(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-13
(54)【発明の名称】ヨードシランを精製するための方法
(51)【国際特許分類】
B01J 47/12 20170101AFI20240502BHJP
B01J 45/00 20060101ALI20240502BHJP
B01J 39/05 20170101ALI20240502BHJP
B01J 39/07 20170101ALI20240502BHJP
B01J 39/18 20170101ALI20240502BHJP
C01B 33/107 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
B01J47/12
B01J45/00
B01J39/05
B01J39/07
B01J39/18
C01B33/107 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563955
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 US2022025539
(87)【国際公開番号】W WO2022226062
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ユン, ソンチョル
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ヒョンホ
(72)【発明者】
【氏名】ナム, ジョンウォン
(72)【発明者】
【氏名】ヌネス, シェーン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ, ペイ
(72)【発明者】
【氏名】オゼッロ, アンソニー ディー.
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA15
4G072BB20
4G072GG03
4G072HH10
4G072LL02
4G072MM08
4G072MM22
4G072TT19
4G072UU01
(57)【要約】
ジヨードシラン等のヨードシランを精製するための方法が提供される。この方法では、微量のある特定の金属イオン汚染物質が除去され、したがってヨードシランを含むある特定の液体組成物が提供され、この組成物は、マイクロ電子デバイス基板へのケイ素含有フィルムの堆積に有利に使用され得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体組成物から1つまたは複数の金属および/または金属イオンを除去する方法であって、前記液体組成物が、モノヨードシラン、ジヨードシラン、トリヨードシラン、テトラヨードシラン、モノヨードジシラン、ジヨードジシラン、トリヨードジシラン、テトラヨードジシラン、ペンタヨードジシラン、およびヘキサヨードジシランから選択されるヨード置換シランを含み、方法が、
1つまたは複数の金属および/または金属イオンを不純物として有するヨード置換シランを含む液体組成物にフィルタ材料を接触させることを含み、フィルタ材料は、酸性、塩基性およびイオン性基から選択される少なくとも1つの親水性官能基を含み;それにより液体組成物中の1つまたは複数の金属または金属イオンの量を低減する、方法。
【請求項2】
フィルタ材料が、膜を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
親水性官能基が、イオン交換基である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ヨード置換シランが、ジヨードシランである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ジヨードシランを含む液体組成物が、約100ppb以下~約500ppbの、Al、Ca、Cr、Au、Fe、Ni、Na、Ti、およびZnから選択される金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
約40~約90%の金属および/または金属イオン汚染物質が除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
全部で約30ppb以下の、Ca、Cr、Fe、およびNiから選択される金属を含有するヨード置換シランを含む、液体組成物。
【請求項8】
