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特表2024-519932水電解用還元触媒およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】水電解用還元触媒およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/089 20210101AFI20240514BHJP
   C25B 11/065 20210101ALI20240514BHJP
【FI】
C25B11/089
C25B11/065
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572003
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 KR2022006941
(87)【国際公開番号】W WO2022245068
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0064669
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(71)【出願人】
【識別番号】514274672
【氏名又は名称】延世大学校 産学協力団
【氏名又は名称原語表記】UIF (University Industry Foundation), Yonsei University
【住所又は居所原語表記】50,YONSEI-RO, SEODAEMUN-GU, SEOUL 03722, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チウ・ロー
(72)【発明者】
【氏名】ハンスン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ギル・ホ・キム
(72)【発明者】
【氏名】キュ・ホ・ソン
【テーマコード(参考)】
4K011
【Fターム(参考)】
4K011AA04
4K011AA35
4K011AA50
4K011AA56
4K011DA01
(57)【要約】
本発明は、保護コーティングを用いた水電解用還元触媒の製造方法と、これから製造された還元触媒を含むアルカリ水電解用還元電極およびアルカリ水電解システムに関するものである。本発明の水電解用還元触媒の製造方法は、保護コーティング方法を適用して、以降の高温の熱処理ステップで合金粒子の成長が抑制され、合金度が高い触媒を製造および提供することができる。その結果、本発明の方法によって製造された非貴金属合金触媒は、貴金属触媒である白金に類似したHER(Hydrogen Evolution Reaction)性能を示し、触媒的特性に優れている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属が炭素支持体に担持された第1金属-炭素触媒前駆体を形成するステップと、
前記第1金属-炭素触媒前駆体をポリドーパミン(Polydopamine;PDA)でコーティングするステップと、
前記コーティングされた第1金属-炭素触媒前駆体に第2金属をさらに担持させ、第1金属-第2金属-炭素前駆体を形成するステップと、
前記第1金属-第2金属-炭素前駆体を熱処理して炭素担持の第1金属-第2金属合金を含む水電解用還元触媒を得るステップと、
を含み、
前記第1金属と第2金属とは互いに異なる遷移金属である、水電解用還元触媒の製造方法。
【請求項2】
前記水電解用還元触媒に含まれる第1金属-第2金属合金において、第1金属:第2金属のモル比は7:3ないし3:7である、請求項1に記載の水電解用還元触媒の製造方法。
【請求項3】
前記第1金属または第2金属は、Ni、Co、Mo、Fe、SnおよびCuからなる群の中からそれぞれ独立して選択される、請求項1に記載の水電解用還元触媒の製造方法。
【請求項4】
前記第1金属または第2金属の担持量は、炭素支持体重量に対して20重量%以上である、請求項1に記載の水電解用還元触媒の製造方法。
【請求項5】
前記炭素支持体は、カーボンブラック、炭素ナノチューブ、炭素ナノファイバー、炭素ナノコイルおよび炭素ナノケージからなる群の中から選択されるいずれか一つ以上である、請求項1に記載の水電解用還元触媒の製造方法。
【請求項6】
前記第1金属-第2金属-炭素前駆体を熱処理して炭素担持の第1金属-第2金属合金を含む水電解用還元触媒を得るステップにおいて、
熱処理温度は、600ないし900℃である、請求項1に記載の水電解用還元触媒の製造方法。
【請求項7】
前記第1金属-第2金属-炭素前駆体を熱処理して炭素担持の第1金属-第2金属合金を含む水電解用還元触媒を得るステップにおいて、
熱処理雰囲気は、水素および不活性気体の混合雰囲気である、請求項1に記載の水電解用還元触媒の製造方法。
【請求項8】
前記水素および不活性気体の混合雰囲気は、水素:不活性気体が10:30ないし10:50の体積比で混合されたものである、請求項7に記載の水電解用還元触媒の製造方法。
【請求項9】
前記不活性気体は、アルゴン(Ar)である、請求項7に記載の水電解用還元触媒の製造方法。
【請求項10】
炭素支持体に担持された第1金属-第2金属合金を含み、
前記第1金属と第2金属とは互いに異なる遷移金属であり、
第1金属:第2金属のモル比は7:3ないし3:7である、水電解用還元触媒。
【請求項11】
前記第1金属または第2金属は、Ni、Co、Mo、Fe、SnおよびCuからなる群の中からそれぞれ独立して選択される、請求項10に記載の水電解用還元触媒。
【請求項12】
前記第1金属または第2金属の担持量は、炭素重量に対して20重量%以上である、請求項10に記載の水電解用還元触媒。
【請求項13】
前記炭素支持体に担持された第1金属-第2金属合金の粒子サイズは10ないし20nmである、請求項10に記載の水電解用還元触媒。
【請求項14】
金属集電体と、
前記金属集電体上に形成された、請求項1に記載の製造方法によって製造された水電解用還元触媒を含む触媒層と、
を含む、アルカリ水電解用還元電極。
【請求項15】
電解液と、
酸化電極と、
イオン交換用隔膜と、
請求項1に記載の製造方法によって製造された水電解用還元触媒を含む還元電極と、
を含む、アルカリ水電解システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(等)との相互引用
本出願は、2021年5月20日付の韓国特許出願第10-2021-0064669号に基づいた優先権の利益を主張して、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、保護コーティングを用いた水電解用還元触媒およびその製造方法、ならびに
これから製造された還元触媒を含むアルカリ水電解用還元電極およびそれを含むアルカリ水電解システムに関する。
【0003】
具体的には、本発明は、ポリドーパミン保護コーティングを用いた水電解用還元触媒の製造方法、ならびにこれから製造された還元触媒およびそれを含むアルカリ水電解用還元電極およびそれを含むアルカリ水電解システムに関する。
【背景技術】
【0004】
水素エネルギーは、資源が豊富でかつ有害物質を排出しないという点で、化石燃料を代替する環境に優しいエネルギーとして注目されている。水素を生産する方法のうち一つであるアルカリ水電解は、安定性および価格競争力が検証されているが、他の水電解技術に比べて相対的に効率が低い(アルカリ水電解~67%、高分子電解質膜水電解~90%、固体酸化物水電解~94%)というデメリットがある。また、負極で行われる水素発生反応(hydrogen evolution reaction、HER)速度は、酸性電解質では反応速度が速いため過電圧が低いが、アルカリ電解質では酸性電解質に比べると、2~3倍低いHER速度を有する。したがって、アルカリ水電解において、HER触媒に関する研究が重要であると言える。
【0005】
アルカリ水電解のための電気化学触媒は、白金(Pt)および白金(Pt)に基づく合金触媒が高い性能および安定性を示すことが知られている。しかし、白金は高価の制限的な貴金属であるため、アルカリ水電解システムの価格を高める主な原因であると言える。したがって、触媒活性を最大化し、白金を代替するための多くの研究が行われている。白金を代替する触媒材料としては、Ni、Fe、Co、Mo、Snなどの安価な遷移金属がある。その中でも、Niは、高い電気化学的速度およびアルカリ溶液中での耐腐食性に優れていることが知られており、他の金属との合金が容易であるため、Niに基づく合金触媒に関する研究が活発に進められている。
【0006】
