(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(54)【発明の名称】スルホン酸塩電気めっき浴、電解堆積によって金属を精製するための方法及び電解精製において金属のモルフォロジーを制御するための方法
(51)【国際特許分類】
C25D 3/36 20060101AFI20240501BHJP
C25C 1/14 20060101ALI20240501BHJP
C25C 1/18 20060101ALI20240501BHJP
C25C 7/02 20060101ALI20240501BHJP
C25D 3/32 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
C25D3/36
C25C1/14
C25C1/18
C25C7/02 306
C25D3/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571524
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2022062881
(87)【国際公開番号】W WO2022243145
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/094819
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュ,シ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジン ボ
(72)【発明者】
【氏名】シア,ジン チェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ヨン ミン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,コン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ユー ガン
(72)【発明者】
【氏名】シャン,チャン リウ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,シェン ハイ
【テーマコード(参考)】
4K023
4K058
【Fターム(参考)】
4K023AA04
4K023AA17
4K023AA18
4K023BA29
4K023CB03
4K023CB07
4K023CB21
4K023DA02
4K023DA06
4K023DA07
4K023DA08
4K058AA04
4K058AA13
4K058BA27
4K058BA28
4K058BB03
4K058CA03
4K058CA09
4K058CA11
4K058CA17
4K058CA22
4K058EC04
4K058FA09
(57)【要約】
本発明は、(A)アルカンスルホン酸又はアルカノールスルホン酸と、(B)アルカンスルホン酸又はアルカノールスルホン酸の可溶性金属塩と、(C)-式(I)のポリエーテル誘導体、-式(II)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体又は-それらの任意の組合せから選択される少なくとも1つの添加剤とを含む電気めっき浴に関し、ここで、式(I)及び(II)における基は説明及び特許請求の範囲において定義される通りである。また、本発明は、金属を精製するための方法及び金属の電解精製においてカソード上に堆積される金属のモルフォロジーを制御するための方法に関し、これは本発明による電気めっき浴を使用することを含む。
【化1】
【化2】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカンスルホン酸又はアルカノールスルホン酸と、
(B)アルカンスルホン酸又はアルカノールスルホン酸の可溶性金属塩と、
(C)以下のもの
- 式(I)
【化1】
(式中、
Arは、C
3~C
12-アルキルによって置換されたフェニル、又は
非置換であるか若しくはC
1~C
4-アルキルによって置換されたナフチルであり、
E
1及びE
2は互いに異なり、エチレンオキシ及びプロピレンオキシから選択され、
mは、0又は1~40の範囲の数、好ましくは0であり、
nは1~40の範囲の数である)のポリエーテル誘導体、
- 式(II)
【化2】
(式中、
Ar’は、C
3~C
12-アルキルによって置換され且つ任意選択により-SO
3Mの基によって置換されたフェニル、又は
非置換であるか若しくはC
1~C
4-アルキル及び/又は-SO
3Mの基によって置換されたナフチルであり、
E
1’及びE
2’は異なったアルキレンオキシ基であり、エチレンオキシ及びプロピレンオキシから選択され、
E
3は、E
2のアルキレン部分であり、
m’は0又は1~40の範囲の数、好ましくは0であり、
oは0又は1であり、
n’+oの総計は1~40の範囲の数であり、及び
Mはアルカリ金属カチオン又はNH
4
+である)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体、
並びに
- それらの任意の組合せ
から選択される少なくとも1つの添加剤とを含む、電気めっき浴。
【請求項2】
式(I)において、mが0又は2~35の範囲の数であり、及び式(II)において、m’が0又は2~35の範囲の数であり、oが0又は1であり、及びn’+oが2~35の範囲の数である、請求項1に記載の電気めっき浴。
【請求項3】
前記少なくとも1つの添加剤(C)が、
- 式(I)(式中、
Arは、C
3~C
12-アルキル、好ましくはC
4~C
10-アルキルによって置換されたフェニル、又は
非置換であるか若しくはC
1~C
4-アルキルによって置換されたナフチルであり、
E
1及びE
2は互いに異なり、エチレンオキシ及びプロピレンオキシから選択され、
mは、0又は4~30の範囲の数であり、
nは4~30の範囲の数である)のポリエーテル誘導体、
- 式(II)(式中、
Ar’は、C
3~C
12-アルキルによって置換され且つ任意選択により-SO
3Mの基によって置換されたフェニル、又は
非置換であるか若しくはC
1~C
4-アルキル及び/若しくは-SO
3Mの基によって置換されたナフチルであり、
E
1’及びE
2’は異なったアルキレンオキシ基であり、エチレンオキシ及びプロピレンオキシから選択され、
E
3は、E
2のアルキレン部分であり、
m’は0又は4~30の範囲の数であり、
oは0又は1であり、
n’+oの総計は4~30の範囲の数であり、及び
Mはアルカリ金属カチオン又はNH
4
+である)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体、
並びに
- それらの任意の組合せ
から選択される、請求項2に記載の電気めっき浴。
【請求項4】
前記少なくとも1つの添加剤(C)が、式(I)(式中、mが0であり且つnが4~30、好ましくは6~20、より好ましくは8~15の範囲の数である)のポリエーテル誘導体、式(II)(式中、m’が0であり、oが0又は1であり、及びn’+oの総計が4~30、好ましくは6~20、より好ましくは8~15の範囲の数である)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体、又はそれらの任意の組合せから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気めっき浴。
【請求項5】
E
2及びE
2’がエチレンオキシである、請求項1~4のいずれか一項に記載の電気めっき浴。
【請求項6】
前記少なくとも1つの添加剤(C)が、
