIPSCPおよびDEMS(登録商標)を用いて作られた従来技術の例示の膜についての、誘電率に対する240nmにおける吸光係数を比較するグラフである。
【0023】
図8図8は、ここに記載された構造形成剤DMEOSを含む方法および組成物を用いた例示の高密度low-k誘電性膜、ならびに構造形成剤MIPSCPおよびDEMS(登録商標)を用いて作られた従来技術の例示の膜についての、誘電率に対する、膜中のXPS炭素の割合で割り算された赤外線分光法によって測定されたSiCHSi基の相対密度の比を比較するグラフである。
【0024】
図9図9は、ここに記載された構造形成剤DMEOSを含む方法および組成物を用いた例示の高密度low-k誘電性膜、ならびに構造形成剤DEMS(登録商標)を用いて作られた従来技術の例示の膜についての、堆積温度の関数としての、赤外線分光法によって測定されたSiCHSi基の相対密度を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ここに記載されているのは、高密度のオルガノシリカ膜の製造方法であって、本方法は、以下の工程、基材を反応チャンバ内に準備すること、反応チャンバ中に少なくとも1種のヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物、例えばジメチルエトキシシラン(DMEOS)、およびガス状酸化剤、例えばOもしくはNO、および不活性ガス、例えばHeを含むガス状組成物を導入すること、ならびにヒドリドジメチルアルコキシシランを含むガス状組成物に、反応チャンバ中でエネルギーを加えて、ガス状反応物の反応を誘起させて、基材上にオルガノシリカ膜を堆積させること、を含み、ここでオルガノシリカ膜は約2.50~約3.50、好ましくは約2.70~約3.50の誘電率を有している。所望の膜特性を備えたオルガノシリカ膜はまた、酸化剤を含まないガス状組成物を用いても堆積されることができることが理解される。
【0026】
ここに記載されたヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物は、他の従来技術の構造形成剤前駆体、例えばジエトキシメチルシラン(DEMS(登録商標))を用いて作られた堆積されたままの膜と比較して、比較的に低い誘電率を備え、そして高い電界強度(4MV/cm)において驚くほど低い誘電率を備えた、堆積されたままのOSG膜を堆積させることを可能にするという、特有の特性を提供する。驚くべきことに、ここに記載されたヒドリドジメチルアルコキシシラン前駆体を用いて作られた堆積されたままの膜の絶縁破壊における電界(EBD)はまた、他の従来技術の構造形成剤前駆体、例えばDEMS(登録商標)を用いて作られた堆積されたままの膜よりも、有意により高い。
【0027】
ヒドリドジメチルアルコキシシラン構造形成剤前駆体から堆積されたままの膜の更なる独特の特性は、それらが、比較的に低い全炭素含有量(典型的には、XPSによって25原子%未満)を有し、更にNHもしくはOプラズマに暴露された場合に炭素除去に対して例外的に高い耐性を示すことである。誘電体膜からの炭素除去への耐性は、その膜の全炭素含有量が増加するにつれて向上することは、十分に確立されている。すなわち、高い全炭素含有量を備えた膜は、NHもしくはOプラズマに暴露された場合に、より低い全炭素含有量を備えた膜よりも、炭素除去のより小さな深さを示す。このことは、米国特許第9,922,818号明細書中に示されており、そこでは、36%(XPX、原子%)の炭素を含むlow-k膜についての炭素除去の深さは、23%(XPS、原子%)の炭素を含むlow-k膜よりも、20%少ない(44nmと比較して35nm)。従って、比較的に低い全炭素含有量(<約25%、XPSによって測定されて)を含むヒドリドジメチルアルコキシシラン構造形成剤前駆体を用いて作られてた誘電体膜は、NHもしくはOプラズマに暴露された場合に、高い全炭素含有量(>約25%、XPSによって測定されて)を備えた膜を堆積するように設計された前駆体を用いて作られた誘電体膜と、炭素除去の同じ深さを示すことができる。米国特許第9,922,818号明細書に開示されているように、前駆体、例えば1-メチル-1-イソプロピル-1-シラシクロペンタン(MIPSCP)は、高い全炭素含有量(>約25%)およびNHもしくOプラズマに暴露された場合の炭素除去に対する例外的な耐性を備えた膜を作るのに用いられることができる。
【0028】
式Iのヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物の独特の特性はまた、高密度のOSG膜について比較的に低い誘電率を達成させること、そしてそのような膜が、高い機械的強度のために設計されて従来技術の構造形成剤前駆体、例えばDEMS(登録商標)よりも、同等かもしくは大きな機械的性質を驚くべきことに示すことを可能にさせる。例えば、DEMS(登録商標)は、2つのアルコキシ基、1つのメチル、そして1つのヒドリドを有する混合配位子系を提供し、それが反応位置の平衡を提供し、そして所望の誘電率を維持しながら、より機械的に強い膜の形成を可能にさせる。高密度の低誘電性膜については、low-k前駆体中のケイ素-アルコキシ基(例えば、Si-OCH、Si-OCHCHなど)の数が増加し、そして前駆体中のケイ素-炭素結合(例えば、Si-CH、Si-CHCHなど)の数が減少するにつれて、堆積されたままの膜の誘電率と機械的性質は増加し、そしてその膜中の炭素含有量は減少することがまた理解される。従って、高い機械的強度のために設計された、前駆体中のケイ素原子当たりに2つのケイ素-アルコキシ基および1つのケイ素-炭素結合を含む前駆体、例えばDEMS(登録商標)従来技術の構造形成剤を用いて作られた膜は、ケイ素当たりに唯1つのケイ素-アルコキシ基と2つのケイ素-炭素結合を含む前駆体、例えば、式Iのヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物を用いて作られた膜よりも、より高い機械的性質およびより低い炭素含有量を有すると予測される。予想外にも、式Iのヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物を用いて作られた膜は、DEMS(登録商標)構造形成剤を用いて作られた膜よりも、誘電率の同じ値において、同等かもしくはより大きな機械的性質を有している。また、予想外にも、式Iのヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物を用いて作られた膜は、DEMS(登録商標)構造形成剤を用いて作られた膜の全炭素含有量に対して、誘電率の同じ値において、XPSによって測定された同様の全炭素含有量を有している。一般式Iによって表されるヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物の好ましい例としては、限定されるものではないが、それらの対応する構造を有する以下のヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0029】
【化1】
【0030】
ここに記載されたヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物は、従来技術の構造形成剤前駆体、例えばジエトキシメチルシラン(DEMS(登録商標)およびMIPSCPと比較して、誘電性膜中に炭素の種類の異なる分布を組み込ませることを可能にさせるという独特の特性を提供する。例えば、DEMS(登録商標)を構造形成剤として用いて堆積された高密度のOSG膜では、膜中の炭素は、主に、末端Si-Me基(Si(CH))の形態で存在しており、低密度のジシリルメチレン基(SiCHSi)もまた膜中に存在することができる。ここに記載されたヒドリドジメチルアルコキシシラン前駆体、例えばジメチルエトキシシラン(DMEOS)を、所定の値の誘電率において、DEMS(登録商標)系の膜とほとんど同じ全炭素含有量を有する高密度のOSG膜を堆積するのに用いられることができる一方で、ヒドリドジメチルアルコキシシラン前駆体を用いて作られた膜中の炭素の分布は、異なっている。ヒドリドジメチルアルコキシシラン前駆体を用いて作られた膜は、末端Si-Me基(Si(CH))のより低い濃度および架橋SiCHSi基のより高い濃度を有している。すなわち、従来技術の構造形成剤DEMS(登録商標)を用いて作られた膜の全炭素含有量は、本発明のヒドリドジメチルアルコキシシラン前駆体を用いて作られた膜とほとんど同じであるので、本発明のヒドリドジメチルアルコキシシラン前駆体から堆積された膜中の全炭素のより大きなパーセンテージは、従来技術の構造形成剤前駆体、例えばDEMS(登録商標)と比較して、架橋SiCHSi基として組み込まれている。
【0031】