Niに基づく合金触媒は、合金を通じて物理的構造の変化および電子構造の変形を通じて電気化学的活性を増加させることができ、NiCo、NiFe、NiMo、NiCu、NiPおよびNiSeに対する多様な研究が進められている。その中で、NiMo合金触媒は、水素吸着エネルギーが大きいMoと相対的に弱い吸着エネルギーを有するNiとの相乗効果により、Hadsの吸着とHadsの再結合反応を最適化して、より多くの水素発生を引き出すことができる。NiMo合金は、電気メッキ法とpowder法の2種類の方法で主に製造することができる。電気メッキ法で合金を製造する場合には、製造法が簡単であるというメリットがあるが、NiMo構造の制御およびMo含有量の調節が難しいというデメリットがある。また、電気メッキ法で製造する場合には、Mo含有量を増やすほど合金に気孔が発生し、HERを行うときに水素が気孔に浸透して亀裂を発生させるので、Mo含有量を50%以上にして合金にすることができないというデメリットもある。
【0007】
これに対し、powder法でNiMo合金を製造する場合には、多様な構造と組成比の合金を具現することができる。また、高温熱処理を通じて合金度を増加させることができ、メッキ法に対して触媒安定性が良い。しかし、powder法で主として用いる高温熱処理の間、合金の焼結(sintering)、つまり合金粒子サイズの成長が発生して触媒表面積が減少し、その結果、電気化学的活性が低下するという問題点がある。
【0008】
このような問題を解決するために、白金に基づく合金触媒に高分子をキャッピング物質として導入して、高温熱処理で白金合金触媒の成長を抑制する技術が提案されている。しかし、これもまた高価な貴金属に該当する白金系金属を用いるため、これに対する改善が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、高温熱処理時の粒子サイズの成長を抑制し、合金度を高めることができる水電解用還元触媒の製造方法およびこれから製造された水電解用還元触媒を提供しようとする。
【0010】
具体的には、本発明は、高温熱処理時の粒子サイズの成長を抑制するために保護コーティング方法を導入した水電解用還元触媒の製造方法およびこれから製造された水電解用還元触媒を提供しようとする。
【0011】
また、具体的には、本発明は、非貴金属を用いて水電解用還元電極に用いられる水電解用還元触媒の製造方法およびこれから製造された水電解用還元触媒を提供しようとする。
【0012】
本発明は、さらに、前記製造方法で製造された水電解用還元触媒を含むアルカリ水電解用還元電極およびアルカリ水電解システムを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、第1金属が炭素支持体に担持された第1金属-炭素触媒前駆体を形成するステップと、前記第1金属-炭素触媒前駆体をポリドーパミン(Polydopamine;PDA)でコーティングするステップと、前記コーティングされた第1金属-炭素触媒前駆体に第2金属をさらに担持させ、第1金属-第2金属-炭素前駆体を形成するステップと、前記第1金属-第2金属-炭素前駆体を熱処理して炭素担持の第1金属-第2金属合金を含む水電解用還元触媒を得るステップと、を含み、前記第1金属と第2金属とは互いに異なる遷移金属である、水電解用還元触媒の製造方法を提供する。
【0014】
本発明は、さらに、炭素担持の第1金属-第2金属合金を含み、前記第1金属と第2金属とは互いに異なる遷移金属であり、第1金属:第2金属のモル比は7:3ないし3:7である、水電解用還元触媒を提供する。
【0015】
本発明は、さらに、金属集電体と、前記金属集電体上に形成された前記製造方法で製造された水電解用還元触媒を含む触媒層と、を含む、アルカリ水電解用還元電極を提供する。
【0016】
本発明は、さらに、電解液と、酸化電極と、イオン交換用隔膜と、前記製造方法で製造された水電解用還元触媒を含む還元電極と、を含む、アルカリ水電解システムを提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の水電解用還元触媒の製造方法では、保護コーティング方法を適用することにより、以降の高温の熱処理ステップでの合金粒子の成長が抑制され、合金度が高い触媒を製造および提供することができる。その結果、本発明の水電解用還元触媒の製造方法は、非貴金属合金を用いるにもかかわらず、貴金属触媒である白金に類似したHER(Hydrogen Evolution Reaction)性能を示し、触媒的特性に優れている。
【0018】
このような還元触媒の優れた諸物性により、前記還元触媒は、アルカリ水電解還元電極に非常に好ましく適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一具現例のPDA保護コーティング方法を用いた炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒の製造方法を模式図に示したものである。
図2図2は、本発明の一具現例のPDA保護コーティング方法を用いた還元触媒の製造方法中の熱処理の前(a)と後(b)の炭素担持の第1金属-第2金属合金前駆体に対する透過電子顕微鏡(Transmission electron microscopy、TEM)イメージを示したものである。
図3図3は、熱処理温度を500、600、700、800、900℃に振って製造したPDA保護コーティングを用いた還元触媒のX線回折分析(X-ray diffraction;XRD)パターンイメージである。
図4図4は、熱処理温度を500、600、700、800、900℃に振って製造したPDA保護コーティングを用いた還元触媒のHERを評価した比較グラフである。
図5図5は、Ni:Moモル比を1:9、2:8、3:7、4:6、5:5および7:3に振り、700℃で熱処理して製造したPDA保護コーティングを用いた還元触媒のXRDパターンイメージである。
図6図6は、Ni:Moモル比を1:9、2:8、3:7、4:6、5:5および7:3に振り、700℃で熱処理して製造したPDA保護コーティングを用いた還元触媒のHERを評価した比較グラフである。
図7図7は、PDA保護コーティングを用い、熱処理温度を500、600、700℃に振って製造した還元触媒(a)と、PDA保護コーティングを適用せず、熱処理温度を500、600、700℃に振って製造した還元触媒(b)のXRDパターンイメージである。
図8図8は、PDA保護コーティングを用いた還元触媒と、PDA保護コーティングを適用せず、熱処理温度を500、600、700℃に振って製造した還元触媒のHERを評価した比較グラフである。
図9図9は、本発明によって製造された還元触媒の担持量を20wt%(a)と40wt%(b)に振って製造した還元触媒のTEMイメージを示したものである。
図10図10は、本発明によって製造された還元触媒の担持量を20wt%と40wt%に振って製造した還元触媒のXRDパターンイメージである。
図11図11は、本発明によって製造された還元触媒の担持量を20wt%と40wt%に振って製造した還元触媒のHERを評価した比較グラフである。
図12図12は、本発明に係るPDA保護コーティングを用いた炭素担持のCo-Mo合金を含む水電解用還元触媒の製造方法を模式図に示したものである。
図13図13は、Co:Moモル比を3:7、5:5および7:3に振り、700℃で熱処理して製造したPDA保護コーティングを用いた還元触媒のXRDパターンイメージである。
図14図14は、Co:Moモル比を3:7、5:5および7:3に振り、700℃で熱処理して製造したPDA保護コーティングを用いた還元触媒のHERを評価した比較グラフである。
図15図15は、本発明に係るPDA保護コーティングを用いた炭素担持のNi-Co合金を含む還元触媒の製造方法を模式図に示したものである。
図16図16は、Ni:Coモル比を3:7、5:5および7:3に振り、700℃で熱処理して製造したPDA保護コーティングを用いた還元触媒のXRDパターンイメージである。
図17図17は、Ni:Coモル比を3:7、5:5および7:3に振り、700℃で熱処理して製造したPDA保護コーティングを用いた還元触媒のHERを評価した比較グラフである。
図18図18は、本発明によって合金組み合わせ(Ni-Mo、Co-MoとNi-Co)を振って製造した水電解用還元触媒のHERを評価した比較グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明において、第1、第2などの用語は、多様な構成要素を説明するために使用され、前記用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。
【0021】
また、本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なる意味を有さない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはその以上の他の特徴や数字、ステップ、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0022】
また、本発明において、各層または要素が各層または要素の「上に」または「の上に」形成されるものと言及される場合には、各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味するか、または他の層または要素が各層の間、対象体、基材上に追加的に形成可能であることを意味する。
【0023】