- 式(Ia)
【化3】
(式中、
Arは、4-(C
3~C
12-アルキル)フェニル又は非置換ナフチルであり、
nは4~30の範囲の数である)のポリエーテル誘導体、
- 式(II)
【化4】
(式中、
Ar’は、任意選択により-SO
3Mの基によって置換された、4-(C
3~C
12-アルキル)フェニル、又は
非置換であるか若しくは-SO
3Mの基によって置換されたナフチルであり、
oは0又は1であり、
n’+oの総計は4~30の範囲の数であり、及び
Mはアルカリ金属カチオン又はNH
4
+である)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体、
並びに
- それらの任意の組合せ
から選択される、請求項3に記載の電気めっき浴。
【請求項7】
Arが、C
4~C
10-アルキルによって置換されたフェニル、好ましくは4-(C
4~C
10-アルキル)フェニル、又は非置換ナフチル、好ましくは非置換β-ナフチルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の電気めっき浴。
【請求項8】
Arが、非置換β-ナフチルである、請求項7に記載の電気めっき浴。
【請求項9】
Ar’が、C
4~C
10-アルキル及び-SO
3Mによって置換されたフェニル、好ましくは環上に-SO
3Mを有する4-(C
4~C
10-アルキル)フェニル、又は非置換であるか若しくは-SO
3Mによって置換されたナフチルである、請求項1~8のいずれか一項に記載の電気めっき浴。
【請求項10】
Ar’が、フェニル環の2位又は3位に-SO
3Mの基を有する4-(C
4~C
10-アルキル)フェニルである、請求項9に記載の電気めっき浴。
【請求項11】
前記少なくとも1つの添加剤(C)が、
- 式(Ia)(式中、Arは、非置換β-ナフチルであり、nは6~20の範囲の数である)のポリエーテル誘導体、
- 式(IIa)(式中、Ar’は、フェニル環の2位又は3位に-SO
3Mの基を有する4-(C
4~C
10-アルキル)フェニルであり、oは0であり、n’は6~20の範囲の数であり、及びMはアルカリ金属カチオン又はNH
4
+である)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体、
並びに
それらの任意の組合せから選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の電気めっき浴。
【請求項12】
前記少なくとも1つの添加剤(C)が、
- 式(Ia)(式中、Arは、非置換β-ナフチルであり、及びnは8~15の範囲の数である)のポリエーテル誘導体、
- 式(IIa)(式中、Ar’は、フェニル環の2位又は3位に-SO
3Mの基を有する4-(C
4~C
10-アルキル)フェニルであり、oは0であり、n’は8~15の範囲の数であり、及びMはアルカリ金属カチオン又はNH
4
+である)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体、
並びに
- それらの任意の組合せ
から選択される、請求項11に記載の電気めっき浴。
【請求項13】
前記少なくとも1つの添加剤(C)が、
- 式(Ia)(式中、Arは、非置換β-ナフチルであり、nは10、11、12又は13である)のポリエーテル誘導体、
- 式(IIa)(式中、Ar’は、フェニル環の2位又は3位に-SO
3Mの基を有する4-(C
4~C
10-アルキル)フェニルであり、oは0であり、n’は9、10、11又は12であり、及びMはアルカリ金属カチオン又はNH
4
+である)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体、
並びに
- それらの任意の組合せから選択される、請求項12に記載の電気めっき浴。
【請求項14】
MがNa
+又はK
+である、請求項1~13のいずれか一項に記載の電気めっき浴。
【請求項15】
前記アルカンスルホン酸(A)が、C
1~C
12-アルカンスルホン酸、好ましくはC
1~C
6-アルカンスルホン酸から選択され、特にメタンスルホン酸である、請求項1~14のいずれか一項に記載の電気めっき浴。
【請求項16】
前記アルカノールスルホン酸(A)が、C
2~C
12-アルカノールスルホン酸、好ましくはC
2~C
6-アルカノールスルホン酸から選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の電気めっき浴。
【請求項17】
前記可溶性金属塩(B)が、成分(A)と同じアルカンスルホン酸又はアルカノールスルホン酸の少なくとも1つの可溶性金属塩である、請求項1~16のいずれか一項に記載の電気めっき浴。
【請求項18】
前記可溶性金属塩(B)の金属が、鉛及びスズから選択され、特に鉛である、請求項1~17のいずれか一項に記載の電気めっき浴。
【請求項19】
前記少なくとも1つの添加剤が各々、電気めっき浴中に0.5~5.0g/L浴、特に0.5~3.0g/Lの範囲の濃度で含まれる、請求項1~18のいずれか一項に記載の電気めっき浴。
【請求項20】
成分(C)として少なくとも1つのポリエーテル誘導体と少なくとも1つのスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体との組合せを、好ましくは1.0~5.0g/L浴、特に2.0~5.0g/Lの範囲の全濃度で含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の電気めっき浴。
【請求項21】
骨膠などの動物膠、リグノスルホン酸塩、アロイン及びβ-ナフトールから選択される追加的な添加剤(D)、特にリグノスルホン酸塩を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の電気めっき浴。
【請求項22】
前記追加的な添加剤を0.1~2.0g/L浴の範囲の濃度で含む、請求項21に記載の電気めっき浴。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の電気めっき浴内で金属を電解堆積させることを含む、金属を精製するための方法。
【請求項24】
a)精製される前記金属から製造されるアノードと、カソードとを前記電気めっき浴内に置くことと、
b)前記金属の層を前記カソード上に堆積させるために十分な時間の間前記アノードと前記カソードとの間に電圧を印加することとを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記金属が、鉛及びスズから選択され、特に鉛である、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
請求項1~22のいずれか一項に記載の電気めっき浴を使用することを含む、金属の電解精製においてカソード上に堆積される金属、特に鉛のモルフォロジーを制御するための方法。
【請求項27】
金属を精製するための電気めっき浴における請求項1~13のいずれか一項に記載の式(I)のポリエーテル誘導体、式(II)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体又はそれらの任意の組合せの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属スルホン酸塩をベースとした電気めっき浴、電気めっき浴中で電解堆積させることによって粗金属を精製するための方法、及び電解精製において金属モルフォロジーを制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粗鉛は、高純度の鉛を提供するために及びいくつかの場合貴金属の回収のためにパイロ精製又は電解精製によって商業的に精製された。ここ数十年で、粗鉛の電解精製は、環境への被害を少なくすること、より高い精製効率及び貴金属の回収というその利点のために、より多くの国々及び地域によって採用されている。