ヨード置換シランがジヨードシランである液体組成物であって、前記組成物が、全部で約100ppb以下のCa、Cr、Fe、NiおよびTiから選択される金属を含有する、液体組成物。
【請求項9】
ヨード置換シランがジヨードシランである液体組成物であり、前記組成物が、全部で50ppb以下の、Ca、Cr、Fe、およびNiから選択される金属を含有する、請求項8に記載の液体組成物。
【請求項10】
ヨード置換シランがジヨードシランであり、前記組成物が、全部で約30ppb以下の、Ca、Cr、Fe、およびNiから選択される金属を含有する、請求項8に記載の液体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ電子デバイス基板の気相堆積の分野に属する。より詳細には、本発明は、二酸化ケイ素フィルムの原子層堆積における前駆体として有用であるジヨードシランを精製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ素ベース薄膜フィルムの低温堆積は、現在の半導体デバイス製造およびプロセスに根本的に重要である。ここ数十年にわたり、SiO2薄膜フィルムは、マイクロプロセッサ、論理および記憶ベースデバイスを含む集積回路(IC)の必須構造成分として利用されている。SiO2は、半導体産業において一般的な材料であり、商業化されている事実上全てのケイ素ベースデバイス用の絶縁性誘電材料として使用されている。SiO2は、相互接続用誘電体、コンデンサ、およびゲート誘電材料として長年使用されている。
【0003】
高純度SiO2フィルムを堆積させるための従来の工業的手法は、そのようなフィルムの気相堆積用の薄膜フィルム前駆体としてテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を利用することであった。TEOSは、SiO2の高純度薄膜フィルムを達成するために化学気相堆積(CVD)、プラズマ化学気相堆積(PECVD)および原子層堆積(ALD)におけるケイ素源試薬として使用されている安定な液体材料である。他の薄膜フィルム堆積法(例えば、集束イオンビーム、電子ビームおよび薄膜フィルムを形成するための他のエネルギー手段)もまた、このケイ素源試薬を用いて行うことができる。
【0004】
集積回路デバイスの寸法がリソグラフィースケーリング法の対応する進歩およびデバイスジオメトリの縮小に伴って減少し続けるにつれて、それに応じて新たな堆積材料およびプロセスが、完全性の高いSiO2薄膜フィルムを形成するために求められている。低い温度、例えば400℃未満の温度で堆積され得る、SiO2フィルム、ならびに他のケイ素含有薄膜フィルム、例えばSi3N4、SiC、およびドープSiOx高k薄膜フィルムを形成するために、改善されたケイ素ベース前駆体(および共反応物質)が望まれている。
【0005】
また、低温フィルムの達成には、均一な共形ケイ素含有フィルムの形成を確実にする堆積プロセスの使用および開発が必要である。したがって、化学気相堆積(CVD)および原子層堆積(ALD)プロセスが改良および実装されると同時に、取扱い、気化および反応器への移送において安定であるが、低温で清浄に分解して所望の薄膜フィルムを形成する能力を示す反応性前駆体化合物が探求されている。この取り組みにおける根本的な課題は、前駆体の熱安定性と、前駆体の高純度低温フィルム成長プロセスへの適性とのバランスを達成することである。
【0006】
ハロシランは、マイクロ電子デバイスの製造における前駆体として有用であり;特に、H2SiI2およびHSiI3等のハロシランは、マイクロ電子デバイスの製造に使用されるケイ素含有フィルムの堆積のための前駆体化合物として有用である。現在の溶液ベース合成方法論は、(i)アリールシラン(Keinanら、J.Org.Chem.、第52巻、第22号、1987、4846~4851頁;Kerriganら、米国特許第10,106,425号)または(ii)SiH2Cl2等のハロシラン(米国特許第10,384,944号)からの、H2SiI2および他の選ばれたヨードシランの合成を説明している。
【0007】