本発明は、多様な変更を加えることができ、色々な形態を有することができるので、特定の実施例を例示し、下記で詳しく説明することにする。しかし、本発明は、これらの特定の開示形態に限定されるものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物または代替物を含むものと理解されるべきである。
【0024】
以下、発明の具現例に係る水電解用還元触媒の製造方法と、それを含むアルカリ水電解用還元電極およびアルカリ水電解システムについて詳しく説明する。
【0025】
発明の一具現例によると、第1金属が炭素支持体に担持された第1金属-炭素触媒前駆体を形成するステップと、前記第1金属-炭素触媒前駆体をポリドーパミン(Polydopamine;PDA)でコーティングするステップと、前記コーティングされた第1金属-炭素触媒前駆体に第2金属をさらに担持させ、第1金属-第2金属-炭素前駆体を形成するステップと、前記第1金属-第2金属-炭素前駆体を熱処理して第1金属-第2金属合金を含む水電解用還元触媒を得るステップと、を含む水電解用還元触媒の製造方法が提供される。
【0026】
本発明者等は、炭素担持の白金触媒にポリドーパミンをキャッピング物質として適用して高温の熱処理過程での粒子サイズの成長を抑制しながら、合金度が高い白金からなる表面層と遷移金属からなるコアとを有する既存のコアシェル構造の合金触媒の製造方法をより研究し、高価な白金族金属ではない非貴金属遷移金属を用いる水電解用還元触媒の製造方法を考案した。
【0027】
キャッピング物質として適用されるポリドーパミンは、接着力が大きい物質であって、薄くかつ均一なコーティングが可能であり、これによって熱処理時に粒子サイズの成長を抑制すると共に遷移金属を容易に拡散させ、合金度が高い合金を含む還元触媒を製造することができ、触媒の活性および耐久性に優れた還元触媒製造を可能にする。また、ポリドーパミンは、常温で自己高分子化が可能であるため、追加的な試薬や装備がなくてもコーティングが可能なメリットがあって、製造上の工程費用および工程効率に優れているというメリットがある。
【0028】
本発明で提案するポリドーパミンコーティング方法を適用すると、以降の熱処理ステップでポリドーパミンコーティングは炭化することになるが、熱処理の間は金属粒子の成長を抑制させ、ナノサイズの金属粒子をより均等に担持させることができる。
【0029】
前記水電解用還元触媒の製造方法で、第1金属と第2金属とは互いに異なる遷移金属であってもよい。本発明では、炭素支持体に担持される金属を2種以上で構成し、第1金属および第2金属それぞれが互いに異なる遷移金属であり、白金族金属ではないものである。具体的な金属の種類は、下記でより具体的に記述する。
【0030】
前記製造方法から得られる水電解用還元触媒に含まれる第1金属-第2金属合金で、第1金属:第2金属のモル比は7:3ないし3:7であってもよい。具体的には、第1金属:第2金属のモル比は5:5ないし3:7または4:6ないし3:7であってもよい。
【0031】
第1金属:第2金属のモル比は、組合わせる金属種類によって好ましい比率が異なってもよい。
【0032】
第1金属がニッケル(Ni)、第2金属がモリブデン(Mo)であるNi-Mo合金の場合、好ましくは、第1金属:第2金属のモル比は3.5:6.5または3.2:6.8であってもよく、最も好ましくは、3:7であってもよい。
【0033】
第1金属がコバルト(Co)、第2金属がモリブデン(Mo)であるCo-Mo合金または第1金属がニッケル(Ni)、第2金属がコバルト(Co)であるNi-Co合金の場合、好ましくは、第1金属:第2金属のモル比は4.5:5.5または4.8:5.2であってもよく、最も好ましくは、5:5であってもよい。
【0034】
第1金属-第2金属モル比が前記範囲を満足しない場合には、ドーパミンコーティング後に導入される第2金属が炭素支持体に担持され難くなり、これによりHER性能に劣るという問題があり得る。
【0035】
前記第1金属または第2金属は、Ni、Co、Mo、Fe、SnおよびCuからなる群の中からそれぞれ独立して選択されてもよい。具体的には、第1金属-第2金属の組み合わせはNi-Mo、Co-Mo、またはNi-Coであってもよい。
【0036】
前記第1金属および第2金属の担持量は、炭素支持体重量に対して20重量%以上であってもよい。具体的には、第1金属および第2金属の担持量は、炭素支持体重量に対して20重量%ないし60重量%、20重量%ないし40重量%であってもよく、好ましくは、担持量は40重量%であってもよい。
【0037】
前記担持量は、炭素支持体重量に対する担持される第1金属および第2金属合計量の比率を意味する。担持量が20重量%未満である場合には、触媒の役割を果たす金属ナノ粒子の量が少なく、適切な還元効果を期待し難い。したがって、担持量は20重量%以上が好ましい。担持率は、担持量中のうち、第1金属または第2金属が含まれる比率を意味する。
【0038】
前記水電解用還元触媒に担持される第1金属および第2金属は粒子サイズが10ないし20nmであってもよい。具体的には、10ないし15nmであってもよい。好ましくは、10ないし12nmであってもよい。本発明の製造方法は、ポリドーパミンコーティング層の形成を導入することによって金属ナノ粒子間の焼結を抑制するので、本発明の製造方法から得られる水電解用還元触媒に担持される第1金属および第2金属は粒子サイズが小さく、活性化表面積を最大化することができる。
【0039】
前記炭素支持体は、カーボンブラック、炭素ナノチューブ、炭素ナノファイバー、炭素ナノコイルおよび炭素ナノケージからなる群の中から選択されるいずれか一つ以上であってもよい。
【0040】
より具体的には、炭素支持体は、カーボンブラックのうち、Vulcan XC 72Rを用いることができる。
【0041】
前記第1金属-第2金属-炭素前駆体を熱処理して第1金属-第2金属合金を含む水電解用還元触媒を得るステップにおいて、熱処理温度は、600ないし900℃であってもよい。具体的には、熱処理温度は、650ないし900℃、または650ないし800℃、または650ないし750℃、または670ないし730℃であってもよい。好ましくは、熱処理温度は700℃である。熱処理温度が過度に低い場合、例えば、600℃未満である場合には、第2金属の拡散がまともに行われないため、遷移金属が炭素支持体内部に移動することができず、MoCでなくMnO、MoOが生成され、HER性能に劣るという問題があり得る。これに対し、熱処理温度が過度に高い場合には、第2金属の拡散は容易であるが、金属が焼結(Sintering)して粗大になり、活性化表面積が小さくなってHER性能に劣るという問題があり得る。
【0042】
前記第1金属-第2金属-炭素前駆体を熱処理して第1金属-第2金属合金を含む水電解用還元触媒を得るステップにおいて、熱処理雰囲気は、水素および不活性気体の混合雰囲気であってもよい。
【0043】
前記水素および不活性気体の混合雰囲気は、水素:不活性気体が10:30ないし10:50の体積比で混合されてもよい。具体的には、水素:不活性気体が10:35ないし10:45の体積比で混合されてもよく、好ましくは、10:40の体積比で混合されてもよい。
【0044】
前記不活性気体は、アルゴン(Ar)であってもよい。
【0045】
本発明の他の具現例によると、本発明は、炭素担持の第1金属-第2金属合金を含み、前記第1金属と第2金属とは互いに異なる遷移金属であり、第1金属:第2金属のモル比は7:3ないし3:7である、水電解用還元触媒を提供することができる。
【0046】
前記水電解用還元触媒に含まれる前記第1金属または第2金属は、Ni、Co、Mo、Fe、Sn、およびCuからなる群の中からそれぞれ独立して選択されるものであってもよい。
【0047】
前記第1金属または第2金属の担持量は、炭素重量に対して20重量%以上であってもよい。
【0048】
前記炭素担持の第1金属-第2金属合金の粒子サイズは10ないし20nmであってもよい。
【0049】
当該水電解用還元触媒は、前述の製造方法から得られたものであってもよい。したがって、前記水電解用還元触媒の第1金属:第2金属のモル比、第1金属または第2金属の種類、担持量および合金の粒子サイズの具体的な範囲とそれによる効果は、前記製造方法の説明で述べた通りである。
【0050】
発明の他の具現例によると、本発明の製造方法によって製造された水電解用還元触媒は、アルカリ水電解用還元電極に用いることができる。より具体的には、金属集電体と、前記金属集電体上に形成された、本発明の製造方法によって製造された水電解用還元触媒を含む触媒層と、を含むアルカリ水電解用還元電極を提供することができる。
【0051】
本発明のさらに他の具現例によると、電解液と、酸化電極と、イオン交換用隔膜と、本発明の製造方法によって製造された水電解用還元触媒を含む還元電極と、を含むアルカリ水電解システムを提供することができる。
【0052】
その他の事項は、当業界において広く知られたアルカリ水電解システムを参考にして具現することができる。
【0053】