【0003】
慣例的に、鉛フルオロホウ酸塩又はフルオロケイ酸塩を含む酸性水溶液は粗鉛を電解精製するための電気めっき浴として広範囲に使用されたが、しかしながらそれは低い熱安定性及び高レベルの揮発性を有し、健康への有害な影響及び製造設備への悪影響を不可避的にもたらし、そのため安全且つ効率的な作業を達成することができない。スズなどの他の金属を電解精製するためのプロセスもまた、同じ問題を有する。
【0004】
最近、フッ素を含まない酸性水溶液がフルオロホウ酸塩又はフルオロケイ酸塩を含む電気めっき浴の代用として開発された。例えば、中国特許出願公開第104746908A号明細書には、メタンスルホン酸鉛とメタンスルホン酸とを含む水性電解液を使用して鉛を電解精製するためのプロセスが説明されている。また、電解液は、動物膠、リグノスルホン酸塩、アロイン及びβ-ナフトールから選択される1つ以上添加剤を含むことができる。
【0005】
中国特許出願公開第104746908A号明細書に説明されているメタンスルホン酸塩をベースとした電気めっき浴を使用する電解精製プロセスは、フルオロホウ酸塩又はフルオロケイ酸塩をベースとした電気めっき浴の毒性及び汚染の欠点を良好に克服する。
【0006】
しかしながら、中国特許出願公開第104746908A号明細書に説明されているプロセスは、カソード上の鉛堆積物の望ましい外観又はモルフォロジーを提供することができないことが本発明の発明者によって見い出された。鉛堆積物は、端縁にまくれ、デンドライト又はスケールがある、粗い又は緻密でない表面を有することが観察され、外観又はモルフォロジーの欠陥、特定のデンドライトは、電解液タンク内に産物である十分な量の堆積物を得る前に場合により短絡を引き起こし得るので、これは商業規模でのプロセスの適用を妨げる。
【0007】
蒸着金属の改良された外観又はモルフォロジーで、したがって望ましい効率で金属を電解精製するために適したフッ素を含まない電気めっき浴がさらに必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
金属を電解精製して望ましい外観又はモルフォロジーでカソード上の金属堆積物を得るために有用である、スルホン酸塩をベースとしたフッ素を含まない電気めっき浴を提供することが本発明の目的である。
【0009】
本発明の別の目的は、改良された全プロセスの経済性を有し且つ柔軟なプロセス条件で行なうことができる電解精製プロセスを提供することである。
【0010】
本発明の目的は、フェノール及びナフトールポリエーテル誘導体及び硫酸化又はスルホン化フェノール及びナフトールポリエーテル誘導体から選択される添加剤を含む電気めっき浴によって達成できることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、一態様において、本発明は、
(A)アルカンスルホン酸又はアルカノールスルホン酸と、
(B)アルカンスルホン酸又はアルカノールスルホン酸の可溶性金属塩と、
(C)以下のもの
- 式(I)
【化1】
(式中、
Arは、C
3~C
12-アルキルによって置換されたフェニル、又は
非置換であるか若しくはC
1~C
4-アルキルによって置換されたナフチルであり、
E
1及びE
2は互いに異なり、エチレンオキシ及びプロピレンオキシから選択され、
mは0又は1~40の範囲の数であり、
nは1~40の範囲の数である)のポリエーテル誘導体、
- 式(II)
【化2】
(式中、
Ar’は、C
3~C
12-アルキルによって置換され且つ任意選択により-SO
3Mの基によって置換されたフェニル、又は
非置換であるか若しくはC
1~C
4-アルキル及び/若しくは-SO
3Mの基によって置換されたナフチルであり、
E
1’及びE
2’は異なったアルキレンオキシ基であり、エチレンオキシ及びプロピレンオキシから選択され、
E
3は、E
2のアルキレン部分であり、
m’は0又は1~40の範囲の数であり、
oは0又は1であり、
n’+oの総計は1~40の範囲の数であり、及び
Mはアルカリ金属カチオン又はNH
4
+である)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体、
並びに
- それらの任意の組合せ
から選択される少なくとも1つの添加剤とを含む、電気めっき浴を提供する。
【0012】
別の態様において、本発明は、(A)アルカンスルホン酸又はアルカノールスルホン酸と、(B)アルカンスルホン酸又はアルカノールスルホン酸の可溶性金属塩と、(C)本明細書に説明されるポリエーテル誘導体、スルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体又はそれらの任意の組合せから選択される少なくとも1つの添加剤とを含む電気めっき浴中の金属を電解堆積させることを含む、金属を精製するための方法を提供する。
【0013】
さらに別の態様において、本発明は、(A)アルカンスルホン酸又はアルカノールスルホン酸の少なくとも1つの可溶性金属塩と、(B)金属の少なくとも1つの可溶性アルカンスルホン酸塩又はアルカノールスルホン酸塩と、(C)本明細書に説明されるポリエーテル誘導体、スルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体又はそれらの任意の組合せから選択される少なくとも1つの添加剤とを含む電気めっき浴を使用することを含む、金属の電解精製においてカソード上に堆積される金属、特に鉛のモルフォロジーを制御するための方法を提供する。
【0014】
更なる態様において、本発明は、金属、特に鉛及び/又はスズを精製するための電気めっき浴における、本明細書で説明されるポリエーテル誘導体、スルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体又はそれらの任意の組合せの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】電気めっき浴中で添加剤を全く使用しない比較例1による堆積された鉛のモルフォロジー画像を示す。
【
図2A-B】電気めっき浴中で添加剤として骨膠を使用する比較例2による堆積された鉛のモルフォロジー画像及びSEM画像を示す。
【
図3】電気めっき浴中で添加剤としてリグノスルホン酸カルシウムを使用する比較例3による堆積された鉛のモルフォロジー画像を示す。
【
図4】電気めっき浴中で添加剤として骨膠及びリグノスルホン酸カルシウムを使用する比較例4による堆積された鉛のモルフォロジー画像を示す。
【
図5A-B】電気めっき浴中で添加剤としてβ-ナフトールを使用する比較例5による堆積された鉛のモルフォロジー画像及びSEM画像を示す。
【
図6A-B】電気めっき浴中で添加剤としてβ-ナフトールエトキシレート(12EO)及びリグノスルホン酸カルシウムを使用する本発明の実施例1による堆積された鉛のモルフォロジー画像及びSEM画像を示す。
【
図7A-B】電気めっき浴中で添加剤としてβ-ナフトールエトキシレート(12EO)及びスルホネート置換p-ノニルフェノールエトキシレートサルフェート(10EO、ナトリウム塩)を使用する本発明の実施例2による堆積された鉛のモルフォロジー画像及びSEM画像を示す。
【
図8A-B】電気めっき浴中で添加剤としてリグノスルホン酸カルシウム及びスルホネート置換p-ノニルフェノールエトキシレートサルフェート(10EO、ナトリウム塩)を使用する本発明の実施例3による堆積された鉛のモルフォロジー画像及びSEM画像を示す。