従来技術のケイ素含有構造形成性前駆体、たとえDEMS(登録商標)は、反応チャンバ中で一旦エネルギーを加えられると、ポリマー骨格中に-O-結合(例えば、Si-O-Siまたは-Si-O-C-)を有する構造を形成するように重合するが、ヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物、例えばDMEOS分子は、骨格中の-O-架橋の幾つかが-CH-メチレン架橋で置き換えられるような仕方で重合する。DEMS(登録商標)を構造形成剤前駆体として用いて堆積された膜では、炭素は主に末端Si-Me基の形態で存在しており、%Si-Me対機械的強度の間には関係が存在する、例えば図1において材料のC/Si比が増加するにつれて硬度の間の予測された関係を参照し、全てのCが材料中にケイ素に結合されたメチル基として組み込まれていると仮定すると、架橋Si-O-Si基の2つの末端Si-Me基での置換は、ネットワーク構造が中断されるために機械的性質を低下させる。理論によって拘束されるものではないが、ヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物の場合には、前駆体構造が、構造形成剤中の2つの末端Si-Me基(Si(CH))の高いパーセンテージを、構造中の架橋メチレン基(ジシリルメチレン、SiCHSi)へと変換するプラズマ中の反応を促進することが信じられる。更に、Si-H結合が、H原子よりも大きな配位子を含む前駆体に対して、プラズマ中の反応性種が2つの末端メチル基に容易に近づくことを可能にすることによって、この変換を促進することが信じられる。このようにして、炭素を架橋基の形態で組み込むことができ、それによって機械的強度の観点から、ネットワーク構造は膜中の炭素含有量を増加することによって中断されない。このことはまた、膜に炭素を加え、膜が、例えば膜のエッチング、フォトレジストのプラズマアッシング、および銅表面のNHプラズマ処理などのプロセスからの炭素枯渇に対してより回復力を高めさせる。式Iのヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物、例えばDMEOSを用いて作られた膜のその他の独特の特性は、従来技術の構造形成剤、例えばDEMS(登録商標)およびMIPSCPと比較して、全炭素含有量が幾分少なく(<25%)、そしてSiCHSi基で構成される全炭素含有量のパーセンテージが高いことである。
【0032】
他の従来技術の構造形成剤前駆体、例えば1-メチル-1-イソプロポキシ-1-シラシクロペンタン(MIPSCP)は、高い濃度のジシリルメチレン基(SiCHSi)を備えた高密度のOSG膜を堆積させることができる。しかしながら高い濃度のジシリルメチレン基(SiCHSi)を含むMIPSCPから堆積された、高密度のOSG膜はまた、高い全炭素含有量を有し、ここに記載されたヒドリドジメチルアルコキシシラン前駆体、例えばジメチルエトキシシラン(DMEOS)から堆積された高密度のOSG膜と比較して、ジシリルメチレン基として組み込まれている全炭素のより少ないパーセンテージをもたらす。更に、MIPSCPから堆積された高密度のOSG膜はまた、高濃度の末端Si-Me基(Si(CH))および高濃度の他の形態の炭素、例えば無定形炭素(sp結合された非ネットワーク炭素)として組み込まれた炭素を含んでいる。図1に示されているように、高濃度の末端Si-Me基は、膜の機械的強度に悪影響を与え、MIPSCPを構造形成剤として用いることによって得ることができる最も高い機械的強度を結局は制限する。
【0033】
式Iのヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物を用いて作られた膜の、従来技術のビスアルコキシシランまたは1-メチル-1-イソプロポキシ-1-シラシクロペンタン(MIPSCP)系のケイ素前駆体を用いて作られた膜に対する幾つかの利点としては、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。
・高電界強度における低い漏洩電流密度
・絶縁破壊時の高い電界
・プラズマ誘起損傷への高い耐性
・同等もしくはより高い機械的強度
・高い架橋SiCHSi密度
・架橋SiCHSi基から構成される全炭素含有量の高いパーセンテージ
・低い無定形炭素含有量
【0034】
本発明による式Iを有するヒドリドジメチルアルコキシシランは、好ましくはハライドイオンを実質的に含まない。ここで用いられる用語「実質的に含まない」は、ハライドイオン(またはハライド)、例えばクロリド(すなわち塩素含有種、例えばHClまたは少なくとも1つのSi-Cl結合を有するケイ素化合物)、およびフロリド、ブロミド、およびヨージドに関しては、イオンクロマトグラフィー(IC)によって測定して、5ppm(質量基準)未満、好ましくはICによって測定して3ppm未満、そしてより好ましくはICによって測定して1ppm未満、そして最も好ましくはICによって測定して0ppmであることを意味している。クロリドが、式Iを有するケイ素前駆体化合物の分解触媒として作用することは知られている。最終の製品中の有意のレベルのクロリドがケイ素前駆体化合物の分解を引き起こす可能性がある。ケイ素前駆体化合物の漸次の分解は、膜の堆積プロセスに直接に影響を与える可能性があり、半導体製造業者が膜の仕様に適合させることを困難にさせる。更に、寿命または安定性が、ケイ素前駆体化合物のより高い分解速度によって悪影響を与えられ、それによって1~2年間の貯蔵寿命を保証することを困難にさせる。従って、ケイ素前駆体化合物の促進された分解は、可燃性および/または自然性のガス状副生成物の形成に関する安全性および性能への懸念を生じさせる。式Iを有するヒドリドジメチルアルコキシシランは、金属イオン、例えば、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、Al3+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Cr3+を実質的に含まない。ここで用いられる用語「実質的に含まない」は、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Crに関しては、ICP-MAによって測定して、5ppm(質量基準)未満、好ましくは3ppm未満、そしてより好ましくは1ppm未満、そして最も好ましくは0.1ppmを意味している。いくつかの態様では、式Iを有するケイ素前駆体化合物は、金属イオン、例えば、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、Al3+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Cr3+を含まない。ここで用いられる用語金属不純物を「含まない」は、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Crに関しては、ICP-MSによって測定して、1ppm未満、好ましくは0.1ppm(質量基準)、最も好ましくは、ICP-MSまたは金属測定用の他の分析方法によって測定して0.05ppm(質量基準)を意味している。更に、式Iを有するヒドリドジメチルアルコキシシランは、ケイ素含有膜を堆積させるための前駆体として用いられる場合には、GCによって測定して、好ましくは98質量%以上、より好ましくは99質量%以上の純度を有している。重要なことには、式Iを有するヒドリドジメチルアルコキシシランは、好ましくは、合成の間に用いられるいずれかの出発材料または合成の間に生成される副生成物からの、酸素含有もしくは窒素含有不純物を実質的に含まない。例としては、限定されるものではないが、水、テトラメチルジシロキサン、テトラメチルジシラザン、有機アミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、ピリジン、4-メチルピリジン、3-メチルピリジン、2-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、および反応を促進するために使用されるいずれかの他の有機アミンが挙げられる。ここで用いられる用語、酸素含有もしくは窒素含有不純物を「含まない」は、水、テトラメチルジシロキサン、テトラメチルジシラザン、有機アミン、例えばトリエチルアミン、ピリジン、およびいずれかの他の有機アミンに関しては、GCによって測定されて1000ppm以下、好ましくはGCまたは定量のための他の分析方法によって測定されて、500ppm以下(質量基準)、最も好ましくは、GCまたは定量のための他の分析方法によって測定されて、100ppm以下(質量基準)を意味している。ここで定義される酸素含有不純物は、少なくとも1つの酸素原子を有する化合物であり、そして出発材料からか、または式Iを有するヒドリドジメチルアルコキシシランの合成から生成されるかのいずれかである。それらの酸素含有不純物は、式Iを有するヒドリドジメチルアルコキシシランの沸点に近い沸点を有する可能性があり、そして従って生成の後の製品中に残留する可能性がある。同様に、ここで定義された窒素含有不純物は、少なくとも1つの窒素原子を有する化合物であり、そして出発材料からか、またはヒドリドジメチルアルコキシシランの合成から生成されるかのいずれかである。それらの窒素含有不純物は、式Iを有するヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物の沸点に近い沸点を有する可能性があり、そして従って生成の後の製品中に残留する可能性がある。
【0035】