Keinanらは、酢酸エチル等の触媒の存在下でのアリールシランであるフェニル-SiH3のヨウ素による化学量論的処理を使用した、SiH2I2形成に向けた合成方法を説明している。反応副生成物は、ベンゼンとして放出されたアリールシランからの芳香族官能基、および酢酸エチル分解から生じる複雑な副生成物混合物である。所望のSiH2I2からの反応副生成物の煩雑な分離が、プロセスを複雑化する。さらに、ハロシランを調製するためのアリールシランベースの方法は、典型的には、ヨウ素および/またはヨウ化水素で汚染された生成物を生成し、これらは所望のヨードシラン生成物に有害であるため、多くの場合、アンチモン、銀、または銅を利用してヨードシラン生成物を安定化する。
【0008】
上記のように、ジヨードシランはマイクロ電子デバイス基板、特に二酸化ケイ素へのケイ素含有フィルムの原子層堆積に有用な前駆体化合物である。そのような用途では、微量金属が経時的なジヨードシランの劣化をもたらすため、前駆体化合物が可能な限り不純物を含まないことが極めて有利である。したがって、気相堆積前駆体化合物としてのその使用およびその効果的な保存が最適化され得るように、ジヨードシラン等のハロシランの精製が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
要約すると、本発明は、様々なヨードシランを精製するための方法を提供する。この方法では、微量のある特定の金属イオン汚染物質が除去され、ヨードシランを含むある特定の液体組成物が提供され、したがってこの組成物は、マイクロ電子デバイス基板へのケイ素含有フィルムの堆積に有利に使用され得る。一態様において、本発明は、液体組成物から1つまたは複数の金属および/または金属イオンを除去する方法であって、前記液体組成物が、モノヨードシラン、ジヨードシラン、トリヨードシラン、テトラヨードシラン、モノヨードジシラン、ジヨードジシラン、トリヨードジシラン、テトラヨードジシラン、ペンタヨードジシラン、およびヘキサヨードジシランから選択されるヨード置換シランを含み、方法が、1つまたは複数の金属および/または金属イオンを不純物として有するヨード置換シランを含む液体組成物にフィルタ材料を接触させることを含み、フィルタ材料が、少なくとも1つの親水性官能基を含み、それにより液体組成物中の1つまたは複数の金属または金属イオンの量を低減する、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の動作を示すプロセスフロー図である。
【
図2】対照試料に対する異なる濾過温度での精製されたジヨードシラン試料の(安定性)性能を示す、時間(週)に対するジヨードシランのアッセイ(%)のグラフである。付属する凡例において、RT濾過なしは、室温でのジヨードシランの対照(すなわち濾過されていない)試料を指す。RT濾過ありは、本発明に従って精製された室温試料を指す。同様に、「40」は、40℃に維持された対応する試料を指し、「60」は、60℃に維持された対応する試料を指す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、内容が別の意味を明示しない限り、単数形「a」、「an」、および「the」は複数形の呼称も含む。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、内容が別の意味を明示しない限り、「または」という用語は、一般に「および/または」を含む意味で使用される。
【0012】
「約」という用語は、一般に、挙げられた値と等価である(例えば同じ機能または結果を有する)とみなされる数字の範囲を指す。多くの場合において、「約」という用語は、最も近い有効数字に四捨五入された数字を含み得る。
【0013】
端点を用いて表現される数字の範囲は、その範囲内に含まれる全ての数字を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4および5を含む)。
【0014】
フィルタは、有用な流体の流れから不要な材料を除去するために使用され、多種多様な工業技術において重要な特徴となっている。不要な材料を除去するように処理される流体は、水、液体工業用溶媒および処理流体、製造または処理に使用される工業用ガス、ならびに医療または薬学的用途を有する液体を含む。流体から除去される不要な材料は、不純物および夾雑物、例えば粒子、微生物、および溶解化学種を含む。フィルタ用途の特定の例は、半導体およびマイクロ電子デバイス製造用の液体材料とのその使用を含む。
【0015】