【
図9A-B】電気めっき浴中で添加剤としてリグノスルホン酸カルシウム、スルホネート置換p-ノニルフェノールエトキシレートサルフェート(10EO、ナトリウム塩)及びβ-ナフトールエトキシレート(12EO)を使用する本発明の実施例4による堆積された鉛のモルフォロジー画像及びSEM画像を示す。
【
図10A-B】電気めっき浴中で添加剤としてリグノスルホン酸カルシウム及びβ-ナフトールエトキシレート(12EO)を使用する本発明の実施例3による堆積された鉛のモルフォロジー画像及びSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明はここで、以下に詳細に説明される。本発明は、多くの異なった方法で具体化することができ且つ本明細書に示される実施形態に限定されるとして解釈されないと理解されるべきである。他に言及しない限り、本明細書において使用する全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者が一般に理解する意味と同義である。
【0017】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明確にそうでないことを示さない限り、複数の指示物を含む。
【0018】
本明細書中で用いられる場合、用語「含む(comprise)」、「含む(comprising)」等は、「含有する(contain)」、「含有する(containing)」等と互いに交換可能に使用され、非限定的な、開いた方法で解釈されるべきである。すなわち、例えば、更なる成分又は要素が存在していることができる。「からなる(consists of)」又は「本質的に~からなる(consists essentially of)」等の表現は、「含む(comprises)」等に包含され得る。
【0019】
本明細書中で用いられる場合、用語「水性の」は、電気めっき浴が少なくとも50%の水を含む溶剤を含むことを意味する。好ましくは、溶剤の少なくとも75%、より好ましくは90%が水である。電気めっき浴の溶剤は、任意の意図的に添加される有機溶剤なしに本質的に水からなることを予想することができる。蒸留水、脱イオン水、又は水道水などの任意の種類の水を使用することができる。
【0020】
<電気めっき浴>
第1の態様において、本発明は:
(A)アルカンスルホン酸又はアルカノールスルホン酸と、
(B)アルカンスルホン酸又はアルカノールスルホン酸の可溶性金属塩と、
(C)以下のもの
- 式(I)
【化3】
(式中、
Arは、C
3~C
12-アルキルによって置換されたフェニル、又は
非置換であるか若しくはC
1~C
4-アルキルによって置換されたナフチルであり、
E
1及びE
2は互いに異なり、エチレンオキシ及びプロピレンオキシから選択され、
mは0又は1~40の範囲の数であり、
nは1~40の範囲の数である)のポリエーテル誘導体、
- 式(II)
【化4】
(式中、
Ar’は、C
3~C
12-アルキルによって置換され且つ任意選択により-SO
3Mの基によって置換されたフェニル、又は
非置換であるか若しくはC
1~C
4-アルキル及び/若しくは-SO
3Mの基によって置換されたナフチルであり、
E
1’及びE
2’は異なったアルキレンオキシ基であり、エチレンオキシ及びプロピレンオキシから選択され、
E
3は、E
2のアルキレン部分であり、
m’は0又は1~40の範囲の数であり、
oは0又は1であり、
n’+oの総計は1~40の範囲の数であり、及び
Mはアルカリ金属カチオン又はNH
4
+である)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体、
並びに
- それらの任意の組合せ
から選択される少なくとも1つの添加剤とを含む、電気めっき浴を提供する。
【0021】
成分(A)として有用なアルカンスルホン酸はC1~C12-アルカンスルホン酸、好ましくはC1~C6-アルカンスルホン酸であり得る。アルカンスルホン酸の例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、2-プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、2-ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸及びドデカンスルホン酸が挙げられるがそれらに限定されない。1つのアルカンスルホン酸又は2つ以上のアルカンスルホン酸の任意の混合物を本発明による電気めっき浴において使用することができる。
【0022】
成分(A)として有用なアルカノールスルホン酸は、C2~C12-アルカノールスルホン酸、好ましくはC2~C6-アルカノールスルホン酸すなわち、ヒドロキシ置換C2~C12-、好ましくはC2~C6-アルカンスルホン酸であり得る。ヒドロキシは、アルカンスルホン酸のアルキル鎖の末端又は内部の炭素上にあり得る。有用なアルカノールスルホン酸の例としては、2-ヒドロキシエタン-1-スルホン酸、1-ヒドロキシプロパン-2-スルホン酸、2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸、3-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸、4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシペンタン-1-スルホン酸、4-ヒドロキシペンタン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシヘキサン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシデカン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシドデカン-1-スルホン酸が挙げられるがそれらに限定されない。1つのアルカノールスルホン酸又は2つ以上のアルカノールスルホン酸の任意の混合物を本発明による電気めっき浴において使用することができる。
【0023】
アルカンスルホン酸及びアルカノールスルホン酸は、特定の制限なしに当該技術分野に公知の任意の方法によって調製されるものであるか又は市販品であり得る。
【0024】
成分(A)は、10~200グラム/リットル(g/L)浴、特に30~150g/L、好ましくは50~110g/Lの範囲の濃度で本発明による電気めっき浴中に含まれ得る。
【0025】
成分(B)としてアルカンスルホン酸又はアルカノールスルホン酸の可溶性金属塩は、電気分解によって堆積される金属の塩である。本発明のために有用な金属は、鉛又はスズから選択され、特に鉛であり得る。したがって、成分(B)は、鉛又はスズから選択され、特に鉛の可溶性アルカンスルホン酸塩又はアルカノールスルホン酸塩の塩であり得る。
【0026】
本明細書において、用語「可溶性金属塩」は、金属塩が電気分解前及び間に電気めっき浴中に溶解され得ることを意味することが意図される。
【0027】
アルカンスルホン酸又はアルカノールスルホン酸の可溶性金属塩は、成分(A)と同じアルカンスルホン酸又はアルカノールスルホン酸に由来することができる。特に、成分(B)は、成分(A)として使用される同じアルカンスルホン酸又はアルカノールスルホン酸の可溶性金属塩であり、金属は、鉛又はスズである。
【0028】
例えば、本発明による電気めっき浴は、成分(A)としてメタンスルホン酸を含み、成分(B)として鉛(II)メタンスルホン酸塩を含むことができる。
【0029】