この低誘電性膜は、オルガノシリカガラス(「OSG」)膜または材料である。オルガノシリケートは、電子産業において、例えばlow-k材料として、用いられる。材料特性は、膜の化学組成および構造に依存する。オルガノシリコン前駆体の種類は、膜の構造および組成に強い影響を有するので、所望の誘電率に到達するために必要な量の多孔性の付加が機械的に不健全な膜を生成しないことを確実にするように、必要とされる膜特性を与える前駆体を用いることが有益である。ここに記載された方法および組成物は、電気的性質と機械的性質ならびに他の有益な膜特性、例えば比較的に低い全炭素含有量、の望ましいバランスを有し、向上した統合プラズマ耐性を与える膜中の炭素の種類の分布を備えたlow-k誘電体膜を生成させる方法を提供する。
【0036】
ここに記載された方法および組成物の特定の態様では、ケイ素含有誘電性材料の層が、基材の少なくとも一部の上に、化学気相堆積(CVD)プロセスによって、反応チャンバを用いて、堆積される。本方法は、従って、基材を反応チャンバ内に準備する工程を含んでいる。好適な基材としては、限定されるものではないが、半導体材料、例えばヒ化ガリウム(「GaAs」)、シリコン、およびケイ素を含む組成物、例えば結晶シリコン、ポリシリコン、アモルファスシリコン、エピタキシャルシリコン、二酸化ケイ素(「SiO 」)、シリコンガラス、窒化ケイ素、溶融シリカ、ガラス、石英、ホウケイ酸ガラス、およびそれらの組み合わせが挙げられる。他の好適な材料としては、クロム、モリブデン、ルテニウム、コバルト、ならびに半導体、集積回路、フラットパネルディスプレイ、およびフレキシブルディスプレイ用途で通常用いられるその他の金属が挙げられる。この基材は、付加的な層、例えばシリコン、SiO、オルガノシリケートガラス(OSG)、フッ素化シリケートガラス(FSG)、炭窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化水素化ケイ素、窒化ケイ素、窒化水素化ケイ素、炭窒化ケイ素、炭窒化水素化ケイ素、窒化ホウ素、有機無機複合材料、フォトレジスト、有機ポリマー、多孔質有機および無機材料および複合材料、金属酸化物、例えば酸化アルミニウム、および酸化ゲルマニウムを有していることができる。また、なお更なる層としては、ゲルマノケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、銅およびアルミニウム、ならびに拡散バリア材料、例えば、限定されるものではないが、TiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W、またはWNを挙げることができる。
【0037】
反応チャンバは、典型的には、例えば熱CVD反応器、プラズマ促進CVD反応器、または様々な方法のバッチ式ファーネス型反応器であり、好ましくはプラズマ促進CVD反応器またはプラズマ促進バッチ式ファーネス型反応器である。1つの態様では、液体供給システムが用いられることができる。液体供給配合物では、ここに記載された前駆体は、正味の液体の形態で供給されることができ、あるいはそれを含む溶媒配合物もしくは組成物で用いられることができる。従って、特定の態様では、前駆体配合物は、基材上に膜を形成させる与えられた最終用途に望ましく、そして有利であることができるように、好適な特徴の溶媒成分を含むことができる。
【0038】
ここに開示された方法は式Iで与えられたヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物を含むガス状組成物を反応チャンバ中に導入する工程を含んでいる。幾つかの態様では、本組成物は、付加的な反応物、例えば酸素含有種、例えばO、O、およびNO、ガス状もしくは液状有機物質、アルコール類、CO、またはCOを含むことができる。1つの具体的な態様では、反応チャンバ中に導入される反応混合物は、O、NO、NO、NO、CO、水、H、オゾン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の酸化剤を含んでいる。他の態様では、反応混合物は、酸化剤を含まない。
【0039】
ここに記載された誘電体膜を堆積させるための組成物は、約40~約100質量%のヒドリドジメチルアルコキシシランを含んでいる。
【0040】
ある態様では、ヒドリドジメチルアルコキシシランを含むガス状組成物は、堆積されたままの膜の弾性率を更に向上させるように、硬化性の添加剤とともに用いられることができる。
【0041】
ある態様では、ヒドリドジメチルアルコキシシランを含むガス状組成物は、ハライド、例えばクロリドを実質的に含まない、または、含まない。
【0042】
ヒドリドジメチルアルコキシシランに加えて、反応チャンバ中に、付加的な材料が、堆積反応の前に、間に、および/または後に、導入されることができる。そのような材料としては、例えば、不活性ガス(例えば、He、Ar、N、Kr、Xeなど、これらは揮発性がより少ない前駆体のためのキャリアガスとして用いられることができ、および/またはそれらは堆積されたままの材料が硬化されることを促進することができ、そして必要に応じて、より安定な最終的膜を提供する可能性がある)が挙げられる。導入されるキャリアガスの体積は、膜特性に実質的な影響を及ぼす可能性がある。
【0043】
ヒドリドジメチルアルコキシシランを含む、用いられるいずれかの薬品は、反応器中に、個別の供給源から別々に、または混合物として、供給されることができる。これらの薬品は、いずれかの数の方法によって、好ましくは、液体のプロセス反応器への供給を可能にさせるように、適切な弁および付属品を取り付けられた加圧可能なステンレス鋼製の容器を用いて、反応系へと供給されることができる。好ましくは、前駆体は、プロセス真空チャンバ中へ、気体として供給され、すなわち、液体は、それがプロセスチャンバ中へ供給される前に蒸発されていなければならない。
【0044】
ここに開示された方法は、反応チャンバ中で、ヒドリドジメチルアルコキシシランを含むガス状組成物にエネルギーを加えて、ヒドリドジメチルアルコキシシランを含むガス状組成物の反応を誘起して、基材上にオルガノシリカ膜を堆積させる工程を含んでおり、ここで、オルガノシリカ膜は、幾つかの態様では約2.70~約3.50の、他の態様では2.70~3.30の、そして更に好ましい態様では2.70~3.20の誘電率、約6~約36GPaの弾性率、そしてXPSによって測定された約10~約45原子%の炭素を有している。エネルギーは、ガス状薬品に加えられて、ヒドリドジメチルアルコキシシランおよび、存在するのであれば他の薬品が反応するのを誘発させて、基材上に膜を形成させる。そのようなエネルギーは、例えば、プラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、および熱的(すなわち、非フィラメント)方法によって提供されることができる。基材表面におけるプラズマ特性を修正するのに、第2のRF周波数源を用いることができる。好ましくは、この膜は、プラズマ促進化学気相堆積(「PECVD」)によって形成される。
【0045】
ガス状薬品のそれぞれの流量は、単一の300mmウエハ当たりに、2~5000sccm、より好ましくは4~3000sccmの範囲である。必要とされる実際の流量は、ウエハサイズとチャンバの構成に依存する可能性があり、そして300mmウエハや、単一のウエハチャンバには決して限定されない。
【0046】
特定の態様では、この膜は、約5~約400ナノメートル(nm)/分の堆積速度で堆積される。他の態様では、この膜は、約20~約200ナノメートル(nm)/分の堆積速度で堆積される。
【0047】
堆積の間の反応チャンバ中の圧力は、典型的には、約0.01~約600トール、または約1~15トールの範囲である。
【0048】
この膜は、好ましくは0.001~500ミクロンの厚さに堆積されるが、しかしながらその厚さは必要に応じて変更されることができる。非パターン化の表面上に堆積されたブランケット膜は、優れた均一性を有しており、厚さの変動は、基材全体で、適正な端部の除外を行って、1標準偏差に対して3%未満であり、ここで、例えば、基材の1cmの最も外側の端部は、均一性の統計的計算には含まれていない。
【0049】
本発明のOSG製品に加えて、本発明には、それによってその製品が作られるプロセス、その製品を用いる方法、ならびにその製品を調製するために有用な化合物および組成物が含まれている。例えば、半導体装置上に集積回路を作るためのプロセスが、米国特許第6,583,049号明細書中に開示されており、ここにこれを参照することによって本明細書の内容とする。
【0050】
開示された方法によって生成された高密度のオルガノシリカ膜は、特には、エッチングおよびフォトレジスト剥離プロセスの間の、プラズマ誘起損傷に対する優れた耐性を示す。
【0051】