以下、発明の理解のために好ましい実施例が提示される。しかし、下記の実施例は、発明を例示するためのものであり、発明をこれらのみに限定するものではない。
【実施例
【0054】
以下、本発明の実施例および試験例において、nwt%のNiMo/C-D-mの意味は、炭素支持体に対するNi-Mo合金の担持量がnwt%で、Ni、Moモル比がx:yであり、PDAコーティングされており、かつ、m℃で熱処理された炭素担持の合金を含む水電解用還元触媒を意味し、nwt%のNiMo/C-mは、炭素支持体に対する合金の担持量がnwt%で、Ni、Moモル比がx:yであり、PDAコーティングされておらず、m℃で熱処理された炭素担持の合金を含む水電解用還元触媒を意味し、nwt%のNi/Cは、Ni担持量がnwt%である炭素担持のNiを含む水電解用還元触媒を意味し、nwt%のMoCは、Mo担持量がnwt%である炭素担持のモリブデンを含む水電解用還元触媒を意味する。合金組み合わせがCo-Mo、Ni-Coなどである場合も前記と同様である。
【0055】
実施例1:PDA保護コーティングを用いた炭素担持のNi-Mo合金(Ni:Moモル比=3:7)を含む水電解用還元触媒の製造
図1は、本発明に係るPDA保護コーティングを用いた炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒の製造方法を模式図に示したものである。カーボンブラック(C)支持体に、第1金属としてニッケル(Ni)を担持した後、PDAをキャッピング物質(capping agent)として用いてコーティングした後、第2金属としてモリブデン(Mo)を担持して前駆体沈着法を適用した。その後、高温熱処理を行い、炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒を製造した。
【0056】
具体的には、50mL容量の水熱合成用テフロン(登録商標)反応器にニッケルクロリド(Nickel Chloride、NiCl・6HO)22mg、炭素100mg、およびエチレングリコール(Ethylene glycol)50mLを入れ、Convection ovenを用い、180℃で24時間水熱合成を行った。水熱合成が終わった後、前記溶液を、減圧ろ過装置を用いてフィルタリングした。その後に、脱イオン水(Deionized water)を通過させて3回洗浄し、80℃のオーブンで3時間乾燥させて不純物を除去して、炭素担持のNi前駆体を得た。
【0057】
ドーパミン合成のために、pH8.5のトリス-緩衝(Tris-buffer)溶液を製造した。このとき、ドーパミンの均一な合成のためには、pHを正確に合わせる必要があるので、脱イオン水100mLにトリスアミノメタン(Tris aminomethane)121mgを入れ、1時間撹拌した。撹拌が終わった後、マイクロピペットを用い、0.5M HClを0.2mLずつ添加した。
【0058】
前記過程で0.5M HClを0.2mLずつ入れるたびにpHを測定した。pHが8.5に到達するとHClを添加することを止め、2時間撹拌した。前記製造したトリス-緩衝溶液30mLを25℃にした後、前記製造された炭素担持のNi触媒120mgを入れた。この溶液を30分間撹拌した後、120mgのドーパミンヒドロクロリド(Dopamine hydrochloride)をトリス-緩衝溶液10mLに溶かした溶液を入れ、24時間撹拌した。このステップでドーパミンが炭素担持のNi前駆体にコーティングされる。コーティングが終わったサンプルは、減圧ろ過装置を用いて回収し、脱イオン水を通して2回洗浄した。そして、80℃のオーブンで3時間乾燥させた後、PDAがコーティングされた炭素担持のNi前駆体を回収した。
【0059】
20mlの脱イオン水に50mgのソジウムモリブデート(Sodium molybdate、NaMoO・2HO)と54mgのエチレンジアミン(Ethylene diamine)とを入れて十分に撹拌した後、前記製造されたPDAがコーティングされた炭素担持のNi前駆体を入れて80℃条件で3時間還流させた。還流が終わった後、エバポレーターを用いて脱イオン水を蒸発させ、サンプルを回収した。前記製造された炭素担持のNi-Mo前駆体をファーネスに入れ、700℃、アルゴン80%、水素20%の雰囲気で1時間熱処理して製造された担持量が20wt%である炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒(20wt% NiMo/C-D-700)を回収した。
【0060】
ニッケルクロリドおよびソジウムモリブデートの使用量を制御して担持量およびNi-Moのモル比が異なる還元触媒を製造することができる。
【0061】
高温熱処理を行うときに、PDAは熱によって分解が行われるが、その間、PDAによってコーティングされたNi-Mo粒子の成長は抑制される。また、熱処理が行われるにつれてPDAが分解される過程中で、含浸されたMoがNi内部に拡散して、最終的に炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒が得られた。
【0062】
図2は、本発明に係るPDA保護コーティングを用いた水電解用還元触媒製造中の熱処理の前と後のTEMイメージを示したものである。図2(a)は、PDAをキャッピング物質として用いてコーティングした炭素担持のNi(Ni/C)にMoを含浸した合金前駆体を熱処理する前に撮影したイメージである。図2(b)は、前記炭素担持の合金前駆体を700℃で熱処理した後に撮影したイメージである。
【0063】
まず、図2(a)では、PDA層が形成されていることを確認することができた。図2(b)では、熱処理を通じて水電解用還元触媒を均等に囲んでいたPDAコーティング層が炭化したことを確認することができた。保護コーティング効果によって高温熱処理をしたにもかかわらず、粒子の成長なしに10ないし20nmの粒子が均等に担持されたことを確認することができた。
【0064】
実施例2:PDA保護コーティングを用いた炭素担持のCo-Mo合金(Co:Moモル比=5:5)を含む水電解用還元触媒の製造
図12は、本発明に係るPDA保護コーティングを用いた炭素担持のCo-Mo合金を含む水電解用還元触媒の製造方法を模式図に示したものである。
【0065】
炭素(C)支持体に、第1金属としてコバルト(Co)を担持した後、PDAをキャッピング物質(capping agent)として用いてコーティングした後、第2金属としてモリブデン(Mo)を担持して前駆体沈着法を適用した。その後、高温熱処理を行い、炭素担持のCo-Mo合金を含む水電解用還元触媒を製造する。
【0066】
具体的には、50mL容量の水熱合成用テフロン(登録商標)反応器に硝酸コバルト(Cobalt Nitrate、Co(NO・6HO)47mg、炭素100mg、およびエチレングリコール(Ethylene glycol)50mLを入れ、Convection ovenを用い、180℃で24時間水熱合成を行った。水熱合成が終わった後、前記溶液を、減圧ろ過装置を用いてフィルタリングした。その後に脱イオン水(Deionized water)を通して3回洗浄し、80℃のオーブンで3時間乾燥させて不純物を除去して、炭素担持のCo前駆体を得た。
【0067】
ドーパミンコーティングステップは、前記実施例1と同様に行った。製造したトリス-緩衝溶液30mLを25℃にした後、前記製造された炭素担持のCo前駆体120mgを入れた。この溶液を30分間撹拌した後、120mgのドーパミンヒドロクロリド(Dopamine hydrochloride)をトリス-緩衝溶液10mLに溶かした溶液を入れ、24時間撹拌した。このステップでドーパミンが炭素担持のCo前駆体にコーティングされた。コーティングが終わったサンプルは、減圧ろ過装置を用いて回収し、脱イオン水を通して2回洗浄した。そして80℃のオーブンで3時間乾燥させた後、PDAがコーティングされた炭素担持のCo前駆体を回収した。
【0068】
20mlの脱イオン水に40mgのソジウムモリブデート(Sodium molybdate、NaMoO・2HO)と42mgのエチレンジアミン(Ethylene diamine)とを入れて十分に撹拌した後、前記製造されたPDAがコーティングされた炭素担持のCo前駆体を入れて80℃条件で3時間還流させた。還流が終わった後、エバポレーターを用いて脱イオン水を蒸発させ、サンプルを回収した。前記製造された炭素担持のCo-Mo前駆体をファーネスに入れ、700℃、アルゴン80%、水素20%の雰囲気で1時間熱処理して製造された担持量が20wt%である炭素担持のCo-Mo合金を含む水電解用還元触媒(20wt% CoMo/C-D-700)を回収した。
【0069】
コバルト担持用物質およびソジウムモリブデートの使用量を制御して担持量およびCo-Moのモル比が異なる水電解用還元触媒を製造することができる。
【0070】
炭素担持のCo-Mo合金を含む水電解用還元触媒も、炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒と同様に、高温熱処理を行うときに、PDAは熱によって分解が行われるが、その間、PDAによってコーティングされたCo-Mo粒子の成長は抑制される。また、熱処理が行われるにつれてPDAが分解される過程中で、含浸されたMoがCo内部に拡散して、最終的に炭素担持のCo-Mo合金を含む水電解用還元触媒が得られた。