フィルタは、様々な異なる様式により、例えばサイズ排除、または材料との化学的および/もしくは物理的相互作用により不要な材料を除去し得る。いくつかのフィルタは、フィルタに多孔質構造を提供する構造材料によって決定付けられ、フィルタは、細孔を通過することができないサイズの粒子を捕捉することができる。いくつかのフィルタは、フィルタ上を、またはフィルタを通して通過する材料と会合および相互作用する、フィルタの構造材料、または構造材料に関連した化学的性質の能力により決定付けられる。例えば、フィルタの化学的特徴は、フィルタ上を通過するストリームからの不要な材料との会合を可能にし、例えばイオン相互作用、配位相互作用、キレート化相互作用、または水素結合相互作用により、それらの不要な材料を捕捉し得る。いくつかのフィルタは、サイズ排除および化学相互作用の特徴の両方を利用して、濾過されたストリームから材料を除去することができる。
【0016】
いくつかの場合において、濾過機能を果たすために、フィルタは、通過する流体から不要な材料を除去する役割を担うフィルタ膜を含む。フィルタ膜は、必要に応じて、平坦シートの形態であってもよく、これは、巻かれた形状(例えば螺旋状に)、平坦形状、プリーツ形状、またはディスク形状であってもよい。フィルタ膜は、代替的に、中空繊維の形態であってもよい。濾過されている流体がフィルタ入口を通って進入し、フィルタ出口を通過する前にフィルタ膜を通過する必要があるように、フィルタ膜は、筐体内に格納されるか、または別様に支持されてもよい。
【0017】
本明細書において使用される場合、「フィルタ」は、フィルタ材料を含む構造を有する物品を指す。例えば、フィルタは、例えば多孔質不織膜の形態を含む、濾過プロセスに有用な任意の形態であってもよい。
【0018】
フィルタは、濾過用途に好適な任意の所望の形態であってもよい。フィルタを形成する材料は、フィルタ自体の構造成分であってもよく、フィルタに所望の構造を提供する。フィルタは多孔質であってもよく、任意の所望の形状または構成であってもよい。フィルタ自体は、不織繊維膜等の単一物品であってもよく、または複数の個々の物品によって表されてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態において、フィルタ材料は、ポリマー材料、異なるポリマー材料の混合物、またはポリマー材料および非ポリマー材料から形成される。ある特定の実施形態において、ポリマー材料は、膜を形成する不織繊維の形態である。フィルタを形成するポリマー材料は、互いに架橋して所望の完全度を有するフィルタ構造を提供し得る。そのようなポリマー材料は、金属イオン汚染物質を能動的に濾過するように機能する疎水性(例えばイオン交換)官能基の骨格を形成する。
【0020】
本開示のフィルタのフィルタ材料を形成するために使用され得るポリマー材料は、様々なポリマーを含む。いくつかの実施形態において、フィルタ材料は膜であり、ポリオレフィンまたはハロゲン化ポリマーを含む。例示的ポリオレフィンは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリブテン(PB)、ポリイソブチレン(PIB)、ならびにエチレン、プロピレン、およびブチレンのうちの2つ以上の共重合体を含む。さらなる特定の実施形態において、フィルタ材料は、超高分子量ポリエチレン(UPE)を含む。UPE膜等のUPEフィルタ材料は、典型的には、約1×106ダルトン(Da)超、例えば約1×106~9×106Da、または1.5×106~9×106Daの範囲内の分子量(重量平均分子量)を有する樹脂から形成される。ポリエチレン等のポリオレフィンポリマー間の架橋は、熱または架橋化学物質、例えば過酸化物(例えば過酸化ジクミルもしくはジ-tert-ブチルペルオキシド)、シラン(例えばトリメトキシビニルシラン)、またはアゾエステル化合物(例えば2,2’-アゾ-ビス(2-アセトキシ-プロパン)の使用により促進され得る。例示的ハロゲン化ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロ-エチレン(PCTFE)、フッ素化エチレンポリマー(FEP)、ポリヘキサフルオロプロピレン、およびポリビニリデンフルオリド(PVDF)を含む。
【0021】
他の実施形態において、フィルタ材料は、超高分子量ポリエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテル-スルホン、ポリアリールスルホンポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、セルロース、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)、またはそれらの組合せから選択されるポリマーを含む。一実施形態において、フィルタ材料は、ポリ(テトラフルオロエチレン)である。