開示された方法によって生成された高密度のオルガノシリカ膜は、同じ誘電率を有するが、しかしながらモノアルコキシシランではない前駆体を用いて作られた高密度のオルガノシリカ膜に対して、与えられた誘電率について優れた機械的性質を示す。結果として得られたオルガノシリカ膜(堆積されたままの)は、典型的には、幾つかの態様では約2.70~約3.50、他の態様では約2.70~約3.20、そして更に他の態様では約2.70~約3.10の誘電率、約6~約32GPaの弾性率、そしてXPSによって測定して約10~約35原子%の炭素を有している。幾つかの態様では、窒素含有量は、XPSまたはSIMSまたはRBSまたはいずれかの他の分析手段によって測定して、0.1原子%以下、好ましくは0.1原子%以下、最も好ましくは0.01原子%以下である。幾つかの態様では、窒素の組み込みは高密度オルガノシリカ膜の誘電性を向上させる可能性があることが信じられるので、窒素含有量は、XPSまたはSIMSまたはRBSまたはいずれかの他の分析手段によって測定して、0.1原子%以下、好ましくは0.1原子%以下、最も好ましくは0.01原子%以下であることが期待される。更に、オルガノシリカ膜は、IR分光法によって測定された、約1~約30、または約5~約30、または約10~約30、または約1~約20の相対ジシリルメチレン密度を有している。更に、本発明のヒドリドジメチルアルコキシシラン前駆体から作られた膜中の、架橋SiCHSi基として組み込まれた、全炭素のパーセンテージは、IR分光法によって測定された相対ジシリルメチレン密度のXPSによって測定された膜中の炭素の割合に対する比率によって定められて、50超である。このオルガノシリカ膜は、約5nm/分~約500nm/分、または約5nm/分~約400nm/分、または約10nm/分~約200nm/分、または約10nm/分~約100nm/分の速度で堆積されることが期待される。
【0052】
説明全体を通じて、記号「~」または「約」はその値からの約5.0%の偏差を表す。例えば、~3.00は約3.00(±0.15)を意味する。
【0053】
結果として得られる高密度のオルガノシリカ膜はまた、一旦堆積されると、後処理プロセスに付されることができる。従って、ここで用いられる用語「後処理」は、更に材料特性を高めるために、膜をエネルギー(例えば、熱、プラズマ、フォトン、エレクトロン、マイクロ波など)または化学薬品で処理することを意味している。
【0054】
後処理が行われる条件は、非常に大きく変わる可能性がある。例えば、後処理は、高圧の下で、または真空環境の下で行われることができる。
【0055】
UVアニールは、以下の条件の下で行われる好ましい方法である。
【0056】
環境は、不活性(例えば、窒素、CO、希ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)など)、酸化性(例えば、酸素、空気、希薄酸素環境、富化酸素環境、オゾン、亜酸化窒素など)または還元性(希薄水素または濃縮水素、炭化水素(飽和、不飽和、直鎖または分岐鎖、芳香族)など)であることができる。圧力は、好ましくは約1トール~約1000トールである。しかしながら、真空雰囲気が、熱的アニールならびにいずれかの他の後処理手段について好ましい。温度は、好ましくは200~500℃であり、そして昇温速度は0.1~100℃/分である。全UVアニール時間は、好ましくは0.01分間~12時間である。
【0057】
本発明は、以下の例を参照してより詳細に説明されるが、しかしながら本発明はそれらに限定されるとはみなされないことが理解されなければならない。本発明において記載された前駆体もまた、現存の多孔質low-k膜に対して、同様のプロセスの利点を有する多孔質low-k膜を堆積するために用いられることができる。
【実施例
【0058】
全ての実験は、300mmAMAT Producer(登録商標)SEで行われ、それは2つのウエハに同時に膜を堆積させる。従って、前駆体およびガス流量は、膜を2つのウエハに同時に堆積するのに必要とされる流量に相当する。それぞれのウエハ処理ステーションには独自の独立したRF電力供給装置があるため、記載されているウエハあたりのRF電力は正確である。両方のウエハ処理ステーションは同じ圧力に維持されているので、記載された堆積圧力は正確である。堆積の後で、幾つかの膜はUVアニールに付されることができる。UVアニールは、300mmAMAT Producer(登録商標)Nanocure(商標)UV硬化モジュールで行われ、ウエハは、10トール未満の1つもしくは2つ以上の圧力で、そして400℃以下の1つもしくは2つ以上の温度で、ヘリウムガス流の下に保持される。
【0059】
特定の具体的な態様および例を参照して例示および説明されているが、本発明は、それでも示されたそれらの詳細に限定されることは意図されていない。むしろ、種々の変更が、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で、これらの詳細の中でなしうることができる。例えば、本明細書中に広く記載された全ての範囲は、そのより広い範囲内に収まる全てのより狭い範囲を、それらの範囲内に含むことが、明確に意図される。本発明で開示されたいずれかの1つのヒドリドジメチルアルコキシシランは、誘電率の所定の値(k<3.5)において、高い機械強度、プラズマ誘起損傷に対する強い耐性、低い漏洩電流密度、および高い絶縁破壊電圧、を備えた多孔質low-k膜の堆積のための構造形成剤として用いられることができることがまた理解される。
【0060】
厚さ、屈折率、および吸光係数は、Woollam model M2000分光エリプソメータで測定された。誘電率は、Hgプローブ技術を用いて、中抵抗のp型ウエハ(範囲8~12オーム-cm)で測定された。FTIRスペクトルが、12インチウエハを取り扱うために、窒素でパージされたPike Technologies Map300を備えた、Thermo Fisher Scientific Model iS50分光計を用いて測定された。FTIRスペクトルは、膜中の架橋ジシリルメチレン基の相対密度を計算するのに用いられた。赤外分光法によって測定された、膜中の架橋ジシリルメチレン基の相対密度(すなわち、SiCHSi密度)は、約1250cm-1~920cm-1の間のSiO帯の面積で割り算された、1360cm-1近傍を中心とするSiCHSi赤外帯の面積の1E4倍(1×10倍)として規定される。赤外分光法によって測定された、膜中の末端ケイ素メチル基の相対密度(すなわち、Si(CHの密度、ここでxは1、2または3である)は、約1250cm-1~920cm-1の間のSiO帯の面積で割り算された、1273cm-1近傍を中心とするSi(CH赤外帯の面積の1E2倍として規定される。機械的性質は、KLA iNano Nano Indenterを用いて測定された。
【0061】
組成のデータは、X線光電子分光法(XPS)によって、PHI 5600(73560,73808)またはThermo K-Alpha(73846)のいずれかによって得て、そして原子質量パーセントで与えられた。表中に報告された原子質量パーセント(%)値は、水素を含んでいない。
【0062】
ブランケットlow-k膜が、Applied Materials Producer(登録商標)SEのTEOS/FSGチャンバ中で、容量結合アンモニアプラズマへの暴露によって損傷された。Low-k膜を損傷するのに用いられたプロセスパラメータは、全てのブランケットlow-k膜について同じであった:アンモニア流量=900標準立法センチメートル毎分(sccm)、6.0トールのチャンバ圧力、300℃の台座温度、300ワット(13.56MHz)のRF出力、および25秒間の暴露時間。
【0063】
動的SIMSプロファイルが、low-k膜の表面から、スパッタリングによって材料を除去するために、低エネルギーCsイオンの連続式の集束ビームを用いて、得られた。低エネルギーCsイオンは、衝突カスケードによる原子的混合を低減し、そして深さ分解能を最大化するように用いられた。スパッタ率は、膜-ウエハ界面に非常に近くスパッタし、そして次いでスタイラスプロファイラでスパッタされた深さを測定することによって較正された。解析されたものと同様の高密度low-k膜のRBS/HFSデータが、SIMSプロファイルを定量化するのに用いられた。動的SIMS深さプロファイルを得るのに用いられたパラメータは、検討された全てのプラズマ損傷されたlow-k膜について同じであった。
【0064】
下記に列挙された例中のそれぞれの前駆体について、堆積条件は、目標の誘電率で高い機械的強度を備えた膜を生じるように最適化された。
【0065】
比較例1:ジエトキシメチルシラン(DEMS(登録商標))からの高密度OSG膜の堆積
【0066】
高密度DEMS(登録商標)系の膜が、300mm処理のための以下のプロセス条件を用いて、堆積された。DEMS(登録商標)前駆体が、反応チャンバへと、直接の液体注入(DLI)によって、1250標準立方センチメートル毎分(sccm)のHeキャリアガス流、25sccmのO、380ミリインチのシャワーヘッド/加熱された台座間隔、350℃の台座温度、7.5トールのチャンバ圧力、チャンバへは615ワット13.56MHzのプラズマが適用される、を用いて、2500mg/分の流量で供給された。膜の種々の特性(例えば、誘電率(k)、屈折率、弾性率および硬度、Si(CHおよびSiCHSiの赤外分光法による相対密度、ならびにXPSによる原子組成(炭素の原子パーセント、酸素の原子パーセント、およびケイ素の原子パーセント)が、上記のように得られて、そして表1および3に与えられている。
【0067】
比較例2:1-メチル-1-イソプロポキシ-1-シラシクロペンタン(MIPSCP)からの高密度OSG膜の堆積
【0068】
