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特表2024-519336畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(54)【発明の名称】畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/026 20060101AFI20240501BHJP
   G10L 25/30 20130101ALI20240501BHJP
   G10L 25/66 20130101ALI20240501BHJP
【FI】
A61B5/026 140
G10L25/30
G10L25/66
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569940
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 KR2022006887
(87)【国際公開番号】W WO2022240234
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】10-2021-0062071
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514274672
【氏名又は名称】延世大学校 産学協力団
【氏名又は名称原語表記】UIF (University Industry Foundation), Yonsei University
【住所又は居所原語表記】50,YONSEI-RO, SEODAEMUN-GU, SEOUL 03722, REPUBLIC OF KOREA
(71)【出願人】
【識別番号】504314133
【氏名又は名称】ソウル ナショナル ユニバーシティ ホスピタル
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウォン ジョンユン
(72)【発明者】
【氏名】ハン キチャン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジェヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク インソン
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA11
4C017AC30
4C017BC11
4C017BD04
4C017FF05
(57)【要約】
本発明の好ましい実施形態による畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法および装置は、畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network、CNN)を含む狹窄予測モデルに基づいて、対象体の透析接近路に対するオーディオデータから該当透析接近路の狹窄程度を予測することによって、より正確に透析接近路の狹窄程度を予測することができ、それによって追加の検査および処置を案内することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象体の透析接近路に関するオーディオデータを取得する段階と、
既学習された畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network、CNN)を含む狹窄予測モデルに基づいて、前記オーディオデータに対応する狹窄程度を予測する段階と
を含む、畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法。
【請求項2】
前記オーディオデータ取得段階は、
前記オーディオデータを前処理することからなり、
前記狹窄程度予測段階は、
前処理された前記オーディオデータを前記狹窄予測モデルに入力し、前記狹窄予測モデルの出力値に基づいて前記オーディオデータに対応する狹窄程度を予測することからなる、
請求項1に記載の畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法。
【請求項3】
前記オーディオデータ取得段階は、
前記オーディオデータから予め設定された区間の前記オーディオデータを取得し、予め設定された区間の前記オーディオデータに基づいてスペクトログラム(spectrogram)を取得し、取得した前記スペクトログラム(spectrogram)を正規化し、正規化した前記スペクトログラム(spectrogram)の大きさを調整することからなる、
請求項2に記載の畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法。
【請求項4】
施術前に取得した透析接近路に対する第1オーディオデータおよび施術後に取得した透析接近路に対する第2オーディオデータを含む学習データセットに基づいて、前記狹窄予測モデルを学習する段階と
をさらに含む、請求項1に記載の畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法。
【請求項5】
前記狹窄予測モデルは、
スペクトログラム(spectrogram)を入力とし、狹窄程度値を出力とする、
請求項4に記載の畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法。
【請求項6】
前記狹窄予測モデル学習段階は、
前記学習データセットを前処理し、
前記第1オーディオデータは第1正解ラベル(label)とし、前記第2オーディオデータは第2正解ラベル(label)とし、前処理した前記学習データセットに基づいて前記狹窄予測モデルを学習することからなる、
ことを含む、請求項5に記載の畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法。
【請求項7】
前記狹窄予測モデル学習段階は、
前記学習データセットに含まれたオーディオデータのそれぞれについて、前記オーディオデータから予め設定された区間の前記オーディオデータを取得し、予め設定された区間のオーディオデータに基づいてスペクトログラム(spectrogram)を取得し、取得した前記スペクトログラム(spectrogram)を正規化し、正規化した前記スペクトログラム(spectrogram)を水平シフト(horizontal shifting)して数を増量し、増量された前記スペクトログラム(spectrogram)のサイズを調整して、前記学習データセットを前処理することからなる、
請求項6に記載の畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法。
【請求項8】
前記狹窄予測モデル学習段階は、
前処理した前記学習データセットを予め設定された基準に従って訓練データセット、チューニングデータセットおよび検証データセットに区分し、
前記狹窄予測モデルを前記訓練データセットを用いて学習し、学習された前記狹窄予測モデルを前記チューニングデータセットを用いてチューニングし、チューニングされた前記狹窄予測モデルを前記検証データセットを用いて検証することからなる、
請求項6に記載の畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法。
【請求項9】