アルカンスルホン酸及びアルカノールスルホン酸の可溶性金属塩は、当該技術分野に公知の任意の方法によって、例えば金属の酸化物と所望のアルカンスルホン酸又はアルカノールスルホン酸との反応によって調製することができる。
【0030】
成分(B)は、本発明による電気めっき浴中に、金属イオンとして計算される、50~200g/L浴、特に70~150g/L、好ましくは90~150g/L、より好ましくは90~120g/Lの範囲の濃度で含まれ得る。
【0031】
本発明による電気めっき浴は、式(I)のポリエーテル誘導体、式(II)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体又はそれらの任意の組合せから選択される少なくとも1つの添加剤を含む。電気めっき浴が電気めっき又は電解精製プロセスにおいて使用される時に少なくとも1つの添加剤が金属を望ましい外観でカソード上に堆積させるために必須であることが驚くべきことに見い出された。
【0032】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの添加剤(C)は好ましくは、式(I)(式中、mが0又は2~35の範囲の数であり、nが2~35の範囲の数である)のポリエーテル誘導体、式(II)(式中、m’が0又は2~35の範囲の数であり、oが0又は1であり、及びn’+oの総計が2~35の範囲の数である)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体、又はそれらの任意の組合せから選択される。
【0033】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの添加剤(C)は好ましくは、式(I)(式中、mが0又は4~30の範囲の数であり、及びnが4~30の範囲の数である)のポリエーテル誘導体、式(II)(式中、m’が0又は4~30の範囲の数であり、oが0又は1であり、及びn’+oの総計が4~30の範囲の数である)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体、又はそれらの任意の組合せから選択される。
【0034】
いくつかの特定の実施形態では、少なくとも1つの添加剤(C)は好ましくは、式(I)のポリエーテル誘導体(式中、mが0又は6~20の範囲の数であり、及びnが6~20の範囲の数である)、式(II)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体(式中、m’が0又は6~20の範囲の数であり、oが0又は1であり、及びn’+oの総計が6~20の範囲の数である)、又はそれらの任意の組合せから選択される。
【0035】
いくつかの好ましい実施形態では、少なくとも1つの添加剤(C)は好ましくは、式(I)のポリエーテル誘導体(式中、mが0又は8~15の範囲の数であり、nが8~15の範囲の数である)、式(II)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体(式中、m’が0又は8~15の範囲の数であり、oが0又は1であり、及びn’+oの総計が8~15の範囲の数である)、又はそれらの任意の組合せから選択される。
【0036】
いくつかの例示的な実施形態では、少なくとも1つの添加剤(C)は、
- 式(I)
【化5】
(式中、
Arは、C
3~C
12-アルキルによって置換されたフェニル、又は
非置換であるか若しくはC
1~C
4-アルキルによって置換されたナフチルであり、
E
1及びE
2は互いに異なり、エチレンオキシ及びプロピレンオキシから選択され、
mは、0又は4~30の範囲の数であり、
nは4~30の範囲の数である)のポリエーテル誘導体、
- 式(II)
【化6】
(式中、
Ar’は、C
3~C
12-アルキルによって置換され且つ任意選択により-SO
3Mの基によって置換されたフェニル、又は
非置換であるか若しくはC
1~C
4-アルキル及び/若しくは-SO
3Mの基によって置換されたナフチルであり、
E
1’及びE
2’は異なったアルキレンオキシ基であり、エチレンオキシ及びプロピレンオキシから選択され、
E
3は、E
2のアルキレン部分であり、
m’は0又は4~30の範囲の数であり、
oは0又は1であり、
n’+oの総計は4~30の範囲の数であり、及び
Mはアルカリ金属カチオン又はNH
4
+である)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体、
並びに
- それらの任意の組合せ
から選択される。
【0037】
以下に説明される実施形態では、式(I)におけるm及び式(II)におけるm’のどちらか又は両方が0であることが好ましい。したがって、少なくとも1つの添加剤(C)は好ましくは、式(I)のポリエーテル誘導体(式中、mが0であり且つnが4~30、好ましくは6~20、より好ましくは8~15の範囲の数である)、式(II)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体(式中、m’が0であり、oが0又は1であり、及びn’+oの総計が4~30、好ましくは6~20、より好ましくは8~15の範囲の数である)、又はそれらの任意の組合せから選択される。それらの実施形態では、E2及びE2’がエチレンオキシであることがさらに好ましい。
【0038】
いくつかの更なる例示的な実施形態では、少なくとも1つの添加剤(C)は、
- 式(Ia)
【化7】
(式中、
Arは、4-(C
3~C
12-アルキル)フェニル又は非置換ナフチルであり、
nは4~30の範囲の数である)のポリエーテル誘導体、
- 式(II)
【化8】
(式中、
Ar’は、任意選択により-SO
3Mの基によって置換された、4-(C
3~C
12-アルキル)フェニル、又は
非置換であるか若しくは-SO
3Mの基によって置換されたナフチルであり、
oは0又は1であり、
n’+oの総計は4~30の範囲の数であり、及び
Mはアルカリ金属カチオン又はNH
4
+である)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体、
並びに
- それらの任意の組合せ
から選択される。
【0039】
上記の実施形態のいずれかによるポリエーテル誘導体は好ましくは式(I)又は(Ia)のものであり、ここで基Arは、C4~C10-アルキルによって置換されたフェニル、好ましくは4-(C4~C10-アルキル)フェニルであるか、又は非置換ナフチル、好ましくは非置換β-ナフチルである。
より好ましくは、ポリエーテル誘導体は式(I)又は(Ia)のものであり、ここで基Arは、非置換β-ナフチルである。
【0040】
代わりに又はさらに、上記の実施形態のいずれかによるスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体は好ましくは式(II)又は(IIa)のもの(式中、基Ar’は、C4~C10-アルキル及び-SO3Mによって置換されたフェニル、好ましくは環上に-SO3Mを有する4-(C4~C10-アルキル)フェニル、又は非置換であるか若しくは-SO3Mによって置換されたナフチルである)である。
より好ましくは、スルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体は、式(II)又は(IIa)のもの(式中、基Ar’は、フェニル環の2位又は3位に-SO3Mの基を有する4-(C4~C10-アルキル)フェニルである)である。
【0041】