【0022】
他の実施形態において、フィルタは、本開示の第1のフィルタ膜を第1のフィルタ膜とは異なるフィルタ膜と組み合わせて使用して構成された複合フィルタであってもよい。
【0023】
フィルタ材料は、任意の好適な材料または材料の組合せで作製され得る。上記のように、例示的フィルタ材料は、1つまたは複数のポリマーを含み得る。さらに、フィルタの材料は、グラフトによる、またはそのような親水性基を有するコーティングを用いたコーティングによる親水性基の結合に好適な化学的性質を有し得る。一実施形態において、親水性基は、酸、塩基、およびイオン性基から選択される。別の実施形態において、親水性基は、イオン交換基である。
【0024】
例えば、0.3%のIrgacure2959(UV触媒)、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(AMPS)、メチレンビスアクリルアミド(MBAm)架橋剤、メタノール、および水を含むモノマー溶液の混合物に材料を浸漬し、その後、このようにしてコーティングされたフィルタ材料を紫外線照射に曝露してコーティングの硬化(すなわち架橋)をもたらすことにより、スルホン酸官能基がフィルタ材料(例えばフィルタ膜)の表面に導入され得る。したがって、そのようにして調製されたフィルタ材料は、スルホン酸官能基を有するようになる。同様に、ビニルホスホン酸を反応性モノマーとして利用して、ホスホン酸基を有するフィルタ膜が調製され得る。
【0025】
ポリマー表面にイオン交換部分を有する多孔質ポリマー膜は、膜を通過する溶液中の金属および金属イオン汚染物質、ならびに膜の細孔を通過するには大きすぎるサイズの任意の材料を除去し得る。例えば、Protego(登録商標)Plus DI(Entegris,Inc.)等の市販のイオン交換フィルタが利用され得る。本発明の方法において有用な市販の膜の他の例は、ASTOM Corporation and Membranes International Inc.により販売されているものを含む。
【0026】
一実施形態において、膜は、種類または構造により少なくとも1つのそのようなイオン交換基を含むが、そのようなイオン交換基の数およびその濾過特性は、ハロゲン置換シランを含む得られる精製液体組成物の所望の純度に適合するように調節され得ることが理解されるであろう。
【0027】
一実施形態において、官能化膜は、グラフト重合により製造された親水性の官能化不織布をベースとする。この膜の種類は、媒体の表面上により高い密度のイオン交換基を有し、これはイオン交換を効果的に機能させる。ジヨードシランを調製するために使用される原材料は、微量のAl、Ca、Cr、Au、Fe、Ni、Na、Ti、およびZn等の多価金属不純物を含有し、これは金属イオンまたは荷電コロイドを形成する傾向を有する。本発明の膜は、静電相互作用によりそのような金属イオンおよび微小コロイドを効率的に捕捉する。
【0028】
これに関して、ヨード置換シラン、例えばジヨードシラン組成物は、上記のように経時的な(すなわち保存中の)望ましくない不均化反応に寄与する事実上全ての金属カチオンを除去するために精製され得る。本発明の実践において、精製されるジヨードシランの組成物は、Al、Ca、Cr、Au、Fe、Ni、Na、Ti、およびZn等の望ましくない金属カチオン夾雑物を除去するために、本発明の膜と接触させられるかまたは膜を通過させられる。ジヨードシラン組成物は、そのままで、またはペンタン、ヘキサン、およびヘプタン等の不活性溶媒中の希釈溶液として利用され得る。
【0029】
したがって、第1の態様において、本発明は、液体組成物から1つまたは複数の金属および/または金属イオンを除去する方法であって、前記液体組成物が、モノヨードシラン、ジヨードシラン、トリヨードシラン、テトラヨードシラン、モノヨードジシラン、ジヨードジシラン、トリヨードジシラン、テトラヨードジシラン、ペンタヨードジシラン、およびヘキサヨードジシランから選択されるヨード置換シランを含み、方法が、1つまたは複数の金属および/または金属イオンを不純物として有するヨード置換シランを含む液体組成物にフィルタ材料を接触させることを含み、フィルタ材料が、少なくとも1つの親水性官能基を含み;それにより液体組成物中の1つまたは複数の金属または金属イオンの量を低減する、方法を提供する。