請求項1に記載の畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法をコンピュータで実行させるためにコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラム。
【請求項10】
畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network、CNN)を用いて透析接近路の狹窄を予測する狹窄予測装置であって、
畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を使用して透析接近路の狹窄を予測するための1つ以上のプログラムを記憶するメモリと、
前記メモリに記憶された前記1つ以上のプログラムに従って畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を使用して透析接近路の狹窄を予測するための動作を実行する1つ以上のプロセッサと
を含み、
前記プロセッサは、
対象体の透析接近路に関するオーディオデータを取得し、
既学習された畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を含む狹窄予測モデルに基づいて、前記オーディオデータに対応する狹窄の程度を予測する、
畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、
前記オーディオデータを前処理し、
前処理された前記オーディオデータを前記狹窄予測モデルに入力し、前記狹窄予測モデルの出力値に基づいて前記オーディオデータに対応する狹窄程度を予測する、
請求項10に記載の畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、
施術前に取得した透析接近路に対する第1オーディオデータおよび施術後に取得した透析接近路に対する第2オーディオデータを含む学習データセットに基づいて、前記狹窄予測モデルを学習する、
請求項10に記載の畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、
前記学習データセットを前処理し、
前記第1オーディオデータは第1正解ラベル(label)とし、前記第2オーディオデータは第2正解ラベル(label)とし、前処理した前記学習データセットに基づいて前記狹窄予測モデルを学習する、
請求項12に記載の畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法および装置に関し、より詳しくは、治療を必要とする臨床的に有意な狹窄を伴った透析接近路を診断する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動静脈瘻などのような透析接近路の異常の有無の確認は、触診と聴診に大きく依存している実情がある。実際に狹窄部位の前後に沿って触診をしたときに触れる振動(thrill)と拍動(pulsation)が部位によって大きな差を見せることになる。触診上の振動は、聴診器を使用したときに可聴周波数範囲の高強度ノイズ(high pitch bruit)と同じ振動音で聞こえることがある。同様にノイズ(bruit)の有無や強度で動静脈瘻の狹窄と閉鎖を間接的に診断することができるが、聴音に熟達した医師が少ないだけでなく、聴音に対する判断にも主観的な要素が多く介入し、血管拡張術のような治療を要する有意な狹窄を客観的に鑑別することは容易ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が達成しようとする目的は、畳み込みニューラルネットワーク(convolution neural network、CNN)を含む狹窄予測モデルに基づいて、対象体の透析接近路に対するオーディオデータから当該透析接近路の狹窄程度を予測する、畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法および装置を提供することにある。
【0004】
本発明の明示されていない他の目的は、以下の詳細な説明およびその効果から容易に推論できる範囲内でさらに考慮することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するための本発明の好ましい実施形態による畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法は、対象体の透析接近路に関するオーディオデータを取得するこ段階と、既学習された畳み込みニューラルネットワーク(convolution neural network、CNN)を含む狹窄予測モデルに基づいて、前記オーディオデータに対応する狹窄程度を予測する段階とを含む。
【0006】
ここで、前記オーディオデータ取得段階は、前記オーディオデータを前処理することからなり、前記狹窄程度予測段階は、前処理された前記オーディオデータを前記狹窄予測モデルに入力し、前記狹窄予測モデルの出力値に基づいて、前記オーディオデータに対応する狹窄の程度を予測することからなってもよい。
【0007】
ここで、前記オーディオデータ取得段階は、前記オーディオデータから予め設定された区間の前記オーディオデータを取得し、予め設定された区間の前記オーディオデータに基づいてスペクトログラム(spectrogram)を取得し、取得した前記スペクトログラム(spectrogram)を正規化し、正規化した前記スペクトログラム(spectrogram)のサイズを調整することからなってもよい。
【0008】
ここで、施術前に取得した透析接近路に対する第1オーディオデータおよび施術後に取得した透析接近路に対する第2オーディオデータを含む学習データセットに基づいて、前記狹窄予測モデルを学習する段階とをさらに含んでもよい。
【0009】
ここで、前記狹窄予測モデルは、スペクトログラム(spectrogram)を入力とし、狹窄程度値を出力としてもよい。
【0010】
ここで、前記狹窄予測モデル学習段階は、前記学習データセットを前処理し、前記第1オーディオデータは第1正解ラベル(label)とし、前記第2オーディオデータは第2正解ラベル(label)とし、前処理された前記学習データセットに基づいて前記狹窄予測モデルを学習することからなってもよい。
【0011】
ここで、前記狹窄予測モデル学習段階は、前記学習データセットに含まれたオーディオデータのそれぞれについて、前記オーディオデータから予め設定された区間の前記オーディオデータを取得し、予め設定された区間のオーディオデータに基づいてスペクトログラム(spectrogram)を取得し、取得した前記スペクトログラム(spectrogram)を正規化し、正規化した前記スペクトログラム(spectrogram)を水平シフト(horizontal shifting)して数を増量し、増量した前記スペクトログラム(spectrogram)のサイズを調整して、前記学習データセットを前処理することからなってもよい。
【0012】
ここで、前記狹窄予測モデル学習段階は、前処理した前記学習データセットを予め設定された基準に従って訓練データセット、チューニングデータセット、および検証データセットに区分し、前記狹窄予測モデルを前記訓練データセットを用いて学習し、学習された前記狹窄予測モデルを前記チューニングデータセットを使用してチューニングし、チューニングされた前記狹窄予測モデルを前記検証データセットを使用して検証することからなってもよい。
【0013】