【0071】
実施例3:PDA保護コーティングを用いた炭素担持のNi-Co合金(Ni:Coモル比=5:5)を含む水電解用還元触媒の製造
図15は、本発明に係るPDA保護コーティングを用いた炭素担持のNi-Co合金を含む水電解用還元触媒の製造方法を模式図に示したものである。
【0072】
炭素(C)支持体に、第1金属としてニッケル(Ni)を担持した後、PDAをキャッピング物質(capping agent)として用いてコーティングした後、第2金属としてコバルト(Co)を担持して前駆体沈着法を適用した。その後、高温熱処理を行い、炭素担持のNi-Co合金を含む水電解用還元触媒を製造した。
【0073】
具体的には、50mL容量の水熱合成用テフロン(登録商標)反応器にニッケルクロリド(Nickel Chloride、NiCl・6HO)51mg、炭素100mg、およびエチレングリコール(Ethylene glycol)50mLを入れ、Convection ovenを用い、180℃で24時間水熱合成を行った。水熱合成が終わった後、前記溶液を、減圧ろ過装置を用いてフィルタリングした。その後に脱イオン水(Deionized water)を通じて3回洗浄し、80℃のオーブンで3時間乾燥させて不純物を除去して、炭素担持のNi前駆体を得た。
【0074】
ドーパミンコーティングステップは、前記実施例1のように行った。製造したトリス-緩衝溶液30mLを25℃にした後、前記製造された炭素担持のNi前駆体120mgを入れた。この溶液を30分間撹拌した後、120mgのドーパミンヒドロクロリド(Dopamine hydrochloride)をトリス-緩衝溶液10mLに溶かした溶液を入れ、24時間撹拌した。このステップでドーパミンが炭素担持のNi前駆体にコーティングされた。コーティングが終わったサンプルは、減圧ろ過装置を用いて回収し、脱イオン水を通して2回洗浄した。そして80℃のオーブンで3時間乾燥させた後、PDAがコーティングされた炭素担持のNi前駆体を回収した。
【0075】
20mlの脱イオン水に硝酸コバルト(Cobalt Nitrate、Co(NO・6HO)62mgと66mgのエチレンジアミン(Ethylene diamine)とを入れて十分に撹拌した後、前記製造されたPDAがコーティングされた炭素担持のNi前駆体を入れて80℃条件で3時間還流させた。還流が終わった後、エバポレーターを用いて脱イオン水を蒸発させ、サンプルを回収した。前記製造された炭素担持のNi-Co前駆体をファーネスに入れ、700℃、アルゴン80%、水素20%の雰囲気で1時間熱処理して製造された担持量が20wt%である炭素担持のNi-Co合金を含む水電解用還元触媒(20wt% NiCo/C-D-700)を回収した。
【0076】
コバルト担持用物質およびニッケルクロリドの使用量を制御して担持量およびni-Coのモル比が異なる水電解用還元触媒を製造することができる。
【0077】
炭素担持のNi-Co合金を含む水電解用還元触媒も、炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒と同様に、高温熱処理を行うときに、PDAは熱によって分解が行われるが、その間、PDAによってコーティングされたNi-Co粒子の成長は抑制される。また、熱処理が行われるにつれてPDAが分解される過程中で、含浸されたCoがNi内部に拡散して、最終的に炭素担持のNi-Co合金を含む水電解用還元触媒が得られた。
【0078】
比較例1:ニッケル単独担持
水熱合成法工程で炭素担持のNi触媒(Ni/C)を製造した。
【0079】
比較例2:モリブデン単独担持
前記実施例1の炭素にNiを担持する水熱合成法工程を行わず、炭素支持体にPDAをコーティングしてMoを含浸した後、前記実施例1と同様に、700℃、水素20%、アルゴン80%条件で1時間熱処理して炭素担持のMo触媒(MoC)を製造した。
【0080】
比較例3:PDAコーティングを行わない
前記実施例1のPDAコーティング工程を行わず、水熱合成を通じて炭素担持のNi前駆体にMoを含浸した後、前記実施例1と同様に、700℃、水素20%、アルゴン80%条件で1時間熱処理して炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒(20wt% NiMo/C-700)を製造した。
【0081】
比較例4:PDA保護コーティングを用いた炭素担持のPt-Ni合金(Pt:Niモル比=2:1)を含む水電解用還元触媒の製造
炭素(C)支持体に、第1金属として白金(Pt)を担持した後、PDAをキャッピング物質(capping agent)として用いてコーティングした後、第2金属としてニッケル(Ni)を担持して前駆体沈着法を適用した。その後、高温熱処理を行い、炭素担持のPt-Ni合金を含む水電解用還元触媒を製造した。
【0082】
具体的には、エチレングリコール(Ethylene Glycol)25mLに炭素200mgを入れ、30分間余り超音波分散処理をした。撹拌が終わった溶液に塩化白金(Platinum Chloride、PtCl)75mgを入れ、30分間撹拌した。撹拌が終わった後、NaOHを85mg入れ、30分間撹拌してpHが6ないし7となるように調整した。このとき、NaOHは、エチレングリコールのpHを調節して白金の粒子サイズを小さくすることに寄与することができる。NaOHが全て溶解した後、これを、マイクロウェーブ(Microwave)を用い、160℃で10分間還流させた。このとき、白金(Pt)およびルテニウム(Ru)イオンが還元され、結晶性炭素表面に吸着することになる。この後、0.1M HSOを用いてpHを下げ、pHが2~3となるように調整し、調整が終わると、24時間さらに撹拌した。撹拌が終わった後、前記溶液を、減圧ろ過装置を用いてフィルタリングした。その後に脱イオン水(Deionized water)を通じて3回洗浄し、80℃で3時間乾燥させて不純物を除去して、炭素担持のPtを得た。
【0083】
ドーパミンコーティングステップは、前記実施例1のように行った。製造したトリス-緩衝溶液30mLを25℃にした後、前記製造された炭素担持のPt前駆体175mgを入れた。この溶液を30分間撹拌した後、120mgのドーパミンヒドロクロリド(Dopamine hydrochloride)をトリス-緩衝溶液10mLに溶かした溶液を入れ、24時間撹拌した。このステップでドーパミンが炭素担持のPt前駆体にコーティングされた。コーティングが終わったサンプルは、減圧ろ過装置を用いて回収し、脱イオン水を通して2回洗浄した。そして80℃のオーブンで3時間乾燥させた後、PDAがコーティングされた炭素担持のPt前駆体を回収した。
【0084】
20mlの脱イオン水にニッケルクロリド(Nickel Chloride、NiCl・6HO)23.4mgと24.9mgのエチレンジアミン(Ethylene diamine)とを入れて十分に撹拌した後、前記製造されたPDAがコーティングされた炭素担持のPt前駆体を入れて80℃条件で3時間還流させた。還流が終わった後、エバポレーターを用いて脱イオン水を蒸発させ、サンプルを回収した。前記製造された炭素担持のPt-Ni前駆体をファーネスに入れ、700℃、アルゴン80%、水素20%の雰囲気で1時間熱処理して製造された担持量が20wt%である炭素担持のPt-Ni合金をモル比2:1で含む水電解用還元触媒(20wt% PtNi/C-D-700)を回収した。
【0085】
<試験例1>炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒熱処理温度による粒子サイズおよび担持率の評価
本試験例1では、PDA保護コーティングを用いた炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒の製造時に、熱処理温度による還元触媒の特性を評価する試験を行った。炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒の製造は、前述の実施例1と同様である。
【0086】
図3は、熱処理温度を500、600、700、800および900℃に振って製造したPDA保護コーティングを用いた水電解用還元触媒のXRDパターンイメージである。前駆体沈着法で熱処理温度は、還元触媒に含まれる合金の合金度と粒子サイズを決める重要な要素のうち一つである。一般的に、熱処理温度を高めるほど合金度が高くなり、触媒の耐久性および活性が向上する。しかし、熱処理温度の増加は、触媒の粒子サイズ増加および粒子の凝集現象によって触媒活性面積が減少することになる。
【0087】
図3に示されているように、XRDパターンイメージを検討すると、熱処理温度が700℃以上の場合、MoCのピークが現れることが分かった。これは、700℃以上の高温では、炭素とMoとの強い結合により、MoCが形成されたことを意味する。
【0088】