【0030】
一実施形態において、ヨード置換シランは、ジヨードシランである。一実施形態において、ジヨードシランを含む液体組成物は、フィルタ材料に通過させられる。
【0031】
一実施形態において、本発明の方法は、Al、Ca、Cr、Au、Fe、Ni、Na、Ti、およびZnから選択される約100~約1000ppbの金属を含有する、ジヨードシランを含む液体組成物を提供する。別の実施形態において、約40~約90重量パーセントの金属および/または金属イオン汚染物質が除去される。
【0032】
別の態様において、本発明は、本発明の方法に供されたハロゲン置換シランを含む精製液体組成物を提供し、これは、したがってパーツパービリオンレベルの様々な金属不純物を有する精製ヨードシラン組成物をもたらし、この組成物は、対照試料と比較して優れた保存時の安定性を示す。一実施形態において、そのような精製組成物は、全部で約100~約500ppbのAl、Ca、Cr、Au、Fe、Ni、Na、Ti、およびZnから選択される金属を含む。一実施形態において、液体組成物は、ジヨードシランを含む。別の実施形態において、ジヨードシランを含む液体組成物は、全部で約100ppb以下のCa、Cr、Fe、NiおよびTiから選択される金属を含有する。別の実施形態において、ジヨードシランを含む液体組成物は、全部で約50ppb以下のCa、Cr、Fe、およびNiから選択される金属を含有する。
【0033】
これに関して、本開示における金属への言及は、それらの対応するカチオン、すなわちAl+3、Ca+2、Na+、Fe+2およびFe+3、ならびにNi+2もまた含むように意図される。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態のプロセスフロー図を示す。RMタンク(100)、プロセスタンクA(101)、フィルタAシステム(102)、フィルタBシステム(103)、プロセスタンクB(104)、およびFGタンク(105)において。
【0035】
図2は、16週間の期間にわたる、室温、すなわち約23℃、40℃、および60℃での、対照試料と比較した本発明の方法に従って精製されたジヨードシランの保存期間を示す。このグラフは、そのようにして精製されたジヨードシラン組成物の大幅に改善された安定性を示している。この結果は、驚くべきことに、所望のジヨードシランの以前またはその後の蒸留なしで達成された。
【実施例】
【0036】
実施例1
図1に記載の精製プロセスは、プロセスタンクAおよびB、ならびにフィルタAおよびB、ならびにシステムAの構成を示す。フィルタシステムA(102)およびB(103)は、親水性官能化膜を有するフィルタカートリッジおよびステンレススチールシリンダを有するフィルタハウジングで構成される。窒素入口ガスは、プロセスタンクAおよびBの両方に接続され、濾過プロセスは乾燥窒素雰囲気下で行われる。RMタンク(100)内の所定量のジヨードシラン原材料が、プロセスタンクA(101)に移送される。窒素ガス圧力下でのジヨードシラン原材料の流入流は、フィルタAシステム(102)の入口ポートに進入し、フィルタハウジング内のフィルタ膜カートリッジを通過して、フィルタAシステム(102)の出口ポートからプロセスタンクB(104)内に排出される。この順方向のプロセスは、プロセスタンクA(101)の重量を監視しながら、プロセスタンクA(101)内の全てのジヨードシラン原材料が枯渇するまで動作し続ける。逆方向のプロセスに関しては、窒素ガス圧力下でのプロセスタンクB(104)内のジヨードシラン原材料は、フィルタBシステム(103)の入口ポートに進入し、フィルタハウジング内のフィルタ膜カートリッジを通過して、フィルタBシステム(103)の出口ポートから排出され、フィルタハウジング内のフィルタ膜カートリッジを通過して、フィルタBシステム(103)の出口ポートからプロセスタンクA(101)内に排出される。この逆順方向のプロセスは、プロセスタンクB(104)の重量を監視しながら、プロセスタンクB(104)内の全てのジヨードシラン原材料が枯渇するまで動作し続ける。次いで、濾過ループサイクルが約5~約10回反復される。最後に、プロセスタンクB内の選択された量の精製ジヨードシラン材料が、FGタンク(105)に移送される。
【0037】