前記の技術的課題を達成するための本発明の好ましい実施形態によるコンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶され、前記の畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法のいずれかをコンピュータで実行させる。
【0014】
前記の目的を達成するために、本発明の好ましい実施形態による畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測装置は、畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network、CNN)を用いて透析接近路の狹窄を予測する狹窄予測装置であって、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を使用して透析接近路の狹窄を予測するための1つ以上のプログラムを記憶するメモリと、前記メモリに記憶された前記1つ以上のプログラムに従って畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を使用して透析接近路の狹窄を予測するための動作を行う1つ以上のプロセッサとを含み、前記プロセッサは、対象体の透析接近路に対するオーディオデータを取得し、既学習された畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を含む狹窄予測モデルに基づいて、前記オーディオデータに対応する狹窄程度を予測する。
【0015】
ここで、前記プロセッサは、前記オーディオデータを前処理し、前処理された前記オーディオデータを前記狹窄予測モデルに入力し、前記狹窄予測モデルの出力値に基づいて前記オーディオデータに対応する狹窄程度を予測することができる。
【0016】
ここで、前記プロセッサは、施術前に取得した透析接近路に対する第1オーディオデータおよび施術後に取得した透析接近路に対する第2オーディオデータを含む学習データセットに基づいて、前記狹窄予測モデルを学習することができる。
【0017】
ここで、前記プロセッサは、前記学習データセットを前処理し、前記第1オーディオデータは第1正解ラベル(label)とし、前記第2オーディオデータは第2正解ラベル(label)とし、前処理した前記学習データセットに基づいて前記狹窄予測モデルを学習することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の好ましい実施形態による畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法および装置によれば、畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network、CNN)を含む狹窄予測モデルに基づいて、対象体の透析接近路に対するオーディオデータから該当透析接近路の狹窄程度を予測することによって、より正確に透析接近路の狹窄程度を予測することができ、それによって追加の検査および処置を案内することができる。
【0019】
本発明の効果は以上で言及した効果に制限されず、言及されていない他の効果は以下の記載から通常の技術者に明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の好ましい実施形態による畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測装置を説明するためのブロック図である。
図2】本発明の好ましい実施形態による畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法を説明するためのフローチャートである。
図3】本発明の好ましい実施形態による狹窄予測モデルの学習過程を説明するための図である。
図4図3に示した学習データセットの前処理過程を説明するための図である。
図5】本発明の好ましい実施形態による狹窄予測モデルを用いた狹窄程度予測過程を説明するための図である。
図6図5に示したオーディオデータの前処理過程を説明するための図である。
図7】本発明の好ましい実施形態による狹窄予測モデル学習過程と狹窄程度予測過程の一例を説明するための図である。
図8】本発明の好ましい実施形態によるスペクトログラム(spectrogram)取得過程の一例を説明するための図である。
図9図8に示した過程を通じて取得したスペクトログラム(spectrogram)の一例を示す図である。
図10図8に示した過程を通じて取得したスペクトログラム(spectrogram)の一例を示す図であり、図10(a)は、施術前に取得した透析接近路に対するオーディオデータに基づいて取得したスペクトログラム(spectrogram)を示し、図10(b)は、施術後に取得した透析接近路に対するオーディオデータに基づいて取得したスペクトログラム(spectrogram)を示す。
図11】本発明の好ましい実施形態による狹窄予測モデルの性能を説明するための図であり、図11の(a)は混同行列(confusion matrix)を示し、図11の(b)はROC(receiver operation characteristic)曲線を表す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の利点および特徴、およびそれらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述する実施形態を参照することによって明らかになるであろう。しかしながら、本発明は以下に掲げる実施形態に限定されるものではなく、様々な形態で具現することができ、本実施形態は本発明の掲示を完全にし、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に発明のカテゴリを完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は特許請求の範囲のみによって定義される。明細書全体にわたって、同じ参照番号は同じ構成要素を指す。
【0022】
他の定義がなければ、本明細書で使用されるすべての用語(技術的および科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に共通に理解され得る意味で使用され得る。さらに、一般的に使用される辞書で定義されている用語は、特に明確に定義されていない限り、理想的にまたは過度に解釈されない。
【0023】
本明細書において「第1」、「第2」などの用語は、ある構成要素を他の構成要素から区別するためのものであり、これらの用語によって権利範囲が限定されるべきではない。例えば、第1構成要素は第2構成要素と命名することができ、同様に第2構成要素も第1構成要素と命名することができる。
【0024】
本明細書において、各段階において識別符号(例えば、a、b、cなど)は説明の便宜のために使用されるものであり、識別符号は各段階の順序を説明するものではなく、各段階は文脈上明らかに特定の順序を記載しない限り、明記した順序と異なって発生することもある。すなわち、各段階は、明記した順序と同じく行われてもよく、実質的に同時に実行されてもよく、逆の順序で実行されてもよい。
【0025】
本明細書において、「有する」、「有してもよい」、「含む」または「含んでもい」などの表現は、該当特徴(例えば、数値、機能、動作、または部品などの構成要素)の存在を指し、追加の特徴の存在を排除しない。
