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特表2024-519508カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンの製造方法
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  • 特表-カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-14
(54)【発明の名称】カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/33 20060101AFI20240507BHJP
   A01N 43/08 20060101ALI20240507BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20240507BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20240507BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240507BHJP
【FI】
C07D307/33 330
C07D307/33 CSP
A01N43/08 H
C07D307/33 200
B01J23/44 Z
B01J23/46 311Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023568166
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2022061912
(87)【国際公開番号】W WO2022233906
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】21172097.4
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジルヴェスター グレッスル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー ジビル リンケ
(72)【発明者】
【氏名】グリット バイアー
(72)【発明者】
【氏名】ルーテ ダ コンセイソン タヴァレス アンドレ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H011
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA04A
4G169BA05A
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BA22A
4G169BB01A
4G169BB04A
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC74A
4G169BC75A
4G169BD04A
4G169BD05A
4G169BE34A
4G169CB02
4G169DA05
4G169FC08
4H011AA01
4H011BB08
4H011DC05
4H039CA66
4H039CB20
4H039CH40
(57)【要約】
カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つ以上の生成化合物を含む生成物の製造方法、前記生成化合物を製造するための出発化合物としての、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される化合物の使用、および1つ以上の前記生成化合物を含む生成物の製造方法における不均一系水素化触媒の使用が記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物、または
(b) カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物の1つ以上の反応生成物
を含む生成物の製造方法であって、少なくとも以下の段階:
(i) 脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含む出発材料を準備または調製する段階、
(ii) n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率を有する溶剤を準備または調製する段階、および
(iii) 段階(i)において準備または調製された前記1つまたは2つ以上の出発化合物を、
・ 80℃~140℃の範囲の温度で、
・ 15MPa~30MPaの範囲の水素分圧で、
・ 段階(ii)において準備または調製された前記溶剤中で、且つ
・ Co、Rh、Ir、Ni、PdおよびPtからなる群から選択される1つ以上の金属を含む不均一系水素化触媒の存在下で、
化学的に変換して、前記1つまたは2つ以上の出発化合物中に存在する2つのカルボキシル基、2つのカルボキシレート基、2つのカルボアルコキシ基、または無水物基が、水素化条件下でラクトン基を形成し、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む生成物が生じる段階
を含む、前記方法。
【請求項2】
1つの出発化合物、または2つ以上の出発化合物の少なくとも1つがそれぞれ、炭素原子の総数6を有する脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つの出発化合物、または2つ以上の出発化合物の少なくとも1つがそれぞれ、
・ α-官能基化脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から、好ましくはα-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から、より好ましくはクエン酸、イソクエン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から、最も好ましくはクエン酸、クエン酸トリエチルおよびイソクエン酸からなる群から選択されるか、または
・ α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から、好ましくはアコニット酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択されるか、または
・ トリカルバリル酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
段階(iii)において生じる生成物が、
・ 好ましくはテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される、1つのカルボキシル基および1つのヒドロキシ基を有するラクトン、および
・ 好ましくはテトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される、1つのカルボキシル基を有し且つヒドロキシ基を有さないラクトン
からなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
段階(ii)において準備または調製される、n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率を有する溶剤が、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールおよび環状エーテルからなる群から選択される1つ以上の成分を含み、
前記溶剤は好ましくは、
・ 水、および
・ 溶剤の総量に対して50質量%を上回る、好ましくは70質量%を上回る、より好ましくは90質量%を上回る量の水を含む水性混合物
からなる群から選択される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
段階(iii)における温度が、
・ 80℃~125℃の範囲、好ましくは95℃~120℃の範囲であり、且つ/または
・ 脂肪族ポリオールの代わりに、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有する前記ラクトンが選択的に調製されるように選択される、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記不均一系水素化触媒が、Co、Rh、Ir、Ni、PdおよびPtからなる群から選択される1つ以上の金属を、前記不均一系水素化触媒の総量に対して90質量%以上、好ましくは95質量%以上の総量で含み、
好ましくは、前記不均一系水素化触媒は担持材料によって担持されており、好ましくは前記担持材料は、金属酸化物、ゼオライトおよび炭素系材料からなる群から選択され、好ましくはAl23、ZrO2、TiO2、SiC、カーボンブラックおよびPTFEからなる群から選択される、
請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
段階(iii)の後に、以下の追加的な段階:
・ 段階(iii)において使用された溶剤を蒸発によって除去する段階、
・ 段階(iii)から生じる生成物中に存在する、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の前記生成化合物を化学的に変換して、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の化合物の1つ以上の反応生成物を含む生成物(b)をもたらす段階、および
・ 1つ以上のさらなる化学物質を、段階(iii)から生じる生成物中に存在する、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の前記生成化合物に添加して、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の化合物を含む反応混合物をもたらす段階
の1つ、2つまたは全てを行う、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される、好ましくはクエン酸およびアコニット酸からなる群から選択される、1つまたは2つ以上の出発化合物を含む出発材料が、植物材料から調製または単離され、好ましくは糖発酵によって調製される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記生成物が:
(a) カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含み、前記生成物が、
・ ペプチド、タンパク質、酵素、微生物、DNA、RNA、およびウイルスからなる群から選択される1つ以上の材料を含む配合物、
・ ポリマーを調製するための、好ましくは開環重合によって、またはエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとのアルコキシル化によってポリマーを調製するための反応混合物であって、段階(iii)の後に調製される前記反応混合物、
・ カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物によって錯化された金属カチオン、好ましくはFe、Mg、Ca、Sr、Cu、AgおよびAuカチオンを含む混合物であって、段階(iii)の後に調製され、好ましくは精油所製品、鉱業製品、およびホームケア製品からなる群から選択される、前記混合物、
・ カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物のアミドまたはエステルを調製するための反応混合物であって、段階(iii)の後に調製される、前記反応混合物
からなる群から選択される、
または、前記生成物が、
(b) カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物の1つ以上の反応生成物を含み、前記生成物が、
・ 1つ以上のポリマー、好ましくはポリアルコキシレートまたはポリエステルを含む生成物であって、前記ポリマーの少なくとも1つが段階(iii)の後に実施されるさらなる段階において、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物から調製される、前記生成物
・ 溶剤または溶剤成分として、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物の1つ以上の反応生成物を含む溶液
からなる群から選択される、
請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
・ ペプチド、タンパク質、酵素、微生物、DNA、RNA、およびウイルスからなる群から選択される1つ以上の材料を含む配合物、
・ 錯化剤を含む精油所製品、
・ 錯化剤を含む鉱業製品、
・ 錯化剤を含むホームケア製品、
・ カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物を、相応のポリマーへと、好ましくは開環重合によって、またはエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとのアルコキシル化によって変換するための反応混合物であって、段階(iii)の後に調製される、前記反応混合物、および
・ カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物のアミドまたはエステルを調製するための反応混合物であって、段階(iii)の後に調製される、前記反応混合物
からなる群から選択される生成物であって、前記生成物が、
・ 好ましくはテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される、1つのカルボキシル基および1つのヒドロキシ基を有するラクトン、および