官能化膜は、グラフトにより調製された親水性の官能化不織布をベースとする。得られる膜は、その表面上に高密度のイオン交換官能基を有し、これにより、イオン交換部分は効果的に機能する。ジヨードシラン原材料は、Al、Ca、Cr、Au、Fe、Ni、Na、Ti、およびZn等の多価金属不純物を含有し、これは荷電コロイドを形成する傾向を有する。イオン交換官能化膜は、金属イオンおよび微小コロイドを効率的に捕捉することが判明した。
【0038】
本発明の方法および以下の実施例において、ジヨードシランおよび示された量の金属不純物を含む液体組成物は、約0.2~約0.5リットル毎分の流速で、または約4~約10分のイオン交換フィルタ膜内の滞留時間で、室温でEntegris Protego(登録商標)Plus DIフィルタに通過させられた。そのようにして精製された液体組成物を分析し、以下に記載のデータを得た。
【0039】
実施例2
微量金属含有量の分析
以下の表1は、本発明の膜を使用したジヨードシランの濾過の結果の詳細を、パーツパービリオン(ppb)で示している。
【0040】
実施例3
EPステンレススチールシリンダ内での保存期間試験
この実施例では、ジヨードシランを実施例1に従う濾過に供し、濾過に供さなかったジヨードシラン(対照)と比較した。データは、
図2に示されるように、実施例1の濾過されたジヨードシランが、(a)(i)室温、および(ii)40℃で4か月間、ならびに(b)60℃で2か月間のステンレススチールシリンダ内での保存において、ガスクロマトグラフィにより決定される99.9%以上の純度を維持することができたことを示している。詳細な結果は以下の通りである。
【0041】
表3は、(a)(i)室温、および(ii)40℃、ならびに(b)60℃で7か月間のステンレススチールシリンダ内での保存における、ガスクロマトグラフィにより決定される濾過された試料および対照試料の両方の毎月ベースの純度を示す。データは、表3に示されるように、実施例1の濾過されたジヨードシランが、(a)室温で7か月間、および(b)40℃で5か月間、および(c)60℃で2か月間のステンレススチールシリンダ内での保存において、ガスクロマトグラフィにより決定される99.9%以上の純度を維持することができたことを示している。
【0042】
月毎の不均化反応速度に関しては、表3に示されるように、濾過された試料は、(a)室温で0.003%(-)RR、(b)40℃で7か月間で0.013%(-)RR、および(c)60℃で6か月間で0.032%(-)RRを示した。この結果は、濾過された試料が、(a)室温で対照試料の70分の1の不均化速度を示し、(b)40℃および60℃で対照試料の約40分の1の不均化反応速度を示したことを示している。
【0043】
態様
第1の態様において、本発明は、液体組成物から1つまたは複数の金属および/または金属イオンを除去する方法であって、前記液体組成物が、モノヨードシラン、ジヨードシラン、トリヨードシラン、テトラヨードシラン、モノヨードジシラン、ジヨードジシラン、トリヨードジシラン、テトラヨードジシラン、ペンタヨードジシラン、およびヘキサヨードジシランから選択されるヨード置換シランを含み、方法が、
1つまたは複数の金属および/または金属イオンを不純物として有するヨード置換シランを含む液体組成物にフィルタ材料を接触させることを含み、フィルタ材料が、酸性、塩基性およびイオン性基から選択される少なくとも1つの親水性官能基を含み;それにより液体組成物中の1つまたは複数の金属または金属イオンの量を低減する、方法を提供する。
【0044】
第2の態様において、本発明は、フィルタ材料が膜を含む、第1の態様の方法を提供する。
【0045】
第3の態様において、本発明は、親水性官能基がイオン交換基である、第1の態様の方法を提供する。
【0046】
第4の態様において、本発明は、ヨード置換シランがジヨードシランである、第1の態様の方法を提供する。
【0047】
第5の態様において、本発明は、ジヨードシランを含む液体組成物が、約100ppb以下~約500ppbのAl、Ca、Cr、Au、Fe、Ni、Na、Ti、およびZnから選択される金属を含む、最初の4つの態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0048】
第6の態様において、本発明は、約40~約90%の金属および/または金属イオン汚染物質が除去される、第1の態様から第5の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0049】
第7の態様において、本発明は、全部で約30ppb以下のCa、Cr、Fe、およびNiから選択される金属を含有するヨード置換シランを含む、液体組成物を提供する。