【0026】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係る畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法および装置の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0027】
まず、図1を参照して、本発明の好ましい実施形態による畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測装置について説明する。
【0028】
図1は、本発明の好ましい実施形態による畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測装置を説明するためのブロック図である。
【0029】
図1を参照すると、本発明の好ましい実施形態による畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測装置100は、畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network、CNN)を含む狹窄予測モデルに基づいて、対象体の透析接近路(動静脈瘻など)に対するオーディオデータから当該透析接近路の狹窄程度を予測することができる。
【0030】
このために、狹窄予測装置100は、1つ以上のプロセッサ110、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体130、および通信バス150を含んでもよい。
【0031】
プロセッサ110は、狹窄予測装置100が動作するように制御することができる。例えば、プロセッサ110は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体130に記憶された1つ以上のプログラム131を実行することができる。1つ以上のプログラム131は、1つ以上のコンピュータ実行可能命令語を含んでもよく、コンピュータ実行可能命令語は、プロセッサ110によって実行される場合、狹窄予測装置100が畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を使用して透析接近路の狹窄を予測するようにするための動作を実行するように構成されることができる。
【0032】
コンピュータ読み取り可能な記憶媒体130は、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を使用して透析接近路の狹窄を予測するためのコンピュータ実行可能命令語ないしプログラムコード、プログラムデータ、および/または他の適切な形態の情報を記憶するように構成される。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体130に記憶されたプログラム131は、プロセッサ110によって実行可能な命令語の集合を含む。一実施形態において、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体130は、メモリ(ランダムアクセスメモリなどの揮発性メモリ、不揮発性メモリ、またはそれらの適切な組み合わせ)、1つ以上の磁気ディスク記憶デバイス、光学ディスク記憶デバイス、フラッシュメモリデバイス、その他の狹窄予測装置100によってアクセスされ所望の情報を記憶することのできる他の形態の記憶媒体、またはそれらの適切な組み合わせであってもよい。
【0033】
通信バス150は、プロセッサ110、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体130を含めて狹窄予測装置100の他の様々な構成要素を相互接続する。
【0034】
狹窄予測装置100はまた、1つ以上の入出力装置のためのインターフェースを提供する1つ以上の入出力インターフェース170および1つ以上の通信インターフェース190を含んでもよい。入出力インターフェース170および通信インターフェース190は通信バス150に接続される。入出力装置(図示せず)は、入出力インターフェース170を介して狹窄予測装置100の他のコンポーネントに接続されることができる。
【0035】
次に、図2図6を参照して、本発明の好ましい実施形態による畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法について説明する。
【0036】
図2は、本発明の好ましい実施形態による畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法を説明するためのフローチャートであり、図3は、本発明の好ましい実施形態による狹窄予測モデルの学習過程を説明するための図であり、図4は、図3に示す学習データセットの前処理過程を説明するための図であり、図5は、本発明の好ましい実施形態による狹窄予測モデルを用いた狹窄程度予測過程を説明するための図であり、図6は、図5に示したオーディオデータの前処理過程を説明するための図である。
【0037】
図2を参照すると、狹窄予測装置100のプロセッサ110は、学習データセットに基づいて狹窄予測モデルを学習することができる(S110)。
【0038】
ここで、狹窄予測モデルは畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を含み、スペクトログラム(spectrogram)を入力とし、狹窄程度値を出力とすることができる。例えば、狹窄程度値は、透析接近路の狹窄程度が50%以上である確率を示す値であり、0~1の間の値を有することができる。
【0039】
そして、学習データセットは、血管拡張術の施術前に取得した透析接近路に関する第1オーディオデータおよび血管拡張術の施術後に取得した透析接近路に関する第2オーディオデータを含んでもよい。例えば、血管拡張術を施術する前に、患者の透析接近路(動静脈瘻など)に対するオーディオデータ(20Hz~1,000Hzの間の可聴周波数帯域の音)を電子聴診器などを用いて取得することができる。これと同様に、血管拡張術を施術した後に、患者の透析接近路(動静脈瘻など)に関するオーディオデータを電子聴診器などを用いて取得することができる。
【0040】
例えば、プロセッサ110は、図3に示すように、「学習データセットの前処理過程」→「狹窄予測モデルの学習過程」→「狹窄予測モデルのチューニング過程」→「狹窄予測モデルの検証過程」を経て、最終狹窄予測モデルを学習することができる。
【0041】
すなわち、プロセッサ110は学習データセットを前処理することができる。
【0042】
図4を参照してより詳細に説明すると、プロセッサ110は、学習データセットに含まれたオーディオデータのそれぞれについて、以下のような過程を経て前処理することができる。
【0043】
プロセッサ110は、オーディオデータから予め設定された区間のオーディオデータを取得することができる。例えば、プロセッサ110は、ノイズなどの影響を排除するために、予め設定された区間(2秒~8秒など)のオーディオデータを抽出することができる。
【0044】
プロセッサ110は、予め設定された区間のオーディオデータに基づいてスペクトログラム(spectrogram)を取得することができる。例えば、プロセッサ110は、フーリエ変換(Fourier transform、FT)などを用いてオーディオデータをスペクトログラム(spectrogram)に変換することができる。