高密度1-メチル-1-イソプロポキシ-1-シラシクロペンタン(MIPSCP)系の膜が、300mm処理のための以下のプロセス条件を用いて、堆積された。1-メチル-1-イソプロポキシ-1-シラシクロペンタン(MIPSCP)前駆体が、反応チャンバへと、直接の液体注入(DLI)によって、750標準立方センチメートル毎分(sccm)のHeキャリアガス流、8sccmのO、380ミリインチのシャワーヘッド/加熱された台座間隔、390℃の台座温度、7.5トールのチャンバ圧力、チャンバへは275ワット13.56MHzのプラズマが適用される、を用いて、850mg/分の流量で供給された。膜の種々の特性(例えば、誘電率(k)、屈折率、弾性率および硬度、Si(CHおよびSiCHSiの赤外分光法による相対密度、ならびにXPSによる原子組成(炭素の原子パーセント、酸素の原子パーセント、およびケイ素の原子パーセント)が、上記のように得られて、そして表1および3に与えられている。
【0069】
比較例3:DEMS(登録商標)からの高密度OSG膜の堆積
【0070】
高密度DEMS(登録商標)系の膜が、300mm処理のための以下のプロセス条件を用いて、堆積された。DEMS(登録商標)前駆体が、反応チャンバへと、直接の液体注入(DLI)によって、1500標準立方センチメートル毎分(sccm)のHeキャリアガス流、25sccmのO、380ミリインチのシャワーヘッド/加熱された台座間隔、400℃の台座温度、7.5トールのチャンバ圧力、チャンバへは217ワット13.56MHzのプラズマが適用される、を用いて、2000mg/分の流量で供給された。膜の種々の特性(例えば、誘電率(k)、屈折率、弾性率および硬度、Si(CHおよびSiCHSiの赤外分光法による相対密度、ならびにXPSによる原子組成(炭素の原子パーセント、酸素の原子パーセント、およびケイ素の原子パーセント)が、上記のように得られて、そして表2に与えられている。
【0071】
比較例4~8:DEMS(登録商標)からの高密度OSG膜の堆積
【0072】
一連の高密度DEMS(登録商標)系膜が、300mm処理のための以下のプロセス条件を用いて堆積された。DEMS(登録商標)前駆体が、反応チャンバへと、直接の液体注入(DLI)によって、1500標準立方センチメートル毎分(sccm)のHeキャリアガス流、75sccmのO、380ミリインチのシャワーヘッド/加熱された台座間隔、7.5トールのチャンバ圧力、チャンバへは605ワット13.56MHzのプラズマが適用される、を用いて、1913mg/分の流量で供給された。5つの異なる膜が、300~400℃で変わる基材温度で堆積された。膜の種々の特性(例えば、誘電率(k)、屈折率、弾性率および硬度、Si(CHおよびSiCHSiの赤外分光法による相対密度、ならびにXPSによる原子組成(炭素の原子パーセント)が、上記のように得られた。
【0073】
本発明の例1:ジメチルエトキシシラン(DMEOS)からの高密度OSG膜の堆積
【0074】
高密度ジメチルエトキシシラン系膜が、300mm処理のための以下のプロセス条件を用いて堆積された。ジメチルエトキシシラン前駆体が、反応チャンバへと、直接の液体注入(DLI)によって、975標準立方センチメートル毎分(sccm)のHeキャリアガス流、O=30sccm、380ミリインチのシャワーヘッド/加熱された台座間隔、400℃の台座温度、6.7トールのチャンバ圧力、チャンバへは355ワット13.56MHzのプラズマが適用される、を用いて、1500mg/分の流量で供給された。膜の種々の特性(例えば、誘電率(k)、屈折率、弾性率および硬度、Si(CHおよびSiCHSiの赤外分光法による相対密度、ならびにXPSによる原子組成(炭素の原子パーセント、酸素の原子パーセント、およびケイ素の原子パーセント)が、上記のように得られて、そして表1および2に与えられている。
【0075】
本発明の例2:ジメチルエトキシシラン(DMEOS)からの高密度OSG膜の堆積
【0076】
高密度ジメチルエトキシシラン系膜が、300mm処理のための以下のプロセス条件を用いて堆積された。ジメチルエトキシシラン前駆体が、反応チャンバへと、直接の液体注入(DLI)によって、975標準立方センチメートル毎分(sccm)のHeキャリアガス流、O=45sccm、380ミリインチのシャワーヘッド/加熱された台座間隔、400℃の台座温度、6.7トールのチャンバ圧力、チャンバへは425ワット13.56MHzのプラズマが適用される、を用いて、1300mg/分の流量で供給された。膜の種々の特性(例えば、誘電率(k)、屈折率、弾性率および硬度、Si(CHおよびSiCHSiの赤外分光法による相対密度、ならびにXPSによる原子組成(炭素の原子パーセント、酸素の原子パーセント、およびケイ素の原子パーセント)が、上記のように得られて、そして表3に与えられている。
【0077】
本発明の例3~6:ジメチルエトキシシラン(DMEOS)からの高密度OSG膜の堆積
【0078】
一連の高密度ジメチルエトキシシラン系膜が、300mm処理のための以下のプロセス条件を用いて堆積された。ジメチルエトキシシラン前駆体が、反応チャンバへと、直接の液体注入(DLI)によって、975標準立方センチメートル毎分(sccm)のHeキャリアガス流、O=30sccm、380ミリインチのシャワーヘッド/加熱された台座間隔、6.7トールのチャンバ圧力、チャンバへは355ワット13.56MHzのプラズマが適用される、を用いて、1500mg/分の流量で供給された。4つの異なる膜が、300~400℃で変わる基材温度で堆積された。膜の種々の特性(例えば、誘電率(k)、屈折率、弾性率および硬度、Si(CHおよびSiCHSiの赤外分光法による相対密度、ならびにXPSによる原子組成(炭素の原子パーセント)が、上記のように得られた。
【0079】
例7:ジメチル-n-プロポキシシラン(DMPOS)の合成
478g(3.59モル)の1,1,3,3-テトラメチルジシラザンに、431g(7.18モル)のn-プロパノールが、室温で、磁気撹拌しながらゆっくりと加えられた。添加が完了した後に、反応混合物は4時間撹拌された。805gの反応混合物が得られ、そして分別蒸留に付された。514gのジメチル-n-プロポキシシランが、大気圧で、83~84℃の沸点で収集された。収率は60%であった。GC-MSによって、以下のピークが示された:m/z=132(M+)、117(M-15)、103、89、75、59、45。
【0080】
図1は、メチル基の添加量を増加させた非多孔質SiO膜の予測される硬度および誘電率の例を与えている。硬度は、Boolchandら(P. Boolchand, M. Zhang, B. Goodman, Phys. Rev. B, 53 11488, 1996)の理論を、原子ではなくメチル基に適用し、そして末端メチル基の機械的性質への効果を調べることによって、予測することができる。誘電率は原子団寄与法によって予測することができ、原子団寄与法は、ポリマーについて、そして三次元に連結されたアモルファス材料について、誘電率を予測する。硬度(弾性率に比例すると仮定して)および誘電率は、3.8の誘電率および72GPaの弾性率を有する、ヒドロキシを含まないシリカの。硬度および誘電率に対して正規化されることができる。それらの値を用いると、図1には、膜中のC/Si比が0から約0.6に増加する場合に、誘電率が19%低下し、硬度が対応して66%低下することを示している。しかしながら、C/Si比を更に1まで増加することで、誘電率の更なる4%だけの減少をもたらし、一方で硬度は0に近づく。従って、Si原子のパーセンテージが末端メチル基で置換されることを制限する手段を有することが望ましい、何故ならばこのことは与えられて誘電率での機械的性質を最大化する可能性があるからである。炭素を、SiCHSi架橋基の形態で、膜に追加する手段を有することが更により望ましい。炭素を架橋基の形態で組み込むことは、機械的強度の観点から、ネットワーク構造が炭素含有量の増加によって中断されないこと、そして同じ炭素の量を末端Si(CH基の形態で膜中に組み込むことに対して、より高い機械的強度を得ることができることのために、望ましい。炭素をSiCHSi架橋基の形態で膜に加えることはまた、プロセス、例えば膜のエッチング、フォトレジストのプラズマアッシング、および銅表面のNHプラズマ処理からの、OSG膜の炭素枯渇に対して、膜が、より回復力に富むことを可能にさせる。OSG膜における炭素枯渇は、膜の実効誘電率の増加、湿式洗浄工程の間の膜エッチングおよびフィーチャの曲がりの問題、および/または銅拡散バリアの堆積時の統合の問題を引き起こす可能性がある。
【0081】
表1には、本発明で説明されたヒドリドジメチルアルコキシシラン前駆体、例えばDMEOSを構造形成剤として用いて作った膜は、DEMS(登録商標)構造形成剤またはMIPSCP構造形成剤を用いて作って膜に対して、同じ誘電率において、同等またはより大きな機械的強度を有することを示している。例えば、本発明のDMEOS系膜の弾性率は、比較のDEMS(登録商標)系膜の弾性率よりも40%大きい。更に、ヒドリドジメチルアルコキシシラン前駆体を用いて作った膜は、DEMS(登録商標)構造形成剤を用いて作った膜と同様の、XPSによって測定された全炭素量を有しているが(約20原子%のC)、しかしながら、MIPSCP構造形成剤を用いて作られた膜の全炭素含有量(約34原子%のC)よりも有意に少ない。最も重要なことは、IR分光法によって測定されたジシリルメチレン基の相対密度の、XPSによって測定された膜の全炭素含有量の割合の比として規定される、ジシリルメチレン基で構成される膜中の全炭素のパーセンテージ(例えば、DEMS(登録商標)系膜については、このパーセンテージは、6/0.18=33)は、DEMS(登録商標)構造形成剤またはMIPSCP構造形成剤を用いて作られた膜の全炭素含有量よりも遥かに大きい。