・ 好ましくはテトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される、1つのカルボキシル基を有し且つヒドロキシ基を有さないラクトン、
からなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む、
前記生成物。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか1項に定義された方法によって得られる、請求項11に記載の生成物。
【請求項13】
テトラヒドロ-3-ヒドロキシ-5-オキソ-3-フラン酢酸。
【請求項14】
・ 以下からなる群から選択される生成化合物:
・ 好ましくはテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される、1つのカルボキシル基および1つのヒドロキシ基を有するラクトン、および
・ 好ましくはテトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される、1つのカルボキシル基を有し且つヒドロキシ基を有さないラクトン
または
・ そのような生成化合物の混合物
を製造するための、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法における出発化合物としての、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の化合物の使用、好ましくはクエン酸の使用であって、
好ましくは、それらの生成化合物、またはそのような生成化合物の混合物が、バッチあたり100kg以上、より好ましくは500kg以上、およびさらにより好ましくは1000kg以上の量で製造される、前記使用。
【請求項15】
Co、Rh、Ir、Ni、PdおよびPtからなる群から選択される1つ以上の金属を、不均一系水素化触媒の総量に対して90質量%以上、好ましくは95質量%以上の総量で含む不均一系水素化触媒の使用であって、
カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む、
好ましくは、
・ 好ましくはテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される、1つのカルボキシル基および1つのヒドロキシ基を有するラクトン、および
・ 好ましくはテトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される、1つのカルボキシル基を有し且つヒドロキシ基を有さないラクトン、
からなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む生成物を製造する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法における、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、(a)カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つ以上の生成化合物、および/または(b)カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つ以上の前記化合物の1つ以上の反応生成物を含む生成物の製造方法、そのような生成物(a)および(b)、およびカルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される生成化合物を製造するための出発化合物としての、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される化合物の使用に関する。カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つ以上の生成化合物を含む生成物の製造方法における不均一系水素化触媒の使用も記載される。
【背景技術】
【0002】
トリカルボン酸から誘導されるラクトンは、産業規模における用途範囲が広いことから、重要な合成ターゲットである。そのようなラクトンは、現在主に石油化学的に製造されている(例えば開環重合のための)モノマー、および溶剤(例えばγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン)を置き換えることができる。化石原料供給の有限性および不安定性、および環境上の理由に起因して、化石原料を非化石原料、つまり再生可能な資源から得られる原料によって置き換えることがますます重要になってきている。
【0003】
ラジアルトリカルボン酸、例えばクエン酸、イソクエン酸、トリカルバリル酸およびアコニット酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩は、ラクトンの選択的形成が達成される限り、ラクトンのための前駆体として使用され得る。クエン酸およびアコニット酸などのトリカルボン酸は、再生可能資源から、例えば植物材料から糖発酵によって得ることができる。
【0004】
残念ながら、トリカルボン酸は以下の主な理由に起因して、典型的な還元手順について困難な基質である:
・ pKA値が多くの触媒材料と適合しないこと、
・ 中央のC=O結合の求電子性が低いこと、
・ 温度の上昇に伴う脱カルボキシル傾向が強いこと、
・ 大半の有機溶剤中での溶解性が低いこと、
・ 還元電位が高いこと(これは例えば水素化ナトリウムでの中和をみちびくが、水素化アルミニウムリチウムなどのより強い還元剤のみでの還元をみちびく)。
【0005】
クエン酸は特に、温度が上昇する際に非常に脱カルボキシルおよび脱水しやすい。
【0006】
Green Chem. 2017, 19, 4642(De Vos et al.)は、還元条件下で(20bar H2、175℃、6時間)、Ni/ZrO2触媒を用いて水性系におけるクエン酸を、主生成物(53%)としてのイタコン酸へと脱カルボキシルおよび脱水することを記載している。著者らは、イタコン酸が次にβ-ヒドロキシカルボン酸へと再水和し、それが最終的にin-situでβ-カルボキシル-γ-ブチロラクトンへと環化することを提案している。このいわゆる「異性体水和」生成物(2-(ヒドロキシメチル)コハク酸、β-カルボキシル-γ-ブチロラクトン、および2-ヒドロキシ-2-メチルコハク酸)は、反応生成物の41%の割合に相応する。
【0007】
以下も関連技術である:
米国特許第4218381号明細書(US4,218,381 A)、
P.-F.Xu et al./Tetrahedron Letters 46 (2005) 3815~3818、
I.Thapa et al., Catalysis Today 319 (2019) 191~196、
G.Venkateswara Rao et al., Food Chemistry 120 (2010) 235~239、
H.Hida et al., Biosci., Biotechnol., Biochem. 69 (8), 1555~1561, 2005、
R.Gerardy et al., Org. Process Res Dev. 2017, 21, 2012~2017、
H.G.M.WalravenおよびU.K.Pandit, Tetrahedron Vol. 36, 321~327ページ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4218381号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】De Vos et al., Green Chem. 2017, 19, 4642
【非特許文献2】P.-F.Xu et al./Tetrahedron Letters 46 (2005) 3815~3818
【非特許文献3】I.Thapa et al., Catalysis Today 319 (2019) 191~196
【非特許文献4】G.Venkateswara Rao et al., Food Chemistry 120 (2010) 235~239
【非特許文献5】H.Hida et al., Biosci., Biotechnol., Biochem. 69 (8), 1555~1561, 2005
【非特許文献6】R.Gerardy et al., Org. Process Res Dev. 2017, 21, 2012~2017
【非特許文献7】H.G.M.WalravenおよびU.K.Pandit, Tetrahedron Vol. 36, 321~327ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の第1の課題は、(a)カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つ以上の生成化合物、および/または(b)カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つ以上の前記化合物の1つ以上の反応生成物を含む生成物の製造方法であって、再生可能資源から得られる出発材料を使用できる、前記方法を提供することである。
【0011】
さらなる課題は、脂肪族トリカルボン酸の2つのカルボキシル基、脂肪族トリカルボン酸のエステルの2つのカルボアルコキシ基、脂肪族トリカルボン酸の塩の2つのカルボキシレート基からの、または脂肪族トリカルボン酸の無水物の無水物基からの、水素化条件下でのラクトン基の選択的形成方法であって、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンが有用な収率で得られ、脱カルボキシルによる炭素原子の損失またはポリオールへの完全な水素化をもたらしかねない望ましくない副反応が抑制される、前記方法を提供することである(出発化合物のクエン酸について、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンの形成、およびクエン酸のカルボキシル基のヒドロキシ基への望ましくない完全な変換を示す図1参照)。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の課題および他の課題は、
(a) カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物、および/または
(b) カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の化合物の1つ以上の反応生成物
を含む生成物の製造方法であって、少なくとも以下の段階:
(i) 脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含む出発材料を準備または調製する段階、
(ii) n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率を有する溶剤を準備または調製する段階、および
(iii) 段階(i)において準備または調製された前記1つまたは2つ以上の出発化合物を、
・ 80℃~140℃の範囲の温度で、
・ 15MPa~30MPaの範囲の水素分圧で、
・ 段階(ii)において準備または調製された前記溶剤中で、且つ
・ Co、Rh、Ir、Ni、PdおよびPtからなる群から選択される1つ以上の金属を含む不均一系水素化触媒の存在下で、
化学的に変換し、前記1つまたは2つ以上の出発化合物中に存在する2つのカルボキシル基、2つのカルボキシレート基、2つのカルボアルコキシ基、または無水物基が、水素化条件下でラクトン基を形成し、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む生成物が生じる段階
を含む、前記方法によって達成され得る。
【0013】
意外なことに、上記で定義された水素化条件下で、脂肪族トリカルボン酸の2つのカルボキシル基から、脂肪族トリカルボン酸のエステルの2つのカルボアルコキシ基から、脂肪族トリカルボン酸の塩の2つのカルボキシレート基から、または脂肪族トリカルボン酸の無水物の無水物基から、ラクトン基の選択的形成を達成することができ、且つ、段階(iii)における水素化反応のパラメータを上記で定義されたように選択し、且つ上記で定義された不均一系水素化触媒および上記で定義された溶剤が使用される場合、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される生成化合物を有用な収率で得ることができることが判明した。従って、段階(iii)における出発化合物の化学変換が上記で定義されたパラメータ、上記で定義された不均一系水素化触媒、および上記で定義された溶剤を使用して行われる場合、望ましくない副反応が抑制される。
【0014】
理論に束縛されることを望むものではないが、現在、段階(iii)において水素化条件下で出発化合物のカルボキシル基、カルボキシレート基、カルボアルコキシ基および無水物基の1つが還元されて、ヒドロキシ基が形成され、それが次に、カルボキシル基、カルボキシレート基またはカルボアルコキシ基の、または同じ分子の他の1つと閉環反応し(分子内エステル化)、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンが得られると考えられている。
【0015】
出発化合物が脂肪族トリカルボン酸である場合、上記で定義された水素化条件下で、そのカルボキシル基の2つが選択的にラクトン基を形成し、且つ1つのカルボキシル基が残る。出発化合物が脂肪族トリカルボン酸の塩である場合、上記で定義された水素化条件下で、そのカルボキシレート基の2つが選択的にラクトン基を形成し、且つ1つのカルボキシレート基が残る。出発化合物が脂肪族トリカルボン酸のエステルである場合、上記で定義された水素化条件下で、そのカルボアルコキシ基の2つが選択的にラクトン基を形成し、且つ1つのカルボアルコキシ基が残るかまたは上記で定義された水素化条件下でヒドロキシ基へと還元される。出発化合物が脂肪族トリカルボン酸の無水物である場合、上記で定義された水素化条件下で、無水物基からラクトンが選択的に形成され、且つ1つのカルボキシル基が残る。