【0045】
プロセッサ110は、取得したスペクトログラム(spectrogram)を正規化(normalization)することができる。
【0046】
プロセッサ110は、データ増強(data augmentation)を実行する前に、正規化したスペクトログラム(spectrogram)から不要領域(縁の境界領域など)を除去することができる。
【0047】
プロセッサ110は、正規化されたスペクトログラム(spectrogram)を水平シフト(horizontal shifting)して数を増量することができる。例えば、プロセッサ110は、スペクトログラム(spectrogram)を基準として時間軸から複数回水平シフト(horizontal shifting)してスペクトログラム(spectrogram)の数を増加させることができる。
【0048】
プロセッサ110は、増量されたスペクトログラム(spectrogram)のサイズを調整することができる。例えば、プロセッサ110は、スペクトログラム(spectrogram)のサイズが予め設定されたサイズ(例えば、512×512など)に減少するようにサイズ調整することができる。
【0049】
その後、プロセッサ110は、第1オーディオデータは第1正解ラベル(label)とし、第2オーディオデータは第2正解ラベル(label)として、前処理した学習データセットに基づいて狹窄予測モデルを学習することができる。
【0050】
ここで、第1正解ラベルは、透析接近路の狹窄程度が50%以上の状態を示し、例えば「1」に設定されることができる。第2正解ラベルは、透析接近路の狹窄の程度が50%未満の状態を示し、例えば「0」に設定されることができる。
【0051】
より詳細に説明すると、プロセッサ110は、前処理された学習データセットに基づいて、以下のような過程を経て狹窄予測モデルを学習することができる。
【0052】
プロセッサ110は、前処理した学習データセットを、予め設定された基準に従って訓練データセット、チューニングデータセット、および検証データセットに分けることができる。例えば、プロセッサ110は、予め設定された割合である「7:2:1」に従って、学習データセットの第1オーディオデータセットを、訓練データセット、チューニングデータセット、および検証データセットに分け、学習データセットの第2オーディオセットを、訓練データセット、チューニングデータセット、および検証データセットに分けることができる。
【0053】
プロセッサ110は、狹窄予測モデルを、訓練データセットを使用して学習することができる。
【0054】
プロセッサ110は、学習された狹窄予測モデルを、チューニングデータセットを使用してチューニングすることができる。
【0055】
プロセッサ110は、チューニングされた狹窄予測モデルを、検証データセットを使用して検証することができる。
【0056】
その後、プロセッサ110は、対象体の透析接近路に関するオーディオデータを取得することができる(S130)。
【0057】
例えば、プロセッサ110は、図5に示すように、「オーディオデータの取得過程」→「オーディオデータの前処理過程」を経て、オーディオデータを取得することができる。
【0058】
すなわち、プロセッサ110は、対象体の透析接近路に関するオーディオデータを取得することができる。例えば、狹窄程度を判断する対象患者の透析接近路(動静脈瘻など)に対するオーディオデータ(20Hz~1,000Hzの間の可聴周波数帯域の音)を電子聴診器などを用いて取得することができる。
【0059】
そして、プロセッサ110は、取得したオーディオデータを前処理することができる。
【0060】
図6を参照してより詳細に説明すると、プロセッサ110は、オーディオデータに対して以下のような過程を経て前処理することができる。
【0061】
プロセッサ110は、オーディオデータから予め設定された区間のオーディオデータを取得することができる。例えば、プロセッサ110は、ノイズなどの影響を排除するために、予め設定された区間(2秒~8秒など)のオーディオデータを抽出してもよい。
【0062】
プロセッサ110は、予め設定された区間のオーディオデータに基づいてスペクトログラム(spectrogram)を取得することができる。例えば、プロセッサ110は、フーリエ変換(FT)などを用いてオーディオデータをスペクトログラム(spectrogram)に変換することができる。
【0063】
プロセッサ110は、取得したスペクトログラム(spectrogram)を正規化(normalization)することができる。
【0064】
プロセッサ110は、正規化されたスペクトログラム(spectrogram)のサイズを調整することができる。例えば、プロセッサ110は、スペクトログラム(spectrogram)のサイズが予め設定されたサイズ(例えば、512×512など)に減少するようにサイズ調整することができる。
【0065】
その後、プロセッサ110は、既学習された狹窄予測モデルに基づいて、オーディオデータに対応する狹窄程度を予測することができる(S150)。
【0066】
例えば、プロセッサ110は、図5に示すように、「前処理されたオーディオデータの入力過程」→「狹窄予測モデルの出力値取得過程」→「狹窄程度予測過程」を経て、対象体の透析接近路の狹窄程度を予測することができる。
【0067】
すなわち、プロセッサ110は、前処理されたオーディオデータを狹窄予測モデルに入力することができる。
【0068】
そして、プロセッサ110は、狹窄予測モデルの出力値に基づいてオーディオデータに対応する狹窄程度を予測することができる。
【0069】
例えば、狹窄予測モデルの出力値(すなわち、狹窄程度値)が「0.95」である場合、該当対象体の透析接近路の狹窄程度が50%以上である確率が「95%」であることを示す。これにより、プロセッサ110は、該当対象体の狹窄程度を「95%」と予測することができる。
【0070】
もちろん、プロセッサ110は、狹窄予測モデルの出力値(すなわち、狹窄程度値)を予め設定された閾値(例えば、0.5など)と対比して、出力値(すなわち、狹窄程度値)が閾値以上である場合には、「狹窄の疑い」などと当該対象体の狹窄程度を予測することができ、出力値(すなわち、狹窄程度値)が閾値未満である場合には、「狹窄ではない」などと当該被検体の狹窄程度を予測することもできる。
【0071】
次に、図7図11を参照して、本発明の好ましい実施形態による畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法の一例と性能について説明する。
【0072】
図7は、本発明の好ましい実施形態による狹窄予測モデル学習過程と狹窄程度予測過程の一例を説明するための図であり、図8は、本発明の好ましい実施形態によるスペクトログラム(spectrogram)取得過程の一例を説明するための図であり、図9は、図8に示す過程を通じて取得したスペクトログラム(spectrogram)の一例を示す図であり、図10は、図8に示す過程で取得したスペクトログラム(spectrogram)の一例を示す図であり、図10(a)は施術前に取得した透析接近路に対するオーディオデータに基づいて取得したスペクトログラム(spectrogram)を示し、図10(b)は施術後に取得した透析接近路に対するオーディオデータに基づいて取得したスペクトログラム(spectrogram)を示し、図11は本発明の好ましい実施形態による狹窄予測モデルの性能を説明するための図であり、図11の(a)は混同行列(confusion matrix)を示し、図11の(b)はROC(receiver operation characteristic)曲線を示す。