【0082】
【表1】
【0083】
本発明で記載されたヒドリドジメチルアルコキシシラン前駆体、DMEOSを構造形成剤として用いて作られた膜について、そしてDEMS(登録商標)構造形成剤を用いて作られた膜について、3500cm-1~500cm-1の透過赤外スペクトルが図2に示されている。両方の膜は3.0の誘電率を有している(表1)。図3には、両方の膜について、1360cm―1近傍を中心としてジシリルメチレン(SiCHSi)赤外帯の拡大された図が示されている。DMEOS構造形成剤前駆体を用いて作られた膜についてのSiCHSi帯のピーク吸収は、DEMS(登録商標)構造形成剤前駆体を用いて作られた膜についてのSiCHSi帯のピーク吸収よりも、少なくとも2倍大きい。図4には、両方の膜についての、1273cm-1近傍を中心として末端ケイ素メチル赤外帯(Si(CH)の拡大された図が示されている。DMEOS構造形成剤前駆体を用いて作られた膜についてのSi(CH赤外帯のピーク吸収は、DEMS(登録商標)構造形成剤前駆体を用いて作られた膜についてのSi(CH赤外帯のピーク吸収よりも14%小さい。従って、赤外スペクトルは、DMEOS構造形成剤前駆体を用いて作られた膜は、DEMS(登録商標)構造形成剤前駆体を用いて作られた膜に対して、より高い濃度のSiCHSi基およびより低い濃度のSi(CH基を有していることを示している。
【0084】
図2図3および図4中の、本発明および比較の高密度OSG膜の性質が、表1に与えられている。DMEOS系膜およびDEMS(登録商標)系膜の両方が、3.0の誘電率を有している。表1に示されているように、本発明のDMEOS構造形成性前駆体を用いて作られた膜についての相対SiCHSi密度(赤外分光法によって測定された)は、DEMS(登録商標)構造形成剤を用いて作られた膜の相対SiCHSi密度よりも183%大きい。DMEOS構造形成性前駆体を用いて作られた膜中の特有の炭素分布につての更なる考察を、ジシリルメチレン(SiCHSi)基で構成されるこの膜中の全炭素の相対パーセンテージを計算することによって得ることができる。ジシリルメチレン(SiCHSi)基で構成される全炭素の相対パーセンテージは、相対SiCHSi密度(IR分光法によって測定される)の、膜中の前炭素含有量の割合(XPSによって測定される)の比として計算することができる。表2に示されるように、本発明のDMEOS構造形成性前駆体を用いて作られた膜についてのジシリルメチレン(SiCHSi)基で構成される全炭素の相対パーセンテージは、DEMS(登録商標)構造形成剤を用いて作られた膜のジシリルメチレン(SiCHSi)基で構成された全炭素の相対パーセンテージよりも158%大きい。
【0085】
図5には、DEMS(登録商標)構造形成剤およびDMEOS構造形成剤を用いて作られた高密度OSG膜についての漏洩電流密度が、1MV/cm~7MV/cmの電界強度の関数として、示されている。絶縁破壊における電界は、少なくとも2Xの漏洩電流密度の急激な上昇として規定される。従って、DMEOS前駆体を用いて作られた膜の絶縁破壊における電界は、5.1MV/cmの電界強度で発生し、一方でDEMS(登録商標)前駆体を用いて作られた膜の絶縁破壊における電界は、4.6MV/cmの電界強度で発生する。絶縁破壊時に、最も高い可能性のあるの電界を備えた低誘電率膜(>4MV/cm)は、集積回路の製造のために好まれる、何故ならば装置構造の絶縁破壊電界は、寸法の減少につれて低下するためである。より高い絶縁破壊時の電界強度は、小さな寸法が、高い電界強度をもたらす可能性がある、BEOLの最下位のレベルで特に重要である。図5には、式Iのヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物、例えばDMEOSを用いて作られた膜が、従来技術の構造形成剤、例えばDEMS(登録商標)を用いて作られた膜に対して、絶縁破壊時により高い電界を有し、そして従って、集積回路の製造には好ましいことが示されている。
【0086】
低漏洩電流密度を備えた低誘電率膜は、集積回路に向上した信頼性をもたらす。低漏洩電流密度は、装置寸法が縮小し続けているので、高い電界強度、≧4MV/cmにおいて、特に重要である。図5に示されているように、DMEOS前駆体を用いて作られた膜の4MV/cmの電界強度における漏洩電流密度は、0.51×10-9A/cmであり、DEMS(登録商標)前駆体を用いて作られた膜の漏洩電流密度(1.24×10-9A/cm)よりも、同じ電界強度において、59%小さい。この例は、式Iのヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物、例えばDMEOS、を用いて作られた膜は、高い電界強度(≧4MV/cm)において、従来技術の構造形成剤、例えばDEMS(登録商標)を用いて作られた膜に対してより小さな漏洩電流密度を有しており、そして従って、集積回路の製造には好ましいことを示している。
【0087】
図5に示された2つの膜の性質が、表2に示されている。両方の膜は3.0の誘電率を有している。DMEOS構造形成剤を用いて作られた膜は、DEMS(登録商標)構造形成剤を用いて作られた膜よりもより高い機械的性質を有しており、その弾性率および硬度は、DEMS(登録商標)構造形成剤を用いて作られた膜よりも、それぞれ40%および57%大きい。DMEOS構造形成剤を用いて作られた膜の、IR分光法によって測定された、相対ジシリルメチレン(SiCHSi)密度は、DEMS(登録商標)構想形成剤を用いて作られた膜の相対ジシリルメチレン密度よりも、240%大きい。ジシリルメチレン基として組み込まれた全炭素のパーセンテージは、DMEOS構造形成剤を用いて作られた膜について、DEMS(登録商標)構造形成剤を用いて作られた膜に対して少なくとも190%大きい。従って、式Iのヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物、例えばDMEOS、を用いて作られた膜は、好ましい膜特性:従来技術のlow-k構造形成剤、例えばDEMS(登録商標)から堆積された膜に対して、予想外に高い機械的性質、予想外に高い絶縁破壊時の電界(≧5MV/cm)、および高い電界強度(≧4MV/cm)における予想外に低い漏洩電流密度、の独特の組み合わせをもたらす独特の特性を有している。理論によって拘束はされないが、それらの独特の膜特性は、それらの膜中の炭素の独特の分布:ジシリルメチレン基の高い密度(>10)を備え、そしてジメチルシリルメチレン基で構成される全炭素の高いパーセンテージ(>50)を備えた、比較的に低い全炭素含有量(<)25%)、に起因している。そのような独特の膜は、式Iで記載される本発明のヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物、例えばDMEOS、を用いて堆積されることができる。
【0088】
【表2】
【0089】
図6には、比較の膜1(DEMS(登録商標)構造形成剤を用いて堆積された)、比較の膜2(MIPSCP構造形成剤を用いて堆積された)、および本発明の膜2(DMEOS構造形成剤を用いて堆積された)の、それらの膜がNHプラズマを用いて損傷された後の、動的SIMSプロファイルを示している。全ての3つの膜が、集積でみられるプラズマ損傷条件を模擬するように、300Wのプラズマ出力で、25秒間のNHプラズマに暴露された。炭素除去の深さ(プラズマ誘起損傷の深さとしても示される)は、動的SIMS深さプロファイルによって示されるような、膜の表面から除去された炭素の深さで表される。
【0090】
図6中の3つの膜の性質が、表3に示されている。これらの膜の誘電率は、3.0~3.1の間である。ヒドリドジメチルアルコキシシラン構造形成剤前駆体、DMEOS、を用いて堆積された膜の機械的強度は、従来技術の構造形成剤前駆体、DEMS(登録商標)およびMIPSCPを用いて作られた膜の機械的強度よりも遥かに大きい。IR分光法によって測定された、DMEOS構造形成剤前駆体を用いて堆積された膜の相対SiCHSi密度は、高く(>10)、一方で、DEMS(登録商標)構造形成剤前駆体を用いて堆積された膜の相対SiCHSi密度は低い(6)。従来技術の構造形成剤MIPSCPを用いて堆積された膜は、そのSIMS深さプロファイルから定められて最も高い全炭素含有量(原子%炭素=34%)、最も高い相対SiCHSi密度(19)、および240nmの波長における最も高い吸光係数の両方を有している。従来技術の構造形成剤DEMS(登録商標)を用いて堆積された膜は、そのSIMS深さプロファイルから定められた最も低い全炭素含有量(原子%炭素=16%)、最も低いSiCHSi密度(6)、および240nmの波長における最も低い吸光係数を有している。SiCHSi基で構成される全炭素のパーセンテージは、表3に規定されているように、DMEOS構造形成剤前駆体を用いて堆積された膜で最も大きく、そして従来技術の構造形成剤DEMS(登録商標)およびMIPSCPを用いて堆積された膜でより小さい。
【0091】
【表3】
【0092】