【0016】
出発化合物がα-ヒドロキシカルボン酸、それらの塩またはそれらの無水物である場合、この方法で形成されるラクトンは、カルボキシル基およびヒドロキシ基を有し、且つ引き続く水素化によって、カルボキシル基を有し且つヒドロキシ基を有さないラクトンへと脱水され得る(出発化合物のクエン酸について、カルボキシル基およびヒドロキシ基を有するラクトンの形成、およびカルボキシル基を有し且つヒドロキシ基を有さないラクトンへのそれらの引き続く脱水および水素化を示す図2参照)。
【0017】
上記で定義された(a)の場合、段階(iii)において生じる、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つ以上の生成化合物を含む生成物が、前記方法の最終生成物である。ここで、最終生成物は、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含むか、またはそれらからなる。
【0018】
上記で定義された(b)の場合、段階(iii)において生じる、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つ以上の生成化合物を含む生成物は中間生成物であり、且つ前記中間生成物は、上記で定義された段階(iii)に引き続く1つ以上のさらなる段階を実施することにより、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つ以上の前記化合物の1つ以上の反応生成物を含む最終生成物へと転換される。ここで、中間生成物は、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含むか、またはそれらからなり、且つ最終生成物は、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の前記化合物の1つまたは2つ以上の反応生成物を含むか、またはそれらからなる(詳細は下記参照)。
【0019】
上記で定義された方法の段階(i)において、
・ 脂肪族トリカルボン酸、
・ 脂肪族トリカルボン酸のエステル、
・ 脂肪族トリカルボン酸の無水物、
・ 脂肪族トリカルボン酸の塩
からなる群から選択される1つ以上の出発化合物を含む出発材料が調製または準備される。それらの出発化合物の中で、脂肪族トリカルボン酸が好ましい。
【0020】
ここで理解されるとおり、脂肪族トリカルボン酸のエステルはラクトンを含まない。
【0021】
例えば、出発材料は、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含むか、またはそれらからなる。
【0022】
出発化合物、または前記出発化合物の少なくとも1つは、
・ 炭素原子の総数6を有する脂肪族トリカルボン酸、
・ 炭素原子の総数6を有する脂肪族トリカルボン酸のエステル、
・ 炭素原子の総数6を有する脂肪族トリカルボン酸の無水物、および
・ 炭素原子の総数6を有する脂肪族トリカルボン酸の塩
からなる群から選択され得る。
【0023】
それらの出発化合物の中で、炭素原子の総数6を有する脂肪族トリカルボン酸が好ましい。
【0024】
例えば、出発材料は、炭素原子の総数6を有する脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含むか、またはそれらからなる。好ましくは、出発化合物の全ては、炭素原子の総数6を有する脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される。
【0025】
特定の場合、出発化合物、または前記出発化合物の少なくとも1つは、
・ トリカルバリル酸、
・ トリカルバリル酸のエステル、
・ トリカルバリル酸の無水物、および
・ トリカルバリル酸の塩
からなる群から選択される。
【0026】
それらの出発化合物の中で、トリカルバリル酸が好ましい。
【0027】
例えば、出発材料は、トリカルバリル酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含むか、またはそれらからなる。好ましくは、前記出発化合物の全ては、トリカルバリル酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される。
【0028】
特定の場合、出発化合物、または前記出発化合物の少なくとも1つは、
・ α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸、
・ α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸のエステル、
・ α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸の無水物、および
・ α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸の塩
からなる群から選択される。
【0029】
それらの出発化合物の中で、α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸が好ましい。
【0030】
例えば、出発材料は、α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含むか、またはそれらからなる。好ましくは、前記出発化合物の全ては、α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物およびそれらの塩からなる群から選択される。
【0031】
好ましくは、前記α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸はアコニット酸である。この場合、出発化合物、または前記出発化合物の少なくとも1つは、
・ アコニット酸、
・ アコニット酸のエステル、
・ アコニット酸の無水物、および
・ アコニット酸の塩
からなる群から選択される。
【0032】
それらの出発化合物の中で、アコニット酸が好ましい。
【0033】
例えば、出発材料は、アコニット酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含むか、またはそれらからなる。好ましくは、前記出発化合物の全ては、アコニット酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される。
【0034】
特定の場合、出発化合物、または前記出発化合物の少なくとも1つは、
・ α-官能基化脂肪族トリカルボン酸、
・ α-官能基化脂肪族トリカルボン酸のエステル、
・ α-官能基化脂肪族トリカルボン酸の無水物、および
・ α-官能基化脂肪族トリカルボン酸の塩
からなる群から選択される。
【0035】
それらの出発化合物の中で、α-官能基化脂肪族トリカルボン酸が好ましい。
【0036】
例えば、出発材料は、α-官能基化脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含むか、またはそれらからなる。好ましくは、前記出発化合物の全ては、α-官能基化脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物およびそれらの塩からなる群から選択される。
【0037】
好ましくは、α-官能基化脂肪族トリカルボン酸はα-ヒドロキシ脂肪族カルボン酸である。この場合、出発化合物、または前記出発化合物の少なくとも1つは、
・ α-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸、
・ α-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸のエステル、
・ α-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸の無水物、および
・ α-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸の塩
からなる群から選択される。
【0038】
それらの出発化合物の中で、α-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸が好ましい。
【0039】
例えば、出発材料は、α-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含むか、またはそれらからなる。好ましくは、前記出発化合物の全ては、α-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物およびそれらの塩からなる群から選択される。
【0040】
好ましいα-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸はクエン酸およびイソクエン酸である。この場合、出発化合物、または前記出発化合物の少なくとも1つは、
・ クエン酸およびイソクエン酸、
・ クエン酸のエステルおよびイソクエン酸のエステル、
・ クエン酸の無水物およびイソクエン酸の無水物、
・ クエン酸の塩およびイソクエン酸の塩
からなる群から選択される。
【0041】
それらの出発化合物の中で、クエン酸およびイソクエン酸が好ましい。
【0042】
例えば、出発材料は、クエン酸、イソクエン酸、それらのエステル、それらの無水物およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含むか、またはそれらからなる。好ましくは、前記出発化合物の全ては、クエン酸、イソクエン酸、それらのエステル、それらの無水物およびそれらの塩からなる群から選択される。
【0043】
α-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物およびそれらの塩からなる群における最も好ましい出発化合物は、クエン酸、クエン酸トリエチル、およびイソクエン酸である。例えば、出発材料は、クエン酸、クエン酸トリエチル、およびイソクエン酸の1つ、2つまたは全てを含むか、またはそれらからなる。好ましくは、前記出発化合物の全ては、クエン酸、クエン酸トリエチル、およびイソクエン酸からなる群から選択される。
【0044】
上述の具体的な好ましい出発化合物は、式(I)による構造を有する脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩である:
【化1】
[式中、
(i) R1=H、R2=H(トリカルバリル酸)、または
(ii) R1=OH、R2=H(イソクエン酸)、または
(iii) R1=H、R2=OH(クエン酸)、または
(iv) R1、R2が共に二重結合を示す(アコニット酸)]。
【0045】
従って、出発化合物、または前記出発化合物の少なくとも1つは、
・ クエン酸、
・ イソクエン酸、
・ アコニット酸、
・ トリカルバリル酸、
・ クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸およびトリカルバリル酸からなる群から選択される酸のエステル、
・ クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸およびトリカルバリル酸からなる群から選択される酸の無水物、および
・ クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸およびトリカルバリル酸からなる群から選択される酸の塩
からなる群から選択され得る。
【0046】
それらの出発化合物の中で、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸およびトリカルバリル酸が好ましい。
【0047】
例えば、出発材料は、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、トリカルバリル酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含むか、またはそれらからなる。好ましくは、前記出発化合物の全ては、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、トリカルバリル酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される。
【0048】
特に好ましい出発化合物はクエン酸である。例えば、出発材料はクエン酸を含むか、またはクエン酸からなる。好ましくは、出発材料はクエン酸からなる。
【0049】
脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される出発化合物の総濃度は、段階(iii)の開始時の反応混合物の総量に対して5質量%以上、好ましくは20質量%以上であってよい。脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される全ての出発化合物の総濃度は、段階(iii)の開始時の反応混合物の総量に対して60質量%以下、好ましくは55質量%以下であってよい。
【0050】
ここで、段階(iii)の開始時の反応混合物の総量は、出発化合物と、n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率を有する溶剤との合計量である。
【0051】
好ましくは、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される出発化合物の総濃度は、段階(iii)の開始時の反応混合物の総量に対して5質量%以上且つ60質量%以下である。より好ましくは、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される出発化合物の総濃度は、段階(iii)の開始時の反応混合物の総量に対して20質量%以上且つ55質量%以下である。
【0052】
脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される、好ましくはクエン酸およびアコニット酸からなる群から選択される、1つまたは2つ以上の出発化合物を含む出発材料は、好ましくは植物材料から調製または単離される。従って、上記で定義された方法は、再生可能資源から得られる出発材料を使用できるという利点を有する。
【0053】
例えば、出発材料は植物材料から糖発酵によって調製される。
【0054】
出発材料、特にクエン酸、およびクエン酸の化学変換から得られる出発化合物についての可能性のある他の再生可能資源は、柑橘類果実である。
【0055】
上記で定義された方法の段階(iii)において生じる生成物は、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つ以上の生成化合物を含む。例えば、段階(iii)において生じる生成物は、1つのカルボキシル基および1つのヒドロキシ基を有するラクトン、および1つのカルボキシル基を有し且つヒドロキシ基を有さないラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含むか、またはそれらからなることができる。
【0056】
好ましくは、全ての生成化合物は、1つのカルボキシル基および1つのヒドロキシ基を有するラクトン、および1つのカルボキシル基を有し且つヒドロキシ基を有さないラクトンからなる群から選択される化合物である。1つのカルボキシル基および1つのヒドロキシ基を有するラクトンからなる群から選択される好ましい生成化合物は、テトラヒドロ-3-ヒドロキシ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-2-オキソ-3-フラン酢酸である。1つのカルボキシル基を有し且つヒドロキシ基を有さないラクトンからなる群から選択される好ましい生成化合物は、テトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸である。
【0057】
特定の好ましい場合、段階(iii)において生じる生成物は、テトラヒドロ-3-ヒドロキシ-5-オキソ-3-フラン酢酸、テトラヒドロ-3-ヒドロキシ-2-オキソ-3-フラン酢酸、テトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸、およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される2つ以上の生成化合物を含む。
【0058】
テトラヒドロ-3-ヒドロキシ-5-オキソ-3-フラン酢酸はCAS番号98136-18-6を有する。
【0059】
テトラヒドロ-3-ヒドロキシ-2-オキソ-3-フラン酢酸はこれまで記載されておらず、従ってCAS番号を有さない。
【0060】
テトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸はCAS番号5807-39-6を有する。
【0061】
テトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸はCAS番号13281-16-8を有する。
【0062】
クエン酸(例示的に以下に示す)、それらのエステル、それらの塩およびそれらの無水物からなる群から選択される出発化合物から、本発明による方法によって、生成化合物のテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-5-オキソ-3-フラン酢酸、テトラヒドロ-3-ヒドロキシ-2-オキソ-3-フラン酢酸、テトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸、およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸を得ることができる:
【化2】
【0063】
アコニット酸(例示的に以下に示す)、それらのエステル、それらの塩およびそれらの無水物からなる群から選択される出発化合物から、本発明による方法によって、生成化合物のテトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸、およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸を得ることができる:
【化3】
【0064】
トリカルバリル酸、それらのエステル、それらの塩およびそれらの無水物からなる群から選択される出発化合物から、本発明による方法によって、生成化合物のテトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸、およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸を得ることができる。
【0065】
イソクエン酸(例示的に以下に示す)、それらのエステル、それらの塩およびそれらの無水物からなる群から選択される出発化合物から、本発明による方法によって、以下の生成化合物を得ることができる:
【化4】
【0066】
段階(iii)において生じる生成物中で、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンの総量は、各々、残留する出発化合物と、1つ以上の出発化合物の化学変換によって得られる生成化合物(カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンではない生成化合物を含む)との総量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、または50質量%~95質量%の範囲であってよい。特定の量の、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンではない生成化合物は、不可避の副反応から生じ得ると理解される。
【0067】
好ましくは、段階(iii)において生じる生成物中で、テトラヒドロ-3-ヒドロキシ-5-オキソ-3-フラン酢酸、テトラヒドロ-3-ヒドロキシ-2-オキソ-3-フラン酢酸、テトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸、およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される生成化合物の総量は、各々、残留する出発化合物と、1つ以上の出発化合物の化学変換によって得られる生成化合物(カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンではない生成化合物を含む)との総量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、または50質量%~95質量%の範囲である。特定の量の、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンではない生成化合物は、不可避の副反応から生じ得ると理解される。
【0068】
脂肪族トリカルボン酸、またはそれらの塩またはそれらの無水物が出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、前記出発化合物中に存在する炭素原子数はほとんど維持され、生じるラクトンは前記出発化合物と同じ数の炭素原子を有する。従って、出発化合物の炭素原子は脱カルボキシルによってほとんど失われない。ここで、ほとんどとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンではない生成化合物との質量の合計である。
【0069】
炭素原子数6を有する脂肪族トリカルボン酸、またはそれらの塩またはそれらの無水物が出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、前記出発化合物中に存在する炭素原子数はほとんど維持され、生じるラクトンはカルボキシル基を含めて6つの炭素原子を有する。従って、出発化合物の炭素原子は脱カルボキシルによってほとんど失われない。ここで、ほとんどとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、6つの炭素原子を有するラクトンと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、6つの炭素原子を有するラクトンではない生成化合物との質量の合計である。
【0070】
脂肪族トリカルボン酸のエステルが出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、前記エステルに相応する脂肪族トリカルボン酸中に存在する炭素原子数はほとんど維持され、生じるラクトンは、出発化合物として使用されたエステルに相応する脂肪族トリカルボン酸中の炭素原子数と、出発化合物の残留するカルボアルコキシ基(ラクトン基の形成に関与しない)中の炭素原子数との合計である炭素原子数を有するか、またはラクトン基の形成に関与しない出発化合物のカルボアルコキシ基が上記で定義された水素化条件下でヒドロキシ基へと還元される場合には、生じるラクトンは出発化合物として使用されたエステルに相応する前記脂肪族トリカルボン酸と同じ数の炭素原子を有するかのいずれかである。従って、出発化合物として使用された前記エステルに相応する脂肪族トリカルボン酸の炭素原子は脱カルボキシルによってほとんど失われない。ここで、ほとんどとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンではない生成化合物との質量の合計である。
【0071】
炭素原子数6を有する脂肪族トリカルボン酸のエステルが出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、前記エステルに相応する脂肪族トリカルボン酸中に存在する炭素原子数はほとんど維持され、生じるラクトンは、6と、出発化合物の残留するカルボアルコキシ基(ラクトン基の形成に関与しない)中の炭素原子数との合計である炭素原子数を有するか、またはラクトン基の形成に関与しない出発化合物のカルボアルコキシ基が上記で定義された水素化条件下でヒドロキシ基へと還元される場合には、生じるラクトンは6つの炭素原子を有するかのいずれかである。従って、出発化合物として使用されたエステルに相応する脂肪族トリカルボン酸の炭素原子は脱カルボキシルによってほとんど失われない。ここで、ほとんどとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、カルボキシル基を含めて6つの炭素原子を有するラクトンと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンではない生成化合物との質量の合計である。
【0072】
脂肪族トリカルボン酸またはそれらの塩またはそれらの無水物が出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、前記出発化合物中に存在する炭素間単結合数はほとんど維持され、生じるラクトンは前記出発化合物と同じ数の炭素間単結合を有する。従って、出発化合物の炭素間単結合は、脱水によって炭素間二重結合にはほとんど変換されないか、または炭素間二重結合が中間的に形成される場合は、それはin-situで水素化される(図2参照)。ここで、ほとんどとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンではない生成化合物との質量の合計である。
【0073】
脂肪族トリカルボン酸のエステルが出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、前記エステルに相応する脂肪族トリカルボン酸中に存在する炭素間単結合数はほとんど維持され、生じるラクトンは、出発化合物として使用されたエステルに相応する脂肪族トリカルボン酸中の炭素間単結合数と、出発化合物の残留するカルボアルコキシ基(ラクトン基の形成に関与しない)中の炭素間単結合数との合計である炭素間単結合数を有するか、またはラクトン基の形成に関与しない出発化合物のカルボアルコキシ基が上記で定義された水素化条件下でヒドロキシ基へと還元される場合には、生じるラクトンは出発化合物として使用されたエステルに相応する前記脂肪族トリカルボン酸と同じ数の炭素間単結合を有する。従って、出発化合物として使用された前記エステルに相応する脂肪族トリカルボン酸の炭素間単結合は、脱水によって炭素間二重結合にはほとんど変換されないか、または炭素間二重結合が中間的に形成される場合は、それはin-situで水素化される。ここで、ほとんどとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンではない生成化合物との質量の合計である。
【0074】
α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸またはそれらの塩またはそれらの無水物が出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、前記出発化合物中に存在する炭素間二重結合はほとんど炭素間単結合へと変換され、生じるラクトンは前記出発化合物よりも1つ多い炭素間単結合を有する。従って、出発化合物の炭素間二重結合はin-situでほとんど水素化される。ここで、ほとんどとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンではない生成化合物との質量の合計である。
【0075】