【0073】
図7を参照すると、本発明の好ましい実施形態による畳み込みニューラルネットワークを用いた透析接近路の狹窄予測方法の一例は、大きく、「イメージ前処理過程(図7に示すImage Preprocessing)」および「ディープラーニングプロセス(図7に示すDeep Learning Process)からなる狹窄予測モデル学習過程と、「患者のオーディオデータ前処理過程(図7に示すUser)」、「ディープラーニングプロセス(図7に示すDeep Learning Process)」および「患者の狹窄程度予測過程(図7に示すOutput)」からなる狹窄程度予測過程を含んでもよい。
【0074】
狹窄予測モデルに入力されるデータ(狹窄予測モデルの学習に用いられる学習データセットに含まれたオーディオデータまたは狹窄程度を判断する対象体のオーディオデータ)は、メルスペクトログラム(mel spectrogram)であり、512×512のサイズを有し、RGBチャンネル数が3つのイメージファイルであってもよい。
【0075】
電子聴診器などを介して患者の透析接近路(動静脈瘻など)の聴音を録音したオーディオファイルを取得することができる。約10秒間録音を進めたが、人が直接録音する場合、オーディオファイルの再生時間がファイルごとに異なることがあり、録音を開始する時と終了するときに聴診器に触れるなどのノイズがオーディオファイルに入ることがあり得るため、このようなノイズなどを除去するために各オーディオファイルの2秒から8秒になるまでの時間、すなわち6秒間のオーディオデータを実際に使用した。
【0076】
【表1】
【0077】
その後、オーディオファイルを特定のサンプリングレート(sampling rate)に従ってサンプリングし、ニューメリックナンバー(numeric number)をアレイ(array)の形態で保存することができる。
【0078】
【表2】
【0079】
ここで、srを特定の値に設定することができるが、本発明ではネイティブサンプリングレート(native sampling rate)を使用したため、sr=Nonに設定した。このようになると、サンプリングinterval(x-軸、time)vs.amplitude(y軸)グラフを作成できるが、これは分析にはあまり有用ではない。音は基本的に特定の周波数を有するsin関数の和と見なすことができるが、先に求めたy波形を周波数分析を通じて特定の時間に各周波数成分がどのように構成されているかを確認することができるが、この方法が、フーリエ変換(FT)であり、すなわち、フーリエ方程式を解くと、amplitude vs.timeグラフをfrequency vs.timeグラフに変えることができ、本発明ではフーリエ変換(FT)としてSTFT(short time Fourier transform)を用いた。
【0080】
【表3】
【0081】
ここで、fmaxは分析範囲を決定するmaximum frequencyであり、通常Nyquistの法則に従ってmaximum frequencyはsampling rate/2の値で決定する。このような方式でSTFTを行ったときにどのくらい分けて分析を進めるかは、図8に示すHop Lengthで決定することができる。n_fftが分析するFFT length(またはwindow length)であり、これは25msecで決定した。Hop Lengthは10msecとして、1マスあたり15msec(Overlap Length)が重なるように設定した。
【0082】
このような方式で、図9に示すようなメルスペクトログラム(mel spectrogram)を収得することができる。X軸はtimeであり、Y軸はfrequencyであり、特定時間帯の特定周波数の強度、デシベルは色で表現できる。
【0083】
しかし、実際のメルスペクトログラム(mel spectrogram)を用いて学習をさせるときは、特徴抽出(feature extraction)をしなければならないが、メルスペクトログラム(mel spectrogram)において色で表現されるスペクトログラム(spectrogram)のパワー(power)の見分け能力を高め、データの均一性のためには、スペクトログラム(spectrogram)の正規化(normalization)が必要である。つまり、録音するたびに入るノイズの程度が異なる場合があり、狹窄の程度によって特定の周波数でより大きなパワー(power)の音波が録音されることがあるため、そして狹窄予測モデルを学習させる際の特徴(feature)をできるだけよく認識できるようにするためには、スペクトログラム(spectrogram)の正規化(normalization)を進めなければならない。
【0084】
【表4】
【0085】
前記のような方式で各オーディオファイルからメルスペクトログラム(mel spectrogram)を取得することができ、血管拡張術の施術前と施術後のスペクトログラム(spectrogram)の例は図10に示すとおりである。図10(a)は血管拡張術の施術前のメルスペクトログラム(mel spectrogram)であり、図10(b)は血管拡張術の施術後のメルスペクトログラム(mel spectrogram)である。施術後、透析接近路(動静脈瘻など)の狹窄の程度が好転し、高い周波数でより大きなパワー(power)のスペクトログラム(spectrogram)が見られることが確認できる。実際に施術前と施術後に録音した聴音を聞くと、施術後の聴音がより大きく、よく聞こえるように改善されることが確認できる。このようにして得られたメルスペクトログラム(mel spectrogram)は、血管拡張術の施術前に得た場合、狹窄程度が50%以上(実際の血管造影術で動静脈瘻の狹窄部位と正常血管の直径値を比較して計算する)であるため、第1正解ラベルである「pre(1)」とラベル(label)付けしてフォルダに保存し、血管拡張術の施術後に得た場合、狹窄程度が50%未満(実際の血管造影術で狹窄程度が50%未満と確認された場合)であるため、第2正解ラベルの「post(0)」とラベル(label)付けしてフォルダに保存した。
【0086】
そして、図9に示すように、メルスペクトログラム(mel spectrogram)の縁領域を囲む白い境界がある。この境界をより明瞭に見えるようにするために、縁の青い線は任意に表示した。
【0087】
狹窄予測モデルを学習させるためには、メルスペクトログラム(mel spectrogram)のデータ数を増量する必要があり、このとき水平シフト(horizontal shifting)方法を使用する。猫を認識する畳み込みニューラルネットワークを開発するときは、原本の猫の写真に様々な角度を与えたり、vertical/horizontal flipのような技法を使って写真を増幅して学習させることができるが、メルスペクトログラム(mel spectrogram)は一般的な猫の写真とは異なり、x軸、y軸、z軸の値と意味が決まっているvectorグラムであるため、データ増量が可能な方法は水平シフト(horizontal shift)方法しかない。水平シフト(horizontal shift)で得られたデータは、現実的に同じ患者を録音しても録音開始時間と終了時間が異なる場合に得られる結果物であるため、学習データとして利用しても構わない。つまり、水平シフト(horizontal shifting)を使用した理由は、現実でも録音開始時間と終了時間に応じてメルスペクトログラム(mel spectrogram)がx軸(=time)に沿って移動し得るためである。メルスペクトログラム(mel spectrogram)から見られる繰り返しピーク(peak)がsin(x)またはcos(x)関数であると考えたときに、録音時間範囲をどのように設定するかによってキャプチャされるウェーブ(wave)がsin(x+a)またはcos(x+a)のように見えることがある。