誘電体膜からの炭素除去に対する耐性は、その膜の全炭素含有量が増加するにつれて向上することは十分に確立されている。例えば、我々の知る限りでは、先行技術の前駆体MIPSCP、またはその誘導体、例えば、1-メチル-1-エトキシ-1-シラシクロペンタンまたはMESCPを用いて作られた膜は、NHプラズマに暴露されたときの炭素除去に対して、今日まで堆積されたいずれかの高密度low-k膜の、最も強い耐性を有している(米国特許第9,922,818号)。このことは、それらの膜の非常に高い炭素含有量に起因している(典型的には>30%)。このことは米国特許第9,922,818号明細書中に説明されており、そこでは、MESCP構造形成剤およびシクロオクタンの組み合わせを用いて作られた、36%の炭素(XPS、原子%)を含むlow-k膜の、NHプラズマへの暴露に続く炭素除去の深さは、DEMS(登録商標)構造形成剤前駆体とシクロオクタンの組み合わせを用いて作られた、23%の炭素(XPS、原子%)を含むlow-k膜よりも、20%小さい(44nmに比べて35nm)。誘電体膜からの炭素除去に対する耐性は、膜中の架橋SiCHSi基の濃度が増加するにつれて、向上することもまた報告されている。従って、表3に列挙された3つの膜について、MIPSCP構造形成剤前駆体を用いて堆積された膜は、NHプラズマに暴露された場合の炭素除去への最も大きな耐性を有し、一方で、DEMS(登録商標)構造形成剤前駆体を用いて堆積された膜は、NHプラズマに暴露された場合の炭素除去への最も小さい耐性を有するはずである。
【0093】
DMEOSおよびMIPSCP構造形成剤前駆体を用いて作られた膜についての、NHプラズマに暴露された後の、SIMS深さプロファイルによって定められた、炭素除去の深さは、約15nmであり、一方で、DEMS(登録商標)構造形成剤前駆体を用いて作られた膜についての、NHプラズマへの暴露の後の炭素除去深さは、遥かに大きく、約24nmである。DEMS(登録商標)構造形成剤前駆体を用いて作られた膜についての炭素除去の大きい深さが、この膜が、最も低い全炭素含有量と最も低いSiCHSi基の密度を有するので、予測される。予想外にも、MIPSCPを用いて作られた膜からの炭素除去の深さは、MIPSCP系膜が最も大きな炭素含有量(そのSIMS深さプロファイルから定められた34原子%の炭素)および最も高いSiCHSi基密度(IRによる相対SiCHSi密度=19)を有するにもかかわらず、最も小さくはない。より驚くべきことには、式Iに記載されたヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物、DMEOS、を用いて作られた膜は、従来技術のMIPSCP構造形成剤を用いて作られた膜と同じ、SIMS深さプロファイルによって定められた、炭素除去の深さを有している。このことは、DMEOS構造形成剤化合物を用いて作られた膜は、MIPSCP構造形成剤を用いて作られた膜に対して、それらのSIMS深さプロファイルから定められた、有意により低い炭素含有量を有しているので(44%より少ない炭素)、極めて予想外である。このことは、式Iで記載されたヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物、例えばDMEOS、を用いて作られた膜の他の独特の特性であり、それは、式Iで記載されたヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物を用いて作られた膜は、比較的に低い全炭素含有量(<約25原子%)を有する膜について予想されるよりも、NHプラズマに暴露されたときに、炭素除去に対する遥かにより高い耐性を有することである。理論によって拘束はされないが、この独特の特性は、それらの膜中の炭素の独特の分布に起因する:高密度のジシリルメチレン基(>約10、IR分光法によって測定された)を備えた比較的に低い全炭素含有量(<約25%)、およびジシリルメチレン基で構成される全炭素含有量の高いパーセンテージ(>約50、相対SiCHSi密度(IR分光法によって測定された))の、膜中の全炭素含有量の割合(XPSによって測定された)に対する比として計算された)、および240nmにおける低い吸光係数で示される低アモルファス炭素含有量。
【0094】
表3中のDMEOS構造形成剤前駆体を用いて作られた膜は、従来技術の構造形成剤MIPSCP(56)およびDEMS(登録商標)(33)を用いて作られた膜に対して、ジシリルメチレン基で構成される全炭素含有量の最も高いパーセンテージ(87)を有している。実際に、従来技術の構造形成剤MIPSCPは、NHプラズマへの暴露の後の炭素除去に対する強い耐性を与えるように、炭素の高いパーセンテージを備えた膜を堆積するように、特別に設計された。この膜は、高いパーセンテージの全炭素(そのSIMS深さプロファイルから測定された34原子%)およびその赤外スペクトルによって定められた高い密度のSiCHSi基を含んでいる一方で、この膜は、高い密度の他の形態の炭素、例えば末端ケイ素メチル基(Si(CH、ここでxは1、2または3である)およびアモルファス炭素もまた含んでいる。従ってlow-k膜中の炭素の種類が、膜の全炭素含有量よりも、NH系プラズマへの暴露での炭素除去に対する膜の耐性を決定するより重要な因子であることが明らかである。すなわち、高いパーセンテージの末端ケイ素メチル基で構成される高い炭素含有量および/または高いパーセンテージのアモルファス炭素を備えた高密度のlow-k膜は、NH系のプラズマへの暴露での炭素除去に対する高い耐性を必ずしも有してはいない。
【0095】
例えば、表3に示されているように、図6中のMIPSCP系膜の240nmにおける吸光係数は、図6中のDMEOS系膜の240nmにおける吸光係数よりも333%大きい。240nmにおける吸光係数の大きさは、その膜中のアモルファス炭素の量に比例するので、MIPSCP系膜は、DMEOS系膜よりもアモルファス炭素を333%多く含んでいる。仮に、より大きなアモルファス炭素の含有量が、NHプラズマへの暴露による炭素除去へのより大きな耐性をもたらすのであれば、MIPSCP系膜は、炭素除去へのより大きな耐性を有していることが予測されるであろう。しかしながら、図6に示されているように、MIPSCP系膜とDMEOS系膜の炭素除去の深さは同じ、約15nmである。従って、膜中のアモルファス炭素の量は、NHプラズマに暴露された場合の炭素除去の膜の耐性の指標ではない。
【0096】
図6中の、従来技術のDEMS(登録商標)系膜、従来技術のMIPSCP系膜、および本発明のDMEOS系膜の相対末端ケイ素メチル密度(Si(CH、ここで、x=1、2または3)が、表3に与えられている。従来技術のDEMS(登録商標)系膜が最も高い相対末端ケイ素メチル密度を有しており、そして本発明のDMEOS系膜は、最も低い相対末端ケイ素メチル密度を有している。仮に、高密度の堆積されたままのlow-k膜のより高い末端ケイ素メチル濃度がNHプラズマへの暴露での炭素除去へのより大きな耐性をもたらすとすれば、DEMS(登録商標)系膜は、NHプラズマへの暴露での炭素除去の最も小さい深さを有することが予想されるであろうし、そしてDMEOS系膜は、NHプラズマへの暴露での炭素除去の最も大きな深さを有することが予想されるであろう。しかしながら、図6に示されているように、本発明のDMEOS系膜の炭素除去の深さは最も小さく(約15nm)、一方でDEMS(登録商標)系膜の炭素除去の深さは最も大きい(約24nm)。従って、膜中のより高い相対末端ケイ素メチル密度は、高密度のlow-k膜が、NHプラズマに暴露された場合の炭素除去へのより高い耐性を有するであろうことを示すものではない。実際に、この例は、より低い相対末端ケイ素メチル密度を有する高密度low-k膜が、NHプラズマに暴露された場合の炭素除去に対してより高い耐性を示す可能性があることを示している。
【0097】
高密度のlow-k誘電体膜の一連の堆積物が、MIPSCP、DEMS(登録商標)またはDMEOSのいずれかを構造形成剤として用いて、300mmPECVD反応器で、以下の範囲の種々のプロセス条件の下で堆積された:175~615Wのプラズマ出力、6.7~9.5トールのチャンバ圧力、350~400℃の基材温度、0~125sccmのO流量、625~1500sccmのHeキャリア流量、600~2500mg/分の構造形成剤流量、および380ミルの電極間隔。240nmの波長における吸光係数が、上記のように分光エリプソメトリーによって測定された。図7に、異なる誘電率を有する、高密度のlow-kのMIPSCP、DEMS(登録商標)、およびDMEOS系膜の、240nmの波長における吸光係数の関係が示されている。240nmの波長における吸光係数の大きさは、アモルファス炭素と同様の炭化水素構造中のsp結合炭素のπ-π転移に帰属されることができ、吸光係数が大きければ大きいほど、その膜中のアモルファス炭素の濃度はより高い。図7に示されているように、従来技術もしくはDEMS(登録商標)系膜および新規な本発明のDMEOS系膜は、誘電率が約2.9から約3.2へと増加するにつれて、240nmにおいて低い吸光係数(0.01)を有している。対照的に、MIPSCP系膜は、同じ誘電率の範囲に亘って、240nmにおいて、遥かに高い吸光係数(>>0.01)を有している。MIPSCP系膜の240nmにおける吸光係数はまた、誘電率が約2.9から約3.2へと増加するにつれて、急激に増加する。このことは、従来技術のMIPSCP系膜が、従来技術もしくはDEMS(登録商標)系膜および新規な本発明のDMEOS系膜よりも、遥かに大きなアモルファス炭素含有量を有していることを示している。より高いアモルファス炭素含有量は、上記のように、堆積されたままの高密度low-k膜がNHプラズマに暴露された場合に、必ずしも炭素除去へのより大きな耐性をもたらさない。このことは、本発明のDMEOS系膜が、従来技術のMIPSCP系膜および従来技術のDEMS(登録商標)系膜に対して、炭素の独特の分布を有していることを示している。すなわち、DMEOS系膜は、240nmの波長における低い吸光係数によって示されるように、相対的に低い全炭素含有量(<約25%)、ジシリルメチレン基の高い密度(>約10、IR分光法によって測定された)、および低いアモルファス炭素含有量を有している。