α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸のエステルが出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、前記エステルに相応する脂肪族トリカルボン酸中に存在する炭素間二重結合は炭素間単結合へとほとんど変換され、生じるラクトンは、出発化合物として使用されたエステルに相応するα,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸中の炭素間単結合数と、出発化合物の残留するカルボアルコキシ基(ラクトン基の形成に関与しない)中の炭素間単結合数との合計よりも1つ多い炭素間単結合を有するか、またはラクトン基の形成に関与しない出発化合物のカルボアルコキシ基が上記で定義された水素化条件下でヒドロキシ基へと還元される場合には、生じるラクトンは出発化合物として使用されたエステルに相応する前記α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸よりも1つ多い炭素間単結合を有するかのいずれかである。従って、出発化合物として使用されたエステルに相応するα,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸の炭素間二重結合はin-situでほとんど水素化される。ここで、ほとんどとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンではない生成化合物との質量の合計である。
【0076】
クエン酸またはそれらの塩またはそれらの無水物が出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、クエン酸中に存在する炭素原子数はほとんど維持され、生じるラクトンはクエン酸と同じ数の炭素原子を有する。従って、クエン酸の炭素原子は脱カルボキシルによってほとんど失われない。ここで、ほとんどとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンではない生成化合物との質量の合計である。
【0077】
クエン酸のエステルが出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、クエン酸中に存在する炭素原子数はほとんど維持され、生じるラクトンは、6と、クエン酸の前記エステルの残留するカルボアルコキシ基(ラクトン基の形成に関与しない)中の炭素原子数との合計である炭素原子数を有するか、またはラクトン基の形成に関与しないクエン酸の前記エステルのカルボアルコキシ基が上記で定義された水素化条件下でヒドロキシ基へと還元される場合には、生じるラクトンはクエン酸と同じ数の炭素原子を有するかのいずれかである。従って、クエン酸の炭素原子は脱カルボキシルによってほとんど失われない。ここで、ほとんどとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンではない生成化合物との質量の合計である。
【0078】
クエン酸またはそれらの塩またはそれらの無水物が出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、クエン酸中に存在する炭素間単結合数はほとんど維持され、生じるラクトンはクエン酸と同じ数の炭素間単結合を有する。従って、クエン酸の炭素間単結合は、脱水によって炭素間二重結合にはほとんど変換されないか、または炭素間二重結合が中間的に形成される場合は、それはin-situで水素化される(図2参照)。ここで、ほとんどとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンではない生成化合物との質量の合計である。
【0079】
クエン酸のエステルが出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、クエン酸中に存在する炭素間単結合数はほとんど維持され、生じるラクトンは、クエン酸中の炭素間単結合数と、クエン酸の前記エステルの残留するカルボアルコキシ基(ラクトン基の形成に関与しない)中の炭素間単結合数との合計に相応する炭素間単結合数を有するか、またはラクトン基の形成に関与しないクエン酸の前記エステルのカルボアルコキシ基が上記で定義された水素化条件下でヒドロキシ基へと還元される場合には、生じるラクトンはクエン酸と同じ数の炭素間単結合を有する。従って、クエン酸の炭素間単結合は、脱水によって炭素間二重結合にはほとんど変換されないか、または炭素間二重結合が中間的に形成される場合は、それはin-situで水素化される。ここで、ほとんどとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンではない生成化合物との質量の合計である。
【0080】
上記で定義された方法の段階(ii)において、n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率を有する溶剤が調製または準備される。従って、前記溶剤はn-ブタノールよりも高い極性を有する。好ましい溶剤はプロトン性である。そのような溶剤は、上記で定義された出発化合物について十分な溶解性を有する。
【0081】
段階(ii)において準備または調製される溶剤は、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールおよび環状エーテルからなる群から選択される1つ以上の成分を、n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率が生じるような割合で含み得る。典型的な環状エーテルはテトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、およびジオキサンである。
【0082】
好ましくは、溶剤は
・ 水、および
・ 溶剤の総量に対して50質量%を上回る、好ましくは70質量%を上回る、より好ましくは90質量%を上回る量の水を含む水性混合物
からなる群から選択される。
【0083】
前記水性混合物において、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、環状エーテルの1つ以上を水に混ぜることができる。
【0084】
上記で定義された方法の段階(iii)において、段階(i)において準備または調製された前記1つ以上の出発化合物を、80℃~125℃の範囲の温度、好ましくは95℃~120℃の範囲の温度で、1つ以上の上記で定義された生成化合物へと化学的に変換することができる。
【0085】
反応温度に依存して、15MPa~30MPaの範囲の水素分圧で所定の不均一系水素化触媒の存在下での、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される出発化合物の化学変換は、脂肪族ポリオール(本発明によらない、図1参照)、またはカルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンのいずれか、または両種の生成物の混合物を生じ得る。従って、段階(iii)において、反応温度は好ましくは、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有する前記ラクトンを選択的に調製するように選択される。
【0086】
上記で定義された方法の段階(iii)を、10時間以上、好ましくは20時間以上の時間にわたって実施してよい。上記で定義された方法の段階(iii)を、200時間以下、好ましくは140時間以下、より好ましくは72時間以下の時間にわたって実施してよい。好ましくは、上記で定義された方法の段階(iii)を、10時間以上、且つ200時間以下の時間にわたって実施する。より好ましくは、上記で定義された方法の段階(iii)を、20時間以上、且つ140時間以下、好ましくは72時間以下の時間にわたって実施する。
【0087】
上記で定義された方法の段階(iii)において、段階(i)において準備または調製された前記1つ以上の出発化合物を、Co、Rh、Ir、Ni、PdおよびPtからなる群から選択される1つ以上の金属を含む不均一系水素化触媒の存在下で、1つ以上の上記で定義された生成化合物へと化学的に変換する。
【0088】
好ましい不均一系水素化触媒は、Co、Rh、Ir、Ni、PdおよびPtからなる群から選択される1つ以上の金属を、不均一系水素化触媒の総量に対して90質量%以上、好ましくは95質量%以上の総量で含むか、またはそれらからなる。好ましくは、PdとRhとの総量は90質量%以上、好ましくは95質量%以上である。さらに好ましくは、PdまたはRhのいずれかの量は、不均一系水素化触媒の総量に対して90質量%以上、好ましくは95質量%以上である。
【0089】
いずれの場合も、触媒は、上述の量の不均一系水素化触媒中に含まれる微量の他の金属および酸化物を含み得ることが理解される。
【0090】
好ましくは、出発化合物の総量に対する不均一系水素化触媒の量は、0.05質量%~10質量%、好ましくは0.1質量%~7.5質量%の範囲である。
【0091】
不均一系水素化触媒は担持材料(担体とも称される)によって担持され得る。担持材料の質量は、不均一系水素化触媒の上述の量には含まれない。
【0092】
不均一系水素化触媒の担持材料は好ましくは、上記で定義された方法の段階(iii)の間に同時に存在する熱、水、酸および水素化分解条件から生じる水熱応力に耐えるように選択される。
【0093】
好ましくは、担持材料は金属酸化物、ゼオライト、および炭素系材料、好ましくはAl23、ZrO2、TiO2、SiC、カーボンブラック、およびPTFEからなる群から選択される。異なる担持材料の組み合わせ、例えばPTFE担持カーボンブラックが可能である。
【0094】
担持触媒において、好ましくは不均一系水素化触媒の総量は、不均一系水素化触媒と担持材料との質量の合計に対して1質量%~15質量%、より好ましくは5質量%~10質量%の範囲である。
【0095】
触媒金属と担持材料との好ましい組み合わせは、カーボンブラック上に担持されたPdおよびAl23上に担持されたRhである。
【0096】
段階(iii)の後、担持された不均一系水素化触媒を、好ましくはろ過を用いて回収できる。
【0097】
上記で定義された方法は、上記で定義された段階(iii)の後に実施される1つ以上のさらなる段階を含み得る。
【0098】
上記で定義された段階(iii)の後に実施されるさらなる段階において、段階(iii)において使用された溶剤を蒸発によって除去できる。溶剤の蒸発は任意の適した方法によって行うことができる。例えば、溶剤の蒸発は凍結乾燥によって行うことができる。
【0099】
上記で定義された段階(iii)の後に実施されるさらなる段階において、段階(iii)から生じる生成物中に存在する、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つ以上の前記生成化合物を化学的に変換して、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の前記化合物の1つ以上の反応生成物を含む生成物(b)をもたらすことができる。ここで、段階(iii)において生じる、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つ以上の生成化合物を含む生成物は中間生成物であり、且つ前記中間生成物は、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つ以上の前記化合物の1つ以上の反応化合物を含む最終生成物へと化学的に変換される。
【0100】
上記で定義された段階(iii)の後に実施されるさらなる段階において、1つ以上のさらなる化学物質を、段階(iii)から生じる生成物中に存在する、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つ以上の前記生成化合物に添加して、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つ以上の生成化合物を含む反応混合物をもたらすことができる。従って、
・ カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有する1つまたは2つ以上のラクトン、
・ カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンではない1つ以上のさらなる化学物質
を含有する反応混合物が形成される。
【0101】
そのような反応混合物は、上記で定義された段階(iii)において生じる、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つ以上の生成化合物を含む上述の生成物とは異なる反応生成物を調製するために使用するために構成され且つ意図される(詳細は下記参照)。
【0102】
前記反応混合物において、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物は、反応物として、または溶剤として機能し得る。
【0103】
上記で定義された方法は、上記で定義された段階(iii)の後に実施される1つ、2つまたは全ての上記で定義されたさらなる段階を含み得る。
【0104】
上記で説明したとおり、(a)の場合、上記で定義された方法の生成物は、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つ以上の生成化合物を含む。
【0105】
生成物(a)は、
・ ペプチド、
・ タンパク質、好ましくはヒト血清アルブミンおよびウシ血清アルブミンからなる群から選択されるタンパク質、
・ 酵素、好ましくはリソチーム、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、マンナナーゼ、およびセルラーゼからなる群から選択される酵素、
・ 微生物、好ましくはグラム陽性菌、グラム陰性菌、有芽胞菌、真菌胞子、菌糸、酵母からなる群から選択される微生物、
・ DNA、RNAおよびウイルス、好ましくはバクテリオファージからなる群から選択されるウイルス、
からなる群から選択される1つ以上の材料を含む配合物からなる群から選択され得る。
【0106】
ペプチド、タンパク質、酵素、DNA、RNA、ウイルス、および微生物からなる群から選択される1つ以上の材料を含む配合物は、生体触媒、食品分野、飼料用途、ホームケア、パーソナルケア、および農業を含む多様な異なる用途のために使用される。