【0088】
このようなデータ増量は以下のようなImageDataGeneratorを用いた。
【0089】
【表5】
【0090】
前記のコードを見ると、水平シフト(horizontal shifting)のためにwidth shift rangeを0.9に設定したことがわかる。前記のコードでは増量を50倍(i>50)に設定、つまり、メルスペクトログラム(mel spectrogram)イメージ1つを持ってx軸に移動して50個のイメージを生成したが、50は任意に定めた値であり、50倍に限定する必要はない。しかし、図9に示すように、白い縁領域があると水平シフト(horizontal shift)をしたとき、左や右の端にある白い縦線が途中に割り込んで、メルスペクトログラム(mel spectrogram)データを損傷する可能性があるため、このような白い縁領域を取り除く前処理を行う。
【0091】
【表6】
【0092】
そして、白い縁領域の左と右の端の見えない黒い線も一緒に除去する。
【0093】
【表7】
【0094】
このようにして得られたメルスペクトログラム(mel spectrogram)は、以下のような方式で確認してみると、サイズが2328×909である。
【0095】
【表8】
【0096】
イメージのサイズが大きすぎると、狹窄予測モデルがアレイ(array)を段階的に圧縮するとき、開始イメージから、あまりに大きい領域が圧縮されて最後のレイヤーに達したときの施術前と施術後のメルスペクトログラム(mel spectrogram)の値が有意な差を見せない可能性がある。また、狹窄予測モデルの学習時間が長くなり、長方形である前記のようなイメージを正方形の写真にサイズを調整する。
【0097】
【表9】
【0098】
前記のコードは512×512にメルスペクトログラム(mel spectrogram)のサイズを調整した例であり、前記のようにサイズ調整後、狹窄予測モデルに入力することになる。
【0099】
学習データセットは、7:1:2の比率に従って訓練データセット、チューニングデータセット、および検証データセットに分けて分析を行った。このために、train_test_split functionを使用し、train_test_splitは、randomにフォルダ内のファイルリストに対するアレイ(array)をtraining、tuning、validation subsetに分ける。
【0100】
【表10】
【0101】
すると、たとえば、filelist_tuneには、次のようなmelspectrogram.pngファイルがアレイ(array)の形態で入ることになる。
【0102】
【表11】
【0103】
前記のファイルは、pre=0、post=1とすると、以下のような形態のバイナリアレイ(binary array)になる。
【0104】
【表12】
【0105】
つまり、tuningにfile listに入ったaug_0_4960.pngの場合、pre(施術前に取得した聴音)であるため0、aug_0_1335.pngの場合、post(施術後に取得した聴音)であるため1とアレイ(array)に保存されている。畳み込みニューラルネットワーク(CNN)モデルであるResNET50モデルを用いて、本発明に係る狹窄予測モデルの性能を試験した。
【0106】
ResNET50は、一般的な畳み込みニューラルネットワーク(CNN)モデルのように、入力レイヤー、畳み込みレイヤー、最大プーリング(max pooling)レイヤー、平均プーリング(average pooling)レイヤー、および出力レイヤーからなる。ここで、畳み込みレイヤーは50レイヤーからなり、メルスペクトログラム(mel spectrogram)から映像特徴を抽出する。最大プーリング(max pooling)レイヤーは、畳み込みレイヤーから抽出された特徴をサブサンプリング(sub-sampling)してシステムの安全性と効率性を高める。平均プーリング(average pooling)レイヤーはパラメータ(parameter)の数を減らす。出力レイヤは下記のような値を出力する。
【0107】
すなわち、出力レイヤーを介して出力される値は、50%以上の透析接近路狹窄に対する狹窄予測モデルの予測能力および診断成績に対する値を出力することができる。例えば、以下の例のように、sensitivity、specificity、positive predictive value、negative predictive value、accuracyなどに対する値を出力することができる。これに基づいて、図11に示すような混同行列(confusion matrix)およびROC(receiver operation characteristic)曲線を取得することができ、ROC曲線を通じて診断能のAUC(area under the curve)値を算出することができる。
【0108】
【表13】
【0109】
検証データセットに含まれた特定の患者のメルスペクトログラム(mel spectrogram)から50%以上の透析接近路(動静脈瘻など)狹窄を疑うべきかどうかをYES/NO式で結果を得ることができる。狹窄予測モデルを起動させると、出力で各メルスペクトログラム(mel spectrogram)毎に0、1の表示で50%未満または50%以上の狹窄の可否が分かる。
【0110】
【表14】
【0111】
ResNet50モデルの場合、ネットワークの出力値がxになるようにH(x)-xを最小化する方向に学習を進めるため、出力が「0.94346315」と出たが、これは1に近い値であり、このような場合50%以上狹窄があると見なせばいい。このような場合、モデルを起動させるときにprint(「YES」)と出力することができる。逆に、以下の場合、0に近い値であるため、0または50%以上の狹窄ではなく、50%未満の狹窄として認識し、print(「NO」)と出力することができる。
【0112】
【表15】
【0113】
50%以上の有意な狹窄が疑われる場合、透析接近路(動静脈瘻など)狹窄に対する追加検査を推奨することになり、「YES」の場合、「血液透析接近路に深刻な狹窄が疑われるため、血液透析がうまく行われない可能性があります。ドップラー超音波や血管造影などの追加の検査が必要なので、近くの病院に訪ねてください。」などの推奨事項が一緒に出力されることもできる。検証データセットに含まれた特定の患者のメルスペクトログラム(mel spectrogram)が50%以上の透析接近路(動静脈瘻など)狹窄と疑われる場合、狹窄予測モデルがどのくらい疑っているかを%値で出力することができる。
【0114】
【表16】
【0115】
この患者のメルスペクトログラム(mel spectrogram)の場合、狹窄予測モデルが94%程度であり、50%以上の狹窄があると予測することを意味する。以下のコードのようなResNet50モデルを用いた狹窄予測モデルの学習過程、チューニング過程および検証過程は以下のとおりである。