本明細書中で用いられる場合、用語「C3~C12-アルキル」及び「C4~C10-アルキル」は、直鎖又は分岐状、飽和ヒドロカルビル、例えばn-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-へプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、及びそれらの異性体を意味する。
【0042】
本明細書において、説明される用語「プロピレンオキシ」は、メチル置換エチレンオキシ、例えば1-メチルエチレンオキシ又は2-メチルエチレンオキシを意味することができる。
【0043】
特に、少なくとも1つの添加剤(C)は、
- 式(Ia)(式中、Arは、非置換β-ナフチルであり、及びnは6~20の範囲の数である)のポリエーテル誘導体、
- 式(IIa)(式中、Ar’は、フェニル環の2位又は3位に-SO3Mの基を有する4-(C4~C10-アルキル)フェニルであり、oは0であり、n’は6~20の範囲の数であり、及びMはアルカリ金属カチオン又はNH4
+である)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体、
並びに
それらの任意の組合せ
から選択される。
【0044】
より詳しくは、少なくとも1つの添加剤(C)は、
- 式(Ia)(式中、Arは、非置換β-ナフチルであり、及びnは8~15の範囲の数である)のポリエーテル誘導体、
- 式(IIa)(式中、Ar’は、フェニル環の2位又は3位に-SO3Mの基を有する4-(C4~C10-アルキル)フェニルであり、oは0であり、n’は8~15の範囲の数であり、及びMはアルカリ金属カチオン又はNH4
+である)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体、
並びに
- それらの任意の組合せ
から選択される。
【0045】
例えば、少なくとも1つの添加剤(C)は、
- 式(Ia)(式中、Arは、非置換β-ナフチルであり、及びnは10、11、12又は13である)のポリエーテル誘導体、
- 式(IIa)(式中、Ar’は、フェニル環の2位又は3位に-SO3Mの基を有する4-(C4~C10-アルキル)フェニルであり、oは0であり、n’は9、10、11又は12であり、及びMはアルカリ金属カチオン又はNH4
+である)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体、
並びに
- それらの任意の組合せ
から選択される。
【0046】
本明細書において、式(II)及び(IIa)中のMとして適したアルカリ金属カチオンは、特にナトリウムカチオン(Na+)又はカリウムカチオン(K+)であり得る。
【0047】
式(I)及び(Ia)のポリエーテル誘導体は、当該技術分野に公知の任意の方法によって、例えば出発置換フェノール又は出発ナフトールをエチレンオキシド若しくはプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドで又は両方で順にオキシアルキル化することによって調製することができる。また、式(II)及び(IIa)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体の調製方法、例えば式(I)及び(Ia)ポリエーテル誘導体をスルホン化し、次いで中和することによる調製方法も当該技術分野に公知である。
【0048】
また、本明細書に説明されるポリエーテル誘導体及びスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体は、例えばBASFから商業的に入手可能であり得る。
【0049】
少なくとも1つの添加剤(C)は各々、本発明による電気めっき浴中に0.5~5.0g/L浴、特に0.5~3.0g/Lの範囲の濃度で含まれ得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、本発明による電気めっき浴は、一般的には及び好ましくは成分(C)として、本明細書で説明される少なくとも1つのポリエーテル誘導体と少なくとも1つのスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体との組合せを含むことができる。このような組合せが使用されるとき、成分(C)として添加剤が電気めっき浴中に1.0~5.0g/L浴、特に2.0~5.0g/Lの範囲の全濃度で含まれ得る。
【0051】
本発明による電気めっき浴は、骨膠などの動物膠、リグノスルホン酸塩、アロイン及びβ-ナフトールから選択される追加的な添加剤(D)、特にリグノスルホン酸塩、例えばリグノスルホン酸カルシウムをさらに含むことができる。追加的な添加剤が0.1~2.0g/L浴の範囲の濃度で電気めっき浴中に含まれ得る。
【0052】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明は、
(A)C1~C6-アルカンスルホン酸と、
(B)金属が、鉛及びスズから選択され、特に鉛である、C1~C6-アルカンスルホン酸の可溶性金属塩と、
(C)以下のもの
- 式(Ia)(式中、Arは、非置換β-ナフチルであり、及びnは6~20の範囲の数である)のポリエーテル誘導体、
- 式(IIa)(式中、Ar’は、フェニル環の2位又は3位に-SO3Mの基を有する4-(C4~C10-アルキル)フェニルであり、oは0であり、n’は6~20の範囲の数であり、及びMはアルカリ金属カチオン又はNH4
+である)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体、並びに
- それらの任意の組合せ
から選択される少なくとも1つの添加剤と、
並びに
(D)任意選択により、骨膠などの動物膠、リグノスルホン酸塩、アロイン及びβ-ナフトールから選択される追加的な添加剤とを含む、電気めっき浴を提供する。
【0053】
いくつかの更なる例示的な実施形態では、本発明は、
(A)C1~C6-アルカンスルホン酸と、
(B)C1~C6-アルカンスルホン酸の可溶性金属塩(金属は鉛である)と、
(C)以下のもの
- 式(Ia)(式中、Arは、非置換β-ナフチルであり、及びnは8~15の範囲の数である)のポリエーテル誘導体、
- 式(IIa)(式中、Ar’は、フェニル環の2位又は3位に-SO3Mの基を有する4-(C4~C10-アルキル)フェニルであり、oは0であり、n’は8~15の範囲の数であり、及びMはアルカリ金属カチオン又はNH4
+である)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体、並びに
- それらの任意の組合せ、
から選択される少なくとも1つの添加剤と、
並びに
(D)任意選択により、骨膠などの動物膠、リグノスルホン酸塩、アロイン及びβ-ナフトールから選択される追加的な添加剤とを含む、電気めっき浴を提供する。
【0054】
いくつかの好ましい例示的な実施形態では、本発明は、
(A)メタンスルホン酸と、
(B)メタンスルホン酸鉛と、
(C)以下のもの
- 式(Ia)(式中、Arは、非置換β-ナフチルであり、及びnは8~15の範囲の数である)のポリエーテル誘導体、
- 式(IIa)(式中、Ar’は、フェニル環の2位又は3位に-SO3Mの基を有する4-(C4~C10-アルキル)フェニルであり、oは0であり、n’は8~15の範囲の数であり、及びMはアルカリ金属カチオン又はNH4
+である)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体、並びに
- それらの任意の組合せ
から選択される少なくとも1つの添加剤と、
並びに
(D)任意選択により、骨膠などの動物膠、リグノスルホン酸塩、アロイン及びβ-ナフトールから選択される追加的な添加剤とを含む、電気めっき浴を提供する。