【0107】
そのような配合物において、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される生成化合物は、従来の溶剤、例えば1,2-プロパンジオール、グリセロールまたはソルビトールを置き換えることができ、且つ/またはペプチド、タンパク質、酵素、DNA、RNA、ウイルスおよび微生物からなる群から選択される材料を保護および安定化することができる。より具体的には、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される生成化合物は、微生物の増殖を回避するためのバイオスタティック剤として使用され得る。
【0108】
生成物(a)は、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物によって錯化された金属カチオン、好ましくはFe、Mg、Ca、Sr、Cu、AgおよびAuカチオンを含む混合物であってよく、前記混合物は前記1つ以上の出発化合物を化学的に変換する段階(iii)の後に調製される。そのような混合物は、精油所製品、鉱業製品、およびホームケア製品からなる群から選択され得る。
【0109】
生成物(a)は、ポリマーを調製するための、好ましくは開環重合によってまたはエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとのアルコキシル化によってポリマーを調製するための反応混合物であってよく、前記反応混合物は前記1つ以上の出発化合物を化学的に変換する段階(iii)の後に調製される。
【0110】
開環重合によって、ポリエステルの群からのポリマーを得ることができる。
【0111】
生成物(a)は、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物のアミドまたはエステルを調製するための反応混合物であってよく、前記反応混合物は、前記1つ以上の出発化合物を化学的に変換する段階(iii)の後に調製される。好ましいエステルはメチルエステルおよびエチルエステルである。前記エステルは芳香成分として使用され得る。好ましいアミドはメチルアミドおよびエチルアミドである。
【0112】
上述の反応混合物は、前記1つ以上の出発化合物を化学的に変換する段階(iii)の後に実施されるさらなる段階において、1つ以上のさらなる化学物質を、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の前記生成化合物に添加することによって得ることができる。
【0113】
上記で説明したとおり、(b)の場合、上記で定義された方法の生成物は、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つ以上の前記化合物の1つ以上の反応生成物を含む。
【0114】
生成物(b)は、1つ以上のポリマー、好ましくはポリアルコキシレートまたはポリエステルを含む生成物からなる群から選択されてよく、前記ポリマーの少なくとも1つは、前記1つ以上の出発化合物を化学的に変換する段階(iii)の後に実施されるさらなる段階において、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物から調製される。
【0115】
生成物(b)は、溶剤または溶剤成分として、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物の1つ以上の反応生成物を含む溶液からなる群から選択されてよく、好ましくは前記1つ以上の反応生成物はカルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物のアミドおよびエステルの群から選択される。
【0116】
本発明による特に好ましい方法において、
(a) テトラヒドロ-3-ヒドロキシ-5-オキソ-3-フラン酢酸、テトラヒドロ-3-ヒドロキシ-2-オキソ-3-フラン酢酸、テトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸、およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される1つ、2つ、3つ、または全ての生成化合物、および/または
(b) 1つ、2つ、3つまたは全ての前記生成化合物の1つ以上の反応生成物
を含む生成物が、少なくとも以下の段階:
(i) クエン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含む出発材料を準備または調製する段階、
(ii) n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率を有する溶剤を準備または調製する段階であって、前記溶剤は水、または水と、メタノールおよびエチレングリコールからなる群から選択される1つとの混合物である、前記段階、および
(iii) 段階(i)において準備または調製された前記1つまたは2つ以上の出発化合物を、
・ 80℃~125℃の範囲の温度で、
・ 15MPa~30MPaの範囲の水素分圧で、
・ 段階(ii)において準備または調製された前記溶剤中で、且つ
・ PdまたはRhを含む不均一系水素化触媒の存在下で、
化学的に変換して、水素化条件下で前記1つまたは2つ以上の出発化合物中に存在する2つのカルボキシル基、2つのカルボキシレート基、2つのカルボアルコキシ基、または無水物基がラクトン基を形成して、テトラヒドロ-3-ヒドロキシ-5-オキソ-3-フラン酢酸、テトラヒドロ-3-ヒドロキシ-2-オキソ-3-フラン酢酸、テトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸、およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む生成物が生じる、前記段階、
を含む方法によって調製される。
【0117】
本発明による他の特に好ましい方法において、
(a) テトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸、およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される1つまたは両方の生成化合物、
および/または
(b) 1つまたは両方の前記生成化合物の1つ以上の反応生成物
を含む生成物が、少なくとも以下の段階:
(i) アコニット酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含む出発材料を準備または調製する段階、
(ii) n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率を有する溶剤を準備または調製する段階であって、前記溶剤は水、または水と、メタノールおよびエチレングリコールからなる群から選択される1つとの混合物である、前記段階、および
(iii) 段階(i)において準備または調製された前記1つまたは2つ以上の出発化合物を、
・ 80℃~125℃の範囲の温度で、
・ 15MPa~30MPaの範囲の水素分圧で、
・ 段階(ii)において準備または調製された前記溶剤中で、且つ
・ PdまたはRhを含む不均一系水素化触媒の存在下で、
化学的に変換して、水素化条件下で前記1つまたは2つ以上の出発化合物中に存在する2つのカルボキシル基、2つのカルボキシレート基、2つのカルボアルコキシ基、または無水物基がラクトン基を形成して、テトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸、およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される1つまたは両方の生成化合物を含む生成物が生じる段階、
を含む方法によって調製される。
【0118】
本発明によるさらに特に好ましい方法において、
(a) テトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸、およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される1つまたは両方の生成化合物、
および/または
(b) 1つまたは両方の前記生成化合物の1つ以上の反応生成物
を含む生成物が、少なくとも以下の段階:
(i) トリカルバリル酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含む出発材料を準備または調製する段階、
(ii) n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率を有する溶剤を準備または調製する段階であって、前記溶剤は水、または水と、メタノールおよびエチレングリコールからなる群から選択される1つとの混合物である、前記段階、および
(iii) 段階(i)において準備または調製された前記1つまたは2つ以上の出発化合物を、
・ 80℃~125℃の範囲の温度で、
・ 15MPa~30MPaの範囲の水素分圧で、
・ 段階(ii)において準備または調製された前記溶剤中で、且つ
・ PdまたはRhを含む不均一系水素化触媒の存在下で、
化学的に変換して、水素化条件下で前記1つまたは2つ以上の出発化合物中に存在する2つのカルボキシル基、2つのカルボキシレート基、2つのカルボアルコキシ基、または無水物基がラクトン基を形成して、テトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸、およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される1つまたは両方の生成化合物を含む生成物が生じる段階、
を含む方法によって調製される。
【0119】
本願は、
・ 以下からなる群から選択される1つ以上の材料を含む配合物:
・ ペプチド、
・ タンパク質、好ましくはヒト血清アルブミンおよびウシ血清アルブミンからなる群から選択されるタンパク質、
・ 酵素、好ましくはリソチーム、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、マンナナーゼ、およびセルラーゼからなる群から選択される酵素、
・ 微生物、好ましくはグラム陽性菌、グラム陰性菌、有芽胞菌、真菌胞子、菌糸、酵母からなる群から選択される微生物、
・ DNA、RNAおよびウイルス、好ましくはバクテリオファージからなる群から選択されるウイルス、
・ 錯化剤を含む精油所製品、
・ 錯化剤を含む鉱業製品、
・ 錯化剤を含むホームケア製品、
・ カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物を、相応のポリマーへと、好ましくは開環重合によって、またはエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとのアルコキシル化によって変換するための反応混合物であって、段階(iii)の後に調製される、前記反応混合物、および
・ カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物のエステルまたはアミド、より好ましくはメチルエステル、エチルエステル、メチルアミドまたはエチルアミドを調製するための反応混合物であって、段階(iii)の後に調製される、前記反応混合物
からなる群から選択される生成物であって、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む、前記生成物にも関する。
【0120】
好ましくは、上記で定義された生成物は、
・ 1つのカルボキシル基および1つのヒドロキシ基を有するラクトン、および
・ 1つのカルボキシル基を有し且つヒドロキシ基を有さないラクトン
からなる群から選択されるラクトンを含む。
【0121】
前記ラクトンは、好ましくはテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-5-オキソ-3-フラン酢酸、テトラヒドロ-3-ヒドロキシ-2-オキソ-3-フラン酢酸、テトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸、およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される。
【0122】
上記で定義された生成物は、上記で定義された方法によって、好ましくは上記で定義された方法の1つによって得ることができる。
【0123】
本発明はこれまで記載されていない化合物テトラヒドロ-3-ヒドロキシ-2-オキソ-3-フラン酢酸
【化5】
にも関する。
【0124】
本願は、
・ 以下からなる群から選択される1つ以上の生成化合物:
・ 1つのカルボキシル基および1つのヒドロキシ基を有するラクトン、および
・ 1つのカルボキシル基を有し且つヒドロキシ基を有さないラクトン、
または
・ そのような生成化合物の混合物
を製造するための出発材料としての、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つ以上の化合物の使用にも関する。
【0125】
上記で定義された生成化合物を製造するための出発化合物として使用される、特定且つ好ましい脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩に関し、上記で定義された方法に関連して開示されたものと同じことが該当する。上記で定義された生成物を製造するための出発化合物としてのクエン酸およびアコニット酸の使用が最も好ましい。
【0126】
特定且つ好ましい生成化合物に関し、上記で定義された方法に関連して開示されたものと同じことが該当する。1つのカルボキシル基および1つのヒドロキシ基を有するラクトンは、好ましくはテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される。1つのカルボキシル基を有し且つヒドロキシ基を有さないラクトンは、好ましくはテトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される。