【0116】
【表17】
【0117】
batch_sizeはサンプルを一度学習させるときに使用したサンプルの数であり、epochはResNetの50個レイヤーを何回前後に行き来して学習を行うかどうかである。つまり、epochs=10であれば、前提データを10回使って学習をするということである。このような値は固定されておらず、モデルを最適化するためにbatch_sizeと特にepoch値を数回修正しなければならない。Epochの場合、値が小さすぎるとモデルがデータにunderfittingになる傾向が発生し、大きすぎるとoverfittingになる問題が発生する。一例として、100個のメルスペクトログラム(mel spectrogram)があるとしたら、batch sizeが20であるため、1回のiterationごとに20個のデータについて学習するため、1epoch=100/batch size=5iterationとなり、40epochであると200回のiterationをすることになる。
【0118】
学習のたびにmodelをupdateするために使用したoptimizerは、以下のKeras SGD(stochastic gradient descent)を使用した。optimizerもまた、使用できる種類がRMSprop、Adam、Adadeltaなど多く、本発明ではSGDを使用したが、SGDに限定されない。狹窄予測モデルを学習させるとき、一般的にlearning rateは0.1~0.01のような値を使用し、momentumは0.9に多く設定する。本発明では、learning rateとして0.02を設定した。
【0119】
【表18】
【0120】
Optimizingの基本原理は、学習率を「最初は大きく、そしてますます小さく」することである(参考文献:Qian Ning、On the momentum term in gradient descent learning algorithms、Neural networks 12.1(1999):145-151)。モメンタムは学習率の値自体は同じであるが、パラメータを変更していくときにモメンタム項という調整項を使って類似的に「最初は大きく、そしてますます小さく」という概念を表現する。
【0121】
誤差関数Eに対するニューラルネットワークモデルのパラメータをθとし、θに対するEの傾きを∇θ 、パラメータの差Δθ(t)を式(1)とすると、ステップtでモメンタムを用いてパラメータを変更していく式が(2)のとおりである。
γΔθ(t-1):モメンタム項
係数γ(<1)は一般に0.5や0.9のような値を設定する。
Δθ(t)=Δθ(t)-γΔθ(t-1) (1)
Δθ(t)=-η∇θE(θ)+γΔθ(t-1) (2)
【0122】
つまり、learning rateとmomentumをこのように設定すると、初期epochに速い速度で精度を上げることができる。
【0123】
このようにパラメータをすべて設定し、以下のように狹窄予測モデルをfittingまたは学習をさせる。
【0124】
【表19】
【0125】
pre、postファイルに分けて既にメルスペクトログラム(mel spectrogram)を区分して保存してあるため、PRE_PATH+filenameから読み込む場合1、POST_PATH+filenameから読み込む場合0と学習をしながらモデルを作る。Tuningまたは微調整段階では、epochごとに完成したモデルがtuning-setデータを入れたときに見られる精度(accuracy)に基づいて、最もtuning-setデータに対するaccuracyが高いモデルを選ぶことになる。たとえば、テスト用としてepochs=10に設定して起動させると、次のような結果が得られる。
【0126】
【表20】
【0127】
ここで、accuracyはtraining-setに対するモデルのaccuracyであり、val_accuracyがtuning-setに対するモデルのaccuracyである。前記で説明したように、epoch値が小さいとunderfittingの問題が発生し、epoch値が大きいとoverfittingの問題が発生し得る。したがって、Epoch 1/10からepoch 10/10に行くほど、accuracyは非常に好転(0.5981 →0.9471)するが、tuning-setに対するval_accuracyはepoch9/10でpeakを表し、epoch10/10では0.800と多少減少することがわかる。その理由は、training set melspectrogramに過度にoverfittingされたため、tuning set melspectrogramを入力したとき、fittingがうまく行われず、accuracyが減少するためである。したがって、通常、accuracyとval_accuracyが最良のepochのモデルを決定することがtuning段階である。前記の例示では、Epoch 9/10モデルで決定するのがtuningされる。それで、Epoch 9 train weightを決定した後、validation setにmodelを適用して予測をどれほど正確に行うかをみる。
【0128】
【表21】
【0129】
すると、前述した出力値を得ることができる。
【0130】
本実施形態による動作は、様々なコンピュータ手段を介して実行できるプログラム命令の形態で具現され、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録されることができる。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、実行のためにプロセッサに命令語を提供するのに関与した任意の媒体を表す。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、プログラム命令、データファイル、データ構造、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。例えば、磁気媒体、光記録媒体、メモリなどがあり得る。コンピュータプログラムは、ネットワークで連結されたコンピュータシステム上に分散され、分散方式としてコンピュータが読み取り可能なコードが記憶されて実行されてもよい。本実施形態を具現するための機能的な(Functional)プログラム、コード、およびコードセグメントは、本実施形態が属する技術分野のプログラマによって容易に推論されることができる。
【0131】
本実施形態は、本実施形態の技術思想を説明するためのものであり、このような実施形態によって本実施形態の技術思想の範囲が限定されるものではない。本実施形態の保護範囲は、以下の特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等の範囲内にあるすべての技術思想は、本実施形態の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0132】
100 ・・・狹窄予測装置
110 ・・・プロセッサ
130 ・・・コンピュータ読み取り可能な記憶媒体
131 ・・・プログラム
150 ・・・通信バス
170 ・・・入出力インターフェース
190 ・・・通信インターフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】