【0055】
より好ましい例示的な実施形態では、本発明は、
(A)メタンスルホン酸と、
(B)メタンスルホン酸鉛と、
(C)以下のもの
- 式(Ia)(式中、Arは、非置換β-ナフチルであり、及びnは10、11、12又は13である)のポリエーテル誘導体,
- 式(IIa)(式中、Ar’は、フェニル環の2位又は3位に-SO3Mの基を有する4-(C4~C10-アルキル)フェニルであり、oは0であり、n’は9、10、11又は12であり、及びMはアルカリ金属カチオン又はNH4
+又はNH4
+である)のスルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体、
並びに
- それらの任意の組合せ
から選択される少なくとも1つの添加剤と、
並びに
(D)任意選択により、骨膠などの動物膠、リグノスルホン酸塩、アロイン及びβ-ナフトールから選択される追加的な添加剤とを含む、電気めっき浴を提供する。
【0056】
それらの例示的な実施形態では、成分は、各成分について一般的に又は好ましくは上に説明されたそれぞれの濃度で本発明による電気めっき浴中に含まれる。
【0057】
<電解精製プロセス>
第2の態様において、本発明はまた、本発明の第1の態様において説明されるような電気めっき浴内で金属を電解堆積させることを含む、金属を精製するための方法を提供する。電気めっき浴について上に説明されるいずれの記載及び優先傾向も、ここで参照によって適用可能である。
【0058】
本発明による金属を精製するための方法は、特定の制限なしに任意の公知の電気めっき方法に従って実施することができる。
【0059】
例えば、本発明による金属を精製するための方法は、
a)精製される金属から製造されるアノードと、カソードとを電気めっき浴内に置くことと、
b)金属の層をカソード上に堆積させるために十分な時間の間アノードとカソードとの間に電圧を印加することとを含むことができる。
【0060】
精製される金属、すなわち、粗金属は、少なくとも85%、例えば90~98.5%の純度を有することができる。
【0061】
カソードの材料に対する特定の制限はない。電解堆積のために有用なカソードは、例えば、ステンレス鋼、チタン、精製される金属と同じ高純度金属から製造することができる。例えば、カソードは、粗鉛が本発明による方法によって精製される場合、高純度鉛から製造することができる。
【0062】
電解堆積は、周囲温度又は高温で、例えば20℃~70℃、好ましくは30℃~60℃の範囲で行なうことができる。
【0063】
電解堆積のために有用な電流密度は、80~500A/m2、好ましくは100~300A/m2、より好ましくは140~260A/m2の範囲であり得る。
【0064】
電気めっき浴をプロセスの運転中に40~80リットル/分(L/分)の流量でポンプで送ることができる。電気めっき浴は、リザーバから電解液タンク内に頂部からポンプで送られ、タンクの底部から出ることができるか、又は電解液タンク内に底部からポンプで送られ、タンクの頂部から出ることができる。
【0065】
アノードとカソードを1cm~10cm、好ましくは3cm~6cm、例えば3cm~5.5cm又は3cm~5cmの距離に配置することができる。
【0066】
電解堆積は一般的に、2~7日間、例えば3、4、5、6、7日間又はさらにもっと長い間行なうことができる。
【0067】
金属を精製するための方法が商業規模で実施される場合、複数の電気めっきセルを使用することを考えることができる。電気めっきセルを並列に電気接続することができる。
【0068】
本発明による電気めっき浴を使用することによって、98%以上の高い電流効率が得られ、0.4V以下の低い浴電圧が必要とされ、したがってエネルギー消費量が低い。
【0069】
第3の態様において、本発明は、本発明の第1の態様において説明されるような電気めっき浴を使用することを含む、金属の電解精製においてカソード上に堆積される金属、特に鉛のモルフォロジーを制御するための方法をさらに提供する。電気めっき浴について上に説明されるいずれの記載及び優先傾向も、ここで参照によって適用可能である。
【0070】
本発明による金属のモルフォロジーを制御するための方法を本発明の第2の態様において説明される条件下で実施することができる。電解精製プロセスについて上に説明されるいずれの記載及び優先傾向も、ここで参照によって適用可能である。
【0071】
第4の態様において、本発明は、金属を精製するための電気めっき浴において本明細書で説明されるポリエーテル誘導体、スルホン化又は硫酸化ポリエーテル誘導体又はそれらの任意の組合せの使用を提供する。
【実施例】
【0072】
実施例における測定の説明:
走査電子顕微鏡法(SEM):TESCAN MIRA3 LMU走査電子顕微鏡を使用して、カソード堆積物の外観及びモルフォロジーの特性決定をした。
【0073】
電流効率(η)を以下の式に従って計算した:
【数1】
式中、
ηは、%単位で表される、電流効率を表わし、
Mは、tの時間にわたってg単位で表される、堆積された鉛の質量/セルを表わし、
Iは、A単位で表される、電流の強さを表わし、
tは、h単位で表される、電気めっきの時間を表わし、及び
qは、鉛の電気化学当量、3.867g/(A・h)を表わす。
【0074】
電気エネルギー消費量(W)を以下の式に従って計算した:
【数2】
Wは、kWh/t単位で表される、エネルギー消費量を表わし、
ηは、%単位で表される、電流効率を表わし、及び
Uは、V単位で表される、平均浴電圧を表わす。
【0075】
比較例1:
イエローPbOを希釈メタンスルホン酸の水溶液中に溶解して、電気めっき浴として110g/Lの鉛イオンと70g/Lの遊離メタンスルホン酸とを含有する溶液をもたらした。45℃に維持した溶液が電解液タンク内に底部からポンプで送られ、55L/分の流量で頂部から出た。95.3%Pb、0.04%Cu、0.04%As、1.01%Sb、0.03%Sn、0.02%Bi及び0.56%Ag及び残りの不純物の組成を有する予備研磨された粗鉛板をアノードとして使用し、予備研磨された鉛出発シートをカソードとして使用し、これらを5cmの距離に配置した。180A/m2の電流密度で直流を2時間の間印加して電気めっきを45℃で行なった。
【0076】
図1に示されるように、堆積された鉛は、鉛堆積物の端縁に沿って粗い表面、不十分な金属光沢及びデンドライトを有することが観察された。浴電圧は、Longway電源LW-305KDSによって測定されるとき、0.37Vであり、電流効率(η)は97.4%であり、電気エネルギー消費量(W)は95.4kw・h/tPbである。
【0077】
比較例2:
添加剤として1g/Lの骨膠(WoLong Chemicals,Chinaから入手可能)を電気めっき浴に添加し、電気めっきを3日間行なったことを除いて、このプロセスは比較例1と同じ方法で実施された。
【0078】
図2A及び2B(拡大部分)に示されるように、堆積された鉛の表面に細孔があるが、実質的デンドライトは生じないことが観察された。浴電圧は0.35Vであり、電流効率はたった82.6%であり、電気エネルギー消費量は107.9kw・h/tPbである。
【0079】
比較例3:
添加剤として1g/Lのリグノスルホン酸カルシウム(Shanghai Aladdin Bio-Chem Technology Co.,Ltd.,Chinaから入手可能)を電気めっき浴に添加したことを除いて、このプロセスは比較例1と同じ方法で実施された。
【0080】
図3に示されるように、堆積された鉛が粗い表面を有することが観察された。浴電圧は0.41Vであり、電流効率は97.9%であり、電気エネルギー消費量は110.4kw・h/tPbである。
【0081】
比較例4:
添加剤として0.2g/Lの骨膠及び2g/Lのリグノスルホン酸カルシウムを電気めっき浴に添加したことを除いて、このプロセスは比較例1と同じ方法で実施された。
【0082】
図4に示されるように、堆積された鉛が不十分な金属光沢を有することが観察された。浴電圧は0.47Vであり、電流効率は99.2%であり、電気エネルギー消費量は127.8kw・h/tPbである。
【0083】
比較例5:
イエローPbOを希釈メタンスルホン酸の水溶液中に溶解して、電気めっき浴として100g/Lの鉛イオンと60g/Lの遊離メタンスルホン酸とを含有する溶液をもたらし、これに添加剤として0.3g/Lのβ-ナフトールを添加した。45℃に維持した溶液が電解液タンク内に底部からポンプで送られ、55L/分の流量で頂部から出た。95.3%Pb、0.04%Cu、0.04%As、1.01%Sb、0.03%Sn、0.02%Bi、0.56%Ag及び残りの不純物の組成を有する予備研磨された粗鉛板をアノードとして使用し、予備研磨された予備研磨された鉛出発シートをカソードとして使用し、これらを4cmの位置に配置した。180A/m2の電流密度で直流を8時間の間印加して電気めっきを45℃で行なった。
【0084】
図5A及び5B(拡大部分)に示されるように、堆積された鉛が粗い表面、不十分な金属光沢を有することが観察された。浴電圧は0.37Vであり、電流効率(η)は97.6%であり、電気エネルギー消費量(W)は97.9kw・h/tPbである。
【0085】
実施例1:
イエローPbOを希釈メタンスルホン酸の水溶液中に溶解して、電気めっき浴として100g/Lの鉛イオンと80g/Lの遊離メチルスルホン酸とを含有する溶液をもたらし、これに添加剤として2g/Lのβ-ナフトールエトキシレート(12EO)と0.5g/Lのリグノスルホン酸カルシウムとを添加した。50℃に維持した溶液が電解液タンク内に底部からポンプで送られ、40L/分の流量で頂部から出た。96%Pb、0.06%Cu、0.05%As、1.09%Sb、0.01%Sn、0.08%Bi、0.54%Ag及び残りの不純物の組成を有する予備研磨された粗鉛板をアノードとして使用し、予備研磨されたチタン板をカソードとして使用し、これらを5cmの距離に配置した。190A/m2の電流密度で直流を3日間印加して電気めっきを50℃で行なった。
【0086】
図6A及び6B(拡大部分)に示されるように、堆積された鉛は鉛堆積物の端縁に沿って平滑且つ緻密な表面を有し、デンドライト又はまくれを有さないことが観察された。浴電圧は0.41Vであり、電流効率は99.9%であり、電気エネルギー消費量は106.4kw・h/tPbである。
【0087】
実施例2:
イエローPbOを希釈メタンスルホン酸の水溶液中に溶解して、電気めっき浴として100g/Lの鉛イオンと80g/Lの遊離メタンスルホン酸とを含有する溶液をもたらし、これに0.5g/Lのβ-ナフトールエトキシレート(12EO)[BASFから市販]及び3g/Lのスルホネート置換p-ノニルフェノールエトキシレートサルフェート(10EO、ナトリウム塩)[BASFから市販]とを添加剤として添加した。40℃に維持した溶液が電解液タンク内に底部からポンプで送られ、50L/分の流量で頂部から出た。94.5%Pb、0.05%Cu、0.80%As、1.09%Sb、0.01%Sn、0.1%Bi、0.45%Ag及び残りの不純物の組成を有する予備研磨された粗鉛板をアノードとして使用し、予備研磨された鉛出発シートをカソードとして使用し、これらを4cmの位置に配置した。180A/m2の電流密度で直流を3日間印加して電気めっきを40℃で行なった。
【0088】
図7A及び7B(拡大部分)に示されるように、堆積された鉛は鉛堆積物の端縁に沿って平滑且つ緻密な表面を有し、デンドライト又はまくれを有さないことが観察された。浴電圧は0.31Vであり、電流効率は98.2%であり、電気エネルギー消費量は81.6kw・h/tPbである。
【0089】
実施例3:
イエローPbOを希釈メタンスルホン酸の水溶液中に溶解して、電気めっき浴として110g/Lの鉛イオンと60g/Lの遊離メタンスルホン酸とを含有する溶液をもたらし、これに添加剤として0.8g/Lのリグノスルホン酸カルシウムと0.5g/Lのスルホネート置換p-ノニルフェノールエトキシレートサルフェート(10EO、ナトリウム塩)[BASFから市販]とを添加した。35℃に維持した溶液が電解液タンク内に底部からポンプで送られ、60L/分の流量で頂部から出た。98.2%Pb、0.02%Cu、0.02%As、0.3%Sb、0.03%Sn、0.01%Bi、0.34%Ag及び残りの不純物の組成を有する予備研磨された粗鉛板をアノードとして使用し、予備研磨された鉛出発シートをカソードとして使用し、これらを4.5cmの距離に配置した。230A/m2の電流密度で直流を3日間印加して電気めっきを35℃で行なった。
【0090】
図8A及び8B(拡大部分)に示されるように、堆積された鉛は鉛堆積物の端縁に沿って平滑且つ緻密な表面を有し、デンドライト又はまくれを有さないことが観察された。浴電圧は0.40Vであり、電流効率は98.5%であり、電気エネルギー消費量は104.9kw・h/tPbである。
【0091】
実施例4:
イエローPbOを希釈メタンスルホン酸の水溶液中に溶解して、電気めっき浴として120g/Lの鉛イオンと100g/Lの遊離メタンスルホン酸とを含有する溶液をもたらし、これに添加剤として0.5g/Lのリグノスルホン酸カルシウム、1g/Lのスルホネート置換p-ノニルフェノールエトキシレートサルフェート(10EO、ナトリウム塩)[BASFから市販]と1g/Lのβ-ナフトールエトキシレート(12EO)[BASFから市販]とを添加した。40℃に維持した溶液が電解液タンク内に底部からポンプで送られ、60L/分の流量で頂部から出た。97.5%Pb、0.04%Cu、0.04%As、0.5%Sb、0.03%Sn、0.02%Bi、0.31%Ag及び残りの不純物の組成を有する予備研磨された粗鉛板をアノードとして使用し、予備研磨された鉛出発シートをカソードとして使用し、これらを5cmの距離に配置した。200A/m2の電流密度で直流を3日間印加して電気めっきを40℃で行なった。
【0092】
図9A及び9B(拡大部分)に示されるように、堆積された鉛は鉛堆積物の端縁に沿って平滑且つ緻密な表面を有し、デンドライト又はまくれを有さないことが観察された。浴電圧は0.09Vであり、電流効率は98.8%であり、電気エネルギー消費量は76.05kw・h/tPbである。
【0093】
実施例5:
イエローPbOを希釈メタンスルホン酸の水溶液中に溶解して、電気めっき浴として110g/Lの鉛イオンと70g/Lの遊離メタンスルホン酸とを含有する溶液をもたらし、これに添加剤として0.5g/Lのリグノスルホン酸カルシウムと1g/Lのβ-ナフトールエトキシレート(12EO)[BASFから市販]とを添加した。45℃に維持した溶液が電解液タンク内に底部からポンプで送られ、55L/分の流量で頂部から出た。95.3%Pb、0.04%Cu、0.04%As、1.01%Sb、0.03%Sn、0.02%Bi及び0.56%Agの組成を有する予備研磨された粗鉛板をアノードとして使用し、予備研磨された鉛出発シートをカソードとして使用し、これらを5cmの距離に配置した。180A/m2の電流密度で直流を3日間印加して電気めっきを45℃で行なった。
【0094】
図10A及び10B(拡大部分)に示されるように、堆積された鉛は鉛堆積物の端縁に沿って平滑且つ緻密な表面を有し、デンドライト又はまくれを有さないことが観察された。浴電圧は0.35Vであり、電流効率は98.8%であり、エネルギー消費量は94.7kw・h/tPbである。
【国際調査報告】