【0050】
第8の態様において、本発明は、ヨード置換シランがジヨードシランである液体組成物であって、前記組成物が、全部で約100ppb以下のCa、Cr、Fe、NiおよびTiから選択される金属を含有する、液体組成物を提供する。
【0051】
第9の態様において、本発明は、ヨード置換シランがジヨードシランであり、前記組成物が、全部で50ppb以下のCa、Cr、Fe、およびNiから選択される金属を含有する、第7の態様の液体組成物を提供する。
【0052】
第10の態様において、本発明は、ヨード置換シランがジヨードシランであり、前記組成物が、全部で約30ppb以下のCa、Cr、Fe、およびNiから選択される金属を含有する、第7の態様の液体組成物を提供する。
【0053】
第11の態様において、本発明は、室温未満で測定されたガスクロマトグラフアッセイデータを使用して式1により計算される0.020パーセント未満の(-)反応速度を有するジヨードシランを含む組成物であって、式1が、反応速度(パーセンテージ)+[(A初期-A時間)/A初期]/時間×100[式中、Aは、ガスクロマトグラフィアッセイパーセンテージである]である、組成物を提供する。
【0054】
第12の態様において、本発明は、室温と40℃との間で測定された第11の態様に記載の式1により計算される0.05パーセント未満の(-)反応速度を有するジヨードシランを含む、組成物を提供する。
【0055】
第13の態様において、本発明は、40℃と60℃との間で測定されたガスクロマトグラフィデータを使用して第11の態様に記載の式1により計算される0.100パーセント未満の(-)反応速度を有するジヨードシランを含む、組成物を提供する。
【0056】
このように本開示のいくつかの例示的実施形態を説明してきたが、本明細書に添付された特許請求の範囲内でさらに他の実施形態が形成および使用され得ることが、当業者に容易に理解されるであろう。本明細書により包含される本開示の数々の利点は、上記説明において記載されている。しかしながら、本開示は、多くの点において例示にすぎないことが理解されるであろう。当然ながら、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲が表現される言語で定義される。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体組成物から1つまたは複数の金属および/または金属イオンを除去する方法であって、前記液体組成物が、モノヨードシラン、ジヨードシラン、トリヨードシラン、テトラヨードシラン、モノヨードジシラン、ジヨードジシラン、トリヨードジシラン、テトラヨードジシラン、ペンタヨードジシラン、およびヘキサヨードジシランから選択されるヨード置換シランを含み、方法が、
1つまたは複数の金属および/または金属イオンを不純物として有するヨード置換シランを含む液体組成物にフィルタ材料を接触させることを含み、フィルタ材料は、
ポリマー材料、異なるポリマー材料の混合物、またはポリマー材料および非ポリマー材料から形成され、かつ、酸性、塩基性およびイオン性基から選択される少なくとも1つの親水性官能基を含み;それにより液体組成物中の1つまたは複数の金属または金属イオンの量を低減する、方法。
【請求項2】
親水性官能基が、イオン交換基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ヨード置換シランが、ジヨードシランである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ヨード置換シラン含有液体組成物であって、組成物が、全部で30ppb以下の、Ca、Cr、Fe、およびNiから選択される金属を含む
こと、ならびに、ヨード置換シランが、モノヨードシラン、ジヨードシラン、トリヨードシラン、テトラヨードシラン、モノヨードジシラン、ジヨードジシラン、トリヨードジシラン、テトラヨードジシラン、ペンタヨードジシラン、およびヘキサヨードジシランから選択されることを特徴とする、ヨード置換シラン含有液体組成物。
【請求項5】
ヨード置換シラン含有液体組成物であって、ヨード置換シランがジヨードシランである
こと、ならびに、前記組成物が、全部で100ppb以下のCa、Cr、Fe、NiおよびTiから選択される金属を含有する
ことを特徴とする、ヨード置換シラン含有液体組成物。
【国際調査報告】