熱処理温度を500、600、700、800、および900℃に振って製造したPDA保護コーティングを用いた水電解用還元触媒のXRD粒子サイズと担持率を、下記の[表1]に示した。
【0089】
【表1】
【0090】
[表1]に示されているように、熱処理温度が高くなるほどPDA保護コーティングを適用して製造した水電解用還元触媒の粒子サイズが増加する傾向を示した。これは、高温熱処理の間PDAコーティング層が粒子の焼結(sintering)を完全に抑制できないので、温度が高くなるほど粒子サイズが増加することを意味する。これに対し、熱処理温度にかかわらず、担持率は同様であることが分かった。熱処理を500℃、600℃で処理した場合には、結晶が十分に成長しないため、XRD peakが検出されず、XRDによる粒子サイズは計算ができなかった。
【0091】
<試験例2>炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒の熱処理温度によるHER評価
本試験例2では、PDA保護コーティングを用いた炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒の製造時に、熱処理温度によるHER(hydrogen evolution reaction)を評価する試験を行った。
【0092】
図4は、熱処理温度を500、600、700、800、および900℃に振って製造したPDA保護コーティングを用いた還元触媒のHERを電圧(potential)と電流密度(current density)の変化を通じて評価した比較グラフである。
【0093】
HERを評価するために、3電極システムにRotating Disk Electrode(RDE)チップ(面積0.196cm)をWorking electrodeとして用いた。RDEチップの上に塗布するインクは、メタルを基準に350μg・cm-2の密度となるように準備した。3電極システムは、Reference electrodeに、Hg/HgO、counter electrodeは白金(Platinum、Pt)wireであり、電解質は1M KOHで構成した。
【0094】
本発明によってPDA保護コーティングして製造した還元触媒のインクをRDEチップに塗布して乾燥させた後、ローテーターに連結して1600RPMと10mV・s-1のscan rateの条件で、Linear sweep voltammetry(LSV)を測定してHERを評価した。LSV測定中に電流密度が-60mA・cm-2に到達するか電圧が-0.4Vに到達すると、LSV測定を中断した。
【0095】
具体的には、下記の表2に、10mA/cmの電流密度(Current density)での過電圧(Overpotential;mV)を測定した結果を示す。
【0096】
【表2】
【0097】
[表2]に示されるように、HER測定の結果、PDA保護コーティングして製造した還元触媒(20wt% NiMo/C-D)は、熱処理温度が700℃のとき、@10mA・cm-2で104.4mVとなり、最も優れたHER性能を示した。これは、図3のXRDパターンイメージと比較してみると、700℃以下であり、Moは、MoO、MoOとして主に存在し、これらはHERに対して寄与度しないことを確認した。700℃で熱処理時に、NiとMoとの合金にNiのピークがシフトすることが分かり、Moは、さらにカーボンと反応してMoCを形成した。MoCも、HERに反応性があることが知られているが、温度が800℃、900℃に達すると、粒子サイズが過度に成長するだけでなく、MoがNiと合金になることより、MoCとして主に存在することになって、かえってHER性能が減少することを確認することができた。
【0098】
<試験例3>炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒のNi:Moモル比による粒子サイズおよび担持率の評価
本試験例3では、PDA保護コーティングを用いた炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒の製造時に、Ni:Moモル比による特性を評価する試験を行った。
【0099】
図5は、Ni:Moモル比を1:9、2:8、3:7、4:6、5:5および7:3に振り、700℃で熱処理して製造したPDA保護コーティングを用いた還元触媒のXRDパターンイメージである。XRDの結果、Moの含有量が増加するほどNiのピークがnegative方向にシフトする傾向が見られた。これは、Moの含有量が増加するほどMo原子が格子を拡張させ、Niのピークをシフトさせ、それによって還元触媒に含まれる合金の合金度が増加することを意味する。また、Moの含有量が増加するほどNiのピークがますます消滅する傾向を示し、NiとMoとのモル比が3:7、4:6、5:5および7:3であるとき、NiとMoCのピークがmain peakとして形成されることが見られた。特に、NiとMoとのモル比が3:7であるとき、MoCのピークが最も顕著に現れた。しかし、Moの含有量が8以上になると、MoCのピークが減り、MoOとMoOのピークが形成されることが見られた。
【0100】
Ni:Moモル比を1:9、2:8、3:7、4:6、5:5および7:3に振り、700℃で熱処理して製造したPDA保護コーティングを用いた還元触媒のXRD粒子サイズと担持率を、下記の[表3]に示した。
【0101】
【表3】
【0102】
[表3]に示されているように、担持率は、意図したモル比に合致した。また、粒子サイズは組成にかかわらず、12nm水準に一定に維持されたことが分かった。ただし、20wt%のNiMo/C-D-700および20wt%のMoCの場合には、XRD peakが検出されず、XRDによる粒子サイズは計算ができなかった。
【0103】
<試験例4>炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒のNi:Moモル比によるHER評価
本試験例4では、PDA保護コーティングを用いた炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒の製造時に、Ni:Moモル比によるHERを評価する試験を行った。
【0104】
図6は、Ni:Moモル比を1:9、2:8、3:7、4:6、5:5および7:3に振って製造したPDA保護コーティングを用いた還元触媒のHERを電圧(potential)と電流密度(current density)の変化を通じて評価した比較グラフである。
【0105】
HERを評価するために、3電極システムにRDEチップ(面積0.196cm)をWorking electrodeとして用いた。RDEチップの上に塗布するインクは、メタルを基準に350μg・cm-2の密度となるように準備した。3電極システムは、Reference electrodeとしてHg/HgO、counter electrodeはPt wireであり、電解質は1M KOHで構成した。
【0106】
本発明によってPDA保護コーティングして製造した水電解用還元触媒のインクをRDEチップに塗布して乾燥させた後、ローテーターに連結して1600RPMと10mV・s-1のscan rateの条件で、LSVを測定してHERを評価した。LSV測定中に電流密度が-60mA・cm-2に到達するか電圧が-0.4Vに到達すると、LSV測定を中断した。
【0107】
具体的には、下記の表4に、10mA/cmの電流密度での過電圧(Overpotential;mV)を測定した結果を示す。
【0108】
【表4】
【0109】
[表4]に示されているように、HER測定の結果、Ni:Moのモル比が3:7の場合、HER性能が@10mA・cm-2で75.1mVとなり、最も優れたHERを示した。これに対し、Ni含有量が3未満に下がると、HER性能が下落することが分かった。先に図5で言及したように、Ni含有量が3未満の還元触媒は、MoCのピークが減り、MoOとMoOのピークが形成されたことから、HER性能の増加にMoO、MoOより、MoCの寄与が大きいことを意味する。また、比較例4に対応する20wt%のPtNi/C-D-700の過電圧数値は50.3mVであるが、高価の白金を用いるため、本発明の実施例は、非白金族遷移金属を用いても、白金を用いる場合と同様の程度の触媒を構成できることを確認した。
【0110】
特に、比較例4による触媒製造法は、熱処理後に追加的な酸処理を通じて表面の残余Niを除去することによって、事実上、PtNi合金でないNiコアPtシェル構造を形成するので、構造に相違があることを確認した。
【0111】
<試験例5>炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒のPDAコーティングの有無による粒子サイズおよび担持率の評価
本試験例5では、炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒の製造時に、PDA保護コーティングの有無による特性を評価する試験を行った。
【0112】