【0098】
高密度のlow-k誘電体膜の一連の堆積物が、300mmPECVD反応器で、以下の範囲の種々のプロセス条件の下で堆積された:175~615Wのプラズマ出力、6.7~9.5トールのチャンバ圧力、350~400℃の基材温度、0~125sccmのO流量、625~1500sccmのHeキャリア流量、600~2500mg/分の構造形成剤流量、および380ミルの電極間隔。ここで説明されたように、炭素含有量が、XPSによって測定され、そしてSiCHSi基の相対密度が、赤外分光法によって測定された。ジシリルメチレン基で構成される全炭素含有量のパーセンテージは、相対SiCHSi密度(IR分光法によって測定された)の、膜中の全炭素含有量の割合(XPSによって測定された)に対する比として計算された。図8には、高密度のlow-kのMIPSCP、DEMS(登録商標)、およびDMEOS系膜の、ジシリルメチレン基で構成される全炭素含有量のパーセンテージの間の関係が示されている。図8に示されるように、従来技術もしくはDMEOS系膜は、ジシリルメチレン基で構成される全炭素含有量の最も低いパーセンテージを有しており、そして新規な本発明のDMEOS系膜は、誘電率が約2.9から約3.2へと増加するにつれて、ジシリルメチレン基で構成される全炭素含有量の最も高いパーセンテージを有している。MIPSCP系膜がジシリルメチレン基の高い密度を有している一方で、誘電率が約2.9から約3.2まで増加するときのジシリルメチレン基で構成される全炭素のパーセンテージは、新規な本発明のDMEOS系膜のそれよりも低い。このことは、本発明のDMEOS系膜が、従来技術のMIPSCP系膜および従来技術のDEMS(登録商標)系膜に対して、独特の炭素の分布を有していることを示している。すなわち、DMEOS系膜は、相対的に低い全炭素含有量(<約25%)、ジシリルメチレン基の高い密度(>約10、IR分光法によって測定された)、240nmの波長における低い吸光係数によって示される低いアモルファス炭素含有量、およびジシリルメチレン基で構成される全炭素含有量の高いパーセンテージ(>約50、相対SiCHSi密度(IR分光法によって測定された)の、膜中の全炭素含有量の割合(XPSによって測定される)に対する比として計算される)を有している。
【0099】
図9には、一連のDMEOS系膜および一連のDEMS(登録商標)系膜についての、赤外分光法によって測定されたジシリルメチレン基の相対密度が、300~400℃の堆積温度の関数として、示されている。DMEOS系膜についての堆積条件は、堆積温度以外は、同じであった。同様に、DEMS(登録商標)系膜についての堆積条件は、堆積温度以外は、同じであった。データは、DMEOS系膜とDEMS(登録商標)系膜の両方について、ジシリルメチレン基の相対密度は、基材温度が上昇するにつれて、直線的に増加することを示している。更に、DMEOS系膜の線の傾きは、DEMS(登録商標)系膜の線の傾きの2倍である。それぞれの線の傾きは、温度の関数としての、ジシリルメチレン基の相対密度の増加速度に等しいので、図9は、ジシリルメチレン基の形成の速度は、DMEOS系膜が、DEMS(登録商標)系膜に対して、2倍大きいことを示している。このことは、本発明のDMEOS系膜の従来技術のDEMS(登録商標)系膜に対する更なる独特の特性である:増加する温度の関数としての相対ジシリルメチレン密度の増加速度は、DMEOS系膜では、従来技術のDEMS(登録商標)系膜に対してより大きい。
【0100】
Low-k誘電体膜中のより高い全炭素含有量が、NHプラズマに暴露された場合の炭素除去への高い耐性を与える可能性がある一方で、表3、図6図7、および図8中のデータは、膜中の炭素の種類が、全炭素含有量よりも、より重大な役割を演じることを示している。特には、式Iで記載されるヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物を用いて作られた、比較的に低い全炭素含有量(<約25%)、ジシリルメチレン基の高い密度(>約10、IR分光法によって測定された)、ジシリルメチレン基で構成された全炭素含有量の高いパーセンテージ(>約50、相対SiCHSi密度(IR分光法によって測定された)の、膜中の全炭素含有量の割合(XPSによって測定)に対する比として計算される)、ならびに低いアモルファス炭素含有量、を有する膜は、NHプラズマへの暴露での炭素除去への高い耐性を与えるように特に設計された従来技術の構造形成剤前駆体、例えばMIPSCP、を用いて作られた、遥かにより高い炭素含有量を備えた膜と同じ、NHプラズマへの暴露での炭素除去への耐性を示す。
【0101】
表4には。2.9の誘電率を有する、式Iで与えられたヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物の固有の利点の更なる例が与えられている。表4の第1欄には、12GPaの弾性率、17%の炭素含有量、4のジシリルメチレン基の相対密度、および24のジシリルメチレン基で構成される全炭素含有量のパーセンテージ、を有する高密度の堆積されたままのDEMS(登録商標)系膜が示されている。対照的に、DMEOS系膜は、より高い弾性率(15GPa)、より高い炭素含有量(21%)、より高いジシリルメチレン基の相対密度(14、DEMS(登録商標)系膜に対して250%増)、より高いジシリルメチレン基で構成される全炭素含有量のパーセンテージ(68、DEMS(登録商標)系膜に対して183%増)を有している。
【0102】
【表4】
【0103】
表5には。3.1の誘電率を有する、式Iで与えられたヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物の固有の利点の更なる例が与えられている。表5の第1の欄は、17GPaの弾性率、14%の炭素含有量、6のジシリルメチレン基の相対密度、および43のジシリルメチレン基で構成された全炭素含有量のパーセンテージを有する高密度の堆積されたままのDEMS(登録商標)系膜を示している。対照的に、高密度の堆積されたままのDMEOS系膜は、より高い弾性率(23GPa)、より高い炭素含有量(22%)、より高いジシリルメチレン基の相対密度(21、DEMS(登録商標)系膜に対して250%増)、およびジシリルメチレン基で構成された全炭素含有量のより高いパーセンテージ(95、DEMS(登録商標)系膜に対して121%増)、を有している。
【0104】
【表5】
【0105】
従って、式Iで与えられたヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物は、特にはラインの最終工程の最下位のレベルのための、集積回路製造における高密度の堆積されたままのlow-k材料への緊急の要求を満足させる。式Iで与えられたヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物、例えばDMEOSは、揮発性の構造形成剤low-k前駆体であり、高い機械的強度を備えた高密度low-k膜を堆積させるのに用いられることができ、低い全炭素含有量、例えば25原子%未満、を有する場合にも、ネットワーク構造中に高いSiCHSi密度(IR分光法によって測定された)を有し、SiCHSi基で構成された炭素含有量の高い割合、すなわちIRによって測定された相対SiCHSi密度の、XPSによって測定された膜中の炭素の割合に対する比として計算されて、約50以上、および240nmの波長におけるその吸光係数によって定められた比較的に低いアモルファス炭素含有量を有する。更に、式Iで与えられたヒドリドジメチルアルコキシシラン化合物、例えばDMEOSは、プラズマ誘起損失への強い耐性、高い電界強度(≧4MV/cm)での1×10-9A/cmの漏洩電流密度、および誘電率の与えられた値(k≦3.5)での高い絶縁破壊電圧(≧5MV/cm)を有している。それらの前駆体は、高い蒸気圧(低分子量)を有し、上記供給ラインまたはプロセスポンプ排出管中で凝縮することなしに、気相薬品としての反応チャンバ中への供給を促進する。更に、そのような前躯体から堆積された膜は、膜の機械的性質または膜の電気的性質を向上するための、後堆積処理、例えばUV硬化を必要としない。すなわち、この堆積されたままの膜の固有の性質は、後処理工程(すなわち、UV硬化)が必要とされないように、集積回路の製造のための要求に合致しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】