【0127】
・ 以下からなる群から選択される生成化合物:
・ 1つのカルボキシル基および1つのヒドロキシ基を有するラクトン、および
・ 1つのカルボキシル基を有し且つヒドロキシ基を有さないラクトン
または
・ そのような生成化合物の混合物
を製造するための出発材料としての、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つ以上の化合物の使用であって、バッチあたり100kg以上、より好ましくは500kg以上、およびさらにより好ましくは1000kg以上の量での前記使用が好ましい。
【0128】
最も好ましくは、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される上記で定義された好ましい化合物は、上記で定義されたような方法における出発化合物として使用される。
【0129】
本願は、Co、Rh、Ir、Ni、PdおよびPtからなる群から選択される1つ以上の金属を、不均一系水素化触媒の総量に対して90質量%以上、好ましくは95質量%以上の総量で含む不均一系水素化触媒の、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む生成物の製造方法における使用であって、好ましくはPdおよびRhの総量は90質量%以上、好ましくは95質量%以上であり、より好ましくはPdまたはRhの量は90質量%以上、好ましくは95質量%以上であり、前記方法は脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を化学的に変換して、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む生成物をもたらすことを含む、前記使用にも関する。
【0130】
上記で定義された不均一系水素化触媒が、出発化合物しての脂肪族トリカルボン酸またはそれらの塩またはそれらの無水物と共に使用される場合、前記出発化合物は好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、前記出発化合物中に存在する炭素原子数はほとんど維持され、生じるラクトンは前記出発化合物と同じ数の炭素原子を有する。従って、出発化合物の炭素原子は脱カルボキシルによってほとんど失われない。ここで、ほとんどとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンではない生成化合物との質量の合計である。
【0131】
上記で定義された不均一系水素化触媒が、出発化合物しての炭素原子数6を有する脂肪族トリカルボン酸、またはそれらの塩またはそれらの無水物と共に使用される場合、前記出発化合物は好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、前記出発化合物中に存在する炭素原子数はほとんど維持され、生じるラクトンはカルボキシル基を含んで6つの炭素原子を有する。従って、出発化合物の炭素原子は脱カルボキシルによってほとんど失われない。ここで、ほとんどとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、6つの炭素原子を有するラクトンと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、6つの炭素原子を有するラクトンではない生成化合物との質量の合計である。
【0132】
上記で定義された不均一系水素化触媒が、出発化合物としての脂肪族トリカルボン酸のエステルと共に使用される場合、前記出発化合物は好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、前記エステルに相応する脂肪族トリカルボン酸中に存在する炭素原子数はほとんど維持され、生じるラクトンは、出発化合物として使用されたエステルに相応する脂肪族トリカルボン酸中の炭素原子数と、出発化合物の残留するカルボアルコキシ基(ラクトン基の形成に関与しない)中の炭素原子数との合計である炭素原子数を有するか、またはラクトン基の形成に関与しない出発化合物のカルボアルコキシ基が上記で定義された水素化条件下でヒドロキシ基へと還元される場合には、生じるラクトンは出発化合物として使用されたエステルに相応する前記脂肪族トリカルボン酸と同じ数の炭素原子を有するかのいずれかである。従って、出発化合物として使用された前記エステルに相応する脂肪族トリカルボン酸の炭素原子は脱カルボキシルによってほとんど失われない。ここで、ほとんどとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンではない生成化合物との質量の合計である。
【0133】
上記で定義された不均一系水素化触媒が、出発化合物としての炭素原子数6を有する脂肪族トリカルボン酸のエステルと共に使用される場合、前記出発化合物は好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、前記エステルに相応する脂肪族トリカルボン酸中に存在する炭素原子数はほとんど維持され、生じるラクトンは、6と、出発化合物の残留するカルボアルコキシ基(ラクトン基の形成に関与しない)中の炭素原子数との合計である炭素原子数を有するか、またはラクトン基の形成に関与しないカルボアルコキシ基が上記で定義された水素化条件下でヒドロキシ基へと還元される場合には、生じるラクトンは6つの炭素原子を有するかのいずれかである。従って、出発化合物として使用されたエステルに相応する脂肪族トリカルボン酸の炭素原子は脱カルボキシルによってほとんど失われない。ここで、ほとんどとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、カルボキシル基を含む6つの炭素原子を有するラクトンと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンではない生成化合物との質量の合計である。
【0134】
特定且つ好ましい不均一系水素化触媒に関し、上記で定義された方法に関連して開示されたものと同じことが該当する。上記で定義された触媒を使用する方法において変換される、特定且つ好ましい脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩に関し、上記で定義された方法に関連して開示されたものと同じことが該当する。上記で定義された生成物を製造するためのクエン酸およびアコニット酸の使用が最も好ましい。
【0135】
特定且つ好ましい生成化合物に関し、上記で定義された方法に関連して開示されたものと同じことが該当する。1つのカルボキシル基および1つのヒドロキシ基を有するラクトンは、好ましくはテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される。1つのカルボキシル基を有し且つヒドロキシ基を有さないラクトンは、好ましくはテトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される。
【0136】
特定且つ好ましい反応パラメータ(温度、水素分圧、化学変換の持続時間、溶剤)に関し、上記で定義された方法に関連して開示されたものと同じことが該当する。最も好ましくは、上記で定義された不均一系触媒は上記で定義されたような方法において使用される。
【図面の簡単な説明】
【0137】
図1】クエン酸からのカルボキシル基を有するラクトンの形成、並びにクエン酸のカルボキシル基からヒドロキシ基への望ましくない完全な変換を示す図である。
図2】カルボキシル基をヒドロキシ基へ還元し、次いで同じ分子の他のカルボキシル基との閉環反応(分子内エステル化)を経て、1つのカルボキシル基を有するラクトンを得ることによる、クエン酸からのカルボキシル基とヒドロキシ基とを有するラクトンの形成、およびカルボキシル基を有し且つヒドロキシ基を有さないラクトンへの引き続く脱水および水素化を示す図である。
【実施例
【0138】
本発明による以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく、本発明をさらに説明および例示することが意図されている。
【0139】
図1はクエン酸からのカルボキシル基を有するラクトンの形成、並びにクエン酸のカルボキシル基からヒドロキシ基への望ましくない完全な変換を示す。
【0140】
図2は、カルボキシル基をヒドロキシ基へ還元し、次いで同じ分子の他のカルボキシル基との閉環反応(分子内エステル化)を経て、1つのカルボキシル基を有するラクトンを得ることによる、クエン酸からのカルボキシル基とヒドロキシ基とを有するラクトンの形成、およびカルボキシル基を有し且つヒドロキシ基を有さないラクトンへの引き続く脱水および水素化を示す。
【0141】
水中に溶解されたクエン酸からの、カルボキシル基を有するラクトンの調製を以下のように行った:
不均一系水素化触媒(触媒の種類、担持材料の種類、および量を表1に示す)を、オートクレーブ内で、溶剤としての水中のクエン酸一水和物の溶液(クエン酸の濃度および溶液の量を表1に示す)に添加した。反応容器を閉じ、次いで窒素ガス(0.5MPa)を用いて2回洗浄した。次いで撹拌(700U/分)および初期水素圧(5MPa)を適用した。反応混合物を表1に示される温度まで加熱し、且つ水素圧を表1に示される値まで上昇させた。それらの条件下で、表1に示される時間の間、反応混合物を撹拌し、次いで室温に冷却して、窒素ガス(0.5MPa)を用いて2回洗浄した。その後、触媒をろ過除去し、溶剤を蒸発によって除去した。生じる油をガスクロマトグラフィーおよびHPLCによって分析した。クエン酸を用いた例の実験パラメータおよび結果を表1にまとめる。
【0142】
水中に溶解されたアコニット酸からの、カルボキシル基を有するラクトンの調製を以下のように行った:
不均一系水素化触媒(触媒の種類、担持材料の種類、および量を表2に示す)を、オートクレーブ内で、溶剤としての水中のアコニット酸の溶液(アコニット酸の濃度および溶液の量を表2に示す)に添加した。反応容器を閉じ、次いで窒素ガス(0.5MPa)を用いて2回洗浄した。次いで撹拌(表2に示されるUPM)および初期水素圧(5MPa)を適用した。反応混合物を表2に示される温度まで加熱し、且つ水素圧を表2に示される値まで上昇させた。それらの条件下で、表2に示される時間の間、反応混合物を撹拌し、次いで室温に冷却して、窒素ガス(0.5MPa)を用いて2回洗浄した。その後、触媒をろ過除去し、溶剤を蒸発によって除去した。生じる油をガスクロマトグラフィーおよびHPLCによって分析した。アコニット酸を用いた例の実験パラメータおよび結果を表2にまとめる。
【0143】
水中に溶解されたトリカルバリル酸からの、カルボキシル基を有するラクトンの調製を以下のように行った:不均一系水素化触媒(触媒の種類、担持材料の種類、および量を表3に示す)を、オートクレーブ内で、溶剤としての水中のトリカルバリル酸の溶液(トリカルバリル酸の濃度および溶液の量を表3に示す)に添加した。反応容器を閉じ、次いで窒素ガス(0.5MPa)を用いて2回洗浄した。次いで撹拌(表3に示されるUPM)および初期水素圧(5MPa)を適用した。反応混合物を表3に示される温度まで加熱し、且つ水素圧を表3に示される値まで上昇させた。それらの条件下で、表3に示される時間の間、反応混合物を撹拌し、次いで室温に冷却して、窒素ガス(0.5MPa)を用いて2回洗浄した。その後、触媒をろ過除去し、溶剤を蒸発によって除去した。生じる油をガスクロマトグラフィーおよびHPLCによって分析した。トリカルバリル酸を用いた例の実験パラメータおよび結果を表3にまとめる。
【0144】
表において、
・ ラクトンは、テトラヒドロ-3-ヒドロキシ-5-オキソ-3-フラン酢酸、テトラヒドロ-3-ヒドロキシ-2-オキソ-3-フラン酢酸、テトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸、およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸を含み、
・ C6-ポリオールは3-(ヒドロキシメチル)ペンタン-1,3,5-トリオール、プロパン-1,2,3-トリメタノール、および3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオールを含み、
・ C5-トリオールは1,3,5-ペンタントリオールである。
【0145】
各々の実験において、著しい割合のラクトンが得られた。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
【表3】
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-02-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物、または
(b) カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物の1つ以上の反応生成物
を含む生成物の製造方法であって、少なくとも以下の段階:
(i) 炭素原子の総数6を有する脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含む出発材料を準備または調製する段階、
(ii) n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率を有する溶剤を準備または調製する段階、および
(iii) 段階(i)において準備または調製された前記1つまたは2つ以上の出発化合物を、
・ 80℃~140℃の範囲の温度で、
・ 15MPa~30MPaの範囲の水素分圧で、
・ 段階(ii)において準備または調製された前記溶剤中で、且つ
・ Co、Rh、Ir、Ni、PdおよびPtからなる群から選択される1つ以上の金属を含む不均一系水素化触媒の存在下で、