図7は、PDA保護コーティングを用いた還元触媒とPDA保護コーティングを適用せず、熱処理温度を500、600、700℃に振って製造した還元触媒のXRDパターンイメージである。図7(a)は、PDA保護コーティングを適用して製造した還元触媒のXRDパターンイメージであり、図7(b)は、PDA保護コーティングを適用せずに製造した還元触媒のXRDパターンイメージである。
【0113】
図7(a)と(b)を比較すると、熱処理温度を700℃に適用する場合、PDA保護コーティングの有無にかかわらず、MoCのピークが生成された。これによって700℃以上の高温熱処理時に、ドーパミンではなくカーボンとMoとが結合してMoCが生成されることが分かった。
【0114】
【表5】
【0115】
[表5]に示されるように、ICP担持率は、PDA保護コーティングの適用の有無にかかわらず一定の担持率を示した。これに対し、粒子サイズに関しては700℃で熱処理を行う場合、PDA保護コーティングを適用した還元触媒の粒子サイズが12.5nmへと、PDA保護コーティングを適用せずに製造した還元触媒の粒子サイズである16.8nmに対して減少した。これは、PDAがキャッピング物質として作用して、熱処理ステップで粒子サイズの成長を抑制できることが分かった。ただし、20wt%のNiMo/C-D-500、および20wt%のNiMo/C-D-600の場合、XRD peakが検出されず、XRDによる粒子サイズは計算ができなかった。
【0116】
<試験例6>炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒のPDAコーティングの有無によるHER評価
本試験例6では、炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒の製造時に、PDA保護コーティングの有無によるHERを評価する試験を行った。
【0117】
図8は、PDA保護コーティングを用いた還元触媒と、PDA保護コーティングを適用せず、熱処理温度を500、600、700℃に振って製造した還元触媒のHERを電圧と電流密度の変化を通じて評価した比較グラフである。
【0118】
HERを評価するために、3電極システムにRDEチップ(面積0.196cm)をWorking electrodeとして用いた。RDEチップの上に塗布するインクは、メタルを基準に350μg・cm-2の密度となるように準備した。3電極システムは、Reference electrodeとしてHg/HgO、counter electrodeはPt wireであり、電解質は1M KOHで構成した。
【0119】
本発明によってPDA保護コーティングして製造した還元触媒のインクをRDEチップに塗布して乾燥させた後、ローテーターに連結して1600RPMと10mV・s-1のscan rateの条件で、LSVを測定してHERを評価した。LSV測定中に電流密度が-60mA・cm-2に到達するか電圧が-0.4Vに到達すると、LSV測定を中断した。
【0120】
具体的には、下記の表6に、10mA/cmの電流密度での過電圧(Overpotential;mV)を測定した結果を示す。
【0121】
【表6】
【0122】
[表6]に示されているように、HER測定の結果、PDA保護コーティングが適用された20wt%のNiMo/C-D-700のHER性能が@10mA・cm-2で75.1mVとなり、最も優れたHERを示した。これに対し、PDA保護コーティングが適用されていない還元触媒である20wt%のNiMo/C-700のHERは、@10mA・cm-2で102mVとなり、PDA保護コーティングが適用された還元触媒と比較して低いHERを示した。これによってPDA保護コーティングで製造した還元触媒は、高温熱処理でも、粒子が小さく維持され、活性化表面積が増加することが分かった。
【0123】
<試験例7>炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒の担持量による粒子サイズおよび担持率の評価
本試験例7では、炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒の製造時に、担持量を20wt%と40wt%に振って、製造した還元触媒の特性を評価する試験を行った。
【0124】
図9は、担持量を20wt%と40wt%に振って製造した還元触媒のTEMイメージを示したものである。図9(a)は、20wt%のNiMo/C-D-700を高倍率で撮影したイメージであり、図9(b)は、40wt%のNiMo/C-D-700を高倍率で撮影したイメージである。
【0125】
まず、図9のイメージを比較すると、両方とも炭素支持体に平均10~20nmの粒子が均等に担持されたことが見られた。特に、図9(b)で炭素支持体にできるだけ高い比率のNi-Moが均等に担持された還元触媒が製造されることを確認することができた。
【0126】
図10は、Ni-Moの担持率を20wt%と40wt%に振り、本発明によってPDA保護コーティングを適用した後、700℃で熱処理して製造した還元触媒のXRDパターンイメージである。図10に示されているように、40wt%に製造された還元触媒のXRD peakは、20wt%に製造された還元触媒と同様に、NiとMoCがmain peakをなしていることを確認することができた。
【0127】
【表7】
【0128】
[表7]のように、合金担持量が2倍増加しても粒子サイズの変化はなかった。これに対し、担持率は約2倍増加して、Ni-Moの担持量が増加された還元触媒製造が成功的に行われたことを確認することができた。
【0129】
<試験例8>炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒の担持量によるHER評価
本試験例8では、炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒の製造時に、担持量を20wt%と40wt%に振って製造した還元触媒のHERを比較および評価する試験を行った。
【0130】
図11は、常用のPt/C触媒およびニッケル単独担持またはモリブデン単独担持触媒とNi-Moの担持率を20wt%と40wt%に振り、本発明によってPDA保護コーティングを適用した後、700℃で熱処理して製造した還元触媒のHERを電圧と電流密度の変化を通じて評価した比較グラフである。
【0131】
HERを評価するために、3電極システムにRDEチップ(面積0.196cm)をWorking electrodeとして用いた。RDEチップの上に塗布するインクは、メタルを基準に350μg・cm-2の密度となるように準備した。3電極システムは、Reference electrodeとしてHg/HgO、counter electrodeはPt wireであり、電解質は1M KOHで構成した。
【0132】
本発明によってPDA保護コーティングして製造した還元触媒(20wt% NiMo/C-D-700)のインクをRDEチップに塗布して乾燥させた後、ローテーターに連結して1600RPMと10mV・s-1のscan rateの条件で、LSVを測定してHERを評価した。LSV測定中に電流密度が-60mA・cm-2に到達するか電圧が-0.4Vに到達すると、LSV測定を中断した。
【0133】
具体的には、下記の表8に、10mA/cmの電流密度での過電圧(Overpotential;mV)を測定した結果を示す。
【0134】
【表8】
【0135】
[表8]に示されているように、HER測定の結果、PDA保護コーティングが適用された40wt%のNiMo/C-D-700のHER性能が@10mA・cm-2で62.6mVとなり、最も優れたHERを示した。すなわち、20wt%のNiMo/C-D-700のHER性能である@10mA・cm-2で75.1mVに比べて性能が小幅増加したことが分かったが、これによって水素の吸着と脱着反応を促進させるNiとMoのメタルの担持量の増加によって、HER性能が向上したことが分かった。本試験例8の結果と前記試験例2、4および6の結果から、PDA保護コーティングを適用して700℃で熱処理し、Ni:Mo=3:7モル比で炭素に40wt%を担持する水電解用還元触媒(40wt%のNiMo/C-D-700)が最も合金度が高く、最も優れたHERを有することが分かった。
【0136】
<試験例9>炭素担持のCo-Mo合金を含む水電解用還元触媒のCo:Moモル比による粒子サイズおよび担持率の評価
本試験例9では、PDA保護コーティングを用いた炭素担持のCo-Mo合金を含む水電解用還元触媒の製造時に、Co:Moモル比による特性を評価する試験を行った。炭素担持のCo-Mo合金を含む水電解用還元触媒の製造方法は実施例2に従った。
【0137】
図13は、Co:Moモル比を3:7、5:5および7:3に振り、700℃で熱処理して製造したPDA保護コーティングを用いた還元触媒のXRDパターンイメージである。
【0138】
XRDの結果、全ての組成比で、CoとMoO、MoO、MoCのピークが形成され、Moのモル比が増加するほどMoCのピークが増加することが見られた。
【0139】
Co:Moモル比を、3:7、5:5および7:3に振り、700℃で熱処理して製造したPDA保護コーティングを用いた還元触媒のXRD粒子サイズと担持率を、下記の[表9]に示した。
【0140】
【表9】
【0141】
[表9]に示されているように、意図したモル比に合致する担持率で担持された。また、粒子サイズが平均11nm水準の粒子が形成されており、これは、保護コーティング効果によって高温熱処理後にも、粒子の成長なしに初期のCo/Cに類似した粒子サイズが形成されることを確認した。ただし、20wt%のCoMo/C-D-700および20wt%のCoMo/C-D-700の場合、XRD peakが検出されず、XRDによる粒子サイズは計算ができなかった。
【0142】
<試験例10>炭素担持のCo-Mo合金を含む水電解用還元触媒のCo:Moモル比によるHER評価
本試験例10では、PDA保護コーティングを用いた炭素担持のCo-Mo合金を含む水電解用還元触媒の製造時に、Co:Moモル比によるHERを評価する試験を行った。
【0143】
図14は、Co:Moモル比を、3:7、5:5および7:3に振り、700℃で熱処理して製造したPDA保護コーティングを用いた還元触媒のHERを電圧と電流密度の変化を通じて評価した比較グラフである。
【0144】
HERを評価するために、3電極システムにRDEチップ(面積0.196cm)をWorking electrodeとして用いた。RDEチップの上に塗布するインクは、メタルを基準に350μg・cm-2の密度となるように準備した。3電極システムは、Reference electrodeとしてHg/HgO、counter electrodeはPt wireであり、電解質は1M KOHで構成した。本発明によってPDA保護コーティングして製造した還元触媒のインクをRDEチップに塗布して乾燥させた後、ローテーターに連結して1600RPMと10mV・s-1のscan rateの条件で、LSVを測定してHERを評価した。LSV測定中に電流密度が-60mA・cm-2に到達するか電圧が-0.4Vに到達すると、LSV測定を中断した。
【0145】
具体的には、下記の表10に、10mA/cmの電流密度での過電圧(Overpotential;mV)を測定した結果を示した。
【0146】
【表10】
【0147】
[表10]に示されているように、HER測定の結果、Co:Moモル比が5:5の場合、HER性能が@10mA・cm-2で134.6mVとなり、最も優れたHERを示した。Co-Mo非貴金属合金もMoCが生成されるMo含有量5と7でHERに優れていることから、HER性能にMoCの寄与が大きいことが分かった。しかし、Co-Mo合金の場合、HER性能の増加はあるが、Ni-Moに対してその効果が大きくないことを確認した。
【0148】
<試験例11>炭素担持のNi-Co合金を含む水電解用還元触媒のNi:Coモル比による粒子サイズおよび担持率の評価
本試験例11では、PDA保護コーティングを用いた炭素担持のNi-Co合金を含む水電解用触媒の製造時に、Ni:Coモル比による特性を評価する試験を行った。炭素担持のNi-Co合金を含む水電解用還元触媒の製造方法は、前述の実施例3に従った。
【0149】
図16は、Ni:Coのモル比を3:7、5:5および7:3に振り、700℃で熱処理して製造したPDA保護コーティングを用いた還元触媒のXRDパターンイメージである。
【0150】
XRDの結果、Co含有量が増加するほどmain peakである2theta 44部分で合金が形成されず、分離されたピークが観察された。
【0151】
Ni:Coのモル比を3:7、5:5および7:3に振り、700℃で熱処理して製造したPDA保護コーティングを用いた還元触媒のXRD粒子サイズと担持率を、下記の[表11]に示した。
【0152】
【表11】
【0153】
[表11]に示されているように、意図したモル比に合致する担持率で担持された。また、粒子サイズが平均10~11nm水準の粒子が形成されており、これは、保護コーティング効果によって高温熱処理後にも、粒子の成長なしに初期のNi/Cに類似した粒子サイズが形成されることを確認した。
【0154】
<試験例12>炭素担持のNi-Co合金を含む水電解用還元触媒のNi:Coモル比によるHER評価
本試験例10では、PDA保護コーティングを用いた炭素担持のNi-Co合金を含む水電解用還元触媒の製造時に、Ni:Coモル比によるHERを評価する試験を行った。
【0155】
図17は、Ni:Coのモル比を3:7、5:5および7:3に振り、700℃で熱処理して製造したPDA保護コーティングを用いた還元触媒のHERを電圧と電流密度の変化を通じて評価した比較グラフである。
【0156】
HERを評価するために、3電極システムにRDEチップ(面積0.196cm)をWorking electrodeとして用いた。RDEチップの上に塗布するインクは、メタルを基準に350μg・cm-2の密度となるように準備した。3電極システムは、Reference electrodeとしてHg/HgO、counter electrodeはPt wireであり、電解質は1M KOHで構成した。本発明によってPDA保護コーティングして製造した還元触媒のインクをRDEチップに塗布して乾燥させた後、ローテーターに連結して1600RPMと10mV・s-1のscan rateの条件で、LSVを測定してHERを評価した。LSV測定中に電流密度が-60mA・cm-2に到達するか電圧が-0.4Vに到達すると、LSV測定を中断した。
【0157】
具体的には、下記の表12に、10mA/cmの電流密度での過電圧(Overpotential;mV)を測定した結果を示した。
【0158】
【表12】
【0159】
[表12]に示されているように、HER測定の結果、Co含有量が5の場合、HER性能が@10mA・cm-2で159.4mVとなり、最も優れたHERを示した。Co-Mo非貴金属合金も、合金効果によってNi/Cに対して性能の増加はあったが、Ni-Moに対してその効果が大きくなかった。
【0160】
<試験例13>炭素担持のNi-Mo、Co-MoまたはNi-Co合金を含む水電解用還元触媒のHER比較評価
本試験例13では、製造された最も優れた組成の炭素担持のNi-Mo、Co-MoまたはNi-Co合金を含む水電解用還元触媒のHERを比較および評価する試験を行った。
【0161】
図18は、常用のPt/C触媒と本発明によってPDA保護コーティングを適用した後、700℃で熱処理して製造した最も優れた組成の炭素担持のNi-Mo、Co-MoまたはNi-Co合金を含む水電解用還元触媒のHERを電圧と電流密度の変化を通じて評価した比較グラフである。
【0162】
HERを評価するために、3電極システムにRDEチップ(面積0.196cm)をWorking electrodeとして用いた。RDEチップの上に塗布するインクは、メタルを基準に350μg・cm-2の密度となるように準備した。3電極システムは、Reference electrodeとしてHg/HgO、counter electrodeはPt wireであり、電解質は1M KOHで構成した。本発明によってPDA保護コーティングして製造した還元触媒のインクをRDEチップに塗布して乾燥させた後、ローテーターに連結して1600RPMと10mV・s-1のscan rateの条件で、LSVを測定してHERを評価した。LSV測定中に電流密度が-60mA・cm-2に到達するか電圧が-0.4Vに到達すると、LSV測定を中断した。
【0163】
具体的には、下記の表13に、10mA/cmの電流密度での過電圧(Overpotential;mV)を測定した結果を示した。
【0164】
【表13】
【0165】
[表13]に示されているように、HER測定の結果、炭素担持のNi-Mo合金を含む水電解用還元触媒のHER性能が@10mA・cm-2で75.1mVとなり、最も優れたHERを示した。水素吸着エネルギーが大きいNi、Coと相対的に弱いMoとを合金にする時には、Hadsの脱着が容易な構造を有することになり、それによってHadsの再結合反応が促進され、水素発生効果が高められることが分かった。これに対し、水素吸着エネルギーが大きいNiとCoとを合金にする時には、HER性能の増加効果は大きくなかった。また、比較例4に対応する20wt%のPtNi/C-D-700の過電圧数値に関連しては、表4で検討したものと同一である。前記結果を総合すると、水素の吸着・脱着反応が容易な構造の非貴金属合金が水電解用還元触媒に用いるに適していることを確認した。また、MoCが形成されたときに優れたHER性能が得られることから、水素脱着反応において、MoC含有量の高い構造の合金が、HER性能の寄与度が高いことが分かった。
【0166】
本試験例13の結果から、炭素担持のNi-Mo、Co-Mo、およびNi-Co合金を含む水電解用還元触媒のうち、PDA保護コーティングを適用して700℃で熱処理し、Ni:Mo=3:7モル比で炭素に20wt%を担持する還元触媒(20wt% NiMo/C-D-700)が製造された水電解用還元触媒のうち最も優れたHERを有することが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【国際調査報告】