化学的に変換して、前記1つまたは2つ以上の出発化合物中に存在する2つのカルボキシル基、2つのカルボキシレート基、2つのカルボアルコキシ基、または無水物基が、水素化条件下でラクトン基を形成し、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む生成物が生じる段階であって、
・ 前記出発化合物が脂肪族トリカルボン酸である場合、上記で定義された水素化条件下で、そのカルボキシル基の2つが選択的にラクトン基を形成し、且つ1つのカルボキシル基が残り、
・ 前記出発化合物が脂肪族トリカルボン酸の塩である場合、上記で定義された水素化条件下で、そのカルボキシレート基の2つが選択的にラクトン基を形成し、且つ1つのカルボキシレート基が残り、
・ 前記出発化合物が脂肪族トリカルボン酸のエステルである場合、上記で定義された水素化条件下で、そのカルボアルコキシ基の2つが選択的にラクトン基を形成し、且つ1つのカルボアルコキシ基が残るか、または上記で定義された水素化条件下でヒドロキシ基へと還元され、
・ 前記出発化合物が脂肪族トリカルボン酸の無水物である場合、上記で定義された水素化条件下で、無水物基からラクトンが選択的に形成され、且つ1つのカルボキシル基が残る、前記段階
を含む、前記方法。
【請求項2】
・ 前記不均一系水素化触媒がRhおよびPdからなる群から選択される1つ以上の金属を含み、且つ/または
・ 前記出発化合物が炭素原子数6を有する脂肪族トリカルボン酸、またはそれらの塩またはそれらの無水物である場合、生じるラクトンはカルボキシル基を含んで6つの炭素原子を有し、且つ
炭素原子数6を有する脂肪族トリカルボン酸のエステルが出発化合物として使用される場合、生じるラクトンは6と、ラクトン基の形成に関与しない残留するカルボアルコキシ基中の炭素原子数との合計である炭素原子数を有するか、またはラクトン基の形成に関与しないカルボアルコキシ基がヒドロキシ基へと還元される場合には、生じるラクトンは6つの炭素原子を有するかのいずれかである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つの出発化合物、または2つ以上の出発化合物の少なくとも1つがそれぞれ、
・ α-官能基化脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から、好ましくはα-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から、より好ましくはクエン酸、イソクエン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から、最も好ましくはクエン酸、クエン酸トリエチルおよびイソクエン酸からなる群から選択されるか、または
・ α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から、好ましくはアコニット酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択されるか、または
・ トリカルバリル酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
段階(iii)において生じる生成物が、
・ 好ましくはテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される、1つのカルボキシル基および1つのヒドロキシ基を有するラクトン、および
・ 好ましくはテトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される、1つのカルボキシル基を有し且つヒドロキシ基を有さないラクトン
からなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
段階(ii)において準備または調製される、n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率を有する溶剤が、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールおよび環状エーテルからなる群から選択される1つ以上の成分を含み、
前記溶剤は好ましくは、
・ 水、および
・ 溶剤の総量に対して50質量%を上回る、好ましくは70質量%を上回る、より好ましくは90質量%を上回る量の水を含む水性混合物
からなる群から選択される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
段階(iii)における温度が、
・ 80℃~125℃の範囲、好ましくは95℃~120℃の範囲であり、且つ/または
・ 脂肪族ポリオールの代わりに、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有する前記ラクトンが選択的に調製されるように選択される、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記不均一系水素化触媒が、Co、Rh、Ir、Ni、PdおよびPtからなる群から選択される1つ以上の金属を、前記不均一系水素化触媒の総量に対して90質量%以上、好ましくは95質量%以上の総量で含み、
好ましくは、前記不均一系水素化触媒は担持材料によって担持されており、好ましくは前記担持材料は、金属酸化物、ゼオライトおよび炭素系材料からなる群から選択され、好ましくはAl23、ZrO2、TiO2、SiC、カーボンブラックおよびPTFEからなる群から選択される、
請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
段階(iii)の後に、以下の追加的な段階:
・ 段階(iii)において使用された溶剤を蒸発によって除去する段階、
・ 段階(iii)から生じる生成物中に存在する、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の前記生成化合物を化学的に変換して、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の化合物の1つ以上の反応生成物を含む生成物(b)をもたらす段階、および
・ 1つ以上のさらなる化学物質を、段階(iii)から生じる生成物中に存在する、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の前記生成化合物に添加して、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の化合物を含む反応混合物をもたらす段階
の1つ、2つまたは全てを行う、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される、好ましくはクエン酸およびアコニット酸からなる群から選択される、1つまたは2つ以上の出発化合物を含む出発材料が、植物材料から調製または単離され、好ましくは糖発酵によって調製される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記生成物が:
(a) カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含み、前記生成物が、
・ ペプチド、タンパク質、酵素、微生物、DNA、RNA、およびウイルスからなる群から選択される1つ以上の材料を含む配合物、
・ ポリマーを調製するための、好ましくは開環重合によって、またはエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとのアルコキシル化によってポリマーを調製するための反応混合物であって、段階(iii)の後に調製される前記反応混合物、
・ カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物によって錯化された金属カチオン、好ましくはFe、Mg、Ca、Sr、Cu、AgおよびAuカチオンを含む混合物であって、段階(iii)の後に調製され、好ましくは精油所製品、鉱業製品、およびホームケア製品からなる群から選択される、前記混合物、
・ カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物のアミドまたはエステルを調製するための反応混合物であって、段階(iii)の後に調製される、前記反応混合物
からなる群から選択される、
または、前記生成物が、
(b) カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物の1つ以上の反応生成物を含み、前記生成物が、
・ 1つ以上のポリマー、好ましくはポリアルコキシレートまたはポリエステルを含む生成物であって、前記ポリマーの少なくとも1つが段階(iii)の後に実施されるさらなる段階において、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物から調製される、前記生成物
・ 溶剤または溶剤成分として、カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物の1つ以上の反応生成物を含む溶液
からなる群から選択される、
請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
・ ペプチド、タンパク質、酵素、微生物、DNA、RNA、およびウイルスからなる群から選択される1つ以上の材料を含む配合物、
・ 錯化剤を含む精油所製品、
・ 錯化剤を含む鉱業製品、
・ 錯化剤を含むホームケア製品、
・ カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物を、相応のポリマーへと、好ましくは開環重合によって、またはエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとのアルコキシル化によって変換するための反応混合物であって、請求項1から10までのいずれか1項において定義された方法の段階(iii)の後に調製される、前記反応混合物、および
・ カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物のアミドまたはエステルを調製するための反応混合物であって、請求項1から10までのいずれか1項において定義された方法の段階(iii)の後に調製される、前記反応混合物
からなる群から選択される生成物であって、前記生成物が、
・ 好ましくはテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される、1つのカルボキシル基および1つのヒドロキシ基を有するラクトン、および
・ 好ましくはテトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される、1つのカルボキシル基を有し且つヒドロキシ基を有さないラクトン、
からなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む、
前記生成物。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか1項に定義された方法によって得られる、請求項11に記載の生成物。
【請求項13】
テトラヒドロ-3-ヒドロキシ-5-オキソ-3-フラン酢酸。
【請求項14】
・ 以下からなる群から選択される生成化合物:
・ 好ましくはテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される、1つのカルボキシル基および1つのヒドロキシ基を有するラクトン、および
・ 好ましくはテトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される、1つのカルボキシル基を有し且つヒドロキシ基を有さないラクトン
または
・ そのような生成化合物の混合物
を製造するための、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法における出発化合物としての、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の化合物の使用、好ましくはクエン酸の使用であって、
好ましくは、それらの生成化合物、またはそのような生成化合物の混合物が、バッチあたり100kg以上、より好ましくは500kg以上、およびさらにより好ましくは1000kg以上の量で製造される、前記使用。
【請求項15】
Co、Rh、Ir、Ni、PdおよびPtからなる群から選択される1つ以上の金属を、不均一系水素化触媒の総量に対して90質量%以上、好ましくは95質量%以上の総量で含む不均一系水素化触媒の使用であって、
カルボキシル、カルボアルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシレートから選択される少なくとも1つの基を有するラクトンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む、
好ましくは、
・ 好ましくはテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-3-ヒドロキシ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される、1つのカルボキシル基および1つのヒドロキシ基を有するラクトン、および
・ 好ましくはテトラヒドロ-5-オキソ-3-フラン酢酸およびテトラヒドロ-2-オキソ-3-フラン酢酸からなる群から選択される、1つのカルボキシル基を有し且つヒドロキシ基を有さないラクトン、
からなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む生成物を製造する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法における、前記使用。
【請求項16】
前記不均一系水素化触媒が、RhおよびPdからなる群から選択される1つ以上の金属を含む、請求項15に記載の使用。
【国際調査報告】